現政奉還記 B.O.W.編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 迫り来る異形の怪物を相手に戦闘を展開していく聖龍隊と赤塚組を筆頭とした一行。
 そんな中、新世代型たちの秘められたテレパス能力による伝達手段が発動してしまい、彼等全員がテレパシーで互いの思考を共有し合ってしまう状況に至ってしまった。
 困惑する新世代型たちを尻目に襲い掛かってくる数多のクリーチャーや異形の生体兵器。
 先へと進む為にも施設を探索しながら脱出の糸口を探り出していく聖龍隊総長。
 だが、果たして今回も彼等は無事で済むのだろうか……。

※今回の話でも度々流血の描写があり、更には版権キャラが痛ましい目に遭っているシーンも多々あります。


現政奉還記 東南アジア市内編 造り出されし怪異 後編

 

[メリーさん]

 

 人為的怪異ひきこさんを倒し、一行は再び施設からの脱出のため歩を進ませる。

 出遅れた大将も無事に一行と合流しては、改めて先頭を歩いて進路先の安全を確認しながら進行していく。

 

「……しっかしなぁ。もしまた、ひきこさんみたいな凶暴な生体兵器が現れたら、どうしようかね」

 先ほど死闘を繰り広げたひきこさんに多少のトラウマを覚えた大将が不安げに呟くと、隣で同じく先頭を行くメタルバードが答える。

「残念だが、他にもひきこさん同様、都市伝説をモチーフに造り出された生体兵器も存在してるんだ。そりゃ、もしかしたらひきこさんやトンカラトンみたいに動き回らずに稼動していない生体兵器も居るかもしれねェが、覚悟はしておいた方がいいぜ」

 稼動していない可能性も考えられるが、同時にひきこさんやトンカラトンの様に生物として動き回っては施設内を徘徊している生体兵器も未だに出現する可能性も考えられる事実をメタルバードは大将に伝えるのだった。

 と。皆が暗闇の中をひたすら歩いていたその最中。謎の音が暗闇に響いた。

「わッ! な、何なんだ、この音は?」

 突如として暗闇に響く謎の音に驚愕するメタルバード達一行。

 すると新世代型の一人、美都玲奈が平然と音に驚愕する皆々に言う。

「あ、ゴメンなさい。私の携帯だわ」

 と、美都玲奈はポケットから一機の携帯を取り出した。

「って携帯か! 驚かすんじゃねェよッ」

 謎の音の正体が美都玲奈が持参している携帯の発信音であった事に、メタルバードが美都玲奈に激しいツッコミを入れる。

 皆が謎の音の正体が美都玲奈の携帯の発信音である事に胸を撫で下ろす中、美都玲奈は携帯の着信を視認した。

 すると携帯の着信表示が【非通知】と表示されていた。誰からも知れない電話の相手に不思議に思う中、美都玲奈は通話に出た。

「……もしもし……」

 多少、不安混じりの声で通話相手に呼び掛ける美都玲奈。

 すると携帯の向こう側から、微かなノイズと共に幼い女の子の声が聴こえて来た。

「……私、メリーさん……今、腐った小父さん達がいっぱい寝ている所にいるの……」

 と、幼女の声が自分の現在地を知らせたと同時に、通話が突然に切れた。

「な、何? 今の……」

 気味の悪い電話に不可思議に思う美都玲奈が唖然としていると、其処にメタルバードが歩み寄ってきては美都玲奈に話し掛けてきた。

「おい、玲奈。今の電話……」

 訊ねられた美都玲奈は不安げな面差しでメタルバードに答える。

「そ、それが……私にも良く、解らなくて」

 と、その時。美都玲奈がメタルバードの問い掛けに答えていると、鹿島ユノが美都玲奈に言った。

「あれ? 美都先生。電話、繋がったんですか?」「え、どういう事?」

 鹿島ユノの発言に思わず訊き返す美都玲奈。すると鹿島ユノは衝撃の言葉を口にした。

「だって此処……電波が届いてないですけど」「え……!?」

 鹿島ユノに言われて、美都玲奈は慌てて自分の携帯の受信状態を急いで確認した。すると確かにユノの言うとおり、携帯には電波が届いてない状態で【圏外】と表示されていたのだ。

 本来は圏外ゆえに通話が受信できない状態の筈の携帯にかかって来た謎の幼女からの電話。美都玲奈は自分の携帯に起こった不可解な現象に思わず蒼褪めた。

「な、何で……何で電話が繋がったの?」

 不可解な現象に激しく戸惑う美都玲奈。そんな彼女にメタルバードが訊ねる。

「おい、玲奈さんよ……今の電話って」

 不安げで蒼然とした面持ちで訊ねるメタルバードに、美都玲奈も同様の表情で答え返した。

「わ、解らないわ……ただ、幼い女の子の声で、メリーさんって名乗っていて」

「め、メリーさん……!」

 美都玲奈の口から出た名前にメタルバードは衝撃を受けた。

 すると此処でメタルバード同様、美都玲奈の発言した名前を聞いて衝撃を受けたジュピターキッドがメタルバードに言い寄る。

「メタルバード! メリーさんって、確か……」

「ああ、さっき閲覧した資料にも記載されていた。トンカラトンやさっきのひきこさん同様、都市伝説をモチーフに造られた生体兵器。しかも肉体ではなく、脳を劇的に改造されたって記されていた……!!」

 ジュピターキッドに言い寄られ、メタルバードは震える声で先刻自分達が閲覧した研究資料に記載されていた脳を改造された生体兵器メリーさんの記録を思い返す。

「あ、あの、メタルバード。それじゃ、いま私の携帯にかかって来たのって……」

 恐怖で唇を震わせながら問い掛ける美都玲奈に、メタルバードは蒼然とした顔を向けて言った。

「お、おそらく……生体兵器の一体、メリーさんかも」『!!』

 メタルバードの震える唇での告白に先ほど電話がかかって来た美都玲奈はもちろん他の新世代型や聖龍隊に赤塚組の一同も驚愕した。

 先ほど死闘を繰り広げたひきこさんと同じ生体兵器。それも今度は脳を改造されて一種の超能力を開花させた生体兵器のメリーさんに、その場の誰もが只ならぬ恐怖を覚えた。

「お、おいバーンズ。どちらにしろ、トットと先に行った方が良いんじゃねェの?」

「そ、そうだな。先を急ごう」

 話を聞いて脅えてきた大将の発案に、メタルバードは迷う事無くその場から急いで離れて先へ進行する事を決意する。

 そしてメタルバードと大将は、一行を引き連れて急ぎ足で先頭を駆け抜けては慌てて先へと進む。

 

 そしてしばらく急ぎ足で移動していると、再び誰かの携帯の着信音が暗闇に鳴り響いた。

「も、もしもし」

 反射的にかかって来た自分の携帯を手にとって対応してしまう新世代型の神浜コウジが電話に出てしまうと、先ほど美都玲奈の電話にかかって来たのと同じ微かなノイズと幼い女児の声が聞こえてきた。

「私、メリーさん……今、包帯だらけの人の横に居るの」

 包帯だらけの人の横に居る。この発言を聞いて神浜コウジも、電話から洩れた通話を聞いた周囲の面々も、スグにその包帯だらけの人物が先ほどから聖龍隊や赤塚組ら面々が倒し続けている怪人トンカラトンである事に気付く。

 果たしてメリーさんはどの場所のトンカラトンの亡骸の横に居るのか。だが、その疑問を深く考える余裕も既に一行には無く、ただただ迫ってくるであろうメリーさんの存在に恐れ只すら逃避行を続けるしかなかった。

 更に一同は先へと急ぎ足で駆け抜けていくが、その矢先に一同が駆け抜ける通路の横の別通路から数対のゾンビが出現しては急ぎ足の一行に襲い掛かってきた。

「邪魔だ!」

 立ちはだかるゾンビに対してメタルバードと大将は一斉に攻撃を仕掛け、ゾンビを撃退させていく。

 複数のゾンビはメタルバードの電撃の砲撃に、大将たち赤塚組の銃撃を真正面から受けてはそのまま力尽きて床に倒れていく。

 行く手を遮るゾンビ達を撃破した一行は更に先へと駆け抜ける。

 と、その時。また携帯の着信音が鳴り響く。今度は新世代型の神原秋人の携帯であった。

「あ、はい」これまた秋人はごく自然に受信した携帯を手に取っては応対してしまう。

 そして案の定、携帯からは不気味な幼子の声が聞こえてきた。

「私、メリーさん……今、死体がいっぱい吊るされているお部屋に居るの」

 この言葉に秋人は背筋にゾッと悪寒が走った。死体がいっぱい吊るされた部屋、それは地下最下層にあった無数の異常者(ヒール)達の死体が吊るされた場所であり、同時に秋人が改造された死体、通称武器人間のウォール・ゾンビに襲われ重傷を負った場所である事を瞬時に悟った。他の新世代型達も、秋人の精神を通じてウォール・ゾンビと戦闘を繰り広げた場所に問題のメリーさんが居る事を察する。

 新世代型達は恐怖で更に速足である歩を急がせる。

 先ほど眼前で繰り広げられたひきこさんとの死闘、その前に自分達に襲い掛かった怪人赤マントの急襲が彼等に多大なる恐怖と動揺を植え付けていたのだった。

 そんな生体兵器の恐ろしさを前に、過酷な現状を乗り切ってきた新世代型や戦闘慣れした新世代型も、誰もが一丸となって先へ先へと速足で逃避するのであった。

 だが先を速足で駆け抜け、メリーさんから一歩でも遠ざかりたい新世代型の奮闘も空しく、また新たな電話が通達される。

 今度は直枝理樹の携帯に、それがかかった。

「も、もしもし……」

 震える唇で思わず携帯に対応してしまう理樹。すると携帯の向こうからはノイズと共に幼女の声が聴こえて来る。

「私、メリーさん……今、体と体がくっ付いちゃっている人の横に居るの」

 この言葉に理樹も、他の新世代型達もスグに理解した。体と体がくっ付いた人、それはウィルスの影響で互いの人体が接着してしまい異形のクリーチャーと化してしまった通称ツインズの事であると。

 今この間もメリーさんはツインズの亡骸の横を通り過ぎ、少しずつ確実に自分達に近付いて来ているのを新世代型の一同が察するのだった。

 そんな新世代型達を警護しながら聖龍隊と赤塚組は先頭を走り、眼前に立ちはだかる異形の者等を果敢に撃退していた。

「おらおらおらおらおらッ」

 威勢の良い活気声を散らしながら小銃を連射し、眼前に立ちはだかるゾンビを次々に撃破していく大将。そんな大将に続けと配下の赤塚組幹部衆も、強力な銃火器で目の前に出現してくるゾンビなどのクリーチャーと応戦を展開していく。

 一方の聖龍隊各隊士も赤塚組に負けじと、同じく眼前に出現する数多のクリーチャーを各個撃破しつつ次々に薙ぎ倒していった。

 だが、メリーさんの恐怖は確実に迫ってきていた。

 再び鳴り響く携帯の受信音。それに対応したのが、北島のばらであった。

「も、もしもし!」

 恐怖に駆られながらも咄嗟に携帯に出てしまった北島のばらの声に反応し、携帯の向こうから再びあの声が。

「私、メリーさん……今、プロペラさんとドリルさんの所にいるの」

 プロペラとドリル。この言葉に関して新世代型達は一瞬戸惑ったが次の瞬間、誰もがその言葉の意味を悟る。特に涼野いとは脳裏に浮かんだ言葉の真意が伝える場所を思い返しては背筋を凍らせた。何故ならメリーさんの現在地と思われる場所は、彼女が手痛い重傷を負わせられたモスキートとプロペラヘッドとの激闘が展開された場所であったからだ。

「立ち止まるな! ひたすら走り続けろッ!」

 恐怖で思わず足を止めそうになる新世代型達にメタルバードが駆け足を緩めず止めない様叫び付ける。

 メタルバードからの掛け声に新世代型達は恐怖で止まりそうになる足を必死に動かし、前へと速足で駆け抜けていく。

 だが、先を急ぎメリーさんから遠ざかりたい皆の心境を邪魔するかの如く、彼等の前をゾンビやトンカラトン更には天井からリッカー等が出現し行く手を阻む。

「退いてくれッ!」

 先を急ぎたい真情の大将は、咄嗟に装備していたグレネード弾で目の前のゾンビやトンカラトン更には天井のリッカーに激しく砲撃していく。

 間近でグレネード弾を喰らった敵は耐え切れずにその場に倒れ込む。

 行く手を遮る敵を各個撃破した一行は、新たな脅威メリーさんから逃避するため暗闇の中を駆け抜けていく。

 しかし、彼女からの容赦のない電話は再び彼等に衝撃を与える。

「あ、はい」

 再び受信し今度はマナーモードの震動で着信に気付いたのは、聖龍隊ルーキーズの一員ブルーローズであった。彼女はヒーローと同時に歌姫としても活躍しており、かかって来たのは歌姫としての依頼対応用の携帯であった。

「私、メリーさん……今、両手が刃物の小父さんの横にいるの」

 幼女のその一言が終わった瞬間にプツリと切れる電話。これにブルーローズは瞬時にメリーさんの居場所を把握する。それは両手を日本刀に添え付けられた武器人間ザ・サムライの事であった。メリーさんは確実に自分達に近付いてきている……そう内心で理解したブルーローズは氷系の能力とは別の意味で背筋に寒気が走った。

 すると此処で、先ほどから皆々の携帯にかかって来るメリーさんからの通話に対しギュービッドが皆に言った。

「ね、ねぇ! みんな、さっきから素直に携帯に出ているけど、それマズイんじゃない? 此処はさ、もう電話がかかって来ないように電源切るのが妥当なんじゃないかな」

 このギュービッドの提案にメタルバードも大いに同意する。

「それもそうだな! 新世代、それに聖龍隊の各隊士も自分の携帯を即座に切れ! どうせ此処の地下施設じゃマトモに受信できない状態なんだしよ」

 メタルバードの指示に、新世代型も聖龍隊の面々も一斉に即座に自分の携帯を手に取り電源を切り始めた。

 そんな携帯所持者が一斉に電源を切断していく光景を目の当たりにしたメタルバードは驚愕し、思わず叫んでしまった。

「って、ほぼ全員がまさかの携帯所持かよッ! 確かに生活必需品だけど、一斉に電源切る光景なんて滅多に無いぞ!!」

 自分の指示で一斉に自らの携帯の電源を切り出す皆々を目の当たりにして一驚するメタルバード。

 だが、皆が挙って己の携帯を弄っていると、暗闇から突如爬虫類の様な鱗で全身を覆われた人型の生体兵器が飛び出してきて、携帯に意識を向けていた新世代型達に襲い掛かった。

「シャア!」『きゃあっ!』

 低い唸り声を発しながら迫り来る爬虫類に酷似した生体兵器が飛び掛ってくるのを目の当たりにした新世代型の女子達は悲鳴を上げてしまう。

 だが爬虫類型の生体兵器が飛び掛ってくるのを目の当たりにした纏流子が咄嗟に手に持っていた武器、片太刀バサミを突き上げて飛び掛ってきた爬虫類型の生体兵器を一突きにしてしまった。

「グアァ……」

 低い断末魔を発しながら片太刀バサミで貫かれた生体兵器。

 そして流子が片太刀バサミを恐る恐る引き抜くと、生体兵器は前のめりに倒れ込んでは絶命していた。

 咄嗟とはいえ纏流子が倒した生体兵器の許に駆け寄る聖龍HEADの面々が、流子が倒した生体兵器を見てみるとそれは驚異的な存在である事が判明した。

「こ、これは……ハンター!」「ハンター?」

 爬虫類の様な鱗に覆われた生体兵器を前に、その生体兵器の名を発するセーラーネプチューンの言葉に襲われそうになった新世代型達もハンターを咄嗟に貫いて倒した纏流子も唖然としていると、そんな面々にウラヌスが説明する。

「生物兵器の中でも、最も攻撃的で驚異的なタイプのB.O.Wだ。俊敏な動作に鋭利な爪で相手を瞬時に切り裂き、命を奪う。正に狩人の名の通り、恐るべき生体兵器。まさか、こんな所にまで出没するとは……」

 B.O.Wの中でも秀でた攻撃性と俊敏性を兼ね備えた驚異的な生体兵器ハンター。そのハンターがこの場にまで出現する事にウラヌスもネプチューンも、そして他の聖龍隊も愕然とした。

 だがハンターは時おり一体だけでなく、数体の群れを成して、その群れで計算された狩りをも行える生物兵器。案の定、暗闇の通路から続々とハンターが押し寄せては、両腕の鋭い爪を光らせながら振り翳し飛び掛ってきた。

「ハンターだ! 応戦しろッ」

 メタルバードの指示が響く中、聖龍隊も赤塚組も果敢に飛び掛ってくるハンターに攻撃を開始する。

 空中から飛び掛ってくるハンターはショットガン等の強力な銃火器を浴びせれば瞬く間に撃退できたのだが、飛び上がらずに地上から走ってくる個体に関しては狙いを付け様としてもスグに真横に俊敏に身を移動させ銃撃を回避してしまう。だが、狙撃を俊敏に掻い潜る固体には接近した瞬間に斬撃や打撃といった直接攻撃で見事に撃退してみせる一行。

 そんなハンターの群れを掻い潜り、先へと進行し続ける一行。だが、電源を落とした筈の携帯に着信が入り受信音が鳴り響いた。しかも携帯のボタンを弄ってもないのに勝手に機器から幼子の声が聴こえて来た。

「私、メリーさん……今、お犬さんと、お犬さんと虫さんがくっ付いた子の側にいるの」

 このメリーさんからの通達に、聞いていた新世代型達は首を捻り思わず考え込んでしまう。

「お犬さんと……お犬さんと虫さんがくっ付いた子の側? 何の事を言っているんだ?」

 メリーさんからの伝言に、その内容に関して考え込む瀬名アラタ。そして彼と同様に悩み込んでいる面々は、遂に一つの意味を解釈する。

「あ、もしかして……お犬さんって、さっき聖龍隊の人達が倒したゾンビ犬の事じゃないか?」

「あッ、なるほど! お犬さんってのは、聖龍隊の人達がさっき倒したゾンビドッグの亡骸の事を指しているに違いないよ!」

 出雲ハルキの出した回答に、メカニックの細野サクヤが納得の顔を浮かべる。

「それじゃ……お犬さんと虫さんがくっ付いたっていうのは、一体何を意味しているのかな?」

 波野リンコが疑問に更けていると、彼女達と同じく思考に耽っていた篠目アカネが一つの思案を口に出した。

「犬と蟲がくっ付いている……確か、そんな敵いなかったっけ?」

 篠目アカネのこの発言に、金箱スズネが答えに辿り着いた。

「そうや! 犬と蟲がくっ付いている敵って言うたら、アタイらの足元を変に触れてきた上に気味の悪い触手で飛び付いてきた、あの蟲狼の事や!」

「そうか! つまりゾンビドッグと蟲狼の戦闘があった場所に、今メリーさんは居るという訳か」

 金箱スズネの回答に星原ヒカルが納得していると、男勝りで有名な褐色肌のバネッサ・ガラが一つの事実を皆に告げた。

「ちょ、ちょっと待ってよ……それじゃ、さっきよりも確実に、そのメリーさんっていうのが近付いてきているって事じゃないか」

『………………』

 バネッサの言うとおり、確かにメリーさんは確実に彼等に近付いてきていた。この事を察した周囲の皆々は思わず言葉を失ってしまった。

 一行は更に足を速めては先へと全速力で急ぎ駆け出していく。

 時おり聖龍隊のHEADや隊士が、暗闇で行く手が判らなくなる所では非力な新世代型の面々を確実に誘導しながら全員で先を進んでいく。

 だが、そんな折にも電源が入っていない筈の携帯から、触れてもいないのに勝手に通話が入っては幼子の声が確かに皆の耳に入ってくる。

「私、メリーさん……今、階段の所に居るの」

「か、階段……あそこか! メタルバードさんから僕ら二次元人のルーツを語ってもらった、皆で休憩を取っていたあの階段か!」

 星原ヒカルは、メリーさんの言う階段が先ほど自分がメタルバードに問い掛けては語り明かしてもらった二次元人のルーツ。そのルーツを聞かせてもらった休息した場所である階段の事を指しているのだとスグに直感した。

 先ほどメタルバードが自分たち二次元人のルーツを語ってくれた休息を取った階段まで迫ってきているメリーさん。一同は更に先を急いだ。

 長い通路を我武者羅に突き進み、時おり眼前に立ちはだかる扉を抜けては急ぎ足で駆け抜けていく一行。

 そんな中、一同が通路を突き進んでいると目の前に鍵の掛かった扉が行く手を塞ぐ。

「クソッ、こんな時に……」口元を歪ませる大将。

 鍵の掛かっている扉は強固な造りで簡単に打ち破る事は困難であった。しかも後方からは獲物の気配を感じ取ってか、ハンター等の生物兵器が続々と迫ってきていた。

 前方後方共に逃げ道を塞がれた一行。そんな中、メタルバードが鍵の掛かった扉の前に飛び出た。

「ちょっと退いてくれ」

 そう言うとメタルバードは自分の右手をスライムの様に軟体化させて、その右手を鍵の掛かった扉の鍵穴に注ぎ入れた。

 そして液体の様に変化した右手を巧みに動かし、少しずつ鍵の内部構造を把握しながら扉を開錠しようと試みる。

 だが、メタルバードが開錠を試みている最中も後方からは続々と生物兵器が迫ってきていた。迫り来る数多の生物兵器に対して、後方に陣取っていたジェイク・ミューラーは拳銃で迫る生物兵器と応戦しながら扉の開錠を試みているメタルバードに声を掛ける。

「おい、聖龍隊の総長さんよ! 早くドアを開けてくれッ。バケモノ共がキリねェし、このままじゃ埒が明かないぜ!」

 銃撃で迫ってくる生物兵器と応戦一方のジェイクの言葉に、開錠を試み続けているメタルバードはいきり声を返す。

「分かってる! もう少しで開きそうなんだ、それまで持ち堪えてくれッ!」

 メタルバードの方も必死で鍵の開錠に取り掛かっていた。

 一方、メタルバードが開錠に取り掛かっている頃、後方から群がってくる生物兵器と応戦を続けるジェイクに赤塚組の幹部衆達が加勢に入り、迫り来るハンターやゾンビの群集に向けて小銃を連射して応戦していく。

 すると此処でジェイクが拳銃で一発一発ずつ発射しながら、自分の傍らで小銃を連射していく赤塚組の幹部達に話し掛けてきた。

「おいおい、おっさん達。無駄に弾を消費すんじゃねェよ。もっと効率よく撃つ事できねェのか?」

「何言ってんだ! 目の前までゾンビやハンターやらが迫ってきているのに、そんな悠長な事していられっかッ!」

 ジェイクの言葉に赤塚組のアツシが啖呵を切って言い返すと、ジェイクは悠々とした顔を浮かべては平然と赤塚組に言い切った。

「何を言ってんだか。良いか、銃ってのは撃った数で勝敗が決まる訳じゃねェ……如何に相手の急所に的確にヒットできるかが重要なんだ」

 そう言うと、ジェイクの拳銃から火が吹いては放たれた弾丸がハンターやゾンビの頭部に着弾し、一発で敵である生物兵器を狙撃してみせる。

 的確に相手の頭部に銃弾を着弾させ、確実に一発で仕留める凄業を見せ付けたジェイクの銃の腕前に赤塚組は口を開けて脱帽してしまう。

 と、その最中「よし! 開いたぞッ」と、メタルバードが遂に鍵の閉まった扉の開錠に成功し、扉を蹴破った。

 そしてメタルバードは扉の先の安全を視認すると、新世代型を中心とした一般二次元人を先導しながら先へと進ませる。

「慌てないで! 確実に少しずつ進んでいくんだ」

 新世代型達を誘導させながら確実に扉を潜らせていくHEADのキング・エンディミオン。

 だが新世代型達が扉を抜けている最中、再び電源を落とした筈の携帯から着信音が響いた。そしてこれまた勝手に通話が入り、幼女の声が聴こえて来るのだった。

「私、メリーさん……今、体中にブツブツができている人の横に居るの」

 この台詞に、再び新世代型達は戸惑った。

「か、体中にブツブツって……誰の事を言っているんだろう?」

 メリーさんの言う体中にブツブツの存在に付いて思考を張り巡らせて考え続けるチョコ達。

 すると考え抜いていた桃花・ブロッサムが思考に耽った末に閃いた。

「う~~ん……あ、もしかして! 体中にブツブツって、あの寄生虫に体中を蝕まれたパラサイダーの事なんじゃ……!」

 皆、桃花の発想にギョッとした。確かにパラサイダーは体中に寄生された為に、寄生生物の温床である全身が水膨れの様にブツブツとした表面に覆われていた。

 総員、更に足を急がせ接近しつつあるメリーさんから逃避し続けた。

「はぁ、はぁ……」

 余りにも急ぎ足で走り続けていた為、チョコを始めとする子供達の中には息が上がってきてしまっている子等も出始めていた。

 そんな息の上がる子供達に、HEADのミュウザクロが声援を掛ける。

「みんな頑張って! 携帯が受信している以上、まだメリーさんの圏内に私達がいる可能性があるわ!」

 このミュウザクロの発言に続いてジュピターキッドがメリーさんについての独自の解釈を語り出した。

「うむ、おそらくメリーさんは能を改造された際に強大な超能力が身に付いたんだろう。その能力で強力な念波を此方の携帯に直接送信する事ができるんだ! だからメリーさんからのテレパシー、つまりは携帯受信が受け付けない範囲まで逃げ切れば大丈夫!! ……だと思う」何だか曖昧な解釈であった。

 どちらにしろ、一行は足を休める事無く只管走り続けるのであった。

 だが、走り続ける彼等の労力を嘲笑うかの様に、恐怖の着信は携帯に受信されるのであった。

「ま、また!?」今度の電話は今泉俊輔の携帯にかかった。

「私、メリーさん……今、大きな大きなエレベーターの前に居るの」

 この通話を聞いた今泉俊輔はメリーさんの言う大きなエレベーターとは、自分達が一気に上の階まで上がるのに搭乗し、更にはメタルバードが巨大タランチュラと死闘を繰り広げた工業用エレベーターである事に気付いた。そして、この今泉俊輔の思想は新世代型同士のテレパス系統のリンクで他の新世代型達にも伝わった。

 メリーさんは確実に近付いてきている……幾度と無くかかって来るメリーさんからの居場所を伝えてくる電話に新世代型達は言い知れぬ恐怖を感じていた。

 しかも先ほど今泉俊輔の携帯にかかって来て、差ほど間も空いていないと言うのにメリーさんからの電話が再びかかって来た。

「私、メリーさん……今、緑色の象さんの横に居るの」

 この電話に対応した野々原(ののはら)ゆずこは聴いた瞬間に顔色を一変させた。

「緑色の象って……さっき聖龍隊が倒したばかりの毛の生えた象の事じゃない!?」

 野々原(ののはら)ゆずこを始めとする新世代型達は、緑色の象が先ほど聖龍隊の面々によって倒されたばかりの緑の体毛が背中に生えた象に酷似した巨体生物兵器チャウグナール・ファウグンではないかと疑心暗鬼に陥った。

 何故ならチャウグナール・ファウグンとの戦闘が展開された場所は、今自分達が居る場所から差ほど離れてはいない地点。なのでメリーさんは自分達のスグ間近まで迫ってきている事を察し、その事実に新世代型達はより凄まじい恐怖に襲われた。

 もう怖い想いはしたくない……その一心で走り続け、メリーさんから必死になって逃げ続ける新世代型達。そんな恐怖に打ちひしがれる新世代型達の心境を察しながら、メタルバードたち聖龍隊と大将たち赤塚組が新世代型達を警護していく。

 だが恐怖は確実に迫ってきていた。

 再び鳴り響く着信音。そして応答ボタンを押してもいないのに勝手に通話状態になる携帯から、先ほどから同じ幼女の声が不気味に新世代型達や彼等を警護する者たちの耳に入ってくる。

「私、メリーさん……今、下半身が無いお姉さん達の所に居るの」

「か、下半身がないお姉さんの所って……!」

 アリス・カータレットは自分の携帯にかかって来た声による通話を聞いて仰天した。下半身の無い女性達、それは紛れも無く先ほど聖龍隊が撃退した生体兵器テケテケの事であった。

 携帯にかかって来る間合い、そしてその距離。それらは確実に狭まっており、メリーさんが距離を縮めている何よりの証のように新世代型達は感じていた。

 そして恐怖の電話は容赦なく新世代型達に襲い掛かる。

「私、メリーさん……今、大きな鮫さんが横たわっているプールに居るの」

「きょ、巨大鮫のプール……て、事は」

 自分の携帯から聴こえて来る通話に一条蛍(いちじょうほたる)は蒼然となった。巨大鮫の横たわるプール、それは先ほど自分達が通過したばかりの生体兵器である巨大化した鮫が飼われていた巨大飼育用のプールであったからだ。

「と、とにかく走れ! 急ぐんだッ」

 確実に迫ってきているメリーさんへの恐怖で薄らと涙目の大将が大声で新世代型達に呼び掛ける。

 ゆっくりゆっくり、少しずつ距離を縮めていくと同時に一行に多大な恐怖を感じさせるメリーさんの脅威。

 一同は己の心身に降り掛かるメリーさんに対する恐怖から必死に逃げようと、中には涙目に成りながらも走り続ける者たちの姿もあった。

 しかし恐怖に慄く一同を再び電話という恐怖の通告が襲った。

「私、メリーさん。今、浄水場にいるの」

「じょッ、浄水場!!?」

 メリーさんからの電話がかかって来た携帯の持ち主、真鍋義久は驚愕の事実に我が耳を疑った。何故なら浄水場といえば、つい先ほど自分達を巨大鎌で襲い掛かってきた怪人赤マントとの壮絶な死闘が展開された場所であったからだ。

「お、おい! 浄水場って言ったら、ホントにホントにマジで近場じゃねェかッ!!」

 真鍋義久の携帯からハッキリと聴こえて来た幼女メリーさんの発言に大将は脅えきった涙目の顔で叫ぶ。

 更に大将に続いてメタルバードもメリーさんにすっかり脅えきってしまっており、恐怖の余り大声でその場の皆に呼び掛ける。

「おい! もうホントに、あと一回か二回電話がかかって来たらヤベェぞ!! 冗談抜きで俺たちのスグ後ろまで来てやがる!!」

 もはや、その場の誰もが恐怖と混乱で騒然と化していた。そんな現状でも、皆は恐怖から逃れようと足を止める事無く息が上がりながらも果敢に走り続けるのだった。

 闇に包まれる通路を、足取りも侭成らない程の暗さの中を立ち止まらず走り続ける一同。

 微かな灯りを頼りにいつ終わるかも解らないメリーさんへの恐怖と闘いながら我武者羅に走り続ける皆の脚は、すっかり棒に成ってしまっていた。しかし誰もが走るのを止めず只管メリーさんから逃げ続ける。

 暗闇の中、時おり視界の悪い通路で転倒してしまう者も居たが、そんな者には手を差し伸べ温かく共に足を並べて走る面々も見受けられた。

 そんな互いに協力しながら暗闇の中を走り続ける一同に、またしても恐怖の電話がかかって来る。

「私、メリーさん。今、ひきこさんの亡骸の横に居るの」

「そ、そんな……!!」

 自分の携帯にかかって来たメリーさんの言葉に直枝理樹はもちろん他の新世代型達も愕然とした。ひきこさんと言えば、つい先ほど聖龍隊と赤塚組が総力を挙げて死闘の末に倒したばかりの敵であった。つまりメリーさんは、もう間近まで迫って来ているのだった。

 この時、理樹が取った携帯の発言をテレパシーで聴き取ったメタルバードは、おそらく次の電話でメリーさんが自分達の所に駆けつけて来ると睨み、その場の皆々に大声で告げた。

「おい、お前ら! 次、携帯が鳴ったら如何なる理由が有ろうとも、その携帯を叩き壊せ! メリーさんからの電話を完全に断ち切れば、もしかしたらどうにかなるかもしれねェ!!」

 メタルバードの掛け声が暗闇に響く中、一同は次に誰の携帯が鳴り、そしてメリーさんからの電話がかかって来るのか恐ろしくて気が動転しそうだった。

 そして皆の運命を決める最後の電話が、無情にも鳴り響いた。

「えっ? わ、私!?」

 かかって来た携帯の持ち主は満艦飾マコであった。自分の携帯が鳴った事に非常に動揺するマコは兎にかく慌てふためいた。

 するとその時「マコ! 済まない」と、鳴り響くマコの携帯を強引に掴み取る纏流子は、躊躇いも無くマコの携帯を床に叩き付けると同時に手に持っていた片太刀バサミで携帯を真っ二つに切断した。

「はぁ、はぁ……!」

 一瞬の判断でマコの携帯を切断した流子は動揺の余り息を上がらせていた。

 一方、親友である流子に自分の携帯を叩き壊されたマコは一瞬の出来事に呆然としていた。

「りゅ、流子ちゃん……?」

 呆然としながらも流子に呼び掛けるマコ。すると切羽詰ってマコの携帯を切断した流子は息の上がった表情をマコに向けると、息を上げながらマコに言う。

「ご、ゴメンよマコ……携帯、壊しちまって」「………………」

 咄嗟の事とはいえ親友の携帯を破壊した事を謝罪する流子に対し、マコの方は未だに突然の出来事に頭が追いつかず呆然としていた。

 そして流子もマコも、そして他の一同もようやくメリーさんからの恐怖から解放されたと思い切り、つかぬ間の安堵に浸っていた。

 と、その時である。流子が真っ二つに叩き折った携帯の画面が光り、着信音が鳴り響いたのだ。

「え!」「そ、そんな……!」

 本来は完全に破損している為に携帯としての機能を失くしている筈の機体が鳴り響き、それを目の当たりにしたマコと流子は目の前の信じ難い現象に驚愕した。

 そして、真っ二つに叩き折られた携帯から声が聴こえて来た。

「私、メリーさん。今…………ミンナノウシロニイルノ」

 不気味な声色で現在地を伝える声に、携帯の持ち主であるマコもその携帯を破壊した流子も、そして他の一同もゆっくりと首を振り向かせては自分達の後方に顔を向けた。

 その瞬間

 

「キィヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

『うわぁあああああああああああああああああ……!!』

 後方に顔を向けた瞬間、暗闇から悲鳴の様な甲高い奇声を上げながら異様な形相の幼女が空中を浮遊したまま皆の眼前まで急接近。その幼女の奇声と異様な容姿を目の当たりにして、皆々は一斉に絶叫した。

 奇声を上げながら急接近してきた幼女はボロボロの白い服に肩まで伸びた黒髪、そして死人の様に血色の悪い形相と白い眼、そして何よりも異様なのが異常なまでに膨らんだ頭部が一際目立っていた。

 そんな異様に膨れた頭部の幼女は、死人の様に不気味な形相で空中を浮遊したまま皆の前まで接近すると高い位置に浮遊しては下方の一同にその不気味な形相で見下ろした。

 急接近してきた異様な容姿の幼女メリーさんに驚いた赤塚組のアツシが咄嗟に構えていた小銃をメリーさんに向けて発砲してしまう。だが銃弾が直撃する寸前にメリーさんは空中を移動しながら容易く回避してしまってた。

 そしてアツシの発砲を皮切りに大将を始めとする他の赤塚組の面々もメリーさんに向かって銃撃戦を展開し始めた。

 暗闇に光る紅い閃光の如き銃弾が空中のメリーさんに向かって飛び交うものの、メリーさんは高速で空中を動き回り意図も簡単に銃撃をかわしてしまう。

 更に聖龍隊のメタルバードも、赤塚組の銃撃戦を合図に同胞の聖龍隊士に命じた。

「聖龍隊! オレ達も応戦するぞッ」

 メタルバードの掛け声を皮切りに聖龍隊も戦闘に参入し、赤塚組と共々メリーさんに攻撃を仕掛けていく。

 すると第一線に銃弾が飛び交う中をマカ=アルバーンがメリーさんに飛び掛かり巨大な鎌と変化したソウルを振り翳して攻撃を仕掛けた。だがメリーさんはマカの鎌による攻撃を喰らう寸前で空中を移動し、これまた容易く回避してみせる。

 攻撃を外した事に表情を歪ませて悔しがるマカ。だが、その直後。今度はリナリー・リーが御得意の蹴り技でマカの攻撃から逃れたばかりのメリーさんに強烈な一撃をお見舞いしようと試みる。

「はァっ!」

 空中のメリーさん目掛けて飛び蹴りを喰らわそうとするリナリー。だが彼女の蹴りがメリーさんに直撃すると思われた瞬間、何とメリーさんの姿が一瞬で消えてしまいリナリーの蹴りは空振りと相成ってしまった。

「え?」

 突如として消えてしまったメリーさんに驚き戸惑うリナリー。そして彼女の空振りした蹴りはそのまま壁へと激突し、余りの凄まじい威力で壁に亀裂と同時に巨大な窪みが生じた。

 一方の姿を消したメリーさんは、リナリーからの蹴りを喰らう寸前の所とは全く別の場所に姿を現していた。

「ど、どういう事だ!?」

 一瞬で姿を消した直後に別の場所へと姿を現したメリーさんに真鍋義久を始めとする新世代型達や聖龍隊に赤塚組の面々は驚愕する。

 するとメリーさんの一瞬の移動を目の当たりにしたメタルバードが不可思議な現象の真相を皆に語る。

「い、今のは間違いない……瞬間移動、テレポートだ!」「何!?」

 メタルバードの発した言葉に表情を一変させて反応する大将。メタルバードは更に語り続けた。

「やはり。あのメリーさん、脳を最大まで改造されて携帯電波に送信できちまうテレパシー以外にも、空中での浮遊移動や瞬間移動までこなせちまうんだ……!」

 メタルバードが語っている最中も、メリーさんは驚異的な空中浮遊による移動や瞬間移動などで自分に降り掛かる攻撃と言う攻撃を回避し続けていた。

 そんな回避能力が優れているメリーさんに少しでも損傷を与えようと、聖龍隊も赤塚組も必死になってメリーさんに攻撃を仕掛けていく。しかしメリーさんは空中を高速で移動し、更には瞬間移動で無数の銃弾を容易くかわし続け、疲労している様子も見受けられない。

 幾多の攻撃を展開するも、特異なメリーさんの回避行動に攻撃が追い付けず苦戦を強いられる聖龍隊と赤塚組。

 その戦闘する者の中にはジェイクの姿も見受けられていたが、メリーさんはジェイクの放つ銃弾すら一発も当たる事無く悠然と空中を浮遊し続ける。

 聖龍隊に赤塚組、そしてジェイクらがメリーさんに対して苦戦を強いられている現況を目の当たりにして、その戦況を今まで傍観していた鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が遂に痺れを切らして行動に移った。

「我々も黙って観ている訳にはいかない。生徒会、我等も聖龍隊の方々に加勢いたすのだ! 我等も総力を挙げて加勢すれば勝率は一気に高まる筈であろう!!」

 この鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の威風堂々とした苛烈な意志に賛同した生徒会四天王の主力メンバー、蛇崩乃音(じゃくずれののん)/蟇郡苛(がまごおりいら)/猿投山渦(さなげやまうず)の三名が皐月と共に極制服をフル稼働させてメリーさんへの攻撃を開始した。

 そんな皐月率いる四天王の姿勢を目の当たりにし、鮮血が流子に言葉を投げ掛ける。

(おい流子! アイツ等ばっかりに活躍させちゃ、俺たちの面目丸つぶれだぜ! 俺らもいっちょ参るとしようぜ)

「ああ、その通りだな鮮血! 纏流子、売られた喧嘩は買うのが筋! うおりゃあッ」

 鮮血に参戦を促された流子は迷う事無くメリーさんに突っ込んでいった。

 更に戦いに参戦していく皐月や流子達を目の当たりにして、名瀬兄妹が栗山未来に話し掛ける。

「栗山さん」

「私達も聖龍隊の人達に協力しましょ! 何だか苦戦しているみたいだし」

「え、ええ……先輩方、そうですね。私達も少なからず協力しましょう」

 博臣と美月の言葉に未来も同意し、三人でメリーさんとの戦闘に加わっていった。

 

 戦闘力の高い新世代型達も参入してくれて更に戦力を上げてメリーさんに応戦していく一行。

 だが相変わらずメリーさんは空中を高速移動し超能力ならではの瞬間移動を巧みに使い分け、数々の攻撃を回避していくのだった。

 そんな中、大将が攻撃をかわし続けるメリーさんに痺れを切らして側で自分と同じくメリーさんに攻撃を続けていくHEADのキング・エンディミオンに怒声で話し掛けた。

「おい! 衛のアンちゃんよッ。確か、お前さんも超能力使えるんだよな? あのメリーさんの動きをどうにか同じ超能力で止められないのか!?」

「そ、それなんだが……俺の場合は先ず意識を集中させなきゃ、強力な念力とかは使えないんだ。あそこまで俊敏な動きで移動し続けるメリーさんに意識を集中させるのは難しい」

「何だよ、そりゃ!! 集中するも何も、あのメリーさんの動きを止めるなり鈍らせでもしなきゃコッチの攻撃なんて掠りもしないんだぞ! 同じ超能力者なら、何とかしてくれよッ!」

「そう言われたってな! 俺にも出きる事と出来ない事があるんだよ!! 無理難題押し付けるんじゃねェ!!」

 と、二人が言い争っていると「喧嘩してる場合じゃないでしょ!! 今は兎にも角にも少しでも応戦しなきゃ成らないんだし、喧嘩してるヒマが有ったら手を動かせッ!!」と、ミラーガールが大将とエンディミオンを大声で叱り付ける。

 だが丁度ミラーガールが二人を叱り付けてたその時。空中で浮遊し切磋琢磨に移動しては攻撃を回避し続けていたメリーさんの動きが突如として空中で停止した。

 空中で停止したメリーさんを前にして、メタルバードが戦闘を展開している面々に攻撃を指示した。

「動きが止まった! 一斉攻撃だ」

 一斉攻撃を周囲の皆に命じ、鳳凰寺風や鹿目まどからの弓矢にミラールや巴マミそして暁美ほむら達の銃撃といった狙撃等を一斉に放そうと身構えた。

 しかし皆がメリーさんに攻撃の狙いを付けた、その瞬間。

「キィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ……」

 空中で直立不動で止まってたメリーさんから強烈な奇声が発せられた瞬間、その甲高い奇声を耳にした一同は余りの不快感に近い感覚を覚え、思わず耳を両手で塞いで跪いてしまった。

「ぐッ……」「な、何だ。このキーーンとする様な声は……!」

 耳を塞ぎながら苦しがる大将とメタルバード。だかメリーさんから発せられる耳鳴りの様な不快音は絶える事無く、メリーさんから発せられてた。

「な、何なんすか、この声は……!」

 耳を塞ぎ表情を苦痛で歪ませながら真鍋義久が疑問を発すると、それに同じく耳を塞いで表情を歪ませていたジュピターキッドが語り始めた。

「お、おそらく、メリーさんが自己防衛の一種で発している音声だと思う……。クッ、人間は一定の音波に対して異常なまでに不快に感じる音が存在し、その音を耳にする事で不快に感じては苦しんでしまうんだ。そう、例えるなら黒板を釘などで引っ掻く様な、鳥肌が立ってしまう様な音に……ウッ」

 だが真鍋義久たち新世代型達に語っているジュピターキッドも不快に感じる音に苦しめられる。

 しかし真鍋義久に続いて皆と同じ様にメリーさんからの不快音に耳を塞ぎながらも苦しむ薙切えりなが苦悶の表情で愚痴った。

「な、何で? 耳を塞いでも、この音が脳に伝わってくる……っ」

 これに対して同じくメリーさんからの発音に苦悶しているHEADのキューティーハニーが答えた。

「た、多分……これも超能力とかの念力で発せられている音で、耳からだけでなく聴覚を司る脳の部分に直接念力で送られているから感じてしまうのよ……っ」

 えりな達、新世代型達に語るキューティーハニーも耳からだけでなく脳に直接伝わっては頭の中で響く不快音に苦しめられる。

 そんなこんなで皆が一斉に耳を塞いで表情を歪ませている最中もメリーさんは、その奇怪な音を口かまたは念力の様な超常的な力で体から発し続けてた。

 そして30秒ほどでメリーさんから発せられる不快音が止んだ。

「や、やっと止んだか……」「ッ……」

 メタルバードと大将は不快音に精神的な苦痛を感じつつも、音が止んだ事で再び立ち上がり空中のメリーさんを見据える。

 そしてメタルバードが再び周囲の仲間達に呼び掛ける。

「こ、攻撃再開だ!」

 皆に命じるメタルバードも、彼からの指示を受けた他の面々もメリーさんからの奇声攻撃に精神を消耗しながらも再び攻撃の姿勢に身構える。

 そして再び攻撃の手をメリーさんに仕掛けていくが、メリーさんは先ほどと変わらず空中の高速移動と超能力の瞬間移動で幾多の攻撃をかわし続ける始末であった。

「くそ、攻撃も当てられねェ。しかも脳に直接、不快音を伝えて来るから精神的にも消耗させられちまっているし、このままじゃ何れはオレ達の方が参っちまう」

 幾度と無く仕掛けていく此方側の攻撃を容易く回避し続けるメリーさんに対し、此方は魔力などの特殊能力はもちろん弾薬までも消費していく戦況にメタルバードは苦悩していた。

 一方、他の聖龍隊も赤塚組の面々も果敢にメリーさんへの攻撃を続けるものの、やはり狙撃が当たらず仕舞いで苦戦していた。それは赤塚組と共に銃で応戦するジェイク・ミューラーも戦闘に参加してくれている新世代型の流子や未来たちも同じく苦戦を強いられていた。

 そんな戦況の中、思わず大将が本音を零してしまう。

「あ~~あ。こんな時こそスター・コマンドーがこの場に居てくれたらなぁ」

「悪かったですね。私達じゃ力不足で」

 と。大将が思わず零してしまった本音に傍らで応戦していた梅枝ナオミが立腹した顔で反論する。すると大将は苦し紛れではあったがナオミに自身の本意に対する詳細を語った。

「い、いやな。お前達が力不足って訳じゃなくってよ。ホラ、コマンドーの方にはお前さん以上に強力なサイキックの明石薫や結界術のエキスパートの墨村に雪村のお二人。それに忍び組のひまわりのお嬢ちゃん達にスパイダーライダーズの面子が揃っているからよ。あいつ等なら簡単に相手の動きを封じられる捕物の名人ばかりだから、遂」

「……まぁ、相手の捕縛とか動きを封じる戦術では向こうの方が上手なのは認めますけど。だからって今この場に居ない人達を頼る前に、私達を頼ってほしいですよ」

「はは。いや、悪ィ悪ィ」

 思わず本音が出てしまった大将に反論するナオミ。だがナオミ本人も、自分以上に強力な念力を秘めた明石薫に相手の動きを封じる結界術のプロである墨村良守に雪村時音、更に現役のくノ一である日向ひまわりを筆頭とした忍組に強力な蜘蛛糸で相手を絡めて動けなくさせるスパイダーライダーズの実力は認めていた。

 そんな苦戦の中、メリーさんは再び空中で動きを停止させると強烈な奇声を発して一同を苦しめる。

「うわァッ」「ま、またか……!」

 強烈な奇声で激しい耳鳴りと頭痛に襲われる蒼の騎士と堂本海斗を始めとする一同は、余りの苦痛に頭を抱えてしゃがみ込んでしまう。

「ず、頭蓋に反響する……!」「うぅ……っ」

 奇声による音波が頭の中で反響し苦しむ幸平創真(ゆきひらそうま)と田所恵。

 そんな皆がメリーさんの奇声による強烈な音波で苦しんでいる中、激しい頭痛に襲われ姿勢を低くしていた大将がある事に気付いた。

(ん、待てよ……ハッ、もしかしたら)

 何かに気付いた大将は、強烈な音波に心身共に押され気味になりながらも姿勢を低くしたまま少しずつメリーさんに近付いていった。

「お、おい……大将」

 一方の音波に苦しんでいるメタルバードは大将の突然の行動に理解ができず、自分達と同じく音波に苦しんでいるのにも関わらず前進していく大将に目を向ける。

 そして大将はメリーさんに近寄れるだけ近寄っては音波で苦しむ中、メリーさんに所持していた小銃の銃口を向けて狙いを付ける。

 そして狙いを付けた大将は、そのままメリーさんに向けて発砲した。

「ギャッ」

 強烈な怪音波を発していたメリーさんに銃弾が直撃し、大将は更に小銃を連射してはメリーさんに弾丸を浴びせていった。

 大将の構える小銃から赤い火花が鮮烈に吹いていく中、連射される銃弾は次々に空中のメリーさんに直撃していく。

 次第に銃弾を浴びていくメリーさんの白い服は彼女の返り血で紅く染まっていった。

 だが大将は攻撃の手を緩めず、小銃の銃弾が切れると今度はその小銃を床に捨てて腰に装備していた拳銃を両手で二丁持ち、それを交互に発砲しては拳銃の弾丸をメリーさんに浴びせていく。

 この時大将は、メリーさんが皆を苦しめている怪音波を発生させている時だけ空中に停止しては微塵も動いてない事に気付き、その間に攻撃が当てられると踏んで少しずつ接近しては銃撃を浴びせていく戦法を行ったのである。

 両手の二丁拳銃を唸らせながら容赦なくメリーさんに弾丸を浴びせ続ける大将。その銃撃は惜しみなく行われ、両手の拳銃の弾丸が切れるとスグに空になった弾奏を抜いて新しい弾奏を装着させると銃撃を再開させてみせた。

 大将の苛烈な銃撃戦が展開されていく中、銃撃を浴び続けていたメリーさんが不気味な眼光を大将に向けた。と、次の瞬間。メリーさんが大将に向けて両手を前に突き出した瞬間。

「うわぁ!!」「た、大将!」

 何と二丁拳銃を連射していく大将が物凄い勢いで吹き飛び、それを目の当たりにしたミラーガールや他の一同は驚愕した。

 そして吹き飛ばされた大将は壁際の錆び付いた上にひび割れたガラスが目立つ薬棚に背中から突っ込み、激しく衝突してしまう。

「大将!」「大将、しっかり!」

 すぐさま大将の許にギョロとミズキが駆け寄り、倒れ込む大将に声を掛ける。しかし大将は棚に激突した衝撃が凄まじかったのが、散乱するガラスの破片の中で気絶してしまってた。

 その大将が吹き飛ばされた後景を目の当たりにしたメタルバードが戦闘を行っている者達に注意を掛ける。

「き、気をつけろ! あのメリーさん、瞬間移動だけでなく強力なサイコキネシスも使えるぞ」

 何と大将に攻撃され続けていたメリーさんは、自分に銃撃を浴びせ続ける大将に強烈なサイコキネシスを放っては、大将を勢い良く吹き飛ばしたのである。

 更にメリーさんは、その強力なサイコキネシスで周辺の木箱やガラス棚などの物体を浮遊させては自分の周囲に浮かせ始めた。

 そして次の瞬間。メリーさんは自分の周囲に浮かせている物体を次々に眼前の人々に向けて飛ばしてきた。

「うわあッ!」

 片っ端から飛来してくる物に驚愕するエンディミオンや他の面々。

 すると此処でメリーさんからの投げ飛ばし攻撃に対して聖龍隊が行動を起こした。

「メタルガード!」「バイソンガード!」

 と、エンディミオンとミラールが事もあろうに、それぞれメタルバードとロックバイソンを前に押し出しては彼等を盾に飛んでくる物を防いでみせる。

 勝手に前へと押し出されて盾にされたメタルバードとロックバイソンは、飛来してくる物が直撃しながらも自分達を盾扱いする面々に文句を言い放つ。

「おいッッ! 修司みたいにオレを盾とか武器みたいに扱うんじゃねェよ!! オレ、今では総長なのよッ」

「俺も盾みたいに扱うな~~ッ! 体が硬くなる能力ってだけで盾にされたんじゃ堪ったモンじゃねェよ!!」

 メタルバードもロックバイソンもお互いに仲間に盾として扱われ、攻撃を防ぐ役割だけの存在にされて涙目で仲間達に訴える。

 そんな中、メリーさんから物が飛来してこなくなり攻撃が治まってきた頃合を見受けて、参謀総長のジュピターキッドがメタルバードに代わり皆に指示を伝えていく。

「攻撃が止んだ! 今の内に反撃だ」

 ジュピターキッドの命を合図に、聖龍隊と赤塚組は遠距離からメリーさんに向けて攻撃を再開した。

 だが攻撃を受ける度にメリーさんの超能力は益々強力に成っていき、更に強烈なサイコキネシスで反撃してきた。

「うわッ」「きゃっ!」

 強力なサイコキネシスは聖龍隊の堂本海斗にセーラージュピターをも容易く弾き飛ばしていき、吹き飛ばされた者達は激しく壁に衝突し苦痛に表情を歪ませる。

 幾らか攻撃を受けたメリーさんは奇声による怪音波の攻撃ではなく、サイコキネシス等の物体を操り吹き飛ばす念力で周辺の人々を容赦なく吹き飛ばしていく。

 そして、そんなメリーさんの標的に戦闘に参加していない新世代型達が視界に入ってしまった。

 視界に捉えた新世代型達に浮遊して近付いていくメリーさんは、彼等にも戦闘に参入している者たちと同様に強烈な念力で攻撃を仕掛けようとしていた。

「こ、コッチに来る!」

 自分達の方へと近付いてくるメリーさんを前に恐怖で顔が引き攣る真鍋義久。そんな非力な新世代型達に迫るメリーさんを見てミラーガールを始めとする聖龍隊士が、一斉にメリーさんに飛び掛った。

「その子達に手は出さないで!」

 新世代型達への攻撃を制止する様に声を上げながら飛び掛るミラーガール。そして彼女と同様に新世代型に迫るメリーさんを止めようと同時に飛び掛る他の聖龍隊。

 だがミラーガール達がメリーさんに飛び付こうとした瞬間、メリーさんは強力なサイコキネシスで自分に飛び掛ってくるミラーガール達を一瞬で弾き返しては吹き飛ばしてしまう。

「ぎゃっ」

 サイコキネシスで弾かれ壁に激突するミラーガールたち。

 この時、ミラーガールを含む聖龍隊や赤塚組さらには新世代型の戦闘可能な者たちやジェイクまでもメリーさんの強力な念力で吹き飛ばされては苦痛に悶絶していた。

「く、来る……!」

 次第に距離を縮めては自分達に迫ってくるメリーさんを前に、すっかり脅えきってしまう直枝理樹ら新世代型達。そんな彼等に攻撃を仕掛けようと、メリーさんが強力なサイコキネシスを御見舞いさせようと右手を前に突き出した。

 もうダメかと新世代型が思った次の瞬間、メリーさんの右手から強力な念力が放たれた。

 思わず目を伏せて互いに姿勢を低くし合う新世代型一同。しかし、強力な念力が自分達を襲っている筈なのに自身には何の変化も感じられなかった。恐る恐る目を開けて前を向いてみると、其処には驚きの光景が飛び込んできた。

 何と新世代型の一人、斉木楠雄が両手を前に突き出しては前方に薄紫色の光の壁を発生させてメリーさんからの強力な念力を防いでいたのだった。

「さ、斉木!?」

 目の前で斉木が見せる両手からの光の壁に何事か理解できずに困惑する親友の燃堂力。一方の斉木はメリーさんからの念力を一身に受け止め、後方の新世代型達を護りながら彼等に訴え掛けた。

「み、みんな……! しばらくは僕が防ぎ切っているから、その場から動かないで。僕の能力でも、この念力を防げるのは少し難しい……!」

 そう後方の皆に語り掛ける斉木の表情は険しく歪み、必死にメリーさんの念力を防いでいるのが見て取れた。

「斉木、お前……」

 この時、新世代型の多くは斉木楠雄が驚異的な超能力者である事を新世代型同士のテレパスで粗方の詳細を知り得ていたが、その斉木楠雄の数少ない親友の燃堂力は極度のミステリアスバカであった為か斉木が超能力者である事を理解し切れていなかった。

 そして斉木はメリーさんからの念力を必死に防ぎ止めている最中、一か八かメリーさんに反撃の兆しを示せるかもしれない行動に移った。

「はッ」

 掛け声と共に斉木は前に突き出していた両手からメリーさん以上に強力な念力を発し、メリーさんの超能力を打ち消しただけでなくメリーさんの動きまでも完全に封じる事に成功した。

 しかし斉木の稀な強力な超能力でも、メリーさんの動きを止めていられるのには限界があった。

 するとその時、先ほどメリーさんの念力で吹き飛ばされては意識が朦朧としていたミラーガールが起き上がり、メリーさんの動きを必死に封じている斉木楠雄と目が合った。斉木は意識が半ば戻ったミラーガールにメリーさんの動きを封じながら苦し紛れに訴え掛けた。

「み、ミラーガール。僕が動きを封じている間に、どうにかメリーさんを……!」

 斉木楠雄の苦悶に満ちた表情を見て、彼の切羽詰った状況を察したミラーガールは咄嗟に立ち上がり行動に移った。

 ミラーガールはミラー・シールドから鏡の剣ミラー・ソードを出現させて取り出すと、それを右手に持ち構えては刃先を斉木によって動きを止められているメリーさんに向ける。刃先を向けながらミラーガールはメリーさんの後方へと立ち回り、一気に攻撃しようと試みる。だが「……」ミラーガールは躊躇ってしまってた。何故ならメリーさんは異様なまでに膨れ上がった頭部などを除けば極普通の幼い女の子であったからだ。

 幼女を攻撃する事に躊躇いを感じるミラーガール。だが、そのメリーさんを自分の念力で動きを制御している斉木の力量は限界に近付いて来ていた。

 斉木の限界を悟り、ミラーガールはメリーさんへの攻撃を複雑な心情で決意した。

「……ゴメンなさい」

 ミラーガールはメリーさんに一言、謝罪の言葉を掛けた次の瞬間。跳び上がってはメリーさんが浮いている位置まで跳躍し、力の限りミラー・ソードをメリーさんの肥大した頭部に突き刺した。

「グハッ」

 後頭部から突き刺されたメリーさんは唸り声を上げ、突き刺さったミラー・ソードは更に頭部を貫通しメリーさんの額に当たる部分から突き出た。

 そして頭部を貫かれたメリーさんは力尽きたのか、地面にゆっくりと降りては着地し膝を着いた。

 メリーさんが地面に膝を着いた瞬間、ミラーガールは突き刺したミラー・ソードをメリーさんから引き抜いた。引き抜いた瞬間、その箇所から微量の血が吹き出るとメリーさんはそのまま前のめりに倒れて完全に動かなくなってしまった。

「はぁ、はぁ……」

 一突きでメリーさんを倒す事に成功したミラーガールは、ミラー・ソードを引き抜いた瞬間張り詰めていた緊張が解れたのかその場に腰を下ろしてしまう。

 そんなミラーガールに新世代型達は挙って駆け寄り、彼女を気遣い始めた。

「ミラーガール」「だ、大丈夫ですか?」

 新世代型達の心配を受けてミラーガールは冷や汗を流しながら言葉を返した。

「え、ええ……どうにか大丈夫よ」

 荒い息遣いで言葉を返すミラーガールの様子に、新世代型達は心底ミラーガールを心配する。

 一方、他のメリーさんの念力で弾き飛ばされた面々もようやく気が付いては、ミラーガールがメリーさんを倒した事に気付いた。

「や、やったなアッコ……良くぞやったぞ、ホント」

 と、草臥れながらも目を回しながらメタルバードがミラーガールに称賛の言葉を掛けてきた。そんな目が回っているメタルバードにミラーガールは話し返した。

「バーンズ、貴方の方は大丈夫? 何だか焦点が合ってないわよ」と、目が回って焦点が合ってない事を指摘するミラーガール。

 更にメタルバードに続いて他の面々も意識を取り戻し、ミラーガールに言い寄ってきた。

「み、ミラーガール……」「良かった。無事に倒せたのね」

 朦朧とする意識の中でミラーガールや新世代型達の安否を確認しに来たセーラーヴィーナスにセーラーマーズ。するとミラーガールは先ほどの事を皆に語り始めた。

「ううん、私だけで倒せた訳じゃないの。この斉木楠雄くんが力を貸してくれたからこそ、どうにかメリーさんを倒せたのよ」

 ミラーガールに自身の活躍を語られる斉木楠雄は皆の視線が自分に集中する中、皆と視線を反らす。

 そんな徐に視線を反らす斉木に気が付いた大将が意気揚々と話し掛けてくる。

「おう、斉木のアンちゃん。良くアッコの手助けをしてくれたな。ヨッ、男前」「……」

 大将からの称賛に対し、斉木は口を閉ざしては無言で憮然と大将と視線を反らし続ける。

 そんな斉木の先ほどの行為に未だ理解ができない親友の燃堂力が、斉木に言葉を掛けてくる。

「な、なぁ、斉木……今のって」「…………」

 燃堂からの問い掛けに口を閉ざしたままの斉木。だがその時、未だに斉木の超能力が理解できていない燃堂に鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が仏頂面な面構えで言った。

「貴様、まだ何にも解ってないのか? 良いか、その斉木って男はだな……」と、鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が斉木楠雄の超能力に付いて燃堂に語ろうとした瞬間。

 斉木の眼光が鋭く光った瞬間、鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の口は強烈な力で押さえ付けられたかの様に上唇と下唇がくっ付いて離れられなくなってしまった。

「ッ~~、ッ~~~~」口が完全に塞がってしまい、何とか口を開こうともがく鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)

 すると皐月の口を念力で塞いだ斉木が燃堂以外の新世代型達にテレパスで強烈に自分の思想を伝えた。

鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)を始めとする全ての新世代型に告げる。今後、僕の能力はもちろん僕自身にも触れなければ話題にもしないで貰いたい。解ったか)

 鋭い眼光を向けながらテレパスで自身の思想を伝える斉木の主張に、新世代型達はもちろん斉木に口を塞がれている鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)も無言で首を何度も頷いては同意の合図を斉木に送る。

 そして新世代型達の同意を受けて、斉木は鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)に掛けていた念力を解除して彼女の口を自由にしてやった。

「かっ……はぁ」

 ようやく口が開いて呼吸も自由になった皐月は唖然とした表情で立ち尽くす。

 燃堂以外の新世代型達に自分の事を公言するのを控えさせた斉木は、何事も無かったかの様に普段の様子に戻る。

 

 一方で、聖龍隊と赤塚組はミラーガールが止めを刺したメリーさんの亡骸に集まり、彼女の骸を念入りに調べ始めた。

「コイツは……やはり、頭部に手術跡が見られる事から脳を直接改造されて超能力が開花したタイプの生体兵器だな」

「頭部が異常なまでに肥大化しているのは、手術で脳を改造されて脳が劇的に膨張した事から、こんな容姿になってしまったんだろうな」

 メリーさんの亡骸を調査するメタルバードとジュピターキッドは、メリーさんのその尋常でない頭部の膨らみが脳を外科手術などで改造された為に脳細胞が膨張した結果だと推論する。

「だけど可哀そう……。まだ、こんなにも幼い子供だと言うのに」「ああ。全くだ」

 容姿から推測して、おそらく4,5歳の幼女であったと思われるメリーさんに対して、幼子に対しての脳の改造に哀れみを感じるセーラームーンとエンディミオン。

 すると其処に新世代型の二次元人達も集まってきてはメリーさんの亡骸を見下ろしながら聖龍隊の方々に問い掛けて来た。

「で、でも……なんで、こんな幼い子供まで此処にいるの? 確か此処って、精々異常者(ヒール)に認定された二次元人や三次元人しか収容されてない筈じゃ……」

 棗鈴が地下施設で改造された被験体の中に幼い児童までもいる事に疑問を抱いていると、同じ疑問を抱いていたルーキーズの総部隊長ミラールが思考に耽ながら語る。

「う~~ん……多分、此処に連れて来られた異常者(ヒール)の女性とかが施設内で産んだ子供かもしれないわね。異常者(ヒール)には普通の犯罪受刑者と同じ様に、身篭った状態で連行されるケースも有るから、多分この施設で産み落とした子供を此処の研究者達が兵器改造の目的で育成しつつも少しずつ人体を改造して行ったのかもしれないわ」

 ミラールが己の思案を皆に語っていると、棗鈴に続いて琴浦春香も自分たち新世代型達が抱いている悲痛な疑問を投げ掛けた。

「ど、どうして……こんなに小さな女の子までも、兵器に改造されたんですか?」

 悲痛な面持ちで琴浦春香が聖龍隊に訊ねると、彼女達の悲しげな質問にジュピターキッドが答えた。

「まあ、多分……異常者(ヒール)が収容中に産み落とした子供だったから、母親と同じで人権がない状況だったのかもしれない。何より此処は大半が非合法な研究を続けていた施設。収容されてる異常者(ヒール)が出産した幼児も同じ様に兵器として改造されては利用されてしまったのかもしれない……」

 ジュピターキッドの険しい面持ちでの語りに続いてメタルバードも語り出した。

「そうだな。それに此処の施設では何故か日本の都市伝説をモチーフとした生体兵器が盛んに製造されていた。それで噂によっては幼い女児の姿にも捉えられたメリーさんに、この幼子が適任だったんだろうよ。全く、惨い話だぜ」

 幼い児童にすら生体兵器としての改造を行い、都市伝説の一つメリーさんに変貌させた研究施設の醜悪な実態に皮肉を込めて語るメタルバード。

 そして粗方みんながメリーさんに対して語り合うと、大将が聖龍隊の面々に言った。

「なあ、もうメリーさんも片が付いたんだし、とっとと先に行こうぜ。俺なんだか、もう疲れたよ……」

「そうね。みんなも此処まで走り続けて疲れているから、この先からはゆっくり歩いて少しずつ進んでいきましょう」

 大将の提案にセーラープルートも同意し、一行は草臥れた足を引き摺りながら再び先へと進む事にした。

 

 だが、皆が進路の前を歩行していく中。メタルバードは先ほど、ようやく倒したメリーさんの亡骸に目を向けては一人思考を巡らせていた。

(このメリーさんは脳を改造されているのか、余り筋力組織が発達した様子は見られないが……だが、所々にDの特徴が見受けられる。さっきから俺達の前に立ちはだかって来たひきこさんに赤マント、これらの都市伝説を基にした生体兵器には直接的に人体にD-ワクチンかウィルス等の筋力増加の処置が施されている特徴が見られているんだが……まさか、こいつ等にも例の特徴が見に染み付いているんじゃないだろうな)

 メタルバードは改造された為に脳が異常なまでに肥大化したメリーさんの亡骸を見据えながら、今まで自分たちが戦ってきた数多くの人為的に製造された怪異に見られた筋肉強化剤D-ワクチンの特徴を思い返しては同時にある不安が頭に過ぎっていた。

 するとその時「ねぇ、バーンズ。早く行きましょう」と、皆と先を進行するミラーガールがメタルバードに呼び掛ける。

 メタルバードは「おう、分かった」と、ミラーガールの呼び掛けに答えつつも、メリーさんの亡骸を見据えながら皆の許へと向かうのであった。

 

 まさか、この時のメタルバードが抱いた不安が後に現実の物となるとは、メタルバード本人を含む一同全員予想だにしていなかった。

 

 

 

 

[トンカラ・ドン]

 

 人気の無い通路を只管進む一行。今まで通り先頭を進むメタルバードと大将が進行方向を常に警戒しながら、その後ろから新世代型達と彼等を警護しながら常に周囲に気を配る聖龍隊と赤塚組。

 すると薄暗い通路を進んでいると、ある物が通路の壁際などにちらほら見られた。

 それは全身を包帯で巻かれたトンカラトンであったが、何故か壁に寄り掛かっているトンカラトン達は動く気配が無く完全に息絶えた様子であった。

「な、何なんだ? このトンカラトンの死体の山は」

「死体、というより……何らかの理由で動かなくなったんだろう」

 通路脇に無造作にあるトンカラトンに大将もメタルバードも目を配らせる。

 と、そんな最中。一行はある扉の前に差し掛かった。その扉は明らかに遂最近まで使用された形跡が見られ、扉の隙間からは僅かであったが光が覗かせていた。

「おい、この部屋。何だか灯りが灯っているぞ」

「そうだな。最近まで誰かに使われた形跡も見られるし、少し中を検めるか」

 灯りが零れている扉の先が気になった大将とメタルバードは皆を引き連れたまま、扉を開けては灯りが灯っている室内へと足を踏み入れていった。

 

 室内に足を踏み入れてみると、其処は何らかの作業場の様な光景が広がっていた。

 天井には一個だけの電灯が、壁には日曜大工などで使われていそうな工具が多数見受けられ、中でも一層目を引いたのが部屋の一角に置かれていた大量の包帯であった。

 メタルバードや大将が室内を探索してみると、少し奥に進んだ所に人一人が寝かせられる作業台が、しかも至る箇所に血痕が付着している状態で見付かった。

「こ、此処はいったい何をしていた所なんだ……?」

 険しい顔色で大将が部屋で行っていた作業に付いて考えていると、更にその作業台よりも先に続いていた室内に足を踏み入れていた聖龍隊の女性の声が大将の許へと届いた。

「みんな! ちょっとコッチに来て!」

 その声は紛れも無くセーラーヴィーナスの声であった。大将を始めとする複数の面々は、彼女の声に導かれる様に部屋の奥に続いていた別室に足を踏み入れた。

 皆が奥の別室に足を踏み入れると、其処にはヴィーナスだけでなくマーキュリーの姿も有ったのだが、問題は彼女達がいた別室の場景であった。

 血塗れの作業台があった部屋の隣の別室。其処には大量の全身を包帯で巻かれた死体が山積みにされていたのだ。

「こ、これは……!」

 目の前に忽然と広がる包帯で雁字搦めに巻かれた死体の山にメタルバードは驚愕する。

 恐る恐る包帯で全身を巻かれた死体を観察してみると、それらの殆どは死体を包帯で巻いて山積みに置かれていってから余り時間が経過していない事が判明した。

「この死体の山は、一体……」

 メタルバードが眼前に広がる包帯に巻かれた死体の山を前に愕然としていると、大将が徐に口を開いた。

「これって、もしかすっと……トンカラトンになる前の死体とかじゃねェの?」

 大将は包帯で全身を隈なく巻かれた死体は、何れトンカラトンになるのではないかと口に出した。だが、そんな大将の発想にメタルバードと同じく包帯塗れの死体を入念に観察していたマーキュリーが反論した。

「それは無いわ。今までのトンカラトンは明らかに肉体を改造された上で包帯を巻かれて、容姿そのものをトンカラトンに似せていた生体兵器だったけど、此処の死体は全て死んでから間もなく誰かの手によって死体に包帯を巻いただけの状態だから、トンカラトンとして動き出す事はないわ」

 マーキュリーが言うには、今までのトンカラトンは兵器として確実に動く様に改造された上で包帯を巻かれて処置を施された存在であるが、今目の前の死体は単に亡骸に包帯を巻いただけの処置しか行われておらずトンカラトンとして動き出す事はないと説明する。

 と、マーキュリーが語っているその時。上の方に山積みにされた包帯を巻かれた死体の一体が何の前触れも無しに天辺から崩れ落ちた。

「うわっ!」「そんな驚くな。単に死体が落ちただけだ」

 前触れも無く落下した死体に尋常でないほど驚愕するヴィーナスにメタルバードが呆れながら言うと、次の瞬間。

 床に落下した包帯塗れの死体が突如として動き出しては立ち上がったのだ。

「え!?」「な、何ッ?」

 立ち上がる包帯塗れの死体を前に、マーキュリーもメタルバードも他の面々も突然の事態に驚き慄いた。

 そして立ち上がった包帯塗れの死体は、ゾンビの様に手を前へと突き出しながら「アーー……」という唸り声を発しながらメタルバード達の方へと迫ってきた。

 少しずつ自分達に近寄ってくる包帯塗れの死体に動揺する一同。だが間髪入れずメタルバードは冷静沈着に右腕を拳銃に変形させると、それを迫ってくる包帯塗れの死体の眉間に狙いをつけて電撃の弾を発射した。

 メタルバードの放った電撃の弾丸を眉間に受けた包帯の死体は、その一発で完全に動かなくなり床に倒れた。

「こ、これって……」

 突然動き出し迫ってきた包帯塗れの死体を前に激しく動揺するヴィーナスが指差すと、メタルバードが自身のレーダーアイを駆使して自らが倒した包帯の死体を調査した。

 するとある事実が判明した。

「コイツは……トンカラトンじゃねェ。ただのゾンビだ」

「ぞ、ゾンビ!? で、でも見た目は……」

 メタルバードの見解にヴィーナスが困惑した表情で問い質すと、メタルバードは詳細を話した。

「ああ、見た目は包帯姿のトンカラトンだよ。だがコイツは単に全身を包帯で巻いただけの、単なる普通のゾンビしかねェ。多分、此処の包帯を巻かれただけの死体にウィルスが感染してそのままゾンビに成っちまっただけの、云わばトンカラトンもどきって所だ」

 特別な処置ではなく、包帯を巻かれただけの処置が行われた死体にウィルスが感染しそのままゾンビと化したのだとメタルバードは説明する。

 すると他の聖龍隊士がメタルバードたち他の同胞を呼ぶ声が聞こえた。

「総長! コッチ来てくれッ」

 その声はニュー・スターズ総部隊長のフロートの声であった。一同は早速フロートの許へと駈け付けた。

 するとフロートがいたのは一番奥の部屋だったのだが、其処は壁中に無数の鉈や刀等の刃物が立て掛けられ、中央にはペダル式の電動研磨機が備え付けられた椅子が点在していた。

 メタルバードと大将は早速室内を見て回るが、壁の刃物は全て綺麗に砥がれているのが見て取れ、ペダルを踏んで研磨部分が高速で回転し刃物を研ぐ研磨機も最近まで使用された形跡が見られた。

「こ、此処の刃物は全て、この研磨機で研かれたのか?」

「そうかもしれねェな。壁の刃物も研磨機も、最近まで使われていた形跡が見られるしな」

 室内を隈なく見て回る大将とメタルバードは、室内の状況から最近まで何者かが此処で刃物の手入れを行っていた事が判明した。

 と。此処で大将が部屋の一角に在る棚の上に何気なく置かれていた刃渡りが40cmは有ろうかという大型の鉈に気付いては、その鉈を手にとって間近で注視し始める。

「おお。この鉈、かなり鋭く砥がれているじゃねェの。こりゃ、貰っておくか」

 そう言うと大将は徐に鉈を自分の手持ちに加えようとした。だがその矢先、大将は更にある物に目が止まった。

「おッ、コイツは……」

 それは革製の収納袋であった。しかも、その革細工の収納袋はちょうど大将が手に取っていた大型の鉈がすっぽり納められる言わば革製の鞘であった。

 大将は、その革製の鞘袋を腰のベルトに装着すると、続いて大型の鉈を私物にしようと鞘袋に装入しようとした。

 だが、鉈を鞘袋に装入しようとした大将にメタルバードが声を掛ける。

「大将、ちょっと待て」「ん、何だ?」

 声を掛けられた大将が停止すると、メタルバードは彼に歩み寄っては持っていた鉈を指して言った。

「少しばかし、それを貸してくれねぇか。ちょっくら調べたい事が有るんでね」

「あ、ああ。分かった」

 大将はメタルバードの申し出を承諾すると、腰に装着した鞘袋に装入しようとした鉈をメタルバードに手渡した。そして鉈を受け取ったメタルバードは自身のレーダーアイで念入りに鉈を調べ始めた。

「成る程な。この鉈の金属成分と、研磨機の底に備え付けられている水桶に溜まっている金属の微粒子の中で同じ金属の反応が確認できるな」

 と。鉈の金属成分と研磨機の底に備え付けられた水桶の中に溜まってる金属の微粒子の成分が一致したと、全身を精密機械に変化しているメタルバードが突き止めた。

 すると一見しただけで鉈の金属と水底に溜まっている金属粉の成分が一致していると鑑識してみせたメタルバードの眼力に新世代型達は感心してしまう。

「す、凄いッスねバーンズさん。一目見ただけで金属成分が一致しているなんて解っちゃうなんて」

 唖然としながらもメタルバードの眼力に感服してしまう真鍋義久の言葉に、メタルバード本人は平然と話し返す。

「な~~に。今のオレ様は全身が精密機械と化した一種のサイボーグ状態。眼球はレーダースキャンに変化しているし声帯はボイスチェンジャーにも成れるから、結構昔っから重宝されてるのよね」

 対象物を詳細に至るまで調査できるレーダースキャンの眼球、そして他人の声を声帯模写できるボイスチェンジャーの声帯。等々メタルバードは精密機械化している自分のメタルバード時の身体に付いて語り明かすのだった。

 更にメタルバードは、精密機械と化している故に今の自分に出来うる検証を皆の前で披露し始めた。

「それにな。こう言った現場検証の場だからこそ、オレの様な能力は更に活用できるのよ。見てみな」

 そう言うとメタルバードは自分の両目から光の帯を放射し、自分たちが今いる現場の状況が更に詳しく解る様にしてみた。

「こ、これは……!」

 メタルバードの両目から放たれた光に照らされた部屋には、まるで赤外線の様に特殊な映像を通して見ている様な風景が広がった。これにメタルバードは次の様に語った。

「オレたち聖龍隊は、特殊な敵……つまりは怪人や妖魔などの異形の存在だけでなく、極普通の犯罪現場にも立証したり捜査に入ったりしているのが日常なんだよ。オレのレーダービジョンは、こういった風に現場の状況を隅から隅まで洗い浚い調査できる上に、立証に立ち入った他の人間にも理解できる様に、現状を立証した上で知り得た情報をホログラムにして現場と一体化させて投影できる様にもできるのよ」

 己の精密機械化した身体で犯罪現場を至る箇所から調査できる上に、それをホログラムとして現場に再現してみせる状況を他の人物にも解り易くする為にその場に投影できる事を語り明かすメタルバードは、早速先ほど大将から手渡された大型の鉈と、その鉈の金属成分が出た回転式砥石の周辺から立体映像での再現を皆に見せ始めた。

 メタルバードが投影した立体映像では、何者かがペダル式の電動研磨機で刃渡り40cmもの鉈を丁寧に研いて行く様子が鮮明に映し出されてた。その者は時おり研磨機の横に備え付けられた長方形の水桶で鉈を濡らしては再び砥石で少しずつ丁寧に研いていっては、鉈を鋭い切味に仕立てていく。そして鉈を自分の気が済むまで丁寧に研き終わった者は、鉈を革製の収納袋の傍らに置いた後、その場を立ち去った様である。

「め、メタルバード……この後、鉈を研いだと思われる人物は一体どうしたんですか?」

 メタルバードが皆に見せた現場検証の立体映像を観て、瀬名アラタがメタルバードに問い掛ける。するとメタルバードは「少し待ってくれ」と言葉を返すと、鉈が置かれていた棚とは反対側にある小さな木製の机の前に歩み寄っては、机上を注意深く見入り始めた。

「……成るほど成るほど。どうやら砥石で鉈を研いた野郎は、研きに入る前にこの机の上に何らかの物体を置いた様だな。積もっていた埃が払い除けられた痕と、どうやら刃物が接触した様な傷跡が残っていやがる」

 机上を念入りに観察したメタルバードは、机上に残されていた積もっていた埃が除けられた痕跡と刃物の様な物が接触した際に付いた跡に目を光らせた。これらの現場に残っていた物証から、メタルバードは更なる検証立体映像を皆の前で披露した。

「此処に立ち入った奴は、まず予め所持していた刃物を机の上に置いたんだ。傷跡から推測すれば、日本刀に近い刃物だったらしい。そして刀を置いた後は、おそらく研き途中であった鉈を此処の研磨機で丁寧に研き切って、それが済んだ後に鉈を棚に置いては持ってきた刀を再び手に取りこの部屋を後にしたんだろう」

 机上の埃の積り具合と残された刃物の擦れた痕から、研磨機を使用した者がこの部屋に入った時には刀を所持しており、鉈を研き終わった後に再び刀を手に持ち部屋から出た事を推測するメタルバード。新世代型達は、そんなメタルバードの自身の眼球を駆使して把握していく検証に圧巻されつつも最後に一番疑問に感じていた事を訊ねた。

「そ、それじゃ、メタルバード……結局は、その、此処で作業しに出入りしていたのって誰な訳?」

 丸井善二(まるいぜんじ)がメタルバードに訊ねてみると、メタルバードは部屋に出入りしていた存在が入室するのに使ったと思われる砥石場の扉に手を伸ばしては室外の様子を確認してみる。

「うむ、此処の出入り口は廊下と繋がっているのか」

 部屋を出入りできる扉を少し開けて顔を覗かせるメタルバードは、扉の先が廊下に繋がっているを確認し、扉を閉めて再び室内に戻ろうとした、その時。

「ん?」

 室内に戻ろうとしたメタルバードの腰の付近で、何か金属同士が擦れた様な音と感触が伝わってきた。

 メタルバードが腰元に目を向けてみると、金属化している自分の体と扉のドア枠から飛び出ている釘の頭が擦れていた。金属同士の擦れる音はこれが原因であった。

 更にメタルバードはある事に気付いた。自身の金属化した体と擦れたドア枠から飛び出ている釘の頭に、何かの布切れが引っ掛かっていたのだ。

 即座に釘の頭に引っ掛かっていた布切れを手に取り、念入りに見入ってみるメタルバード。すると布には微量ながらも血液が付着しているのが目視できた。

「メタルバード、それ」

 新世代型の巻島裕介(まきしまゆうすけ)が手にとった布切れを見つめるメタルバードに言い寄ると、メタルバードは険しい顔付きで語りながら布切れに付着している血痕を調べ始めた。

「ふむふむ……やっぱり。この血にはDの反応がある」

「えッ、Dって、あのD-ウィルスとかワクチンのDですか?」

 メタルバードの発言に小野田坂道(おのださかみち)が訊き返すと、メタルバードは険しい顔立ちで受け答える。

「ああ、それだよ。この血液には確かに、そのDの反応が見られる。だから、この布切れの持ち主がDを投与された奴って事よ」

 これらの新たな物証を基に、メタルバードは更に皆に理解しやすい様に立体映像で再現してみた。

「鉈を研ぎ終わった奴が持ち込んだ刀を手に取り、そのままこの部屋を出る際にドア枠から飛び出ていた釘の頭に布切れの端が引っ掛かったんだろう。そして、この布切れはどう見ても包帯だ。そして、この包帯の切れ端に付着していたDの反応が出た血液から察するに……この作業場を出入りしていたのはトンカラトンだ」

 何とメタルバードの見解によると、部屋を出入りし鉈などの刃物を丁寧に研いでいたのは生体兵器の一種であるトンカラトン本人であるのだという。

 このメタルバードの解釈を聞いて、大将が驚いた表情でメタルバードに問い質した。

「ちょっと待てよバーンズ。つまり何か。此処の研磨機を人間と同様に扱って刃物を研いだり、革製の刃物を収納できる代物を拵えたのは、人間じゃなくなっているトンカラトンだと言うのか!?」

 既に人体を改造され、生体兵器と成り果てたトンカラトンに刃物を鋭く丁寧に研いて行く手作業ができるほど知能がある事に驚く大将が訊き返すと、メタルバードは更に衝撃の事実を口にした。

「ああ、信じ難いかも知れないが、トンカラトンは刃物の砥ぎ技に対しては結構な知能があったと思われる。それに、これはオレの推測だが……研磨機の作業場と血塗れの作業台を結ぶトンカラトンの格好を施された死体も、おそらくはトンカラトンそのものが集団で仕立てたんだろう」

「え! そ、それって……!?」

 メタルバードの釈明に御舟百合子が驚きながらも問い返すと、メタルバードは自分なりの推測を皆に語り始めた。

「うむ。都市伝説で語り継がれるトンカラトンの伝承によれば、トンカラトンに殺された人間も同じトンカラトンになってしまうと言われている。もし、このトンカラトンの伝承を基にした習性が生体兵器のトンカラトンにも植え付けられているとしたら……」

『………………』

「この施設内で逃げ惑ってた研究所員及びゾンビと化した所員がトンカラトンに襲われ、殺された後に此処の作業台に運ばれて来ては全身を包帯で包まれ、トンカラトン達に同じトンカラトンとして生まれ変わらせようと施されたんだろう」

「そ、それじゃ! さっきの包帯塗れの死体の山は……!」

 メタルバードの話を黙然と聞き入れる皆。そしてメタルバードの話を聞き入れていた赤塚組の海野なるが先ほど目にした包帯塗れの死体の山について問い返すと、メタルバードは話を続けて答え返した。

「ああ、さっきの包帯でグルグル巻きにされた死体はトンカラトン達によって施された死体だろう。習性としては自分達の仲間を増やそうとしたトンカラトンの行為だったが、結局は見た目だけが包帯だらけになっただけで正真正銘のトンカラトンにまで成り果てる事は無いまま山積みにされていったんだろうな」

 自分達が殺した相手を自らの手で同じ怪人トンカラトンにしようと死体に包帯を巻いていった生体兵器トンカラトンの驚くべき習性。しかし人体改造を施されていない死体に包帯を巻いただけではトンカラトンに成らず、単なる死体の山と化してしまったのであった。

 包帯塗れの奇怪な容姿とは違い、刃物を研いだり死体に包帯を巻き込んで処置を施す作業が出来るほどの知性を持っていたトンカラトンに誰もが愕然としてしまってた。

 と。そんなこんなで現場での実況検分を一通り皆に説明したり見せたりしたメタルバードは、皆に言う。

「そんじゃ、此処の検分っつうか調べも終わったし、早く先に行くか」

 そう言うとメタルバードは先ほど自分が確認した廊下へと繋がる扉を潜って進路先の安全を確認しつつ先へと行ってしまう。

「バーンズの言う通りね。私達も一刻も早く脱出する為に、早々に足を進ませましょう」

 メタルバードに続いてミラーガールも皆に進行を勧めながら足を歩ませる。

 メタルバードにミラーガールの言い分を聞いて、場の一同も先に進む事に承諾し足を歩ませる。

 そんな中、大将は先ほど自分が手に取った例のトンカラトンが研いたといわれる40cmの鉈を再び手に持つと、さり気無く腰に付けたこれまたトンカラトンが拵えたと思われる革製の鞘袋に鉈を納めては平然と皆と一緒に先へと進んでいった。

 

 トンカラトンの作業場を抜けた一行は、再び薄暗く壁際に死体やトンカラトンが寝そべっている廊下を突き進んでいく。

「う、動かねェよな」「ああ、できればそう願いたい」

 無数の死体やトンカラトンが横たわる中を突き進む大将とメタルバード率いる一行は、死体やトンカラトンが動き出さない事を真に願っていた。

 だが、恐怖は忽然と襲い掛かってきた。

「ウゥ……」「アァ……」

 低く不気味な唸り声を発しながら、廊下脇で横たわっていた死体やトンカラトンが次から次へと立ち上がり、廊下を直進していく一行に襲い掛かってきた。

「きゃあっ」「お、起き上がった!」

 突如として立ち上がり襲い掛かってきたゾンビにトンカラトンの群集を前に悲鳴を上げる田所恵と涙目になるイサミ・アルディーニ。

 此処ですかさず聖龍隊と赤塚組が戦闘に入った。

「攻撃開始!」

 メタルバードの掛け声を合図に、聖龍隊も赤塚組も周囲にしかも眼前に群がるゾンビやトンカラトンに応戦を始めた。

 切磋琢磨と果敢に得物である刃でゾンビやトンカラトンを斬り付けては倒していく者、またある者は弓や銃での飛び道具で遠距離から確実に敵を倒していったりと怯む事無く応戦し続ける。

 そんな中、銃火器で周囲の敵と応戦していた大将は、先ほどトンカラトンの作業場で入手した腰元の鉈に気付いては、ある事を試したくなった。

「ん、待てよ……いっちょ試し切りしてみっか」

 それは先ほど手に入れた鉈で周辺のゾンビやトンカラトンを攻撃していこうかという試みであった。

 大将は腰元の革製の鞘袋から刃渡り40cmの鉈を利き腕の右手に持つと、それを勇猛に振り翳しながら眼前のトンカラトンに一撃を浴びせようと突っ込んだ。

「うおりゃッ」勇ましい掛け声と共に鉈を振り回してみた大将。

 すると鉈は見事にトンカラトンの首に直撃し、しかもトンカラトンの首を一刀両断に切断してみせた。

 大将が斬り落としたトンカラトンの首は、運悪く近くで応戦していたセーラーヴィーナスの眼前に吹っ飛んでしまった。ヴィーナスは思わず自分の方へ飛んできたトンカラトンの首を両手で受け止めてしまい、トンカラトンの首と目線が合った瞬間に思わず絶叫してしまった。

「ぎゃあああッ!」

 只ならぬヴィーナスの絶叫に、付近で応戦していた仲間の聖龍隊や赤塚組の面々が驚愕してしまった。

 するとヴィーナスの絶叫を聞いて驚いたジェイクが叫び声を上げた彼女に文句を突き掛けた。

「おいッ、金色の姉ちゃん! いきなり大声出すんじゃねェよ! 何事かと驚いちまったぜ」

 と、絶叫を上げたヴィーナスに文句を言うジェイクに対し、トンカラトンの首を受け止めた上に目線が合ってしまって絶叫を上げたヴィーナスは涙目になりながら、トンカラトンの首が飛んできた方角にいた大将を涙目で睨み付けながら大将に文句を言う。

「だってぇ……いきなり目の前にトンカラトンの首が飛んで来たんだもの。ちょっと大将! なに生首をコッチにそれを飛ばして来る訳?」

 涙目で訴えてくるヴィーナスの言い分に、大将は申し訳なさそうに述べ返した。

「い、いや済まねぇ。ちょっくら試し切りしてみたかっただけなんだが、思った以上に切味が良くってよ。この鉈。いやァ、悪ィ悪ィ」

 何度も頭を下げながら謝罪を述べる大将。しかし謝罪を述べ終わった大将は、手にした鉈の想像以上の切味に興奮したのか立て続けに周囲のゾンビやトンカラトンを次々に斬り付けていった。

「おりゃおりゃおりゃおりゃッ」

 拍車が掛かる勢いに任せながら続け様にゾンビやトンカラトンの首筋や腹部を斬り付けて行く大将。すると鉈の切味と大将の勢いが相俟ってか、切り傷は深い損傷と相成って斬り付けられたゾンビやトンカラトンは続々と床に倒れていく。それでも尚、立ち上がろうとするトンカラトンに対しては、大将は鉈を頭上まで振り上げては首を狙って一気に鉈を振り下ろした。そして力いっぱい振り下ろされた鉈は物の見事にトンカラトンの首を切断し、切り落とされた首は床を転がっていく。

 そんな凄まじい切味の鉈の威力を直と感じ取った大将は、唖然としながらも鉈を見つめながら言った。

「ひゅ~~……こりゃぁ、思ってた以上の切味だな」

 大将もまさか、トンカラトンが自ら研いた鉈が此処までの凄まじい切味を秘めていた事実に驚くばかりであった。

 と。大将も先ほど入手した鉈で激しい応戦を繰り広げている最中。戦況は多少ばかし変わりつつあった。

「くッ……!」

 トンカラトンからの振り下ろされた刀を必死の形相で受け止め防ぐセーラーウラヌス。彼女と同じく魔法騎士の三人も、ハニーフルーレで立ち回るキューティーハニーもトンカラトン達との剣戟に多少の苦戦を感じていた。

 暗闇で光る刃と刃がぶつかり生じる赤い火花。その火花が生じる度に激しい剣戟を展開してはトンカラトンと応戦する聖龍隊士たち。

「な、何だか急にコイツ等、強くなった様な……!」

「その様ね。攻撃を受け止めるだけでも至難だわ」

 お互いにトンカラトンからの攻撃を己の得物で受け止めつつ防御するウラヌスとプルート。

 そんな中、次第にゾンビではなくトンカラトンの数の方が増えていっている事に同じく応戦し続けていたセーラーサターンが気付いた。

「ねぇ! 何だかトンカラトンの方が増えていってる! みんな気をつけてっ」

 サターンの言うとおり、すっかり周囲はトンカラトンの数の方が激増しては、増えていったトンカラトンは今までに無い強靭な腕力で得物である刀を振り回しては聖龍隊や赤塚組を追い詰めていく。

「トン、トン、トンカラ、トン」

 前々から呟いているお決まりの台詞を口にしながら猛烈に刀を振り回し攻撃してくるトンカラトンに苦戦を強いられてくる一行。

 そんな苦戦の渦中にいる聖龍隊と赤塚組に加勢しようと、纏流子や鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)、それに栗山未来たちといった新世代型達も参戦してくれてた。

 しかし参入した面々も強力で刀等の得物を振り回しては苛烈に攻めて来るトンカラトンの群衆に苦戦を感じてしまう。

「く、クソッ。何なんだ、この包帯野郎ども。今までと違ってかなり強いぞ」

「せ、生徒会諸君! 怯むでない! 押し続ければ必ず勝算が見えてくる! 諦めてはならんぞッ」

 片太刀バサミで応戦しつつも苦戦する流子に、縛斬で立ち回りながら共に戦う生徒会の面々に声援を掛ける鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)

「こ、これじゃキリが無いです!」

「栗山さん、此処で戦いを止めてしまえば余計に状況が苦しくなるだけですわ!」

「その通りだ! 少しでも戦況を翻す為にも手を止める訳には……!」

 苦戦を感じる栗山未来に助勢の言葉を掛けていく美月と博臣の名瀬兄妹。

 と、此処で再びセーラーウラヌスに一体のトンカラトンが日本刀を振り翳しては猛烈に斬りかかって来た。

「ッ!」ウラヌスは寸での所でトンカラトンの斬撃を防いだが、そのトンカラトンとの余りの筋力の差に次第に押されていってしまう。

 このままでは自分の短刀が弾かれ、頭上の日本刀が振り下ろされるのも時間の問題だと察知するウラヌス。だが彼女には成す術がなかった。

 と、その時だった「ウラヌスの姉ちゃん! 助太刀するぜッ」と鉈を頭上に振り上げた大将が鍔迫り合い状態に陥っているウラヌスと対峙しているトンカラトンに飛び掛ってきた。

 ウラヌスと対峙するトンカラトンの背後から飛び掛った大将は、鉈でトンカラトンの背筋に沿って一直線に上から下に向けて切り裂いた。

「ウギャッ」

 声を上げながら背面の深い傷から血を噴き出すトンカラトンは、そのまま床に倒れてしまう。

 そしてトンカラトンに深手を負わせた大将と、不覚にも彼に助けられたウラヌスが目を合わせると彼女は不本意ながらも大将に礼を述べる。

「た、助かったよ」「へへッ、気に済んなって」

 礼を述べられた大将は当然の事をしたかの様に鼻を指で擦りながらウラヌスに言葉を返した。

 更に暗闇での攻防が続き、闇の中で展開される激しい火花と肉が斬り付けられて行く音が重なり合う中、次第に周囲に群がってきたトンカラトンの数は徐々に減ってきた。

「よし、あとホンの僅かだ。一気に片付けるぞ!」

 メタルバードの意気込みを受けて聖龍隊は最後の攻防を展開する。それに連なって赤塚組もジェイクも、そして新世代型の面々も一気にトンカラトンの残党を撃破しに攻める。

 

 そしてようやく周囲の今まで以上に強かったトンカラトンは全て倒しきり、やっと安堵する一同。

「ふぅ、ようやく全部倒せたな」「ああ、全くだ」

 互いに息を切らしながら言葉を交し合うメタルバードと大将。

「それにしても……何でこの辺のトンカラトンだけ、他の場所で遭遇した固体とは違ってヤケに強かったのかしら」

「ホントだな。お陰ですっかり草臥れちゃったよ」

 この場で遭遇したトンカラトンが他の場所で戦闘を繰り広げた固体と違って強い個体であった事に疑問を感じるプルートに同意しつつ草臥れた様子で呼吸を整えるウラヌス。

 だが皆がその場全てのトンカラトンを倒し切り、ようやく安堵に浸っていたその時。

 

 ズシーーン ズシーーン……

 

 何か巨大な物音と同時に床や壁に伝わってくる震動に皆が慄き始めた。

「な、何だ? この音は……」

「音だけじゃない。何か巨大な物が動いている様な震動が……」

 突如として伝わってくる音と震動に動揺を隠し切れない猿田学と美都玲奈の二人。

 巨大な物音と震動は、どうやら皆がいる所より少し行った先が震源地の様であった。

「何だ、この震動……」

「俺達が向かうべき進路の先だし、行ってみるしか無いようだな」

 不気味に響き渡る震動音に警戒の念を強める大将とメタルバードは、思い切ってその震源地へと進んでみる事にした。

 一行が進んでいけば行くほど、地に響く震動と巨大な音は強まる一方であった。

 そして一行が辿り着いたのは、何やら巨大な鉄格子が聳える大広間であった。壁のコンクリは所々崩れ、5階ほどの階層が有ったと思われる箇所には激しく崩れ落ちた形跡が見られる広々とした空間が目の前に広がっていたのだ。

 その光景を唖然と眺めていた大将がポツリと呟いた。

「な、何だ此処は? 何と言うか……まるで巨大な檻みたいな造りだが」

 大将の発言にメタルバードも同意した。

「確かに……何かを閉じ込めるか、はたまた飼育している様な造りには見えるな」

 メタルバードも眼前に広がる巨大な鉄格子が聳え立つコンクリート製の円柱型の大広間が、何か巨大な生物を飼育している様な檻に近い構造であると認識していた。

 と。皆が目の前に聳える縦60m程の巨大な鉄格子の大広間に目を奪われていると、先ほど伝わってきた震動と音が再び皆の体に震撼してきた。

「わ!」「ま、またさっきの地響き……!」

 先ほども体そのものに伝わってきた震動と耳に聞こえてくる物音に一驚する真鍋義久と戸室大智。

 皆が再び身体に伝導してくる震動と物音に慄いていると、その震動と音は今皆がいる大広間の鉄格子の奥から聞こえて来ている事に気付いた。

「あ、あの鉄格子の奥から……」

「な、何だか近付いて来てやしねェか?」

 巨大な鉄格子の奥から響いてくる震動と音に多大な不安を感じる月影ちありと真田幸介(さなだこうすけ)

 そして皆が巨大な震動と物音に慄いている最中、遂にその発信源と思われる物体が格子越しから姿を現した。

 巨大な鉄格子の上方に掴み掛かる、これまた巨大な包帯塗れの手が、両手で力いっぱい鉄格子を揺さ振り力ずくで格子を外そうとしていた。

 皆が鉄格子を外しに懸かる巨大な包帯塗れの手に目を奪われていると、次第に激しく揺さ振られてた鉄格子の枠がコンクリの壁から外れていき、遂には完全に鉄格子の上半分が壁から抜け出てしまった。

 一同が上半分が外れた鉄格子に驚愕していると、更に驚きの事態が起こる。外れた上半分の鉄格子を包帯塗れの巨腕が力任せに押し通し、更に鉄格子を強引に突破しようとする。

 そして皆が注目する中、包帯塗れの巨大な物体は鉄格子を完全にへし曲げては強引に突破し格子の外へと脱出してしまった。

 全長60mは在ろうかと云う鉄格子を破壊して外に出てきたのは、大よそ50mは有ろうかと云う巨大な包帯姿の巨人。つまりは巨大なトンカラトンが飛び出てきたのだ。

「ぎぃやあああああああッ!!」「で、出たぁああ!!」

 目の前に出現した巨大なトンカラトンを前にして、メタルバードと大将はその余りの巨大さに思わず絶叫してしまう。

 そして鉄格子を破壊して出てきた巨大トンカラトンは、自分の足元に群がっていた一行に気付いたのか皆の方を見下ろして来た。微笑を浮かべているかの様な細い口に目元が吊り上がった細目が地上の一行を怪しく見下ろす。

 巨大なトンカラトンに見据えられた新世代型達は、その巨大さによる迫力と怪しい眼光による睨みを受けて圧倒されてしまう。

 そして地上の面々に気付いた巨大トンカラトンは右手に持っていた、これまた巨大な太刀で地上の一同に斬り付けてきた。

「うわぁ!」

 巨大な太刀を斬り付けられ、辛うじて逃げ惑う皆々。

 だが巨大トンカラトンの振り下ろした太刀は地上のコンクリの床を意図も容易く抉り取り、皆の前には抉り掘られた巨大な太刀の痕跡がハッキリと残った。

「な、何だ、あのトンカラトン! 馬鹿でかいにも程があるぞ!!」

 尋常でない巨大さを誇るトンカラトンを前に、その巨大な全貌を見上げながら大将が一驚する。

 そんな中、メタルバードは先ほど施設内で入手した資料を事細かく念入りに目を通していき、今目の前で猛威を振るっている巨大トンカラトンに付いて調べていた。

「め、メタルバードっ! この大きなトンカラトンは何なのよ!?」

 資料を読み返しているメタルバードにセーラームーンが泣きじゃくりながら訴える。

 そして資料を読み返したメタルバードは遂に眼前で猛威を振るう巨大トンカラトンが何なのか解った。

「みんな! コイツはトンカラトンの首領バージョンで造り出された巨人トンカラトン……通称トンカラ・首領(ドン)だ!」

「と、トンカラ、ドン?」

「そうだ。ドン、つまりは首領を意味する言葉で、コイツはトンカラトン達の親玉みたいな存在らしい。兎に角、奴の攻撃には注意しろッ。デカイだけに攻撃も半端ねェ」

 皆に述べ伝えるメタルバードの言葉に思わず訊き返してしまう大将。そんな大将や皆にトンカラ・首領(ドン)の詳細な情報を更に伝えていくメタルバード。

 だが、そんな間にもトンカラ・首領(ドン)は地上の面々に巨大な太刀を振り下ろしては苛烈な攻撃を続けてくる。

「きゃあっ!」「と、兎に角応戦だ!」

 全長50mから放たれる猛烈な斬撃に戸惑い怯みながらも、エンディミオンが仲間の聖龍隊に応戦を指示する。

 聖龍隊の攻撃が開始されると、その直後には赤塚組も強力な銃火器で応戦を始める。

 しかし巨大なトンカラ・首領(ドン)の足元や膝辺りにまでしか銃弾は当たらず、主な弱点が集中している上半身への攻撃は簡単ではなかった。

「く、くそ……弾が中々当たらねェ」

「狙いを付け様とも、その間に刀を振り下ろされちゃ狙いすら付けられないし……」

 上半身への攻撃を狙撃しようとする赤塚組のゴマに山崎貴史だが、自由に太刀を振り下ろし、かつ活発な動きをするトンカラ・首領(ドン)への上半身への攻撃は困難であった。

 皆が弱点であると思われる顔面に、どうにか攻撃を仕掛けられないが思考を巡らせている最中もトンカラ・首領(ドン)は地上に向けて太刀を振り回す。

「ドン、ドン、トンカラ、ドン……」

 例の普通のトンカラトン達が発していた言葉に近い台詞を呟きながら幾度と無く地上に太刀を振り下ろしていくトンカラ・首領(ドン)

 そんな中、トンカラ・首領(ドン)の太刀攻撃が届かないギリギリの距離でメタルバードが自身の右腕をレーザー砲に変形させては、トンカラ・首領(ドン)の眉間に狙いを付けていた。

 そして次の瞬間、メタルバードは強烈な電撃の弾をトンカラ・首領(ドン)の眉間に狙いを付けて発砲した。

「グアッ」

 眉間に電撃の弾が直撃したトンカラ・首領(ドン)は苦痛に喘いだのか、身を仰け反らしながら喘ぎ声を発した。

「やっぱり。奴の弱点は顔面だ! どうにか攻撃を顔面に集中させねェと……」

 見事にトンカラ・首領(ドン)の眉間に攻撃を当てたメタルバードは、どうにかして皆の攻撃をトンカラ・首領(ドン)の顔面に集中できないか考えた。

「チックショーー、折角さっき手に入れたこの鉈もあの巨体には使えないか……」

 その頃、大将は先ほど入手したトンカラトンが研いた鉈をトンカラ・首領(ドン)との戦闘では披露できない事に悔やんでいた。

 その時。あろう事かトンカラ・首領(ドン)は地上の面々に対して巨大な足で踏み付けてやろうと、足を上げた。

「うわあ!」「ふ、踏まれる!」

 上方に高々と振り上げられる巨大な足の裏を目の当たりにして、イオリ・セイとレイジ・アスナは蒼褪めた顔で絶叫する。

 だが踏み付けられそうになる新世代型達の前にミラールやデス・ザ・キッドを始めとする銃撃隊士が飛び出ては、皆トンカラ・首領(ドン)の足裏に狙撃し始めた。

「行くぜ! 一斉射撃だッ!」

 ニュー・スターズ総部隊長のフロートの掛け声を合図に、フロートのガトリングやデス・ザ・キッドの二丁拳銃、そしてルーキーズのミラールのミラージュ・ガンによる連射と暁美ほむらの銃撃さらに巴マミが展開する無数の銃火器がトンカラ・首領(ドン)の足裏に一斉直撃していく。

 聖龍隊の苛烈な銃撃を直に受けて、踏み付けようとしていたトンカラ・首領(ドン)は銃撃の威力に押されて思わず怯んでしまっては足を地面に着かせてしまう。

「やったぜ!」「でも、また来るわよ」

 踏み付け攻撃を除け逸らせられたフロートは大いに喜ぶが、ミラールは次の攻撃が来る事を予期して皆に言い付ける。

 一方で、巨大なトンカラ・首領(ドン)の顔面や頭部への攻撃を試みようと、トンカラ・首領(ドン)の両側の壁とトンカラ・首領(ドン)の本体を交互に蹴り上げながら上へと駆け上っていく二人のヒロイン、セーラーウラヌスとキューティーハニー。二人は息の合った動作で巧みにトンカラ・首領(ドン)と壁とを交互に蹴り付けながら上の方へと駆け上っていく。

 そしてウラヌスとキューティーハニーがトンカラ・首領(ドン)の顔の方まで駆け上がって行くと、二人同時にトンカラ・首領(ドン)の顔面を斬り付けた。

『はァッ!』

 ウラヌスと短刀とキューティーハニーのフルーレが交差すると同時にトンカラ・首領(ドン)の顔面を交錯する形で深く斬り付ける。

「グオオッ!」

 顔面にクロスの深い損傷を受けたトンカラ・首領(ドン)は痛みで巨大な唸り声を上げた。

 そして顔面に受けた傷を押さえ込む様に左手で顔を押さえ出すトンカラ・首領(ドン)

 一方のトンカラ・首領(ドン)に損傷を与えたウラヌスとキューティーハニーは同時に着地する。

「ウラヌス、ハニー! 良くやった」

 トンカラ・首領(ドン)の顔に傷を付けた二人にメタルバードは称賛の言葉を掛ける。

 だがウラヌスとキューティーハニーに顔を傷付けられたトンカラ・首領(ドン)は半ば興奮した状態で、更に激しく地上の面々に太刀を振り下ろし斬り付けていった。

 トンカラ・首領(ドン)の振るう太刀が床のコンクリと接触する度に凄まじく抉られていく戦場。正に地上は修羅場と化していた。

 そんな猛威を振るい続けるトンカラ・首領(ドン)を止めるべく、聖龍隊は一斉に飛行能力を持つ隊士が飛び立ち、トンカラ・首領(ドン)の顔まで飛来しては攻撃を開始する。

 背中に天使の如き翼を生やしたセーラー戦士達、そしてフライ(翔)のカードを使用して背中に羽を生やして飛行する木之本桜。そんな普段は秘めている飛行能力を使用して飛び上がる面々に加えて、何時でも好きな時に背中から虹色の羽を生やして飛行するウォーターフェアリーに日常から飛行できるメタルバードも立て続けに飛行してはトンカラ・首領(ドン)の顔面や頭部に攻撃を仕掛けていく。

「アロー!」背中に羽を生やしたさくらはアロー(矢)のカードを用いて、複数に増える魔力の矢をトンカラ・首領(ドン)の顔に撃ち続ける。

 更にセーラー戦士達も空中を飛行しながらそれぞれの必殺技でトンカラ・首領(ドン)に様々な攻撃を放っていく。

 其処に追撃とばかしにウォーターフェアリーが周囲に無数の水の槍を形成してはトンカラ・首領(ドン)の顔目掛けて連射していく。

 負けじとメタルバードも電撃の砲弾でトンカラ・首領(ドン)の頭部を連続攻撃していく。

 その間、地上に滞在している聖龍隊や赤塚組の面々は必死にトンカラ・首領(ドン)と応戦しながら非力な新世代型達を警護していた。

「ウオオオオオオ、ウオオオオオオオオォォ……」

 大広間に響き渡る唸り声を発しながら自分の周囲を飛び交い攻撃してくる聖龍隊の面々に抵抗を見せるトンカラ・首領(ドン)。だが空中を自在に飛び交う聖龍隊を左手で捕まえようとするも、するりと隙間から抜けては簡単にすり抜けてみせる聖龍隊の勇士達。

 すると上空の聖龍隊を何とか捕まえようとするトンカラ・首領(ドン)は気づかずに地上で戸惑い続ける新世代型達の上から足を下ろそうとしていた。

「危ない!」赤塚組のアケミが叫ぶが、下ろされていくトンカラ・首領(ドン)の巨大な足は地上の新世代型達を踏み付ける寸前だった。

 だが、その時。地上の新世代型達を警護していたミラーガールが咄嗟に機転を利かせ、トンカラ・首領(ドン)の顔目掛けてミラー・シールドを構えると強烈な光を放った。

「ミラー・フラッシュ!」

 本来は妖魔や邪悪な異界の者を浄化する効果のある技であるミラー・フラッシュを、ミラーガールは機転を利かしてトンカラ・首領(ドン)の目晦ましに用いた。その結果、強烈な光を顔に浴びたトンカラ・首領(ドン)は眩しさの余りに立ち眩みし足元をふらつかせては新世代型達を踏み付ける事無く足を地面に着けた。

 一方で地上の聖龍隊も上空の聖龍隊に劣らずトンカラ・首領(ドン)に向けて地上から攻撃を仕掛けていく。

 上空と地上の両方から一方的に攻められるトンカラ・首領(ドン)は悪戦苦闘し、次第に押され始めていた。

 其処に地上の赤塚組が強力な銃火器でトンカラ・首領(ドン)の顔面に目掛けて追撃とばかりに続々と砲撃を加えていく。

「戦況がコッチに傾き始めた。一気にケリを付けるぞ!」

 赤塚組のテツの言葉を皮切りに、赤塚組一同はトンカラ・首領(ドン)の頭部に集中攻撃を仕掛けた。テツのスナイパーライフルに続いて赤塚組の強力な銃火器の威力で見る見るうちに見た目がボロボロに成り果てていくトンカラ・首領(ドン)

 だが追い詰められていくトンカラ・首領(ドン)は攻撃の手を緩めずに猛烈な攻撃を聖龍隊の面々に仕掛けていく。

「うわッ」「きゃっ」

 空中のメタルバードやセーラーネプチューンに太刀を振り回し、続け様に今度は地上で奮闘する聖龍隊や赤塚組の面々に太刀を振り付けていった。

「わあッ!」「避けろ!」

 地上に直接太刀を振り回しては苛烈な攻撃を仕掛けていくトンカラ・首領(ドン)の猛威に、地上の聖龍隊士や赤塚組の面々は必死に回避し続けるしかなかった。

 その時。空中で応戦を続けていたメタルバードが何かを閃いたのか、徐にトンカラ・首領(ドン)の頭上まで飛来しては自身の形を大き目の槍に変形させて、トンカラ・首領(ドン)の脳天に突き刺さった。

「グオッ」

 脳天に突き刺さった槍状のメタルバードの激痛に襲われ悲鳴を上げるトンカラ・首領(ドン)。そして槍に変形してトンカラ・首領(ドン)の脳天に突き刺さったメタルバードはテレパシーで同じく上空で応戦しているセーラージュピターに呼び掛けた。

(ジュピター! お前の電撃を俺に直撃させろッ。脳天からコイツを痺れさせるんだ!)

 このメタルバードの提案にセーラージュピターは賛同した。

「分かったわ!」

 次の瞬間、セーラージュピターは脳天に突き刺さっている槍状のメタルバード目掛けて強烈な電撃を放つ。そして槍状のメタルバードに強力な電撃が伝導してトンカラ・首領(ドン)の体内に強烈な電流が走った。

「グアアアアアアアアアァァァ……ッ!」

 巨体に流れる凄まじい電流に感電し、苦しむトンカラ・首領(ドン)は絶叫を上げる。

 そしてトンカラ・首領(ドン)の体内に電流を伝導させたメタルバードは、トンカラ・首領(ドン)の脳天から離れると同時に元の容姿に形状を戻し地上に降り立った。

 すると丁度そこに真鍋義久が目を凝らしながら上空を見詰めているのがメタルバードの目に入った。

「? どうしたんだ、真鍋。そんなに目を凝らしてよ」

 すると真鍋は地上に降り立ったメタルバードに対面しては平然と話した。

「いやぁ、薄暗いせいか良く見えなくって……聖龍隊のお姉様方のパンチラ」

 あろう事か真鍋義久は上空で奮闘している聖龍隊のヒロイン達のスカートの中身を覗こうと必死になって目を凝らしていたのであった。

 この真鍋の台詞に側にいた彼の恋人である琴浦春香に聖龍隊参謀総長のジュピターキッドの二人が冷ややかな目で真鍋に冷たい視線を送る中、真鍋の話を聞いたメタルバードは彼の肩を組んでは景気良く話し掛けた。

「大丈夫、真鍋くんよ。セーラー戦士にさくら達のパンチラなら後で何時でも見せてやるからよ。いや、君も好きだねぇ。若いねぇ」

「い、いやいや……それほどでも」

 互いに鼻の下を伸ばしながら助平心全開で語り合うメタルバードと真鍋義久の二人の言動に、更に冷ややかな目を向ける琴浦春香とジュピターキッド。

 そして助平心満載の二人にジュピターキッドが歩み寄っては背後から殺気に満ちた笑顔で話し掛けてきた。

「お二人さん……こんな切羽詰った状況の中で、何を話していやがるんだ? それにな真鍋。上空で戦闘を続けているヒロインの中には僕の婚約者も含まれているけど、それを理解している上で僕の傍らで婚約者を含むヒロイン達のスカートの中を覗き見ようって魂胆なのかい?」

 尋常でない殺気に満ちた笑顔で言い寄るジュピターキッドの風貌に、一瞬押され気味になる真鍋とメタルバード。だがメタルバードは平然と、そして堂々とジュピターキッドや琴浦春香そして他の一同の前で言い放った。

「何を言う! エロスは健全な青少年の証である!!」

「証である!」

 メタルバードに続いて堂々と腕を組んで言い放つ真鍋の発言に、ジュピターキッドも琴浦春香も、そして他の面々も怒りなどの激情を通り越して呆れ果ててしまった。

 そんな呆れ果てる琴浦を始めとする一同の冷め切った表情を脇目に、琴浦春香に後方から二人の言動に対して思う所があるミラーガールが歩み寄っては春香の肩を叩くと同時に彼女に満面の笑みで話し掛ける。

「春香ちゃん。後であの二人、シメよっか」このミラーガールの穢れ無き満面の笑みに対し琴浦春香も「はい、そうですね」と同じ満面の笑みで返す。

 そんな二人のやり取りを前にして、メタルバードと真鍋義久は悪寒に襲われていた。

「…………ッ」

「……あ、でも。聖龍隊屈指の美女であるミラーガールに締められるのなら、ある意味特かも」

 思わず絶句するメタルバードに対してミラーガールからの制裁を何処かMッ気に通ずる性分で半ば嬉しく思い始める真鍋。だが、そんな真鍋にメタルバードが釘を刺す様な台詞を話した。

「やめとけ。アッコって、修司と良く組み手してっからかなり武術とか鍛えられてっぞ。しかも修司だけでなく自己的に空手とかの護身術まで学んでいるし、下手したら病院送りだから夢見るな」

「…………っ!」

 メタルバードの口から飛び出た衝撃の事実に真鍋は言葉を失った。

 そんな中、地上の聖龍隊は自分達なりにトンカラ・首領(ドン)への攻撃を仕掛けていってた。

 トンカラ・首領(ドン)の左足にブルーローズと氷麗(つらら)が吹雪で凍り付かせて動きを封じる一方で、もう反対側の右足にはファイヤーエンブレムやドラゴンキッドが炎と電撃でトンカラ・首領(ドン)の左足を集中攻撃していく。

 地上からの攻撃に気を取られてしまってたトンカラ・首領(ドン)は、自分の前方から壁を蹴り上げて跳びかかって来たトリコや金剛番長に気付いていなかった。しかもそれと同時にトンカラ・首領(ドン)の背後からもバーナビーとワイルドタイガーが二人掛りでトンカラ・首領(ドン)の肘裏を狙って立ち回っていた。

 そして二組は同時に、それぞれがトンカラ・首領(ドン)の胸部と肘裏を強烈なパワーで殴り付けては、トンカラ・首領(ドン)の体勢を一気に崩した。

 胸部に強烈な拳を直撃させたトリコに金剛番長。そして肘裏をハンドレッドパワーで殴り付け、ちょうど膝カックンの要領で体勢を見事に崩す事に成功した二組。

 そして胸部と肘裏に攻撃を受けたトンカラ・首領(ドン)は体勢を崩すと、そのまま後方に向かって背面から倒れ込んだ。

「グアア……」

 唸り声を発しながら地響きと共に床に倒れ込むトンカラ・首領(ドン)

 完全に仰向け状態で床に倒れ込んだトンカラ・首領(ドン)であったが、まだ息があった。

 未だ息絶えてないトンカラ・首領(ドン)に止めを刺す為に、メタルバードが颯爽と飛び立つと同時に自らが選んだ仲間達に呼び掛ける。

「ウラヌス、ネプチューン。変形した俺の柄の部分を持っていてくれ!」

 そう叫び掛けるとメタルバードは両端に柄の部分が突出した巨大な刃物に変形してみせる。メタルバードに呼び掛けられたウラヌスとネプチューンは言われるがままに変形したメタルバードの柄の部分を各々が手にし構える。

 更に変形したメタルバードは続けて他の仲間二人も呼び掛ける。

「トリコ、金剛番長、それに他のグルメ四天王の三人! お前らは俺の上に乗っかってくれ! 五人の体重で加圧を加えて首を切断する!!」

 メタルバードの指示を信用し、トリコを始めとするグルメ四天王のココ/サニー/ゼブラそして金剛番長の5名は、巨大な刃物に変形したメタルバードの太刀筋の上に乗っかり全体重を懸けた。

 そして5名の重量級の隊士に振り下ろす際の着地点を制御するウラヌスとネプチューンによって、刃物と変形したメタルバードは仰向けに倒れ込んだトンカラ・首領(ドン)の首に垂直に落下した。

 そしてウラヌスとネプチューンが持っていた事で確実にトンカラ・首領(ドン)の首に落下した刃物のメタルバードに、更に5名の体重が一気に圧し掛かりトンカラ・首領(ドン)の首を完全に切断する事に成功した。

 肉塊が力の限り切断される鈍い音と同時に床に広がる血の海。トンカラ・首領(ドン)の首を切断して見せたウラヌスとネプチューン、そして重量級のトリコ/ココ/サニー/ゼブラそして金剛番長の加勢も加わり、巨大な刃物に変形したメタルバードを用いた切断は見事に決まった。

 

 こうして巨体で猛威を振るっていたトンカラ・首領(ドン)を無事撃破した一行は、首を切断して見せたメタルバード達の許へと駆け寄っては戦闘に参加した皆々の無事を確認し合った。

「よし、みんなどうにか無事だな」

「ああ、何とかな。それにしても、まさかこんなに巨大な生体兵器も造られていたとは」

 皆の無事を認識し安堵するメタルバード。それに反して大将は異常なまでの巨体を誇る生体兵器までも製造されていた事に驚きを隠せなかった。

 そんな互いの無事を確認し合う中、新世代型達は先ほど刃物に変形したメタルバードを用いてチーム掛りで切断されたトンカラ・首領(ドン)の首の箇所に目を奪われていた。

 切断面から絶える事無く流出する血の滝に見入ってしまい、更には生臭い悪臭も漂う中、事もあろうにメタルバードは先ほど刃物に変形して浴びたトンカラ・首領(ドン)の返り血で紅く染まる銀色の体で新世代型達にトンカラ・首領(ドン)の首の切断面を指して説明し出す。

「ホラホラ。此処、よ~~く見てみな。刃物となった俺様に、その動きをコントロールしていたウラヌスとネプチューンの技量で見事に首と胴体が切断されているだろ。オマケに、完全に断ち切る為に圧力を加える意味でトリコ達の様な重量級の連中の体重も加算して切断したんだ。ほら、綺麗な断面だろ」

 と。自慢げに切断して見せたトンカラ・首領(ドン)の首を指して語り出すメタルバードの説明に、薙切えりなが嫌気を漂わせる顔でメタルバードに反論してきた。

「や、やめてください! そんな、グロテスクなもの、見たくは無いですわ」

 だが、そんな難色を示す薙切えりな等の【食戟のソーマ】組の様子を見たメタルバードは彼等に喝を入れるかの如く強く言い放った。

「何を言うんだね君達は! 確かお前らはみんな調理師を目指している若者だったよな? それならこういった残酷な描写もしっかりと目に焼き付けて置かないと調理人失格だぞ! 良いか、そもそもお前達が調理に使用している食肉だって本来は生きたまま加工される。つまりは生きたまま生殺しで肉にされるって事なんだぞ。このトンカラ・首領(ドン)の様にグロテスクな殺され方をされた生き物が食材として加工され、君たち調理人の前に出されている事をぐれぐれも自覚していてほしいんだよ。薙切えりな、お前が好んでいるブランド物の食肉だって、安い食肉同様に生き物を殺して加工した食材だって事を忘れるな! 君たち調理人はな、生き物を……命を加工し調理しては口にしているって事をぐれぐれも忘れないでほしい。分かってくれたか?」

 メタルバードの真剣な話と目付きに、薙切えりなを含む【食戟のソーマ】組は首を縦に振って頷いた。

 

 と。メタルバードが【食戟のソーマ】組を始めとする新世代型達に食肉にされる命の尊さを訴えていたその時。トンカラ・首領(ドン)が出現した鉄格子の奥を見に行っていたジュピターキッドを始めとする聖龍隊が報告に帰ってきた。

「メタルバード。格子の一番奥に、5階分上がれる階段があったよ。この先を進むには丁度いい道だ」

「そっか、そりゃ良かった。これで安心して先に進めるな。よっしッ、みんな行こうぜ!」

 ジュピターキッドからの報告を受けたメタルバードは先ほどの真剣な顔立ちとは一変して、調子の良い面構えで皆を引き連れて奥の階段の方へと進んでいった。

 これには話を直に聞き入れていた【食戟のソーマ】組も他の新世代型達も唖然としてしまってた。

 

 兎にも角にも、一行はトンカラ・首領(ドン)が出現した巨大鉄格子の奥に備え付けられていた階段を上って、一気に5階分のスペースを上がっていった。

 その先には更なる恐怖が待ち受けているとも知らずに……。

 

 

 

[姦姦蛇螺]

 

 一行が階段を上ってしばらく進むと、その先には両開き式の扉が待ち受けていた。

 恐る恐る静かに扉を開いて中に足を踏み入れてみると、其処は無数の本棚が1階を丸ごと埋め尽くされた図書室の様な構図で、その上には何かを飼育していた様なガラス張りの小部屋が幾つもある2階仕立ての間取りの大部屋であった。

 

「……何だか訳の分からねぇ本が並んでいるな」

 本棚に並べられてあった本の一冊を手に取り拝読してみた大将だったが、余りにも難解な文章の内容にスグ本棚に本を戻した。

「へぇ。哺乳類や爬虫類……何だか動物関連の書物が多いわね」

 一方のセーラープルートは本棚に陳列されていた本を一通り拝読し、その殆どの書物が動物関連の知識が詳細に記載された書物である事を速効で認知する。

 そうして各々が1階の書物棚のベースを調べ回っている最中、メタルバードは鉄梯子を上っていった先の方に意識が向いた。そして梯子を上り、上へと向かうと書物が陳列されている本棚の真上のスペースにはガラス張りの小部屋が幾つも見受けられた。

 そんな中、メタルバードは一番最初に目に入ったガラスが打ち砕かれている空間に足を運ばせてみた。

 メタルバードがガラス張りの内部に侵入し、床に散らばっているガラス破片の状況から何がこのガラス張りの空間で起こったのか推測してみた。

「……どうやら、此処のガラスは内側から破られたみたいだな。このガラスは重度の圧力にも耐えうる強化硬質ガラス。それを破ると成ると尋常でない力を持った奴が此処で飼われていたという事になる」

 強化硬質ガラスの他のガラス張りの部屋よりも広い空間で飼われていた何かが、その尋常でない強力でガラスを打ち破り脱出してしまった事を推測するメタルバード。

 更にメタルバードはガラス張りの部屋の中に残っている遺物から、どんな生物が飼われていたのか調べ始めた。

「…………ッ! これは」

 ガラス張りの内部を隅々まで調べていたメタルバードの目に止まったのは、何かの鱗の様な物だった。

「この鱗……見た目的にはアナコンダに近い片鱗だな。しかも鱗の大きさから、かなり巨大な固体みたいだ」

 だがこの時、メタルバードはある一つの疑問が脳裏に浮かんだ。

「しかし……いくら巨大なアナコンダでも通常の硬質ガラスよりも強化されたガラスを打ち破るほどの力量は備わっていない筈だ。それなのにガラスを破壊するとは、一体……」

 更にメタルバードはガラスの内側から付着していた痕跡に目を奪われた。

「! これは人間の手形……! しかも大きさから女性の手の様だが、それにしても余りにも数が多すぎる。にしても、まさかアナコンダと女性を一緒の部屋に入れて置く訳もないのに、この手形は一体なんだ?」

 ガラスの内側にびっしりと残されていた人間の女性らしき手形の跡。だが、それにしても、その手形の数が異状にまで多すぎ本来は届く筈の無い天井にまで手形が残っている事にメタルバードは驚きを隠せなかった。

 その頃、メタルバードがガラス張りの内側から様々な憶測を立てている最中、新世代型達は個人個人で好き勝手に室内を探索していたのだが、それに聖龍隊や赤塚組の目は行き届いていなかった。

「しっかし、一体此処では何をしていたんだろうな?」

「1階の書物は殆どが動物関連の本だった事から、おそらく2階のガラス張りの此処では何かしらの動物を飼って研究していたとは思うんだけど……」

 自由に1階を見て回った後、続いて2階のガラス張りの場所も見て回っていた瀬名アラタ達。ガラス張りの小部屋が目立つ2階を見て回ってたアラタが疑問に思っていると、それに同行していた三名出雲ハルキ/星原ヒカル/細野サクヤの内の出雲ハルキがアラタの疑問に答える。

 更にガラス張りの小部屋が多く点在している2階部分の奥の方にまで足を運ばせていた真鍋義久は、たった一人で自由に探索をしてしまってた。

「ほへぇ~~、結構ガラスの小部屋が多く並んでいるな。何か飼っていたのかな? ……に、しても何だか獣臭いな此処は」

 真鍋義久はガラス張りの小部屋が続く2階スペースから感じる獣臭さに若干の嫌悪感を覚えていた。

 だが真鍋は気付いていなかったが、彼の後方から真鍋に少しずつ近付いてくる存在がいた。その者は時には床上からの低い位置、そして天井に近い高所から真鍋をじっくりと選別するかの様に視線を向けていた。

 そしてその者の視点は、遂に真鍋の背後スグに迫った。背後に急接近してきた存在の気配に薄らと気付いた真鍋は、そっと顔を振り向いた。そして自分の背後に迫っていたソレと目を合わせた。

「う、うわあッ!!」

 背後の存在と目が合った瞬間、真鍋義久の絶叫が周囲に大反響した。

「な、なんだ!?」突然の真鍋の絶叫に室内の探索を行っていた大将たち赤塚組も、同じく聖龍隊も、そして新世代型達の面々も驚愕した。

 一方の真鍋は背後に迫ってきた存在に見下ろされ、すっかり腰を抜かしては地べたを這う様に後方へと逃げ去ろうと必死になっていた。そんな真鍋の所に琴浦春香や戸室大智、御舟百合子に森谷ヒヨリの面々が駆け付けてきた。

「真鍋君!」「一体どうしたんですか?」

 琴浦春香に戸室大智らが真鍋の許に駆け寄ってみると、彼等も真鍋を睨む様に対面していた存在に目を付けられた。

「な、何あれ!?」

 目の前にいた異形の存在に森谷ヒヨリが背筋を凍らせた瞬間、その異形の者は駆け付けてきた琴浦たちに狙いを変えて一気に向かってきた。

「きゃあっ」

 迫り来る異形の存在を前に、恐怖で咄嗟に頭を伏せて体勢を低くしてしまう琴浦たち。

 異形の者が彼女達に牙を向けようとした、その矢先である。「このヤロッ」と真鍋や琴浦たちの危機に駆け付けてきたメタルバードが彼女達に牙を向けようとした異形の存在に空中からの強烈な飛び蹴りを喰らわした。

 メタルバードの強力な蹴りを喰らった異形の存在は派手に吹き飛び、2階のガラス張りの階層から1階の書物が陳列された本棚の場にその巨体を放り出された。

「こ、コイツは……!」

 図書の間に放り出され、その全貌を露にした異形の存在を目の当たりにした大将たち一同はその異様なまでの姿に愕然とした。

 上半身は黒髪の長い女性の裸体に腕が6本もある容姿、だが腰から下の下半身は巨大な蛇の胴体と化している異様なまでの全容であった。

「こ、こいつは……ッ」「シャアアァ……」

 眼前の異形の怪異に目を奪われる中、下半身が大蛇の女は低い唸り声を発しながら目の前の大将達を睨み付ける。

 異様な姿の存在に恐怖を抱き、周辺にいた新世代型達が脅えては思わず逃げ去ろうと走り出そうとすると、異形の女は走って逃げようとする者らを睨み付け逃げ出す隙さえ許さなかった。

 そんな周囲の面々に異様な姿を晒しつつも睨み付けては威圧する異形の女を見て、2階からメタルバードが上半身を身乗りしては書物部屋の全員に呼び掛ける様に大声で叫んだ。

「気をつけろッ、そいつは間違いなく此処で造り出された生体兵器の一体。姦姦蛇螺(かんかんだら)だ!」

「か、姦姦蛇螺(かんかんだら)?」

 メタルバードの発言に大将を含む場の一同が騒然と化した。

 姦姦蛇螺(かんかんだら)とは。上半身は腕が六本もある人間の女性の姿で、下半身は大蛇の姿をしていると伝承される都市伝説上の怪物であった。

 そんな姦姦蛇螺(かんかんだら)を前にしていた面々に、当の姦姦蛇螺(かんかんだら)は6本の腕を前に突き出す形で構えては襲い掛かってきた。

「きゃああっ!」

 最初に襲い掛かられたのは、運悪く姦姦蛇螺(かんかんだら)の視界にいただけの棗鈴であった。角度的に聖龍隊や赤塚組が助けに向かえない場にいた鈴に姦姦蛇螺(かんかんだら)は容赦なく迫ってきた。

 だが、姦姦蛇螺(かんかんだら)が棗鈴に掴み掛かる瞬間「うおりゃッ」片太刀バサミで姦姦蛇螺(かんかんだら)の動きを止めに入った纏流子の咄嗟の助けに棗鈴は九死に一生を得た。

「は、早く逃げろッ」「っ、っん……」片太刀バサミで必死に姦姦蛇螺(かんかんだら)を防ぐ纏流子は苦悶の表情を浮かべながらも背後の棗鈴に早くその場から去る様に言い付ける。これに棗鈴は恐怖で声が出ないものの力強く頷いては急いでその場から立ち去った。

 一方の纏流子は片太刀バサミ一本で姦姦蛇螺(かんかんだら)の強靭な腕力を一人で防いでいた。

 だが押さえ込む一方の纏流子に赤塚組の面々が助勢に駆け付けては、姦姦蛇螺(かんかんだら)に向かって一斉射撃を放った。

 薄暗い部屋の中で紅い閃光が煌びやく中で放たれた銃弾は一直線に姦姦蛇螺(かんかんだら)に直撃していく。

 しかし銃弾を浴びても微塵も効力を示していない様子の姦姦蛇螺(かんかんだら)は、平然と室内を這う様に移動しては同じ空間にいる者達に狙いを付けては襲い掛かってくる。

「うわあッ」「に、逃げろ!」

 異様な容姿の姦姦蛇螺(かんかんだら)に脅える棗恭介や井ノ原真人(いのはらまさと)が叫びながら逃げ惑う中、他の新世代型達も姦姦蛇螺(かんかんだら)に脅え切っては室内を彼方此方と逃げ惑う完全な混乱状態に現場は陥っていた。

 そんな混乱に陥っている状況下でも姦姦蛇螺(かんかんだら)は獲物を追う大蛇の如く床や壁を這いずり回っては逃げ惑う新世代型達を追い詰めていく。

「聖龍隊! 姦姦蛇螺(かんかんだら)に攻撃開始! 新世代型達を護るんだ」

 参謀総長ジュピターキッドの指示の下、聖龍隊各隊士は一斉に姦姦蛇螺(かんかんだら)への攻撃を開始する。

「赤塚組! 俺達も弾を気にせずブッ放していくぜ。行くぞ!」

 大将も聖龍隊の面々に後れを取る事無く、幹部達に指示を煽っていく。

 そして聖龍隊と赤塚組の連続攻撃が姦姦蛇螺(かんかんだら)の蛇の鱗部分に直撃するも、まるで鋼鉄に当たっているかの様に弾かれてしまう。

「おいおい、鉛弾が効かねェぞ」意図も容易く弾かれてしまった銃弾を前にして動揺する大将。

 そんな最中も姦姦蛇螺(かんかんだら)は着々と室内を徘徊しては逃げ惑う新世代型達を追い続ける。

 

 しかもこの時、姦姦蛇螺(かんかんだら)と応戦を繰り広げている最中で最悪の事態が起こってしまった。

 何と出入り口である扉が姦姦蛇螺(かんかんだら)が暴れ回る中で崩れ落ちてしまった本棚や陳列されてた書物で埋まってしまい、皆の逃げ道が無くなってしまった。

「で、出口が!」

「今は退かしている暇がねェ。まずは、あのヘビ女を先に倒してからだ!」

 塞がってしまった出入り口を目の当たりにして愕然と成るアツシに、先ず自分達がやるべき戦闘を優先せよと告げる大将。

 そんな中、遂に一人の少年が姦姦蛇螺(かんかんだら)に追い詰められてしまった。

「く、来るな……来ないでくれッ」

 恐怖で顔を引き攣らせ、必死で命乞いをする東郷リクヤ。しかしそんな彼の悲痛な訴えも怪異の姦姦蛇螺(かんかんだら)には通じなかった。

「シャアアアアァァ!」「う、うわぁッ」

 頭上から襲い掛かってくる姦姦蛇螺(かんかんだら)に思わず目を塞ぎ頭を押さえ込んで動けなくなる東郷リクヤ。もう彼の命も風前の灯と思われた、その時。

「はぁっ!」

 東郷リクヤの頭上から襲い掛かろうとしていた姦姦蛇螺(かんかんだら)に突如、何処からとも無く跳び蹴りが飛んできた。その蹴りに姦姦蛇螺(かんかんだら)は一瞬怯んでしまい、そしてその場を去っていってしまった。

 難を逃れた東郷リクヤがそっと瞼を開いて視界を広げてみると姦姦蛇螺(かんかんだら)に強烈な一蹴りを浴びせた人物の姿が。それは柔道経験者である篠目アカネであった。

「リクヤ、大丈夫だった?」「し、篠目さん……あ、ありがとう」

 自分の危機を救ってくれたのが、LBX学校からの同期で弱気になっていた時の自分を日頃から声援してくれた篠目アカネであった事に驚きを隠せない東郷リクヤであったが、彼はアカネから差し伸べられた手を素直に掴むと彼女に立ち上がらせてもらった。

 だがアカネの柔道で鍛えられた蹴りを喰らった姦姦蛇螺(かんかんだら)は更に別の獲物を標的に絞った。

 今度の獲物は一緒に行動していた法条ムラクとバネッサ・ガラの二人であった。

「は、早く走るんだ。バネッサ!」「分かってる……けどこれ以上は足が」

 急いで逃げる二人。その最中でムラクは後方のバネッサに声を掛けながら前を走っていた。だがムラクの問い掛けに答えていたバネッサは床に散乱していた本に足を取られ、転倒してしまった。

「うわっ」「ば、バネッサ!」

 転倒してしまったバネッサを見兼ねて前方を走っていたムラクは立ち止まり急ぎ彼女の許へと駆け寄る。

「大丈夫か?」「大丈夫……と、言いたいけど今ので足を捻ったみたい」

 バネッサに声をかけるムラク、だが当のバネッサは床上の本に足を取られて転倒した勢いで足を捻ってしまった様である。

 そんな戸惑っている二人の許に姦姦蛇螺(かんかんだら)が怪しい動きで近付いてきては二人纏めて襲い掛かろうと飛びかかって来た。

「うわァ!」「!」

 悲鳴を上げるバネッサに驚愕するムラク。二人が愕然としていると、其処に赤塚組の幹部である貴史と千春の山崎夫妻が駆け付けてきては襲い掛かってきた姦姦蛇螺(かんかんだら)に向けて銃火器を連射して応戦を展開していく。

 飛び交う銃弾に怯んだ姦姦蛇螺(かんかんだら)は、攻撃の苛烈さに退却していった。

「大丈夫? 二人とも」「怪我は無いかい?」

 千春と貴史が二人に声を掛けると、ムラクが二人にバネッサの状態を伝えた。

「そ、それが……バネッサが足を捻ってしまったらしく」

 これを聞いた貴史はムラクの報告に首を頷かせて言った。

「分かった。バネッサ、だったね。余り無理はしない方がいい。僕が肩を貸すから少しずつ歩きながら移動しよう。その間の戦闘は千春や他の仲間達が受け持ってくれるから、今は君の安全を最優先にしよう」

「は、はい。どうもすみません」

 山崎貴史の提案を素直に受け止めるバネッサは、貴史の提案どおり彼の肩を借りながら少しずつ足を進ませつつ安全な場所まで移動して行った。

 だが山崎夫妻の攻撃を回避した姦姦蛇螺(かんかんだら)は別の標的に狙いを定めた。

「きゃあっ!」

 その運悪く姦姦蛇螺(かんかんだら)の次なる標的になってしまったのが、波野リンコ。

 姦姦蛇螺(かんかんだら)が波野リンコに飛び掛かろうとした瞬間、一人の少年が一直線に波野リンコに猛進してきた。

「波野さん!」

 リンコの許に駆けつけて来たのは細野サクヤだった。サクヤは姦姦蛇螺(かんかんだら)の魔の手がリンコに及ぶ寸前の所で咄嗟に彼女を抱き上げては、一目散に姦姦蛇螺(かんかんだら)の許から遠ざかる。

「はぁ、はぁ……だ、大丈夫だった?」「えっ、う、うん……」

 充血しきった疲労感に満ちる面立ちで問い掛けるサクヤに、リンコは彼の表情と姫抱っこに戸惑いながらも返答した。

 一方で波野リンコに襲い掛かろうとしていた姦姦蛇螺(かんかんだら)の周囲に聖龍隊や赤塚組の面々が包囲しては攻撃を展開していた。

「喰らえ、喰らえッ」

 激しく銃撃を浴びせ続ける大将たち赤塚組。しかし姦姦蛇螺(かんかんだら)は自然と上半身への攻撃はかわしつつ、下半身の攻撃は大して効き目がなかった。

 そんな中、聖龍隊や赤塚組の攻撃を受けながらも姦姦蛇螺(かんかんだら)はまた新しい非力な獲物を見つけてしまう。

 それは鹿島ユノだった。姦姦蛇螺(かんかんだら)は本棚や手摺を大蛇の下半身で這いる様に移動してはユノに急接近していった。

「アアーーッ」「きゃあっ」

 口を大きく開けて6本の腕を前に突き出して身構えながら突進してくる姦姦蛇螺(かんかんだら)にユノは頭を下げて縮こまってしまった。

 だが姦姦蛇螺(かんかんだら)がユノに襲い掛かる寸前で、聖龍HEADの一人である堂本海斗が武器である剣で姦姦蛇螺(かんかんだら)の攻撃を防いではユノの窮地を救い出す。

「い、今の内に早く……!」「は、はい……」

 堂本海斗の咄嗟の救援に鹿島ユノは戸惑いながらも返答すると急いでその場から離れる。

 だが姦姦蛇螺(かんかんだら)の攻撃を海斗が前に突き出している剣で防いでいたが、姦姦蛇螺(かんかんだら)は二本の腕で海斗の剣を受け止めつつ残りの4本の腕で海斗の上半身を掴んでは頭上に高々と持ち上げてしまった。

「う、うわッ」

 軽々と自分を持ち上げてみせる姦姦蛇螺(かんかんだら)の剛腕に海斗が驚いていると、その海斗を持ち上げていた姦姦蛇螺(かんかんだら)が海斗の剣を掴んでは投げ捨てると同時に持ち上げていた海斗を自分の人間の部分である上半身で抱きしめてみせると、それと同時に海斗に強烈なベアハッグつまりは鯖折りで痛め付け始めたのだ。

「ぐわッ……」

 背骨だけに留まらず肋骨にまでも強烈な痛覚が走る海斗は、姦姦蛇螺(かんかんだら)のベアハッグから逃れようと自力で相手の頭部にエルボードロップを噛まし続ける。しかし当の姦姦蛇螺(かんかんだら)には全く効いている様子が見られず、姦姦蛇螺(かんかんだら)は更に腕の力を強めて6本の腕力で海斗の骨を軋めていく。

 と。海斗が姦姦蛇螺(かんかんだら)に捕らわれ強烈なベアハッグで締め付けられているその時、2階のガラス張りの小部屋が並ぶフロアからジュピターキッドが武器である茨の鞭を振り付けては姦姦蛇螺(かんかんだら)の首に鞭を巻き付けた。

「うぬッ」「ぐっ……」

 力をいっぱいに込めて鞭を引っ張るジュピターキッドに対し姦姦蛇螺(かんかんだら)は首を締め上げられていく度に喉が圧迫され息苦しく感じ始めていた。すると喉を締め付けられていた姦姦蛇螺(かんかんだら)の腕が自然と緩まり、姦姦蛇螺(かんかんだら)に鯖折を喰らっていた堂本海斗がようやく解放された。

「かはっ」

 胸に背中と同時に強烈な力で締め付けられていた海斗は、激痛から解放された瞬間に止まっていた呼吸を口から吐く様に再開する。

 一方のジュピターキッドは2階のフロアから鞭で姦姦蛇螺(かんかんだら)の首を締め付け続け、更にはより力を強めて鞭を引っ張り上げては姦姦蛇螺(かんかんだら)の喉を締め付けていく。

 しかし喉を締め付けられる姦姦蛇螺(かんかんだら)は大人しく喉を締め付けられ窒息させられるものかと、6本の内の上部4本の腕で逆に鞭を掴んでは強引に引っ張り返してきた。

「うっ……な、なんて馬鹿力だ」

 引っ張られそうになる鞭を引き寄せられない様に腰を入れて引っ張り返すジュピターキッド。

 だがジュピターキッドが腰に力を入れて抵抗するも空しく、相手の姦姦蛇螺(かんかんだら)は6本の腕から連なる腕力で強引に鞭を引っ張ってはジュピターキッドを2階のフロアから引き摺り下ろした。

「うわ!」2階から引き摺り下ろされ、そのまま1階の書物フロアに落とされたジュピターキッドは背中を痛めてしまい、思わず痛む箇所を擦った。

 しかしジュピターキッドが痛みに意識が向いている隙に姦姦蛇螺(かんかんだら)が下半身の大蛇の部分でジュピターキッドを捕らえては、そのまま締め上げていった。

「ぐわぁ!」

 蛇に巻き付かれ締め上げられる獲物の如く、蛇の部分で体を締め上げられていくジュピターキッドは余りの激痛に悶絶する。

「参謀長!」と、其処に先ほどジュピターキッドの行動で振り解かれた堂本海斗が再び剣を手にして、今度は自身がジュピターキッドを助け様と駆け付けてきた。

 そして駈け付けた海斗は剣でジュピターキッドを締め上げる姦姦蛇螺(かんかんだら)の蛇体を突き刺した。だが姦姦蛇螺(かんかんだら)の蛇体の鱗が予想以上に硬く、海斗の剣は余り鱗を貫通できなかった。

「か、硬い……!」

 想定外の鱗の硬さに動揺する海斗。だが、そんな剣で攻撃してきた海斗に気付いた姦姦蛇螺(かんかんだら)がジュピターキッドに続いて海斗までも大蛇の下半身で巻き付いて来ては強烈な蛇腹で締め付けてきた。

「ぐは……ッ」

 強烈な締め付けに悶絶する海斗。だが姦姦蛇螺(かんかんだら)は締め付ける力を緩める事無くジュピターキッドと海斗の二人を締め続けた。

 二人を締め付けながら1階を悠々と動き回る姦姦蛇螺(かんかんだら)。其処に締め付けられ苦しんでいる二人を救おうと赤塚組の面々が駆け寄っては姦姦蛇螺(かんかんだら)に銃撃を開始する。

「撃て撃て! 何としても二人を助けるぞッ」

 頭領の大将の掛け声を切っ掛けに一斉射撃を放つ赤塚組。しかし銃撃による弾丸までも姦姦蛇螺(かんかんだら)の強固な鱗には余り効果が出なかった。

「なんて奴だ! 殆ど効果がないぞ」

 銃弾を下半身の大蛇部分に直撃しても尚平然としている姦姦蛇螺(かんかんだら)の蛇体の頑丈さに驚きを示すテツ。

 すると其処に助っ人の如く駆け付けてきたメタルバードが赤塚組の面々に言い放った。

「上半身だ! 上半身の人間の部分を狙えッ」

 そう言った瞬間にはメタルバードの右腕はレーザー銃へと変形し、姦姦蛇螺(かんかんだら)の上半身である女体に狙いを付けた。

 一方の赤塚組もメタルバードの提案に従い、女体の部分に銃口を向けて狙いを絞って狙撃した。

 メタルバードの光線銃、そして赤塚組の銃撃を女体の上半身に受けた姦姦蛇螺(かんかんだら)は忽ち怯み、下半身の蛇体で締め付けていたジュピターキッドと堂本海斗を解放すると否や真っ先に逃げ去ってしまった。

「お前たち、大丈夫か?」

 振り解かれ床に投げ出されたジュピターキッドと海斗に駆け寄り声を掛けるメタルバード。

 すると声を掛けられてジュピターキッドと海斗は未だ体に残る痛みに耐えながらメタルバードに返事をする。

「あ、ああ。何とかね」「ウッ、肋骨がまだ痛む……」

 ジュピターキッドも海斗も未だ体に残る痛みで苦悶の表情を浮かべていた。

 その頃、聖龍隊と赤塚組の面々は逃げ出す姦姦蛇螺(かんかんだら)に追撃を続けてた。

「攻めて攻めて攻めまくれッ! 蛇体は硬いが上半身の女体には攻撃が効く。人間の部分を集中的に攻め立てろ!」

 総長メタルバードの指示の元、聖龍隊の隊士達も赤塚組の面々も室内を素早く徘徊し続ける姦姦蛇螺(かんかんだら)へと追撃し続ける。

 そんな折、追撃を逃れ続ける姦姦蛇螺(かんかんだら)の視界に先ほど襲い掛かった鹿島ユノの姿が運悪く入ってしまった。ユノを視界に捉えた姦姦蛇螺(かんかんだら)は追撃から逃れながら床上を逃げ回る鹿島ユノに再び牙を向いた。

「シャアアーーッ!」

 姦姦蛇螺(かんかんだら)がユノの頭上に迫る。

「うわあっ!」

 一方のユノは再び自分に襲い掛かってくる姦姦蛇螺(かんかんだら)に対して反射的に身を伏せてしまう。

 と。鹿島ユノが身を伏せた、その時。「えいッ」ユノに襲い掛かる姦姦蛇螺(かんかんだら)の真上から、本棚によじ登った出雲ハルキが大量の分厚い書物を姦姦蛇螺(かんかんだら)の頭部目掛けて放り投げた。

 姦姦蛇螺(かんかんだら)は頭部に分厚くて重量のある書物を大量に直撃され、思わず怯んでしまった。

「ユノ! 今の内だ、早く!」「う、うん!」

 本棚の上からユノに呼び掛けるハルキ。ユノはそんなハルキの咄嗟の行為に感謝しつつも力強く返答すると真っ先に姦姦蛇螺(かんかんだら)から離れた。

 ユノが姦姦蛇螺(かんかんだら)から離れた直後、ハルキが放り投げた書物を頭部に受けて怯んでいる姦姦蛇螺(かんかんだら)に聖龍隊と赤塚組が一斉攻撃を仕掛けた。

「今の内だ! 撃ちまくれッ」

 大将の声を合図に赤塚組も聖龍隊も姦姦蛇螺(かんかんだら)の女体の部分に銃弾を浴びせていく。

 だが人体の弱い部分に銃撃を浴びても尚、姦姦蛇螺(かんかんだら)は倒れる事無く銃撃で紅く染まった女体で銃弾を放ってくる一団に迫ってきた。

 すると接近してくる姦姦蛇螺(かんかんだら)に対してドラゴンキッドが電撃を帯びた拳で蛇体の部分を攻撃しては応戦した。

「はァ!」カンフー特有の強烈な拳による打撃は蛇体の強固な鱗で半減されたが、拳に纏わせた電撃は見事に姦姦蛇螺(かんかんだら)を感電させた。

「キシャアァ……!」電撃を喰らった姦姦蛇螺(かんかんだら)は強烈な痺れを感じては苦悶の表情を浮かべる。

 しかしドラゴンキッドの電撃を直に喰らった姦姦蛇螺(かんかんだら)は感電しながらも再び室内を徘徊しながら戦闘を行う者達の追撃から回避しつつ同じ空間にいる獲物を執拗に狙い続ける。

 

 そして室内を素早く徘徊しながら、姦姦蛇螺(かんかんだら)は逃げ惑う新世代型達を追い回していく。

「きゃあっ!」「こ、琴浦! 兎にも角にも走るんだッ!」

 悲鳴を上げながら逃げ惑う琴浦春香に対して、彼女の先を誘導する真鍋義久は半ば混乱しながら涙ながらに走り続ける。

「うわぁっ」「み、御舟さん。早くコッチに」

 琴浦春香たちと同じく共に行動しながら逃げ続ける御舟百合子と戸室大智。

「きゃっ!」「こ、コウサカさん」

 逃げ惑う中で転倒してしまうコウサカ・チナを気遣い彼女に歩み寄るイオリ・セイ。

「あ、あなた……!」「走るんだ! 立ち止まっては格好の獲物だ」

 必死で室内を逃げ惑いながら妻であるイオリ・リン子の手を引っ張って駆ける夫のイオリ・タケシ。

「れ、レイジ! 早く走って。逃げなきゃ!」「わ、分かってるから、そう手を引っ張るなって」

 一方此方では真逆で婚約者のレイジの手を引っ張って先を走り続けるアイラ・ユルキアイネン。

「へ、へへ。キララ、お前は何が有っても俺が守るから安心しろッ」

「ふふ、頼りにしてるわよ。フェリーニ」

 誰もが恐怖に犇く中、半ば無理強いして恋人のアイドル名キララこと本名ミホシに声をかけるリカルド・フェリーニに対し、ミホシは愛想笑いで言葉を返した。

「つ、月影! 急いで走るんだ」「は、はい。先輩……」

 後輩の月影ちありを誘導しつつも一緒に走り続ける真田幸介。

「うわあっ」「ひッ」

 追跡してくる姦姦蛇螺(かんかんだら)から必死に逃れようと走り続ける涼野いとと神浜コウジ。

「く、栗山さん! 無茶はしないで……」

「平気です。ですから先輩は御先に逃げてください」

「き、君を置いて逃げれる訳無いじゃないか!」

 迫り来る姦姦蛇螺(かんかんだら)に一人で立ち向かおうとする栗山未来に問い掛ける神原秋人。だが当の未来は結晶化させた自身の血による太刀を姦姦蛇螺(かんかんだら)に向けて戦意を示していた。そんな未来を一人残して先に逃げれる訳無いと彼女に言い切る秋人。

 すると言い合いをしている二人の許に、助けに来たと言わんばかりに博臣と美月の名瀬兄妹が馳せ参じる。

「栗山さん、一人で無茶な真似はしないで!」

「み、美月先輩……」

「栗山さん、アッキー。俺と美月の事も忘れないでくれよ」

「ひ、博臣。美月も……」

 助けに馳せ参じた名瀬兄妹に未来も秋人も唖然としつつも、名瀬兄妹の方は共闘する気満々であった。

 更に其処へ追い回されてばかりでは自分達のプライドが無いと感じた鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)率いる本能字学園生徒会の強者達が揃って駆け付けた。

「栗山未来! それに名瀬兄妹よ。我等、本能字学園生徒会も助太刀する! 共に勝利を勝ち取ろうではないか!!」

「へへっ。私達も加われば、あんなヘビ女、楽勝よっ」

「俺達の力にお前等の戦力を加算すれば、勝率などどうとでもなる!」

「フフッ。久々にいい汗を掻けそうだね」

 皐月と共に駆け付けてきた生徒会の蛇崩乃音(じゃくずれののん)/蟇郡苛(がまごおりいら)/猿投山渦(さなげやまうず)の三名も参戦の意志を表す。

 そんな戦意溢れる4人を見て、名瀬博臣が本能字学園の面々に言った。

「ふぅ、頼もしいね。それじゃ戦闘は一緒に乗り切りますかね、本能字学園の皆さん」

 これに対し鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)は力強く返答すると同時に博臣に話し返した。

「うむ! だが名瀬博臣よ。見た所、いや感じた所、貴様は相当のシスコンの様だな。妹ばかりに気を取られず、常に敵である姦姦蛇螺(かんかんだら)に意識を集中させておけッ!!」

「ッ……相変わらず手厳しい事言うね、貴女は。そう思わないか三つ」

「いえ。私も鬼龍院さんと同じ意見よ、兄貴」

「ガァ~~ッン……」

 鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)からの忠告に苦笑を浮かべつつ話を妹の美月に振ろうとした博臣であったが、先に美月から自分も鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)と全く同意見であると述べられ愕然とする博臣。

 そして先ほどから姦姦蛇螺(かんかんだら)に応戦する纏流子に加わり、新たに栗山未来たちや鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)率いる本能字学園生徒会の手勢が戦力に加わり、姦姦蛇螺(かんかんだら)との攻防はより一層激しさを増していった。

 

 だが、そんな殺伐とする戦況の中で大将は混乱する室内の状況を見渡して一人思い更けていた。

 それは先ほどから何かと目に付く東郷リクヤ×篠目アカネ、法条ムラク×バネッサ・ガラ、細野サクヤ×波野リンコ、出雲ハルキ×鹿島ユノ、琴浦春香×真鍋義久、御舟百合子×戸室大智、イオリ・セイ×コウサカ・チナ、リン子×タケシのイオリ夫妻、レイジ×アイラ、フェリーニ×キララことミホシ、月影ちあり×真田幸介、涼野いと×神浜コウジ、リカルド・フェリーニ×キララことミホシ、栗山未来×神原秋人……等々、多くのカップリングキャラクターを大将は目にしていた。

 そして行き場の無い憤りと虚しいだけの孤独感が大将を襲い、カップルに感じた苛立ちを募らせてはその鬱憤を洗い浚いブチ撒ける真情で姦姦蛇螺(かんかんだら)に銃撃を容赦なく浴びせていく始末。

 そんな恋人のいない虚しさを晴らす様に小銃を撃ち続ける大将に、哀れを感じたミズキが近寄っては彼の肩を叩いて大将に優しく言葉を掛けた。

「大将……大丈夫よ、うん」

 だが、このミズキの言葉に大将は銃を乱射しながら反論してしまった。

「ウッセェよ! 俺と同じで独り身のテメェに気遣われたくねェわッ!! この婚期遅れ!」

 この大将の一言にミズキの堪忍袋の緒が切れた。そしてミズキは仏頂面で大将の脳天に空手チョップを喰らわした。

「ブッッ!!」脳天に強烈な空手チョップを喰らった大将は悶絶してしまう。

 一方その頃の姦姦蛇螺(かんかんだら)は攻撃を浴び続けて上半身の女体が血塗れになっていってた。しかし未だ活発に動き回り、弱っている様子は見られず仕舞いであった。

「クッ、しぶといな」

「半獣半身の生体兵器として造られているのか、スタミナが並の比じゃないみたいだ」

 応戦するメタルバードとジュピターキッドは予想以上の姦姦蛇螺(かんかんだら)の体力に驚きを感じていた。

 当の姦姦蛇螺(かんかんだら)は女体の上半身を自身の血で紅く染めていく一方で未だに周囲にいる人々への執着心を表沙汰にしては狙い続けてた。

「来るならコッチに来い!」

 非力な新世代型達の方に行かない様、あえて挑発する纏流子。そんな彼女の挑発に上手く乗った姦姦蛇螺(かんかんだら)は流子に迫り来る。

 流子の眼前まで迫ってきた姦姦蛇螺(かんかんだら)は6本の手から連なる鋭利な爪先で流子を引っ掻いて攻撃しようと攻め立てる。一方の流子は片太刀バサミで応戦しつつも姦姦蛇螺(かんかんだら)の6本の爪による攻撃を防いでいた。

 だが一瞬の隙を衝かれて、姦姦蛇螺(かんかんだら)が流子の片太刀バサミを払い除けては無防備となった彼女を6本の腕で掴み上げては強靭な腕力で締め上げていった。

「ぐあ……ッ!」

 強烈な痛みが上半身の骨と云う骨を軋ませながら襲ってきて、流子は余りの激痛に悶絶してしまう。

 そんな流子の窮地を救ったのが、以外にも普段敵対している鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)であった。

「はァッ!」

 皐月は得物である縛斬で姦姦蛇螺(かんかんだら)の左側の3本の腕を斬り付け、その斬撃に姦姦蛇螺(かんかんだら)は思わず流子を放してしまった。

「き、鬼龍院……お前」

「勘違いするな、纏流子。今は我等が一致団結してこの施設から脱出しなければいけないのだ。悔やむが、貴様はかなりの戦力になる人員だ。なので死なす訳には行かない……それだけの事だ」

 自分の窮地を救ってくれた鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の行動に愕然となる纏流子。しかし当の鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)は流子に強面で己の真意を告げるのだった。

 

 と。此処でメタルバードが姦姦蛇螺(かんかんだら)に攻撃を仕掛けた。

 メタルバードは姦姦蛇螺(かんかんだら)の上半身に抱き付くと、自身の三角形の頭部を丸みを帯びた形状に変形させて、その頭で思いっきし姦姦蛇螺(かんかんだら)の頭にヘッドバットを幾度も直撃させていく。

 鋼の肉体からなる強烈な頭突きを喰らい続ける姦姦蛇螺(かんかんだら)は激痛に悶絶し、どうにか自身にしがみ付いているメタルバードを振り解こうと猛烈に暴れ出した。

 姦姦蛇螺(かんかんだら)が暴れる度に1階の本棚に体をぶつけては棚に並べられてた書物が床に散乱していく。そんな惨状の中でもメタルバードは暴れまわる姦姦蛇螺(かんかんだら)から振り払われない様、力いっぱいに抱き付いては同時に姦姦蛇螺(かんかんだら)の首を締め付けて攻撃していく。

 だが遂に姦姦蛇螺(かんかんだら)は6本ある腕の一番上の右腕でメタルバードの首根っこを掴むと、強引に引き剥がしてはメタルバードを片手で軽々と投げ飛ばした。

「うわッ!」投げ飛ばされたメタルバードは本棚に追突し、床に腰を下ろしてしまう。

「メタルバード!」「大丈夫ですか?」

 投げ飛ばされた拍子に本棚に激しく追突したメタルバードを心配して新世代型達が駆け寄ってくる。

「あ、ああ。何とかな……」

 気遣われるメタルバードは痛みに堪えながら心配して駆け付けてくれた新世代型達に平気そうに振舞う。

 そんなメタルバードに駆け寄ってきた新世代型の一人、真鍋義久が真剣な面立ちでメタルバードに質問した。

「め、メタルバード。訊ねたい事があるんだけど……」「……なんだ?」

 真剣な面差しで問い掛けて来る真鍋にメタルバードも同じ真剣な表情で訊き返す。

 そして真鍋義久は思い切ってメタルバードに己が抱いている疑問をぶつけて、問い質した。

「か、姦姦蛇螺(かんかんだら)って…………胸、おっきかったですか?」

「うむ! 俺の触覚では、おそらくDカップはあったぞ!」

 自らが抱いた疑問をぶつける真鍋、そしてその疑問に対して真剣に答えるメタルバード。実に生き生きとした眼差しで問答を行う二人には、現時点での新世代型同士のテレパスによる感知共有能力を超えた共感が生まれていた。

 そんな破廉恥極まりない双方の問答に冷ややかな顔を浮かべる周囲の人々。そしてそんな破廉恥な問答を真剣にやり合う二人にミラーガールが目付きを鋭くさせて物申した。

「二人とも……こんな時に何をフザケタ問答しちゃっている訳?」

 明らかに立腹した様子のミラーガールを前にしても尚、メタルバードと真鍋義久は堂々と言い放った。

「何をって……健全男児のコミュニケーションだ!」「そうだ!」

 更に二人はこう指摘する。

「エロスとは……健全で健康な男児が持つ優良な意志そのものである!!」

「その通りです!」

 互いに共感し合う二人は、その格好までも完全に一致させながら平然と堂々と己の性への意識を述べていった。

 そんなメタルバードと共感する真鍋に怒りを感じていた琴浦春香に、ミラーガールが後ろから穏やかな口調で話し掛けてきた。

「春香ちゃん」「……はい?」

 暗い面差しで返答する琴浦春香に、ミラーガールは殺気に満ちた笑顔で言った。

「後であの二人……一緒にシめない?」「……ふ、はい。お願いします」

 ミラーガールの提案に琴浦も苛立ちを募らせていた顔をふっと消し去って満面の笑みで言葉を返した。

 そんな美少女二人の会話を間近で聞いていた面々は、自然と表情から血の気が引いていくのであった。

 

 一方でメタルバードを振り払った姦姦蛇螺(かんかんだら)は書物の間で聖龍隊の面々と対峙していた。

「喰らいなさいッ」「ふぅ~~っ」

 ブルーローズと氷麗(つらら)が二人同時に姦姦蛇螺(かんかんだら)へ氷と凍て付く息吹を放ち、姦姦蛇螺(かんかんだら)を本棚へと凍て付かせて身動きを取れなくした。

 其処へ今度はトリコがガラ空きとなった姦姦蛇螺(かんかんだら)の蛇体、その真裏の部分の蛇腹目掛けて一斉に強烈な拳を連打していく。

「釘パンチ 100連発!」

 俊敏な拳での連続打撃を姦姦蛇螺(かんかんだら)に浴びせるトリコ。

 トリコの強靭な拳を喰らい続けて、さすがの姦姦蛇螺(かんかんだら)も痛烈に苦しむ。

「グオオ……ッ」

 蛇腹への連打を受けて悶絶する姦姦蛇螺(かんかんだら)。そしてその姦姦蛇螺(かんかんだら)が苦痛にもがいている隙を狙い、マカとブラック☆スターが斬りかかりに飛び付いた。

「このっ」「うおりゃッ!」

 覇気迫る表情で斬りかかる二人の斬撃を女体に受けて、姦姦蛇螺(かんかんだら)の上半身からは大量の血が二ヶ所の切傷から噴き出した。

「シャアアアアァァ……」

 大量の血飛沫を噴き出す姦姦蛇螺(かんかんだら)は、血飛沫を撒き散らしながら苦痛で辺りを暴れ周り、余計に周辺の書物や棚に血飛沫が飛散する。

 そんな大出血状態の姦姦蛇螺(かんかんだら)を真上の2階の場から纏流子/鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)/そして栗山未来の刃物を得物として用いる三人の美少女等が一斉に飛び降りては悶え苦しむ姦姦蛇螺(かんかんだら)の女体に各々の刃を突き刺した。

「ぐはアアアアアアァァァ……!!」

 三本の刃が人間の女体に突き刺さり、断末魔の雄叫びを上げる姦姦蛇螺(かんかんだら)。彼女の胸部から貫かれた刃は三本とも腹部にまで貫通しており、貫通している腹部からは夥しい程の血が流血していた。

 そして大量の出血を二つの切傷と三つの刃による貫通で垂れ流す姦姦蛇螺(かんかんだら)は、まるで山を崩すかの如くその巨体を地に沈めた。

 

 一行は、こうして苦闘の末に異形の怪異 姦姦蛇螺(かんかんだら)を倒す事ができた。

「ふぅ~~……何とか倒せた……」「怖かった。ホントに怖かったよ~~……」

 涙目で己の心情を赤裸々に語り明かす大将に続いて、同じく姦姦蛇螺(かんかんだら)に多大な恐怖を抱いていた山崎貴史も涙ながらに本音を口に出す。

 兎にも角にも、姦姦蛇螺(かんかんだら)を追いかけ追い回されて疲れ果てた皆々に、メタルバードが疲労感漂う表情で言った。

「みんな。休んでいる暇は無いぞ……次は扉の前に積もっちまった本や倒れた棚を起こして、扉を開けねェと」

「はぁ、やれやれ……」

 メタルバードに告げられ、大将を始めとする皆は草臥れた様子で扉前の散乱した書物や倒れてしまった本棚を起こす作業に取り掛かった。

 扉前の散乱した物を退かす作業をしながら、メタルバードは散乱している書物の一冊に自然と目が行ってしまった。

 その書物には、半獣半人などの人外の生物が持つ強靭な生命力について記されていた。

 そして、その書物には更に半獣半人を模した生体兵器にも同等の生命力を持たせる事が可能ではないかと云う項目であった。

 しかもその項目には、人外の生命体が持つ強靭な生命力を人工的に製造した生体兵器にも持たせる場合、あのD-ワクチンが最も有効であると記されていたのだ。

 かつての相棒である小田原修司の身体能力を飛躍的に向上させ、遂にはその細胞そのものを本来の人間とは全く異なったものに変異させてしまったD-ワクチン。

 この研究施設の至る所で見受けられるD-ワクチンの生体兵器への投与や使用。これに対してメタルバードはかつての相棒が自ら摂取し、そしてその肉体から更なる強力な物質酵素として抽出されたD-ワクチンの乱用に凄まじい憤りを感じていた。

 だがその反面、彼は同時にこれこそが修司が求めていた世情であるのかもしれないと感じてしまった。何故なら小田原修司は己の必要価値を世間に認めてもらいたいという強い願望が昔からあった。それ故に自身が必要とされる為に自らD-ワクチンを接種し、そして自身の肉体から更なる強力なD-ワクチンを抽出させて己の必要価値を世間に認可してもらいたい狙いがあったのかもしれない。

 メタルバードは今ここにいない元相棒から生み出されてきたD-ワクチンの生体兵器への使用と、そのD-ワクチンで変異してしまった遺伝子を基に生み出された存在達について思考を巡らせていた。

 と。そんなメタルバードにセーラーマーズが声をかけてきた。

「ちょっとバーンズ。みんながドアの前を片付けているのに一人だけ本読んでいないで、手伝ってよ」

「あ、ああ。分かった」

 セーラーマーズから言われ、メタルバードは読み更けていた本を放り投げると即行で扉前の片付け作業に取り組んだ。

 

 

 

 

[口裂け女]

 

 姦姦蛇螺(かんかんだら)との書斎での死闘を繰り広げた後、無事に書斎から脱出できた一行は再び先へと進んだ。

 だが行けども行けども何も無い殺風景な通路と視界にメタルバードを含む一部の者達は嫌気が差していた。

「あ~~あ、何処まで行きゃ出口なんだろうな……」

「な、何だか……今は何階なのかも分からなくなってきやがったぜ」

 メタルバードも大将も、双方共に方向感覚が失っていき自分達の現在地すら把握できない状態に陥っていた。

 この時、聖龍HEADのコレクターズもアニメタウン本部との衛星通信が繋がらなくなり、更に施設のコンピューターにハッキングして施設内の地図を入手していた犬牟田宝火(いぬむたほうか)の方も自分達の現在地が特定できず困惑している状況であった。

「どっち行く?」「オレにも分かんねェよ」

 訊ねてくる大将の発言にメタルバードは仏頂面な顔で答える。

 仕方なく、そのまま通路を一直線に進むと、その先に広がっていたのは更に殺風景なコンクリの床や壁が剥き出しになっている空間であった。

「な、何なんだ此処は?」「改装前のテナントビルか?」

 殺風景な現場を見て愕然と成るアツシに対し大工家業の生まれである大将は思った事を率直に言ってしまう。

 そんなコンクリが剥き出しの殺風景な大広間を前に、皆が唖然としていると……暗闇から不気味な物音が響いてきた。

 

 チョキン チョキン…… 金属音に近いその音は微かに皆の耳に入ってきた。

「ん? 何だろう、この音」

 涼野いとが物音に気付き反応するが、その肝心の音は更に近付いてきた。

 ジョキン ジョキン……ジョッキン

 不気味で威圧感のある金属同士が擦れる音に、新世代型達の緊張は張り詰めていた。それと同時に近付いてくる金属音に聖龍隊と赤塚組の警戒の念も募っていく。

「な、何? この音……」「先輩、怖い……!」

「こ、怖いからって……二人とも、私を前に押し出して後ろに隠れるんじゃないよ」

 近付いてくる不気味な金属音に恐怖を覚え、思わずギュービッドの後ろに隠れつつ彼女を前に押し出してしまう背後のチョコと桃花。

「こ、今度は何が来るってんだ……!」

 度々出現しては猛威を振るってくる 怪異なる存在と戦い続け、拳銃を身構えて常時臨戦態勢に入るジェイク・ミューラー。

 そして威圧的な金属音は急に皆の近場に接近してきた。

 ジョキジョキジョキジョキ…… 『!!』急接近してきた物音に敏感に反応する一同。そしてその音の正体が次第に暗闇の中から全貌を現してきた。

 

 兼ねてより聖龍隊や赤塚組の様な戦闘慣れしている面々は暗闇での視界も慣れており暗闇でも先が視える程の眼力を備えていた。しかしそんな一行は元より、新世代型達も先ほどから薄暗い施設内を徘徊していた為に視力が暗闇に慣れてきては薄らと暗闇の中に浮かび上がる対象物を捉える事ができていた。

 そんな一行が目にした音の正体……それは全身を血の様な鮮やかな真紅の洋服で着飾り、手には白い手袋を。そして頭には縁の大きい帽子を被り、顔には大きなマスクを着用している黒髪の女性が鋏片手に迫ってきていた。

『ひィッ!』

 突如暗闇から現れた女に驚愕するメタルバードや大将たち。

 そして前方まで迫ってきた女は右手に鋏をチョキチョキと鳴らしながら左手で顔の大きなマスクに手を掛けると、そのまま前方の一同に訊ねてきた。

「ねぇ……私」『…………』

 女からの問い掛けに絶句し固まってしまう一同に、女は意を決したかの様に言い放った。

「私……綺麗?」

 威圧感を臭わせる言動でそう言った女は、同時に手に掛けていたマスクを顔から剥がした。

 すると女の鮮やかな紅い口紅が人目を引く口が耳元まで裂けていた!

『ぎゃあああッ!!』『く、口裂け女~~ッ!』

 悲鳴と絶叫が飛び交う中、メタルバードが口裂け女の名を口に出した新世代型達に涙ながらに話し掛けた。

「はははっ、やっぱ君達でも口裂け女は知っているか! そりゃそうだよな、メジャーな都市伝説で誰でも知っていて当然だもんな」

 新世代の二次元人達ですら周知している口裂け女の御登場に半ば自棄になりながらも泣きながら訴え掛けるメタルバード。

 そして案の定、目の前に出没した口裂け女は片手に握っている大型の鋏で眼前の一同に襲い掛かってきた。

『うわあッ!』

 しかしこの時、目の前に出現した口裂け女に対する恐怖心から咄嗟にメタルバードを前に突き出して盾にしてしまう大将を始めとする新世代型の面々。

 前に押し出されたメタルバードは口裂け女の鋏による突き刺し攻撃を顔面から直に受けてしまう。

「イデデッ、イデデデ! おい、ちょっとやめてくれ。オレに刃物は効かねェんだから無駄な攻撃はしないでくれッ、イテテ。マジで地味に痛いだけなんだって」

 と、自分に鋏を突き刺してくる口裂け女に訴え掛けるメタルバード。そして口裂け女も鋏での顔面攻撃が効かない事にようやく気付いたのか、攻撃の手を止めた。

 しかし口裂け女は顔面への攻撃だけが効かないと悟ってしまったのか、今度はメタルバードの腹部に向けて鋏を突き刺してきた。

「イテテッ、だから! オレに打撃攻撃は効かないっての! いい加減学べっ!」

 と。メタルバードが自身への打撃は無効であると主張していると、此処でメタルバードに幾度となく突き刺していった鋏が彼の鋼鉄の体に負けて刃先が欠けてしまった。

「…………………………」

 武器に使用していた鋏が欠けてしまい、唖然とする口裂け女。皆も急に大人しくなった口裂け女の次なる行動に意識が向いていた、その時。

 何と口裂け女は洋服の懐から今度は二丁の鋏を取り出しては、両手に持って切っ先を怪しく鳴らし始めた。

「ウソッ!」

「おいおいッ! まだ武器を隠し持っているなんて反則じゃねェのか?」

 両手に持ち構えた鋏を鳴らし始める口裂け女を前にして、メタルバードは目の前の事実に信じられず、大将は衝撃を受けつつも隠し武器に付いて否定する発言を述べた。

 そして両手に花ならぬ両手に鋏を手にした口裂け女は鋭利な二刀流の鋏の切っ先を向けながら迫ってきた。

「き、来たーーーーッ!」

 只ならぬ威圧感と不気味な形相を前に完全に戦意を失ってしまってた大将ら赤塚組の面々。

 だが、そんなすっかり脅え切っては戦意を喪失してしまった赤塚組を尻目に、聖龍隊のそれもHEADの面々が特攻を切った。

「行くぜ、テメェら! 聖龍隊の最強戦力HEADの実力を見せ付けてやろうぜッ!!」

『オウッ』

 総長メタルバードの掛け声にHEAD一同が威勢のいい返事で応えると、HEADは一斉に口裂け女に向かっていった。

 更にこの時、総長メタルバードは自分達の後輩や部下にあたる他の聖龍隊士の面々に告げて置いてた。

「他の奴等は今回は休憩しとけッ! その代わり俺達の戦いっぷり、しっかりと目に焼き付けておくんだぜ!」

『は、はい!』

 総長からの指示に他の聖龍隊士一同は一瞬戸惑いながらもハッキリと返答する。

 そして遂に口裂け女と聖龍HEADの戦いが幕を開いた。

 

 聖龍HEADはまず御得意の特殊能力にて口裂け女を攻撃しようと試みた。だが、そんなHEADメンバーに総長のメタルバードが告げた。

「お前ら! 後輩や新世代も見てるんだ。たまには基本に戻って体だけで戦うぞ!」

『え……っ』

 メタルバードの思わぬ発言にHEAD全員が唖然とした。

 そしてメタルバードは有言実行の如く、体だけ即ち体術だけで口裂け女に挑みかかる。

「おりゃッ」

 まずは小手調べと言わんばかりに口裂け女に飛び膝蹴りを顔面に喰らわすメタルバード。

 飛び膝蹴りを受けて口裂け女は衝撃で後ろの方へと足をよろけて下がる。

 一方のその他のHEADは肉体だけでの戦闘に多少の戸惑いを感じながらも、メタルバードに賛同する形で口裂け女に対して格闘術で応戦を始めた。

「そりゃッ、そりゃッ」

 ジュピターキッドは得物である鞭を振り回し、口裂け女の顔面に直撃させながら彼女を怯ませつつ後退させて行く。

 そして後方へと退いていく口裂け女の隙を衝いてジュピターキッドは口裂け女の眼前まで迫ると同時に高々と跳び上がり、そのまま脳天に両拳で強烈な一撃を浴びせてく。

 ジュピターキッドに続けと、今度はキング・エンディミオンとセーラームーンがタッグを組む形で口裂け女に共闘を仕掛けていく。

 エンディミオンが口裂け女の顔面や腹部に強烈な拳や掌底を連続で浴びせていき、一瞬の隙を衝いてパートナーのセーラームーンに合図を告げる。

「今だセーラームーン!」「はぁっ!」

 エンディミオンの掛け声と共に空中に投げ飛ばされる口裂け女に、セーラームーンが空中で追撃を浴びせる。

 二人の連携攻撃を浴びて床に激しく叩き付けられた口裂け女。だがHEADの追撃が止む事はなかった。

「そぉりゃぁ!」

 床に叩き付けられた口裂け女に追撃と言わんばかりに木之本桜が可愛らしい声を発しながら踵落としの体勢で踵を頭上の位置まで上げる。

 そして一気に踵を振り下ろし、床上の口裂け女に強烈な踵落としを喰らわせた。

 さくらの踵落としを喰らった口裂け女は衝撃を地面に伝導しつつ、その下の床には巨大な窪みが生じてた。

 そんな普段は見せない聖龍HEADの一部が披露した強烈なまでの動作を前にして愕然とする新世代型や赤塚組。

「お、お前ら……必殺技とか、特殊な攻撃技以外にも、そんな戦い方もできる訳なのか?」

 本来なら決して披露すらしない筈の強烈な体術での戦闘を目の当たりにした大将が愕然としながらも問い掛けると、メタルバードが平然とした態度で答えた。

「まあな。オレ達の必殺技って、殆どが妖魔とか怪人とか人ならざる者に対して使用する強力な技だからな。従来の犯罪者とか相手にする場合は、必殺技とかじゃなくて、こういった格闘技の数々で対応するのが一般的なんだ」

「へ、へぇ……」

 一般の犯罪者や人間に対して用いると言う強力な格闘技に大将を含む赤塚組や新世代型達は呆気に取られてしまってた。

「そ、それにしても……うさぎちゃん、確かあなたセーラームーンの時は色々と光線とか遠距離からの技しか使えないと思っていたけど、まさか格闘のスキルまで鍛えていちゃった訳?」

「は、ははは……ま、まぁね」

 旧友の月野うさぎことセーラームーンの意外な格闘センスを前にした海野なるは驚きの余り訊ねてしまう。そんななるにセーラームーンは苦笑を浮かべながら視線を反らしつつ答える。

「さ、さくらちゃん……確か、さくらちゃんの持っているカードにはパワー(力)やファイト(闘)とかの格闘に使用できるのも有ったと思うんだけど、それは使ってないんだよね」

「う、うん。基本的に、その二種類のカードを使う場合は私の格闘技術が及ばない相手や、大人数の相手と素手で戦う場合しか使ってないの。前の総長でもある修司さんからも極力カードの使用は抑えて自力で戦える様になれって言われてて……」

 前総長から特殊な力ではなく自力で戦えと言われていた事実を述べる木之本桜に、質問した旧友の山崎千春は呆然としてしまうばかりであった。

 と。HEADの面々が特殊能力無しで口裂け女を倒して見せたと思われた、その時である。

「……ウゥ」

 何と床に叩き付けられ、追撃で強力な踵落としを喰らった口裂け女が立ち上がったのだ。

「な、何だと!」「アレだけ派手に痛め付けたのに、もう……」

 大打撃を与えたというのに立ち上がる口裂け女を前に俄かに信じ難い心境のエンディミオンと蒼の騎士。

 そんな平然と立ち上がる口裂け女を目にしたメタルバードは一つの解釈を立てる。

「コイツは……痛みに対して免疫があるようだな。少し厄介だが、みんなで協力すれば何とかなるだろう」

 痛み等に対して免疫を持ち、ある程度の強靭さを兼ね備えた生体兵器である事を察したメタルバードは、更にHEADでの連携攻撃が欠かせない戦況であると自負する。

 そして立ち上がった口裂け女は懐から鋏を取り出すと、それを無尽蔵に周囲に投げ付けてきた。

「うわッ」「鋏なんか投げて来やがったぞ!」

 次々に懐から取り出していく鋏を連続で周囲のHEADに投げ付けていく口裂け女の凶行に戸惑う七海るちあと堂本海斗。

 しかし口裂け女の鋏の投げ付け攻撃は止まる事を知らず、黙々と周囲のHEADの面々に鋭利な鋏を投げ付けていくのだった。

 そんな投げ付けられてくる鋏をセーラーウラヌスは短刀で弾き落としては防いでいく。

 だが口裂け女の猛攻は止まらず、今度は再び両手に鋏を構えて聖龍HEADに向かってきた。

「ああーーッ!」

 奇声を上げながら猛進する口裂け女が向かったのはキューティーハニーであった。

「くっ……」

 両手の鋏で切りかかって来る口裂け女の凶行に苦戦を強いられるキューティーハニー。

 すると其処に追い詰められる仲間のキューティーハニーを救おうとセーラーマーキュリーが助けに向かった。

 マーキュリーはキューティーハニーに切り掛かる口裂け女に跳びかかり、強烈な肘打ちを喰らわして吹き飛ばした。

 肘打ちで吹き飛ばされ、体勢を崩しながらも立ち止まる口裂け女は自分に肘打ちを浴びせたマーキュリーを睨み付ける。

 そして今度はマーキュリーに向かって二刀流の鋏を振り回しながら突進してきた。だが、突進していく口裂け女の頭上に移動していた蒼星石が真上から口裂け女の髪の毛を掴み掛かると、そのまま突進する口裂け女の勢いと反動を利用して、大きく口裂け女を空中で縦に振り回しては床に叩き付けて見せた。

「よしッ、良くやったぞ蒼星石!」

 見事、口裂け女を振り回し床に叩き付けた蒼星石の偉業に親指を立てて称賛するメタルバード。

 だが蒼星石に髪の毛を掴まれ振り回されては床に叩き付けられた口裂け女は再び平然と立ち上がり、周囲の聖龍HEADを見回す様に睨みを利かせていく。

「クッ、これじゃ埒が明かねェな……みんな! フォーメーション・タッグだ! 隙を見て二人同時の連携攻撃を咬ましてやろうぜ」

 中々倒れない口裂け女を前にしたメタルバードは、HEADの皆に二人組での連携攻撃を差すフォーメーション・タッグの指令を下す。

 HEADは皆、口裂け女に意識を集中させ常に万全の戦闘体制を組む。

 そんなHEADに口裂け女は性懲りもなく鋏を振り回しては果敢にHEADの面々に切りかかって行く。

 鋏を振り回す口裂け女に迫られるミラーガールは寸での所で鋏をかわして行き、そして手に持っているミラー・シールドで鋏を防ぎながら口裂け女の猛攻に耐え忍んでいく。そして次の瞬間、ミラーガールは盾を利用して口裂け女の隙を衝いた一瞬に高く跳び上がり、そのまま盾で口裂け女の脳天を殴り付けた。

 脳天に盾による強烈な一打を浴びた口裂け女は千鳥足になりながらも立ち続ける。

 すると未だに足元がふら付いている口裂け女にセーラーネプチューンが左肘打ちや膝打ちによるキッチン・シンクを口裂け女に御見舞してやり、ネプチューンに続いてプルートとサターンの二人も口裂け女に強烈な攻撃を浴びせていく。

 幾度となく強烈な打撃を浴び続けた口裂け女はグロッキーな状態となり、そんな口裂け女に宝生波音が顎に飛び膝蹴りを喰らわすと「今よ!」と反対側にいた洞院リナに呼び掛けて、リナは波音の攻撃で吹っ飛んできた口裂け女の上半身に華麗なマーシャル・アースキックを浴びせてこれまた床に沈めてみせる。

 さすがに此処まで聖龍HEADの猛攻を浴びて立ち上がれないだろうと一同が思った、その時。痛みに強く体力も桁違いの口裂け女が立ち眩みしつつも、その二本の足で立ったのだ。

 だが立ち上がった直後の口裂け女にジュピターキッドが口裂け女の顔面に鞭を浴びせて怯ませていくと、怯んだ隙にがら空きの腹部に強烈な拳を何度も連打していき、壁際まで追い詰めると今度は口裂け女の両肩を掴んで腹部に強烈な肘打ちを御見舞してやる。

 腹部への強烈な肘打ちキッチン・シンクを喰らった口裂け女は崩れる様にその場に倒れ込む。

 

 しかし床に倒れ込んだ口裂け女は、しぶとく再び立ち上がる。

 そんな現状を前にした大将が思わずメタルバード達に呼び掛けた。

「おいバーンズ! そもそも相手は人間じゃない生体兵器なんだ。気絶させるくらいの打撃技じゃなく本気で殺す勢いで戦って早々に決着つけろやッ!」

 この大将の真情にメタルバードも素直に受け入れては再びHEADの面々に指令を下す。

「そうだな……おい、お前ら! 此処からは息の根を止める程度に武器での戦闘に切り替える。だが特殊能力の無駄使いは抑えておけッ」

 メタルバードの指示を皮切りにHEADの各々が個人個人の武器を手にしては、その狙いを口裂け女に向ける。

「うう~~~~ッ!!」

 不気味な唸り声に近い荒い声を発しながら鋏を翳して迫り来る口裂け女。そんな口裂け女の振り回す鋏を自身の武器である剣で受け止め防いでいく魔法騎士の光/海/風の三人。

 そして一瞬の隙を衝いてまず光が口裂け女に剣による一撃を浴びせる。

「ぐあッ」

 苦痛による喘ぎ声を発する口裂け女。そして光に続いて海と風の二人も流れる様に無駄のない動きで口裂け女に剣の刃を斬り付けていった。

「がああぁッ!」

 光に続いて海と風の斬撃も浴びた口裂け女が声を上げると、荒げた声を上げる口裂け女の背後からミュウミントが弓矢で狙っていた。

 そして弓矢を引くと、疾風の如き猛烈な威力の矢が口裂け女の背面に直撃した。

「ぐゥッ!」

 背中に矢を受けた口裂け女は、これまた激痛で耳まで裂けた口から唾を漏らすほど苦しむ。

 苦痛に顔を歪める口裂け女に今度は結を先頭にコレクターズの三人がバトンを振り翳して跳びかかって来た。

 そして互い互いにバトンで口裂け女に殴打を浴びせていく結/春奈/愛の三人。

「ぐぎぎぎ……ッ」

 苦痛からか裂けた口から唾を垂れ流す口裂け女は、先ほどから自分を痛めつけて来る聖龍HEADの面々に顔を振り向かせては鋭い眼光で睨み付ける。

 だが口裂け女がHEADの面々を睨んでいる最中、メタルバードが口裂け女に駆け寄ってきた。

「オラッ! 今度は俺様が相手だ!」

 メタルバードは両手を鋭利な太刀に変形させて、その刃で口裂け女を斬り付けつつ猛進していく。

 接近しつつ幾度となく斬り付けて来るメタルバードの猛攻に四苦八苦する口裂け女。

 更にメタルバードに加勢しようとミラーガールもミラー・ソードを振り翳しては口裂け女に接近して斬りかかって行く。

「ぐはッ、ぐふッ……」

 二人同時に連続で刃を斬り付けられて行く口裂け女は傷を負う度に怪しく裂けた口から血反吐を吹き出す。

 そして次の瞬間「アッコ、今だ!」「ええ!」メタルバードの掛け声に応答したミラーガールは跳び上がり、口裂け女の頭の毛を鷲掴みするとそのまま顔を持ち上げ晒された喉の箇所をミラー・ソードで斬り付けた。

「ぐふ……ッ」喉を斬り付けられ苦悶の表情を浮かべる口裂け女。

 だがミラーガールとメタルバードの攻撃はこれで終わりではなかった。

「今度は俺だ! アッコ、下がってろッ」

 メタルバードの指示にミラーガールは口裂け女の喉を掻っ切った直後に後方へと身を退く。そしてメタルバードはミラーガールが後方へ退いたのを確認してスグ、自身の太刀に変形させてる両手を口裂け女の上半身に思いっきり突き刺した。

「ぐふッ!」

 胸部の両側に同時に太刀を突き刺された口裂け女は強烈な激痛に襲われ、口から更に大量の血反吐を吹き出した。

 そして胸部に太刀の両手を突き刺したメタルバードは、惨いが二刀の太刀を突き刺したまま口裂け女の体を下に向けて切り裂いた。

「ぐあああッ!!」

 絶叫を上げると同時に上半身の巨大な切傷から大量の血を吹き出す口裂け女。その惨状を目の当たりにして、赤塚組も新世代型達も蒼然となった。

 そしてメタルバードは口裂け女の体を腰の辺りまで切り裂くと、突き刺していた両手の太刀を引き抜いて同時に元の手の形に戻した。その際、メタルバードは口裂け女の傷から噴出する返り血をまともに浴びてしまい、ほぼ全身が真っ赤に染まってしまった。

 喉元だけでなく胸部から腰の辺りまで切り裂かれた口裂け女は双方の切傷から夥しい出血を噴出しながら、遂に床にうつ伏せで倒れ込み完全に動かなくなった。

 そして大量の返り血を浴びて全身が紅く染まってしまったメタルバードは、此処でマーキュリーやウォーターフェアリー、マーメイドメロディーズの面々に平然とした顔で言った。

「おおい、水系の能力者のお前ら。俺の体に付いた返り血を流してくんないか? このままじゃ返り血で真っ赤になったまま移動しなきゃならねぇよ」

「ふぅ、仕方ないわね」

 メタルバードの要望に溜息を衝きながら承諾するマーキュリーを始めとする水系の能力を使える面々は、強烈な水圧をメタルバードに向けて放射した。

「うぷ、うぷぷぷ……っ」

 強力な水圧による放水を浴びたメタルバードは、すっかり綺麗な銀色の光沢に体が戻っていた。

 

「ふぅ、やっと終わったぜ」

 一仕事終えたかのように呟くメタルバードの一言を聞いて、赤塚組も新世代型達もそんなメタルバード達HEADに歩み寄って声を掛ける。

「お、お前らなぁ。別に素手で戦わなくても良いんじゃないの? 手っ取り早く能力使って一気に片付けろよ」

 不満そうに語る大将の話にメタルバードが自分達の正論を語り返す。

「これはな、修司の代から奴に教わった事なんだが……特殊な能力や術ってのは、あくまでもオマケみたいなモンなんだ。特殊能力ばかり頼っていては戦士として万全ではないと語る修司の思考から、今みたいに特殊能力無しでも対等に渡り合える様、常日頃から肉体を鍛えているんだよ。オレたち聖龍隊は」

「そ、そんなモンか」

「まぁ、これは修司の心配性な点であるが……もし敵に修司同様に特殊能力を無力化できる奴がいたり、はたまた相手が特殊能力を防ぐ何らかの策を持っている場合は能力無しでも自力で戦闘が行える様に昔っから修司に鍛えられちゃっているのよ」

「は、はぁ……」

「それにな。オレ達の特殊能力による強力な技を普通の人間である犯罪者に使う訳にはいかないだろ。そういう時に今の様なコンバットと呼ばれる格闘術を用いた戦闘を犯罪者と対峙する際は重宝しているのよ。昔みたいに今は怪人や怪物相手じゃなく、普通の人間である犯罪者と戦うのが日常だからな」

 メタルバードの聖龍隊内での活動による事情と、それに対して用いられる様々な格闘スキルの応用の幅を目の当たりにして驚きで胸を一杯にする大将たち赤塚組に新世代型の面々。

 すると愕然としていた瀬名アラタが周囲の皆々に声を掛けた。

「ど……どっちにしろ、口裂け女は倒せた訳ですし、先に進みましょうよ」

「そうだな。オレ達HEADも久々に体を動かしたから随分とリフレッシュできたし、先を急ぐか」

 鍛え上げた体を存分に動かして心身ともに気持ちよくなったと豪語するメタルバードの発言に、皆は再び愕然としてしまう。

 そして皆が再び新世代型達を聖龍隊と赤塚組が警護しながら先を進もうとしていると、先ほどのHEADの乱闘振りを見て思い更けていた大将が不意に口を開いた。

「それにしても……さっきのお前等の戦い方。どっかで見た事がある様な気がするんだが」

 するとこの大将の疑問にメタルバードが平然と答えてしまう。

「ああ、それもそうかもな。俺達の格闘技や武器を用いた戦闘の動きは……バットマンの戦い方から探求されたモンで、殆ど動きがおんなじなのよ」

「え……あ、ああ、まぁそうか。バットマンも、そういや特殊能力無しで戦っているからな」

 メタルバードの発言に一瞬戸惑う大将。だがそんな大将にメタルバードは更に驚愕の事実を語り明かす。

「そうだ。だからこそ修司はバットマンの戦法や格闘の動きを緻密に研究して、それを己でも実戦で使える様に訓練したのよ。昔から修司は良く言ってた「能力は所詮オマケ、大事なのは心身を鍛え上げる事に意味がある」とな」

「し、心身を……ね」

「そう、肉体だけでなく精神も鍛えなければ強靭な戦士にはなれないと修司は自覚していた。だから肉体を鍛えると同時に精神も研ぎ澄ます鍛錬も常に行っていたのよ。だからこそ奴は国際連合にも認められた人間兵器にまで成り上がっちゃった訳」

「………………」

「まっ、今ではその修司が独自に学んだ格闘術と戦略を他の聖龍隊であるオレ達にも伝授して、更にその後聖龍隊に加盟してきた後輩や新人勢にも格闘スキルを叩き込んでは、聖龍隊の組織内で延々と伝授されていっている訳よ」

 脈々と受け継がれる聖龍隊内での肉体と精神の強化という鍛錬。その実情を聞いて大将はもちろん、大将の思考から感知してその内情を知った新世代型達も驚愕していた。

 

 と。皆が前進していると真鍋義久がメタルバード達に話し掛けてきた。

「ところで……結局は、あの口裂け女の都市伝説って本当なんですかね? 前々から耳にした時から気になっていたんですけど」

 この真鍋の疑問に、メタルバードが口裂け女発祥の事実などを踏まえて語り始めた。

「ふむ。口裂け女には色んな噂が飛び交っているからな。例えばポマードが嫌いであるとか、実は姉妹がいるとか……地域によって様々なパターンが発生している」

 更にメタルバードに続いてジュピターキッドも口裂け女の噂に付いて語り始めた。

「口裂け女の噂、都市伝説が発生した当時は今の様に花粉症やインフルエンザ等の大型マスクが広く普及していない時代でね。医療従事者以外、それも若い女性が屋外で顔を大きく覆うマスクをしているだけで恐怖心を煽られる時代背景だったらしいよ」

 更に此処でメタルバードが口裂け女に対する余り知られてない情報を場の皆に話し出した。

「所で……口裂け女の口が、なぜ耳元まで裂けているのかって理由は大半が整形手術による失敗で口が大きく裂けてしまったと広く噂されているが、実はそんな整形手術が発展する前の日本、それも江戸時代には既に口裂け女が出現していたって書物が発見されているんだぜ」

「え!」

「え、江戸時代にもいたって事は、要するに整形手術とか関係なく最初っから口が裂けていた訳!?」

 メタルバードの話を聞いて驚く鹿島ユノやキャサリン・ルース。そんな驚きに溢れる新世代型達にメタルバードは話し続けた。

「その通り。そもそも整形手術で失敗して口が大きく裂けたって言うこと事態が単なる噂だ。口裂け女の噂が広まったのが、ちょうど日本に整形ブームが到来した時期と重なった為この様な噂に発展しちまったんだろうよ。そもそも口裂け女ってのは、江戸時代から目撃されている狐憑きや犬憑きが大元の根源だって説が有力だと俺は思っているぜ」

「い、犬憑き?」

 初めて耳にする狐憑きや犬憑きと云う言葉に首を傾げる直枝理樹たち新世代型達。そんな彼等にジュピターキッドが丁寧に説き伝える。

「狐憑きに犬憑きってのは、狐や犬と言った動物の霊が人間に憑依した状態の事なんだ。狐や犬と言った動物に憑かれて口が耳元まで裂けてしまった症状が、例の口裂け女の噂の元になっているといわれてるよ」

「そ、それじゃ、元々は動物の霊に憑依された人間が口裂け女に変わっていったって事ですか?」

 最初に質問してきた真鍋義久が訊き返すと、再びメタルバードが語り出した。

「その可能性もある。そもそも狐憑きに犬憑きってのは、自分や自分の先祖達が何らかの理由で犬や狐と言った動物を大量虐殺した際の怨念が憑依してしまう現象なんだ。その事例の中には、先祖が大量の狐を殺めた為に生まれながらに口が耳元まで裂けてしまった因果の形で醜い顔になってしまった女性が口裂け女に見られてしまったとも言われている」

「こ、殺した動物の怨念が口裂け女発祥のそもそもの根源……」

 メタルバードが語ってくれた口裂け女発祥の根源たる話を聞いて唖然とする新世代型一同。

 だが、メタルバードは更にこんな説も語ってくれた。

「まぁ、こういった説以外にも上げられるのが「子供の寄り道などを防ぐ目的で親たちがでっち上げた創作の存在」だとも言われてる」

 児童寄り道の防止の為に親族が書き立てた創作上の話が口裂け女の都市伝説の発祥と口に出したメタルバードの発言に、真鍋義久が真顔で冷然と言い切った。

「ようするに……口裂け女もオレたち二次元人と同じ創作上の存在。オレらと全くおんなじって事ですか」

 この真鍋の言葉に一同の空気が一瞬で凍て付いた。しかも、この真鍋の発言にメタルバードは訂正する事無く話し返した。

「まぁ、そうだな……そもそも都市伝説そのものが創作の話で、オレ達もそんな都市伝説上の怪人や怪物と大して変わらない存在なのが現状だしな」

 そう語るメタルバードは自分たち二次元人と都市伝説が同じ創作上の存在で近い種である事を複雑な心境で語るのだった。

 

 

 

 

[八尺様]

 

 都市伝説で最もポピュラーな口裂け女を退治した一行は、更に地上へと足を進ませていた。

 次第にゾンビやトンカラトンなどの生体兵器とも遭遇する事がなくなり、皆の心境は自然と平静さを取り戻していた。だが、それと同時に赤塚組の面々は気が緩み隙が大分生じてしまってた。

「ふぅ、何だかこの辺にはゾンビとか居ないみたいだな。ようやっと一段落してきた所ってとこかな」

 呑気そうに語る大将にメタルバードが大将を始めとする気が緩みっぱなしの赤塚組の面々に忠告する。

「おいおい、呑気な事言ってる場合じゃねェぞ。此処はまだ生体兵器を開発研究していた施設の中なんだぞ。いつ何時、敵が現れても可笑しくないんだから、もっとこう気を引き締めんとかんと」

「言ってる事は理解できるが……なんで最後の方が関西弁やねん」

 メタルバードの忠告を聞いて思わず同じ関西弁でツッコム大将。

 

 するとそんな最中、先ほどから暗闇に目が慣れてきた新世代型達が前方の暗闇の中に何かを発見する。

「アレ? あれ何だろう……」

 能美クドリャフカが前方の闇に薄らと浮かぶ白い物体を指す。

 新世代型一同は前方の闇に浮かぶ白い物体に視線を向ける。

「ん、どうしたんだ、お前ら?」

 大将たち赤塚組の面々も新世代型達が目を向ける方角に視線をずらした。

 更に赤塚組に続いて聖龍隊の面々も次々に新世代型達が顔を向ける方角に視線を送る。

 すると一同が目を向ける暗闇の奥から、白い巨大な物体がジワジワと接近してくるのが確認できた。

「な、何だ? あの白い物体は……遠くてハッキリと見えねェ」

 白い物体に危機感を感じたジェイクが、その白い物体の方角に銃口を向けながら常に発砲できる体勢に入る。

 徐々に近付いてくる白く巨大な物体。更には白い物体が接近してくると同時に耳に聞こえてくる謎の声。

「……ぽ、ぽぽ……ぽぽっぽ……」

 男に近い謎の声までも白い物体と共に近付いて来て、新世代型達の恐怖は自ずと高まっていった。

「な、何? この男の人の声……」

 確実に近付いてくる声に多大な恐怖心を覚え、蒼褪める田所恵。

 更に謎の声は皆の許に接近し、それと同時に前方の白い巨大な物体も近付きつつあった。

「ぽぽ、ぽぽっぽ、ぽ、ぽっ……」

 そして謎の声と白い物体が、暗闇の中から完全にその全貌を現した。

 頭から爪先まで白い格好をしており、白いワンピースに白くて広い縁の大きな帽子。だが何より皆の目を奪ったのが、全長約2m40cmもあろうかとう長身の黒髪の長い女性であった。

「ぽぽ、ぽぽっぽ、ぽ、ぽっ、ぽぽぽぽ……」

 その長身の女は男の様な声で不気味な笑い方を発していたのが、謎の声の正体であった。

 そして女の長身を見上げたメタルバードが、その身長の高さから女の正体に気付く。

「こ、これって。確か、ネットで良く語られている奴で……八尺様」

「はっ、八尺様って確か!」

「ネット内で専ら話題になっている都市伝説の女性じゃないですか!!」

 メタルバードの発した八尺様の名に、大将も細野サクヤも愕然とした。

 

 八尺様とは。

 八尺(約2m40cm)はある身長と、頭に何かを被っている女性の怪異。

 話の中では白いワンピースを着て帽子を被った姿で良く登場している。

 男のような声で「ぽぽぽ」という不気味な笑い方をするのが特徴で、主に小学生などの若い男児を狙い付ける習性があるらしい。

 

「ぽぽ、ぽぽぽぽっ……」

 そんな八尺様は相も変わらない不気味な男声の笑い方をしながら、一行の許まで迫ってきた。

「き、来やがったぞ!」

 ジェイクが銃を構えて臨戦態勢で聖龍隊や赤塚組に言う。

 迫る八尺様に聖龍隊も赤塚組も一斉攻撃の体勢に入る。

 そして次の瞬間、前方の八尺様が突如として足を速めて急接近してきた。

「ぽぽぽぽぽぽっぽっ……」『き、来たーーーーッ!』

 突如として勢いを増し猛進してきた八尺様を前にして恐怖で一気に血の気を引く新世代型達。

 そんな声を荒げて猛進してくる八尺様に聖龍隊と赤塚組、さらにジェイクが一斉射撃を行った。

「撃てッ!」

 メタルバードの掛け声と共に暗闇に光る紅い閃光。だが飛び交う銃弾を掻い潜って八尺様は更に一行の許へと駆け寄ってきた。

「聖龍隊! 新世代型を護れッ」

 自分達が警護する新世代型達を死守する様にと命ずるメタルバードの指示の元、新世代型達の前に壁として立ちはだかる聖龍隊。

 だが八尺様は、そんな警護する聖龍隊や赤塚組の面々には見向きもせずに片手で容易く払い除けつつ前へと猛進する一方であった。

「うわッ」「きゃっ」

 八尺様に容易く払い除けられた聖龍隊や赤塚組の面々が弾かれ床に倒れ込む最中、八尺様は眼前に迫る新世代型に狙いをつけては猛進する。

『うわぁっ!』「に、逃げてっ!」

 迫り来る八尺様に脅え身動きができない新世代型達。そんな彼等を見て先ほど八尺様に弾き飛ばされたミラーガールが新世代型達に逃げるよう呼びかける。

 そして遂に八尺様の手が新世代型の体に差し掛かった。

 

「うわあぁぁぁぁ……」

 暗闇に木霊する絶叫。その声に新世代型の面々は誰もが目を閉じ、恐怖で目を開く事ができずにいた。

 だが、勇気を出してゆっくりと瞼を開いて視界を明けてみると、目の前には想定外の光景が展開されていた。

 その光景とは……「うわあっ! 助けてぇぇ!!」何と瀬名アラタが八尺様に捕まってしまい、そして何故か抱き締められていたのだった。

「あ、アラタ!?」

 何ゆえアラタが八尺様に抱き締められているのか思わず困惑してしまう鹿島ユノ。

 その他の皆も何ゆえ八尺様が捕まえたアラタを単に抱き締めているのか理解できず困惑するばかりであった。

 一同思わず呆然と見据えていると、八尺様に抱擁されていたアラタの様子が変わっていった。

「ッ……く、苦しい……っ」

 抱擁されてるアラタの表情から見る見る内に血の気が引いていき蒼褪めていった。

 皆も様子が可笑しいアラタの状況に気付き始める。

「あ、アラタ!」「一体、どうした事だ?」

 苦しみ始めるアラタの様子に切羽詰る星原ヒカルと出雲ハルキが戸惑っていると、血の気が引いていくアラタの身体を精密機械化した眼球で捕捉するメタルバードがアラタの身に起こった事態に驚いた。

「た、大変だ! アラタの小僧、八尺様にただ抱き締められているんじゃなく、その八尺様の腕力が想像以上に強くて胸を圧迫されて窒息しかかっているんだ!」

「な、何ですって!」

 メタルバードの釈明を聞いて事態の深刻さを気付く美都玲奈や他の新世代型たち。だが皆が取り乱している間も尚アラタの呼吸器官は圧迫され、呼吸する事すら侭ならなかった。

「ぅ……」

 真っ青な顔に変貌していくアラタに危険を察知したメタルバードが、アラタを抱き締め圧迫させてる八尺様に攻撃した。

「そりゃッ」「ッ!」

 メタルバードの飛び蹴りを喰らった八尺様は吹っ飛び、その拍子にアラタが解放された。

「おっと」飛び蹴りの衝撃で八尺様が放したアラタをメタルバードが片腕で受け止める。

 そのメタルバードとアラタの許に、アラタの親友達であるハルキやヒカル、サクヤそれに担任の美都玲奈が駆け付ける。

「アラタ!」「アラタ、大丈夫か?」

「しっかり!」「しっかり、瀬名君」

 懸命にアラタの名を呼び続ける4人。するとアラタは蒼々とした顔で瞼を開いて目を覚ました。

「うぅ……」「あ、アラタ!」

 目覚めるアラタに喜びを表にする4人。そんな4人とアラタにメタルバードが言った。

「よし、大丈夫そうだな」

 そしてアラタを床に優しく寝かせるとメタルバードは先ほど自分が吹き飛ばした八尺様の方を見据える。その視線の先では吹き飛ばされた八尺様もメタルバードを見据えては双方とも対峙した。

 だが八尺様の視線はスグにメタルバードから逸れる。それに気付いたメタルバードは八尺様の視線を追って彼女が見据える先に顔を向けた。

 すると其処にはアラタを心配し彼に寄り添うハルキにヒカル、サクヤの面々が居た。

 更に4人の少年に視線を向けた八尺様は即行で彼等の許に向かって直進した。

「! ハルキ、ヒカル! それにサクヤ、そっちに行ったぞ!!」

 4人の許に駆け出す八尺様の存在を知らせるメタルバード。その声に気付いたハルキ/ヒカル/サクヤの三名は自分達の許に駆け寄る八尺様に顔を向け、その直後に八尺様が3人の眼前まで迫るのだった。

『う、わあぁッ!!』大声を発して驚愕する3人。

 3人の絶叫が響き渡る中、3人に迫った八尺様はアラタに続いて星原ヒカルを捕まえては再び力強く抱き締めた。

「うわッ、何で今度は僕に……!」

 強靭な腕力で締め上げられるヒカルは苦痛にもがきながら苦悶の表情を浮かべる。

 そんな最中も八尺様はヒカルを抱き締めると同時に強く締め上げ、彼の体を押し潰す勢いで抱き抱える。

「ぐっ……!」「ヒカル!」

 苦悶の面差しを浮かべるヒカルを前にして現状に不安を感じるハルキ。

 すると今度は赤塚組のミズキが背中にジェットエンジンを出現させた状態で高速で駆け付けては八尺様に体当たりしてヒカルを助け出す。

「わっ」「ヒカル、大丈夫か!」

 ミズキに体当たりされた拍子に投げ出されたヒカルの許にハルキが駆け寄る。

 しかしミズキのジェットエンジンによる強烈な体当たりを受けても八尺様は倒れる事無く、オマケに再度アラタやヒカルを含む新世代型の少年達を見詰めては襲い掛かってきた。

「わあッ!」「来たァ!」

 迫り来る八尺様に恐怖し逃げ惑う新世代型達。しかし不思議な事に八尺様は逃げ惑う新世代型達の中で、何故か若い少年しか襲い掛かって来なかった。

「あ、アレ?」「な、何で私達の方には来ないのかしら……?」

 逃げ惑う少年達を前にしながら、何ゆえ自分達だけが襲われないのか疑問に思う鹿島ユノにキャサリン・ルース。

 そんな不思議に思い首を傾げる皆を前に、次に八尺様に捕まってしまったのはイオリ・セイであった。

「わあっ」「せ、セイ!」

 八尺様に捕らわれ悲鳴を上げるセイを呼びかけるレイジ。その最中にも八尺様の両腕はセイの体を圧迫させるほどの強力な腕力で締め上げていた。

「うう……っ」

 悲痛な苦悶の表情に顔を一変するセイ。そんな彼を救出するべく、セーラーマーズが火炎技で八尺様の背後から攻撃する。

「うわァ!」

 背面に灼熱の炎を浴びた八尺様は思わず締め上げていたセイを放してしまう。解放されたセイは急ぎ八尺様から離れる。

 この状況の中で、メタルバードは都市伝説で語り継がれる八尺様の噂と現状の八尺様の行動から、八尺様の習性を見切った。

「そ、そうか! みんな! 八尺様は小さい男の子、特に中学生以下の少年を狙い付ける噂がある! 要するに強烈なショタ好きなんだ! ショタキャラは急いで八尺様から離れろッ、捕まっちまうぞ!!」

『ええぇッ!!』

 このメタルバードの解釈を聞いた少年及びその他の面々は余りの事実に衝撃を受けた。

「って! タダのショタ好きなだけかいッ!!」

 話を聞いた大将も余りの内容に反射的にツッコミを入れてしまう。

 だが皆が衝撃を受けている最中も、八尺様はショタキャラを執拗に追い駆け続けてた。

「わあッ!」「た、頼む! 何とかしてくれぇ~~ッ」

 八尺様に追われ逃げ惑いながら助けを求める毛利十四郎に真田幸介。

 だが逃げ続けるショタキャラを溺愛しているのか、八尺様は目の色を変えてショタキャラ達を追い回し続ける。

「ぽぽっ、ぽぽぽっ!」

 狂喜に満ちた笑い声で迫る八尺様に一層恐怖を覚えるショタキャラ達。

 そんな逃げ続ける新世代型のショタキャラ達を助けるべく、聖龍隊のルーキーズが行動を起こす

「ルーキーズ! 何としても新世代型のショタ達を助けるのよっ、ゴーゴー!」

 ミラールの指揮の下、ルーキーズは八尺様の前に立ちはだかり同時に周囲を取り囲む。だがこれが更なる問題を発生させてしまった。

 自分を取り囲むルーキーズの面々を見定める様に見回す八尺様。すると彼女の視界にルーキーズのアラジン/アリババ/ジョーイ/沢田綱吉の姿が入ってしまい、彼等が八尺様の好みに合ってしまったのだ。

「ぽ! ぽぽぽぽっ!」

 目の色を激変させる八尺様は、まず目の前に居たアラジンに即行で抱き付いた。

「う、うわぁ!!」「あ、アラジンッ!」

 八尺様に捕まってしまったアラジンを目の当たりにして絶叫するアリババ。

 

 そんな次から次へと襲われ続けるショタキャラの危機的状況を前にしながら、八尺様の標的に成らずに済んだ新世代型の真鍋義久が、八尺様に抱き締められるアラジンを目にして厳つい顔を浮かべてた。

 真鍋が見詰めるアラジンの状況は、アラジンの顔が八尺様の巨乳に押さえ付けられ圧迫されている現状であった。

 先ほどから八尺様に狙われ続けるショタキャラに続いて、今度は八尺様の巨乳に近々と顔面を押さえ込まれるアラジンを目の当たりにした真鍋は胸中に溜まっていた己の本心を身を震わせながら赤裸々に叫んだ。

「……何故だ。何ゆえ……何故、美少年それもショタキャラばかり狙うんだーーーーッ!!」

 己の真意を隠さずに吐き散らす真鍋の突然の言動に驚く琴浦たち。

「ま、真鍋君?」

 琴浦を含むその他の新世代型達が愕然と真鍋を見詰めると、真鍋は更に己の心中に溜まる本音を吐き出した。

「何でショタキャラばっか抱き締めるんだ! 何でガキばっかり、その豊満な胸に埋めてはくれないんだ……! テメェら羨ましいぞ、チクショーー!!」

『……………………」

 己の下心を包み隠さず洗い浚い吐き散らす真鍋の本音を聞いて、琴浦を始め全ての者たちが唖然と冷めた表情を真鍋に向けた。

 そんな真鍋が己の本心を吐き出す最中も、八尺様は次々にショタキャラを襲い掛かる。

「ぽぽっ、ぽぽぽっ」『うわあああぁあ!』

 アラジンを抱き締めたまま不気味な笑い声を発しながら迫ってくる八尺様に追われながら逃げ惑う浅野匠や平和泉らショタ達。

 一方でショタキャラばかりを追い掛け回す八尺様の現状を目の当たりにして、メタルバードとジュピターキッドは思わず呆然としてしまってた。

「なぁ、ジュニア。オレは今まで色んな怪異とこの施設で戦ってきたが、ショタキャラだけに執拗なまでの愛着を抱いては衝動的に抱きついて来るのは初めてなんだが……お前はどう思う?」

「うん、まぁ……色んな生体兵器がいるって事だね。うん」

 二人は呆気に取られた様な表情で固まってしまってた。

 更に聖龍HEADのセーラーヴィーナスまでも呆然とした顔で呟いた。

「女のショタと男のロリ、どっちが悲しい。って言うけど……あの八尺様に対してはどういった対応すれば良いのか、美奈子分かんない」

 するとヴィーナスの傍らに立っていたセーラーマーズも冷めた目付きで呆然としながらヴィーナスに答えた。

「大丈夫よ美奈子。私もこの状況にどうすれば良いのか分からないから」

 双方共に、変な方向に混乱していく現状への対応に大変困惑していた。

 だが、そんな混乱の状況下で八尺様に捕らわれたままのアラジンを救出するべく仲間のジョーイと沢田綱吉ことツナが八尺様に向かっていった。

「アラジンを放せ!」「うおォッ」

 ジョーイはヒーローマンで強烈な打撃を八尺様に御見舞し、ツナは炎の拳で八尺様の懐を殴り付けては、八尺様が抱き付いて捕らえていたアラジンを開放させる事に成功する。

 しかし攻撃を受けた八尺様は、今度は自分に攻撃してきたジョーイとツナに気が向いてしまい、何と二人に迫ってきては同時に二人を抱き締めてしまう。

「ぽぽっ」「うわッ」「うぐっ」

 八尺様に抱き付かれたジョーイとツナは、八尺様の豊満な胸に顔を押し当てられ身動き出来なくなってしまった。

「うおおおおおおおおッ! アンタら羨ましいぞ、クソーーッ!!」

 八尺様の巨乳に顔を埋められるジョーイとツナを目の当たりにした真鍋は再び本性剥き出しの本音を叫び上げる。

 だが当のジョーイとツナは八尺様の胸に顔を押し当てられている為、鼻と口が塞がってしまい呼吸が侭ならない状態であった。

 次第に息苦しくなりもがき始める二人。だが八尺様は二人の事は気遣わず無我夢中で抱き締めては自身の胸に二人の顔を押し当てる一方であった。

 そんなジョーイとツナの命の危険を察知した蒼の騎士が二人を抱き締める八尺様に斬りかかった。

 八尺様は蒼の騎士の振るった剣をかわす為、抱き締めていた二人を放しては身を退けた。

 蒼の騎士は剣を構えて切っ先を八尺様に向けつつ彼女と対峙する。一方の八尺様は蒼の騎士の行為を美少年を溺愛する自分の好意を邪魔したものと認識し、蒼の騎士に敵愾心を向け始めた。

 そして蒼の騎士は剣を八尺様に振るい始め、彼女を斬り付けようと立ち回る。だが八尺様の方も蒼の騎士が振り付けてくる剣戟を身を反らしてかわし続ける。

 

 一進一退の攻防が蒼の騎士と八尺様の間で繰り広げられる最中、二人の闘いの間にあの男が割って入ってきた。

「うおおッ! お願いだッ、俺もその巨乳に押し当ててくれーーッ!!」

「真鍋!?」「真鍋くん?」

 蒼の騎士と格闘している八尺様に一直線に猛進する真鍋を目の当たりにして、メタルバードも琴浦春香もその他の皆々も愕然とした。

 そして真鍋が八尺様の眼前まで突っ込み、その豊満な胸に飛び込もうとした、その瞬間。

〔バチィッ〕「ぶッ」

 何と八尺様は自分に突っ込んできた真鍋を片手で軽々と払い退けられてしまった。

「真鍋ーー!」「真鍋君っ!」

 派手に八尺様に弾き飛ばされた真鍋を目の当たりにしてメタルバードと琴浦が絶叫する。

 一方の片手それも手の甲で叩かれた真鍋はそのまま壁まで吹っ飛ばされ、顔から派手に壁に激突してしまう。

「あ…………」壁に激突し悶絶してしまう真鍋。

 と。其処に気絶寸前の真鍋を気に掛けてメタルバードと琴浦が駆け寄ってきた。

「真鍋君!」「お前、無茶しすぎッ!」

 琴浦とメタルバードの声に反応し意識を取り戻す真鍋。「う~~ん……」だが真鍋が意識を取り戻している最中、蒼の騎士と対峙していた八尺様は蒼の騎士そっちの気で再三にショタキャラ達を追い掛け回していた。

「ぽぽぽぽっ!」『うわああぁ!!』

 執念深く追ってくる八尺様に神浜コウジや速水ヒロ達は涙目になりながら必死に逃げ続けてた。

 しかしショタキャラ達が目の色を一変させた八尺様に追われる様を目の当たりにしたその他の新世代型達や聖龍隊士らは呆気に取られ、ただただ呆然と立ち尽くしてしまう現状であった。

 そして再び八尺様はショタキャラを2名ほど捕らえては、その豊満な胸に押し当てる勢いで抱き締めてきた。

「ぽぽぽっ」「うわあッ!」「だ、誰か! 助けてぇ」

 狂喜に満たされる八尺様とは正反対に恐怖で悲鳴を上げる仁科カヅキと東郷リクヤ。

 だが、そんな二人の泣き叫ぶ現状を目の当たりにしていた新世代型達は、先ほどから続く八尺様の狂乱に呆れ果てては冷め切った表情で見据えるばかりであった。

「……もう、どうでも良くなってきちゃった」

「そうだね。本音を言うと、もう付き合いきれない」

 聖龍隊のミラールと新世代型の一条蛍は、泣き叫びながら逃げ惑い続けるショタ達とそのショタ達を溺愛し追い回す八尺様のやり取りを傍観しては呆れて物も言えなくなってしまってた。

「はは、何だか男子達も満更じゃ無さそうだし、このまま放っといても問題ないかも」

「そうだね。男に取っちゃ、あんな巨乳に埋もれて窒息死するなら本望だろうしな」

 八尺様に抱き付かれ顔を胸に押し当てられつつ窒息寸前の男子達を見て、苦笑するチョコとギュービッドが呆れながら語り合う。

 だが其処に介抱されてた真鍋が気を取り戻しては再び八尺様に無謀にも向かっていった。

「バブバブーー、僕ちゃんまだ子供なんでちゅ! おっぱいに埋もれさせてーーッ」

 事もあろうに赤ちゃん言葉を吐きながら幼い子供のフリをし、一直線に八尺様に突っ込んでいく真鍋。そんな彼の無謀なまでの行為にメタルバードは呆れながらも必死に真鍋を止めた。

「やめろ真鍋! 絶対にまた同じ結果だッ!」

 メタルバードの言うとおり、八尺様の眼前まで迫ってきた真鍋を八尺様は邪魔者の如く片手で払い除けては、また真鍋を弾き飛ばしてしまう。

「ぶほっ」

 頬を思いっきり叩かれ、これまた壁に弾き飛ばされ激突してしまう真鍋。

 壁に減り込み肉体に激痛が走る真鍋に再度メタルバードと琴浦が駆け寄り、真鍋に呆れながらも言葉を掛けていく。

「真鍋ッ! お前って何で変な方向に度胸があるんだッ!!」

「真鍋君っ、いい加減にしてよぉ!」

 メタルバードと琴浦が気を失う真鍋に話し掛けてる最中、遂に八尺様が逃げ惑うショタキャラの一人である速見ヒロを捕まえて強靭な腕力で抱き締め上げる。

「ぐはぁッ……!」

 豊満な胸に顔を押し当てられる喜びよりも強靭な腕力で骨まで響く苦痛を感じて苦しむ始末のヒロ。

 だが速水ヒロが八尺様に捕まり締め上げられている最中、気が付いた真鍋が八尺様に抱き締められるヒロを見て言った。

「お、俺も……俺にも、その豊満な胸の感触を味あわせてくれ……!」

 真鍋義弘、人生最大の心願であった。その言葉を聞いて、介抱していた琴浦春香は釈然と冷め切った表情を浮かべているのに対し、メタルバードの方は真鍋の心からの訴え掛けに己が心情を揺さ振られた。

「真鍋……お前の願い、良く解った。後はオレに任せてゆっくり休め。お前の心願は全世界の男達の願望だ、その願望を叶え様としたお前の奮闘は決して無駄にはしない……見ていてくれ」

 そう熱い言葉を真鍋に伝えると、メタルバードは単身で八尺様に突っ込んでいった。

「そりゃッ!」

 メタルバードが八尺様に体当たりすると同時に、八尺様にしがみ付かれてた速水ヒロはようやく解放された。

 解放されたヒロは急いで八尺様から離れると、それを見届けたメタルバードが八尺様の前方に回っては体を軟体化させて八尺様に絡みついた。

「ぽぽっ? ぽぽぽっ」

 突然自分の体に纏わり付いてきた上に突如として自身を軟体化させるメタルバードを前にして激しく動揺する八尺様。その間もメタルバードは軟体化した体を駆使して八尺様の動きを封じろうと、八尺様の上半身に纏わり付く。

「このッ、このこのッ」「ぽぽぽっ! ぽぽぽぽぽっ!」

 必死に八尺様の胸部に纏わりつくメタルバードに対し、八尺様の方は関心の対象外であるメタルバードを振り解こうと懸命に暴れ回る。だがメタルバードの方も八尺様に纏わり付いては放されまいと必死にしがみ付く。

 だが、そんなメタルバードの必死も空しく八尺様は自分に纏わり付くメタルバードを引き剥がしては力の限り振り回した。

「うおッ!?」

 引き剥がされたと同時に片腕で振り回されるメタルバードは、そのまま八尺様の背後に聳えていた石柱に直撃させられてしまう。

「ッ!」

 石柱に激突したメタルバードはそのまま八尺様に手を放され、床に倒れ込む。

 一方の八尺様は床に倒れるメタルバードに見向きもせず、再び視界にショタ達を捉えては品定めする暇もなく彼等に迫っていく。

「うわあッ!」「また来たーーッ!」

 泣き叫びながら恐怖で逃げ惑うショタ達。そんな泣き叫ぶショタ達の姿も愛らしく見えているのか八尺様は心成しか喜々としていた。

「ぽぽっ、ぽぽぽぽっ」

 益々狂喜に走る八尺様の凶行を止めるべく、聖龍HEADの面々が八尺様に立ちはだかる。

「もうやめなさい! これ以上、男の子達を追い回すのは……」

 八尺様に呼びかけるセーラームーン。しかし当の八尺様は興味の欠片もないセーラームーンを始めとする女性達を前にして、彼女達の間を強行突破しようと突っ込んできた。

「ぽぽぽっ」「逃がさないわよっ!」

 女性陣の間を駆け抜けて強行突破しようとした八尺様の行く手に、龍咲海が他の魔法騎士である光と風と共に剣の切っ先を八尺様に向けて突破させまいとする。

 しかし自分の邪魔をする魔法騎士の三人に怒りを感じたのか八尺様は己の長身を活かして、まず左右端にいる光と風の頭を鷲掴みにするとそのまま二人を床に顔から叩き伏せる。

「光! 風!」

 一瞬で二人を床に沈めてしまう八尺様の実力に驚く暇もなく、今度は海が八尺様に頭上から頭を掴まれては軽々と持ち上げられてしまう。

「う、うわ……っ」

 頭を鷲掴みにされた海は、ちょうど八尺様の目線と同じ位置まで持ち上げられる。その時、海が見た八尺様の瞳は如何にも妖しい真紅の瞳であった。

 海が妖しい真紅の瞳と対面していると、八尺様は海を邪魔者の如く床に投げ捨てる。

「うっ……」床に投げ付けられ痛みで表情を歪ませる海。

 一方その頃、先ほど八尺様にしがみ付いたものの引き剥がされてしまったメタルバードの許に彼を心配して駆け寄る琴浦春香と真鍋義久が声を掛けていた。

「バーンズさんっ」「バーンズさん、しっかりしろッ」「うぅ……」

 二人の声にメタルバードは意識を取り戻す。そして二人に続いてメタルバードの許に駆け寄ってきた他の新世代型達の前で、メタルバードは真鍋に面と向かって話し始めた。

「ま、真鍋……」「はい、何でしょう?」

 訊き返す真鍋に、メタルバードは真剣な真顔で真鍋に伝えた。

「お、お前が命懸けで確かめようとした感触……俺が代わりに確かめてきたぞ」

「そ、それじゃ……! 一体、どの様な大きさで……」

 メタルバードの発言に震える声で訊ねる真鍋。真鍋の質問にメタルバードはハッキリと皆の面前で言い放った。

「D、いや……アレはEはあった!」

「い、E……スッゲェ! 凄いじゃないですかバーンズさん!!」

「ああ、お前もオレも惹き付けられた豊満な胸……まさかEもあったとは、オレも確かめるまで解らなかったぜ」

「バーンズさん!」「真鍋……」

 それぞれの思想が完全に一致した二人の間には何か熱い情熱が芽生えた。そして互いの熱き思いが交錯した二人は、互いの健闘を祝福するかのように手と手を合わせ硬く握手を交わすのであった。

 更にメタルバードは硬い握手を交わした真鍋に燃え滾った瞳で言うのだった。

「真鍋……今日(こんにち)をもって、お前はオレの弟子だ!」

「で、弟子……!」

「そうとも。お互いに男の本能を決して恥らず有りの侭の姿を晒していく……まさにエロスの師弟だ!」

「え、エロスの師弟……!!」

「オレは嬉しいぜ。お前ほど、己の本能に直向に、そして真っ直ぐに……何よりも純粋に晒せる男は見た事が無ェ! オレ達は、たった今からエロスの師匠と弟子だ!!」

「ば、バーンズさん……!」「真鍋……!」

 お互いに同じ男としての本能に純粋なまでに直向な間柄を感じ取った二人は胸の内から熱い感情が湧き上がるばかりだった。

『…………………………』

 そんなメタルバードと真鍋の破廉恥極まりない熱情に愛想を付かした他の面々は一同に冷め切った表情と眼差しで二人を見詰めてた。

 するとメタルバードと真鍋がエロスの師弟関係を結んでいると、そんな二人に愛想以上に怒りを感じた二人の異性。ミラーガールと琴浦春香が高々と片足を上げては、一気に振り下ろした。

『ふんっ』

 荒い鼻息と同時に空を切る勢いで振り下ろしたミラーガールと琴浦の足の踵は、真っ直ぐにメタルバードと真鍋の脳天に直撃した。

『ぐふッ』

 脳天に強烈な踵落としを喰らったメタルバードと真鍋は、直撃した脳天から湯気を上げながら気を失ってしまった。

『ぎゃああッ!!』

 二人の男の脳天に強烈な踵落としを直撃させた現場を目の当たりにした一同は余りの衝撃に絶叫した。

 すると此処でメタルバードの脳天に踵落としを直撃させたミラーガールが、同様に真鍋に踵落としを浴びせた琴浦春香に笑顔で言った。

「ふぅ、すっきりしたわね春香ちゃん」

「はい。アッコさんの言うとおり、二人に踵落としを喰らわしたら案外スッキリできました」

 満面の笑顔で話すミラーガールに琴浦春香も満面の笑みで話し返した。

 そんな二人の女性の会話を立ち聞きして他の皆々は面を喰らって愕然としてしまう。

 

 その頃、ミラーガールと彼女の踵落としを喰らって伸びているメタルバードの二人を除いた聖龍隊の面々は、ショタキャラと認知されたアラジンやアリババ、ジョーイにツナを除いた面子で八尺様と戦闘を繰り広げていた。

「喰らいなさいっ」「ぽっ!」

 セーラーマーキュリーの水技を身を仰け反らせてかわす八尺様。すると今度は其処にウォーターフェアリーが御得意の巨大水手裏剣を手の平に出現させては、八尺様に目掛けて放った。

「はぁっ!」

 だがウォーターフェアリーの水手裏剣すらも八尺様は意図も簡単に避けてしまう。

 更に今度はコレクターズのユイ/ハルナ/アイの三人がバトンを剣に変形させては三人係りで斬りかかって行く。

 しかし八尺様は三人の繰り出す剣の刃をひょろりひょろりとかわして見せては、最早女性には微塵の関心も抱かないまま再びショタキャラに狙いをつけて迫っていく。

「ぽぽぽぽっ」「う、うわあッ!」

 八尺様に付け狙われる沢田綱吉は涙目ですっかり脅え切っていた。

 そんな恐怖に打ちひしがれるツナの前に同胞の奴良リクオが八尺様との間に割り入っては、ツナを八尺様から守る。

「くッ……都市伝説をモデルに造られた生体兵器に負けちゃ、日本妖怪の首領の名が泣くぜ」

 リクオは日本妖怪を束ねる首領としての名目を背負うが故に、人間のネット上で広まった都市伝説を基に造り出された怪異の八尺様に負ける訳には行かないと踏ん張っていた。

 そして八尺様は遂にリクオの刀に弾かれて、後方に退いた。リクオは恐怖で腰が抜けてたツナに手を差し伸べては大丈夫かと訊ねる。

「ツナ、大丈夫か?」「り、リクオ……うん、どうにかね」

 立ち上がりながらリクオの問いに答えるツナ。するとツナはリクオを見ながら疑問に感じていた事を口に出した。

「そ、それにしても……なんで僕まで狙われるんだ? アラジンやアリババとか新世代の少年達なら解るけど、どうして僕まで……さっきから八尺様が見定めた子を見る限りじゃ、どう見ても中学生以下の男子しか狙ってないじゃないか。それなのに何で高校生の僕まで……」

 するとツナの言葉を聞いてリクオが真顔で言い切った。

「ツナ、それは単にお前の顔が幼すぎて中学生に見えちまうだけなんじゃないのか? 現に同じ高校生の俺には全く興味の欠片も持ってないぜ、八尺様はよ」

「ガァ~~~~ッン……そ、そんな」

 リクオが言い切った衝撃の事実に、ツナは悲痛な衝動に駆られるのであった。

 そんな中、複雑な心境で聖龍隊と戦う八尺様を見詰める男が居た。

「……なんで。何でガキばっかしか興味ない訳? あの巨乳の姉ちゃん……」

 それは赤塚組頭領の大将であった。彼は先ほど真鍋の無謀な突進に、その真鍋の意志を汲んで単身突っ込んでは見事八尺様の胸囲を肌で感じ取ったメタルバードのやり取りを見て、自身も八尺様の巨乳に顔を埋めたい心境に駆られてた。

 そして己が心中に溜まっていく想いを大将は赤裸々に叫んだ。

「おーーいッ! 八尺のお姉ちゃーーんッ、俺も抱き締めてくれーーッ!!」

 そう叫びながら大将は一心不乱に八尺様に飛び込んでいった。

「大将ーー!」「お前はバカかーーッ!」

 悶々としていた大将の突発的な自虐行為に同じ赤塚組の海野なるとテツが叫び掛ける。

 そんな破廉恥かつ下心剥き出しの大将が八尺様の胸目掛けて飛び込んでいった瞬間

〔バッチーーン〕「うおッッぷっ」

 何と八尺様は大将をまるで眼中にないと言わんばかりに渾身の力で頬を平手打ちし、大将をそのまま吹き飛ばした。

「うおおおおッ……」

 頬を叩かれ、宙に舞い滑空する大将は物の見事に壁まで飛んでいき、そして派手に激突してしまう。

 衝撃音と共に壁に激突した大将は、徐に立ち上がると自分を平手打ちしたショタばかりを追い回す八尺様を厳つい顔で睨み付けた。

「そうかい、そうかい……結局、おっさんは眼中にないって事かい」

 自分の様な年配者、若くない男は眼中に入らない八尺様の真情に大将は憤りを超えた怒りを覚えていた。

 そんな大将の事など気にも留めずに八尺様はショタキャラ達に狙いを定めては追い回し続ける。

 八尺様の変わり様のない態度に大将の怒りは最高潮に達した。

「クッソーーーー!! おっさんの底力、見せてやんよッ!!」

 そう叫び上げると大将は徐に持参してきた荷物から特大の武器を取り出した。

「へへ、隠し玉だったが、此処で使ってやらぁ」

 そう言って大将が取り出したのは、何とロケットランチャーであった。

『って! ロケットランチャー!?』『今まで、どうやって持ち運んでいたんだ!?』

 大将が取り出し担ぎ上げるロケットランチャーを目の当たりにして、今まで如何にしてロケットランチャーを持ち運んでいたのか疑問に思う新世代型達は目が飛び出るほど驚愕した。

 そして大将は担ぎ上げ構えるロケットランチャーの標準を八尺様に合わせると、狙いを定めてランチャーの引き金を引いた。

 

 大将が引き金を引いた瞬間、先端に装着されていた砲弾の後部が火を吹いて八尺様目掛けて豪快に吹っ飛んだ。

 砲弾は確実に八尺様に接近し、狙いは完璧に定められていた。

 そして強烈な爆音と共に八尺様に砲弾が直撃し、辺りは爆煙に飲み込まれた。

「うっ」「煙が……」

 衝撃と同時に周囲に拡散する硝煙に目が沁みり、喉に来る一同。

 一方で大将の放ったロケットランチャーの砲弾を直撃した八尺様は、強烈な爆撃が身体に多大な影響を齎したのか前のめりに倒れ込んでは完全に動かなくなってしまった。

「ぽ、ぽぽ、ぽ…………」

 最後に男声に近い不気味な笑い声を発しながら、八尺様は完全に生体機能を停止した。

 

「や……やっと倒れてくれたわね」

「ええ。それも、まさか大将の放ったロケットランチャー一発で片が付くとは……」

 床にうつ伏せで倒れ込む八尺様を見て安堵すると同時に意外な対処法で難なく片が付いた結果に驚くキューティーハニーとちせ。

 そしてランチャーを放った大将は砲弾が空いたランチャーを床に置いて一段落する。

「よいしょっと……ふう、全く。ショタ好き姉ちゃんがこれ程までに手こずるとは……」

 労して戦闘の末にロケットランチャーで八尺様を撃破した大将は床に腰を据えて一休みした。

 八尺様がようやく倒されたその頃、執拗に八尺様に追い掛け回されていたショタキャラ達は恐怖から解放されたかの様にドッと疲労感が体に圧し掛かり地べたに手を着いた。

「はぁ、はぁ……恐かったよ~~」

 涙目で八尺様に追い回される恐怖から解き放たれた浅野匠は自身の真情を口に出す。

「恐かった、恐かった~~……っ」

 同じく恐怖から解放されて涙目で安堵に浸る瀬名アラタ達ショタキャラ達。

 そんな恐怖から解放され安堵し切っているショタ達に美都玲奈やイオリ・リン子ら大人の女性組が優しく話し掛けようと声を掛けようとした瞬間「ヒィっ!」「こっ、恐いよ~~!」と真田幸介や速水ヒロらショタ達が脅え出してしまう。

「ど、どうしたのよ、みんな……」

 いつもと違い恐怖に震える知人達を含むショタ達を見て普通に問い掛ける鹿島ユノ。だが彼女の言動にすら男子達は恐怖を感じてしまう。

「うわぁッ!」「こ、来ないで~~ッ!」

 瀬名アラタや神浜コウジら少年達の尋常でない様子に違和感を感じ得ない他の皆々。

 すると其処にミラーガールがやって来ては、今の男子達の現状を自分なりに解釈しそれを皆に伝えた。

「多分、みんなさっきの八尺様に追い回されたトラウマで、多大なまでの女性恐怖症に陥っちゃっているんだと思うわ」

「え!」「じょ、女性恐怖症?」

 ミラーガールの発言に愕然とするバネッサ・ガラにキャサリン・ルースら女性達。

 更にミラーガールは先ほどまで少年達を追い回し続けてた八尺様の容姿から推測できる心境を語る。

「しかも、おそらく……さっきまで追い回してた八尺様同様に豊満な胸、つまりは巨乳の女性に対して異状ならざる恐怖心を感じちゃっているんでしょうね」

『………………』ミラーガールの解釈に開いた口が閉まらない面々。

 そんな彼等にミラーガールは話を付け加えた。

「まぁ、しばらく経ったら平常に戻って少しは脅えなくなっているとは思うけど……今はそっとしておきましょう」

 そうミラーガールに言われて新世代型や聖龍隊それに赤塚組の面々は、八尺様に追い回されて女性それも巨乳の女性に対して只ならぬ恐怖心を覚えてしまった故に身を震わせて脅える瀬名アラタ/出雲ハルキ/星原ヒカル/細野サクヤ/イオリ・セイ レイジ・アスナ真田幸介/毛利十四郎/浅野匠/平和泉/神浜コウジ/速水ヒロ/仁科カヅキ/東郷リクヤの面々を呆然とした目で見据えるのだった。

 そんな新世代型のショタ達に比べて、ルーキーズのショタ枠であるアラジン/アリババ/ジョーイ/ツナの4名は依然八尺様への恐怖心は拭えないものの、少しずつ平常心を取り戻していってた。

 

 そして一行は恐怖で身が縮むほど震えるばかりの少年達を気遣いながら、再び地下施設の最上階を目指すのだった。

 だがこの時、先ほど真鍋義久と熱い師弟関係を結んだばかりのメタルバードはある事に気を取られていた。

(この八尺様も、D-ワクチンで成長ホルモンが著しく分泌されて長身になった挙句、尋常でない腕の筋力が発達しちまったんだろうな。此処まで俺達を襲ってきた生体兵器の殆どがD-ワクチンで肉体や身体能力を向上させられた形跡が見られる……と、なると)

 メタルバードの脳裏に一つの不安が過ぎった。そしてそれは彼を焦らせ始めた。

「……みんな! 走るぞッ」

「えっ?」「い、一体どうしたって言うのよバーンズ」

 突然のメタルバードの発言に戸惑うジュピターキッドにミラーガール。だがメタルバードは困惑する一同を前にしながら切羽詰った面持ちで皆を急かした。

「良いから走るぞ! 全速力だ! 下手したら俺達、また怪物どもに取り囲まれるかもしれねェ!!」

『ええッ!?』メタルバードの発言に驚愕する一同。

 

 そして皆はメタルバードの言うがまま足を速めて急ぎ駆け出した。

 何故メタルバードは皆を急がせるのか? 果たして何が彼をその様な衝動に駆り立てたのか?

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