リアス・グレモリーになったんだけど世界が違う。   作:のうち

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第6話

私は――立花響。

 

 今、私は小さな女の子を連れて、必死に逃げていた。

 

 あれから、もう15分以上。

 振り返れば、ノイズたちは執拗に追い続けてくる。

 

 (くそっ……しつこい!)

 

 たまに数が減っている気もするけど、ただ逃げるしか手段がない今、そんなことは関係ない。

 

 「お姉ちゃん……私たち、死んじゃうのかな……?」

 

 怯える少女の声に、私ははっとする。

 

 「大丈夫! 生きるのを、絶対に諦めないで!」

 

 そう励ました、その瞬間だった。

 

 私の左腕に、異変が起きた。

 

 オレンジ色に輝く、重厚なガントレットが装着される。

 

 「こ、これは……!?」

 

 戸惑う私の前に、何かがきらめいた。

 

 ――冷たい空気。

 

 目前のノイズが、一瞬にして氷漬けにされ、砕け散った。

 

 「!?」

 

 そこに現れたのは、涼やかな美貌を湛えた少女――司波深雪だった。

 

 「ぼーっとしていてはダメです!」

 

 彼女は冷静に私へ指示を飛ばす。

 

 「立花響さん、しっかりしてください! 事情の説明は後! 今はこの子を守って!」

 

 「は、はい!」

 

 私は必死にガントレットを握りしめ、ノイズに向かって振りかざした。

 

 ――ドン!

 

 殴った瞬間、ノイズの体が吹き飛ぶ。

 

 「ノイズを、殴れた……?」

 

 「お姉ちゃん、すごい!」

 

 少女の笑顔に、私の胸が熱くなる。

 

 

 しばらくして、周囲にノイズの気配が消えた。

 

 深雪さんは、静かに私の前に立った。

 

 「……終わりましたね。立花響――いえ、“フレイジェル”」

 

 「フレイジェル……? それ、何ですか?」

 

 「まだ記憶の封印が解けていないのですね。まぁ、それも仕方ありません。リアスお姉様が、いずれ解き明かしてくださいます」

 

 そう言うと、深雪さんは私の手を取った。

 

 そして、ポケットから白い携帯電話のようなものを取り出すと、それが杖のような形に変形した。

 

 「ゴール・ルーマ・ルジュナ」

 

 足元に魔法陣が現れ、私たちは光に包まれる。

 

 目を閉じ、そして――目を開けると、そこは見知らぬ空間だった。

 

 辺りを見回すと、そこは学校の空き教室のようだった。

 

 だけど、どこかおかしい。

 あちこちにオカルトチックな飾り付けが施され、どこか不気味な雰囲気を漂わせている。

 

 「ここは……?」

 

 「オカルト研究部の部室です」

 

 「え、じゃあここ、リディアン……?」

 

 「ええ。ただし、部屋の広さも、認識も魔法でいじってありますので、普通の生徒には見えません」

 

 「へえ……」

 

 私はぽかんとしながら、深雪さんの話に耳を傾けた。

 

 

 そして、深雪さんから真実を告げられる。

 

 2年前、ライブ会場で死にかけた私。

 そのとき、私は人間をやめ、天空聖者――フレイジェルとしての道を歩み始めたこと。

 

 左手のガントレットは、その証。

 

 それは私の命を救い、同時にツヴァイウィングの天羽奏さんのプロテクターの力を宿すものだった。

 

 ――私は、もう普通の人間じゃない。

 

 

 説明を聞き終えたころ、再び魔法陣が現れた。

 

 そこに現れたのは――

 

 「……あら、ちょうどいいタイミングね」

 

 リアス・グレモリー先輩。

 

 リアス先輩は、柔らかく微笑みながら深雪さんに声をかけた。

 

 「ごめんなさいね、深雪。説明を任せてしまって」

 

 「いえ、お姉様の頼みですから」

 

 「ありがとう。今度、買い物にでも付き合ってもらおうかしら」

 

 「……楽しみにしています」

 

 深雪さんは再び呪文を唱え、姿を消した。

 

 

 静まり返った部室に、私とリアス先輩、二人きり。

 

 先輩は、私を正面から見据えた。

 

 「さて……深雪から、あのガントレットのことは聞いたでしょう?」

 

 私は小さく頷いた。

 

 「なら、次はあなたがもう人間じゃないということ。そして、これから歩む運命について、ちゃんと話さないといけないわね」

 

 リアス先輩の瞳は真剣だった。

 

 私はごくりと息を呑んだ。

 

 

 この夜。

 私は“立花響”であり、同時に“天空聖者フレイジェル”でもある――

 本当の自分と向き合うことになる。

 

 そして、私の新しい物語が、静かに、だが確かに始まった。

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