現政奉還記 B.O.W.編 作:セイントドラゴン・レジェンド
しかし同時にタイで起こったバイオハザードにも対応するため聖龍隊総長バーンズは各地・各異世界で奮闘していた隊士らも招集し、タイの混乱に応対させる。
そして失踪した新世代型の親友等を助けたい一心で三人ばかしで彼等が閉じ込められている研究施設へと踏み入った少女達。そんな彼女等が施設内で遭遇した謎の青年と共に新世代型の許へと駆けつける。
無事に新世代型の親友達はもちろん、他にも囚われの身であった新世代型を無事に救出した一行は、はたして脱出する事ができるのであろうか。
[探索]
聖龍HEADと別れて一足先に研究施設に忍び込んだ赤塚組幹部衆たち。
施設に忍び込んでみると、表向きは極々普通の吹き抜け構造のオフィスビルであったのだが、内部を隈なく探索していくと地下へと続く隠しエレベーターを発見した幹部衆。そのエレベーターで一行は地下深くの研究施設へと潜ってく。
地下へ下りた一行が目にしたのは電灯が消滅しては薄暗くなっている通路や部屋、そして何より乱れた室内に所々に夥しいほどの血痕が飛散している見るに耐え兼ねない血生臭い凄惨な現状だった。
目を覆いたくなる光景ではあったが、幹部衆は密林の集落や居城で既に陰惨な情景を目の当たりにしてある程度は慣れていたため平常心を保っていられてた。
幹部衆は、ここに収容されていると思われる新世代型を捜索しながらも同時に無人の研究施設を探索していった。
争った痕跡なのか襲われた跡なのか、物が散乱した研究室を物色していく幹部衆。と、幹部衆が散乱する研究室を物色しているその時、聖龍隊から渡された通信機が鳴った。
「こちらバーンズ、こちらバーンズ。赤塚組応答しろ、繰り返す、無事であるなら応答しろ、どうぞ」
アラームが鳴る通信機から聞こえてきた聖龍隊総長バーンズの声に、呼ばれた大将は通信に出た。
「おう、こちら赤塚組。バーンズ、お前達は今どこにいる?」
「オレ達も今、研究施設があると思われるオフィスビルに到着した。が、全ての階を見回ったんだが研究室らしき場所は何処にもない。新世代型の姿すら影も形もない」
「バーンズ、秘密の研究施設は地下にある。上のオフィスビルはただのカモフラージュだ」
「何! 大将、もしかして……」
「ああ、俺達は一足先に地下の研究施設に潜ってる。地下には行くには隠しエレベーターしか今のところ方法はない。その隠しエレベーターは……」
大将は通信機を通して、バーンズに自分達が探し当てた地下への隠しエレベーターの場所を伝えた。
「……そうか、分かった。オレ達もこれからスグ地下に向かう。大将達は引き続き研究施設の探索を続けながら、新世代型たちを見つけては保護しといてくれ。血塗れの荒れた現状からすっと、おそらくもう研究施設もバイオハザードに汚染されているだろうし、一刻も早く彼等を保護しねえと」
「了解、そんじゃ研究施設で落ち合えれば落ち合おうぜ。あっ、そうだ、その前にバーンズ」
「んっ? なんだ」
「実は今、俺達が探索している研究室に何やらリストみたいなのが有ったんだが……」
「リスト?」
「ああ、被験体リストって書いてあるんだが……それには刑務所や収容所から収集した被験体って記されているんだが、これって」
「………………」
大将に訊ねられたバーンズは一時の間黙り込んでしまう。そして一時思考に耽っていたバーンズは重い口を開いて大将に話した。
「……大将、それはおそらく
「な、何だと……!」
「お前等も知っている筈だ。悪役排除法で捕まった奴は全財産はもちろん人権そのものも剥奪され、完全にその存在すら抹消される事を……。そんな人権を奪われた二次元人は一部ではあるが人身売買の対象となっている事例も珍しくはない。ただ、人権すら剥奪されているから人身売買とは呼ばれず、単なる物として売り買いされている。おそらく、そのリストの連中は此処の研究施設での実験体としての利用目的で連れて来られたんだろう……」
「………………………………」
バーンズからの釈明に大将は言葉を失う。そんな大将との通信でバーンズは最後にこう伝えた。
「……二次元人の尊厳を守るために、一部の二次元人を犠牲にし続ける。それが現実だ……。それじゃ、オレ達も今からそっちの研究施設に向かう。またな」
そう言ってバーンズは大将との通信を切った。
バーンズとの通信を終えた大将は余りの衝撃に思わず立ち尽くした。そんな彼の許に二人の通信を聞いていた幹部衆の仲間達が歩み寄っては大将に声を掛けた。
「大将……」
険しい面持ちで声を掛けてきた海野なるに、大将は厳つい顔で言葉を返した。
「あ、ああ……ヒールに認定された連中の末路は色々と聞いてはいたんだが、まさか被験体モルモットとして利用されちまっていたとは……」
と、大将が厳つい顔付きで思い耽ていると今度は幹部衆の山崎貴史が話し掛けてきた。
「ま、まぁ……
山崎に続いてアツシも口を開いて話し始めた。
「自業自得とはいえ、最後には実験体として利用された挙句、使い捨てられるとは……」
アツシに続き、周囲の荒んだ部屋の現状を見回しながらミズキも口を開く。
「そうね。このリストの連中、この研究施設の原状を見る限りは、もう……」
荒み乱れた室内、そして何よりも目に付く夥しい血飛沫が散乱する現状を見て、大将たち赤塚組はリストに載っている
そのリストには、以下の通りの文章と名前が記されていた。
※被験体リスト※
【このリストの被験者は、全て合法的に刑務所および収容所から収集した被験体である。全ての被験体は牢獄からの釈放を望んで自ら進んで当研究機関の被験体になる事を承諾した。各被験体の名前と、その被験体が出演した作品名もリストに記載しておく】
岩本(幽☆遊☆白書)
三輪防人(闘将ダイモス)
篠ノ之束(インフィニット・ストラトス)
鷹岡(暗殺教室)
ドクター/カンザキ コウスケ(BLACKCAT)
夷川早雲(有頂天家族)
阿世知欽太郎 ((プリティーリズム・ディアマイフューチャー))
ナギ・ダイ・アルタイ(舞-乙HiME)
北条鉄平(ひぐらしのなく頃に)
青山姉弟(たかまれ!タカマル)
佐古克己(ライフ)
狩野アキラ(ライフ)
カリス・ノウマン(ジンキ)
鎧塚凱夢(怨み屋本舗シリーズ)
千石(こどものおもちゃ)
一柳万才(逆転検事2)
王都楼真悟(逆転裁判2)
風見豊(逆転検事2)
カーネイジ・オンレッド(逆転検事)
狩魔豪(逆転裁判)
小中大(逆転裁判)
綾里キミ子(逆転裁判2、逆転裁判3)
黒井社長(アイドルマスターシリーズ)
ガルシルド・ベイハン(イナズマイレブン3)
草加雅人(仮面ライダー555)
桐生洋司(428〜封鎖された渋谷で〜)
一条総司令(鳥人戦隊ジェットマン)
牙琉響也(逆転裁判4)
須郷伸之(ソードアート・オンライン)
……………………………………………………
だが大将たちが目を通したリストは途中から酷く汚れ、途切れていた。その為おそらくはリストで確認できた名前以外にも、それ以降多くの二次元人異常者《ヒール》の名前が記載されていたのだろうと大将たち赤塚組は容易に想像できた。
そして被験体として連れて来られた大勢の二次元人らは実験に投じられ、そして最後は……赤塚組はそれ以上なにも考える事を自己的に止めた。
[潜行]
一方その頃、大将と話を終えたバーンズは聖龍HEADを従えて彼に教えてもらった隠しエレベーターに足を進ませた。
そしてHEADはそのエレベーターに搭乗し、地下へと潜行していく。
彼等が降り立った階層、そこは偶然にも研究施設のコンピュータルームであった。バーンズは眼前に広がる無数のコンピューターを見て、即座に同胞のコレクターズの三人に告げた。
「結、春奈、愛。此処からハッキングして情報を入手しろ」
「分かったわ」
三人にコンピューターへのハッキングを命ずるバーンズ、それに愛が返答すると三人はスグにコンピューターへのハッキングを開始した。
コレクターズの三人がコンピューターにハッキングすると同時にバーンズは通信で聖龍隊本部に通達した。
「こちらバーンズ。現在、侵攻中の研究施設内にてコンピューターにコレクターズがハッキング中。データを其方に電送するので施設に関する情報を洗い浚い調べてほしい。特に今は施設内部の構造、つまりは見取り図を施設侵攻の為に第一に優先して調べて見出してほしい」
「了解しました」
バーンズからの所望に通信を受けていた若い男性が返答する。
そして衛星を通して聖龍隊本部に送られた膨大な情報から、本部でバーンズ達の通信を請け負っていた通信士は即座に現場の隊士が望んでいる情報を返送した。
「よし、来たか……なるほど、まさか此処まで巨大とは……」
本部より返送された地下の研究施設その構造図を目にしてバーンズは険しい顔付きで唖然とした。
地下の研究施設は全てで60階にも及ぶ巨大な筒状の階層が七つ、それを六角形状に配列された筒状の階層に囲まれるように1本の同形状のメインの階層が並んでいる構造図であった。
更に引き続き、本部からデータを解析した事で得られた情報が送られてきた。
「ふむふむ、そうか……HEAD、どうも厄介な事態だ。俺達が身柄を確保しなきゃならねえ新世代型の二次元人、彼等が捕らえられているのは最下層のエリアみたいだ。困難だが、其処まで向かわなきゃならねえ」
「えぇ~~! 一番下まで行かなきゃならないの、もう~~っ」
「ひぃ……どれだけ地下に潜っていかなきゃならないんだろう……」
誘拐された新世代型が捕らえられている最下層まで向かうと指示を出すバーンズの発言に、此処までの道のりを苦労しながらも突き進んできたHEADのセーラームーンと七海るちあは愚痴を零す。
「文句言わねえ。疲れてんのは、お前等だけじゃねぇんだぞ。ホラ、行くぞ」
愚痴を零す二人に再度声をかけるバーンズは、そのまま最下層まで進行していくのであった。
HEADが赤塚組に教わった隠しエレベーターに向かい地下の研究施設へと進行していたその頃。
タイ都市部から少し外れた工業地帯、その中の何の変哲もない工場の内部に侵入し進行していく者らの姿があった。
「……ねぇ、ここの工場で間違いない訳?」
「その様だぜ。さっき本部から通信で、この工場に研究施設へと続く秘密の抜け道があるらしい」
そんな会話をしながら先を進むエレオノールとフロート、そしてニュー・スターズの面々。彼等は先ほど本部より、HEADが送信したデータを解析して得られた情報として、工業地帯にある工場から地下の研究施設へ続く抜け道があると、付近に進攻していたニュー・スターズに伝えていたのだった。
「それにしても、不気味ですわ……」
「う、うん……如何にも何かが出てきそうな雰囲気」
不気味なほどの静寂に包まれる工場内を歩行しつつ、その不気味なほどの静寂に微かな恐怖を感じるアンリエッタと高町なのは。
と、皆が人気のない工場を突き進んでいるその時であった。
「きゃあッ!」「ど、どうした!?」
突然のリナリー・リーの悲鳴に呼び掛ける屈強の女隊長アニエス。そして皆がリナリーの悲鳴で彼女に目を向けると、リナリーの視線の先に工場内に詰まれたコンテナの上から一体の爬虫類に似た容姿の厳つい怪物の亡骸が転がってきてたのだ。
コンテナの上からずり落ちる様に落下してきた亡骸に驚き腰を抜かしてしまうリナリーの手を、アレン・ウォーカーが掴んでは彼女を立ち上がらせてあげる。
そして皆が落下してきた遺骸に目を向けていると、フロートが神妙な顔付きで口にした。
「コイツは……ハンターじゃねえか」
「ハンター……?」
フロートと恋仲であるカトレアが零す中、フロートは皆に語り始めた。
「ああ、コイツはB.O.Wとしては、かなり有名な奴だ。確かウィルスと爬虫類系の遺伝子を組み合わせて生み出された怪物で、俊敏な動きと鋭い爪による強力な攻撃でB.O.Wでも最高傑作と言われている。何せ強靭なB.O.Wの中でハンターは単純な命令には従えるほどの知能を持ち、これによりある程度の決まった役割を遂行できるまで至っている。まさに
「そ、そんなハンターが死骸で此処にあるって事は……」
フロートのハンターに関する説明を聞いて八神はやてが呟くと、彼女に続いてデス・ザ・キッドが落ち着いた風貌で語った。
「うむ、おそらくは此処がB.O.Wを生産する工場か、またはそれに関連している建物である事が明白だ。タイ都市部に広がってしまっているバイオハザードによる混乱で、此処の工場も何らかの形で生産していたB.O.Wが逃げたしたか、この場で絶命したのだろう」
キッドの語りを聞いて、フロートは皆を引き連れて工場の地下に続く入り口までやって来た。
「ヨシ、此処だな。地下の研究施設と繋がっている入り口は……みんな、気を引き締めて行くぞ!」
フロートからの逞しい掛け声に、一同は力強く頷いては地下へと進行していくのであった。
一方その頃、タイ都市部の地下に犇く下水道。
その内部を突き進む一行の姿があった。それは、あのスター・ルーキーズの面々であった。
「あ~~なんで態々、こんなヤバイほど臭う下水道の中を進まなきゃならない訳!?」
「文句はタイガーに言いなさいよ、もう」
「…………」
悪臭漂う下水道の中を進む事に嫌悪感を募らせるブルーローズにファイヤーエンブレムが話し掛ける。その一方でタイガーは申し訳なさそうに黙り込んでいた。
「くっ、臭うなぁ……」
「情勢が余り安定してないからな……下水道の整備まで国政の手が回ってないんだな」
鼻に付く悪臭に、鼻を捻じ曲げる真宮桜と管理されきってない下水道の現状に物申す六道りんね。
「アーーッ! 臭うしクソ暑いし、最悪だよっ」
「葉月、解ってるから黙ってくれ」
「俺達だって蒸し暑い上に臭いまくる下水道を通るのに苦を感じてんだからよ」
『…………』
悪臭だけに非ず東南アジア特有の蒸し暑さも密閉された下水道の中で苦に感じる葉月いずなに、日ノ原革と門脇将人の二人が反論し、コトハとミヤビの二人は暑さの余り言葉すら出せずに居た。
「きゃっ」「ッ、大丈夫かアスナ」
足場が悪くぬめりの有る下水道の脇道で足を滑らせ危うく転倒しそうになるアスナに声をかけるキリト。
「先も見えないわね。ホントにこの先で施設へ続く道があるの?」
「も、もしこれで先が行き止まりとかだったらサイアクですよ」
先行きも見えない現状に鬱憤を吐くブラック・ロータスとシルバー・ロウ。
「それにしても、下水道を通って施設に向かわなくちゃならないなんて……」
「他に道はなかったんですか……」
道行に不安を募らせる高槻七海とシンク・イズミの両名。
だが、そんな同胞達の数々の愚痴を聞いて、遂にミラールの堪忍袋が切れた。
「ウッサイわね、さっきから!! そもそも私達が下水道通らなきゃ為らなくなったのは、地上の道路が車で塞がって通れなくなったのとタイガーがまた無駄な破壊で進路方向を瓦礫で塞いじゃったから、仕方なく下水道を通る破目になってるのよ!! 文句言わずに黙って進む!」
『は、はい……』
マジギレするミラールの怒声に、一同は唖然としながらも一言返すのであった。
実は最初、地上を進行していたスター・ルーキーズだったのだが、相次ぐ地上での混乱で道が車などの障害物で塞がってしまい、更にはタイガーを始めとする一部の隊士の遣り過ぎた過激な戦闘で進行先が塞がる始末だったのである。
「……に、しても。こんな暗い下水道の中で、もし敵が現れたらどうするの? 狭いし足場は悪いし、下手したら全滅よ」
自分等の現況に物申す鹿島リンに対してミラールは真顔で答える。
「その時はその時よ。今は一刻も早く、この下水道を通って研究施設に向かわないと」
こうしてミラール率いるルーキーズは地下の研究施設に通じていると言われる下水道をひたすら突き進んでいった。
そんな中……下水道を進む一行の付近で、何かの気配が感じられるようになった。
「ッ……おい、ミラール。気付いているか」
「ええ、気付いているわ……何かが私達と同じ空間に居る」
トリコからの指摘にミラールは険しい面持ちで答える。
そして次の瞬間、その気配は彼等の前に姿を現した。
「……ウゥ……」
下水道の奥から現れたのは、地上で立ちはだかったのと同じ無数のゾンビであった。
「ゾンビだ!」「応戦すッぞ!」
敵であるゾンビを見て叫ぶ工藤タイキに応戦を開始する岩崎月光。
だがゾンビ達は下水道脇の通路のみに非ず、事も有ろうか下水を流れる水の中からもその腐敗しきった姿を現してはルーキーズに襲い掛かる。
「こ、こっちからも来たですぅ!」
「怯まないで! 今はとにかく応戦するしかないわ」
水中からも容赦なく襲ってくるゾンビに脅える百江なぎさに怯まず攻め続けるよう助言する巴マミ。
しかしゾンビの群集はいくらでも沸いてきては迫ってくる。
「ヒーローマン! アタック」
主人ジョーイの命に従い、稲妻のロボット ヒーローマンが俊敏な動きで迫りくるゾンビを攻撃していく。
「きゃあッ!」「怯まない! 攻撃しまくるのよッ!」
暗闇の中から轟き迫るゾンビの大群に時おり悲鳴を上げる女性隊士の声を聞いて、総部隊長のミラールは果敢に応戦しながらも支持を飛ばしていった。
薄暗い下水道、そして仄暗い下水の水中から現れては容赦なく迫ってくる無数のゾンビ相手に、ルーキーズは戦闘を続けつつも先へと突き進んでいくのであった。
[接触]
その頃、研究施設の最下層で無事でいた新世代型二次元人たち。そして救出に向かった三人の少女チョコ/ギュービッド/桃花、更にその三人と出くわした青年ジェイク・ミューラー。
一行は青年ジェイクを先頭に薄暗い研究施設からの脱出を図ろうとしていた。
「……よし、この通路には敵は居ねぇようだな」
壁に背を預け曲がり角の先の通路に何も居ない事を確認しながら進むジェイクは、確認すると後方の新世代型二次元人たちを手引きしては誘導していく。
だが、そんなジェイクの行動に新世代型を助けに来た三人のうちの一人ギュービッドがしかめっ面で言葉の矛先を向ける。
「アンタ、何を気取ってやがるんだ。みんなを助けるのも、全部は金が目当てだって言うクセに」
するとこのギュービッドの発言に、ジェイクは厳つい強面を彼女に向けては鋭い眼光で眼前と反論した。
「悪いかよ、坊主。それに、どうせお前達だけじゃ此処から脱出するなんて無謀だぜ。しかも、例え施設を出ても外にはゾンビがウジャウジャ居やがるんだ。マトモな装備もしてないテメェらじゃスグにゾンビの餌食になるぜ」
「えっ!? ぞ、ゾンビ……?」
ジェイクの発言に唖然とする琴浦春香に、ジェイクが詳しく語り明かし出した。
「ああ、そうだぜ。お前らは閉じ込められていたから知らないだろうが、今タイの都市部を中心に大規模なバイオハザードが起きてるんだ。今じゃ都市の至る所でゾンビの群れだぜ」
「ぞ、ゾンビって……そんな、まさか」
「あ、有り得ないわ。常識的に考えて……」
ゾンビが出現している都市の現状を聞いて、俄かには信じられない薙切えりなと蓮城寺べるの二人。
「ちょ、チョコちゃん。本当に、この人の言っている通りタイにはゾンビが蔓延っているの?」
「そ、それが……私達、実はギュービッド様と一緒に黒魔法で直接この研究施設に入ってきたから、今タイの都市とかがどうなっているかまでは見てないの」
思わず訊ねる御舟百合子からの問い掛けに、訊かれたチョコは動揺しながらも実情を話す。
そんな自分の語った話を聞いて動揺し出し俄かには信じられないでいる面々を前に、ジェイクは更に真顔で語り明かす。
「……まあ、最初ゾンビって聞いた時は信じられねえのも無理はねぇな。俺だって最初、ゾンビ化したり怪物に変貌した人間を前にした時はド肝を抜かれたかんな」
「あなた……! 前にもゾンビを目にした事があるの? それに怪物に変貌したって……」
青年ジェイクの発言を聞いて血相を変えて驚く美都玲奈に、ジェイクは至って普通に答えた。
「まあな……しかもゾンビだけじゃなく、馬鹿でけぇ怪物に追い回されたり、ゴリラみたいにでっかくなった怪物とも一戦交えた事もあったしな」
「き、君は一体……」
淡々と畏敬の存在と対峙してきたジェイクの昔語りを聞いて、猿田学はジェイクに驚きを感じつつ関心を向けた。
そんな昔語りを淡々と語るジェイクに、ギュービッドが不満いっぱいのしかめっ面で言う。
「はいはい、解りましたよ。だけどアタイを坊主って呼ぶんじゃない! アタイは一端のレディーなんだからねッ!」
「ッ! お前、女だったのか? はは、悪ィ悪ィ、てっきり見た感じ男とばっかし思ってたわ」
「ッ…………!」
失笑しながら返答するジェイクの言動に、ギュービッドの怒りは上昇するばかりであった。
と。ジェイクを先頭とした一行が地下深くの研究施設を進んでいる中、突然ジェイクが声を発した。
「……ッ! 待て」『!』
ジェイクの制止の声に彼の後方を付いていく一同は急停止した。
そしてジェイクは後方の皆に「少し待て」と再度声をかける。そんなジェイクにチョコが訊ねる。
「ど、どうしたんですか……ジェイクさん」
するとジェイクはその厳つい強面を更に険しくさせては答えた。
「……誰か来る」「え……!?」
ジェイクの一言にチョコもその他の皆も緊張の糸を張り詰めた。
同時刻、新世代型の一行とは別方向から研究施設の最深部を進む別集団の姿があった。
それは聖龍HEADとの通信を終え、更には研究機関に身を投じてはおそらくその命を果てさせた
赤塚組の頭領にて、かの小田原修司や加賀美あつこと幼馴染である赤塚大作こと大将。そして、その大将を筆頭に行動している赤塚組幹部衆。大将と同じくHEADの加賀美あつこと幼馴染のギョロ/ゴマ/チカ子。HEADのセーラー戦士たちとは馴染みの深い海野なる/ぐりお夫妻。同じくHEADのナースエンジェルと古い付き合いの水原花林。HEADのキューティーハニーの旧友で同時に戦場カメラマンの秋夏子。HEADのカードキャプターさくらとその婚約者 李・小狼の旧友、山崎貴史と千春夫妻。コレクターズの結/春奈/愛三人の旧友である市川一太郎/レイコ夫妻。そしてHEADの最終兵器ちせの知人等であるテツ・ふゆみ夫妻、アツシ/アケミ夫妻、そしてミズキ。
彼等は灯りの消えた電灯の通路を、身を低くしながら先へと進んでいた。
「……に、してもよ。何でエレベーターの電力はそのまんまで、通路の電灯だけがこうも消えちまってるんだ?」
灯りの消えた電灯に愚痴を呟く大将に、スグ後ろのミズキが言い返した。
「おそらく、エレベーターの電源と照明の電力は別なのよ。多分、エレベーターは主電源で、電灯などの照明器具とかの電力だけが何らかの原因で落ちているのよ」
ミズキの説明を聞いても尚ウンザリとした表情を変えない大将は、そのまま薄暗い通路を突き進む。
「……だけどよ、バーンズやアッコ達が常に監視してなきゃならない新世代型の二次元人って、一体どんな連中なんだろうな?」
「さぁ、私も話に聞いているだけで詳しくは……」
思わず大将が口走った台詞に海野なるも顔を傾げて言葉を返す。すると大将は、思わず自身が思った事を正直に言い切った。
「もしかして、もしかすっと新世代って……カメハメ波とか撃てたりして」「って、そんな訳あるかッ!」
大将のバカみたいな発想に対してミズキは反論しつつ鋭くツッコむのであった。
すると大将は自分の後頭部にツッコミを入れたミズキに対して真顔で言い返した。
「えぇ~~、だって普通の二次元人と違うって言うなら、やっぱ誰でも簡単に『波ーー』を出せるからじゃねぇのか?」
「バカ言ってないで早く進む! もうっ」
相変わらずの大将の言動に呆れながらも強く言い返すミズキ。
そして一行は辺りを警戒しながら再び薄暗い通路を突き進んでいった。
だが、その道中「ッ、お前らストップ」「! どうしたの、大将」突然の大将の只ならぬ制止の一声にミズキが問い返すと、大将は厳つい顔で答えた。
「……そこの曲がり角から、何か来る」『!』
大将の発言に幹部衆一同は愕然としつつも瞬時に警戒態勢に移る。
そして大将たち赤塚組は、少しずつ何者かの気配を感じる曲がり角に近づいていく。
同じ頃、察知した何かの気配にジェイクも曲がり角に忍び足で近づいていった。
そして、次の瞬間。
曲がり角の物陰から一瞬で飛び出してきた一人と集団、複数の人影は互いに激しく薄暗い空間の中で取っ組み合った。
一人が拳での一突きを相手に食らわすと、別の者が攻撃を仕掛けてきた人影に銃を向ける。が、その人影は自分に向けられた銃を軽々と己の腕で弾き飛ばしては同時に銃を向けてきた相手に肘撃ちを喰らわす。すると暗闇の中から青く発光する電撃の刃を振るってくるのを捉えたのか、それに対して人影は体勢を後ろへと下げては身をかわし回避する。だが集団はそれでも次々に一人の人影に対して攻撃を放っていく。集団の内の一人が銃を向けると一人は即座にそれを払い除け、集団の内の一人が強烈な回し蹴りを振り翳すと一人はそれを受け止めつつ瞬時に反撃に転じたりと、まさに攻防一体の激しい熱戦であった。
その様な激しい取っ組み合いの乱闘を目の当たりにしたチョコやギュービッド達、それに新世代の二次元人達は目を見張る余りの激戦に呆然と見入ってしまっていた。
そして遂に……!
一人の青年と集団との薄暗い中での戦闘は一瞬で止まった。
集団の皆々が青年に銃口を突き付けている中、青年の方は自分の頭に拳銃の銃口を向けている厳つい顔の男に同じく銃を突き付けている状態で乱闘が止まっていた。
そして青年は互いに銃を向け合っている眼前の男に睨み付けながら、男と周囲の者達に言う。
「おい、お前等。銃を下ろさねえと、この男の頭がポップコーンみたいに弾け飛ぶぜ」
すると青年と銃を向け合っている男も、青年に言い返す。
「おい小僧、テメェこそ銃を下ろさねぇと俺の仲間が黙っちゃいねえぜ。頭数はこっちが上なんだ、大人しく銃を捨てろ」
「ヘッ、誰が」
銃を向ける眼前の男の言い分に対し、青年は嘲笑うかのように微笑を浮かべる。
青年と集団、互いに銃を向けあう双方はまさに一触即発の状態であった。
と、そんな青年と集団の息も付かないほどの乱闘を前にして、しばし呆然としてしまってたチョコたちと新世代型の面々が、ようやく気を落ち着かせては乱闘しあった面子に恐る恐る話し掛けた。
「あ、あの……」「ん、君達は……」
話し掛けてきた新世代型の野々原ゆずこの声掛けに集団の一人であるテツが彼女達の存在に気付く。
そして新世代型の皆々は、薄暗い空間の中で集団と乱闘を始めてしまった青年について解釈を始めるのだった。
「そ、その人は……私達を助けてくれた人なんです!」
「あ、怪しい人じゃないんです……多分」
集団に途惑いながらも話し掛ける田所恵と月影ちあり。
更にその時、薄暗い中で乱闘しては終いには銃を向けあう面々に、チョコが地面に落下していた青年の所持していた懐中電灯を銃口を向け合う面々に向けて、ようやく薄暗い中の状況が皆の目に鮮明に映った。
懐中電灯に照らされた灯りの中に浮かび上がったのは、互いに銃口を目の前の相手の頭に向け合う大将と青年ジェイク。更にジェイクの周囲を取り囲むように赤塚組幹部衆の面々が、自分達の頭領である大将に銃を向けるジェイクに様々な銃器の銃口を向けて、互いに威嚇し合っている現状であった。
そんな切羽詰る状況の中、大将が銃を向けながら眼前のジェイクを問い詰める。
「おい、小僧。テメェと一緒に居る子供達は、何なんだ? もしや……誘拐か?」
これに対し問い詰められたジェイクは大将に銃を向けたまま言い返した。
「おいおい、俺様を誘拐犯に仕立てないでくれよオッサン。そもそも、中年のオッサン、オバサンも混ざっているのに誘拐って可笑しいだろ」
互いに銃を向けたまま、大将とジェイクは対話を続ける。
「お前さん……なんでこんな施設の最深部にいるんだい?」
「その質問……そっくりそのままアンタに返すよ」
「俺達は、この施設に囚われている新世代型っていう二次元人たちを助けに来たのよ。で、お前さんは?」
「俺か? 俺はな……単に仕事さ。このタイの研究施設で生物兵器の開発や研究を行っているって知り合いから聞いたんでね、その調査にやって来たらこの連中と出くわして、ついでに助け出したってとこよ」
「お前がこいつ等を助け出したって事か。この研究施設の調査のついでに、ね……」
「ああ、そうだ」
大将とジェイク、双方は互いに厳つい顔と鋭い眼光で睨み合い、しばしの間無言で睨み合い続けた。
そして大将とジェイク、しばしの間にらみ合った二人は一息吹くと相手に向けていた銃を静かに下ろした。
二人が銃を下ろしたのを目撃した幹部衆の面々、そしてチョコ達と新世代型たち。するとジェイクに向けていた銃を下ろした大将が厳つい顔で幹部衆の皆に告げた。
「お前等、銃を下ろせ」『…………』
大将からの一言に幹部衆は互いに唖然と顔を見合わせるが、全員が大将の言うとおりジェイクに向けていた銃を下ろした。
こうしてジェイクを先頭とした新世代型二次元人たちとチョコ達、そして大将率いる赤塚組の面々は先行きも見えない薄暗い研究施設の最深部で初めて接触したのだった。
[波紋]
青年ジェイク・ミューラーと彼によって導かれたチョコ達と新世代型の二次元人たち。そんな彼等と薄暗い研究施設の最深部で接触した大将率いる赤塚組。
双方は蟠りを解いては、互いに意見交換をし合った。
「ふぅ……まさか新世代型の二次元人たちを先に助け出しに来た奴がいたとは」
ため息をつきながら語る大将の言葉に、ジェイクは平然と話し返した。
「いや、正確には俺が先じゃ無ぇ。そこのガキんちょ三人と最初に出くわして、その三人からこの施設に囚われている連中が居るって聞いてよ……そんでもって一緒になって牢屋の中に閉じ込められている連中を出してやったって訳よ」
「っ、三人?」
ジェイクの話した三人について海野なるが問い返すと、ジェイクはその三人の方に目を向けた。ジェイクの視線を追う赤塚組、するとその先には三人だけで施設に乗り込んできたチョコ/ギュービッド/桃花の三人の姿があった。
「あ、あの子たちが……!?」
秋夏子が驚いていると、ジェイクが三人との遭遇について語り明かした。
「ああ、俄かには信じられねえが……どうも、あの子供ら魔法って特殊能力が使えるらしいんだ。それで三人だけで此処に囚われている友達を助けに来たみたいでよ……まったく世話の掛かるガキ共だぜ、ほんと」
「あ、あの女の子たちも魔法が……!」
魔法を使える三人を目にして、同じ魔法を使える友を持つ山崎千春は驚異しつつも唖然となった。
「魔法少女二人と魔法使いの三人……まさか彼女達だけで施設に侵入してしまうとは」
自分等だけで施設に侵入してしまう程の行動力を持つ三人にミズキが驚きつつも愕然としてしまっていると、そんなミズキにジェイクが口を挟んだ。
「ああ、オバさんよ。俺もさっき間違えちまったんだが……どうも、あの黒ローブのガキも女子みたいだぜ。男みたいな口調と態度、それに容姿で見間違いやすいがな」
「えっ? あの子も女の子……って、私の事をオバさん呼びするのも間違いだと思わない訳?」
「おやおや、気に障りましたかな? フッ」
「………………」
ギュービッドを男子と見間違えたミズキにジェイクが訂正すると、ミズキは理解すると同時に自分の事をオバさん呼びするジェイクに立腹する。しかしジェイクはそんなミズキを鼻で笑い、更にミズキの神経を逆撫でするのであった。
そんな最中、三人だけで新世代型の親友達を助けに来たチョコ/ギュービッド/桃花たちに幹部衆の水原花林が話し掛けては彼女等の詳細を訊ねていた。
「それじゃ、君達は新世代のお友達が蒸発したって話を聞いて、それで自分等が使える黒魔法っていう種類の魔法能力でお友達が捕まっている場所を特定して三人だけで助けに来ちゃったって訳?」
「は、はい……そうです」「仰るとおりで……」「は、はぁ……」
花林に訊ねられ掛けて小さく返事をするチョコ/桃花/ギュービッドの三人。そんな三人の行動に思わず呆れてしまうテツは、呆れながらも三人に話し出す。
「ふぅ、やれやれ……君達、いま自分等が何処に来て、しかも現在の場所で何が起きているか解っているのかい? 此処は平然と人を人体実験しつつ多くの生物兵器を生み出し続ける研究施設で、人が居ないから良いものを下手したら君達までも捕まって色々と実験されてたかもしれないんだ! もう少し自分達の行動を弁えて、かつ考慮して行動しなさい!」
『は、はい……』
呆れながらも最後には三人を怒鳴り叱るテツ。テツの叱咤に三人は小さく返事する。
と、幹部衆の面々とジェイク、そしてチョコ達が対話している最中、大将はジェイクとチョコ達によって助け出された新世代型の二次元人たちと向かい合っていた。
「へぇ~~……お前さん達が、例の新世代型か。フッ、見た目はごく普通の二次元人と変わりないな」
『………………』
厳つい顔立ちの大将を前にして、新世代型の二次元人達は只ならぬ気配と緊張で気を張り詰めていた。
そんな気持ちを張り詰める新世代型に大将は何の前触れもなく質問を投げ掛けた。
「ところでお前さんたちよ。折り入って一つ、聞きてぇ事があんだけど……答えてくれねえか」
『……………………』
次の瞬間、大将は心身ともに強張る新世代型の二次元人たちに平然と問い掛けた。
「お前達…………カメハメ波、撃てっか『何を訊いとんねん!!』〔バンッ〕
新世代型に波を撃てるかを平然と訊ねる大将に、市川一太郎とレイコ夫妻が後方から激しい平手打ちを喰らわす。その情景を目の前にした新世代型は思わず呆然と口を開けて立ち尽くしてしまう。
しかも、そんな大将と市川夫妻のやり取りを見たジェイクは真顔で言った。
「なるほど、これがジャパンのボケ&ツッコミって奴か」『ちゃうちゃう』
平然と手を打ち納得しかけるジェイクに周りの皆は一斉に違うと返答するのであった。
そんな騒がしい現状の中、赤塚組幹部衆に新世代型の出雲ハルキが訊ねてきた。
「あ、あの……」
「ん、君は確か……【ダンボール戦機ウォーズ】の出雲ハルキ。なんだい?」
問い返すアツシにハルキは幹部衆の面々に問い掛けた。
「あの……あなた達は確か、セブンズ・ガードの赤塚組ですよね」
「ああ、そうだよ。正真正銘、僕等は泣く子も黙る赤塚組さ」
ハルキの問い掛けに自慢げに語り返す海野ぐりお。すると他の新世代型の面々が赤塚組の名を聞いて騒ぎ始めた。
「赤塚組って?」「確か二年前、セブンズガードに任命された……」
互いに顔を見合わせて対話する瀬名アラタと星原ヒカル。二人に続いて【ゆゆ式】のピンク髪でカールしたアホ毛のショートカットの野々原ゆずこと、二つ結びの黄緑髪でツリ目が特徴の櫟井唯が神妙な面立ちで語り出した。
「確か、国連によって選ばれた一部の人たちの事だったような」
「そうそう、圧倒的強さと知名度を持った悪役達が国連と協力関係を結ぶ事によって、世界中で悪行の数々を犯しては猛威を振るっている
そんな赤塚組の名を知って騒ぎ始める新世代型の二次元人たちに、赤塚組の頭領である赤塚大作こと大将が身振り手振りで意気揚々と名乗り始めた。
「オゥともよッ! 新世代の後輩どもよ。聞いて驚け、知って飛び上がれッ! 赤塚組の頭領、赤塚大作……人呼んで大将とは、あっ俺の事! あ、テメェら安心しろよ野郎どもに坊ちゃんお嬢ちゃんにオッサンオバさん、おじいちゃん達の皆様方よ。俺達が来たからには大船に乗った積もりで安心しとくんなましッ! 俺達が必ず……あ、必ずや無事にコッから抜け出させてやっからよォ!!」
何とも大雑把ながらの歌舞伎口調で淡々と名乗る大将の言動に、目前で名乗りを聞いた新世代型たちの間には白けた空気が充満した。
そんな何ともいえない空気を解消させるべく、海野なるが咄嗟に大将と新世代の間に入っては、新世代の面々に話し始めた。
「あ、ああ! そう言えば……みんな、安心して。実はまだ上の階に居るんだけど、施設内には聖龍隊の方々も駆け付けてくれているの!」
「え!」「せ、聖龍隊の人たちが俺達を助けに……!?」
なるからの話を聞いて真鍋義久と燃堂力は声を上げる。そんな彼等になるは話を続ける。
「そうよ! 私達は聖龍隊から、あなた達が誘拐されて何処かに連れ去られたって聞いて、それで聖龍隊と一緒になって今まで探し回っていたの! もう地上の都市では聖龍隊の隊士達が活躍してるし、しかもあのHEADが直々にあなた達を探しているの! だから、もう大丈夫」
なるの話を聞いて心成しか安心する新世代型の二次元人たち。
だが、そんな新世代型の二次元人たちの中には聖龍隊の名を聞いて顔色を険しくさせる面子も混じっているのを、なるは気づいた。
「ど……どうしたの? 君達……」
訊ね掛けるなる、すると訊ねられた新世代型は口を揃えて訳を話し始めた。
「だ、だって……聖龍隊、しかもHEADって……」
「あ、あの人たちとは、ちょっと……」
「…………」
聖龍HEADが駆けつけてくる事を知って、何処か暗鬱な面立ちになっては黙り込んでしまう【琴浦さん】の森谷ヒヨリと【食戟のソーマ】の四宮小次郎、そして何も言わず黙然とする【プリティーリズム・レインボーライブ】の速水ヒロの三名。
何処か後ろめたさを感じている三人の空気を察したのか、【キルラキル】の鬼龍院皐月がそんな三人に長い黒髪と凛々しい太眉が特徴敵な精悍せいかんで逞しい顔立ちを向けて言った。
「貴様等、なにか聖龍隊が来ては困る事があるのか?」「そ、それは……」
皐月の問い掛けに答えられず困惑する森谷たちを眼前に、皐月は更に彼等に言い放った。
「もしや貴様等…………
険しい面立ちで問い詰める皐月の核心を衝いた一言に、三人は顔色を一変させて激しく動揺する。そんな三人の変化した様子を見た皐月は、更に三人に言い迫る。
「その顔、やはり異常者認定を受けていると考えて良いんだな。なるほど、異常者を強制排除する権限を持った聖龍隊と出くわせば、貴様等は問答無用で処分の名目の死刑を執行されると言う訳か」
淡々と鬼気迫る面差しで語り迫ってくる皐月の一言一句に、三人は顔色を更に蒼褪めていく。
するとその時、言葉攻めを受け続けている三人と皐月の間に琴浦春香が入ってきては、三人を攻め立てる皐月に琴浦は事情を話し出す。
「ち、違うの! 森谷さんは
琴浦春香の言い分を聞いた鬼龍院皐月は、それでも尚その精悍な顔立ちから威圧を放ちながら面と向かって反論する。
「なんだ、結局は同じ事ではないか。ブラックリストに載っている者の大半は、過去に悪行や大犯罪を犯した異常な二次元人にテロリストといった実に危険極まりない輩どもであろう。その三人も過去に大罪を犯した為にテロリストはもちろん、精神に異常を来たしている逆賊候補として名が挙がっているから記載されているのだろ」
「そっ、それは……」
躊躇しないハッキリとした物言いで延々と語る皐月に、琴浦は戸惑い返す言葉を必死に探す。すると皐月と同じ【キルラキル】の
「いや、ゴメンよ。コイツは何かと他人を見下してばっかりの無愛想な女でよ、常に周りにはキツイ物言いで接してくるから……気を悪くしてゴメンよ」
「は、はぁ……」
流子の耳打ちでの謝罪を聞いた琴浦は唖然としながらも気を落ち着かせた。
すると今度は、最初に聖龍隊の駆け付けに如何な思考を持っていた森谷ヒヨリ/四宮小次郎/速水ヒロに続いて別の新世代型たちも自分達の腹中に溜まっていた不服を洗い浚い吐き出し始めた。
「確かにな……俺達が新世代ってだけでヤケに三次元人たちはもちろん聖龍隊の人達も、目を尖らせているように感じるんだよなぁ」
自分たち新世代型に対する視線について語る燃堂力に続き、薙切えりなもふくれっ面で物申す。
「新世代、新世代って……いっつもその理由で私たちの事を見張っては目の敵にしているんですのよ! 聖龍隊は……」
「い、いや……何も目の敵にしてるって訳じゃないと思うよ。……多分」
常に自分達に目を光らせ見張っている聖龍隊やHEADへの反感を散らす薙切えりな、そんな彼女に山崎貴史が必死に宥める。
そんな中、大将はバーンズから持たされていた通信機で別の階に居る筈の聖龍HEADや他の聖龍隊士と連絡を取ろうとした。
「そんじゃ一先ず、バーンズ達に新世代型を発見したって伝えておくか。オマケに三人だけで助けに来たって言う女子と正体不明のスキンヘッドの坊主の事も」
「オイ」通信機の電源を入れながら語る大将の発言に立腹するジェイク。
そして大将は通信機で同じ施設内にいる聖龍隊の面々に向かって呼びかけた。
「あーーもしもし、こちら赤塚組、こちら赤塚組。聖龍隊、応答しろや、どうぞ」
すると大将の呼びかけに通信機から応答が返ってきた。
「こちらバーンズ、こちらバーンズ及びHEAD。大将どうした?」
「おう、バーンズ。今こっちで捜索中だった新世代型の二次元人たちと遭遇した」
「何? 全員無事なのか!?」
「見た感じ、全員傷とかは無ぇみてえだし大事無いと思う。俺達の方でも確認したが、テメェらが渡してくれた失踪者リストに載っていた名前の連中は全員揃ってる」
「そうか、それは良かった。俺たちも直ちにそっちに向かう」
「おう、それともう一つ……何だか俺達以外で新世代型を助け出そうって思っては三人だけで施設に乗り込んできた子供も一緒なんだが……」
「へっ? 子供が三人……?」
「ああ、名前を黒鳥千代子、それから自分等は魔女だって名乗るギュービッド名前の男みたいな女子に、桃花・ブロッサムって女の子なんだが」
「ッ、チョコ達かよ……何で寄りにも寄って、その三人が揃って此処に来ちまっているんだ?」
進入した三人の名前を聞いて、バーンズは唖然としてしまう。そんなバーンズに大将は言う。
「なんだ、知り合いかよ」「あ、ああ……まぁな」
渋々と返答するバーンズ、そんな彼に大将は続けてもう一人の遭遇者の事を話し始めた。
「それから、その三人と施設の中で偶然鉢合わせたっていう野郎が一人居るんだが……」
「ん? 野郎?」
「ああ、何だか知人に頼まれて、この研究施設を調べに来たって言ってんだが……見るからに怪しそうな奴で」
「なるほど」
「ジェイク・ミューラーって名乗ってんだが、この名前も本当なんだが」
すると大将が言った名前にバーンズは過敏に反応した。
「ジェイク!? おい大将、そいつってジェイク・ミューラーなのか?」
「あ、ああ。本人はそう言っているが……知ってるのか?」
大将が訊き返すと、バーンズは声色を一変させては大将に話した。
「知ってるも何も、以前にも一緒に行動した事もある! ほら、お前達にも話しただろ。
「なに? あのターチィで一緒に……」
「そっか……ジェイクが何の因果で此処に足を運んでたかは不明だが、安心しろ。奴は根は悪い奴じゃない。それどころか、かなり腕っ節が強くて頼りになる奴なんだ。分かった、今すぐにそっちに向かってはジェイクと話をする! 話し次第では此方にとって有力な戦力になってくれる事間違いなしだ! そんじゃ、そっち向かうな」
「お、おう……」
大将が返事するとバーンズは通信を切った。
[指令]
大将との通信を切ったバーンズは、すぐさま改めて通信機を入れては同胞の聖龍隊に呼びかけた。
「こちらバーンズ、こちらバーンズ! 聖龍隊、今現在の所在地を報告しつつ応答しろッ」
するとバーンズの呼びかけに続け様に聖龍隊の仲間からの応答が入った。
「こちらフロート率いるニュー・スターズ! 現在、タイの工場地下の抜け道から研究施設への侵入に成功できた所だ!」
「こちらミラール及びスター・ルーキーズ! 此方もゾンビが群がる下水道を通って無事に施設への侵入に成功。これより直ちに民間人が囚われている地下最下層に向かう!」
「こちらバーンズ、それについてはもう心配は要らねえ。先ほど赤塚組から連絡があってな、囚われていた新世代型は無事に保護したとの事だ。
俺達はこれより、直ちに赤塚組と合流して新世代型の護衛にあたる!」
『了解!』
総長バーンズからの指令にフロートとミラールは返答すると、即座に合流するため行動に移った。
一方、そんな聖龍隊メンバー及び赤塚組さらには彼等と合流した新世代型の様子を、施設内の監視カメラで密かに観察していた者がいた。
その者はタイの都市の中心、その高層ビルの最上階の一室で壁一面に張られたモニターから施設内にいる面々を監視していた。
「クックック……遂に赤塚組だけでなく聖龍隊の最戦前で活躍する連中もやって来たか」
その者はモニターに映る聖龍隊の隊士らをジッと眺めながら不敵な微笑を浮かび続ける。
「クックック、だがもう遅い。破滅の序曲は……自然界が新たに生まれ変わる準備は既に終えている」
そう言うとその者は、徐に自身が席を就いているデスク上の呼び出し機のスイッチを入れると、それに向かって話し始めた。
「大佐、例のアレは調子はどうかね?」
すると無線機から渋い男の声で応答が返ってきては、問い掛けてきた男と話を進める。
「ああ、アレは順調に稼動準備中だよ。しかし驚いた……いくら彼の遺伝子から生み出された複製兵器とはいえ、此処まで強化した上に内蔵されたコンピューターによる精密性をも両立させられるとは」
「クックック、それこそ破滅の遺伝子を持つ彼の複製だからこその結果なのだよ。私達は、その強靭な力をまずは聖龍隊にぶつけ、最終的にはこの乱れた自然界をも正しい姿に変えねばならない」
「まあ、私にとっては余り興味のない事だ。それよりもコレと聖龍隊をぶつけるのが楽しみだ……また甘美なる痛みを、コレを通して味わえると思うと実に至福だ」
「君も相変わらずだな……まあ、ぼちぼち施設を開放させようと思っている。解き放たれた脅威に聖龍隊の連中がどれだけ足掻けるか見物だよ」
「フフフフ、彼等にも甘美なる痛みを……激しい生と言う名の痛感を。フフフフ……」
二人の男は怪しくも不敵に笑むのであった。
その頃、研究施設内を聖龍HEAD/ニュー・スターズ/スター・ルーキーズの一行が進んでいた。それぞれが薄暗い施設の内部を微かな灯りだけで先へと進行していった。
最下層の新世代型の一行と赤塚組の一派、彼等の許に駆けつける為に聖龍隊のそれぞれが急ぎ先へと進行する。
HEADはエレベーターを使用して、直接施設の最下層へと進む。一方のニュー・スターズとルーキーズは施設に侵入したばかりであった為、辿り着いた階層から地道にエレベーターや階段を探しては其処から最下層に向かおうと尽力していた。
「よし、最下層だな。此処から大将たちと合流しねえと」
エレベーターを降りたバーンズを始めとするHEAD一行は、同じ階にいる筈の赤塚組と合流を果たそうと奔走する。
同じ頃、ニュー・スターズはというと……
「か、階段……階段は何処にあるんだ!? エレベーターが無きゃ階段しか無ェのによ……!」
「……って、一番下の階まで直接下りるのは酷だと思わない訳?」
エレベーターが見付からないフロートは階段で直接下りていこうと奔走するが、そんなフロートに最下層まで階段で下りていくなんて無謀すぎると反発するエレオノール。
そして同じ頃、スター・ルーキーズは……
「エレベーター! または階段を探すのよっ! 下りていく手段が見付からなきゃ、先へは進めないわ!」
総部隊長ミラールの指揮の元、ルーキーズは必死に階段またはエレベーターの捜索を続ける。
と、各々の総合部隊が施設を進行中の最中、聖龍隊本部より通信が入った。
「皆さん、どうも進路方向でお困りのようですね。私が皆さんの現在地より的確な進路をナビゲーションします」
「おうっ、そりゃ助かるぜ!」
通信士の若い男性の呼び掛けにバーンズは大いに喜ぶ。そして通信士は各聖龍隊の総合部隊に進むべき方向を差していった。
「まずはニュー・スターズの皆さん! 皆さんは其処から直進30mほど進んだ先で左折して下さい。その先に皆さんが現在いるエリアのエレベーターに出れますので、それで最下層に向かってください。最下層に付いたら改めてナビゲーションします」
「オウッ!」
ナビゲートする通信士からの助言にフロートは強く返答する。
「スター・ルーキーズの皆さんは、現在地より50mほど進んだら右折して、そのまま直進してくださればエレベーターに行き着きます」
「分かったわ!」
ミラールも通信士からのナビゲートに強く応答する。
「そしてHEADの皆様方は……現在のエレベーター前から前方60mに直進しましたら左折して、すぐに右折しましたらそのまま直進しましたら赤塚組の皆さんがいる地点まで辿り着けます。すれ違いにならないよう、赤塚組には此方から移動せずその場に待機して下さいと伝えておきます」
「了解、俺達HEADはこれより再び進行を開始する」
通信士との通信を切ったバーンズは、即座に行動に移った。
こうして三組はそれぞれ示された通路を駆け抜けては、各々が合流に急ぐのだった。
だがその頃。聖龍隊が進行している研究施設、その最上階に位置するオフィスビルの屋上。
そこに一人の銀髪に近い髪色の男が、そのがっしりとした体躯でその場に構えつつブーメラン状のナイフをクルクルと片手で回転させながら、バイオハザードによる混乱で炎上するタイの都市部を見下ろしながら、怪しくも悠然とした微笑を浮かべていた。
「クックック……何処まで足掻けるか見届けようではないか。聖龍隊の者達よ」
男は厳つくも凛々しい初老の顔立ちで振り返ると、ビルの内部へと入ってく。
それと同時に男は小型の無線機を懐から取り出すと、徐に無線機に向かって話し始めた。
「私だが……まだ施設内の面々には宴の開始を告げないのかね?」
すると男の呼び掛けに、無線機から別の男の声が聞こえてきた。
「いや、もうそろそろ彼等にも私達が主催の宴の開始を告げようと思っていたところだよ。ところで大佐、君の方こそ準備は整っているかね? 例のアレの調子は……」
「ああ、それなら安心してくれ給え。調子は頗るいい……これなら何時でも稼動させる事が可能だ」
「なるほど。しかしだ……それをお披露目するのは、おそらく最後の方になるだろうな。そう、彼等が施設から無事に生き延び、地下の研究エリアから抜け出た時に……」
「うむ、そうなるだろうな。だが、それでも良い。聖龍隊やその傍らの連中が施設内で死に絶える程度のレベルしか無いのなら、この兵器を投じる機会がないだけの話だ」
「そうだな…………では、私はそろそろ施設内の彼等に宴の開始を告げるとするよ。どうか心行くまで堪能して欲しいものだ……現在いまの時代を作り上げた彼の、鬼神の血より生み出された脅威を」
「心が躍るほど、楽しみですな。では」
男は無線機を切り、自分が進入したビルの一角に置かれていた巨大な筒状の金属製のカプセルを前にしてほくそ笑んだ。
「全ては……真なる苦痛を、我が身に!」
[饗宴]
施設内をひたすら突き進み、新世代型の許へと駆けつけるHEAD/ニュー・スターズ/ルーキーズの聖龍隊隊士。
そして赤塚組と共に聖龍隊の到着を待ち望む新世代型の二次元人たち。
そんな中、HEADを引き連れて突き進む聖龍隊総長バーンズは本部との通信を傍受する通信機を片手に施設内を奔走していた。
「そ、それで……次は何処を進めばいい?」「はい、次はですね……そ、こ……み……」ガッ、ガ……とバーンズが通信している最中、突如として通信機の調子が悪くなったのが本部からの通信は途切れ激しいノイズが生じ出した。
「ど、どうした? おい……故障か?」
突然のノイズに困惑するバーンズ。だがこの時、通信機のノイズはバーンズのだけでなく他の聖龍隊士フロートにミラール、更に聖龍隊の通信機を渡されていた赤塚組の所持していた機器からも生じていたのだった。
と、その時。通信機から生じていたノイズが突然ピタリと止んだ直後、通信機から声が聞こえてきた。
「聖龍隊の諸君、如何お過ごしかな?」通信機から発せられた聞き覚えのない声に、機器を所持していた者達は全員驚愕した。「そう驚く事はない。少しばかり君達に伝えたい事があるのでね……通信を傍受させてもらった」通信機からの声は淡々と話を進めていく。
通信を傍受した上に割り込んできた謎の声に皆が愕然としている中、声の主にバーンズが問い掛けた。
「おい……お前は誰だ?」すると声の主はバーンズの問い掛けに、こう答えた。「私か? そうだな……まあ、今の所では主催者とでも呼んでもらって構わない」「主催者……」自身を<主催者>と自称する声の主に、問い掛けたバーンズはもちろん、その答えを聞いた他の通信機を持つ隊士や赤塚組に新世代の者達は息を呑む。
更に<主催者>は話を続けた。
「今宵は遠路遥々、よく駆け付けて来てくれたものだよ、聖龍隊。どうか私が主催する素晴らしい饗宴を、破滅の遺伝子をその身に刻み込んだ者たちと共に心行くまで堪能してくれ給え」「!」この時、主催者が放った<破滅の遺伝子>というフレーズを聞いたバーンズを始めとする聖龍隊の隊士達の表情が一瞬険しくなった。
「……では、そろそろ宴を始めるとしよう。そう、新たな時代の幕開けを……その身で十分に味わい給え」プツンという通信が切れた音と同時に、主催者の語りは終わった。
通信機から流れ出た<主催者>と名乗る男の語りを、聖龍隊と同じく聞いていた赤塚組に新世代の面々は訳も分からず呆然とするばかりであった。
と、その時だった。
聖龍隊や赤塚組/新世代型の面々がいる施設の至る所から、不気味な金属音が鳴り響いてきた。
「な、なに?」
新世代型の大宮忍が、突然施設内に響く金属音に表情を恐怖で強張らせる。
その不気味な音は新世代型だけでなく、赤塚組はもちろん施設内の聖龍隊の耳にしっかりと入っていた。
金属と金属が擦れるような不気味な音、その正体は施設内の全ての閉ざされていた扉が不気味に開平する音であった。
研究機関の部屋はもちろん、何かの実験所から人ひとりを幽閉できる個室まで、あらゆる扉が不気味なほどに勝手に開いていくのだった。
施設内の閉ざされた扉が開く不気味な金属音が、施設内部に響く気味の悪い現状に新世代型の者達の中には背筋を凍らせる者たちもいた
だが、誰もが気付かなかった。いや、知らなかった。
その扉は絶望と恐怖を捕らえた、あの世とこの世の境目のような扉であった事に。
そして扉が開いた事により、囚われていた絶望と恐怖が解き放たれた事を。
不気味な金属音、それは絶望と恐怖が解放された警鐘そのものであった。
いま、解き放たれた絶望と恐怖は、ゆっくりとその身を扉から乗り出しては
静かに、静かに 施設内を奔走する皆々の許へと歩み寄っていく。
「……ウゥ……」その不気味な唸り声を暗闇の中から発しながら、解き放たれし者はその脅威を忍ばせていく。