TS転生したB級冒険者は異世界をB級に生きたい   作:エリーフ

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2 B級な人付き合い

 私がナギとしてTS転生したのは、今から二十年以上前のことになる。

 いやぁ、最初はびっくりしたものだ。

 なにせやたらと顔のいい女の子に生まれ変わっているんだから。

 正直、その時は悪い気はしなかった。

 前世の冴えない容姿よりも、華やかな容姿の方が見ていて楽しかったからだ。

 なんとなく、得した気分になるしな。

 

 そんな私の生まれは、なかなか恵まれていたと言えるだろう。

 両親がS級冒険者だったのだ。

 S級、一般的にA級の一つ上、特別な冒険者にだけ与えられる称号。

 それが、二人。

 片方だけがS級冒険者だったわけではなく、両親は父も母もS級冒険者だった。

 そんな両親から生まれた私はまさしくサラブレッド。

 周囲から、多大な期待を向けられていた。

 

 幸いにも、私には才能があった。

 転生者ゆえのチートだろうか、他人よりも魔力量が圧倒的に多く。

 何より、前世とは比べ物にならないくらい体の動きが正確だった。

 私の思うがままに体が動くのだ、あの爽快感はなかなか得られない光景である。

 

 だからこそ、幼い頃の私は両親に憧れていた。

 前世の平凡な生活とは無縁な、名誉と栄光に満ちた冒険者の世界に。

 なにより楽しげに自分たちの冒険譚を語ってくれる両親に、憧れていたのだ。

 

 

 そんな両親が、冒険から帰らず行方不明になったのは私が十歳になった頃だった。

 

 

 はっきり言って、衝撃だった。

 何より衝撃だったのが、その冒険が本来なら対して危険なものではなかったからだ。

 帰ってきたら、三人で美味しいものを食べに行こう。

 そんなことを二人は当たり前のように語っていた。

 

 二人に何があったのかはわからない。

 未だに、その答えは見つけられていないのだ。

 だが、一つだけ言えることがある。

 私の幸せな人生は、そこで一度終わったということだ。

 

 両親がS級冒険者で、当然ながら財産もかなりのものを蓄えていた。

 一人で生きていくにも十分な量だが、ここは中世風ファンタジー世界。

 治安の悪さは、現代の比ではない。

 私はそれから、長く逃亡生活を続けることになった。

 自分自身の容姿も、狙われる要因になる。

 この世界は歴史的な背景から、私みたいな耳長の少女を好む金持ちが多い。

 そんな連中の魔の手からも、逃げる必要があったのだ。

 

 幸い、私は強かった。

 才能があったのに加えて、逃亡生活の中でそれが磨かれたのも大きい。

 今のところ、身綺麗に生活を送れているのはその才能と強さのおかげだろう。

 とはいえそもそも逃亡生活を送れているのはこの強さと美貌のせいなのだが。

 それを恨むと、大好きだった両親を恨んでしまうので私は極力考えないようにしていた。

 

 それと、私を助けてくれる人たちの存在も大きかっただろう。

 特に、ある事情から直接関わることはできないけれど、色々と手助けをしてくれた大叔母には感謝している。

 中でも両親の遺産の安全な隠し場所は、大叔母にしか用意できなかったので本当にありがたい。

 他にも、私を助けてくれた人たちはいた。

 身近な冒険者だ。

 私の境遇を知ってか、知らずか。

 優しくしてくれる冒険者はそれなりにいた。

 無論、下衆なことをしようとしてくる連中もいたが、別にそれは叩きのめせばいいだけだ。

 なので、生きていくために冒険者になるしかなかったというのもあるが、冒険者という職業自体はそこまで嫌いではない。

 

 ただ、冒険者らしい冒険心を、私が持てていないというだけで。

 B級冒険者になった時、もうこれ以上危ないことはしないようにしようと誓った。

 日々の楽しみを糧に、毎日を安全に――B級に生きていくのだと決めて。

 今もその誓いは破っていない。

 

 ただ、まぁなんというか。

 冒険者としての拠点をメロリア――両親が消息を絶った街に決めたのは。

 両親と冒険に対する未練のようなものが、残っていたのかもしれない。

 

 

 <>

 

 

 私は、普段ソロで活動している。

 パーティを組むことによって発生する、人間関係の不和とかが面倒だからだ。

 あと単純に、私がトラブルメーカーだから、というのもある。

 私を狙う連中が襲ってきて、巻き込まれても悪いからな。

 とはいえ、完全にソロで冒険者を続けるのは結構しんどい。

 メロリアの街だけで活動していくならともかく、何かの機会に遠征することになった時。

 一人旅ってのは、危険を通り越して無謀だからな。

 野宿ができなくて1日中眠気を噛み殺して、街を目指しながら移動したあの頃を思い出したくない。

 なので、周囲の冒険者とのつながりはある程度保っておきたかった。

 そんな私にとって、ちょうどいい方法が一つある。

 

「――グレイトミノタウロスって、なんでそんな大物がこんな場所に出るんだよ!」

「ナギさんを()()()に呼んでおいてよかったわね、下手したら全滅してたわよ、私達」

「あんまり私に期待しすぎないでくれよ」

 

 ()()()

 ようするに、冒険者パーティの助っ人として臨時で加入することだ。

 ソロの冒険者は、たいていこういうヘルプ以来を受けることで冒険者パーティと関わることになる。

 私は、特にヘルプの依頼は積極的に受けることとしていた。

 手軽に冒険者パーティとのつながりを得られるからだ。

 現在は、二人組の冒険者パーティ『アカアオ』と組んでダンジョンに潜っている。

 ちなみに由来は二人の髪色である。

 赤髪の少年と、青髪の少女のアベックパーティである。

 まぁ、二人を恋人扱いすると即座に否定が飛んでくるけど。

 

「俺が攻撃を受け止めますから、ナギさんは遊撃お願いしますっ!」

「アタシは援護でいいわよね。……すいません、こいつの援護を優先したいのでナギさんはあまり支援できないかも!」

「問題ないさ。その分正面からの攻撃は任せることになるから、負担は大きくなっちゃうけど」

 

 構いません、と二人から全く同時に声が聞こえてくる。

 これでアベックじゃないは冗談だよなぁ。

 ともあれ、今はグレイトミノタウロスの相手だ。

 名前の通り、ただでさえ強いミノタウロスの上位種である。

 本来は下層に出てくる魔物で、現在私達がいる中層に出てくる魔物ではない。

 何にせよ、軽く打ち合わせを終わらせて戦闘開始だ。

 

「こっちを見ろデカブツ! <挑発>!」

 

 盾を構えて、赤髪の少年がスキルを発動する。

 この世界にはスキルが存在していて、挑発の効果は文字通り敵を引き寄せるもの。

 それによって、少年に惹き寄せられたグレイトミノタウロスの斧を少年が盾と剣で受け止める。

 少女が、それを魔術で支援するのがこのパーティの戦い方。

 

「足、崩すよ! <光弾>!」

 

 そこに私が、グレイトミノタウロスの足元に魔術を行使する。

 光の玉を飛ばすシンプルなそれは、扱いやすい上に対象を選べるので誤射の心配がない。

 私みたいな助っ人御用達の魔術である。

 それが足に直撃し、グレイトミノタウロスは足を崩した。

 即座に、少年が剣を叩きつけ、少女が魔術で追撃する。

 最後に私が勢いよく飛び上がると――

 

「……終わり!」

 

 <身体強化>のスキルを乗せたかかと落としで、グレイトミノタウロスの脳天を叩き割った。

 んで、三人でお互いの無事を確認してから。

 

「……緊張したぁ」

「はぁ、あんな強敵が出るなんて聞いてないわよ」

 

 少年と少女が、緊張を解いてから脱力した。

 私も、二人の少し後に警戒を解く。

 

「お疲れ様、ふたりとも」

「あ、ナギさん。ありがとうございました」

「すいません、足を崩してもらったりして。トドメも、アレが無いと私達じゃ火力不足だったかなって」

「いいよ、それが仕事だからね」

 

 さっきの戦闘、決め手はほぼ私だ。

 足を崩すのもそうだし、トドメのかかと落としも二人の剣や魔術と比べるとだいぶ威力が違う。

 とはいえ、それをやすやすとやってのけれたのは、二人が正面からの攻撃を受け止めてくれたからである。

 

「はぁ、ナギさんには遠いわねぇ」

「そうかな? ふたりとも、もう私と同じB級冒険者だし、十分だと思うけどね」

「ナギさんのそれは……なんか、B級扱いするのはズルくないっすか?」

「ズルくない、ちゃんと私は認められてB級冒険者をしてるんだから」

 

 まぁ、逆鯖と言われると否定できないんだけど。

 ともあれそんな話をしながら、私は今日も冒険者パーティのヘルプをこなす。

 果たして、他冒険者パーティと一緒に、本来ならそのパーティが倒せない異常発生の魔物を倒すのはB級なのかという疑問もなくはないけれど。

 私がいなかったら彼らは無事で済んだかわからないのだし。

 まぁ、悪いバランスをちょうどよくする、という意味ではこれもまたB級なのかな、とか。

 適当なことを考えるのだった。




ヘルプに入るお姉さん的なサムシング。
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