現政奉還記 B.O.W.編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 新世代型二次元人たちとジェイク一行と合流を果たした赤塚組。
 だが、そんな彼等と聖龍隊の前に、突如として解放された数多の怪物が解き放たれては立ちはだかる。
 そして聖龍隊はようやく新世代型の二次元人たちを保護した赤塚組と合流する事ができた。
 しかし彼等の前に立ち塞がる強固な鉄の扉。聖龍隊の各隊士とジェイクが偶然にも施設内で入手した四つのカードキーによって、その扉を開く事に成功する。
 果たして、開かれた扉の奥には何が彼等を待ち受けているのであろうか。
 それは魔界への誘いなのか。



現政奉還記 東南アジア市内編 出没する恐怖

[吊らされる死体]

 

 揃った四枚のカードキーにより開錠できた強固な鉄の扉。

 その扉を聖龍隊総長メタルバードと赤塚組頭領 赤塚大作こと大将が開こうと、二人で一緒に扉のドアノブに手を掛ける。

「……良いか、開けるぞ」「ああ」

 メタルバードと大将は少しずつ思い鉄の扉を慎重に押し開いていく。

 重量感に満ちる鉄の扉を全身全霊でもって、ゆっくりと全開させていく二人。

 そして扉は遂に全開し、その奥の風景を扉を開けた二人の目にも入った。

「こ、此処は……」「…………」

 二人が扉の奥に足を踏み入れると、其処は殺風景で広いながらも薄暗い空間。そして壁や床の至る所に夥しい程の血が散乱している光景であった。

「な、何なんだよ。さっきから血だらけの風景ばかりじゃないか……!」

「お前、何をこれぐらいで脅えているんだ。男だったら、気をしっかりと保て!」

 血だらけの惨状にすっかり脅え切ってしまう真鍋義久に、純潔を着衣し常に臨戦態勢を保っている鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が厳つい顔で言う。

 一行は血だらけの惨状の中を進んでいく。

「そ、それにしたって……この血の量はタダ事じゃないわよ」

「そうね。この部屋を中心に何かが行われていたみたいだけど……余り、考えたくは無いわね」

 目の前に広がる惨状に警戒心を更に募らせる秋夏子と、それに答えるキューティーハニー。

 室内の電灯が既に切れているのか、薄暗い中を一行は進みながら同時に血溜まりの中に足を踏み入れ、何とも言えない不快な感触を感じつつも一歩一歩確実に歩み進んでいく。

 

 と。その時であった。「んっ?」新世代型の浜崎タイガが自分の頭に付けている赤いヘアバンドに何かが落下してきた感触に思わず立ち止まる。

「どうした? タイガ」

 同期で褐色肌に切れ長の青い瞳の岸川セイリュウが立ち止まるタイガに声を掛ける。「い、いや……」

 逆立てた長い後ろ銀髪のセイリュウにタイガは声を掛け返す。

 タイガは自分のヘアバンドに付着したモノを確認するため、ヘアバンドを外して目を凝らして見てみた。

「……え……」タイガは一瞬、自分の目を疑った。故に己が掛けている縁無しの丸い眼鏡を外して目を擦ると、再び眼鏡を掛け直して再度ヘアバンドに目を向ける。

 だが、ヘアバンドに付着していたそれを再確認したタイガは激しく動揺した。何故ならタイガの赤いヘアバンドに付着していたのは、ヘアバンドの赤よりも若干黒ずんだ赤黒い血液だったからである。

 自分のバンドに滴り落ちた血に動揺するタイガ。彼は徐にゆっくりと顔を真上に向ける。そして己の真上に広がる情景に彼は絶叫を上げた。

「あ……ああぁッ!!」「な、何だ!」

 突然のタイガの絶叫、それに驚く先頭を行くメタルバードと大将にその他の皆々。一同は皆、声を上げたタイガに視線を集中させる。

「た、タイガ。どうしたのよ急に……!?」

 絶叫を上げるタイガを気にし、悲痛な表情で問い掛けるこげ茶色の髪を両サイドで束ねている波野リンコ。そして絶叫を上げた浜崎タイガは腰を抜かし視線を逸らしながら震える指で天井を指した。

 皆がタイガの指差す天井に目を向けると、その視点の先には目を覆いたくなる程の惨状が広がっていた。

『きゃああァ!!』『!!』「な、何だ、これは……!!」

 天井に広がる惨状に、か弱い女子は悲鳴をあげ、男達は絶句するほど驚愕し、聖龍隊総長メタルバードは我が目を疑った。

 皆が見上げる天井には、無数の死体が惨たらしく吊るされていた。

「なんて事だ……死の工場だ」

 微かな懐中電灯の光に照らされ、薄暗い中に浮かび上がった天井に吊るされた多くの死体を見上げて一同が愕然とする中、参謀総長のジュピターキッドが言葉を発する。

 吊るされる無数の死体は、まるで牛や豚などの食肉の如く天井に吊るされ、その数は計り知れなかった。

 惨たらしく天井に吊るされる数多の死体に、新世代の女子の中には異常なまでの吐き気を催す者までも続出した。

 傷だらけの血塗れで、どう見ても雑で乱暴な扱いで吊るされたのは確かだ。

 自分達の真上の天井一面に吊るされた死体の数々に、一同は揃って言葉を失い蒼然と相成った。

 そんな天井の惨劇を目の当たりにして、蒼褪めた表情で愕然となる新世代の琴浦春香がポツリと言葉を出した。

「な……何なの? これ」

 蒼白となる一同、だが天井のに吊るされた無数の死体の山を見上げてメタルバードが言い出した。

「これは……此処に収容された異常者(ヒール)たちだ」『!』

 メタルバードの発した言葉に、その場の皆が愕然となった。

 更に「そういや……この施設には、政府から異常者(ヒール)認定された囚人達が掻き集められてたんだ」

 とメタルバードの横に居た大将が、この地下施設に進入した折に研究室で発見した被験体リストに載っていた異常者(ヒール)認定された二次元人達の名前を思い返していた。

 拷問か、はたまた人体実験の成れの果てか。天井に吊るされた無惨な異常者(ヒール)達の死体の多くに皆の意識が向いていた、その時。

 

「?」

 何処からとも無く聞こえてくる金属を擦り合わせたような音に、メタルバードが気付く。そしてメタルバードに続いて他の皆も、その場に響き渡る不気味な金属音に気付き始める。

「な、何だ。この音……?」突如として自分達の空間に響き渡る不気味な金属音に大将を始めとする赤塚組が警戒し出す。

 そして赤塚組同様、その音に只ならぬ危機感を覚えた聖龍隊とジェイクも臨戦態勢に入る。

 硬い鉄と鉄を擦るような物音は、次第に近付いてくる。

 と、その時。

 暗闇の中で何かが一瞬光った。「っ?」その光に新世代の神原秋人(かんばらあきと)が最初に気付いた。

 その次の瞬間、暗闇で光ったモノが秋人目掛けて急速で向かってきた。そして「……え」何と秋人の首が一瞬の内に斬り付けられた。

 首を斬られ、切傷から夥しい程の血を噴き出しながら床に倒れる秋人の惨状を目の当たりにして、新世代の女子達は悲鳴を上げた。

『きゃああぁぁあ!!』

 正しく闇をも切り裂く悲鳴であった。その悲鳴と共に聖龍隊と赤塚組、更にジェイクは血を噴き出しながら倒れる神原秋人に目を向ける。

「ど、どうしたんだ!?」

 大将が目先の惨状に驚愕していると、暗闇の中から怪しく光る曲線状の二つの物体が浮かび上がった。しかも、その片方は血で赤く染まっていた。

「な、何だアレは!」

 HEADの蒼の騎士を始めとする一行は、暗闇から姿を現した存在に衝撃を受けた。

 それは継ぎ接ぎだらけの頭部にフレンチコートを全身に着衣した、両手が曲線状の砥がれた鎌になっている不気味な怪人であった。

 怪人は、その両手の鎌で秋人の首を暗闇から刈ったのである。

 そして怪人は有無も言わずに、眼前の一行に向かって行っては両手の鎌を振り回してきた。

『わあッ!』「きゃあっ!」

 逃げ惑う新世代型の二次元人たち。だが怪人は、そんな逃げ惑う彼等に向かっては研ぎ澄まされた鎌で斬りかかって行く。

 縦横無尽に追い掛け回し、果敢に鎌で切り掛ろうとする怪人に脅えては泣きながら逃げ惑う子供達。

 そんな怪人の前に縛斬を手にした鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が勇敢にも立ちはだかる。

「好き勝手に暴れさせるほど、貴様のような得体の知れない輩に権限は与えない!」

 そして皐月は縛斬を怪人に振るい、果敢に斬りかかろうとする。が、怪人の方もその剛腕による鎌で皐月の縛斬を防いでみせる。

「クッ……!」

 明らかに自分以上に剛腕の怪人に力負けしそうになる皐月。すると怪人はもう一方の鎌の手を振り上げ、皐月目掛けて振り下ろした。と、その時。

「やめねぇかッ!」と声を荒げる纏流子が皐月に鎌を振り下ろそうとする怪人に斬りかかる。このときの彼女は「人衣一体」という戦闘フォームで、胸部から腹部に掛けて全体の露出が激しい容姿へと変身していた。

「くそっ」

 そんな纏流子は、どうにか皐月に切り掛かろうとしていた怪人に一撃を当て、怪人を退かせた。

 「ま、纏流子……貴様、なぜ」

 日頃から敵対関係にある皐月と流子、そんな流子の突然の救援に愕然と驚く皐月の問い掛けに、流子は真顔で答えた。

「ヘッ、勘違いすんじゃねえぜ! 単にケンカ相手が居なくなるのが癪だっただけさッ」

「…………」

 流子の台詞を皐月は険しい真顔で受け止めるのであった。

 と、其処に「皐月様!」「皐月ちゃん! 大丈夫?」本能字学園四天王の犬牟田宝火(いぬむたほうか)と同じく四天王で皐月の幼馴染である蛇崩乃音(じゃくずれののん)の四天王たちが遅れて駆けつける。

「あ、ああ。何とかな」

 駆け付けて来てくれた側近である四天王たちに皐月は言葉を返しながら態勢を立て直す。

 一方、流子によって弾き押された怪人は再び両手の鎌を無尽蔵に振り回しながら果敢に切り掛かりに来ていた。

「くッ、コイツまだ……!」

 攻撃の手を止めずに切り掛かりに来る怪人の猛攻に、流子は額に冷や汗を掻きながらも応戦しようと身構える。

 と。流子が持ち前の根性と得物の片太刀バサミ武器に怪人へと反撃を繰り出そうとすると、その戦闘に一人の少女が横から加わってきた。

「あ、アンタは……!?」

 その少女を見た流子は唖然とした。そんな流子に少女は闘志に満ちた顔つきで言った。「私も加勢しますっ!」

 その少女はピンク髪に赤縁の眼鏡を掛けた新世代型二次元人、栗山未来であった。未来は自身の特殊な血液で形成した刃を手に、怪人相手に応戦しようと身構えていた。

「……あ、ああ! 助かるぜ、え、えっと……」

「私は栗山未来。よろしく」

「あ、ああ。アタイは纏流子だ。頼むぜ、眼鏡の栗山未来!」

 互いに自己紹介を済ませた栗山未来と纏流子は、それぞれの紅色の得物を手に構えては、眼前の怪人に共闘で挑もうとする。

 と、二人が怪人と対峙したその時。

「ま、待ちやがれッ! 素人が迂闊に戦おうとすんじゃねぇ!!」

 と、聖龍隊総長メタルバードが怪人と戦おうとする纏流子と栗山未来に待ったを掛ける。

 そしてメタルバードが二人と怪人の間に入っては、怪人の鎌による攻撃を自身の鋼の肉体で受け止めると、怪人とメタルバードはそのまま横着状態に入ってしまう。

 だが怪人と共に横着状態になったメタルバードは、背中越しに怪人へと進攻しようとした纏流子と栗山未来に話し掛ける。

「お、お前達が無理に戦わなくても良い……オレ達、聖龍隊が居るんだから無理すんな!」

『…………』

 メタルバードの台詞に流子と未来は険しい顔で唖然と固まる。

 その頃の聖龍隊及び赤塚組は、突如出現した怪人に驚き脅え逃げ惑う新世代型の二次元人たちを怪人の猛攻から護るために一致団結してダイヤモンド・フォーメーションを協力して行う。

 このダイヤモンド・フォーメーションは前衛/後衛/側衛を兼ね備えた、多方面からの攻撃に瞬人事対応できる防衛体制で、総理大臣などの首相や大統領などを護衛する際にSPが行う体制でもある。

 同じ頃、ナースエンジェルを始めとする治癒能力を持つ聖龍隊士は、最初に怪人の攻撃を受けて倒れる神原秋人に駆け寄っては彼の治療を行っていた。

「大丈夫? しっかり!」床に倒れ血の海に沈む神原秋人に声を掛けるナースエンジェル。すると「え……これは」ナースエンジェル達、治癒能力者の目に普通では有り得ない事が飛び込んできた。

 一方のメタルバードは、両手の二丁鎌で切り掛かってきた怪人相手に鋼の体で刃を受け止めていた。だが、想定した以上に怪人の力が強く、メタルバードは辛うじて怪人の二丁鎌を受け止めるしか出来ずにいた。

 と、その時。そんなメタルバードを見兼ねてか、痺れを切らして纏流子と栗山未来が怪人の背後に回っては、それぞれの武器である片太刀バサミと自血の刀で怪人の背中を同時に斬り付けた。

 流子と未来の同時攻撃を受けた怪人は一瞬とも怯まず、それどころか背後から斬りかかって来た流子と未来にその継ぎ接ぎだらけの不気味な顔を振り向かせては、攻撃の対象をメタルバードから二人に移した。そして怪人は流子と未来に鎌を振り翳した。

「ッ!」「っ!」

 自分等に振り翳される二丁鎌を前に一瞬ばかし動揺する流子と未来。だが、次の瞬間。

「!」

 突如として怪人が何かに衝撃を受けては動きを止めた。そして怪人が己の腹部に視線を向けると、怪人の腹部には血で真っ赤に染まった金属の槍の様なのが貫通していた。怪人が後ろに目を向けると、其処には右腕を槍のような形状に変形させたメタルバードが、その変形させた腕で怪人の背部から突き刺していたのであった。

 そして背中から怪人を槍状の右腕で貫通させたメタルバードは「へっ」と、口元に微笑を浮かべた瞬間に怪人に貫通させた右腕の槍に強烈な電撃を流した。

 怪人はメタルバードの放出した強烈な電撃に感電しては黒コゲと化した。

 感電し黒コゲとなった怪人は、その巨体を山が崩れるようにその場へと倒れては動かなくなった。

『…………』

 目の前で強力な電撃によって感電した怪人に呆然と立ち尽くす流子と未来。

 黒コゲとなった怪人から放たれる異臭の中、電撃を怪人に放流したメタルバードは右腕を元の形状に戻すと二人に話し掛ける。

「お前等、勝手な事はすんなよな。いっくら戦闘慣れしているとはいえ、一般人が無闇に戦うもんじゃねェよ」

 敢然と流子と未来に言い聞かせるメタルバード。そんな彼の言葉に呆然とした表情で聞き入っている二人に、メタルバードは更に言葉を掛けた。

「……でも、ありがとよ」そう言ってウィンクを二人の少女に放つメタルバード。その彼の一言に流子と未来は呆然としていた表情を笑顔に変えた。

 

 

 

 

[特異体質]

 

 両手が鋭利な二丁鎌の怪人を、混乱の中で倒す事ができた一行。

 程よくして戦闘に加わった纏流子と栗山未来は一息入れ、メタルバードは倒した二丁鎌の怪人に膝を付いて目を向けていた。

「バーンズ、何を見てる?」

 怪人に目を通していたメタルバードにジュピターキッドが声を掛ける。するとメタルバードは険しい面持ちでジュピターキッドに答え返した。

「ジュニア、ちょっとこの怪物を見てくれや」

 ジュピターキッドは言われるがままに怪人に顔を近付かせ間近で観察した。すると「……バーンズ、これは……!」

 怪人を観察したジュピターキッドは驚愕した顔でメタルバードに問い返した。

「ああ、この怪物……両手の部分を、そっくりそのまま鎌に付け替えた一種の改造された代物だ」

「つ、つまり……改造人間(サイボーグ)か?」

「いや、それとはちょっと違う……これは生きた人間を改造したんじゃなく、人間が死んだ後。つまりは死体を改造して造り出された、と言うべきだ」

「そんな……死体を改造して」

 メタルバードの分析を聞いてジュピターキッドは愕然とした。

 

 一方の怪人との戦闘を追えて一息入れていた流子と未来の許に、聖龍隊と赤塚組から護衛されていた新世代型の面々が駆け寄っては彼女達に声を掛ける。

「栗山さん!」「未来ちゃん、大丈夫かい?」

「え、ええ……どうにか大丈夫です」

 心配して声を掛けてきた美月と博臣の名瀬兄妹に、未来は草臥れた様子ではあったが返事をする。

「流子ちゃーーん! またまたカッコ良かったよ! ホントっ」

「は、はは……マコ、そりゃどうも」

 未来と共闘して戦い抜いた流子に、親友の満艦飾マコがその熱戦振りを称えるように笑顔で話し掛ける。それに流子は呆然としながらも返答する。

 と。流子と未来に駆け付けて来た彼女等の親友と共に駆け付けて来た、他の新世代型の二次元人たちも見事な戦いを披露した二人に声をかける。

「あ、あなた達。さっきと良い、今の戦い……」

「子供とは思えないほど戦い慣れてるな。いや、凄かったぞ」

 流子と未来の共闘振りを見て、唖然とする美都玲奈と宮内一穂の教師組。

 更に称賛の声は二人だけにあらず、最初に怪人と組み合った鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)にも掛けられた。

「貴女も凄いですわね。あんな如何にも凶暴そうな怪人相手に、たった一人で挑むなんて」

「ふっ、この鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)。己が誇りと信念に賭けて、あのような無骨な輩に背を向ける訳には行かない!」

 花園まりえからの称賛の声に対し、皐月は威風堂々とした面構えで己が真情を語る。

 と。そんな新世代の面々が勇敢にも戦いを仕掛けていった三人に称賛の言葉を掛けていく一方、一人だけ真鍋義久は余りにも露出の激しい戦闘スタイルの纏流子と鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)に顔を真っ赤にしながらも鼻の下を伸ばした如何にも如何わしい人相で、二人に話し掛ける。

「そ、それにしてもお二人さん……凄い格好ですね。へへへへ」

 正しくスケベ顔と言うべき面で流子と皐月に話し掛ける真鍋の言動に、流子が真鍋に負けず劣らない真っ赤な顔で照れながら「す、好きでこんな格好で戦ってんじゃないよッ!」とスケベ面の真鍋に反論する。

 すると真鍋に続いて、流子と皐月の容姿に恥ずかしそうに顔を隠しながら小野田坂道も話し出す。

「そ、それにしたって派手すぎるよ。お二人の格好は」

 更に坂道に続いて鳴子章吉も持ち前の関西弁で二人の容姿に対しておちょくる。

「ホンマやで、お二人さん。いっくら何でも、その格好はちと肌が出過ぎてねェか? 聖龍隊のスーパーヒロインですら、そんなド派手で肌が目立つコスチュームは着てへんで! 言っちゃ何やが、まるで二人とも痴女みたいやで」

「………………!」

 鳴子の台詞に、さすがの男勝りな性格の流子も恥ずかしさの余り耳まで顔を真赤っかにしてしまう。

 と。そんな皆々の視線と言動に恥じらいを感じる流子を横目に、鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)は持ち前の峻厳苛烈(しゅんれつかれつ)で威風堂々とした態度で流子に言葉を掛ける。

「ふんっ、纏流子。貴様も案外、器の小さな人間なのだな」「な、何だと!」

 皐月の言葉に怒る流子。すると皐月は胸を張って毅然とした態度で強く熱く語り始めた。

「何を言うのだ。この姿こそ神衣たる純潔が最も力を振るえる姿! それを俗な価値基準で恥じるなど、まさに己の小ささの証明! この鬼龍院皐月、わが野望成就のためならば……そして何よりもこの現状から抜け出す為ならば、天下に乳房を晒そうと、恥もなければ怯みもない!」

『………………』

「わが行動に、一点の曇り無し!」

 生命戦維を駆使して作り出された「鮮血」を着用して恥じらいを見せる流子に対し、皐月は今の己の姿こそが「神衣」である純潔の真の力を発揮する姿と理解しては、全く羞恥心を見せなずに威風堂々と語り明かす。この皐月の言動に、当の流子は呆然としてしまい、他の皆は皐月の潔すぎる言葉に彼女に男……いや、漢女を感じたのである。

 

 と。皐月に流子、二人の容姿に対して色々と意見が飛び交っている最中、メタルバードとジュピターキッドが何かを思い出したかのように駆け出した。

「あ! そういや、この怪人に切られた少年……!」

「そうだった! 確か今、即急にナースエンジェルたち治癒能力者が治療に当たってはくれているんだけど……」

「て、て言うか……さっきの少年、完全に頚動脈をやられたよな。失血死してなきゃ良いが」

 二人は早速、最初に怪人に首を切断された神原秋人の許へと駆けつける。

「ナースエンジェル! さっきの少年……」とメタルバードが慌てた様子でナースエンジェルら治療に掛かろうとしていた者たちに話し掛けると、彼女の後ろから首を斬られ大量の血を噴出した筈の神原秋人が何事も無かったかのように出てきた。

「なッ……! こ、こいつは……」

 メタルバードが大量出血した筈の秋人が平然と立っている様子に驚愕していると、彼と共に駆け付けていたジュピターキッドが手をポンと叩いて思い出した。

「あ、そう言えば……君は神原秋人くんだったね。確か半妖で、半分妖夢って言う種族の血が混じっている」

「へっ? 半妖……?」

 ジュピターキッドの言葉に唖然となるメタルバード。すると其処に先ほどの戦闘で纏流子と共闘した栗山未来と美月/博臣の名瀬兄妹がやって来ては秋人に対して詳しく語り始めた。

「先輩は、私達が討伐している妖夢とのハーフなんです」

「だから秋人は、どんな大怪我を負おうと、どんな致命傷を受けても意図も簡単に再生できちゃうの」

「アッキーは前々から、どんなに深手を負ってもスグに治っちゃうんですよ」

 未来/美月/博臣らの説明にメタルバードは一瞬唖然としつつも、ジュピターキッド同様ハッと思い出した。

「……あ、そう言やそうだったな。確かに神原秋人は半妖としてアニメタウン住民表にも記載されてたっけ。いや~~、忘れてたぜ」

 メタルバードは頭を掻きながら神原秋人について思い出してた。

 すると、その秋人の治療に懸かろうとしていたナースエンジェルたちも驚きの面差しで語り出す。

「ホント驚いたわ。斬られた箇所を治そうとしたら、みるみる内に傷口が塞がっていくんだもの」

「まあ、それはそれで良かった事だけど」

「ホントだよねぇ。私達も能力使う手間が減って助かっちゃったし」

 驚きながらも秋人の再生能力に安堵の表情を浮かべるキューティーハニーとセーラームーン。

 と。メタルバードたちと同様に未来たちの話を聞いて驚くべき再生能力を持つ神原秋人の詳細を知った他の新世代型と赤塚組の面々。だが話を聞いて唖然としている新世代と違い、赤塚組とくに大将は秋人の特異体質を知っても「ふぅ~~ん、そっかぁ」と耳の穴を右小指で穿りながら平然と聞き入れていた。

 そんな大将たち赤塚組の、特に驚いた様子も無い状態に話の大元である秋人は戸惑いながらも訊ねた。

「あ、あの……驚かないんですか? 僕の能力、というか血筋に」

 自身の半妖夢としての血筋に違和感を微塵も感じてない大将達に訊ねる秋人。すると訊ねられた大将は平然とチャラチャラとした態度で突っぱねた。

「オイオイ、少年。別に今の御時世、半妖とか半エルフとか、ハーフなんて珍しくもなんとも無いだろ? 要するにお前さんの体の半分には人間じゃない血が入っているってだけの話じゃねえか」

「だ、だから……」

 自身に人間ではない種の血が入っている事に驚きや違和感を感じないのかと訊き返そうとする秋人。だが大将は平然と話し続けた。

「そもそも、斬られても死なねェ奴なんて俺らから見たら見慣れてるってモンよ。傷がアッと言う間に治っちまう身体能力者なんて、この世に五万と居るんだし。何より、俺達はお前さんよりも不死身な、それこそ化けモン並みの奴と馴れ合っているんだ。そいつに比べたら、あんちゃんはまだまだ人間染みているよ」

「悪かったな、化けモン並みで」

 と、大将の話を近くで聞いたメタルバードが少し不機嫌そうな顔で文句を言う。

 そんな表情を変えたメタルバードを目の当たりにして、新世代の室戸大智が思い出したかのように話し出した。

「ああ、そう言えばメタルバードさん。本名をバーンズ・ウィングダムズ・キングズさんは、超獣族でも指折りの能力者で、ほぼ不死身と言ってもいいくらいの再生力を持っていましたっけ」

「! ちょ、ちょっと」

 いきなり本名それもフルネームを言われ意表を衝かれるメタルバード。更に室戸大智に続いて「ああ、そう言えば本にも書かれてたような」「確か、首を切り落とされようと、銃でどんなに穴だらけにされてもスグに再生してはピンピンしちゃってるんだっけ」と続々と思い出したかのように話し出す新世代の面々。そんな彼等を前にして、メタルバードは何かに気付いたのか彼等新世代たちに恐る恐る問い掛けた。

「な、なぁ。まさか、君たち例の……」

 メタルバードが震える口調と指差しで問い掛けると、問われた新世代型たちは一同に答えた。

『はい! 本を読んで知りました』

 と。答える新世代型の中には彼等が読んだという本である<聖龍伝説>の自伝本を見せる者までも見受けられた。

〔ズコッーーーー〕自身の能力はもちろん出生についてまで詳細に書き記されている<聖龍伝説>の書本を見せつけられ、派手にズッコけるメタルバード。

 そしてメタルバードは思わず泣き出しては塞ぎ込んでしまう。

「う~~、だからオレはどうかと思うんだよ修司の自伝本……オレの事はもちろん他の聖龍隊の古参メンバーについて赤裸々に書いちゃってるんだもん」

 メタルバードは自分の出生を始め、他の聖龍隊古参メンバーの過去までも赤裸々に書き記した自伝本について複雑な心境を持っていた。

 今や二次元界のみに非ず、執筆者である小田原修司の出身次元 三次元界にまでも発行され世に広まっている彼の自伝本にして聖龍隊の結成から最初彼等が携わった次元レベルの大戦までを克明に書き記した書物<聖龍伝説>その三部作は、老若男女とわず大勢の人々の目に晒されている。

 そんな思わずズッコけてしまうメタルバードを前にしても尚、新世代型は何も見ていないかのように平然と、そして容赦なくメタルバードに問い掛けてきた。

「聖龍伝説に書かれてたけど、メタルバードって自由に身体を変形できるから、よく当時聖龍使いだった小田原修司に命令されて大きな武器に変形して聖龍使いに振り回されたりしてたのよね」

 惜しげもなくメタルバードにとっては今や黒歴史そのものである昔の事を平然と笑顔で訊ねてくる新世代の水戸郁美(みといくみ)の質問に、当のメタルバードは気落ちしながらも彼女の質問に答えた。

「そうだよ……昔は良く、修司に振り回されたりしたもんだ。あの野郎、オレの身体の事は微塵も考えずに、いっつも無茶な戦いしたり平然と俺の事を斬ったり撃ち抜いたり……ホント、ヒデェ扱いだったぜ」

 すると水戸郁美に続いて、今度は可愛い口調と素振りで同じ新世代型の能美クドリャフカもメタルバードに質問を投げ掛ける。

「メタルバード、いやバーンズさんって確か軟体生命体なんですよね?」

 質問してくる新世代の能美クドリャフカにメタルバードは呆然と体勢を立て直しつつも答え返した。

「あ、ああ、そうだぜ。オレ様の体は、骨から筋肉にかけて全ての細胞を配列し直したり変化させたりする事ができる軟体生命体だ」

 するとメタルバードの受け答えを聞いて大将も話し始める。

「ああ、そうだぜ。バーンズ、いっちょ変身解いて見せてやれよ」

「見せモンじゃねェんだが……ま、自己紹介がてらお見せするか」

 そう言うとメタルバードは胸のエンブレムに手を掛けると、次の瞬間には体を光らせて変身を解き、元のバーンズの姿に戻ってみせる。すると「良いか、よく見てろよ」と変身を解いたバーンズの頭部に向けて大将が持参していた銃を向けた。そして発砲し、バーンズの頭部に弾丸が貫通する。

「きゃっ!」

 突然の発砲と飛び散るバーンズの血肉に驚く新世代の女子達。だが次の瞬間にはバーンズの撃たれた箇所は一瞬で塞がり、瞬く間に再生しては元の状態に戻っていく。これを見た新世代型の二次元人達はバーンズの再生能力を知ってる知ってない関係なく、ただただ唖然と驚いてしまう。

 そして弾丸が貫通した頭部を再生したバーンズは平然と新世代型の面々に語り出す。

「どうだ? これがオレの再生能力だ。他にも軟体生命体としての特性として自由に骨格を変形させる事も可能だし、表面上の細胞だけ変化させて他人の姿に成れたりと……聖龍隊の中でも俺は特に秀でた身体能力者って訳よ」

 そう語りながら自身の体を水あめのようにグニャリと変形してみせるバーンズ。そんな彼の台詞と変形する体を目の当たりにして改めてバーンズの能力を理解する一同。

 

 そしてバーンズが再びメタルバードに変身していく中、大将は先ほどまで話をしていた半妖の神原秋人に再び話を振った。

「ま、ようするに秋人の兄ちゃんよ。今時、お前さんみたいな不死に近い特殊能力者なんて珍しくもなんとも無いって事よ」

「………………」

 大将の話を聴いて啞然となる秋人。そんな彼に大将は更に平然と当たり前のように語り続ける。

「それによ。人とは違う能力や見た目だけで、そいつの価値が決まる訳じゃ無いだろ」

「……!」

 ごく自然体で平然と言い切る大将の、この台詞に秋人はもちろんその他の新世代型の面々、特に己の出生や自身の特殊能力にて苦しんできた者たちの心に深く響いた。

 

 他者と違う能力に容姿、それでその者の真の価値は決まらない。大将が新世代型の面々に発した台詞の意味の深さに、新世代型は非常に感銘を受けるのだった。

 

 

 

 

[研究処置室での実験]

 

 その後、一行は体制を立て直しては無数の死体が吊るされた大部屋から移動してスグ隣の別室に通じる扉を抜けて先を進む。

 死体だらけの空間から一転、扉を抜けた先の部屋には数台の血塗れの手術台と様々な器具が用意されている如何にも不気味な部屋であった。

「此処は……」

 赤塚組幹部の一人ミズキが周囲を見渡す。部屋の彼方此方には夥しい程の血痕と、金属トレイの中に置き去りにされた人間の臓器らしきモノが目に止まる。

 自分達が連れて来られ、そして今迷い込んでいるこの施設は一体何なのだろうかと疑問に思い続ける新世代型の二次元人たち。

 そんな殺伐とした現状の中、メタルバードは徐に手術台とその付近を探ってみる。

(血がこびり付いた手術台……そして手術用だけでなく工業用の加工器具、それに人体の臓器…………これは)

 探りを入れるメタルバードは自然と険しい面持ちを浮かべた。

 手術台の夥しい出血の跡。そして備えられている手術用の器具に混じった溶接機や丸ノコなどの工業用機材。メタルバードは明らかにこの場所で人体を使った何かが行われていた事を確信する。

 更に好奇心で辺りの惨状の中を自分の目で探り始める新世代の面々を目にして、ジュピターキッドが彼等に注意する。

「あ、コラコラ。迂闊に辺りの物に触れないでッ。危険な物だったらどうするんだ?」

 ジュピターキッドは急いで辺りの物を物色しようとしていた新世代の子供らに注意を呼び掛けた。

 

 と。各々、聖龍隊と赤塚組を始めとする面々が周辺を探索していると赤塚組の山崎貴史が何かを見つけた。

「ねぇ……これ」

 貴史は見つけた物を付近の仲間に差し出した。

 それは一枚のDVDディスクであった。更のそのケースには〔被験体 処置記録〕とラベルが貼られていた。

「これって……?」

 唖然とした表情で赤塚組の海野なるがディスクを見詰める。

 と、その時。今度は別所で探索を行っていたリナリー・リーが総長メタルバードを呼び付けた。

「総長! 此方に……」

 リナリーに呼ばれメタルバードは即座に彼女の許へ駆け寄る。そしてリナリーが探索を行っていた場所を自身も目を通してみる。其処には研究資料なのか多数のファイルブックが保管されていた。

 更に「総長殿! ちょっと良いですか」と同じく周辺を探ってた念仏番長もメタルバードを呼び付ける。メタルバードはリナリーに続けて念仏番長の許に近寄ると、念仏番長は部屋の片隅に置かれてた投影機を指差した。

「これは……」

 メタルバードは念仏番長が見つけた投影機を念入りに観察してみると、それはDVDディスクの映像を壁に投影できる投影機であった。

 一行は早速、先ほど山崎貴史が発見したDVDを機材に挿入して、投影機で映像を壁に映写して中身を確認してみる。

 すると映像には、手術台の上で寝かされる死体にメスや溶接用バーナーで様々な処置を行われている血生臭い行為が記録されていた。

「な、何だと……!」

 映像を見たエンディミオンは余りの惨い人体への扱いに愕然とする。

 更に映像は続き、加工処理を施した後に鉄製の部品や機材を組み込んでは異質な容姿へとその姿を変貌させていく人体の様子が克明に収められていた。

「い、異常よ。こんなの……!」

 映像に収められ続けられる非現実的で残虐な情景にブルーローズは名前と同じくその顔を蒼白と化した。

 そして映像には、肉体に様々な処置を施した生きた人間が拘束され、頭部に電極が突き刺さったヘルメットを被せられている映像も映し出された。その生きた人間は、まだ中高生に見える女子であった。女子はカメラに向かって泣きながら訴えかける。

「お願い! 助けて……もうイジメなんてしない! 他人を罵るのも、欺くのもしない! だから助けて……っ!」

 泣き喚きながら必死に救いを乞う女子。だが「はは、もう人権も出生記録もない被験体(モルモット)が何を泣き喚いている。君は既に人権の無い、そう人間でないタダのモノなのだよ」と薄ら笑いながら女子に話し掛ける学者と思われる男の声も映像に記録されていた。

 そして次の瞬間「ぎゃあああああアぁぁ……ッ!!」頭部に被せられた電極付きヘルメットから高圧の電流が女子の身体に激しく流された。女子はこの世の終わりかと思わんばかりの形相を浮かべ、凄まじい電流によるショックで雄叫びのような悲鳴を上げながら電流が迸る身体から煙を上げる。そんなか弱い女子の悲痛な惨状を学者達は薄ら笑いを浮かべながら眺める。

 そう、映像には禁断の所業が延々と記録されていた。

 死体や生きた人間に機械を組み合わせて、禁断の兵器を造り続ける製造過程がこの研究室を中心に行われていた。

 腕や足、頭部などの身体に様々な武器や機械が装着され、最終的には強烈な電気ショックを与える事で殺戮のみを遂行する最終人体兵器が造られる記録映像を目にして、その場の一同は全員愕然とした。

「こんな発想、普通の人間には思いつかないわ」

「死体と武器を組み合わせて、<武器人間>を作るなんて……」

 人体を改造して造り出されて行く武器人間の製造過程を目の当たりにして、聖龍隊のシャナとアリババは蒼然となる。

 更に映像には、死体や生きた被験体を改造して強烈な電流を与えては武器人間を造り出す科学者までも映っていた。

「マシン、ゴー マシン、ゴー……レッツ、発進!」と、手に持つ操縦機のような機械で、造り立ての武器人間をまるで玩具の様に扱う科学者。その科学者の横には、電源を入れられた丸みを帯びた形状の武器人間が言われるがままに動き出す。

「アアーーーーーーーーッ!」「もっと造るぞーー! わっはっはっは」

 処置を施した生きた人間に電気を流しては、その断末魔を上げる様を自慢げにカメラに向かって笑いながら語る科学者。

 

『………………………………』

 映像に収められてた常軌を逸失している記録が脳裏に鮮明に刻まれた一同は、余りの残忍で残酷な実験の情景に言葉をすっかり失ってしまってた。

「……狂ってやがる」

 映像を見た大将は、死体や生きた人間に改造を加え、武器人間と言う兵器を面白半分に造っていく科学者たちに狂気を感じていた。

 そんな映像に収められてた狂気染みた実験を目にした一同が愕然と失意している最中、その沈鬱な空気を裂く様に大声が響いた。

「バーンズ! ちょっと」「な、何だ!?」

 突然メタルバードを呼ぶ声に蒼然と沈黙していた一同はもちろん、メタルバード本人も思わず呼び返す。

 そしてメタルバードは自分を呼び出したウォーターフェアリーの許に駆け寄ると、彼女はメタルバードに一冊のファイルブックを見せ付けた。ウォーターフェアリーは先ほど、リナリーが見つけた無数のファイルブックに目を通していた。

「これ見て」「ん。こいつは……!」

 ウォーターフェアリーが見せるファイルブックの中身を見てメタルバードは驚愕した。

 そのファイルには、おそらくこの研究所で生み出されたであろう多くの改造された武器人間に、数多のB.O.Wが製造記録として保存されていた。

「何々? 何か載ってるの?」

 メタルバードがウォーターフェアリーと共にファイルに目を通していると、関心し出したミラールを含む他の聖龍隊や赤塚組さらには新世代型の面々も大勢押し寄せてはファイルを覗きに来た。

 だが、ファイルに記載されていた製造された多くの怪物の中には、既にその場の者が遭遇している種も記録されていた。

「ちょ、ちょっと! コイツ、最初の生物兵器騒動のとき私の前に現れた奴だよ!」

「ああ! 俺も遂さっき、コイツと闘ったぜ」

 聖龍隊のマカ・アルバーンとブラック☆スターの目に付いたのは、新世代型と合流する前に施設内で遭遇した包帯男についての記録であった。

「お、俺たちもさっき、コイツとばったり遭遇した! 間違いない、トンカラトンだ」「おお、俺もこの目で見たぜ」

 と赤塚大作とジェイクの二人も遭遇していた包帯男について語る。

 確かにファイルに記載された記録には、その包帯塗れの怪人の名称が「トンカラトン」と記されており、更に目撃者の証言どおり手には日本刀を所持している姿がファイルの写真に納められていた。更にトンカラトンについての生体記録によると、一部のトンカラトンのみが従来の通り遭遇した人物に「トンカラトンと言え」と言い、相手がその通りにすると何も危害を加えずに立ち去るが、大半のトンカラトンは本来のB.O.Wと同じで異常なほどの凶暴性を秘めていては出会った人物を見境無しに斬りつけると言うのだ。

 更にメタルバードがファイルをパラパラとページをめくって行くと突然、今度は梅枝ナオミが叫んだ。

「あっ! この女性の……さっき私が倒した敵よ!」

 ナオミが指した敵とは、赤い服と長くサラサラの髪をした長身の女性の姿で、眼窩(がんか)に目が無い俊敏な動きをする<アクロバティックサラサラ>という女性姿の敵。

 聖龍隊や赤塚組が目撃した異形の敵以外にも、その他多くの研究施設で生み出された異形の存在がファイルに記録されていた。

 メリーさん/ひきこさん/姦姦蛇螺(かんかんだら)/八尺様/テケテケ……折りしも、此処で製造された異形の存在の多くは日本で伝わる都市伝説に登場するモノばかりであった。

「おいおい……マジかよ」

「全部、ネットとかでも話題をさらってるお化けじゃねェか」

 ファイルに記載されていた異形の存在を目にして、メタルバードと大将は驚愕する。

 

 その時、ジュピターキッドが何かに気付き皆に神妙な面持ちで語り始めた。

「ね、ねぇ……みんな」

「……?」

「……確か、此処の研究施設に連れて来られたのって新世代型の人達を除けば、殆どが悪役認定(ヒールにんてい)された犯罪者や異常者だったよね」

「あ、ああ……大将たちが見つけた被験体リストに記載されてた名前を、さっき俺が確認してみたら全員が異常者として認定されている二次元人ばかりだったからな」

 ジュピターキッドの問いにメタルバードが唖然とした表情で答えると、ジュピターキッドは深刻な面持ちで語り出した。

「そう、此処に連行されてきたのは政府が認定した異常者ばかり。つまりは……」

 その時、ジュピターキッドの話を聞いて彼の深刻な顔を見ていたセーラープルートが事実に気付いた。

「そ、それではつまり……!」

「ああ、この研究施設……少なくとも政府または国家機関などの組織が絡んでいるのは間違いない。つまり此処は」

 キッドの発言に、メタルバードが核心を衝いた。

「つまり……此処は政府が、最悪でも三次元政府が黙認していた実験施設か!」

「…………」

 メタルバードの認識にジュピターキッドは重く険しい面持ちで無言で頷いた。

 そう、一行が迷い込んだ地下の研究施設。其処は……政府の極秘実験所であった。

「狂ってる」彼等がそう感じ、そして足を踏み入れたのは……狂気の世界。非現実的で残虐な実験が一昼夜とわず行われ続けていた日陰の下の世界だった。

 

 

 

 

[造られる脅威]

 

 生きた被験者や死体に処置を施し、武器や機械と組み合わせたりする実験を行っていたであろう処置室で、実験の様子を克明に記録していた映像を目の当たりにした一行。

 更に、研究施設で造り出された幾多の日本の都市伝説に登場する怪人や怪物などを詳細に記した記録ファイル。

 俄かには信じ難い鬼畜な実験の数々と、その実験を続けて生み出された異形の存在を知って愕然となる一同。そんな一同にメタルバードは「この場に留まるのは危険だ。先に進もう」と気落ちしている面々を後押しする様に一同を先へと進ませる。

 

 そして研究所処置室を出た一行は、その先の道幅の広い通路を突き進み先を行く。そんな中、メタルバードは先ほどの処置室で見つけたファイルを未だに所持してはそれを開いて黙々と中身に目を通していた。

「ふむふむ……成程な」

 ファイルに記載されていたレポートを、集団の先頭を進みながら黙読していくメタルバードに、横で銃を構える大将が問い掛ける。

「バーンズ、何か書いてあんのか?」

 するとメタルバードは険しい顔で大将に話し返した。

「ああ、それがこの研究施設で造られた生物兵器の大半なんだが……その殆どが日本の都市伝説に登場する輩をモチーフに造られているみたいなんだ」

「ああ、俺も目撃したトンカラトンも含めて、日本に伝わる都市伝説に登場する奴ばかりなのか」

「そうらしい……なんか此処で研究をしていた学者が、日本に伝わる奇怪な都市伝説に魅了されたのか有名なのをそのまま生物兵器に応用したみたいだ」

 大将に語り合うメタルバード。すると彼が読んでいたファイルが途中から血で汚れている為、上手く読み取れなくなっていた。

「クソ、血がこびり付いて何て書いてあんのか読めねェぜ。ええっと……」

 と。メタルバードが目を凝らして血で塗り潰れてしまってる箇所を読み解こうとしていると、彼の後方でメタルバードや大将達の話を耳にしていた新世代の一人 斉木楠雄が声を掛けて来た。

「それ、読めないんですか?」「うわっ。な、なんだ斉木か」

 突然真後ろから声を掛けてきた斉木に意表を衝かれるメタルバード。そんな彼に斉木は再度訊ね掛ける。

「その血で見えなくなっている箇所の文字を読みたいんですか?」

「あ、ああ……なんて書いてあんのか気になって」すると斉木は「ちょっと貸してくれませんか」とメタルバードにファイルブックの受託を要求する。メタルバードは斉木に「ど、どうするんだよ」と訊ねると、斉木はファイルを受け取りながら真顔で答えた。

「なに、ちょっと試しに血で塗り潰れた部分を念視で読めないかと思いましてね」「ね、念視!? そっか、その手があったか」斉木の思案にメタルバードは心の底から納得する。

 そして斉木は血塗れのファイルに手を差し当て、文字が潰れてしまっている箇所を中心に意識を集中させ念視を開始する。が、斉木は念視を行いながら傍らのメタルバードに話し掛けた。

「でもメタルバード、貴方も超能力(エスパー)なんですよね。自力で文字を読む事はできなかったんですか?」

 メタルバードに自身の超能力で念視を行い、血で塗り潰れた箇所を自力で読み解く事はできなかったのかと訊ねる斉木。これに対しメタルバードは平然と答え返した。

「ああ、オレ、超能力(エスパー)超能力(エスパー)でも、テレパシーしか持ってないんだ。お前さんの様に複数の超能力を持ち合わせはいないんだよ」

 自身の超能力(エスパー)にはテレパシーしかない事を平然と答えるメタルバードに対し、斉木は「ふぅん」と軽く頷くように同意するだけであった。

 そして斉木は遂に、血で汚れ潰れてしまっていたファイルの文字を念視で読み解き終わった。

「ふむふむ、なるほど……どうやら、このページに書かれているのは<赤マント>という生体兵器についてのようですね」

「なにっ、赤マント?」

「はい。この赤マント、どうやら肉体を極限まで強化した兵器であると記されてはいますが」

 斉木が読み解いた赤マントというフレーズに衝撃を受けるメタルバード。そんな彼の真情を察してか斉木がメタルバードに訊ねる。

「知ってるんですか? 赤マントって一体……」

 この斉木の言葉を聞いてメタルバードは唖然とした顔付きで語り始めた。

「なんだ、お前赤マントって知らねェのかい? ……まあ、今の子供達にとっちゃ知らなくても当然か。赤マントってのは、その名の通り赤いマントを羽織った怪人の事で、子供をさらっては暴行を加えた上で虐殺するんだ。誘拐の対象となるのは少女のみとか、男女問わず誘拐して犯行を繰り返すとまで色々と噂のある都市伝説さ。一時期、余りにも全国的な規模で噂が広まったから、当時は警察が総力を挙げて取り締まる事態にまで陥った事もあったんだ」

「い、今で言う快楽殺人鬼みたいな存在だったんですか?」

「いや、その素性は今もって不明のままだ。ただ赤マントは誘拐する直前、さらっていく子供に「赤が好き? 青が好き?」と、どちらの色が好みが訊ねるんだ。そして赤が好きと言った子供は全身を切り付けられ血で真っ赤に染められて殺され、青が好きと答えた子は全身の血を抜き取られて真っ青な身体にされて殺されるらしい」

「………………!」

 メタルバードが語ってくれた怪人赤マントについての事柄に、さすがの斉木も普段の冷静で落ち着いた面持ちから気の張り詰めた表情へと一変する。

 

 と。メタルバードと斉木楠雄の二人が話し合っている最中、聖龍隊参謀総長のジュピターキッドとHEADのコレクターズの三人が各自の通信機の調子を見ていた。

「……ダメだ。一向に繋がらなくなっちゃってる」

「本部との通信を回復させたいけど、どうしたら良いのかしら」

 最初のノイズ発生から調子の悪くなった通信状況をどうにか回復させたいと奮闘するジュピターキッドとコレクターハルナらの面々。

 彼等、通信機の不調を気に掛ける面々と同様、他の聖龍HEADも一刻も早い通信状況の回復を願う。

 そんな彼等HEADの面々に、背後から突然新世代型の犬牟田宝火(いぬむたほうか)が得意げに眼鏡を掛け直しながら話し掛けてきた。

「ふふふ、どうやらお困りのようですね。聖龍HEADの皆様方」「アアッ?」

 得意げに話し掛けてきた犬牟田宝火(いぬむたほうか)の言動の少しばかりの苛立ちを感じたメタルバードが眉間にしわを寄せた顔を振り向かせる。そして、その得意げに話し掛けてきた犬牟田宝火(いぬむたほうか)は聖龍HEADに自身が肌身離さず所持していたノートパソコンの画面を見せるように向ける。

 聖龍HEADは犬牟田宝火(いぬむたほうか)が晒したPCの画面に目を向けると、それには建物の構造を模した図面らしき画像が映し出されていた。

「こ、これは」

 セーラーマーズが問うと、犬牟田宝火(いぬむたほうか)は得意げに話した。

「ふふっ、これはですね。此処までの道中、ちょっとした時間の合間を縫ってこの施設のコンピューターにハッキングした際に入手した、研究施設の見取り図ですよ」

 これを聞いて、聖龍HEADは驚嘆の声を上げた。

『オオッ』

「でかした! これで、この研究施設での進行がより一層捗るぜ!」

 歓喜に沸く聖龍HEADとメタルバード。そんな彼等の歓喜に沸く姿を見て、犬牟田宝火(いぬむたほうか)を従える鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)がメタルバードたち聖龍HEADの面々に丁寧に話し掛ける。

「どうですか。犬牟田の素晴らしき手腕は。彼のコンピューターによる情報管理や分析力など、我々も大いに助かっているのです」

「そ、そうか! いや、ホントに助かった。感謝する」

 キングエンディミオンが礼を述べると、鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)は軽くお辞儀をしながら丁寧な口調で言葉を返した。

「いえいえ、此方こそ。世界のパワーバランスを保つ立場でありながら、同時に私たち二次元人の人権と尊厳を日夜お守りして下さっている聖龍隊の方々に少しでも御力添えが出来るのであれば、この鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)を始めとする本能字学園の四天王共々、実に光栄であります」

 自身の配下である犬牟田宝火(いぬむたほうか)の成果に対して、自分たち本能字学園の四天王らが世界秩序を保っている聖龍隊の力添えになれる事を光栄に思うと主張する鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)

 そんな鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の称賛の声に、犬牟田宝火(いぬむたほうか)本人は誇らしげに顔を上げてみせる。

「いえいえ皐月様、これぐらいの事……動作も無い事ですよ、はい」

 犬牟田宝火(いぬむたほうか)。彼は元腕利きのハッカー。彼にとっては、コンピューターにハッキングして入手したい情報のみを手に入れる事ぐらい動作も無い簡単な作業なのである。

 だが、そんな犬牟田宝火(いぬむたほうか)を称賛した上に聖龍HEADに対しての鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の言動に、纏流子は目を細めながら呆然とした口振りで皐月に話し掛ける。

「お、お前……ヤケに聖龍隊に関しちゃ腰が低いな。いつものお高い性分からは到底思えないぜ」

 と。そんな鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の言動に呆然と感じる纏流子に、皐月本人は堂々とした振る舞いで言い放った。

「何を言う! 纏流子、貴様は我々いまの二次元人の実情を理解しているのか! 我々、二次元人の中には時おりヒールと呼ばれる異常者が発生する事態が度々あるのだぞ! 故に、我々二次元人の創造元である三次元側は、我々全ての二次元人に対し恐怖と異形の念を持ってしまってる! そんな折に、かの小田原修司が我々二次元人を保護するための悪役排除法(ヒールはいじょほう)で危険極まりない、異常で悪質な二次元人のみを討ち滅ぼし、同時に健全な二次元人を保護する法案を設立したのだ。それ以降、聖龍隊がその悪役排除法(ヒールはいじょほう)に則って多くの凶悪で危険な二次元人のみを討伐し、一般の二次元人を護ってきてくれているのだぞ! 貴様こそ、そんな素晴らしい働きを常日頃から行っている聖龍隊に関して敬意を示そうとしないのか!」

「べ、別に……私だって聖龍隊の人達は、ホントに凄いなって日頃から思ってるさ。聖龍隊が居なかったら、世界情勢は著しく狂っている以前に、自伝本にも載っていたとおり、この二次元界も三次元界も崩壊して無くなっていたんだからな」

 纏流子が語る自伝本に記載されていた次元崩壊とは、かの小田原修司が執筆した自身の自伝本である<聖龍伝説>その最終章である<気高き二次元人達>で書かれている次元崩壊に関する戦いの事である。

 そんな流子と皐月が騒いでいる最中、いつの間にかに施設のコンピューターにハッキングした犬牟田宝火(いぬむたほうか)に同じ新世代型で自身の学校では情報処理部というコンピューターを扱うクラブを活動している野々原(ののはら)ゆずこと櫟井唯(いちいゆい)の二人が目を輝かせながら犬牟田に話し掛けてきた。

「す、スッゴ~~い! まさかパソコン一台だけで、こんな大きな施設のコンピューターにハッキングできちゃうなんて」

「プロね! あなた本物のプロね!!」

 目を輝かせて言い寄る野々原(ののはら)ゆずこに興奮しがちな櫟井唯(いちいゆい)からの言葉攻めに、当の犬牟田宝火(いぬむたほうか)は動じる事無く冷静に彼女達の言動を受け止め、同時に落ち着いた面持ちで誇らしげにしていた。

 

 一方の聖龍隊の方は、その犬牟田宝火(いぬむたほうか)がハッキングで入手してくれた施設内の見取り図を事細かく目に通していた。

「ふむ、今までのオレたちの進んできた進路から察するに、今現在のオレ達の場所は……」

 メタルバードは自分たちが通ってきた道順を目で追いながら、現在の自分達の居場所を特定する。

 そしてHEADは現在地から、これから自分たちが進むべき道順を探っていく。

「む……メタルバード、これからどうする?」「そうだな」

 HEADのキング・エンディミオンから指示を促されるメタルバード。そしてメタルバードは一時考えると、HEADはもちろん彼からの指示を待っていた他の聖龍隊の面々に告げた。

「……よし! まずは本部との通信の回復を優先しよう。オレ達はこれから、施設の中央ブロックその最下層に配置されている施設のメインコンピュータールームまで進行し、其処のコンピューターにコレクターズを始めとする電子に詳しい連中が<強制割込み通信プログラム>を発信させて、施設のコンピューターを通して本部との通信を良好にするんだ!」

 総長メタルバードの的確な指示と判断力、そして決断力に他の聖龍隊の面々は揃って力強く返答し頷くのであった。

 

 

 

[異動]

 

 一行は犬牟田宝火(いぬむたほうか)が持ち前のハッキングで入手した研究施設の見取り図を見ながら、中央ブロックその最下層に配置されているメインコンピュータールームへと進行する。

 その道中、度々現れる異形の怪物やゾンビと応戦しながらも、苦闘の末に彼等はようやく目的のメインコンピュータールームへと辿り着いた。

 

 聖龍隊は早速、HEADでコンピューターに詳しいコレクターズを中心に研究施設のメインコンピューターへのハッキング及び、自分たちの通信機器の傍受レベルを強めるための<強制割込み通信プログラム>を施設のコンピューターに注入して、施設のコンピューターを通して自分たちの通信機器の傍受レベルを上げて通信の回復に挑んだ。

 そして施設のコンピューターにハッキングしてプログラムを注入してから、しばらくした後。

「〔……ピッ ガガガ……〕此方、聖龍隊本部 聖龍隊本部。応答お願いします。繰り返します、応答お願いします……」

 不具合であった通信機からアニメタウンの本部からの通信が受信でき、聖龍隊に赤塚組は大いに活気盛んだ。

 そして回復した通信にメタルバードが通話し始めた。

「こちら聖龍隊総長バーンズ! 本部、本部……此方からの返答は聞こえてるか? 聞こえてるなら応答を願う、どうぞ!」

「こちら聖龍隊本部。はい総長、其方からの通話もしっかりと傍受できています! 早速ですが、其方の現在の状況は?」

「ああ、此方は既に誘拐拉致されていた新世代型二次元人を全員保護した。それで現在、研究施設の最下層に位置する施設のメインコンピュータールームにてハッキングして強制割込みプログラムを発動させた。それでようやく通信が回復したんだが……」

「それは良かったです。本部でも、現場の隊士からの応答が無かったので対応に追われていたんです。それから、他の聖龍隊の方々や赤塚組の皆様方は無事でしょうか?」

「ああ、全員無事だ。先ほど全員が合流して今一緒に行動している所だ。オレ達はこれから、施設内で入手した内部の見取り図をもとに地上に向けて脱出を図る。以上だ」

「了解しました、では何かありましたら再度通信で連絡をお願いします。此方からも出来うる限りの援助を行っていきますので。あ、それともう一つ……」

「何だ?」

「じ、実は……先ほど三次元政府の方からの通達がありまして、総長達が保護に向かった新世代型について色々と仰られてて……」

「…………」

「三次元政府からの御通達で、総長達が保護に向かった新世代型に何らかの不具合……つまりは異常者(ヒール)化してないかと訊ねて来られまして、その……」

「……政府の方にはオレからの直接の伝言として伝えてくれ。新世代型の二次元人は、今のところ異常者(ヒール)にはなってないと、な」

「……解りました、此方から政府にお伝えしておきます。では、お気をつけて」

 通信士との通話を終えて、メタルバードも通信を切った。

 と。通話を終えたメタルバードの所に、彼と通信士の通話が耳に入ってしまった新世代型の面々が不安に満ちた顔で声を掛けてきた。

「ば、バーンズさん……」「! お、お前等……」

 不安に満ちた面持ちを浮かべる新世代の琴浦春香の顔を見て、メタルバードは一驚する。

 そして悲痛な面持ちの琴浦春香はメタルバードに言葉を掛ける。

「わ、私たちの事、その……」「…………」

 琴浦春香を始めとする新世代型の不安に満ちた面差しを見て、メタルバードは険しい面持ちで向き合っていた。

 そして「……フッ、安心しろ。どんなに三次元政府が、お前等を危険視していようと俺達が付いている。もっと顔を上げて前を向いてろ」と新世代型の二次元人たちに面と向かって話すメタルバードの言葉に、新世代型たちは心に少しばかりの安堵を感じた。

 と。そんな不安がる新世代型に混じって、同じ新世代型である蛇崩乃音(じゃくずれののん)が頭後ろで手を組みながら思わず発した。

「だけどさーー、いっくら前の新世代型が三次元人たちに反乱起こしたからって、今の新世代型である私らまでに色々とやっかまないで欲しいよねーー」

 そんな愚痴を思いっきり零す蛇崩乃音(じゃくずれののん)の台詞に、彼女を従え同時に幼馴染でもある鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が真顔で話し掛ける。

「蛇崩、お前の気持ちは解らなくもないが、今の我々新世代型への多少の懸念は致し方ない。元の発端である先代の新世代型及びその筆頭であったルミネによる当政権への反乱で、我々今の新世代型までも危険視されているのが現状なのだ。まだ生存を許されているだけでも良いほうだ」

「だ、だけど皐月ちゃん……いくら何でも、前の新世代型の反乱だけで今の俺たち新世代までも危険視するなんて異常だとは思いませんか?」

「まあ、そうだがな。だが、だからと言って我々に出来る事など……」

 蛇崩乃音(じゃくずれののん)の気持ちを汲み取り、同時に今の自分たち新世代型への政府の扱いは仕方ないと語る鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)。だが、そんな彼女に自分たち新世代型への警戒余りにも異常すぎると伝える猿投山渦(さなげやまうず)の言葉に、皐月は顔を渋らせる。

 すると、新世代型は口々に自分たちに懸けられている三次元側の対応に不満の声を上げていく。

「そうだよな。何で俺たちまでも危険な目で見られなきゃいけないんだ?」

「私達は、至って普通の二次元人で危なくも何ともないわよ!」

 不満そうに話す瀬名アラタと彩瀬なる。二人に続き、真田幸介も鬱憤を吐き散らす。

「そもそも、前の新世代型が起こした反乱って何なんだ!? 何だか知らねェが、情報規制とかで詳しい事は何も一般人には知らされていねェって言うのによ!」

 そんな新世代型達の不満を間近で耳にした非新世代型の黒鳥千代子ことチョコが聖龍隊に不安げな表情で訊ねてみる。

「せ、聖龍隊……一体、前の新世代型の二次元人たちは何をして三次元人から敵視されたの? そもそも、なぜ彼等が私たちの創造元である三次元人に敵意を向けちゃったの……?」

 チョコに続き、ギュービッドや桃花の二人も聖龍隊に詰め寄る。

「そうだぜ。確か今年の2月だったよな、前の新世代型の連中が反乱を起こしたのは。アタイらもテレビで一連の暴動ぐらいは目にして知ってはいるけど、そもそも何でまた当時の新世代型は反乱なんてバカげた事を……!」

「しかも、その反乱以降に新しく生み出された琴浦さんたち今の新世代型の人達にまで只ならない危機感を抱いては、聖龍隊にその絶対監視を命じている始末だし……琴浦さんや御舟さん達が余りにも可哀そうだわ!」

 そして最後にチョコが悲痛な面持ちで「なんで、最初に生み出された新世代型は反乱なんて起こしたんですか? そして一体、どんな反乱を彼等は起こそうと……」と必死に訴えかける。するとそんな彼女の言動を切り捨てるように、ジュピターキッドが険しい面立ちと鋭い目付きで反論を投げ掛けるチョコ達を睨む様に一喝した。

「……余り、深入りしない方がいいよ」「!」

 普段は大人しく穏やかな風貌のキッドが突然その顔付きを著しく険しくさせて放つ一言に、チョコ達は愕然となった。

 更にジュピターキッドはその表情のまま、チョコ達を含めたその場の二次元人たちに鋭い口調で言う。

「世の中には、知らなくても良い事が……知らない方が幸せな事だってあるんだよ」

 そう言うとジュピターキッドはチョコ達に背を向けては、再び歩を進めるのであった。

 チョコたち三人と新世代型の一同は、キッドが言い放った一言に衝撃を受けてしばらく動けなかった。

 

 2013年 2月に勃発した新世代型二次元人の反乱。これに三次元政府は未だに危機感を抱き、反乱の後に生み出された新世代型に対しても多大な警戒心を募らせ、彼等を異系の存在として白眼視している。

 だが、その反乱の詳しい事柄などは現在の二次元人/三次元人全てに詳細を知らされてはいない。いや、知られてはいけないのである。

 例の、あの新世代型についての事実は当時の反乱鎮圧に動いた聖龍隊の一部の隊士と三次元政府しか知る由は無かった。

 

 新世代型の自分たちに対しての応対に関しての鬱憤が晴れる事が無いまま、一行は脱出に向けて歩を進ませるしかなかったのだった。

 

 

 

 

[異常化]

 

 聖龍隊と赤塚組、そしてジェイクを筆頭とした一行は、施設のコンピューターへのハッキングにより本部との通信を回復させる事に成功する。 そして本部と連絡を取り次げた一行は、ハッキングプログラムを作動させた事でいる意味を成し得なくなった施設のメインコンピュータールームを後にする。

 だが、この先どこに向かうのかを疑問に思った大将がメタルバードに訊ねた。

「おい、バーンズ。これからどっちに行く?」

「うむ。まずはメインコンピューターを突き抜けた先の通路の案内表示に収容室と書かれたテンプレートがあった。念のため、其処も見に行った方がいいだろ」

「そうだな、もしかすっと新世代型以外にも収容されている奴で生存している輩がいるかもしれねェしな。行ってみっか」

 大将とメタルバードは皆を引き連れて、メインコンピューターを突き抜けた先に在るという収容室の名目のエリアに向かった。

 

 道中、様々な敵に相対しながらも果敢に反撃に応じては異系の怪物を撃退していく。

 そんな聖龍隊に赤塚組と同様に、ジェイク・ミューラーはもちろん戦闘が行える纏流子(まといりゅうこ)/鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)/蛇崩乃音(じゃくずれののん)/蟇郡苛(がまごおりいら)/猿投山渦(さなげやまうず)/犬牟田宝火(いぬむたほうか)/栗山未来(くりやまみらい)/名瀬美月(なせみつき)/名瀬博臣(なせひろおみ)/斉木楠雄(さいきくすお)ら戦闘型新世代型も交えて迫り来るゾンビやハンターと言ったB.O.Wを迎え撃つ。

 そしてようやく一行は収容室と呼ばれる部屋の扉前まで辿り着いた。

「こ、此処だな……」「はてさて、何が出るか蛇が出るか……」

 扉の前まで辿り着いた大将とメタルバードは、恐る恐るゆっくりとドアノブに手を掛けて、二人同時に扉を開けた。

 扉を開けた瞬間、メタルバードと大将を先頭とした者達は一斉に扉向こうへと攻撃の態勢を身構える。

 だが扉の奥、其処は殺伐とした一見無人と思われる鉄格子ばかりが目立つ空間であった。

「此処は何なんだ?」

 扉を潜り抜け、入室しては辺りを見回すキング・エンディミオンは内部の至る所の鉄格子で閉ざされた小部屋に目を向ける。鉄格子の小部屋の中は破き捨てられた新聞紙か何かの紙切れが散らかり、小部屋の中には其処にいた人物が使っていたのか小皿などの食器類も散乱していた。だが何より目を引いたのは、格子内はもちろん外部の至る箇所に飛散している血痕であった。

 聖龍隊と赤塚組、そしてジェイクはこの鉄格子の小部屋で埋め尽くされた空間もまたバイオハザードによって血の惨劇が起きたのだと安易に想像できた。

 と。皆がそれぞれ荒れ果てた鉄格子の小部屋を見て回っている、その時。

「ウアア……ッ」

 突如、鉄格子の小部屋から一体のゾンビらしい人物が出てきては、たまたま前を通り過ぎようとしていた【ダンボール戦機ウォーズ】の女子達に襲い掛かった。

『きゃああっ!』絹を裂くような悲鳴を上げる波野リンコや篠目アカネ、キャサリン・ルースら少女達。

 そんな悲鳴を上げる少女達の前に苛烈な勢いで鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が縛斬を構えて敵と対峙する。

「このッ」

 威勢を挙げて果敢に応戦する皐月に、救われた女子の一人 金箱スズネが唖然とした面持ちでありながらも皐月に礼を述べる。

 「あ、あの……ありがとう」

 するとスズネの言葉に当の皐月は縛斬を振るいながら礼を述べた金箱スズネに厳つい顔で言葉を返した。

「この程度の無作法者! 本能字学園だけでなく行く行くは全学校と地区を制覇するであろう鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の名に懸けて打ち倒して見せるのみ! 礼には及ばん!!」

 男顔負けの言い草で話し返しながら激烈に応戦を繰り広げる鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の姿に、助けられた女子の中には思わず見惚れてしまう女子までも現れ始めた。

 

 と、その時。皐月が最初に自分等の前に飛び出てきた敵を縛斬で一刀両断にした上で撃退すると、其処に続け様に複数の敵が物陰から出現してきた。

「ウアアーーッ!」「ウオオォーー……」

 不気味な唸り声を上げながら走りかかって来る敵の群れ。しかし、その敵の顔色はどう見ても血色の良好な普通の人間の肌色にしか見えなかった。

「こ、こいつ等……ゾンビじゃねェのか!?」

 敵を前に戸惑うジェイク。するとその時、メタルバードの通信機に聖龍隊本部より連絡が入った。「こ、此方メタルバード!」メタルバードは通信に応対すると、通信機から本部に滞在してる通信士から言伝が伝えられた。

「総長! 先ほど此方からでも、其方の研究施設内の情報を徹底して調べていたんですが……今、総長達がいらっしゃる収容室。其処は世界各地から集められた異常者(ヒール)を収容する為の場所です!」

「な、何だって!」

「急いで的確な対処を……ゾンビ化するウィルスに感染してるしてないに関わらず、其処に収容されている異常者(ヒール)達は皆、異常すぎる犯罪者や狂人ばかりです!」

「わ、解った! 此方も現在、応戦中! また後で連絡するッ」

 メタルバードは本部との通信を切ると、再び自分たちに迫ってくる無数の敵たち相手に応戦して行った。

 俊敏な身のこなしで鉄骨を振り回す敵の攻撃を回避してみせるナースエンジェル。己の得物であるフルーレや剣で応戦していくキューティーハニーやセーラーウラヌス。そんな彼女達に負けじと、同じHEADのメタルバードやジュピターキッドを始めとする男性隊士も果敢に攻め立てていく。

 そんな聖龍隊に続けと、赤塚組の頭領である大将や幹部の面々も小銃を手に苛烈な連射を放っていく。更にジェイクも拳銃を手に、自分たちに迫ってくる敵の頭部に銃弾を直撃させていく。

 交戦して行く聖龍隊や赤塚組に雑じって、纏流子や鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)を始めとする本能字四天王に栗山未来や名瀬兄妹、そして斉木楠雄ら戦闘に参加する新世代型の面々。

 だがしかし、そんな中みね討ちで迫り来る異常者(ヒール)に攻撃していく纏流子だったが、相手の異常者(ヒール)は一向に息が切れる様子も見せずに流子に襲い掛かる。苦戦する流子は咄嗟に片太刀バサミを振り上げると、対峙していた異常者(ヒール)の右腕をバッサリと斬り落としてしまう。

 流子の武器によって斬り落とされた右腕は振り回していた鉄パイプを握ったまま床に落ちる。流子は、いくら何でもゾンビでない相手の右腕を斬り落としてしまった事に多少の罪悪感を感じながら、血を噴き出しながら床に落ちる右腕にド肝を抜かれる。

 しかし……「ウヒヒヒヒ……」と、右腕を切断された異常者(ヒール)は苦痛を感じる様子もなく、ただ不気味に微笑んでいた。片腕を斬り落とされても平然と、それも笑みを浮かべながら立ち尽くす異常者(ヒール)の様子に愕然と衝撃を受ける流子たち新世代型たち。

 そして右腕を失いその断面から出血する異常者(ヒール)は視点の合ってない眼つきで不気味に笑んでいると、次の瞬間その異常者(ヒール)は目の前の流子目掛けて飛び掛かってきた。

「ウガァッ!」「うわッ!」

 いきなり飛び付いては異常なまでの力で締め付けてくる異常者(ヒール)の奇襲に、流子は一驚しつつも何とかして振り解こうともがく。しかし異常者(ヒール)は一向に流子から離れず、強烈な力で締め付けながら彼女を苦しめ続ける。

 突然飛び掛っては抱き付き、強烈な締め付けで苦しめる異常者(ヒール)の猛攻に、もがき苦しみ続ける流子。と、その時だった。

 一発の銃声が響いたと思えば、弾丸が流子を締め付けていた異常者(ヒール)の頭部に命中した。すると異常者(ヒール)は力が抜けたかのように流子からずり落ちては動かなくなった。

「……………………」

 弾丸を頭部に受けて絶命した異常者(ヒール)の亡骸を前に、流子は愕然と言葉を失くしてしまってた。

 同じ頃、その他の多勢で襲い掛かってくる異常者(ヒール)に対し、聖龍隊は躊躇する事無く平然と、そして容赦なく処分の名目で殺害して行った。

 正気でない瞳の異常者(ヒール)が襲ってくる中、聖龍隊は己の持てる力を全て発揮しては迫り来る異常者(ヒール)に対して応戦しては処分して行く。強烈な光線を浴びせて一気に蒸発させたり、切味抜群の刃物で斬り付けたり、と様々な手法で次々に異常者(ヒール)を薙ぎ倒していく聖龍隊。

 すると、そんな聖龍隊の様子を見ながら赤塚組の頭領 大将が発砲してない銃器で迫ってくる異常者(ヒール)を薙ぎ払いながら訊ねてきた。

「な、なあバーンズ! 俺らも、一応は攻撃しても良いんだよな?」これに聖龍隊総長メタルバードは異常者(ヒール)と抗戦しながら答えた。「ああ、構わねえ! こいつ等は全員、正気を失った異常者(ヒール)だ! 処分しても誰も文句は言わねェ!!」と大将たち赤塚組に突っぱねる。それを聞いて大将たち赤塚組の面々は、手加減していた銃器をブッ放し眼前に迫り来る異常者(ヒール)たちを次々に狙撃しては倒していった。

 そんな二組の行動に感化され、ジェイクまでも正気を失くしている異常者(ヒール)に向かって発砲していく。

 そうして場には次々と異常者(ヒール)の亡骸が横たわり、時には血の海が新世代型の目の前にできるのであった。新世代型は戦闘で至る所に飛散血痕が飛び散る現状を前にして、血で紅く染まっていく惨状と真逆に、己の顔を蒼然と変えていった。

 

 

 

 そしてようやく出現してくる無数の異常者(ヒール)を一通り片付け終わった聖龍隊と赤塚組を始めとする戦闘組は一息入れてた。

 だが、そんな中で新世代型の面々は聖龍隊が倒していった異常者(ヒール)の亡骸を見詰めては、ある事に気付いた。

「あ、あの……」「ん、なんだい?」

 声を掛けてくる新世代型の瀬名アラタに息の上がっているジュピターキッドが顔を向ける。

 そしてアラタはそのままジュピターキッドに自分たちが抱いた疑問について訊ねた。

「あの……み、皆さんが倒した異常者(ヒール)。何だか、身体の一部分とかが、その……普通とは違う様に見えるんですが」

 アラタの指摘したとおり、倒された異常者(ヒール)の中には身体の一部分などが、まるで悪魔や怪物のような異系の形に変形している部分が目立っていた。それは耳が尖り黒ずんでいる者、両手がまるでゴブリンの様に緑色の肌色に鋭く尖った爪をしている者までも見受けられた。

 瀬名アラタたち新世代型に問われたジュピターキッドは息を整えてから、質問に答えた。

「ああ……君達は最近になって創り出された二次元人だから知らないんだね。これが異常者(ヒール)の……異常者(ヒール)と認定された存在の特徴だよ」

 これを聞いた新世代型は驚愕した。異常者(ヒール)の特徴の一部として挙げられたのが、なんと身体の一部が異形の姿へと変貌している事だったのだと。

「そ、そんな!」

「これが……世間から異常者(ヒール)と呼ばれる二次元人の姿……!」

 驚愕の表情を浮かべて声を上げる出雲ハルキと細野サクヤ。二人に続いて琴浦春香も問い掛けて来た。

「そ、それじゃ……異常者(ヒール)と呼ばれる人達って、一体……!」

 琴浦春香からの問い掛けに再びジュピターキッドが答えた。

「ああ、異常者(ヒール)と言われるのは……大半が精神が狂って錯乱したり、遂には精神だけでなく肉体までも変異しては理性のない怪物になってしまう現象の事なんだよ」

 すると、このジュピターキッドの発言を聞いて蛇崩乃音(じゃくずれののん)が一驚し、絶命した異常者(ヒール)の亡骸を名指ししては声を上げた。

「そ、それじゃ! ブラックリストに載っている異常者(ヒール)候補みたいな感じの二次元人も、いつかはこんなバケモノに変身しちゃう訳!?」

『!!』

 蛇崩乃音(じゃくずれののん)の発した言葉に、新世代型の中では既にブラックリスト、つまりは異常者(ヒール)認定を受ける寸前の扱いである森谷ヒヨリ/四宮小次郎/速水ヒロは内心(すこぶ)る蒼褪めた。

 だが、蛇崩乃音(じゃくずれののん)の発言に対し、聖龍隊総長のメタルバードがその場の一同に釈明した。

「それは大丈夫だ。確かに過去に何らかの過ちを犯したり、性格に少々問題のある二次元人が異常者(ヒール)認定の候補としてブラックリストに名前入りされて、凶悪犯やテロリストと同じ扱いを時おりされちまうが、その間に目立った問題を起こさない限り異常者(ヒール)とは完全に認定されないし、何よりリストに載っている二次元人で今の所はモンスター化したという報告はないから安心しろ」

 これを聞いて蛇崩乃音(じゃくずれののん)を始めとする一部の新世代型の面々は安堵し、何よりブラックリストに名前が挙がっている三人も心から安堵した。

 更にメタルバードは続けて語り明かす。

「それにな、ブラックリストに載っている連中には現役の聖龍隊士。つまりはオレたちの仲間も含まれている。そう、お前さん達も修司の自伝本呼んで少しは知っているだろうが……古参の聖龍隊メンバーで、キューティーハニーの妹に当たるミスティーハニー、ナースエンジェルに救われて改心したデューイ。更には、このマーメイドメロディーズの補佐役として時に活躍している堂本海斗の双子の兄貴ガイト率いるブラック・ラヴァーズの面々だって、過去の悪行が災いしてブラックリストに明記されちまってるんだぜ。でも、そう言った現役の聖龍隊士でブラックリスト入りの奴が怪物に変貌したり錯乱したという報告は未だにないから、そうブラックリスト入りの奴に対してやっかむな」

 メタルバードの語りに、ブラックリスト入りの二次元人に対して嫌悪感を抱いていた蛇崩乃音(じゃくずれののん)を始めとする一部の新世代型は複雑な面持ちを浮かべる。

 因みにメタルバードが語ったブラック・ラヴァーズとは、聖龍HEADの一人堂本海斗の双子の兄ガイトをリーダーとする部隊で、構成員は悪役時代の時からガイトに付き従っている旧ダーク・ラヴァーズのイズール/エリル/ユーリ/マリア/ブラック・ビューティー・シスターズのシェシェとミミ、そしてガイトと恋仲の関係である元オレンジ真珠の持ち主であるマーメイド沙羅。そして後に彼等の仲間入りとなるレディー・バット/蘭花(ランファ)/あららを加えて部隊を再構成した。因みにブラック・ラヴァーズとは、ガイトが率いていたダーク・ラヴァーズとブラック・ビューティ・シスターズの名前を組み合わせた、前総長小田原修司から与えられた部隊名である。

 

 するとその時、メタルバードらによって語られる異常者(ヒール)の実情を聞いて悲痛な心情を表に浮かべる黒鳥千代子ことチョコが訊ねた。

「ど、どうして……異常者(ヒール)は発生してしまうんですか?」

 このチョコの質問に、ジュピターキッドは顔色を険しくさせて語り明かした。

「二次元人及び思想能力の高い三次元人などの精神にしか発症しない特殊なウィルス、そして三次元人の歪んだ思想によって汚された二次元人……そんな存在が異常者(ヒール)化してしまうんだ。僕たち二次元人は所詮、三次元人の思想概念から生まれた産物。故に三次元人の悪意とか邪心にも影響を受けて、二次元人の精神が次第に侵されては遂に異常者(ヒール)と化してしまう……ま、近年の只ならない異常者(ヒール)の尋常なまでの発生率は、そんな僕たち二次元人とそれを生み出した三次元人が共存する次元世界へと変化していった。云わば、その大きなツケみたいなもんさ」

「………………」

 キッドからの説明を聞いて、チョコは心成しか更に不安の種を心中に宿す。

 と、その時。チョコと同じく話を聞いていたジェイクが血相を変えた強面で、聖龍隊に話し掛けた。

「おい、待てよ! つまり……俺たち二次元人はみんな、ウィルスに感染しなくてもバケモノに変わっちまうって事か!?」

 ジェイクの質問に、メタルバードは険しい面持ちで答える。

「……ああ、そういう事だ」『!!』

 メタルバードの発した答えに、聖龍隊と赤塚組以外の誰もが驚愕した。

 自分たちも、今目の前に横たわる異形の体つきに変貌している異常者(ヒール)に変わってしまうのではないかと新世代型たちは不安の表情を浮かべる。

 すると、そんな不安がる新世代型たちの蒼褪めてる表情を見て、ジュピターキッドが彼等に話し掛けた。

「あ、でも安心して。君たち新世代型の遺伝子構造は、今までの二次元人と異なっているから、こういった異形の体に変化するような異常者(ヒール)化現象は起きないからさ」

 ジュピターキッドに続いて、メタルバードも不安がる新世代型を安心させる為に語り出す。

「ジュニアの言うとおり。新世代型の遺伝子構造はこれまでの二次元人とは全く異なる構造で、それ故に高度な環境適応能力と対異常者(ヒール)化現象の対策として精神に異常を来たすウィルスを寄せ付けないDNAを持つ唯一無二の二次元人だ。だから怪物に変貌してしまうかもって心配は無用だぜ」

 更にメタルバードは語り続ける。

「そもそも、異常者(ヒール)化する原因の一つとして考えられるのが極度に変わる二次元界の環境だと言われている。只でさえ多くの物語が交差して数多の世界観が交わる二次元界に、在住している二次元人がその変わり行く環境に適応できない為に異常者(ヒール)に変貌してしまうとも言われてしまってる。そういう所以も相まって、新世代型の遺伝子には著しく変化する世界観に適応する遺伝子が色濃く反映されている訳なのよ」

「な、何だか……琴浦さんたち新世代の人達って、凄いんですね」

 メタルバードの話を聞いて、新世代型についての秀でた長所を知ったチョコは呆気に取られながらも感心してしまう。

 だが、メタルバードの釈明を聞いても尚、心成しか心底に不安が残る新世代型たち。特にブラックリストに名前が記載され、本来ならいつ怪物に変異しても可笑しくない存在として扱われる森谷ヒヨリ/四宮小次郎/速水ヒロの三名は内心脅えていた。

 だが、そんな脅え切ってしまってる三人の許に、大柄な巨体に片方の口元が耳まで裂けた厳つい強面の大男が歩み寄っては三人に話し掛ける。

「ガハハハ! まあ、お前さんたち安心しろッ。ブラックリストに載っているからって、そうオメオメと政府の役人に連行はされねェよッ!」

『…………』

 大男の風貌と威圧に圧倒され言葉を失う三人に、大男は更に驚愕の事実を伝えた。

「かく言う俺様も……実を言うとブラックリストに名前が載ってんだよ」『!!』

 大男の発言に三人は愕然とした。大男の名はゼブラ。スター・ルーキーズの一員でもある【トリコ】のキャラクターである彼もまたブラックリストに名前が記載されてしまっているのだ。

 ゼブラの発言に驚愕してしまう三人に続き、同じくゼブラの発言に衝撃を受けた他の新世代型の面々が、ゼブラと同じ【トリコ】のキャラクターであるトリコ達に言い寄った。

「ほ、ホントなんスか? ゼブラがブラックリストに記載されてしまってるって……!」

 真鍋義久が問い詰めると、トリコが真顔で渋々と答えた。

「ああ、ゼブラも過去に犯した罪状が原因でブラックリストにその名が記されちまっている」

「い、一体……ゼブラさんは何を?」

 同じく新世代型の琴浦春香が訊ねると、続けてトリコが訳を話した。

「うむ。俺たちの世界<グルメ界>でゼブラは昔、危険生物を大量に殺し尽くした過去があるんだ。非力な一般人にとっては、大切な家族や故郷を破壊し尽くす危険生物を殺してくれたゼブラを英雄として崇めてはいるが、その根絶やしにした危険生物は同時に絶滅危惧種にも認定されていた生物で、ゼブラは多くの数少ない危険で絶滅寸前の生命種を根絶した罪として刑務所に投獄されていた時期もあるんだよ。こっちの世界でも絶滅危惧種に認定された生物への危害が罪であるように、俺達の世界でも大罪に当たっちまう。ま、そんな経緯でゼブラはブラックリストに載っちまっている訳なのさ」

「き、危険な種を絶滅させて……一部の人達からは英雄と称えられ、同時に一つの種を滅ぼした大罪も犯したからって……む、無茶苦茶すぎる」

 トリコからゼブラのブラックリスト入りについての詳細を聞いた真鍋義久を始めとする新世代型は余りの実情に唖然としてしまう。

 更に、トリコに続いてルーキーズの総部隊長ミラールが新世代型に語った。

「ゼブラだけじゃないわよ。ニュー・スターズの卑怯番長を始め、ゼブラ以外のルーキーズメンバーでは暴力団認定されている【ぬらりひょんの孫】組に【家庭教師ヒットマンREBORN】組。そして門脇将人と従者ミヤビの二人も過去の罪状からブラックリストに名前が載って、未だに国連を始めとする政府機関から睨まれてるのよ」

 

 一度ブラックリストに名前が載ってしまえば、死ぬまで政府や機関から後ろ指を指されては白眼視される者たち。

 新世代型は、そんなブラックリスト通称BLに載ってしまった哀れな二次元人についての現実を知った。

 

 

 

 

[ツインズ]

 

 聖龍隊から異常者(ヒール)についての実情と現状を聞いた新世代型たちは、同時に自分たち新世代型の遺伝子構造は本来の二次元人と異なり通常以上の環境適応能力を持ち合わせている事実を知る。

 

 異常者(ヒール)とは。精神に異常を来たし錯乱、または身体の一部が異形の姿形へと変異してはクリーチャーやモンスター化する人物の事を主に指しているのだと知り、新世代型たちはいくら自分たちの肉体がその様な変異を起こさない様に遺伝子構造が特殊に成っているとはいえ、改めて異常者(ヒール)に対しての恐怖心を感じるのであった。

 

 

 そして粗方、異常者(ヒール)などに対して具体的な詳細を語ったメタルバードは、皆を引き連れて先へ進もうとした。

「よし、講義は此処まで! 先を急ぐぞッ」

 メタルバードの鶴の一声でその場を進もうとした矢先、異常者(ヒール)発生について訊き出したチョコが再び場を出発する前に聖龍隊に訊ねてきた。

「あ、あと最後に一つだけ良いですか?」「あっ? 今度は何だ? 黒鳥千代子」

 チョコの再度に渡る質問に顔を渋らせながら振り向いて問い返すメタルバード。チョコはそんなメタルバードの不機嫌に感じる表情に怯みながらも訊ねる。

「そ、その……琴浦さんを始めとする新世代型って呼ばれてる二次元人なんですけど、実際は何を基準に新世代とか、新世代型じゃないって決められているんですか?」

 このチョコの質問にメタルバードは真顔で受け答えた。

「ああ、それな。まぁ、簡単に言えば2013年3月以降に産み出された二次元人が新世代型と呼ばれる二次元人。俺らHEADやその年代の二次元人は言いたくはないが旧世代と呼ばれる最も古い二次元人。そして新世代型の前に創り出された二次元人が、新世代型の遺伝子構造へと改良される前のタイプで通称プロト世代と呼ばれる二次元人だ。聖龍隊で例えれば、HEADからニュー・スターズまでの世代の二次元人が旧世代で、ルーキーズの面子がプロト世代に当たる。あ、でもルーキーズメンバーで唯一いずなだけは旧世代だけどな」

「それ言わないでよバーンズ! 言っちゃ何だけど、私はまだまだヤリ手の二次元人で古いタイプの二次元人と一緒にされるのは気に障るんだよっ」

 メタルバードの語り事で、自身が古い世代の二次元人と扱われる事を毛嫌いするルーキーズの葉月いずな。だが彼女は旧世代の【地獄先生ぬ~べ~】から登場している二次元人なので、やはり旧世代には代わりない。そんな彼女がなぜルーキーズに在籍しているのかと言うと、ルーキーズ在籍前まで彼女は単独で霊媒師家業を生業としていたため聖龍隊の隊士でもなかった。だが、都市部で頻繁に勃発していた心霊現象による事件を追っていたミラールとの出会いから、彼女から直々に聖龍隊ルーキーズへの加入を呼び掛けられる。その際に個人業務の霊媒師家業よりも、国家勤務の聖龍隊での活動の方が収入が良いと言うミラールの発言を受けて聖龍隊に加盟。その後はルーキーズ隊士として主に使い魔の一種であるくだ狐を用いて戦闘をする。

 因みにメタルバードの語った新世代型と旧世代、その間のプロト世代については……2013年3月以降にアニメや漫画として世に登場したり名が広まった二次元人が基で、その前の世代をプロト世代と言い彼等もまたウィルスへの抗体や環境適応能力が秀でている事から異常者(ヒール)に変異しにくい種族と言われている。そしてプロト世代より前の二次元人全般が旧世代と言われる種族である。

 

 再度に渡るチョコからの質問に答えたメタルバードは、再び先へと進行しようと歩を進めようとする。

 が。その時だった。

「ッ……なんだ?」

 進行先の小部屋の扉が突然静かに開き、何事かと足を止めるメタルバード。

 内部の者を閉じ込める様に造られた小部屋、その扉がゆっくりと開いては同時に不気味な金属音がその空間に響き渡る。

 メタルバードを始め、先頭を行く者にその後方の新世代型たちの目がゆっくりと開いていく扉に向けられる、次の瞬間。

 開いた扉から一本の生白い足がひょっこりと出てきた。視界に映る生白い足に一驚し、思わず咄嗟に銃口と敵意を向ける赤塚組とジェイク、そして聖龍隊。

 そして生白い一本の足に続き、二本目の異様に太い異形の足もひょっこりと出てきては、その物体は全貌を現した。

 生白い肌、そして二本の足と異様に太い異形の足による三本足で構成されたその存在に、メタルバードや大将達は目を奪われた。

 

 人間の体の左右が接着し、その繋ぎ目の下には二本の足が一体化したような太い足が形成されており、頭皮の髪は全て抜け落ち生白い肌が晒された頭部。全身の衣服は全て剥がれており、生気のない生白い肌が一同の目に付く。左右の接着している体躯にはしっかりと色白の腕があるが、対と成っている腕は既に腐敗し消失している。が、その代わりに二体の人体が接着している繋ぎ目に当たる部位には異様なまでの縦長の巨大な口が無数の牙を光らせ唾液を垂れ流していた。その胸部は若干の膨らみが有るのを見受けられ、それが二人の女性の肉体が一体化した異形の存在であると認識できる。だが顔面下部から腹部下に至るまで巨大な口が大きく開いているのが何よりも不気味であった。

「………………」

 目の前に現れた異形の存在に目を奪われ、愕然と立ち尽くすメタルバードと赤塚組にジェイク。更に新世代の皆々も、眼前にゆっくりと異形の三本の足で歩行してくる存在に只ならぬ恐怖を覚えてた。

 そして、皆が愕然と立ち尽くしていた次の瞬間〔グワッ〕と縦長の巨大な口が開き、更に左右の両腕が集団の先頭を行ってたメタルバードの両腕を掴んだ。

「な、何だ!?」突然自分の両腕を捕まれ、取り乱すメタルバード。だが眼前で腕を掴む異形の存在はメタルバードの腕を強力な握力で放そうとはしない。

 メタルバードがもがく中、次の瞬間彼を捕まえた異形の存在は、その縦長の巨大な口を全開しメタルバードの頭部に喰らいついた。

「うわあッ!」「バーンズ!」

 突然自分の頭部に喰らいついた異形の存在に驚愕するメタルバード、そして頭部を喰い付かれた彼を目の当たりにして叫ぶ大将。

 次の瞬間、突然の事態にやっと気を安定させた赤塚組幹部のテツがメタルバードに喰い付く異形の存在に小銃を放つ。

 テツの放った銃弾を浴びて、若干態勢を崩した異形の存在、その隙にメタルバードは自力で異形の存在から離れる事に成功した。

「ふう、ふう……!」

 頭からすっぽりと喰い付かれたメタルバードは、例え今の自分が細胞に至る全ての肉体が金属化しているとはいえ頭部から喰い付かれた事に衝撃を受け、息を荒くしていた。

 そんなメタルバードに聖龍隊副長のミラーガールが急ぎ声を掛けに行く。

「メタルバード! 大丈夫?」

「あ、ああ何とか。メタル化していなかったらマジで頭が無くなってたぜ」

 驚き未だに目を見開きながらミラーガールに真情を語るメタルバード。

 だが、メタルバードに喰らい付いた異形の存在は発砲を開始した赤塚組にジェイクらの弾丸を浴びながらも、その異形の口を開いては口内の牙を光らせて迫ってきていた。

「何なんだコイツは?」「怯むな! 撃ち続けろッ」

 突如として現れた異形の存在に脅えながらも発砲し続けるアツシに、同じ幹部のテツは撃ち続ける様に指示を出す。

 そしてアツシ/テツに続き、他の赤塚組幹部衆のなる/ぐりおの海野夫妻、貴史と千春の山崎夫妻、一太郎とレイコの市川夫妻、そしてテツとアツシの家内であるふゆみとアケミ、更には秋夏子に水原花林、ギョロ、ゴマ、チカ子も異形の存在に向けて銃器を乱射していく。その中に混じってミズキも自身の両腕をレーザー機器に変形させては異形の存在に向けて光線を発射して応戦する。

 更にジェイクも拳銃を構えて、異形の存在その巨大な口内部に銃弾を発射していく。

 そんな戦闘を続行する赤塚組にジェイクの面々を見て、メタルバードもようやく聖龍隊の面々に指揮を発した。

「せ、聖龍隊! 俺たちも、あの異形のバケモノに応戦すッぞ! 但し無闇に近付くな。迂闊に近づいたら俺みたいに頭を喰われて、最悪の場合首が無くなるぞ!」

 聖龍隊の皆に指示を発しながら、メタルバード自身も右腕をレーザー砲に変形させて、強烈な電磁砲を異形の存在に放っては交戦を展開していく。

 異形の存在に強烈な電磁砲を放射しながら、メタルバードは異形の存在を差して皆に言った。

「総員、以降この怪物を<ツインズ>と名称する! 各自、ツインズに向けて抗戦せよ!」

 総長メタルバードからの指示の下、聖龍隊士と赤塚組にジェイクらは眼前の敵ツインズに向けて応戦を続ける。

 聖龍隊は赤塚組/ジェイクらと共に遠距離からの攻撃を中心にツインズを迎撃していく。何故なら迂闊に接近すれば、それこそツインズの牙の餌食となるからだ。

 そんな戦闘を続ける一団に自分等も加わろうと、流子や皐月、そして栗山未来や名瀬兄妹を含めた新世代型も戦闘に参加しようとした。だが、そんな彼等に応戦していたジュピターキッドが呼び止めた。

「君達はダメだ! 君等は主に接近戦タイプの二次元人だ、迂闊にツインズに近寄っちゃダメだ!」

 ジュピターキッドに言われ、接近戦を得意とする流子と皐月、そして未来に名瀬兄妹は渋々後退した。

 だが、接近戦を主な戦法としている流子/皐月/未来/名瀬兄妹とは違い、皐月と犬牟田宝火(いぬむたほうか)以外の本能字学園四天王の三人が戦前に乗り出した。

「皐月ちゃんは其処で見ててっ! 喰らいなさい、バケモノ!!」

 幼馴染の鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)に声を掛けながら四天王の紅一点 蛇崩乃音(じゃくずれののん)がツインズに向かって攻撃を開始した。

「奏の装・グラーヴェ!」

 蛇崩乃音(じゃくずれののん)が叫ぶと、衣服が巨大戦車または固定砲台のような形状に一変しては、音符のミサイルや破壊力のある重低音をツインズに向かって放射する。

「って! もはや服じゃねえェ!!」

 と、一変した蛇崩乃音(じゃくずれののん)の衣装を目にして、大将が一喝ツッコむ。

 だが、当の蛇崩乃音(じゃくずれののん)は攻撃の手を緩めず、音符ミサイルや破壊重低音をツインズ目掛けて連射していく。

 そんな蛇崩乃音(じゃくずれののん)に続けとばかりに、他の四天王の二人 蟇郡苛(がまごおりいら)猿投山渦(さなげやまうず)もツインズへと攻撃を開始する。

「喰らえ、バケモノ……自縄自爆!」

 蟇郡苛(がまごおりいら)はミイラ姿の極制服 縛の装を己が放つ鞭攻撃を自分自身に当ててはダメージを蓄積させ、死縛の装へと形態を変えるとその身に溜めたエネルギーを一気に放出し全身の布を鞭として縦横無尽に繰り出す広範囲技「自縄自爆」を発動させて、ツインズを苦しめた。

 そして最後に四天王随一の剣士でもある猿投山渦(さなげやまうず)も、近距離では戦えないツインズに応戦するため剣道着を模した巨大なパワードスーツに形態変化させた<剣の装>のガトリング砲のような部位から無数の竹刀をツインズ目掛けて放出していく。

 一方、自身も能力で戦える筈の新世代型二次元人 斉木楠雄はと言うと、無言で黙り込んでは、まるで空気のような存在感を醸し出して眼前の戦闘をただただ眺めていた。それと言うのも、彼は自身が超能力者である事は伏せている事実であり、特に変わり者として周りから見られている自分とは親友になってくれている燃堂力には余り知られたくない事実なのである。先ほど、既に超能力の一部を彼を始めとする皆の前で披露してはしまったが、当の燃堂本人が余りにもバカなので何れは先ほど目撃した自身の超能力に関してすっかり忘れてくれている事を祈っていた。

 と。戦っている最中、ツインズに苛烈な火炎攻撃を放ち続けるセーラーマーズがある事に気付いた。

「ね、ねえ! こいつ、目が完全に塞がってるよ!」

 マーズの言うとおり、ツインズの眼窩(がんか)は顔と顔が接着した影響なのか皮膚で潰れていた。これを聞いてメタルバードがある事実に気付く。

「そうか……コイツは音で、震動で相手が何処にいるか感じている奴なんだ! みんな、十分注意しろッ」

 メタルバードの指示を受けて、ルーキーズのアリババやモルジアナ、ニュー・スターズの高町なのはやフェイトらはツインズの口に集中砲火していった。

 

 

 果てしない長い戦闘が続く中、戦闘を続ける者達は直感的にツインズの巨大な口部を集中的に攻撃しては弱らせていった。

 そしてツインズは、その巨大で縦長の口から夥しい量の吐血を噴き出しては、三本の異形の足を折り曲げながら、前のめりに倒れ、動かなくなった。

「はぁ、はぁ……」「はぁ……お、終わったな」

 ようやく異形の存在ツインズを倒しては息を上がらせる大将にメタルバード。そして彼等と同様に最前線で戦い抜いた聖龍隊に赤塚組、ジェイクも一息入れる。更に戦闘に加入してくれた蛇崩乃音(じゃくずれののん)/蟇郡苛(がまごおりいら)/猿投山渦(さなげやまうず)の三名に、メタルバードがお礼の言葉を掛けた。

「お、お前さんたち……ありがとな。お陰で何とか倒せたよ……」

「い、いえ……」「これぐらいの御力添え……当たり前です」

「そ、それに……こんな異形のバケモノとの戦い、腕ためしには丁度良かったよ」

 礼の言葉を掛けられた蛇崩乃音(じゃくずれののん)/蟇郡苛(がまごおりいら)/猿投山渦(さなげやまうず)の三名は、息を切らしながらもメタルバードに返事をする。

 そして戦闘に参加した者達によって倒されたツインズに跪いて亡骸を観察するジュピターキッド。彼はツインズを観察して(やはり……)と思う。

「どうした? ジュニア」

 ジュピターキッドに呼びかけるメタルバード。するとジュピターキッドは振り返り、背中側のメタルバードに話した。

「ああ、メタルバード。やはり、このツインズ……ウィルスかなんかの影響で二人の女性が一体の肉体にくっ付いた形で変異したクリーチャーみたいだ」

「そうか、やはり……女二人の無惨な末路か。いくら収容されていたのが異常者(ヒール)だったとはいえ、惨い話だぜ」

 二人は互いに悲惨な表情を浮かべた。

 するとその時、ツインズが出てきた小部屋の内部を探索していたミュウレタスが、メタルバードの許に駆け寄ってきた。

「総長、これ!」「?」

 ミュウレタスは一冊の薄い本をメタルバードに差し出した。

「これが小部屋のベッドの上に……」

 メタルバードはミュウレタスから差し出された本を受け取り、それを開いて中身を見た。それは日記だった。

 

 

 7月16日

 此処に雇われて幾日経つのだろうか……思えば長く辛い日々の毎日。

 大切な息子を小田原修司に奪われて、家庭も日常も崩壊した私と娘の居場所は、もうこの世の何処にもない。

 唯一、出迎えてくれたのが、この非合法実験を日夜繰り返し続ける施設での業務だけだった。

 毎日毎日、実験で死に絶えた死体を産業廃棄物として密かに処理し続ける血生臭い仕事ばかり……それもこれも、全て小田原修司のせいだ。

 

 7月20日

 今日も無数の死体の処理に追われる業務で、私も娘も心身ともに困憊してしまってる。

 そして毎晩、夢に見る。あの日、私を始め多くの父兄の目の前で問題のある生徒や教師を集めては、銃で一斉射撃しては一瞬で多くの命を奪った鬼畜 小田原修司。

 私も、そしてその他の父兄も目の前で血の海に横たわる我が子の無惨な亡骸を目の当たりにして涙を流した悪夢の日を忘れる事はできない。

 いつか彼に……そして彼に協力していると言う世界のありとあらゆる国家機関に酬いを受けさせる為にも、今は耐え凌ぎ生き抜く他ない。

 

 8月1日

 もう疲れた……息子が異常者(ヒール)として認定を受けて目の前で殺されて以来、私も周囲の人々から白い目で見られ続け、娘も実の弟が異常者(ヒール)認定を受けたと言う事で大学でもかなり蔑ろに扱われたと言う。

 そんな私たち親子は日本で居場所を無くし、こうして遠い異国の地であるタイで非合法研究に加担するまでに陥った。

 母一人子二人で生活していた平穏な日々は、意図も簡単に奪われ破壊されてしまった。

 全ては愛しき息子の仇を討つため……しかし、本当に生きて行く事すら疲れ果ててしまった。

 私も、娘も心身ともに限界が近付いてきていた。

 

 8月8日

 この研究施設で働く人々の中には、私たち同様に小田原修司が発案した悪役排除法(ヒールはいじょほう)で生き場を失い、路頭に迷う人々が目立つ。

 本来は私たちと同じなのだが、その殆どが政治家や権力者そしてその身内で悪質な犯罪を犯した為に異常者(ヒール)として全ての実権を奪われた、云わば自業自得に近い連中やその身内だ。

 中には権力者である親の傘を良い事に、その権力で自らが犯した強姦や強盗、麻薬売買や暴力、殺人など血の気もよだつ犯罪を平然と犯す、どう見ても異常者そのものと呼ばざる連中も目立つ。

 彼等を見てると、小田原修司が発案した悪役排除法(ヒールはいじょほう)が正しい物であると認識してしまう。

 

 8月10日

 この日は施設内の被験者の遺体を処理している最中、背中や肘などの部位に発疹が出来てた。

 施設の医療班に訊ねると、軽いウィルス感染による発疹で生死に異常はないという。

 この日を境に、私は精神に異常が見られる被験者を隔離する小部屋に移送される。

 すぐに出られると医者は言うのだから、安心だ。

 

 8月12日

 何だか目まいがする。医者が時おり訪ねて来てはワクチンと言って注射を打っていく。

 だが、皮膚からは謎の粘液が染み出しては、その箇所が次第に広げていく。

 

 8がつ14にち

 頭がまわらない中、わたしは時おり思った。むすこが、わがこが殺されてしまったのは仕方がないことだったのでは……

 むすこは学校でイジメの主犯格で、遂にイジメてた子を自殺においこんでしまった。

 こうして、むすこだけでなくイジメに関わった生徒も、それを見て見ぬフリしてた教師までもみなごろしにされた……

 むすめには悪いが、むすこが殺されたのも合法的だったことなのかもしれない……いまの私たちがやっている死体処理に比べたら…………

 

 8がつ15 ち

 わたしに続いてむすめまでもおなじ小部屋に連れてこられた。

 わたしとおなじ症状らしい……久々の親子みずいらず……いっしょにすごそう…………

 

  がつ 8に

 うれしい……むすめと わたしが ……ひとつに、なった…………

 むすこがしんで、ちりぢりになったとおもった かぞくが こうしてまた ひとつになれた

 むすめのうでと わたしのうで くっついてからしばらくたったあと くさって おちた

 あしも いっぽんに くっついた 

 むすめとわたしの あいだにおおきなくちが ぱっかりとひらいた

 

  がつ にち

 おお な  おきな くちが たべも  たく ん  くばく ばく く たべ

 わた とむす  くち  かわず  たら い おきな ちで たべ  たべて ひとの たまかじ

 ひとのあたま ひとのうで おいし

 つか ではた   かん  たべ ……おやこ いっしょ  たべて  しあわ

 

 

 日記はそこで終わっていた。日記を読んだメタルバードは、この時点で自分等が倒したツインズが母娘であり、悪役排除法(ヒールはいじょほう)で居場所の無くなった加害者家族であった事を知った。

 そして日記の終盤で、執筆者の知能までも劣っていく様子が日記に記された平仮名の数などで簡単に把握できた。

「……コイツ、いやコイツ等は母娘(おやこ)だったんだな」

「ああ。息子が凶悪犯罪の一種として扱われているイジメに加担した事で、家庭までも崩壊してしまったんだろう……自業自得とはいえ、余りにも惨い顛末だ」

 床に横たわるツインズの遺骸を前にして、メタルバードとジュピターキッドは複雑な心境に駆られた。

 

 

 

 

[襲いくる人為的脅威]

 

 変異体ツインズを倒し、一行はようやく先へと進行を再開するに至った。

 だが、異常者(ヒール)の収容施設を抜けた先もまた異形の怪物が巣くう魔境の様な空間へと変貌していた。

 壁を這って現れる巨大グモやリッカー、俊敏な動きで迫るハンター。そして、かつては施設の研究員や警備員と思われる無数のゾンビ。

 そんな尋常でない相手を一行は持ち前の戦闘術と特殊能力で撃退していくのであった。

「また来たぞ!」HEADの一人キング・エンディミオンが叫ぶ中、彼は拳銃で天井を這いずって移動しながら迫るリッカーに向けて発砲していく。

 エンディミオンに続けと他の者たちもリッカーに向けて攻撃を仕掛けていき、攻撃を受けたリッカーは力尽き天井から落下する。

「クソッ、ハンターにリッカー……B.O.Wのオンパレードだな」

「ゾンビの群れだけでも大変なのに、天井からやって来るリッカーに俊敏なハンターまで来られちゃキリがないよ」

 迫り続ける多数のB.O.Wを相手に次第に疲労感が募るメタルバードとジュピターキッド。

 そんな彼等と同様に、度重なる戦闘で疲労する聖龍隊士に新世代型の能力者、更には所持している残弾の数が残り僅かに成りつつある赤塚組にジェイクの銃器を中心に応戦し続けた面々。

 

 だが、そんな戦力が低下している面々の前に、脅威となるB.O.Wは容赦なく出現しては攻める。

「あ、来た!」

 マカが指差す方向から、のそりのそりと歩み寄ってくるトンカラトンが日本刀を片手に迫ってくるのが皆の目に入ってくる。

 皆は一斉にトンカラトンに向けて攻撃を開始するが、トンカラトンは怯む様子もなく平然と歩み寄ってくる。

 そして歩み寄ってきたトンカラトンは日本刀を高々と振り翳しては眼前の面子に斬りかかって来た。

「クッ」

 そんなトンカラトンの前に飛び出すマカは、巨大鎌となったソウルでトンカラトンの日本刀を受け止める。

「マカの嬢ちゃん、そのままでいてくれよなッ」

 そう言って大将がトンカラトンに攻撃を受け止めているマカに話し掛けながら、マカに動きを止められているトンカラトンの頭部に向けて拳銃を連射した。

 銃弾を浴びて、トンカラトンはその場に膝を着く。が、まだ倒れてはいなかった。

「みんな退いて! トドメは私たちが!」

 そう言って皆の前に飛び出してきたのは、マーズを筆頭とする獅堂光に木之本桜のHEAD古参の面々だった。三人はそれぞれトンカラトンに向けて火炎攻撃を放ち、トンカラトンを火達磨にしてみせる。

 灼熱の業火に焼かれ、その包帯塗れの体を炎に包むトンカラトンはもがき苦しみながら辺りを苦し紛れに行き行きする。

 そして炎が鎮まると同時にトンカラトンは全身を黒コゲにして倒れこみ、動かなくなった。

 

「さ、さすがに丸焼けにされたら動かねェだろう……」「そ、そうだな……」

 黒コゲとなり動かなくなったトンカラトンの残骸を前にして、呆気に取られる大将とメタルバード。

 だが、次の瞬間。「うわァ……!」と突如後方から男子の声と思いし絶叫が聞こえた。何事かとメタルバードや大将たちがその声の方に目を向けると、其処には天井から長い髪を垂らしては真下の少年の首に巻き付けて首を締め付けているアクロバティックサラサラの姿があった。

「た、大変!」「早く助けないとっ」

 長い髪で首を締め付けられ窒息寸前に追い込まれる少年を目にして、ミラーガールとセーラームーンが慌てふためく。

 そんな切羽詰った状況を目の当たりにしたメタルバードが単身天井で髪を巻き付けているアクロバティックサラサラに飛び付いては、その長い髪を刃物に変形させた右腕でバッサリと切断した。

「ウッ!」

 アクロバティックサラサラに首を締め付けられていた少年 新世代型のユウキ・タツヤは首に巻きついていた髪の毛が切断された拍子に床へと尻から落下する。

「大丈夫? 怪我は」「あ、はい……大丈夫です」

 心配して駆け付けては声を掛けてくれるミラーガールの慈愛に満ちた雰囲気に思わず見惚れかけるユウキ・タツヤは、頬を若干赤らめながら返事をする。

 一方のアクロバティックサラサラは、髪の毛を切断された事に腹を立てたのか、今度は直接その長身を活かして真下の皆に向かって跳びかかって来た。

「う、うわッ!」「蟇郡!」

 アクロバティックサラサラは、たまたま大柄で巨体の蟇郡苛(がまごおりいら)にしがみ付き、同時に彼の首を軟らかい肉体を駆使して締め上げていく。驚き声を上げる蟇郡に呼び掛ける鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)、だがアクロバティックサラサラは更に力を入れては蟇郡を苦しめる。

 だが次の瞬間「こ……このッ」と蟇郡苛(がまごおりいら)は渾身の力で自分の体に纏わり付くアクロバティックサラサラを引き剥がしては壁に叩き伏せる。すると其処に「蟇郡のあんちゃん、そのまま押えといてくれよなッ!」と駆けつけて来た大将が蟇郡苛(がまごおりいら)に押さえ付けられるアクロバティックサラサラの頭部目掛けてショットガンを連射した。

 ショットガンによる強烈な散弾を浴びたアクロバティックサラサラは、その不気味なほどの色白な肌と目のない眼窩の顔に無数の穴を開けられて絶命した。

「ふ、ふぅ~~……ようやく死んだか」「はぁ、はぁ」

 散弾を浴びせた大将も、アクロバティックサラサラに纏わり付かれた蟇郡苛(がまごおりいら)も息を上げながら死に絶えるアクロバティックサラサラの亡骸を見下ろす。

 その時、トンカラトンやアクロバティックサラサラなど日本に伝わる都市伝説に登場する異形の存在を目の当たりにしたミラーガールがメタルバードに訊ねる。

「ね、ねぇ、バーンズ……さっきのトンカラトンと言い、このアクロバティックサラサラといい、何だか日本に良く伝わっている怪人が目立っている様だけど、まさかこれも……」

「ああ、こいつ等も此処の研究施設で産み出された生物兵器の一種だ。さっき見つけたファイルには、他にも怪人赤マントやひきこさん……テケテケなんかも造られたみたいだ。しかも、その殆どが此処の施設に収容された囚人の体を利用して造られたモンが多い」

 他にも多数の都市伝説の怪人や怪物までも造られ、更にその大元が施設に収容された囚人の体を利用して造りだされた事実を知ってミラーガールは「そ、そんな……」と驚きを隠せずにいた。

 

 だが、彼等に襲い来る脅威は何も都市伝説上の怪物ばかりだけではなかった。

 トンカラトンにアクロバティックサラサラを撃退した一行が先へと進もうとした、その矢先。

 ブロロ……ブロロ……何処からともなく、何かの物音が聞こえてきた。

「こ、今度は何だ?」聞き慣れない物音に辺りを警戒する大将たち。だが、その音が確実に皆の許へと近付いて来ていた。

 音が近付く度に皆は気付いた。この物音が一種のプロペラ音に近い音である事に。

 そのプロペラ音は少しずつ少しずつ近付いてきては、遂に物陰からその姿を現した。

「な、何だアレ!」

 そのプロペラ音を発し続ける存在を目の当たりにした新世代型 棗恭介が指差し絶叫した。

 そのプロペラ音の正体。それは下半身を爪先まで鉄などのアーマーで完全防備した姿に、上半身には背中にエンジンを背負い、腕には血だらけのハンマーを持ち、そして何よりも頭部が丸ごとジェット機のプロペラ部分に付け替えられている奇怪な怪人であった。

「な……何だよアレは!?」

 血塗れのハンマーに地で紅く染まる頭部のプロペラを目にして、赤塚組幹部のアツシが酷く脅える。

 その頭部のプロペラから上半身に掛けて血で染まる怪人を見て、メタルバードが思い返した。

「こ、コイツは……さっき入手したファイルに載ってた! 最初、神原秋人を斬りつけて来た野郎……そう、ウォール・ゾンビって奴と同じ死体と機械を縫い合わせた殺戮兵器! その名もプロペラヘッドだ」

 先ほど無数の死体が吊るされていた死の工場とも呼ぶべき場所で遭遇した二丁鎌の怪人ウォール・ゾンビ。そのウォール・ゾンビと同じで死体と機械を合成して造り上げられた禁断の殺戮兵器<武器人間>の一種であるプロペラヘッドであった。

 その武器人間プロペラヘッドは、背中に背負うエンジンを激しく作動させては煙を上げ、頭部のプロペラを更に強く回転させては一行に迫る。

「く、来るぞ!」頭部のプロペラを激しく回転させながら迫るプロペラヘッドに銃口を向けながら皆に言い付ける幹部のテツ。

 プロペラヘッドは、その頭部のプロペラを高速回転させながら敵に迫っては、敵をそのプロペラでバラバラのミンチ肉にしてしまう恐るべき人造兵器。

 高速回転するプロペラが次第に皆を追い詰めていく……と、その現状の最中「あら、よっと」と皆とプロペラヘッドの間に飛来して割り込んできたメタルバードが、平然とプロペラヘッドの血だらけのプロペラを素手で押さえ付けては回転を止めて見せた。

 思いもよらないメタルバードの平然とした行動に言葉を失くす一同。だが全身を鋼鉄化しているメタルバードにとっては動作もない事だった。

 そしてプロペラヘッドのプロペラを取り押さえるメタルバードは力を込めると、次の瞬間にはプロペラヘッドのプロペラを強引にもぎ取ってしまった。

「ホイっと。何だ、見た目に反して他愛もないな」

 血塗れの残酷そうな容姿に比べて、呆気なくプロペラをもぎ取ったメタルバードは手応えを余り感じない様子で、もぎ取ったプロペラを近くに投げ捨てた。

 そして意図も容易くプロペラヘッドの高速回転するプロペラをもぎ取ったメタルバードを目の当たりにして唖然と立ち尽くす一同。

 だが、戦闘不可能になったと思われたプロペラヘッドは次の瞬間、プロペラが接続されていた部位から少し下の箇所に備え付けられてた機関銃を突如として発砲してきた。

「デデデッ! 何だコイツ、銃まで備えられてんのかよ?」

 銃弾を一身に浴びるメタルバードは突然の発砲に驚き慄く。

 すると其処にアサルト銃器類を手に抱える赤塚組の幹部達が駆け寄ってきては、メタルバードに声を掛ける。

「バーンズ、其処を退けッ」赤塚組の声にメタルバードは即座に移動した。

 そしてメタルバードがその場を退けた瞬間、赤塚組は一斉にアサルト銃を連射して無数の弾丸をプロペラヘッドに浴びせまくる。

 苛烈な銃撃を一身に浴びせられたプロペラヘッド(プロペラ無し)は、エンジンにも着弾したのか炎上し、その身が炎に飲み込まれる。

 炎上し燃え盛るプロペラヘッド。そして遂には崩れ落ちるかのように前のめりで倒れ込んだ。

 

「や、やっと倒したか……」「ふぅ」

 銃弾を一斉放射してはプロペラヘッドを火達磨にして見せた赤塚組は一息入れた。

 だが、その時だった。

「うわあっ!!」

 突如、絹を裂くような悲鳴に聖龍隊も赤塚組も顔を上げた。

「今度は何だ!」大将が声のした方に向かって大声で呼び掛けると、その声の主 新世代型の涼野いとの身に異変が起きていた。

 それは涼野いとの頭上から突如として四本の鋭利で長い鋸状の金属が下りて来たと思えば、その鋭利な先端が涼野いとの左手首と右足首の二箇所を貫いては動きを封じていたのであった。

 鋭利な鋸状の金属が突き刺さり、その箇所からの出血と激痛に顔から汗と涙の両方を流す涼野いと。だが、そんな激痛に苦しむ彼女に鋭利な先端を突き刺す異形の者は容赦なく、今度は高い位置にあった自分の顔面を涼野いとに近づけては、そのガスマスクのような異様な面立ちを彼女に見せ付ける。だがそれ以上に涼野いとが驚愕したのが、そのガスマスクの口の部分が金属ドリルの形状であった事だ。ガスマスク面の異形の者は、そのドリルとなっている口を手足の鋭利な鋸状の先端部で押さえ付けている涼野いとの顔に近付けて、同時にそのドリルを高速で回転させ始めた。

「い、いやああぁぁぁっ!!」

 次第に自分の顔に近付いてくる高速回転するドリルに尋常でない恐怖を感じる涼野いとは絶叫に近い悲鳴を上げる。

 と。其処に「や、やめろっ」と異形の存在に恐れを感じながらも手に鉄パイプを握り締めた新世代型の満艦飾(まんかんしょく)マコが涼野いとに迫る怪人に鉄パイプで殴り掛かり、ドリルの餌食になろうとしている涼野いとを助け出そうと奮闘する。

 だが鋸状の長い手足を持つ異形の存在は微動だにせず、ただ非情なまでに口のドリル部分を涼野いとの顔面に近付けさせていく。

 だが、その時だった。

「やめたまえ!」

 と空中から両足による飛び蹴りをドリル口の怪人に喰らわせたルーキーズのスカイハイ。そのスカイハイの飛び蹴りを喰らって体勢を崩したドリルの怪人は、押えていた涼野いとの左手首と右足首から自身の鋭利な手足の先端を外した。

 その隙を見逃さなかった満艦飾(まんかんしょく)マコは、急ぎ床に押え付けられていた涼野いとの手を掴み、引っ張り上げては救い出した。

「い、急いで!」「う、うん……」

 急ぎ涼野いとに肩を貸してその場を離れようとするマコに、いとは激痛と恐怖から解放された表情から大量の冷や汗を流しながら頷いた。

 そして涼野いとから引き離したドリルの口を持つ怪人に飛び蹴りを食らわせたスカイハイに聖龍隊の面々は撃退体制に入る。

「み、みんな! コイツもファイルに保存されている……両肘と両足を長い刃物に付け替えた上に、電動ドリルを口の部分に移植したモスキートだ!」

 メタルバードが先ほど目を通したファイルに記載されていた、目の前の怪人に対して説明を語る。

 両足は完全に鋭利な先端の金属に。両手には鋭い爪が施され、その肘の部分には取って付けた様な他者の腕に長い鋭利な刃物が接続され、頭部には防弾ヘルメットに顔にはガスマスク。そしてそのガスマスクの口部分には鋭く長い電動ドリルが、正しくモスキート(蚊)の様な口に改造されていた。

「撃て! 撃って撃って撃ちまくれ!」

 赤塚組大将の命じるままに、銃器を発射していく幹部達にそれに続けとジェイクも発砲していく。

 だが肝心のモスキートは防弾ヘルメットに関わらず、ガスマスクも防弾仕様に施されているのか、弾丸を弾き返してしまう。

「弾が効かねえ!」「良いから撃ち続けろ!」

 銃弾が微塵も効力を発揮している様子が見られない現状に困惑する大将に、幹部でも最年長のテツが指示を告げる。

 大将にテツに続けと他の幹部衆が発砲していくが、頭部だけでなく軍服の内側にも防弾チョッキを仕込んでいるモスキートに銃撃は効果が薄かった。

「き、効いてる様子がないみたいだけど……!」「それでも撃たなきゃならないのよッ!」

 効果がない事に顔を曇らせる夫の山崎貴史に妻である千春が強気な態度で言い付ける。

 しかしモスキートは全身に隈なく弾丸を浴びても苦しむ様子もなく、遂には銃器を乱射してくる赤塚組やジェイクに迫り寄って来た。

「こ、コイツ……何とも無いのか?」

 銃を幾度となく発砲するジェイクの顔にも焦りが見える中、モスキートは赤塚組とジェイクとの距離を縮めていく。

 そして眼前まで迫ったモスキートは、口のドリルを回転させて、それを目の前で銃撃し続けるジェイク目掛けて近づけて行った。

「く、来るんじゃねェ!」

 ジェイクは慌てて一時後退し、再度モスキートに向けて発砲する。

 そんな通常の武器や弾丸では効力が見えない戦況を目にして、メタルバードは自身の右腕を電撃砲に変形させながら叫んだ。

「これじゃキリがねえッ! 聖龍隊、超自然的エネルギーでモスキートを総攻撃! まずは俺とジュピター、それにさくらにナオミで電撃を喰らわす!!」

 メタルバードの号令に、セーラージュピターと電撃系の攻撃が使える木之本桜と梅枝ナオミが整列してモスキートに攻撃の構えを取る。

 そして「一気に行くぞ! 攻撃(ファイヤー)!!」メタルバードの掛け声を合図に、ジュピターは電撃技を、さくらはサンダー(雷)のカードを発動させ、ナオミは超能力で発生させた電磁エネルギーを眼前のモスキートに直撃させる。

 強烈な電撃を一身に浴びたモスキートは感電し、その身を震わせて一時停止する。

 電撃により至る所が焦げては痺れて動かなくなるモスキート。皆はモスキートの完全な停止を心から願った。

 だが、次の瞬間。モスキートは停止していたドリルを再回転させ、そのドリルを再び第一戦で戦う面々に向けて一直線に突いた。

「この野郎ッ!」そのモスキートのドリル攻撃をルーキーズのロックバイソンが両手で受け止めた。

 企業に就いてヒーロー活動をしているNEXTの彼は、その企業が造り出したパワードスーツを着用しているため、その手で高速回転するドリルを受け止められた。だが高速回転するドリルと、それを受け止めるパワードスーツの手のひら部分には凄まじい摩擦が生じ、けたたましい火花が散る。

 だが、激しい火花を散らしながらもロックバイソンは自力でドリルを両手で挟み込んだままモスキートを投げ飛ばした。

「フンッ」鼻息を上げるロックバイソンに投げ飛ばされたモスキートは激しく転倒し、壁に激突してしまう。

 壁に激突し、体勢を崩すモスキート。だがモスキートはまだ動けていた。

 其処に「トドメよ!」と、激突した際に体勢を崩し思うように動けなくなっていたモスキートに赤塚組幹部のミズキがエネルギーを溜めたレーザー砲撃を放つ。

 ミズキの強烈なレーザー砲撃を喰らったモスキートは体の中央から大半の肉体が焼失し、完全に機能停止に陥った。

「ヨッシャァ!」さっすがミズキさん!」

 モスキートを撃破して、思わずガッツポーズを上げる市川一太郎にアツシの幹部達。そんな幹部達に続いて、赤塚組の頭領 大将がミズキに労いの言葉を掛ける。

「さすがだぜミズキ! 伊達に最終兵器だっただけの事はあるぜ」

 すると、この大将の溌剌とした言葉にミズキは口元に笑み浮かべて言い返した。

「ふぅ、ちせの十八番(おはこ)じゃないけどね」

 ミズキは大将に言葉を返すと、続けて聖龍HEADのちせの方に目を向けた。そして彼女と目が合うと、ミズキはちせにウィンクしてみせる。

 その頃、モスキートに襲われ左手首と右足首に酷い損傷を受けた涼野いとをナースエンジェルが治療していた。

「あ、あの……大丈夫、なんですか?」

 治療するナースエンジェルに涼野いとを助けに出た満艦飾(まんかんしょく)マコが不安に満ちた面差しで訊ねてくる。そんなマコにナースエンジェルは笑顔で安心させた。

「大丈夫よ。傷は深かったけど、念入りに治癒能力で治してあげれば傷跡も残らないわ」

「よ、良かったぁ」

 ナースエンジェルの言葉を聞いて心から安堵するマコ。そんなマコを見て、自分を助け出そうとしてくれた彼女に涼野いとが話し掛ける。

「あ、あの……さっきは、ありがとう」

「えっ? う、ううん! 別に……私は何も出来なかったし」

「で、でも……私を助け出そうとしてくれたのには変わりなかったし、その……本当にありがとう」

 顔を赤らめながら礼を言ういとの言葉に、マコは笑顔で無言の返答をいとに返す。そんな二人の対話を目の前にしてナースエンジェルは穏やかな心情になった。

 

 こうして深い損傷を受けた涼野いとの治療を終えた一行は、どうにか人為的に造り出された脅威とのホンの僅かな応戦に勝つ事が出来た。

 しかし、彼等を待ち受ける異形の人造物は、まだ施設の中を彷徨っている事に誰も気付いてはいなかった。

 

 

 

 

[灼熱の業火]

 

 トンカラトンにアクロバティックサラサラ、そして武器人間のプロペラヘッドとモスキートを倒す事ができた一行は、疲労が増す中で先へと急進する。

 そして彼等は遂に、異常者(ヒール)収容施設を抜けた先にあった階段へと辿り着く事ができた。

「よっしゃッ、階段だ!」「これで上に行けるな」

 上へと進行できる階段を見つけられて大いに喜ぶHEADの堂本海斗に落ち着いた面差しで上へ行ける事に安堵感を覚えるキング・エンディミオン。

 だが、そんな喜々とする者達とは裏腹に、新世代型の女子の中には階段で最上階まで進もうとしている聖龍隊の考えに不服を覚える者達が続出した。

「えーーっ! 階段で行くんですか?」

「そんなぁ……此処って確か一番下の地下50階なんでしょ? 此処から地上まで上がるなんてマジありえない」

 地下50階から地上の1階まで上るのかと思う新世代型の森園わかなと蓮城寺べる。二人の発言を聞いて、ジュピターキッドが二人を始めとするその場の皆に言い聞かせた。

「大丈夫。いくら何でも地下50階から地上まで上るのには無理があるのは承知してるさ。階段で少し上がった階から順に探索しては、どうにかエレベーターとかの上昇手段を探していくだけだからさ、安心して」

 ジュピターキッドの説明に、新世代型の面々は少しばかり胸を撫で下ろす。

 そして一行は早速階段を上っていき、49,48と上がっていくのだが……

「あ、クソッ。ダメだ、瓦礫で埋まっちまってる」

 何と48階から47階に上がる所で大量の瓦礫が行く手を遮ってしまってた。

「な、なんでこんな所に瓦礫なんかが……」

「分からねェが……多分、何らかの戦闘で壁とかが崩れちまったのかもな」

「せ、戦闘って……何の?」

 なぜ瓦礫の山ができているのかに対して疑問に思う赤塚組の秋夏子に、メタルバードがこの瓦礫が何らかの戦闘によって壁などが崩れて発生した事を言う。が、そんなメタルバードの解釈に赤塚組幹部衆の水原花林が何の戦闘なのかすかさず問い返した。

 するとメタルバードは深刻な面持ちで花林の質問に答え返した。

「おそらくは……まだ施設内で活動している強靭なパワーを秘めた生物兵器による戦闘だろう」

 このメタルバードの発言を聞いて、赤塚組はもちろん話を耳にした新世代型の面々も血相を蒼く一変させた。

 

 一行は仕方なく、48階の階層で階段を抜けては探索をしながら進行する事と成った。

 だが48階の現状も、最下層の50階と同じで荒れ果てた上に至る所に飛沫状の血痕が視点を奪う。

 書類などの紙切れに火災が起こった跡など、惨劇の痕跡が目立つ情景が夥しく眼前に広がる。

 そんな荒んだ惨状の中を、一行は警戒しながらも突き進んでいった。

 天井の非常用ライトなのが、緑の発光ランプが点灯する通路を聖龍隊と赤塚組が先頭に立って、同時に非力な新世代型二次元人をダイヤモンド・フォーメーションで囲むように陣形を組んでは護りながら施設を進んでいく

 

 と、その時。

 通路の曲がり角から何か重量感のある足音が地響きを発しながら近付いてくるのが一行の身に伝わってきた。

「ッ? 何か来る……!」

 只ならぬ気配と脅威が近付いてくる事を察したメタルバードは臨戦態勢へと身構える。その彼と同様に、近付いてくる存在に敵意を覚えた他の聖龍隊や赤塚組らは攻撃態勢を取る。

 そして皆が曲がり角に意識を集中させていると、其処から現れたのは……

「! な、何だアレは!?」

 曲がり角から現れたその異形の存在に一同は驚いた。

 丸みを帯びた黄銅色のフォルムに二本の足が地に着いては、背面部分には二本の極太チューブが接続され、背面の上部にはエンジン部分のバルブから煙が上がっているのが垣間見れた。正面には丸いガラスが嵌められた形状。そして筒状の穴開きだらけの両腕が一際目を止まらせた。

 正面の丸いガラス部分、筒状の金属の腕を接続している肩の部位、そして足にもボルトで強固なまでに接続されている形跡が見られたその巨体な存在は、聖龍隊と赤塚組を始めとする一団の存在に気付いた。

 そしてその異形の者が正面を向くと、両腕の金属製の筒を一行に突き出した、次の瞬間。

「うわああッ、チィッッ!」

 何とその金属製の両腕から灼熱の炎が噴き出し、たまたま先頭にいたメタルバードに炎が直撃。メタルバードは火達磨になってもがき苦しんだ。

 紅蓮の炎を浴びせられ火達磨となっては通路の左右の壁に体当たりして、どうにか鎮火しようともがくメタルバードの惨状を目の当たりにして他の聖龍隊や赤塚組、そして新世代型たちは愕然としていた。

 そんな混乱の最中、火達磨のメタルバードが「おい、マーキュリーに海! 見てないで消化してくれっ!」と同胞のHEADであるセーラーマーキュリーと龍咲海の二人に水技での消化をお願いする。メタルバードの要望を聞き、マーキュリーと海は水技で火達磨のメタルバードを消火するのであった。

 だが、そんな最中にも拘らず、メタルバードを火達磨にした異形の存在は絶えず両腕の筒から炎を放射しては一行に迫ってきていた。

「く、来んじゃねェ!」

 と迫り来る異形の存在に、大将が機関銃を乱射しては無数の弾丸を浴びせて応戦する。

 しかし弾丸を浴びても、その丸みを帯びた黄銅色の金属ボディに弾かれダメージなどを与えられた様子は見られなかった。

 それでも無数の弾丸を浴びせ続ける大将。しかし褐色の金属ボディのその異形の存在には効力が見られず、異形の者は只すら紅蓮の炎を両腕の筒から放射し続ける。

「う、うわあ!」「離れろ、離れろッ!」

 迫り来る炎に脅えては酷く動揺する新世代型の面々に、プロト世代のギュービッドが叫びながら共に逃げ惑ってた。

 丸みの金属ボディの存在は、両腕から苛烈な火炎を放射しながら同時に逃げ惑う一行を執拗に追尾していく。

 そんな混乱の中、マーキュリーと海によってようやく鎮火されたメタルバードが逃げ惑いながら応戦し続ける他の聖龍隊や赤塚組の面々に向かって叫んだ。

「お前らァ! そいつも武器人間の一体だ……両腕から火炎放射を放って相手を焼き尽くす<バーナータンク>だ!」

 メタルバードが大声で語る死体と武器を組み合わせた武器人間の一体<バーナータンク>

 それは耐熱性のある真鋳で造られた丸みのボディの中に火炎放射で使用される燃料タンクや、その発火装置など実際の火炎放射器で使われるパーツが一通り組み込まれ内蔵されている。背部には内蔵されている燃料タンクから両腕の火炎放射器と連結されている極太チューブが二本接続されており、頭部に垣間見えるエンジンも火炎放射器と連携している機器で真鋳製のボディ内部に溜まった熱気を蒸気として排出して内部の温度を下げる役割を持つ。眼前の相手を対象として捉えると両腕の火炎放射器から炎が噴き出す構造になっているのだという。

 そしてバーナータンクは強固な造りである真鋳製のボディに物を言わせ、攻撃を諸ともせずに激しい火炎を放射し続け一行をジワリジワリと追い詰めていく。

 だが、そんなバーナータンクに赤塚組やジェイクらは怯む事無く果敢に応戦を繰り広げる。だが真鋳製のボディに多少の凹みを付ける事は出来ても、バーナータンクの動きを止めるまでには至らなかった。

 そんな切羽詰った戦況に苦戦を強いられてた赤塚組の頭領 大将は幹部であり側近であるミズキに指示を告げた。

「ミズキ! お前の超火力の光線で、あのタンク野郎を破壊しろッ」

 大将からの指示にミズキが力強く頷くと、彼女は同時に両腕をレーザー砲に変形させては高エネルギーを放出する準備を進めていた。が、その時。

「やめろミズキ!」とメタルバードが今にも溜めたエネルギーを放出しようとしていたミズキに慌てて呼び止めた。

 呼び止められたミズキがメタルバードに顔を向けると、メタルバードは切羽詰った面差しでミズキに話し始めた。

「そのバーナータンク、燃料で使われているのが高濃度の薬品燃料だ! もしレーザーとかの高威力の技でブッ放すなら、この通路はもちろんこの階層そのものが爆発で一気に火の海だ!!」

『!』メタルバードの話を聞いて、ミズキを始めとするその場の一同は愕然とした。

 この時、メタルバードは鋼鉄化したのと同時に己の肉体を半機械化しては眼球を一種のレーダーの様に変化させていた。そのレーダー化した目で捉えたバーナータンクの内部構造を透視したメタルバードの目には、しっかりと内部に組み込まれている満タンの燃料タンクとそのタンクに貯蓄されている液体燃料の危険薬物までも瞬時に把握できた。もし、この薬品燃料に引火してしまえば爆発した瞬間、自分たちが居る通路はもちろん階層に至るまで火の海に晒される事は明白である。

 すると、このメタルバードの言葉を聞いた聖龍隊の面々ニュー・スターズの一団が動き出した。

「それならば、斬り捨ててしまえば問題はないだろう!」そう叫びながら先陣を切る居合番長に続き、アニエス/マカ=アルバーン/ブラック☆スターなど剣戟を得意とする面々も自分たちに迫ってくるバーナータンクに踏み込んでは斬りかかって行った。

 そして彼等は順々にバーナータンクに刃を直撃させ斬り付けて行くが、バーナータンクの丸みのボディに掠り傷程度の痕跡しか残せないほど浅かった。

「な、何て硬さだ!」

「硬いだけじゃない、内部の機械も邪魔してロクに刃を斬り押せない」

 想像以上に硬い真鋳製のボディと、内部に組み込まれた機械部分により思ったとおりに切断できない現状に苦悶の表情を浮かべる居合番長とアニエス。

 すると居合番長に続けと、同じ番長である剛力番長こと白雪宮拳が集団の前に飛び出た。

「斬るのがダメでしたら、直接物理的な攻撃で攻めてみましょうっ!」

 すると剛力番長の言葉に賛同し、その他の物理系攻撃が主流の聖龍隊が前に飛び出ては剛力番長と共に目の前のバーナータンクに迫って行った。

「喰らいなさいっ」

 剛力番長の強烈な重量ハンマーでの打撃に続いて、金剛番長のダブル・ハンマー、トリコの釘パンチと、強烈な打撃技がバーナータンクに連続で浴びせられる。

 幾打にも及ぶ聖龍隊からの打撃攻撃を受けて、バーナータンクはその丸みのあった黄銅色のボディの至る所に凹みができては、一瞬ばかしよろめいたのが皆の目に入った。

「こ、これでどうだ?」激しい打撃でよろめく凹みだらけのバーナータンクを見て、仲間達と共にバーナータンクに鋼の拳を殴り付けたニュー・スターズの総部隊長フロートがバーナータンクの停止を確信し始めた。

 だがしかし、バーナータンクは凹みだらけの傷だらけの状態にも拘らず、再び動き出しては一行に迫ってきた。

「まだ動けるのかよ!」

 既にボロボロの状態にも拘らず進攻してくるバーナータンクに大将は絶叫を上げる。

 当のバーナータンクはボロボロの状態ながらも両腕の火炎放射器から灼熱の業火を放ち、眼前の一行を焼き尽くそうと迫ってくる。

 激烈な火炎放射を仕掛け続けるバーナータンクの猛攻に、焦りを感じ始める一同。

 そんな中、HEADのローゼンメイデン真紅が総長のメタルバードに話し掛ける。

「ば、バーンズ! 此処は危険かもしれないけど、貴方やちせの強力な光線で一気に倒せない!?」すると「ば、バカ言うな! アイツの燃料タンクはほぼ満タンなんだ。下手に強力な攻撃を当てたら、その瞬間大爆発が起きてオレ達もろとも、この階層が火の海に呑まれちまうぜ!」と真紅に反論するメタルバード。

 だが真紅に続き、セーラーネプチューンとプルートの二人もメタルバードに論する。

「でもバーンズ、このままじゃ私たちがヤラれちゃうのは目に見えてるわ!」

「どうにかして打開策を講じませんと……!」

「………………」

 ネプチューンとプルートからの要求にメタルバードは顔を渋らせて悩みに悩みまくる。

 すると、そんな追い詰められる戦況の中で新世代型の鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が攻撃を躊躇している聖龍隊総長メタルバードに異議を申し立てる。

「聖龍隊総長殿! 貴方とあろう方が何を迷っておられるのですか! こんな時こそ卓越した意志と決定力で組織を指揮していかなければ成らぬと言うのに……!」

「き、鬼龍院、お前……!」

 突然の鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の申し立てに驚愕してしまう纏流子を始めとするその場の一同。

 いくら何でも世界の三大勢力を司る組織のトップである聖龍隊総長に、一般人の鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が意義を申し立てるなど本来なら考えられない事であった。

 しかし鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)は、そんな殺伐とする空気の中、メタルバードに続け様に申し上げていく。

「貴方はかの鬼神! 小田原修司より長年の実績と信頼を得て、聖龍隊総長の座を譲り受けたのではないのですか! そんな貴方が今、苦境に追い詰められている現状の中を躊躇っていては、それこそ世界三大勢力の一つである聖龍隊の名折れではないですか!!」

「………………」

 鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の鬼気迫る物言いに唖然となるメタルバードと周囲の一同。

 そして次の瞬間、鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)は威風堂々とした態度で本来は目上の立場であるメタルバードに激しい剣幕で告げた。

「迷っている暇があるなら……その間に行動するのが筋ではないか! 迷いと言う隙を作らず、強く屈強な意志で猛烈に敵陣に突っ込むのが前聖龍隊総長 小田原修司からの兵法なのではないのですか!」

 鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の、この力強い言動にメタルバードは表情に力を込めて面魂を浮かべた。

 そしてメタルバードは迷いなく、傍らにいる同胞の聖龍隊に伝えた。

「お前ら……!」

 血相を変え、意志の強い面魂へと表情を変えたメタルバードの言葉に、同胞の聖龍隊は誰もが耳を傾けた。そしてメタルバードは同胞の聖龍隊にハッキリとした強い物言いで話し伝える。

「俺が、あのバーナータンクに単身突っ込む。お前たちは爆発などの事態に備えて、新世代型や自分達の身の安全を優先して行動を起こせ!」

 このメタルバードの発案にミラーガールが反論した。

「ちょ、ちょっとバーンズ! それはいくら何でも危険すぎる……!」

 するとメタルバードは反論するミラーガールに口元に笑みを浮かべて話し返した。

「フッ、オレだって危険は承知さ。だが、こういう追い詰められた状況の時こそ、悩むより行動しなきゃならない事がある……それをオレは、不覚にも鬼龍院の嬢ちゃんから諭されちまった」

 メタルバードは更に不敵な笑みを浮かべては、自らの不甲斐無さを口に出した。

「ふぅ、修司から聖龍隊の総長を任されたのは良いが……結局、オレの器量もまだまだって事だな」

 聖龍隊という巨大な組織を従える立場であるにも拘らず、己の決意を他人……それも一般人に諭された事で始めて決心する破目になる実情にメタルバードは己の未熟さを痛感しつつも静かにその心を決意で固める。

 そして次の瞬間、メタルバードは両腕を先の鋭い槍状の形状に変形すると一直線に激しい炎を噴出し続けるバーンバータンクに突進した。

「バーンズ!」

 ミラーガール、そして他の聖龍HEADは単身で突撃したメタルバードの本名を叫ぶ。

 そんな中、バーナータンクと激突したメタルバードは同時に自身の背面にジェットエンジンの噴出口を浮き出しては、そのエンジンを発動させ加速を始めた。

 そしてバーナータンクを槍状の両腕で突き刺したまま背部のジェットエンジンで一気に加速したメタルバードは、高速の勢いで通路の最先端の壁にバーナータンクを叩き付けた。

「グッ……!」

 槍の両腕で突き刺したままバーナータンクを壁へと叩きつけたメタルバードは、同時に背部のジェットエンジンを無くして停止する。

 メタルバードは槍としてバーナータンクに突き刺した両腕を抜く前に、バーナータンクが機能停止してるか確かめるため顔を上げる。

 するとバーナータンクは、その真正面のボディの真鋳製の装甲を貫かれたと言うのに、まだ動き出そうとしていた。

「チッ、これくらいじゃ参らないか」

 槍の両腕を突き刺したまま、同時にバーナータンクの動きを押えるメタルバードは後方のミラーガールに直接指示を出した。

「ミラーガール! お前のミラー・バリアーで一人残らずみんなを囲め! これから俺はトドメに入る!!」

 このメタルバードの言葉を聞いたミラーガールに他の聖龍HEADは、一瞬でメタルバードの考えを理解した。

「め、メタルバードッ!!」

 メタルバードが今まさに行おうとしている行為を察し叫ぶミラーガール。

 案の定、メタルバードはバーナータンクに突き刺してた槍状の両腕を引き抜くと、即座にその両腕を一体化させて直径15cmほどの口径のレーザー砲に変形させた。そしてレーザー砲にエネルギーを溜め込むと、エネルギーが溜まった瞬間にそれを一気に放出した。

 貯蓄された強烈なエネルギーの一斉放射の光に呑まれるバーナータンク、そしてそのエネルギー放射はバーナータンクの強固なボディを貫通した。

 だがバーナータンクにレーザー砲が貫通した次の瞬間、バーナータンクに内蔵されている燃料タンク内の薬品燃料にも同時に着火してしまっては、バーナータンクの体は一気に大爆発し木っ端微塵に吹き飛んでしまった。

 更にバーナータンクの爆発の衝撃は凄まじく、爆発の際に発生した強烈な炎がレーザー砲を発射したメタルバードをも呑み込み、更には後方のHEADを始めとする聖龍隊に赤塚組そして新世代型にまで火の手が猛烈に迫ってきた。

「っ!」

 咄嗟にミラーガールは、メタルバードの安否を気にしつつも彼に言われたとおり自身の技ミラー・バリアーで自分たち聖龍隊と赤塚組そして新世代型の面々、全員を虹色の光の壁で半球状に被っては囲んだ。

 そのミラー・バリアーにも灼熱の炎が包み込み、遂に炎はその階層の通路全てを一気に焼き尽くした。

 

 爆発による爆炎で階層の通路全体が焼け焦げ、爆発の威力で天井の照明も落下したり、周囲の状況は散々なものであった。

 そんな悲惨な状況の中、ミラーガールは展開していたミラー・バリアーを解除しては同時にバリアーで被い護っていた皆に声を掛ける。

「みんな! 大丈夫?」

 ミラーガールの問い掛けに皆は各々答えていった。

「え、ええ……」「どうにか……」

 バリアーに囲まれた皆はどうにか全員無傷で済んでいた。そんな中、バリアーで護られた真鍋と琴浦は自分たちを囲んでいたバリアーの周囲の状態に驚きを見せてた。

「す、スゲェ……バリアーで囲まれた所は全然焦げてない」

「うん。爆発による衝撃波もちろん、強烈な熱気も全く感じなかったモンね」

 真鍋と琴浦、二人は自分たち同様にミラーガールの発したバリアーで護られた床や散乱物までも同じ様に爆発の衝撃と炎から完全に防備されていた事に衝撃を受けていた。

 そんな中、バリアーを解除したミラーガールは急ぎ爆発の衝撃と炎を間近で直撃したメタルバードの許に駆け出した。

「メタルバード!」「おい、バーンズ! 大丈夫かッ」

 ミラーガールに続き赤塚組の頭領 大将も急ぎメタルバードの許へ駆け付ける。二人の後を追うように、他の聖龍隊や赤塚組そして新世代型の皆々もメタルバードの安否を気にして駆け出す。

 皆がメタルバードとバーナータンクがいた壁際まで駆けつけると、辺りにはバーナータンクの残骸と思われる金属片が至る所に飛び散っており、周辺は他の場所以上に黒く焼け焦げていた。

 そんな何処よりも黒焦げで酷い惨状の中をミラーガール達は必死でメタルバードの姿を探した。

 すると、彼等の目の先に全身を黒ずみの黒焦げの状態で横たわるメタルバードの姿を発見した。

「バーンズっ」「おい、バーンズ! しっかりしろ、バーンズ!」

 黒焦げの状態で見付かったメタルバードに駆け寄り必死に声を掛けるミラーガールに大将。

 すると皆の目の前で黒焦げの消炭塗れのメタルバードは起き上がり、皆に返事を交わした。

「ゴホッ、ああ大丈夫。どうにか生きてるよ」

 咳込みながらも皆に返事をするメタルバードの言動を見て、ミラーガール達その場の皆は大いに喜んだ。

 

 こうして強敵バーナータンクは、メタルバードの捨て身の攻撃で粉々となり散って逝った。

 

 

 

 

[二刀流の刺客]

 

 メタルバードの捨て身の強烈な攻撃が物を良い、動く火炎放射器とも言うべきバーナータンクを撃破した一行。

 当のメタルバードは鋼鉄の肉体によって爆発の衝撃も、その際に生じる火炎にも平然と耐えられるのである。

 そしてメタルバードは起き上がると、全身にこびり付いた炭を手で叩いては落としていた。するとその時、爆発の衝撃で活動し始めたのか皆の周りに炎に包まれたゾンビが群がってきた。

 先ほどの爆発による衝撃での目覚めと、爆発による火災によって腐敗した肉体にも飛び火してはそのまま一行を襲い掛かってくるゾンビたち。

 聖龍隊と赤塚組は態勢を立て直しながら、周辺に群がってくるゾンビを撃退して行った。

 だが、ゾンビの群れと戦闘を始める一行が眼前に群がるゾンビに気を取られているその最中。彼等と同じ階層のとある扉から激しく内側から叩く音が鳴り響いていた。

 その扉の内側から激しく叩く物音が続いていると思いきや、その扉は強引に打ち破られ戸は弾き飛ばされてしまった。そして扉の中から一体の人影が両腕に怪しく光る太刀筋を垣間見せながら出てきた。

 

 一方の聖龍隊と赤塚組、そしてジェイクと戦闘可能な新世代型たちは周囲に群がってくる丸焦げのゾンビの群れと激しく応戦していた。

「ちょっとちょっと、さっきの爆発で呼び寄せちゃったんじゃない?」

「そ、そうかもな……それにしても、さっきのレーザー砲撃と言い爆発に呑み込まれたのと言い……さすがに疲れちまったよ、俺」

 多勢に無勢のゾンビの数に押され気味になる戦況に苦戦を強いられるジュピターキッドに対し、先ほどのエネルギー砲撃と爆発の衝撃をマトモに受けた影響で疲労が蓄積されてきたメタルバード。

 だが、そんなゾンビの群れと応戦していく一行の前に、突如としてある一体の人影が駆け寄ってきてはその姿を晒しに来た。

 その者は、二本の刀で自身の行く手を塞ぐゾンビを瞬く間に続々と一刀両断に斬り捨てては、ゾンビの群れの中を掻き分けては一直線に一行の許へと突進してきた。

「な、何だアイツ?」ゾンビの群集を掻き分けて此方へ突進してくるその者を視界に捉えた大将は声を上げる。

 その者は、頭部から全身まで隈なく継ぎ接ぎだらけの異様な姿に頭皮を損失している無毛の頭。何より目を引いたのが、その両腕が丸ごと鋭く光る日本刀へと付け替えられていたのだ。

 両腕が日本刀に付け替えられている異形の者は、そのまま行く手を塞ぐゾンビ達を次々に斬り捨てては薙ぎ倒していき、戦闘を続けている一行へと斬りかかって来た。

「危ない!」

 と、咄嗟に新世代型と異形の者の間にHEADの獅堂光が剣を両手に構えては斬りかかって来た異形の者の二本の日本刀を受け止め防いだ。

 だが、その異形の者の腕力は凄まじく獅堂光は今にも力負けしそうなほどに追い詰められていく。

「つ、強い……!」

 光はどうにか背後の新世代型たちに傷を負わせたくない一心で眼前の異形の者と対峙し続ける。

 すると其処に「女相手にヤメねぇか!!」と赤塚組の大将が光と対峙している異形の者に銃を向けては発砲した。

 しかし異形の者は咄嗟に殺気を感じたのか、跳びはねるように銃撃から回避して見せた。

 そして異形の者は、粗方周囲のゾンビを片付け終わった一行の前に立ち尽くし、継ぎ接ぎだらけの異様な顔から発せられる眼光を皆に向ける。

 その時だった。眼前で両腕の日本刀を交差しては臨戦態勢をとる異形の者を目の当たりにしていたメタルバードが思い返したかのように言い放った。

「コイツ! コイツもバーナータンクやモスキートと同じ武器人間……その名も、ザ・サムライ!」

「ザ・サムライ?」

 メタルバードの発した<ザ・サムライ>の名に大将もその他の一同も愕然とした。

 ザ・サムライ

 全身に薬品などの酵素で強化した筋肉を移植し、更に両腕を刃物の中では切味世界一と言われる日本刀に接げ換えた武器人間。両腕の日本刀を巧みに使い相手を切り刻む攻撃性、更に移植された強靭な筋肉からなる攻撃力と足腰の強化で生まれた俊敏な移動性能。まさに日本刀の攻撃力と俊敏な動きによる回避能力の二つが組み合わさった武器人間である。

 そのザ・サムライは一行の目の前で跳びはねるように移動しながら隙を衝いて両腕の日本刀で斬りかかって来る。

「このっ!」「えいっ!」

 聖龍隊のマカと高町なのはは俊敏な動きで移動し続けるザ・サムライを狙って攻撃するが、ザ・サムライは意図も簡単に攻撃を回避しては隙を衝いて自身の攻撃にも転じていく。

 この攻撃と回避に特化した敵を前に、聖龍隊と赤塚組は苦戦を感じた。

 狙おうとしても即座に回避され、隙を衝かれれば一瞬の内に斬りつけて来る攻撃性。

 更に接近戦で苦戦を感じるのならと、赤塚組はここぞとばかりに有りっ丈の銃弾をザ・サムライに向けて発砲する。だがザ・サムライは両腕の日本刀を交差させては、それで自身に直撃しそうな弾丸を防いでみせる。

 刃や打撃の接近戦では容易く回避され、銃撃などの遠距離では二本の刀に弾かれ防がれてしまい、手も足も出ない戦況に追い込まれる。

「く、クソッ。すばしっこくて攻撃が当てらんねェ」

「俺の拳も、簡単に避けては傷を付けやがって……筋を付けなきゃならねェな」

 俊敏なザ・サムライに自分達の攻撃が当てられず苦戦するトリコと金剛番長は睨みを利かせる。

「わ、私のハンマーも当たらなければ意味がありませんし……困りましたね」

「クッ、これじゃアタイ達が先にヘバって斬り殺されちまうのは目に見えてるぜ」

 自慢の巨大ハンマーも役に立たない現状に困り果てる剛力番長に、得物である槍が直撃しない事に苛立ちを感じ始める佐倉杏子。

「このッ!」

「ブラック☆スター! いくら斬りかかりに行っても刃が当たらなきゃ意味がないぞ!」

 諦めずに果敢に攻めていくブラック☆スターの攻撃に無駄であると言い放つデス・ザ・キッド。

 

 そんな変わらない戦況に、メタルバードが指示を仰いだ

「誰か! アイツの、ザ・サムライの動きを封じろ! そうでなければ攻撃が当てらんねェ!」

 このメタルバードの台詞を聞いて、ルーキーズの一人サニーが前に出てきた。

「フッ、此処は俺様(レさま)に任せておきな」

 そう言うとサニーは自身の虹色に輝く美しい髪から無数の触手を伸ばしては、あちらこちらに動き回る俊敏なザ・サムライの肉体にその触手を寄生させ始めた。

 グルメ四天王のサニーは、己の髪の毛を意志一つで自在に操っては、それを触手として様々な攻撃に転じさせる事が可能なのである。その攻撃手段の一つで、髪の毛から発生させた目に見えないほどの細く繊細な触手を相手の神経に寄生させては、次第にその相手の神経を乗っ取ってしまう恐るべき技を隠し持っているのである。

 だがサニーの目的は、相手の神経を乗っ取る事ではなかった。何故なら相手のザ・サムライは死体を改造して造り出された兵器で、死体ゆえに既に神経は死滅してしまっている為に如何なサニーとて完全に動きを封じるまで寄生させる事はできないのであった。

 それでもサニーは鮮やかな髪から無数の触手を伸ばし、静かにザ・サムライの足元まで伸ばしていく。そして

「今だ!」サニーの決意に反応し、足元まで伸びて行った触手はザ・サムライの足に絡みつき、その動きを鈍らせた。

 その隙に「ブルーローズ! 氷麗(つらら)! グレイ! 君たちの氷技でアイツの足元を凍て付かせてくれッ」とサニーは同胞のルーキーズの氷系能力を持つNEXTヒーローのブルーローズに雪女の氷麗(つらら)、そして氷の魔法を秘めたグレイ・フルバスターに氷技での完全な身動き封じを要望する。

 三人はサニーの提案どおり、連携でザ・サムライの足元を凍り付かせる。するとザ・サムライは動きを封じられもがき始めた。

「今がチャンス!」

 とルーキーズの鹿島リンが相棒の人形アリスで攻撃を仕掛けようとしたが、ザ・サムライは凍りついた下半身と違いまだ動ける上半身のみで二本の刀を巧みに使ってアリスからのヨーヨー攻撃を防ぐ。

 更にザ・サムライは自由の利く上半身のみを使って近付いてこようとする面々を日本刀で斬り付けようと刀を振るい続ける。

 と。そんな刀を振り回し続けるザ・サムライの眼前に聖龍隊でNEXTヒーロー、ロックバイソンが立ちはだかる。

「このッ」

 バイソンが全身に力を込めると、同時にNEXT特有の青白い光を全身から発光させて己の能力を発動させる。

 キャッチコピー「西海岸の猛牛戦車」で御馴染みのロックバイソンの特殊能力は「頑丈な皮膚」。それに合わせて所属しているクロノスフーズから支給された屈強のスーツと191cmのガタイの良い体格も相まって、ロックバイソンはザ・サムライの日本刀攻撃を一身に受けても微動だにしない。

 その間にロックバイソンとは旧友の間柄でもあるワイルドタイガーが自身の能力「ハンドレッドパワー」という一定時間のみ身体能力が100倍になる能力でロックバイソンに日本刀を振り回し続けるザ・サムライの二本の刀をスーツ越しとはいえ手で受け止めた。更に「へへ、ゴメンなすって!」と言いながら、まずはザ・サムライの左側の日本刀を左手で押えながら右手でへし折って見せた。更にすかさずタイガーはもう反対側の日本刀も同じ様にして叩き折っては、ザ・サムライの両刀を全てへし折ってしまった。さすが「正義の壊し屋」なだけの事はある。

 そして両腕の日本刀が失われたのを確認した赤塚組の幹部ギョロが、ザ・サムライとの間にいたタイガーとバイソンに向かって「退いてくだせぇ!」と叫び、言われた二人は即座に離れた。そしてギョロはもはや攻撃手段を失ったザ・サムライの頭部目掛けてアサルト銃を発射した。

 ギョロの発射した弾丸はザ・サムライの頭部に見事直撃し、頭部の一部分が木っ端微塵に吹き飛んだ。

 頭部の血肉を辺りに飛散させられ、頭の一部を失くしたザ・サムライ。だが彼の動きは鈍くは成ったものの、今だ活動していた。

「これで終わりよっ!」

 その時、右手の平を上に構えながらHEADのウォーターフェアリーが空気中と自らの体内に含まれる水分で構成した巨大な水の手裏剣を発生させては、それをザ・サムライに向けて投げ飛ばした。

 ウォーターフェアリーの放った巨大水手裏剣は、ザ・サムライの首に直撃し、その首を完全に切断してしまった。

 さすがのザ・サムライも首を完全に切り落とされ、遂に活動を停止した。

 床に転がるザ・サムライの継ぎ接ぎだらけの生首を目の当たりにして、新世代型の女子たちは悲鳴を上げる。

「きゃああっ!」

 だが、苦戦を如きながらも一行はようやく二刀流の刺客ザ・サムライを撃破する事に成功するのであった。

 

 かくして一行は、ザ・サムライの足元から凍て付いた為に直立している亡骸の横を通り過ぎては、先へと進むのだった。

 

 

 

 

[異形の正体]

 

 俊敏な武器人間ザ・サムライを撃破した一行は、そのままバーナータンクが爆発炎上して焼け焦げた階層の通路を進んでいった。

 その折にも通路脇の扉から出現してくるゾンビやトンカラトンといった敵と激しく応戦を繰り広げる一行。

 ゾンビの頭部を銃器で貫通させ、トンカラトンの日本刀攻撃を間際で回避しては反撃に転じたりと戦闘を行う者達は休む暇もなく動き続けていた。

「お、おいバーンズ。何処かで少し休憩しねぇか? 新世代型の連中も大分ヘバって来たようだしよ」

「それもそうだな……まだまだ地上までは遠い。何処かで一息入れるのもアリだな」

 大将からの提案にメタルバードは草臥れた様子で頷いた。

 と。そんな一行の前、というか手前と奥の天井間近の通風口から、それぞれ手前からリッカーが二体、奥からは長い髪の毛を垂らしながら這いずりながらアクロバティックサラサラが出現してきた。

「リッカー!」「アクロバティックサラサラも混ざってるぞ!」

 二箇所の通風口から別々に出現してきた二体のリッカーと一体のアクロバティックサラサラに戸惑う赤塚組幹部衆。

 そして二体のリッカーは天井で止まると、そのまま首を振り動かしては自身の長い舌を地上の面々に向けて槍のように貫いてきた。

「う、うわ!」舌が腕に貫通し、同時に引き上げられようとされる激痛にもがくテツ。

 更にリッカーと同時に出現したアクロバティックサラサラは、そのまま通風口から出るや否や天井を這いずり移動し、放たれる弾丸をかわしながら銃口を真上に向けて発砲する赤塚組や聖龍隊の頭上を余裕綽々で通り過ぎていく。

「アーー! 弾が当たりにくいッ」

「真上の標的は狙いにくいって言うけどホントだな、オイ!」

 懸命に弾丸を当てようと奮闘するミラールとデス・ザ・キッドは一向に当たらずかわし続けては平然と頭上を移動していくアクロバティックサラサラの現状に怒りが昇ってきていた。

 だが、そうして弾幕の中を移動して行ったアクロバティックサラサラは突然立ち止まると、地上の新世代型に狙いを定めては自身の長い髪の毛を一直線に伸ばしては攻撃してきた。

「!」

 アクロバティックサラサラの伸ばした長髪の先に居たのは、新世代型の田所恵。髪の毛は彼女目掛けて一直線に伸びて来てた。

 が、次の瞬間「危ない!」と同じく新世代型の鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が田所恵の前に飛び出しては、彼女に迫ってきていたアクロバティックサラサラの髪の毛を自身の得物である縛斬で受け止めた。だが同時に縛斬にはアクロバティックサラサラの長髪が纏わり付き、しかもその髪の毛が物凄い力で皐月が構えている縛斬を引っ張り上げてきたのだ。

(な、何て強力なんだ……!)

 皐月は何とか引っ張られまいと渾身の力を込めて縛斬を握っているものの、アクロバティックサラサラの髪の毛の引っ張る力は凄まじく今にも縛斬が奪い取られそうであった。

 と。皐月とアクロバティックサラサラが力の引き合いをしている最中「田所、大丈夫か?」「田所ちゃんっ」と最初にアクロバティックサラサラに襲われそうになり腰を抜かしてしまった田所恵の許に彼女の同級生である幸平創真(ゆきひらそうま)吉野悠姫(よしの ゆうき)が駆け付けてきては、腰を抜かしてしまう田所恵を救い上げる。

 そんな田所恵に駆け寄る二人の存在に気付き、絶えずアクロバティックサラサラと対峙している鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)は二人に言葉をかける。

「そ、其処の二人……急いで、その女を連れて下がれッ。この場は私、鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が何とかする……!」

 この鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)からの言葉に駆けつけて来た内の一人、幸平創真は「あ、ああ。分かった。ありがとよ、露出狂のねえさん」と自分なりの礼の言葉を返しては、吉野悠姫と共に田所恵を連れて下がる。

 しかし一方の鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の腕は次第に限界が来ていた。「くッ、くそ……!」

 表情に苦悶の実情を浮かべる鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)。そして次の瞬間

「う、うわあっ!」

 なんと鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)は縛斬を握り締めたまま、縛斬ごとアクロバティックサラサラに髪の毛で投げ飛ばされてしまった。そして投げ飛ばされた彼女は一直線に聖龍隊のルーシィ・ハートフィリアに激突してしまう。

「ぐわッ」「きゃっ」

 互いに激突し、悶絶する皐月とルーシィ。そしてルーシィの方から皐月に言葉を掛ける。

 「だ、大丈夫、あなた」

 すると当の皐月は腰の辺りを擦りながらルーシィに「ああ、これぐらい平気だ」と多少強がり混じりの言葉を返して立ち上がる。

 一方の鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)を髪の毛で縛斬ごと投げ飛ばしたアクロバティックサラサラは聖龍隊と赤塚組からの猛攻を素早い動きで回避しながら天井を這いずる様に移動し続ける。

「このッ、このヤロッ!」

 同じ頃、アクロバティックサラサラと同時に出現した二体のリッカーを辛うじて拳銃で頭部を破壊したジェイクも、続けてアクロバティックサラサラに銃口を向けて発砲する。

 聖龍隊/赤塚組/そしてジェイクからの激しい攻撃を浴び続けて、ようやくアクロバティックサラサラは力尽きたのが天井から落下して床の上で動かなくなった。

「ふ、ふぅ。どうにか天井の敵は三体とも始末できたようだな」「ええ、全くね」

 一息入れながら語るメタルバードの言葉にキューティーハニーが返しの言葉を呟く。

 そんな中、聖龍HEADの一人で主に治療に徹しているナースエンジェルは、先ほどアクロバティックサラサラに襲われそうになった田所恵と彼女を庇って投げ飛ばされた鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)、そしてその鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)と激突したルーシィの許に寄っては、三人の容態を訊ねていく。

「あなた達、何処か怪我してる所はない?」

 ナースエンジェルからの問い掛けに、三人はそれぞれ答えていった。

「わ、私は……その人に助けてもらったから、何とも無いです」

「私の方も軽い打撲程度です。治癒能力で治して貰うほどの外傷はないので安心してください。それよりも私と激突した貴女の方は怪我などは大丈夫でしょうか?」

「え、ええ。私もあなた同様、全然大丈夫よ。こう見えて体は丈夫なんだから、私!」

 自身は咄嗟に鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)によって助けられたので無傷であると答える田所恵に対し、彼女を助けた代償でアクロバティックサラサラに投げ飛ばされた鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)は軽い打撲程度だから治癒能力を使わずとも大丈夫と答え、その皐月からの気遣いに対して激突したルーシィは自身の体の丈夫さゆえに大事無いと皆に言い伝える。

 

 と、皆が突如出現した三体の敵との交戦を終えた最中の出来事であった。

「う、うわあ!」「な、なんだ!?」

 突如響き渡る女子の悲鳴にメタルバードたち戦闘員に衝動が走る。

 そして皆が悲鳴の方へと目を向けると、其処には足にしがみ付いてきたゾンビに驚き戸惑う新世代型の御舟百合子の姿があった。

「御舟さん!」「御舟先輩!」

 ゾンビに襲われる御舟百合子を目の当たりにして、同じ新世代型の琴浦春香と真鍋義久が名前を呼ぶ。だがその次の瞬間、有ろう事か御舟の足首にゾンビが噛み付いたのだ。

「き、きゃあっ!!」

 ゾンビに足首をかまれ、恐怖でより一層高い悲鳴を上げる御舟百合子。

 と。そんな百合子の足首に噛み付くゾンビに向けて銃を連射し、無数の弾丸を浴びたゾンビは無事に倒れた。

 そしてナースエンジェルに続いてジュピターキッドは急ぎ、ゾンビに足首を噛み付かれた御舟百合子の許へと駆け付けるのだが……「いや、いやっ。私も……私もゾンビに、あんなゾンビに成っちゃう……!」と当の御舟百合子はゾンビに足首を噛み付かれた事で自分もゾンビへと変貌してしまうのではないかと思い込み、半ば半狂乱の状態に陥ってしまった。

「み、御舟さん」「先輩、落ち着いてッ」

 半狂乱の御舟百合子に落ち着くよう必死に宥める琴浦春香と真鍋義久の二人。其処にナースエンジェルと、彼女と共に駆け付けて来たジュピターキッド二人係りで半狂乱で取り乱す御舟百合子の腕や足を押さえつけながら必死に彼女に呼びかけ宥めようとする。

「お、落ち着いて。大丈夫だからっ」

「落ち着くんだ、ゾンビになんか成らない……」

 すると自身を押さえつけるナースエンジェルとジュピターキッドの二人に半狂乱の御舟百合子は強く反発した。

「な、何を言っているのよ! あのゾンビを始め、此処の怪物たちは全部ウィルスであんな凶悪で凶暴な姿に変わっちゃった人間なんでしょ!? 私だって……私だって怪物に」

 取り乱し続ける御舟百合子を必死に押さえ込むナースエンジェルとジュピターキッドは内心困惑していた。何故なら彼女を始めとする新世代型の二次元人には予めウィルスに対する抗体が体内に含まれている事は聖龍HEAD全員が知っている事であったが、この事実は新世代型たち本人には伝えていなかったのだ。

 そういった事柄もあって、ジュピターキッドは取り乱す御舟百合子を押え付けながら視線をメタルバードに向けては彼のテレパスに直接問い掛けた。

(ば、バーンズ! どうすれば……ワクチン打たせて落ち着かせる?)

 するとメタルバード本人は深刻な面立ちでジュピターキッドにテレパスで伝え返した。

(それはダメだ! 此処まで来るのに結構な数のワクチン注射を使ってきたんだ。今後の為にワクチンは使わず、どうにかお前が説得して彼女を落ち着かせろッ)

(そ、そんな無茶な)

 取り乱す御舟百合子へのワクチン使用は、数に限りがあるという理由で使用せずにキッド自身の説得力で彼女を説き伏せるように念伝するメタルバード。それに対しジュピターキッドは本気で困惑してしまう。

 その一方で御舟百合子の混乱は増すばかりであった。更に激しさを増ながら取り乱していく御舟百合子の様子に堪らなくなっていくジュピターキッド。

 そして彼は遂に「大丈夫だ! 君達はウィルスなんかに感染しないからゾンビはもちろんバケモノにも成らないから安心しろッ!」と思わず本音を吐き晒してしまうジュピターキッド。その彼の発言を目の当たりにして、取り乱していた御舟百合子はようやく落ち着きを取り戻したが他の新世代型と同様に唖然としてしまってた。

「そ、それって……」「ど、どういう事ですか……?」

 近くで取り乱していた御舟百合子を宥め続けていた琴浦春香や真鍋義久を始めとする新世代型の視線がジュピターキッドに突き刺さる。

 更に琴浦春香や真鍋に続いて他の新世代型の面々も発現を口にしたジュピターキッドに問い詰めていく。

「ど、どういう事ですか? ウィルス感染しないとは……」

「ど、どういう事なんだよ?」

 釈然としない表情で問い掛ける鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)と纏流子の二人の質問に思わず目を逸らすジュピターキッド。そんな彼を「やれやれ」といった面持ちで見ていたメタルバードが渋々と顔を伏せた。

 そしてジュピターキッドは新世代型を始めとする真相を知らない聖龍隊のニュー・スターズやルーキーズ、更には赤塚組やプロト世代の一般人であるチョコ/ギュービッド/桃花、そしてジェイク達の視線を痛感して、遂に観念しては皆の前で真実を語り始めた。

「じ、実は…………君たち、新世代型の二次元人たちには、その……既にウィルスに対する抗体細胞が確認されているんだよ」

「こ、抗体って……!」

 ジュピターキッドの語った事実に驚愕する新世代の星原ヒカル。ジュピターキッドは更に事実を語り明かしていく。

「うん、実は君たちと合流してスグみんなの血液を採取しては検査させてもらっただろ? その時、判明したんだ……君たち新世代型の遺伝子には元からウィルスに抵抗できる遺伝子が既に組み込まれていたんだ。黙っていたけど、君達は様々な生物兵器を始めとする異常者(ヒール)に変異するウィルスにも抗体を持っている……そういう種なんだよ、新世代型は」

『………………』

 ジュピターキッドの語った真相を直に耳に聞き入れた新世代型は愕然と固まってしまってた。そんな新世代型の彼等に、今度は聖龍隊総長のメタルバードが真剣な面立ちで語り始めた。

「……キッドばかりを攻めないでくれ。まず、この事実を知ったのはオレとキッドで、オレからキッドにこの事実を皆に伝えないようにと言って置いたんだ。それと他の聖龍HEADの連中にもな」

『!』

 メタルバードの発言を聞いて、事実を知っていたのがジュピターキッドやメタルバードだけでなく聖龍HEADそのものであった事を始めて知った場の皆々。

 更にメタルバードは真剣な表情で語り続ける。

「この中には既に知っている輩もいるだろうが……先の新世代型反乱に伴って、今の時代多くの新世代型が二次元三次元問わず迫害を受けてしまっている。故に、他の二次元人や三次元人と違い、どんなウィルスにも打ち勝つ抗体を既に遺伝子内に組み込まれている事実を伝えるのは見送っていたんだ。済まない……」

『………………』

「で、でも……だからこそ、お前達はワクチンを打たなくても十分に大丈夫な訳なんだよ。実を言うと此処まで来るのに大量に持ってきていたワクチンがすっかり数が減ってきてな。無論、一般人のお前達を最優先に投与しようとは思ってはいたが、元からウィルスに強い肉体だったからワクチンなんて無意味に終わったんだな。はっは……」

 最後に苦笑で話を締めるメタルバードの言い分に、新世代型たちは完全に納得しきれない複雑な心境で釈然としなかった。

 結局、自分たち新世代型の二次元人はウィルスをも寄せ付けない遺伝子を持ち、本来の二次元人とも異なる異質な存在である事には違いないからである。

 するとその時、ジュピターキッドとメタルバードの話を聞いたジェイクが思わぬ事を話し出した。

「成程な、つまり……新世代型はウィルスにも打ち勝っちまうバケモノって事か」

『!!』

 このジェイクの言葉に新世代型一同は表情を固めた。

 そして一部の新世代型たちは間髪入れずに問題発言したジェイクに反論していった。

「な、何ですって!? 私達がバケモノ……良くも、そんな言葉を抜け抜けと言えますわね!」

 ジェイクの発言に立腹し反論する新世代型の薙切えりな。そしてえりなに続いて彼女の秘書であり従者である新戸緋沙子(あらとひさこ)もジェイクに反論し出す。

「えりな様の言うとおりですわ! 私たち新世代の二次元人に対する冒涜です!」と新戸緋沙子(あらとひさこ)がジェイクに反発。

 するとジェイク本人はそんな怒り出してしまう薙切えりなや新戸緋沙子(あらとひさこ)ら反感を覚える新世代型たちを宥めるように話し返す。

「いやいや、冗談だよ冗談。そんな本気になって怒んなって」

「冗談にも程がありますわ!」

 だがジェイクの宥め言葉にも怒りが納まらない薙切えりな。

 そんな薙切えりなや新戸緋沙子(あらとひさこ)の怒り心頭に気を和ませようとジェイクは話し続ける。

「はは、悪ィ悪ィ。ちょっとした軽い冗談さ、そうムキになんなって……それにな、実を言うと」

 と、その時。ジェイクが話そうとしていると、そんな彼等の目の前に新たな敵が出現した。

「トン、トン、トンカラ、トン……」

 それは全身を包帯で巻いた怪人トンカラトンであった。

「て、敵だ!」「しかも剛腕で刀を振るうトンカラトン!」

 聖龍隊は目の前に立ちはだかった剛腕の日本刀使いトンカラトンを目の当たりにして驚愕する。

 一方で聖龍隊の総長と参謀総長のメタルバードとジュピターキッドはトンカラトンと対峙しながら話をした。

「クソッ、次から次へと……!」

「こう怪力自慢の敵を相手に連戦はさすがにキツイ……!」

 メタルバードとジュピターキッドは双方とも度重なる強力の敵との連戦で草臥れ参っていた。

 そんな中、対峙し合うトンカラトンに対し新世代型の栗山未来と纏流子に鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)らは先手必勝の如く斬りかかって行く。

「ハァッ」「うおりゃァ!」「てェい!」

 未来/流子/皐月の三名はそれぞれの得物で眼前のトンカラトンに斬り付けた。

 だが未来の血の斬撃は微かにトンカラトンの身体を傷つけた程度で終わり、流子の片太刀バサミと皐月の縛斬による斬り付けはトンカラトンの日本刀によって受け止められてしまった。

「ぐゥ……!」「こ、こ奴……私と纏流子の剣戟を軽々と」

 渾身の力で得物を振り下ろしたと言うのに、それを軽々と片腕一本の日本刀で受け止めてしまうトンカラトンの業に表情を歪める流子と皐月。一方の未来は寸での所で刃をかわされ、掠り傷しか負わせられなかった事に深く悔やんでいた。

 この時、必死で得物を押し返そうとする流子が未来に言葉を掛けた。

「み、未来! アンタの、その血を固めて造った刃物は相手を溶かすんだろ? だったら、その刃でこの包帯野郎を斬り付けて溶かしてくれよッ」

 だが流子からの頼みを聞いた未来は困惑してしまう。

「わ、私もそれを狙って斬り付けてみたんだけど……やっぱり妖夢じゃないから溶かせないみたいで」

 未来の言うとおり、未来の血の刃で斬り付けられたトンカラトンの傷は普通の切り傷で、溶けた形跡は見られなかった。

「ッ……!」「ウ……ッ!」

 だが、そんな状況下の中でも流子と皐月は今にもトンカラトンに押し負けそうになっていた。

 このままでは流子と皐月は間違いなくトンカラトンに力負けしては、その日本刀で致命的な傷を負わせられてしまう。そう直感的に悟った未来は急ぎ二人と刃同士を押し合うトンカラトンに向かって一直線に得物を振り翳した。

「ええいッ」

 未来の振るった刃は、トンカラトンの顔面に直撃し、刃を顔に受けたトンカラトンは怯んだのか体勢を崩してよろめいた。それと同時に流子と皐月の二人もトンカラトンとの力による対峙から解放された。

「だ、大丈夫ですか、お二人とも」

「あ、ああ。何とかな」

「いや、済まない。無様だが、そなたの助けがなければ危なかった」

 トンカラトンとの力勝負に解放された流子と皐月に言い寄る未来。その未来に対して流子と皐月は額から冷や汗を流しながら言葉を返す。

 そして再び、三人は顔に攻撃を受けては怯むトンカラトンに己の得物を向ける。一方のトンカラトンは傷を受けた顔をずっと押えながら悶絶していた。

 そんな悶絶するトンカラトンと対峙する未来/流子/皐月の傍らに四天王衆の蛇崩乃音(じゃくずれののん)/蟇郡苛(がまごおりいら)/猿投山渦(さなげやまうず)、更には美月と博臣の名瀬兄妹も駆け付けては三人に加勢する。

「皐月様! お怪我は?」

「大丈夫だ。それよりも、この怪人かなり手ごわいぞ。注意しろ」

 気遣いの言葉を掛ける猿投山渦(さなげやまうず)に皐月は堂々とした強面で話し返す。

「未来ちゃん! 私たちも少なからず手を貸すわ!」

「美月が手を貸すって言うなら僕だって」

「せ、先輩方……」

 学校の先輩達である名瀬兄妹の言葉に未来は心成しか嬉しく思う。

 だが、そんな今にも眼前のトンカラトンと対決しそうな面々に慌てて聖龍隊の隊士達が駆け寄っては戦前から離脱させようと話し掛ける。

「ちょちょ、ちょっとお前さん達! 危ないから勝手に戦ってんじゃないよ、もう」

 常に臨戦態勢に入ってしまう新世代型の戦闘可能な二次元人たちを前に騒然と声をかけるメタルバード。

 

 と、その時。顔に傷を受けてふらつく眼前のトンカラトンと対決しようと意気込む新世代型の面々と、そんな彼等を止めに入る聖龍隊の面々が戦前に踏み入っていた最中。

「ウゥ……」

 栗山未来に顔を斬り付けられたトンカラトンが、その斬られた顔から手を離し再びその血走った眼で斬り付けてきた新世代型の面々と聖龍隊を睨むために顔を上げた。その顔は栗山未来による一撃で左側の顔面の包帯が剥がれ、隠れていた素顔が晒されていた。

 そして、その包帯が剥がれ晒された素顔を見た途端、戦前の新世代型も聖龍隊も、彼等の後方で戦いを見守っていた他の新世代型に赤塚組そしてジェイクらは驚愕した。

 斬られた事により剥がれた包帯。その包帯で隠れていた顔の左半面は、誰の記憶にもある顔であった。

 いつも授業中は昼寝にサボりと授業そのものを怠っている纏流子を始めとする授業不真面目な者たちも、その顔を良く教科書などの書物で拝見していた。

 他の者たちも授業や町の広告塔でその顔を記憶に刻み込んでいた。

 アニメタウンと言う後に日本から独立を果たした町の開拓者として。聖龍隊という今では世界の礎を築いている三大勢力の一つとなった組織を結成させた人物として。その聖龍隊を束ねて、三次元界のアジアで猛威を振るっていた北の国を、二次元界の英雄と共に熾烈を極める戦いの後に解放して見せた功績を持つ者として。その北の国の解放を切っ掛けに、日本の天皇家から直属の感謝を述べられた上に自他共に聖龍隊という組織を皇軍として認めてもらった実績のある人物。その闇の能力ゆえに、後々国際連合にその身を自ら兵器として差し出しては世界中で猛威を振るう悪行能力者を次々に薙ぎ倒して行った名高き武人。

 そして何よりも……自分たち今の二次元人の存在を世間の厳しい風潮から必死になって護ってきてくれたと伝え聞いているその人物の顔が、今トンカラトンの明かされた素顔に現れていた。

 トンカラトンのその左半面の顔立ち、面差し。それら全て……その眼が怪しく血走っている以外は全てかの鬼神 小田原修司と寸分違わず同じ顔であったのだ。

「修司……!!」

 赤塚組の頭領 赤塚大作こと大将はその形相を一変させて驚愕した。自分が子供の頃から見知った相手、旧友であり同時に恋敵でもあった男の顔が今目の前にあったのだから。

「と、トン……トンカラ、トン……!」

 だが左半面だけとはいえ小田原修司の素顔が晒されたトンカラトンは、再び右手に握り締められている日本刀を引き摺りながら前へと歩み出し、自分に斬りかかって来た未来や流子たちに迫ってきていた。

 しかし包帯の剥がれたトンカラトンの素顔を目撃した一団は、余りの衝撃的事実に動く事が叶わずその身が固まってしまってた。だがそんな面々に小田原修司の顔をしたトンカラトンは確実に少しずつ迫ってきていた。

『………………………………』

 今や世界中の誰もが知る顔となった、自分たち二次元人にとっての良き友とも世間では呼ばれる小田原修司。その小田原修司の顔をしているトンカラトンは凍り付いたように身が動かなくなった栗山未来と纏流子の前へと歩み寄ると、二人の少女に血走った目を向けては右手の日本刀を振り翳した。

 だが次の瞬間「このヤロッ」と未来と流子に刀を振り翳そうとするトンカラトンの真横から飛び蹴りを喰らわすキング・エンディミオン。

 エンディミオンの飛び蹴りに直撃したトンカラトンは激しく吹っ飛ばされ、新世代型の面々は王であるにも関わらず荒々しい蹴りを披露したエンディミオンの所業に愕然としていた。

 しかし皆が突然のエンディミオンの蹴りに愕然としている最中、その蹴りで吹き飛ばされたトンカラトンが立ち上がっては再び刀を手に戦前の一行に向かってきた。

「トンカラ、トン……!」

 厳つい小田原修司の左半面で睨みながら刀を振り翳し再び斬りかかりに来るトンカラトンを前にして、第一戦の戦前に立っていた戦闘可能な新世代型二次元人の纏流子/鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)/蛇崩乃音(じゃくずれののん)/蟇郡苛(がまごおりいら)/猿投山渦(さなげやまうず)/栗山未来/名瀬兄妹は完全に戦意を削ぎ落とされてしまってた。

 そんな愕然と立ち尽くす彼等を掻き分けて、聖龍隊の最高幹部HEADの面々が戦前へと躍り出る。

「ハァっ!」

 セーラーマーズの手の平から生じる苛烈な火炎がトンカラトンの包帯に着火し、トンカラトンの上半身を火達磨にする。

「はいッ!」

 更にトンカラトンの隙が開いていた脇腹目掛けて真紅が拳で一喝し、それに続いてキューティーハニーのフレーレがトンカラトンの焼け焦げる胸部を斬り付ける。

 そして最後に聖龍隊総長メタルバードが、トンカラトン同様に右腕を日本刀の形状に変化させてから、その右腕の日本刀で眼前のトンカラトンに迫った。

「うおりゃああぁあ!!」

 雄叫びを上げながら日本刀に変形させた右腕を振り上げるメタルバード、その声に反応しトンカラトンも上半身を炎に包まれながらも右手の日本刀で迎え撃つ。

 そしてメタルバードの日本刀に変形した右腕とトンカラトンの振り翳した日本刀、それぞれの刀がぶつかり火花が激しく散った次の瞬間。

 トンカラトンの日本刀は真っ二つに切断され、それに続いてトンカラトン自身もメタルバードの変形した右腕によって一刀両断に斬り付けられた。

 一刀両断に斬り付けられたトンカラトンは、そのまま膝から崩れ落ちては前のめりに倒れ込み動かなくなった。

 

 床に倒れ込み動かなくなったトンカラトン。だが、その左側の晒された素顔に新世代型の面々は目を奪われていた。

 顔を真正面から床に押し付ける形で倒れこむトンカラトンの顔左半面を改めて見直す新世代型。だが、その顔は紛れもなく、あの小田原修司の顔と瓜二つであった。

 新世代型の心に衝撃が走った。今まで自分たちの前に立ちはだかり、そして同時に倒して行ったトンカラトンの素顔はどうなっているのか。もしかしたら、今目の前で倒れているトンカラトンと同じく小田原修司の顔を持っているのではないかと。

 その前に、なぜトンカラトンは小田原修司の顔をしているのだろうか。新世代型達の疑問は一層深まるのであった。

 

 そんな新世代型たちが混乱している中、聖龍隊のHEADらが彼らに声をかける。

「みんな、此処で固まっているのは危険すぎるわ。何処かで少し休んで、気持ちを落ち着かせましょう」

 鳳凰寺風の呼びかけに、総長のメタルバードも同意しては彼女と同じく新世代型の面々に呼びかけた。

「風の言うとおりだ。一旦、何処かで休憩を挟んでからまた出発した方がみんなの為だ。新世代型のお前たちも色々と有り過ぎて少し混乱してるだろ……少し休んで心頭共に休んだ方が良いだろ」

『……………………』

 メタルバードの提示に従い、新世代型たちは未だに自分達の目に飛び込んできた異形の者の顔に表れていた小田原修司の顔立ちに驚きの真情を抱えながらも休息を取るために歩を進ませる。

 その際、彼等は小田原修司の顔立ちと寸分違わず同じ半面をしているトンカラトンの亡骸を横目に通り過ぎていったと言う。

 

 

 

 

[遺伝子の乱用]

 

「えいっ、えいっ……このッ!」

 ある一室の半壊した扉を蹴破って、中に強引に進む大将率いる赤塚組。

 その後に続いて新世代型の二次元人たちに聖龍隊メンバーが内部に進入していく。

 聖龍隊に赤塚組、そして新世代型二次元人たちも度重なる戦闘などの様々な理由で疲労困憊となり、疲れ果てた心身を休ませたい一心で休める場所を捜し求めていた。

 そして一行は先ほど倒したバーナータンクの爆発で半壊した扉を蹴破っては、強引に内部へと侵入し、室内に何も居ないことを確認した後に各々と休息を取り始めた。

 

 施設内で遭遇する多種多様な異形の敵、そしてその敵との戦闘に加わったり目前で目撃したりと……新世代型に降り掛かった衝撃は凄まじいものであった。

 だが、それ以上に彼等が衝撃を受けていたのが、先ほど彼等が目撃した怪人トンカラトンの素顔であった。

 栗山未来の攻撃を顔に受け、剥がれた包帯から覗いた小田原修司の半面。トンカラトンの素顔が、かの名高き武人 小田原修司であった衝撃は凄まじく新世代型たちは動揺を隠しきれなかった。

 そんな中、扉を蹴破って中に入った聖龍隊や赤塚組の面々は、侵入した部屋の内部を探索し始めてた。一行が侵入した部屋、そこは施設内に点在している研究施設の一角であった。

 聖龍隊に赤塚組は研究室内で保管されていた研究資料を物色し、資料の中身を覗いて自分たちが今いる研究施設に付いての詳細を調べ始めてた。

 そんな研究施設を調べている聖龍隊に、一人の人物が話し掛けてきた。

「あ、あの……」「ん、なんだい?」

 戸惑いながらも話し掛けてきた新世代型の瀬名アラタに、書物を開いて調査していた聖龍HEADのジュピターキッドが顔を向ける。

 そして瀬名アラタは振り返ったジュピターキッドにある質問をぶつけてみた。

「あの、さっきのアレ……トンカラトンっていう怪人っていうんですよね。そのトンカラトンの顔が、その……」

 指をモジモジさせ弱気な姿勢で訊ねてくる瀬名アラタが訊きたい事を敏感に悟ったジュピターキッドは、書物を手のしたまま真顔でアラタに話し返した。

「ああ、さっきのアレね……驚いたでしょ? 君達にとっても見慣れた顔が、まさか包帯だらけの怪人から出てきちゃうとは」

「アレは一体、何だったんですか? なんで、小田原修司の顔だったんですか?」

 自身の疑問を洗い浚い問い質していく瀬名アラタの物言いと雰囲気に、ジュピターキッドは渋々答えた。

「……まあ、見た以上は忘れろって言うほうが酷かも知れないしね。君も、他の新世代型の人達も忘れられない顔には違いないしね」

「………………」

 険しい面持ちでジュピターキッドの話に耳を傾ける瀬名アラタ。だが、そんなジュピターキッドに質問をぶつける瀬名アラタに続いて、他の疑問を抱いている新世代型たちが寄って来ては同じ様に質問をぶつけていく。

「キッドさん、俺達も気になってるんです」

「真鍋君……」

「あ、アレは……あのトンカラトンの顔って、一体どういう事なんですか? なんであなた達の前総長でもある、アニメタウンの開拓者としても教科書に顔や名前が載っている小田原修司の顔だったんですか?」

「…………」

 真鍋義久/琴浦春香の質問攻めに表情を渋らせて困惑し始めるジュピターキッド。だが彼への質問攻めは終わらない。

「お、小田原修司って……私たち二次元人の人権運動にも頻繁に活動してくれてた人なんでしょ? その先駆けとして、あなた達聖龍隊という組織を結成したって聞いていますわよ!」

「かつては、自らの人権や尊厳を国連に渡して、自ら国連の軍門に降っては世界平和のために奮闘し続けた名立たる武人でしょ! 小田原修司は?」

 薙切えりな/バネッサ・ガラの続け様の質問に押され気味となるジュピターキッド。

 そんなジュピターキッドの許に、同じく書物を手に開き内容を拝読するメタルバードが歩み寄っては、質問攻めする新世代型たちに話し掛ける。

「おいおい、お前ら。そうジュニアを困らせるんじゃねぇ」

『ッ』

 メタルバードの話し掛けに反応し顔を彼に向ける新世代型たち。そんな彼等にメタルバードが代わって語り始める。

「オレが思うにアレは……おそらく修司の遺伝子から生み出された複製兵器だろう」

「ふ、複製兵器?」

 新世代型の東郷リクヤがメタルバードの発した複製兵器というフレーズに反応する。メタルバードはその複製兵器について語り出す。

「複製兵器ってのはな、優れた遺伝子をクローン技術などの遺伝子技術で複製した媒体を基に造られた兵器の事さ。最近は身体能力に優れた兵士や知能の高い科学者の遺伝子も使われてはいるがな……専ら、今も昔も修司の遺伝子ばかりが使われちまうがね」

「な、何でまた小田原修司の遺伝子ばかりが……」

 メタルバードの釈明を聞いて疑問に思う……なぜ小田原修司の遺伝子ばかりが複製兵器として用いられるのが。それを新世代型の鹿島ユノが訊ねると、メタルバードは険しい顔付きで新世代型の一同に詳しく語り始めた。

 

 小田原修司は若干13歳の頃、当時のアメリカの極秘実験の被験者として自ら志願した過去があるのだ。

 その実験は、兵士の肉体に特殊なワクチンを投与して強固な肉体へと改造しようとする人体実験であった。

 これに志願した小田原修司は、このワクチンを自らの意志の元 己の肉体に投与してもらった。

 このワクチンこそ、通称D-ワクチンと呼ばれる一種の筋力強化剤に近いものであった。

 打たれた軍人の多くが投与されてすぐ筋肉の膨張や体内構造の変化に肉体が耐えられず死亡していく中、小田原修司のみがこのワクチンを投与されても死亡しなかった。

 小田原修司はそれ以降、興奮すると体内のドーパミンやアドレナリンとD-ワクチンが過剰反応し全身の筋肉が異常膨張し、瞬時に巨体な筋骨隆々の大男へと変貌する。

 容姿は筋力が異常に発達し、更に血流が激しく成る事から過剰な熱反応を起こし、血流と相まって全身が赤黒く変異する。

 修司はワクチンを投与してスグに効果が現れ、常人では計り切れない強力なパワーを手に入れた。

 だが、その代償として小田原修司は理性を失い凶暴化してしまうというリスクを背負う事と成ってしまった。

 この代償として、修司は当時人体実験を行っていたアメリカの軍事研究施設を半壊し、その所員を容赦なく攻撃して凄まじい被害を出したと言う。

 その後、小田原修司への人体実験は一時期公にはされず、遂にアメリカ政府では管理しきれなくなった小田原修司はそれ以上の機関 国際連合にその身を預ける事となった。

 国連に身を預けた小田原修司はその後、一時的にアニメタウンに帰還しては自身が結成した聖龍隊の組織構成を、アメリカの軍で学んだノウハウを基に更に強固な組織構成へと作り変えた。

 だが、小田原修司の身に宿ったD-ワクチンの影響は消えてはいなかった。

 アメリカから帰国した小田原修司はその後、聖龍隊での戦闘活動の中で恐れていたD-ワクチンによる暴走を幾度となく起こしてしまう。

 暴走した小田原修司は通称<D>の俗称で呼ばれ、D化した小田原修司の暴走の際は当時の聖龍HEADや聖龍隊士が総力を上げて止めようと奮闘したが、結局の所は聖龍隊の英雄達の方に大々的な被害を被ったのだった。

 その後の小田原修司は、どうにか己の暴走を抑制しようと血の滲むような修行を、主に精神強化の修行に取り入っては励み続けた。

 理性の存続を保つための精神修行の最中でも聖龍隊の前に立ちはだかる凶悪な敵が出現した時は、小田原修司は自身の気持ちを抑える事ができず単身戦前に乗り込んではD化しては敵どころか町などの周囲も破壊しつくしてしまうばかりであった。

 破壊された町並みは、聖龍隊のバックで組織の資金などを提供してくれる協力企業……木之本桜の親戚に当たる大道寺財閥やセーラーネプチューンやウラヌスの実家の財閥からの資金援助でどうにか町の復興は絶えず行われていた。

 だがそれ以前に問題視されていたのが小田原修司の精神面であった。

 彼は生まれつき発症している自閉症を始めとする発達障害による常人以上に強くも有れば同時に脆い精神面から、彼がD化する度にその精神が崩壊してしまわないかと周囲は懸念を抱いていた。

 しかし、そんな周りからの懸念の中、小田原修司は時間を掛けて遂に自力で理性損失を回避した状態でのD化維持に成功したのである。

 それ以降、小田原修司は度々戦闘でD化して巨大化しては怪力と屈強な肉体を武器に立ちはだかる強敵を次々に薙ぎ倒していった。

 そんなある時。D化して戦闘を続ける小田原修司の体にある変化が訪れた。

 まず小田原修司の身体で起こった異変、それは彼の心音つまりは心臓音であった。生物の心音は予め決まっており、生物が一生のうちに発する心音は既に決まっていて、本来のその既定の心音が来るとその生命の心臓が停止する時、つまり死なのだと言う。

 そして小田原修司の心臓は、D-ワクチンによる心拍数上昇により、通常よりも心音が異常に早くなってしまい、生物の一定の心音を超えてしまっていたのだ。これは小田原修司が人間の心臓を通常よりも酷使し続けるD化に成れば成るほど心音が高く速くなり、本来の人間の既定の心音に早々と達してしまうのである。簡単に言えば心臓停止による死亡だ。

 だが、そんな宣告を受けても尚戦い続ける小田原修司は、当時の聖龍隊の隊士たちの心配を余所に戦い続け、遂にその心臓は通常の人間の心拍音に達してしまった。その瞬間、小田原修司の心臓は停止し誰もが彼の死を直面するのだった。

 しかし、彼は……小田原修司は死ななかった。彼の心臓は本来の人間の心臓音の既定を超えても尚活動し続け、再び脈々と心臓が脈打つまでに復活した。これに対し、当時の聖龍隊はもちろん小田原修司も驚嘆してしまった。だが、同時に命が助かった小田原修司はある一つの懸念を抱いた。それは人間の本来決まっている心音を超えた自分は、もはや人では無いのではないかと。

 彼の懸念はその後、現実のものとなった。

 後に小田原修司の遺伝子を精密検査したところ、彼の遺伝子は変異を繰り返し続け、完全に人の遺伝子とは異なるモノへと変異してしまう。

 だが当の小田原修司はこの事に最初は若干の衝撃を受けただけで、余り気に止めてはいなかった。何故なら彼、小田原修司は本来「弱い事こそ罪」という一風変わった考えの持ち主で、遺伝子が変異したのは自身が強くなった証であると自賛したのだ。何より彼の周囲、つまり聖龍隊には人間でないからこそ強大な力を持つ事ができる存在が多数在籍していた事もあり、修司自身は余り気にしなかった。

 何よりも彼は、そういった特異な能力や身体を持つ者を強さの象徴として崇める傾向があり、聖龍隊の面々に対しても同じ心境を向けていたと言う。そんな彼にとって、人間でなくなる事は弱い存在ではなくなった事で、逆に喜々とする展開であったからだ。

 更にその後、小田原修司は戦闘を続けていく中で更に己の遺伝子を変異させつつ強化させていく事に成功する。

 彼は変異によって様々な環境に適応できるようになり、パワー特化のD化だけに変身を留めず、水中で行動可能な半漁人や空中を滑空する事が可能な鳥人、時には雷を操るドラゴンにまで変身する事が可能となったのだ。

 D以外にも変身が可能となった小田原修司は、その遺伝子が秘める特殊な組織構造にも変化を及ぼしていった。

 それは、遺伝子構造がある特定のウィルスに強く寄せ付けない抗体を持っており、更に様々な環境適応に優れた遺伝子構造へと変異している事が後の研究で明らかになった。

 更に小田原修司の遺伝子の中には、不治の病とされる病気に対する抗体つまりワクチンが発見され、このワクチンは応用次第でガンなどの不治の病とされる病気への治療に使用されるに至った。

 小田原修司は、そんな自身の体から採取される病に効くワクチンを特定の企業や団体が独占して、それを高値で売買させない為に、国連を通してWHO(世界保健機構)に己の遺伝子の研究や血液採取を一任させるのであった。

 これにより、小田原修司の遺伝子から取り出されるようになったD-ワクチンは劇的な変化を遂げて、一種の改質酵素にも近い物質としても用いられるようになった。これにより国際連合や世界保健機構は小田原修司の遺伝子を保管し、それを元に様々な病気の対抗薬を開発する。結果、世界中でガンを始めとする不死の病とされた病気の3分の1が地球上から治療可能となった。

 それから定期的に小田原修司は国連やWHO管轄の研究機関に足を運んでは、治療などの平和目的の為に己の遺伝子研究に自らを差し出した。

 だが、一部の軍や組織の手によって採取された小田原修司の遺伝子から抽出されたD-ワクチンはその後の世界の戦場を激変させた。

 D-ワクチン投与による兵士の暴走、またはそのワクチンを用いて造り出された生物兵器の脅威で世界情勢は度々危機に晒される事態となった。その際に活躍したのが、言うまでもない聖龍隊と国連直下の国連軍による奮戦である。

 修司の体内より取り出されたD-ワクチンは、改良などの人の手が加えられてない素の状態で投与すると人体を劇的に変化させ、最悪の場合異形の怪物へと変異してしまうケースがある。

これにより不当に入手したD-ワクチンでの生物兵器開発や人体改造などの問題が現在も尚、山積みなのである。

 そして何よりD-ワクチンを用いて造り出された脅威の一つこそが、D-ウィルスと言われる生物兵器であった。この生物兵器は単体だけでも生物を凶暴化・理性崩壊にまで陥れるのだが、それ以上に厄介だったのが他のウィルス種と混合して使用すると更に変異が起こる性質を備えていた。

 このD-ワクチン/D-ウィルスを最も使用した組織として知られるのが、先の時代で暗躍し続けた<革命軍士>と呼ばれる、全世界の国家権力に抗った反政府的勢力である。

 革命軍士に対しても聖龍隊と国連軍は総力を挙げて対抗。そして遂に昨年の2012年12月末期、革命軍士はその総元帥ブラッディ・ドラゴンを倒した事で空中分散、その勢力は各地に飛散していったのだ。

 だがその後も、各地に存続し続けるテロ組織などがD-ワクチンやD-ウィルスを使用し続けては、世界情勢を更に激化させているのが現実であった。

 D-ウィルス。修司から抽出されたD-ワクチンから作り出された特殊なウィルス兵器。主にこのウィルスに感染した他の生物兵器は、筋力が増大し攻撃力が通常の生物兵器よりも格段に上がる。

 更に二次元人などが投与すると精神に異常を来たしたり、クリーチャー化したりと悪影響が半端なく出る事でも有名である。が、多くの人々は強い力を欲して、自らD-ワクチンやD-ウィルスを投与してしまうのが現状である。

 だが、それ以前に国際的な組織や研究団体なども小田原修司の保存された血液を用いて様々な実験や研究を繰り返しているのが主な原因でもある。

 しかし、その研究が盛んに行われる事は同時に様々な病気の対抗策が講じられると言う結果も生じているのだ。

 少なくとも、D-ワクチンを接種して唯一生存している小田原修司の遺伝子及び血液は、世界中の研究機関で調べられているのが日常なのである。

 

 メタルバードは以下の事を質問をぶつけた、ぶつけていないに関わらず全ての新世代型二次元人に語り明かした。

 メタルバードの語りを淡々と聞き入れた新世代型は余りの事実とその内容に唖然と口を開けてしまってた。

 そんな所に、最初に質問をぶつけられたジュピターキッドが再び新世代型に話し始める。

「まあ、そういう事だから未だに義兄さんの……小田原修司の遺伝子は様々な部門で研究されているんだ。平和的な医療関係はもちろん、それとは真逆の生物兵器としてもね」

 すると其処に、メタルバードやジュピターキッド同様に施設の調査を進めていたHEADのセーラーサターンも新世代型たちに無表情な顔で丹念に話し始める。

「あの人……小田原修司って人間は、昔から私たちの様な異形の能力者に対して崇拝心に近い感情を向けていた傾向も目立っていたのよ。だから自分が人間で無くなる事を、返って喜んだものよ」

 このサターンの話にメタルバードが話を付け加えた。

「アイツは昔からよく言ってた。『弱さこそ大罪である』とな。奴にとっちゃ人間なんて弱くて未熟な存在に感じてたんだろうな。だからこそ、自分から筋肉強化剤のD-ワクチンも進んで被験者に成ったし、そのD-ワクチンの影響で後に自分の遺伝子が人間のものじゃ無くなった時も動じずに平然としていられたしな」

『………………』

 小田原修司の「弱き事こそ罪」の思想と、己が人間でなくなっても平然としていられる気高き精神に呆気に感じる新世代型たち。

 するとその時、新世代型に語っているHEAD三人の許に同じく施設の調査を続行していた赤塚組頭領 赤塚大作こと大将が話し掛けてきた。

「おおい、バーンズ、ジュニア! ここの事が分かったぜ」

 そういう大将が振り掲げる手には、一冊の薄い書物が握られていた。大将がその書物を持ってメタルバード達の許に歩み寄ると、彼は語り始めた。

「どうやら、此処は一種のウィルス研究所みたいな所だったようだ」

「なに? ウィルス研究所!?」

 大将の語ったウィルス研究所の単語に反応するメタルバード。そんなメタルバードに気に掛かった新世代型たちは訊ねた。

「あの、ウィルス研究所って……」

「ああ、ようするに様々なウィルスを媒体として増殖させながら様々な実験を繰り返し行っている研究所の事だ」

 新世代型の瀬名アラタの問い掛けに、大将が真顔で答える。そして同時にメタルバードが険しい面持ちで語り始める。

「そうだ……おそらくは、修司の血液その遺伝子から採取されたD-ウィルスも研究対象として扱われたんだろう。その際に求められた被験者が、人権を奪われて物同然となった異常者(ヒール)たちだったんだ。そしてウィルスの実験や研究という名目で、多くの異常者(ヒール)が異形の怪物へと変貌する破目になっちまったんだろう」

 この時、メタルバードの発した言葉に一つの違和感を見抜いた新世代型のリカルド・フェリーニが咄嗟に言い返した。

「ちょ、ちょっと待て! 確か小田原修司の血液や遺伝子から採取されるのはウィルスの基となるD-ワクチンで、D-ウィルスそのものじゃないんじゃ……!」

 フェラーリの返事にメタルバードは「やっちまった」と言いたそうな表情を浮かべては、渋々彼等に答えた。

「ああ、実はな……D-ワクチンってのは、軍が人体実験で用いた際にそう言っていた名称で、もしかしたらワクチンなどの薬剤じゃなかった可能性もあるんだ」

「そ、それってどう言う事なんですか!?」

 プロト世代の海道ジンが問い質すと、メタルバードは苦渋の面持ちで新世代型たちに語った。

「実はな、D-ワクチンそのものが……D-ウィルスではないかって説もあるんだよ」

「つ、つまり!」

「ああ、ワクチンからウィルスが生まれたんじゃなく……ウィルスその物がD-ワクチンなどに変化したのだとも言われている。つまりDは最初っからある種のウィルスではなかったのかって言う学者も今では多いんだ」

 メタルバードの釈明に愕然となる新世代型たち。

 つまりは小田原修司に打たれたのが、ワクチンではなくウィルスの方で、その後小田原修司の遺伝子構造の変化に基づきウィルスが様々な薬効をもたらすD-ワクチンへと変異したという説も浮上しているのだ。

 新世代型たちがメタルバードの話に愕然としている中、同じく施設の書物を漁って調査していたHEADの龍咲海が一つの書物をメタルバードの許に持ってきた。

「バーンズ、これ」「ん……」メタルバードは海から手渡された書物に目を通した。

 書物の中には、今自分たちがいる研究施設で保管・研究されていたウィルスの名称がズラリと並んでいた。

「マジかよオイ……かのT-ウィルスについ最近起こったテロでも使用されたC-ウィルス。それにウロボロスまでも取り扱ってたんかい」

『ッ!』

 と。メタルバードの発したウロボロスの言葉に反応して振り向くNEXTの面々。彼等にメタルバードは真顔で受け返した。

「いやいや、君達が過去に戦った事のある犯罪組織ウロボロスの事じゃないよ。俺が今言ったのは、過去にアフリカで使用されたウィルスの一種であるウロボロスの方だからね」

 過去に自分達が対峙しては激しい戦闘を繰り広げた事も多々ある犯罪組織と同じ名のウィルスに反応してしまうNEXTヒーロー達。

 そして施設に保管されていたウィルス種の名称をメタルバードが読み上げていると、それを耳にした赤塚組幹部のミズキが語り出した。

「ウロボロスって、確か数年前にアフリカで確認された種だったわね。確か、かのアンブレラが最初に発見した始祖ウィルスという種を基に作られたという……」

 するとミズキの話を聞いて、同じ幹部衆の山崎貴史も思い出したかのように話し出す。

「そうそう。アフリカの紛争地域で一般市民や兵士、更には原住民にまでも感染させて理性を失わせていたウィルスだったよね」

 最後に頭領である大将が話を締める。

「まあ、そのウィルス拡散を計った悪党はBSAAの連中の手で葬られたって言うから良かったが……確か、アルバート・ウェスカーって野郎だったな。そのウロボロスを悪用しようとした悪党の名は」

「ッ」

 この時、大将の発した話を耳にし人知れず若干ながらの反応を示すジェイク・ミューラー。

 すると、この大将たち赤塚組の話を聞いた新世代型たちが、ここぞとばかしに話し出した。

「アルバード・ウェスカーなら僕らも耳にしていますよ。悪徳企業アンブレラの幹部だった彼は後に……」

「そのアンブレラがウィルス流出に伴うバイオハザードが原因で潰れた後は身を隠しながら……」

「最終的には別の製薬企業と絡んでウィルス作った挙句……」

「悪党の末路というべき死に方で人生終わっちゃったんだよね! はははっ」

 各々と語る新世代型たち。だが、そのお喋りに突然ジェイクが傍らの机を拳で強く叩き、凄まじい音を生じる。ジェイクの突然の物音に皆が衝撃を受けていると、大将が恐る恐るジェイクに訊ねた。

「お、おい……どうしたんだよ、あんた」

 するとジェイクは血相を激しく豹変させて「ウルセェ!」と怒鳴り返した。このジェイクの怒声に新世代型の皆々は再び衝撃を受ける。

 突如として態度が豹変したジェイクを目の当たりにして呆然となる赤塚組の面々。

 しかしジェイクはスグに厳つくしていた強面を戻し、平然を装いながら周囲の皆に話し返していく。

「……す、すまねえ。少し、その、気が立っていてな」『…………』

 何事も無かったかのように振舞うジェイクの対応に呆然と立ち尽くす赤塚組に新世代型たち。

 そんな何とも言えない空気の中で、ジェイクは自身が漁っていた資料を手にしながらその場の皆に語る。

「ま、まあ……此処に置かれているのは、殆どが小田原修司から作り出されたウィルスやその他のウィルスに対する事項ばかり。こんな所に長居は無用だ、とっとと先に行こうぜ」

 と。ジェイクは一足先に部屋から出ようとする。だがその時、ジェイクは聖龍HEADの横を通り過ぎながら彼等に問い掛けた。

「そう言えば、聖龍隊」

 ジェイクの言葉に聖龍HEADは皆彼に意識を向ける。ジェイクはそのまま彼等に訊ねた。

「さっきの包帯野郎の顔が小田原修司にソックリだったって事は……つまりは、あの怪人が小田原修司の遺伝子から生み出された複製兵器っていう生物兵器の一種って事なんだろ」

「……そうよ」

 聖龍HEADのコレクターユイが一言答えると、ジェイクは続けてHEADに話した。

「そうか……ようするに小田原修司の遺伝子的長所を携えた生物兵器が、この施設にゴマンといるって訳か。気を引き締めないと、返って俺達がヤラレちまうな」

「その通りだな。説明するまでも無く、修司はD-ワクチンの影響で筋力が異常発達した奴だ。奴の遺伝子から生み出された生物兵器も同じく、筋肉組織が異常発達した奴が目立つし、この先も更に強大な敵が待ち受けていると見て良いだろう。

 ジェイクの話に付け足すように話し返すメタルバードの意見に、聖龍HEADを含む聖龍隊は力強く頷いた。

 そして聖龍隊にジェイクは先に進む準備をし始める。

「よし、此処の調査は終わった。早く先に行くぞ」

「ちょ、ちょっと待てよっ」

 メタルバードを含む突然の聖龍隊の決定事項に慌てふためく大将たち赤塚組に戸惑う新世代型の面々。彼等も慌てて出発の準備を施す。

 皆が出発の準備をする中、大将は先ほど突然態度を豹変させたジェイクに話し掛けた。

「な、なあジェイクのあんちゃんよ。さっきは一体どうしたんだ? なんか俺、気に触る事でも言っちまったか?」

 大将は先ほどの自身の発言の中でジェイクの気を逆撫でする様な言葉を発してしまったのか気にして訊ねるが、当のジェイクは装備品である拳銃の残弾チェックをしながら真顔で話し返した。

「いや、もう良いんだ。気にしねえでくれ、俺が勝手にキレちまっただけなんだからよ。忘れてくれ」

「わ、忘れてくれって……」

 先ほどの自身のとった態度を忘れてくれと言うジェイクの台詞に、大将はただただ困惑してしまうばかりであった。

 そして歩を進ませるジェイクの肩を掴もうと、大将が手を伸ばしたその時、彼の袖下を後方から何者かが引っ張っては大将を制止させる。

「ッ。お、お前さんは……」

 袖を引かれ顔を振り向かせた大将の目線の先には、新世代型の琴浦春香が悲痛な面持ちで大将の袖を引いていた。

 そして琴浦春香は何かを思ってか大将に話し出す。

「大将さん、その……ジェイクさんの事は、そっとしてあげていてください」

「え、えっ……わ、分かった」

 琴浦春香の瞳を見て大将は彼女の何らかの真情を悟り、黙って彼女の言うとおりにした。

 この時、琴浦春香と斉木楠雄の両名はジェイク・ミューラーの身上について人知れず胸中に秘めていた。

 

 そして皆がその場から出発し、再び施設からの脱出へと歩を進ませようとしていた。

「それじゃさっきと同じで、みんな決して離れないように! 一旦この施設で迷ったら、それこそ命に関わる!」

 整列する新世代型たちに告げていくジュピターキッド。そして彼を始めとする聖龍隊は新世代型たちを先導しては施設を進んでいく。

 と、その時(あ~~あ、まったく。訳の分からねえ所に連れて来られたと思ったら、今度は政府機関の聖龍隊のお出ましかよ。オマケにそこ等中にバケモノがわんさか居るし、ついてないぜ!)と声が頭の中に響いた。それも新世代型たちだけにである。

「ん? 誰か、今なんか言った?」

 頭の中で響いた声に新世代型の棗鈴が周りの自分と同じ新世代型の皆に訊ねた。すると他の新世代型たちは各々と答えながら同時に自分達にも声が伝わった事を伝える。

「いや、俺は何にも言ってないぜ」「私も。寧ろ、今の声私にも聞こえたけど」

 新世代型の幸平創真にキャサリン・ルースも言葉を返す。誰も口には言葉を発してはいなかったのだ。

「可笑しいな……俺にも聞こえたんだけど、気のせいか?」

 と。頭を捻りながら考え込む新世代型の真鍋義久。と、そんな新世代型の皆々に聖龍HEADのミラーガールが声をかける。

「みんなーーっ、どうしたの? 立ち止まってないで、私たちに付いてきてっ!」

「あ、はい」

 聖龍隊屈指の聖女と呼ばれるミラーガールの掛け声に、新世代型の男達は揃って返事する。

 しかしこの時、新世代型の内の一人だけが顔色を変えて明らかに動揺していた。

(ま、まさか……みんなにも、声が聞こえたんだろうか)

 そう心の奥で思っていたのが、新世代型の纏流子であった。彼女は自身が着用しているサスペンダー式の赤と黒が強調された服を見下ろしながら動揺の表情を浮かべていた。

 

 この時、新世代型たちは気付いていなかった。

 次々に自分たちに降り掛かる圧倒的な危機的状況の中、己の中に秘められていたある力が密かに覚醒していくのを。

 彼等の頭の中だけに響き伝わった声が、それを何よりも物語っている。

 

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