僕と私のあるてぃめっと第8話でございます。
國綱さんとの試合が決定した翌日
「おはよう、楽郎」
「……おはよう」
朝一番に京極の顔を見る事になるとは……
昨日の出来事を思い返してみると、かなり強引に試合が決まってしまったなと思う今日この頃。場の流れとはいえ、やると言った以上は俺も全力でやる。ゲームと同じだ。いや試合をゲーム扱いしたら怒られるかもしれないけど。
ただ昨日の今日で最初に会うのが京極なのはどうしても國綱さんの事を意識せざるを……
「うん?陽務どうしたんだ?」
「なんでもねえよポエマー」
考え事をしてる時に話しかけてきたポエマーに即答した。
今はお前に付き合ってる暇は──
「よしお前ら!陽務を尋問するぞ!」
「なんでだよ!」
割と日常茶飯みたいなものだが、これはマズイ予感がして飛び出そうとした刹那、一瞬で両腕を極められ、拘束された。
──後ろに座っていたはずの京極に。
「おい!なんでお前が拘束してるんだよ!離せ!」
「今日は私も参加しようかなって。さて、何を聞き出すんだい?」
外向きの澄ました顔がニヤリと悪い笑顔を浮かべた。
そうだ……コイツも外道だった……!
「ナイスだ龍宮院さん!ちなみに今回は龍宮院さんにも聞きたいんですけどね……」
「僕にもかい?」
京極にも?ならこの隙に……
「楽郎、逃げれると思わないでね?」
一瞬の隙を狙って拘束を解こうとしてみるも、それ以上に早く腕の極まり具合が増した気がする。
「どさくさに紛れて逃げれないかと抵抗してみたけど、ダメだったか……。で、お前らは朝っぱらからなんだよ?」
いつものように悪態をついてみると、雑ピが代表して口を開いた。
ちなみにこういう時、大抵拘束役に抜擢される柔道部の山本は京極に役を取られているので雑ピ達の側で佇んでいる。
「最初に言っておくが、龍宮院さんは女子達からの依頼もある」
「……マジ?」
「大マジ」
チラリと周りを見渡してみると、ちらほら登校してきた女子生徒達が遠巻きにこちらの様子を伺っていた。
ふとクラスでの京極の評価を思い返してみると、特に女子からの人気が高かった覚えがある。異性より同性にモテるって本当にいるんだな……。
「……何が聞きたいんだよ。俺と京極が付き合ってるかって話か?」
「っ……!」
「うん?」
一瞬、うめくような声が漏れた。
と思ったが、気のせいか……。
「で、実際のところどうなんだよ?普段から割と一緒に行動してて、同じゲームしてるんだろ?」
「まあ、してるな。だよな京極?」
「う、うん」
どうしてそれが付き合ってるかなんて話題になるんだろうか。
……同じゲームと言っても、普通に幕末で殺し合いばっかなんだけどな。最近……というか昨日なんか京都でとんでもないことを言ったけども。
うん、特段おかしな事は無いな。京極もこう言ってるし。
「おかしい事だらけな気もするけどな〜?実はよ……目撃情報もあるんだよな〜」
「はぁ……?目撃情報だと?」
なんの目撃だろうか……?結構思い当たりそうで思い当たらないぞ……?
まさか昨日の事か?いや……アレがバレてりゃもっと面倒なことになっててもおかしくないはずだ。
「先日二人で出かけてたって情報が上がってるぞ」
「うん……?あー……その目撃ってお前だろ」
「っ……!」
「でっ……!ていうか京極、拘束少し緩めて!外れる外れる…!」
何故かわからないが京極の関節技が徐々に強度を増している。普通に痛いしこのままじゃ外れる!
「あっ……ごめん……!」
「ったく。雑ピ、その話題はこの前ケリつけてなかったっけか?」
「俺のポエムが晒されたけどな……!」
「じゃあまた新しいの晒してやるよ」
確か新作は…………
「残念だったな。新作はまだねえよ」
「!?」
なん……だと……。
「お、おい、お前らはなんか無いのか!?雑ピの新作は!」
雑ピの周りにいる連中に何か知らないかと目を向ける。だがしかし、全員に目を逸らされた。クソッ!なんで書いてないんだよ!
「悪いな、今は資料を集めてるとこだからよ……あっ」
「ほう?」
アホが口を滑らせたおかげで言質を取れた。いつかお披露目会をしないとな。……それはそれとして。
「話が進まないからハッキリ言っとくぞ。京極とはただの友達だよ。そりゃ一緒に遊んだりするけど友達ならそういうもんじゃないのか?」
俺は後ろで拘束を続ける京極に目伏せをした。
すると京極はほんの一瞬、目を逸らした。
でも、すぐにいつもの表情に戻った。
「……そう、だね」
返ってきたのはその一言だけだった。
そして京極の声がいつもより低いような気がした。
◆◇
「……バカ」
楽郎は私のことを友達としか思ってない……。
……仕方ないか
「でも、友達……か」
転校前の学校でも友達と呼べる存在はいたけど、楽郎のように心から気を許せる人は多分居なかった。そんな僕でも……いや、お祖父様の背中を追っていた
そんな楽郎に、
いやいや……仮にそうだとしてもまだその時じゃない……。
この後だって楽郎との稽古があるんだし……國綱兄様はとても強い。お祖父様には遠く及ばなくても、私や楽郎が束になってかかっても、きっと負けてしまう。それくらいの実力者だ。
「……行こう」
◆◇
「……準備よし。行こう」
今日から対國綱さんに向けた特訓が始まるのだが、いかんせん俺はリアルでの剣道や剣術に関しちゃ全くの未経験だ。龍宮院富嶽の歩法も國綱さんには到底及ばないしな。
「楽郎!」
道着に着替えた京極が更衣室からゆっくりと出てきた。
その右手には、普段から使っているであろう竹刀が握りしめられている。
「京極、よろしく頼む」
「うん、私が國綱兄様に勝てるまで楽郎を鍛えるよ」
京極の気合いの入り具合が少々怖いが……気合い入れてこうか。
ちなみに道場は斎賀家の道場をお借りしている。
仙さん達に話を通してくれた京極には感謝しないとな。
「じゃあまずは……基礎からやろっか」
「うす!」
初めは竹刀の持ち方や踏み込みなど、本当に基礎という基礎を巻き気味で叩き込まれた。だが流石龍宮院流本家の京極、巻きとはいえ教えるのがとても上手い。
「はいはいそこ!もっと速く!」
「おう!」
次は歩法。ゲームで覚えた模倣ではなく、本家のちゃんとしたやつだ。
「だぁー!きっついなぁ!」
基礎を含め2時間ほどぶっ通しだった。
俺の体から汗がドバドバと出てくる。それはまるでライオットブラッドをキメた後に脳から出てくる謎の液体のように……あぁ……ライオットブラッド……トゥナイト……バックドラフト……うっ、頭が……。
「楽郎、大丈夫?」
「……大丈夫だ」
気を抜くと夏休みのことが蘇るな……GGCで大暴れした時のことが。根菜と柑橘に塗れた地獄も一緒に。いや……あれは闇に葬るべきだ。うん、そうしよう。
「うーん、2時間ぶっ通しだったもんね、初日だし今日はこれくらいにしておこう」
「京極……!」
今日の特訓は終わりか──
「じゃあ、最後に走って解散しよ」
「マジ?」
「うん、マジ。仙さんには私から伝えておくから」
体力を限界手前まで削られ、やっと今日の特訓が終わるかと安堵した刹那、体力作りのランニングが追加された。
「……上等だ」
明日は筋肉痛確定だな。でも、やってやる!
「行こう、楽郎」
いつの間にか着替えていた京極に手を引かれ、俺たちは街に繰り出した。
この度、退職や引っ越し等の私事に追われており、執筆そのものを止めるという事態になっておりました。現在は少しずつではありますが、当シリーズ並びに安芸優樹の終の章の執筆を再開していこうと考えております。今後とも、三奈木イヴをよろしくお願いします。
ps.安芸優樹シリーズも並行して執筆しております。なるべく早い再開を目指して頑張ります。