僕と私のあるてぃめっと   作:三奈木イヴ

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そろそろガバが生じてきた気がする。エタりかねないな…。エタらない事を目標に頑張ります。


二人の兄

「おいおいおい……どうしてこうなるんだよ……」

 

解放されたらしい道場へ向かう道中、ぽつりと呟いた。

俺剣道の心得とか無いんだよなぁ……。強いて言えば、龍宮院富嶽のVR剣道教室くらい。

 

「まあ、僕から言えることは、國綱兄様はとても強いよ。」

 

「さいですか……」

 

戦うと言っても、俺リアルのフィジカルはそこまでだからヤバいかもな。だが、それでも勝ちに行くのがゲーマーだろうが。

 

「着きましたよ。」

 

「斎賀の道場は久しぶりですね。」

 

道場に到着するや否や、仙さんと國綱さんは道場に礼をしながら入った。

俺もそれに倣い礼をした。

 

「……俺は剣道の心得は無いんですが、大丈夫ですかね……?」

 

「案ずるな。目的はあくまでお祖父様の歩法だ。それと貴様が愛しの我が妹に相応しいかを見極めさせてもらう」

 

「へ?」

 

「ちょっとお兄様!!」

 

歩法はわかるけど、京極に相応しいかってどういう事?

わかんねえや。まあとにかく、やるしかなさそうだ。

 

◆◇

 

「さて、準備は良いかい?」

 

「大丈夫です」

 

ルールは剣道のルールで防具は無し。國綱さんから俺への攻撃は寸止めで俺から國綱さんへは当てても構わないらしい。そもそも当たる気がしないが……。というか結構無茶苦茶だなオイ。

 

「改めて言っておくが、君は私に攻撃を当てても構わない。その代わり私は君に一切攻撃を当てない。」

 

「それは良いんですが……本当に大丈夫なんですか?」

 

念のためではあるが、俺はもう一度國綱さんに問うた。

 

「当然だ。私は当てない代わりに全力で行かせてもらうからな。」

 

言い終わると同時、國綱さんは開始線で構えた。

俺も見様見真似で構えた。

 

「勝負、始め!」

 

開始の合図と同時に、國綱さんは踏み込んだ。

 

「うぉっ!」

 

かろうじて横に逸れることは出来たが、なんつー速度だよ!ウェザエモンの断風じゃあるまいしよ!

 

「國綱兄様の一撃を避けた……!流石サンラクだ」

 

「ほう……。」

 

「フンッ!」

 

「……ッ!」

 

2手目は避けられなかった。俺の頭上に迫った剣は、寸前で止められた。

 

「凄いですね……。」

 

「まだまだだ。まだ私はお祖父様の歩法を見ていないぞ。」

 

「ハッ……リアルの肉体じゃそう簡単に出来ないぜ……」

 

役割模倣はゲームの中なら普通にやってるが、ここでやれるか……?いや、やらないとずっと打ち合うなんて事もあり得るな。

 

「キェェイ!!」

 

「グッ……!」

 

クソッ……もう一回だ!役割模倣(ロールプレイ):龍宮院富嶽!

 

思い出せ、シャンフロでやったあの感覚を!リアルのフィジカルで同じことをこなすんだ!

 

「オラァ!」

 

「フン……甘い」

 

面を狙った一撃は、紙一重で躱されそのまま俺の胴に寸止めされた。

 

「……ッ」

 

全く歯が立たないじゃねえか。

 

「来なければ私から行くぞ」

 

◆◇

 

「ハァッ……ゼェ……ゼェ……」

 

「ここまでか。終わりにしよう」

 

「あり……がとう……ございました……」

 

終わった……。もう、息も絶え絶えだった。

 

「……私は、()の事を認めない。だが、京極を悲しませるのはもっと嫌だ。どうすれば良いのだ……」

 

國綱さんが何か言ってるが、疲れすぎて頭に入ってこねえや。ってか、スタミナ不足だな……もうちょい鍛えるか?

 

「陽務!」

 

京極がタオルを持って駆け寄ってきた。

 

「ハァ……ありがとうな……」

 

俺はタオルを受け取り、顔の汗を拭った。

すると何やら國綱さんの顔は真っ青になっていた。

 

「なっ……⁉︎京極よ……!何故その者のところへ!私も戦ったんだぞ」

 

「國綱兄様は余裕がありますから。そんな事より、國綱兄様にお客様ですよ」

 

「客……?斎賀の方で──⁉︎」

 

「よう兄貴、やっぱりここだったか」

 

「柾宗、何故居るんだ?」

 

柾宗……?誰だ?

 

「私のもう1人の兄だよ」

 

京極が耳打ちで教えてくれた。兄が2人いたのか。

 

「國綱兄貴、親父からの伝言だ。『今すぐ帰ってこい。さもなきゃ母さんがキレるぞ』だってよ。俺も婆ちゃん怒るの見たくないから言う事聞いてくれると助かるんだがな」

 

「お祖母様が……。それはマズイな……。」

 

更に顔を真っ青にした國綱さんは京極の元に駆け寄って言った。

 

「すまない京極、私は一度家に帰ってお祖母様のところに行ってくる。すぐまた会おう」

 

「はい、道中お気を付けてくださいね」

 

京極が言うと、満足したように顔を緩めながら國綱さんが道場を後にした。

 

「さて、邪魔な兄貴は帰ったって事で自己紹介するか。立てるかい?」

 

「は、はぁ……。」

 

結構疲れてるのだが、足に力を入れ無理やり立ち上がった。

京極の兄と言われた人は、京極にそっくりな男だった。いやまあ兄妹なのだからそれはそうなんだが。

 

「お疲れ様。俺の名前は龍宮院柾宗。あのシスコン兄貴の弟でそこにいる京極の兄貴だ。よろしくな」

 

「俺は、陽務楽郎です。龍宮院さん……京極さんとはクラスメイト程度の関係です」

 

ゲームで知り合ったと入れると面倒なことになる気がしたので、そこは伏せて自己紹介をした。

 

「そうか。にしても、あの兄貴相手によくここまでやれたな。確か爺ちゃんの歩法を使えるんだってな?」

 

この人もか……。だから戦えって言われても、今日はもう無理だぞ……?

 

「ああ、すまない。別に爺ちゃんの歩法を使えるとしても戦えってんじゃないんだ。兄貴のはどちらかと言えば、可愛い妹に男が居るってのが許せなかったってのが本音だろうしな。」

 

「へ?」

 

俺はてっきり、龍宮院の刺客として國綱さんが来たものだと思っていた。話を聞いてる限りシスコンだというのは理解できたが、それ以上に龍宮院流の誇りとかだと思ってたからな。

 

「柾宗兄様……?」

 

「京極、俺は別に良いと思うぞ。多分兄貴以外はそう言うだろう。友達ってんなら大切にしろ。そんでその内本家に来てくれれば俺はそれで構わない」

 

「友達って……まぁ……そうですけど……」

 

本家って……やっぱりこの人達結構良いとこの家かよ。それこそ怖いじゃねえか。12機のリック──じゃなかった。何人いるかわからない龍宮院流の使い手を相手に勝利しろなんてクソゲー的シチュエーションを強制されかねないんだが……⁉︎

 

「陽務君だっけ?京極と仲良くしてくれてありがとうな。訳あって斎賀家に避難させて転校までさせちゃったから、孤独になってたりしたらどうしようって心配してたが、杞憂だったみたいだな。こうやって君みたいな男もいる事だし。俺は安心して帰れるよ」

 

「柾宗兄様、この人はあくまで友達程度の関係ですからね⁉︎ それと、やはり家の方は落ち着いてないみたいですね……」

 

「まあな。件の兄貴があんなだし、少なくともお前が卒業するまでは怪しいんじゃないか?まあ、それは置いておいて。」

 

「陽務君、いつかで良い。君が暇な時に龍宮院の本家にでも遊びに来てくれよ。俺か京極に言ってくれれば、迎えは寄越すから」

 

「あはは……考えておきます」

 

なんかとんでもない提案されてないか……?龍宮院の本家て。本当に俺、処刑されるんじゃないのか……?いざとなったら幕末で培った土下座の技術を披露することになるかもしれないな……。

 

「そんじゃ、俺は帰るわ。仙さん、ウチのバカ兄貴がご迷惑をおかけしました。」

 

「お気になさらないでください。私も久方ぶりに國綱さんの剣技を見ることが出来ましたので。経験者の百が居れば勉強になったのでしょうがね。そうでしょう、玲?」

 

「ひゃっ……はい!」

 

「うおっ……斎賀さん……」

 

仙さんが声をかけ後ろを見ると、制服姿の斎賀さん居た。

え、まさか今までの見られてた……⁉︎

 

「や、やぁ斎賀さん……お邪魔してます」

 

「玲さん、おかえりなさい」

 

「は、はい……ただいま戻りました」

 

「玲、覗き見とは感心しませんよ。」

 

「すみません……」

 

「まあまあ仙さん、ウチのバカ兄貴が暴れてる中で道場に入ってくるというのも気まずいじゃないですか。そう怒らんでやってくださいよ」

 

「……わかりました。それで玲、この後の予定は大丈夫なのですか?」

 

「えっ……あっはい!すぐ行きます!」

 

そう言い残し、斎賀さんは道場を去っていった。

相変わらず面白い人だなぁ……。

 

「あっ……すみません、長居しちゃって……俺もそろそろ……道着ありがとうございました。洗って返しますね」

 

「それなら構いませんよ。こちらでやっておきますので、着替えられた後、置いていただければ」

 

「良いんですか……?それならお言葉に甘えて……。」

 

この後の予定は特に無いが、このままここに居ても気まずいしな。早めに帰ろう。今日は幕末で鬱憤を晴らしてやる……!

 

「では、失礼します。」

 

「はい、またおいでになってくださいね」

 

俺は風雲斎賀城──もとい斎賀さんの自宅を後にした。

 




当初は毎週金曜の週一投稿を目指します。
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