虎杖先生、少しお時間をいただけますか?   作:だっちゃまん

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虎杖悠仁は先生

 

「うーん。これが一体、なんなのか全く分かりませんね、これでは壊そうにも……」

 

薄暗いシャーレ地下。執務机と書庫が並ぶ空間に、ワカモは一人きりで立っていた。灯りとなるものも、地上から降り注ぐ陽光だけで、この薄気味悪い場所において、異様とも取れる存在。

 

しかし、ワカモに至っては目の前に鎮座するオブジェクトとしか表現できない、最も難解な代物の方が異様に映っていた。一体これが何か見当もつかない。只の芸術作品にしては怪しすぎる。そもそも連邦生徒会が芸術作品なんてものを大事に、それも、こんな場所に保管するのだろうかという疑問が残るからだ。

 

ならばある程度重要な何かなのだろうが、その何かが分からない以上、壊したところで痛手にならなければ───などと思い悩んでいる内に、足音が背後から響く。

 

「……あら?」

 

階段を下って来る音だ。しかし、急く訳でもなく悠長なほど───まるで、己が侵入しているのを知らないかのように。ワカモの中で、可能性のある人物が一人だけ浮上する。恐らくは、あの男性と四人の女性だろうな……と。

 

もう追いついて来たのかとワカモが担いでいた銃を構え、薄暗い階段を注視する。しかし、どうにも足音が一つしかないことに疑問を浮かべて、その答えは、彼女の視界に飛び込んできた光景によって自ず導かれた。

 

───相手は、一人だ。

 

白い連邦生徒会の制服に、青い腕章、そして同じく蒼いネクタイ。それらをきっちりと着こなした──桃髪の大人の男性が薄暗い部屋に踏み入る。彼は鋭い眼光で以てワカモを見つめ、しかし次の瞬間には、慌てたように警戒を解いた。

 

「なんだ、そんな場所に居たのかよ。てっきり上の方かと思ってたのに」

 

友達のような距離感で詰める彼に、ワカモは銃口を向ける。この距離であるなら、外すことは無い。その自信だけは、彼女を最悪の犯罪者たらしめる所以の一つ。

 

「…お早いことですね。もう少し、時間を食うかと思いましたのに」

 

「んー、まぁ皆が優秀だったからさ」

 

ただ、偶然出会った友達と会話をするような悠仁に、ワカモは狐面越しに青筋を浮かべる。自分が相手だと云うのに、緊張感の欠片もない……非常識な存在に対する怒りが昇っていく。キヴォトス外から来訪したからと、そんな理由で舐められるほど、自分は落ちぶれていない。

 

「───決着でも、つけましょうか?」

 

思わず、悠仁の目が見開かれる。ワカモの指が引き金にかかった、その刹那───悠仁の姿が掻き消えた。

 

「──ッ!」

 

銃声すら鳴らない。引き金を絞る前に、彼の右手が銃身を逸らし、左手で彼女の手首を掴んだ。全てが一瞬だった。まるで時間が止まったかのように、彼はワカモの反応の隙間を縫って動いていた。

 

「そっちから来るかよ、やっぱり」

 

軽く呟いた彼の声が、真横から聞こえたと思った瞬間──視界がぐるりと天地を反転させる。強烈な遠心力と共に床が背中を打つ衝撃。手から銃が滑り落ち、息が詰まる。

 

「──ぐぅッ!」

 

押し倒された。首元を押さえられ、脚を絡められて、完全に封じられている。暴れる余地すら与えられず、仮面の下でワカモの表情が歪む。

 

「悪い、少し強すぎたかも。俺の話、聞いてくれる?」

 

軽口。その余裕に、ワカモの中で何かが爆ぜる。プライド、怒り、混乱。すべてがない交ぜになって、呼吸が荒くなる。

 

「っ、離しなさい…っ!!」

 

声を荒げる彼女に、悠仁はただ静かに──そのまま、目を逸らすことなく見下ろしていた。

 

「落ち着けって、俺は敵じゃない。力を抜け」

 

「…!それをどう、証明しろと云うのですか…!」

 

「分かった、ほら」

 

手の力を抜いたかと思えば、その場で両手を上げて無防備を晒す。ワカモの中で困惑が広がって、菩薩顔で悠仁を見据えるワカモからは、意味がわからないと言わんばかりに体が震えていた。

 

「…どういう、つもりでしょう?」

 

「もう撃たないって、オマエを信じてるから」

 

優しく、微笑んだ。元から無かった悠仁からの敵意が──勝手に敵だと詰った、ワカモの中から霧散する。そんな風に笑い掛けてくれた人を、ワカモは一人も知らなかった。

 

「っ、あら、あららら……」

 

分からない。どうして、肩の力が抜けるのかも…頬の体温が上がっていくのが、怖くて嬉しくて、たまらなく…心地良かった。彼女の瞳は彼、悠仁を捉えて離さない。自身の体を巡る血液が分かる、まるで煮えたぎる血が頬にまで昇りつめていくようで、恐ろしいほどに、生きていると感じていた。

 

彼の目は、どうしようもなく落ち着いていた。おかしい、おかしい…己が何者であるか知っているはずだ。敵だった…はずだ。自分は悠仁に牙を剥き、挙句の果てには不正に手に入れた戦車を暴徒達に寄越し、襲わせたのだ。自分は、最悪の犯罪者……その情報だって知り得ているはずなのに。

 

手を伸ばせば届く距離で足を止めた悠仁は、腰を折って、目と鼻の先で微笑んだままワカモに問い掛ける。

 

「背中、痛むとかないよな?」

 

「あ、あぁ……」

 

心配を滲ませる声。饒舌な彼に反し、ワカモは舌が上手く回らなかった。何かを云わなくてはならないのに、伝えたい言葉がある筈なのに、肉体は精神に反して全くいう事を聞かなかった。

 

その瞳が、声が……感情が。自分をおかしくさせる。陽だまりのような雰囲気の奥に秘められた老成の如く、強く輝く───見え隠れした覚悟が、ワカモの羞恥心を弾いた。

 

─────とても、綺麗な人。

 

その気持ちを自覚した瞬間、ワカモの中で何かが爆発した。

 

「し、し……」

 

「し?」

 

「失礼致しました~っ!」

 

彼女は、脱兎の如く逃げ出した。

 

悠仁も捉えきれぬ程の俊敏さで、脇を抜けていくワカモの表情は真っ赤に染め、階段を凄まじい速度で駆けて行く。ちゃっかりと銃の回収も忘れず、目の前に居た筈のワカモが消えて、背後の足音で逃げ去ったのだと気付いた悠仁は、咄嗟に振り返った。

 

「あ、おい!」

 

「ッ!」

 

叫ぶような声に一瞬、ワカモの足が止まる。

 

「今度はさ、ワカモのこと教えてくれよ。次の機会でも」

 

「~っ!」

 

その言葉を聞き届け、ワカモは更に速度を上げていく。床が抜けそうなドタバタ音にシャーレの耐久性を心配してしまうが、その背中を悠仁は見送る。完全に姿が見えなくなり、足音さえ聞こえなくなって──悠仁はそっと、力なく笑みを零した。

 

「五条先生、よく俺たちの先生やれてたよなぁ」

 

かつての恩師は、だから自由でマイペースな人だったのかと、この時は思った。

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました」

 

「よ、おつかれ。道中平気だった?」

 

「はい。問題はありません」

 

ワカモが走り去ってすぐのこと、シャーレに到着したリンは足早に階段を下り、地下室へと踏み込んだ。一応、ワカモと出会ったことは内緒にして、それとなく大丈夫だったかと訊ねれば、鉢合わせは無いようでホッと胸を撫で下ろす。そんな悠仁を見た彼女は、首を傾げる様子を湛えた。

 

「どうかされましたか?」

 

「ううん、別になんも」

 

「…先生。ここに、連邦生徒会長の残したものが保管されています」

 

不思議そうにしつつも「幸い、傷一つ無いですね」と云った後、彼女はデスクの傍に配置されていたケースから何かを取り出し、先生に差し出す。

 

「此方を受け取って下さい」

 

「…これは?」

 

リンから差し出されたそれは、一見、何の変哲もないタブレットであった。割れ物を扱うように受け取った悠仁は静かに表面を撫でる。薄いフィルム越しの画面、これが一体どれほど重要な物なのか見当もつかないが、リンは真剣な趣で告げる。

 

「これが、連邦生徒会長が先生に残したもの────【シッテムの箱】です」

 

……あ、iPadじゃないんだ。心の中で呟く。

 

暗い画面に反射する、己はヘンテコな顔を映していた。これのどこが重要な物だろうかと、思い悩んで、何らかの機密情報や一般公表も出来ないグレーな線も、ハッキリとすれば、サンクトゥムタワー関連であることは間違いないと思いつつもそれぞれの視野を入れた悠仁は、興味本位ゆえに様々な画角で見渡す。

 

「見た目こそ普通のタブレットに見えますが、正直、私達も実態を把握しておりません。製造会社も、OSも、システム構造も、動く仕組みの全てが不明」

 

「へぇ…」

 

シッテムの箱を見つめながら、そう告げるリン。悠仁の脳内はここに来てすぐの頃と変わらない程の困惑を抱いたものの、唯一分かったことがあるならば、このタブレットは「ブラックボックス」である事。そして、連邦生徒会長はそれを先生の為に用意していた貴重なもの。ぐらいだろう。

 

「困惑してますよね……ですが、連邦生徒会長は、このシッテムの箱は先生のもので、先生がこれでタワーの制御権を回復させられる筈だと言っていました」

 

「……えっと、これボタン押してもなにも反応無いけど?」

 

「いえ、縁の起動ボタンをおしていただけると…起動するはずです」

 

「あ、そっち?」と、笑う悠仁に普通に分かるだろと言いたげなリンの視線が交差する中、恥ずかしそうに悠仁は起動ボタンを押し込む。すると、軽い起動音と共に青白い背景が表示された、そして空かさず差し込まれる、パスワード。

 

「では、私はここまでです。ここから先は、全て先生にかかって────」

 

「……え、パスワードって何?」

 

全て先生にかかっています、私は離れていますので、お願いします。そう告げるつもりで途中まで云った直後……隣の悠仁から信じられない言葉を聞いたリンは勢いよく振り向いて、わなわなと体を震わせた。それはもう、悠仁を前にして崩さなかった敬語を崩しかねない、まだ尊敬している部類の人間を見ていたはずの目は有り得ない…と言わんばかりの目を纏っていた。

 

「…先生、なにか…心当たりはありますか?」

 

辛うじて保った連邦生徒会幹部としての肩書きを以て、リンは訊ねた。それに反して悩む素振りを見せる悠仁は1秒……2秒と経ってようやく、なにかが閃いたのか「あ!!多分これだ!」と抜かす。

 

文字を打つ指は、加速していく。

 

そして。

 

【我々は望む、七つの嘆きを。】

【我々は覚えている、ジェリコの古則を。】

 

───「シッテムの箱」へようこそ、先生。

生体認証及び認証書生成のため、メインオペレートシステム、「A.R.O.N.A」に変換します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────認証、不可。

 

─────接続者、先生であることを確認。

 

────生体認証を元に、認証設定の再構築を実装します。

 

 

そして、響く運命の音。

 

 

────再認証、実行。()()───改め、()()()()が認証されました。

 

視界が白に染まり、開けた先に見えたのは果てしない蒼の世界。床一面に広まった水面に、乱雑に配置された机。遥か向こうには水平線が広がり、頭上を仰げば蒼穹が世界を覆っている。それ以外は、何も無い孤立した青の教室。反射する水面が眩く、微かに目を細める。

唐突に広がった世界、或いは瞬間移動とも見紛う唐突な切り替えに警戒をしようとして……此処は大丈夫だと、本能が訴えた。

 

「…前もこんなことあったような───あれ?」

 

暫く周囲を見渡し、そしてすぐ傍に、机に伏して眠りこける少女がひとり居る事に気付いた。

 

「…え、誰?女の子?」

 

「……くぅぅぅ」

 

寝息を立てて、心地良さそうに眠る少女は侵入者に一切気がつかないのか、それなりに響いた悠仁の声でも起きる気配を見せなかった。そればかりか、「カステラはぁ……いちごミルクより……」云々と寝言もつぶやく始末。無理に起こすのも可哀想だしどうしたもんか、と現状の千日手に悠仁が首を掻いた。

 

「えへっ……まだたくさんありますよぉ…」

 

「…マジでどうしよう」

 

もういっその事、頬でも突っついてみようか。悪戯心が芽生えた悠仁は、そっと少女の膨らんだ頬をむにゅっと人差し指で突っついた。温かみのある、柔らかな肌の感触が指先に伝い────上体を軽く起こして眠たげな眼を見せる少女。澄んだ水色の髪に、白いリボンのアクセサリ。彼女の目覚めと共に天使の輪が現れ、左右に揺れていた瞳が固定された。

 

「むにゅ…んもう……ありゃ?ありゃ、ありゃりゃ……?」

 

二度、三度、目を摩る少女。ジッと悠仁を見つめる顔に段々と困惑と驚きが混じった──思わず声を張り上げて、待ち焦がれたと言わんばかりに椅子から飛び起きた。

 

「あれ、せ、先生っ!?」

 

口元を拭い、自分の体を見下ろして皺になった部分を必死に伸ばす。そして椅子を蹴とばす勢いで駆け出し、悠仁の目の前に立つ。爪先から頭の天辺まで、じっと見つめ何度も何度も瞬きを繰り返す彼女は、震えた唇で問いかけた。

 

「この空間に入って来たという事は、ま、まさか────先生ですか!?」

 

「なんか、最初に認証不可とか言われたけど、そうみたい」

 

「……認証不可?あ、そうでした────貴方は、虎杖先生」

 

一瞬だけ見せた、瞳の陰。しかし其れを出すこと無く、少女は太陽の如く底抜けた笑顔を照らした。

 

「…?なんか違いでもあんの?」

 

「いえ!そ、それよりも!あ、えっと……あ!自己紹介から!私はアロナ!この「シッテムの箱」に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をサポートする秘書です!」

 

頭を抱えたり、わたわたと忙しなく足踏みする少女───アロナの瞳は薄らと涙を浮かべていた。ようやく会えた。ずっと、待っていた。これがもし夢だとしたら、もしかしたら、そんなあり得もしない幻想を疑った。でも、確かに目の前にいる本物の先生。

 

感極まった顔で見上げるアロナの頭に、悠仁はそっと手を置く。

 

「よろしくな!アロナ」

 

──── A.R.O.N.A。忘れてしまう記憶でしょうが、構いません…どうか。先生──ううん、虎杖先生と出会ったら。

 

その先を思い出すことは最早ない。メインOSとなり、人間としての存在を変えた瞬間から過去の記憶を抹消する同意を得たのだから。その事を薄ら、漠然と憶えている程度の記憶(データ)でしかない、それでも。

 

受け継がれた、想いだけはOSになろうとも。消し去ることはない。

 

捻れ捏造された世界で…変わりゆく恐怖に怯えながら彼女は待っていた。

 

ニカッと、擬音が響く悠仁の笑顔にアロナの中で何かが決壊したように涙を零した。とめどなく溢れるそれを、拭っても、擦っても流れてしまう。そんな姿に心配を滲ませた悠仁は慌てて背中を擦り、残雑に頭を撫で回した。

 

「え、ど、どったの!?どっか痛いところある!?」

 

「そう、じゃ……ないです!ごめんなさい、涙が…っ!ずっと────貴方を、待ってました。ずっと、ずっと……此処で」

 

「…ごめん、すげぇ待たせたよな」

 

小さな体を抱き寄せて、安心させるように強く、悠仁は己の体に押し付ける。背中に手を回し、震えながらギュッと抱き着くアロナは何を背負って此処に居るのか悠仁には分からない。どうしてこんな子供が、そんな思いがある。

 

だけど、一つだけ確かなことは。

 

様々な感情がごちゃ混ぜになった彼女も、悠仁が護るべき生徒の一人なのだろう。こんな細くて、小さな体が一人で背負うには──重すぎる。

 

強ばった表情の下で、悠仁は決意した。

 

それから、数分後に落ち着いたアロナは──「先生の力を使うには、この箱の管理者として形式的な生体認証が必要です」と言いながら、人差し指を差し出した。

 

頬を赤く染めながらにぱっと笑顔を浮かべた。

 

「は、恥ずかしいですけど…私の指と虎杖先生の指を合わせてください!」

 

先生の差し出した指に、自身のそれを重ね合わせる。アロナの指先は──僅かな暖かさを感じる。こうして見れば、彼女が電子情報だと分かる人は居ないだろう。悠仁の指先を押し返す彼女の指、アロナはどこか照れたようにはにかんだ。

 

「うふふ、まるで指切りして約束するみたいでしょう?」

 

「……なんだか、特別感すごいな。ET思い出すわ」

 

「それが何かは分かりませんが、何となく嫌な例えに聞こえます…」

 

アロナの表情があからさまに歪んだまま、「これは大事なことなんです!、生体認証の確認が取れるんですよ、これで!」と、力説する姿は正に小さな先生のようで、先程の涙を見せたアロナの陰は一先ずは大丈夫そうだと、安心の溜息を吐いた。

 

「えっと、画面の指紋と目視で照会確認するので、少しお待ちを!」

 

「そこら辺はアナログなのな」

 

「こ、これでもすごいんですよ!私!」 

 

「目も良いですし!」そう云い、じっと指紋を見つめるアロナ。その双眸は真剣みを帯び、僅かな違いも許容しないとばかりに光っている。しかし、傍から見てもその違いとやらが分かるのか、甚だ疑問が残るところだったが……悠仁の勘は当たっていた。

 

最初は真剣だったものが、数秒もすると、諦めたように「まぁ、これで良いかな?」みたいな顔に変わる。やはり適当な性格をしているようだ。これはこれで好きかもしれない、と思う事にした。

 

「はい、確認終わりました!」

 

「マサイ族みたいな視力してんのな、すげぇよアロナ!」

 

「ま、マサイ族ですか!?何かは分かりませんが、なんとなく褒められた気がする…!まぁ!最新最先端のアロナちゃんですからね!!こんなの、もう、よゆーってやつですよぉ!」

 

最先端はチョロかった。慎んだ胸を精一杯に張ってドヤ顔を披露する彼女に、つい笑みが零れる。しかし、ここに来た用を思い出した悠仁は咳払いを一つ、アロナに向き直った。

 

「アロナ、話す事がある」

 

「───私に、どーんとお話ください!」

 

 

 

 

 

 

「なるほど、先生の事情は大体わかりました」

 

一部端折りながらも大部分を話し終えた時、アロナは神妙な顔つきで顎に手をやると、続けざまに言葉を発する。

 

「連邦生徒会長は行方不明になって、そのせいでキヴォトスのタワーを制御する手段がなくなった……と」

 

「そうらしい。俺もイマイチ把握しきってねーし…その、連邦生徒会長ってやつの行方とか分かったりする?」

 

「いいえ、私はキヴォトスの情報の多くを保有していますが……連邦生徒会長については殆ど情報がありません、彼女が何者なのか、どうしていなくなったのかも……お役に立てず、すみません」

 

申し訳なさそうにそう告げるアロナに、「気にすんな」と告げながらも悠仁は仕方ないと考えていた。シッテムの箱って云うブラックボックスを残すような人だ、きっと行方不明になったのだって、普通じゃ説明できない何らかの要因が複雑に絡んだ結果の事だろうし。

 

「ですが、サンクトゥムタワーの問題は私が解決出来そうです」

 

「マジ!?頼む!」

 

「はい、アロナにお任せください!直ぐにサンクトゥムタワーのアクセス権を修復します!」

 

瞳に星を宿した彼女は、やる気満々に宣言した。

 

 

 

 

 

 

悠仁の体は一歩も動かない。しかし、意識は既に別の空間──蒼く光る教室へと移動していた。背景の表示されたタブレットを手に、立ったまま意識を失っているかのように目を瞑った悠仁の姿に、リンは暫くの間、様子を訝し気に観察していた、その時。

 

「──これは」

 

不意に、ジジ、という音が周囲に響いた。それだけではなく、シャーレの電力が復旧し、薄暗かった空間に光が灯る。息を吹き返すように電力系統が回り始め、あちこちから設備の駆動音が響いていた。

 

「機能が…復活した?」

 

困惑の声は、空に溶けて消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

「サンクトゥムタワーのadmin権限を取得完了──先生、サンクトゥムタワーの制御権を無事回収出来ました、今サンクトゥムタワーは私、アロナの統制下にあります」

 

「おぉ〜!」

 

むん、と腕を組み鼻を鳴らすアロナ。「褒めて褒めて、すごいでしょ?」と言いたげな雰囲気に悠仁も感心の声を漏らす。

 

「つまり、今のキヴォトスは先生の支配下にあるも同然です!」

 

「いや、ホントに一瞬で出来ちゃったな!」

 

「出来ちゃったんですよ〜!私は凄いですから!」

 

もはや天にまで届きそうな程鼻を高くするアロナに「アロナ様って呼んでもいいですか!」と、さらに調子づかせる悠仁。やはり、「どーぞ呼んでください!!」なんて宣うアロナである。

 

「ふふ、先生が承認さえしてくだされば、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管できますが──でも、大丈夫ですか?連邦生徒会に返しても…」

 

その一言に、悠仁は純粋無垢な目で返した。

 

「え、なんで?」

 

「良い……んですか?」

 

「別に返しても問題なっしょ?元々あっちが持ってたやつだし」

 

ユウカ達の言葉を忘れたわけじゃない、サンクトゥムタワーの制御権は間違いなく人一人が持っていい権限じゃない。キヴォトスの規模が如何程か分からないが、幾千もの学園が連れなって出来た都市…ここまでの道のりで垣間見た街並みも考えたら、一個の国相当。

 

これから自分が活動する部活への不信感はもちろん、部活と云うカテゴリーから逸脱することは間違いない。全ての権限を握った瞬間、人間は堕落する。それはあっちゃダメなことだ。管理を行うのであれば連邦生徒会が適切であるし、手に余る力。

 

だから。

 

「全然返しても問題ないぜ!」

 

「────先生なら、そう言ってくれると思ってました。これより、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!」

 

アロナは待ってました!と言わんばかりに制御権の移行を開始した。それを横目に、「一度現実に戻るよ」と、一言だけ残して意識を現実に戻す。閉じていた瞼を再び開いた時、蒼穹の世界から地下室へと変化した脳の戸惑いはありつつも、既に電気系統は回復し室内は明るく照らされ、薄暗い暗闇は何処にもなかった。

 

見れば端末で何処かと連絡をしているリンの姿、彼女は悠仁が戻ったと気付くや否や会話を切り上げる。

 

「……はい、分かりました」

 

通話を切り、此方を向くリン。目を開いた悠仁に異常が見られないか隈なく見渡すと、彼女は眼鏡を押し上げ礼を告げた。

 

「サンクトゥムタワーの制御権、その確保が確認出来ました、これで元のように行政管理を進められます……お疲れ様でした先生、キヴォトスの混乱を防いでくれた事、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします」

 

「俺の方こそ、色々サンキューな」

 

そう云って軽快に笑う悠仁にリンも肩の荷が下りたのか、ふっと柔らかく笑みを返した。少なくともこれで、悠仁の初任務は黒星で終えた。キヴォトス内の混乱も、そう遠くない内に収束する筈だろう。

 

「ここを攻撃した不良達と、停学中の生徒についてはこれから追跡、討伐を行いますのでご心配なく」

 

「え、おぉ…まぁ、お手柔らかに」

 

リンからの返答は無いが、悠然と語る「それは出来ません」の顔に苦笑を零す。こればっかりは悠仁とて強くは言えないため、不良達は顔面変形程度は覚悟するしかない。

 

「それでは、シッテムの箱は渡しましたし、私の役目はここまでの様──あぁ、いえ、もう一つだけありました」

 

背を向け、視線を此方に投げかけるリンは、眼鏡の押し上げた。

 

「着いてきてください、連邦捜査部──シャーレを案内します」

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、リン直々に案内されたシャーレの内装は大きく分けて『オフィス』と『居住区』の二つ。説明を受けてすぐの感想としては、部室と言うよりも一個の施設じゃね?だった。オフィスには「視聴覚室」「体育館」「図書館」「実験室」「射撃場」「教室」「格納庫」が揃っている。

 

射撃場にはあらゆる兵装と弾薬が、格納庫には戦車、装甲車、ヘリコプターすらも収納可能。屋上へと直通するリフトには、修理や整備の為のツール一式が揃っている。居住区には自習室、トレーニングルーム、休憩室、ゲームセンター、食堂、菜園、更にはコンビニまで完備されていた。もう大型施設すぎる。大きさもそうだが、シャーレは連邦生徒会の中でも余程変わった立ち位置なのが分かる。

 

そして、次にシャーレとしての活動も説明を受けたが「権限だけはあるが、目的のない組織」らしく、特に何かをしなきゃいけないって強制されることは無いようだ。改めて、キヴォトス内の学園自治区の自由行動に加え、所属に関係なく生徒であれば入部させることも可能という言葉も貰った。

 

これを、リンは面白いと評していたが、実際のところチナツ達の反応を見るに相当破格な組織なんだろうな、と軽い感想しか浮かばなかった。結論として、リンからは「好きにやって良い」と言われた悠仁は正直手持ち無沙汰感が否めない。

 

ついでに、仕事もお裾分けされる勢いで職務の多さを嘆いていたリンには心の底から同情を禁じえなかった悠仁である。激務確定だな、こりゃ。

 

「……えぇ、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会が取り戻したことを確認したわ」

 

シャーレ前でハスミたちと共に警戒に当たっていたユウカが、端末を片手に頷きつつ告げる。

悠仁は、一通りの案内と仕事の受け渡しを終え、諸々の所在を教えるために一度地上へ戻っていた。

ロビー前では、銃を手に周辺を警戒していたユウカたちが、ようやくひと仕事を終えた安堵から胸を撫で下ろしている。

 

「ワカモは自治区に逃走してしまった様子ですが……すぐ捕まるでしょう。一先ずはここまで、ですね。後は担当者に任せます」

 

「お疲れ様でした先生、先生の活躍はキヴォトス全域に広まってしまうかもしれませんね?SNSで」

 

「なんか実感がねーんだよなぁ」

 

ユウカのニヤケ顔に反して、悠仁はさもありなんと云った様子でイマイチよく分かってない状態だった。その横でチナツが意味を含んだ微笑みで見守っていたのは、少なくとも今回の件が既に各学園に報告されて、遅かれ早かれ、シャーレは話題の中心に据えられるだろう。と踏んでいたからだ。

 

発足前から何かと話題に挙がっていた人物と組織なのだ。今回の件を得て、尚更話題にならない筈がない。ましてや、これから先────彼の話を聞かない日なんて、それこそないだろう、そんな確信まで持っていた。

 

「これでお別れですが、近い内に是非、トリニティ総合学園に立ち寄ってください、先生」

 

ハスミの後に続いたスズミは会釈をして、同じく期待の眼差しで来てくれることを願っていた。それに頷いて「絶対に行くよ!そんときは店で飯でも食お!」と、悠仁は陽気に返す。

 

「私も風紀委員長に今日の事を報告しに戻ります。ゲヘナ学園にいらっしゃった時は是非訪ねてください、風紀委員共々で歓迎します」

 

「ミレニアムサイエンススクールに来て下されば、またお会い出来ますから、セミナーに来てくださいね。色々案内しますから!」

 

「おう!絶対行くよ!」

 

チナツとユウカの二人からも手厚い誘いを受け取った後、各々が学園の方向に去っていく。その背中からは疲労感が滲み出ているものの、何処か満足そうな足取りだった。ほぼ無償で働いてくれた彼女達に、いずれ礼も用意しないとなぁ…そんな事を考えながら皆の背を見送り、ひとりシャーレへと戻った。

 

 

 

 

 

 

「あはは……なんだか慌ただしい感じでしたが、落ち着いたみたいですね。お疲れ様です、虎杖先生」

 

「アロナもおつかれ!」

 

みんなを見送った後、静かなロビーでシッテムの箱を立ち上げた悠仁は今日で二度目となるアロナと対面していた。景色が移り変る瞬間は、宿儺の生得領域に移動した時を思い出すのであんまり心臓によろしくないが、あの憎たらしい顔がこうして可愛らしい天真爛漫な少女へと変化した、昔との大きな差違に苦笑が漏れる。

 

悠仁の姿を見るまではどこか所在なさげにしていたアロナも、悠仁を見るや否や、兎の如く飛び跳ねる勢いを湛えていた。宿儺もこうだったらもう少しは……なんて考えたところで吐き気を催したので思考を止めた。

 

「でも、虎杖先生!本当に大変なのはこれからなんですよ?これから先、キヴォトスの生徒たちが直面している問題を解決していくのです!」

 

熱い口調で語るアロナに悠仁はたじろいで一歩下がった。

 

「単純に見えて、簡単ではない───とっても重要なことです」

 

瞳を輝かせて、一歩下がった分の距離を詰めるようにアロナは悠仁に迫る。そして、ニマニマとした表情から一転して決意の籠った笑みを咲かせた。

 

「それでは、キヴォトスを───シャーレをよろしくお願いしますね!虎杖先生!」

 

彼女の満面たる誓いを確りと受け取り、力強く頷いた。

 

 

 

ここから始まった。彼らの物語の始まりは歪で不思議な出会いから、水面のように広がって紡がれた。それを為したのは、人為的とも運命的とも言えぬ──されど、確かな想いから始まった物語。

 

虎杖悠仁が、呪術師として繋いできた思いと記憶、経験による選択肢は時を超え、彼女たちキヴォトスの生徒を清く正しく導いてゆけるはずだ。しかし、繋ぐには彼自身も向き合わなければならない。それは自身の恥であり、過去であり、後悔の記憶───その全てと。

 

理想を掲げ、空想を描いた愚かな自分を肯定し、認め、共に進むことを選んだ想いそのものを抱えなくてはならない。高専では無い、大人となった彼の責務であり、それが教職者としての務め────ゆえに、諦観する事は許されない。

 

最後まで生徒に寄り添い、支え、その手を決して離さない理解者になれ。

 

仮面を被り続けろ。

 

過去を、見せるな。

 

未来を、思わせるな。

 

────誰にも、絶望を与えるな。

 

この瞬間を、日常を、奇跡にしてはならない。たとえ、彼女たちと真の意味で分かり合える事がなくても───弱い面を隠し、苦行を耐え忍ぶことも忘れるな。

 

それが────強者(教師)としての使命なのだから。

 

もう二度と、喪うわけにはいかない。あの時選ぶ事の出来なかった第三の選択。見捨てることも、殺すことでも無い───助ける、その選択を取るために。例えどれだけの艱難辛苦が降り注ごうとも。決して挫けてはならない。

 

今度こそ。

 

誰かの死で、傷で、かつてのような失態を犯さないように。恩師たちが繋げてくれた、想念を魂に生徒達を教え導き───そして手を引くのではなく、ほんの一歩でも良い、この世界の異物としてでは無く、先を歩む大人として。

 

「───あぁ、何があっても」

 

強く、断言する。呼ばれた理由は判然としなくたって、きっといつか答えがわかる。それまでは……助けを必要とする姿が見える限り、助けを求める声が聴こえる限り───。

 

 

「俺に任せろ!」

 

残酷なまでの、優しさを誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界が、歪んだ。

 

世界が、悲鳴をあげた。

 

されど、見えず。

 

軽快な足音を鳴らす、一体の人物。最早それは人型でありながら、人らしからぬ様相を湛えた未知の生命体。漆黒のスーツとネクタイ、純白のシャツを着こなすまでは人間らしさを持ち、けれど──右目にあたる部分が銀色に輝きながら燃え盛り、そこから顔全体へ亀裂が走っている。

 

更に口と思われる部分も同様にひび割れ銀色の耀が覗き、その形は微笑みにも嘲笑にも見え……闇よりも深い黒に塗りつぶされた長身のマネキンであった。

 

ビルの最上階、ガラス張りの空間。その中央で、彼──『黒服』はデスクに腰掛け、振り返った。

大腿筋の上に肘を置き、指先を組む。整ったその仕草のまま──

 

笑った。

 

「クックック…この箱庭は───あいも変わらず興味が絶えない」

 

心底愉快そうに発露する感情が、この胸の高鳴りが止まらなかった。新たに現れた連邦生徒会長の代理とでも言うような存在、自身と同じくキヴォトス外から来訪した『先生』。

 

その存在を観測出来ないほど、ヤワではなく、むしろあれほどの異質を隠していれるものでも無い。

 

アビドスに隠された古き神々の遺産に、最高の神秘を宿す器…それらは黒服の探究心を満たし、尽きることのない好奇心を植え付けていた。

 

砂漠の中、水を求めるように……乾くことの無い欲望。『先生』というルールの外側から来た存在は『神々の遺産と最高の神秘』に並び立つ、或いはその二つすらも上回る、至上の切り札足り得る逸材だと確信があった。

 

サンクトゥムタワーの制御権を破棄した、選択。

 

キヴォトスの全てを手に入れたというのに…それを容易に捨てた、精神性。そして人物像…どれもが『黒服』の未知への探究心を掻き立てる要素となっている。

 

それと同時に、彼は依然と直感した。歪になりつつある、世界(実験場)を。

 

「…知覚は出来ない。しかし、明確な証を刻み、物理的に存在する」

 

神秘同様に、本来なら認識できない魂の如く。揺れる動くことも泣き叫ぶこともない、存在するだけで、誰もが認識し、当たり前と判断する空白だった。それがこの世界の法則なのだ。

 

それを逸脱すれば、この世界の軌跡は歪んでしまう。

 

ありえないことだ。だが、『黒服』確かに見てしまった。

 

否……視えてしまった。

 

「クックック…本来辿るべき軌跡から外れ、併せ見ることの無い鏡のように捻れた世界を生んだ」

 

その原因は、間違いなく『先生』によるルールの変質。法則の乱れだ。

 

だが、ソレは元より観測されていた。

 

「このような、神秘からも恐怖からも程遠くなった───感情と記憶の悪魔は、私の探求からは大きく逸脱している」

 

ガラスに張り付いた、黒いモヤ……天使のような羽根を尾骶骨辺りに生やした、ナニカ。それを明確に視認することは不可能。しかし、確かにそこに存在する空白の一部。

 

───悠仁の世界で、()()と呼ばれる異形存在は黒服を睨んだ。

 

「…全く。この世界は、本当に尽きませんね」

 

叫ぶ怨念を背に。

 

彼は笑みを絶やさなかった。

 

 






悠仁は言いました。僕がただの曇らせ大好き野郎の外道だと。違うんですって、ほんとに違うんですって。いやいや、俺ハッピーエンド至上主義だし曇らせとか苦手なんですよ。ワンピースの山賊みたいなもんですって、ただ相手を脅すための道具にしてただけなんですって。あれ、これだと余計にクソ野郎……?

いや、弁論させてほしいんです。僕の中で、あるんですよ。虎杖悠仁のキャラ像ってのが。解釈違い起こしてキレ散らかす方がいると思いますが、僕は断言します。

僕にとって、虎杖悠仁は「強さ」と「優しさ」と「無垢な残酷さ」が同居するキャラクターだと思ってるんです。その本質は「救い」にあるけど、「自分が救われること」は全く考えていない。確かに、当初は救いを求めてたけど、徐々にその救いの対象が自分じゃなくなって、他者に変わり、じいちゃんの遺言で突き動かされた人形に成っていくんですよ。結局は。

芯はあるんですが、柱として支えてるのはじいちゃんの遺言なんです。

でも悠仁って、元々自己に対して結構、無頓着な人じゃないですか。作中でも、正義の味方ではないけど救いを求める人に対してべらぼうに優しくて、死ぬって分かった時も自分の死を嘆くよりも、伏黒のことを優先してたし。ヒーローの素質が備わっているのに己はヒーローじゃない。そんな線引きを感じるんですよ。

やっぱり、自分は救える人が限られている、みんなに惜しまれて死にゆく人間じゃないって自己暗示でもかけてるんですかね?ってぐらいには。それが、平和になった世で尚のこと磨かれてる気がするんです。平和を享受して、何気ない日常が本当の宝なんだって思ったと同時にこう考えてると思うんですよ。

あ……これ、失ったらどうしよう。って。

悠仁は今を楽しめるようになった自分にすらうっすらと罪悪感を抱いているように見えるんです。本来はあって当然の幸福すら、彼にとっては「代償」と「綻び」に感じられてしまう。たとえば「いつか壊れる」「これは奪われるもの」として受け取っている節がある、それはもう恐怖ですよね。恐怖は人を強くもするけど、同時に歪ませる

最終回では、平和な世界に戻りつつあるエピローグでしたけど、改めて呪いの世界に戻った時……多分、歯止めきかなくなっていくんだろうなって思ったんです。めちゃくちゃネタバレも含んでるんですが、最後の最後で小沢と奇遇とは云え出会ったのって、作者なりの悠仁はこの幸せを享受すべき人間なのか、呪いを真の意味で克服すべき通過点として描いてるんじゃないかって思ったわけですよ(厄介ファンの思考)

だからこそ、何気なく悠仁の闇とか過去とか行動や言葉の節々で見ちゃって、あの人はこんなものを抱えていたの…?とか、相対的な曇らせをやりたいんです。そして、あわよくば最終決戦を得て自他ともに認めるつよつよ悠仁になったせいで、自分の体を顧みず生徒たちを守ろうとする自己犠牲の認識とかも含めて、そこら辺バグり散らかして欲しいんですよ。

その結果として起こる、生徒たちの曇らせが見たいんですよ。

最終決戦後、世界から呪力が無くなって強迫概念のように救いを与える製造機から程遠くなったのに、キヴォトスに呼ばれたせいで、本来なら閉じられた気持ちが開けられてしまった。

自分が強くなったから、今度は救えなきゃいけない。結果として、伏黒は取り戻せて、五条や釘崎は生き返ったけど、喪った物も人も数え切れない。だから、もう誰も死なせてはいけないって心のどこかで考えてるはずなんです。それが暴走した責任感になって、「強くなったのに、まだ苦しんでる人がいる」ってなっていく。
でも、その時にはもう、「強くなった自分」が心を守る鎧になってしまっていて、誰も彼の心の中に踏み込めない。
生徒たちも、仲間も、気付いてはいるけど、止められない。

そんな青春の物語を僕は書きたいんです!!視点の違いやら解釈の違いが起こるかと思いますが、許して。

さて、ようやくプロローグ終わったんで次は原作通り対策委員会編ですわ。基本的に原作準拠なので、まぁ原作勢は展開とかわかるかと思いますがこの世界はね、まぁね。もう、ドロッドロに歪んじゃいましたので。

執筆捗りますよ
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