今回はエロにもチャレンジしてみました。さて、R-15でどこまでできるかな。
今回は
第一次ネオ・ジオンの最中、勃発した内乱。
反乱の首領・青年士官グレミー・トトは宇宙の塵と消えた。
また、小惑星基地アクシズとコロニー・コア3の衝突、ラカン・ダカランなど現場士官の戦死により、グレミー軍の指揮系統は混乱を極めた。
そんな中、少女兵士プルシリーズの開発責任者マガニー博士は、自身の保身、アクシズから脱出するため、残酷な命令を彼女たちに下す。
ハマーン軍と《ガンダム》を撃破せよ。
瓦解した反乱軍にとって、それは玉砕を意味する。
だが刷り込みによって、『《ガンダム》は敵』、そして、服従と献身こそが唯一の美徳と教え込まれた彼女たちは、死という終わりに向かって突き進んだ。
UC.0089、1月17日。破壊されたサイド3、コロニー・コア3近くの宙域。
『敵発見!12時、下方30。ハマーンの《キュベレイ》と《ZZ》!!』
前方で索敵中のセヴンがとうとう見つけた。レーザー通信で敵座標が姉妹の量産型《キュベレイ》をリンクして最後尾のトゥエルブまでつながる。そして、バラバラになりかかっていた彼女たちの気持ちもつなぎ直した。
旧世紀の急降下爆撃機や雷撃機のように連なって、眼下の敵機、白い《キュベレイ》と《ZZガンダム》へ殺到する。
量産型《キュベレイ》の特徴的なシルエット、肩から大きく張り出したバインダー・バーニアと、背部の大型ファンネルコンテナが、蜂か羽虫が襲いかかってくるのを連想させた。
姉妹の1機が背に屹立したアクティブカノンを可動させ、ハマーン機に対して発射態勢を取ったときだった。
多数の光軸、連装メガ粒子砲のイエローのビームに貫かれて、その姉妹は宇宙に爆散した。
『ス、スリー!!プルスリーがやられた』
『マスターも死んだ。死んじゃったよぅ・・・』
『どうすればいいの、マスター?あたしたち、どうすれば』
スリーの死が呼び水となって、皆の心がまたバラバラになった。マスターの死を知ったあの時と同じように。
赤くマッシブなシルエットのMS《ゲーマルク》が迫る。全身に無数のメガ粒子砲を装備したこの第4世代MSはあらゆる方位に向けての砲撃が可能である。
プルスリーを墜とした《ゲーマルク》が全方位攻撃を、追随するMS《ガズアル》はビームライフルを撃ちまくりながら接近する。姉妹が混乱している隙に、ハマーン機と《ZZ》はコア3方向へ飛び去った。
『皆落ち着いて。敵を倒すことを考えるんだ。ファンネルで一斉攻撃を!』
回避機動を取りながら、プルフォウが必死に叫び、皆を辛うじてつなぎとめる。
それぞれの《キュベレイ》から放射状に10基のファンネルが飛び出し、無数のビームを射ち出して《ガーマルク》と《ガズアル》に迫る。それは、まさに光軸の檻、逃れようがなかった。
貫かれた《ガズアル》は爆散するが、《ゲーマルク》はそれを不可視のバリヤーのようなもので跳ね返した。
『Iフィールド!?そんな・・・。《ゲーマルク》は持っていな・・・』
驚愕の言葉の途中で、フォウの《キュベレイ》は《ゲーマルク》のファンネルが仕掛けたオールランド攻撃を受け、四肢をバラバラにしながら、爆発した。
ものすごい否定の意志を感じる。敵のパイロットは、
(・・・ざけんじゃないよっ、ガキっ!!)
子供だと分かって、なお滅ぼそうとしている。12番目の末妹、トゥエルブはNT能力でそれを感じ取った。膝が震える。
(・・・子供は大嫌いだっ!!)
まだ幼虫の私たちは知らない。私たちは命令だから殺す。
でも、この人は違う。相手の存在を憎しみ尽くすという破壊の権化。これが成虫の姿。
姉妹の1機が両肩のアクティブカノンを撃ちながら、特攻を仕掛ける。真空という絶対の境界を突き破っても、その衝撃音が伝わってきそうな激突をする《キュベレイ》と《ゲーマルク》。
即座に右マニピュレータにビームサーベルを形成する《キュベレイ》。だが、それを振るわれるより早く、《ゲーマルク》はマニピュレータを拳形状に握り、コクピットへ叩き込む。衝撃に嘔吐した姉妹がなすすべも無く、拳から形成された握り懐剣状のビームサーベルの高温に焼き殺される。その肉体は蒸発した。
『今だっ!』
何番目かの姉が叫ぶ。球形に取り囲んだ《キュベレイ》のファンネルが再度オールランド攻撃を仕掛け、《ゲーマルク》が全身のメガ粒子砲で全方位に反撃。交錯する光軸の渦。
トゥエルブは姉妹の隊列から、ほんの少しだけ離れていた。それは、敵に対する恐れだったのか、それともマスターを失った動揺だったのか。
いずれにせよ、直撃を逃れた。しかし、爆発に巻き込まれた彼女の機体は四肢をばらまき、きりもみし、限界に達したところでコクピットは射出され、脱出ポッドとなった。
(寒い・・・。寂しい・・・)
栗毛の少女、トゥエルブは脱いだヘルメットを抱えて縮こまっていた。脱出ポッドにエアーは満ちている。だが、バッテリーは限界に近い。あと2時間も宇宙を漂っていれば、小さな体は冷たくなり、それは棺桶に変わるだろう。しかし、天は彼女を見放さなかった。
やがて、その脱出ポッドは近くのジャンク屋に回収された。
ポッドの開閉口が、ドンドンと外から叩かれている。これから開けるという合図だ。
トゥエルブは一瞬、ヘルメットを被るべきかどうか迷った。
が、決める間もなく、それは開けられた。果たしてポッドの外は空気に満たされていた。
差し込む照明が逆光になって表情は見えないが、ノーマルスーツが一体、こちらをのぞき込んでいる。ヘルメットのバイザーを上げた。
「なんだ、子供かよ」
落胆したような男の声だった。トゥエルブは涙に濡れた蒼い瞳で男を上目遣いに見上げた。すべきでなかった。
途端に男が嫌らしい笑いを口元に浮かべた。彼の黒っぽい思惟が、トゥエルブの中にも流れ込み、彼女の肌を粟立てる。
「はは、いいこと思いついちゃった」
男が言いながら、ポッドの中に上半身を入れる。トゥエルブは後ずさろうとするが、背にぶつかるのはリニア・シートだけだ。逃げ場などない。
「いい子だ。こっちにきな」
それは命令だ。それはつまり、この人は私の新しい、・・・マスター。
服従と献身。
恐る恐る伸ばした手を男は乱暴に掴み、トゥエルブをポッドから引きずり出した。
彼女は生まれ変わった。少女兵士から奴隷へと。
しかし、そんなことは関係なく、西暦の日本は平和だった。
1989年1月20日金曜日。東京。
三寒四温というが、この日はその言葉通り、冷え込みもきつくなかった。
やや温い朝の大気を切り裂いて、
「やべぇ、やべぇ、遅刻する」
すると、その前方に同じ色の栗毛の少女3人の後ろ姿が見えた。
1人は伸ばした横髪をなびかせながら、飛行機みたいにそこらを走り回っている。もう1人はその子と同じ髪型だが落ち着きがある。そして、最後の1人は栗毛が鳥の巣のようにあちこちに跳ねていた。
大家・
「おはよう。三つ子ちゃんたち」
「プルプルプルプルー♪」
「フフン、ああ」
「おはようございます!」
顔は同じでも反応は三者三様である。
真島は末妹の
「にゃーー!もう朝から止めてくださいー!!」
「だから、その変なヘアスタイルを直してやろうって!」
麻里が両手で抵抗するのも空しく、頭をくしゃくしゃとされる。
「真島さん、妹に倒錯的行為は止めていただけませんか?気持ち悪いので」
慇懃無礼となって麻里の隣の
「倒錯って、お前ね・・・あれ、合宿か何かか?」
真島は麻里が肩にかけた大きなスポーツバッグに気付いた。麻里が陸上部で『ありえない俊足』を誇っている話は聞いていたが、もう1月。中学3年の彼女は引退しているはずだ。
「ううん。
「ほ。
その家のことを真島も知っていた。
「あそこの家の兄貴は気を付けろよ。手が早いから」
理奈という妹のことはよく知らないが、兄の
「どの口で言ってるんだか」
「なんか言ったか?」
「別にぃ」
風美がわざとらしくすまして、反対の壁へその顔を向けた。
そこで、横並びになっていた3人は後ろから来た車にクラクションを鳴らされ、
「いけねっ!遅刻遅刻。じゃあな」
真島は駅へと急いだ。
麻里が優しげに微笑みながら手を振っていた。
午前は雨がパラついていたが、午後には晴れ、季節外れの陽気に人々の気持ちも幾分緩んでいた。
しかし、
「森木製作所の契約はどうなっている?先方の新工場建設の」
「え、・・・えーあれはですねー・・・」
浜子の問いに、額に急に汗が浮き出た営業課の
「
ぼややんとしていた
「うつけがっ!自分だけ食べたケーキを茶菓子代の領収書に紛れさせる奴があるかっ!!」
『例のあの能力』で見抜いた浜子がその領収書を、抜き取るや、笑顔でごまかそうとする
(まったく、我がアクシズ建設のだらけぶりと言ったらなんだ。こんな状態では阿賀間建設に出し抜かれるぞ)
浜子は闘志を新たにするが、
(しかし、・・・一体、この世界はなんなのだ・・・。それに私の年齢が・・・)
苦い粉薬を口に含んだ表情で、浜子はスーツの内ポケットからカード入れを取り出す。運転免許証を確認すると、
『氏名:菅 浜子 昭和37年1月10日生』
(この私が27歳・・・!?私は死んだとき22歳だったはず。なぜ5歳もいきなり老ける?どんな設定だ・・・)
浜子はまるで自身に課せられた理不尽な罰のようで、悔しさに歯噛みする。しかし、その顔は『37歳』といっても十分通用する、老け顔である。
先週まで、『17歳』といっても頷けた『はにゃこ』の表情とえらいギャップである。
「あ、あの・・・社長・・・?」
見れば、先ほど怒声を浴びせたやよいが、細身で小柄な体をますます縮こませて、たたずんでいた。
「なにか?」
素っ気なく言うと、
「お茶です」
コミカライズされた猫が描かれた湯飲みをデスクに置くと、やよいは顔の下半分をお盆で隠しながら、逃げるように去った。柱にかけられた時計を見れば、休憩の午後3時を回る少し前だった。
気を遣って、やよいが早めに持ってきてくれたらしいことを浜子は察した。
目前に並ぶ営業課のデスクを見回すと、後藤や真島らがピリピリした雰囲気の中で仕事に励んでいるが、浜子が檄を飛ばしてもさほど能率は上がっていない。
(はぁ、・・・やっぱり今週はまずいよね。誰か誘って飲みに行くなんて。部屋で独り飲みにするかなぁ・・・)
フロアの端で肩を落とすやよいの思惟が『例のあの能力』で浜子の内に入ってきた。腕組みをして浜子は思案する。
(締め付けすぎるというのも、逆効果か。能率が悪くなっては本末転倒だ。ここはひとつ一席設けて皆の意思疎通を図るというのも一計か・・・。それに・・・)
浜子は左手にタバコ、右手に鉛筆を握り締め、書類を猛然とめくる真島に視線を移す。休憩時間になればこの場から逃げるように、屋上へ行くのは必至だった。
(マシュマーには確かめねばならんこともある・・・)
チャイムが鳴った。
ガタッ!
誰よりも先んじて、浜子は立ち上がった。
「聞けっ!アクシズ建設の企業戦士たちよ!!
今日で陛下がお隠れになられて2週間となった。我らはかのお方の崩御を嘆き悲しみ、そして惜しみ、喪に服さねばならぬ。
だが、今この時にも憎き敵である阿賀間建設は我らに対し、攻勢をかけている。
今は悲しむときである。だが、同時に戦うときでもある。ともに戦おう。
アクシズのために。アクシズの栄光のために!!」
浜子は右の拳を固めて、天に突き上げた。何かを待つように間を置く。
しかし、予想したような拍手や歓声は全く起こらなかった。周りを見渡せば、どの社員も
(どうしちゃったの、この人・・・)
という、唖然とした表情である。
バツの悪さに浜子はひとつ咳払いしつつ、
「そこで、日頃の皆の苦労をねぎらいたいと思い、酒の席を設けようと思う」
(そこで、って・・・どういう流れだよ・・・)
やはり皆、浜子に付いていけない。
「五十川やよい!」
いきなり、呼びかけられたやよいが「は、はいぃ!!」と応えて直立姿勢を取る。
「急なことですまぬが、店の選択と予約など諸々を貴様に一任する。励めよ」
最敬礼でやよいが応えると、一目散に電話へと走った。
会社から私鉄で10分ほどかけて新宿に出た。1軒目の店を1時間で追い出されると、2軒目、3軒目は大ガードを西へ東へ。さらに、4軒目は歌舞伎町をスルーして新大久保方面へと、アクシズ建設は民族大移動を繰り返した。
その内にも、ひとり、ふたりと脱落者を出し、真島がカウンターで突っ伏した状態から「はっ!」と目覚めた時には、隣に座る
(ここは・・・)
と真島は店内を見回す。どこの街にもありそうな赤提灯の居酒屋である。
何やら、背広の両ポケットが重い。右のポケットにはマヨネーズが入っている。これは1軒目のお好み焼き屋で、
『顔芸、やりまーす!!』
酔っ払いつつ、自分の顔面にぶっかけようとしたやよいから奪ったものだ。
左にはなぜかケチャップが入っている。これに関しては真島も記憶がない。
「気付いたか、マシュマー。ここは『はざま』という店だ。
いや。
店名でもあり、
その名の通り、狭い隙間・・・という意味でもある」
なにやら、詩人な感じの浜子である。
「あの、・・・社長?マシュマーって何です?」
「やはり、そうか」
酔っ払いのとろんとした目で問いかける真島に、浜子は飲めば飲むほど、白くなるような不気味な能面を向けた。
「お前は死後、転生は遂げたようだが、その意識は完全に憑依したわけではないらしい」
言いつつ、浜子は右手でお猪口を傾け、左手は出入り口を指し示した。
「信じられないかもしれないが、・・・あの扉は宇宙世紀につながっている。嘘だと思ったら行ってみるがよい。
だが、心しておくことだ。向こうは
実はもう昨日行ったのだが、なんとラプラスの間に放り込まれたよ。危うく爆弾で吹き飛ばされるところだった。ふふふ、連邦があんなものを作っていたとはな。今となっては滑稽だ」
浜子は手酌でぐいぐい熱燗をあおりつつ、自嘲とも冷笑ともとれる奇妙な表情を浮かべているが、
「あの・・・社長が言ってること全然、意味わかんないんですけど。えっと、・・・宇宙性器?」
「宇宙世紀。ユニヴァーサル・センチュリーだ、馬鹿者。とりあえず、行ってみろ」
真島は浜子に追い出されるようにして、店を後にした。
しかし、外は目を閉じているのかと思うほどの、暗闇であった。
唐突に、真島は急激に酔いが回ったかのような酩酊感に襲われた。世界がぐるぐると回る。
UC.0089、1月20日。サイド4のとあるコロニー、淫売屋『Candy Girl』。
「キツキツ過ぎて、抜けなくなるかと思ったぜ。
まぁ、しっかりヌかせてもらったんだけどよ」
廊下から下品な男の笑い声が地下室まで響いてきた。
「まさか、俺のモノがはまるとは思わなかったな。まったくチビすけなのに、エロいったらないぜ」
満足そうなその声は、室外の淫売屋の女主人に向けた「また来るぜ」という言葉を残して、去った。
(また・・・また、あんな・・・)
地下室に閉じ込められた10歳ぐらいの栗毛の少女。彼女は汚濁にまみれた体をベッドに横たえる。室内は魚介に似た生臭さと、饐えた汗臭さに満ちていた。
自分の体内に汚水を直接流し込まれるような感覚。それに伴う呼吸ができなくなるほど、体を押し広げられる痛み。
唐突に、地下室の扉が開けられる。
「なにほおけているんだい!!次が待ってんだよ。そんな体じゃ客が嫌がるだろうが。さっさと拭いてきなっ!!」
女主人が汚い雑巾を少女の体に投げつける。
「お前に浴びせるシャワーなんて無いよ。水代だって高いのに。
・・・それにベッドを汚すんじゃない!!終わったら、穴に入れておきなっ!!」
女がベッドの惨状に目を瞠り、もう一本ねじった雑巾を投げる。
「早くしなっ」という言葉を受け、少女はのろのろとトイレへと歩んだ。壁に手を着きながら、ようやく立っていられるその姿は、まるで生まれたての馬か牛の子供のようであった。
そう、確かに彼女は生まれたてだった。
エルピー・プルを始祖とするクローン。その12番目の末妹、プルトゥエルブ。今日は彼女が初めて客を取った日、娼婦として生まれた日であった。
洗面台に溜めた水でトゥエルブは体を拭いた。
泣いてもいい状況だった。でも泣かなかった。それは命令ではないから。
(そうだ。今度はまた別のマスターの命令に従わなきゃ・・・)
地下室に戻ると、もう新たな客がベッドにいた。
しかし、その背広の男はおかしなことに、仰向けになってすでに大きないびきをかいていた。
「あの、・・・」
「・・・ムニャ・・・もう飲めない。・・・ゲップ・・・」
トゥエルブが肩を揺すった拍子に、男は盛大なげっぷをした。強烈な匂いがトゥエルブの鼻腔を刺激し、小さな眉間にシワが寄る。酔っ払いだ。
トゥエルブは男を揺すり続けた。唐突に、男が目覚め、顔を青くして上半身を起こす。
「み、水、・・・水、くらはい」
両手を口に当てながらで、判然としなかったが、トゥエルブはその命令を理解した。
少女から受け取ったグラスの水を飲み干すと、とろん、としていた男の目に手入れもされぬ、くしゃくしゃの栗毛が映る。
「・・・あれ?麻里じゃん。こんなとこで何してんの?」
「えっと、・・・分かりません」
それはマスターの命令だ。だが、トゥエルブはここでされる行為がどういうものなのか、ここがどこなのか分からなかったので、正直に答えた。
「お前、ずいぶん小っちゃくなったな?ここ、理奈さんち?」
「リ、ィナ?・・・・・・違います」
「違う?ふぅん。じゃ、帰ろう」
「・・・え」
言うや、今のマスター、その背広姿の真島世路はトゥエルブの手を取った。
「ここは何だか臭いし、空気が悪い。こんなとこに麻里みたいな子供がいちゃいけないよ」
ふらふらしながら、出入り口の鉄扉に向かう。
その時、先ほどと同じ、時空の歪みが真島を襲う。
世界が、ぐるぐる、と回って、
(きっと竜巻か渦潮に巻き込まれたら、こんなんだろう)
と、真島は思う。しかし、握った小さな手は離してはいけないと、堅く握り締めた。
「あの、チビすけ・・・!!どこに・・・どうやって、逃げたんだい!?」
淫売屋の女主人が客が出てこないのに業を煮やして鉄扉を開けると、地下室は無人であった。そこは窓もない。
宇宙世紀で起きたその事件は、とても些細なことだった。
しかし、少しずつその後の歴史に影響していくことになるだろう。
体をぞくっ、とさせる冷気に真島は目覚めた。
布団の中で体を縮こませる。どうも裸で寝ていたらしい。真冬の東京で、である。
さらに窓の方から、チュンチュン、と雀の鳴き声が聞こえてくる。15cmほど開いているらしい。
(あー、寒い・・・。酔っ払って馬鹿なことしたんだなぁ・・・きっと)
二日酔いの頭痛・胸やけと寒さのせいで、真島は掛け布団を頭からひっかぶった。
その時、布団の中、真島の隣でごそごそと動く気配がする。
(ああ、なるほど。そういうことか・・・)
真島は以前、この辺でエサをやっている猫が冬の寒さに耐えかね、開けっ放しにした窓から入ってきて、布団で寝ていたことを思い出した。
顔の模様が漢字の『八』に見えることから、その名もハチという三毛猫である。
昨晩、帰宅したときに窓際にハチが待っていたんだろう。開けてやったというわけだ。
「はにゃーん♪」
他人にあまり聞かれたくない声で、隣に寝てるであろうハチに手を伸ばす。しかし、
(ふぁっ!?)
その感触は猫の、もふっ、としたものではない。確かに、動物の持つ温もりであるが、絹のようなすべすべした手触りである。
そして、真島も成人男子である。風俗に行くこともある。ゆえに、その肌触りも分かっていた。
恐る恐る布団から顔を出し、めくってみる。現れる鳥の巣のようなもじゃもじゃの栗毛。
(うわぁ・・・どういうことなの・・・)
真島はとりあえず、
その時、
「ニャー」
「いっ!!」
やはりどこかにいたハチが、立ち上がった真島のふくらはぎに、どーん、とぶつかってきた。焦った真島は後ずさった。
どぴゅぴゅっ。
真島の左足がケチャップを、右足がマヨネーズの容器を踏み付けた。
飛び散る赤い液体。それは布団やシーツに鮮やかな染みを作る。
迸る粘性の白い液体。それは麻里の安らかな寝顔に、栗毛にこびりついた。
「ひゃっ!?冷たっ!」
驚き、麻里が飛び起きる。
ふとんの上に、ぺたん、と座り込み顔に手をやると、ぬるぬるとし酸味を放つ
「いやぁ・・・、なにこれ・・・。きゃっ!やだっ!」
さらに、自分があられもない下着姿であることに気付き、麻里はベソをかく。体を震わせ、腕を交叉し自身の肩を抱く。
すると、
「ま、麻里、・・・落ち着くんだ」
声をかける目前の人物を見て、・・・
麻里の頭の血が、ざぁー、と落ちていくような貧血を味わった。
中腰で両手をこちらへ突っ張り、何かを押しとどめようとする真島の姿。
そして、それは、
(ああ、・・・ダメ・・・。ここで、気絶したら、・・・)
必死の思いで麻里は息を吸った。未熟な青い果実のような乳房が膨らみ、次の瞬間、
「いやあああぁぁぁーーー!!!」
悲鳴があふれ出る。しかし、
「ぁーーー!!・・・んっ、むぐっ・・・!?」
慌てて、麻里に飛びついた真島が彼女の口を片手でふさぎ、もう片方の手は彼の口元に当てられ、「しっー!」と人差し指が立てられていた。
ぽろぽろと涙する麻里は、
(そんな、・・・真島さん、ひどい。・・・お兄さんとも思っていたのに。憧れていたのに)
真島の仕打ちに絶望した。だが、その胸の内に違う思惟が囁く。
(違う。その人は私の新しいマスター。大切な人)
彼女の体の内から、トゥエルブの想いが麻里に懇願する。彼を許せと。
しかし、そのことをよく考える間もなく状況は変化していく。
ガチャ。
「おーい、なんだ今の声」
「じ、
部屋のドアが開けられるなり、現れる髭面と飛び込んでくる野太い声。
今日は土曜日。『週末の朝は皆でアパートを綺麗にしよう!!』という呼びかけを、娘の麻里がして、彼女は率先して、アパートの周囲の清掃をしていた。
今朝は友達の家に泊まりに行っていないはずだが、・・・。
すでに、アパートの下の駐車場には、住人と「なんで私も・・」と、文句を垂れる
そこに沸き起こった少女の悲鳴である。
しかも、起きてこない真島の部屋からである。鍵もかかっていなかったので、すぐに神根が入室した。
そして、飛び込んでくるすさまじい光景。
真島が
目に入れても痛くない愛娘も(ほとんど)
その顔や髪に
その泣き顔。悲鳴を上げようにも口を塞がれている。
そして、乱れた寝具についた
事後。中学生に対する倒錯行為。しかも、無理やり。
数々の残酷な言葉が神根の頭を駆け抜け、彼の中で何かが音を立てて千切れた。
「うおおおぉぉぉーーー!!!」
黒い破壊のケモノが部屋を駆けた。
一挙動で距離を詰めると、低い姿勢の真島に、フルコンタクト空手で鍛えた前蹴りを放つ。
顔面にそれを喰らった真島はごろごろと転がって、端の壁に後頭部を激突させた。
麻里の悲鳴が再び空気を震わせる。階下の住人たちも「な、なんだ!?」と騒ぎ始めた。
運良く(運悪く?)警ら中のパトカーが徐行して、アパートの前で止まる。「どうしました?」と声をかけながら、出てきた警官は日本人離れした筋骨隆々の体格をしていた。
しばらくして。
顔を盛大に腫らした真島が、
「いや、俺は何もしてないって、・・・」
「話は署で聞こう」
ドラマなどで使い古されたセリフはモアイ像がしゃべったのかと思われた。その顔の持ち主、屈強な警官、
その様子を見た次女の風美は鋭い目付きをますます尖らせて、人目をはばかることなく、真島へ中指を立てる。
「気持ち悪い変態。消えろよ」
続いて、毛布に包まれた麻里が女性警察官に支えられ、外階段を降りてきた。
「・・・グスッ、・・・あの、・・・お兄さんに、・・・ひどいこと・・・グスッ・・・」
「いいのよ、もう大丈夫よ」
憑依したトゥエルブは『ひどいことしないでください』と言いたかったのだが、皆まで言わせぬ女性警官が全く逆の意味として、その言葉を捉えてしまった。
真島の隣に腕組みした田草はパトカーのフロントウィンドウ越しに、中学生ぐらいの少女を見る。
(こんな子供に、・・・)
田草は冷徹な男である。警察という組織の中で、自分という個を殺し、どこまでも一警察官という最小単位になりきれる男だ。
職務に打ち込みすぎた結果、今に至るまで女房なし、子なしである。いや、妻はいた。しかし、逃げられた。離婚である。
そんな男の胸に熱く湧き上がるものがある。
もし、田草にもう少し家庭を顧みる余裕があれば、できたかもしれない一粒種の娘。今の田草には神根の父親の気持ちも少しは分かるような気がした。
麻里は救急車に乗せられ、神根と風美と共に
「真島君。もし、あの子からよからぬ証拠が出てきたら・・・。
ちょっと道場で汗、かいてもらうことになるだろう。覚悟しておくんだね」
検査の結果、・・・
麻里からは何もやましいことは出てこなかった。
しかし、警察の取調べで真島は週末を潰すことになった。
(次回予告)
(※BGM「アニメじゃな~い?」、ナレーション:
♪デ、デ、デ、デ~ン♪
「
そんなの知りません。
こちらはラッキースケベな絵が見れればいいの!
っと、何だって?
マシュマー・・・、じゃない、マシュマロ・セロリだって?
冗談、
ちょっと何言ってるのか、分からないよ!
次回アクシズZZ『地球降下作戦(前編)』
酔っ払いの修羅場が見れるぞ!」
【
(登場人物紹介)
ダグザ・マックール →
女性警察官はマチルダさんにする予定だったけど、色んなもん詰め込みすぎると、大変だからやめました。
しかし、早速このシリーズ、もうネタが切れという。むしろ、もう一つの駄文拙文の方を完成させねば。