企業戦士アクシズZZ   作:放置アフロ

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(前回のあらすじ)
(※ナレーション:明日 理奈(あした・りな)

「色々あったけど、結局やよいさんと(リカルド)さんがくっついたみたい。
 あぁ、私も素敵な人と出会いたいなぁ。でも暮巳(グレミー)さんは無しね。
 えっ! 今日はあの人が出てくるのっ!? やだな~」 




25 オデッサ(8)

 シャアの《グフ・カスタム》と真島(マシュマー)の《ザクⅢ改》は互いに近すぎて、仲間の援護は受けにくい状況だ。

 また森は深く、見通しは悪い。推力に頼った高機動は望めない。

 高度に訓練されたフェンリル隊はともかく、

 

「あわわ! パパン、ママン、都外川家の名をもって暮巳をお守りくださ~い」

 

 《バウ》は逃げ回りながら、ビームライフルを散発的に撃ち返す。

 

「に、逃げたい! けど、逃げたら厚生課。こ、怖いのは左遷だけだぁぁぁ!!」

 

 《ガ・ゾウム》はデタラメにハイパー・ナックル・バスターを乱射する。仲間の援護どころか、自分の身も危うい状況だった。

 

「あいつら、動きは素人ね。仕掛けるわ」

 

 看過したシャルロッテがニッキとスワガーに通信する。

 はたして、《バウ》と《ガ・ゾウム》はおろかにも、同時にビームのエネルギー切れを起こした。

 

「今ッ!」

 

 シャルロッテ機は森を縫って突撃。援護の2機は左右に散開しながら、ニッキ機はマシンガンを、スワガー機はザクバズーカを発射する。

 

(そこの赤い奴!)

 

 シャルロッテは猛攻に棒立ちの《バウ》に狙い定めた。マシンガンのスラローム射撃は上下左右に分散し、ろくに当たらない。牽制だ。構わない。

 

「次、ヒートホーク!」

 

 マシンガンをリロードせず、思い切りよく投げ捨てる。腰部からヒートホークを抜くと、シャルロッテ機と《バウ》の距離は50メートルに迫っていた。

 

「わ、わ! 来る、来るな―――!」

 

 恐慌状態の暮巳(グレミー)は操縦桿を激しく揺すった。

 と、

 

 ボキッ。

 

「あ。あぁあ―――!・・・・・・外れた」

 

 手元に残った右スティックを呆然と眺める。

 《ザク》のメインスラスターから爆発的に青白い花が咲く。

 モニター正面から急速に近づくシルエット。斧を振り上げるその姿は、暮巳にはやけにゆっくり見えた。

 

(やられる)

 

 だが、体は本能的に反応していた。《バウ》の近接戦用バルカンが火を噴く。

 その攻撃はシャルロッテにも意外だった。偶然、モノアイに飛び込んだ砲弾が視界を奪う。サブカメラに切り替わる間もなかった。

 続くコクピット上部への弾着に揺さぶられ、《ザク》は《バウ》の足元へ倒れこんだ。かろうじてシャルロッテは脱出する。

 そのパイロットスーツ姿を認めた暮巳(グレミー)

 

「こいつめェ、踏み潰してやるっ」

 

 右スティックをテキトーに差し戻すと、《バウ》の脚を振り上げる。もちろん本気ではない。脅しだ。

 しかし、効果は十分だった。シャルロッテは転げるように逃げる。

 バルカンの火線が追いかける。

 

「待てぇ~。・・・・・・あれ、こんな光景をどこかで見たような・・・・・・アクシズ? え、アクシズって会社じゃなく??」

 

 その時、地響きを立てて猛追する《バウ》を振り返り見たシャルロッテは、つまずき農業用水池に落ちた。

 

「バイザーがっ、・・・・・・ゴポッ!」

 

 ヒビが入っていた。しかも、開閉装置が作動しない。

 もがき水面上に出ると、頭を引きちぎるようにして、ヘルメットを脱ぎ捨てた。

 

「んはぁ・・・・・・、えっ、けほ、けほ・・・・・・はぁはぁ」

 

 頭上に影がかかる。

 シャルロッテは、ハッ、と見上げた。濡れた赤毛を掻き分けたすぐ先、《バウ》が直立している。

 

「はは、あははは・・・・・・」

 

 人間恐ろしすぎると、笑うしかない。おまけに、シャルロッテは挨拶するように手まで振っていた。

 しかし、その行為は彼女にとって、非常に不幸だった。

 見下ろす《バウ》のビームライフルが地に落ち、土ぼこりを上げる。

 

「か、かわいい・・・・・・。なんだ、この胸の高鳴りは!? これが恋と言うものですか、ママン!」

 

 暮巳の脳内はお花畑が満開となった。あひる座りの乙女に()()()()()運命を感じてしまったのだ。

 分離ボルトが点火しシールドをパージする。即座に《バウ》の左手が伸びる。

 とっさに立ち上がりかけたシャルロッテだが、

 

「逃がしません!」

「きゃっ――、やめっ!」

 

 打って変わった《バウ》の敏捷さで、捕らえられてしまった。器用だ。逃げられぬようにしっかりと右手で包み込む。

 

「お、おい、暮巳! さっきから・・・・・・」

 

 異常を感じた後藤(ゴットン)がようやくレーザー通信を寄こしたが、遅すぎた。

 

「課長、先輩。運があったら生き延びてください」暮巳はつぶやく。

「シャルロッテぇぇぇ!」ニッキは叫ぶ。

「なにお持ち帰りしてんだ、暮巳ィィィ!」後藤も叫ぶ。

 

 ノズルから巨大な炎の大輪を咲かせた《バウ》は枝葉を吹き飛ばし、はるか上空へ遠ざかっていく。その後姿を、後藤(ゴットン)の《ガ・ゾウム》は呆然と見送る。

 が、長くはそうしていられなかった。

 

「シャルロッテを返せぇぇぇ!」

「ヘープナー少尉、必ず救出します!」

 

 怒れるニッキとスワガー曹長。フェンリル隊の猛攻を一身に受けることとなった。

 

 

 

 

 赤い《グフ・カスタム》は疾風となって闇を駆ける。

 

「必殺! グラディウス・レー・・・・・・」

 

 ビームライフルを照準するため《ザクⅢ改》は機体を旋回させる。が、近くの木に長銃身が引っかかり、わずかに動きが鈍った。

 

「そこっ!」

 

 見逃すシャアではない。《グフ》の35ミリ・ガトリングがビームライフルに命中、エネルギーが解放される。

 瞬間的に閃光と超高温の渦に巻き込まれた。モニターに飛び込む光は即座に明度調整されたが、熱はそうはいかない。緊急回避し右肩シールドで熱風を受ける。一挙に拡散したエネルギーは《ザクⅢ改》のシールドを半ばから溶断した。

 畳み掛けるように、正面から迫る殺気。真島(マシュマー)は装甲越しに感じた。無理な体勢のまま、後方回避を入力する。

 はたして、《ザクⅢ改》のあった空間を大質量の刃が切り裂く。

 《グフ》が手にするヒートサーベルは冷えた黒い刀身のままだった。オレンジの加熱状態であれば、太刀筋も予測しようがある。しかし、シャアの操縦技術も相まって、闇に溶けこむ刃は変幻自在だった。

 

「こいつ、できる!」

 

 プレッシャーと共に繰り出される斬撃に耐えかね、真島はさらに後退する。《ザクⅢ改》はスラスターを焚き低く飛翔した。

 が、【異常接近】の警告音の直後、激しい衝突。真島(マシュマー)はヘッドレストに後頭部を強打する。不用意にMSを飛ばしたため、背部から大木に激突したのだった。

 

「その推力が(あだ)だ。もらった!」

 

 《グフ》必殺の袈裟斬りが迫る。間合いも、刀身に乗った速度も、十分だ。《ザクⅢ改》の頭部を叩き潰す、

 

 ガンッ!

 

 直前、刃は二つのマニピュレータに挟まれ、押すも引くもできなくなった。

 

「奥義、真剣白刃取り!」

「チェックメイトには早い、か。だが!」

 

 シャアはヒートサーベルの電熱を稼動させる。電荷により、数瞬で赤熱する。《ザクⅢ改》のマニピュレータからは激しく煙を上げだした。表面が融解している。

 ところが、すぐに煙は消え、代わりに緑の燐光があふれ出した。

 

「そうだ、この光だ」

 

 シャアの肌に熱い感覚が蘇ってきた。

 ヒートサーベルを押し込もうとする《グフ》と押し返す《ザクⅢ改》。拮抗する電熱と怪光。

 そして、弾けた。耳障りな金属音が轟く。

 刀身を握ったまま《ザクⅢ改》が、ヒートサーベルをへし折ったのだ。

 

「よっしゃあぁぁぁ!」真島は勝ちを確信した。

「終わるかぁぁぁ!」シャアの心は折れていなかった。

 

 それは()()同時だった。

 《ザクⅢ改》が放った右回し蹴りは《グフ》の頭部に命中。だが、ワンテンポ遅れたために浅い。角状アンテナが噴き飛び、保護バイザーは砕けるが、《グフ》のモノアイは生きている。

 《グフ》は折れた刀身もそのままに、残ったヒートサーベルを《ザクⅢ改》に叩きつけていた。深々とグリップ部まで頭部に埋まる。

 真島は歯噛みするが、明らかに自分の慢心だった。

 

「まだまだぁ!」

 

 瞬時に補助カメラに切り替わった《ザクⅢ改》は両手で《グフ》を押し返す。

 《グフ》はよろめきながらも踏みとどまり、ガトリング砲を撃ち返した。

 コクピット・ハッチに伸びる火線は《ザクⅢ改》の右手が遮った。猛射を受け、手首から変な方向へねじ曲がったが、真島自身は健在だ。

 

「ならば!」

 

 間、髪をいれず《グフ》は右前腕を伸ばす。袖口からヒートワイヤーが飛ぶ。

 刹那、《ザクⅢ改》の膝が崩れた。いや違う! 膝が崩れたのではない!

 ワイヤー先端の鉤爪はコクピット・ハッチではなく、頭部の傾斜に命中し、後方に跳ねた。

 前に倒れこむように突進した《ザクⅢ改》は一転、伸び上がった。天を突く左アッパーが《グフ》の右肘関節を食いちぎる。

 さらに、《ザクⅢ改》は右腕を振り上げた。

 

「これが俺の本気だぁぁぁ!」

 

 ジャンクと化したマニピュレータを《グフ》に叩きつける。頭部が大きくひしゃげ、今度こそモノアイが潰された。

 

「もういっちょォ!」

 

 が、二撃目は《グフ》左腕が抜いた予備のヒートサーベルが食い止めた。邪魔になる3連ガトリングは排除(パージ)されていた。

 

「やる!」

「振り出しに戻るってか!」

 

 (おとこ)たちはコクピットで哄笑した。

 しかし、時ならぬ外野が割ってはいる。

 

「中佐、方位090、ジャンプ!」

 

 応答もせず、シャアの《グフ》は真横へ飛んだ。

 見越していたかのように、射線確保したフェンリル隊、2機の《ザク》からマシンガン、バズーカが殺到する。

 これには、《ザクⅢ改》も本当に膝が崩れた。

 

「ま、真島っ!? うおぉぉぉ!」

 

 ようやく、エネルギー・パックを交換した後藤(ゴットン)の《ガ・ゾウム》がハイパー・ナックル・バスターを撃ちまくる。

 

「これは・・・・・・チィ!」

 

 その火力を危険と感じたシャアはとっさに《グフ》を用水池に突っ込ませる。機体を半ば沈めやり過ごす。

 一時的にフェンリル隊も下がらせることに成功した後藤は、《ガ・ゾウム》をMA形態に変形させる。

 

「乗れ、真島っ!」

「でも、やよいがまだ」

「とっくに見つけて逃げたわ!」

 

 《ザクⅢ改》を機上に乗せた《ガ・ゾウム》はスラスター全開で垂直離陸する。

 森の樹冠を抜けたところで、直下にニッキの《ザク》が迫る。その手のマシンガンが真上に向けられた。

 

「行かせるかっ!」

「俺だってェ」

 

 後藤(ゴットン)は武装セレクターでミサイルを選択すると、一斉射撃を入力した。MA形態の下面から次々とミサイルが発射される。その数、18発。まさに、猛爆だった。

 ニッキは包み込むように迫る飽和攻撃に、死を覚悟した。

 直後に、激しい衝撃、轟音に襲われる。《ザク》は吹き飛び地面に転がるが、ニッキは気を失わなかった。

 

「ロベルト少尉、無事か?」

「中佐!? は、はい、自分は」

 

 ミサイルがまさに命中する刹那、ニッキ機を《グフ》がタックルしていた。しかし、もろに弾雨を浴びたスワガー機は爆散した。やよいが乗り捨てた《トゥッシェ・シュヴァルツ》も巻添えをくらい破壊される。

 

「しかし、シャルロッテが」

「今はやむをえん。武装も底をついた。後退する」

 

 樹冠には、真島ら2機が垂直上昇で開けた穴が出現していた。

 その向こうから、大質量の何かが回転しうなりを上げて、飛んでくる。

 

「む!」

 

 胸部コクピットを狙った投擲(とうてき)攻撃を、《グフ》はヒートサーベルでなぎ払った。跳ね返され、ニッキ機そばの地面に突き刺さる。先ほど折れたヒートサーベルの刀身だった。

 《グフ》の補助カメラが上空、一瞬とらえたシルエット。それは左手を投げ伸ばした《ザクⅢ改》だった。すぐに闇に溶け込み、消える。

 

「王手にゃまだ早ェ、ってか」真島のつぶやき。

 

 それを聞いたかのように、シャアは唇を不敵に歪めた。

 

 

 




(次回予告)
(※BGM「アニ×じゃな~い?」、ナレーション:明日 理奈(あした・りな)

♪デ、デ、デ、デ~ン♪
「外人部隊のお耳のお供、オペレータのユウキ・ナカサトさん!
 あれ、でも登場していきなりお亡くなりに?
 ピンチへ颯爽と現れる、アクシズ建設設計課の若きホープ! その名も(なか)・・・・・・。あ、あれぇ??
 次回、アクシズZZ『オデッサ(9)』
 あら、浜子さんも?」



【都外川家にメイドが増えました】



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