アフェクション・ランブル(未)   作:咎煮

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以前のだとぐちゃぐちゃになったので……書き直しました。流れは変わりません……

9/15...加筆修正。


★商人

 一夜明けた翌朝。目を覚ましたトウヤは抱きついてたリンを見て驚いたり慌てる事はなく、ただ頭を撫でた。

 

「……ん、ご主人様おはよう」

 

「ああ、おはよう」

 

まるでそうする事が当たり前だとばかりに接するトウヤにリンは嬉しそうに額を胸元に擦り付けた。

 

「ご飯作るから離してくれるか?」

 

「うん」

 

素直に離れるリンにトウヤは起き上がり、軽く家を見渡して歩き出す。初めて来た筈なのに調理器具や食材がある場所に迷いなく進むと手慣れた動作で調理を始めた。それを見たリンはご主人様が帰ってきた事をより一層強く感じて二又の尻尾を振るのだった。

 

「出来たぞ。といっても簡単なものだけどな……」

 

鯖の塩焼きに味噌汁。そして白米を茶碗によそい、お盆に載せてリンの元まで運ぶ。骨折してるので無理に動かせる訳にはいかないと配慮したのだろう。焼き魚なのは猫だけに……と思われる。

 

「……鯖」

 

「鯖、好きだろ?(鯵とか秋刀魚もあったけど何故か鯖を選んでたんだよな……嫌いとか言われたらどうしよう)」

 

「うん、好き……」

 

「あ、もしかして骨を気にしてるか? 喉に刺さるからなアレ……でもカルシウムは大事だぞ。無理なら取るけど……どうする?」

 

好きと言いつつ手を伸ばさないリンにトウヤは過去の経験から骨を気にしてると思っての発言だった。

 

「大丈夫……喉に刺さったらご飯を呑む……それにいつまでも子供じゃないから」

 

「そうか? なら、食べようか」

 

自分の分も持ってきて揃って手を合わせ……

 

『いただきます』

 

そう言ってから食べ始めた。

 

「んぐっ! 喉に骨がっ……!」

 

「……」

 

ちなみに喉に骨が刺さったのは言った側のトウヤだけでリンは噛み砕いて普通に呑んでいた。人とアヤカシでは体の作りが違うか、単純にトウヤの食べ方が上手くないだけか……

 

 

「ご主人様、着替えさせて」

 

「えぇ……? 流石にそれはちょっと……おかゆんか白上を呼んでくる!」

 

「……あ」

 

食事を終えた後の事。初対面から今まで着ていたのは寝間着か部屋着かは不明だが、くの一が着てそうな服を見せて頼むリンにトウヤは顔を赤くして逃げ出した。それを見たリンは小さく笑う。

 

 

「……距離感がおかしい。ご主人様呼びだけでこうも積極的になるのか……好きに呼べといったのは早まったか? 物の配置がヤマトにある自宅と同じだったから迷わず動けたし、あの対応もヒグニでは珍しくないし……撫でるのは……まあ、あの双子がなぁ……」

 

リンの家を飛び出したトウヤは里の何処かに居るだろうフブキかおかゆを捜して歩きながら考えていた。……先の一幕はヤマトやヒグニでの日々がリンにとっての日常と偶然にも一致してたらしい。本人が聞いてたらハイライトが無くなりそうで怖い。

 

「とはいえ……このままではよくないか……俺は涼風が言うようなご主人様じゃない……ただ、おかゆんにはああ言ったけど記憶喪失だからもしかしたらって事もある訳で……何とかして思い出せないかなぁ……」

 

自分を通してご主人様とやらを見てるのか、或いは瓜二つなのか……世界には同じ顔をした人が三人居ると云われてるから尚更だ。仮にヒグニの面子が三人も居たら……とトウヤは想像してみたが、ゾッとしたので止めた。無理もないだろう。キャラが濃いというより一人でも手一杯なのだ。

 

「……この里に居る間だけでもご主人様を演じておくか……」

 

……悩んだ末に出したのは先伸ばしだった。

 

 

「……あれ、シオン?」

 

「シオンとは誰の事だ? 俺はトウヤなんだが……」

 

おかゆとフブキを捜して里中を歩いていた時……聞き慣れない名前で呼ばれつい返したトウヤ。呼んだ者は栗毛の髪を一つ結びに垂らした猫耳の少女。巨大なリュックサックを背負っている姿を見るに旅行者か商人だろうか?

 

「人違い……か。うん、そうだよね……シオンは十年前に失踪したし……それにあの襲撃が重なってる事から失踪したのは比喩で本当はもう……」

 

「……そんなに似てるか?」

 

目に見えて落ち込む少女にトウヤは今言うべき言葉ではないと思いながら訊ねてしまった。案の定、少女は落ち込んでる時に掛ける言葉は他にあるだろと言わんばかりのジト目をしていたが溜め息をつくと答えてくれた。

 

「はぁ……似てるかと聞かれたら……髪色とかの違いはあるけど、その鋭い目付きは同じだね」

 

「……俺みたいな目付きをした人なら捜せば一人くらいは居そうな気もするが、まあ……勘違いする程に似てるのは分かった」

 

 

「でも私が勘違いするのは異常というか運命を感じる……だからコレ、シオンの代わりにーー3000銭でどう?」

 

「どうって……というかそんな見るからに呪われてそうな短剣、3000銭という格安でも買わないぞ……それに似てるからっていいのかそれ?」

 

少女は背負っていたリュックサックを置くと中を漁り、銀色の短剣を取り出して言った。しかし剣身にある樋には赤い線が脈打ち……生きてるかのようで見るからに普通ではなく、ぶっちゃけると気味が悪い。その事に加えて頼んだ覚えのない代物を売ってきたので引き気味に断った。

 

「呪われてそうな……ってのがシオンの頼みだったのに? これでも苦労したんだよ? 火の中水の中、崖の下……果てには砂漠の中。数え切れない程商売道具を失ったね……ってトウヤには関係ない話だったね」

 

「(関係ないと言うのは簡単だが……彼女の疲労っぷりからするに余程頑張ってくれたんだろうな……それにチハヤも言ってたが商売人は信用が大事だ。此処で要らないと言えば信用されてないと思われるも同然……それは俺にとっても彼女にとっても良くない結果を招きかねない)……素人目から見ても呪われてそうなと一目で分かる代物か……3000銭だったな? って今は持ち合わせが無かった……後で持ってくる」

 

「確かに見るからに丸腰だねーーでも良かった。買ってくれなかったら大赤字だったよ……有難いにゃあ。……でも何で買ってくれたの?」

 

 

買うと聞いて胸を撫で下ろす彼女。でも要らないと言ってたのに買うと考えを改めた事が気になるのか首を傾げて訊ねる。

 

「まあ、要らないのは変わらないが……俺が想像出来ない程に頑張ったんだろう? だから俺は商品を買うというより君の頑張りに金銭を払いたくなった……というか言ってる意味分かるよな?」

 

 

「…………私はラウラ。ラウラ・ケリリ、にゃ。ーーその言葉、私にはよく効く……危うく勘違いしかけたにゃ……」

 

彼女ーーラウラは名乗ると短剣を押し付けるようにして渡した後、走り去ってしまった。その顔は恥ずかしさからか別の理由かで赤かった。

 

「……この短剣どうすればいいんだ? というかまだ支払い済んでないぞ……それに鞘は無いのか? 抜き身とか危ない……何よりこの血管みたいな樋……気持ち悪ぃ……」

 

残されたトウヤは肩を竦めてぼやき……また会った時に支払いと鞘があれば買うか……と決めた。

 

 

「……あ、おかゆん」

 

 抜き身のままだと危ないと羽織で短剣を包んで持ち運ぶ事にして歩いていると漸くおかゆを見つけた。声を掛けようとした時……おかゆ一人じゃないのが見え、咄嗟に木陰に身を潜める。

 

「……被害状況は?」

 

「商人が一人のみだ。油断してたのだろうが……里の状況を知らない訳では無いだろうに……」

 

「どうやって里に……」

 

「通行証を持っていた。レツの書名があった事から馴染みの者だろう」

 

「そう……容態は?」

 

「一命はとりとめたが意識が回復しない……最悪、目を覚まさない可能性もある」

 

おかゆと一緒に居たのは複数の猫耳に尻尾を生やした男女。話の内容からしてつい先程、誰かが何者かに襲われたのだろう。トウヤは商人、一命はとりとめたが意識が回復しない、という言葉に息を呑む。

 

「まだ会って間もないのにお別れとか冗談キツいぞ……ラウラ……っ!」




短剣は某ゲームの武器。けんぞくぅ!

ちなみにおかゆの砕けた骨は妖力の殆どを自己修復力に回して何とか再生しました。ただ完全に治ってないから衝撃を受けると折れます。
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