テイク2と言ってから暫くして再び扉が開く。先程醜態を晒したからか顔は赤いが身嗜みは整えた少女が中に入るよう促す。トウヤは一応周りに誰も居ない事を確認してから中へとお邪魔する。
「…………みすぼらしいもの見せてごめんね?」
「……いや」
トウヤはみすぼらしくてと言う少女を見てみすぼらしいとは何か考え、一瞬だけ意識が宇宙にとんだ。どう見ても目の前の少女はみすぼらしくないからだ。スタイルの事を言うならフブキの方が寧ろみすぼらしいだろう。
「ううん、慰めはいらないよ……ウチがみすぼらしいから陰陽師君は居なくなったし……」
「……つまり何か? お前が契約した陰陽師は別のスタイル抜群なアヤカシに乗り換えたとでも? はっ、馬鹿馬鹿しい」
「むっ……それは流石に聞き捨てならないよ! 陰陽師君の何を君が知ってるというの!」
鼻で嘲笑い、それを聞いた少女が伏せていた顔を上げて拳を握る。
「俺も陰陽師を目指してるから分かるんだよ。アヤカシと陰陽師が契約を成立させる際に何を重要視するのかを理解してるか?」
「陰陽師がアヤカシに霊力を注ぐ事で契約を成すから……質?」
「それもあるが、一番重要視するのは相性だ。陰陽師の霊力とアヤカシが持つ妖力が均等にならなければ契約は成立しないし劣る側は爆発する」
「ば、爆発するの!?」
初耳だとばかりに狼耳をピンと立てる少女にトウヤは頷く。
「此処に契約が成立してる以上、お前と陰陽師の相性は抜群と証明しているし……何より、俺が知る陰陽師はパートナーを見捨てない。いや、俺が知らないだけで見捨てる事があるのか?」
相性は抜群と言われて照れたように頬をかく少女だが、最後の言葉を聞いて不安になった。
「ま、何れにしろ……お前の契約した陰陽師に会ってみないと真相は分からないな……で、何処に居る?」
「……分からない。砂漠でウチを置いて居なくなって……」
「居なくなって……? ちょっと待て……何でそれで見捨てられた事になる? 俺はてっきり他にいい子が居たから君との契約は此処までだ的な事を言って別れたものだとばかり……はぁ、だとしたらまた話は変わってくるぞ……」
「ご、ごめんね……何かウチ、君に迷惑ばかり掛けてる気がするね」
思っていたのと違う状況に頭を抱えるトウヤに少女は眉毛をハの字にして何度も頭を下げる。トウヤは気にするなと手で制する。
「……取り敢えず砂漠に向かってみるか。準備を済ませてからまた合流するとして……忘れてた。俺はトウヤだ」
「あ……ウチは大神ミオ。何か……ごめんね?」
「いや、謝らなくていいって……それより今更な事を聞くが、何で大神はあんな格好で扉を開けた。変質者が表に居たらどうなってたか分からないぞ」
「心配してる? えっと……ウチはあの商人から……もう少ししたらウチと同じように白上フブキを捜してる人が来ると聞いてたから、同性だとばかり……それにフブキって意外とサプライズ好きだから、ウチが……あう」
「……大体分かった。サプライズ返しするつもりが空回りしてしまったんだな……俺の方こそノックした際に名乗るべきだったな……悪かった」
醜態を晒した事を思い出したのか涙目になるミオにトウヤは自分の方も悪かったと頭を下げる。
「…………(そういえば白上がミオに会えば協力してくれる的な事を言ってたが、頼りにならなさそうだなぁ)」
頭を下げながら、トウヤは祓無施の下りでフブキがミオなら協力してくれる的な事を言っていたと思い出したが、自分をみすぼらしいとか言ったり、空回りしたりと……頼りなさげな姿を見て少しだけフブキの人選に物申したい気持ちになった。
一度ミオと別れたトウヤは砂漠に向かう前に水分等を確保してミオが来るのを待っていた。
「ーーお待たせ、行こうか」
「っ!?」
トウヤは再び意識を一瞬だけ宇宙にとばす。それをさせた者はミオなのだが……何やら雰囲気というか纏っているオーラがまるで違う。例えるなら家ではズボラなのに外だと王子様と化すアレだ。今のミオは正にそれでありトウヤは妙な感覚に襲われた。
「どうかした?」
「あ、いや……何でもない。というか大神……何か格好いいな」
「格好いいな、はないかな……格好いいはトウヤ君に言うべき言葉であって……ウチは、うん……可愛いとかの方がいいから」
「そ、そうか……」
何だこの感じ、とトウヤはこの感覚に戸惑いを隠せない。そのままミオに先導される形でトウヤは砂漠に足を踏み入れた。
補足。ミオはフブキが来ると思ったから敢えてあんな格好で出ただけで同性相手でもあんな格好はしない。というか外面は良いが中身がアレなやつって居るよね。
いやまあ、本作のミオがそうとは言ってないが……何故家だとアレなのかは後に明かします。