企業戦士アクシズZZ   作:放置アフロ

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16 死闘は憎しみ深く(前編)

「公園で漫才の練習をしている。うるさいから注意して欲しい」

 

 通報を受け、田草警部補(ダグザ・マックール)が駆けつけると、新年から幾度も顔を合わせた神根 統露(スベロア・ジンネマン)だった。今回は口頭で注意し、神根(ジンネマン)鈴樟 華路(バナージ・リンクス)はその場で放免された。

 しかし、華路(バナージ)の受難は続く。

 

 その晩の未明。

 トイレの水を流す音に、居間で寝る華路は目覚める。

 さすがに、夫婦部屋や女子だらけの子供部屋で、「穴があったら入れたい」中学生男子を寝かせるわけにはいかない。ちゃぶ台を片し、布団を敷き延べ、そこを華路の仮の寝屋としていた。

 夢うつつの合間を行き来していた華路は、不意に近づいてくる気配にうっすらと目を開ける。引いたカーテンの隙間から満月の光が差し込んでいた。

 

 ごそごそ。

 

(うわぁ~!)

 

 ぎょっ、と見開いた華路の目に、飛び込んでくる栗毛。月光を受け、普段よりもぬめっ、とした(つや)を放っていた。

 

「にゃ~、あったか~い♪」

 

 寝ぼけたらしい娘は布団にもぐりこんで来た。華路の頭を捕まえ、抱き枕のようにする。顔面に押し付けられる、やわらかい二つの丸いふくらみが、ぷにゅっ、と変形している。パジャマ越しでも十分、わかる。

 

(ダメだ、一角獣(ユニコーン)!  引っ張られるな、こらえろ!)

「んん~、もっとこっちにゃ~♪」

 

 さらに、娘は密着し、右脚は外側から絡め、左脚は股を割って入ってくる。質感たっぷりの太ももがビームマグナムに触れた。

 

(あぁ、・・・・・・父さん、母さん、ごめん。おれは・・・・・・イ、ィクよ」

 

 ズキュゥゥゥン。

 

 通常4発分のエネルギーが一気に発射された。暴発である。

 

 すると、

 

「ふふ、うふふふ」

 

 闇の中。肉を合わせるそこから、一転して不気味な含み(わら)いが聞こえてくる。

 

(あ、あ、ああぁ・・・・・・。やっぱり)

 

 華路は悟った。

 

「さてさて、どうしよう? 今ここで悲鳴を上げたら、さぞ困ることになるだろうな? ひとの家に来た初日に、そこの娘と床を一緒にするなんて、いやはや」

「か、かんべんしてください。お、おれは風美(プルツー)さんの」

 

 不意につねられた。直ちに排きょう、再装填されるビームマグナム。華路の口から嬌声がもれる。

 

「あ、あぁ♪ ・・・・・・う、ぅあ♪ ・・・・・・はぁっ!」

 

 しかし、第二射が暴発する直前、絶妙のタイミングで手が放された。

 

()()()()? まだ自分の立場を分かってないのか、このエロガキ。泣いてやろうか? 無理やり(おか)

「す、すいません。ふ、風美(プ、プルツー)お姉さま、ゆ、許してください。おれはお姉さまの、ど、奴隷ですから」

「ふ、ふふ。よかろう」

 

 こうして、風美は華路の心身を完全に支配した。まさに、操り人形である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 UC.0079、11月。中央アジア、ソドンの町近郊。

 

「やっぱり来た。《ザク》だ」

 

 《ホワイトベース》から緊急発進した《ガンダム》のコクピットでアムロはごちる。機体は砂丘の稜線に隠し、頭部のみを露出してうかがう。光学望遠のモニターに、砂煙を上げて歩行する3機の緑の巨人(ザ ク)が確認できた。真っ直ぐこちらへ向かってくる。

 

「フラウ・ボゥがつけられたんだ」

 

 彼女は数時間前、リュウの手当てに必要な医薬品やその他の補充物資を得るためソドンの町に入っていた。

 

『大勢ジオン兵を見かけたわ。アムロの言うとおり変装していってよかったわ』

 

 おそらく、彼女は()()()()《ホワイトベース》の近くまで敵を引き連れてしまった。

 《ザク》小隊と《ガンダム》の距離はおよそ10キロ。宇宙ならともかく、大気中ではビームライフルのメガ粒子の拡散が早い。有効射程距離とは思えなかった。

 

「もっと近づかないと、・・・・・・。ん? なんだ?」

 

 砂が舞い上がり、陽炎が浮かんで《ザク》の後方はよく見えない。しかし、アムロは《ザク》の背後に別の敵意を感じ取った。

 《ガンダム》は右耳にあたる部分から、指向性集音装置を展開する。

 ヘッドフォンをヘルメットに接触させる。やがて、アムロの耳に《ザク》の足音に混じって、「キュルキュル」という金属音が聞こえてきた。《ガンタンク》同様、キャタピラの上げる音だ。

 

「せ、戦車だ! 《マゼラアタック》とかいう奴か? 多いぞ。4? いや、5台はいる!」

 

 全部で6両。《ザク》の後方300メートルを、両翼にそれぞれ3両の《マゼラアタック》が追随している。上空から見れば、3機の《ザク》を先頭にV字陣形を取っていることになる。

 

「まずいぞ。あの数で集中攻撃されると、《ガンダム》でも面倒だ。どうする・・・・・・」

『エースパイロットさんよ、なに考え込んでんだい?』

 

 その時、カイの茶化すレーザー通信が入る。同時に《ガンダム》後方モニターに彼の乗る《ガンキャノン》、さらにその後ろにハヤトとジョブ・ジョンの《ガンタンク》の姿が見えた。

 

『ば――っと突っ込んで、だ――っとやっつけちゃってよ。できるでしょ、アムロちゃん?』

「買いかぶりですよ。カイさんたちの助けが必要です」

『それでどうするんだい、アムロ? こっちはまだ足回りの調子が悪くて、スピードが出ないんだ』

「うん、ハヤト。ぼくは前進して偵察する。《ガンキャノン》と《ガンタンク》は・・・・・・」

 

 作戦を打ち合わせると、アムロは《ガンダム》に低い姿勢のまま砂丘を乗り越えさせた。

 

「行くぞっ!」

 

 

 

 

 砂漠を疾走する3機の《ザク》。

 先行する小隊長コーディ少尉は、斜め後方、5時と7時方向、2機の《ザク》に向け、自機の右手を上げ停止を示す。

 前方3キロには、ごつごつとした岩肌の丘が迫ってきていた。

 

「あれだな、木馬が潜んでいる遺跡があるのは?」

『そのようです。岩を切り崩した神殿の中に隠蔽しているようですね』

 

 右後方、5時方向の《ザク》に乗るヒュー軍曹が答える。

 

「となると、直接照準では砲撃でもいぶり出せんか?」

『掩蔽性も高そうです。《ザク》で接近して叩きますか?』

「いや、連邦のMSは接近戦が得意と聞く。マゼラ砲の曲射でゆさぶりをかけ、木馬が出てきたところを戦車隊と共同して、集中砲火を浴びせよう」

『ッ・・・・・・了解』

 

 部下の応答に一瞬の間があったことが、コーディを少しいらつかせた。

 

 例外はあるにせよ、連邦軍は軍規に厳しい。伝統を重んじる組織、悪く言えば官僚的である。

 他方、ジオン軍は全体的に軍規に甘い。たとえ、軍令違反を犯したとしても、戦果を上げさえすれば、命令を無視してもよいという風潮があった。戦争に勝っているときはそれも許されよう。事実、赤い彗星のシャアも戦場で結果を出して、出世したのである。

 しかし、往々にして陥りやすいことだが、戦争に負けているとき、当人はそれに気づかない。たとえ気づいたとしても、今度は負けを認めない。そして、完膚なきまでに叩きのめされ、徹底的な敗北を味わうのである。歴史が何度もそれを証明している。

 

 実は、コーディも独断専行をしていた。

 ソドンで休憩していたところ、バイクで偵察に出ていたゼイガンという兵から、『木馬発見』の暗号文が届いた。コーディは後方のランバ・ラル隊に知らせず、おのれの部隊のみで出撃する。

 

―さっさと木馬を墜として、ランバ・ラル隊には宇宙に帰ってもらおう!

 

 酒場で飯を食っていた部下たちは、それを聞くや気勢を上げた。

 コーディ以下その場の全員が、地球攻撃軍マ・クベ大佐から抽出され、ランバ・ラル隊クランプ中尉の指揮下に入れられていた。

 

 3機の《ザク》は手にする長大な獲物、175ミリ・マゼラトップ砲の弾倉を交換する。

 

「弾種HEAT。いくぞ、09(マルキュウ) 30(サンマル) 20(フタマル)・・・・・・」

 

 砲撃座標を言い終えぬ内に、ふとコーディは前方モニターを見た。1時方向の砂丘が

 

(光った!?)

 

 と同時に《ザク》のセンサーが不審な照射レーザーを感知し、警告音を発した。

 

 

 

 

 真ん中の《ザク》をビームが貫通し、大破・爆発した。直後に、タイミングを合わせた《ガンキャノン》、《ガンタンク》の砲弾が2機の《ザク》の近傍に弾着する。敵パイロットは畳み掛ける攻撃に混乱状態なのか、機体は棒立ちだった。

 

「いただきっ!」

 

 アムロはまたトリガーを引く。砂丘から膝撃ち姿勢の上半身をのぞかせる《ガンダム》。右手のビームライフルから光軸が伸びた。《ザク》がまた1機、頭部を貫かれ仰向けに倒れ伏した。

 すぐに、《ガンダム》は斜面を駆け下り、砂丘の谷間を走る。先ほどの《ガンダム》の狙撃地点には、狂ったような砲弾の嵐が撃ち込まれていた。後方の《マゼラアタック》の猛攻である。

 ビームライフルは重力による弾道の落差や、風の影響を受けにくい。直進性に優れ、大気による減衰はあるにせよ、威力も申し分ない。ただ欠点として、その強烈な光軸から狙撃位置を特定されやすく、移動を繰り返す必要があった。

 もっとも、ビームライフルに限らず、狙撃地点を頻繁に変更するのは、戦争の常識でもあるが。

 

 砂丘を背部メインスラスターを噴かして、飛び越える。《ガンダム》は支援砲撃した《ガンキャノン》の近くまで一旦後退した。()の悪い《ガンタンク》はさらに後方に下がっている。

 先ほどの支援砲撃は、先行する《ガンダム》が観測手となり、敵位置座標を後方の《ガンキャノン》へレーザー通信で知らせ、さらにそこから《ガンタンク》へ中継した。

 《ガンタンク》発砲の数秒後、《ガンキャノン》も発砲。《キャノン》の砲撃音が《ガンダム》に到達したところで、アムロはビームライフルのトリガーを引いた。結果、集中砲火を浴びせることができた。敵が止まっていたことも幸運だったが、流れるような連携がもたらした戦果といえる。

 

「2機撃破。カイさんたちのおかげですよ」

『ひゅ~~♪ おだてちゃって。で、次はどうするよ?』

「ぼくは東から回り込んで、敵の目をひきつけます。カイさんは」

『反対から挟み撃ちってわけね。あいよっ!』

 

 単純な作戦だったが、これも恐ろしいほど、うまくいった。

 砂丘から跳躍し、三次元機動を見せる《ガンダム》。最後の《ザク》はマゼラトップ砲を捨て、ザクマシンガンを手に回頭した。直後を死角から飛び込んだ《ガンキャノン》の240ミリ砲弾が命中。《ザク》は四肢をばら撒いて文字通り、木っ端微塵となった。

 

 この時点で《マゼラアタック》隊は退却し、アムロたちも敵の殲滅が目的ではないので、それ以上の追撃はしなかった。

 ようやく岩山の影から現れた《ホワイトベース》の全景が、振り返った《ガンダム》のモニターに映る。

 

 

 

 

 MS隊の緊急発進と同時に、《ホワイトベース》は修理作業を中止。すぐに発進準備に入ったが、隠蔽していた遺跡からようやく脱出、上昇したときには戦闘はすべて終わっていた。

 

「さすがに、アムロたちをほめないわけには、いかないのじゃなくて?」

 

 舵を握るミライが、背後のキャプテンシートに座る青年少尉へ笑いかける。

 

「ん、・・・・・・まぁ、な。しかし、だ! カイなんか、なにかと言えばすぐにつけあがる。あいつも、アムロやハヤトのように素直なら」

「何か接近します! 11時の方向、地上を3機」

 

 ブライトを、ブリッジ頭上のオペレータ・オスカの警告が遮る。

 

「ソドンの方角だな。敵の増援か?」

「おそらく。しかし機種不明! 動きが速いです。速度は《ギャロップ》並みですが、大きさはMSサイズ!」

「まさか、・・・・・・ジオンの新型MSか」

 

 うめくブライトに、もうひとりのオペレータ・マーカーが「ミノフスキー濃度急上昇!!」と続ける。

 

「ミライ、進路変更して敵を振り切れるか?」

「無理よ! エンジン出力がこれ以上、上がらなければ」

「グゥ、フラウ・ボゥ! 無線でアムロたちを呼び戻せ!!」

「りょ、了解! MS隊各機、至急《ホワイトベース》に戻ってください! 繰り返します・・・・・・」

 

 フラウは最近、セイラから教わったばかりの無線機を操作した。

 

「全砲門開けッ!」

 

 ブライト号令の元、第二ブリッジ直上から52センチ主砲がせり上がり、両舷側からは連装メガ粒子砲が現れる。手すきのクルーは対地機銃座へ走った。

 

 

 

 

 地上高20メートルからモニターに映す砂漠は、時速200キロで後方へ流れていった。

 高速移動するジオン公国軍・重モビルスーツ、《ドム》を駆るランバ・ラル隊タチ中尉の前方には、2機の同系機が展開していた。10時方向、100メートル先を行くステッチ伍長の《ドム》から通信が入る。

 

『タチ中尉! 《マゼラアタック》隊が退却しています。連中勝手に戦闘を始めといて尻尾巻いて逃げるつもりですよ!』

「フン、去るものは追うな」

 

 しょせんは、マ・クベの部隊。しかも、辺境の鉱山基地守備隊から抽出した、借り物の装備と兵である。錬度や士気においても、精鋭ランバ・ラル隊と比べるまでもない。

 

「この《ドム》とわれらの戦技があれば、木馬を落とせる。ステッチ、トルガン、気張れよ!」

『はっ! それにしても、中尉。意外であります』

「何がだ、ステッチ?」

『《ザンジバル》を取り上げたマ・クベ大佐がここにきて、これほど協力してくれるとは、意外でなりません』

「・・・・・・大佐も、行方知れずのラル大尉を気遣って、・・・・・・特別に計らってくれたのだろう」

『男気ありますね、マ・クベ大佐は! 自分は正直嫌な野郎だとっ! し、失礼しました!』

 

 もうひとりの部下・トルガンの明るい声がスピーカーから響く。

 

『特殊な性格の方かと思っておりましたが、最新のMSをわざわざ回して頂けるなど、・・・・・・』

 

 トルガンはまだ話し続けていたが、内容はタチの耳には入ってこなかった。

 

 

 数日前。

 タチとランバ・ラル隊の実質的指揮官であるハモンは、オデッサのマ・クベの元にいた。マ・クベに木馬討伐のための装備と人員の支援を乞うためである。

 

「込み入った話ゆえ、二人だけにしてもらえぬか?」

 

 疑問形でありながら、タチに向けるマ・クベの視線は有無を言わさぬ、傲慢さがあった。

 ハモンとマ・クベ、二人の密談は2時間にも及んだ。

 そして、いままで非協力的だったマ・クベが一転、《ドム》3機手配の上、自軍から支援部隊まで抽出したのである。

 

「あの人が帰ってきたら・・・・・・。タチ、今日のことは秘密にしてくれますか?」

 

 うつむき暗い表情のハモンを見て、タチは部屋で何があったか確信し、何をすべきか決意した。

 

(戦争が終わったら、・・・・・・。マ・クベ、貴様は消す)

 

 バイザーのうちでタチの眼光が危険な色を帯びていた。

 

 

 




(次回予告)
(※BGM「アニ×じゃな~い?」、ナレーション:明日 修道(あした・しゅどう)

♪デ、デ、デ、デ~ン♪

「いつまで続くの、《ホワイトベース》の話? これ、原作・ZZでしょ。
 風美(プルツー)羅留(ラル)さんを連れて来ちゃったせいで、アムロさんはあの(ひと)と違った出会いをする。
 クラウレ・ハモン。女だって戦える・・・・・・ではない。女だから戦えるんだ!
 《ドム》が砂を滑り、《マゼラトップ》が宙を舞う。
 次回、アクシズZZ『死闘は憎しみ深く(後編)』
 涙雨よ、砂漠に降ってくれ!」

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