呪術師に再び青春を   作:枝那

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「中々評価つかないな…まぁ始めたてだしこんなもんだろ」

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「( °Д° )」


第3話 ゲヘナ風紀委員長

シオンはテントを購入し公園で野宿をしていた。

呪霊を使えばテントであってもある程度快適な生活ができる。

このままテント暮らしも悪くないと思い始めた頃。

 

「本当にいた…」

「ん?」

 

テントを開けるとそこにいたのは

 

「空崎さん」

「2日ぶりね、神薙シオン」

 

◇◇◇◇◇

 

「最初公園で暮らしてると聞いたときは冗談かと思ったわ」

「まぁ…でも、テント暮らしもそこまで悪くないですよ」

 

シオンとヒナは近くの喫茶店に来ていた。

落ち着いて話せる場所が欲しいとヒナが言ったため、シオンがここに連れて来たのだ。

 

「良い店ね、ここ」

「でしょう?お手頃価格でコーヒーだけじゃなくスイーツも美味しい。ここで暴れると常連のマーケットガードが黙ってないから、ブラックマーケットにあるのにとても治安が良いんですよ」

 

「ヒナ委員長とあんなに楽しそうに………ッ!」

「ただ話してるだけじゃん、アコちゃん…」

「二人とも、静かにしてください」

 

「それで、話というのは?」

「ああ、それね。今日はこれを渡しに来たのよ」

 

そう言って、ヒナは懐から封筒を取り出す。

 

「温泉開発部撃退の報奨金よ」

「ああ、わざわざありがとうございます」

 

厚みからして、相当な額だろう。あの一件によるショックと、寝床を探すのに精一杯で頭から抜けていたが、これは思わぬ収入だ。

 

「…それで、まだ何か用事があるんじゃないですか?」

「あら、気づいてたの?」

「まぁ、分かりますよ。報奨金を渡すだけなら、別にあの場でも良い。でもそうじゃないってことは、少なくとも何か別の用があるんじゃないかって思ったんですよ」

「なら、話は早いわね。今日、あなたに依頼があって来たのよ」

「依頼?」

「ええ。あなたには……」

 

◇◇◇◇◇

 

「えー、という訳で、今日からあなた達の戦闘訓練を務めることになりました。神薙シオンです。よろしくお願いします」

 

ゲヘナ学園の訓練場。そこに風紀委員が集まっていた。

彼は風紀委員の前に立って自己紹介をしていた。

彼の発言に、風紀委員たちの間にざわざわとどよめきが広がる。

 

──────

 

『戦闘訓練?別に構いませんが、なんでまた…』

 

『…あなたも知っていると思うけど、ゲヘナの治安はとても悪いの。四六時中どこかしらで問題児が暴れている。みんな頑張ってくれているけど、対処し切れないのが現状なの。』

『ふむ』

 

『そんな時ある噂を耳にしたの。ブラックマーケットに突如として現れた『魔人』。圧倒的な戦闘力で何人もの犯罪者をヴァルキューレ送りにした強者。その人ならば何か現状を打破する手がかりを得られるかもしれないと考えたのよ』

 

『なるほど、理由は分かりました。でも、良いんですか?ゲヘナの風紀委員が、ブラックマーケットの得体の知れない傭兵に頼るとか、それこそ面子丸潰れなんじゃないですか?』

 

『ええ、あなたの言う通りよ。だからアコ…部下にも反対されたわ。それでも、それ以上のメリットをあなたはもたらしてくれる…そう思ったのよ』

 

『なぜ』

 

『強いて言うなら、風紀委員長としての勘よ』

 

『へぇ…』(理由はそれだけじゃないと思うけど…)

 

『…もちろん、報酬は弾むわ。どうかあなたの力を、風紀委員に貸してくれないかしら』

 

『…分かりました。その依頼、受けますよ』

 

『ありがとう。まさか本当に受けてくれるとは思わなかった』

 

『いや、僕としても治安維持組織が強くなるのは願ったり叶ったりですし』

 

『なら、明日ゲヘナ学園に来てもらえるかしら』

 

『分かりました』

 

──────

 

ヒナからの依頼というのはゲヘナ風紀委員会に戦闘訓練をつけることだった。

彼女がシオンに代わり、話を続ける。

 

「『ブラックマーケットの魔人』。その実力は各校の首脳陣も把握している。そんな実力者に訓練をつけてもらうことは、あなた達にとって良い経験になるはずよ」

 

そうは言うものの、風紀委員たちの懐疑的な視線は消えない。

それもそうだろう。シオンも言ったことだが、世間から見れば彼はブラックマーケットの一賞金稼ぎに過ぎない。

いくら強いといっても、そんな人間を安易に信用していいものか測りかねているのだろう。

 

そんな風紀委員たちの様子を見て、ヒナは

 

「神薙シオン」

「ん?」

「訓練の前に、まず私とあなたで戦いましょうか」

「…あー、そういう感じですか?分かりました、いいですよ」

 

◇◇◇◇◇

 

運動場で、ヒナとシオンが向かい合っている。

それを、風紀委員たちはハラハラとした目で見つめている。

どこから嗅ぎつけたのか、中には一般生徒も野次馬として参加していた。

 

「ねぇ、本当に大丈夫なのかな…?」

「大丈夫でしょ、『魔人』さんの実力はヒナ委員長が認めるくらいだし」

「でも相手は委員長だよ?なのに銃も持たないで戦うなんて、しかもあの人ヘイローないし…」

「それは、確かに…」

 

ヒナはゲヘナ学園最強の生徒。キヴォトス最強の一角であり、不良たちから恐れられている。その実力は風紀委員たちがよく知っている。

 

対して、シオンはヘイローの持たない人間。銃弾一発で致命傷になりうる、あまりに脆い肉体。普通に考えて、勝負になどなるはずがない。それが例え、多くの犯罪者を狩った『魔人』であっても。

 

勝てるわけがない。

 

その場にいる全員が彼女の勝利を疑わなかった。

 

「では、始め!」

 

胸の横の部分が開いた特徴的な服を着た生徒が、試合開始の合図をする。

 

瞬間、まるで大砲のような弾幕が、シオンに向かって放たれた。

今までシオンが相手した不良のものとは比べ物にならない威力。

直撃すれば、並大抵の者は為す術なく気絶するだろう。

 

しかし

 

「いない…」

 

火蓋を切ったヒナの初撃。それによって舞い上がった砂埃が晴れると、そこにシオンの姿はなかった。

 

「そこね」

 

彼女の後ろにシオンが回っていた。その気配を即座に察知したヒナは、愛銃を鈍器代わりに振り回す。シオンはそれを受け止め、逆に彼女を放り投げた。

 

彼女は受け身を取り、すぐ追撃しようとする。

だが、それより速く、シオンがヒナに近づく。

 

「ウグッ………」(なんてパワー……ッ!)

 

シオンがヒナの腹部に殴打を食らわせる。

丈夫なキヴォトスの人間の中でも圧倒的に高い耐久力を誇る彼女が、痛みに嗚咽を漏らす。

シオンは更に追撃しようとするがヒナが銃で牽制、距離を取る。

 

彼は攻撃をやめ、服に着いた砂埃を払ってヒナと向かい合う。

 

「…なるほど。やはり貴女は他の人とは違うみたいだ。なら、少し本気を出しましょう」

 

シオンがそう言うと、彼から異様な気配が放たれる。

ヒナには何が起こってるのか分からない。だが放置しておくと絶対に良くないことが起こる。

シオンを止めるため銃撃を再開する。だが…

 

銃弾はシオンを中心に発生した衝撃波で吹き飛ばされてしまい、彼に届くことはなかった。

砂煙が晴れると、そこには。

 

「何それ…」

 

赤い肌。額に生えた角。まるで昔話に登場するような鬼がいた。

 

拡張術式『(しょく)

シオンの手持ちの呪霊を自身に憑依させる拡張術式。疑似的な受肉。

シオンの元々の呪力に加え、呪霊の呪力と術式も使用可能。

 

怪物に変貌したシオンを見て、風紀委員たちが悲鳴を上げる。

ヒナは冷や汗をかきながら、何が来ても対処できるようにシオンから一秒たりとも目を離さない。

シオンが構える。

 

(来る…ッ!!)

 

瞬間、ドォン、と爆発音が鳴ると共にシオンが消えた。僅かな瞬きの間、シオンが距離を詰める。

シオンが殴る。ヒナはそれを銃で防ぐ。だが、ダメージを殺し切ることはできず、後ろに吹き飛ばされてしまう。

 

「クッ………!!」(さっきとは比べ物にならないパワーとスピード…これが、彼の本気…ッ!)

 

吹き飛ばされながら、彼女は空中で体勢を立て直し、銃弾を浴びせる。

それをシオンはものともせず突っ込む。ヒナの頭上まで飛び、彼女を殴り落とす。

勢いよく地面に叩き落とされる。背中の激痛に耐え、銃を杖がわりにして、ヒナは立ち上がる。

そんなヒナをシオンが見下ろしている。

 

(まだだ…この人の本領はこんなものではないはず…)

 

ここまでダメージを負ったのは、ヒナにとって初めてのことだった。

侮っているつもりはなかった。これはあくまで模擬戦で、勝敗に意味はない。

自分の身に危険があれば、すぐに試合を辞めればいい。

だが、生まれて初めての格上との戦いで、ヒナの中に今までにない感情が芽生えていた。

 

負けたくない。この人に勝ちたい。

 

その想いが、彼女を立ち上がらせる。

 

「フーッ、フーッ………」

 

息を整え、銃口をシオンに向ける。彼は避ける素振りも見せず、じっと彼女を見つめている。

何かが自分の体の中を駆け巡るのを感じる。

見える景色がスローモーションに、一分一秒がとても長い時間に。

世界が彼女に置き去りにされる。

 

極度の集中。ゆっくりと、引き金に指をかける。

 

バンッ!

 

銃口から、一発の弾丸が放たれる。シオンはそれを掴もうとして、手のひらを向ける。

しかし…

 

「…なるほど」

 

ボタボタと、赤い血が、地面に滴り落ちる。

銃弾は鬼の剛腕に阻まれることなく、シオンの手を貫いた。

彼がキヴォトスに来て以来、初めての負傷だった。それだけじゃない。

 

(治りが遅いな…)

 

傷口は治癒されることなく、血がドクドクと流れ続けている。

損傷した肉体を治癒するための呪力の流れが乱されている。

ヒナの最後の一撃。それは今までのものと一線を画すものだった。

 

シオンが考えながら止血してると、ヒナが青い顔でこちらを見つめている。

 

「あ、あの…」

「うん?」

「その、手、大丈夫…?」

「ああ、大丈夫ですよ。こんな傷ならすぐに治りますし」

「そ、そうなんだ…なら、良かったけど…」

 

ようやく治癒が完了し、血を拭って綺麗になった手のひらを見せる。

それを見て安心したヒナは、穏やかな表情に戻った。

 

「…で、どうするんですか、勝敗は?」

「私の負けでいいわ。こんなにボロボロにされたもの」

「…すいません」

「良いわ。私が言い出したことだもの。それに、あなたと戦ったことで、私も何か掴めた気がするの」

 

二人が周囲に目を向ける。

観客たちは未だに信じられないといった表情でこちらを見ている。

あの風紀委員長が、キヴォトス最強の一人とされている人が、全力で戦い、そして負けた。

彼女らにとって衝撃的な事実であった。

 

「これで、彼女たちもあなたの実力を認めたのじゃないかしら」

「ええ、そうですね。頑張った甲斐があった」

「そうね…」

 

ヒナが唖然となってる風紀委員たちに向けて声を張り上げる。

 

「本格的な訓練は明日から!各自、自主練を終えた後、解散!!」

『はい!!』

 

そう大きな声で返事をした後、風紀委員たちはそれぞれ持ち場についていった。

 

「という訳だから、明日からよろしく頼むわね」

「ええ、わかりました。ところで、身体は大丈夫ですか?」

「平気…と言いたいところだけど、ここまでダメージを受けたのは初めて。少し安静にしなければいけないわ」

 

ヒナと別れ、シオンは自宅(テント)へ向かって行った。

その道中。

 

(最後の空崎さんの一撃…あれには反転術式の正のエネルギーが込められていた)

 

シオンはヒナとの戦いを振り返っていた。

 

(薄々感じてたけど、ヘイローを持つ人間は反転術式の正のエネルギー、もしくはそれに近いものを身に宿している)

 

(『蝕』を使用している僕の肉体が貫かれたのは呪力を中和されたから。でも、みんながみんなそれを自在に扱えるわけじゃない。実際空崎さんはあそこまで追い詰められてようやく使えるようになった)

 

(もし彼女が、フルパワーで扱えるようになれば………)

 

思わず、身震いする。この世界は自分にとって()()()()()()()()()()()()

新しい世界の謎を一つ解き明かして、彼は自宅へと帰って行った。




拡張術式『蝕』
自身の手持ちの呪霊を憑依させる。
呪霊との一時的な受肉に近い状態になり、呪霊の呪力と術式を使える他
呪霊の身体能力をある程度肉体に反映させることができる。
デメリットは『蝕』使用中他の呪霊を使えなくなること。

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色々なフォントも試してます。
慣れないところはありますがどうか暖かく見守っていただけたら幸いです。

誤字脱字報告、高評価、感想もよろしくお願いします。
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