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フブキに案内されて仮拠点に来たトウヤ達。簡易テントが数個建てられており、鼻を刺激する薬品の臭いがしていた。
「……トウヤ? それにリン……無事だったんだね」
怪我人の手当てをしていたラウラがトウヤ達に気づいて胸を撫で下ろすのが見えた。里に居なかったから安否不明で気が気じゃなかったのかもしれない。
「ああ……リンに連れられて日課をこなしていたんだが……これは酷いな……」
「私は本業じゃないから最低限の事くらいしか出来ない。それでも薬が効いて今は皆落ち着いてる……」
「商品……良かったのか?」
「いい。命には替えられないから。それに……助ける事が出来るのに見捨てるなんて人の心皆無案件」
トウヤはラウラの背負うリュックを見て言った。初めて会った時より小さくなっていた事からかなり奮発したのだろう。赤字どころか大赤字ではないだろうか。それでも無償で商品を提供するのは商人ならまずしない。するとしても何かしらの見返りは求める。何がラウラをそこまで動かすのか……
「……商人らしからぬ行動だと思ってる? トウヤもシオンみたいに分かりやすいね」
「……顔に出てたか? ポーカーフェイスは割と得意なんだが」
思わず顔を触るトウヤ。しかし触った感じではしかめっ面になっていないようだ……
「普通なら分からないけど……私には分かるかな……本当、違うと分かっていても似てるよ……」
「……そう、か」
そう言って遠い目をするラウラにトウヤはそう言う事しか出来なかった。シオンとは一体何者なのか、気になってしまった。それが顔に出てたのかラウラは口を開く。
「……実は私も昔は同じ考えだった。無償で施しを与えるなんて商人としては有り得ないって」
「それが大多数の商人の考えというか教えだから間違っている訳じゃないだろ……それに昔はって事は……」
「うん。今はそう考えてない……損得勘定じゃなくて未来への投資と考えろ、命は金銭で買えない。善意は巡り廻って自分に返ってくる……とシオンは言ったんだ」
「……つまり、シオンは恩人みたいなものか」
自分語りから間接的にハルトの事を話すラウラにトウヤは自分なりに答えを出す。
「……そうだね。シオンの言葉が無かったら私は多分…………ごめん、考えたくない」
「すまん……」
あの時ああしてなかったらどうなっていたか、それを少し考えたのかラウラは頭を左右に振って考えを払う。トウヤはトウヤで何かがあったのか謝った。
「まあ、結果的に大成してるからシオンの教えは間違ってなかった……」
「まあ、そうだな……っと、そういえばリンがやけに静かだな……」
「うにゃぁあ……zz」
「寝てるね……もしかして疲れたのかな……」
そう言って優しい笑みを浮かべて頬を軽くつつくラウラ。日課から里の惨事、おまけにトウヤの超機動で知らない内に疲れが溜まっていたのかもしれない。
「ーーじゃあ、此処からは大人の時間ですね」
リンをラウラが借りている簡易テントに寝かせた後、何処か少し疲れてるように見えるフブキが声を掛けてきた。
「だな」
「言い方が狙ってるように聞こえるけど……私だけ?」
大人の、発言にラウラがジト目をトウヤに向けてきたが、トウヤは襲撃云々の話し合いだから大人の時間で間違いはないだろと返した。
「……普通はどきどきするものじゃないの? あれ、私がおかしいの?」
「悪いな……そういうのは色ボケイヤラシストピンクコヨーテに散々やられて慣れてるんだ……慣れたくなかったがな」
「白上的には複雑な気分です……」
何処か残念そうな、ホッとしたような……そんな表情を浮かべるフブキだった。
その後、フブキから襲撃された時の状況を聞き、無事だった里長から襲撃者の特徴を聞いたトウヤ達は再度襲撃される可能性を考えて寝ずの番をする事にした。いざ戦闘になればフブキやラウラが主力になると考え、二人には先に休んでもらい、トウヤが起きる事になった。
「……しかし、里の作りがそういうものなのか……時間の変化が分かりにくいな……今は午後8時なのに明るいんだもんな……」
夜でも日中と変わらない明るさを見せる里の風景にトウヤは一人呟くと暇なのか手頃な枝を使って宙に何かを描き始めた。
「……悪戯好きの番犬二人、アビスゲートじゃないよアビスガード。ふわふわでもこもこなBAUBAUBAU……そんな二人はフワワとモココ~」
宙に描いてるので形には残らないが、歌いながらトウヤが描いたのは陰陽寮ヒグニに住む狗のアヤカシで双子のフワワとモココ。いつも一緒に居るからフワモコと呼んでいる。
「……はぁ」
いつも悪戯されていたからか、離れて悪戯されない事を寂しく思ったのか溜め息をつく。夜で、一人というのがより一層思いを強くしているのかもしれない。
「……なあ、チハヤ。見聞を広める為に旅立ったけど、本当に俺一人じゃないと駄目だったのか?」
フワモコを切っ掛けに考えないようにしていた事まで考えてつい、見聞を広める為にと送り出したチハヤに訊ねる。当然返答はない。
「……止めよう。こんな事を考えてたらダメになる……それよりこれからの事を考えーー」
るか、と言い終わる前にラウラ達が休んでいる簡易テントから物音がした。
「ラウラ? 白上? どうした?」
枝を放り投げ、立ち上がると簡易テントの前に立って呼び掛ける。しかし聞こえてきたのは苦悶の声であり、ただ事ではないと思ったトウヤはテントの中に入った。
「っ……ぅあ……ぁ、音、音が……っ」
寝ているのにリンが苦しそうに呻き声をあげ、身を捩り……フブキとラウラは目を覚ましていたが頭を抑えてのたうち回っていた。
「……リン!?」
音、と聞いて咄嗟に両手で耳を押さえるトウヤ。だがその表情は音なんて聞こえないが? と不思議な感じだ。
「……これ、魔奏ですよ……トウヤさんの表情と私達の表情を見比べれば分かります……っ」
「にゃあ……アヤカシにだけ聞こえる音……っ! 不快感がする……!」
二人は自分の両手を使って耳を押さえていた。しかし顔は険しく辛そうだ……トウヤはアヤカシにだけ聞こえる音と聞いてそんなものがあるのかと勉強になると内心で頷く一方、音を出して苦しめる奴ボコすと誓った。
「白上、ラウラ! 俺には聞こえないから教えてくれ! 聞こえてくるのはどの辺りだ!?」
どんな音か気にならないと言えば嘘になるが好奇心は捨てろ! と自分を律して訊ねる。
「っ…………音が聞こえてくるのは……」
「にぃ……っ!……レツの墓前……? 何で……そんな場所から……っ」
「っ……分かった! リンを頼む!」
「待っ……て! トウヤ、これ持っていって!」
テントを飛び出す前にラウラに腕を掴まれ、何かを握らされた。トウヤは握らされた物を確認する間も惜しいとばかりに頷くと勢いよく飛び出す。
「……誰の仕業か知らないが、覚悟しろよ!」
午前0時、複数ある簡易テントから聞こえる苦悶の声を背にトウヤは走り出した。
フワモコを何故かアビスゲートとずっと思ってた……アビスゲートは深淵卿だ。
ちなみにトウヤが寂しいと思ってるようにフワモコも寂しく思ってたり……祓無施じゃなかった場合、ホロメンを式にして活躍してたりする。強さ? ……あやラブ原作でいう天地争乱ボスを軽く捻れるくらい。