アフェクション・ランブル(未)   作:咎煮

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大変長らくおたせしました!待っていた方は有難う、待っていない方は一読下されば幸いと言わせてください! ある程度書けたので投稿します!

9/15...加筆修正。



波紋滴静
★邂逅


 禍津滅師。それは世に蔓延る闇の化身たるマガツヒを滅する者。開祖である安倍晴明は卓越した祓術を用いて数多のマガツヒを滅してきた。だがしかし、誰もが彼のように出来る訳ではない。歳を重ねるにつれて彼は自分亡き後の事を考え、ヒトの姿を持ちながらヒトならざる器官を持つ超常の存在ーーアヤカシを味方にする儀式ーー契約を確立させる。

 

そして彼亡き後、禍津滅師は陰陽師という組織と化しマガツヒを滅していき後世に継いでいった。

 

そしてーー現在。

 

 

 

ああああぁ……

 

惑星アストリアにおける五大大陸が一つ、ミズハ。名に恥じぬ水に満ちた都リュウグウに建つ陰陽寮・オトワ支部の境内でうちひしがれる少女が一人。

 

「ど、どうしよう……このままだと白上はオトワを追われる事に!」

 

血相を変えて右往左往する彼女は狐のアヤカシーー白上フブキ。現在におけるアヤカシは昔とは違い、陰陽師と契約を結ぶ事で式となり初めて実力を発揮できるようになる存在。更に経験を積む事により式の中でも高位にあたる式神へと至る。しかし……フブキはどういう訳か陰陽師との契約が出来ていない。契約をしてくれる陰陽師が居ないのではなく……何故か契約の儀式で失敗してしまうのだ。そのせいか陰では落ちこぼれのアヤカシ狐ーー略して落狐又は落猫と呼ばれている。猫と付くのはフブキは狐なのに何処か猫じみてるから……その際は、狐じゃいキック(物理的訂正行為)が炸裂する。

 

 

ああああぁ……誰か白上と契約を交わしてくれませんかあぁ!?」

 

庇護欲を擽られる事間違いなしな涙目で叫ぶが誰も通り掛かる事はなく、境内に虚しく響き渡る。

 

いや、遠目に陰陽師達が気の毒そうに見てはいる。しかしその陰陽師達は既にフブキと契約の儀式を執り行ったことのある者であり失敗している。故に遠目に見る事しか出来ない。同じアヤカシに同じ陰陽師が契約の儀式を執り行う事は危険とされて禁じられている為、一度失敗した陰陽師が彼女に契約の儀式を執り行う事は出来ないからだ。

 

「……神は死にました、白上はおしまいです」

 

ゆらりと立ち上がったフブキはどうせ追放されるなら最後に……と思い、重い足取りで境内を後にした。

 

「はぁ……どうして私だけ……」

 

登りも下りも地獄な一万階段を一段ずつ下りながら深い溜め息をつくフブキとは対照的に空は憎たらしい程の快晴だ。

 

「…………ミオは良いなぁ」

 

一足先に陰陽師と契約を結び、式となった彼女はマガツヒ討伐依頼を受けてオトワ支部を発った。そんな幼馴染みのミオこと大神ミオを羨みながら、こんな快晴の日に旅立てれば良いなと叶わぬ願望を抱きながら……何時しか一番下に着いていた。

 

「……此処も見納め、そして食べ納めですね……」

 

とぼとぼと相変わらず重い足取りで向かった先は食事処ニシキ。フブキは此処の油揚げが好きでよく来店する。

 

「きつねうどんを一つ」

 

暖簾を潜り、店員に出迎えられたフブキは注文をして席につく。空いてる事もあり複数用の席を独り占めだ。程なくして運ばれてきたのはお馴染みのきつねうどん。カップな気分の時もあるが、大体はニシキのきつねうどんの気分だ。店長が同じ狐のアヤカシな事もあり格別な旨さなのだ。

 

「はぁ……」

 

食は癒しの一つ。なのにこれからの事を思うと憂鬱になり……周りの空気を悪くすると分かりながらも溜め息をつくしかない。

 

「……溜め息一つで幸せ二つ失くすと聞いた事がある。それに食事が不味くなるからやめて欲しいものだな」

 

「それは……すいません……ただ、白上だって好きで溜め息をついてる訳じゃないんです……」

 

溜め息に反応し、苦情に近い事を告げてきたのは空いてる事もありフブキと同じく複数用の席を独り占めして肉うどんを啜る青年だった。距離はあるが店内が静かなので溜め息が聞こえてしまったのだ。そしてフブキは好きで溜め息をついていないと返し、青年はそうかと言い、食事を続ける。

 

「……白上、落ちこぼれなんです。オトワ支部に属し、陰陽師と契約を交わし、式となりいつの日か式神になる事に憧れをもって……というかアヤカシなら誰もが式になる事は憧れです……でも何故か契約を交わしたくても上手くいかず……今日中に陰陽師と契約を交わし、式にならなければ追放される事が決まりまして……」

 

「…………追放か、穏やかじゃないな。そんなにお前は駄目なのか?」

 

一人語りを始めたフブキだが、ちゃんと聞いてくれていたのか青年が眉間にシワを寄せて訊ねる。おまけに箸を置き食事の手を止めていた。

 

「昔と違い、今は陰陽師もアヤカシも多いですから……落ちこぼれは淘汰される運命なんですよ」

 

そんな青年からの訊ねに対しフブキは自嘲するように返す。

 

「……追放された後に行くあてはあるのか?」

 

「……まあ、何とかなりますよ……自由気ままに旅をするのも悪くないですしね……」

 

「…………まあ、まだ半日はある。足掻いてみるといいんじゃないか? 諦めなければ道は開けると言うしな……取り敢えず……伸びて冷める前に食べた方がいいぞ」

 

「はい、最後まで足掻いてみますよ。話を聞いてくれて有難うございます」

 

「……むぐむぐ(勝手に話し出したのはそっちなんだが、余計な事を言わない方がよさそうだな)」

 

青年の足掻いてみればいいという言葉に前向きな返答をしたフブキは言われるがままにきつねうどんを食べ始め、青年もまた食べるのを再開し、暫く啜る音が店内で聞こえた。

 

「じゃ、俺はこれで……」

 

 

程なくして椅子に掛けていた羽織を小脇に抱えて青年は立ち去り、フブキはその背を無意識に見つめーーまだ熱かった油揚げに舌を火傷した。

 

ーー◆ーー

 

ーーあっちゅ!?

 

 

「……今、あいつの声がしたような…………いや、違うか……」

 

ニシキを出た青年は羽織を纏いながら、知り合いの声が店内から聞こえた気がして冷や汗をかいたが、店内に居なかったし、と気のせいだと思う事にして足早にその場を去った。

 

「……これは俺自身の為だ」

 

独り言のようで何処か言い聞かせるように呟きながら青年は案内板に従って歩を進め、止まる。見上げた先は巨大な滝があり、滝壺からは噴き上がる水柱があり、様々な高さの水柱によって浮いた石があった。近くにある案内板には……『陰陽寮オトワ支部はこの上です』と書かれていた。どうやら上に行くには噴き上がる水柱のタイミングを見計らって浮き石を乗り継いでいかないとダメなようだ。

 

 

「……マジ?」

 

青年の目が死んだ瞬間だった。

 

ーー◆ーー

 

ーーウワアアァ……ッテウズシォッ!? ガボボボッ!

 

 

「……? 今、リュウグウ名物……ホップステップダァイ、の方から誰かの悲鳴が? しかも聞いた事があるような声ですね?」

 

ニシキを出てこれからどうしようかと物思いに耽っていたフブキは狐耳をピクピクさせて最近聞いたような声が遠くからして首を傾げる。

 

 

「ーーくっそぉお、人を排泄物みたいに! リベンジしてやらあぁ!」

 

「……えっと、さっきの旅人さん? ずぶ濡れでしたし、あの言葉……ホップステップダァイで落ちたんですね……」

 

程なくして徐々に近づいてくる怒声と走る音がする方に目を向けるとあっという間に通り過ぎていった青年にフブキは納得して頷き、片合掌で見送った。それから数分もしない内に再びホップステップダァイから『チックショオォ!』という悲鳴が聞こえたのは言うまでもない。

 

ーースイナアァン!

ーーオボエテロオォ!

ーーコノママデハスマサンゾォ!

ーーアアアアァ!

ーーコレモマタサダメェ!

ーーオレガナニヲシタァ!

ーーヘルプ、ミィイ!

ーーモチャネポレッ!

ーーエゾゲマツッ!

ーーエンダアアアァ!

ーー!ーー!?ーーッ☆

 

 

「……えぇ? いくらなんでも落ちすぎでは?」

 

落下回数××回目。落ちた者への洗礼による渦潮退去刑に処されて都外にある湖へ排出されていってはホップステップダァイへ挑んでいく青年を見送り続けていたフブキは唖然としていた。

 

「……これ以上は、可哀想過ぎるというかなんというか……見てられませんね……」

 

「ーー○□△☆★!

 

排出され過ぎておかしくなったのか遂に人語を放棄して挑んでいった青年をフブキは肩を竦めて追い掛けーー

 

ーーアイルビーバアァック……

 

 

着いたと同時にまた排出されていったので戻って来るのを待ち、水柱をいい高さで凍らせたフブキは苦笑して青年の手を引いて浮き石を乗り継ぎオトワ支部へと連れていった。

 

「……はい、着きましたよ。此処がミズハ大陸にある陰陽寮・オトワ支部です」

 

「…………助かった、有難う。今度お礼をする」

 

「……だったら、いえ…………気にしないでください。ちょっと見てられなかっただけなので……お礼をされる程の事ではないですから……では、白上は失礼しますね」

 

青年のお礼発言に羽織を見つめ、何かを言いかけて止めたフブキはそのまま上る際に凍らせた水柱の氷を溶かすと滝にダイブして見えなくなった。青年は陰陽寮から帰る時に滝にダイブしないといけないのかと顔を強張らせ……気持ちを切り替えて頬を軽く叩くと境内に足を踏み入れた。

 

 

「ーー陰陽寮、オトワ支部陰陽頭の柳宮イズナだ。その羽織を見る限りではヒグニ支部の者と認識しているが……遠路遙々、他支部を訪れた理由を聞こう」

 

境内に居た陰陽師に陰陽頭へ会わせて欲しいと頼んだ青年は最初こそ訝しげに見られたが、羽織で素性が分かったらしく、会わせてもらえる事となりーー現在、滴と波紋が描かれた青色の羽織を身に纏う金髪の幼狐こと柳宮イズナと対面していた。幼いのに陰陽頭に就任している事から見た目にそぐわない実力者か見た目よりも高齢なのかもしれない。ちなみに支部の名前=陰陽頭の姓と一致するとは限らない。故にオトワ支部なのに陰陽頭が柳宮という姓でも問題なかったりする。

 

「初めまして、柳宮イズナ。俺はトウヤ。此処には……スカウトに来た」

 

「スカウト? いや待て……姓はなく、ただのトウヤ……か?」

 

「……やっぱり気になるか。この羽織を纏ってるのに姓無しって言うのは……」

 

「訳ありなら無理にとは言わんが……」

 

スカウトと聞き、首を傾げるイズナ。そして姓を持たない事を訝しむ。対するトウヤは羽織を軽く叩くと苦笑して返す。それを見たイズナは首を振り、無理に言わなくていいと告げる。

 

「いや、まあ……隠す程の事じゃないし……言うよ。単純に俺を拾ってくれたのと姓を与えてくれる人が居なかった、ただそれだけだ」

 

「む? それなら……何故ヒグニ支部の羽織を? 私の記憶によればその羽織は所属している陰陽頭から見込みある者に授けられるものであり、同時に責任がある立場になる事を表す。故に姓を与えていないのはおかしいぞ?」

 

「そうなんだよな……ただ、チハヤが言うには姓は然るべき時に与えるとさ……なのに羽織を贈られた上に見聞を広めてきなさい、後は特定の人物をスカウトしてくるように、と送り出されたのは謎なんだが……」

 

「…………成る程、可愛い子には旅をさせよ理論か……」

 

疑問だ、と首を傾げるトウヤを尻目にイズナは羽織を贈った理由に何処か微笑ましそうに頷いた。

 

「……ところで、スカウトの話だが」

 

「ああ、そうだったな……して、お主は誰をスカウトする気だ? 特定の人物と言っておったから決まってはいそうだが、流石に羽織持ちを連れていかれるのは困る……だからといって私を望むのはもっとダメだぞ?」

 

「いや、陰陽頭をスカウトとかあり得ないだろ……前陰陽頭ならまだしも……チハヤがスカウトするように言ってたのはただ一人。自分を白上とか言ってた子だな」

 

話を戻し、スカウトの件について言うトウヤにイズナは頷き、誰をスカウトするのかと訊ねる。本気か冗談かは不明だが自身を含める始末。トウヤは半目で何言ってるんだと言外に咎め、少し前に会った彼女を望んだ。

 

「……自分を白上、という事は白上フブキの事だな……ううむ、理由を聞いてもいいか?」

 

スカウト対象がフブキだと知り、イズナは契約出来ない事でこのままだと追放するしかないと告げたフブキを思い……理由を訊ねる。

 

 

「……白上フブキは此処を追放されるかもしれないんだろ? まだ半日はあるとはいえ、恐らく駄目だろう。そうなって一人にさせたくないというか……その、ヒグニならもしかしてと思ったんだ。ある意味、変わり者ばかりだしな……」

 

「ふむ……訳を色々言ってるみたいだが早い話、お主は白上フブキを気に入ったのだろう?」

 

「何言ってるんだこのロリ女狐俺が白上フブキを気に入っただと馬鹿も休み休み言え確かに可愛いしもふもふだし一緒に居て楽しそうだしゆくゆくは白上トウヤになるのも悪い気はしないというか……etc.」

 

理由を聞いたイズナだが、後付け感が凄まじく直球ーーお前、好きになったな?ーーをぶつけ、トウヤは分かりやすくワンブレスで自爆した。

 

「うむ、明朝までに契約出来なかったらお主に白上フブキを託そう。どうか……幸せにしてやってくれ」

 

「言い方があれだが……託された」




前と変わりすぎじゃね?と思われた方あなたは正しい……書いてて旧作の影も形も無くなってるやんと思いましたよ……だがそれもまたよし!
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