現政奉還記 B.O.W.編 作:セイントドラゴン・レジェンド
だが施設の最深部の地下では夥しい数の死体が吊るされ、更にその死体を改造して生み出された異形の怪物が一行の前に立ちはだかる。
時にはウィルスに感染して変異した存在、人の手により意図的に醜態な姿へと変えられた者たちが出現する。
しかし、そんな危険な状況の中に投げ出された新世代型たちは自分達の内に秘められた目覚めていく己自身に気付いていなかったのである。
[覚醒め]
研究施設を調査して判明した事。それは、この研究施設は様々なウィルスを保管し研究する機関であり、同時に様々な生物兵器の開発にも力を注いでいたのである。
その中でも最も研究機関が着目していたのが、かの小田原修司より抽出されたD-ワクチンとD-ウィルスを中心に研究していたらしい。
Dによる生物驚異的薬効は用途が広く、他の生物兵器の強化はもちろん寄生型など様々な種の生物兵器に多様が可能である。
そんなDによる強化も施された数多の生物兵器相手に、聖龍隊は果敢に応戦しては撃退して行った。
「ふぅ、やっとこの辺の奴等も片付いたな」
「数が多くて大変だよ、全く」
進路先で群れていた生物兵器を全て一掃した聖龍隊。足元に横たわる倒した生物兵器の亡骸を前に、メタルバードとジュピターキッドが呟く。
そして進路方向先の敵を一掃した聖龍隊の前に、新世代型たちと彼等を護る役回りに徹していた赤塚組とジェイクらが出てきた。
出てきた彼等は周囲に横たわる無数の異形の敵の亡骸に目が行ってしまい、改めて聖龍隊の実力の凄まじさを垣間見る。
「お、お前ら……相変わらず、スゲェな。此処までの敵を一掃しちまうとは……」
無数の群集で迫ってくる敵を連携で次々に薙ぎ倒してみせる聖龍隊の実力に唖然としながら大将が言葉を掛ける。するとそれに対してメタルバードが余裕を感じさせる笑顔で平然と言葉を返した。
「な~~に、これくらいチョロいもんよ。別に大した事じゃねえさ」
「…………」『…………』
無数の敵を倒しきった直後だと言うのに疲れも感じさせないメタルバードの言動に、大将はもちろんその会話を目の当たりにしていた新世代型たちも唖然と言葉を失くしていた。
そんな時、自分達が倒した敵の亡骸を念入りに観察していたHEADのキング・エンディミオンが大将と対話をしているメタルバードに声を掛けた。
「バーンズ! これを見てくれ」
エンディミオンに呼ばれたメタルバードはすぐさま彼の傍らに駆け寄る。すると大将本人も気になったのか、メタルバードに付いて行っては同じくエンディミオンの許に駆け寄る。
駆け寄ってきた二人を確認したエンディミオンは自分が先ほどまで観察していた敵の一体を指して語り始めた。
「これを見てくれ。コイツもさっきから目にしているが、筋肉組織が異常に発達したクリーチャーだ。しかもコイツだけじゃない、他にも数体同じ様なのが確認されている」
エンディミオンの説明を聞いてメタルバードは気難しい顔で語り出す。
「成程、コイツも例の修司の遺伝子から生み出されたウィルスで強化しちまったB.O.Wか」
するとその時、話をする三人の背後から、メタルバードたちの会話を聞いていた新世代型が訊ねて来た。
「あ、あの……」「んっ、なんだ理樹」
訊ねて来た新世代型の直枝理樹にメタルバードが聞き返すと、理樹は真顔で訊ねて来た。
「さ、先ほどから皆さんが仰っているB.O.Wって、何なんですか?」
「え。あ、そうか。お前さん達には余り聞きなれてない言葉だったな。B.O.Wってのはな……」
理樹の問い掛けにメタルバードは詳しく教えだした。
B.O.W。バイオオーガニックウェポン(Bio Organic Weapon)の略称である。意味は「有機生命体兵器」、読み方はビー・オー・ダブリュー。
一般的には「アンブレラやその関係者が生み出した生体兵器」を指すが、その他にも人為的に生み出された生物兵器また生体兵器も指しているのだ。
……と。理樹を始めとする新世代型の面々に詳しく語り明かすメタルバード。そんな中でも倒した敵の亡骸を観察しているエンディミオンはメタルバードに話し掛ける。
「バーンズ、殆どの生体兵器が修司の特徴を受け継いでしまっているよ。どいつもコイツも腕が丸々と太くては筋肉隆々だ」
「そうだな。この先、もっと修司の特徴を受け継いじまっている生体兵器が出現するのは覚悟しておいた方がいいな」
と。そんなエンディミオンとメタルバードの会話を聞いている赤塚組のテツが話に入ってきた。
「そう言えば……Dに感染した生体兵器は、元は小田原修司と同じ血液型つまりはA型の血液遺伝子に作用するんだったな」
このテツの問い掛けにHEADのコレクターアイが答え返す。
「そうよ。考えたくも無いけど、A型の血液型に大きく作用しては、前総長と同じ筋肉の発達した体に変異してしまうのが厄介なのよ」
D-ワクチンの投与で己の肉体の筋肉組織を異常なまでに発達し強大な力を手に入れた小田原修司。その体質を受け継いでしまった生体兵器が今皆の前に立ちはだかっているのである。
と。新世代型の面々が聖龍隊と彼等が倒した無数の生体兵器の亡骸を目の当たりにしているその時、彼等の後方から何か足音らしき物音が素早く近付いてくるのを察した。
新世代型たちが何事かと後方を振り返ると、後方から頭から爪先まで異様に赤黒く、そして手先の爪が異常に鋭く長く変異したゾンビが猛スピードで駆け付けてくるのが目に入ってきた。
「な、何だ、あのゾンビ!」
全身が血に染まったかのように真っ赤な容姿のゾンビに、その異常なまでの速さに驚愕する新世代型たち。
すると急接近してくる紅いゾンビの前に片太刀バサミを手に持つ纏流子が立ちはだかり、得物である片太刀バサミで迫ってきた紅いゾンビを一刀両断して撃退してみせる。
纏流子が斬り払った赤い容姿のゾンビを見て、聖龍HEADのジュピターキッドが声を上げた。
「こ、コイツは……クリムゾン・ヘッド!」
クリムゾン・ヘッドとは、通常のゾンビが何らかの突然変異を起こしては全身を赤い容姿に変貌しては、指先の爪が異常に鋭くなり同時に移動速度も極度なまでに上がっている厄介な生体兵器である。
だが、其処に更に他のクリムゾン・ヘッドが続々と駆け付けては鋭く変異した爪を振るって攻撃してきた。
「ッ!」
纏流子は片太刀バサミでクリムゾン・ヘッドの爪による攻撃を受け止める。
そんな流子の奮闘振りを見て、本来は敵対している本能字学園の四天王たちを引き連れる
次々に迫ってくる全身赤いクリムゾン・ヘッドを薙ぎ倒していく一行。だが、そんな最中にも関わらず、戦闘による衝撃音を聞き付けてか施設内を徘徊していたゾンビやアクロバティックサラサラまでも集まってきた。
「クソッ、集まってきたぞ!」
小銃を構えながら周辺に集まってくる敵に対して叫ぶ大将。そして新世代型に続いて赤塚組やジェイクは銃器を手に抱えて応戦し、聖龍隊は再び攻撃していく。
そして集まってくるゾンビなどの敵に果敢に応戦していく皆々。激しい回し蹴りをゾンビの上半身に喰らわせ、強烈な空手チョップを当てて薙ぎ倒しと、能力だけにあらず様々な格闘技でも敵を倒していく聖龍隊。
するとゾンビに混じって、またあのトンカラトンも一行の前に歩み寄ってきては日本刀を振り翳してきた。
「させるかッ!」
日本刀を振り翳すトンカラトンにすかさず赤塚組のアツシがショットガンの銃口を向けては、何発もの散弾をトンカラトンの顔面に向けて連射する。何発も散弾を浴びたトンカラトンは堪らずその場に倒れてしまう。
腐敗した肉体のゾンビ、そのゾンビが突然変異を起こして強化したクリムゾン・ヘッド、天井から忍び寄り獲物の息の根を止めるアクロバティックサラサラ、日本刀を武器に猛威を振るう包帯怪人のトンカラトン。数多の生体兵器を前に、聖龍隊も赤塚組も、そしてジェイクも戦闘可能な新世代型の面々も躊躇わず戦い続ける。
その時だった。(流子、後ろからも来てるぞ!)と言う声が新世代型の皆々の頭に響いた。それと同じくして呼ばれてた本人、纏流子は背後から迫ってくるゾンビに逸早く気付き、対処して見せてた。
「な、なに? 今の声……」
頭の中で響いた謎の声に困惑し出す美都玲奈を始めとする新世代型の面々。そして各々が他の新世代型に訊いた。
「み、みんな! みんなにも聞こえるの……この声」
「え! やっぱ琴浦にも聞こえるのか!」
「琴浦さんが聞こえるのは当然だとしても、私達までにも聞こえてくるって事は……」
テレパスである琴浦春香の脳内にも伝わっている声に、テレパスでない新世代型の真鍋義久や森谷ヒヨリらは何故自分たちにまでも聞こえて来るのか疑問に思う。
「みんなにも声が聞こえているのか……」
「いや、聞こえていると言うよりも……直接、頭に……脳内に声が伝わっていると表現する方が適切だ」
周囲の皆にも声が聞こえているのかと訊ね回る瀬名アラタに対して親友の星原ヒカルが聴覚による伝言よりも脳内に直接声が伝わっている現状を示す。
「い、一体全体、この声は何なんですの!?」
と。困惑する水戸郁美を始めとする新世代型の只ならぬ様子を目にして、不思議に思った大将が彼等に訊ねた。
「お前たち、さっきからなに騒いでんだ?」
「え! た、大将さん達はこの声に何とも思わないんですか……?」
「声? ……声って何の事いってんだ?」
「え!!?」
問い掛けて来た大将に頭の中に直接伝わってくる声に関して訊き返す相川千穂。だが大将は平然とした真顔で声に関して全く気付いていない様子を見せた事で、新世代型の一同は驚愕した。
この大将と同じく、現場にいた赤塚組の面々も拳銃を連射していくジェイクも、何より聖龍隊までも気が付いていないのだった。
彼等はこの時、脳内に伝わってくる声が自分たち新世代型にしか伝わってない事を認識し、俄かには信じられない真情を抱えるのであった。
だが困惑する一方の新世代型たちを尻目に、ただ一人だけ纏流子だけは声に気にせず眼前の敵に斬りかかって行く。
そんな纏流子に対立関係の
「ま、纏流子。お前、さっきから私達にしか聞こえない声に関して何とも思ってないのか!」
「声? 何を言ってんだ、鬼龍院」
だが次の瞬間(流子! 今度は右から来るぞッ!)「おうッ! そぉりゃッ!!」と、新世代型に伝わる声に反応する様に纏流子が返事をしながら戦闘を続行していた。
「ま! 纏流子……!!」
「流子ちゃん……声に気付いているんじゃなく、声と一緒になって戦っている!?」
脳内に伝わってくる声に共鳴するかのように戦い続ける流子を前にして、ライバルである
同じ新世代型の皆々が驚いている最中も、当の流子本人は果敢に迫ってくるゾンビ相手に斬りかかって行く。
新世代型の頭の中に伝わる声と一心同体とも言える共闘を展開しながら周囲のゾンビを次々に切り倒していく彼女の勇士は、正しく輝いている様に新世代型の彼等の目には映った。
そんな謎の声に困惑している新世代型たちを脇目に、赤塚組とジェイクも銃火器を駆使してゾンビや天井のアクロバティックサラサラなどを撃退していった。
「喰らえッ」アツシがグレネード弾で天井のアクロバティックサラサラを一発で葬ると、他のテツや一太郎に山崎貴史らも続けてアサルト銃でゾンビやトンカラトンに銃弾を浴びせていく。
だが赤塚組やジェイクに負けず劣らず、聖龍隊の面々も総力を挙げて己の持てる力を十分に発揮しつつ迫り来る驚異的な異形の存在らを返り討ちにしてみせてた。
そしてようやく現場の敵を全て蹴散らす事に成功した一行は、一息入れるのだった。
「ふぅ~~、さすがに参ったぜ。こんだけの敵を相手に撃ち続けるのは……」
「ヘッ、だらしないぜアンタら。これぐらいの敵を相手にへばっちまうとはよ……」
大将ら赤塚組とジェイクは互いに減らず口を言い合いながらも、双方共に心の底では互いの健闘を分かち合っていた。
一方の聖龍隊も、倒し尽くした敵の亡骸を指してメタルバードが仲間達に指示を与えていった。
「お前ら、念のためだ。倒したクリーチャーが、また再生能力で起き上がる可能性もある。念入りに焼いておけ」
「分かったわ、バーンズ」
メタルバードからの指示を聞いて、セーラーマーズを始めとする獅堂光/木之本桜/キューティーハニー/フロート/アリババ/沢田綱吉/ファイヤーエンブレム/ナツ・ドラニグルを始めとした炎系の力が使える聖龍隊士らが敵の亡骸を焼いていった。
そして一方、新世代型の方は謎の声に関して、全く気にしてなかった纏流子に集団で言い寄っていた。
「ま、纏流子。お前には、謎の声が聞こえていたんじゃ……」
「えっ、声って……」
「あ! また聞こえた……」「こ、この声は、一体……」
謎の声が脳内に伝わり唖然とする鹿島ユノに美都玲奈。そんな二人に唯一プロト世代の海道ジンが訊ねる。
「み、みんなには聞こえていると言うのか……? 僕には全く聞こえないんだが……」
「わ、私にも聞こえてきません」
「アタイにもだよ。一体どうなってるんだい?」
海道ジン同様にプロト世代のチョコとギュービッドにも謎の声は聞こえて来なかった。
と、その時。困惑する皆を目の前に、纏流子が何かに気付いてか自分の着用している服を見て声を上げた。
「あッ! ま、まさか……!」すると(え、なに? ま、まさか流子。コイツら俺の声が聞こえている訳!?)
と、流子が服を見詰めた瞬間に再び謎の声が新世代型の脳内に伝わってきた。
「い、今の声!」「また聞こえたぞ……!」
流子が服を見詰めた瞬間に再び伝わる声に反応する新世代型の面々。
そして
「りゅ、流子! 今の声……もしや、貴様には前々から聞こえていたと言うのか!」
「えっ、え、え~~と……」
問い詰められた纏流子は更に戸惑ってしまう。
するとその時、謎の声が新世代型たちの脳内に再び伝わってきた。
(ほほぅ、もしやコイツらにも流子同様、俺の意志が伝わっているのかもしれねェな。よし、モノは試しだ。……俺の名は鮮血。今、流子が着用している学ランだ。どうだ、俺の伝えたい意志が分かるなら直接俺に、流子が着ている俺様に話し掛けてみろや)
この謎の声の告白に、新世代型一同は驚愕した。
「な、何だと!!」「纏流子が着ている服だと……!」
余りにも衝撃的な事実に
「ま、纏流子! 貴様の着ている、その
「は、ははは……ま、まぁ、そうらしいんだよなぁ……」
血相を変えて問い質す
更に、流子の着ている服が今までの謎の声の主である事を知って愕然と成る新世代型たちに反し、一人だけ流子の唯一の友とも呼べる満艦飾マコは笑顔で流子に話し掛けるのだった。
「わあ、流子ちゃん! まさか流子ちゃんが着ている服が喋れたなんて、マコ驚きだよ! あ、もしかして今まで一人で学ランに喋ってたのって鮮血に向かって話し掛けてたの!?」
「あ、ああ……コイツ、四六時中アタイに話しかけて来るもんだからさ。いや、騒がしいの何のって」
するとマコと会話していた流子に、鮮血が再び話し出した。
(ウッセェ! おい流子、そもそもこの俺様を最高に着こなせるのはテメェだけなんだからよ! ようするにお前と俺はベストパートナーって事に成るんだし、俺の意見にも逐一耳を貸したって良いじゃねぇか)
「それが喧しいって言ってんだろ! お陰で毎回テメェと話しているから周りからは変わりモン扱いされちまうし、厄介なんだよ!」
(そう言うなよ、水臭い)
鮮血と流子の言い合いを目の当たりにして、初めて鮮血に意志があるのと、その鮮血と前々から意志を疎通していた流子に唖然としてしまう新世代型たち。
だが事情を把握できてない赤塚組や聖龍隊の面々は一人で勝手に喋っている様に見える流子を見てポカンとしていた。
「……ど、どうなってるの? あの子」
「さあ。いきなりみんなが騒ぎ始めたと思ったら、今度はあの流子って子が一人で喋り始めて……」
突然騒ぎ出したと思った新世代型に続いて一人で勝手に喋り出す流子を目にして困惑する水原花林にミズキら赤塚組の面々。
「あの女の子、一体どうしちゃったんだろう? 急に喋りだして……」
「うん、しかも何だか自分の服に向かってさ」
「まさか、恐怖の余り気が触れた訳じゃないわよね」
着衣している鮮血に向かって喋る流子を見て思惑を膨らませるアラジン/アリババ/モルジアナの三名。
するとその時、鮮血と喋っている流子と、それを見て愕然としている新世代型に困惑している他の面々を脇目に、聖龍隊総長メタルバードが流子に歩み寄ってきた。
そして足を流子の前で止まらせると、無言で彼女を見詰める。
「だから……って、メタルバード。アンタ、どうしたの?」
(なんだこの鳥ヤロウ……確か聖龍隊の総長でメタルバード、本名をバーンズっていう野郎だったな)
無言で自分等の眼前で目を向けてくるメタルバードの存在に、流子と鮮血は彼に対して無言の威圧を感じ取った。
そして次の瞬間、メタルバードは口を開いて流子に話し掛け始めた。
「今は喧嘩している場合じゃないだろ? 流子、鮮血。お前さん達は一心同体で戦い合う間柄なんだから、もう少し静かに行動してくれよ」
「ッ! め、メタルバード!?」
メタルバードの台詞を聞いて流子は愕然と衝撃を受けた。そして衝撃を受けたのは流子だけにあらず他の新世代型も驚愕した。
自分たち新世代型にしか伝わっていなかった鮮血の声と、その存在にメタルバードが気付いていたからだ。
と。そんな流子と鮮血に話し掛けるメタルバードに
「め、メタルバード殿。貴方は、その鮮血の事が……もしや、私たち同様に鮮血の声が聞こえるのですか?」
するとメタルバードは真顔で平然と皐月の問い掛けに答えた。
「ああ、俺は最初っから気付いてだぜ。どうやらお前さん方は遂さっき知ったって感じみたいだがな……」
「俺達は、って……それじゃ、メタルバードは最初っから鮮血の事を知っていたのかよ!」
メタルバードの答え返しに新世代型の真鍋義久が問い詰める。これに対してもメタルバードは表情を変える事無く平然と答えた。
「ああ、お前さん達も知っての通り、俺様にはテレパス能力……それも高感度のテレパシーが使えるんで、それで流子と鮮血の会話は最初会った時から感じ取ってたんだぜ」
(な、なに! 鳥野郎! お前も俺の声が聞こえていたって言うのか。それも皐月や他の連中と違って最初っから……)
メタルバードの告白に鮮血は仰天してしまう。
だが、そんな鮮血や流子に新世代型達の現状を把握していない赤塚組や他の聖龍隊の面々は状況を理解できずに話し掛けているメタルバードに歩み寄っては彼に訊ねた。
「ね、ねぇ、バーンズ……何がどうなっているのか、詳しく私達にも解る様に説明してくれない。みんな混乱しちゃっているんだけど」
「ああ、そうだな。テレパスのないお前達には鮮血の声が聞こえないだろうし、詳しく語っておくか」
ミラーガールからの問いかけにメタルバードは赤塚組にジェイク、そして聖龍隊の面々に詳細を語り出した。
「……と、言う訳なんだよ。この流子が今着ている服は鮮血って名前の服で、ちゃんと意志を持っているんだ。流子はこの鮮血と合意の上で着衣しているからこそ、この様な見た目は派手だが強力な戦闘服に変形しては流子ともども変身できる優れものって訳なのよっ」
メタルバードが赤塚組やジェイク、そして同胞の聖龍隊の面々に流子が着衣している鮮血に対して説明を語っていると、ある事に疑問を抱いた大将がメタルバードに問うた。
「んっ、おいバーンズ。流子の嬢ちゃんは最初っから鮮血と意思疎通できていたから、その鮮血を着られる様になっているのは解る。それにお前さんも最初こいつ等と出会った時からテレパスで鮮血の意志を感じ取っていたのも納得できるぜ……それなら何で、流子以外の新世代型にも鮮血の声というか意志が伝わっているんだ? 俺達には丸っきり、その学ラン鮮血の声なんか聞こえないのによ」
大将からの問い掛けに対し、メタルバードは難しい表情を浮かべては大将達に己の考察を話した。
「それなんだが…………これは俺の推測ではあるが、新世代型だけに鮮血の声つまりは思考が伝わっていると言う事は、流子以外の新世代型二次元人にも鮮血の意志が伝わっていると言う事だ」
「だから! なんで新世代型の連中にしか鮮血の声が聞こえないのかって訊いてんだよ!!」
大将からの再度の問い掛けに頭を捻り思案にふけるメタルバード。
すると二人の会話を傍らで聴いていたジュピターキッドが自分なりの考察を立て始めた。
「もしかすると……バーンズ、君のテレパスで琴浦春香と斉木楠雄のテレパス伝達が今どうなっているのか確認して」
「あ、ああ……分かった」
ジュピターキッドに言われるがまま、メタルバードは現場の新世代型では二人しかいないテレパスの琴浦春香と斉木楠雄を、自身のテレパスとメタル化に伴って機械化したレーダーアイを駆使して二人のテレパシーに関する精神状況分析を始めた。
すると驚くべき事が判ったのである。
「ど……どうなっているんだ!? おい、琴浦に斉木! お前達のテレパスによる通信念波が新世代型全員に繋がっているぞ!」
「ど、どういう事ッすか?」
新世代型で二人しかいないテレパシーの琴浦春香と斉木楠雄の二人を診たメタルバードの診断を聞いて、理解できない真鍋義久が思わず聞き返した。
だが、このメタルバードの診断結果を聞いてジュピターキッドは確信をついた。
「そうか、やっぱり……新世代型同士の潜在意識が琴浦春香と斉木楠雄、二人のテレパスによって繋がったんだ。……琴浦春香、斉木楠雄。君たち二人も、ひょっとしてバーンズ同様初めから鮮血の意志と言うか言葉を感じてはいなかったかい?」
「そ、そういえば、みんな以外の声を薄々は感じてはいたけど……」
「僕も何者かの意志を感じていました……まさか服そのものの意志だったとは思っても見ませんでしたけど」
琴浦春香と斉木楠雄の話を聞いてジュピターキッドは確証した。
「そうか……おそらく無理やりこの施設に連れてこられた上に、此処に蔓延る無数の怪物を前にして、その恐怖と危機感から新世代型特有の互いに共存し合う生物的本能が共鳴した事で、互いの意志をテレパスで繋げるという潜在的能力に目覚めたんだ!」
「つ、つまり……どういう事?」
新世代型の長谷川ふみが訊き返すと、それに琴浦と斉木同様のテレパスであるメタルバードが詳細を語る。
「ようするに新世代型みんなの意識が、琴浦と斉木のテレパスを介して一つのラインに繋がっちまったって事よ。俺も昔から仲間内で互いの意思疎通の手段として皆の意識を俺のテレパスで繋げては、一種の通信代わりにしていたから解る」
メタルバードの詳細を聞いた室戸大智は、その明解な頭脳で理解を示した。
「つまり、琴浦さんと斉木楠雄。二人のテレパスが僕たちの現在の危機的状況によって新世代型二次元人全員の意識を一つに繋げた事により、本来は鮮血を着衣している纏流子さんとテレパスの御三方にだけに伝わる鮮血の意思を僕ら他の新世代型も伝わり感じる事が可能となってしまった。と、言うことですね」
「その通りだ」室戸大智の明白な理解力にジュピターキッドは真顔で返答した。
更にその時、ジュピターキッドの返答に続いてメタルバードが再び語り出す。
「それにな、お前ら。もしかすっと薄々は、この先全員の潜在意識が完全にリンクしちまう可能性もある。ようするに全員が周囲の人間の思想を自分の意志に関係なく読み取れる様になるかもしれねぇぜ」
「つ、つまり……! 簡単に纏めると、私たち新世代型全員にテレパシー能力が備わってしまうって事ですか!?」
「ああ、そういう事になるな」
メタルバードの語りに御舟百合子が一驚しながら問い返すと、それにキング・エンディミオンが頷いた。これには御舟百合子もその他の新世代型二次元人たちも驚愕した。
するとミュウザクロが神妙な面持ちで語り始める。
「確か、かつての新世代型にもテレパシーに近い意思疎通を介する特殊器官が備わっていて、それで互いの意志や考えを分かち合って行動していたらしいし……今の新しい新世代型にプロテクトされていた意思疎通器官が目覚めたのかもしれないわね」
「そ、そんな……」
自分等の思考が全員に伝わってしまうと思うと居た堪れない心境に駆られる琴浦春香を初めとする新世代型たち。
「………………???」「………………」
驚いている新世代型たちの中で、唯一話の内容が難し過ぎて理解しきれずキョトンとするばかりの燃堂力の様子を横目で観察しながら彼の思考を無表情で気に掛ける斉木楠雄。
自分たち新世代型に次々と迫る命の危険と異形の存在に対する恐怖心が新世代型の中に秘められていた意思疎通能力を目覚めさせ、同じ新世代型同士なら互いの意志を分かち合う事が可能となるだけでなく全員が周囲の人々の思想を念視つまりは読み取れる様になってしまった現状にただただ困惑する一同であった。
[ソルジャーの正体]
新世代型の潜在意識によるテレパスを介した意思疎通の覚醒により、新世代型たちと他の面々は纏流子以外にも彼女が着用している通称
最初は互いの思考が周囲の同じ新世代型に伝わる事に戸惑いを感じ始めてた新世代型たちであったが、その戸惑いよりも彼等の意識は服なのに己の自我を持っている纏流子が着衣している鮮血に向けられていた。
「へぇ~~、流子ちゃんの学ラン鮮血って名前だったんだね! 家で洗濯した時とかは普通の服みたいだったのに、意志があるなんて驚きだなぁ」
(ハッハ! 満艦飾マコ、お前んちでは俺も流子も世話になってるぜ! 特に、お前の母ちゃんが俺様を洗濯してくれた時はエライ気持ちが良かったぜ! まさか洗濯されるのが、あそこまで気分の良いモンだったとは……もし無事にお前んちに帰れたら、またマコの母ちゃんに洗濯してほしいぜ!)
「うん! 私からもママに言っておくよ」
初めて鮮血と意思疎通できた満艦飾マコは、流子の隣から離れずに鮮血と楽しそうにお喋りする。
そんな様子を鮮血を着衣している流子はもちろん、同じ本能字学園の生徒である
「ま、まさか……纏流子の着ていた
「信じらんない……」「う、うむ……」
纏流子の着衣している鮮血に自我があった事実に今だ驚きが覚めない
一方で、その鮮血を着衣している流子と幾度と無く共闘してきた同じ新世代型の栗山未来たちは楽しく会話を展開しているマコと鮮血、そしてその二人?の会話を呆然と眺めている流子らを見ながら話をした。
「どうも変わった学ランだなぁって思ったんだけど、まさか意志を持っているなんて」
「世の中、色んな種族に色んなモノが溢れかえっているわね」
「はぁ……自我のある服なんて、な」
自我があった鮮血について語り合う未来に名瀬美月に溜息をつく神原秋人。
その一方で、新世代型全員にテレパス能力が身に付いたかもしれないと指摘され興味や関心が尽きない者らもいた。
「お、俺達……全員、相手の心理が分かっちゃうテレパスって能力が覚醒したって……」
「う、うん。何だか、不思議な感じだね」
不運にも狂気の施設で感動の再会を果たしたレイジとイオリ・セイは何ともいえない心境に駆られてた。
「へへ、俺にも琴浦みたいなテレパシーが使えるようになるとは……何だかワクワクしてきたぜ」
「ま、真鍋くん……そんな……」
「真鍋くん。今はそれよりも、みんなで此処から脱出する事が先決よ」
「そうですよ。僕たち新世代型二次元人の潜在能力であった意思疎通の為のテレパスが覚醒したとはいえ、僕たち全員の危機的状況は変わってないんですから」
自身にも琴浦春香のようなテレパス能力が身に付いたのかと思い半笑いを浮かべる真鍋に呆然とする琴浦春香本人。そして、そんな真鍋に自分たちの状況が変わらず危険な現状であると告げる御舟百合子に室戸大智。
そんな新世代型たちが自分たちに覚醒したテレパスによる意思疎通に戸惑いと驚きを覚える最中、一行は更に先へと進む。
すると彼等が通過しようとした部屋、その中央に設置されている投影機にメタルバードたち聖龍隊が気を止めた。
「これは……何の投影機だ?」
「どうやら、映像を壁のスクリーンに投影する機材みたいだけど」
室内中央に置かれている機材を念入りに調べるメタルバードとジュピターキッド。
すると此処でジュピターキッドが機材に導入されている映像ソフトの中身を確認しようと、投影機の電源を入れた。
電源を入れた瞬間、投影機から光が壁に向かって伸び映像がスクリーンに投影された。
映像には一人の頭のヘルメットから全身の軍用服に至るまで全てが黒で統一された男が映し出された。
「こ、こいつは……!」「大将、どうかしたのか?」
映し出された黒服の男を視認して表情を一変させる大将の言動に、メタルバードが訊ねると彼は血相を変えて答え返した。
「こ、こいつ……さっきも、そうお前らと合流する前にも通ってきた部屋に置かれてた投影機に納められていた映像にも出てた野郎だ!」
「なんだと?」大将の発言に表情を変えずに返事するメタルバード。
そして映像はそんまま一同の目に晒されながら続いた。
映像に映っている黒の男は、先ほど大将たちが聖龍隊と合流する前にも拝見した映像に描写されているのと変わらずに、次々と自分以外の兵士を俊敏な手際で殺害していく映像であった。
屈強な兵士と言う装いで身を固めた黒き男は、携帯しているナイフで相手の兵の首筋を一瞬で切り裂いては大量の血飛沫を噴き出させる。
時に相手の背後に回ってはその腕を掴んで投げ飛ばしては地面に叩きつけると同時に手首を捻じ曲げて強引に骨を折ってみせたり、備品である細い鉄のワイヤーで相手の首を締め上げると背負いながら更に力を入れてはワイヤーで首を切断したり、その殺害の手法は先ほど赤塚組や新世代型たちが目にした映像に負けず劣らない残忍な殺害方法であった。
だが、そんな次々に兵士を惨殺していく黒い兵士を視認していた聖龍HEADの顔は自然と引き攣っていた。
「お、おい……これ……」「ああ、おそらくは……」
耳打ちでメタルバードに話し掛けるエンディミオンに、耳打ちで話し掛けられたメタルバードは険しい顔で頷いた。
そして映像の黒服の男は、周辺の兵士全てを殺し尽くしたのかピタリと立ち止まり、その場で直立する。すると黒服の男に二人の中年男性が歩み寄るのと同時に、カメラも黒服の男にアップしていく。
カメラフレームに綺麗に納まる黒服の戦闘服と中年男性二人の計三人は、お互いに対面したまま話を始めた。
「いやあ、中々良かったよ。さすがは洗練された技術だ」
中年男性の一人が話し出すと、それに黒服の男が話を返す。
「別に……俺は言われた通りに集められた連中相手に自分の実力で倒していっただけだ。これでアンタ等も満足だろ?」
黒服の男が不満そうに話し終わると、もう一人の中年男性が彼に話す。
「ああ、まあな。これで十分にデータが撮れたよ。君の格闘スキルと極めた殺人戦法は、実に輝かしい成果だ。これを基に我々は更なる軍人や諜報員の教育に実用できるというものだ」
映像に撮れた記録は、今後さらに軍人や諜報員の戦闘術に応用できる良い情報だと告げる中年男性に対し、黒服の男は平然と話し返した。
「それは良かったな。まぁ、俺もたまにはこうして動かないと体が鈍っちまうし、殺しの手法も忘れっぽくなっちまうからな……また片付けてほしい連中や罪人を集める事ができたら呼んでくれても構わないぜ。見せるだけならタダなんだしな。それに上手い肉料理も用意してくれると言うなら尚更だ」
この男の言葉を聞いて、一人の中年男性は高笑いを上げた。
「はははっ、君は相変わらず肉料理が好きなのだな。しかしまあ、良くも此処まで人を惨殺したというのに食欲が失せないものだな」
この質問に対しても黒い戦闘服の男は平然と落ち着いた様子で答える。
「俺は人と敵を区別しているからな。敵なら容赦なく斬る……それが常識だろ」
これに対しても中年男性は不敵な高笑いを浮かべた。
「ははっ、その通りだな! 此処に集めた連中は、実に吐き気を催す程の外道ばかりだからな。殺しても誰も咎めやしないだろう」
と。この中年男性の言葉に戦闘服の男は厳つい口調で言い返した。
「それは違うだろ……殺すのではなく、処分。間違わないでほしい」
この言葉に中年男性は己の発言を訂正した。
「あ、ああ、そうだったな済まん。言葉を誤ってしまったよ」
黒服の男は再び話を始める。
「同じ殺人でも、常人の場合は罪に問われるが……
「そ、そうだな……
中年男性の言葉に黒い男は平常心で答え返した。
「その為に国連軍は実権の強化及び徹底した軍事の増力に尽力を上げたじゃねえか。俺ん所の聖龍隊も、秩序保持の為に日々
「も、もちろん……君たち聖龍隊にも感謝しているよ。ホント」
「全く。上の人間はいつも目先の事しか見てないな……もっと視野を広げて行動しないと変わり続ける情勢に追い付かねェぜ」
そう言うと黒尽くめの男は、自身の頭部に被っている黒張りのヘルメットに手を掛け固定している箇所を外す。
そして次の瞬間、黒の男は被っていたヘルメットを持ち上げ、ヘルメットを完全に頭部より外しては素顔をカメラの前に晒した。
映像を見続けていた面々は、黒服の男の素顔を見た途端、衝撃で背筋を凍り付かせた。
ヘルメットを外した男は、スポーツ刈りと角刈りの中間の髪型と顔に滴れる大量の汗を振り払うように激しく頭を左右に振る。カメラの前で男の頭髪と顔から滴れる汗が煌きながら飛散する。
そして男は厳つい顔立ちをカメラに向けると、撮影していた者に話し掛けた。
「ほれ、今日はもう終わったぜ。B級映画並みのスプラッタだっただろ? 俺の戦場では、いつもこの光景ばかりが周囲に広がる」
素顔を晒した男の言葉に反応し、再び撮影者が辺りにカメラを向けると周辺は殺害された兵士の血塗れの亡骸と、大量の血溜まりで紅く染まる惨状がフレームいっぱいに広がっていた。
そして素顔を晒した男は、自分と対面している二人の中年男性に話を掛ける。
「それじゃ、俺はシャワーでも浴びてくるぜ。動きまくったから大量に汗も掻いた上に、相手の返り血で体がベトベトして適わねぇ」
「ああ、いつもの様にシャワーは自由に使っていいよ。君は全くもって優秀な武人だが、女性並みに汗で体がベト付くのを嫌うとは……」
「仕方ねえだろ。俺は極端に汗っかきで仕様がないんだよ」
そう中年男性に言い残して、大量に相手の兵を殺戮していった男はその場を後にした。その男……小田原修司は平然と相手の返り血を浴びた体と汗を掻いた頭皮を洗い流す為に。
そして場に残された二人の中年男性はそのままカメラの前で話を始める。
「しかし……いつ見ても彼は相手を殺害するのに躊躇いが感じられないな」
「そうだな。実に恐ろしいが、彼のその意志と実力がなければ世界の秩序は安定されてはいないのだからな」
「そうだが、敵と認識した相手を人間と見ずに、ただ敵として命を奪える精神を備えているとは……恐ろしいものだ」
「敵と認識した相手は、その命を奪うまで地球の果てまで追うという噂も飛んでいるからな。何より小田原修司は世界の平和、つまりは秩序を心から望んでいるからこそ処分と言う名目の殺人にも手を掛けられるのが強みだ。今後とも、彼の様々な情報を採取していきながら彼には世界秩序の為に活動していって貰わないとな」
「そうですな」
二人の中年男性は話し終わると、カメラに向かって「おい、記録は此処まで良い」と告げて、撮影を終わらせた。
映像も其処で途切れて終了した。
『…………………………』
投影機が止まり、スクリーンに映し出された映像を最後まで見届けた一同は愕然とした表情で立ち尽くしていた。
だが、静まり返った現場の空気を断ち切るように大将が言葉を発した。
「お、おい……今のは……」
大将の愕然とした発言を聞いて、真横で映像を傍観していたメタルバードが愕然としながらも厳つい真顔で話し返した。
「あ、ああ……間違いない。政府が記録した、修司の戦闘の様子だ……戦闘というよりも、殺戮に近い映像だったがな」
このメタルバードの話を聞いて、赤塚組はもちろん新世代型の面々も衝撃を受ける。
先ほどから自分たちが施設を移動していくと同時に通過する部屋に点々と置かれていた投影機に納められていた映像。自分たちが目を通した映像に記録されていた数々の残虐行為を繰り返す黒い戦闘服の男……それが小田原修司であった事実に新世代型は今までに無い衝撃を受け驚愕するのだった。
武術を極め、己の肉体を屈強に鍛え上げた男 小田原修司。
映像に納められていた彼の残忍極まりない戦術と、それに対して小田原修司自身が平然としている様に新世代型たちは衝撃を受けた。
聖龍隊を結成させ、世界の秩序を保ってきたと同時に自分たち二次元人たちの人権を確立していった恩恵ある人物の小田原修司の隠された素顔を、新たなる世代の二次元人たちは知ったのであった。
[小田原修司の素性]
赤塚組と新世代型たちが施設内で観てきた映像に酷写されていた残忍な手段で兵士の命を奪っていた黒服の兵士、その正体が小田原修司だと知って愕然とする。
一方、同じ映像を観ていたにも拘らず聖龍隊とくにHEADの面々は悠然とした態度で施設を進んでいくのであった。
動揺も戸惑いも見せない聖龍隊とその最高幹部であるHEADの表情を伺い、新世代型たちは彼らに対して疑問を抱き始めてた。
「さっきの……ううん。今まで私たちが観て来た映像の中で戦っていたのは、全て小田原修司さんだったって事なの……?」
新世代型の琴浦春香の不安と恐怖に染まった言葉に、聖龍隊総長のメタルバードが平然と答え返した。
「多分な。修司は昔から政府の命を受けては、色々な任務を負ってきたからな。その中には、さっきみたいに政府の研究や軍事武術の為の教材として格闘術を披露したり、またある時は密命を受けて要人の暗殺や軍事的介入など……様々な活動を俺たち聖龍隊には何も告げないまま単独で行っていた」
「な、何故……小田原修司は其処まで、政府の命令に忠実に従っていたんですか?」
琴浦春香に続いて室戸大智が訊ねると、総長メタルバードは重く険しい面持ちで語った。
「……当時、修司は自らの人権と尊厳を完全に国連へ謙譲したんだ。それ故に修司はその後、長い間国連を初めとする政府機関が所有する兵器として戦い続け、同時にD-ワクチンで変異していた遺伝子や身体能力を研究対象として自身を委ねていた時期があったんだ」
「な、何で小田原修司は其処まで自分の事を……!」
余りにも自身を犠牲にしているかのような小田原修司の行動に疑問と激しい動揺に駆られてしまう真鍋義久の台詞に続いて、そのメタルバードの話に
「聞いた話ですけど……小田原修司は、そうやって自身の人権と尊厳を国連と言う巨大な権力に委ねる事で自らを兵器として認証させ、それにより己の権限と聖龍隊という組織の存在権を世界中に認可させたとの事ですが」
「その通りだ。かつてオレたち聖龍隊の<異次元からの脅威>との大戦で戦った初期の聖龍隊メンバー……セーラームーンら星の戦士達、愛と正義の使者キューティーハニー、天よりの使いナースエンジェル、封印されしカードの使用者カードキャプターさくら、火/水/風から連なる三人の
険しい顔立ちでメタルバードはその後も語り続けた。
異次元からの脅威との大戦後、聖龍隊はその功績を称えられながらも彼等が持つ常識から外れた能力に懸念を抱く者が国連を初めとする国家機関の中にいた。そのため聖龍隊は常にそういった機関の人間から批難の眼差しを向けられる事も多かったと言う。
そんな中、小田原修司はアメリカ軍在籍時に投与されたD-ワクチンによる肉体強化と変異によって、アメリカを中心とした国連機関にその身を預ける事となった。無論その様な状況下でも小田原修司はアニメタウンに帰還し、軍で学んだ様々なノウハウを生かして聖龍隊の組織構造を劇的に向上させた。
だが、聖龍隊の組織構成向上の活動の最中、そんな組織としての成長と拡大に多大な関心を寄せた一つの国家がアニメタウンに諜報員を放って聖龍隊と衝突させた。その国こそ、今は無きアジアの独裁国家 北の国であった。
これにより小田原修司は聖龍隊のあらゆる組織としての戦力と情報戦を展開しつつ、アジアで最も危険な独裁国家である北の国に侵攻。その北の国の政権を瞬く間に崩壊させる事に成功したのだった。
この戦果により聖龍隊の国際的評価は著しく上昇し、その組織としての認可と評価を認められたのだった。
国連からは正式なアジアのヒーローチームとして。日本からは前々から驚異的であった北の国を平和的に解放したという成果から、天皇家より直属の皇軍として聖龍隊が認可され、小田原修司自身の地位も上昇した。後に天皇家直属の皇軍としての立場は、小田原修司の弟子である村田順一を筆頭とした北の国侵攻にも活躍した実績を持つスター・コマンドーが担う事と成った。
以後、聖龍隊はアジア各地を護るヒーローチームとしての活動をしながら同時に日本を守護する天皇家直属の軍隊 皇軍として活躍し、小田原修司のほうはD-ワクチンで変異した自身の肉体を国連やWHOに研究対象として預ける事で組織の立場を確立させていった。言うなれば身売りである。
しかし小田原修司が国連やWHOに自身を預けたのには、聖龍隊の立場を確立させる為以外の理由があった。それは己の遺伝子を使った悪質な研究や犯罪利用に使われない為であり、同時に変異した自身の遺伝子の平和的利用を考えた結果である。事実、小田原修司の変異した遺伝子からはガンの特効薬を初めとする画期的な薬物や酵素が造り出され、小田原修司はそれらを国連やWHOを通して世界中の人々のほぼ無償で配布したのである。もし小田原修司の遺伝子から造り出された物質を一般の製薬企業が売買目的で手に入れたら、それらが原因で大々的な経済破綻にも繋がり兼ねないからだ。
こうして小田原修司の献身的な活動により、聖龍隊は国連から正式に認可された組織として、日本からは皇軍として認められ、小田原修司本人はその身を研究対象として国連やWHOに預けた上に己を人間兵器としての立場に確立していったのである。
その後、小田原修司は人間兵器として国連の命に従い様々な紛争やテロを最小限の被害で食い止めてきた。
その様な情勢の中で出現した脅威<革命軍士>により世界の主立った国や機関が攻撃されていく中でも、小田原修司や彼を筆頭とした聖龍隊は激烈に衝突し合い、世界情勢は激しく変動していった。
そして2012年12月、聖龍隊は遂に革命軍士の総元帥であるブラッディ・ドラゴンを撃破し、革命軍士は空中分解した。
革命軍士崩壊後、小田原修司は前々から公言してきた通りに国連に自らの兵器としての実権を返し、国連からは彼の人権を返還される事となり表舞台から離脱する事となった。
その後は聖龍隊総長の座を現在のメタルバードことバーンズに譲り渡し、自らは己が兵器としてなくなった世界がどの様に変化していくのかを見届ける為に単身アニメタウンを旅立った。
以上の事を現聖龍隊総長メタルバードは新世代型の面々に語り明かした。
「そ、それじゃ……小田原修司は自分から、国連に兵器として自分を身売りしたって訳ですか!?」
メタルバードからの話を聞いて驚愕する真鍋義久に対し、メタルバードは淡々と話し返した。
「ああ、それが修司自身が選んだ道さ。ま、オレらがその事を知ったのはそれから随分先だがな」
更にメタルバードは話を続ける。
「それにな、修司が自分を兵器として国連に身を委ねたのは、あくまで聖龍隊の為だけではなかった。まして二次元人の人権確立でもない……修司は自分の存在意義を国際連合はもちろん世間に認められたい一心で自ずと兵器としての道のりを歩いたんだ。兵器としてでも良い、自分を必要と見てほしかったんだ」
するとメタルバードに続いてジュピターキッドも神妙な面持ちで語り始めた。
「みんなも小説を読んで知っているとは思うけど、小田原修司は先天性の発達障害者だった。生まれながら障害者として生き続けなければならない小田原修司は、自らを障害者という欠陥品・不良品と捉えてしまってた。故に、そんな自分を兵器としてでも良いから世の中に必要とされ、存在を認めてもらいたかったんだ。……だから兵器として義兄さんは、国連の命令で結構汚れ仕事も請け負っていたらしいよ」
小田原修司の実情を暗い心情で語り明かす義弟のジュピターキッド。彼の暗い心情に感化される新世代型に、メタルバード、ジュピターキッドと続いて彼等と同じ古参メンバーであるキューティーハニーも小田原修司についての実情を語り明かす。
「ようするに彼は自分の存在意義を認めてもらいたかったって訳なの。その為にはお偉いさんの命令に従って血生臭い汚れ仕事も淡々と請け負ったり、兵器として戦場に投下されては現場にいる兵士を全て倒したりと……常人では計り知れない苦渋を味わってきたのよ。障害者という常人ではない存在として生まれてきてしまった故に」
『……………………』
障害者としての人生を歩まざる得なかった故に、兵器としてでも良いから自分を必要としてほしいと願った小田原修司の苦汁の人生を聞いて言葉を失う新世代型たち。
すると此処で黙り込んでいたメタルバードが再び語り始めた。
「まあ、だからこそ修司はオレたちの様な一般的な三次元人から危惧される二次元人を庇ってくれたんだけどな。自分同様、世間から異質な存在として見られる二次元人の人権確立に修司は力を注いで来てくれたんだ」
メタルバードに続いてジュピターキッドも再び語り始める。
「皮肉だけど、小田原修司という三次元人が発達障害者という立場でなければ、僕たち二次元人の立場を理解してはくれなかっただろう。異質な存在として迫害を受け、時には邪険に扱われる二次元人を初め……兄さんは自分の様に世間から迫害や差別されてきた人種、黒人やユダヤ人を初めとする多くの人々の人権運動を昔から行ってきた。そしてようやく、近年になって自分が発達障害者である事も打ち明けられた」
「……私たち、三次元人の人達に生み出されたのに……それなのに、迫害されるなんて……」
「そんな私たち二次元人を理解してくれたのが、私たち同様に世間から迫害の対象になっていた障害者の小田原修司さんを初めとする数少ない人達だけだなんて……」
自分たち二次元人の人権と尊厳を護り、そして理解してくれたのが、自分らと同様に世間から爪弾き者として扱われる障害者であった小田原修司である事実に悲痛な真情を抑えきれないプロト世代のチョコと桃花。すると、そんな悲痛な想いに駆られる彼女達や複雑な心境の新世代型たちに聖龍隊副長のミラーガールが優しく話し掛けた。
「大丈夫よ、みんな。今は確かに私たち二次元人への理解が世間的には弱いけど、いつかは三次元人たちも私たちを理解した上で受け入れてくれるわ。そう、修司のようにね」
「アッコさん……」
小田原修司の婚約者でもあるミラーガールを本名で呼び返すチョコ。そんな彼女を初めミラーガールは周辺の皆に話し続ける。
「自分の事、此方の事を分かってくれるのには時間が掛かるのかもしれない。だけど、いつか必ず解り合える時が来るはずよ! 今の私たち同様に迫害されてきたユダヤ人や黒人だって、今ではちゃんと自分の尊厳を認めてもらっているし……奴隷の歴史を持つ黒人なんか今の時代、合衆国の大統領になれたんだからっ! いつか必ず、私たち二次元人が完全に理解される時代が来るはずよ」
笑顔で話し続けるミラーガールの言葉に並々ならぬ自信と信念を感じる新世代型たちとプロト世代の三人は、自然と彼女の言葉に心の底から何かを奮い立たせられた。
更にミラーガールは笑顔で眼前の新世代型たちやチョコ達プロト世代の三人に話し続ける。
「確かに、簡単に人と人が解り合えることはできないかもしれない。けれど……今までの歴史が多くの人種と共に解り合えた上で成り立ってきた様に、いつか、いえ絶対! 私たち二次元人も人々から理解される日が来る筈よ! 修司や私たち聖龍隊が、世界から認められたように……きっと」
勇気と自信そして信念に満ちたミラーガールの言葉に並々ならぬ力強さを感じ取る新世代型たちとチョコ達三人のプロト世代。
そんなミラーガールの発言を聞いたのか、先ほどまで仏頂面で話をしながら足を進ませていたメタルバードが再度新世代型たちの方へと話を振った。
「……そうだな。修司が今まで、自分の人権、いや人生を犠牲にしてまでも護り抜いた二次元人の人権と尊厳、何よりも未来を……今度はオレたち二次元人自身が自ら主張しつつ自力で切り拓いていかなきゃならねェしな。修司の功績、それを無駄にしない為にも」
メタルバードの言葉に、最も新しく生み出された新世代型たちは胸の内で力強く頷いた。
自分を、二次元人を認めて貰うために自ら兵器と成り果てた男 小田原修司
発達障害者と言う世間から冷たくあしらわれた彼は、世の中の多くの爪弾きにされ迫害と差別に晒される人々の実情を心の底から理解した。
それ故に自分と同じ弱い立場の存在や人種に対して多大な人権運動を行いながら、同時に自らの実権を強める為にも国連に兵器として自らを売った。
認めて貰いたいから……自分と同じ弱い立場の人々を、二次元人を護る為に……一人の障害者は自らの人権を棄てたのであった。
そんな一人の三次元人の信念と、それを受け継いだ聖女を初めとする聖龍隊という組織の人々の真情を聞き入った新世代型の皆々は、心の内を熱く火照るのであった。
[鬼神から造り出された異形]
聖龍隊より国連を初めとする機関に身売りした小田原修司の実情を聞いた新世代型たちは、その小田原修司の破天荒な人生の一部を垣間見た。
しかし彼等はもちろん聖龍隊や赤塚組を含む自分たちの現状は変わってはいない。
国連やWHOに身売りした小田原修司の変異した遺伝子、そしてその遺伝子より抽出されたD-ワクチン等から造りだされた上に強化された生体兵器が徘徊する地下の施設を進行する新世代型達の恐怖心は解消されずにいた。
「け、結局……自分の遺伝子を国連とか世界保健機構に研究材料として自由に使って良いって言った小田原修司の、その遺伝子から造られたD-ワクチンとかで強化された生物兵器が、この施設にわんさかと居るんですよ、ね」
「ああ、そう言う事になるな。お前らも気を抜くな、奴等はいつ何処から出没するかも想定できねェんだ。オレ達もなるべくお前らを護りながら進むが、お前達自身も周りには常に警戒しながらオレらに付いて来るんだぞ」
挙動不審で話し掛けてくる新世代型の真鍋義久に対してメタルバードは彼を初めとする新世代型たちに自ずと周囲の状況に気を配りながら細心の注意で進むよう警告する。
すると案の定、暗闇から再び異形の者等がその姿を現した。
「敵だ!」「頭を狙え!」
暗闇から出現してくるゾンビの頭部目掛けて攻撃を放っていく聖龍隊と赤塚組。その後に続き、自分たちに近付いてくるゾンビらを纏流子や
するとヒョイと横の通路から白くてボロボロの包帯を巻きつけたトンカラトンが出現しては、一行の進行を防ぐ。
「邪魔だ!」赤塚組頭領の大将はトンカラトンの顔面に向けてショットガンを連射、無数の散弾を浴びたトンカラトンは一瞬怯みながらも右手の日本刀を振り上げては、それを一気に下ろした。「おおっと」間一髪の所で日本刀の攻撃を後退して回避した大将は、更にトンカラトンの顔面に散弾銃を連射する。
遂にトンカラトンは力尽きたのか、前のめりに倒れ込んでは動かなくなった。
一行がゾンビにトンカラトンといった脅威を討伐し一息入れようとした、その時。今度は通路の奥から数匹の犬らしき物体が急接近してくるのが目に入った。
「あれ? ひょっとして、あれ……ワンちゃん?」
ルーキーズ隊士の一人、真宮桜が駆けつけて来る犬のような物体を目にして呟いた次の瞬間、彼女等ルーキーズの総部隊長であるミラールが叫んだ。
「タダの犬じゃない! ゾンビ・ドッグよ!!」
何と皆の前に駆けつけて来る犬達はすべてウィルス感染で体の至る箇所が腐敗し凶暴化したドーベルマン系のゾンビ犬であった。
走り寄っては飛び掛り、その腐敗しきった口に鋭く光る牙で噛み付いてくるゾンビ犬に聖龍隊も赤塚組も応戦しては、次々に撃退していく。
攻撃を浴びて、ゾンビ犬は「クゥン……」と低い鳴き声を発しながら力尽き、横たわる。一行は力尽き、床に横たわるゾンビ犬の亡骸その横を通り過ぎつつ先へと進行するのであった。
小田原修司の遺伝子や、それから抽出されたD-ワクチンで製造・強化された数多の生体兵器が群がる地下の研究施設を進んでいく一行。
だが次第に天井の電灯も乏しくなっていき、進んでいく度に聖龍隊は携帯しているライトを頼りに通路を進むようになっていく。
僅かな灯火の中、慎重に足を前へと歩ませ少しずつ確実に進んでいく一行。
するとその時、薄暗い通路の中で何者かが突然悲鳴を上げた。
「きゃっ」
その声に先頭を歩いていたメタルバードと大将を初めとする聖龍隊と赤塚組が立ち止まり、悲鳴の聞こえた方へ顔を向ける。
「ど、どうしたんだ?」
大将が悲鳴の方へと訊ねると、か細い声で女子の一人が大将の問い掛けに答えた。
「な、何かが足に触れたんです……」「足?」
か細く不安に満ちた声で答え返す新世代型の岡野佳の返答に不思議に思う聖龍隊。だが彼女の足元を含む周辺をライトで照らしても何も居なかった。
「き、気のせいじゃ……」
HEADの蒼の騎士が気のせいではないかと話し返そうとしたその時。「きゃっ!」「な、何かいる!」先ほどの岡野と同じ様に悲鳴を上げる新世代型の薙切アリスと華山るるか。二人の女子の悲鳴に再び周辺にライトを向けて探索する聖龍隊と赤塚組。しかし先ほどと同じで何の姿もなかった。
「何も居ないぞ」
現状に何もいない事を指摘するキング・エンディミオン。すると新世代型の琴浦春香と御舟百合子が、同じ新世代型の真鍋義久に声をかける。
「もうっ、真鍋くん! こんな時に女の子の生足なんか触っている場合じゃないでしょっ」
「こんな時でも女の子の美脚に興味があるなんて……ほんと、しょうがないわね」
二人は暗闇の中で真鍋が女子の生足をドサクサに紛れて触ったのではないかと疑う。すると琴浦と御舟に続いて、悲鳴を上げた女子を含むその場の女性陣は全員真鍋の方に視線を送る。
しかし当の真鍋本人はこの事に対して即座に否定する。
「ち、違う! 断じて俺じゃないよ……そりゃ、確かに魅力的な生足が暗闇の中でも一際目立つけど。でも、だからってドサクサに紛れて触るほど俺は落ちぶれちゃいない!」
断じて自分は暗闇の中で女子の生足を触ってないと断言する真鍋の言葉に、女子達は未だに疑心の眼差しを向ける。
だがその時メタルバードが険しい顔付きで言った。
「いや……何かいる」
メタルバードには何らかの気配を感じ取っていた。そして「ッ! あれは!」メタルバードが咄嗟に手にしていたライトを向けて暗闇の一点を射した。すると床と壁の面に隣接している換気口の出入り口で何かが蠢いていたのだ。
「な、何だ!?」
換気口の薄い鉄板を引っ掻くような奇怪な物音に反応した一瞬、その視界に捉えられた蟲の様な奇怪な容姿に激しく動揺する赤塚組のテツ。
だが無数の細い足で構成された異形の無視に酷似した蠢く物体は、狭い換気口の中を這い回るかのように姿を消し、聖龍隊と赤塚組は多大な警戒を抱く。そんな彼等と同様、ジェイクも拳銃を構えて常に臨戦態勢を維持していた。
誰もが換気口の中で蠢いていた異形の物体に気を取られながら、再び足を前へと歩ませて先へと進もうとした。
が、次の瞬間。
「ウッ、ぐわ……ッ!」「ば、バーンズ!」
突如として天井の換気口から無数の触手が伸びてきては一直線に下方のメタルバードの首に巻き付いた。慌ててメタルバードの首に絡みつく触手を解こうと駆け寄るジュピターキッド達HEADの面々にメタルバードは首を締め上げられながら言う。
「み、みんな……このままオレの首に巻き付いている触手を引っ張るんだ。一斉に引っ張って、強引に換気口の中の奴を引きずり出すんだ……!」
このメタルバードの言葉を聞いて、聖龍HEADは一斉にメタルバードの首に絡みつく触手を掴んでは思いっきり引っ張った。
体液なのか微かに滑りのある触手を、手をすり抜けそうになりながらも力いっぱいに引っ張る聖龍HEAD。そんな彼等の姿を見かねたのか、後輩である他の聖龍隊の面々も手伝い始めた。
すると少しずつ換気口から蟲の様な体が見え始めてきた。触手を引っ張る者達は更に力を込める。すると続いて換気口からは哺乳類の毛皮の様な毛並みが現れ始めた。
そして触手を引っ張る者等は、一斉に力いっぱい引いては換気口から触手の主を引きずり出した。
換気口から引きずり出された触手の主は、床に落下しては同時にメタルバードの首に絡ませていた触手を解いてようやくその全貌を露にした。
一同は、換気口から引きずり出されたその異形の存在に目を奪われた。
上半身は犬に似た胴体、しかしその眼球は陥没しており耳の部分からは二本の目玉のような触手が伸び、異様に長い舌。そして下半身はもはや犬のそれではなく、無数の長細い足で構成された虫に酷似した体と尾っぽ。異様に長い舌を垂れ出しながら、その口から涎を垂らしてか細い呼吸を発するその生き物は、頭部から伸びた二本の目玉の触手で一行の方に目を向けた。
「な、何だコイツ……!」「気色悪い……っ」
異様な全貌の怪物に愕然となる大将に一気に蒼褪める海野なる。
そして下半身が虫で上半身が犬の怪物は、犬の前足と無数の細い足でカサカサと床を這う様に接近してきた。
「こ、コイツ何なんだ!」「取り敢えず攻撃しろ!」
異形の犬に似た生物に激しく戸惑う大将に対し、同じ赤塚組のテツは皆に攻撃を指示する。
聖龍隊、赤塚組の攻撃を受けて怯みながらも突き進んでくる。だが攻撃を受け続けた奇形の犬は力尽きる。
ようやく奇形の生物を倒した一行が安堵に衝こうとしたその時、突如としてジュピターキッドの足に何かが巻き付いてきた。
「な、何だ!?」
戸惑うジュピターキッドが自分の足に絡みつく細い触手の先に目を向けると、其処には先ほどとは別固体の奇形の犬がボタボタと涎を垂らす口から触手を伸ばしてきてはキッドを引っ張っていた。
「くそッ」
ジュピターキッドは思わず腰に下げていた茨の鞭を手に取ると、それを力いっぱい奇形の犬に振り付けては棘だらけの鞭で叩いていった。
幾度と無く棘だらけの鞭で叩かれた奇形の犬は、ようやくジュピターキッドの足に絡ませていた触手を解いては後退していく。その隙にミュウミントが弓矢で奇形の犬の頭部に光の矢を直撃させて討伐する。
やっとの思いで二頭の奇形の犬を撃退した一行だったが、キッドの足首を絡ませていた犬をミュウミントが倒した直後、戦闘による音を聞き付けたのが同じ容姿の奇形の犬が群れで現れた。
「む、群れで来やがったぞ!」「慌てるな、一匹ずつ確実に倒していけッ」
群れを成して現れてきた奇形の犬に対して戸惑いと動揺をあらわにする大将に対してメタルバードが落ち着いた対処を施すように言い渡す。
そして一行は群れで襲ってくる奇形の犬に対して応戦を開始した。
奇形の犬は、その口から細い触手を突出させては手や首に絡みつかせて強引に自分の方へと引き寄せようとする。しかし伸ばしてくる触手に対してセーラーウラヌスや獅堂光たち剣を武器として用いる聖龍隊士らが振り翳しては、触手を断ち切っていく。
一方のマーズやナツ、ジュピターやグレイなどの自然エネルギーで戦う隊士らは、そのエネルギーを放出して群れで襲い掛かってくる奇形の犬に攻撃を仕掛けていく。
しかし異形の犬は、僅かな攻撃の狭間を抜けて標的と捉えた聖龍隊や赤塚組に飛び付いてくる。
「うわッ」「きゃっ!」
ニュー・スターズのロビとリナリー・リーに異形の犬が飛び付いては、下半身の幾つもの足で纏わり付くのと同時に犬の牙で喉元に喰らいついてくる。
二人は何とか自分らに飛び掛ってはしがみ付き噛み付いてきた異形の犬を振り払っては、反撃に転ずる。二頭の異形の犬は攻撃を受けて床に倒れこむ。
数では圧倒的に押していた奇形の犬の群れであったが、怯む事無く強力な戦術で応戦していく聖龍隊や果敢に銃撃を展開していく赤塚組の攻防によって、次第にその数を減らしていった。
十数匹の群れを成して襲ってきた奇形の犬らを全て倒し尽くした一行は、ようやく一息入れた。
「ふぅ、やっと全部倒せた……」
安堵するセーラームーンを脇目に、メタルバードは横たわる奇形の犬の亡骸を注意深く観察してた。犬のような哺乳類型の上半身の体はそのままで、蟲の部分のみはジュワっと中身が溶けるかのように泡を発しながら消滅しだしていた。
「ふむ、なるほどな……こいつは一種の寄生タイプだ」
「き、寄生タイプって、バーンズ……」
大将が訊き返すと、メタルバードは深刻そうな顔で答え返した。
「うむ、コイツ等は一種の寄生するタイプの生体兵器に体を乗っ取られた犬達だ。この虫の様な部分が寄生主で、宿主である犬達の体の大半を自身と同化させては他の得物を襲う傾向のようだな」
『………………』
メタルバードの解説に言葉を失う赤塚組に新世代型の面々。
そんな黙然とする現状の中でメタルバードは倒した奇形の犬を指差して皆に言った。
「以降、この虫型寄生生物に寄生された犬を<
メタルバードの呼び掛けに、その場の皆は騒然となりながらも聖龍隊や赤塚組などの面子はメタルバードの呼び掛けに無言の応答を頷く。
その時、
「あの、聖龍隊の皆さん。この先、直進していくと僕たちが先ほど通った階段とは別の階段があります。其処から更に上の階へと進みますか?」
一般人であり同時に部外者である身の上ながら、ハッキングで知り得た情報を伝えては自分たちが進行して行く道行きを指定していく
「おお、そうか! 坊主、ありがとな。それじゃ、その階段を使って上の階へと進みますか、皆さん」
そう言うとメタルバードは意気揚々と歩き始めた。
一方の
「なに、バーンズは率直に君の助言に有難味を感じているだけさ。嘘偽りの無い言葉には率直に受け止め、それに関して素直に喜ぶのがバーンズの良い所さ」
ジュピターキッドの言葉に、メタルバードに助言を告げた
[上昇していく感知能力]
新世代型で元腕利きのハッカーであった
47,46と……確実に一階ずつ地道に足を進ませていく一行だったが、地道に一階ずつ上って行く手段に嫌気が差してきた子供達が騒ぎ出した。
「アアン! 全く、やんなっちゃうわ! なんで地道に階段で上っていかなきゃならない訳ですの!?」
「全くよ! こういう時こそ聖龍隊の特殊能力とかで一気に上まで行けない訳? それでなきゃエレベーターとか」
自分勝手な発言を唱える新世代型の花園まりえに森園わかなの二人の言論に対し、大将が大人の対応をする。
「文句は言わねェの、お嬢ちゃん方。地道には違いねェが、これが今のところ上まで行くのには一番手っ取り早いのよ」
大将に続いて聖龍HEADのキング・エンディミオンも落ち着いた物言いで応対する。
「それに、俺たち聖龍隊だって万能じゃない。こんな大人数を一気に最上階まで辿り着かせるなんて、神様でも出来やしないよ」
大将に続いて大人の対応を見せたキング・エンディミオンの言葉に、新世代型の女子達は口を閉ざしてしまう。
と、皆が階段を上っている最中の時であった。
「おい! 纏流子! お前さっきから何を皐月様に対して無礼な言葉を……!」と、薄暗い階段を上っている最中に突然、大柄な声が階段に響き渡った。
皆が何事かと声のした方へ目を向けると、そこでは少し高い位置から
当の纏流子と満艦飾マコの二人は、突然大声を上げられた挙句に厳つい顔で睨んでくる四天王たちの態度に怯みながらも、流子は彼等と著しく睨み合っていた。
「おいおい、君たち。一体全体、どうしたんだい?」
今にも衝突寸前の様子に見かねた聖龍隊ルーキーズの一員である六道りんねが間に入る。すると自分らの間に入ってきたりんねに四天王の紅一点
「どうしたも、こうしたも……さっきから流子の奴! 皐月ちゃんや私達と一緒に行動する事にウンザリしたとか、全く一緒になるなんてツイてないとか。愚痴ばっか言ってくるんです!」
「ハァ? 何言ってやがるんだ!? アタイはさっきから一言も喋っちゃいないんだけど!!」
反論する纏流子。だが彼女の言葉に異論を返すその他の四天王たち。
「何を言う纏流子! お前がさっきから口喧しく愚痴ばっかり言っているのは、俺たち全員耳にしているんだぞ!」
「そうだ。確かにオレ達も一緒に行動するのは嫌々ではあるが、それを敢えて心に仕舞い込んでいるのに、貴様は……!」
「責めて、もう少し我々の聞こえない所で愚痴を吐いてほしいですね」
各々が流子の愚痴に対しての文句を唱える
しかし当の流子は敢えて口に出してないと反論の姿勢を崩さない。
喧嘩寸前の状態に成り掛け、戸惑い始めてう六道りんねや他の聖龍隊。だが其処に続いて「真鍋くん、なにこんな時になっても纏流子さんや
「と、戸室君……どうして真鍋君が毎度の事とはいえイヤラシイ目で二人を見ていた事が解ったの?」
「い、いや……単に真鍋君が二人の露出した足とか腹部ばかり目を向けていた光景というか景色が頭に浮かび上がったと言うか……」
「え! そ、それって……」
戸室に問い質す御舟に返す彼の言葉を聞いて、琴浦春香は何かを察し始めた。
更に異変は他の子達にも見られ始めた。
「……あなた達。何だか私の事知っているみたいだけど……ゴメンなさい。私、何だかあなた達の事覚えてないの」
「え……り、りんね! あなた、私達の事……!」
自分たちが思い更けていた思考を感じ取ったりんねの言動に、彩瀬なるを初めとする女子達一同は衝撃を受けた。
突如として互いの思考を解り合ってしまう新世代型二次元人たちの様子を見て、ジュピターキッドは強く確信した。
「……どうも、君たちの感知能力が著しく高まっているみたいだね」
「感知、能力……?」
ジュピターキッドの解釈に困惑する素振りを見せる真鍋義久に対し、ジュピターキッドに続いてエンディミオンが落ち着いた様子で語り始めた。
「言うなれば一種のテレパスさ。さっきから君達は、本来着衣している纏流子にしか聞こえない鮮血の声を聞き取る事が出来るようになってから……次第にではあるが、君たち自身のテレパス経由が強まっているようだ」
更にエンディミオンに続いて、彼と同じある程度の超能力を使用できる蒼の騎士と堂本海斗の二人も語り出す。
「テレパシーを通じて、君たちの意識がリンクつまりは繋がっていっては互いの心の内を喋らずとも把握する事が可能となってきている。更には周囲の人間、簡潔に言えば新世代型でない二次元人の心までも見通せるようになってきている」
「ゾンビを初めとする怪物がウヨウヨする施設に連れて来られて、それでこの状況に追い込まれちまって……それで互いの精神がリンクして新世代型全員が意思疎通出来る様になっただけじゃなく、テレパシーで周囲の人間の考えまでも御見通しになっちまって来たって訳だな、おい」
聖龍隊の解釈によれば、新世代型の潜在能力であるテレパシーを介した交信通話が次第に強まっては互いが高度のテレパス能力に目覚めていってしまっていると言うのだ。
これを聞いた新世代型の子達は多大に驚愕した。
「えぇ!? そ、それじゃ……私の考えた事はもちろん、ねねやるるか。それに真田先輩にも解られちゃう上に、私もみんなの考えている事が全部解っちゃうって訳ですか!?」
衝撃を受ける月影ちありの言葉に、聖龍HEADの面々は渋い顔で頷いて無言の返答を返す。
更に他人の考えや自分の考えが周りに晒されてしまう現状を目の当たりに、酷く困惑する新世代型たちも出現する。
「そんな……! わたしやみんなの考えが一気に頭の中に入り込んできちゃうなんて……」
「い、一体……どうすれば……」
酷く落ち込み落胆する棗鈴と直枝理樹。
そんな深刻な状況に追い込まれる新世代型たちは、聖龍隊総長のメタルバードに言い寄る。
「め、メタルバード! 何とかならない訳?」
「貴方も同じテレパスなんだし、対処法とか知っているんじゃないの!?」
だが当のメタルバードは目を逸らしながら苦し紛れの返答を返す。
「お、オレにも良くは……そもそも、テレパス自体だって自力じゃ制御しきれない能力の一つだし、何より新世代型のお前らに対しては旧世代のオレらの力じゃ何も出来やしないよ」
「そんな……!」
返ってきたメタルバードの言葉に激しく落胆する新世代型たち。だが、言い寄られ追い詰められるメタルバードの窮地にジュピターキッドが皆との間に入っては宥めるように話し始めた。
「みんな。最初は困惑するのは当然だ。しかし、だからといってバーンズや他の二次元人に当たるのは御門違いだよ。今、君たちに覚醒しているテレパシーに対する交信通話は、新世代型のみにしか得られてない一種の特別な意思疎通法なんだ。僕たち旧世代の二次元人たちにどうにかできるレベルの話じゃない。多少、混乱はあるだろうがしばらくの間慣れる必要がある」
「そんな……そんな事、言われたって」
ジュピターキッドの冷静な対処による話を聞いても尚、自分たちの身に降りかかった意志疎通の為のテレパス交信に困惑ばかりする新世代型たち。
突然の覚醒した潜在能力に対するテレパス交信による意思疎通で、新世代型たちは全員その場の人々の思考はもちろん自分達の思惑までも周囲の同じ新世代型に伝わってしまう現状に激しく動揺してしまう。
しかしこれは誰にも、どうする事もできない事態なのである。
新世代型にしか備えられてない意思疎通の為のテレパス能力。これが今後の彼等の思想に大きく左右する事となる事を聖龍隊はもちろん新世代型たち本人もまだ知らないのである。
[二次元人の系統]
突如として目覚めた新世代型たちのテレパス能力による意思疎通の交信術。これにより彼等は周囲の二次元人たちの思考はもちろん、同じ新世代型の思考までも分かち合ってしまう境遇へと陥ってしまう。
そんな混乱の中、メタルバードと大将を先頭とした聖龍隊と赤塚組は、足を止める事無く新世代型の非力な二次元人たちを護る陣形を組みながら少しずつ階段を上っていってた。
だが、体を鍛えていなかったり体力が少ない新世代型たちは忽ち疲労により階段に腰を下ろしては草臥れてしまう。
そんな現状を目の当たりにしたメタルバードは、少しずつ休憩を挟みながら階段を上がっていこうと提案し、その場でしばしの休息を取る事にした。
新世代型たちが腰を下ろして、草臥れた足や腰を擦っている最中、メタルバード自身も一息入れていた。
すると、そんなメタルバードの許に一人の少年が歩み寄ってきては声を掛けてきた。
「そ、総長さん……」「ん、何だ? 確か君は、新世代型の子で名前を……」
自分を呼ぶ少年にメタルバードが顔を向けると、少年は落ち着いた風貌で名乗った。
「僕は星原ヒカルです。総長さん、少しお話を伺っても宜しいでしょうか?」
「あ、ああ、構わねェぜ。それと総長さんは何だか他人行儀みたいでやめてほしいな。せめてメタルバードか本名のバーンズって名前で呼んでくれや」
「あ、はい。分かりました、それじゃ今はヒーローだしメタルバードさんで」
「ああ、それで構わねェぜ星原ヒカル。そんで、俺に話って?」
互いに親交を深め合いながらも、メタルバードと星原ヒカルは話を進めた。
「はい、実は少しばかり気になっていた事が……」「気になっていた事?」
メタルバードが耳を傾ける中、星原ヒカルは真剣な顔で話し始めた。
「はい。確かに聖龍隊の皆さんが仰っている通り、僕たち二次元人が別次元の三次元人の思想概念から生み出された存在……しいて言えば<次元生命体>と呼ばれる本来の生物と認識されている三次元とは別の次元で生まれた生物である事は、かの初代聖龍隊総長である小田原修司さんが公表した自伝本が世間に晒される以前から知ってはいましたが……」
「が……?」
「はい……僕たち二次元人。その系統とは如何なる繋がりで、どの様な系図なのか気になってしまって。差し支えなければ、新聖龍隊総長でもあるメタルバードさんから詳しく御話を御聞かせ願いたいのですが大丈夫ですか?」
星原ヒカルは言葉巧みにメタルバードから知り得たい情報を聞き出そうと、あえてゴマすりに近い物言いでメタルバードに訊ねた。
するとこれが効を如いたのか、メタルバードは分け隔てなくヒカルに二次元人の系統や系図について語ろうとした。
「まあ、話しても別に差し支えはないし……聞きたきゃ聞かせてやるよ」
と、その時。先ほど覚醒したテレパス能力で星原ヒカルがメタルバードから話を聞かせてもらえる事態を察した他の新世代型の面々もメタルバードに積み寄って来た。しかもオマケに、メタルバードとヒカルの話を効く耳立てて聞いていたプロト世代のギュービッドを初めとするチョコと桃花の三人もメタルバードに駆け寄っては話を聞こうとする。
「ねえねえメタルバード! アタイらにも教えてよ、二次元人の系譜ってのをさ」
「私も聞きたいです! 私たち二次元人の始まりとか、今に受け継がれている系統ってのに凄く興味があるんです!」
物好きな関心から聞き出そうとするギュービッドと違い、真剣にかつ純粋に興味から自分たち二次元人の事を知り得たいと訴えるチョコの眼差しを直に受けて、メタルバードはたじろみながらも話を始めた。
「え、え~~まず、オレたち二次元人は、その始まりは日本はもちろん世界各地に伝承している神話が基であると言われている」
「し、神話ですか?」
新世代型の瀬名アラタが思わず問い返すと、これにメタルバードは表情を変えずに平然と話し続ける。
「そうだ。みんなも知っての通り、神話には数多くの幻獣と呼ばれる神秘的な動物や大自然の力を操る事ができる神々。更にはトランス・フォーメーションつまりは変身能力を持つ神までも存在していた。神秘的な存在である幻獣をモチーフにした御伽噺や大自然の力を操作できる人間を主人公にした物語が多いのがそれだ。何よりオレたち二次元人にしか成し得ないトランス・フォーメーションいわば変身、三次元人は精々変装で見た目や顔だけを変える事ができるのに対し、オレたち二次元人はその容姿や背格好さらには声帯までも完全に変化させて他人や人間以外の動物に変身する事ができる訳だ」
「成程。神話の超自然的なエネルギーを発生し操る神々や、それらと対峙したり仕えたりした本来は架空の動物である幻獣をモチーフにその後の御伽噺や物語などの創作に繋がった訳ですね」
「その通りだ」
メタルバードの話を聞いて納得する新世代型で、最初に話を訊ねて来た星原ヒカルの同期である出雲ハルキの返した解釈に、メタルバードは強く頷いた。
更にメタルバードは話を続ける。
「その後、神話などを基に三次元人たちは自分達の解釈で様々な物語や新たな神などを創世した。例えば有名なのがローマ帝国だ。かのローマ帝国は、他の地を侵略した際その地で崇め奉られている神々もローマで奉られている神々の一部に取り入れてしまい、次第にローマ帝国内の神々は数が増していった。そして物語では、超自然的な現象では畏敬の存在である人ならざる者、狼男や吸血鬼などが物語に登場するようになって来た。それら狼男やヴァンパイアは主に悪役サイドで主人公やヒロインを襲ったり倒されたりする役回りに追い立てられる事が多かった。更に三次元人はその様な畏敬の者達ばかりではなく幻獣にまでも、その豊富な想像力で更に形作っていった。海洋哺乳類の一種であるジュゴンから多くの物語に登場する人魚を。空を滑空するだけにあらず火を吹いたり様々な攻撃が行えるようになったドラゴン。まさに多種多様、様々な能力や特徴を備えたキャラクターやモンスターが物語に出現してきたんだ」
「現に、聖龍HEADのセーラームーンはかぐや姫、マーメイドメロディーズは人魚姫が基ですしね」
「ははっ、まさにその通りだ」
新世代型のコウサカ・チナの台詞にメタルバードは高々と微笑を浮かべては溌剌と返事する。
そしてメタルバードは今、話に出たキャラクターに関する話をも始めた。
「いま話にも出たように……現在の物語つまりは創作には大昔から今に至るまで伝わっている御伽噺が基と成っている話も多数ある。確かにセーラームーンはかぐや姫こと日本最古の御伽噺<竹取物語>を。マーメイドメロディーズは有名なアンデルセン物語の一つである<人魚姫>をモチーフに。今、名を轟かせている多くの漫画家やアニメーターが手がける物語の根本は、昔々から語り継がれているアンデルセンやグリム童話などの物語が発祥であると言っても過言ではない」
「今の漫画や創作……それらの根本の基礎は昔から語り継がれている物語って事ですか?」
「うむ!」
話を聞いて、今現在の創作の殆どは過去の御伽噺を大元に生み出されている事を問い返す新世代型の猪熊陽子に対してメタルバードは力強く頷く。
すると此処で最初にメタルバードに話を訊ねて来た星原ヒカルが、再びメタルバードに問い掛けて来た。
「そういえば……太古の神話から登場しているトランス・フォーメーション能力は、今では多くの物語に利用されていますよね」
星原ヒカルの問い掛けにメタルバードは真顔で答え返した。
「そうだ。トランス・フォーメーションつまりは変身能力。これはヒーロー物にあらずヒロインにも多く描写される能力だ。無論、このオレもその能力を使える二次元人の一人ではあるがな」
「変身能力の基本って……本来の姿、つまりは私服からスーパーヒロインやヒーローのコスチュームに変われる能力なんですよね」
星原ヒカルに続いて問い掛けて来た榊涼子の問い掛けに対してもメタルバードは応対していく。
「うむ、それが基本中の基本だな。本来は一般人である二次元人が何らかのアイテムまたは特殊能力に目覚めた事によって、スーパーヒーローやヒロインへと姿を変える事ができるのが一般的な変身能力だ。だが一部の変身系能力の二次元人だけは、ヒーローヒロインにあらず様々なコスチュームや赤の他人に変身して周囲の目を誤魔化せるまでの能力を持っている傾向も見られる。例えば、此処にいるので纏流子に
『………………』
メタルバードに指され指摘された【キルラキル】の面々は唖然としながら今の自分達の姿を見渡す。そんな面々を含む新世代型一同にメタルバードは語り続けた。
「それにトランスフォーメーションにも衣服ばかりが変化するものばかりじゃない。異形の怪物やクリーチャーに変異してしまうのも、一種の変身に分類されるし……かの有名な狼男のような日本で言う妖怪が見せる変化も一つのトランスフォーメーションに分けられる」
更にメタルバードは新世代型に限らず、聖龍隊の隊士でも変身能力を秘めている二次元人を指しながら的確に詳細を語っていく。
「聖龍隊でも、古参であるオレとジュピターキッド、それにミラーガールもそうだしな。オレは王家より受け継いだ紋章型のエンブレムを胸に当てる事でメタルバードに変身するだけにあらず多種多様な機械に体を自由に変形させる事が可能だし、キッドは先祖代々受け継いできた大地の鞭を地面に強く叩き付ける事で大地の申し子ジュピターキッドに変身する事が出来る。他にもセーラー戦士達は前世での事も踏まえてだが、アイテムで変身する事が可能だし、キューティーハニーは腕のブレスレットと自身の強い生命エネルギーが反応する事で変身可能。ナースエンジェルはクイーン・アースより受託されたアイテムで変身する事が可能となり、魔法騎士の三人は異世界の魔法で煌びやかな甲冑をいつでも身に着けることが可能。ミュウミュウズとマーメイドメロディーズも似た様なもんだ」
「ようするに、能力と言うよりも魔法で変身する事ができるって事ですか?」
話を真剣に聞いていたチョコの問い掛けにメタルバードは腰に両手を付きながら話し疲れた様子で話を続ける。
「まあな。だがコレクターズや、その後輩に当たるルーキーズのアクセルワールドにソードアート・オンラインの連中は発展した科学による技術でネット内での変身や能力を現実世界でも使える様にしているんだがな。それ以外は殆ど魔法なんだが……まぁ、魔法も発展しすぎた科学も、どちらとも超常的な展開には変わりないけどな」
「あれ? でも確か……魔法でも科学でも、二次元人が変身で姿形を変えられる様になった切っ掛けと言うか、変身能力を持つ二次元人の始祖と呼ばれているのが……」
メタルバードの話を聞いて思い返した新世代型のラルの発言に、メタルバードは表情を渋らせながら話し始めた。
「その通り。変身能力の始祖と呼ばれる二次元人、それがあのミラーガールこと加賀美あつこだ」
メタルバードの言葉に彼の話を聞いていた一同は一斉にミラーガールへと顔を向ける。相変わらず溌剌と周囲の状況を把握していく彼女の素振りを見続けていく中、メタルバードは話を進める。
「まぁ、これは修司の書いた自伝本の最後にも記載されてはいるんだが……加賀美あつこことアッコは二次元人で始めての変身能力を持って生まれた一般の二次元人なんだ。本来は極普通の女の子であった彼女は、ある日魔法のアイテムであるコンパクトを入手した事で、その日を境に様々な変身を繰り返しては人助けをしていくってのが本来のアッコの物語だったって訳さ。だからもし、変身能力の始祖であるアッコの身に何かがあれば、同じ変身能力を持つ多くの二次元ヒーローやヒロインの身にも異常が現れるんじゃないかと当初は思われては居たんだが……結局、今の所は何も起こってないのが幸いさ」
「あ、アッコさんが……ミラーガールが変身ヒロインの始祖であり、同時に変身系能力の始祖でもあるって事ですね」
メタルバードの話を聞いて新世代型の宮沢謙吾が納得している最中、メタルバードは淡々と話を進める。
「変身ヒロイン以外では、アッコと同じで鏡魔法の使い手であるルーキーズ総部隊長のミラールに、そのルーキーズの一員である折紙サイクロンも擬態能力に分類されてはいるが変身能力には違いないだろう」
「なんか話を聞いていると、アッコさん一人が二次元界に生み出されて以降、多くの変身ヒロインや能力者も生み出されて行ったんですね」
「ああ。アッコがいなかったらオレはもちろん、聖龍隊に加盟している多くのヒーローヒロインがいなかった訳だしな」
話を聞いて驚きと感動で目を輝かせる新世代型の小鳥遊おとはの言葉に、メタルバード本人もアッコがいなかったら自分の様な能力者はいなかったであろうと強く語る。
すると此処で今までの話を聞いていたプロト世代のギュービッドがメタルバードに問い質してきた。
「あれ。アッコさんは変身ヒロインに限らず、魔法少女としても元祖じゃなかったっけ?」
ギュービッドの疑問にメタルバードが笑みを浮かべながら答えた。
「ははっ、それは生まれつき魔法使いまたは魔女だったキャラの話だ。アッコは何にでも変身する事が可能なコンパクトを入手する前までは普通の人間の女の子だった訳なんだから、それには該当しない。せめてアッコの場合は、人間だった子供がある時を境に様々な能力が使える二次元人の始祖で、それ以外の生まれつき魔法が使える魔女っ子の場合はかの有名な【魔法使いサリー】が始祖って事だよ」
「そっか……生まれ付き魔法が使えてたか、ある時を境に魔法や様々な能力が開花した二次元人は別系統って事なんだね」
「アタイらに例えると、生まれつき魔女だったアタイと桃花は【魔法使いサリー】の系統で、アタイから黒魔法を授かったチョコはアッコさんの系譜って事だねっ」
メタルバードの話を聞いてそれぞれ納得するプロト世代のチョコとギュービッド。
勢いに乗ったのか、メタルバードは更に話に拍車を掛けては今度は【ガンダムビルドファイターズ】の面々を指差しては語り出した。
「そしてファイターズの諸君! 君たちがプラモとし愛用しているガンダムにも、列記とした系統……つまりは元祖であり始祖が存在している!」
「え!」「が、ガンダムにも魔法少女や変身少女の様に始祖が!?」
メタルバードの力強い言葉に衝撃を受けるイオリ・セイにレイジ・アスナ。そんな二人を初めとするファイターズの面々を前にメタルバードは語り始める。
「そうだとも。ガンダムの様なロボットには二つの始祖であり元祖が存在している。その二つこそ【鉄腕アトム】と【鉄人28号】の二体なのである!」
「あ、アトムと鉄人……」
二次元界にも知れ渡っている二つのロボット作品の名を聞いて唖然と立ち尽くすイオリ・リン子を初めとするファイターズキャラの面々にメタルバードは身振り手振りと詳細を語り出す。
「そう。アトムは人型または人と同サイズのロボット、そして鉄人は巨大ロボットの始祖であるとオレのかつての相棒 小田原修司は説いていた。完全に弱き存在を、そして人間を守りながら同時に共存する平和の使者とも呼ばれているアトム……このアトムを基に【ドラえもん】などの人間と共存するロボットキャラにその意志が受け継がれた」
『…………』
「それとは正反対に鉄人の方は、リモコンで操縦する故に、操縦者である人間の意志一つで簡単に善悪両方の動作を行える。故に後々【勇者ロボ】のような完全な正義のロボットと、お前達がこよなく愛しているガンダムの様な単なる兵器である巨大ロボットの二つに、その系統が分かれたんだよ。操縦者すなわち人間の意志一つで簡単に、弱き人を救える存在かあるいは単なる破壊と殺戮を兼ね備えた巨大兵器か、その系統に属しているロボットが巨大ロボの悲しい系統なんだな。これが」
メタルバードが説き語る二種類のロボットキャラの系統についての詳細を耳にして、ファイターズのキャラ達はもちろん一緒に話を聞いていた同じ新世代型の面々も思わず無言で聞き入れていた。
だがメタルバードの話の勢いは留まる事無く、話は続く。
「まあ、ロボットの様に近未来的な創作も多く生み出されてはいるが、他にも想像上の生物や世界観で構成されたいわゆるファンタジー物の創作やキャラクターも現在は多く共存している。みんなも小説を読んで知っているだろうが、ジュピターキッドは元は小人という今では生物学的に言えば妖精に近い種族の一人である。過去に修司の手助けをするよう命じられたウッズに二次元界の神ウォール・トゥーサムの力によって小柄ではあるが本来の人間と同じサイズまで巨大化する事ができている。ジュニアの様に小人はもちろん、妖精やそれに関する世界観を持った異世界も今では異次元亜空間装置の開発により、調和を結ぶ事ができている。時おり、その世界では手付かずの資源を狙う悪漢も度々非合法に来襲しては貪りに来るという問題も今だ多くあるが、俺たち聖龍隊はこういったその異世界の世界観を損なわない為の活動も頻繁に行っている。例えばニュー・スターズのアンリエッタ達の世界も、今ではオレたち聖龍隊の保護共有世界として、日夜その異世界の治安維持に奔走しているのよ」
「別世界の世界観と繋がりを保ちながら、同時にその世界の概観と治安を維持していくのも聖龍隊の活動って訳ですね」
「そうゆう事。新しい文化や繋がりを結びつつ、その世界の古き良き世界観と伝統を後世に遺して行くのが最も最適な共存関係であると修司は説いた訳だ。まあ、これは修司が母国として愛して止まない日本も同じ様に異国の文化を取り入れつつ古からの文化や伝統も同時に維持してきたからこそ、修司は他の異世界も同じようにすべきだと考えた訳なんだがな」
理解を示す戸室大智の言葉にメタルバードは自慢げに語り明かす。
更に話に出した異次元亜空間装置についてもメタルバードの口は続々と語りだす。
「装置についても、みんな自伝小説を読んで少しばかりは知ってはいるだろうが調整一つで時空間をも渡来する事が可能なゆえ、過去などの別時代に行ってしまう危惧があるのが難点だった。今では改良に改良を加えて簡単に別次元の別世界に移住が可能となり、俺たち聖龍隊がその世界の状態を把握して人間が住める環境とかその世界に存在する貴重物質の調査も行っている。別世界は同時に平行世界とも呼ばれ、俺達が生まれ住んでいる二次元界と修司が生まれた三次元界がそれに位置付けられる。そして加増し過ぎた人口の行き着く先である異世界を開拓して、其処で更なる発展を目指しつつ、手付かずのエネルギー源や貴重好物などを採取する為に、修司やウッズは装置を開発したんだ。今の聖龍隊も、国連と協力しながらその意志と流れを受け継いでいるって訳さ」
この時、メタルバードは先ほどまで自分が語っていた二次元人の系統についての話から逸れてしまっている事に気付き、話を戻した。
「ああ、話は逸れちまったが……ようするに今までの世界観と別の世界観が融合して全く新しい世界観、いわゆるクロスオーバー的な世界観による激変する世界の環境や情勢の調整などもオレたち聖龍隊や国連が整えているからこそ、今の時代みたいな様々な世界観と種族が共存する新しきも異なる世界観が存在できてるって訳さ。そして、そんな激変し続ける世界にも対応できるように特別な遺伝子構造を予め組み込まれた全く新しい二次元人こそ……君たち新世代型な訳」
創作され続ける物語の世界観と同化し変化し続ける世界観による劇的な環境変化。その環境変化に逸早く対応し、そして適応する事が可能な二次元人こそ自分たち新世代型であると言伝される一同は言葉を返す事も侭成らないほどに釈然と立ち尽くしてしまってた。
そして最後にメタルバードは新世代型の二次元人たちを初めとするその場の一同の耳に入るほどの声量で論じ始めた。
「この様に、オレたち二次元人は古より伝わっている伝承や神話をモチーフに生み出されたものや、その話を基に創られた話すなわち御伽噺を根本に創作された二次元生命体なのよ。物語の中に登場する人間や生物の全ては三次元政府より、自分達とは全く異なる種と言う事で一括りにされて二次元すなわち創作された生命体として名指しされ続けている。こういった現状を前にすると、オレたち二次元人自身がロボットや単なる道具の様にしか思われてないみたいに感じるかもしれない。だがな……」
メタルバードは熱い眼で目の前の新世代型たちに向かって語り始めた。
「創作上の存在だからこそ、オレたちは三次元人以上に可能性を秘めているんだ。物語だからこそ、その話を心から楽しんでくれる人々の学びと成り活力となり……二次元人こそが三次元人の生きる心の支え、その源であると修司はオレたちに言ってくれた。オレたち二次元人こそ、人々の理想であり夢の結晶体であると……理想であり夢である二次元人は、いつか醜い現実とも言われる三次元界を必ず正しく光り輝く未来へ誘ってくれるであろうと修司は信じてくれたんだ。二次元人こそ世界を変えてくれる唯一無二の存在であると……だからお前達も、人々の理想と夢のから生まれた二次元人である事を誇りに思って生きてほしい! それだけだ」
そう神妙な険しい顔付きで語り終わったメタルバードと向き合う新世代型の面々の唖然となる顔を前に、メタルバードは「よし、休憩は此処まで! 先に進むぞ」と聖龍隊を初めとするその場の皆に言い渡しては腰を下ろしていた階段の段から腰を上げて、再び上へと歩を進ませていくのであった。
周囲の者たちが着々と再出発の支度を済ませる中、唖然と立ち尽くすばかりの新世代型たち。
そんな新世代型の肩を背後から軽く叩いて聖龍隊参謀総長のジュピターキッドが話し掛けてきた。
「バーンズはね。君たち新世代の二次元人たちに、二次元人である事を誇りに思ってほしいんだよ。僕たち二次元人は多くの人に多大な影響を齎す事が可能なキャラクターであり物語だ。だからこそ、物語つまり僕たち二次元人の生き様を通して三次元人たちに生きる力をも与えられるし、何よりその人の人生を救う事も変える事も可能となるんだ。現に、僕たちを引き合わせてくれた前総長であり僕の兄代わりでもあった小田原修司も、二次元人に生きる力を与えられた事を心から嬉しく思い僕らと共に生きられる社会を築いていこうと奮闘してきてくれてたんだ。君達だって、三次元人の人々に生きる喜びや夢や希望を与えられる事のできる二次元人には変わりないんだし、もっと胸を張ってれば良いって事さ」
話の最後にウィンクを放ったジュピターキッドは他の聖龍隊や赤塚組の面々と同様に階段の上へと歩を進ませるのであった。
三次元人に創造されながらも、同時に多くの三次元人に生きる活力ばかりか教養まで与えて、多くの人々の人生を変える事も救う事も出来うる二次元人たちによる物語。
新世代型たちは、自分たち新しい世代の二次元人もまた多くの三次元人に影響を与える素晴らしい存在なのであると聖龍隊総長メタルバードから伝えられるのであった。
[パラサイダー]
聖龍隊と赤塚組の集団に護衛されながら階段の上へと進んでいく新世代型一行。
そして彼等は苦労の末、どうにか地下40階まで上り詰める事ができた。
しかし生憎、その先の階段が瓦礫や工業用機材などで塞がってしまっている為に更に上へと進む事ができなかった。
よって、一行は仕方なく地下40階の階層で新たな地上への回路を探索する事と相成った。
「さて……どちらに行くべきか」
「内部構造はおそらく殆ど他の階層と同じだと思うけど、それを考慮して進んだ先がまた何かで塞がっていたら二度手間だしね」
これからの進路方向を考案し兼ねるメタルバードとジュピターキッドは、進むべき道行きを考えに考え抜いていた。
と、その時。考え抜いているメタルバードとジュピターキッドの二人に新世代型で元腕利きのハッカーである
「あの、お二方」「?」「なんだい、犬牟田くん」
声を掛けてきた
そして二人の顔と対面しながら
「先ほどから階段を上がりながら同時にこの施設のコンピューターにハッキングして更に詳細な施設の地図をアップロードして置きましたので、宜しかったらこれを見ながら進んでいきましょう」
「おおッ、これはこれは……さっきから有りがたいな坊主」
「これは助かる。ホントありがとう、犬牟田くん」
「いいえ、これぐらい……僕たちを誘導してくれているあなた方の御力に成れるのなら、容易い事ですよ」
感謝するメタルバードとジュピターキッドからの返事に対し犬牟田は丁寧に返事を返す。
そして
「ふむ、そうだな……此処のフロアを突っ切れば、エレベーターには辿り着けるが」
「けれど、こんな大人数では一度に移送できる人数も限られているし、辿り着いた階で先に向かった人たちを護るメンバーによっては何かしらのアクシデントに対処できるかどうか不安だわ」
エレベーターに向かおうと言うメタルバードの提案に、大人数で少しずつ上に行かせるのはリスクが高いと反論するセーラーマーキュリー。
するとその時、
「あ、ちょっと待って下さい! 此処、見てください。別方向ですけど俺達が今いるエリアとは別エリアには、どうやら工業用の巨大エレベーターが内蔵されているみたいですよ!」
「なに!」
海斗の言葉メタルバード達HEADが目を向けると、確かに今自分たちがいる一本の筒状のエリア周囲に展開されている筒状エリアの一角、其処から中央のメインフロアと呼ばれる筒状エリアに機材などを運搬する為の工業用エレベータが設造されていた。
「成程! この工業用のエレベーターなら一気に全員を乗せて上まで行けるかも知れないな」
「と、すると……このフロアを突っ切らなければいけないようだね」
堂本海斗が指摘した工業用エレベーターまでの道筋を把握するキング・エンディミオンとセーラーウラヌス。其処に先ほど
「どうも此処のフロア……データによれば色々と寄生タイプの生体兵器を中心に研究・開発していた部署らしいわ」
「もしかすると、先ほどの様な異形の犬……蟲狼なる寄生型クリーチャーも其処から発生しているのでは……」
「余りお勧めしたくはないけど、他に中央フロアまでの道程では此処を突っ切るのが最短ルートだけど……バーンズ、貴方はどうするつもり?」
自分達が収集した情報を元にエリアを突き進むのを謙遜するコレクターズの結/春奈/愛であったが、愛がメタルバードに訊ねると彼は真顔で答え返した。
「確かに、さっきみたいな寄生タイプと出くわしたら……下手すればオレ達の中の誰かも感染いや寄生されちまう恐れがあるが。ふむ……いや此処は即急に危険な状況を抜けて、非力な新世代型たちを守護していかなきゃならねェ訳だし、多少のリスクはオレたち戦闘員で引き受ける形で進めば大丈夫なんじゃねェのか」
「相変わらず、自分達でどうにかなるって思い込んじゃって……変わらないわね、バーンズ」
「いいやぁ、それほどでも」
「……褒めてる積もりは無いんだけれど」
真顔で語り明かしていくメタルバードの言動に呆れ果てるセーラープルート、だが当のメタルバードは嬉しそうな顔で言葉を返しプルートは更に呆れ果てるのであった。
こうしてメタルバードの提案の元、一行は寄生型生体兵器の開発研究を行っていた部署に足を運ばせた。
その部署の一角の部屋。様々な機器が並んでいる所、やはり何らかの研究に着手していたのは明らかであった。
散乱する書類や乱れる机、何より点々と飛散している無数の血痕に現状を目の当たりにした者等は全員息を呑んだ。
いつ、何処から異形の存在である怪物が出没するのかと言う不安に満ち溢れた心境の中、聖龍隊や赤塚組は先頭を進み安全の確認をしていく。
そして今自分たちが今いるエリアと隣接している中央エリアに在るという巨大工業用エレベーターに向かう為、一行は多種多様な機材が置かれている部屋を通り抜けようと歩を進める。そんな中、足元に伸びている何かを引き摺ったような血痕にその上を歩いて進む新世代型は一抹の不安を感じる。その血の痕跡はうねる様にして、部屋の一角その奥の硬く閉ざされた小部屋のドアまで続いていた。
一方、部屋を通過しようと先に進む為のドアの手前まで進んだ赤塚大作はドアノブに手を掛け回しては力いっぱいに抉じ開けようとする。だが「チッ、ダメだ。カギがかかっていやがる」とドアの鍵が閉まっている事に顔を歪ませる大将。彼のその言葉に聖龍隊も戸惑いを感じた。
「困ったな。隣のエリアに行くには、此処を突っ切る以外は方法はないぞ」
「他に行ける道でも探した方が良いんじゃ……」
進行先の扉が閉ざされている事態に戸惑いを感じるメタルバードやミラーガール達。
するとその時であった。
ドンッ……ドンッ…… 何処からともなく激しい物音が聞こえてきた。
「な、何だ? この音……」
音の出先に困惑しながらも辺りを見渡す赤塚組のテツ。
テツに続いて他の皆々も激しい物音に気付いて辺りを見回してみる。すると物音は、部屋の一角に造られた小部屋その扉から生じていた。
引き摺ったような血の跡が続く扉を内側から何かが物凄い力で何度も叩く衝撃音は、広いフロアルームに響き渡り何とも言えない恐怖を醸し出していた。
恐れ恐れ聖龍隊スター・ルーキーズのアラジンが内側から叩き続けられる扉に近付いてみると、小部屋の中から「ウゥ……ウゥ……」と不気味な唸り声が聞こえてきた。
不気味な唸り声を耳にし、思わずドアノブに手を掛けるのを躊躇うアラジン。だが「どうした? 開けなきゃ何がいるか分からねェぞ」と躊躇っているアラジンの後ろから総長メタルバードが声をかける。
だがそれでも怖がって扉から次第に離れていってしまうアラジンを見て、メタルバードは仕方なく自分が扉に近付いていった。
そして「ふぅ、シャアねぇなあ」と愚痴を零しながらもドアノブに手を掛け、それを回した。しかし内側から鍵が掛かっているのか、ドアノブを捻っても扉は開かなかった。
「? 鍵が掛かってんのか」
扉を開けようと試みたメタルバードは呆気に取られた。
開けようと試みた扉に内側から鍵が掛かっている為、立ち尽くしてしまうメタルバード。だったが次の瞬間 ドンドンッ と扉を叩く音がより一層激しく強くなった。
『!』
突然の強まった音に思わず怯む一同。そんな最中も扉を叩く音は更に激しさを増していく。
そして扉前のメタルバードが思わず後退していく、次の瞬間であった。
内側から扉を叩いていた存在が、扉を打ち抜いて飛び出してきたのだった。
「きゃあっ!」「な、なんだアレは!?」
扉を打ち抜いて姿を現した存在を見て、悲鳴を上げる新世代の女子達と困惑する猿田学。
一同は、扉の蝶番を破壊して戸を打ち抜いて出てきたそれに目を奪われた。
全身からは粘り気のある体液が染み出しており、体面にはびっしりとイボの様な水膨れで埋め尽くされていた。
更に、その水膨れの中では何かが不気味に蠢いているのが視認できる。そして一際目を留まらせるのが、異常なまでに巨大化した左手にパッカリと開いた口から無数の細長い生物が次々に飛び出してきている、赤みのかかった不気味な黒い体色に通常の人間よりも二周りほど肥大化した怪人であった。
水膨れの中で蠢く生物、そして肥大化した左手の裂け目から出現してくる無数の大小様々な生物を見て、メタルバードがハッと気付いた。
「こ、コイツは……! 全身が隈なく寄生生物に寄生されて、寄生体の温床と化した人間の成れの果てだ!!」
メタルバードの発言を聞いて、一同は激しく動揺の色を顔に浮かべる。
眼前にその異様で不気味極まりない赤黒い姿のイボだらけ怪人が、実は体の全てを寄生生物に侵食され苗床と変わり果てた人間であったのだ。
寄生生物の温床と化した怪人、目を凝らすとその体面のイボの中でモゾモゾと小さな寄生虫の様な生物が蠢いていたのが分かった。
今や無数の寄生生物の温床と化した怪人は、自身の目の前に存在している聖龍隊に赤塚組そして彼等に警護されている新世代型二次元人の一行の存在に気付いたのか、全身から滲み出している粘液を腕や足から垂らしながら、床に粘液の跡を残しながら一行に向かってきた。
全身に生じたイボが原因なのか、歩きにくそうな肥大化した両足を引き摺るように前へと進み、同時に床には体面のイボから滲む粘液の跡を、まるでカタツムリの這った跡の様に残しながらゆっくりと歩いてくる。
「き、来たぞ!」「応戦しろ!」
眼前に迫る怪人に戸惑う大将を初めとするその場の皆にメタルバードが応戦の指示を出す。
すると怪人はメタルバード達の敵意を察したのか、左手の裂け目からココゾとばかりに白く細長くそして鋭い牙がびっしりと生え揃った丸い口を持つ小さな寄生虫の様な生物を無造作に出してきては、その寄生虫は聖龍隊や赤塚組に猛進してきた。
「な、何だ、この気味の悪い蟲は……!?」
「奴の体を媒体に増殖した寄生虫だ! 注意しろッ」
続々と足元に迫ってくる無数の寄生虫に怯む大将たちにメタルバードは注意を促す。
そして一行はまず足元に近寄ってくる無数の寄生虫を攻撃しては倒していく。しかしそれと同時に怪人は左手の裂け目から途切れる事無く無数の寄生虫を湧かせては、無数の寄生虫を仕掛けてくる。
「クソッ、きりがない!」「これじゃ、本体に攻撃する暇なんてないわっ」
必死に足元に近付く寄生虫の群れを撃破していくキリトとアスナ。二人の言うとおり、本体である怪人への直接攻撃の暇が一行には無かった。
その時。総長のメタルバードが聖龍隊士に指示を出しては前に繰り出させる。
「火炎攻撃のメンバー! お前達の炎で床の寄生虫を一掃しろ!!」
メタルバードの指示の元、火炎攻撃を使用できるセーラーマーズや木之本桜、獅堂光にアリババ、ナツにファイヤーエンブレムといった火炎隊士が前に出てきては、灼熱の業火を放って床を這いずる無数の寄生虫を焼き尽くし一掃してみせた。
そして仲間達に寄生虫を一掃させたメタルバードは、次に本体であり寄生生物の温床と成り果てた人間を指差して言い放つ。
「よし、総員! 以降、あの怪人を<パラサイダー>と捕捉する! 各自、パラサイダーに向かって攻撃せよ!」
メタルバードの指示を受けて、戦闘員は一斉にパラサイダーに向かって攻撃をしていく。
と。そんな中、ジュピターキッドがメタルバードに訊ねてみた。
「ねえ、ところで何の根拠があって、その名前にしたの?」
「えッ? だって寄生の事をパラサイトって呼ぶだろ? そんでもって人間がその寄生の媒体に変わり果てた奴だからパラサイダーって呼んだんだが」
「あっそ」
メタルバードとジュピターキッドはパラサイダーに応戦しながら話し合う。
果敢にパラサイダーに攻撃していく聖龍隊と赤塚組、そして彼等に混じって共に戦うジェイク。だがパラサイダーの全身から滲み出ている粘り気のある体液が攻撃の衝撃を軽減するだけでなく肉体の損傷をも瞬く間に修復してしまうのであった。
「き、傷が!」「コイツ、回復能力が異常に高いぞ……!」
瞬く間に体の表面に付いた傷を完治させてしまう異常なまでの回復力に驚愕してしまうモルジアナと岩崎月光。
そんな中、パラサイダーはその異様なイボだらけの体を引き摺るようにしながら前進し、攻撃してくる一行に向かってくる。
「く、来るッスよ……!」「な、何を仕掛けて来やがるんだ」
迫り来るパラサイダーに脅えつつも気をしっかりと保ちながら銃火器を連射していく赤塚組のギョロとゴマ。
するとその時、眼前へと歩み寄ってくるパラサイダーに応戦しようと聖龍隊参謀総長のジュピターキッドが前へと踏み出した。
「近付いてくるんじゃない!」
果敢に得物である鞭を振るってパラサイダーに攻撃し続けるジュピターキッド。だが彼の棘付き鞭を喰らっても、パラサイダーは怯む様子も無かった。
「ダメか……ッ! 殆ど効いてないみたいだ」
その時だった。離れて攻撃を仕掛けていく聖龍隊の一人メタルバードが、攻撃を受け続けているパラサイダーの様子を見て言った。
「クッ、体中から滲み出ている、あの粘液が少しでも打撃や斬撃といったダメージを軽減しちまっているみたいだ……!」
そんな幾度と無く攻撃を受けているパラサイダーは再び左手の裂け目から無数の寄生虫を放っては対峙する面々に仕掛けていく。
「攻撃が全く効きません!」「総長!」
自分達の攻撃が殆ど効力を示してない現状に困惑するブラック・ロータス、そして上司であるメタルバードに指令を促すシルバー・ロウ。
だが、そんな混沌とした戦況の中でも赤塚組頭領の大将は銃器を構えて果敢にパラサイダーに発砲し続ける。
「鉛弾の一発や二発、いくらでも打ち込んでやれば何時かは倒れるだろうよッ!」
そんな大将に続いて、同じ赤塚組の山崎貴史が言い放ちながら前へと飛び出す。
「弾は弾でも、ドでかい弾を喰らわせてやる!」
そう言って山崎貴史はグレネード弾をパラサイダー目掛けて発射した。
「グオオォ……」
山崎貴史の放ったグレネード弾を真正面から喰らったパラサイダーは唸り声を上げながら足元をふらつかせた。
「ヨッシャ、効いてる!」「もっとブチ込め!」
効果を示しているように見えた大将は大いに歓喜し、テツはグレネード弾を発射した貴史に更なる追撃を促した。貴史は言われるがままにグレネード弾を惜しげもなくパラサイダーに連射していった。
貴史の攻撃を見て、メタルバードもすかさず聖龍隊の同士に指示を出した。
「此方も、弱点と思われる顔と左手の裂け目を集中的に攻撃していくぞ!」
メタルバードからの指示に聖龍隊の隊士達は承諾し、各自パラサイダーの顔と左手裂け目に攻撃を集中させた。
そんな折、聖龍隊士の一人であるアレン・ウォーカーが総長メタルバードに訊ねた。
「そ、総長……あの、パラサイダーに対しての接近戦は」
アレンはパラサイダーに接近して直接攻撃しても大丈夫かどうか訊ねる。するとメタルバードはレーザー砲に変形させた右手で幾度となくパラサイダーに砲撃しながら応答した。
「接近戦は控えろ! あのパラサイダーは完全に体全部が寄生生物の温床だ! 迂闊に近付いて直接攻撃すれば、あの左手からゾロゾロと出てくる様な寄生虫に寄生されかねない!! 此処は接近せず、地道に遠距離から攻撃し続けろ!!」
必死の形相で果敢に連続砲撃をパラサイダーに撃ち続けるメタルバードの発言に、他の聖龍隊士はもちろん赤塚組や新世代型の面々も理解をする。
かくしてパラサイダーとの戦闘で無闇に近寄らずに地道に距離を置いて戦う戦況へと展開していく面々。
そんな中、新世代型で戦闘可能な面々は複雑な心境であった。
「ッ、不覚……我々は殆どが接近戦タイプ。遠距離からの戦闘では力に成れない……!」
苦渋を顔に浮かべる
だが、そんな自分達の力では何も出来ない現状を目の当たりにして立ち往生してばかりの新世代型に気付いたメタルバードが指示を言い放つ。
「ミラーガール! お前は後方に回って新世代型を初めとする連中をミラー・バリアーで保護しろ! オレ達も何とか左手から放出される寄生虫を寄せ付けない様にはしているが、攻撃から逃れた寄生虫が一般人に近寄って寄生しかねない!」
「分かったわ!」
メタルバードの指示に強く返答したミラーガールは即座に後方に移動しては、新世代型や戦闘に参加してない聖龍隊の面々を護る為にミラー・シールドを上に向かって構えた。
「ミラー・バリアー!」
ミラーガールがそう言った次の瞬間、上に向けて構えてた盾から光の壁が放射されてミラーガールを含む周辺の一同を覆う様に虹色の光の壁が展開された。
ミラーガールの放出したミラー・バリアーに包まれ、外界とは完全に隔離され周囲からの攻撃を防げる様になった一同。
だが、そんな最中もパラサイダーは左手の裂け目から続々と気味の悪い寄生虫を放出しては、その寄生虫がパラサイダーに攻撃を仕掛けていく面々に迫るのであった。
聖龍隊が攻撃をしていく中、赤塚組の方も強力な銃火器でパラサイダーと応戦していく。そんな中、連続で発射していたグレネード弾の残弾が0となってしまい困惑した山崎貴史は後方で自分らと同じく応戦している赤塚組の女性達に後ろ向きのまま手を差し伸べて言い放った。
「弾が切れた! 補充、補充」と、貴史は女性達にグレネード弾の補充を促す。
すると丁度貴史の真後ろに居たアケミがグレネード弾を両手に抱えながら問い返した。
「た、弾って……焼夷弾? それとも硫酸弾? 色々有るけど、どうする?」
「アア! 取り敢えず焼夷弾を寄越して、早く!」
どの種類のグレネード弾を渡せばいいか迷っているアケミに、貴史はどれでも良いと反論しながらも着弾すると同時に辺りを焼き尽くす焼夷弾を求める。
そしてアケミからグレネードの焼夷弾を手渡された山崎貴史は急ぎ弾を補充しては、銃口をパラサイダーに向けて発射した。
放たれた焼夷弾はパラサイダーに直撃し、しばらくの間パラサイダーを火の海に包ませる。
しかしパラサイダーの表面に分泌されている粘液が元手で、火はすぐに鎮火してしまう。
それでも貴史は、聖龍隊の火炎攻撃を放つ面々と共に一斉にグレネードによる砲撃を続行していく。
灼熱の炎を浴びても尚、平然と動き回るパラサイダーの脅威に次第に戦況を押されていく一行。
そんな中、電撃系の能力者であるドラゴンキッドは同じ能力系のセーラージュピターに声を掛ける。
「炎だけでなく電撃も案外、効くかもしれない! セーラージュピター、一緒に電撃で攻撃しよう!」
「ええ、電撃も効いてくれれば幸いね!」
ドラゴンキッドからの提案にジュピターは笑顔で賛同し、そして二人は一斉にパラサイダーに向けて強力な電撃を放った。
『はァッ!』
手から雷を放ち、その強烈な電撃をパラサイダーに直撃するドラゴンキッドとセーラージュピター。二人の強力な電撃を喰らったパラサイダーは多大な痛感を覚えたのか、腰の辺りからガクッと体勢を崩した。
「よし、効いてる!」「この調子で僕等も行くぞ!」
電撃を浴びて体勢を崩したパラサイダーを目の当たりにして攻撃が効いている事を直感するメタルバードと、今の勢いに乗ってこのまま戦い続けるよう周りに投げ掛けるジュピターキッド。
そして当のジュピターキッドは武器である鞭を振るっては、床を這って自分らに近寄ってくる寄生虫を次々に叩き付けては撃退していく。
そしてメタルバードの方は先ほどパラサイダーに強烈な電撃を喰らわせたドラゴンキッドとセーラージュピターに歩み寄っては話し掛ける。
「キッド、それにジュピター。悪いけど、俺にも電撃寄越してくれ。さっきから連戦で体内の電力が消耗してきた所為か技の威力が落ちてきてるんだ」
連戦で自身の体内に貯蔵されている電力が消耗し、その為に電力補給として強力な電撃技を使って充電させてくれと頼むメタルバード。彼の言葉にドラゴンキッドとセーラージュピターはやや呆れながらもメタルバードに向けて強力な電気ショックを浴びせて充電させてやるのであった。
そして電撃を浴びて充電し終えたメタルバードは、再び超火力のレーザー砲撃を展開するのであった。
一方、火炎や電撃でも中々倒れないパラサイダーを見て、ジュピターキッドが婚約者でもあるウォーターフェアリーに指示を出した。
「アプリ! 火炎や電撃も余り効果を発揮してない……効くかどうか解らないけど水系の攻撃も試してみるんだ!」
「解ったわ!」
ジュピターキッドからの指示に返答したウォーターフェアリーは、円を描くように前方に向けて両手を回した。すると彼女の周囲に突如として大量の水が出現した。
「な、何だ、あの大量の水は!?」
ミラーガールの展開するバリアー内で戦闘を傍観している新世代型たちは、ウォーターフェアリーの周囲の突如として出現した大水に驚愕した。するとそんな彼等に総長メタルバードが自慢げな表情で語り掛けた。
「ウォーターフェアリーことアプリコットは、空気中に含まれる水分を凝縮させる事により自身の周囲に大量の水を発生させる事が可能だ。地下とはいえ、此処は熱帯地区のタイだ。湿度は異常なまでに高い、つまり空気中の水分は豊富にある。故に大量の水を発生させるのは造作もない事よ」
「まあ、その分湿度が高いから蒸し暑く感じるけどね」
熱帯地区である故に、湿度が高く空気中の水分が豊富な為に、その水分を凝縮させて大水を発生させる事ができるアプリコットことウォーターフェアリーの能力を解説するメタルバード。それに対して空気中の水分が豊富つまりは湿度が異常に高い為に蒸し暑く感じると、ジュピターキッドは額から流れる汗を拭いながら話を付け足す。
そしてウォーターフェアリーが周囲に大量の水を発生させると、ジュピターキッドは次にマーメイドメロディーズの面々に指示を出す。
「マーメイドメロディーズ! 今度は君達だ、水を操ってパラサイダーを攻撃!」
「了解!」
参謀総長のジュピターキッドからの指示に返答したマーメイドメロディーズは、ウォーターフェアリーが発生させた水に手を翳すと、その水をまるで生き物の様に身振り手振りと操り始めた。
「み、水が……!」
またまたミラー・バリアー内で傍観していた新世代型たちがド肝を抜く中、再度メタルバードが先ほどと同じ自慢げな顔で語り出す。
「へへ、これはウォーターフェアリーも同じだが、マーメイドメロディーズも水を自在に操る能力を開花させているんだよ。昔の様に、邪悪な存在を歌で浄化するだけの人魚姫じゃないって事よ」
「まあ、水を操るのは自慢じゃないけどアプリの方が
メタルバードの自慢げな語りに、ジュピターキッドは自慢でないと言いつつも婚約者のアプリコットの方が上手だと自慢げに話を付け足す。
一方でウォーターフェアリーの発生させた水を自在に操るマーメイド達は、その大量の水をまずは対象であるパラサイダーの周囲に張り巡らせた。そして次にパラサイダーの周囲に展開させた水を操作して、パラサイダー周辺の水を大型の槍に変形させ、その無数の槍で一気にパラサイダーを貫いた。
「ッグ……!」
無数の水の槍で貫かれたパラサイダーは奇怪な唸り声を発しながら、痛みを感じたかのように見えた。その様子を見たジュピターキッドは続けて指示を出した。
「よし! そのまま攻撃を続けるんだ!」
マーメイドメロディーズは指示の通りにウォーターフェアリーが発生させた水を操って、幾度となくパラサイダーに水の槍を貫通させていった。
そんな彼女達マーメイドメロディーズに負けずと、水を発生させたウォーターフェアリーも右手を高く翳すとその手の平からも水を発生させて形状を変えていった。そして手の平で発生した水は次第に形を変えて行き、遂には巨大な水の手裏剣へと変形し、ウォーターフェアリーはそれをパラサイダーに向けて一直線に投げ飛ばした。
「はあっ!」勢いをつけて投げ飛ばした水の大型手裏剣は、パラサイダーの首元に直撃し巨大な傷跡を残すほどの損傷を与える事に成功する。
と。そんなウォーターフェアリーの変形させた水の大型手裏剣を観ていた新世代型の男子が声を上げた。
「ら……螺旋手裏け「って、言わないの! 確かに似ているけど別物だから! 彼女はもちろん僕達もチャクラで戦ってはいないから!!」
見た目的に【NARUTO】の螺旋手裏剣に酷似しているウォーターフェアリーの大型水手裏剣を見て思わず言葉を発しそうになる男子の発言に待ったを掛けるかの如く提言を制止するジュピターキッド。
※因みに作者は大のNARUTOファンです。
何だかんだで猛攻を続ける聖龍隊と赤塚組、そしてジェイクの奮闘も相まってか、次第に弱っていくパラサイダー。
火炎や電撃だけでなく、水による猛攻を幾度となく浴び続けるパラサイダーは正に追い詰められていく現状であった。
それとは反対にパラサイダーを追い詰めていく聖龍隊と赤塚組にジェイクは、あともう少しでパラサイダーを倒せると思い始めていた。
だが、その時であった。
攻撃を浴び続けていたパラサイダーが突如として様子を一変させた。突然身を激しく震わせて、全身を覆う粘液を辺り構わず跳ね飛ばし始めたのだった。
「ど、どうしたんだ?」
突然様子の変わったパラサイダーに動揺する赤塚組のテツ。しかしパラサイダーは一向に身を激しく震わせ続けた。
そして次の瞬間、身を小刻みに震わせ続けていたパラサイダーの身体に異変が起こった。
何と突如としてパラサイダーの全身を埋め尽くしていたイボの様な水膨れが全て一気に破裂し、内部の体液が激しく拡散したのであった。
『ぎいやああァァ!!』
突然体中の水疱瘡が破裂するという尋常でない光景を目の当たりにしたメタルバードと大将は思わず絶叫を上げてしまった。
更に驚愕の事態が。破裂したイボの中から体液と共に寄生していた寄生虫が無数に這い出てきては大群でパラサイダーの体の表面を這いずり回る。
『イヤああァァッッ!!』
破裂しただけでも異様であったのに、その破裂した無数の水膨れからグロテスクに這い出てきた寄生虫の群れに先ほどよりも甲高い悲鳴を上げる一同。
そして破裂した水膨れの痕から続々と出現する寄生虫は、群れを成して攻撃を続ける聖龍隊と赤塚組の方へ駆け巡ってきた。
「き、来たアァ!!」
不気味かつグロテスクに出現した寄生虫の群れに形相を引き攣らせて大声を上げる大将。彼は恐れ戦きながら果敢に床を這って此方へと進行する寄生虫の群れに銃弾を連射して浴びせていく。
ブチュ、ブチュ と不気味で奇怪な音を鳴らしながら弾丸で跡形もなく消し飛ばされていく寄生虫の群れ。
更に大将に続けて同じく寄生虫の群れに恐怖を感じた聖龍隊は、ここぞとばかしに火炎や電撃といった攻撃を無造作に放っては床上の寄生虫の群れを消し去っていく。
だが寄生虫の恐怖はそれだけには留まらなかった。何とパラサイダーが腕を激しく振り上げると、攻撃を続ける聖龍隊や赤塚組に向けて振り上げた腕を振り回して腕の上を這っている寄生虫を振り飛ばしてきた。
「うわぁ!」「む、蟲が飛んできた……!」
グロテスクな寄生虫が自分達に向かって投げ飛ばされ思わず怯んでしまう聖龍隊や赤塚組の面々。
しかし異変はそれだけでは無かった。先ほどまで敢然と立ち尽くすばかりで激しい動作を行っていなかったパラサイダーが突如、自身のイボから無数の寄生虫を噴き出してからは動作を激しくさせ、そして自身に攻撃を続ける聖龍隊と赤塚組に歩み寄ってきた。
「な、なんだ……!」
眼前に迫ってくるパラサイダーの動作に異変を察知するメタルバード。
すると次の瞬間、パラサイダーは接近しては左手の裂け目に生え揃った牙で聖龍隊士の一人エンゲキブに喰らい付いた。
「きゃあ!」「エンゲキブ!」
突然パラサイダーに直接的に奇襲され悲鳴を上げるエンゲキブを前に、傍らにいた月光が急ぎエンゲキブを救援する。
月光の攻撃でエンゲキブから離れるパラサイダー。一方、パラサイダーに喰い付かれたエンゲキブの負傷した腕を急ぎナースエンジェルが診に来た。
「大丈夫! 診せて」
ナースエンジェルがエンゲキブの負傷した箇所を念入りに診察してみると、驚くべき事が判明した。
ナースエンジェルは急遽、エンゲキブの負傷した箇所を治療するとメタルバードに報告した。
「メタルバード! 大変よっ」
「どうした!? エンゲキブの怪我は大事無いか」
問い返すメタルバードに対しナースエンジェルは険しい面持ちで答え返した。
「怪我の方は軽傷だったから簡単に治せたわ。それよりもメタルバード、あのパラサイダー……」
「?」
次の瞬間、ナースエンジェルはエンゲキブの怪我を診て判明した事実をメタルバードに告げた。
「あのパラサイダー、喰らい付いた相手の栄養を体液と一緒に吸収するみたい!」
「な、何!? 栄養を……!」
「そう。恐らくは寄生生物としての本能よ。通常の寄生虫など他の生物に寄生する生物が宿主である生物の栄養を吸収して成長する様に、あのパラサイダーも左手の裂け目から相手の栄養を喰らい付くと同時に体液と一緒に栄養を吸い取ってしまうのよ」
「栄養を吸収する……なんて奴だ」
ナースエンジェルの報告を聞いて愕然と成るメタルバード。
パラサイダーは今や完全に寄生虫の温床であると同時に自らも寄生生物と同じに変異した異形の存在。故に他の生物の栄養を貪欲に欲してしまい、左手の寄生虫が溢れる裂け目から他の生物の肉体に喰らい付いて体液と同時に栄養をも吸収してしまう恐るべき生命体だったのだ。
そんな殺伐とした戦況の中、先ほどエンゲキブに喰らい付いたパラサイダーは続け様に他の人間の肉体に喰らい付こうと千鳥足で歩行し始めた。
「き、気をつけろ! 左手に喰い付かれたら体液と一緒に栄養まで吸収されちまうぞ!!」
メタルバードの発言にパラサイダーに対して更に危惧してしまう面々。
だがパラサイダーはそんな恐れ脅える面々を前に容赦なく激しく身を振って攻撃を続行するのであった。
パラサイダーの体から続々と這い出てくる無数の寄生虫、そしてパラサイダーが身を腕を激しく振り回す毎に辺りに飛散する寄生虫。
聖龍隊に赤塚組の面々は、下手すれば自分達にも寄生虫が皮膚を食い破って体内に侵入しては自身にも寄生するのではないかという恐怖心に駆られ、脅えながら戦闘を続けるのであった。
そして戦闘は続いた。
聖龍隊の超自然的なエネルギーによる強烈な攻撃に加え、赤塚組やジェイクの果敢に発砲する銃火器を一身に浴びてパラサイダーは少しずつではあるが確実に弱ってきていた。
灼熱の火炎に強烈な電撃、変幻自在の水の攻撃に凍て付く氷の能力を受け続けるパラサイダー。そこに追い打ちを掛ける様に赤塚組も強力な銃火器をパラサイダーに浴びせ続ける。
そして遂にパラサイダーは全身から体液を噴き出しながら激しく身震いさせ、そして寄生された事で肥大化していた体をしぼめると同時に力尽きては前のめりに倒れ込んだ。
まるで空気の抜けた風船の様にしぼみ、ほぼ全ての水分を失ったかの様な亡骸を晒すパラサイダーを目の当たりにして、ようやく戦闘の終了を体感する聖龍隊と赤塚組は余りの安堵感に思わず腰を下ろした。
「や……やっと終えた」
ドッと疲労が身に降り懸かり、此方も空気が抜けた様に腰を下ろし安堵するメタルバードや聖龍隊の皆々。
そんな中、草臥れながらもパラサイダーのしぼんだ亡骸を念入りに観察してみるジュピターキッドは一つの事実を把握する。
「はぁ、なるほどね……どうも寄生していた寄生虫が全て排出された上に僕らに攻撃され死滅した事で、パラサイダーも命を落としたらしい」
「はぁ、成る程な。寄生虫の中には、宿主から排出されると宿主自身が絶命してしまう種類も確認されているから納得だぜ」
草臥れながらもジュピターキッドの話に同意するメタルバード。
戦闘を終わらせた皆々が極度の疲労感から腰を下ろす中、何かを思ったのかHEADのセーラープルートがパラサイダーが飛び出してきた小部屋に足を運ばせ中を探索する。そして彼女が小部屋を見渡してみると、室内のデスクの上に社員証の様な安全ピン付きのカードが置いてあるのに気付いた。
プルートがデスク上の社員証に手を伸ばし、それを持ってメタルバードを初めとする仲間の許へと戻っていった。
「メタルバード」「あ?」「これ見て」
プルートに声を掛けられ振り向いたメタルバードは彼女から手渡された社員証の様な写真付きカードに目を通した。
「なに……藤堂、奈津子……だと!?」
社員証に記載されていた名前と顔写真を見てメタルバードは思わず声を上げた。
「ば、バーンズ、どうしたんだよ急に」
突然声を上げるメタルバードに驚く大将たちがメタルバードに言い寄ると、メタルバードは深刻そうな顔で皆に語り始めた。
「パラサイダーが飛び出してきた小部屋で発見されたこの社員証……名前が藤堂奈津子っていう女みたいなんだ!」
「し、知っているのか? その女……」
大将が問うと、メタルバードは険しい顔付きでそれに答えた。
「俺も名前だけしか聞いた事は無ェが……その昔、とある孤島で大勢の被験者を集めては悲惨な人体実験を行ったという科学者だ。この女は今までに無い寄生生物を人為的に開発しては大勢の罪無き人々に感染させていったというマッド・サイエンティストだったというが……」
「そ、その女学者が何でまた此処に……?」
「聞いた話によると。彼女はその後、孤島での実験が明るみになって投獄されたらしいがスグに多額の保釈金を積まれて何処かの組織が引き取ったというらしい。もしかすっと、その組織と言うのが此処の製薬企業だったのかもしれねェな」
メタルバードが大将と話をしていると、HEADの木之本桜がメタルバードに問い掛けて来た。
「そ、それじゃ……今、私たちが戦ったパラサイダーも、その科学者さんが造った寄生生物だったっていうの?」
「解らねェ……だが、少なくともこの藤堂奈津子が絡んでいるのだけは間違いない、この女の寄生生物に対する研究概念は常軌を逸してしまっていると言うからな」
『…………』
「と、取り敢えず……パラサイダーが飛び出した部屋を徹底的に虱潰しに探索するぞ。もしかすると脱出に必要な物や、此処の研究施設に関する資料とかが見付かるかもしれねぇしな」
そして一行はメタルバードの提案の元、パラサイダーが飛び出してきた小部屋の中を探索する事となった。
小部屋の中はパラサイダーが住み着いていたのか、そこ等中に粘液が飛び散っており荒れた状態であった。
粘液塗れの小部屋を調べる内に、最初プルートが社員証を発見したデスク上に置かれていた紙切れにジュピターキッドが気付いた。
「メタルバード、みんな! これ見てよ」
ジュピターキッドの発見した紙切れを聖龍隊に赤塚組は全員目を通した。その紙切れには以下の文章が書き残されていた。
やはり私の成果は、行いは人間の進歩の上では間違ってなどいやしなかった。
誰もが私を異常な科学者と批難する中、この私を多額の釈放金で自由の身にしてくれた組織が存在しているのだから。
これで再び実験を行える……これまで存在しなかった全く新しい種を誕生させる素晴らしい研究が。
孤島では多くの被験者を掻き集め、それぞれに混乱を与えると同時に私が手塩に掛けて育成した寄生生物を宿させての実験。
此処ではそれ以上の実験を行える予感がする。
今から楽しみでならない。
この施設に配属されてから、私は寄生型生体兵器の開発顧問を任せられる事と成った。
やはり私の才能はしっかりと認可されるものなのである。決して学者として間違った見聞などではない。
何より此処の施設では豊富に実験材料となる人間が掻き集められているのだから人材にはさほど困らない。
寧ろ、彼等の様な実験に使用される人間は私同様に刑務所に収容された
故に誰も私を止めることは出来ないのだ。
私が優秀であるからこそ、許される行いなのだ。
今日も運び込まれた実験体は鮮度の良い犯罪者だ。それも若い。どうやら某政財界の御曹司であったが、ドラッグやレイプといった異常な犯罪を行っていたが為にそれを隠蔽していた一家もろとも
実に愚かだ。だが、こんな愚かな人間を自由にそして優秀な頭脳で素晴らしい実験に使うのだから、この青年も果報者であろう。
幾度と無く続けた寄生体の実験は順調に成果を上げてきている。
この寄生生物は、寄生した人体の体内で繁殖/増加を繰り返し、遂には宿主の知能を完全に乗っ取って外観も豹変させてしまうほど強力な寄生生物である。
私は、この全く新しい生物の誕生に巡りあえた事実に多大な喜びを感じるばかりであった。
施設で生み出し、そして幾度と無く進化を続ける寄生生物の成長を見届けてきた私 藤堂奈津子は更なる生物の進化を促進する物質を組織のトップである社長自ら渡された。
それこそが、かの小田原修司も投与し自らを強化させる事ができたと言うかつての筋肉強化剤にして今では突然変異物質にも認定されているD-ワクチンである。
全ての生物に劇的な変化を与えるD-ワクチン。その名を聞いた事はある私だったが、現物を見るのは始めてである。
赤みのかかったオレンジ色の液状の物質に生命の進化を促すかもしれない可能性が秘められていると知った私の留まる事のない好奇心と探究心は掻き乱された。
早速、社長に手渡されたD-ワクチンを私が手塩に掛けて育成した寄生生物に投与してみた。
結果は想定の遥か先を越える物であった。
D-ワクチンを投与された可愛い寄生虫は著しく成長し、今までに無い反応を示してくれた。
尋常でない成長だけでなく、その効果は寄生された宿主自身にも影響がでるほどであった。
全く新しい生物であった寄生生物は、Dの投与によって更なる進化を果たして私の想像の遥か先まで行く。
これ程までに心躍らせたのはいつ以来であろうか。
私は、私自身を釈放させてくれただけに非ずDという素晴らしい物質を与えてくださった社長に多大な恩恵を感じるしかなかった。
……ある日、突如として施設の至る所で閉鎖が開始された。
まだ内部に人が残っているのにも限らずに電子式のロックは全て閉ざされ、施設内の電力も突然落ちてしまった。
辛うじて施設内の補助電源は生きていたので、パソコン内のデータは無事だった。
しかし同時に施設の中では未だかつてないバイオハザードが発生したとの事。
外部との連絡は完全に途絶え、助けを呼ぶ事もできやしない。
だがバイオハザードが発生した場合、内部の人間が見殺しの形で閉じ込められてしまうのも仕方のない事なのかもしれない。
しかし私の様な優秀な人材までも閉じ込めるのは場違いにも程がある!
私は救助が来るのをひたすら待つ事にした。
きっと優秀な人材と認められている私だけでも助けに来てくれる可能性がある。きっと……
恐れていた事が遂に起きてしまった。施設内に蔓延したウィルスによってゾンビを初めとするクリーチャーが施設の中を徘徊し始めたのだ。
私の担当していた寄生生物の研究部署も、そのウィルスに感染してゾンビやクリーチャー化した施設の人間や実験材料の
私は更に自分の身と研究成果である寄生生物を死守する為に、部署の一角である小部屋に篭城する事となった。
早く助けが来る事を祈るばかり……
施設内でバイオハザードが発生してから幾日経ったのだろうか。
私は相変わらず小部屋の中で篭城している。
幸い、食料や水は、小部屋内に設置された水飲み場と小腹が空いた時の為に貯蔵しておいた小型冷蔵庫内のチョコバーなどを食い繋いで生き延びている。
ふと私は左腕の異変に気付いた。左の手の平が異様に痒いのだ。
ふと左の手の平に目を向けてみると、手の平には赤いミミズ腫れの様な筋が見て取れた。
その時、私の脳裏に一つの不安が横切った。それは、この小部屋内で篭城している間に私自身が研究していた上にDで強化された寄生生命体が私自身に寄生したのではないかと。
私は急いで特殊な顕微鏡で自身の左手の平を念入りに診た。案の定、私の勘は当たった。私の左手の平には寄生虫が入り込んでいた。
まさか私が手塩に、そして心身ともに愛情を注いだ寄生生物に私自身が寄生される事となるとは……!
私は慌ててデスクに仕舞ってたカッターナイフを取り出すと、左手の平の赤いミミズ腫れの部分を鋭利なカッターの刃先で穿り返した。
大量の血が噴き出し、私の左手は真っ赤に染まる。しかし寄生虫は体内の深くにまで這入り込んでしまった為に、既に自力で取り出す事は不可能であった。
私は急ぎ、寄生虫の苦手とする抗生物質を自身の左腕に注射した。私はあくまで研究する側であって、侵食される存在なんかではない!
出来底ないの愚かな人間と違い、私は自我を……優秀な自分の知能を食い潰される所以は無い!
どうにか体内の寄生虫を退治しなければ……私という、藤堂奈津子という優れた逸材を護る為に。
左手に寄生虫が寄生したのに気付き、そして抗生物質を打ち続けてどれくらいだったのだろうか。
地下である上に外部との連絡が途絶えた今となっては体内時計も正確には機能してはいない。
それよりも私の左手に寄生した寄生虫が未だに死滅した感触がしない。それどころか、気のせいか左腕そのものが次第に肥大化している様に見える。
私は続けて薬剤用保冷庫に入っている抗生物質を左腕に打つ。
何で私がこんな目に……生物学の常識を打ち砕くほどの優秀な自分がこんな目に遭わなければいけないなんて……
左腕に抗生物質を打ち続けて数日が経過した……何だか次第に頭の回転が鈍くなってきた様に感じる。
幾度と無く腕に抗生剤を投与しているのにも関わらず、寄生虫は左腕に飽き足らず私の胸部や首筋にまで増殖を繰り返し範囲を広めていく。
その時、私の微かに働く脳内で一つの疑問が通り過ぎた。私自身が投与している抗生物質についてだ。
私は一抹の不安の元、自分に投与し続けてきた抗生物質の残りを調べてみた。
そして一つの事実を知って私は愕然と成った!
投与し続けていた抗生物質、それらは全てタダの栄養剤であったのだ!
誰かが抗生剤とすり替えていたのだ。これでは単に私は自身の体内で繁殖を続ける寄生虫に栄養を与えていただけではないか!
自分で自分の体内に潜伏する寄生虫に栄養を与え、寄生を進行させていたのだった。
保冷庫の中の抗生物質を全て栄養剤と替えたのは一体誰か?
ふと私はパソコンに気が向いた。そう言えば自分の体に薬を投与する事ばかりでパソコンには目を通してはいなかった。
私はパソコンの電源を入れ、施設の補助電源で僅かに稼動できるパソコン画面に目を向ける。
僅かに動かせる右腕でマウスを握り、寄生虫に感染し知能が鈍くなってきている自身の頭を必死にフル稼働させてパソコンを弄る。
すると電子メールに一通の未読メールが送信されているのに気付いた。それはバイオハザードが起きてから数日経過した頃に送信されたメールだった。
バイオハザードによる混乱、そして自身に感染した寄生虫の事で頭がいっぱいになっていた私はそのメールに気付く事がなかった。
私はその未読メールを開いて中を読んだ。そしてメールの内容を全て読み終えた私の心に絶望が圧し掛かった。
私の心中を絶望で満たしたメールには、こう書き記されていた。
『拝啓 藤堂奈津子殿 ご機嫌如何かな
君の事だからバイオハザードが発生した施設内でも懲りずに寄生生物の実験なんか行っている事だろう。
実に悪趣味かつ後味の悪い、まさしく反吐が出そうな人間のクズとは君の事だ。
私は、君の様な科学者としては悪趣味かつ悍ましい連中ばかりを研究施設に連れて来ては、わざとバイオハザードを発生させて施設を封鎖した。
君の様に自己都合主義の塊である学者は消えてくれた方が世の為だ。それは君自身が実験体に使用していた
それに私は考えがある。
それほどまでに寄生虫を愛しているのなら、君自身がその寄生虫に感染して己の体を差し出せば良いじゃないか。
君の事だ。おそらく自身のデスクが置かれている部署の小部屋に閉じ篭って助けを待つ積りなのであろう。外道な連中ばかりが集まっている施設に助けを出すほど私はイカレてはいないから、まず助けなど来ないがな。
気色悪い寄生生物と一緒に篭城しているなら確実に感染し、君が愛して止まない寄生虫にその身を捧げる事だろう。
その為に私は君の小部屋に緊急用に保管されていた抗生物質を全て栄養剤にすり替えておいた。
その栄養剤で君は愛しい寄生虫を自身の体内で育てて上げなさい。
君の様なえげつない学者の顛末には、それが相応しい。
では愛しい愛しい寄生虫と共に余生を送り給え ゴールドマン』
……ゴールドマン。社長? どうして……どうして社長が!?
訳が解らない。社長は私の研究に理解を示してくれてたんじゃ無かったの!
社長は最初っから研究施設にウィルスを流出して所員を含む全ての人間を感染させるのが目的だった訳!?
異常だ……異常すぎる!
そして私自身も、そんな異常な目的の為に利用され挙句の果てには自らが生み出した寄生生物の温床となる筋書きだった訳?
そんな!! 私は……今までの私の研究は……一体、何だった訳よッ!!
怒りの余り私はパソコンを寄生され肥大化した左腕で叩いた。肥大化した左腕は意図も簡単にパソコンを破壊し、私の研究成果も、そして社長の本音が書き記されたメールも全て消滅した。
だが最早そんなの関係ない。私はこのまま、どうする事も出来ず寄生生物に……自らが造り出した美しい生物に体を乗っ取られるのだ!
はは、ハハハハ……
書き殴ったかのような文章は其処で終わっていた。
彼等が目を向けてみると、小部屋の一角には大破したパソコンが視界に入った。
そして小部屋の中の現状を目の当たりにして、更に遺されたメモを読んでメタルバードは把握した。
「……パラサイダー。アイツは、あの藤堂奈津子の成れの果てだったんだ」
自分達が先ほどまで苦戦の末に倒した寄生虫の塊とも言えるパラサイダー。それは寄生生物の研究を生業としていた藤堂奈津子の変わり果てた姿であった事を知る一同。
自らの欲望のままに寄生生物を研究し多くの命を
するとメタルバード達とは別で現在いる部署の出入り口を調べていた聖龍隊の隊士が幹部のHEAD達に御声をかける。
「総長! 此処のフロアから工業用エレベーターに向かう為の通路に出る扉なんですが、困った事にカードキー式の扉で開かないんです!」
「なに? それは困ったな……また此処から大回りして別ルートでエレベーターまで向かわなきゃならねえのかねぇ」
仲間である隊士からの報告を聞いて顔を渋らせるメタルバード。
と、その時。戸惑いを募らせているメタルバードに同じHEADで藤堂奈津子の小部屋を探索していた蒼星石が飛来しては声を掛けてきた。
「バーンズ」「どうした?」
名を呼ぶ蒼星石に訊き返すメタルバード。すると彼女はメタルバードにある物を差し出して見せた。
「これ」「っ? こ、これは……!」
蒼星石が差し出しだのは、現在いるフロアの扉の開閉を司るカードキーであった。
「で、でかした蒼星石! これを何処で……」
「パラサイダー……いや、藤堂奈津子の自室を調べていたら有ったんだよ。多分、彼女が変異する前から手元に置いていたんだと思うよ」
「よし! これで先に進めるな」
真顔で淡々と答える蒼星石に対してメタルバードは嬉々とした表情で実に溌剌としていた。
一方で、参謀総長ジュピターキッドを初めとするHEADの面々は、パラサイダーに完全に変異する前の藤堂奈津子が書き遺していたメモと思われる紙切れの文章と向き合いながら考えに更けていた。
「まさか施設で働いていた所員を巻き込んで、自発的にバイオハザードが起こされたんじゃ……」
険しい面持ちでメモと向き合うジュピターキッド同様、同じくメモに視線を向けるセーラーマーキュリーやキューティーハニーらも険しい面持ちで語り出す。
「信じ難いけど、その可能性が高いわね……此処まで来る際に見かけたゾンビの殆どは研究員らしい容姿であったし、藤堂奈津子と同じく世界中から集められた人徳的感覚を持ち合わせていない研究者ばかりを狙った計画的犯行かもしれないわね」
「ええ。それにメモに記されているPCからのメール、その送り主で社長と表されているゴールドマンという人物も気になるわ。もしかすると、この人物こそ今回の施設内のバイオハザードと何らかの繋がりを持っているかもしれないわ」
三人と同じくメモに目を通した鳳凰寺風やセーラープルート、更にコレクターアイも思考に更けた。
「社長って、いったい何の社長さんの事を表しているのでしょうね?」
「もしかすると……この研究施設と関係しているアジアの製薬企業。そう、私達が新世代型を追って入手した情報の出所である企業の社長とかだったり」
「ゴールドマン……これは徹底的に調べた方が良いわね」
遺されたメモに記載されている社長という名目で呼ばれる<ゴールドマン>なる謎の人物。
聖龍HEADは、この人物に対し只ならぬ懸念を募らせ、念入りに調査を行おうと決意するのであった。
[蔓延る寄生型クリーチャー]
寄生体の媒体と化したパラサイダーを労して撃破した一行。
更に、そのパラサイダーが飛び出してきた小部屋から発見したカードキーを使って無事に先へと進む事もできた。
寄生型生物兵器の研究部署を抜け出し、一行は再び物が散乱する悲惨な情景の通路を進んでいくのだった。
「うぅ……なあ、バーンズ。もう変なバケモノとか出てこないよな?」
「覚悟しとけ。此処の階層は、さっきのパラサイダーみたいに変異させちまう寄生型兵器を研究開発していた部署だったらしいんだ。またパラサイダー並みの、そう寄生タイプの怪物が出てくるかも知れねぇし気を引き締めとけ」
「…………っ!」
先ほど苦戦を強いられた寄生生物の温床パラサイダーの戦闘がかなりのトラウマだったのか、大将は寄生タイプの生体兵器に対する恐怖心で内心脅え切っていた。
だが脅えていたのは、何も大将ばかりではない。彼と同じ赤塚組の面々も、全身を隈なく寄生虫に寄生されて完全に原型を留めないほどに変異させてしまう現状に少なからず恐怖を抱え込んでしまっていた。赤塚組に限らず、その変貌した姿であるパラサイダーとの戦闘を間近で傍観していた新世代型を中心とした一般人達も、他の生物に寄生して肉体を乗っ取ってはその姿を変化させてしまう生体兵器に多大なる恐れを感じ取っていた。
一方、先ほど小部屋で拝読したメモに記載されていた事柄についてジュピターキッドがどうにか通信機器で聖龍隊本部との通話を行おうとしていた。
「此方HEAD、此方HEAD。本部、どうか返答を……」
しかし通信状態が悪いのか、中々本部とは通信が入らなかった。
そんな困惑しているジュピターキッドの様子に逸早く気付いた新世代型で元ハッカーの
「キッドさん。良ければ僕のコンピューターとあなた方の通信機器を接続させてください。この施設の通信網をハッキングして、通信感度を高める事が可能かもしれません」
「おおっ、いつもありがとう」
そして
「此方、聖龍隊本部! 聖龍隊本部です! HEADの皆さんですか? どうぞ」
「よしっ、繋がった!」
本部との通信が成功し思わずガッツポーズをするジュピターキッド。彼はそのまま本部との通信で連絡を取る。
「こちら聖龍HEAD、ジュピターキッドだ。現在、タイの都市部中央区に存在している地下施設の内部を誘拐・拉致された新世代型の二次元人たちと共に進行中。今のところ大した犠牲は出ていない」
「そうですか、それは良かった」
「ああ。ところで一つ、其方から調査してほしい事があるんだ」
「何でしょう?」
「……タイの製薬企業関連の人物で、ゴールドマンなる人物が居るかどうか調べてほしい。そして、もし存在しているのならその素性を鮮明に調査して貰いたいんだ。お願いできるかな」
「ああ、はい、承知しました。此方のデータベースでゴールドマンなる人物の存在確認と素性調査を行います。ああ、それと其方へ応援部隊としてマン・ヒールズの方々を送る手筈がウッズ氏の提案で決まりましたので、彼等が其方に駆け付けるまでには調べておきますよ」
「ああ、宜しく頼む。あっ、それと、もしマン・ヒールズが応援に駆け付けてくれるのならジープを多めに輸送してきてほしいんだ。此方には大勢の新世代型が居るから、彼等を運搬する為にもジープなどの車両で駆け付けてくれる事を期待しているよ」
「解りました。それに付きましては此方からマン・ヒールズの方々に御報告しておきます」
「うん。それじゃ一旦通信を切る。またなんかあったら連絡する」
これを最後にジュピターキッドは通信を切った。そして通信状態を良好にしてくれた
「ホントに助かったよ、犬牟田君。君の知識と技量は最高だ!」
「いえいえ、聖龍隊の方々に称賛されるほどではありませんよ」
ジュピターキッドからの礼に
本部との通信及び連絡事項も済ませた聖龍隊一行は、赤塚組とジェイクの協同で新世代型二次元人を護衛しながら先へ先へと進行するのであった。
その時。薄暗い通路の奥から何やら硬い物同士がぶつかる様な物音が鳴り響いてきた。
「シッ、静かに……」メタルバードの一声に、全員が黙り込んだ。
カタカタ カタカタカタ…… 聖龍隊も赤塚組も、そしてジェイクに新世代型の一同も耳を澄まして怪しい物音に意識を向ける。
その物音は硬い何かと床をぶつけている様な音質に感じられ、しかもその音は次第に此方へと近付いて来ていた。
カタカタカタカタ……ッ その音は不気味に、そして確実に自分達の方へと接近してくるのが誰の耳にも理解できた。
そして通路の奥から、その物音の主は微かな天井の灯りの中を突き進んでは向かってきた。
「な……何なの? アレは……!」
通路の奥からその全貌を現した存在に、新世代型の美都玲奈が目を丸くして愕然とした。
それは丸く肥大化した胴体に、両手両足が鋭い鎌の様な巨大な爪に変異した人間の姿であった。カタカタという物音は巨大な爪で床上を進む際に生じた音であったのだ。
「きゃああ!」「な、何なのですの!? あの手足が鎌の怪物は!?」
余りにも奇形の姿に変異した人間に悲鳴を上げる月影ちあり、彼女をライバル視している花園まりえは異様なまでのその全貌に驚愕する。
皆が眼前に姿を見せる奇形の存在に阿鼻叫喚している中、その存在は一行の眼前へと迫ってきていた。
「く、来るぞ!」「攻撃開始!」
逸早く赤塚組が銃火器を奇形の存在に向けて発砲する。しかし弾丸が胴体にいくら着弾しても、怪物は倒れる事無く鎌状の爪を振り翳してきた。
「なる! レイコ!」『!』
異形の存在が振り翳す鎌状の爪の矛先には、赤塚組の女性幹部である海野なると市川レイコの二人が居た。大将は思わず二人の名を叫ぶが、怪物の爪先は二人の首元に向かって振られ、切り付けられるのがもう間近であった。
だが、その瞬間。鋭利な爪による攻撃を受ける寸前のなるとレイコの前にメタルバードが割り入って、二人を護り切った。
そしてメタルバードは鋼鉄の肉体と両腕で対峙する怪物の鋭利で長い爪を防ぐと、次の瞬間その怪物の両腕の爪を素手で掴んでは怪物に言った。
「女に刃物なんか向けんじゃねェよ……いくら両腕であろうと、な!」
そう言った瞬間、メタルバードは全身全霊を掛けて押え付けている怪物の両腕の鎌を強引にへし折った。
「ギィヤアアァァァ……!」
怪物は奇声にも似た断末魔を上げながら、そのまま力尽き動かなくなってしまった。
メタルバードは自力でへし折った怪物の両腕の爪を捨て去ると、動かなくなった怪物の亡骸に顔を近づけて観察し始めた。
「そ、それにしても……どうして両腕をへし折っただけで簡単にくたばったんだ?」
「あ、あんなに銃弾を胴体に浴びせたというのに……」
大将や市川一太郎ら赤塚組の面々は、無尽蔵に銃弾を浴びせたと言うのに倒れなかった怪物が何ゆえに腕をへし折られただけで力尽きてしまったのか疑問に思うばかりであった。
だが、疑問に感じている赤塚組の一団に怪物の死骸を念入りに観察していたメタルバードが語り明かした。
「どうも、このタイプは胴体へのダメージよりも腕や足を切断される事で生命維持が出来なくなってしまうタイプの生体兵器らしいな」
「つまり。頭や胴体じゃなく、手足に攻撃すれば効果がある訳か?」
「ああ、しかも銃弾などの打撃じゃなく完全に手足の切断しか倒す方法が無い」
メタルバードの解釈を聞いて唖然としつつも理解する大将たち赤塚組と他の一同。
彼等は更に施設の奥へと足を踏み入れる。
一行が辿り着いたのは、広いロビーの様な空間であった。
一見、殺風景にも見える空間であったが、その壁際や床上など至る所には人間の死体が無数の散乱している惨状が皆の視界に広がっていた。
そして一同は強く決意するかのように深呼吸を整えると、ゆっくりと足を一歩ずつ前へと歩ませて死体が散乱する惨状の中を進もうと試みた。
そんな最中であった。「……ッ! みんな、ちょっと待て!」と厳つい顔で聖龍隊ルーキーズのゼブラが険しい声色で皆を制止する。
「ど、どうしたんだよゼブラ……」
突然のゼブラの制止の発言に何事かと思うトリコが訊ねると、ゼブラは耳元まで裂けた口の側面を皆に向けて答えた。
「……聞こえる。何かが狭い空間を通って俺達の方に向かってくる」「な、何!」
ゼブラの告発にトリコはもちろん聖龍隊の誰もが警戒を張り詰めた。
何故ならゼブラは超聴覚の持ち主で、微かな物音や震動にも敏感に反応または感知する事が可能な肉体を持っているのである。
そのゼブラが聴覚で自分達の方へ何かが接近してくるのを察知して皆に知らせたのだ。
案の定、それは確実に皆の許へと接近しつつあった。それもゼブラの提言通りに狭い空間、そう換気口からそれは這う様に移動していた。
そしてゼブラが感知した音の主は、換気口の網格子をぶち破り飛び出してきた。それは細長い口と首に、少し丸みを帯びた胴体に二対の翼が生えた何とも奇形の飛行生命体であった。
換気口から出現した飛行生命体は、徐に床や壁際に横たわる人間の亡骸に飛来しては、その細長い口を死体の口内から突っ込み何かの動作を行っていた。
「な、何をしてるんだ? あの鳥みたいなの……」
飛行型生命体の謎の行動に戸惑いを感じ始める大将たち。だが、その飛行生物の謎の行動の意味はスグに判明した。
飛行生物に細長い口を口内に突っ込まれた死体は、何かが内部で激しく活発に動き回るかのように体表面を揺らしては著しくその身を変貌させていった。口元には鋭い牙が生え揃い、胴体はまるで腫れ上がるかの様に丸く膨れ上がり、両腕両足の関節部分からは鋭く鋭利な鎌状の巨大な爪が生えてきては完全に全体像を変えてしまった。
「ガアァァーーッ!」
如何にも獰猛そうな唸り声を上げながら関節部分から変異した鋭利な鎌状の爪を立てて前進してくる人の亡骸であった怪物。その敵意の矛先は言うまでも無く聖龍隊と赤塚組、そして彼等が警護する新世代型二次元人たちであった。
しかも、変異したのは一体だけではなかった。飛行生物は他の死体にも同様の動作を行い、次々に死体を奇形の怪物へと変貌させていく始末であった。
「手足だ! 手足を切断するんだ!」
一時は飛行生物によって変異する死体を前にして激しく動揺していたメタルバードも即座に仲間達に指示を告げる。
それと同時にメタルバードは自身の鋼の肉体を変形させて、両腕両足を鋭利な刃に変化させては迫り来る怪物の鎌状の爪に変異した両手両足を一気に切断して見せた。
一瞬の内に両手両足の関節部分よりやや上側を切断された怪物は、ピクリとも動かなくなり完全に息絶えた。
だが他にも飛行生物によって変異した人間の亡骸であった怪物が一行に駆け寄ってくる。その動きは驚くほどに俊敏で素早く、息も付けないぐらい一行の眼前へ急接近して来るのであった。
「ひ、怯むな! 応戦しろ」
キング・エンディミオンの指示の元、聖龍隊士らは勇敢に刃で立ち向かっていった。
鋭利な鎌や日本刀で、時には鍛え抜かれた両手による手刀によって怪物へと変貌した死体の両腕両足を切断していく。
しかし一向に変異した死体の数は減る気配が無かった。それもその筈、飛行生物が散乱している死体に次々と何らかの処置を施して異形の怪物に変貌させていたからだ。
飛行生物の止む事のない行為に逸早く気付いたメタルバードは即急に、その飛行生物の許へ駆け寄っては刃と化した右腕で飛行生物を一刀両断に斬り捨てた。
メタルバードが逸早く飛行生物の処理を行った為、ようやく死体が怪物に変貌し増加するという現象は納まった。
だが既に飛行生物に処置され怪物に変貌した死体は素早い動作で攻撃を揮う聖龍隊に向かっていく。
聖龍隊は有りっ丈の剣戟や刀による攻撃、更には鍛えられた手首による手刀などで次々に怪物の変異した両腕両足を切断し、その動きを完全に止めるのであった。
そして幾度と無く続いた戦闘も無事に乗り切り、辺りには怪物へと変貌を遂げた人間の死骸が無造作に転がっていた。
「に、人間……人間が、まさか人間が怪物に……」
本来は何とも無い死体であったのにも関わらず、謎の飛行生物によってその容姿を著しく変異した怪物を目の当たりにして蒼然と顔を蒼褪める琴浦春香。そんな琴浦春香に大将が複雑そうな顔で反論した。
「人間、だったが正解だ。もうコイツ等は人間じゃねェ」
大将の言うとおり、最早目の前に転がっているのは人の亡骸ではなく、人であった怪物の死骸なのである。
戦況が落ち着いたその頃、メタルバードを初めとする聖龍HEADの幹部達は落ち着いた様子で自分達が倒した人の死体であった怪物の亡骸を念入りに調べた。
すると怪物の亡骸を調査していたメタルバードが、スッと立ち上がると険しい顔付きで語り始めた。
「成る程な……あの飛行生物が人間の死体に核ともいえる卵かそれに近いモノを植え付けて、それが急速な速さで死滅した肉体を侵食してあの様な異形の怪物に変貌したんだろう」
メタルバードの解釈を聞いて大将が不安そうな顔で訊ねる。
「つ、つまり……あの鳥みたいなのが人間の死体をバケモノに変異させちまうって事か?」
不安げな表情で訊ねてきた大将にメタルバードは険しい顔で答え返す。
「簡単に言えば、そういう事だ。ただ、変異した奴は手足の関節部分と生命維持の機能が連結しているから、さっきも俺が言ったとおり手足を切断すれば簡単に絶命する」
変異してしまう人間の屍について淡々と説明するメタルバードに、大将も赤塚組も、そして新世代型の面々も蒼然となってしまう。
しかし只一人、ジェイクだけは落ち着いた面持ちで話し始めた。
「ようするに手足を狙って攻撃すれば良いんだな。ヘッ、弱点が分かればコッチのもんだぜ!」
躊躇う所か更に戦意を上げていくジェイクの言動に、大将は呆然としながらも彼に話し掛ける。
「じぇ、ジェイクのあんちゃんよ……最初会ったときから薄々感じてはいたんだが、ヤケにヤル気満々じゃないか」
するとジェイクは同然と言わんばかりに大将に言い返した。
「ヘッ、これぐらいでビビッていられるか! 俺は以前にも、これ以上にヤバイ事態を経験しているんだ。コン位の状況、まだまだ本調子じゃねェよ」
「ま、マジかよ……」
今の現状に対しても、過去に自分が経験した事態に比べれば未だに安易な方であると豪語するジェイクの言葉に大将はもちろん新世代型の面々も愕然としてしまう。
肉体が変異し怪物へと豹変した死体であったクリーチャーの群れとの戦闘を終えて、一行は更に先へと進む。
すると進路方向先の通路は完全に照明が落ちており、完全な暗闇状態であった。
聖龍隊は常備品であるペン型ライトを口に銜えながら常に如何なる戦闘にも対応できる体勢で闇に閉ざされた通路を進んでいく。
暗い通路を口に銜えたライトの微かな灯りを頼りに慎重に歩いていく。
すると暗闇を照らすライトの照明の先に、何やら人影らしき物体が動いているのが確認できた。
「い、今のは……!?」
照明に照らされ薄らと闇の中で浮かび上がった人影にメタルバードは警戒の念を張り詰める。もしも敵であるクリーチャーであったなら容赦なく倒すのが必須であるからだ。
そしてメタルバードを先頭に聖龍隊や赤塚組といった戦闘メンバーが人影を確認した辺りに静かに忍び寄る。
しかしこの時、メタルバードはふと思った。灯りの中で浮かび上がった人影、それが異常なまでに長身で腕や足も尋常でない長さに見えたからだ。
そろり、そろりと忍び足で人影を確認した辺りまで歩み寄るメタルバード達。
そしてライトの照明が照らす先に、その人影が実体を現した。
ボロボロの身なり、手足は人の通常の二倍はあり、その顔はドクロの様な風貌であった奇怪な存在であった。
「な、何だコイツは!」
ライトの灯りに照らされた長身の怪人は、その異様に長い腕を振り翳し、それを一気に前方のメタルバード達に振るっては攻撃してきた。
「伏せろ!」
メタルバードの一声で、一同は一斉にしゃがみ込んでは攻撃を回避する。そして後ろへと後退していくが、後退しながらメタルバードは己の眼球をレーダーに変化させて前方の怪人の内部をスキャンした。
怪人のスキャンを開始したメタルバード。すると驚くべき事実が判明した。
「み、みんな! コイツは複数の寄生生物に寄生されている人間の屍だ! 寄生生物同士が他の死体の腕や足の部位を繋げて、通常よりも長身で長い腕の怪物に変貌しちまっている!!」
メタルバードのレーダーアイで判明した事実を聞いて驚愕する一同。なんと眼前の長身の怪人には複数の寄生生物が寄生しており、その寄生生物によって他の死体の腕や足が接続されている為に長身で長い腕という異様な容姿の怪人に変貌してしまったのだという。その容姿はまるで、長身の怪人と言うよりも幽霊に近い不気味な風貌であった。
そして皆は先ほど戦ったクリーチャーと同様に怪人の異様に長い手足を中心に攻撃していった。この時、パラサイダー戦では余り活躍できなかった刃物を主流に戦う面々はその時の返上をするかの如く果敢に怪人の手足を一刀両断していった。その中には新世代型の纏流子や
一斉に戦闘員の剣戟を受けた怪人は、その長身を巨大な山を崩すかの様にバラバラに分離しては倒れた。
だが斬り落とした腕や足からは無数の白い寄生虫の様な寄生生物が這い出てきて、それを見た赤塚組は次々に寄生虫を踏み付けて一匹残らず駆逐した。
後に残ったのは長身の怪人の切断した腕や脚に胴体、そしてドクロの様な風貌の頭部だけであった。最初にメタルバードがスキャンしたとおり、怪人の異様に長い腕や足は他の死体の手足を繋ぎ合わせて一体の怪物へと侵食した寄生虫が活動範囲を広める為に成形した体だったのだ。
そして小銃を構え、無造作に散らばった周辺の手足を見回す赤塚組の海野なる。だが彼女の背後から小さな物体がゆっくりと物音を立てずに忍び寄っているのに、なるは気付いていなかった。
辺りを見渡し、危険が無い事を再確認するなる。しかし足元まで近付いてきている物体に気付く事無く、その物体はなるの腰辺りに狙いを付けた。
そして「えっ?」足元まで接近した物体は、突然なるの腰に跳び付いた。その時ようやく物体に気付いたなるが腰の辺りに視線を向けると、そこで物体の正体を知るのであった。
それは先ほど自分達が倒した複数の寄生生物に寄生され、長身の体に成形されていた怪人のドクロに酷似している頭部だった。
「きゃ、きゃあっ」
思わず悲鳴を上げるなる。だが彼女にしがみ付いた頭部は、首下の部分から複数の細い触手を伸ばしてきては、それでなるの首元まで強引に接近しては同時に彼女の首に力を懸けた。
「グ……っ」
首周りに掛かる圧力に、なるは必死で巻き付いてくるドクロを引き剥がそうとする。しかしドクロは更になるの首に触手を巻き付けては力を加えていく。
もがき続けるなるは自力で引き剥がそうと奮闘するがドクロの触手が余りにも強靭で中々剥がせない。
と、其処に「なる!」なるの首に巻き付くドクロとそれに奮闘しているなるの姿を見た大将が、有無も言わずになるの首にしがみ付くドクロを殴り飛ばした。
ドクロの触手からようやく解放されたなるは一気に力が抜けて、その場に腰を下ろしてしまう。「なる、大丈夫か」大将がなるに言葉を掛けると、彼女は「ええ、どうにかね……ありがと、大将」と大将に礼を述べた。
一方の大将に殴り付けられ弾き飛ばされたドクロの頭部は、床の上で触手を巧みに使って動き回っていた。
床上で動き回るドクロを確認した大将は、そのドクロ目掛けて足を上げては力の限りドクロを踏み付けて木っ端微塵に粉砕した。
「はぁ、これは何なんだ?」
自分が踏み付けては粉々にしたドクロに酷似している頭部を見て、大将が思い更けているとメタルバードが彼の後方からその疑問に対して答えた。
「それも、いやそいつ自身が寄生生物だな。さっきの怪人の頭部を丸ごと引っこ抜いて、それに代わって自分が頭部として体の中枢神経から乗っ取るタイプらしい」
「つ、つまり! なるも下手したら、首が切断されてコイツの頭がなるの頭と代わっちまっていたって事か?」
メタルバードの話を聞いて驚愕する大将と、下手したら自分の首が切断されて寄生されそうになっていた事実に脅える海野なる本人。
間一髪で寄生されそうになったなるを救った大将。そして一行は再び暗闇に閉ざされた通路の奥へと進行するのだった。
先ほどから他の生物や死骸に寄生しては、驚異的な生体兵器と化す敵と対峙してきた聖龍隊に赤塚組といった面々は流石に困憊してきた。
そして一行は、通路脇に微かな点灯が点いている長い通路へと差し掛かった。
「なあ、俺達が向かっている工業用のドでかいエレベーターは、後どれくらいなんだ?」
大将が傍らのメタルバードの訊ねると、メタルバードは先ほどコレクターズの三名と
「ふむ、そうだな……ああ、此処の通路を抜ければもうスグだ」
「そうか! ようやくエレベーターに辿り着ける訳か。長かったぜ、まったく」
メタルバードの言葉に大将は素直に喜びを表情に出した。
そして一行が長い直進の通路を進もうと足を前へ踏み入れようとした、その時。
一行の目の前に先ほど海野なるに寄生しようとしていたドクロ型の寄生生物がゆっくりと移動しているのが先頭のメタルバードと大将の目に入ってきた。
「あ、アレは!」「!」
驚くメタルバード、そして反対に咄嗟に拳銃を抜いて銃口をドクロ型の寄生生物に向ける大将。
しかしドクロ型の寄生生物はメタルバードや大将たちには一向に気付かない様子で、そのまま進行先の壁に寄り掛かる人間の死体へと接近していく。
皆が目を向ける中、ドクロ型の寄生生物は壁際の死体に近寄っては、その死体の上を這い上がりそして首の所まで這い進むと触手を首に伸ばしては少しずつ細い触手で首の内部へと侵入し、次の瞬間その死体の首を切断してみせる。そして切断され床に転げ落ちる元の頭部に代わってドクロの生物は触手を切断面に侵入させては、死体の中枢神経を初めとする全ての神経と触手を接続して完全に死体を乗っ取ってしまった。
そして切り落とした頭部と入れ替わりに死体と接着した寄生生物は中枢神経を支配しては、その死体を立ち上がらせて自在に操り始めたのだった。
その光景を見て愕然となるメタルバードや大将たち。そして死体を乗っ取ったドクロ型の寄生生物は、そのドクロの顔を一行の方へと向けるとゆっくりと歩み寄ってきた。
一歩、一歩、ちぐはぐな足取りで前進し向かってくるドクロ型の寄生生物に支配された亡骸。集団の先頭に陣取っていたメタルバードと大将達は歩み寄ってくる異形の生物に寄生された亡骸に愕然と立ち尽くしていた。
そして愕然と立ち尽くす大将の眼前まで、その支配された亡骸が歩み寄った次の瞬間であった。頭部に寄生しているドクロ型の生物の口から無数の触手が飛び出しては大将の首元に絡み付いた。
「う、うわぁ!!」「大将!」
突然ドクロの生命体に絡み付かれ一驚する大将にメタルバードはアッと言う感じで名を呼んだ。
そして次第にドクロの寄生生物は首を締め付ける力を強め、更には触手の先端を大将の首筋の皮膚を貫通し侵入してきた。
「グ……グ……ッ!」喉を締め付け、更には皮膚を貫通し体内に触手を侵入させるドクロ型の寄生生物と狂い戦う大将は、力ずくで触手を引き剥がそうと奮闘する。
寄生生物の触手と苦戦の末「……ッ、うおりゃッ!」大将は遂に寄生生物の触手を引き剥がし、更には強引に死体の頭部に寄生しているドクロ型の生物を引き千切ると、それを床に叩き付けては即座に踏み付けて木っ端微塵にした。
「た、大将……」「ハァ、ハァ……」
声を掛けるメタルバードだったが、当の大将は苦戦の末だったのか息を切らしていた。
「ハァ……も、もう大丈夫だ。さ、早く先を行こうぜ」「あ、ああ……」
困憊状態の大将の様子を気にしつつ、メタルバードは彼と共に皆を先導して目的の中央フロアの業務用エレベーターに向かう。
そして一行は数々の戦闘を潜り抜け、遂に目的のエレベーター付近まで辿り着く事ができた。
「よし、ようやく着いたな」「ああ、これで上へと行けるな」
前方に見えるエレベーターの扉に視線を向けて、メタルバードと大将は仲間達と共に一直線に扉の前まで駆け抜けていった。
「も、もうすぐで出られるんや……!」
「長かった、ホントに長かったぜ」
エレベーターを使えばスグにでも地下の施設から脱出できると思う余り喜びを抑えきれない新世代型の鳴子章吉と今泉俊輔。
そして一直線の通路を駆け抜け、目的の工業用エレベーターの前まで辿り着く一行。扉の前まで駆け抜けると、エレベーターの扉は工業用と言うだけあってかなり大きく、小型のトラックが容易く通れるぐらいの大きさであった。
メタルバードは早速エレベーターを呼び出す為に上矢印のボタンを押す。するとエレベーターはゆっくりと動き出し、少しずつではあるが確実に自分らの階層に向かっているのを機械音で確認する一同。
皆は無事に作動し自分達が居る階層に向かってきているエレベーターに安堵の感情を向けていた。
まさにその時。
周囲から鳴り響く奇怪な唸り声に何かが物凄い勢いで此方に迫ってくる物音。それらの気配を感じて一同は警戒を張り詰めた。
そして聖龍隊と赤塚組、更にはジェイクに戦闘可能な新世代型たちが臨戦態勢を取った次の瞬間。先ほど自分達が駆け抜けてきた通路の端の通路や物陰から多数の生体兵器が出現し、エレベーター前の一行を獲物として捉え襲い掛かってきた。
「き、来やがった!」「クソッ、エレベーターの機械音で集まってきたか」
小銃を構えて驚く大将に対し、メタルバードは冷静に数多の敵が自分達が呼び出したエレベーターの機械音で集結した事実を把握する。
大群で攻めて来る敵に対して応戦体勢を取る聖龍隊と赤塚組、そしてジェイクに戦闘可能な新世代型たちは迫ってくる敵の群れに一斉攻撃を開始した。
「怯むな! 攻撃あるのみだ!」
仲間や戦闘を開始する者たちに声を掛けるメタルバードは、右腕をレーザー砲に変形させて電撃の砲撃で次々に敵クリーチャーを撃破していく。
赤塚組の面々も怯む事無く小銃を敵に向けて連射していく。弾丸は群れの中を駆け抜ける先ほども対峙した蟲狼に命中し、その命を奪う。
更に謎の飛行生命体によって変異した人間の死体も、その鎌状の爪に変形した手足に丸く膨らんだ胴体で俊敏な走りで向かってきた。
死体が変異し手足切断によって倒す事が可能な敵が迫る中、メタルバードは風の刃を発生させ相手の手足を切断し、接近してきた敵には剣や刀が主流の戦法である隊士が次々に薙ぎ倒して行く。
一行は光線や銃撃それに弓矢といった戦術が基本の者は全て遠距離の敵と応戦し、それとは真逆で接近してきた相手には拳での殴打や刀や剣といった形で斬り付けたりと連携した戦いを展開していく。
そんな中、皆が戦闘中の最中にやっとエレベーターが到着するのだった。
「エレベーターが来たぞ! 非戦闘系の新世代型から中に入れ!」
「みんなコッチよ! さぁ、早く!」
メタルバードの掛け声と共にミラーガールが新世代型の面々を誘導しエレベーター内に搭乗させていく。
一人一人、確実に誘導しエレベーターに搭乗させていくミラーガール。そしてようやく非力な新世代型は全員無事にエレベーター内に登場し終わった。
「バーンズ! 全員乗り込んだわ」
「よし! 次は流子たちに未来たち! お前らが乗れ!」
ミラーガールから非力な新世代型の搭乗が済んだ事を知らされたメタルバードは、次に戦闘に加わってくれている纏流子や栗山未来たちに搭乗するよう言い聞かせる。
だが聖龍隊への協力願望に満ちた
「い、いや! 我々、四天王はまだまだ戦えます! 現状の安全が確立されるまでは戦前後退などできません!」
すると
「アタイも! こんなバケモノ共、一掃した方が返って気分が晴れるってもんだ!」
しかし反論する二人に対してメタルバードは剣幕を立てて言い付けた。
「お前達は無理して戦わなくても良いんだ! 戦うのは俺たち聖龍隊に任せて、お前らは言うとおりにして自分の身を優先するんだ!!」
強く言いつけるメタルバードの発言に続いて、今度はエレベーター内に既に搭乗している流子の親友である満艦飾マコが戦闘を続ける流子たちに話し掛けた。
「流子ちゃん! それに皐月様たちも! 此処はみんなで脱出する事の方が大事だよ。お願いだからみんな乗って!」
「ま、マコ……」「満艦飾……ッ、解った」
満艦飾マコの強い要望を目の当たりにして、纏流子と
更に戦闘を続行している栗山未来に名瀬兄妹に同じ新世代型の女子で、未来と同じ眼鏡っ子のコウサカ・チナも三人に話し掛けてはエレベーターに乗り込むよう要望する。
「未来さん! それに名瀬のお兄さんに妹さん! 戦闘は聖龍隊が引き受けてくれてますから、急いで乗ってください!」
コウサカ・チナの必死の説得を耳にし、栗山未来と名瀬兄妹の三人もエレベーターに搭乗する。
こうして新世代型二次元人の全員が搭乗したのを確認した聖龍隊と赤塚組も行動に移る。
「よっし! 俺たちも乗り込むぞ」「ああ!」
メタルバードと大将は、まず最初に他の聖龍隊士と赤塚組の幹部達を搭乗させ、一番最後に二人同時にエレベーターに乗り込むのであった。
そして二人の頭はエレベーターの扉を閉めて稼動させようとした。だがその時「う、うわッ!」閉まろうとしていたエレベーターの扉の僅かな隙間から一匹の蟲狼が、その白く光る牙と陥没した眼球が目を引く顔を突っ込ませ、更に下半身の蟲の部分でエレベーターの扉を強引に突破しようと暴れ回った。
「クッ……乗車は、ご遠慮お願いします、っと!」
そう言いながら大将はエレベーターの扉に挟まった蟲狼の顔を足で力いっぱいに押し退けた。
大将が蟲狼を押し退けた事で、ようやくエレベーターの扉は閉まり稼動するのだった。
「へぇ……やっと動き出したか」
寸での所で蟲狼の侵入を防いだ大将は腰を床に着かす。
大将と同じ他の皆も上昇するエレベーターの中で安堵の表情を浮かべる。
こうして一行は寄生型生体兵器が蔓延るエリアを抜け出し、無事に総員が乗り込む事が出来る工業用エレベーターで上の階へと向かっていくのであった。
[巨大タランチュラ]
恐るべき寄生生体兵器との戦闘を掻い潜り、工業用エレベーターで上昇していく一行。
工業用で移動速度が遅いのか、少しずつしか上昇していないように感じるエレベーター内では聖龍隊も赤塚組も新世代型たちも安息の一時を感じ浸るのであった。
そしてしばらくの間、何事も無くエレベーターが上昇している時であった。
ガタッと激しくエレベーターが揺れた。「何なのだ!?」そう口々に動揺し焦りを見せるエレベーター内の者たち。
そんな状況の中でもメタルバードは落ち着いた面持ちでエレベーター内から周囲の現状をレーダーアイで見回していく。
するとメタルバードはエレベーターの上方で何やら巨大な生体反応を確認した。エレベーターの激しい揺れの原因は、もしやその生体反応の主ではないかと思ったメタルバードは即座に行動に移った。
「大将、アッコ。室内の連中の事は任せたぞ」「え」「ば、バーンズ?」
突然のメタルバードの言葉に不意を衝かれる大将とミラーガール。そしてメタルバード本人はエレベーター内に大勢の同胞や仲間達、それに新世代型の面々を残したままエレベーターの天上パネルを突き抜けて天井裏へと移動した。
メタルバードがエレベーターの天井裏に移動したと同時に、彼の上方から一つの物体が落下してきた。
その物体がエレベーターの天井に着地した途端、エレベーターは部屋ごと激しく揺れ中の皆々は非常に驚くのであった。
そしてエレベーターの上に落下しメタルバードと対峙するのは、なんと巨大なタランチュラであった。
しかも巨大タランチュラは敵意むき出しの状態なのか、対峙するメタルバードにその敵意を向ける。
メタルバードは巨大タランチュラとの一戦に備えて、戦闘態勢に入る。
そして次の瞬間、巨大タランチュラはメタルバードに向けて粘着性の高い蜘蛛糸を放出し、メタルバードの動きを封じようとする。
「うわッ」
全身に蜘蛛の糸が絡み付き、中々思うように動けなくなってしまうメタルバード。そんな彼の状況に気付いたのか、エレベーター内からミラーガールを初めとする聖龍隊の仲間達の声が呼んだ。
「バーンズ、大丈夫!?」「わ、私たちも加勢する?」
ミラーガールにセーラーマーズの掛け声に対してメタルバードは体に絡みつく糸を剥がしながら言い返した。
「俺一人で大丈夫だ! それよりもお前らは中の一般人の警護を最優先にして、一歩たりともエレベーターから出ようとするんじゃない!」
「わ、解ったわ!」
メタルバードの返答を承諾して、同じHEADのキューティーハニーが返事を返す。
そしてメタルバードは、いつ如何なる状況にも対応できる様に右腕を刃に、左腕をレーザー砲に変形させて向かってくる巨大タランチュラと戦闘を開始した。
まず巨大タランチュラは壁沿いに移動しながらエレベーター上のメタルバードに向けて粘着性の高い糸を無数に放出する。だがメタルバードは、その糸を右手の刃で悉く切り払っていく。
更にタランチュラは、その口から黄色い酸を吐き出してはメタルバードに浴びせる。しかしメタルバードは酸にも強い鋼鉄の体であった為に、全く持って効果はなかった。
しかし次の瞬間、巨大タランチュラは自身の背中部分を後ろ足で激しく擦り始め、その箇所からは凄まじい量の毛が飛び散った。その現状を目の当たりにしたメタルバードは、スグに自身の眼球に薄いコーティングを施し保護すると今度はエレベーター内のミラーガールに指示を言い放った。
「ミラーガール! 大変だ! 早くミラー・バリアーを展開させてみんなを護れ! 急げ!」
「え、ええ……分かったわ」
指示の内容を掴みきれなかったミラーガールであったが、彼女は言われた通りにミラー・シールドから光を放出してバリアーでエレベーター内のみんなを被った。
するとバリアー内で、天井パネルの隙間から混入してきた巨大タランチュラの毛をよくよく観察してみると驚くべき事が判明した。
何と巨大タランチュラの毛の一本一本が細かな針の様に硬くそして鋭い物質であったのだ。
ミラーガールのバリアーに衝突する一本一本の毛は、バリアーに触れる度に鉄の針か釘が当たるような金属音を発していく。
「な、なんだ!? この毛は……?」
鉄のような硬度を持つ毛に対して驚きを隠せない大将に、雑学に秀でた幹部の山崎貴史が説いた。
「普通のタランチュラそのものが、背中の毛が針みたいに鋭い毛並みで有名なんだよ。敵に襲われそうになったら、その敵に向けて背中の毛を後ろ足で掻き飛ばして相手を攻撃するんだ。毛そのものに有害な物質は含まれてはいないものの、針のように鋭く細かな毛が人や獣の目に入ってしまえば激痛に襲われ、下手したら失明してしまう程の危険性があるんだよ」
「け、毛まで武器にしちまっている訳かよ。タランチュラはよ……」
山崎貴史が語ったタランチュラの恐るべき能力に、大将は愕然としてしまうばかりであった。そしてその能力は巨大化したタランチュラにも引き継がれ、タランチュラは高速で8本ある内の一番後ろの両足で背中を擦り付けては針の様に鋭い毛を無数に拡散させるのであった。
一方ミラーガールにエレベーター内の皆をバリアーで巨大タランチュラの毛から護る様に指示をした後、自身の眼球を防御しながらエレベーター上で巨大タランチュラと死闘を繰り広げていた。
巨大タランチュラは野性的本能で背中の毛が対峙するメタルバードに効いてない事を察し、戦法を変えた。それは毛を飛ばす行為から極端な突進攻撃だった。
しかし巨大タランチュラの突進をメタルバードはエレベーターの上下稼動を機能しているワイヤーを掴んでは身軽に回転しながら巨大タランチュラに一蹴り入れる。
メタルバードの蹴りを喰らって弾き飛ばされる巨大タランチュラ。しかしタランチュラはメタルバードの蹴りに物ともせず体勢を立て直し、お次は尻の後部から無数の毒針を放出する。
「クッ」
だが放たれる無数の毒針をメタルバードは自身の鋼鉄の体で防ぎ、再度攻撃の構えを取る。
果敢に攻め立てるメタルバードの光線銃に直撃し、腹部から緑色の血を噴き出す巨大タランチュラ。するとタランチュラは自身に浴びせられていくメタルバードの攻撃から遠ざかる為に、エレベーターの外壁に逃げ込んだ。
「逃がすかッ」
エレベーターの外壁その死角に入り込んだ巨大タランチュラをレーダーと化した瞳で捕捉したままメタルバードは追撃する為にエレベーター内へと入り込む。
「どいてくれ!」「う、うわっ」
エレベーター内にいる新世代型たちや聖龍隊の同士達を押しのけ、メタルバードはエレベーターの内側から外壁に逃げ込んでいる巨大タランチュラをレーダーアイで捉えながら光線銃と変形させた左腕で容赦なく追撃していく。
そんなメタルバードの応戦する姿を見て、ルーキーズ総部隊長のミラールも加勢に入ってきた。
「総長! 私も加勢しますッ」
ミラールは自身の武器であるミラージュガンでメタルバードが追撃で射撃していく壁の着弾点を追って続け様に連射していく。更に壁際から真下へと移動した巨大タランチュラを捕捉しているメタルバードは連続で今度は床下を銃撃し、ミラールもそれに続けと激しい銃撃を床下に向けて発砲していく。
「うわっ、うわっ!」
メタルバードとミラール二人の苛烈な銃撃で壁や床に無数の風穴が開いていき酷く戸惑い始める新世代型の面々。そんな激しい銃撃を行う二人にエレベーター内に滞在していた大将が大声を掛ける。
「お、おい! バーンズにミラール、エレベーターが穴だらけに成っちまうぞ!」
すると激しく言い寄る大将に対し攻撃の手を緩めないメタルバードは言い返した。
「済まねェが、此処で手を緩めたらあのクモ何するか解ったモンじゃねェ!」
そう言いながらメタルバードの銃撃は止む事無く、そのメタルバードの銃撃に加勢するミラールの銃撃も止まる事は無かった。
二人が激しい銃撃をエレベーターの内側から射撃していく中、外壁に身を潜めていた巨大タランチュラに直撃したのか壁に開いた穴から緑色の血がエレベーター内に流れ込んできた。
そんなエレベーター内の混沌とした戦況の中、巨大タランチュラは再びエレベーターの真上その天井裏へと移動するのをレーダーアイで捉えていたメタルバードが目で追っていく。
「また天井に戻ったか……」
真剣な顔付きで追撃の姿勢を崩さないメタルバードは、幾多の銃撃を展開し戸惑いの空気に満たされるエレベーター内の現状を尻目に再び自身も天井裏へと舞い戻っていった。
エレベーターの真上に戻ったメタルバードは、多数の銃撃を浴びて緑の血に染まる巨大タランチュラと再び向き合う。
すると幾多の猛攻を追撃され追い詰められた巨大タランチュラは驚くべき行動に移った。
何と巨大タランチュラは腹部から無数の蠢く小さなクモを一斉に産出し、そのコグモは群集でメタルバードに襲い掛かってきた。
「き、気色悪ィ……!」
無数のコグモを目の当たりにして鳥肌を立たせるメタルバードは、内心怯みながらも左手の光線銃の銃口を変形させて光線が拡散する口径にすると強烈なレーザーがバチバチと音を鳴らしながら前方で拡散し、拡散したレーザーは群れを成す無数のコグモを次々に迎撃していく。
だが、巨大タランチュラの放ったコグモの群れは何と天井裏だけでなくエレベーター内にも侵入してきては室内の人間達に襲い掛かってきた。
「きゃあっ!」
気色の悪い無数のコグモの群れ恐怖し悲鳴を上げる女子達。中には屈強な戦士であるが同時に可憐な乙女でもある聖龍隊士の中にもコグモの脅威に圧倒され戸惑いを感じずには居られない女性達もいた。
しかし、そんなコグモの群れに圧倒される女性や女子が周囲に居る中、一人だけボーイッシュ系で強気なカンフーファイターでもある電撃系能力者ドラゴンキッドはエレベーター内に侵入してくるコグモの群れに怯む事無く、眼前に群れが迫ってくると強力な電気を帯びた右手を翳しては直接コグモの群れに攻撃を仕掛けた。
「ハァッ!」
強烈な電撃による光りと共にエレベーター内に響き渡る衝撃音に巻き込まれ、エレベーター内の群れは一掃された。
群れが成していた床下には、ドラゴンキッドの電撃の拳により黒焦げ、そして凹んだ痕跡だけが残されていた。
「き、キッド……よく、あんな気色悪いクモの群れを、しかも直接パンチで一掃しちゃうなんて……」
コグモの群れに脅え戸惑っていたブルーローズの言動に、ドラゴンキッドは当たり前のように真顔で話し返した。
「何言ってるのさ、ブルーローズ。早く倒さなかったらボク達はもちろん、新世代型の人達も危険に晒されていたかもしれないじゃない。何よりボク等はヒーローじゃないか、最優先に危険な生き物は排除していかないと」
「は、はぁ……」
「それに、たかがクモじゃない。それが単に群れていただけだし、怖くも何ともないじゃないか」
平然と真顔で話していくドラゴンキッドの態度を目の当たりにして、ブルーローズは唖然とするばかりだった。
一方でエレベーター天井裏では、メタルバードと巨大タランチュラの激戦は続いていた。
メタルバードは拡散式の光線銃に変形した左腕で足元に近寄ってくるコグモの群れを次々に射撃しては殲滅していった。だが肝心の親グモである巨大タランチュラはメタルバードに対する攻撃の姿勢を変えず、果敢に粘着性の糸や無数の毒針を放出して反撃を繰り返していた。
だがメタルバードは降り掛かるクモ糸を右手の刃で切り裂き、無数の毒針を鋼鉄の体で微塵も痛みを感じずに、巨大タランチュラに砲撃を続ける。
そして左手のレーザー砲撃を浴びせていきながら、メタルバードは再びエレベーターのワイヤーを掴んでは体を回転させてその勢いで巨大タランチュラに蹴りによる打撃攻撃を浴びせる。
弱りきっていた巨大タランチュラはメタルバードの回転蹴りを喰らい、困憊状態に陥っていた。
と、その時。弱りきっていた巨大タランチュラが上昇するエレベーターと僅かな壁の隙間に挟まってしまい、その反動でエレベーターは激しく揺れ出した。
「うわ!」「こ、今度はなんだ?」
先ほどの室内での激しい銃撃やコグモの大群で混乱していたエレベーター内でも、反動による衝撃が伝わり皆は動揺を覚える。
一方エレベーターと壁の僅かな隙間に挟まってしまった巨大タランチュラは必死にもがいていたが、もはや抜け出すことは不可能でエレベーターの揺れはより一層激しさを増すばかりであった。
その現状を目にしたメタルバードは、もはやエレベーターが長くは持たない事を悟り、急ぎエレベーター内の皆に叫び掛ける。
「おい! もう、このエレベーターはダメだ! 急いで下りろ! 落下するぞ!」
メタルバードの発言に室内の皆は愕然と衝撃を受けた。
そしてメタルバードの言葉を聞いてジュピターキッドは慌ててエレベーターの緊急停止ボタンを押して上昇するエレベーターを停止させた。
停止したエレベーターの扉を聖龍隊のトリコや金剛番長などの強力な面子が自力で開いては、出口を解放させる。扉を開けると何処かの階層でエレベーターが停止しているのが把握でき、それを確認したHEADの面々は、急ぎ新世代型の面々をエレベーターの外に誘導する。
「さあ、早く! 急いでエレベーターから出て!」
誘導しながら一人ずつ確実にエレベーター内から脱出させていくセーラーヴィーナス。彼女に続いてエレベーターの出入り口の外と内で聖龍隊と赤塚組の面々が連携してエレベーター内の新世代型を中心に確実に脱出させていく。
そして全ての新世代型をエレベーターから抜け出させた後は、内部に残った赤塚組が先に抜け出し、それに続いて最後に聖龍隊の隊士そしてHEADがエレベーターから抜け出す。
「バーンズ! 全員エレベーターから出られたわよ。あとは貴方だけ!」
未だにエレベーター真上に滞在しているメタルバードに、総員の脱出が完了した事を伝えるミラーガール。すると彼女の声を聞いたメタルバードは徐にエレベーターの滑車と繋がっているワイヤーに手を掛けては、壁際に挟まってしまった巨大タランチュラを見下ろしながら言った。
「これでお終いだ」
次の瞬間、メタルバードは右手を強力な切味のレーザー回転鋸に変形してはエレベーターを繋ぎ止めている鉄製のワイヤーを切断し始めた。
激しい火花を散らしながらワイヤーを切断していくメタルバード。そして遂に、停止するエレベーターを吊るしていたワイヤーは断ち切られた。
ワイヤーが断ち切られた瞬間、一気にエレベーターは落下を初め、巨大タランチュラはエレベーターと狭い壁際に挟まれたままエレベーターと共に急降下していった。
一方のメタルバードは、ワイヤーを完全に切断したと同時に両腕を変形させて両翼を生やしてはそれで空中に停止していた。そしてそのままエレベーターの階層出入り口から抜け出たメタルバードは、両翼を再び通常の腕の形に変形させると同時に急いで周囲の皆に言い放った。
「みんな、早くエレベーターから離れろ! 爆風に巻き込まれるぞ!!」
メタルバードの指示の通りにエレベーターから離れる一同。そして次の瞬間。急速に落下したエレベーターが最下層に落下した衝撃で爆発が生じたのか、灼熱の爆風が真上に向かって噴き上がってきた。
噴き上がってきた爆炎は扉の隙間を抜けて、激しい轟音と共にその入り口付近が炎で黒いスス塗れになった。
移動手段の一つであったエレベーターが使用不可となり愕然と成る一同。
そんな中、大将がふと訊ねてきた。
「と、ところで……此処は何階だ?」
大将の問い掛けに、PCを常備している
「ええっと、此処はですね…………地下24階のようです!」
「ええ! まだ24階な訳?」
「何を言ってんだい。逆に考えるんだ。46階から一気に24階まで辿り着けて良かった、ってね。ポジティブに考えよう、ポジティブに」
「ま、前向きですね……」
ジュピターキッドの前向きな思考に唖然と言葉を掛ける新世代型の室戸大智。するとジュピターキッドは平然と大智に言葉を返した。
「まあね。そもそも、つい最近まで凄く後向きな……そう、ネガティブな人間の側近だったんで今では真逆のポジティブな発想に辿り着ける訳なのよ」
このジュピターキッドの台詞を聞いた大将は、しかめっ面に近い顔つきで話し返した。
「修司の事だな。アイツ、昔っからネガティブっつうか暗ェ考えしか思いつかなかったからな。ホント、聖龍隊屈指のネガティブ野郎だったな」
「まあ、その分……私を初めとする他の聖龍隊のみんなは逆の発想つまりは前向きな考えを取る様になったけどね」
大将の発言にHEADのちせは苦笑しながらも複雑な心境で聖龍隊士の思考の前向きさが向上した事を示唆した。
だが其処に、今度はその小田原修司と婚約の契りを結んでいる加賀美あつこことミラーガールが提言した。
「まあ、確かに修司の発想は暗かったといえば暗いものだったけど……逆の意味で言えば、とっても現実的で為になる発想でもあったわ。政治的にも聖龍隊の組織構成にとっても、修司のその現実的な発想はとても助かったじゃない」
「アッコちゃん、それはそうだけど……」
ミラーガールの弁明に対して、納得はしているものの複雑な心境は相変わらず変わらないセーラームーン。
その時、辺りに落ち着きが戻ってきた現状にジェイクが皆に言い付けた。
「おい、おっさん達。そろそろ先に行こうぜ。こんな所で留まってちゃ、またバケモノが寄ってきちまうぜ」
「ッ! そ、そうだな」
ジェイクの礼節を感じさせない言動に少しばかり不快に感じる大将たち赤塚組。だが、そんな赤塚組の心境を察してかキューティーハニーが不服を覚える大将の肩を叩いては話し掛ける。
「大将くん、それにみんなも悪く感じないで……あのジェイクは小さい頃から内戦の国で生き抜く為に傭兵として生き続けてきたから、余り他人との関わり方が不下手なのよ。其処は察してあげて」
「だ、だけどハニー! だからって、彼の言動とか……」
キューティーハニーの言い分を聞いても尚ジェイクへの不満を抱くハニーの旧友である秋夏子が言い寄ると、ハニーは悲しげな表情を夏子たち赤塚組の面々に向けて言った。
「気持ちは解るけど……彼は彼なりに私たちと一緒に戦ってくれている仲間じゃない。ジェイクには色々と事情があるから、素直に自分の気持ちを相手に伝えられないだけで根はとても良い人なの。それだけは解って頂戴」
「は、ハニー……」『…………』
キューティーハニーの悲しげな表情での訴えを前にして、赤塚組は何も言い返す事ができなくなってしまった。
一方でこの時、赤塚組とジェイクのやり取りを目撃していた新世代型の面々は自分達に覚醒していたテレパス系の意思疎通能力で、なんと赤塚組の面々やジェイクの心中を垣間見てしまった。
(まったく。あのジェイクって小僧、ワルっぽいのも傭兵やっていて性格が捻じ曲がっているのは解るけどよ。それにしたって、少しは年上に対しての礼儀ってモンを知らねェのかよ)
(ハニーがあそこまでジェイクの事を気遣っているって事は、それだけ彼が辛い過去や苦境を感じて生きてきたのよね。でも、だからって何でもかんでも金銭で物事を決めるのはどうかと思うけど)
(俺たち赤塚組も、政府からの指示でテロリストや海賊を狩ってそれで生計を立てているから余り他人の事を言えたモンじゃないけど……しかし、彼の金への執着心は余りにも異常だ)
ジェイク・ミューラーに対する心の中での不満を募らせる大将に夏子、そしてテツの赤塚組の幹部達。
しかしこの時、新世代型は同時にジェイクの心中をも垣間見てしまってた。
ジェイクの脳裏に浮かび上がったのは、生まれてスグに母親と死別してしまい更に生まれた国が度重なる内戦で混乱する戦場であった為に幼い頃から生き抜く術として傭兵として生きていかなければならない現実。更に近い時期では、一人の女性エージェントとの出逢いが彼の運命を著しく変えてしまう顛末へと進んでしまった経緯。そして……ジェイク自身も初めて知る事と成った彼の出生の秘密。新世代型はそれらの衝撃的な事実を人知れずジェイクの記憶から読み取ってしまってた。
余りにも衝撃的な真実と出生の秘密に関して絶句し立ち尽くしてしまう新世代型たち。そんな新世代型達の立ち尽くしてしまっている姿を見て、聖龍HEADの蒼の騎士と堂本海斗が話し掛ける。
「君たち、どうしたんだい?」
「早く来い! 俺達と一緒に行動しないと、無事に施設から抜け出せないぜ」
蒼の騎士と堂本海斗、二人の言葉に反応した新世代型たちは気持ちを一転させ同行していくのであった。
[特殊能力と闇の能力]
エレベーターで辿り着いた24階の部屋を巡る一行が足を踏み入れたのは、様々な研究資料や機材が目に付く広い研究室の様な部屋であった。
「此処は何の研究室だ?」
周囲を見渡しながらジェイクが今自分たちが居る部屋では何の研究を行っていたのか気にし出す。
すると室内に散乱していた研究資料の一つに目を通していたメタルバードがそれに答えた。
「ふむふむ、どうも此処は……超自然的な能力を中心に研究していた部署だったらしいな」
「超自然的能力?」
メタルバードの発した言葉に問い返す大将に、メタルバードは答え返した。
「ああ。超自然的能力、つまりは炎や雷、水に氷に風と……自然のエネルギーを操作できる能力の事だ。他にも人間の潜在能力に匹敵する超能力も、今では超自然的能力と分類されている。どちらも、常識を超えた能力だしな」
「な、なるほど……」メタルバードの説明に大将は唖然としつつも理解を示す。
その頃、ふと研究資料の内容に興味を持った美都玲奈が資料の中身を拝読していた。
資料の中身は、科学者が調べ上げていた超自然的能力そのエネルギーについてと、そのエネルギーの活用法についてであった。
【研究ファイル:超自然的能力とエネルギーに関して】
まず現段階で判明している超自然的エネルギーは以下の種類に分類される。
※火/水/風/土(大地)/氷/雷/樹木 これらの自然エネルギーは七大質素と我々研究科の間では分類した。
だが超自然的エネルギーには、他にも二種の異なりながらも決して消滅しないエネルギーが判明している。
それは光と闇の二大元素である。
光と闇はそれぞれ完全に独立しているものの、その他の自然エネルギーととても深い関わりを秘めており、逆に光と闇の物質が存在しているからこそ他の自然エネルギーが存在する事が可能だとも言われている。
二つの独立元素はその他の自然エネルギーに多大な影響を与え、時にはそのエネルギーを増幅させる事も、逆に弱体化させてしまう事も可能である。
火/水/風/土(大地)/氷/雷/樹木という七つのエネルギー物質の中央に、光と闇のエネルギーは存在しており、その他のエネルギーに影響を与え続けている。
火は水に弱く、水は雷で空気に分離され、樹木は雷や炎などのエネルギーで焼失してしまうといった、それぞれがバランスを保っている関係である。
だが光と闇は、それらの七大質素とは完全に独立しており、この二つの物質のみで常に絶妙なバランスを保っていると言われている。
もし七大質素の自然エネルギーと、それらと独立している光と闇の二大元素らのバランスが崩れた際は、自然界に多大な影響が表れ、自然が崩壊しかねない可能性も少なからずある。
この火/水/風/土(大地)/氷/雷/樹木、そして光と闇の超自然的エネルギーを用いて我々は日夜このエネルギーを有効に利用できないかと模索している。
既に火/風/水などは電力としてエネルギーに利用できているが、それら以外にも更に自然エネルギーの有効利用を思考してみた。
例えば波の揺れによるエネルギーを基とした波力発電など。自然エネルギーを科学の分野で有効的に活用できる日を我々は夢見ている。
二大元素の光と闇に関しても、同じ様に科学的にエネルギーとして有効利用できないか考えてみた。既に光エネルギーは太陽光発電という形でエネルギー利用できてはいるが、それと対に当たる闇のエネルギーを科学的に利用できれば、それこそ現在のエネルギー不足問題は解消される事だろう。
だが、我々だけで超自然的なエネルギーの研究を進めるのは至難である。
其処で我々は、世界中から注目を浴びている超自然的エネルギーを操り司る能力者を研究対象として注目してみた。
特に他の国々には異例である春夏秋冬の四季が存在している日本の特殊能力者、通称ヒーローやヒロインと呼ばれる者たちの自然エネルギーを扱う術は実に見事なものである。
灼熱の炎、凍て付く氷、変幻自在の水、目に見えぬ風、陥没する大地、衝撃の雷、大地と風と一体化して成長する植物……日本の英雄達の能力は我々の想像の域を超えているものだった。
更に光と闇の能力者の存在も確認されている……他の自然物質と完全に独立しつつもその他の自然エネルギーに驚異的な影響を与え続ける光と闇のエネルギー。もし、その二大元素である光と闇を科学的にエネルギーとして有効できれば、これ以上の成果は望まない。
「……………………」
淡々と超自然的エネルギーに関する記述を黙読していく美都玲奈。すると黙読している美都玲奈の許に同じ新世代型の
「あ、あの……」「その研究資料」
「え」美都玲奈は自分に声をかけてきた二人に振り向いて顔を見合わせた。と、その瞬間。
三人の脳裏に電撃の様な感覚が走った。それと同時にその他の新世代型の脳裏にも同じ様な感覚が走り、誰の脳内にも同じ情報が伝達した。
美都玲奈が黙読していた研究資料の中身、そしてその資料の中身を直視していないにも関わらず自然と頭の中に伝わってきた為に玲奈本人に話し掛けて中身を確認しようとした
美都玲奈の父親に関するLBXの事件。
『………………』
それぞれの事情を周知した三人は、表情を固めて愕然とした面持ちで向き合った。
そして、それは他の新世代型の面々も同じであった。この頃から新世代型は、自分達に秘められていた潜在能力であるテレパス系統の伝達手段でお互いの実情や心意などを自我とは関係なく知ってしまう傾向に陥っていた。
そんな新世代型の、互いの実情や心意を共有し合ってしまう状況を察したメタルバードは、人知れず彼等に対して特別な眼差しで見詰めていた。
メタルバードが新世代型たちの覚醒しつつある潜在能力で、互いの心意を共有し知り得てしまう現状を目の当たりにする中、美都玲奈とは別に研究資料を読み解く星原ヒカルの存在にメタルバードは気付いた。
【闇の能力者 小田原修司と闇のエネルギーについて】
我々は次世代のエネルギーに応用できる可能性を賭けて、国連に人間兵器として自身を身売りした小田原修司の闇の能力を研究対象として調べ始めた。
彼の闇の能力は、一言で言えば変幻自在で凄まじいものであったのを今でも鮮明に覚えている。
サイコキネシスやテレキネシスとは全く違う思念エネルギーであるものの、物体を自在に操作し空中に持ち上げたり移動したりする事が可能だった。
しかも闇の能力は空間をも超越しているらしく、小田原修司は自身や物体を空間を超えて別の場所へと瞬時に移動して見せる事も成しえた。
更に闇の能力は、他の自然エネルギーに多大な影響を与えた状態で、それらも使用できるというのだ。
彼曰く、闇の能力はその他の自然エネルギーと共鳴している関係であるゆえ、その他の自然的物質を操作したり変化させたりする事が可能なのだと言う。
以下の記述には、小田原修司が自身の闇の能力で扱える術などを記載しておく。
炎/水/風/雷/等の形が不定形な物質に関しては、闇の能力を纏った手足で簡単に形や威力を変化させて攻撃や防御に応用できるという。
基本的に闇の大きな能力的特徴は五つあり、吸収/反発/複製/加減/恐怖だという。
例えば相手の超自然的能力を吸収の力で吸い寄せ、無力化してしまう事が可能であり。闇の力を使用して相手に強烈な幻術をかける事も可能らしい。
だが何より恐ろしいのが、恐怖の力である。小田原修司は人間の心理をとても良く把握しており、相手にどの様な恐怖を感じさせるのが最も効果的なのかを判断し、それに見合った幻術をかけるのだと言う。
更に小田原修司は、自身から放たれる闇の力を身体に纏わせる事で如何なる超自然的エネルギーからも身を防ぐ事が可能らしい。実際、彼が靄状の闇で身体を覆い、アーマー状に形を成形した状態で火炎放射や強烈な電撃それに液体窒素などを浴びせてみたが、彼は無傷を保持していた。
闇の能力で様々な自然のエネルギーを加減して使用し、相手の術を複製して上に強化した状態で使用する事ができ、吸収で相手との間合いを詰め、更に相手を反発の力で弾き飛ばし、挙句の果てには人間が心の奥で感じ入っている闇への恐怖心を引き出させて相手を恐怖のどん底に叩き落すといった、いわば鬼畜生に近い戦法を取る。
それもこれも、外部には漏れてはいないものの、小田原修司は出生の頃から発達障害者として苦しんできた経緯があるらしく、余り良いとは言えない幼少期を過ごしてきた事が影響しているのではないかと思われる。
そして話は戻るが、我々は闇の自然エネルギーを科学的に有効利用しようと日夜研究を行ってきた。
しかし、それも無駄である事が判明した。
基本的に闇の能力は×0に近い力関係であったのである。
闇の能力でその他の能力を無力化または無効化してしまうのは、この×0の力が反映しているからである。
その他の自然エネルギーがプラスになったり、負傷や精神力の低迷でマイナスに減るのと違い、小田原修司の闇の能力は完全に×0なのである。
どの様に強力な特殊能力であろうと、どの様に強靭な自然エネルギーであっても小田原修司の闇の能力は×0の影響で全てが0つまりは無力と化してしまうのであった。
これにより小田原修司は如何なる特殊能力者と対峙しようと、その相手の能力を無力化してしまい極普通の人間と同等に戦えるのである。
自身が扱う自然の力は威力を加増して使用できるが、その気になれば周囲の能力者全てのパワーを無力化してしまう小田原修司の闇の能力には脱帽してしまうばかりであった。
どちらにしろ、基本的に自然エネルギーを0にしてしまう闇の能力を科学的に有効利用するのは無理であるのが判明した。
小田原修司の闇の能力に関する記述が詳細に書き記されている資料に目を通していた星原ヒカル。
すると資料に目を通していた星原ヒカルの顔の横からメタルバードが顔を覗かせては、ヒカルに話し掛けてきた。
「ほうほう、修司に関する研究資料か。成る程な、アイツが国連の所有物であった頃は、こういった研究の対象として色々と調べ上げられていたんだっけ」
「わっ! め、メタルバード……」
突然顔の横から覗きこんできたメタルバードに驚く星原ヒカル。そして星原ヒカルが黙読していた研究資料を覗き込んだメタルバードは真顔で語り始めた。
「確かにな……修司の闇の能力は、オレ達が扱えるその他の自然系の能力と違って、かなり異端であったからな。国連の所有物であった頃は色々と研究材料にされていたらしいんだな」
このメタルバードの発言を聞いた室戸大智が言った。
「所有物って、国連が保持していた人間兵器の頃の事ですか?」
これにメタルバードは「ああ、そうだ」と真顔で答えた。
更にメタルバードは、先ほどから自身の潜在能力が覚醒していき互いの心意を察知してしまう現状の中で困惑し続けてしまってる新世代型達の心理を少しでも和らげようと、平然とした態度で話に出てきた小田原修司の事を語り始めた。
「修司の能力は、みんなも自伝小説を読んで知っているだろうが主に大戦後に開花したんだ。自身の心の闇が生み出した分身とも呼べる闇人と対峙し、そして斬り付けた事で闇人の闇の能力を完全に自分のものとして吸収し、一体化したのが事の始まりだ。それ以降、修司は闇の能力を飛躍的に活用の幅を広げていき、遂には自然と周辺の能力者の能力そのものを封じては使用できなくしちまうほど活性化させるまでに至った」
メタルバードは更に研究資料にも記載されている闇の力の影響についても語り明かしていく。
「修司の闇は、基本的に×0の影響が主流なんだ。光など他の自然エネルギーがプラスやマイナスなど作用するが、修司の闇だけは基本的に全てを0にしちまう能力なんだ」
「す、全てを0に……?」
メタルバードの語りに困惑する真鍋義久ら理解し切れてない新世代型たちの為に、メタルバードは更に詳しく語り明かす。
「うむ。簡単に言えば掛け算とおんなじよ。どんなに大きな数字、例えば千だろうと万だろうと、はたまた億や京といった巨大な数字だろうと零を掛けちまえば、たちまち零になっちまうだろ。修司の闇は、まさしくそれと同じよ。如何に強大で強い能力であろうと、修司の闇の前では全てが0つまりは無力化しちまうのよ」
「ど、どんな強力な能力であろうと、その能力を無力化する事ができるって事ですの?」
室戸や真鍋に続いて、室戸の恋人である御舟百合子が訊ねるとメタルバードは素直に答え返した。
「ああ、どんなに強靭な能力者であろうと、修司の前では全員が常人と一緒になっちまうって事なのよ。まあ、そのお陰で修司は国連に身を置いていた頃は、要請があれば世界各地で猛威を振るっている特殊能力者の悪党達を鎮圧する為に駆り出されてたらしいがな」
「は、はぁ……まあ、特殊能力を持つ悪人の鎮圧には持って来いの能力ですし、仕方ないかもしれませんね」
メタルバードの話を聞いて、小田原修司が駆り出されるのも致し方ない事だったのかもしれないと語る猿田学。
だがメタルバードは、基本的に全ての特殊能力を無力化する闇の力であるが、修司の闇だけは×0の作用だけではなかったと語り明かした。
「しかし、修司の闇は本来の闇の作用である無力化以外にも幅広い応用が可能だった。これは修司自身が発案した能力の使用例だったが、闇は光同様にその他の自然エネルギーと親密な関係であった。光と闇は完全に独立しているものの、その他の自然エネルギーの作用に多大な影響を与える自然エネルギーであった。修司はそれを利用して、本来は無力化する闇の能力でその他の自然エネルギーを組み合わせる事で更に強化した状態で自然エネルギーを操作する術を開発したんだ」
「と、言うと?」
「うむ、修司は自身の闇の力を他の自然エネルギーなどと組み合わせる事で、更に自然エネルギーの操作向上と威力の強化に成功できたんだ」
「か、×0が基本の闇の力で、その他の自然系能力を強化できたって事ですか!?」
小田原修司の真情に初耳であるルーキーズのキリトは話を聞いて驚愕する。そのキリトを初めとする初耳の面々にメタルバードは語り続けた。
「ああ、巧みに闇のエネルギーをその他の自然エネルギーと組み合わせる事で、そのエネルギーを甚大なまでに増大させる事も、無形である闇の能力に自然のエネルギーを絡ませる事でその自然エネルギーをも意のままに操る事が可能となったんだ。そういった意味では、修司はほぼ全ての自然エネルギーを扱える能力者へと成長したって訳さ」
自然エネルギーと組み合わさり絡まり合った闇エネルギーについて、メタルバードは実例を述べていった。
「例えば炎と闇を組み合わせれば、その炎を生き物のように操作しつつ発熱作用も劇的に上昇する。それに闇の力が持つ、実体には傷を付けずに精神つまりは神経に直接激痛を感じさせる特徴をも組み合わせて、修司は<
『…………』
獄炎の効力を聞いて顔から血の気を引いていく新世代型たち。
「炎系の獄炎だけじゃないぜ。闇の力を絡ませて、水や風といった不定形のエネルギーも修司は巧みに扱ってそれを攻撃に応用する事もできた。更に雷の様な不定形かつ強烈なエネルギーに関しては闇の能力でそれを絡ませた上に押え込みエネルギーを凝縮させるといった荒業もやり遂げてしまう。他にも闇の吸収する力を応用して、相手の体や対象物から温度を吸収して凍て付かせるといった芸当もしちまうんだ。ホント、修司の能力は応用の幅が広いから参っちまうぜ」
すると此処で、メタルバードの話に淡々と耳を傾け続けていた室戸大智が質問を投げ掛けてきた。
「そういえば、小田原修司の闇の能力の開花は、かの闇人との闘いで決着が付いた後に闇人そのものを取り込んだからなんですよね。そうすると、闇人が使用した闇の
「ああ、そうだ。闇の能力から発せられる領域、その領域内にいる能力者は如何なる能力も封じられ使用できなくなっちまう。故に、修司は敵である能力者に接近して自身の
「へぇ」
「それと、未だに誤解があるようだが、修司は闇人を取り込んだのではなく取り戻したのが正しい言い方だ。お前らも小説読んで知っているだろうが、闇人は修司の負の感情などが形となって現れた云わばオレたち二次元人と全く同じ思想概念の塊であったんだ。修司が自身の心の闇から分離した闇人を斬り捨て、その分離していた自身の闇を再び自分の中に引き戻しただけなんだ。簡単に言えば、闇人と修司は一心同体の間柄だったって訳なのよ」
「その闇人が、私たち二次元人に嫉妬や憎悪の念を募らせて二次元界ごと消し去ろうとしていたなんて……何だか複雑ですね」
メタルバードの話に対して悲痛な表情を浮かべる琴浦春香。そんな彼女にメタルバードは話し掛ける。
「まあな、だがそんな修司も心の中ではオレたち二次元人に多大な恩恵を感じ取ってくれてた。夢や理想を司る存在である二次元人を、生涯をかけて護り抜くと同時に共存し合える世界へと発展させていこうと信念を掲げてくれたんだ」
メタルバードが、かつての自身の相棒 小田原修司の能力について語っていた、その時であった。
「ま! これは……!」
メタルバードの話を聞きながらも自身も研究資料などを気にして、ある資料に目を通していたオネエ口調が特徴的な新世代型の大門ジョセフィーヌが声を発した。
「おっ、どうしたんだい? オネエの大門さんよ」
何かの研究資料を見て驚いた様子で声を発する大門ジョセフィーヌに調子よく声をかけるメタルバード。だが大門ジョセフィーヌは「オネエと呼ばないで! それよりもこれ」とメタルバードの発言に、やや立腹しながらも自分が目を通していた研究資料をメタルバードに手渡した。
手渡された資料を読んだメタルバードは驚いた。
「こ、これは……!」
その研究資料には以下の文面が記されていた。
【生体兵器と超自然エネルギーの合成について】
炎や氷、そして電撃など様々な自然エネルギーを応用した生体兵器の開発に我々は成功できた。
炎を纏い、火を吹く猛獣。全身が凍て付き、氷の息吹で相手を攻撃するタイプ。電撃を纏い、強烈な電気ショックを相手に喰らわすタイプなど様々。
これは如何なる自然のエネルギーを自身の闇の能力で使用応用する事に成功した小田原修司。彼の遺伝子から抽出したD-ワクチンを生体兵器に応用した結果、生み出された成果である。
今後も小田原修司の遺伝子配列や、その遺伝子から抽出したD-ワクチンを生体兵器に応用すれば画期的な兵器が生まれ続けるだろう。
彼も命ある人間。いつかは死に絶えてしまうが、彼が遺してくれる遺伝子やD-ワクチンは生体兵器開発には欠かせない物質として今後も我々研究者の手助けになってくれるだろう。
この研究施設には、もう何体もの自然エネルギーを纏える上に肉体強化した小田原修司の身体能力を受け継いだ生体兵器が開発できた。
更に彼の遺伝子を研究し、様々な病気の根絶だけでなく画期的な兵器の開発にも尽力していくべきである。
自分たち聖龍隊の英雄と同じく自然の力を操れる生体兵器が生み出されていた事実を知り愕然となるメタルバード。
そんな愕然とするメタルバードに、最初に資料を発見した大門ジョセフィーヌが声をかける。
「ちょ、ちょっとメタルバード。アナタ大丈夫? しっかりしてよ! こんな気味の悪い研究施設を抜け出すには、アナタたち聖龍隊の力が必要不可欠なんだから!」
すると同じオネエ口調の者同士の言い分に感化されたのか、ルーキーズのファイヤーエンブレムもメタルバードに話し掛ける。
「総長、大丈夫よ。ワタシ達が力を合わせれば、イカれた学者どもに造り出された生体兵器なんかアッという間に倒せちゃうでしょ」
「ふぁ、ファイヤーエンブレム……」
同士であるファイヤーエンブレムの言葉に気を取り戻していくメタルバード。ファイヤーエンブレムは最後にメタルバードの肩を後ろから軽く叩きながら彼に言った。
「頼りにしてるわよっ、新総長!」「…………」
メタルバードは聖龍隊の総長に就任して、まだ一年も経ってない。しかも事ある毎に様々な政府機関などの各方面から前総長の小田原修司と比べられて、遂には聖龍隊という組織そのものが自分の代に変わってから劣化してしまっていると酷評されてしまう事も多々あった。そんな新米総長である自分を慕い、そして誇らしげに頼りにしてくれている仲間の存在に、メタルバードは自然と心の奥から勇気付けられていった。
「……そうだな。オレたちは単に組織のトップが変わっただけでオレ達自身の実力が落ちた訳じゃないもんな! オレからもみんなに頼む。どうか宜しくな!」
新米総長メタルバードからの言葉に、彼を勇気付けたファイヤーエンブレムはもちろんその場の聖龍隊全員が無言の面立ちで賛同するのであった。
そして決意を改めたメタルバードは、溌剌とした心情で周囲の皆に言い放った。
「よし! 折角だ、新世代型の避難経路を確保していきながら同時にこの研究施設を徹底的に調べ上げるぞ! この施設で生み出された怪物どもと遭遇した際に諜報した情報がきっと役に立つ筈だからな!」
『はいっ!』
総長からの指示に、聖龍隊の面々は全員力強く返答する。
更にメタルバードは此処まで同行してきてくれた赤塚組の大将たちにも言葉を掛けた。
「大将! そして赤塚組! 引き続き、俺らと協力して新世代型の護衛を続けてくれッ! 期待してるぜ」
「ヘッ、それはこっちもおんなじよ。頼りにしてるぜ、バーンズ!」
大将からの熱い返しにメタルバードは更に自身の意志を強めていく。
そしてメタルバードは自分達と同行してきた青年ジェイクにも言葉を掛けていく。
「ジェイク! 此処から無事に抜け出したら、たっぷりと報酬をくれてやるから引き続きバケモノ狩りは任せたぜ!」
「へへ、そうこなくっちゃな」
ジェイクは携帯している拳銃を構えながら自信に満ちた表情で笑む。
最後にメタルバードは、此処までの間に次第に潜在能力である伝達手段を開花させつつある新世代型たちにも激励の言葉を掛けた。
「新世代! お前らはさっきから自分達の思考が勝手に周囲の同じ新世代型にも伝わっては困惑していて大変だろう。その内、お前ら自身の実情や過去の経緯までも互いに共有するまでに至るだろう。しかし皆の過去や実情を周囲に知れ渡ろうが、それは全く関係ない! 今、此処にいる全ての二次元人は同じ境遇の元で生き抜こうと必死に前に進み続ける気高き二次元人である事には変わりないのだ!」
そして最後にメタルバードは「だから胸を張って互いに協力しながら生き抜いて行こうじゃないか!!」と新世代型たちに、新世代型の親友を追ってこの施設まで足を運ばせてきたプロト世代のチョコ/ギュービッド/桃花の面々に力強い面立ちで言い放った。
再び自信と活気に満ち溢れたメタルバードに導かれ、一行は研究施設を探索しつつ脱出への経路を確保していくのであった。