二課のロビー。静かな空間に照明の柔らかな灯りがともるなか、響はソファに身を預けていた。
「響ちゃん……」
「朱乃さん」
ふわりと膝に添えられる柔らかな手。朱乃は静かに座り、響の頭を自分の膝に誘導する。
「とりあえずは私だけだけれど、ここに魔法陣を張っておいたから、部室から直通で来れるように手筈は整えてあります。」
朱乃の膝枕に甘えるように横たわる響。まぶたを閉じて――
(柔らか……最高……)
そんな極楽の時間を堪能していると、ロビーの自動ドアが静かに開く音が響く。
「立花」
翼の声に、響は目を開けて身を起こした。
「翼さん!」
慌てて朱乃の膝から身体を離し、響は立ち上がる。
「こちら、姫島朱乃さん。オカルト研究部の副部長で……その、すごく頼りになる人です」
翼は朱乃を一瞥し、丁寧に会釈した。
「風鳴翼だ。立花がいつも世話になっているようだな」
「姫島朱乃です。こちらこそ、響ちゃんにはよく助けられています。どうぞよろしくお願いします」
一瞬だけ、翼の眉が僅かに動く。「姫島」という姓に何か引っかかるものを感じたが、それ以上は追及しなかった。
「立花。まだ身体に無理はきかないだろう。しばらくは安静にしていろ」
「はい。ありがとうございます、翼さん」
翼は朱乃に向かって小さく頷いた。
「それでは、私はこれで失礼する。……今後とも、立花のことをよろしく頼む」
「もちろんですわ」
その言葉に響は照れくさそうに笑い、朱乃は優しく微笑んだ。
ロビーの扉が再び開き、翼は静かにその場を去っていく。
その背中を見送りながら、響は心の中でぽつりと呟いた。
(……なんだか、すごく優しい時間だったな)
翼が去った後、ロビーに静けさが戻った。
朱乃の膝からそっと離れた響は、改めて体を起こし、深呼吸する。
「……落ち着いた?」
朱乃が優しく問いかける。
「うん、大丈夫。ありがと、朱乃さん。ほんとに……助かった」
「響ちゃんが無事でよかったわ。部長もきっと、ほっとしてる」
そう言って朱乃は立ち上がり、制服の袖を整えた。
「さあ、そろそろ行きましょう。部長たちが待ってるわ」
「……うん!」
響はその手を握り返し、頷く。 二課の会議室へ案内された響は、部屋に集まった顔ぶれを前に緊張しながらも、しっかりと歩を進める。
テーブルの奥には、リアス部長が悠然と腰かけていた。隣には風鳴弦十郎、そして櫻井了子の姿。
「ようこそ、響。もう体の調子は平気?」
「はい、リアス部長」
「……じゃあ、始めましょうか」
リアスが手を軽く振ると、テーブルの上に魔術の文様が淡く浮かび上がる。天上の力、天空聖者の契約印だ。
「これより、天空聖者フレイジェルこと立花響と、特異災害対策機動部二課との協力契約を締結します」
リアスの口から、宣言のように言葉が放たれる。
「契約の目的は、地上の秩序と平和を守ること。特に、完全聖遺物《デュランダル》を狙う敵対勢力に対抗するため、我々は力を共有し合う。その上で、天空聖者としての正体を第三者に漏洩しないことを約束するわ」
響は小さく息を吸い、そして言った。
「私は、立花響。天空聖者フレイジェルとして、二課とオカルト研究部、両方の仲間と手を取り合って……守りたいものを守るために、この力を使います。もし、私が誰かを傷つけてしまった時は――その責任は、ちゃんと私が受け止めます」
魔術陣が一際強く輝き、やがて静かに消えていった。
「……これで正式に君は、我々の仲間だ」
弦十郎が手を差し出し、響はその手をしっかりと握る。
「はい。よろしくお願いします、弦十郎さん」
「ふふ、これで晴れて、フレイジェルとしての第一歩ね」
リアスの笑みに、響も自然と笑顔を返す。
「立花響。天空聖者フレイジェル。共に未来を守ろう」
それは、一つの新たな誓いだった。
こうして、天空と地上、二つの勢力を結ぶ少女は、正式にその役目を背負うこととなった。
それでも彼女は、変わらずに。
手を差し出し、笑い合って、誰かの隣にいられるようにと――歩き続けていくのだった。
次の話はどんな感じの話がいい?
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ルナジェルと響の話
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新たな天空聖者(ウィンジェル)の誕生話
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スノウジェルと翼はクラスメイト