オートマタとの戦闘を経た後、陽が沈み始めた事でその日の探索を切り上げたトウヤとミオ。
「じゃあ、また明日……此処に集合でいいかな?」
「ああ、それでいい」
都に着くと西側出口の前で別れる。粗方探索はしたが、まだ十分ではないと判断してだろう。ちなみに南側出口から出て暫くするとトウヤが流れ着いた岸辺があったりする。
「皆は無事だろうか……」
ミオと別れたトウヤは陰陽寮に向かう。メグリに助けられた時は当然無一文であり、砂漠よりはマシとはいえ都の何処かで野宿は自殺行為。そんな時にメグリが善意で陰陽寮の一室を貸してくれたのだ。
「……俺はヒモじゃない」
貸してくれた一室に入り、畳んでいた御座を敷き、横になる。思わず呟いてしまった一言だがメグリから銭を渡されている現状では説得力はない。尤も不定期で行われる二人の授業をしてからは日勤手当みたいなものになっているが。
「……はぁ」
ある程度懐が温かくなったから都で宿でも、と思った事があるしメグリにも実際に言った。だがそれを聞いたメグリは足りなかった? と日々渡している倍の銭の入った巾着袋を取り出す始末。言外に金なら沢山やるから此処から出るなという脅迫じみたものを感じて身震いしたのは言うまでもない。思わず溜め息が出てしまうのも無理はない。
「…………」
時刻は深夜。廊下を歩く足音に何時ものように目を覚ましたトウヤは体を起こし、廊下に繋がる扉を少し開ける。暗がりでも目立つ赤い眼、何処か疲れたような足取りでメグリがトウヤが借りてる一室を通り過ぎていく。暫くして遠くの方で扉が開く音と閉まる音が聞こえたのを確認して扉をゆっくりと音を立てずに閉める。
「いつもこんな遅くまで何処に行ってるんだろうな……それにあんな疲れたような足取りになるまで……」
気にはなるが、他人が踏み込んでいいようなものか判断できないトウヤはせめて目的地へ無事に着けるようにこうして見守っていたのだ。倒れたら直ぐに助けれるように……ちなみにメグリは寮長室と呼ばれる場所を寝床にしている。一度気になって向かった先に寮長室と書かれたプレートが掛かっていたから分かったのだ。尚、不在時にはこれでもかとロープやら鎖やらに加えて複数の南京錠で施錠されている。
ーー☆ーー
真新しい学舎の形をした陰陽寮を前に二人の少女が目を輝かせていた。
「此処が今日から私達の城になるんだね! ◼◼◼ちゃん!」
「城というのは適切な表現じゃないと思いますし浮わついた気持ちで居ると痛い目を見ますよ◼◼◼◼後輩」
「◼◼◼ちゃんは固すぎなんだよぉ……此処みたいに柔らかくならないと!」
「んあっ!? いきなり先輩の胸を揉むとか何を考えてるんですか!」
「痛い痛い! 武器は反則だよ!」
一人は蒼い長髪に同じ青い両目。後……低身長だが巨乳……ロリ巨乳だろうか。もう一人は赤い短髪のーーウルフカットってやつだろうーー赤い両目。後……高身長だが胸は控えめに見える。赤い髪の少女からすればスキンシップなのだろうが、セクハラにしか見えない。その後に反撃されて涙目になっているが……
ただ、未来に希望を持っていたのは間違いなかった。
「◼◼◼ちゃん!」
「っ、フートから風が失われた? このままだと……!」
何が起きたのか分からないまま崩壊は突然訪れた。
「……◼◼◼◼後輩、私は先輩です……だから、守るんです」
「嫌だ……嫌だよ、◼◼◼ちゃん!」
「全く……まるで大きな子供ですね……最後くらい……」
ーー☆ーー
「…………夢、か?」
窓から差し込む陽の眩しさに目を開けるトウヤ。夢にしてはやけに現実味があると、メグリのある部位が似てないと失礼な事を考えながら体を起こす。
「……あつっ」
朝は涼しいのに昼間みたいな暑さに手で仰ぎ、風を送りながら壁掛け時計に目を向ける。時刻は正午を指していた……どうやら寝過ごしたみたいだ。
「……もう昼過ぎてるよ?」
「悪い……」
待ち合わせ場所に急いで向かったトウヤ。流石に居ないだろうと思っていたがミオは居た。トウヤに気づいたミオは微笑を浮かべながら言った。トウヤは暑いのに態々待たなくても、や一人では行かないのか、という言葉を呑み込むと遅れたのは事実なので素直に謝った。
「じゃあ……行こう」
「あ、ああ……」
謝罪を受け入れ、頷いたミオは砂漠へ歩みを進める。昨日と違うのは握られた手。トウヤから握ったのではなくミオの方から握ってきて引かれる形だ。
「今日は……手掛かりが見つかるといいね」
「だな……」
握られた手から伝わる意識しなければ分からない程の小さな震え。それに気づいたトウヤは早く何かしらの手掛かりを見つけないとなと改めて強く決意をした。
メグリとミオの共通点は寂しいという事。そんな時にトウヤと触れ合ったら、ねぇ……