現政奉還記 B.O.W.編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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前回の続きからです。
 失踪した新世代型二次元人の行方を追う聖龍HEADと赤塚組幹部衆。
 そして聖龍隊総長バーンズは赤塚組の頭領 赤塚大作こと大将に自分達の過去を語った。

 自分たち聖龍HEADが過去に戦ったウィルスとの大戦を。


現政奉還記 B.O.W.編 回想:友から生まれし脅威

[chapter:国連からの召集]

 

 バーンズ達、聖龍HEADは赤塚組幹部衆の皆に語った。

 自分達の脳裏に刻まれたウィルスの悲劇と激しい戦闘による忌まわしい過去を。

 

 ウィルス兵器と彼等の戦い、実は聖龍HEADの面々は前々から小規模な事件やテロ等で遭遇していた事は多々あった。

 しかし、HEADが体験した中で最も大規模的な事件、いや激戦は極々最近の出来事だった。

 HEADが赤塚組に語った過去話は、その多大な被害が出た事件についてであった。

 

 それは同年の7月、聖龍HEADは当時の国際連合に召集され、ニューヨーク・マンハッタン島の国際連合本部へと密かに足を運んでいた。

 聖龍HEADの一団と国連側の人間は対面し、緊迫する空気の中、真剣に話を始めた。

「……今日、君らを呼んだのは他でもない。君等の前総長、そうかの小田原修司にまつわる話だ」

『……………………』

 立派なデスクに腰を下ろしつつ威圧感の在る風貌を真顔から醸し出す国連側の話に、聖龍HEAD一同は険しい面持ちで面と向かって話に耳を傾ける。

 この時、国連側の人間は腰を下ろしているのに対し、HEADの面々は各自部屋の壁に背を預けてたり、またローゼン達は同じHEADの人間の肩を借りて其処に腰を下ろしながら、誰もが緊迫した状態で全く隙を作らない体勢と姿勢で国連との話を進める。

 そして国連側の人物は、机の上に一枚の報告書を置きバーンズに向けて語り出した。

「君達を呼んだのは他でもない。長年、私たち国連を始めとする全世界の為に戦い続けてきた彼の……小田原修司の遺伝子から生み出された特殊なウィルスが、不覚にもテロを起こそうとする輩によって作り出されてしまったらしいのだ」

「つまり……!」

 国連側の発言に対し疑問の表情を浮かべる参謀長のジュニアの言動に、国連は答えた。

「うむ、君達も知っての通り小田原修司がWHO(世界保健機構)に提供し其処で厳重に保管されていた彼の血液サンプルが、不覚にもバイオテロを目論む組織の手に渡ってしまったらしい。その組織は小田原修司の血液を用いて新たなウィルスを既に作り出してしまったと言われる」

『…………』

 顔色が次第に悪くなってきたHEADの面々に、国連は容赦なく語り続けた。

「それに伴い……今度は国連管轄化の施設であり、同時に君等の前総長 小田原修司が設立したチベットの高山奥地の『高地環境適応トレーニング施設』との連絡が取れないんだよ。更に、その近くの国連軍管轄の航空基地との通信も途切れているのだ」

「それって……どうゆう事なんですか?」

 HEADのセーラープルートが動揺する素振りで問い掛けると、国連は重い口振りで話した。

「おそらくは……其処で保管されている小田原修司のトレーニング記録や彼の人体に関する書類が狙われ、何らかの問題や緊急事態が起こっているのだろう」

「…………」

 厳つい強面に豹変するバーンズ、そして国連側は話の本題を聖龍HEADの面々に伝えるのだった。

「まず君達には、直接その足でチベットの山に登ってもらい、自力で環境適応トレーニング施設へと向かって其処で起きている状況を把握そして鎮圧してもらう事だ。君らも何度か施設に足を運ばせた事があるから解ってると思うが、あそこは並の常人では辿り着くのが困難な高地だ。低酸素/低気圧による極限までの環境に並の人間が長時間居る事は不可能以前に自殺行為だ。まぁ本来は高山部隊という高地帯でも活動できるよう訓練された兵士が向かうのがベストなんだが、生憎彼らには対生物兵器の戦闘まで訓練はしていない。其処でだ、並の人間以上のクリーチャーや異常者(ヒール)と戦ってきた上に、何度かトレーニング施設にも赴いた事がある君達を呼んだのだよ。何より、前総長 小田原修司の遺伝子が関わっているのなら、君達自身で解決したいのも本音であろう?」

 延々と語られる国連側の話に黙然と耳を傾けて聞き入るHEAD。

 更に国連側はHEADの面々にまた淡々と語り続けた。

「そして施設での状況を把握し無事に其処での任務を終えたら、そのまま近くに建設されている国連の航空基地にも様子を見に行って欲しい。施設が既にバイオテロで侵食されてしまっているなら、近場である航空基地にまでもウィルスが感染している可能性もあるのだよ」

 国連側が延々と語る話を静かに聞き入る聖龍HEAD。そんな彼らに国連は、更なる事実を伝えるのだった。

「更に、その小田原修司の血液を用いて作り出されたウィルスについて多少の情報を掴んだのだが……これが奇抜ではあるがとても特殊なモノらしいのだよ」

「特殊、というと……」

 国連が伝える小田原修司から生み出された新型ウィルスについてバーンズが訊ねると、国連はそれに顔を渋らせながら答えた。

「それが……そのウィルスは一定の条件を満たすと、感染者を普通のB.O.W.よりも更に強いモノへと変異させてしまうらしいのだ」

「! それは本当か?」

 話を聞いてバーンズが咄嗟に訊き返すと、国連は実に陰気な面差しで答える。

「そうらしいのだよ。そのウィルスは条件を満たしていなければ、割と早い段階で感染者が死に絶えると体内で消滅してしまう代物なのだが、逆にその条件を満たしてしまうと感染者はより強力なB.O.W.に体が変異してしまうらしいのだ」

「そ、その条件って……一体、どんな?」

 激しい動揺の表情を浮かべながら訊ねる堂本海斗からの問い掛けに対し、国連は眉間にシワを寄せた苦悩に満ちた面差しで言った。

「うむ、それが……」

『………………』

「……実は、その条件というのが……小田原修司、彼の血液から作られたからなのか…………彼と同じ血液型にウィルスは過剰反応を起こし、感染者をより強く屈強なB.O.W.にしてしまうのだよ」

「つまり……A型の人間だけにウィルスは反応して、そいつだけを死滅させずに怪物に変化させちまう訳って事かい?」

「……そう言う事だ」

 国連が語った話にバーンズが問い返すと、国連は小さく首を頷かせた。

 その時、聖龍HEADのキューティーハニーの夫で聖龍隊でも古参の人間で、HEADの付き添いとして一緒に付いて来た盲目の闘士 早見青児が話を聞いて、黙り込んでいた口を開いては話し出した。

「そうか、修司と同じ血液型じゃなければ感染者は死ぬだけで怪物には成らないって訳か。ははは…………って笑えねーーなッ!」

 青児の鋭い発言にバーンズはもちろんその場のHEAD全員が同じ笑えない心境だった。

 

 人間の血液型は大きく分けて四つに分類され、それぞれA型/B型/O型/AB型の四種類存在する。

 そして問題視されるのは、その血液型の割合である。

 四種類の血液を地球上の人間で分割すると、最も少ない割合でAB型がおよそ一割、次にO型がおおよそ二割、そしてB型が三割およそ存在し、最後にA型の血液が最も多く四割を占めている。

 つまり地球上に存在する人間の大半がA型であり、小田原修司の血液型と一致する人間が多いのが実情であり、同時に彼の血液から作られたウィルスに感染して屈強なクリーチャーに変貌してしまう人間の方が圧倒的に多い事実を指しているのだった。

 

 小田原修司から作り出されたウィルスが大半の人間を屈強な怪物に変貌させてしまう事実に心の中で激しく動揺する

聖龍HEADの面々に国連は更なる事実を伝えるのだった。

「更に我々の掴んだ情報では……俄かには信じがたいのだが、そのバイオテロの組織には合衆国政府のある重役が関与しているらしいのだよ」

「何だって!」「それは本当か?」

 驚き慄くバーンズにキング・エンディミオンが訊き返すと、国連は静かに語り始めた。

「うむ、そうらしいのだ。これは非常に厄介な問題だ」

 そう言って国連はバーンズに一枚の写真を差し出した。

「! こいつは……!」

 その写真に写っている白人男性を見て、バーンズは一驚した。

「知っている顔だろう。彼は現役の大統領補佐官ディレック・C・シモンズ。実は彼を始めとするシモンズ家の家系は現合衆国の建設以来、国を支えてきた系譜なのだ。そんなシモンズ一族は代々アメリカを影から補佐する立場を務めながら絶大的な権力を保持してきた一族だ。君達の耳にも入っている、かの『ラクーンシティ』が壊滅したバイオハザード、その事態を収拾するため町にミサイルを撃ち込んでの滅菌作戦は、実は当時から政府の重役であるシモンズによる指示だったのだ。更に我々の情報によると、つい先日トールオークスで起きたバイオテロにも、その補佐官であるシモンズが関与しているらしい」

「そんな……! 何でそんな事をした人を放っておくんです!」

 国連の発言に聖龍隊副長のミラーガールが突発的に反論すると、国連は渋々答え返した。

「気持ちは解るよ、加賀美あつこ。しかし現役の大統領補佐官であるシモンズに我々国連も迂闊には手が出せないのが実情なのだよ。だからこそ、こうして秘密裏に君たち聖龍HEADを呼んだ訳なのだ。君達には、チベットの山中に在るトレーニング施設と近くの航空基地の現状を把握しながら同時に補佐官シモンズの裏を密かに探って欲しい。上手くいけば彼を失脚させる事も、彼の一族を我々国連の監察下に置く事も可能なのだ。頼む」

『…………………………』

 国連の言論に無言で顔を険しくさせるHEAD。

 

 そしてHEADは国連からの要請で、一先ずチベットの山中に在る国連管轄のトレーニング施設へと向かう事と相成った。

 

 

 

 

[死の山脈を越えて]

 

 国連の要請に応え、聖龍HEADは急遽チベットの山中へと飛び立ち、吹雪に見舞われる山中へ足を踏み入れた。

「ヒィ~~っ……さすがに、この寒さは体に堪えるわ」

 チベットの山脈ならではの猛烈な吹雪を身体に受け極寒に身を震わせるバーンズは、両肩を抱きしめながら先陣を突き進む。

 そんなバーンズを先頭に、彼の後からはHEADの一団が隊列を作って荒れる吹雪き舞う山を一歩ずつ確実に登っていく。

「っ……みんな、手渡されたロープを放さずしっかり握っているのよっ。いくら能力者とはいえ、この吹雪の中で隊列から離されたら危ないわ」

 強烈な吹雪が顔に直撃しながらも、雪が眼球に直撃しない為のゴーグルを着用したミラーガールが、同じ様にゴーグルを装着するHEADの皆々に声を掛ける。

「くっ、前が雪で全然見えない……!」

「皆さん、此処はそれぞれが耐え凌ぎつつ互いをサポートしながら、しっかり前に向かって前進していきましょう」

 猛吹雪で視界を塞がれ苦戦するミュウイチゴを始めとする面子に、力強く言葉を掛けてあげる鳳凰寺風。

「っ……! 真紅、それに他のローゼンメイデン。強風で吹き飛ばされない様、しっかり僕等の体に掴まっているんだよ」

「え、ええ……」

 人形であり他のHEADよりも格段に全身が小さいローゼンメイデンの面々を自分達の体にしがみ付かせる蒼の騎士の言葉に、真紅たちローゼンメイデンの面々は小さく返事する。

「っ~~~~!! もう寒いったら、ありゃしないよ~~! なんで女王になってからも、こんな仕事引き受けなきゃいけないんだろう……グスッ」

「わ、私も同じです……いっくら聖龍隊が国連とかの機関から任務を請け負うのも職務の一つとはいえ、こんな猛吹雪の雪山を登らなきゃいけないなんて。クシュッ、そもそも私達のコスチュームって防寒とは程遠い露出の激しい身形だって言うのに……っ」

 愚痴を零していくセーラームーンに七海るちあ、そんな二人にキング・エンディミオンが声を掛ける。

「二人とも、そう愚痴るな。その為の防寒着をウッズが用意してくれてるんだし、何より聖龍隊としては組織の権限はもちろん二次元人の尊厳保持の為にもこう言った仕事は引き受けなきゃいけないだろ」

 エンディミオンがセーラームーンとるちあの二人に話し掛けていると、其処に続けてセーラージュピターも話し出す。

「で、でも……さすがに、この寒さはシンドイわよ。いくら私たち変身系のヒロインが変身している時は身体の新陳代謝が上がるとはいえ、この寒さは異常すぎるよ……っ」

 自分たち変身ヒロインが変身時の際は身体の新陳代謝が格段に上がり身体能力が凄まじく向上する上に、聖龍隊本部から手渡された防寒着に全身を被っているとはいえ、雪山の高地に吹き荒ぶ猛吹雪と凍てつく強風に身を縮ませる思いをする一行。

 そんな愚痴るHEADの先頭では、参謀長のジュニアが総長であるバーンズと話していた。

「だけど……やっぱチベットの高山は凄い吹雪だ。死の山脈と呼ばれているだけの事はある」

「ああ、こんな寒さだ。アプリなんか、この場に居たらアッと言う間に凍っちまうぜ」

 年間だけで何百人と死人を出す猛吹雪の山脈を登っていく聖龍HEADだったが、実は一人だけアプリコットだけは省かれていた。何故なら彼女は水の妖精であり、氷点下の環境に身を置くだけでその体が凍り付いてしまう体質だからだ。

 

 凍てつく吹雪の山中を突き進み、ようやくHEADは最初の目的地である国連管轄化の高地トレーニング施設へと辿り着いた。

「ふぅ~~、やっと着いたぜ……おいみんな、少し休もうぜ。ハァ」

 施設に到着したばかりの総長バーンズの一言で、HEADの皆々は荷を降ろして一息入れようと各々が施設の入り口に完備されている酸素ボンベへと一列に並び新鮮な酸素を思う存分吸い込む。

「スゥ、ハァ……スゥ、ハァ…………」

「は、早く代わってくれ。苦しいんだ……」

 HEADは交代交代で続々と酸素ボンベの空気を自身の肺に満たしていく。

 更に施設内の室温を感じ取ったバーンズは、皆に言った。

「みんな、どうも施設の暖房は生きているみたいだ。防寒着を脱いで身軽になれ」

 バーンズの指示の元、HEADの皆はそれぞれ着ていた防寒着を脱ぎ捨て、いつもの身形へと変わる。

「ふぅ、それじゃ……まずは現場の確保だ。この入り口付近のフロアから施設内を探索していきたいと思うが、俺はこの場に留まって入り口付近を確保しとく。あと俺様から一つだけ、既に俺みたいに嗅覚の発達している奴なら感付いてはいるだろうが……もう此処の付近から、かなりの血の臭いが漂ってきやがってる。みんな、心して周囲に警戒しつつ行動しろ。以上だッ」

『はっ!』

 総長バーンズからの指示を皮切りに、HEADは各々と散らばり最初に付近のフロアから探索を開始した。

 

 皆々が各々と施設の入り口付近から各部屋を見て周っていると、目立つ所に前総長である小田原修司の写真が飾られていた。

 修司は、このトレーニング施設を設立した人物としてはもちろん、施設で長期間もトレーニングした事のある人物として彼の写真が至る所に飾られているのだ。

 そもそも此処の施設は、酸素および気圧の低い高地での肉体トレーニングを積む事で体を慣らし、厳しい環境に適応していきながら己の肉体を屈強なモノへと鍛え上げる為の施設なのである。

 実は聖龍HEADの面々も修司に連れて来られ、此処で厳しい肉体トレーニングを一時体験した事がある。しかし彼等は数ヶ月という短い期間なのに対し、小田原修司は三年も近い期間の中で此処に通い詰めては己が身体を極限まで鍛え上げていた。

 

 そんな低気圧/酸素の薄い施設内では、人の気配が全く無い不気味な雰囲気であったが施設の設備は未だ存続しており暖房が効いた室内では普通に行動できてた。

 しかし、そんな施設内を探索していると壁や床にこびり付いた血痕が至る所で目に付いた。

 血痕の大きさと、それに伴う血の量からHEADは此処で起きた惨状を粗方把握した。

 

 その時である。

「ッ、何なの?」「ん、どうしたんです? ざくろお姉さま」

 突然声を発したミュウザクロの一声に反応し、隣の別フロアからミュウミントが顔を覗かせて訊ねた。

 するとミュウザクロは険しい顔でミュウミントに言った。

「今、あそこの部屋から物音が……」

 そう言ってミュウザクロが指差した扉をミュウミントも見据える。

「此処の人……なんですかね? 入り口には誰も、そう警備員の姿さえ無かったから此処では人の姿は一向に見ていませんけど」

「ええ、誰かしら居てくれたら幸いなんだけど……できれば此処の人間で、かつ味方。もっと言えば、生きた人間であってほしいけど」

 ミュウミントとミュウザクロは互いに話し合いながら物音のした部屋へと静かに歩み寄り、そしてドアノブを捻り戸を開けた。

 

 

 

 

[感染していた施設]

 

 物音に気付いたミュウザクロと、彼女に付いて行くミュウミントの二人が音のした部屋へと静かに踏み入る。

 其処は何の変哲も無い一室ではあったが、部屋の一角それも二人から見たら死角の場所から異様な音が聞こえて来た。

「何の音かしら……」「…………」

 不気味な物音に警戒しながら歩み寄っていくミュウザクロに対し、脅えながらもミュウザクロの後ろから付いて行くミュウミント。

 二人が部屋の死角であった一角に歩み寄ると、其処には跪いて何かしらの行為をしている人影が居た。

「な、何してるのっ?」

 警戒を解かずに声を掛けるミュウザクロ、そして声を掛けられた人物はゆっくりと彼女とミュウミントの方へと振り返った。

 

 振り返った人物の顔を見て、二人の女性は一瞬で血相を豹変させた。

 二人に顔を向けた人物の顔色は、生気の通ってない蒼白で更に眼球は既に死滅しているのか白眼に変貌していた。しかも、その人物は声を掛けられるまで床に転がっていた死体を食していた為に口元が血で真っ赤に染まっていた。

「そっ、そんな……!」「っ!」

 死に絶えた人間の肉を食していた眼前の屍に驚愕するミュウザクロとミュウミント。そんな二人に屍は口から血を滴らせながら立ち上がり迫ってくる。

「ッ……!」

 迫ってくる屍を前にして、ようやく動転していた気を元に戻したミュウザクロは眼前の屍に攻撃した。

「アウッ……」

 攻撃を受けた屍は、そのまま床に倒れ動かなくなった。

 横たわる死体を食していた屍と、食されてた死体を前にして愕然と成るミュウザクロとミュウミント。

 ミュウザクロは早速この事を耳に装着しているワイヤレス通信で総長のバーンズに報告した。

「総長っ、総長っ!」

「その声はざくろか? どうした、何か進展でもあったのか?」

 通信機に問い掛けるミュウザクロの声に、通信の向こうから総長バーンズが問い返すと、ミュウザクロは先ほど自分達が遭遇した事態を報告し出した。

「はい、私とミュウミントで施設を探索したところ、B.O.W.と思われるゾンビと遭遇しました」

「なにッ? ……そうか、やはり此処の施設は既に感染してたか。いやな、オレの方でも何かに身体を食い千切られている死体を2,3体発見した。おそらくはゾンビに食われたんだろう」

「……」

 バーンズの話を聞いて黙り込んでしまうミュウザクロ。

 そして双方共に一時黙り込んだ後、バーンズは再び通信機を通してミュウザクロと話した。

「……ざくろ、それにみんと。二人共、一旦オレの所に戻ってきてくれ。他のHEADにも戻る様伝えておくから、全員集合しよう。話したい事がある」

「分かったわ」

 バーンズの問い掛けに答えたミュウザクロは、急遽ミュウミントと共に総長バーンズが場所を確保している施設入り口へと戻った。

 

「よし、みんな戻ってきたな。さっき俺から伝えたとおり、先ほどミュウザクロとミュウミントの二人がB.O.W.と思われるゾンビに遭遇、これに対処した。俺の方でも空気中に漂う血の臭いを辿って施設内を捜索してみたところ、幾つかの死体を発見した。他のみんなは何か探索中に何か見つけたか?」

 自分が確保していた入り口付近に戻り集合したHEADの面々に問い掛けるバーンズからの質問に、HEADの面々は答えていった。

「ええ、此方の方でも幾つか死体を発見しました。皆どれも夥しい程の傷を受け、しかも明らかにその傷が噛み傷なんです」

 セーラーマーキュリーの報告に続き、ローゼンメイデンの翠星石と金糸雀が報告する。

「こっちも同じですぅ。それも、死んでからそう日にちの経ってない死体を翠星石は多く見たですぅ」

「カナの方は……鍵の掛かった部屋から何かが動いている物音が聞こえてきましたし、多分まだまだ動いているゾンビが……あ、いいえB.O.W.が施設の中に居るかも」

 笑顔で報告する金糸雀に続き、マーメイドメロディーの堂本海斗が報告する。

「此方でも鍵の掛かった部屋を確認しました。まだ中を確認できてない部屋には何が居るか……生存者が居る事すら確認する事もできてない部屋が未だ多く見受けられます」

 皆の報告を聞いたバーンズが考え込んでいると、そんな彼に副長のミラーガールが問い掛ける。

「バーンズ、まずは生存者の発見を優先しないと。いくら生物兵器が潜んでいる施設内でも、まだ生存者が居ないって決め付ける訳にもいかないし……何より、施設の現状を完全に把握しない限りは次の視察先である航空基地に向かう事はできないわ」

 ミラーガールの発言にバーンズも心の中で頷いては、下げていた顔を上げてHEADの皆に言い放った。

「うむ、確かにアッコの言うとおりだ。まずはどうにかして確認できてない部屋やフロアを見て周り、生存者が居るかどうか確認すると同時に施設の現状を完全に把握してから次の航空基地に向かうとしよう。と、言う訳でみんな、悪いがまた各々散らばって施設の中を捜索してくれ。おそらく既に施設の内部には生物兵器がウヨウヨしているから用心しとけ、以上」

 このバーンズの指示で再び施設内を捜索しに行くHEADの面々は全員、心の中で副長であるミラーガールの発言に身を任してしまうバーンズに対して、やや呆れてしまいながらも施設の中を進んでいった。

 

 まず鍵の掛かった部屋に対しては、室内がどんな様子なのか不明な為できる限り力任せに破壊せず、地道にその部屋の鍵を探しては開錠していった。

 

 更に施設の地下層では、室内の気圧や温度を操作できる特別なトレーニングルームがあるのだが、その気圧を制御する装置の不具合で室内の気圧が下がり部屋の外と中を繋ぐ戸がまるで圧力鍋の蓋の如く密閉されては開けられなくなる事態に見舞われた堂本海斗を筆頭としたマーメイドメロディーズの面々は、室内の気圧を操作する制御室まで赴いては部屋内部の気圧を正常値まで戻したりとした行動をしなければならない破目に嵌っていた。

 

 そんな施設の内部を隈なく捜索していくHEADであったが、生きた人間の姿は見つけられず、時おり遭遇するのは既に死に絶えB.O.W.へと変わり果ててしまった人々の悲しい姿しか見受けられなかった。

 

 そして施設の全ての部屋を確認した聖龍HEADは、再び施設入り口に集合しては対話しつつ各々の報告をバーンズに伝えた。

「そうか……薄々思ってはいたが、生存者は居なかったか。もう施設の人間は全て動く屍へと変わり果ててしまってたか」

 皆からの報告を聞いて、既に施設内にはゾンビと化した生物兵器しか存在せず、施設で勤務してた人間は全て死に絶えてしまった現状を把握したバーンズは先ほどと同じく黙り込んでは深く考え始めてしまった。そんな彼を心痛な思いで見るHEADの面々。

 そんな中、考え込んでいたバーンズは徐に顔を上げては皆に話し始めた。

「ところでな、みんな……どうやら此処の施設に撒かれたウィルスは、修司の遺伝子から作られたモノとは違うみたいだ」

「えっ? そうなの、バーンズ」

 バーンズの発した言葉に問い返すアッコ、そして訊かれたバーンズは彼女を始めとしたHEADの皆に語り始めた。

「ああ、実はオレが倒したゾンビの血液を採取しては、そのデータを聖龍隊本部のウッズに送って調べてもらったんだ。するとゾンビの血液型は修司のA型とは全く違う血液だった上に、その血に含まれていたウィルスはどうやら過去に別のバイオテロで使われていたモノ……それも、あのラクーンで確認されたウィルスと酷似しているらしいんだ」

「なにッ? ラクーンって、あのラクーン事件か!? 資料でしか知らないが、主に洋館事件とラクーンシティでのウィルス流出事件の二つのバイオハザードによる事件がラクーン事件だったよな?」

 話を聞いてキング・エンディミオンが血相を変えて問い返すと、バーンズは真顔で話し返した。

「そうだ。オレ達の前に現れたゾンビの様子からして、おそらくは洋館事件と呼ばれるバイオハザードで確認されたT-ウィルスと呼ばれる兵器だろう」

『……………………』

 バーンズの口から語られる話を聞いて黙然としてしまう面々。

 

 そしてバーンズは視線をHEADのメンバーであるコレクターズの三人、春日結/如月春菜/篠崎愛に向けては彼女等に問い掛けた。

「ところでコレクターズ、お前達はさっき施設のコンピューターをチェックするとか言っていたけど、何か解ったか?」

 訊ねられたコレクターズ、その内の一人である篠崎愛ことコレクターアイがバーンズに話し返した。

「それが……私達がコンピュータールームに入ってみると、部屋のあらゆる機材が破壊し尽くされた後だったんです。なので、施設に保存されていた小田原修司の身体能力を始めとする機密情報が無事なのかどうか不明なのですが……ただ機材が破壊されている状況から見て、既に此処の情報は全て盗まれたと見ても良いでしょう」

「……そうだな。既に、敵は情報を盗む為に此処の施設にウィルスを撒き散らした上、コンピューターにもハッキングしてデータを全て入手、更には足取りを消す為にハッキングしたコンピューターを始めとする機材を全て破壊して撤退したと見て間違いないだろう」

『…………』

 コレクターアイからの現状説明を聞いて解釈を立てるバーンズの話に、HEADの面々は再び黙然と険しい顔で聞き入る。

 

 皆と意見を交し合ったバーンズは、次なる指示を聖龍HEADの皆々に告げた。

「よし、この施設は済んだ。すぐに次の目的地である国連の航空基地に向かうぞッ。施設がこの有様だ、おそらくは航空基地も同じ様にバイオハザードが起きているかもしれないから、みな心して掛かるぞ!」

 バーンズからの指示に皆は力強く揃って頷いた。

 

 そして聖龍HEADは早々に高地トレーニング施設を離れ、近くの航空基地へと急ぎ向かった。

 

 

 

 

[屈強なる生物兵器]

 

 トレーニング施設のすぐ近場に建設されている国連の航空基地に着いた聖龍HEAD一行。

 

 時に吹雪が激しく吹き荒び、離陸着陸すら困難であるチベットの雪山それも高地に、わざわざ航空基地が建設されているのかというと、それには訳がある。

 一つは、あの小田原修司が国連と共同で山中に建てた高地トレーニング施設の設立によって、世界中から名立たる軍人や武人が己の肉体を鍛える為、そして正式な軍隊の鍛錬も施設で行われる様に成って行った為、それらの交通手段として空からの便が降り立てる為の航空管制基地として。

 二つ目は、トレーニング施設と航空基地が在る山も含んだアジア最大の山脈でもある、通称死の山脈とも呼ばれるヒマラヤ山脈では頻繁に悪天候を始めとする様々な要因で遭難してしまう人々を逸早く救助する為の前線基地として。

 この二つの理由で国際連合と小田原修司が共同で建設した航空基地なのだった。

 

 HEADは施設と航空基地を結ぶ地下通路を通って、安全に航空基地へと辿り着いた。

 地下の通路を出ると、其処は航空基地の正面玄関のすぐ目の前に出られる設計であり、HEADはすぐさま基地の正面玄関へと辺りを警戒しつつ駆け足で向かっていく。

 

 臨戦態勢で正面玄関の前へ辿り着くと、ガラスの自動扉が自然に横へと開く。

 基地の電源がまた稼動している事を確認したバーンズ達HEADは、体勢を低くしながら警戒しつつ基地の中へと入っていく。

 

 其処で彼らの目に飛び込んで来たものは、なんと血塗れの玄関フロアに床に点在する幾つもの死体だった。

 玄関フロアを見渡すと、至る所に激しい戦闘の痕が残っており壁の各所には飛沫した血痕が見受けられた。

 

 HEADは現場の状況を把握する為、まず二階のエリアから探索を始めた。

 正面フロアの両サイドに位置する階段を二手に分かれて上り、二階に到着すると互いに周囲に警戒を掛けながら再び一組に集まる。

 すると二階のエリア、その中央の扉が突如激しい音を立てながら軋み出す。まるで扉に何かが激突しているかのような凄まじい音が。

 HEADがその扉に視線を向けていると、激しく揺れていた扉が突如として吹き飛び、扉の奥から赤黒い筋肉が異常に発達したかのような巨体の怪物が飛び出して来た。

「な、何なんだアレは!?」

 HEADが驚愕していると、怪物はその巨体で床を蹴り上げHEADの方へと突進してきたのだ。

「よ、避けろッ!」

 総長バーンズの一言で皆は壁に体を押し付けて怪物の突進を回避して見せた。そして怪物はそのまま勢い余って二階のガラスの塀を打ち破っては一階の正面玄関フロアに落下してしまう。

「…………」

 一階のフロアに落下し動かなくなった怪物を見て唖然となる一同。

 だが、皆が落下した怪物がそのまま死んだと思い込み始めたその時。動いていなかった怪物がいきなり起き上がり、再び動き始めたのだった。

「や、ヤバイぞ……!」「まだ死んでないのか」

 再び動き始めた怪物を目にして顔を引きつらせるエンディミオンと蒼の騎士。

 そして活動を再開した怪物は、再び狙いをHEADの面々に付けて襲い掛かってきた。

「く、来るぞッ」

 HEADが怪物に対し臨戦態勢を構えた。だが怪物は一直線に突進して来ては、ちょうどHEADの真下その壁際で立ち往生してしまうのだった。

「な、なんだ。あの怪物……俺達に襲い掛かると思ったけど、一階から上に来れないのか?」

 二階に居るHEADに向かいたいが、怪物の目にはフロアの両サイドに在る階段は入らず、そのまま一階の壁際までHEADに迫ろうと直進してしまう有様を見たHEADは呆然としてしまうのだった。

 だが次の瞬間、突然怪物が丸太のように太い両腕を前後に激しく振り始めた。突然の怪物の行動に聖龍HEADは誰もが首を傾げて困惑してしまう。

 しかしHEADが戸惑っているその時、なんと怪物が両腕を振る勢いでそのまま真上の二階フロアまで跳び上がった。

「なッ!」「にッ?」

 思わず声を上げて驚いてしまうキング・エンディミオンと堂本海斗の二人同様、一階から二階に直接跳び上がって来た怪物に驚きを露わにするHEADの一同。

 そして一階から二階に跳び上がって来た怪物は、その巨体で再びHEADに迫ってくるのだった。

「や、やべぇ……!」

 バーンズを始めHEADの皆が迫り来る怪物に愕然としてしまう、その時。

「みんな退いてっ!」とHEADの一番後方に居たちせが両腕を機械化させて光線のエネルギーを溜め始めていた。

 光線を今にも放ち掛けているちせを見たHEADは皆、自分達が居る通路の壁際に慌てて体をくっ付けてはちせの攻撃に備える。

 そして次の瞬間、ちせは溜めていたエネルギーを一気に放出して前方の怪物に光線を撃つ。

 ちせの光線は怪物に直撃し、怪物の頭部を始めとする胸の辺りまでも消失した。

『………………』

 頭部から胸までが消失し、光線で焼けた肉から煙が上がる様を見て言葉を失うHEADの一同。そんな中、バーンズが怪物に光線を放って撃退したちせに言葉を掛けた。

「よ、良くやったちせ。助かったぜ」

 バーンズからの礼の言葉にちせは小さく頷いた。

 それからバーンズは怪物の亡骸に近寄り、徐に血液を採取してはその情報をスグに聖龍隊本部へと通信衛星を経由して送った。

「できれば陰性であってくれよな。頼むよ、頼むよ……」

 血液の情報をアニメタウンの本部に送った携帯機器を深刻な表情で見詰めながら呟くバーンズ。

 そして数分も経たない内に本部から血液の検査結果が返ってきた。その結果を一目見たバーンズは顔を真上に上げて悲痛な声を上げた。

「何てこった、陽性とはよ……」

 嘆くバーンズに副長のミラーガールが声を掛けた。

「バーンズ、陽性って……まさか……!」

「ああ……この怪物、例のウィルスから。そう、修司の遺伝子から生み出されたウィルスで変異したB.O.Wだ」

『!!』

 ミラーガールからの問いかけに答えたバーンズの言葉に衝撃を受ける一同。

 更にバーンズは血液を採取した怪物の亡骸を見下ろしながら皆に語った。

「この怪物の異様なまでに発達した筋肉組織……間違いない、自身の筋力が凄まじく発達した修司の遺伝子から作られたウィルスによる変異だ」

「…………!」

 この時、バーンズの口から語られた話に当の修司と婚約しているミラーガールは余りの事に言葉を失った。

 そしてミラーガール同様、話に愕然としているHEADの皆にバーンズは語り続けた。

「みんな、どうも此処の基地は完全にウィルスによるバイオハザードが蔓延しているようだ。しかも修司の遺伝子から生み出されたウィルスなだけに、おそらくは皆この怪物のように筋力が異常発達している生物兵器が基地内に、わんさかと居るだろう。気をつけろ」

 バーンズの口から出る重みのある一言一句に、HEADの誰もが現状の深刻さを噛み締めた。

 

 その後HEADは更に基地の奥へと進んでいく。すると前方の扉が開かず、何かが扉の向こう側で引っ掛かっている様だった。

 扉が開かない状況に立ち往生してしまう一行は、仕方なく通路を迂回して別の道を使って基地の奥へと向かう事にした。

 そして一向はどうにか別ルートで迂回しては、先ほど自力では開けなかった扉の向こう側まで辿り着けた。

 全員が扉の向こう側の通路に出ては、先ほど行く手を阻んでいた開かなかった扉の方に目を向けてみた。すると其処には信じ難いモノが扉の前にあったのだ。

 それは巨大な薄い赤みのかかった繭の様な物体で、それが扉の前にあった為に扉が開かなかったのだ。

 HEADが一同にして扉を開かなくさせていた繭に目を奪われていると、突然その繭の表面にヒビが入り始めたのだった。

「ッ!」繭のヒビを目の当たりにしてHEAD全員は一瞬驚いた。

 そしてヒビの入った繭は次の瞬間、一気に破裂するかのように全壊しては中から先ほどの筋肉が剥き出した様な巨体の怪物が出現したのだ。

『ッ!!』繭から出てきた巨体の強力な怪物に驚愕する一同。

 怪物は、そのまま眼前のHEAD達に突進してきた。

 迫り来る怪物に一同が動揺していると、眼前まで迫ってきた怪物をセーラージュピターが自慢の強力で押し止めた。

「ぐっ!」

 表情を険しくさせて怪物の巨体を受け止めるジュピター、しかし怪物は彼女を押し返そうと力を込め始める。

 対するジュピターは何とかして今の状況を打破しようと攻撃に転じようとするが、怪物の余りの強力にその余裕すら出せずに苦戦する。

 次の瞬間、一瞬の隙を衝かれてジュピターは怪物によって真横の壁に叩き付けられた。

「ぐはっ!」「ジュピター!」

 壁に叩き付けられるジュピターを目の当たりにして叫ぶバーンズに驚き慄く一同。

 そしてジュピターを壁に叩き付けた怪物は次の標的を他のHEADに向けては襲い掛かってきた。

「グオォッ」

 低い唸り声の様な雄叫びを上げながら襲い掛かる怪物相手に、HEADの一人でジュピターと同じセーラー戦士のマーキュリーが前へと出ては怪物と対峙する。

「マーキュリー!?」

 単身皆の前に飛び出ては怪物と対峙するマーキュリーの突然の行動に戸惑いを隠せないバーンズ。

 だが怪物の方は前へと飛び出してきたマーキュリーに怯む事無く、彼女の頭を鷲掴みするとそのままマーキュリーを床や壁に幾度も叩き付け始めた。

「きゃっ!」

 幾度も叩き付けられ悲鳴を上げるマーキュリーを見て、他の聖龍HEADは誰もが悲痛な表情へと顔を一変させる。

 その時、幾度も怪物に叩き付けられるマーキュリーを見兼ねたミラーガールが、己の武器ミラー・シールドから発生させた光の回転刃をマーキュリーの頭を鷲掴みする怪物の手首に向けて発射した。

「はァっ」

 ミラーガールが放った光の回転刃は怪物の手首に直撃し、その手が鷲掴みしていたマーキュリーを放した。

 床に落下するマーキュリー、するとそれを確認した木之元桜がその瞬間にシャドウ(影)のカードを使って怪物の動きを封じる。

 シャドウ(影)によって身動きを取れなくなった怪物は激しくもがき始め、更に其処へ今度はキューティーハニーの攻撃が放たれ怪物に直撃した。

「グオオッ」

 攻撃を喰らった怪物は断末魔を上げながら完全に動きを無くした。

 そんな騒々しい中、HEADの一人でもあるナースエンジェルが怪物によって負傷したジュピターとマーキュリーに駆け寄り、能力で二人を治療してあげた。

「二人とも、大丈夫か?」

 バーンズがナースエンジェルに治療を施してもらったジュピターとマーキュリーに声を掛けると二人は負傷した箇所を擦りながら返事する。

「え、ええ……」「何とかね、あっ……」

 肉体の負傷は治ったとしても、感覚である痛みがまだ残っているのか苦痛に顔を歪ませる女性二人を見て、バーンズは皆に告げた。

「みんな、この先どんな生物兵器が出現するか予測不可能だ。今まで以上に周囲に警戒しつつ先に進むぞ」

『ハイっ!』

 総長バーンズからの指示に一同は力強く返事する。

 

 そして聖龍HEADは更に航空基地の奥へと辺りを警戒しながら進んでいった。

 

 

 

 

[変異し続ける生物兵器]

 

 航空基地の更に奥へと進入していく聖龍HEAD。

 進む度に出現する数多の生物兵器 B.O.Wに応戦しながらも確実に反撃しては倒していくHEAD。

 そして一行は襲い来るB.O.Wを撃退しながらも、基地の中央区までようやく辿り着く事ができた。

 

「……異常なし!」「……反対側も同じく!」

 部屋に飛び込み周りを見渡しながら気を配るエンディミオンに続き、彼の背中つまり死角を確認する堂本海斗。

 二人の合図を皮切りに、HEAD全員が部屋に突入する。

「此処には、何も居ませんわよね?」

「だけど正直、もう何が居ても可笑しくありませんわ」

 互いに背を合わせながら話し合う魔法騎士(マジックナイト)の鳳凰寺風とミュウミュウズのミュウレタス。

「みんな注意するんだ。何処から何が飛び出して来ても、もはや此処の基地ではそれが当たり前になってしまっている……!」

「ウラヌスの言うとおり、ホントに何が来るか解らないわ……!」

 周囲を警戒するセーラーウラヌスの発言に同意の返事を述べるコレクターアイ。

「だけど……少なくとも、この部屋には何も居ないようだね」

「本当に何も居な……ければ良いんだけど」

 自分達が入室した部屋に何も居ない様子だと認識する青山雅也こと蒼の騎士とミュウイチゴの二人。

 HEADの誰もがその一室は単に荒れているだけで何も居ないと踏んだ、その時。

「っ……ちょっと待って! 何か聞こえる……!」

「……ッ?」

 突然のミュウザクロの発言にバーンズが顔を向けると、続け様にミュウプリンも耳を澄ましながら皆に言った。

「ほんとだっ、何か聞こえる……あ、これは! 誰か男の人の声だッキ」

「な、なに! ホントか? まだ生存者が居てくれたのか……!?」

 基地の現状から、既に生きた人間は居ないと思っていた矢先の吉報に少しばかり喜びの感情を表に出すエンディミオン。

 そして一行は急ぎ、生きていると思われる男の声が聞こえて来た奥の部屋へと駆け込んだ。

 扉を突き破る勢いで中に駆け込むHEADの男性隊士ら、すると彼等の目の前に腹部から出血しているスーツ姿の男性が苦しそうに部屋の奥に寝転がっていた。

「せ、生存者発見!」「急げッ、負傷してるぞ!」

 参謀長のジュニアと総長のバーンズが言い放ちつつ、一同が男性に駆け寄ろうとしたその時。

「ま、待ってくれッ。ま、まずはアレをどうにか……!」

 床に仰向けで寝転がり、出血している腹部の傷を押さえながら男が指を差した。

 HEADは男の指差す方にゆっくりと視線を向けてみる、すると其処に居たのは……

 

「キアアアアァァ……」

 低い奇声を発している、複数の人間の体が一体と化したような奇形の怪物が其処にいた。

『…………』

 怪物を見たHEADは、誰もがその怪物の奇怪な全貌に愕然と蒼褪めた。

 何人もの人間が一つの奇形な肉体へと纏わり付いた様な容姿に、移動する際に用いる6本の手足は文字通り人間の手足が奇形化した様な姿形でその手足で地を這う様に散乱しているデスクの上に鎮座していた。

 そして数多の人間の顔が不気味に幾つもの頭部を成形している中で、一際目を引く仰向け状態の頭部その顔面の口から異様な唸り声が出ていた。

 HEAD一同が異形の怪物に目を奪われている、その時。怪物はゆったりとした動きながらも俊敏な速さで移動しては、床に倒れている男目掛けて移動し始めた。

「く、来るなッ。うわぁっ!」

 迫り来る怪物を前にして、男は腹部の傷を押さえながら床を這いずる様に後退して行く。

 そんな男を助けようと、HEADは男に迫る奇形の怪物に攻撃しようとする。だが次の瞬間、怪物の奇怪な体から複数の先が四つに分かれた触手が飛び出して来ては、HEAD目掛けて触手が攻撃してきた。

「う、うわッ」

 鞭のように激しく振り回しながら辺り構わず振るう触手の猛攻に悪戦苦闘するHEAD。

 そんな中、奇形の怪物は男に近寄り、床の上で恐れ慄く男に体を真上から押し付けた。

「ッ!?」

 怪物が振り回す触手の猛攻を避け続けるHEADは、床で脅え続ける男に体を押し付ける怪物の行動に一瞬戸惑いを感じた。

 だがしかし、次の瞬間怪物に体を押し付けられ叫び続ける負傷した男と、男にその巨体で異形の体を押し付ける怪物に変化が起きた。それは何と、怪物の仰向け状態の頭部が突如として異様なまでに伸び始め、圧し掛かっている真下の男の顔側面に伸びた顔面が近付いて来たのだ。そしてあろう事か、伸びてきた怪物の人間に近い頭部と男の顔面が接触した部分から一体化し始めた。

「うわ、うわぁ……っ!」

 自分の顔と怪物の伸びてきた頭部が次第に一体化し始め、くっ付き始めた経緯に恐怖する男は絶叫を上げた。

 そして触手の猛攻に対し必死に避けつつ応戦していたHEADの目の前で、負傷していた男の顔面と怪物の頭部が遂に完全に一体化してしまった。

「ウオオオオオオオォォォ……」

 怪物と一体化してしまった男の口からも、怪物と同等の奇怪な呻き声が発せられ、その様子を目の当たりにしたHEADは全員が一瞬で顔から血の気を引いていった。

 そしてHEADが眼前の惨状に顔面蒼白で愕然としていると、男を自身の体の一部にした怪物は6本の奇形化した手足で這う様にしながら俊敏な動きで去って行こうとする。

「ッ、待て! 逃がして成るものかッ」

 顔面蒼白になり立ち尽くしていたエンディミオンが気付いては、逃げ去ろうとする怪物を追おうとした。

「ハッ、お、オレたちも追うぞ!」

 最初に気を元に戻したエンディミオンに続き、総長のバーンズも気付いては同胞のHEADに呼び掛け怪物を追った。

 

 怪物は部屋の片隅の扉を打ち破って、部屋の外に飛び出していってしまう。

 一同は怪物を追って、怪物が破壊した扉を抜けて部屋の外に飛び出してみると、其処は長い通路であった。

 生存者であった男性を取り込み、逃走した奇形の怪物を追おうと一行は通路を駆け抜けようとした。

 だがその時、右側面の白い壁を貫いて別個体の奇形の怪物が一行の前に突如として飛び出して来た。

「な、何だコイツはッ!」

 突如として現れた怪物は、先ほどの怪物とは何処か骨格が違っていたが奇形の風貌は酷似していた。そして怪物はHEADに襲い掛かって来た。

「危ねッ」

 襲いかかって来た怪物の攻撃に対し、咄嗟に自身の身体を盾に仲間を庇ったバーンズ。

 そうして体を張ったバーンズの右腕に怪物の奇形の腕が絡み付く様に纏わり付き、バーンズの右腕に怪物の奇形の腕が接着してしまった。

「く、くそッ」

 怪物の腕が自身の右腕に接着してしまい酷く戸惑うバーンズは、一瞬の隙を着いて左手から突風を起こして怪物を強風で押し退けた。

 強風で吹き飛ばされた怪物は通路の真ん中で転げ回り体勢を崩したのだが、その間バーンズは自身の右腕に起きた異変に気付き困惑した。

 何とバーンズの右腕には、吹き飛ばした怪物の奇形の腕の一部分が剥がれては未だ右腕に纏わり付いた状態であり、それが見る見るうちにバーンズの右腕を侵食していたのだった。

「ッ!!」

 自身の右腕に起っている異変に驚愕したバーンズは咄嗟にスグ横に居た龍咲海に言葉を掛けた。

「海、借りるぞッ」「えっ?」

 半ば強引に海から彼女の剣を奪い取る様に借りたバーンズは躊躇う事無く、怪物の腕に浸食されていく自身の右腕を海の剣で斬り落とした。

「グッ」「ば、バーンズ!」

 痛感が走りながらも右腕を切断したバーンズの突然の行動に大変困惑する一同。そして切断した右腕の断面から多量の出血を左腕で押さえて必死に止血するバーンズは、数歩下がっては後方に向かって声を放った。

「マーズ! 光! さくら! お前達の炎技で、あの化物と俺の右腕に纏わり付いている化物の一部を焼き尽くせッ!」

「えっ、で、でも……」

「こんな狭い通路で私達の技なんか使ったら」

「私達にも炎が迫るんじゃ……」

 バーンズからの指示に戸惑いを見せるセーラーマーズと獅堂光そして木之本桜の三名。すると彼女達にバーンズが強く言った。

「良いから急いで焼き尽くせッ! あの化物はおそらく寄生タイプだ、モタモタしてるとオレ達まで寄生されて化物の仲間入りだぞ!」

 このバーンズの発言を聞いて、三人の女性は慌てて皆の前に飛び出しては眼前の怪物と怪物の腕の一部に付着されたバーンズの右腕目掛けてそれぞれ炎技を放った。

「えいッ」「やぁッ」「ファイアリー(THE FIREY)っ」

 マーズ、光の炎の攻撃技。そしてさくらのファイアリーによる猛火による三重攻撃を受けて、眼前の奇形の怪物とその怪物の一部に寄生されたバーンズの右腕は炎に包まれた。

 三人のHEAD女性の放った炎技を喰らい、全身を炎に包まれる怪物と焼かれていくバーンズの右腕。二つとも炎に包まれながらもがき続け、やがて動かなくなった。

 そして動かなくなった怪物と右腕を確認したバーンズは、既に出血が止まった右腕を左腕で押さえながら仲間達に指示した。

「よし、さくら次はウォーティで消火っ、マーキュリーと海も水技で一気に通路の火を消火せよっ」

 指示通り、さくらはウォーティ(水)のカードで、そしてマーキュリーと龍咲海の両名も続けて水技を放っては通路の火を鎮火させた。

 

 HEADによって焼かれ、そして鎮火された通路には黒焦げになった異形の怪物とその怪物の一部に寄生され斬り落とされたバーンズの右腕が転がっていた。

 眼前の光景に唖然と成るHEADの一同、そんな中バーンズは自ら斬り落とした右腕の切断面に力を込め、切断面から一気に右腕を再生させていた。

「ふぅ~~……いやぁ、参ったぜ。ふぅ」

 三角頭の顔から冷汗を掻きながら溜息を着くバーンズ、そんな彼は咄嗟に懐に忍ばせていた自身の側近であるチップバードを呼び出した。

「チップバード!」「ほいほい王子ッ」

 呼ばれたチップバードは返事をすると同時に、自身の主であるバーンズの胸元に飛び付いた。

「メタル・イン!」

 チップバードが胸に飛び付いたその瞬間に叫ぶバーンズ、するとチップバードのコインの様に小さな金属の体から薄い金属の膜が飛び出て来てはバーンズの体全体にその金属の膜が被って行き、遂には完全にバーンズの全身を金属でコーティングしてしまった。

「よしッ、変身完了!」

 自身の変身した姿、通称 鋼の鳥メタルバードに変身したバーンズは、変身を終えてスグにその場に居る仲間達に苦悶の表情で告げた。

「ふぅ……どうもさっきの怪物と良いこの焼け焦げた怪物も、どちらも他の生き物の体を蝕んでは寄生するタイプの生体兵器らしい」

 苦悶の顔で語るメタルバードの話に皆は愕然と聞き入れていた。

 そしてメタルバードは更に険しい面持ちで皆に言った。

「みんな、この先はオレが先頭を行く!」

「だ、だけどバーンズ……っ」

 メタルバードの発言に戸惑うセーラーヴィーナスに他の聖龍HEAD。そんな仲間達の反応にメタルバードはこう言い返した。

「いや、普通の肉体を持つお前らならスグに寄生タイプの化物に寄生されちまうが、今のオレなら全身はもちろん体の細胞に到るまで全てが金属化している。全身隈なく金属のオレだったら寄生はされねえからな」

 皆にそう語るメタルバードは公言通り、HEADの先頭に立っては持ち前の細胞までも金属化させた肉体を活用させつつ前進して行った。

 

 その後HEADの一団の前に時としてムカデの様な足が生えた人間の腕や、目玉と細い虫の様な脚が飛び出た人の頭部が現れてはHEADに襲い掛かってきたが、メタルバードは眼前に立ち塞がる奇々怪々な幾多の寄生型の生物兵器から仲間を守りつつ果敢に怯まず撃退しては先を進んでいった。

 

 HEADの誰もは自分達の前に現れ続ける奇怪かつ悍ましい人体に寄生しながら体を変形させる怪物に脅えてしまう事も多々あったが、総長であるメタルバードの懸命な立ち回りと奮戦も甲斐あって何とか足を進ませる事ができた。

 

 一行はそうして更に航空基地の奥へと進んでいくのだった。

 

 

 

 

 

[身体を奪い]

 

 迫りくる奇々怪々な寄生型生物兵器に敢然と立ち向かいつつ応戦するメタルバードを先頭にした一行は、

やがて航空基地の施設の一つである機体整備工場のフロアまでようやく辿り付いた。

 

「ふぅ~~、やっとこさ此処まで来れたな……もうあちこち怪物だらけで参っちまったぜ」

 溜息を衝きながら草臥れた様子で愚痴るメタルバード。

「まったくよ……手やら頭やらの不気味でいや~~な生物兵器が至る所から出てくるし、ホントに怖かったよぉ~~~~」

「うぅ……しかもゴキブリみたいに天井や壁を這ってこっちに迫ってくるから思わず鳥肌立つし、最悪だったぁ」

 セーラーヴィーナスと宝生波音の両名とも涙目で自分達に迫ってきた生物兵器の奇怪な姿と動きに悪寒を覚え始めていた。

「ふぅ、だけどようやく基地の整備工場まで辿り着く事ができたな」

「ええ、此処まで皆が無事に寄生型のB.O.Wに体を奪われずに済んで良かったですよ」

 互いに顔を向けて仲間達の無事を喜び合うキング・エンディミオンと堂本海斗の両名。

「た、確かにとても恐ろしいモノばかり出現しましたけど……先ほど寄生型に取り付かれてしまった男性以外の生存者は、悲しいですけど見当たりませんでしたね」

「そうですね……もう基地には死体もしくは生物兵器のどちらかしか見られませんでしたし、やはり先ほどの男性以外の方はもう……」

 悲痛な心境で語る鳳凰寺風とミュウミントに続き、ミラーガール自身も悲しげな面持ちで呟いた。

「さっきの男の人、助けてあげられなくてホントに申し訳なかったな……動揺していなかったら何かしらの手段で助けられたかもしれないのに……」

 と、そんな自分を責める言葉を呟くミラーガールに参謀のジュニアが話し掛ける。

「ミラーガール、いつまでもそんなに悲観しないで。過ぎた事を悩んでいても仕方がない、今は兎にも角にも基地を隈なく探索して少しでも現状を把握していかないと」

「ええ、その通りよね……」

 ジュニアからの言葉にミラーガールは悲しげな表情ながらもハッキリと頷いて返答した。

 

 そして一行は更に航空基地その整備工場の奥へと足を歩ませようとした、その時だった。

 一行の前方に積まれていた多数のドラム缶が突然崩れては、そこから何かが飛び出してきた。

「な、なんだッ!」

 メタルバードが突然の事態に叫ぶ。そして皆の目の前に飛び出してきたモノの全貌を見て一同は愕然とした。

「き、きゃあっ」

 可愛らしい悲鳴とは裏腹に、その表情には燦然と恐怖の感情が浮き彫りとなる翠星石。

 その奇怪な怪物は、先ほど負傷し倒れていた唯一の生存者である男性を取り込んだ寄生型の生物兵器であった。しかもその男性だけでなく、おそらくは基地内部に点在していた死体をも取り込んだのか、その全貌は無数の人の頭部や手足が無造作に突出した異様な姿であり、そんな手足が床を這う様にその不気味な容姿を前へと進ませていた。

 そして数多の頭部が不気味に目立つ怪物は、床に転がるドラム缶を薙ぎ払いながら、その奇形な体を這う様に聖龍HEADへと迫ってきた。

「そ、そんな……ッ」

「ウソだろ、いくらなんでも取り込み過ぎだろ……ッ」

 目の前に迫ってくる無数の頭部を生やした怪物を前に、その異様な姿に冷や汗を掻き酷く動揺する蒼の騎士とエンディミオン。

 しかし怪物は、そんな動乱するHEADに悠然とその奇怪な容姿で迫りつつあった。

「は、離れろッ」

 咄嗟に皆に指示を出すメタルバードの一言に、一同は颯爽とそれぞれ横方面に移動しては数多の頭部の怪物を取り込む様に陣形をとった。

 HEAD一同が怪物を取り囲んだ陣形に移ったのを確認したメタルバードは、再び皆に指示を告げた。

「よしッ、このまま連携してこの頭だらけの怪物を倒すぞ! それから、この怪物を俗称としてオメガ・ヘッドと命名する。各自、オメガ・ヘッドに攻撃しろッ!」

 メタルバードの指示の元、HEADは人間の頭部が無数に目立つ寄生型生物兵器、通称オメガ・ヘッドに対して果敢に攻撃していった。

「ショット!」「えいっ」「喰らいなさいっ」

 木之元桜のショット(撃)、ミュウミントのミントーンアローから放たれる大気のエネルギーを凝縮させた矢、そして金糸雀のヴァイオリンから放たれる強烈な衝撃波、それらが直撃しオメガ・ヘッドの奇形の体は傷付いた。

 更に其処へ寄生型の生物兵器であるオメガ・ヘッドを焼き尽くそうとセーラーマーズと獅堂光の両名が強烈な紅蓮の火炎技を放った。

「はァっ!」「炎の矢!」

 強烈な火炎技を喰らって、オメガ・ヘッドの体は見事に炎に包まれた。

「ウオオオオォォォォ……ッ」

 奇声を放ちながら燃え盛るオメガ・ヘッド、その見事な紅蓮の如きオレンジの炎を前にメタルバードも他のHEADも呆然と燃え続けるオメガ・ヘッドを直視し続けた。

 だがしかし、オメガ・ヘッドはその身を炎に包まれながらも苦し紛れに周囲のHEADメンバーに襲い掛かってきた。

「キュオオオオォォォ……ッ」

 奇怪な唸り声を発しながらHEADに駆け寄るオメガ・ヘッド。だがその時、迫り来るオメガ・ヘッドの前に敢然とミラーガールが立ち塞がる。そして彼女は自身の装備であるミラー・シールドを前に向けると同時に唱えた。

「ミラー・バリアー!」

 すると彼女とオメガの間に薄い光の壁が現れては、オメガの行く手を塞いだ。更にミラーガールは念じながら盾から光のエネルギーを発出した。

「えいっ」

 盾から出たエネルギーは半球体の壁を整形しては、そのままオメガの巨大で異様な全身を包み込む様に被ってしまった。

「キュウウゥゥゥ……」

 光の壁に取り囲まれて身動きできないオメガは、最後の力を振り絞るかのように小さな断末魔の奇声を発しながらやがて動かなくなった。

 

『……………………』

 燃え尽きていくオメガ・ヘッドを前にしながらHEADの誰もが黙然としていた。

 だが、皆が一息ついていたその時。

「あっ! みんなアレ!」

 と何かに気づいて指差すココ、その一声に彼女が指差す方に皆が目を向けてみると其処にはオメガとの戦闘を聞き付けたのか何体もの異形の生物兵器が集結していた。

「くそっ、オレ達の戦闘で嗅ぎ付けてきやがったか!」

 口元を歪ませながらメタルバードが叫んだ次の瞬間、集まってきた怪物達は一斉にHEADへと襲い掛かってきた。

「く、来るわよッ」「か、数が多い……」

 皆に声をかける龍咲海、それに反して雛苺は眼前に迫りくる異形の怪物に顔色を蒼褪めさせていた。そんな怖気づき始めた同士にメタルバートは威勢良く言葉を掛けた。

「怯むなッ、脅えていたんじゃ聖龍隊の名折れだぞ! 聖龍HEAD、バケモノ共を一掃しろッ!!」

『了解ッ!』

 総長メタルバードの掛け声に、HEAD全員迫り来る異形の生物兵器の群れ戦闘を開始した。

 

 

 

 

[燃え盛る航空基地]

 

 出現しては距離を縮め眼前に迫り来る無数の異形の生物兵器の群れに聖龍HEADの面々は果敢に攻めていった。

 コレクターズの三名、コレクターユイにコレクターハルナとコレクターアイの三人は火/電気/風と様々なエレメントスーツに自身の姿を変身させては生物兵器の群れに攻撃していく。

 そのコレクターズの三人に負けずとセーラー戦士たちも怪物の群れに各々が得意とする能力で強烈な攻撃を仕掛けていく。

「このやろ、喰らえッ」

 そんなメンバーの中、一人だけ変身している事で自身の体を完全な鋼の肉体に変化した事で寄生型の怪物相手にも平気で接近戦を行えるメタルバードは勇猛苛烈に生物兵器の群れの中に突っ込んでは電撃を帯びた刃で斬り付けたり片手を電撃砲に変形させては強烈なエネルギー弾を近距離で発射したりと、思うが侭に己の実力を発揮して見せた。

 

 そんなメタルバードとは異なり、普通の肉体である他の聖龍HEADの面々は寄生されない様に適度な距離を置いて生物兵器と抗戦を続けていた。むやみに生物兵器に近寄ってしまえば危うく寄生型に体を奪われてしまう可能性があるからだ。

 そんな戦況の最中、生物兵器の群れと抗戦していたHEADの一員であるマーメイドメロディーズのかれんの目に驚愕する光景が飛び込んできた。

「……あ! アレっ!」

 思わず声を上げて指差すかれん、彼女の言動に気づいた同じメロディーズの女性達が指差す方に目を向けると彼女達も仰天する勢いで驚愕した。

「あ、いけない! 燃料が……!」

 マーメイドメロディーズの目に飛び込んで来たのは、なんと怪物の群れが出現した勢いか整備工場内に置かれていた機体燃料が詰まったドラム缶が倒れてしまっており、更にそのドラム缶からは倒れた衝撃で亀裂が生じ其処から燃料が漏れ出していた。

 しかも漏れた燃料は床を這って戦闘で焼かれた生物兵器の方へと流れて行ってしまってた。未だ微かな火が残る生物兵器の亡骸に流れていく発火性の強い機体燃料にメロディーズのノエルが思わず叫んだ。

「みんな、燃料に火がッ。爆発する!」「なにッ!?」

 ノエルの一声にメタルバードを初めとする一同が燃料への引火寸前に気付くものの、火が残る生物兵器の亡骸に流れ出た燃料が辿り着き遂に引火してしまった。

 引火した燃料は見る見るうちに発火していき、火の手は燃料が詰まったドラム缶へと伝っていき爆発するのが誰の目にも一瞬で理解できた。

「離れろぉッ!!」

 大声で皆に告げるメタルバードの掛け声で、HEADは総出で一目散に駆け出した。

 

 そして火はドラム缶内の燃料にも引火しては次の瞬間、爆発を引き起こした。

 整備工場内部は一瞬で炎に飲み込まれていき、そんな爆炎を背にHEADは駆け足で整備工場から外の雪が降り積もる航空機ターミナルへと飛び出した。

「くッ」

 一同は外に出ると同時に爆発の衝撃に備えようと降り積もった雪に飛び込んでは体を伏せる。それと同時に整備工場は強烈な爆炎を屋根や壁から噴き出しつつ爆発炎上した。

 強烈な爆発が鎮まり伏せていた体を起き上がらせては立ち上がる聖龍HEAD。彼らは皆、爆発炎上し炎に包まれる整備工場を目の前にし、しばし呆然としてしまった。

 皆が爆発炎上する現状を前に思わず放心状態で居ると、そのとき整備工場に隣接していた別の基地施設も続けて爆発炎上した。

「ッ!!」

 目の前で立て続けに爆発する施設の建物に驚愕すると同時に蒼然と化すメタルバードや聖龍HEADの面々。

 だが、航空基地の爆発は留まる事を知らず更に隣接する施設や建物が連鎖するかのように爆発していった。

 そしてほぼ全ての施設や建物は爆発炎上し、基地のは完全に火達磨と化してしまった。

『…………………………』

 眼前の状景に唖然と言葉を失くしてしまうHEAD一同。

 

 しかし、彼らが燃え盛る航空基地に見入っているその時。その燃え盛る基地から数多のB.O.Wが炎から逃げ出す様に次々に出てきた。

「まだこんなに居たのか!」

 生物兵器の生き残りを見て表情を歪ませるエンディミオン。

 だが、そんな状況に陥ろうとメタルバードは剣幕を立てながら皆に指示を告げていく。

「怯むな! 撃って撃って撃ちまくれッ!」

 メタルバードの一声を皮切りに最終兵器のちせを先陣にHEADの面々は燃え盛る施設から飛び出しては此方に迫る生物兵器に集中攻撃を放つ。

 

 炎上する航空基地の離陸ターミナルに場所を移動しながら周辺の生物兵器に応戦していく聖龍HEADの面々。

 皆が躍起になって迫りくる怪物達を相手にしていた、その時。突如メンバーがそれぞれ携帯していた聖龍隊専用の衛星通信機から呼び出し音が鳴り、総長であるメタルバードが通信に出た。

「もしもしっ、此方HEAD! 済まねえが今取り込み中なんだ、何か急用なら手短に言っとくれッ」

 メタルバードが通信機に応答すると、通信機から聞き慣れた声がメタルバードを始めとするHEADの皆々に返答した。

「バーンズさん……良かった、応答してくれまして。他の皆様方も大事無いでしょうか?」

「と、父さん……! 一体、どうしたんだよ……っ」

 通信機からの声、それはアニメタウンの聖龍隊本部に滞在しつつ今回の聖龍HEADの任務をバックアップサポートしていく聖龍隊のサポーターであり同時に古参としても人望の厚いウッズ・J・プラントであった。そのウッズの声を聞いて、息子である参謀長のジュニアは突然の父からの通信に戸惑った。するとウッズは通信衛星から回線を経由した状態でそのままHEADの皆々に話し始めた。

「はい、此方側はアニメタウン本部より通信衛星の偵察カメラで其方の状況は粗方今まで窺っていたのですが」

「それで?」

 セーラージュピターからの問い返しに、ウッズは答え返した。

「はい、衛星カメラから基地上空を捉えているのですが既に航空基地の大部分は整備工場の爆発が連鎖反応を起こして大規模な火災と爆発が頻繁に発生しています!」

 現場で戦っている聖龍HEADに現状を説明していくウッズ、更にウッズはHEADの皆々に伝え聞かせた。

「それから実は先ほど其方に部隊移送用の大型ヘリを一機、応援に向かわせた所なんです。もうすぐ到着すると思うのですが……」

「そうか、そりゃ助かるぜウッズ」

 現場にヘリを寄越してくれたウッズの計らいに礼を返すメタルバード。

 更にウッズの話を聞いて、エンディミオンが扇動する様に皆に言い放った。

「よし、みんな! ヘリが 来るまで何とか持ち堪えるんだ。まずは目の前のB.O.Wを排除しつつ形勢を整えよう!」

 エンディミオンの鶴の一声に、HEADは更に勢いを増しながら迫りくる数多の生物兵器を迎え撃った。

 

「くッ、どうする? 寄生型も混ざっているし、迂闊に近づいたら、こっちが寄生されてバケモノの仲間入りに成りかねネぇし……!」

「下手に接近戦はできない……こうなったら!」

 B.O.Wの群集を前に、迂闊に接近して寄生型のB.O.Wに体を乗っ取られる危険性を考慮した堂本海斗と蒼の騎士の両名は、考えに考えた末ある戦法を取った。

嵐脚(ランキャク)!』

 今や世界中の名立たる武人や軍人が使用する超人的体術【六式】の一つである嵐脚で強力な風の刃を起こして迫りくる生物兵器を切り裂いた。

 海斗と蒼の騎士同様に、他のHEADも直接攻撃が主流の戦法であるメンバーは接近戦を避けるため各々が六式を使用して戦闘を繰り広げていた。

(ソル)!」「月歩!」

 瞬時に地面を10回以上蹴って瞬発的に加速して高速移動する剃、爆発的な脚力で空を蹴って宙に浮いては移動する月歩。それらの移動に用いられる六式を駆使して生物兵器からの攻撃を回避しながら同時に遠距離攻撃の技である嵐脚で迎撃していく面々。

 

 HEADメンバーが各自B.O.Wを迎撃していく中、防御や回復系統の技が主流である副長のミラーガールも苦手ながら果敢に攻め続けていった。

 防御が主立っているミラー・シールドを、時には鎖鎌の様な鎖に繋がっている鎌を投げ付けたり、時には青白く輝く光の弓矢で矢を射ったりと、巧みに攻撃型の武器に鏡の盾を変化させて必死に応戦していく。

 その姿からは、かつて無邪気で心優しいだけの少女とは一変した 気高き聖女としての風貌が感じられた。

 

 

 

 

[中国支部からの要請]

 

 チベットの山奥に建てられている国際連合管轄の航空基地でのバイオハザード。その事態に駆け付けた聖龍HEADは基地にて発生していた生物兵器と対峙した。しかし航空基地の一角である整備工場内で生物兵器と戦闘を繰り広げているその時、運悪く其処に常備されていた機体燃料に引火してしまい整備工場は爆発、更に工場の爆発を皮切りに基地が連続で爆発していき、遂には基地そのものが炎に包まれてしまった。更には燃え盛る基地の内部に残っていた数多の生物兵器が火から逃れる為に続々と基地を包み込む炎の中から飛び出してきては、工場から外に飛び出した聖龍HEADに襲い掛かってきた。

 

 HEADは各自、迫り来る幾多の生物兵器の群れに果敢に攻めていった。そんな戦況の中、基地の火の手は納まる事を知らず、それどころか保管されていた機体燃料に引火したのか火の手は一層増すばかりであった。そんな炎に包まれる基地から続々と飛び出してくる生物兵器にHEADは追い詰められ始めていた。

 

「……くッ、埒が明かねえ……!」

「倒しても倒しても出て来やがる……!」

 寄生型が混じっている生物兵器の群れに迂闊に近寄れない為に、地道に距離を置いて戦闘を続けるキング・エンディミオンと堂本海斗の二名は、自分らを包囲し始める生物兵器の群れに互いに背を合わせながら応戦しつつ、その表情を歪ませる。

「ど、どうにか一気に片付けられないかな?」

「そうは言っても……もう、ほとんど力を使っちゃって残ってないわよ」

 自分達を取り囲む群れに剣を向け疲労で顔色を険しくさせる獅堂光の言葉に対し、彼女と背合わせしている龍咲海は疲れ切った声色で話し返す。

「ち、ちせ……君のレーザーで敵を一掃してはくれないかい?」

「そ、それが……私も戦闘で消耗しているため、もう強力なレーザーを放つ余韻は残ってないの」

 必死に周囲の生物兵器に応戦しながらちせにお願いするジュニア、だが彼女には強力な光線を放つまでの余力は残ってはいなかった。

「どうするのバーンズ。このままじゃ、みんな……!」

「分かってる! 何とか対策を練らねえと……」

 果敢に自身の武器を変化させながら戦うミラーガールからの言葉に、総長のメタルバードは口元を歪ませながら必死に現状を打破する方法を考え始めていた。

 

 その時だった、生物兵器の群れと応戦するHEADの耳に何かが入ってきた。

「……! この音!」

 コレクターアイが思わず一言発すると、木之本桜が叫んだ。

「あ、アレ!」

 さくらが指差す方には、部隊移送用の聖龍隊の軍事ヘリが上空より飛来して来たのだった。

「た、助かった! ウッズが寄越した応援だ!」

 ヘリを見て表情に少しばかり明るさを浮かべるメタルバード。

 するとその時、ヘリが地上に近づいた瞬間、一人の人影が機体より飛び出してきた。

 人影は地上に難なく着地すると、徐に着地の反動でずれたサングラスを人差し指で掛け直した。

「ッ……あいつは……!」

 ヘリから飛び降り地上に着地した人物を見て、エンディミオンが血相を変えた。

 聖龍隊の隊士の身形に腰には一本の日本刀、少し白髪が混じった茶髪の短髪にサングラスを掛けた一人の男。その男を見て、HEADの一人であるキューティーハニーが思わず叫んだ。

「せ……青児さん!?」

 ヘリから現れた男、それはキューティーハニーこと早見ハニーの夫であり、聖龍隊の古参でもあり同時に長きに渡る聖龍隊での戦闘で完全に盲目と化してしまった早見青児その人であった。

 地上に飛び降りた青児は何食わぬ顔でHEADの方に歩き出し、無言で距離を縮めていく。そんな青児にHEADと対峙していた生物兵器らも気付き、HEADに歩み寄る青児に攻撃を仕掛けようと駆け出した。

「せ、青児!」

 早見青児とは聖龍隊結成時のときから古い付き合いであるエンディミオンが彼の名を叫んだ次の瞬間。青児に迫った怪物がHEADの目の前で瞬く間に一刀両断された。

『!』

 真っ二つに切断された生物兵器を目の当たりにして驚愕するHEAD一同。

 そして切断された怪物から視線を移すと、いつの間にか早見青児が腰に下げていた刀を抜いて身構えていた。

 更に青児は続々と自分に攻撃を仕掛けようと近寄ってくる怪物達を、気配だけで物の見事に斬り捨てていった。

「グギャッ」「ギャウッ」

 断末魔の鳴き声を発しながら斬り捨てられていく生物兵器の怪物達。その亡骸の中を青児は平然と歩き続けた。

『………………』

 やがて全ての怪物が突如として現れた青児に気を取られ迫って行ったため周囲からは完全に居なくなっていた中、HEADは無言で迫りくる怪物を斬り捨てていく青児の姿に目を奪われていた。

 そして怪物を斬り捨てながら、青児は戦場の真っ只中に居たHEADに歩み寄っては言葉を掛けた。

「よぉ、みんな無事か?」

 何事も無かったかのように話し掛けてきた青児にメタルバードが声を掛けた。

「助かったぜ青児!」

 すると青児は抜いていた刀を鞘に納めながらHEADの皆に言った。

「ふっ、なぁに……みんなが呼んでくれないもんだから、こっちから応援に駈け付けて来ちまったぜ」

「はは、どちらにしろ応援ありがとよ、青児」

 呆然としながらも自分達の追い詰められていた状況を打開してくれた青児の登場に礼を述べるエンディミオン。

 すると、そんな皆の前に青児が乗ってきた移送用の大型ヘリがエンジンを稼動させたまま着陸し、機体から操縦士が外のHEADに向かって言葉を掛けた。

「皆さん! 早くヘリに乗り込んでくださいッ、B.O.Wの群れは搭載しているミサイルで一気に片付けますのでッ!」

「分かった! みんなヘリに乗れっ」

 操縦士からの言葉を聞いて、参謀長のジュニアは皆に指示を告げてはヘリに向かって走り出した。そしてジュニアに続いて他のHEADも各自駆け出してはヘリに向かって走った。

 そして全員、大型ヘリに乗り込むとそれを確認した操縦士は機体を離陸させた。

 上空に舞い上がったヘリは、地上に残っているB.O.Wの群れ目掛けて搭載しているミサイルを撃ち込んだ。

発射(ファイヤー)!」

 地上に向けられて発射されたミサイルは、群がるB.O.Wに直撃しては一掃していく。更に地上のみに非ず、燃え盛る基地内に隠れているB.O.Wにもセンサーが反応しミサイルが放たれた。

 燃え盛る基地にも喰らわされるミサイルで、炎上する基地が瓦礫と化すと同時にまだ基地内部に残っていたB.O.Wも残らず全て排除できた。

 

 未だ炎がちらほらと残る基地の残骸とミサイルで死滅した無数のB.O.Wの亡骸をヘリの小窓から見下ろすHEAD達。

 その時、二人搭乗していたヘリの操縦士の内の一人が後部座席に座っている総長で変身を解いたバーンズに話し掛けた。

「総長ッ、すいませんが此方に」

 操縦士に呼ばれたバーンズが操縦席に歩み寄ると、声を掛けた操縦士はバーンズに機内に設備されてる通信機の受話器を差し出した。

「緊急の連絡です!」「なにッ?」

 操縦士の言葉に驚きの表情を浮かべるバーンズが受話器を受け取ると、すぐさま通信に出た。

「こちら総長のバーンズ、バーンズだ。どうした?」

 バーンズが受話器越しに訊ねると、受話器からは何やら混迷染みた口調で答えが返ってきた。

「こちら聖龍隊中国支部、中国支部! 現在達芝(ターチィ)の都市部で異常事態が発生……至る所に、そ、その、ゾンビや見た事もないようなバケモノが出現! 市民を襲ったり街を破壊しています!」

「な、なに!?」

「尋常ではない数です、我々だけではどうしようもありません……すぐに応援を! 応援を……」

 切羽詰った様子で話し続ける通信相手の隊士の言動と話の内容に驚愕するバーンズ、更に受話器からは途轍もない人々の悲鳴と爆発音も聞こえてきた。

 と、その時だった。

「……わ、わぁーーーー……ッ!!」

 隊士の悲鳴を最後に通信が途切れたのだった。

「お、おい! どうした、応答しろッ! ……クソッ」

 必死に呼びかけても通信は戻る事無く、バーンズは最悪の状況を思い浮かべながら表情を歪ませた。

 そんなバーンズの様子に逸早く気付いたミラーガール、そして彼女に続いてバーンズと通信側の只ならぬ様子を察したHEADの面々が彼に訊ねた。

「バーンズ、どうしたの?」

 ミラーガールの問い掛けにバーンズは険しい面持ちで答えた。

「うむ……どうも、かなりヤバイ事が俺等の近所で起こっちまっているようだ」

「え……!?」

 自分らの国の近場である中国で起こった事態に血相を変えて語るバーンズの言葉に、問い掛けたミラーガールは表情を一変させた。

 

 そしてバーンズは大型移送ヘリの中で同胞のHEADの面々に厳つい面持ちで告げた。

「みんな……オレ達はこれから中国、達芝に急ぎ向かうぞ! 中国支部の連中が其処で苦戦している、応援に向かうぞ!!」

 

 かくしてHEAD一行は、急ぎ異常事態が発生しているという中国 達芝へと進路を向けた。

 

 其処で彼らを待ち受けているものは。

 

 

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