現政奉還記 B.O.W.編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 今回からはガラリと展開が変わり、舞台を東南アジアの熱帯地域に移ります。
 物語のベースも有名な「バイオハザード」風の展開から話は始まります。


現政奉還記 B.O.W.編
現政奉還記 B.O.W.編 熱帯の追跡


[chapter:ジャングルを抜けて]

 

 2013年、東南アジア 

 太陽が照り付ける熱帯雨林を突き進む一団の姿があった。

 熱帯ならではの湿気と高温による猛烈な蒸し暑さで、額から汗を掻きながら前を歩く集団は、誰であろうあの聖龍隊の最高幹部であるHEADのメンバーだ。

 

 その先頭に一団を率いてジャングルを突き進んでいく聖龍隊総長バーンズは、額の汗を拭いながらも懸命に仲間と共にジャングルを進んでいく。

 バーンズは徐に懐から写真を取り出し、それに写っているサングラスの無精髭を生やしたアジア人男性の顔写真を目に焼き付けた。

 彼が所持している写真の人物はラッグ・ドウェル。ラッグはアジア全域に麻薬密売ルートを手広く持っている[アジアの麻薬王]と呼ばれる男だ。

 だが、そのラッグが突如として世間から姿を消し、東南アジアの密林奥地に潜伏しているという情報を聖龍隊は掴んだ。

 聖龍HEADは、そのラッグを追って遥々この熱気こもるアジアの密林奥地まで出向いていた。

(新世代を集めて何を企んでいるんだ、ラッグ)

 ラッグの顔写真を見ながら懸念に耽るバーンズ。

 と、そんなバーンズの背後から一匹の蛇が次第に距離を縮めつつ忍び寄って来ていた。バーンズはこの時、自分の肩に止まった小さな蝶に気を取られ、背後から忍び寄る蛇に気付かなかった。

 そして蛇は狙いを付けバーンズに飛び掛ろうとした、その瞬間。蛇の後頭部にジャックナイフが突き刺され、蛇は一瞬で絶命した。

「!」

 背後からの蛇を突き刺した物音に気付き後ろを振り返るバーンズの目に入ったのは、蛇の突き刺さったナイフを持ち上げながら水を飲む赤塚大作の姿があった。

「B.O.W.なんて居ると思うか? おっと、そういやお前達は既に戦った事があるんだったな」

 そう言うと大将はナイフに突き刺さったままの蛇を振り落とし、バーンズの横を通り抜けながら持っていた水入りのボトルを投げ渡す。

 そんな大将と、彼に付き従う赤塚組の幹部衆を見てバーンズは想った。

 彼等は世界を巡り渡り、今では特殊部隊にも劣らない戦闘力を持った集団。今回の新世代型二次元人の失踪と、それに関与していると思われるラッグの追跡による聖龍HEADの職務にも彼等が自分達の意思で同行したいと名乗り出て、こうして共に行動しているのである。

 だが、そんな彼等にとってもB.O.W.はCryptid(未確認生物)と一緒なのだろうとバーンズは常々思った。

 B.O.W.は既に世界中でその脅威がマスコミなどで知らされ伝えられているが、実物を目の当たりにした事の無い人々にとっては未だに空想上の存在に近いのだろう。

 そう思いながらバーンズは大将に投げ渡された水を飲み込んだ。

 

 その大将は進路先を見据えながらバーンズ達HEADの皆々に伝えた。

「この先の村にラッグが潜伏する土地までの案内人が居る」

 ラッグが東南アジアの熱帯奥地に潜伏していると分かり次第、赤塚組は前もってラッグの潜伏先である土地まで案内してくれる地元の人を雇っていたのだ。

 そして「さあ、行こうぜ」の大将の一声を皮切りに、聖龍HEADと赤塚組幹部衆は中央アジアの熱帯雨林、その密林を突き進み目的の村へと向かって行った。

 

 

 なぜ聖龍隊が、それもHEADの様な最高幹部達が直々に麻薬王を追っているのかと言うと、それには訳がある。

 数日前、新世代型の二次元人達が、まるで蒸発したかのように失踪してしまったのだ。

 

 そんな新世代型の失踪に、そのラッグの組織が関わっていると情報を掴んだ聖龍隊は失踪した新世代型の手掛かりを得る為にも、彼等の失踪に関与したと思われるラッグの所在を着き止め、東南アジアの密林地帯にまで出向いたのだ。

 

 新世代型の二次元人については、聖龍隊は特別な役割を持っている。

 初期の新世代型二次元人ルミネが率いる反乱分子の出現以降、三次元人に非ず同じ二次元人からも危険視されている新世代型。

 三次元政府は、そんな二次元人に対し大掛かりな監視体制を敷くよう二次元人側にも言い渡した三次元側の申し出により、彼ら新世代の監視を聖龍隊の二代目総長であるバーンズに命じた。

 だが新総長であるバーンズは監視の名目ながら彼等を保護しており、三次元/二次元の両次元側からも危惧される新世代型を無意味な迫害から護ってるのが現状。

 

 最初は、そんな危険極まりない新世代型など放って置いた方が良いと言う聖龍隊士の発言も有ったが、バーンズ率いる聖龍HEADは彼等を捜索する決断を下した。

 

 こうして聖龍HEADは、自分たち聖龍隊が監視するべき新世代型の行方を掴むため、赤塚組の幹部衆共々東南アジアの熱帯雨林奥地までやって来たのだった。

 

 

 熱帯雨林の生い茂る草木を掻き分けながら突き進む聖龍HEADと赤塚組幹部衆、その道中バーンズは一枚のリストに目を通した。

 リストには、失踪した新世代型二次元人達が各作品ごとに一人一人の名前が記されていた。

 

 

 

[失踪者リスト]

 

【琴浦さん】

 琴浦春香(ことうらはるか)

 真鍋義久(まなべよしひさ)

 御舟百合子(みふねゆりこ)

 室戸大智(むろとだいち)

 森谷ヒヨリ

 

【リトルバスターズ!】

 直枝理樹(なおえりき)

 棗鈴(なつめりん)

 棗恭介(なつめきょうすけ)

 井ノ原真人(いのはらまさと)

 宮沢謙吾(みやざわけんご)

 神北小毬(かみきたこまり)

 三枝葉留佳(さいぐさはるか)

 能美(のうみ)クドリャフカ

 来ヶ谷唯湖(くるがやゆいこ)

 西園美魚(にしぞのみお)

 二木佳奈多(ふたきかなた)

 笹瀬川佐々美(ささせがわささみ)

 朱鷺戸沙耶(ときどさや)

 

【斎木楠雄のΨ難】

 斎木楠雄(さいきくすお)

 燃堂力(ねんどうりき)

 

【ダンボール戦機ウォーズ】

 瀬名アラタ

 出雲ハルキ

 星原ヒカル

 細野サクヤ

 磯谷(いそがい)ゲンドウ

 岸川セイリュウ

 浜岬タイガ

 波野リンコ

 東郷リクヤ

 篠目アカネ

 ロイ・チェン

 朝比奈コウタ

 キャサリン・ルース

 鹿島ユノ

 園山ハナコ

 仙道キヨカ

 吹野タダシ

 笹川ノゾミ

 嵐山ブンタ

 法条ムラク

 ミハイル・ローク

 バネッサ・ガラ

 木場カゲト

 剣菱ワタル

 アンドレイ・グレゴリー

 白牙ムサシ

 乾カゲトラ

 金箱スズネ

 古城タケル

 無敵ギンジロウ

 新谷テッペイ

 巴シズカ

 ジョニー・バウアー

 白小路オトヒメ

 シェリー・マキシマム

 二宮スイ

 二宮フウ

 沖田ヒナコ

 美都玲奈

 猿田学

 大門ジョセフィーヌ

 日暮真尋

 海道ジン(新世代型ではないが、共に行方不明)

 

【キルラキル】

 纏流子(まといりゅうこ)

 満艦飾(まんかんしょく)マコ

 鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)

 蛇崩乃音(じゃくずれののん)

 蟇郡苛(がまごおりいら)

 猿投山渦(さなげやまうず)

 犬牟田宝火(いぬむたほうか)

 

【食戟のソーマ】

 幸平創真(ゆきひらそうま)

 田所恵

 薙切えりな

 吉野悠姫(よしの ゆうき)

 伊武崎峻(いぶさき しゅん)

 榊涼子(さかき りょうこ)

 丸井善二(まるい ぜんじ)

 新戸緋沙子(あらとひさこ)

 水戸郁美(みといくみ)

 タクミ・アルディーニ

 イサミ・アルディーニ

 薙切アリス

 黒木場リョウ

 汐見潤(しおみじゅん)

 葉山アキラ

 一色慧(いっしきさとし)

 堂島銀

 四宮小次郎

 

【ゆゆ式】

 野々原(ののはら)ゆずこ

 櫟井唯(いちいゆい)

 日向縁(ひなたゆかり)

 相川千穂(あいかわちほ)

 岡野佳(おかのけい)

 長谷川(はせがわ)ふみ

 松本頼子(まつもとよりこ)

 

【ガンダムビルドファイターズ】

 イオリ・セイ

 イオリ・リン子

 イオリ・タケシ

 アイラ・ユルキアイネン

 アリーア・フォン・レイジ・アスナ

 コウサカ・チナ

 ユウキ・タツヤ

 ゴンダ・モンタ

 リカルド・フェリーニ

 ミホシ/キララ

 ラル

 

【ジュエルペットハッピネス】

 月影(つきかげ)ちあり

 近衛(このえ)ねね

 華山(はなやま)るるか

 花園(はなぞの)まりえ

 北島(きたじま)のばら

 餅田(もちだ)むつみ

 真田幸介(さなだこうすけ)

 毛利十四郎(もうりじゅうしろう)

 浅野匠(あさのたくみ)

 平和泉(たいらいずみ)

 

【プリティーリズム・レインボーライブ】

 彩瀬なる

 福原あん

 涼野いと

 りんね

 蓮城寺べる

 小鳥遊おとは

 森園わかな

 神浜コウジ 

 速水ヒロ 

 仁科カヅキ 

 氷室聖(ひむろひじり)

 天羽ジュネ

 DJ.Coo

 荊千里(いばらちさと)

 

【境界の彼方】  

 神原秋人(かんばらあきと)

 栗山未来(くりやまみらい)

 名瀬美月(なせみつき)

 名瀬博臣(なせひろおみ)

 

【のんのんびより】 

 一条蛍(いちじょう ほたる)

 越谷夏海(こしがや なつみ)

 越谷小鞠(こしがや こまり)

 越谷卓(こしがや すぐる)

 宮内(みやうち)れんげ

 宮内一穂(みやうちかずほ)

 宮内(みやうち)ひかげ

 富士宮(ふじみや )このみ

 

【弱虫ペダル】

 小野田坂道(おのださかみち)

 鳴子章吉(なるこしょうきち)

 今泉俊輔(いまいずみしゅんすけ)

 手嶋純太(てじまじゅんた)

 青八木一(あおやぎはじめ)

 金城真護(きんじょうしんご)

 田所迅(たどころじん)

 寒咲幹(かんざきみき)

 巻島裕介(まきしまゆうすけ)

 

【きんいろモザイク】

 大宮忍

 アリス・カータレット

 小路綾

 猪熊陽子

 九条カレン

 烏丸さくら

 松原穂乃花(まつばらほのか)

 

 

 

[村への道中]

 

 生い茂る草木を踏み締めながら、確実に前へと足を進ませる聖龍HEADと赤塚組幹部衆の中で、一人黙々と失踪者リストに目を通し続けているバーンズに、行動を共にしている赤塚組幹部衆の頭領である赤塚大作こと大将が気さくに話し掛けた。

「それにしても…………居なくなっちまった新世代って連中、結構な数が消えちまってるよな。いったい連中をどうすんのかね?」

 するとそれに聖龍隊参謀長のジュニアが話し返した。

「全ては、まずラッグに接触してから分かると思うけど……おそらくは彼等の特殊な遺伝子を用いて、何か良からぬ事を企てている可能性も十分考えられる」

「特殊な遺伝子?」

 ジュニアの言葉に呆気に取られる大将、するとそんな大将にHEADの一員であるナースエンジェルが説いた。

「新世代型の遺伝子構造は特殊で、私たち古い世代の二次元人とは違ってるの。だからこそ、彼等の遺伝子が悪用されでもしたら事だわ」

「ふぅ~~ん……」

 ナースエンジェルの説明に大将は後頭部に両手を当てながら納得していた。

「それはそうと、急いでラッグに接触して彼から新世代の人達を何処に連れて行ったのか問い詰めないと……! もしかしたらその人達、酷い目に遭わされているかも」

 幹部衆の一人、海野なるが失踪した新世代型達への懸念を案じていると、それに彼女の旧友でHEADの一員であるネオ・クィーン・セレニティことセーラームーンが話し始めた。

「そうだよね。その人達みんな、今頃何されているか分かんないから不安だよ……」

 そんな不安そうに話すセーラームーンの発言に、同じセーラー戦士でありHEADであるセーラーマーズが強気な口調で言った。

「だからこそっ、一刻も早くラッグの許に辿り着いて彼の口から新世代の行方を吐かせないと……!」

 そのマーズの言葉に、知将でもあるマーキュリーも申した。

「そうね、焦りは時に命取りになる、と前総長も申していたけど、やっぱり此処は速急にラッグの所に向かって新世代の救出を最優先にしましょう」

「新世代、ね……ふぅ」

 マーキュリーが語り終わると同時に口から呟きを発する大将の様子に、ミラーガールこと加賀美あつこが気付いては彼に訊ねた。

「ん、どうしたの大将?」

 すると大将はアッコに向かって頭皮から滲み出る汗を拭いながら答え返した。

「ああ、なにね……新世代新世代って世の中じゃ騒いでいやがるが、よく考えてみたら俺たち昔はもちろん他の二次元人達だって、新世代の二次元人がどんなのか全く知らねえのに、エラく世の中じゃ奴等を危険視する風潮が目立ってるなぁと思ってよ」

 その大将の疑問に、同じく顔から滲み出る煌びやかな汗をハンカチで拭き取りつつセーラーネプチューンが答えた。

「彼らについては色々とあるのよ……現に三次元政府からも報道規制が発令されちゃっているし、二次元界/三次元界ともに彼ら新世代型に対する情報は余り知れ渡っていないのよ」

 ネプチューンに続き、彼女の傍らで共に汗ばみながら必死に草木を掻き分けて進むウラヌスが大将に言う。

「それでも彼ら新世代の二次元人は特別なDNAを持っているという情報がネットを通じて広まって、遂にはこの有様さ」

「成る程な……ま、今の御時勢、インターネット一つでありとあらゆる情報が解っちゃう上に露見しちまう時代だからな。いやハイテクも時にはホントに厄介だよな」

 大将が心底参った口振りで語っていると、森を進んでいた聖龍HEADと赤塚組幹部衆の前に最初の目的地である村が現れた。

「おっ、やっと着いたな。此処が案内人が居る村の筈だ」

 森を抜け、村を一目見た幹部衆のテツが指差しながらHEADの皆に伝える。

 

 そして皆々は村の入り口まで向かい、そのまま村の中に足を進ませた。

 そんな最中、徐に大将は無意識の内に聖龍隊総長であるバーンズに話し掛けた。

「そういやバーンズ、俺前から思ってたんだが……」

「?」

「……小説を読んで初めて知られた事だが、お前さん達は修司が発達障害者だったって前々から知っていたのかい?」

 この大将の問い掛けに、バーンズは真顔で答え返した。

「まあな。一応は個人の、修司の意思を尊重して最初は聖龍隊幹部つまりHEADの連中それも古参の面々だけにしか明かされていなかったが、その後新たにHEADに加わったミュウミュウズにメロディーズそれにローゼン組にもそれとなく伝えただけで、他の聖龍隊士や世間に対しては公にはしていなかったんだ」

「そっか……まぁ、障害に関しちゃ他人じゃなく本人が一番苦しんでるって言うし、修司も意地っ張りな所があるから他人に自分の素性を伝えるのは酷だったのかもしれねえしな」

『…………』『…………』

 大将の真に重みのある言葉に、彼とバーンズの話を側で聞いていたHEADと幹部衆の面々は沈黙を保ちつつも小田原修司の真情に対して多感な心意に浸るのであった。

 そんな場の空気が少しばかし重くなった矢先、大将は再び話を修司が自身を発達障害者だと公表している自伝小説の中身について語り出した。

「いや~~それにしても、修司が書き残した小説読んでみて驚いたぜ。いやな、最初は小説なんて文字だけの本読むなんぞ頭に活字を直接詰め込む様ないや~~な感じだったんだが……読んでみると意外と頭ん中にスラスラと話が入ってきて面白かったぜ」

「おお、そうかっ。いやぁ、やっぱオレらが登場している小説を気持ちよく読んでくれるのは実に嬉しい限りだぜ」

 大将の小説への感想に心から嬉しく思うバーンズ。すると次の瞬間、大将は口元をほくそ笑ませながらバーンズに言った。

「そ、それにしてもププ、まっさかバーンズお前最初は、ププっ……まさか変身怪獣だなんて修司やみんなに名乗っていたとはな、ははっ」

 思わず大将が零した小説内で明かされていたバーンズの当初の呼び名に対し、その話を聞いた途端他の赤塚組幹部衆も思わず笑んでしまった。

 それに対しバーンズ本人は、幹部衆や彼らに釣られて思わず笑ってしまうHEADの面々に顔を赤くしながら反論した。

「う、うっせえよッ。あの頃は人間社会というか日本にまだ来たばっかりで、そんな中で王族としての名前を修司達に明かすのが癪だったから、そんで思わず変身能力があるから自分の事を変身怪獣だなんて名乗っちまって……」

 微妙に照れながらも当時の自分の真情を語るバーンズに、大将は更にからかい出した。

「ははっ、そう照れなくても良いぜ。超獣族の王子様♪」

「か、からかってんじゃねえよ! タクッ」

 大将とバーンズの会話に周りの皆は引き続き表情を緩めては微笑んでしまう。

 そんな周囲の空気が多少明るくなったのを薄々感付いていた大将は引き続きバーンズに向かって小説に関する話を続けた。

「でもよバーンズ、いっくら修司が最初にお前のその人外の容姿を見ても逃げなかったからって、会って間もない修司の事をスグに相棒呼びするとは少し早すぎなくね?」

「いや、あん時は修司が包み隠さず自分の本音をオレに話してくれたのが伝わって来たからよ。それで、コイツは将来大物に成るんじゃないかなって不思議と思えて、それで修司に付いて行こうって思い立ったからこそ奴を相棒って呼んじまった訳よ」

「な~~るほど、そういう訳で……確かにお前のように、修司の言動を目の当たりにして修司の思想に心底惚れちまう輩が多いからな。現に聖龍隊にも、そんな連中がわんさかと居て、それで聖龍隊がでっかく成り続けてるからな」

 バーンズの語りに大将も赤塚組幹部衆も心底納得してしまった。事実、小田原修司の揺ぎ無い信念に基づいた彼の言動には多くの人々が心酔してしまい、聖龍隊で活躍している隊士やキャラクター達の中にもそんな修司の言動に感化されたり勇気付けられたりしている者が多く居るのである。

「ふぅ、それによ。もう一つ、小説の中で面白いなって思う所が」

『?』

 再び語り出した大将の発言に周囲の皆が意識を向けると、大将は再度顔に笑みを浮かべながら話し出した。

「ま、まさか……ジュニアよ、お前さんがセーラー戦士一同を軽く返り討ちにしちまうほど達者な奴だったとはよ。マジ驚いたぜ、プッ」

「悪かったね、地味な僕がセーラー戦士達より格段に強くて。仕方ないだろ、僕の地の力とセーラー戦士達の星の力とでは相性的にこっちが断然有利なんだから」

 大将のほくそ笑みながらの語りにジュニアは表情に軽く怒りを浮かべながら語り返した。

「そもそも地味なのも仕方ない事なんだよ。参謀長として、目立った行動が昔からできないのが現状なんだし」

 と大将の語りに対し腕組みをしながら文句を言うジュニアを見て、幹部衆の一人である秋夏子がそれとなくジュニアに訊いた。

「確か参謀長って諜報とか隠密活動に関する役職なのよね。現に聖龍隊は世界各地の政権に多大な影響力を持っているほど力があるし、いったいジュニア君たちはどんな情報を収集してるの?」

 すると訊かれたジュニアは冷然とした真顔で夏子や赤塚組に言った。

「言っても良いけどね、その代わり………………君たち、世界中の諜報機関に命を狙われる破目になるけど、それでも良いんだったら教えて上げても良いよ」

 これを聞いた赤塚組の面々は全員血の気が引いたような真っ蒼な顔を激しく横に振った。

 そんな場の状況が一気に蒼褪める展開になったのを目の当たりにした大将は、場の気分を変えるべく再びバーンズに話を振った。

「そ、それにしても……まさか、あの素直じゃない不器用な修司がよく自分の障害を自伝本なんて形で公表できたな。言っちゃ何だけど、あいつの性格からして、そんな素性明かせるとは到底思えないんだが……」

 これに対し話を振られたバーンズは平然とした態度でそれに答えた。

「まぁ、それには色々と訳があるが……一番の理由は、やっぱ修司みたいな発達障害者が今の日本に多く存在しているってのが主な理由だな」

 バーンズはそのまま、赤塚組の幹部衆に語り続けた。

「発達障害といっても、その症状や状態は人により様々で語り尽くす事はできない。学習障害(LD)、自閉症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)など多種多様な種類があり、さらに同じLDや自閉症と診断された人でも、人により知的特性が全く異なるのも事実。また感覚過敏といって、特定の音や触感などの感覚にひどい苦痛を覚える場合もある」

「………………」

「特に今現在、多くいるのが修司の様な発達障害者、簡潔に言えばコミュニケーション障害、略してコミュ障だ。自閉症の様に特別目立った知的障害はないが、他人と目を合わせられなかったりと対人関係については極端に苦手としてしまう障害であり、多くが社会に上手く馴染めず家や一室に引き篭もったり、人と一緒に働く事さえも苦痛に感じてしまう人間いや若者が今の日本では余りにも多すぎて社会問題にも発展している事態だ。修司はそんな、かつての自分同様、他人と上手く付き合う事ができない若者達の励ましや活力に少しでも成れればと思いつつ、自伝本という形で障害による自身の辛い思い出や心境を纏めた訳なんだよ」

 バーンズの真に圧し掛かる重みある一句一句に、幹部衆は心の底で感銘を受け、既に小田原修司の真情を知っているHEADも改めて彼と同様の発達障害者達について考えさせられた。

 

 

 そんなバーンズの話に深い沈黙に浸ってしまう双方に、幹部衆の一人であるテツが突然立ち止まった。

「おおっと! 何だよテツ、急に止まりやがって」

「どうしたの、あなた」

 突然前触れも無く停止するテツに驚く大将に彼の妻であるふゆみが訊ねると、テツは重く険しい面立ちで皆に姿勢を向けては言った。

「……おかしい」「ん? な、何が……?」

 テツの発言に困惑する大将、そして動揺しだすHEADと幹部衆の二組。そんな二組にテツは険しい顔付きで言うのだった。

 

 

「誰も……居ないぞ」

 

 テツの言うとおり、既にHEADと幹部衆は村の中央まで進んでいたのだが、此処まで来る途中にはもちろん、村の家々の中や影に目を向けても人っ子一人、誰も居ないのだった。

 

 無人の村には不気味な静寂と共に、熱帯ならではの熱気溢れる湿った温風が空しく吹くばかりだった。

 

 

 

 

[異変の村]

 

 不気味な静寂と太陽が照り尽くす村の広場を進みながら、辺りを見回す聖龍HEADと赤塚組幹部衆。

「静かすぎる」

 静寂が支配する無人の村を見渡して大将が呟いた。

「村人は何処だ?」

 居住している筈の村人を自身の細い目で探し回る山崎貴史。

 と、HEADと赤塚組が辺りを見回していた、その時。

『これまでに失踪した少女は、既に50人を超えました。その数は現在も増加中です』

 何処からとも無く聞こえてくるラジオの放送に、HEADと幹部衆が目線を変えるとその先の壁一面に、ラジオ放送で流れてきた失踪中の少女達の顔写真が貼られたポスターが幾多にも貼られていた。

『地元警察は厳重警戒を訴えています』

 ラジオの放送にも気を取られながらも、HEADと幹部衆は再び村を見回してみる。

 砂埃が舞い上がる中、バーンズと大将は先ほどの放送を聞いて閉ざしていた口を開いた。

「噂通り、物騒な所だな」

「少女誘拐、か……東南アジアで問題になっている臓器密売なのか、はたまた売春目的で誘拐されているのか。ホント、未だに東南アジアの犯罪は減らねえな」

 と、更に二組が村の中を数歩ほど進む。

「誰も居ないぞ」

 幹部衆の一人である市川一太郎が呟くと、辺りを見回していたバーンズが険しい面持ちで言った。

「何かおかしい……」

 更にバーンズは村の中を見ている最中、それに感付いた。

「匂いがする……」「匂い?」

 バーンズの一言に大将が訊き返すと、バーンズは険しい真顔で話し返した。

「ああ、昔よく嗅いでいた。そう……修司と一緒に居るとき、あいつから漂っていた匂いだ」

「っ? ああ、あいつそういや昔っから料理が好きだったからなぁ。なに? 肉料理の匂い? それともやっぱ、甘~~い菓子の匂いかい?」

 おちゃらけながら話し返す大将の言動とは裏腹に、バーンズもHEADの皆も表情を著しく険しくさせていた。

 そんな中バーンズは険しい顔色で大将たち幹部衆に言ったのだった。

「いや、違う。修司から漂っていた匂い、そう…………血の匂いだ」

 その言葉に大将たち幹部衆は肝を抜かれた様に愕然としてしまう。

 そして再び二組は村の中を見渡してみた。

 

 と、その時だった。

 彼等の目の前に一人の小太りな男性が現れた。

「けが人か?」

 男性の不自然な歩き方を見て、幹部衆のアツシが思わず言葉を零す。

 と、そんな突如として現れた男にテツが話し掛けながら歩み寄る。

「大丈夫ですか? 申し訳ないのですが、今この村がどんな状況なのか、お話しできたら教えて貰いたいのですが」

 丁寧に男に話し掛けるテツ、だがそんなテツにバーンズが一声掛けた。

「テツ、待て! 様子がおかしい……」

 そうテツに言うとバーンズは歩み寄ってきた男に目を向ける。だが、目を向けた瞬間バーンズは叫んだ。

「離れろ!」

 バーンズが叫んだ瞬間、男は右頬から右首筋に掛けて抉られては血を出している風貌で、歯を剥き出しにしながバーンズ達に攻め寄った。

「あうっ」

 異様な唸り声を発しながら噛み付いて来ようとする男に危機感を感じた赤塚組の幹部衆は即決で携帯していた銃を構えては男に向かって発砲した。

 一発、二発目が肩と胸に直撃し、三発目が眉間に直撃した瞬間、男は着弾した勢いで後方まで吹っ飛んでは、そのまま動かなくなってしまった。

「突然襲ってきやがった……!」

「これは、いったい……」

 大将や水原花林を始めとする幹部衆が、おそるおそる倒れた男に歩み寄って見てみた。だがその瞬間、彼等は我が目を疑った。男の右首筋に広範囲で広がっていた傷口が既に腐敗し始めており、男の眼球はまるで死んだ魚のように白く血が通っていなかったのだ。

「こいつは……!」「ウッ……」「腐ってやがる……!」

 さっきまで動いていた上に襲ってきた男の腐敗した傷口、そしてその傷口から漂う鼻に来るキツイ腐臭に鼻を曲げる幹部衆。

 そんな幹部衆にバーンズが歩み寄っては言葉を掛ける。

「これが……ゾンビって奴だよ」

「ゾンビ……!」

 その言葉に驚きの色を隠せない幹部衆。

「これが……B.O.W.の、ゾンビ……!」

 目の前で自分達に襲い掛かってきた動く死体ゾンビに動揺する大将。

 と、その時。

「なぁ、これは……」「ああ、念の為だ」

 HEADの一員、堂本海斗の言葉に同意する様に返事するエンディミオンは、次の瞬間装備していた刀で動かなくなったゾンビの首を躊躇いなく切断した。

「お、おい!」「ちょっと、なにやってんだよっ」

 突然のエンディミオンの行動に戸惑う幹部衆に、彼は訳を話した。

「念の為だ。ゾンビってのは、感染元のウィルスにもよるが中には再生能力が非常に高いのも居て、完全に始末するには焼き尽くすか頭部を切断または粉々に吹っ飛ばす以外手立てがないんだ」

 エンディミオンの説明に唖然と聞き入れる幹部衆。

 そんな彼を始めとしたHEADの面々に大将が動揺しながらも訊ねた。

「おめえ達が前に戦った事のあるウィルスって、これと同じ様なモンなのか?」

「ああ、だがこれは何かが違う気がする。そう、達芝(ターチィ)でオレ達が見たウイルス兵器とは……」

 地面に転がる首が切断されたゾンビに目を向けながら、バーンズは重く険しい真情で語り返した。

 そんな殺伐とした状況の中、ゾンビの首を切断したばかりのエンディミオンが皆に言った。

「気をつけろ、下手に攻撃を受けたらそいつも同じゾンビになる確率が高いんだ。それに、ゾンビが一体いたと言う事は……」

「い、言う事は……」

 エンディミオンの真剣な重みのある言葉に意識を向けるアケミ、とその時。

 

 そんなアケミにエンディミオンは携帯していた拳銃を一瞬で取り出し、銃口をアケミに向けて構えた。

「っ!?」

 突然のエンディミオンの行動に驚愕するアケミ、そして困惑する幹部衆。そして次の瞬間。

 エンディミオンが構えていた銃が火を吹き、弾が発射された。銃口を向けられたアケミ、そして幹部衆が驚いてしまっていると皆アケミの後方に目を向けた。

 ちょうどアケミの真後ろに、次第に距離を縮めて迫っていたゾンビがエンディミオンの放った弾丸を頭部に当てられ、倒れ込んでいた。

 これを見て、エンディミオンが狙っていたのがアケミの背後に迫るゾンビそのものであったと理解する幹部衆。

 そしてアケミの背後に迫っていたゾンビが倒れたのを確認したエンディミオンは、硝煙を上げる銃を下ろしつつ幹部衆に険しい顔で言った。

「やっぱり! ゾンビが一体いたという事は、他にも多数……」

 と、エンディミオンが険しい面持ちで語っている最中であった。

「き、来たぞッ」と堂本海斗が指差しながら叫んだ。

 彼の指差す方からは、続々とゾンビ達が何処からとも無く現れては迫ってきていた。

 何処からともなく出現し続けるゾンビ達、聖龍HEADと赤塚組幹部衆は持ち前の戦闘力で必死に応戦していく。

 次々に現れるゾンビを薙ぎ倒していくが、ゾンビは村に潜んでいたのか無数に出現しHEADと幹部衆に迫る。

「急ぐぞ! 案内人が心配だ」「ああ」

 所狭しと現れるゾンビ達を尻目に、大将の一声で皆は雇った案内人の許へと先を急いだ。

 そして全員その場から駆け出し、民家が犇き合う路地へと駆け込んだ。

 だが、その曲がり角を曲がった先にもゾンビが居り、走ってきた皆に迫る。

「ど、どうすりゃ良い!?」

 初めてゾンビを相手にする大将達に、バーンズは的確に指示を出した。

「頭だ! 頭を狙え!」

 そして赤塚組は各々が所持していた銃器を構え、バーンズの教え通りにゾンビの頭部に狙いをつけて発砲していく。

 頭部に損傷を受けたゾンビは、足元をふら付かせたり後ろへ下がったりとしながらも続々と倒れていった。

 と、そんな曲がり角の先に居たゾンビ達を一掃したと思いきや、今度は後方から先ほどの広場に出現したゾンビ達が迫って来ていた。

 一瞬驚きながらも的確にゾンビ達を攻撃していくHEADと幹部衆。結果、迫り来るゾンビ達を倒す事ができた。

「いい腕してるな」「当然だろ」

 幹部衆の見事な狙撃に褒めるバーンズの言葉に、大将は当然だろと言葉を返した。

 更に大将はゾンビ達を倒した事に余裕満々で自信に溢れる台詞を言った。

「こいつらが例のB.O.W.なら大した事は無いな」

 と余裕に浸りつつ、彼等は路地を進んでいく。すると其処は村の中に設けられた市場なのか、路地脇の家々の前には果物や香辛料などの食材が並べられていた。

 だが、それ以上にHEADと幹部衆の目を奪ったのは、道路や壁にこびり付いた血痕や転がっている死体であった。

 悲惨な光景を目の当たりにしながら辺りを警戒し続ける双方、だがその時。

「うわッ!」「大将!」

 突然の大将の声に振り向くと、なんと大将に先ほど道路に転がっていた死体の一体が襲い掛かっており、大将は必死に抵抗しながらも耐えていた。

 そんな大将を襲う死体であったゾンビに、バーンズは急ぎ攻撃を喰らわしてゾンビを倒す。

 ゾンビが倒れ、襲われていた大将がバーンズに礼を言う。

「ひとつ借りだな」

 そう言うとバーンズは大将に気さくに話し返した。

「すぐに返してもらうさ」

 と、二人が会話しているその時、後方からゾンビ達が駈けて来ては襲い掛かってきた。

 襲い来るゾンビ達を皆は躊躇いなく攻撃し、見事返り討ちにする。

 そして無事ゾンビ達を倒し切ると、再び村の中を進んでいく。

 するとその先には、更に夥しいほどの血痕や死体が辺りに見受けられた。

「酷いな……」

 村の惨状に懸念を抱くバーンズ、そして大将は惨状を前に皆に言った。

「先に進もう」

 市場の中を進みながら、その先の狭い路地に足を進ませようとした次の瞬間。

「あうーー」

 その路地からゾンビが二体走ってきてはHEADと幹部衆に襲い掛かる。

 駆け寄ってくるゾンビ二体に双方は迷いなく攻撃し、二体のゾンビは地面に倒れた。

 だが、その二体を倒した直後、今度は別方向からも他のゾンビが襲い掛かってきた。

 一同はスグにそのゾンビも倒していくが、騒ぎを聞き付けたのか彼方此方からゾンビが出現してきた。

「こっちだ!」

 バーンズは囲まれそうになる直前、先ほどゾンビが二体現れた路地に皆を誘導し駆け込んだ。

 だがその先は行き止まりであり、木の塀にその前には木箱が二つ積まれていただけだった。

 そんな塀を大将を始めとする幹部衆の男達が一斉に駆け出しては、積まれた木箱を台に木の塀を軽々と飛び越えた。

 そんな最中でもゾンビ達は続々と路地に逃げ込んだ皆を追って集まってきていた。

 バーンズは女性達を優先に塀を乗り越えさせ、向かい側に行こうと奮戦する。

 そしてほぼ全員が塀を乗り越え向かい側に辿り着いた折、バーンズは最後の一人で残って応戦しているアケミに手を差し伸べ塀の此方側へと誘う。

「アケミ、早くしろ!」

 バーンズに急かされアケミは即座に塀に飛び乗り、向こう側へ行こうと塀を跨ったその時。

「!?」

 片足に違和感を覚えたアケミは、その違和感を感じた足に目を向けた。その瞬間、アケミの背中に悪寒が走った。

 なんとまだ塀を越えてない足に、ゾンビの一体が噛み付いていたのだ。

「きゃああっ!!」

 悲鳴を上げるアケミ、そして彼女は必死に自分の足に噛み付くゾンビを振り解き、脅えながらも塀を乗り越え皆と合流した。

「あ、足が……足が、噛まれた……!」

 ゾンビに足を噛まれ激しく動揺するアケミ。そんな彼女をHEADや幹部衆の皆は懸命に落ち着かせる。

 そんな中、全員が塀を乗り越え困惑する状況を見て、大将がぼやいた。

「厄介だな」

 大将の言葉通り、塀の向こう側からは迫り来るゾンビ達が押し寄せ、遂に木の塀を破壊して此方側へと押し寄せてきた。

 塀を破壊し押し寄せるゾンビの群れに応戦しながら、大将はゾンビ達を見て言った。

「飢えてやがる……!」

 事実、ゾンビ達は喰らいつく勢いで血だらけの歯を剥き出しながら噛み付いて来ていた。

 喰らい付いて来るゾンビの群れを一掃すると、彼らはゾンビに足を噛まれた傷口を気にし出すアケミを連れて乗り越えた先の細い通路先に在る鉄格子の扉に歩を進ませる。

「奴等、あちこちに隠れてやがるぜ」

 扉を開けながら大将が呟いていると、扉の先の壁に巨大な蜘蛛が二体も張り付いていて、扉を潜って来た皆に襲い掛かってきた。

「うわッ」巨大蜘蛛を見て驚く大将、そして蜘蛛は彼らに糸を吐き散らし攻撃してきた。

「くっ」

 絡みつく糸に苦戦しながら、糸をナイフで断ち切った幹部衆はお返しとばかりに巨大蜘蛛に向けて発砲する。

 巨大な二体の蜘蛛は銃弾を浴びて、引っ繰り返りながら動かなくなった。

「こいつも生物兵器なのか?」

 引っ繰り返りもがきながら絶命した巨大蜘蛛を前にして、大将は驚き浸っていた。

 蜘蛛を倒して安堵してると、また背後から今度は頭にヘルメットを被った上半身が裸体で迷彩柄のズボンを履いたゾンビが三体、反対側の鉄格子の扉を押し開けて迫ってきた。

 HEADと赤塚組は即座に攻撃していくが、ヘルメットを装着している所為か頭部への攻撃は半減され、それでもなお銃弾を無数に浴びせる幹部衆の弾幕を真っ向から受けたゾンビ達はその場に倒れていった。

 その時、幹部衆の頭領である大将が倒れた迷彩ズボンのゾンビ達を見て皆に言った。

「おい見ろ、蛇の刺青だ。ラッグ率いる『聖なる蛇たち』が敵に残す印だ」

 自分達が追っているラッグの指揮下である部隊『聖なる蛇たち』その彼らが倒した敵の死体に施す蛇の刺青に大将は気付いた。

 そんな大将の台詞を聞いて、バーンズは呆然とした様子で言い返した。

「聖なる蛇、か……マジで困るな」「?」

 バーンズの発言に大将が不思議がっていると、バーンズはその疑問に答えた。

「だって俺達は『聖なる龍』だもん」「……あ」

 バーンズの言うとおり、聖龍隊は文字通りの聖なる龍であったため、聖なる蛇というフレーズに多少の不快を感じたのだった。

 

「ラッグはウィルスで何をする気なんだ?」

 村に来て突如として出現しては襲い掛かってくる数多のゾンビ達を目にして、聖龍隊は自分達が追っているラッグの目論見について多大な懸念を示していた。

 

「新世代型の二次元人とウィルス、一体どんな関連があると言うんだ……!」

 そして幹部衆の面々も、初めて目にするウィルス感染によってゾンビ化した村人や巨大化した生物を目の当たりにして、自分達が追っている新世代型二次元人への懸念を募らせていた。

 

 

 

 

 

[案内人との遭遇]

 

 迫り来るゾンビ等のB.O.W.を返り討ちにし、ラッグの配下である『聖なる蛇たち』の刺青を施されたゾンビ達を倒した後、聖龍HEADと赤塚組幹部衆は一旦その場に留まり、先ほどゾンビに足を噛まれたアケミの治療と共にバーンズ達HEADは赤塚組幹部衆にある物を差し出していた。

 

「……これは何なんだ?」

 差し出された注射器の様な物体について大将が訊ねると、参謀長であるジュニアが答えた。

「それは対ウィルス用の抗体ワクチンだ。今のうちに体に注射しておくといい」

 ジュニアに続き、HEADの一員であるナースエンジェルが大将に話した。

「私達の治癒能力では、あくまで怪我などの通常の症状しか治せないの。ウィルス専用の抗体でしか治療法がないのが現状なの」

 そう話しながらナースエンジェルは、先ほどゾンビに噛まれたアケミの傷口を自身の能力で治療した後に、彼女の腕に抗体ワクチンを注射してあげた。

 ナースエンジェルがアケミの治療を施している最中も、他の聖龍HEADは次々に自分の体の腕や首後ろに自らワクチンを注射していってた。

 それを見た大将も、渡されたワクチン注射を自分の首後ろに注射した。

「うっ」

 注射しつつ微弱な痛みに声を出す大将は、注射し終わった注射器に記載されている文字に気付いた。

「Jワクチン?」

 英語でそう記されていた注射器の文字に気付いた大将にジュニアが答えた。

「ああ、対ウィルスの為に開発された最新の抗体ワクチンの愛称だよ。まぁ、つい最近開発さればばかりだけど効力は実証済みだよ」

「ふぅ~~ん」ジュニアの説明に納得する大将。

 こうして聖龍HEADと赤塚組幹部衆は、ウィルスに感染しない為のワクチンを打つと再び歩を進ませた。

 

 すると目の前には川の上に建てられた家屋が軒を連ねていたのだが、川の水が増え過ぎた為に奥の方の家々が水没してしまっている光景が広がっていた。

「増水してやがる」

 氾濫している川と水没している家々を見てバーンズは懸念を感じる。

「ラッグの仕業だな」

「ああ、この川の上流に在るダムの水門を開いたんだ」

 川の水が氾濫している現状を見て、幹部衆のアツシと海野ぐりおがラッグの行いでダムが開門した結果だと推理する。

 そんな水没しかけている家屋と家屋を繋げている水の上に作られた木の板の通路を進みながら、バーンズと大将は険しい面持ちで言葉を交わす。

「奴はオレ達の到着を?」

「さあな……だが、案内人の命はないかもな」

「ああ、下手すりゃオレ達の命も……」

 目的地であるラッグの居所までの案内人の命を懸念しつつ、自分達の命も危うい状況を感じる両者。

 そしてHEADと幹部衆は先を進んでいく。すると

「おい、今のは何だ?」「確認するぞ」

 窓枠から少し見えた動くナニかに気付いた幹部衆が、動いたモノが見えた家に歩み寄る。そして窓から中を覗いて見るが、其処には何も居なかった。

「誰か居ますか?」

 幹部衆の山崎千春が声を掛けた、次の瞬間。

「うおおーーっ」

 家屋を覗いていた幹部衆のすぐ横からゾンビが唸り声を上げながら走ってきた。

 驚く幹部衆は迫り来るゾンビを撃退し、ゾンビは銃弾を浴びて倒れた。

 そして再び水上の通路に戻ると、今度は向かい側の家からゾンビが出現し迫ってきた。

 すぐに撃退するが、銃声を聞き付けたのか所構わずゾンビが続々と出現してきた。

「先へ行こう」「ああ」

 バーンズの一声に同意する大将、彼ら一同は出現し続けるゾンビに構わず駆け足で先に進む。

 と、駈けて行くとその先は道がなく、HEADのミュウザクロは状況を把握する。

「橋が流されてる」

 皆が立ち往生していると、バーンズが近くの家屋に皆を誘導する。

「こっちだ」

 と、皆がバーンズの指示で家屋に向かおうとした時、水面が突如として騒がしくなった。

「水の中に何か居るぞ!」

 大将が叫んだ次の瞬間、川の中から牙を剥き出しにしながら魚が群れで飛び掛ってきた。

「ピラニア!?」

「なに言ってんだ! 此処はアジアだ、ピラニアは南米にしか生息してない」

 剥き出しの牙で飛び掛ってくる魚を見て、アツシがピラニアと思い込んでしまうのをジュニアがすかさず訂正した。

「随分、生きが良いな」

 飛び掛ってくる魚に応戦しながら大将が呟いていると、足元に転がってきた魚の死骸を見てジュニアが語った。

「これは……一種の肉食魚だ。おそらくウィルスの影響でピラニアみたいに牙が発達した上に活発化したんだろう」

 ジュニアの説明を聞いて、大将がバーンズ達HEADに訊ねた。

「ウィルスで此処まで生き物が変わっちまうのか?」

 大将の問い掛けにバーンズは険しい真顔で答えた。

「ああ、色んな形ではあるが……凶暴性を秘めているのは、どれもほぼ同じだ」

 と、バーンズが語っていると後方の通路から集まってきたゾンビ達が押し寄せてきた。

「飛び込め!」

 押し寄せるゾンビ達を前にし、バーンズは先ほど自分が指した家屋に叫びながらその窓から中に飛び込み、皆もバーンズに続いて家の中に飛び込んだ。

 皆が家の中に飛び込んだ矢先、なんと室内の天井に先ほども目にした巨大な蜘蛛が一体張り付いていて、室内に飛び込んできた皆を認識したのか床に下りては攻撃してきた。

「うわっ」

 巨大蜘蛛に激しく動揺しながらも、二組は瞬く間に巨大蜘蛛を倒す。

 そして扉から外に出て通路を進もうとした、その時。

「聞こえるか?」

 バーンズが何かを感じて皆に訊く。すると皆々の耳に何者かの呻き声が聞こえてきた。

「こっちだ!」

 呻き声に気づいた大将が、声のする目の前の家に扉を押し開いて駆け込んだ。

 そして一足先に駆け込んだ幹部衆が中を見渡すと其処は村の学校なのか教室の様な造りになっており、其処の教壇の前に一人の男が血だらけで苦痛に喘いでいた。

 男を見た幹部衆は彼に駆け寄っては口に出した。

「案内人だ」

 その男は赤塚組が雇っていたラッグの居所までの案内してくれる筈の村人であった。

「どうしたの! 何があったの?」

 駈け付ける幹部衆のミズキが血だらけの案内人に呼び掛けると、案内人であった男は弱々しい声でミズキの問い掛けに答えた。

「…………あの娘が……」「娘? 娘がなに!?」

 弱り切った男の発した言葉にミズキが問い詰めると、男は続けて話し出した。

「あの娘が……魔物を引き寄せた。ラッグの居城から逃げてきたと言うから助けてやったのに……」

 男の苦痛に喘ぐ話に、大将が思わず男に訊き返した。

「ラッグの居城? その娘は何処だ!? おい!」

 だが大将が呼びかけるも男はぐったりとしてしまい、大将は男の首に指を当て脈を計った。

「クソッ! 死んでる」

 話を聞いていたHEADの一員である真紅は、男が話した事について首を捻る。

「ラッグの居城から逃げてきた、って」

 真紅の言葉に続いて総長のバーンズも語り出す。

「ああ、例の失踪した娘達の一人かもしれねえ」

 これについてHEADのキューティーハニーは皆に話した。

「臓器を密売していると言う『聖なる蛇たち』と少女失踪は何か関係が?」

 皆の話についてアプリコットことウォーターフェアリーが一同に伝える。

「報告書では、失踪事件との関係は立証されていなかったんだけど……」

 あれこれと皆が考え込んでいると、大将が皆に厳つい顔で言った。

「とにかく、その娘ってのを探し出す必要があるな」

 これに対してバーンズも考えながらも同意する。

「そうだな。案内人が死んだ以上……頼みの綱は、その娘だけだ」

 ラッグの居所まで案内してくれる村人が死んだ為、一同がラッグの所まで辿り着くにはその居城から逃げ出して来たという娘に全て委ねられた。

「確か……この先の教会、その裏に船が用意されてる筈だ」

 山崎貴史がそう言うと、バーンズが皆に告げた。

「よし、其処へ行こう」

 バーンズの言葉に皆が頷くと、一同はその場から移動しようとした。が、その時。

「ッ!?」

 大将が何かに気付いては立ち止まり、皆もそんな大将の様子に気付いて立ち止まる。

 すると何かの鳴き声なのか「シャーー」という音が聞こえ、音が聞こえた背後に振り返ると、先ほどまで教壇の前に寄り掛かっていた案内人であった男の死体が無くなっていた上に、そのすぐ横に開いていた巨大な穴から細く長い尻尾が床下の川に潜って行くのが皆の目に入った。

「今のは何だ?」「死体は?」

 目の前で床下の川へと姿を消したナニか、そして消えてしまった男の亡骸に困惑する一同。

「何かが、水の中に……」

 そう呟くミラーガールの言うとおり、何かが水の川の中へと姿を晦ますと同時に死体を持ち去った或いは食して水に引きずり込んだと確信する一同。

 そんな現状を目の当たりにした赤塚組の頭領の大将は、不安一杯の蒼褪めた表情で言った。

「なぁ、マーメイドの嬢ちゃん達。あんた等、水の中は専門なんだろ? ちょっくら潜って何が居るか見てきてくんない?」

 だがマーメイドメロディーズの面々は一斉に首を横に激しく振って頑なに拒んだ。

 

 

 

 

[穏やかなる旋律]

 

 案内人が死に、更にはその死体が川に潜む何かに引きずり込まれたのを目の当たりにしたHEADと幹部衆は、仕方なくその場を後にしつつ移動用の船が用意されている教会に向かおうとした。

 だが、皆がその場を離れようとしたその時。

「ゲコッ、ゲコッ」

 低い不気味な鳴き声を発しながら、先ほど何かが消え去った床下の水面から巨大な蛙が飛び出ては二本足で直立しつつ一同に襲い掛かる。

 皆は襲ってきた巨大な二足歩行の蛙に攻撃を浴びせ、一瞬で蛙を倒してしまう。

 もがき暴れながら死に絶える巨大な蛙を前にして、大将はアプリコットに話し掛けた。

「おいアプリの嬢ちゃんよ。人並みにでっかい蛙を倒しちまうなんて、複雑だな」

「ちょっと、やめてよっ」

 この時、大将はかの小田原修司が書き記した自伝本にアプリコットの昔の想い人が蛙の獣人であった事を知っており、それでアプリをおちょくる話を彼女に掛けた事を、話し掛けられたアプリ自身は察していた。

 人並みに巨大な蛙を瞬殺した一同は、その家から出ては細い通路を進んでいく。するとその先は分かれており、一方は完全に水没しており、もう一方は水没してない様に見える道だった。

「教会は、おそらくこの先だ」「どっちに行く?」

 大将とバーンズが悩んでいると、HEADのセーラーネプチューンが二人の間に割り込んでは進む道を指した。

「こっちに行きましょっ。此方の方が得策だと思うし」

 そう言いながらネプチューンは水没してない方の道を指し、そのまま進んでいった。

 そんな彼女の後をウラヌスが追い、二人に続いて他の皆々も足を進ませていくのを見たバーンズと大将も急いで後を追った。

「こっちがマシか?」「さぁな」

 自分達が進んでいる道が得な方なのか疑問に思いながらも歩を進ませる大将とバーンズ。

 と、皆が水上の通路を進んでいくと、水中から再びピラニアの様に牙を発達させた肉食魚が群れで今度は左右から同時に飛び掛ってきた。

「うわっ、クソ!」

 飛び掛ってくる肉食魚の大群に皆は銃を乱射したり刃物を振り回しながら必死に応戦しつつ進んでいく。

 すると肉食魚の次は先ほども現れた人並みに巨大化した蛙が水中から襲い掛かってきた。

 襲ってきた蛙にも対応していく一同は、無事蛙を倒し先を進む。するとその先で水没した家屋に行き当たったのだ。

 先に進むため一同は、其処で通路から下りては川の中に入った。

「深いな」

 と目の前には水没しているが為に普通には開けられない家屋の扉が行く手を塞いでいた。

「よし、ドアを壊して先に進もう」

 そうバーンズが言うとHEADで怪力のセーラージュピターが拳で目の前の扉を一突きで破壊して見せた。

「さすが怪力自慢のジュピター様だこと。迫力ありますねぇ」

「冷やかさないでよ」

 拳一突きで扉を破壊してみせるジュピターの怪力に冷やかす大将に、掛けられたジュピターは愛想笑いを浮かべながら返事する。

 そしてジュピターが打ち破った扉を進んで屋内に入ってみると、家は水没しているが為に物が水に浮いたりと荒れ放題であった。

「異常なしだ」

 室内を見渡して内部に敵が居ない事を確認するテツ。だが安心したのも束の間、水の中からゾンビが起き上がり襲ってきた。

 次々に水中から姿を現すゾンビに攻撃していく一同、だが出現するゾンビを全て倒し切った直後

「ゲコッ、ゲコッ」

 また巨大化した二足歩行の蛙の鳴き声が聞こえ、皆が上を見上げるとポッカリ開いた屋根の穴から蛙が此方を見下ろしていた。

 更に反対側の屋根の穴からも蛙が見下ろしては、下りてきて真下に居る一同に襲い掛かる。

「来やがった!」

 下りてきた巨大蛙を見て叫ぶ大将に続き、他の幹部衆も蛙に向けて一斉射撃を行った。

 無事、蛙を突破した一同は今居る家を通り抜けて先に進もうと、向かい側の扉の前まで進む。

 そして其処でも先ほどと同じくジュピターが拳を一突きして扉を破壊し、皆は先に進む。

 

 水没した家を通り抜けて、外に出てみると皆の目の前に洞窟が見えた。しかも洞窟の入り口から教会が顔を覗かせているのも確認できた。

 目的地である教会を確認し、バーンズは水の中に居る現状から水上の板の通路を通って進もうと皆に伝える。

「上から行こう」「ああ」

 そのバーンズの言葉に他の皆も彼に続いて水から上がり通路に足を着かせた。

 と、皆が通路に上がり先に進もうとしたその時。

「待てっ……何か聞こえないか?」

 何かを察したバーンズが皆に伝え、そして停止させていると彼に続いてミュウミュウズの女性達も言った。

「え、ええ……」「ほんと、なにか聞こえる……」

 バーンズ同様、何かを聴覚に捉えるミュウイチゴとミュウミントの二人に続き、今度はメロディーズの洞院リナとかれんが口を開いた。

「ほんとだ、何か……そう、これは」「……子守唄?」

 美しい歌声を持つメロディーズの耳にも聞こえてくる、不思議と心が落ち着く感じられる旋律の唄。それは愛する我が子に優しく問い掛ける様に聴かせる子守唄の旋律であった。

 不思議な子守唄に惹かれる様に皆は教会へと向かう、だが教会へ向かうため水没した家の屋根を伝って先に進もうとした一同の前に再び巨大化した蛙が屋根を突き破って出現し迫る。

 皆、その蛙に向けて一斉攻撃を仕掛け倒すと再び唄が聞こえてくる教会へ急いだ。

 

 この時、赤塚組の幹部衆を率いる赤塚組棟梁の赤塚大作こと大将は人知れず不安を感じていた。

(タダでさえ此処まで強力なウィルスだってぇのに、そんなウィルスに新生代型の二次元人達の遺伝子を使ったらどうなっちまうんだ?)

 大将は今まで自分が見てきたB.O.W.の脅威に薄々感じると同時に、そんなウィルスに通常の二次元人とは異なる新世代型の遺伝子を使ってしまえば如何なる事態になるか懸念を覚えずには居られなかった。

 

 

 

 

[聴き入る異形の存在]

 

 洞窟の入り口を進むと、目の前には巨大な穴が天井に開いている洞窟の中に、まるで洞窟に護られている様な小さな教会が水の上に健在していた。

「見ろ、教会だ」

 洞窟内に健在している教会を指差す大将、そして一同が教会の入り口に少しずつ歩み寄ろうとしたその時。

 巨大な何かが水中から飛び出しては、皆に飛び掛ってきた。

 間一髪、全員その巨大な異形のモノから身を伏せて回避したが皆の動揺は激しかった。

「今のは何だ!」「何処に行った?」

 突然自分達に襲い掛かってきた巨大なモノは、再び水中に飛び込んだまま姿を晦ましてしまった。

 辺りを見渡しながらバーンズが皆に巨大なモノが姿を消した事実を伝えた。

「もう居ないようだ」

 バーンズの言葉に皆は再び足を進ませ、教会へと入ろうとした瞬間、今度は水中から巨大蛙が飛び出てきた。

 もう巨大蛙にも慣れた一同は、的確に蛙を倒すのだが、倒した直後に複数の巨大蛙が水面から顔を覗かせては一同に近寄ってくる。

 水中を泳ぎながら寄ってくる此処の蛙に銃弾を浴びせ倒していく幹部衆。だが蛙の数は異常なまでに多く、通常の銃器での攻撃が辛くなってきたのを見て感じたバーンズは、電撃の能力を持つセーラージュピターに指示した。

「ジュピター!」「ええ!」

 バーンズの指示に返答したジュピターは右腕から電撃を放出した。電撃は水中に伝わり、周辺に居た巨大蛙を全滅してみせた。

「良くやった、ジュピター!」

「水は電気を通しやすいから、効果は抜群だねっ」

 ジュピターの手柄に賞賛の言葉を掛けるバーンズとジュニアの発言に、ジュピターは余裕を感じさせる笑みを返した。

 そして周囲の巨大蛙を一掃した後、バーンズが皆に伝えた。

「この中から聞こえる」

 先ほどはバーンズや一部のHEADにしか聞こえていなかった唄が、今度ははっきりと全員の耳に入ってきたのだ。

 教会の中から聞こえてくる歌声に、全員は警戒の念を持ちつつ教会の扉を開けて中に入った。

 

 聖龍HEADと赤塚組幹部衆が教会の中に入ると、其処には一人の褐色肌に白いワンピースを着た少女が床に座って唄を口ずさんでいた。

 HEADと幹部衆にとっては聞いた事もない不思議で穏やかな旋律の歌唱に、最初は銃器を構えながら教会に入った幹部衆の面々も思わず銃を下ろして唖然としてしまう。

 そして当の少女の方は、教会に入ってきたHEADと幹部衆に気付く事無く唄い続けるのだった。

 しかし、そんな穏やかな旋律を唄う少女をジッと見詰める存在が、崩壊した教会の床下その水面下から顔を覗かせていた。

「バーンズ!」

 その存在に逸早く気付いた大将は、隣のバーンズに声を掛けた。声を掛けられたバーンズも目を向けると、其処には唄い続ける少女を青く光る目で見詰める異形の怪物が、床下の水面下から顔を覗かせていた。

 青く穏やかな目で少女を見詰め続ける異形の存在、バーンズ達はその異形の存在に攻撃する姿勢を向ける。

 そして全員が攻撃態勢に入り、幹部衆も銃器を怪物に向けた瞬間。

 唄っていた少女がバーンズ達の存在に気付くと同時に、まるで糸が切れたかのようにその場で気絶してしまった。

 そして少女が気絶した瞬間、少女を見詰めていた怪物もバーンズ達に気付き、曲線を描いた無数の長い剥き出しの牙を晒しながら青かった瞳を攻撃的な赤い瞳に一変させて、バーンズ達に向かってきた。

 

「畜生ッ、何処を狙えばいいんだ!」「でかすぎる!」

 水面から出てきた怪物の、その巨大すぎる全貌に戸惑う幹部衆。そんな内の一人である大将は咄嗟にバーンズ達HEADに訊ねた。

「どうしたら倒せる!?」

 しかしバーンズ達も困り顔を向けて答え返した。

「俺達が聞きたいぐらいだ……一応は頭と思われる部分を狙えっ」

 そのバーンズの言葉どおり、HEADも幹部衆も怪物の頭部と思われる部分に集中砲火していった。

 だが怪物は倒れず、よろめきながらも此方側に牙を剥き出してきた。

 更には背中部分から生えている四本の巨大な触手を振り下ろしたりして攻撃してくる。

 攻めてくる怪物に、HEADはそれぞれが持つ特殊能力を用いて応戦していく。

 巨大な全貌なために地に着く二本の脚部目掛けて真紅が強烈な拳を突いては怪物の姿勢を崩そうとしたりするが、怪物は一向に倒れる様子を見せなかった。

 ちせ/ミズキのレーザーを浴びても果敢に攻めてくる怪物相手に悪戦苦闘する一同。

「ダメだ、外に出ないと勝ち目がない!」

 狭い教会内での戦闘は不利になると読んだバーンズは皆を引き連れて外へと飛び出す。

 そして外に出た皆が教会の中に振り返ってみると、其処に居た筈の怪物は姿を消してしまってた。

 しかしその時、反対側の方角から激しい水の音がして全員そちらの方に顔を向けた。すると其処には先ほどの怪物が水中を猛スピードで駈ける様に泳いでいた。

 怪物はそのまま一同の目の前を通り過ぎ、そして一旦水中へと潜っては完全に姿を消した。

「何処だ?」

 皆が姿を晦ました怪物を追って辺りを見回していた、その時。

「居た!」

 バーンズが指差す方の水面からは僅かな泡が浮かんできて、次の瞬間其処から怪物が水中から飛び出てきてはバーンズと大将の上に飛び乗った。

 飛び上がってきた怪物の勢いで転倒してしまった二人の上に、跨った状態で床に転がる二人を見下ろす怪物。

 しかし二人は自分を見下ろす怪物の顔面に一斉攻撃を放ち、怪物が怯んだ隙に立ち上がっては体勢を立て直した。

「くそッ、全然倒れないぞ」「どうする……っ」

 堂本海斗と蒼の騎士こと青山雅也が困惑の言動を口にした、その時。

「あれだッ、あれを使うぞ!」

 そう言ってバーンズが視線を向けた先には、教会の屋根に突出している壁の部分に設置された鐘であった。

 バーンズはその鐘が付けられた屋根の壁目掛けて風の刃を放った。

 風の刃は鐘付きの壁に直撃し、鐘が鳴り響くと同時に壁が倒壊しては、真下の怪物目掛けて落下した。

 壁に直撃した怪物は、壁が直撃した箇所を激しく損傷しては足をふらつかせ、血を噴き出しながら水の中へと逃げ去った。

「やったぜ!」

 逃げ去った怪物を見て声を上げるアツシ、そして安堵する一同。

 

 怪物を追い払った一同は、再び教会の中へと駆け込んでは先ほど気絶してしまった少女の許へと急ぐ。

 気絶している少女に皆が駆け寄ると、大将が険しい面持ちでバーンズを始めとした聖龍HEADに問い掛けた。

「バーンズ、今の化け物は何だ……お前達はあんな奴等と戦ったのか?」

 問い掛けられながらも気絶している少女の様子を観察するバーンズ、少女の方は未だに目が覚めず近寄ってみると彼女は右腕全体に包帯を巻き、白いワンピースには真っ赤な血が付着していた。

 

 少女を気に掛けながらも聖龍HEADの面々に赤塚組の頭領である大将は険しい顔色で訊ねる。

「どうやら俺達は、お前達が経験した事について全て聞く必要があるようだな」

 険しい面持ちで訊ねてくる大将同様、他の赤塚組幹部衆の面々も聖龍HEADに険しい面持ちを向けて無言で問い掛ける。

 

 

 そして問われた聖龍HEADは赤塚組に答えた。

 

 過去に自分達が何を見たのか、そして何を感じたのか。

 

 その忌まわしい過去の全てを話し始めた。

 

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