企業戦士アクシズZZ   作:放置アフロ

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 九部 真(マ・クベ)ヘイト絶賛発動中。


14 アムロ脱走?

 新宿。夜。週末の靖国通り。

 

「はぁ~い、じゃ、マーくん、また来てね~♪」

 

 声音とは裏腹にクラブのママは九部 真(マ・クベ)をタクシー後部座席に無理やり押し込もうとしているように、はた目の浦賀(ウラガン)には見える。このタクシーも浦賀が諭吉を振り回して車道に飛び出し、ようやく止めたのだった。

 九部はというと、「ママ、チュ~。お別れのチュ~」とタコのように口を突き出している。

 浦賀はため息をつき、『歌舞伎町一番街』と赤字で書かれた不夜城の玄関口を振り返る。その看板の下に信じられないものを見た。

 口ひげを生やした会社員風の青年が、制服姿の―おそらく女子高生だろう―少女となにやら話し込んでいる。小柄な少女は背伸びしながら、会社員に胸をすりつけ、顔を寄せるようにしているのだ。

 歌舞伎町が持っている性格、日本屈指の一大ピンク産業拠点ということをかんがみれば、特別珍しい光景でもなんでもない。現役女子高生というのが背徳感をあおってはいるが、最近の性モラルの低下からしても、うなずけることである。

 驚愕の原因はそれが浦賀の知り合いでかつ、彼とも関係浅はかならぬ人物であったためだ。

 

「せ、専務! ちょっとあれ見てください。あそこに営業の」

「なにをしておるのだ、浦賀! 行くぞ。運ちゃん出して」

 

 

 

「まぁさ、コッチ(西暦)に来ちゃったもんはしょうがないんだからさ。おじさんも諦めて第二の人生、楽しんでよ。じゃあね♪」

 

 栗毛の少女は小悪魔的微笑を投げかけ、新宿の雑踏に消えた。

 男は呆然と立ち尽くす。

 

(ここは一体・・・・・・だが)

「お兄さ~ん、遊んでいかな~い♪」

 

 早速、ボディコンスタイルのお姉さんが声をかけてきた。

 

「いや、深くは考えまい! ここが私の新たな戦場、ということかっ!!」

 

 男は財布の中身を確認し、拳を固く握る。

 

「ふむ、では参る!!」

 

 佐備建設営業本部第一課・課長、羅留 嵐馬(らる・らんま)(35)は風俗街のネオンを浴びながら、スキップしていた。 

 

 

 

 

 翌々日の月曜。アクシズ建設の朝礼。

 

「おはようございます。今日は社長が病欠のため、私から業務連絡します」

 

 居並ぶ社員の視線を集めるのは、総務課長兼秘書・入谷 はこべ(イリア・パゾム)である。

 土曜の夜。社長・菅 浜子(ハマーン・カーン)との約束を不可抗力とはいえ、結果的にすっぽかした真島 世路(マシュマー・セロ)は生きた心地がしなかった。だから、浜子(ハマーン)の欠席はつかの間の安堵を真島(マシュマー)にもたらした。

 

 

「さ~て、午前の定期便に行くか」

「あ、あの、お兄ちゃ(マスタ)

「来んな、ナマハゲ」

 

 小休止の喫煙にデスクを立った真島は同じく、さっ、と立ち上がった栗毛の少女・来栖 麻里(マリーダ・クルス)に言い放つ。真島の目が冷たい。

 この二日で麻里(マリーダ)に対する好感度は急降下だった。最近のストーキング行動も遠因ではあるが、やはり一昨日の「かわいいナマハゲ通り魔未遂事件」がトドメを刺した。

 真島が事情聴取から解放されたのは、日付が変わった夜中。所轄の出口でも麻里の養母・神根 風衣(フィー・ジンネマン)が平身低頭だったため、色々とくすぶっている真島もしぶしぶ気持ちを治めた。

 真島と麻里は今年一月にも「一つ屋根の下事件」を起こしている。「これでおアイコ」と言えなくもないが、実際は両事件共、真島にとっては不可抗力である。鬱憤(うっぷん)が溜まるのも無理はない。

 早々にオフィスを抜け、スーツからショートホープを取り出す。一本くわえながら廊下の角を曲がったときだった。

 

 ゴッ!

 

 真島のみぞおちにめり込むボディアッパー。口からホープがこぼれた。それが床に到達する前に続いて膝蹴り。

 

「が、ぐぁ、か、か、か・・・・・・うぇっ」

 

 両膝が砕け、体を「く」の字に深く屈折した真島は額を床に擦りつけながら吐いた。今日は朝食を抜いてきて正解だった。

 その人物がしゃがみ、真島の髪をつかむ。すごい握力はまるで、万力に挟まれたようだった。何本かがブチブチと不気味な感触を残して頭皮から剥離した。

 乱暴に真島の顔を上へ向けさせる。

 

「調子に乗るな」

 

 日に焼けた褐色の顔貌。白い目だけが光っていた。何も表情がない「入谷(イリア)」という能面である。『ウラァ!』だの、『やんのかゴラァ!?』といった意味不明な呪詛ではない。静かだが、それは厳然とした意思であり、断定である。

 

「げえ、ぇぇぇっ! ・・・・・・―――ガクッ」

 

 トドメのサッカーボールキックを腹に入れ、入谷は去った。

 廊下に倒れたまま真島は、彼女の本性を文字通り身を持って知る。

 

(やべぇ。しゃ、社長にイチゴ大福でも買って詫びに行かないと、マジで命に関わる)

 

 不運にも、浜子行きつけの和菓子屋は月曜定休であった。シャッターが下りた店の前で真島は誓う。

 

(絶対に御祓(おはら)いに行こう!)

 

 今年は真島にとって本厄だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 UC.0079、11月初旬。中央アジア。

 ジオンが《ガンダム》の性能を凌駕する、いわば《スーパーザク》を完成させていたことは驚愕であった。しかし、敵勢力圏内の《ホワイトベース》にはその事実を連邦軍上層部に伝達する手段を持たない。

 今はランバ・ラル隊や《スーパーザク》の襲撃がないことを祈りながら、西進するしかなかった。

 

 《ホワイトベース》ブリッジの一角にあるコンピューターを占有した、アムロは忙しい。端末を操作するや、続いて膝上の《ガンダム》操縦マニュアルをめくる。

 冷やかすような声をかけたのは、《ガンキャノン》パイロットのカイだ。

 

「えらくお熱じゃねえか。ほう、戦闘シュミレーションかい?」

「ええ。手に入れたザクのおかげで具体的な性能がわかったんです。数値と《ガンダム》の性能を組み合わせて、訓練用シュミレーターが作れそうなんです」

「けどよ、あの青いMS《グフ》って新型にはどうにもなるまい? それにあのバケモン《ザク》はよ?」

「あの《ザク》は、・・・・・・あれは、全然違うものだと思います。あんな小型のビーム兵器を備えて、しかも」

 

 アムロは押し黙った。

 あのとき、彼が放ったビームライフルの光軸は、敵のビームと正面から激突した。銃弾を銃弾で撃ち落とすような、そんな曲芸まがいのことが、果たして、

 

(ねらってできることなんだろうか・・・・・・。それにあの謎の光)

 

 戦闘の中で降り注いできたグリーンが《ガンダム》の装甲を透過した。それはノーマルスーツごしでも温かかったことを、アムロは覚えている。

 思案するアムロを見て、カイは急速に興味を失ったようだ。

 

「ほんで? イメージトレーニングは効果ありそうかい?」

「一応、《ザク》の性能の200パーセントでやってますけど」

「うひゃー! さすがアムロ君ね~。ま、がんばって。ミライさん、代わろうか?」

「ありがとう、カイ頼むわね。アムロも寝てちょうだい。聞いてるの?」

「え? あ、はい」

 

 ぼうっ、と親指の爪を噛んでいたアムロは我に返る。操舵士のミライに生返事しつつ立ち上がり、ブリッジを後にした。

 しかし、

 

(ダメだ。この程度じゃあの《ザク》には勝てない。どうすればいい・・・・・・)

 

 焦燥に駆られ、彼の足はMSデッキへと向かっていた。

 

 

 

 

 《ガンダム》頭部と右足部の修理が一段落したところで、チーフメカニックのオムルは声をかける。

 

「じゃ、アムロやってみてくれ」

 

 コクピットのアムロはその声を受け、ダメージコントロールシステムを立ち上げる。即、鳴り響く警告音。サブモニターに映るワイヤーフレームの《ガンダム》正面図は胸部廃熱ダクトが赤く表示されていた。

 

「ふ~、やっぱりか」

「しょうがないよ。アムロはよく戦ってたと思うよ。ちょっとでも、緊急停止が遅かったら爆発してたかもしれないよ。

 排気系統をどうにかしないと、現状じゃもって3分ってとこか? バクチだな。自分が出す熱でジェネレーターがもたんよ。炉にダメージも累積するかもしれないし」

 

 いつの間に上がったのか、キャットウォークからオムルが顔をのぞかせる。またアムロはため息をついた。

 

「とにかくダクトの修理をお願いします。僕も手伝いますから」

「ありがとよ、アムロ。しかし、単純にダクトっていっても、中まで手突っ込まれたからなぁ。前戯で済ませとけってんだ、エロ《ザク》が!」

 

 オムルの下ネタはアムロには微妙に早かったらしい。ツボに入らない。

 少したじろいだオムルは、背後で起きた物が倒れる金属音に振り返り、

 

「リュ、リュウさん!」

 

 あわてて、その巨漢に駆け寄る。アムロも続く。壁に寄りかかるリュウの足元には松葉杖が転がっていた。両脚は力なく床に伸び、額には脂汗が浮かんでいる。

 

「体、大丈夫なんですか?」

 

 言ってから、アムロは自分の馬鹿さ加減が嫌になった。大丈夫なわけがない。

 

「リハビリさ。な、お、お前がぶん捕った《ザク》。修理してなんとか、使えるようにならんか? 今、《ホワイトベース》の戦力は《ガンキャノン》と《コアファイター》ぐらいしかないのだろう?」

 

 無理ですよ、という脊髄反射的言葉をとっさに飲み込み、アムロはリュウの提案を考えてみる。

 

(修理はともかく、どうやってパイロットを)である。

 

 《ザク》に対抗するために開発された連邦軍のMS。OSも含めた操縦システムは、アムロは例外であるにしても、民間人であるカイや《ガンタンク》砲手を務めるハヤトにオペレートできるほど、簡略化されたものだ。これはコンピューターの補助に頼るところが大きい。

 《ザク》は汎用機動歩兵という新しい兵器概念を世に知らしめた好例である。だが、まだまだ人間工学的には―つまり、使い易さは―発展途上にある。一朝一夕でその操縦が素人同然の《ホワイトベース》クルーにできるとは考えにくい。

 しかし、

 

(対《ザク》用のシュミレーターを作れたんだ。操縦訓練プログラムもできるはずだ。そうすれば、・・・・・・)

 

「わかりました。とにかくやってみます」

「アムロ、期待しとるぞ。それとな、お前はブライトとじっくり話し合ったことないだろ。それじゃ信頼関係は生まれん。人間にはな、言葉があるんだ。あいつだって、お前が真剣ならちゃんと聞くはずだ。い、一度、腹割って、」

「わかりましたから! リュウさんは傷を治すことに専念してください。おーい、フラウ! 手伝ってくれ」

 

 

(リュウさんはもう戦えない。こんなになってまで《ホワイトベース》や僕たちのことを)

 

 アムロはまだ自分の精神的変化には気づいていなかった。

 リュウを医務室に送り届けると、口を開く。

 

「フラウ、大変だろうけどさ。今度・・・・・・」

 

 話し終えた直後。

 ホワイトベースを着弾の衝撃が大きく揺らした。

 

 

 

 

 荒涼とした砂の大地。地面から垂直に打ち上がった対空ミサイルは大きく弧を描いて水平飛行に転じ、『木馬』に肉迫した。

 

「ミサイル! 地上11時!」

「迎撃ミサイル発射!」

 

 ミサイル同士が命中し、夜空に凶暴な花火が咲いた。光の饗宴をすり抜け、一発が左舷に命中する。

 

「グッ。マ・クベの基地がこんな僻地にもあるとは。光学最大望遠、前方敵基地!」

 

 暗視装置が単色の世界をモニターに映す。

 小高い丘。頂上から掘り下げる典型的な露天型の採石場。周囲には砲台が設置され要塞化されていた。

 ときおり、画面が白くはじけるのは、砲塔性能を有するトーチカの発射炎だ。炎のパターンからして、メガ粒子砲やレールガンではなく、ただの火砲だろう。大・小口径混じった5基のトーチカが《ホワイトベース》前面に埋設されている。

 

(この程度なら、《ガンキャノン》と《ホワイトベース》の火力で突破できるか!?)

 

 ブライトは予測しうる敵戦力と味方のそれをすり合わせ、攻撃の仕方をめまぐるしく思い描いた。

 円陣防御を意識し、トーチカは採石場の全周にわたって設置されていた。が、そもそも絶対数が少なく、砲台同士の間隔が広い。《ホワイトベース》に相対する火力密度は過小に思える。対空ミサイルは最初の斉射だけで沈黙していた。

 のろい迂回機動で側面を見せて回避するぐらいなら、このまま増速しつつ艦の火力とMSの機動力で打撃を加え、一気に駆け抜けた方が上策と思えた。味方の予備戦力が望めぬ以上、敵の増援は来ないことを祈るしかない。

 キャプテン・シート肘掛の受話器を取る。

 

「アムロ出撃だ! 《ガンキャノン》に乗れ」

『待ってください、ブライトさん。《ガンキャノン》にはカイさんが乗ってください。僕とハヤトは《ガンタンク》で出ます』

「《ガンタンク》はキャタピラが故障中だ。動かないぞ」

『やってみたいことがあるんです! 戦力になるんです! お願いします、ブライトさん』

 

 ブリッジ正面上部のモニターに映るアムロ。やけに熱のこもった視線にブライトは打たれた。

 

「よし、簡潔に説明しろ」

 

 

 

 

 《ガンキャノン》がカタパルトに足底を固定させる。コクピットのカイは左モニターに映るキャットウォークを走るアムロの姿を捉えた。叫んでいる。

 

『急げ! コアブロックとBパーツの換装だっ!』

 

 ちぇっ、とカイはひとつ舌打ちした。

 

「おい、アムロ、ハヤト! お前らコソコソ隠れてんなよ。《ホワイトベース》がやられたら、元も子もないんだからな! 《ガンキャノン》、発進する」

 

 外部スピーカーに怒鳴った直後、強烈な加速がカイの背をシートに押し付け、《ガンキャノン》は砲火の中を滑空した。

 着地の直前に近傍で敵の榴弾がはじけた。よろめく。

 

「ヤロー、俺だって初陣じゃねぇんだよっ!」

 

 オートバランサーが作動し、転倒は免れた。すぐに、左10時方向へステップし回避。丘前面の砲塔は、戦艦副砲並みの威力で《ガンキャノン》を脅かす。

 

「そんな『尻尾生えたお椀』にゃ、やられねぇぞ。いけぇ!」

 

 両肩の240ミリ低反動キャノンが火を噴き、砲身が後退、巨大な薬莢が宙を踊る。

 

「やったか? ちっ、固ぇ」

 

 成形炸薬弾はわずかに狙いをそれた。お椀を伏せたような半球形状防護壁は新しいクレーターができたものの、火砲自体は健在であった。

 元来、中距離支援MSである《ガンキャノン》は今の戦況のような、激しい攻撃にさらされながら戦闘するようにコンセプトされている。そのための重装甲であるし、二脚歩行による整地・不整地を選ばぬ機動力である。だが、それもすべて《ガンダム》という最前線で敵陣に打撃する前衛があってこその性能だ。

 干上がった川底でもあれば、機体を沈め低姿勢からキャノンを射撃することも可能だ。正面投影面積を小さくし、被弾率を下げつつ撃ち出されるキャノン砲は、地上の敵にとって脅威であった。

 だが、今は平坦な砂地で掩ぺいできる状況ではない。

 

(アムロは動きながら、敵をやっつけてるのによ)

 

 カイは彼の天才的操縦センスを嫉妬しつつ、フットペダルを踏み、トリガーを強く押し込んだ。

 

『カイ、気をつけろ! 上空12時!』

 

 スピーカーを鳴らすブライトの無線。バブルキャノピーを有する特異なシルエットがダイブしてくる。ジオンの大気圏内用戦闘機《ドップ》だ。

 次々と発射されたミサイルが《ガンキャノン》を包囲するように命中した。直撃は左肩の一発だけだった。幸運以外の何物でもない。

 

「うわぁ! ちくしょー、アムロたち! ホントに早くしろよ。そんなにもたねぇぞ」

 

 トーチカが砲撃の追い討ちをかけた。

 

 

 

 

「まずい。ミライ、《ホワイトベース》を突撃させろ! 各砲座、《ガンキャノン》を支援する。正面に集中砲火」

 

 《ホワイトベース》両舷側から連装メガ粒子砲が四条の図太い光線を吐く。夜闇を切り裂くその一撃は瞬間的に要塞基地を沈黙させた。

 

「アムロ、発進まだか!?」

 

 受話器に怒鳴ったブライトに応えたのは、MSデッキのジョブ・ジョンだった。

 

『い、今、え、えーと、ガンダ・・・・・・タンクで出るところです』

「なんだ、よく聞こえないぞ。おい、左舷何してる!? 機銃座撃て!」

 

 直後に《ホワイトベース》周辺を《ドップ》が旋回し始め、混乱にうやむやとなった。

 

 

 

 

 戦艦クラスのメガ粒子の光線が分厚い岩盤を貫く。衝撃が司令指揮所まで激震となって伝わる。この場の最先任士官―すなわち、一番上の人―の少尉はいらついた雰囲気を隠しもせず、無線士に問う。

 

「マ・クベ大佐の増援は《ドップ》だけか?」

「はっ。ミノフスキー戦闘濃度のため、その後の連絡は・・・・・・」

 

 少尉は拳を固めてうめく。

 

「なぜこんな辺境にメガ砲装備の敵が現れる。まさか、噂の木馬か!?」

「少尉! 敵の新型MSです!」

 

 前方索敵中の伍長がうわずった声を出し、砲煙の中を飛び跳ねるようなシルエットがモニターに不気味な姿を映す。それは異形の人型であった。巨大な上半身はトップヘヴィーで見るからに重心バランスが悪そうだ。両腕らしきものはあるが、先端は五指のマニピュレータではなく、バルカンだか、ミサイルランチャーだか、4つの砲口を開けている。そして、両肩から伸びる長砲身と不釣合いなほど細い脚部。

 その姿に、

 

「なんだ、あの気持ち悪いMSは! 撃て撃て! 爆発しろぉぉぉ―――っ」

 

 少尉は口角泡を飛ばしていた。

 しかし、バランスの悪さをもろともせず、敵MSは上半身を大きくスイングしながら、迫る弾雨を縦横無尽にかいくぐっていた。 

 

 

 

 

『ヘへへ、聞こえるかー。アムロ、ハヤト。その格好、クレイジークールだぜ』

 

 カイがからかうような口調の無線を寄こす。敵の攻撃が分散した彼は、軽口を叩く余裕を取り戻していた。

 そのMSは《ガンダムタンク》と呼ぼうか、それとも二脚式《ガンタンク》か。いずれにせよ、正体は《ガンタンク》の上半身Aパーツと《ガンダム》の下半身Bパーツを組み合わせた異形であった。それぞれの正常部位を組み合わせた苦肉の策である。

 

「茶化すな、カイ!」

 

 反論しつつ、アムロは必死に操縦していた。起動直後から過積載警告表示は鳴りっぱなしだし、オートバランサーも正常に作動しない。そんな中でも、なんとか二脚式《ガンタンク》を巧みに乗りこなしているのは、ひとえにアムロの技量である。

 

「反撃するぞ! カイ、左に展開しろ! こっちは右に」

『へいへい、了解っと』

「一番左の奴からやるぞ! 《ホワイトベース》タイミングを合わせてくれ。

 3、2、1、てえええぇぇぇ―――!」

 

 120ミリ低反動キャノン、ビームライフル、メガ粒子砲の猛攻を受けたトーチカが爆発する。

 

「いいぞ、ハヤト。次、隣の」

『で、でも、アムロ。これ、上の砲手は最悪の乗り心地だぞ! こんなんでMSが出てこられたら』

「今は基地を黙らせることだけ考えろ! よく狙え」

 

 ハヤトにはそう言いつつ、アムロは真逆の思考に拘泥していた。

 

(出てこい、出てこい! 《スーパーザク》めぇっ!)

 

 アムロはまだ気づいていない。攻撃がされる前に、敵の意図を察知している自分自身の能力に。

 《ザクⅢ改》との戦闘で浴びた、緑の光。それが彼を覚醒させようとしていた。

 

 

 

 

 戦闘はものの十数分で終了した。即座に横陣展開した《ホワイトベース》隊は圧倒的火力集中を叩きつけ、鉱山基地は沈黙。《ドップ》隊は半数の3機が撃墜され、弾薬を消費した残存機は終幕を見ることなく早々に帰投した。

 《ホワイトベース》は連邦の一大反抗作戦オデッサ作戦に参加すべく、また西進を続けた。

 

 




(次回予告)
(※BGM「アニ×じゃな~い?」、ナレーション:明日 修道(あした・しゅどう)

♪デ、デ、デ、デ~ン♪

「真島さん、ご愁傷様。でももっと悲惨な少年が登場する。
 お父さんはお金持ち。だけど後ろ暗~い財団の当主なんてやってるの。
 マネーロンダリングなんてしてるから、バキューン! 死んじゃった。
 敵の魔の手が迫る!
 次回、企業戦士アクシズZZ『トリプルズ+α』
 人ごとだから、笑っちゃう」



【アムロが脱走しません】



(登場人物紹介)

ランバ・ラル → 羅留 嵐馬(らる・らんま)

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