(※ナレーション:
「刻一刻と近づくオデッサ作戦。連邦軍は新しい部隊を編成する。でもって、策略家のマ・クベはスパイを使って罠を張る。
西暦じゃ、おっかな~いおば、ぇと・・・・・・お、ねえ、さんが歴史を変える気、満々でいるし。宇宙世紀はどうなっちゃうの?」
UC.0089年1月、第一次ネオ・ジオン戦争末期。コア3沖会戦。
「うおおおおおうぅぅぅ!!」
パイロットのキャラ・スーンは裂帛の気合を放つ。重
Iフィールドも持たぬMSが起こした怪現象に、ビームを放った機体、量産型《キュベレイ》のパイロットたちは恐れおののいた。
「お前ら、一人も生かしておかないよ!」
キャラは手近の一機に反撃。《ゲーマルク》のファンネル攻撃が《キュベレイ》のヴァイタルを次々と貫き、宇宙に爆発した。
だが、
(なんだ!?)
キャラはその刹那、小さな何かが弾けるような感覚を覚えた。敵のパイロットを殺した瞬間、いや、殺す直前、呪いから解放された魂が上げた叫び。それは、
(泣き声!? 子供だと?)
怖い、とも彼女には聞こえた。
「ふざけんじゃないよっ! この猫目のキャラ・スーンに子供を相手させるなんてさっ!」
キャラは湧き上がる不快感を、馬鹿にされたと思う屈辱感で押し潰した。
「うるさいガキは大嫌いだっ!」
《ゲーマルク》は肩に【12】とマーキングされた、逃げる《キュベレイ》を追う。
「お前も死ね────っ!!」
*
西暦1989年11月。東京都内、カラオケ喫茶オデッサにて。
まるでライオンのたてがみのような逆毛は、肩まで長く伸びている。髪は真ん中から左右別々の色に染め分けられている。真っ赤とキンキラ金に。
「ハッ! ・・・・・・夢か」
派手なヘアースタイルの持ち主、
「♪25時間、戦~えますかっ?
ミニステージではアクシズ建設のバカその1、
(やれやれ、のん気なやつだ)
額を拭うと、びっしょりと汗をかいている。
(なにか冷たいものでも食べたいところだね)
テーブルに目を戻すと、
不審に思い、隣の席を見ると、
「あ、ぁ、溶かされる・・・・・・ビームで・・・・・・ガクッ」
「ちょ、ちょっと、しっかりしな! どうしたんだい、
栗毛の少女は白目をむき、カニのような泡を噴いて気絶した。どうも木矢良の夢の内容が
ここで飲み会の参加者を紹介する。
まずアクシズ建設社長の
『営業の3バカ』こと
設計課からは
アルバイトの
厚生課からは
ちなみに、NTとは日本酒の銘柄を飲み当てる特殊な才能、―Nihon-shu talent:利き酒能力―を意味する。やよいは同時に36の銘柄を認識することができ、
このアクシズ軍団に、半ば強引に連れて来られた『掃除のお・・・・・・ねえさん』こと
*
木矢良たちと別の席では、
「真島先輩、機動戦士ガンガル乙乙を知らないんですか?」と暮巳。
「知らん。どんな話なんだ?」
真島はアニメに興味もなかったが、一応聞いている姿勢を見せる。
「サンレイズ製作のガンガルシリーズ最新作! 世界に誇るハードSM作品ですよ!」
(・・・・・・ハードSFのことか?)
何か不適当なアルファベットのような気もしたが、真島は聞き流した。
「・・・・・・それで、この敵役のマシュマロ・セロリってやつがどうしようもないやつなんですよー」
「ほぅ?」
「こいつはホテルのチェックアウトを金塊でするんですよ」
「ちょっとなに言ってるか意味不明だな」
「ですよね! マシュマロは『キャッシュもクレジットも無いからこれで頼む』って、スーツから金の延べ板、取り出すんですよ。他にも自分のことを『救いを求める哀れな子羊』とか言っちゃたり、ツッコミどころ満載なんですよ!」
「アッハッハッハ! いろいろ痛いキャラだな、そいつ。一回、死んだほうがいい」
「大丈夫。死にますから! 『ハンマーさま、バンザァァァイ!!』とか言いながら」
真島は急にデジャブを味わい、背筋を寒気が駆け抜けていった。
その時拍手が起こり、場を笑いで盛り上げていた後藤が真島たちの方へ戻る。
次にミニステージへ向かったのは、意外にも
「
カラオケカセットを持参するほどの気合の入りようだ。それはアニメ『ガンガル乙乙』のオープニングテーマであった。暮巳の美声と思いのほかパンチあるシャウト。
しかし、
「♪子供はだれも笑いながら、エロビの見すぎというけど、ボクは絶対に~絶対に~オナってなんかない~♪」
(中略)
「♪ア~○~×じゃな~い? ○~二~×じゃな~い? やらしい世界~♪
♪ア~ナ~○じゃな~い? ア~○~ルじゃな~い? 本番なのさ~♪」
歌詞の意味不明さは頭部にハイメガ砲を装備した《某々ガンダム》に匹敵し、場は厳冬のシベリアのように凍りついた。
特に女性陣はなにか気持ち悪いものでも見てしまったような、そんな目で暮巳を見ていた。
パチ、という拍手のかけらもなく曲は終わった。
空気を読んだ真島が、暮巳の腕を引ったくりステージから降ろし、速攻で席に着かせた。
(まったくこのバカなんで飲み会にこんなカセット持ってくんだよ!)
カセットを叩き割ってやりたいと思いつつも、歌詞カードに書かれていたあらすじに目を通す。
『サイド1・1チョウメのコロニー・カブキチョウに住む少女ジュリエット・アイタタ。彼女は不良少年少女と共に、宇宙船《アーマガエル》を盗んで、宇宙海賊の道へ。追う
「ジュリエット・アイタタ、《乙乙ガンガル》! ふぁ・・・・・・ぁぅ、ぃき・・・・・・イキま~す♪」
※当作品は成人向けアニメです』
「あ、エロアニメか。え? ・・・・・・アニメじゃないのか? どっちだよ! なんで誰もつっこまねぇんだよ!」
「いや先輩、作中ではちゃんと女の子に(♂を)突っ込んでま・・・・・・」
「お前に聞いてないわ―――っ!!」
真島は逆水平チョップの強烈なツッコミを入れた。
*
(グレミーを強化した覚えはないのだがな)
このままでは暮巳も謎の店『はざま』に連れて行くことになるだろう。
本当は真島と同じテーブルにつきたいのだが、暮巳というロリコン・マザコン・アニオタ・弩変態という四重苦のせいで、そこはすっかり女っ気がなかった。あのやよいですら寄り付かない。
別のテーブルでは、麻里が介抱されているが、一向に目覚める気配がない。
(麻里と木矢良の相性が悪いことは少し考えれば気づいたろうに、私としたことがうかつなことを・・・・・・それに)
浜子は設計課の赤堀と上賀を見る。
(あの二人は確か、エゥーゴに潜り込ませた連中ではないか?)
だいぶ昔のことなので記憶が曖昧だ。
(これでは、宇宙世紀に行った途端、また内乱を招きかねん)
同族殺しはアクシズの
ふと、コロン、と氷が転がる音がした。
「都外川君、ずいぶんはしゃいでましたね」
入谷は目の下に幾分朱がさし、色艶やかになっていた。しかし、暮巳のテーブルへ行くつもりは、さらさらないらしい。
「入谷、やはり頼りになるのはお前しかないようだ。アクシズに尽くしてくれ」
「・・・・・・社長。私はアクシズのためならたとえ火の中、水の中でも飛び込む覚悟です」
「私は良い部下を持った」
二人は互いのグラスを軽く当て乾杯した。
(いづれにしろ、私にとっては背水の陣だ。早くあの俗物の首をあげねば)
浜子は決意を新たにした。
やがて、アクシズ軍団はカラオケ喫茶オデッサを後にし、アルコールに導かれるまま時空の
*
UC.0079年11月。旧ルーマニア、ブカレストの西方約70キロ、ポエニの町。
いたってのどかな雰囲気だった。
色づいた木々はここ数日の風雨で葉を落としていたが、今は晴れ。見渡す限り緑の牧草、そして、兵士たちの頭上には青空が広がっていた。
早朝パトロールの後、ジオン軍MS中隊々長・ボールドウィン少佐は牧場脇に駐機した《ザク》の足元、部下たちとブランチを楽しんでいたところだった。
未舗装路の小石を飛ばして、伝令のバイクがやってくる。
「オルト川の連邦軍が火砲類のカモフラージュネットを外している」
《ルッグン》、《ワッパ》をようする偵察部隊からの報告だった。中隊のパイロットを急ぎ集め、ボールドウィンは皆に伝えた。
「連邦軍が偽装を取り払い始めた。どういうことかは分からない、が」
ボールドウィン本人はもちろん、部下たちも連邦の動きの意味することを敏感に感じ取った。
ささやかれる連邦軍の一大反攻作戦。
無論、いつものようにブラフの可能性もある。無線通信量を増やし、前線まで部隊進出をさせた後、後方へ退く。連邦軍はこのところ、繰り返していた。
「全機搭乗。丘まで前進する」
だが、その途上で事態は動き出した。
『上空11時、敵機2!』
ジグザグの千鳥縦隊を取っていた《ザク》中隊は一斉にザクマシンガンの対空射撃を開始する。現れた戦闘機《セイバーフィッシュ》は緊急回避、来た方角へと戻っていった。
「ずいぶんと早く退く。一発も撃ち返してこないとは、な」
かえって不気味だった。
5分ほどかけて西方を一望できる小高い丘まで移動する。オデッサを目指す連邦軍が東進すれば、かならず姿を現すはずだ。しかし、
「なんだ、この数は!?」
眼下の丘陵を見回して、ボールドウィンは唖然とした。
正面モニターの視界、水平およそ150度を小さな黒点が埋め尽くしている。牧草地の端から端まで見渡す限りびっしりと。
地上の連邦軍の主力、《61式》戦車だ。
『よろしいですか、中隊長殿?』
「なんだ、プリラー?」
副長の大尉が軽い口調のレーザー通信を送ってきた。
『連邦の大反攻に、栄光ある突撃重装甲兵大隊(※)の1個中隊ってのは、どうも・・・・・・。お寒いですな。十字勲章でも頂けるんですか?』
「戦傷章でももらっとけ」
ふたりは笑い飛ばした。
距離がある戦車は、ひとつひとつは豆粒のように小さい。が、密集・連携し大きな一団を作り、《ザク》中隊が立つ丘に迫ってきた。
また、彼方の上空には渡り鳥の群れのように、航空機の大編隊が形成されていた。先ほどの2機はせいぜい斥候に過ぎなかった。
「深く考えるな。射程にはいったものから任意に撃て! 移動しろ!」
部下に通達すると、ボールドウィンは自機の《ザク》を水平移動させつつ、もっとも近い《61式》にマシンガンを照準する。
急制動、即発射。命中した《61式》は走行中ということもあって、キャタピラと転輪をばら撒きながら爆発する。
次の瞬間、正面がかすんだ。
《61式》が装備する150ミリ連装砲。無数の連装砲が吐き出す砲煙、発射炎、そして砲弾の嵐だった。
右膝部に直撃をもらったボールドウィン機は、よろめきながら後ずさる。そして、泳いだ上体に向けて第二射の砲弾が殺到した。サンドバッグ打ちにされるボクサーさながら、千鳥足になった《ザク》は爆発、地に倒れた。
指揮を受け継いだプリラーが無線に叫ぶ。
「こちら第一中隊。中隊長戦死! 敵の猛攻を受けている。至急、・・・・・・」
ミノフスキー濃度は急速に高くなっていった。
(※実態はMS大隊だが、士気高揚などを狙って改称されたもの)
*
地球連邦軍の反攻、オデッサ作戦が始まった。《ホワイトベース》が失われ、レビル将軍は急きょ後方かく乱を目的とした部隊を編成する。
機械化空挺大隊。
主戦場が宇宙に移行するまで、連邦内では量産型MSの存在は秘匿される計画であった。しかし、欧州方面軍には先行して30機の《ジム》が配備されていた。ここから2個中隊を抽出。ジョン・コーウェンようするMS特殊部隊第三小隊の3機を加え、合計27機。また、対MS特技兵2個中隊がこれを支援する。
彼らをオデッサ基地の背後に輸送するのが、マチルダ中尉が所属する第136輸送航空連隊である。作戦に際し、マチルダ隊は《ミデア》戦術輸送機15機に増強。護衛として《セイバーフィッシュ》汎用戦闘機、および近接航空支援として《フライマンタ》戦闘爆撃機が随伴する。
連邦軍の動きはスパイを通じてジオン軍マ・クベ大佐に知られることとなった。後方の警戒として、エースパイロット黒い三連星、赤い彗星のシャアに加え、二つのMS特殊部隊を投入。合計戦力はMS15機、1個中隊強(※2個中隊弱といおうか)である。
決行日、《ミデア》編隊は日没と同時に飛び立った。
連邦軍の圧倒的航空戦力の前にジオンの《ドップ》戦闘機は次々と落とされた。しかし、降下予定地に近づくにつれ、地上からの対空砲火は激しくなり、被弾する《ミデア》も出始めた。
《フライマンタ》が応戦するも、赤外線すら干渉を受けるミノフスキー高濃度下の夜戦では効果が発揮できない。連邦軍航空機が装備する前方監視サーマル・センサーは、地下に偽装エレベータで隠ぺいするメガ砲台を感知できなかった。
ここで意外な事態が発生する。
「バカな! 早すぎるぞ、降下待て!」
マチルダ中尉の制止も聞かず、一部輸送隊が部隊を降下させ始めてしまった。対空砲を恐れた他の機も追従する。結果として、空挺大隊の大部分が黒海北岸の広い地域に、薄くばら撒かれることになった。
練度の低い連邦軍MSパイロットは各個撃破される、と思われた。
だが、地上のジオンでも軍隊らしからぬ状況に陥っていた。
戦闘の前、
「俺たちは好きにやらせてもらう」
黒い三連星のガイアはそう言って、自ら遊撃小隊となることを宣言した。
本来であれば、外人部隊のダグラス・ローデン大佐がその場の最高階級として指揮するべきである。ところが、そも基地司令のマ・クベが「お膳立てはしてやった。あとは勝手にやれ」とばかりに放置しているため、現場は混乱した。この辺りマ・クベが文官肌だからか、権謀術数におぼれているからか、あるいはただの馬鹿なのかは不明である。
『精鋭部隊による共同作戦』という言葉は薬にしたくとも爪のあかほどなく、結局、三連星とシャア、二つの特殊部隊は各個に戦うこととなった。
戦況は五里霧中。時間だけがのろのろと進んでいた。
(次回予告)
(※BGM「アニ×じゃな~い?」、ナレーション:
♪デ、デ、デ、デ~ン♪
「とりあえず、宇宙世紀に行っちゃえば、大丈夫って考えたの、浜子さんは?
が、真島はメロンクリームサワーの飲み過ぎで泥酔。
三連星は(顔が)怖い、(見かけは)強そう!
必殺! ジェット・スト(ry
ならば対抗するのは、高○名人の16連射!
次回、アクシズZZ『オデッサ(3)』
酔っ払いの修羅場が見られる!」
(あとがき)
『ハンマーさま、バンザァァァイ!!』で笑いを取れたか否か、それが問題だ。