ミオと共に砂漠に足を踏み入れたトウヤは容赦なく照りつける陽ざしに内心で悪態をつきながらミオの後に続いていた。
「暑い?」
「……暑くないと言える奴は火山にでも棲んでるんじゃないか?」
「今日はまだましだよ?」
「マジか……ヒグニでも此処まで暑くないぞ」
足を止め、振り返るミオに訊ねられたトウヤは暑いと思っている事を隠さず答え、序でに涼しい顔をしているミオに対して言外に火山棲みかと伝える。
「ヒグニ……そっか、トウヤ君はヒノモト出身なんだね。後……ウチはミズハ出身だし……暑いよ、ほら」
……ミズハでの死闘の末にトウヤは羽織を無くしているしボロボロになった。その為、今の服装はメグリが用意してくれたフートに合わせた物になっている。その為か見た目からはヒノモト出身とは分からない。言われて分かったミオは頷き、火山棲みではないと否定した上に襟元をはだけて肌を見せてきた。
「お、大神!?」
「……汗、かいてるの見える?」
「…………あ、ああ」
「だから、ウチも暑いよ……」
慌てふためくトウヤにミオは女慣れしてる訳じゃない? じゃあ何であの時は冷静にテイク2と言ったの? と内心で首を傾げつつ……暑さからか恥ずかしさからか、赤くなった顔でそっと襟元を正した。
「……暑いと言ってると暑くなるから……気持ちの問題だよ、頑張ろう」
「ああ……正論だな…………!」
励まされた事でトウヤはミズハでは見せないようにしていた素の自分を恥じるように、又は隠すように頬を両手で叩くと気合いを入れ直す。
「もう、少し……うん…………トウヤ君、此処だよ。此処で陰陽師君は居なくなったの」
暑さに耐えながら進む事暫く。不意に立ち止まったミオに続いて足を止める。そこは代わり映えのしない砂一面の光景。サボテン等があったりといった何かしらの変化すらない。
「……何もないな」
「うん、何もないの。でも急に陰陽師君は居なくなった」
そう言って顔を伏せるミオ。トウヤはヒグニでの日々で時々今みたいに顔を伏せた人によくやる励ましをしようとミオの頭に手を乗せようとしーー
「トウヤ君!」
「!?」
何かを察したのかミオにタックルされて押し倒される。直後、二人の頭上をアームみたいなものが突き抜けていくのが見えた。
「これ、は……」
「オートマタ……何故かこの大陸にだけ存在する敵だよ」
起き上がると駆動音が聞こえ、ミオがオートマタと呼んだ複数の機械が姿を現す。ヒグニで見るからくり人形とは異なり此方はロボットじみた作りだ。
「大神、こいつらは何処から現れたと思う?」
「……トウヤ君が何を言いたいか分かるけど、オートマタは神出鬼没で砂漠に居る時だけ遭遇するの……」
羽織を、仲間を失っても残っていたアゾットを聖花が散り、役目をほぼ果たせていない鞘から引き抜くーーそれが止めとなり鞘だったものはバラバラに切れて砂地に落ちた。
「……それ、凄いね」
解放された喜びを表すかのように樋に走る血脈と刀身を包む漆黒の輝きを放つアゾットを目の当たりにしたミオが思わず呟きながら拳を打ち付ける。打ち付けた両手を炎が包み込み、形を変えていく。炎が消えるとミオの両手には手首までを覆うオープンフィンガーグローブが装着されていた。恐らくこれが彼女の戦闘スタイルなのだろう。
「先手必勝、紅蓮拳ッ!」
瞬時に距離を詰めたミオは回転を加えた正拳突きを放つ。回転による摩擦で炎が激しく巻き起こるおまけつき。トウヤにはフブキの碧崩と重なって見えた。
「螺旋降牙!」
ミオの戦闘に意識を奪われていたが駆動音でオートマタが接近したのに気づいたトウヤは慌てずアゾットを突き刺し、抉る。力任せにすると固かったり武器が折れてしまう為、てこの原理を利用して両断する。尚……さくらみこの『桜渦絶空』という技名を自己流にアレンジした技で本来は桜の花弁を渦状に回転させて勢いを増やしてぶつける事で抉る上に貫通させてしまう……所謂螺旋丸だったりする。
「続けてくらえ、ジェミニストライク!」
一瞬、トウヤがブレたかと思えば負傷したオートマタの体にバツ印の軌跡が走り、両断される。これもまたフワモコの息があった『BAUBAU コンビネーション』という技名を自己流にアレンジした技であり、一人でフワモコみたいな二人分のダメを与えるにはどうすればいいか。そう考えたトウヤはただ速く動いて切り裂くという考えに至った。その結果、相手からすれば一人しか居ない筈なのに二人(バツ印の軌跡)から攻撃されたと錯覚する。尚、フワモコには通じなかった上にフワワかモココのどちらかが防ぎ、空いた方にボコられる結果となった。
「あ、片付いた?」
「俺が一体倒す間に残り全てをスクラップにするだと……っ!」
「トウヤ君は無駄が多いんだよ」
「ぐ……否定出来ない!」
決して格好つけてる訳ではなく、みこ達の技を真似るならどうしても無駄に動く必要があるんだと言いたいのを堪えて握った拳を開いてネジ等の残骸を砂地に落とすミオを見てへこむトウヤだった。
「しかし、大神の動き方、白上とほぼ同じだな……流派とかそういうのが一緒だったりするのか?」
「うーん……別に隠す事でもないから言うけどね? ウチはフブキの師匠なんだよ」
「なん、だと……って事は碧崩はあの紅蓮拳を白上が自己流にアレンジした技って事か……」
友達とか同僚かと思っていたトウヤは予想外のカミングアウトに面食らい、フブキの碧崩とミオの紅蓮拳が重なって見えた理由が分かって頷いた。
「……アレンジは必要に応じてだね。そもそも属性が異なるから……」
「まあ、そうだな……白上は氷だったが大神は炎……似ていても本質が異なるからな。俺がアレンジしたあれこれも同じだし」
そう言って頷くトウヤはフブキが静でミオが動みたいな感じだとも思った。それはやはり氷と炎の本質から来るものだろう。
「……。仮に陰陽師が消えた理由がオートマタなら出現箇所を探せば見つける事が出来ると考えていたんだが」
「やっぱりそう考えてたんだ……うん、ごめん……それはウチが既に実践してるんよ」
オートマタが現れただろう箇所には穴が開いていた。そこから出たのならと思い降りようとしたが、ミオに広い空洞があるだけで何も無かったと言われて止めた。そして自分の考えていた事を伝えると先程の何を言いたいか分かるといった理由をミオは答えた。
……それから何度かオートマタの襲撃に遭い、破壊している内に陽が沈み始める。夜の砂漠は危険だというミオに帰還を提案されたトウヤは頷き都に戻る事にした。
……アゾットは何故か章が進むにつれて邪悪度が増す模様。ゲーム風に言えばアゾット→アゾットⅡ→アゾットⅢみたいな感じに……しかも抑えてた鞘が役目を果たせなくなったから仮に使い手を侵食するようなタイプだとヤバイ。
後、ミオは体術メイン。フブキの技は大抵ミオの真似事。威力はイーブン。