僕と私のあるてぃめっと   作:三奈木イヴ

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楽郎君の話し方や性格が原作から乖離してる気がする。京極は萎びたほうれん草だけど、恋愛感情を自覚してからは早いと思うのです。


恋といふ思ひ

「……なぁ、マジで言ってるのか……?」

 

「大マジだよ……。柾宗兄様からの伝言だから間違いないよ」

 

「そうかぁ……。」

 

京極のとんでもない言葉に俺は頭を抱えた。

()()()()()()()() 遂に呼び出しが来てしまった。

正直、國綱さんと戦った時点でいつかこうなるんじゃないかと思ったけど、本当にその日が来るとはな……。

 

「ごめんね楽郎……」

 

「いや、京極は悪くないよ。それで、空いてる日だっけか」

 

「……うん、その日を言ってくれれば、ウチから迎えが来るからさ」

 

「……わかったよ。俺は──」

 

そうして、京都に行く日が決まった。

 

◆◇

 

「……どうしような」

 

いつかこうなるとは予想してた。だとしても、こんなに早いとは……。逃げる──のは無理そうだな……。

少なくとも京極がこっちに居る時点で逃げても無駄だろう。

 

「んー?どしたのお兄ちゃん、悩み事?バイトする?」

 

「金のことじゃねえよ。しれっとバイトさせんな」

 

目下の悩みのタネに頭を悩ませていると、瑠美が帰ってきたようだ。つーか早いな、バイト無いんか

 

「それで?例の彼女さんと何かあったの?」

 

「彼女じゃないよ。普通に友達」

 

コイツもかぁ……邪教徒め……。

何度も言ってるが、俺は別に京極と付き合ってるわけではない。あくまでただの友達だ。

 

「いやちょっとな……」

 

「詳しく聞かせてよ。ほら、コーヒーもあるし」

 

「えぇ……」

 

今の一瞬でどうやってコーヒー淹れたんだコイツは……。

恐ろしく早い準備、俺は見逃したね……。

しゃあねぇ……相談するか。

 

「まぁ……なんだ。その友達、実は京都からの転校生なんだけどな」

 

「そんで、そいつだけこっちに来てるんだ」

 

「うん?てことは何?その人の家族に呼び出されたとか?」

 

「……今のでよくわかったな……」

 

「えっ、マジ⁉︎」

 

おっと墓穴掘った……。クソっ……勘だったのか。

 

「ハァ……マジもマジ。曰く、俺を連れて来いって言われたらしくてな。今度、京都行ってくるよ」

 

正直な話、既に気が重い。だって、國綱さんいるじゃん……?そんでまだ会ったことないけど、京極の両親もいるって話じゃん。しかも京極のお父さんって龍宮院流の現当主らしいじゃん。そんで、特に龍宮院と関係無いけどちょっと龍宮院富嶽の歩法が使える俺が呼ばれるってなったら、下手すれば処刑されるんじゃないかとヒヤヒヤしているぞ。

 

「良いなぁ京都……」

 

瑠美のヤツは俺が京都へ行くことにまるで旅行へ行くかのように思ってるらしい。違うぞ……どちらかといえば死地へ向かうことになるかもしれないんだぞ…………。

いや、京極は大丈夫って言ってたからな……。今はアイツの言葉を信じるしか無い……。大丈夫だ……。全世界にエナドリキメるとこ流した時に比べれば被害は浅いはずだ……!定期的に電脳大隊から勧誘のメール来るけど行かないからね⁉︎ 『顔隠し様、是非とも電脳大隊へ』じゃないからね⁉︎

 

「バカ言え……遊びに行くんじゃないんだぞ……」

 

「デートみたいなもんじゃん。それにご両親への挨拶ってやつでしょ?今度、日曜にウチにも連れてきてよ」

 

「やだよ。そもそもただの友達なのに両家顔合わせみたいになるじゃねえか」

 

「えぇ……?──あっ、ヤバいバイトが!行ってきます!」

 

「おぉ……車に気をつけろよー」

 

結局バイトだったのか。まあ、いいや。俺も幕末かシャンフロでもやるか。

 

◆◇

 

「天誅!」

 

「天誅!」

 

いつものように人斬りの業を天に擦りつける幕末志士を天誅していく。

 

「祭囃子!」

 

「うるせえ!天誅!」

 

俺を呼ぶ声のせいで辺りからワラワラと湧いてくる幕末志士の連中。

これは逃げた方が良いかもな……ランカー来たらヤバいし

 

「待て──っおぁ!」

 

「やべえぞ!レイ──ぎゃあ!」

 

「はっ⁉︎」

 

今なんつった!?

 

途中まで聞こえた声に殺気を感じた俺は咄嗟に頭を下げた。

 

「あぶね⁉︎」

 

今のは……錆光⁉︎

 

「祭囃子」

 

「……久しぶりだな……レイドボスさん」

 

やっべぇ……一応ギャラリーは沢山居るけど……この人数じゃ厳しくね……?

 

「レイドボスさんだ!囲め!」

 

「祭囃子もいるぞ!」

 

おっと……こりゃマズい。逃げれる──訳ないな。

 

「祭囃子‼︎ 大人しく天誅されろォ!」

 

「天誅」

 

俺を天誅しようと飛び込んできたやつは、レイドボスさんに天誅された。

 

「ハッ……!今日はアンタに会えるとはな!」

 

「最近、よく来てる」

 

「まあな」

 

いつだったか、対レイドボスさんの会話記録みたいなものが出たことがあった。

レイドボスさんの会話は音ゲーみたいなものだ。もしくはラブ・クロックみたいに時間制限のあるギャルゲーな。もう二度とやらん。

 

「京極?」

 

「……ああ」

 

予想外の名前が出てきて、一瞬反応が遅れちまった。

 

来る……。

 

「天誅」

 

「あぶねっ!」

 

首を狙う錆光を咄嗟にしゃがんでかわした。

 

「このヤロっ!」

 

両手に握る刀を振り抜いた。しかしそれは空を切った。

 

「おいギャラリー共!お前らもやるぞ!」

 

未だ動かないギャラリー共を煽り、レイドボスさんに対抗する人数を増やす!

 

「行くぞ!レイドボスさんを天誅するぞ!」

 

「よっしゃあ!」

 

「天誅!」

 

後ろから、正面から、はたまた上空からレイドボスさんを強襲する。

 

だが────

 

「天誅」

 

俺たちの抵抗も虚しく、3.40人規模の幕末志士はどんどん減っていく。

もちろん俺も攻撃しているが、錆光を避けるのって結構大変なんだよな…………。

 

役割模倣(ロールプレイ):龍宮院富嶽!」

 

ゲームの中でならある程度使えるようになってきた!避けろ!避け続けろ!

 

「……やるね」

 

そう言いながら、レイドボスさんが銃を抜いた。

 

「……やべっ」

 

近くに居たやつを盾にしてかろうじて弾丸を避けた。

だが、この怪物はそれだけじゃ終わらない。

 

「もう……一発」

 

「────ここだ!」

 

レイドボスさんお得意の銃弾の数を誤魔化す戦法

左腕に被弾した。

 

「……クッソ」

 

だが、まだ右腕がある。

まだだ!まだ終わらんよ!

 

「オラァ‼︎ 天誅!」

 

レイドボスさんに斬りかかった。

 

だが────

 

「ッ…………。」

 

「惜しい、ね。惜しかった。」

 

右手に握る刀は、レイドボスさんの蹴りによって弾かれた。もうなんでもありだなこの人……。

 

「辞世の句」

 

「……次こそは、必ず倒す、待っていろ」

 

「うん、天────」

 

「サンラクゥゥゥ!!!」

 

「──⁉︎ 」

 

辞世の句を唱え介錯される刹那、上空から声が聞こえた。

 

「はぁ!?」

 

そして見上げると、レイドボスさんを上空から刀で突き刺そうとする京極の姿があった。

 

「レイドボスさん!」

 

「あ、京極」

 

「お前……どうして」

 

目の前に立つ京極に俺は尋ねた。ていうかログインしてたのかよ。

 

「サンラクの声が聞こえたからさ。天誅しようと思って────ギャっ……!」

 

ここに来た理由を述べてる最中、京極は頭を撃ち抜かれて死んだ。

きょうごくーーーーー!!!!!

 

「あいつ(くいっ)か……。クッソ……」

 

「じゃあ、天誅」

 

レイドボスさんの錆光により、俺の首は落とされた。

 

◆◇

 

そして来たる龍宮院家訪問の日

あの後?普通にレイドボスさんに天誅されて京極の死に様を滅茶苦茶笑ってやったよ。京極は今度こそ天誅するって叫んでたな。

 

「楽郎、おはよう」

 

「……おう。おはよう」

 

それはそれこれはこれ……。幕末ではあんだけ暴れてたけど、今日はどうしても気が重い。

 

「ごめんねぇ……こんな朝早くから」

 

「いや……それは良いんだよ……。」

 

朝早いのは慣れてるけど、友達の家族というのはなんとも気まずく感じる。なんでだろうな

 

「まあ、実家まで遠いし、なんだっなら寝てても大丈夫だからさ」

 

「あいよ」

 

京極が言うには、この近くに迎えの車が来ているらしい。

まあ……覚悟を決めるか。

 

「それじゃ、行こう」

 

「おう」

 

◆◇

 

「到着しました。」

 

「ありがとうございます」

 

「ありがとう。ゆっくり休んでくださいね」

 

車から降り、京極の家の前で立ちすくんだ。

 

「楽郎、いこ」

 

「お、おう……。」

 

なんとか足を動かす。なんかアレだな……。ラスボスの根城を前にしたプレイヤーみたいな……いや、クソゲーにそんなシチュはあんま無かったわ。

 

「ただいま戻りました!」

 

「お、お邪魔します……」

 

「おかえりなさい、そして、いらっしゃい」

 

待ち受けていたのは、黒髪を伸ばした和装の女性だった。

京極を彷彿とさせる雰囲気だが、どこか國綱さんのような圧も若干感じる。

 

「お久しぶりです、お母様」

 

母親だった。

 

「は、初めまして……京極さんのクラスメイトの陽務楽郎です……」

 

「これはご丁寧に。初めまして、國綱と柾宗と京極の母の小町です。娘がお世話になっています」

 

おっとりとした声色だが、俺は内心ビビっていた。

 

「も、もうお母様!恥ずかしいから!」

 

「あらあら、仲の良い殿方がいると聞いて、私は楽しみにしてたのよ?はい、上がりなさいな」

 

「は、はい……失礼します……。」

 

◆◇

 

「楽郎……大丈夫?」

 

「え?」

 

「お母様と話してる時、國綱兄様と会った時より緊張してたから」

 

「ああ……。」

 

まあ、あの時は手合わせもあったからな……。

 

「多分、大丈夫」

 

まあ……大丈夫だろう。

 

「……京極お嬢様」

 

「はい、すぐ行きます。楽郎」

 

「ん?」

 

「お父様のとこ行くよ」

 

「…………おう」

 

俺は覚悟を決めた。京極のお父さんがどういう人か知らないけれど、京極は大丈夫だと言った。だから俺はその言葉を信じる……。

 

◆◇

 

「そういえば、さっきの人ってお手伝いさんとか?」

 

「そんなところ。普段はお祖母様のお手伝いしてる人なんだけどね、たまにお父様の伝言を伝えてくれたりもする」

 

「ふーん」

 

「さて、ここだよ。お父様は國綱兄様みたいな事にはならない……はずだから安心して」

 

「はず……」

 

いや、覚悟決めただろう。

 

トントン

 

「お父様、京極とお客様です」

 

「入って」

 

「失礼します」

 

「し、失礼します」

 

声に従い、襖を開け中へ入った。

中には京極のお父さんらしき男性が座っていた。

剣道の家元らしいけど……やっぱがっしりしてるように見える。

 

「君が陽務君だね?いつも京極と仲良くしてくれてありがとう。俺は、龍宮院備前という者だ。」

 

「陽務楽郎です。龍宮院……京極さんとはクラスメイト程度の関係です」

 

お互いに自己紹介をすると、備前さんは笑顔で俺の肩を叩いた。

 

「ハッハッハッ!そんなに硬くしないでくれ!俺のことはお義父さんでも良いんだぞ?」

 

「お父様……!?」

 

何を言ってるんだこの人は……? それにしても────っ!

 

「先日は、ウチの愚息が迷惑をかけたね。すまなかった」

 

備前さんの雰囲気がガラッと変わった。そして、先日の件は……恐らく、斎賀家に國綱さんが来た件だろう。

 

「い、いえ!俺は別に……!」

 

「いや、謝らせて欲しい。斎賀家にも迷惑をかけたが、剣道の経験が無い一般人を國綱とぶつけてしまったからね。」

 

「でも、君が父さんの歩法を使えるって京極から聞いた時は、ビックリしたよ。」

 

「お父様、その件は……」

 

「ああいや、別に責めてる訳じゃないんだ。……初めて京極から父さんの歩法が使える人が──それも剣道の心得が無い龍宮院の関係者では無い人だって聞いて、とてもびっくりしたよ。」

 

「ただ……その件で國綱が暴走しかけてね。落ち着かせるために京極をそちらへやったのだが、まさかこんなにも身近な人だったとはね。」

 

「あはは……」

 

そう言いながら備前さんの俺を見る目が鋭く光り、俺は愛想笑いをした。

 

「そういえば、兄様は?」

 

「國綱は席を外させているよ。前の件もあったからね」

 

「ホッ……」

 

思わずホッとした。また戦えとから言われかねないし。

 

「それでな陽務君、実は君と話したいことがあるんだ。京極、悪いけど席を外してもらえないか?」

 

え……?俺と……話したいこと……?なんだ……?

 

「取って食おうってわけじゃないさ。気楽にしてくれよ」

 

「は、はい」

 

「お父様、僕はしばらく道場にいますね」

 

「ああ」

 

ちょ、京極さん!行かないで!

そんな思いも虚しく、京極は出て行った。

 

「……さて、二人きりで男同士。なんの話をするか予想出来るかい?」

 

「……」

 

わっかんねぇ……龍宮院流についてか?

 

「龍宮院流についてでしょうか?」

 

「違う。……陽務君、君はウチの娘をどう思ってる?」

 

「……はい?」

 

どう思ってる……京極を?

 

「単刀直入に聞こう。君は京極の婿になるつもりはあるかい?」

 

「はい!?」

 

予想の斜め上を通り越して最早どこにあるのかわからない質問に俺は驚いた声を出してしまった。

 

「どういう意味ですか……」

 

「そのまんまだよ。君は、あの子のことを好いているのかい?」

 

おいおいおい……ここでもそういう話題なのか……。

 

……ぶっちゃけ、京極の事をどう思ってるのかと言われれば、俺は『仲の良い女友達』と答えるだろう。

実際そうだし。雑ピとか京極のファンクラブ的な女子たちに尋問を受けたこともあったが、本当に付き合ってるとかそういうのは無いんだっての。第一アイツ、そういう人いるのか……?いたとしても國綱さんが出張ってきそうだが。

 

「……俺と京極さんは友達です。向こうがどう思ってるかわかりませんが、俺は友達だと思っています。」

 

俺は、俺の思いを伝えた。

すると、備前さんは目を閉じ、答えた。

 

「……そうか。するとなんだ、君は京極との関係は遊びと言うのか?」

 

「はい?」

 

なんでそうなった!?まって、今にも刀を抜きそうなんですけど!?助けて京極!!

 

「違います違います!!ただ時々遊びに行ったり一緒にゲームする友達ってだけです!そういう恋愛とかじゃないってだけです!」

 

焦って自分が何を言ってるのかわからなかった。

 

「ふむ……。なら今は様子見としようか。小町からも後で聞く事にしよう」

 

何かをブツブツと呟く備前さんをよそに、俺は深呼吸をした。

そうでもしなければ、緊張のせいでとてもやってられなかったからだ。

 

「そういえば、例のチケットだが、京極とデートに行ったそうだね。どうだった?」

 

「まあ……楽しめましたけど……。」

 

「國綱は俺たちで止めたからね。と、言っても主に動いたのは母さんだが。」

 

「その節はどうもありがとうございました……。」

 

俺は深々と頭を下げた。

 

「良いよ良いよ。君は近い将来、義理の息子になるかもしれないからね」

 

「…………」

 

ノーコメント。

 

◆◇

 

「お父様…………。」

 

道場へ行くと言ったものの、心配になって廊下で待っていたけれど……あの人は何を言ってるんだ……。危うく乱入するところだった。

 

「婿って…………別に私は楽郎のこと…………」

 

楽郎のことなんて────そう考えた瞬間、胸の奥から熱いものを感じた。胸の鼓動が早まり、顔が熱くなった気がした。

思い出したのは、先日の映画デート

 

一緒に映画を見て、ご飯食べて、楽郎のオススメするところに行って────そんな楽しかったあの日を思い出した。

 

「私は……別にそんな感情を抱いてるわけじゃないのに……なんで……?」

 

早まった鼓動は収まる事なく、更にドクドクと鳴る。

それは私の耳にも聞こえるくらいうるさく、もしかしたら周りに聞こえてるじゃないかと思う。

 

「私は……楽郎のことが……」

 

好き……なのかもしれない。

 

これがそういう感情なのかわからない。

 

だって、そんな経験無いもん。

 

ずっと剣に生きてきた私。

 

お祖父様と剣を交わし、関西では敵なしと言われ、シャンフロでPKをして、幕末で楽郎や他のプレイヤーと戦って……。

 

「ううん…………。きっとそんなんじゃない。楽郎は友達だから────」

 

『向こうがどう思ってるかわかりませんが、俺は友達だと思っています。』

 

!!

 

そう……だよね。私も……楽郎を友達だと思ってるもん。

きっと……恋なんかじゃないんだ……。

 

私は……この感情にどう答えを出せば良いかわからなかった。

 

「…………私だけじゃダメだ。でも國綱兄様はもっとダメだ」

 

間違いなく問題が悪化する。だから、私が頼るのは────

 

私は、その人の元へと向かった。

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