(※ナレーション:
「色々あったけど、結局やよいさんと
あぁ、私も素敵な人と出会いたいなぁ。でも
えっ! 今日はあの人が出てくるのっ!? やだな~」
シャアの《グフ・カスタム》と
また森は深く、見通しは悪い。推力に頼った高機動は望めない。
高度に訓練されたフェンリル隊はともかく、
「あわわ! パパン、ママン、都外川家の名をもって暮巳をお守りくださ~い」
《バウ》は逃げ回りながら、ビームライフルを散発的に撃ち返す。
「に、逃げたい! けど、逃げたら厚生課。こ、怖いのは左遷だけだぁぁぁ!!」
《ガ・ゾウム》はデタラメにハイパー・ナックル・バスターを乱射する。仲間の援護どころか、自分の身も危うい状況だった。
「あいつら、動きは素人ね。仕掛けるわ」
看過したシャルロッテがニッキとスワガーに通信する。
はたして、《バウ》と《ガ・ゾウム》はおろかにも、同時にビームのエネルギー切れを起こした。
「今ッ!」
シャルロッテ機は森を縫って突撃。援護の2機は左右に散開しながら、ニッキ機はマシンガンを、スワガー機はザクバズーカを発射する。
(そこの赤い奴!)
シャルロッテは猛攻に棒立ちの《バウ》に狙い定めた。マシンガンのスラローム射撃は上下左右に分散し、ろくに当たらない。牽制だ。構わない。
「次、ヒートホーク!」
マシンガンをリロードせず、思い切りよく投げ捨てる。腰部からヒートホークを抜くと、シャルロッテ機と《バウ》の距離は50メートルに迫っていた。
「わ、わ! 来る、来るな―――!」
恐慌状態の
と、
ボキッ。
「あ。あぁあ―――!・・・・・・外れた」
手元に残った右スティックを呆然と眺める。
《ザク》のメインスラスターから爆発的に青白い花が咲く。
モニター正面から急速に近づくシルエット。斧を振り上げるその姿は、暮巳にはやけにゆっくり見えた。
(やられる)
だが、体は本能的に反応していた。《バウ》の近接戦用バルカンが火を噴く。
その攻撃はシャルロッテにも意外だった。偶然、モノアイに飛び込んだ砲弾が視界を奪う。サブカメラに切り替わる間もなかった。
続くコクピット上部への弾着に揺さぶられ、《ザク》は《バウ》の足元へ倒れこんだ。かろうじてシャルロッテは脱出する。
そのパイロットスーツ姿を認めた
「こいつめェ、踏み潰してやるっ」
右スティックをテキトーに差し戻すと、《バウ》の脚を振り上げる。もちろん本気ではない。脅しだ。
しかし、効果は十分だった。シャルロッテは転げるように逃げる。
バルカンの火線が追いかける。
「待てぇ~。・・・・・・あれ、こんな光景をどこかで見たような・・・・・・アクシズ? え、アクシズって会社じゃなく??」
その時、地響きを立てて猛追する《バウ》を振り返り見たシャルロッテは、つまずき農業用水池に落ちた。
「バイザーがっ、・・・・・・ゴポッ!」
ヒビが入っていた。しかも、開閉装置が作動しない。
もがき水面上に出ると、頭を引きちぎるようにして、ヘルメットを脱ぎ捨てた。
「んはぁ・・・・・・、えっ、けほ、けほ・・・・・・はぁはぁ」
頭上に影がかかる。
シャルロッテは、ハッ、と見上げた。濡れた赤毛を掻き分けたすぐ先、《バウ》が直立している。
「はは、あははは・・・・・・」
人間恐ろしすぎると、笑うしかない。おまけに、シャルロッテは挨拶するように手まで振っていた。
しかし、その行為は彼女にとって、非常に不幸だった。
見下ろす《バウ》のビームライフルが地に落ち、土ぼこりを上げる。
「か、かわいい・・・・・・。なんだ、この胸の高鳴りは!? これが恋と言うものですか、ママン!」
暮巳の脳内はお花畑が満開となった。あひる座りの乙女に
分離ボルトが点火しシールドをパージする。即座に《バウ》の左手が伸びる。
とっさに立ち上がりかけたシャルロッテだが、
「逃がしません!」
「きゃっ――、やめっ!」
打って変わった《バウ》の敏捷さで、捕らえられてしまった。器用だ。逃げられぬようにしっかりと右手で包み込む。
「お、おい、暮巳! さっきから・・・・・・」
異常を感じた
「課長、先輩。運があったら生き延びてください」暮巳はつぶやく。
「シャルロッテぇぇぇ!」ニッキは叫ぶ。
「なにお持ち帰りしてんだ、暮巳ィィィ!」後藤も叫ぶ。
ノズルから巨大な炎の大輪を咲かせた《バウ》は枝葉を吹き飛ばし、はるか上空へ遠ざかっていく。その後姿を、
が、長くはそうしていられなかった。
「シャルロッテを返せぇぇぇ!」
「ヘープナー少尉、必ず救出します!」
怒れるニッキとスワガー曹長。フェンリル隊の猛攻を一身に受けることとなった。
*
赤い《グフ・カスタム》は疾風となって闇を駆ける。
「必殺! グラディウス・レー・・・・・・」
ビームライフルを照準するため《ザクⅢ改》は機体を旋回させる。が、近くの木に長銃身が引っかかり、わずかに動きが鈍った。
「そこっ!」
見逃すシャアではない。《グフ》の35ミリ・ガトリングがビームライフルに命中、エネルギーが解放される。
瞬間的に閃光と超高温の渦に巻き込まれた。モニターに飛び込む光は即座に明度調整されたが、熱はそうはいかない。緊急回避し右肩シールドで熱風を受ける。一挙に拡散したエネルギーは《ザクⅢ改》のシールドを半ばから溶断した。
畳み掛けるように、正面から迫る殺気。
はたして、《ザクⅢ改》のあった空間を大質量の刃が切り裂く。
《グフ》が手にするヒートサーベルは冷えた黒い刀身のままだった。オレンジの加熱状態であれば、太刀筋も予測しようがある。しかし、シャアの操縦技術も相まって、闇に溶けこむ刃は変幻自在だった。
「こいつ、できる!」
プレッシャーと共に繰り出される斬撃に耐えかね、真島はさらに後退する。《ザクⅢ改》はスラスターを焚き低く飛翔した。
が、【異常接近】の警告音の直後、激しい衝突。
「その推力が
《グフ》必殺の袈裟斬りが迫る。間合いも、刀身に乗った速度も、十分だ。《ザクⅢ改》の頭部を叩き潰す、
ガンッ!
直前、刃は二つのマニピュレータに挟まれ、押すも引くもできなくなった。
「奥義、真剣白刃取り!」
「チェックメイトには早い、か。だが!」
シャアはヒートサーベルの電熱を稼動させる。電荷により、数瞬で赤熱する。《ザクⅢ改》のマニピュレータからは激しく煙を上げだした。表面が融解している。
ところが、すぐに煙は消え、代わりに緑の燐光があふれ出した。
「そうだ、この光だ」
シャアの肌に熱い感覚が蘇ってきた。
ヒートサーベルを押し込もうとする《グフ》と押し返す《ザクⅢ改》。拮抗する電熱と怪光。
そして、弾けた。耳障りな金属音が轟く。
刀身を握ったまま《ザクⅢ改》が、ヒートサーベルをへし折ったのだ。
「よっしゃあぁぁぁ!」真島は勝ちを確信した。
「終わるかぁぁぁ!」シャアの心は折れていなかった。
それは
《ザクⅢ改》が放った右回し蹴りは《グフ》の頭部に命中。だが、ワンテンポ遅れたために浅い。角状アンテナが噴き飛び、保護バイザーは砕けるが、《グフ》のモノアイは生きている。
《グフ》は折れた刀身もそのままに、残ったヒートサーベルを《ザクⅢ改》に叩きつけていた。深々とグリップ部まで頭部に埋まる。
真島は歯噛みするが、明らかに自分の慢心だった。
「まだまだぁ!」
瞬時に補助カメラに切り替わった《ザクⅢ改》は両手で《グフ》を押し返す。
《グフ》はよろめきながらも踏みとどまり、ガトリング砲を撃ち返した。
コクピット・ハッチに伸びる火線は《ザクⅢ改》の右手が遮った。猛射を受け、手首から変な方向へねじ曲がったが、真島自身は健在だ。
「ならば!」
間、髪をいれず《グフ》は右前腕を伸ばす。袖口からヒートワイヤーが飛ぶ。
刹那、《ザクⅢ改》の膝が崩れた。いや違う! 膝が崩れたのではない!
ワイヤー先端の鉤爪はコクピット・ハッチではなく、頭部の傾斜に命中し、後方に跳ねた。
前に倒れこむように突進した《ザクⅢ改》は一転、伸び上がった。天を突く左アッパーが《グフ》の右肘関節を食いちぎる。
さらに、《ザクⅢ改》は右腕を振り上げた。
「これが俺の本気だぁぁぁ!」
ジャンクと化したマニピュレータを《グフ》に叩きつける。頭部が大きくひしゃげ、今度こそモノアイが潰された。
「もういっちょォ!」
が、二撃目は《グフ》左腕が抜いた予備のヒートサーベルが食い止めた。邪魔になる3連ガトリングは
「やる!」
「振り出しに戻るってか!」
しかし、時ならぬ外野が割ってはいる。
「中佐、方位090、ジャンプ!」
応答もせず、シャアの《グフ》は真横へ飛んだ。
見越していたかのように、射線確保したフェンリル隊、2機の《ザク》からマシンガン、バズーカが殺到する。
これには、《ザクⅢ改》も本当に膝が崩れた。
「ま、真島っ!? うおぉぉぉ!」
ようやく、エネルギー・パックを交換した
「これは・・・・・・チィ!」
その火力を危険と感じたシャアはとっさに《グフ》を用水池に突っ込ませる。機体を半ば沈めやり過ごす。
一時的にフェンリル隊も下がらせることに成功した後藤は、《ガ・ゾウム》をMA形態に変形させる。
「乗れ、真島っ!」
「でも、やよいがまだ」
「とっくに見つけて逃げたわ!」
《ザクⅢ改》を機上に乗せた《ガ・ゾウム》はスラスター全開で垂直離陸する。
森の樹冠を抜けたところで、直下にニッキの《ザク》が迫る。その手のマシンガンが真上に向けられた。
「行かせるかっ!」
「俺だってェ」
ニッキは包み込むように迫る飽和攻撃に、死を覚悟した。
直後に、激しい衝撃、轟音に襲われる。《ザク》は吹き飛び地面に転がるが、ニッキは気を失わなかった。
「ロベルト少尉、無事か?」
「中佐!? は、はい、自分は」
ミサイルがまさに命中する刹那、ニッキ機を《グフ》がタックルしていた。しかし、もろに弾雨を浴びたスワガー機は爆散した。やよいが乗り捨てた《トゥッシェ・シュヴァルツ》も巻添えをくらい破壊される。
「しかし、シャルロッテが」
「今はやむをえん。武装も底をついた。後退する」
樹冠には、真島ら2機が垂直上昇で開けた穴が出現していた。
その向こうから、大質量の何かが回転しうなりを上げて、飛んでくる。
「む!」
胸部コクピットを狙った
《グフ》の補助カメラが上空、一瞬とらえたシルエット。それは左手を投げ伸ばした《ザクⅢ改》だった。すぐに闇に溶け込み、消える。
「王手にゃまだ早ェ、ってか」真島のつぶやき。
それを聞いたかのように、シャアは唇を不敵に歪めた。
(次回予告)
(※BGM「アニ×じゃな~い?」、ナレーション:
♪デ、デ、デ、デ~ン♪
「外人部隊のお耳のお供、オペレータのユウキ・ナカサトさん!
あれ、でも登場していきなりお亡くなりに?
ピンチへ颯爽と現れる、アクシズ建設設計課の若きホープ! その名も
次回、アクシズZZ『オデッサ(9)』
あら、浜子さんも?」
【都外川家にメイドが増えました】