(※ナレーション:
「おっぱいおばけ、なんて言われてたけど、なんだかんだで
さっすがラジオ番組で「グラマーナンバーワン!」になるだけはあるじゃない。
うるさいだけのprpr言ってるお子チャマとか、行き遅れのオバーン・カーンとは一味も二味も、血が、ウッ・・・・・・」
針葉潅木林の樹冠から、4つの巨大な頭部が飛び出している。四方へ監視の目を向けるジオン軍の
『では我々はアズナブル中佐の指揮下に入ります』
「頼む」
フェンリル隊の紅一点、シャルロッテ・ヘープナー少尉の通信にシャアは短く応答する。
オデッサ基地後方に配置されたジオン軍エースパイロットと特殊部隊の混成。予想戦闘地域を適当に切り分け、それぞれが独立して担当区域としていた。
連邦軍が思いのほか、早く降下したことはジオンにとっても想定外であった。
そして、敵が分散したため降下した場所もあれば、そうでないところも出てくる。シャアの受け持ちは敵が現れなかった。
すぐに隣接区域に移動、フェンリル隊のシャルロッテ小隊と合流したというわけである。
「小隊を分ける。ヘープナー少尉は私と、ロベルト少尉はスワガー曹長と組め。先頭はヘープナー。ロベルト分隊は後方で左右に展開」
さすがに、彼らも訓練された軍人らしく、指揮がはっきりするときびきびと動いた。
『10時の方角、微弱ですがセンサーに反応あり』
1キロ先行し斥候を務めるシャルロッテの《ザク》からレーザー通信が届く。
モノアイが旋回し、光学センサーが前方やや左の深い森を探る。そこは、現在シャアたちが進行する潅木よりも木々が深かった。
「ヘープナー機、一時停止。各機の間隔をつめる」
散開した小隊を集め、火力密度を上げる。無論、待ち伏せ攻撃で損害を大きくするほど、密集するわけではない。
(だが、しかし、・・・・・・。なんだ、この肌がじりじりする感覚は?)
シャアは胸騒ぎがした。
*
《リック・ディアス》頭部のハッチから、口ひげを生やした男が顔を見せている。『中年』と言っては哀しいし、『青年』と言うと首を傾げてしまう。微妙な年齢だ。
その男、
「やよいー、バカな真似はよせー。いい加減酔い覚ませー」
この辺りは黒海に流れ込む河川によって大小の湖沼ができていた。
そのひとつ、森の中の池。ほとりにはアクシズ軍団5機のMSが屹立していたが、眼下ではやよいが泳いでいる。服はどこで脱ぎ捨てたのか、まっぱ・・・・・・、一糸まとわぬ姿だ。
「気持ちイイ~♪ おっさんも来なヨ~♪」
腰から上を水面に出したやよいが手を振っている。少し離れて、横転した黒いMS《トゥッシュ・シュバルツ》が岸に放置されていた。
「来なよって言ったって、なぁ。どうするよ?」目のやり場に困る
『いいんじゃな~い、行って来いよ~』と同僚の
『あ、僕泳ぎダメなんで』と速攻で拒絶する
『この会話、他の連中には聞こえてないよな? おい、暮巳! 上賀さ~ん!』
後藤の呼びかけに反応が無い。《ザクⅢ改》と《ガ・ゾウム》の秘話回線のようだ。
『真島よ。・・・・・・やよいってさ、全然胸ないな』
「ですね」
ふたりはMSの光学センサーでズーミングする。だからといって、やよいの絶壁まな板が凹凸の丘陵になるわけではない。
「あいつ面白いし、酒も飲めるし、悪い奴じゃないんですけど」
『そうだよなー。しかし、いかんせんサイズがなぁ。やっぱ考えちゃうよな』
「キャハハ♪」と嬌声を上げながら、水面を叩いていたやよい。唐突に、ぎろり、と三白眼となって《ザクⅢ改》をにらんだ。ガンダリウム装甲を貫き抉るような視線。
「今、変なこと考えたろ! 私の『例のあの能力』を甘く見るなよ」
薬物投与された強化人間の目つきに戻っていた。
「私の胸はなぁ、大きくなくても陸のおっさんを魅了するぐらい
「ちょっ! なにいきなり変なこと暴露してんだ! 俺は全然そんな気なんて・・・・・・」
「バカにしてぇ、・・・・・・ギャ―!」
かわいくない悲鳴を発して、やよいが水没する。
陸の《リック・ディアス》がやよいを捕まえようと慌てて池に飛び込んだため、大きな波に飲まれてしまった。結果的に、黙らせることはできたが。
その時!
真島は背後から迫る殺気を覚え、鳥肌が立った。
反射的にトリガーへ指をかけながら機体を回頭する。モニター正面、深い森に揺らめく鬼火を見た。
直後、
『ぐわぁっ!』
爆発が直近の《ガ・ゾウム》で起こる。バズーカ砲弾の直撃だった。同時に、断続的な火線が《バウ》と赤堀の《リック・ディアス》を襲う。
「なろっ!」
とっさに真島もビームライフルを応射する。敵位置も把握していないめくら撃ちだったが、反応はあった。強烈な光軸に銃撃が一時的に止む。
不気味な静寂。
それを破る高速の足音。モノアイの鬼火が迫る。
「速い! 木が避けてんのか!? あ、・・・・・・こいつは!」
真島がうめいた時には《ザクⅢ改》の近接距離に入ったMS、赤い《グフ・カスタム》をモニターに捉えていた。
「私は神を信じたくなった。感謝せねばなるまい! この強敵に巡り会わせてくれたことを」
シャアは狂喜した。
*
不意打ちでザクマシンガンの点射が命中した《リック・ディアス》。しかし、ガンダリウム・ガンマの装甲にはあまり有効ではなかったようだ。赤堀機のダメージ・コントロール・システムは『損傷軽微』と告げている。
とはいえ、この場に留まり続けて攻撃を受け続けるのは危険だ。すぐに、真島、暮巳、後藤の3機、そして、赤堀と陸の2機に散開した。
幸い、シャアとフェンリル隊は真島たちへ引っ張られるように、離れていった。
「見つかったか!?」
『あぁぁ、ちくしょー、やよい、どこ行っちまったんだよー』
陸の焦りまくった調子のレーザー通信が返ってくる。陸機は池に脚部まで浸かりながら、盛んに水中をマニピュレータでさらっている。しかし、月明かりに照らされた水面はうねっているばかり。
と。
赤堀機のコクピット内を警告音が響く。視線をやれば池の対岸には、
「べ、別働隊か!?」
記憶を失った赤堀は覚えていないが、連邦軍の《ジム》であった。
*
『先行し過ぎだ! 回り込め!』
「ッ・・・・・・了解(ギャンギャンほえんな、隊長さん)」
先頭の《ジム》はシールドも装備せず、突撃した。パイロットはヘルメットの内で獣のように歯を剥く。
「せっかく巡ってきた実戦の機会なんだ。俺を楽しませろよ!」
一年戦争中、後方のテストパイロットで終わるはずだった男は壮絶な笑みを浮かべる。
彼の生まれ持った対G特性は、強烈な加速に耐える。スラスター全開で水面を一気に駆け抜ける。
《ジム》が背に回した左マニピュレータが閃いた。勢いもそのまま、《リック・ディアス》へ光刃を叩き付ける。
「おおぅ! 俺の抜き撃ちを防ぐとは・・・・・・やる!」
男はうめく。必殺の一撃は、《リック・ディアス》が腰部から引き抜いたビームサーベルが受け止めていた。
二撃三撃。流れるような《ジム》の斬撃を《リック・ディアス》は受け返した。それどころか、返す刀で袈裟斬りを仕掛ける。《ジム》の胸部装甲がわずかだが焼き切られた。
『ヤザン、退け!』
(余計なことしやがって!)
ようやく追いついた隊長機の《ジム》が対岸から援護射撃する。味方機からの光軸に注意しつつ、ヤザン・ゲーブル曹長は自機を後方上空へジャンプさせた。
「バニング隊長、他の虫けらどもを頼む。こいつは俺が取る!」
スラスター推力と重力が拮抗し、やがてヤザン機は自由落下を始める。落ちながら、ビームスプレーガンのトリガーを引く。
「当たれぃ!」
*
『敵を向こう岸へ押し返す! その隙にやよいを!』
赤堀は《リック・ディアス》を突撃させながら叫んだ。着水したヤザンと対岸のバニングは赤堀機の勢いに飲まれ、《ジム》を後退させる。
「頼むからやよい、出てきてくれっ」
陸は祈りながら、《リック・ディアス》はひたすら水面をすくう。激しいMS戦でいまや水の色は濁り切っていた。すると、
「あぁ! いた!」
とうとう、マニピュレータが白い肉体を探り当てる。だが、やよいはぴくりともせず、ぐったりと肢体を横たえたままだ。
陸機は、落とさぬよう両手でやよいを包み込み、即座に戦場を脱すべく跳躍した。
対岸では脚部を池につけた状態で、赤堀の《リック・ディアス》、そしてヤザンの《ジム》がつばぜり合いを演じていた。バニング機もヤザンを援護すべく、回りこもうとするが、
「させるかっ!」
赤堀は巧みに《リック・ディアス》の位置を入れ替える。ヤザン機を
「しゃらくせぇ!」
激昂するヤザンはつばぜり合いの状態から、スプレーガンを突き出し、発砲。ぎりぎりで《リック・ディアス》も手で払い照準を外すが、ピンクの光軸は湖畔の木々を貫通し燃え上がらせた。
突然、《リック・ディアス》が意外な行動に出た。
スプレーガンの短銃身を左手につかむや、強引に下へ向かせたのだ。
「何しやがる! くそっ、離せ!」
その体勢のまま、ヤザンはトリガーを引いた。一瞬にして目前に巨大な水柱が生まれ、2機を分かつ。
視界がふさがれ、ヤザンは次の動作がわずかに遅れた。
水飛沫のカーテン、その向こうでは《リック・ディアス》のモノアイ上部ハッチが開放されていた。砲口をのぞかせる連装バルカン・ファランクス。『ヴォオオオ』と尾を引く砲撃音の後、ヤザン機は頭部を失って仰向けに倒れた。
「行かせんぞ!」
そのまま後方上空へジャンプで逃げる《リック・ディアス》に、バニング機が肉迫する。
《リック・ディアス》はビームサーベルを投げつけ牽制するや、背部からビームピストルを引き抜く。
「くらえぇぇぇ!」
赤堀から裂帛の気合がほとばしった。二挺拳銃となって、銃身も焼けよとばかりに撃ちまくる。照準の甘さは手数でおぎなう。
空対地の激しいビームの応酬となったが、絶対的火力に劣り、かつシールドでヤザン機をかばいながらのバニングは不利だった。
《リック・ディアス》はビームピストルがエネルギー切れを起こすと、回頭。バーニアを全開にして陸機の後を追った。
「追撃は、・・・・・・無理か。ひどい有り様だな」
2機の《ジム》は直撃こそなかったものの多数のビームがかすめた。装甲は放射熱で焦げ、飛沫した融解金属が無数の穴をうがっていた。
バニングは対岸へ散発的な牽制射撃をしつつ、ヤザンの《ジム》を引き上げ森に後退した。
(畜生ゥ・・・・・・。完敗かよ。俺はビビッてたわけじゃないはずだ。冷静でいられなかった・・・・・・だから負けた、のか?)
コクピットで逡巡するヤザンは、網膜に飛び込んできたモニターの光に我に返る。対岸の戦火だ。
「まだ、やれる! ・・・・・・が」
ヤザン機は肩部リフティング・ポイントを引きずるバニング機のマニピュレータを払い、機体を起こした。
『ヤザン! 一旦・・・・・・』
「了解した」
バニングがみなまで言う前に、ヤザンは後退機動を入力していた。スプレーガンの銃口を敵予想位置へポイントすることも忘れない。
(この借りはいつか返すぜぇ、謎のMS部隊よォ)
*
跳躍する赤堀の《リック・ディアス》は下方センサーが同型機を捉えた。針葉樹の群れに潜んでいる陸機だ。距離を取って着陸する。
「うわぁぁぁ! やよい、俺が悪かった。死なないでくれぇっ!」
陸機の足元では、男が涙と鼻水で口ひげをびしょびしょにしていた。
『泣いてる場合か! 心臓マッサージと人工呼吸だろっ!』外部スピーカーで叫ぶ赤堀。
陸は見よう見まねで、おっぱ○を激しく
しかし、
「ぐっ! うぇっ! 酒くせー!」
陸はあまりの臭気に飛び上がった。
すると、意識を失っていたやよいは、突然、腹筋運動よろしく上体を起こすや、
ガッ!
「いってェェェ!」
グーで殴る。彼女の目付きはまだ、とろんとしていた。
「なにすんだよ!」
「それはコッチのセリフだヨ。私のファーストキスを奪っておいてさ」
「ひ、人聞きの悪いこと言うなよ。あれは・・・・・・えっ、初めて、だった、の?」
「責任取ってヨ! おっさんなんて第三希望だったんだからネッ!」
「な、なんだよ、それ。それにモウサのバーでも言ったろ。おっさんはやめろって。ん? ・・・・・・モウサって、なんだっけ?」
陸は自身が発した言葉に戸惑った。
「じゃぁ、やめる。けど、・・・・・・ちゃんと責任取ってくれる?」
やよいはうつむきながら、上目遣いに陸をうかがう。
「・・・・・・あ、あぁ」
「・・・・・・いいよ、陸。私のために泣いてくれたから。二回も」
「え?」
夢うつつの中のやよい。彼女は前世で消滅する間際、リカルド・ヴェガが発した
が、
「クシュン。・・・・・・え?」
寒さに震え自分の肩を抱き、視線を落として、・・・・・・
「うそっ! はだか!?」
正気を取り戻した。
陸が背広を脱いだ。かけてやるつもりだったのだろう。しかし、やよいは陸がこれから『事に及ぼうとしている』のだと勘違いした。
「おいおい、やっと起き・・・・・・」
「やだぁっ!」
ドゴゥッ!!
もう一度全力で陸を殴った。
(次回予告)
(※BGM「アニ×じゃな~い?」、ナレーション:
♪デ、デ、デ、デ~ン♪
「調子に乗ってお兄ちゃんが怪我しちゃったから妹の私が代理で~す♪
ついに、シャアさんと
また、《GザクⅢ改》全開って感じなのかしら?
それに、・・・・・・嫌っ!
次回、アクシズZZ『オデッサ(8)』
フェンリル隊の皆さんどう立ち向かうの?」
【
【真島とやよいのフラグが折れました】
【やよいと
(あとがき)
活動報告のMSクイズ、正解は《グフ・カスタム》でした。ウーン、おしぃ。しかし、シャアの乗機はアイデア・プロット段階で二転三転しました。
最初は、三連星と同じ《ドム》(赤仕様)。
↓
次に、地上用《ヅダ》。ちょっと何言ってるか分からない!
↓
さらに、《グフ》戦術強攻型。ここまで来ると、もうどーにでもなーれ、って感じですね。
で、最終的にオーソドックスな《グフ・カス》に落ち着きました。