企業戦士アクシズZZ   作:放置アフロ

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(前回のあらすじ)
(※ナレーション:明日 修道(あした・しゅどう)

「刻一刻と近づくオデッサ作戦。連邦軍は新しい部隊を編成する。でもって、策略家のマ・クベはスパイを使って罠を張る。
 西暦じゃ、おっかな~いおば、ぇと・・・・・・お、ねえ、さんが歴史を変える気、満々でいるし。宇宙世紀はどうなっちゃうの?」 





19 オデッサ(2)

 UC.0089年1月、第一次ネオ・ジオン戦争末期。コア3沖会戦。

 

「うおおおおおうぅぅぅ!!」

 

 パイロットのキャラ・スーンは裂帛の気合を放つ。重モビルスーツ(M S)《ゲーマルク》に迫るオールラウンド攻撃のビームは不可視のバリアによって跳ね返された。

 Iフィールドも持たぬMSが起こした怪現象に、ビームを放った機体、量産型《キュベレイ》のパイロットたちは恐れおののいた。

 

「お前ら、一人も生かしておかないよ!」

 

 キャラは手近の一機に反撃。《ゲーマルク》のファンネル攻撃が《キュベレイ》のヴァイタルを次々と貫き、宇宙に爆発した。

 だが、

 

(なんだ!?)

 

 キャラはその刹那、小さな何かが弾けるような感覚を覚えた。敵のパイロットを殺した瞬間、いや、殺す直前、呪いから解放された魂が上げた叫び。それは、

 

(泣き声!? 子供だと?)

 

 怖い、とも彼女には聞こえた。

 

「ふざけんじゃないよっ! この猫目のキャラ・スーンに子供を相手させるなんてさっ!」

 

 キャラは湧き上がる不快感を、馬鹿にされたと思う屈辱感で押し潰した。

 

「うるさいガキは大嫌いだっ!」

 

 《ゲーマルク》は肩に【12】とマーキングされた、逃げる《キュベレイ》を追う。

 

「お前も死ね────っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西暦1989年11月。東京都内、カラオケ喫茶オデッサにて。

 

 まるでライオンのたてがみのような逆毛は、肩まで長く伸びている。髪は真ん中から左右別々の色に染め分けられている。真っ赤とキンキラ金に。

 

「ハッ! ・・・・・・夢か」

 

 派手なヘアースタイルの持ち主、木矢良 すみれ(キャラ・スーン)はテーブルに突っ伏した状態から目覚めた。いつの間にか飲んで眠ってしまったらしい。

 

「♪25時間、戦~えますかっ? 企業戦士~(ビジネスメ~ン)♪」

 

 ミニステージではアクシズ建設のバカその1、後藤(ゴットン)が流行コマーシャルをもじった替え歌を熱唱していた。

 

(やれやれ、のん気なやつだ)

 

 額を拭うと、びっしょりと汗をかいている。

 

(なにか冷たいものでも食べたいところだね)

 

 テーブルに目を戻すと、木矢良(キャラ)が注文したカンパリソーダに少し離れて、キャラメルバニラアイスがある。スプーンがアイスに突き刺さったまま放置されていた。

 不審に思い、隣の席を見ると、

 

「あ、ぁ、溶かされる・・・・・・ビームで・・・・・・ガクッ」

「ちょ、ちょっと、しっかりしな! どうしたんだい、麻里(マリーダ)ちゃん!?」

 

 栗毛の少女は白目をむき、カニのような泡を噴いて気絶した。どうも木矢良の夢の内容が()()()()()したらしい。

 

 

 ここで飲み会の参加者を紹介する。

 まずアクシズ建設社長の浜子(ハマーン)と秘書の入谷(イリア)

 『営業の3バカ』こと後藤(ゴットン)真島(マシュマー)暮巳(グレミー)と、『営業の嵐』こと馬場(ばんば)日安(ひあん)和井武(わいたけ)。なぜ彼らが嵐と呼ばれるのかは、社内でも謎とされていた。

 設計課からは赤堀(あかほり)上賀(うえが)、それに4月入社の中里 有紀(ユウキ・ナカサト)

 アルバイトの麻里(マリーダ)

 厚生課からは本郷 すみれ(スミレ・ホンゴウ)、そしてNTのやよいだ。

 ちなみに、NTとは日本酒の銘柄を飲み当てる特殊な才能、―Nihon-shu talent:利き酒能力―を意味する。やよいは同時に36の銘柄を認識することができ、唎酒師(ききざけし)『匠』の称号と日本酒検定特級の持ち主である。

 このアクシズ軍団に、半ば強引に連れて来られた『掃除のお・・・・・・ねえさん』こと木矢良(キャラ)を加え総勢15名であった。

 

 

 

 

 木矢良たちと別の席では、

 

「真島先輩、機動戦士ガンガル乙乙を知らないんですか?」と暮巳。

「知らん。どんな話なんだ?」

 

 真島はアニメに興味もなかったが、一応聞いている姿勢を見せる。

 

「サンレイズ製作のガンガルシリーズ最新作! 世界に誇るハードSM作品ですよ!」

(・・・・・・ハードSFのことか?)

 

 何か不適当なアルファベットのような気もしたが、真島は聞き流した。

 

「・・・・・・それで、この敵役のマシュマロ・セロリってやつがどうしようもないやつなんですよー」

「ほぅ?」

「こいつはホテルのチェックアウトを金塊でするんですよ」

「ちょっとなに言ってるか意味不明だな」

「ですよね! マシュマロは『キャッシュもクレジットも無いからこれで頼む』って、スーツから金の延べ板、取り出すんですよ。他にも自分のことを『救いを求める哀れな子羊』とか言っちゃたり、ツッコミどころ満載なんですよ!」

「アッハッハッハ! いろいろ痛いキャラだな、そいつ。一回、死んだほうがいい」

「大丈夫。死にますから! 『ハンマーさま、バンザァァァイ!!』とか言いながら」

 

 真島は急にデジャブを味わい、背筋を寒気が駆け抜けていった。

 その時拍手が起こり、場を笑いで盛り上げていた後藤が真島たちの方へ戻る。

 次にミニステージへ向かったのは、意外にも

 

都外川 暮巳(グレミー・トト)、参ります!」

 

 カラオケカセットを持参するほどの気合の入りようだ。それはアニメ『ガンガル乙乙』のオープニングテーマであった。暮巳の美声と思いのほかパンチあるシャウト。

 しかし、

 

「♪子供はだれも笑いながら、エロビの見すぎというけど、ボクは絶対に~絶対に~オナってなんかない~♪」

 

(中略)

 

「♪ア~○~×じゃな~い? ○~二~×じゃな~い? やらしい世界~♪

 ♪ア~ナ~○じゃな~い? ア~○~ルじゃな~い? 本番なのさ~♪」

 

 歌詞の意味不明さは頭部にハイメガ砲を装備した《某々ガンダム》に匹敵し、場は厳冬のシベリアのように凍りついた。

 特に女性陣はなにか気持ち悪いものでも見てしまったような、そんな目で暮巳を見ていた。

 パチ、という拍手のかけらもなく曲は終わった。

 空気を読んだ真島が、暮巳の腕を引ったくりステージから降ろし、速攻で席に着かせた。

 

(まったくこのバカなんで飲み会にこんなカセット持ってくんだよ!)

 

 カセットを叩き割ってやりたいと思いつつも、歌詞カードに書かれていたあらすじに目を通す。

 

『サイド1・1チョウメのコロニー・カブキチョウに住む少女ジュリエット・アイタタ。彼女は不良少年少女と共に、宇宙船《アーマガエル》を盗んで、宇宙海賊の道へ。追う恥○連邦軍(ちきゅうれんぽうぐん)。対立するロリ・オジン軍。彼女は宇宙の覇者になれるのか!?

「ジュリエット・アイタタ、《乙乙ガンガル》! ふぁ・・・・・・ぁぅ、ぃき・・・・・・イキま~す♪」

 ※当作品は成人向けアニメです』

 

「あ、エロアニメか。え? ・・・・・・アニメじゃないのか? どっちだよ! なんで誰もつっこまねぇんだよ!」

「いや先輩、作中ではちゃんと女の子に(♂を)突っ込んでま・・・・・・」

「お前に聞いてないわ―――っ!!」

 

 真島は逆水平チョップの強烈なツッコミを入れた。

 

 

 

 

 浜子(ハマーン)は、後悔していた。

 

(グレミーを強化した覚えはないのだがな)

 

 このままでは暮巳も謎の店『はざま』に連れて行くことになるだろう。

 本当は真島と同じテーブルにつきたいのだが、暮巳というロリコン・マザコン・アニオタ・弩変態という四重苦のせいで、そこはすっかり女っ気がなかった。あのやよいですら寄り付かない。

 別のテーブルでは、麻里が介抱されているが、一向に目覚める気配がない。

 

(麻里と木矢良の相性が悪いことは少し考えれば気づいたろうに、私としたことがうかつなことを・・・・・・それに)

 

 浜子は設計課の赤堀と上賀を見る。

 

(あの二人は確か、エゥーゴに潜り込ませた連中ではないか?)

 

 だいぶ昔のことなので記憶が曖昧だ。

 

(これでは、宇宙世紀に行った途端、また内乱を招きかねん)

 

 同族殺しはアクシズの十八番(おはこ)である。

 ふと、コロン、と氷が転がる音がした。入谷(イリア)がウォッカのグラスを傾けている。

 

「都外川君、ずいぶんはしゃいでましたね」

 

 入谷は目の下に幾分朱がさし、色艶やかになっていた。しかし、暮巳のテーブルへ行くつもりは、さらさらないらしい。

 

「入谷、やはり頼りになるのはお前しかないようだ。アクシズに尽くしてくれ」

「・・・・・・社長。私はアクシズのためならたとえ火の中、水の中でも飛び込む覚悟です」

「私は良い部下を持った」

 

 二人は互いのグラスを軽く当て乾杯した。

 

(いづれにしろ、私にとっては背水の陣だ。早くあの俗物の首をあげねば)

 

 浜子は決意を新たにした。

 

 やがて、アクシズ軍団はカラオケ喫茶オデッサを後にし、アルコールに導かれるまま時空の狭間(はざま)に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 UC.0079年11月。旧ルーマニア、ブカレストの西方約70キロ、ポエニの町。

 

 いたってのどかな雰囲気だった。

 色づいた木々はここ数日の風雨で葉を落としていたが、今は晴れ。見渡す限り緑の牧草、そして、兵士たちの頭上には青空が広がっていた。

 早朝パトロールの後、ジオン軍MS中隊々長・ボールドウィン少佐は牧場脇に駐機した《ザク》の足元、部下たちとブランチを楽しんでいたところだった。

 未舗装路の小石を飛ばして、伝令のバイクがやってくる。

 

「オルト川の連邦軍が火砲類のカモフラージュネットを外している」

 

 《ルッグン》、《ワッパ》をようする偵察部隊からの報告だった。中隊のパイロットを急ぎ集め、ボールドウィンは皆に伝えた。

 

「連邦軍が偽装を取り払い始めた。どういうことかは分からない、が」

 

 ボールドウィン本人はもちろん、部下たちも連邦の動きの意味することを敏感に感じ取った。

 ささやかれる連邦軍の一大反攻作戦。

 無論、いつものようにブラフの可能性もある。無線通信量を増やし、前線まで部隊進出をさせた後、後方へ退く。連邦軍はこのところ、繰り返していた。

 

「全機搭乗。丘まで前進する」

 

 だが、その途上で事態は動き出した。

 

『上空11時、敵機2!』

 

 ジグザグの千鳥縦隊を取っていた《ザク》中隊は一斉にザクマシンガンの対空射撃を開始する。現れた戦闘機《セイバーフィッシュ》は緊急回避、来た方角へと戻っていった。

 

「ずいぶんと早く退く。一発も撃ち返してこないとは、な」

 

 かえって不気味だった。

 5分ほどかけて西方を一望できる小高い丘まで移動する。オデッサを目指す連邦軍が東進すれば、かならず姿を現すはずだ。しかし、

 

「なんだ、この数は!?」

 

 眼下の丘陵を見回して、ボールドウィンは唖然とした。

 正面モニターの視界、水平およそ150度を小さな黒点が埋め尽くしている。牧草地の端から端まで見渡す限りびっしりと。

 地上の連邦軍の主力、《61式》戦車だ。

 

『よろしいですか、中隊長殿?』

「なんだ、プリラー?」

 

 副長の大尉が軽い口調のレーザー通信を送ってきた。

 

『連邦の大反攻に、栄光ある突撃重装甲兵大隊(※)の1個中隊ってのは、どうも・・・・・・。お寒いですな。十字勲章でも頂けるんですか?』

「戦傷章でももらっとけ」

 

 ふたりは笑い飛ばした。

 距離がある戦車は、ひとつひとつは豆粒のように小さい。が、密集・連携し大きな一団を作り、《ザク》中隊が立つ丘に迫ってきた。

 また、彼方の上空には渡り鳥の群れのように、航空機の大編隊が形成されていた。先ほどの2機はせいぜい斥候に過ぎなかった。

 

「深く考えるな。射程にはいったものから任意に撃て! 移動しろ!」

 

 部下に通達すると、ボールドウィンは自機の《ザク》を水平移動させつつ、もっとも近い《61式》にマシンガンを照準する。

 急制動、即発射。命中した《61式》は走行中ということもあって、キャタピラと転輪をばら撒きながら爆発する。

 次の瞬間、正面がかすんだ。

 《61式》が装備する150ミリ連装砲。無数の連装砲が吐き出す砲煙、発射炎、そして砲弾の嵐だった。

 右膝部に直撃をもらったボールドウィン機は、よろめきながら後ずさる。そして、泳いだ上体に向けて第二射の砲弾が殺到した。サンドバッグ打ちにされるボクサーさながら、千鳥足になった《ザク》は爆発、地に倒れた。

 指揮を受け継いだプリラーが無線に叫ぶ。

 

「こちら第一中隊。中隊長戦死! 敵の猛攻を受けている。至急、・・・・・・」

 

 ミノフスキー濃度は急速に高くなっていった。

 

(※実態はMS大隊だが、士気高揚などを狙って改称されたもの)

 

 

 

 

 地球連邦軍の反攻、オデッサ作戦が始まった。《ホワイトベース》が失われ、レビル将軍は急きょ後方かく乱を目的とした部隊を編成する。

 機械化空挺大隊。

 主戦場が宇宙に移行するまで、連邦内では量産型MSの存在は秘匿される計画であった。しかし、欧州方面軍には先行して30機の《ジム》が配備されていた。ここから2個中隊を抽出。ジョン・コーウェンようするMS特殊部隊第三小隊の3機を加え、合計27機。また、対MS特技兵2個中隊がこれを支援する。

 彼らをオデッサ基地の背後に輸送するのが、マチルダ中尉が所属する第136輸送航空連隊である。作戦に際し、マチルダ隊は《ミデア》戦術輸送機15機に増強。護衛として《セイバーフィッシュ》汎用戦闘機、および近接航空支援として《フライマンタ》戦闘爆撃機が随伴する。

 連邦軍の動きはスパイを通じてジオン軍マ・クベ大佐に知られることとなった。後方の警戒として、エースパイロット黒い三連星、赤い彗星のシャアに加え、二つのMS特殊部隊を投入。合計戦力はMS15機、1個中隊強(※2個中隊弱といおうか)である。

 決行日、《ミデア》編隊は日没と同時に飛び立った。

 連邦軍の圧倒的航空戦力の前にジオンの《ドップ》戦闘機は次々と落とされた。しかし、降下予定地に近づくにつれ、地上からの対空砲火は激しくなり、被弾する《ミデア》も出始めた。

 《フライマンタ》が応戦するも、赤外線すら干渉を受けるミノフスキー高濃度下の夜戦では効果が発揮できない。連邦軍航空機が装備する前方監視サーマル・センサーは、地下に偽装エレベータで隠ぺいするメガ砲台を感知できなかった。

 

 ここで意外な事態が発生する。

 

「バカな! 早すぎるぞ、降下待て!」

 

 マチルダ中尉の制止も聞かず、一部輸送隊が部隊を降下させ始めてしまった。対空砲を恐れた他の機も追従する。結果として、空挺大隊の大部分が黒海北岸の広い地域に、薄くばら撒かれることになった。

 練度の低い連邦軍MSパイロットは各個撃破される、と思われた。

 

 だが、地上のジオンでも軍隊らしからぬ状況に陥っていた。

 戦闘の前、

 

「俺たちは好きにやらせてもらう」

 

 黒い三連星のガイアはそう言って、自ら遊撃小隊となることを宣言した。

 本来であれば、外人部隊のダグラス・ローデン大佐がその場の最高階級として指揮するべきである。ところが、そも基地司令のマ・クベが「お膳立てはしてやった。あとは勝手にやれ」とばかりに放置しているため、現場は混乱した。この辺りマ・クベが文官肌だからか、権謀術数におぼれているからか、あるいはただの馬鹿なのかは不明である。

 『精鋭部隊による共同作戦』という言葉は薬にしたくとも爪のあかほどなく、結局、三連星とシャア、二つの特殊部隊は各個に戦うこととなった。

 戦況は五里霧中。時間だけがのろのろと進んでいた。

 

 

 




(次回予告)
(※BGM「アニ×じゃな~い?」、ナレーション:明日 修道(あした・しゅどう)

♪デ、デ、デ、デ~ン♪

「とりあえず、宇宙世紀に行っちゃえば、大丈夫って考えたの、浜子さんは?
 が、真島はメロンクリームサワーの飲み過ぎで泥酔。
 三連星は(顔が)怖い、(見かけは)強そう!
 必殺! ジェット・スト(ry
 ならば対抗するのは、高○名人の16連射!
 次回、アクシズZZ『オデッサ(3)』
 酔っ払いの修羅場が見られる!」


(あとがき)
 『ハンマーさま、バンザァァァイ!!』で笑いを取れたか否か、それが問題だ。


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