現政奉還記 B.O.W.編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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現政奉還記 東南アジア市内編 複製の脅威 後編

 

[陰に潜む女スパイと群がる悪魔達]

 

 数多のS-ジュアヴォとの戦闘を潜り抜けた一行は、どうにか落ち着いた場所まで辿り着く事ができた。

「ふぅ、やれやれだぜ。此処まで修司のクローンやゾンビ、それに悪魔の如きジュアヴォまで出現するとはな」

「疲れるのは分かるが、まだ地上まで随分とある。確実に近づいて来ているとはいえ、上手く地上に脱出できるかも怪しくなってきた。気を緩めず進軍するぞ」

 大将と言葉を交わすメタルバードの発言に、聖龍隊に赤塚組そして此処まで率先して戦闘に参加してくれたジェイクや新世代型達も力強く無言の同意を頷く。

 そして先頭のメタルバードが体勢を低くして、ゆっくりと前へと進行していく。

 そんな最中、たまたまメタルバードのすぐ後ろを付いていってた幸平創真が、メタルバードの一枚の服も着用してない背面に残っている大きな傷跡に気づき、思わず声をかける。

「……メタルバード。アンタのその体って……」

「おお、修司の小説を読んで知ってるのか。ああ、今のオレの体はチップバードっていう超獣族の技術の結晶と一体化してるから、どんな攻撃にも耐えられる脅威のボディなんだ」

「い、いや。その傷だけど……」

 と。創真が背面に残っている巨大な傷跡の事を変わらず訊ねようとした矢先、創真の話でメタルバードの変身に関心を持った琴浦春香と真鍋義久も興味本位で話しかけて来た。

「バーンズさんは、そのチップバードと合体して色んな武器に身体を変化させられるんですよね?」

「チップバードと合体してるから強力な武器とかに腕を変形できるみたいッスけど、実際にチップバードを見た事が無いな」

「う~~ん、まあ今は大丈夫だろ」

 真鍋の言葉に、メタルバードは現状で変身を解いても大丈夫だろうと認識した上で変身を解いてみた。

 次の瞬間、メタルバードの体が一瞬だけ光ったと思いきや、瞬時に光は収まりメタルバードの全身はやや赤みの褐色肌の、本来のバーンズの姿に戻った。そしてバーンズの姿に戻った彼の胸から、10センチ程の大きさの板状のエンブレムが羽を羽ばたかせてバーンズの肩の上に飛び乗った。

 バーンズの肩に飛び乗ったエンブレムは陽気な口調で新世代型たちに話し掛け始めた。

「やぁやぁ、皆さん。お初にお目に掛かりますなぁ。ワテが王子直属の配下に当たるチップバードでんがな。どうぞ宜しゅうに」

『……………………』

 既に小田原修司執筆の小説で知り得ていたのだが、実際に人語で、しかも大阪弁で喋る動く金属板のエンブレムを目の当たりにして唖然と言葉を失くす新世代型たち。

 そして以前にも達芝(ターチィ)で対面しているとはいえ、初めてメタルバードの本来の姿であるバーンズと、その変身時に融合している動く金属のエンブレムを目撃したジェイクも愕然となっていた。

「お、おい。メタルバード、それがお前の本来の姿……しかも、その動き回る妙な喋り方の金属……」

 ジェイクが愕然としながらバーンズの肩の上でちょこちょこと動くチップバードを指差しながら指摘すると、当のチップバードが指摘してきたジェイクに話しかけて来た。

「やぁ、ジェイクはん。あんさんとは話すのは初めてやったな。達芝(ターチィ)では何かと活躍してくれはったみたいで。いやはや、親父さんとはエライ違いやなぁ」

「ッ! ま、まあな……」

 動く上に聞きなれない大阪弁で話しかけて来るチップバードの言動に、流石の強面ジェイクも動揺してしまう。

 するとジェイクや新世代型たちと同様に初めて動いて喋るチップバードを目にしたルーキーズの新人勢も、唖然としながらチップバードに声をかけて来た。

「こ、これがチップバード……話には聞いていたけど、本当に動く上に喋るんだな。しかも大阪弁で」「う、うん」

「うわぁ、ホントに動いているよ」

「凄いわ。これが超獣族の科学の結晶……」

 多彩に動き回れる上に機敏な大阪弁で自由に喋るチップバードを見て驚き呆然としてしまうキリト/アスナにシルバー・クロウ/ブラック・ロータスの二組を見かねて、注目の的になっているチップバードは初見の面子であるルーキーズの三組にも変わらぬ言動で接する。

「いやいや、若かりし聖龍隊の隊士の皆はん。いっつもご苦労様やで、ホンマ。王子が修司はんから総長の座を受理されてからは何かと大変やと思いまっか、どうかこれからも王子やワイそれにHEADの皆々様を宜しゅうに。なッ」

『は、はい……』

 大阪弁ながらも丁寧なチップバードからの言葉に、ルーキーズ新人組の【SAO】【AW】【魔法少女マギカ組】の三組は呆気に取られながらも返事をするのであった。

 一方で先ほどから皆々に語り続けていくチップバードを肩に乗せて情景を傍観しているバーンズ、そのバーンズの腹部に目立つ巨大な傷跡を目視し続ける新世代型たち。そして意を決して黙視し続けていた新世代型の星原ヒカルがバーンズに腹部の巨大な傷跡について訊いてみた。

「バーンズさん」「っ。なんだ、ヒカル」

 訊ねてくる星原ヒカルに何かと聞き返すバーンズに、星原ヒカルは単刀直入にバーンズの傷を本人に問い質した。

「バーンズさん、そのお腹の傷……」

「ん。ああ、これはちょっとした過去の戦傷って奴だよ。なに、気にすんな。痕は酷く残っているが、別に大した事じゃない」

 腹部から背中に貫通した、まるで大火傷にも見受けられる巨大な傷跡を擦りながら、バーンズは大した事態ではなさそうにヒカルたち新世代型たちに自分の傷について語った。

 しかし若干ながら複雑そうな表情を浮かべたバーンズの様子と、バーンズの傷の話に触れた途端、聖龍隊の隊士達も同じ様に顔に浮かべた複雑で何処か悲しげな表情を垣間見て、新世代型たちは自然とこの話題は余り触れない方が良いのだなと察し、バーンズの傷について問い詰めるのを止めた。

 

 

 バーンズの腹部から背面に貫通する形で残る大火傷の様な傷跡を指摘するのを制止した後、一行が進むと、とある部屋から話し声の様なのが微かに耳に入ってきた。

「シッ。この先に誰かいる」「!?」『!』

 バーンズの静寂の合図と共に伝えられた事実に驚愕する大将と他の皆々。

 そしてバーンズは物陰に身を隠しながら、静かに話し声が聞こえてくる部屋へと近づいて行った。

 一歩ずつ足を進ませて接近していくバーンズと、彼についていく皆々。

 そして問題の部屋の入り口へとメタルバードが接近すると、依然として中から女性の話し声が聞こえてきた。

「……ええ、此処の研究施設でのデータは粗方入手したわ。だけど殆どが過去の生体兵器に小田原修司の遺伝子を組み込んだだけの代物。以前、確認されたジュアヴォの改良版みたいなので少しばかし強化されているものの、それ以外は以前のモノと何ら変わりないわ」

 携帯通信機器で何者かと密談していると思われる女性の様子を、バーンズは物陰から静かに観察する。

「でも他に面白いデータが入手できたわ。例の小田原修司の遺伝子をベースにした二次元人の研究及び開発……彼らも小田原修司同様に多くのウィルスへの抗体が備わっていて、異常者(ヒール)にも変貌しないと資料にはあったわ。ただ、それは肉体が変異する現象だけで、精神だけが異常化するケースまでは防げないらしいわ。要するに化け物に変異する可能性は無くなったけど、サイコパスには変異しやすいといった難点だけが問題として残っているらしいわ」

「…………………………」

「既に、その二次元人は試作も兼ねて大量に生誕されているわ……え、いいえ大丈夫よ。彼らの遺伝子は結局、小田原修司の遺伝子構造と似ているだけの、形だけの代物ですし、拉致して研究するほどの価値はないわ。私が今回、入手したデータだけでも十分な筈よ。それじゃ、また後で。どうも私以外にも施設で暴れまわっている輩が多いみたいなの。もめ事は避けたいし、手っ取り早く此処から出るわ。もちろん、入手したデータを持ち帰ってね。それじゃ、グッバイ」

 女性は通信機の電源を切り、その場から立ち去ろうと顔を上げた。

 だが、女性が立ち去ろうとした瞬間、彼女の背後から目には見えない存在が声をかけてきた。

「今度は何を企んでいるんだ……?」

 女性はその声に聞き覚えがあり、立ち去ろうとする足を止めて潤しい瞳で背後に意識を向けては言い返した。

「はぁ、誰が暴れまわっていると思ったら貴方だったのね……バーンズ総長」

 女は通話に用いてた通信機を腰のベルトに戻すと同時に振り返ると、其処には姿を透明化して接近してたバーンズが姿を現し厳つい強面で女を睨んでいた。

 女は以前にも対面した経緯のある聖龍隊総長バーンズに微笑を向けて、以前同様に向き合った。

 女の名はエイダ・ウォン。企業組織「H.C.F.」に属する産業スパイ。個人的な素性や目的などは一切不明で名前も偽名である。聖龍隊や、今みんなと同行しているジェイク・ミューラーが関与した達芝(ターチィ)でのバイオハザードテロにも深く関与した女だ。

 バーンズは自分らと同じくタイの地下秘密研究施設に忍び込み、そして暗躍してたエイダに険しい表情を向けて対峙する。

 以前にバーンズから達芝(ターチィ)のバイオテロについて聞かされてた赤塚組もエイダ・ウォンについては粗方の詳細を聞かされてた故に周知しており、更にその赤塚組の意識より達芝(ターチィ)でのバイオテロに関与したエイダ・ウォンの事をテレパスで無意識の内に知ってしまう琴浦春香と斉木楠雄の両名。更にその二人から共有感知を通してエイダ・ウォンの事を周知してしまう新世代型二次元人達。

 ほぼ全員がエイダ・ウォンの事を周知した中、バーンズとエイダは無言の空気の中で向き合い続けてた。

「久しぶりだな、エイダ・ウォン。お前も此処に足を運んでたんだな」

「ええ、でもあなた達までやって来ていたなんて今知ったところよ。それに、よくよく見てみれば今回はかなり賑やかね」

 睨みつつもエイダに問い掛けるバーンズ。それに対しエイダは態度を微塵も変える事無く、バーンズと行動を共にしている集団の多さに指摘を入れる。

 するとエイダ・ウォンとは直接的な接触は過去にしてないとはいえ、イドニア共和国や達芝(ターチィ)でのバイオテロでエイダ・ウォンと瓜二つのカーラ・ラダメスと対面し、そしてエイダ・ウォンからは間接的に助けも入れられたジェイク・ミューラーは、初めて対面するエイダに自前の強面で言葉を投げ掛けた。

「お前さんがエイダ・ウォンか。レオンやクリスのおっさん達から少しは話を聞いているぜ……過去に俺の親父とも接点があったらしいな」

 ジェイクからの指摘にエイダは薄ら笑みを浮かべては言葉を返した。

「あら? ジェイク・ミューラーじゃないの……なに? 貴方も此処に忍び込んでたの? やっぱり血は争えないものね。一度ウィルスによる地獄に足を踏み入れたら、二度と元の生活には戻れないと思っていたけど自分から領域に足を踏み込んでいたなんて。ふっ、これもウェスカーの血縁かしら」

「………………」

 薄らと微笑みながらジェイクの父ウェスカーの話を口にするエイダ。彼女の話にジェイクは厳つい強面を変えず、黙然と表情をエイダに向ける。

 

 エイダがジェイクに話し掛けている最中も彼女に視線を向け、逃さない意思を顔に浮かべるバーンズは、エイダに何故この施設にいるのかの真意を問い詰めた。

「何故お前がここにいる? H.C.F.も此処で行われてた生物兵器の研究に興味があるのか?」

「ええ、核心を言えばそうなるわね」

「……何を知った、何を得たんだ?」

「そうね……あなた達も既に知っているとは思うけど、この研究施設では過去に確認されたいくつかのウィルス系の生物兵器の研究と同時に小田原修司の遺伝子を強化・併用した生体兵器の開発も盛んだったらしいわよ。そして此処の研究者は、遂に小田原修司の遺伝子をウィルスと組み合わせる事で今まで以上に屈強な生物兵器の開発に成功したのよ」

 更にエイダ・ウォンは語り続ける。

「あなた達も見ている筈よ。この施設では大量の小田原修司のクローンが製造されているのを。小田原修司のクローンと数多の生物兵器を組み合わせる事で、従来よりも強靭な生物兵器を生み出せる。もちろん生きた人間同様のクローンを用いる生物兵器の開発の為に、収容所から合法的に集められた異常者(ヒール)を使って様々な生体兵器の開発も進められたわ。結果、小田原修司のクローンを素体として多くの生物兵器が生み出された。中には日本の都市伝説に興味を持った研究者の手によって、小田原修司の遺伝子やクローンを基に都市伝説上の怪異が人為的に作られてもいたわ」

「………………」『………………』

 エイダ・ウォンの話を聞いて、バーンズもその他の皆もエイダの語る研究施設で生み出された生体兵器に黙然と等しく同意した。事実、此処まで来る間に彼らは人為的に肉体を改造されたりウィルス投与でゾンビ化した異常者(ヒール)はもちろん、ゾンビやジュアヴォと化した小田原修司のクローンに自分達を執拗に追跡してきた巨大クローン3-DXと既に遭遇している。

「ほほぅ……他に知ってる事は?」

 バーンズは険しい態度を変えずエイダ・ウォンを問い詰めると、彼女は怪しげな微笑を薄らと口元に浮かべては語り明かした。

「そうね、他は……今タイを中心に起こってるバイオハザードは、この研究施設が発端らしいわ。それも、おそらくは人為的に、意図的に引き起こされた可能性が高いわ。何のためにバイオハザードを引き起こしたのかは不明だけど、少なくともこの混乱に乗じて研究施設に忍び込めたから私にとっては有利に事が動いてくれているわね」

「有利にか……バイオハザードでいったい何百万って人間が死んでいると思ってんだ。かつてのアンブレラも、お前のH.C.F.も結局は同じ外道には変わりねぇな」

「ふふ、上の人間が何をしていようが私には関係ないわ。私はただ任務に忠実なだけ。何より、合法的に凶悪犯の人権を剥奪して非人道的な扱いをしていく世界情勢に変えた貴方の前の総長さんの方が、よっぽど外道って言葉がお似合いじゃない?」

「言ってくれるじゃねぇか……」

 バーンズは絶えずエイダを睨み続け、二人は対峙し合ったまま時間だけが過ぎていく。

 するとエイダ・ウォンの視線が新世代型達の方に向けられた。妖美なエイダの視線に逸早く気づいた真鍋義久はギョッとした強張りの表情で言葉を発した。

「あ、あの……な、何でしょうか?」

 謎めきながらも妖絶な美貌のエイダ・ウォンに見詰められ、軽く動揺する真鍋。

 するとエイダ・ウォンは真鍋を始めとする新世代型達を視界に捉えながら意味深な言葉を投げかけた。

「……なるほど、あなた達が例の新世代型ね。私達、従来の二次元人と違って酷な……それも逃れられようのない運命に縛られてる、哀れな生命(いのち)

『???』

 エイダ・ウォンの発言に意味が分からず困惑してしまう新世代型達。

 そんな新世代型達の反応を目の当たりにしたエイダ・ウォンは、再び視線をバーンズに向けると今度は逆に彼を問い詰めた。

「どうやら彼らには事実を伝えてないみたいね。まあ、事実を伝えたら伝えたらで、もしかしたら彼らが発狂しちゃうかもしれないけど」

「…………………………」

 エイダ・ウォンからの問い掛けにバーンズは何も言い返さず無言を保ったまま。

 更にエイダ・ウォンは自らの問い掛けに何も答えようとはしないバーンズに話し続ける。

「三次元人の思想概念から生み出される、私たち二次元人。しかし昔からの……いわゆる私やあなた達の様な旧型ならまだしも、近年ではモンスターやサイコパスへの変異を防ぐ為に異常者(ヒール)化しないよう遺伝子を特別なものに形成された二次元人も多く生み出されてる……そして遂に生み出されてしまったのが、禁忌の遺伝子を持ち合わせてしまった新世代型……あなた達、聖龍隊の一部の隊士はそれを周知しながら事実を隠蔽し続けている。何だかアンブレラと同じみたいよ」

「………………」

 エイダ・ウォンからの問い掛けに自然と表情をより険しくさせていくバーンズ。

 

 すると此処でバーンズに聖龍隊総部隊長ミラールが後方より歩み寄っては、険しい表情でバーンズに問い掛けてきた。

「総長、この女どうします?」

 ミラールは国際的にも指名手配されているエイダ・ウォンに対して、どの様な処理をするべきか上司のバーンズに訊ねてきた。

 バーンズはミラールの問い掛けに対して険しい真顔で言葉を交わし合った。

「……お前らに任せていいか」

「ええ、構いませんよ」

「それじゃ頼む。ただ殺すなよ。この女からは色々と聞きてぇ事が山の様にあるんだ。組織の事はもちろん、過去のバイオテロに関する情報も、な」

「了解」

 バーンズ総長の命令に同意したミラールは、即座に自分が指揮するスター・ルーキーズに手で合図を送り前に集結させる。

 戦前に集結したルーキーズの面々に囲まれ、逃げ場など無くなったエイダ・ウォン。だが彼女は表情に余裕を感じさせる微かな笑みを口元に浮かべた。

「あら多勢に無勢でか弱い女性を取り囲むのがお好きなの? ……まあ良いわ。折角だし、あなた達の身体能力を見計らうついでに少し遊んであげるわ」

 エイダ・ウォンはルーキーズの屈強な隊士たちに囲まれても尚、余裕ある言動を発し続ける。

 そしてルーキーズは個々で交互にエイダ・ウォンの捕縛に取りかかった。

 

 先手を打ったのはアラジン/アリババ/モルジアナの【マギ】の三人がエイダを取り押さえようと体を張って飛び掛かる。だがエイダ・ウォンは三人の飛び付きを意図も容易く回避してしまう。

 エイダが【マギ】の三人から逃れた所を、今度は【月光条例】の岩崎月光がエイダの顔面に向けて拳を殴り付けようとするが、これもまたエイダは難なくかわしてみせる。

 すると四方八方からの攻撃をかわし続けていたエイダの背後に【トリコ】のゼブラが回りこみ、エイダを後ろから取り押さえた。だがエイダは自身の胴体を丸太の様に太い豪腕で押さえ込むゼブラに対し、腰を曲げて自らの足の爪先をゼブラの顔面に思いっきり蹴り付けた。

「グッ!」

 人体の弱点である顔、それも目に強烈な爪先蹴りを直撃されたゼブラは思わず怯んでしまい、エイダを取り押さえていた両腕を放してしまう。

 機転を生かした爪先蹴りでゼブラからも逃れたエイダであったが、まだまだ彼女を取り囲むルーキーズの手勢は数で状況を押していた。

 本来なら特殊能力を使う場面かもしれないが、いくら国際指名手配犯であるエイダ・ウォンも所詮は普通の人間。致命傷を負いかねない能力の使用をルーキーズの面々は控えているのだ。

 更にエイダは特殊能力や常人に使用すれば必殺になってしまうであろう武器を使わないルーキーズと同等に渡り合う為なのか、彼女自身も武器を使用せず瞬時に発動できる格闘技で応戦していく。

 エイダが繰り出すバックキックでスカイハイが見事に吹き飛ばされ、六道りんねやシンク・イズミにキリトなどの男共を華麗な旋風脚で蹴り飛ばしていく。

 そんな状況下で、総部隊長のミラールは何か閃いた。

「! そうだわ」

 ミラールは咄嗟に得物であるミラージュ・ガンを従来よりも形がスマートな形態に変化させては、その銃をエイダ・ウォンに向けて発砲した。

「!」

 銃声と青い閃光で素早く自分に向けての銃撃だと気づいたエイダは身を反らし、反射的に銃撃から回避してみせる。

 そしてミラールが放った青い閃光の銃撃を数発かわしたエイダは、青い閃光の弾丸を目にして発砲してきたミラールに顔を向けて彼女に言った。

「なるほど……その青く輝く銃撃は、一種の麻酔弾の様ね。私を殺さず、眠らせて捕縛する気ね」

 この時、一瞬だけ発砲したミラールと銃撃を回避したエイダが睨み合った。

 そしてミラールは再びエイダに向けて麻酔効果のある魔弾を発射していき、エイダはそれを回避しながら同時に周囲を取り囲むルーキーズの面子を飛び越えながら容易くかわしていく。

 肉弾戦でも並々ならぬ鍛錬を積んでいる筈のルーキーズの面々を軽く飛び越えたり避けたりして、嘲笑うかのように包囲網を潜り抜けていくエイダ・ウォン。だがルーキーズも負けずと果敢に動き回るエイダ・ウォンに飛び掛かり彼女を取り押さえようとする。

 

 しかしルーキーズの面子は遂に痺れを切らし、巧みに体当たりをかわしていくエイダに強烈な攻撃を仕掛け始めてしまう。そう、常人なら下手すれば死んでしまう様な強力な攻撃を。

 足場である床をも無数のヒビや亀裂を生じさせる程の強烈な攻撃を繰り出し始めたルーキーズの無謀を目の当たりにし、バーンズが口と腕を動かした。

「お前ら! 殺すなって言っているだろ。仕方ねえな」

 そう言い放つと同時にバーンズは腕をエイダに向けて伸ばした。伸びた腕はそのままエイダ・ウォンの上半身に巻き付き完全に彼女の動きを封じた。

 エイダの動きを封じたのを確認すると、バーンズは徐々に腕を縮めながらエイダに歩み寄っていく。

「観念しろ、エイダ・ウォン。これで年貢の納め時だ」

 台詞を吐きながらエイダを睨み付けるバーンズ。だがエイダは強靭な圧力で上半身を締め付けられ地味に痛みを感じつつも、自身を伸縮自在の腕で捕縛し歩み寄ってくるバーンズに微笑を向けた。

「ふふ、これで私を捕まえた気でいるの? おめでたいわね」

「ウッセェ!」

 上半身を締め付けられながらも強気でいるエイダの態度に若干の反感を覚えるバーンズ。だがエイダは怪しい微笑を浮かべながらバーンズに台詞を呟いた。

「あなた達は確かに世界中の人々から一目置かれてる存在、それは確かだわ。だけど……大勢の人々に知れ渡っているって事は、同時に自身の個人情報も晒されている事よ。つまり……」

「……?」

「つまり……弱点も大勢の人々に知られちゃっているって訳よ」

 そう言った瞬間、エイダは隠し持っていたスタンガンを手にすると、それを自分の上半身を締め付けてるバーンズの腕に押し付けた。

「ぐぎゃああア……!!」

 スタンガンを腕に押し付けられたバーンズの全身に強力な電圧が流れ、バーンズは凄まじい電圧に絶叫した。

 そしてバーンズは余りの衝撃でエイダを締め付け捕らえていた腕を緩めると同時に、縮めては元の長さに腕を戻してしまう。

 体内に流れた電気が帯びているバーンズは、電撃で痺れた片腕を押さえていると、その情景を目前にエイダがバーンズに話し掛ける。

「ふふ、ほら見なさい。有名すぎるって事は、同時に自分の弱点が公になっているって事♪ 軟体体質の貴方が電撃には非常に弱いってのは周知されてるのよ、バーンズ総長」

「ッ……!」

 スタンガンを押し付けられた腕を押さえながら淡々と語ってくエイダを睨むバーンズ。

 するとその時、エイダの聴覚が微かに反応した。そしてエイダは移動用に用いるフックショットで高所の人1人がやっと通り抜けれる細幅に上がっていった。

「それじゃ、私はこれで失礼するわ。時間をかけ過ぎるのも、お互いに分が悪いでしょ」

「待て、エイダ!」

 そのまま逃避行しようとするエイダにバーンズが怒鳴る。

「あなた達はあなた達で早く脱出した方がいいわよ。此処の施設を牛耳ってる軍人さんは、例の小田原修司のクローンを媒体とした生物兵器のテストも兼ねて、あなた達に色々とぶつけているみたいよ」

「!!?」

 エイダのこの発言にバーンズだけでなく他の面々も一同に愕然とした。更にエイダは意味深な発言を続ける。

「脈々と受け継がれる小田原修司の血脈。その末端である新世代型の二次元人……非常に興味をそそられるけど、今のところは放っておくわ。だけど行く行くは自分達の出生に、そう宿命に苦しむ事でしょうけど」

『……!?』

 エイダの発する謎の言葉を理解できず困惑する新世代型一同。

「それじゃ私はこれで。その鬼の血を引いてしまってる新世代型を守りたいのなら早くこの場から遠ざかる事よ。今の戦いで個体が群がってきたみたいだから。さよなら」

 そう言い残して、エイダはそのまま細幅の奥まで駆け出し、姿を消してしまった。

「エイダ! ……クソッ」

 エイダ・ウォンを取り逃がしてしまった事を悔やむバーンズ。しかしスグにバーンズ以外のHEADの面々は、エイダが言い残した「この場から遠ざかる事」の言葉に何かの事態を察した。

 そしてバーンズ以外のHEADの面々が聞き耳を立てると、遠くから無数の足音が微かに聞こえてきた。微弱に床に振動するその足音はバーンズ以外のHEADだけでなく他の一同も感じていた。

「バーンズ、今はエイダ・ウォンの事よりも、この足音だ。何か来るぞ!」

「ッ!?」

 キング・エンディミオンの一声でバーンズもようやく自分達の許に群がってきている無数の足音に気づく。

 無数の駆け足の中には時おり弱い足取りで駆けてくるかの様な足音が混ざっており、続々と此方へ近づいて来ているのが感じ取れた。

 此処で逸早く新世代型にして超能力者の斉木楠雄が、自身が秘めている超能力の一つ千里眼にて己の視力を高めて自分達の許に群がってくる存在を視認しようと試みた。

 すると斉木の千里眼が捉えた視界には、無数の人型の熱反応が大群で此方に向かって来ているのが確認できた。斉木は千里眼で視界に映った群集の高熱反応からそれが何なのか即座に理解し、バーンズたち聖龍隊の面々や自分と同じ新世代型の皆々に言い伝えた。

「バーンズさん、ジュアヴォです! おそらくS-ジュアヴォだと思われますが、それが大群でこっちに向かってきます!」

「クソ! さっきの戦闘音で感づかれたかッ。全員、S-ジュアヴォとの戦闘に備えろ!」

 斉木から千里眼で得た情報を聞いて、総長のバーンズは元相棒である小田原修司のクローンを素体として生み出されたS-ジュアヴォの群集との戦闘に備えるよう仲間の聖龍隊に告げる。そして同時に己の戦闘準備として、再びチップバードを胸に当てて無言でメタルバードに変身する。

 

 メタルバードに変身したバーンズは同時に聖龍隊の仲間にハッキリととした物言いで伝えた。

「良いか、お前ら。俺達が今、大勢の新世代型たちを護送している状況だってのを忘れるな。各自、無理な戦いはせず現状突破のみを考えて戦闘を開始しろ」

 そしてメタルバードと同じく戦闘体制に入ってる聖龍隊の面々は、自分達が護衛している新世代型達を傷つけないよう、陣形を組んでS-ジュアヴォに臨戦態勢を構える。

 

 そんな一行の心理を知らず、無数のS-ゾンビやS-ジュアヴォが次第に数を増して群がってきてた。

 

 

 

 

[突破せよ! 変異する悪魔のB.O.W]

 

 偶然にも居合わせたエイダ・ウォンを捕縛しようと試みた聖龍隊。だが、その間の戦闘音により周辺に無数のS-ゾンビやS-ジュアヴォが集まってきてしまった。

 当のエイダは謎めいた言葉だけを残し、その場から早々と立ち去ってしまう中、聖龍隊は赤塚組と共に新世代型を警護しつつ群集する敵個体の迎撃に備える。

 

「クッ、寄りによって前総長のクローンから作られたゾンビとかと戦う破目になっちまうとは」

「あんまり気が進まねぇな……それにしたって、やけに群がって来やがったな」

「当たり前でしょ! アンタ達がエイダを捕まえようと激しい技ばっか使ったから辺り一帯に轟音が響いて、それでゾンビやジュアヴォらが集まって来ちゃったんでしょッ!! 見なさいッ、エイダ一人を捕まえようとして床や壁に窪みまで生み出すほど強力な打撃ばっかしてたら嫌でも生物兵器が集まってくるわよ」

 自分達の周辺に集結しつつある生物兵器個体に対して呆れたような草臥れたような素振りで余り気乗りしない岩崎月光とトリコの発言に、ミラールが癇癪を起こして怒鳴り散らす。

 そんな最中にも、ゾンビやジュアヴォといった脅威は着々と周辺に群がってきた。

「来たぞ、応戦開始!」

 眼前にゾンビが姿を見せた途端、メタルバードが聖龍隊や赤塚組の皆々に戦闘の開始を告げる。

 次第に距離を縮めて接近してくるゾンビの中には、小田原修司のクローンにC-ウィルスが感染したS-ゾンビだけでなく白衣を纏っている地下研究施設の研究員がゾンビ化した個体も見受けられた。

 ゾンビ達は両手を前に突き出し、眼前の対象者を掴み掛かっては御得意の噛み付きで喰らい付こうと図る。

 しかし聖龍隊の隊士たちは周囲に群がってくるゾンビに怯む事無く果敢に抗戦していく。

 

 一体のS-ゾンビがキューティーハニーに向かって腕を振るってきた瞬間、彼女はしゃがんで回避した直後にS-ゾンビの腹部に肘打ちを喰らわす。そして回し蹴りで弾き飛ばし床に倒れた所を足踏みで追撃。

「ハニー、後ろは任せて!」

 群がるB.O.Wに挑み続けるキューティーハニーの背後に、彼女の旧友である赤塚組の秋夏子が支援として回り込み、ハニーの死角から迫るゾンビ共に向けて銃器を揮い続けていく。

 更に前方や背後から抱きついて来るの固体に対しても、聖龍隊士はしゃがんでかわしては同じく腹部に肘打ちを当てて床に倒れた所を踏み付けや武器で追撃していく。

「俺達も負けず劣らず銃器で応戦するぜ! おらおら、かかって来いやゾンビ共!!」

 勇敢に立ち向かう聖龍隊の勇姿に感化されて、赤塚組の頭領 大将が配下の幹部達を従えて戦前に躍り出る。

 すると一体のS-ゾンビが少し離れた所から飛び掛かってきた。だがこれにセーラーウラヌスが飛び掛かってくるゾンビに拳を振り上げて床に叩き付ける。

 更に遠くに立ち尽くすゾンビ個体の中には、遠距離からの攻撃手段として口から嘔吐物を吐き出し強力な胃酸を放射してくる。が、自分達に放射されてきた嘔吐に対してセーラームーンは身を低くし、回避した瞬間に嘔吐したゾンビ個体に強烈な肘打ちで反撃する。

 その時「っ、おい! あっちから斧を持った奴が、うさぎの姉ちゃんに迫ってるぞ! なる」「ええ!」と、セーラームーンに接近する斧を手にしたゾンビを見かけた大将が、セーラームーンの近くで応戦してた配下の海野なるに急いで声をかける。これになるは返事をすると同時に親友であるセーラームーンに接近してくる斧を持った研究員のゾンビに発砲し撃退してみせる。

 ゾンビやジュアヴォの固体の中には武器を持つ個体も確認された。ゾンビの場合は殆どが鉄パイプや斧などの鈍器であった。そしてゾンビはその鈍器を対象の生きた人間に向かって上や横方向から振り回して攻撃してきた。

 そんな武器を持つゾンビの群集に、電撃を得意とするセーラージュピターが雷をゾンビ達が手にしてる金属製の鈍器に落として一掃してみせる。だがそれでも、まだまだゾンビは周辺に群がっていた。

 武器を持つゾンビの攻撃に対し、ジュピターキッドなど以前にも達芝(ターチィ)でゾンビやジュアヴォと対戦した経験があるHEADの面子は、鈍器が振り当てられる瞬間に武器を持つ腕を受け止め、相手が持つ武器を取り上げてはそれで頭部を殴り付けて反撃。これを見た他の聖龍隊士や赤塚組の面々も同じ様に応戦していった。

 また武器が上方から振り下ろされる場合は、直撃の寸前で武器を受け止め、それを奪い取って逆に相手のゾンビの頭部に振り下ろし殴打していく。

 しかし、そんな状況の中、赤塚組を初めとする銃撃でゾンビを処理していく者達の攻撃を受けたゾンビの個体から変異体が出現してしまう。そう、ゾンビの強化版ともいえるブラッドショットだ。

 ブラッドショットに変異した個体が歩み寄っていくと対象者の眼前で自らの腕を振り上げて相手に攻撃を仕掛けていく。

「ウッ」

 乱戦の中で接近してくるブラッドショットに気づかず死角からアッパーカットに近い打撃を受けてしまう大将。もちろん大将だけでなくHEADたち聖龍隊にもブラッドショットに変異した個体が襲い来る。

 だがブラッドショットの腕を振り上げるアッパーカットをセーラーサターンは瞬時に回避し、その腕を掴んでは前へ投げ返し、追撃とばかしに跳び蹴りをお見舞いしていく。

 他にも飛び掛かってくるブラッドショットを受け止めると同時に床に叩き付けて、追撃にブラッドショットの弱点であるむき出しの心臓を力いっぱいに踏み付けて追撃でトドメを刺していくという手法も、先ほどの戦闘で学んだ面々は実行していく。

 戦闘を続ける聖龍隊や赤塚組に牙を向けるのが、遂にゾンビやその変異体のブラッドショットだけでなく、容易に変異して自らの肉体や戦闘力を強化してしまうS-ジュアヴォまでも襲い掛かり始めた。

 眼前に迫り群がってきたS-ジュアヴォに銃器を向けて発砲していく面々。だが余りにも数が多すぎで対応し切れなかった。

 すると一体のS-ジュアヴォがナイフ片手に突っ込んでは突き刺そうと突進し、アッパーの要領でナイフを振り上げた。だがその瞬間、ナイフで斬り付けられそうになったコレクターユイは瞬時に体を反らして回避し同時に相手のS-ジュアヴォの足を躓かせ転倒した所にトドメを刺す。

 と、此処でS-ジュアヴォの問題点が発生した。銃撃で銃弾を受けたS-ジュアヴォの身体が変異し、更に肉体が強化する個体が現れ始めた。

 片腕に銃弾を受けたジュアヴォは、その負傷した腕を肥大化・硬質化させ変異するルウカ・スルプ。腕が硬質化しつつ巨大な鎌のように変形・巨大化した姿で、ルウカは「腕」を、スルプは「鎌」を意味する。

 ルウカ・スルプが持ち前の硬質化した片腕で横殴りしてくる。だが攻撃をディープ・ブルーは華麗にかわし、がら空きの腹部に武器を突き刺し一撃で葬る。武器を持ってない者は、同じ様にかわした直後にがら空きの腹部に強烈な蹴りを入れて激しく蹴り飛ばしていく。

 同じくルウカ・スルプの縦方向からの殴りに対しては、振り下ろされる硬質化した腕を受け止め、人間で言えば肘の部分からへし折り、ルウカ・スルプが膝を着いた所をへし折った硬い腕で背後から頭部を殴り付けて完全に息の根を止める。

 更にS-ジュアヴォの個体には研ぎ澄まされた青竜刀を振り回して乱舞し回転しながら斬りかかって来るのも出現。だが青竜刀が振り回された瞬間、青竜刀を持つ手を掴み、そのまま青竜刀を相手のS-ジュアヴォの背中に突き刺し貫通させて倒してみせるセーラーマーキュリー。

 それ以外にもマーキュリーは同じ聖龍隊のブルーローズと連携して水と氷の能力で迫ってくるS-ジュアヴォに応戦していく。マーキュリーの水技でずぶ濡れになったジュアヴォをブルーローズの氷の能力で凍らせ、カチカチに凍ったところを素早く強烈な打撃で粉砕していく。これには如何に高熱を発するジュアヴォでも堪らない。

 だがその時、連携で応戦していくマーキュリーとブルーローズの死角から巨大な物体が猛烈に迫っていた。

「! 亜美ちゃん、ブルーローズ、後ろ!」『!』

 死角から迫る物体に気づき、乱戦の中で果敢に肉弾戦で戦っていたワイルドタイガーがマーキュリーとブルーローズの二人に呼びかける。タイガーの呼び声に二人も死角から迫る物体に気づく。が、僅かに気づくのが遅く二人は迫ってきていた物体に直撃し激しく殴り付けられ転倒した。

「あっ」「きゃっ!」

 転倒するマーキュリーとブルーローズ。二人を死角から殴り付けたのは、ぬめりのある長い触手の様な腕であった。その腕の持ち主はルウカ・カヴァタネ。カヴァタネは「捕獲」を意味する。スルプとの差異は離れた距離や物陰から標的をつかみ叩きつける攻撃手段。

 しかし此処でマーキュリーとブルーローズを殴り付けたカヴァタネは、更に追撃として腕の先端部の突起物で二人を捕らえようと、長い腕を伸ばしてきた。

 双方のどちらかが捕らえられようとされた瞬間、メタルバードが二人の美女の危機に颯爽と駆けつけ、変形・長大化したルウカ・カヴァタネの伸びてきた長い腕を両腕で捕らえて、そのまま捕らえた腕を振り回してカヴァタネを他のゾンビやジュアヴォの群集に向けて投げ飛ばし一掃してみせる。

 

 そんな素早い対応を実演するメタルバードに続いて、大将率いる赤塚組も敵集団に小銃を連射して応戦していく。

 だが此処で赤塚組幹部の一人アツシが不覚にもゾンビやジュアヴォの集団に取り囲まれ、身動きが取れなくなってしまった。必死に銃を乱射して応戦するアツシだが、弾倉が空になってしまい慌てて実弾を装填しようとするが、その隙にゾンビやジュアヴォに壁際まで追い詰められてしまい絶体絶命の状況に追い込まれる。

 すると其処にロックバイソンがアツシを追い詰める集団に猛進し体当たりを仕掛けていく。バイソンの強烈な突進と強固なボディスーツによる体当たりで吹き飛ばされるゾンビやジュアヴォ。アツシがその光景に唖然としてる眼前で、バイソンは更に追撃とばかしに床に転げまわるゾンビやジュアヴォに向かって屈強なボディスーツと鍛え上げた肉体によるボディ=プレスで押し潰し、一気に鎮圧していく。

 バイソンのボディ=プレスを受けてゾンビは溶けて消滅しジュアヴォは発火し焼失していく中、バイソンは唖然とするアツシに親指を立ててガッツポーズを示す。これに唖然としてたアツシも、自分の窮地を救ってくれたバイソンに笑顔でポーズを示し返す。

 しかしバイソンが一掃した集団以外にも、続々とゾンビやジュアヴォが群集として眼前に集まってくる。赤塚組は必死に銃撃で応戦しつつ、この乱戦を掻い潜れる様に道を切り開こうとするが数の多さに圧倒される。

「クソッ、一向に数が減る気配がねぇ……!」

 懸命な抗戦にも拘らず勢いが止まらないゾンビやジュアヴォに圧倒されていく大将は、慣れない生物兵器相手の戦闘に苦戦を感じていた。

 すると苦戦に感じる大将ら赤塚組に横で銃撃していくジェイクが声をかけてきた。

「おっさん達、ここでへばってたらそれこそお終いだぜ。最後まで諦めなきゃ、戦況は打開できるもんさ。それは生きた人間相手でもB.O.Wでも同じだ」

 そう大将たち赤塚組に言ったジェイクは、次に銃撃を掻い潜って間近に接近してきたS-ジュアヴォを前に大胆にも駆け寄っていく。

「おっ、じぇ、ジェイクのあんちゃん……」

 突然、間近まで接近してきたジュアヴォに対して駆け寄っていくジェイクの行動に動揺してしまう大将たち赤塚組。

 するとジェイクはまず最初に眼前のジュアヴォの足に銃弾をお見舞いし、ジュアヴォの体勢が崩れた瞬間、強烈な体術で目の前のジュアヴォを吹き飛ばして見せた。

 更に戦闘で背を向けてたジュアヴォに対しては、また先ほどと同じ様に今度は後ろから足を狙撃し、ジュアヴォが倒れた所を両足を掴んでジャイアントスイングで勢いよく振り回し前方の群集に向かって投げ飛ばす。そして大勢のジュアヴォやゾンビが転倒した隙に、床に転がる敵の群集の中にジェイクは手榴弾を放り込み一掃。

「ほらよ! こんな調子で倒せば良いんだッ」

 ジャイアントスイングに続いて手榴弾で群集を一掃したジェイクは、更に素早く銃を発砲しS-ジュアヴォの頭部を狙撃しては怯ませると、怯んだ隙に相手のジュアヴォの頭を掴んでそのまま壁に叩き付けて焼失させてみた。

 ジェイクの体術を交えた戦闘で肉体が発火し焼失するジュアヴォを目撃した大将たちは、同じ様にとジュアヴォに向けて再度発砲していく。

「弾幕で押し通せ!」

 眼前まで迫りくるジュアヴォの群衆に対して大将は小銃を乱射しながら同時に配下の赤塚組幹部たちにも連射による弾幕で押し返すよう呼びかける。大将の呼びかけに赤塚組は迫ってくるジュアヴォの群衆に銃弾を浴びせていく。

 先頭のジュアヴォから続々と銃弾を浴びて発火・焼失していく。だがジュアヴォの群衆の勢いは止まる事を知らず、数で圧倒し群がってくる。

 するとその時である。銃弾に何か固いものが接触したような音が聞こえると同時に、焼失していくジュアヴォの中から右腕がまるで盾の様に巨大化・変形した個体が先頭に現れた。

「な、なんだあの野郎は!?」

 先頭に姿を現した盾の様な腕を持つ数体の個体に驚く大将。果敢にも銃撃を集中させて、盾の様な腕を持つ個体を撃破しようと試みる赤塚組。しかし盾の様な腕に弾丸は防がれ、銃撃は効力を示さなかった。

「こ、コイツは……」

 迫りくる盾状の腕を持つ個体に、銃を連射しつつも激しく動揺し始める赤塚組のテツ。次の瞬間、その盾の腕を持つジュアヴォ個体がテツの眼前に近寄った瞬間、変形した盾状の腕を振り上げて硬質な腕でテツを殴りつけた。

「ぐあッ」「テツ!」

 硬い変形した腕で殴り付けられ床に這いつくばるテツを見て声を上げる大将。

 すると盾の様に硬く変形した腕で鉄を殴り付けたジュアヴォ個体に、テツと同じ赤塚組のミズキが腕をレーザー銃に変形させてテツを殴り付けた盾の腕を持つジュアヴォを攻撃した。

「グアア……ッ」

 ミズキのレーザーを受けたジュアヴォは断末魔を上げながら倒れ、そして発火しつつ焼失した。

 その盾の腕を持つジュアヴォとの一部始終を見たメタルバードは他の面々にも聞こえるように言い放った。

「そいつにも気を付けろ! それはルウカ・ベデム。盾の様に変形した腕に銃撃は殆ど効かねぇ! 注意しろ」

「な……うわっ」

 メタルバードからの注意掛けに気を取られた大将に、他のルウカ・ベデムが防御体勢のまま突進し大将に体当たりしてきた。ベデムとは「盾」を意味する。

 前からの銃撃に滅法強いベデムが出現した事で苦戦に追い詰められる赤塚組。すると盾で攻撃を防ぎながら突進してくるベデムの突撃をHEADの真紅が宙を舞いながら華麗にかわすと、ベデムの背後に回って後頭部を攻撃しベデムを焼失させる。

 真紅を始めとするローゼンメイデンの5体も乱戦の中でS-ジュアヴォを各個撃破していく最中、大将たち赤塚組も何とかベデム以外のジュアヴォを倒そうとする。しかし多少の知性も残ってるジュアヴォは連携して前方からの銃撃を防ごうと、先頭に変形・巨大化した片腕で銃撃を防いでいくルウカ・ベデムに手を焼いた。

 しかしそんなベデムに、以前にも様々な個体のジュアヴォと戦闘を経験したHEADは各個体に見合った戦術で応戦していく。

 ルウカ・ベデムに対しても、ミラーガールなどの女性HAEDは楯状の腕を振り下ろしての攻撃が直撃する寸前、後退して回避し速攻で強烈な蹴りをベデムの顔面に叩き込む。

 戦闘経験のあるHEADがジュアヴォ各種に応戦していく中、他の聖龍隊士や赤塚組は変異してないジュアヴォやゾンビなどの敵の撃破に集中する。

 そんな戦闘を続ける聖龍隊や赤塚組、さらにジェイクに混じって本来なら護衛される側である新世代型二次元人の中で数少ない戦闘可能な新世代型たちまでも、S-ゾンビやS-ジュアヴォとの戦闘に加わっていた。

「聖龍隊や赤塚組の方々に少しでも加勢するのだ! 我らの道行は自分自身で切り開くのだ!!」

 配下である蛇崩乃音(じゃくずれののん)/蟇郡苛(がまごおりいら)/猿投山渦(さなげやまうず)/犬牟田宝火(いぬむたほうか)の4人に強く呼びかけながら自らも率先して自分たち新世代型に襲い来るジュアヴォやゾンビに応戦していく鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)。そんな本能字学園の四天王同様に、片太刀バサミで群がるS-ジュアヴォやS-ゾンビを斬り捨てていく纏流子。

 纏流子や鬼龍院皐月たちと同様に、新世代型の中では数少ない戦闘可能の二次元人である栗山未来に名瀬兄妹の3人も勇猛果敢にジュアヴォなどの生物兵器に挑む。

 と、その時。栗山未来が自らの血を結晶化させて形成した刃で迫ってきたS-ジュアヴォの頭部左側面を斬り付けた時、斬り付けられたS-ジュアヴォの頭部がみるみる内に変異していった。

 栗山未来に頭部を斬り付けられたS-ジュアヴォの損傷を受けた頭部はまるでクワガタの角の様な巨大なアゴに変異してしまう。そして頭部を巨大なアゴに変異したS-ジュアヴォは、その変異した巨大な二本のアゴで斬り付けてきた栗山未来に迫ってきた。

「!」

 二本の巨大なアゴを動かし迫ってくる変異したS-ジュアヴォに驚愕する栗山未来は即座に凝固した血の刃で迎え撃つ。しかし変異したアゴの外郭は強靭で正しく歯(刃)が立たなかった。

 そうこうしている内に変異したS-ジュアヴォは強靭なアゴで栗山未来に噛み付いてきた。未来は慌てて迫ってくる巨大なアゴを両手で押さえ止めるが、強力なアゴの力に圧倒されてしまい、もう寸前で巨大なアゴに頭を噛み付かれる瞬間。

 栗山未来の頭を噛み砕こうとする変異体ジュアヴォに、聖龍HEADのミュウレタスが蹴り飛ばしては栗山未来の難を救う。

 ミュウレタスの蹴りを喰らって吹き飛ばされた頭部が変異したジュアヴォは床に転げ倒れ、そこにミュウレタスが間髪入れず床に転がる変異体S-ジュアヴォの変異したアゴの片側を掴んでは力尽くで引き千切ってみる。

 アゴの片割れを引き千切られた変異体ジュアヴォは悶えながらそのまま焼失する。

 この時ミュウレタスが倒した変異体ジュアヴォはグラヴァ・スメッチ。破壊されたり損傷を受けた頭部をクワガタの角のような巨大なアゴに変質させたジュアヴォ。外殻は強靭で非常に強力な噛み付き攻撃を行うが、口内には弱点となるコアが形成されている。クラヴァは「頭」スメッチは「粉砕」を意味する。

 すると他のクラヴァ・スメッチが変異した強靭な外郭のアゴで戦前の者たちに迫り、強力な噛み付き攻撃で相手の頭部を粉砕しようと襲い掛かってくる。

 迫ってくるスメッチにジュピターキッドは、得物の鞭でアゴの片割れを捕まえると瞬時に鞭を振り回し、他のジュアヴォ群衆に投げ飛ばしては牽制していく。その他のゾンビやジュアヴォに対してもキッドは同様に鞭で頭や腕を捕まえては器用に他の集団に向けて投げ飛ばしていく。

 だがジュピターキッドや他の聖龍隊士も全ての敵に対応できる訳でもなく、攻撃を掻い潜ったグラヴァ・スメッチの個体が突進してきた。

 これにHEADの七海るちあがクラヴァ・スメッチがクワガタの角の如き巨大な頭部のアゴで挟みかかる瞬間、足を躓かせ転倒させると即座にスメッチの背中を足で踏みつけ固定させつつ頭部のアゴの片側を強引に引きちぎり、スメッチを倒す。

 更にジェイクや聖龍HEADが眼前に迫ってくるスメッチの弱点である口内の形成された赤いコアに向けて攻撃していくのを目の当たりにして、大将たち赤塚組もスメッチの赤いコアに向けて発砲し応戦し出した。

 

 キリトやアスナ、そしてHEAD以外の聖龍隊士らも迫りくる多種多様のジュアヴォを果敢に撃破していく中、自分の身は自分で守ろうと戦闘型でない新世代型二次元人たちの中にも生物兵器と応戦を始め出す者たちの姿も見られた。

 剣や刀などの刃が振り上げられ激突する音や火花の如く紅い閃光の銃声が飛び交う中、群がってくる敵の数々に時には素手で、時には鉄パイプで必死に食い下がろうとする新世代型たち。

 と、懸命に襲い来るS-ジュアヴォの猛威に立ち向かってる新世代型たちに、突如としてミラーガールの声が届いた。

「危ない、上!」

 ミラーガールが差した言葉に気づき一瞬だけ動きが止まる新世代型の猿田学と井ノ原真人。次の瞬間、その二人の真上から巨大な何かが落下し猿田学と真人を踏み付けた。

「ッ!」「ぐはっ」

 巨大な何かに踏み付けられた猿田学と井ノ原真人は思わず床に腹這いになっては悶絶してしまう。二人の後方でジュアヴォやゾンビの脅威に怯えていた他の新世代型達が真上から猿田と井ノ原の両名を踏み付けた異形に目を向けてみると、その異様な姿に驚愕した。

 なんと猿田と井ノ原を踏み付けたのは、腰から下にかけての下半身がバッタの様に変形した足のジュアヴォ。しかも上半身は普通の人体の体格で右腕に小銃を持った小田原修司の人相と瓜二つの複眼が怪しく光ってた。

「ば、バッタ!?」

 バッタの様な巨大な足に変形した変異体S-ジュアヴォを目の当たりにした真鍋義久は、巨大なバッタの足をしたS‐ジュアヴォに激しく動揺してしまう。

 するとそのバッタの足に変形したS-ジュアヴォは、その大きな足で長身と化した頭身で新世代型達を見下ろすと同時に、手にしてた小銃を構えると銃口を新世代型達に向ける。

 銃撃を予感した新世代型達は、高い位置からの銃撃に恐怖し、中には反射的に頭を抱えてしゃがみ込む新世代型の姿も見受けられた。

 その瞬間、新世代型達にバッタの足をした変異体S-ジュアヴォの銃撃が降り注がれようとした矢先に、HEADの獅堂光が手にしていた剣を逆手に持ち替え、その剣で変異体S-ジュアヴォの下腹部を一突きにした。

「グアア……ッ」

 下腹部を突き刺された変異体S-ジュアヴォは、横のめりで倒れては肉体が発火し、灰になっては焼失した。

 獅堂光が得物の剣で一突きに倒した変異体はノガ・スカカネ。足がバッタのように変形した変異体で、脚力が大幅に向上し高低差をものともせずに行動可能で、背後に近寄られれば強力な蹴りを放ってくる。下半身自体も強靭で動きを封じるのは難しいが急激な変異の代償から下腹部は脆弱な状態である。ノガは「足」スカカネは「跳躍」を意味する。

 しかしHEADの魔法騎士、光がノガ・スカカネを倒したのも束の間。更に他のスカカネ個体が銃を乱射しながら巨大なバッタの様な足で歩み寄ってくる。

 普通よりも高い位置からの銃撃に身を低くしながら掻い潜っていく聖龍隊の隊士たち。そしてどうにかスカカネに接近するとHEADから伝え聞いた弱点の下腹部目がけて攻撃を仕掛けては各個撃破していった。

 しかし聖龍隊や赤塚組の攻撃を掻い潜った数体のスカカネは、戦前の者たちを見下ろしながら装備している銃器での攻撃に加え、接近しての強烈な脚力での蹴りを周囲の人々にお見舞いしていく。

 此処でバッタの脚の様に下半身が変異したノガ・スカカネの強力な蹴りによる攻撃をHEADの龍咲海が一瞬の内にかわすと、瞬時に弱点である下腹部に斬撃を加えて怯ませ、更に追撃として回し蹴りでスカカネを吹き飛ばして焼失させる。

『……………………………………』

 聖龍隊の見事なまでの変異体を含むジュアヴォの対処に驚きを隠せない新世代型たちは愕然と情景を見詰めていた。

 その時、暗闇の奥から刃を振り回す風音と共に何かが接近してくるのを新世代型達が気が付いた。

「ん? なんだ、何か来るぞ」

 新世代型たちと同様に警護されてる側のプロト世代ギュービッドが傍らのチョコや桃花らと暗闇の方へ目を向ける。

 すると暗闇の奥から現れたのは、我武者羅にナイフを振り回し駆け寄ってくる異形の頭部をしたS-ジュアヴォであった。

「な、なんだよアレ!」

 突如として暗闇の奥からナイフを振り回しながら猛進してきた異形の頭部をした人型を見て一気に血の気が引いてしまう神浜コウジ。その間にも異質な頭をしたS-ジュアヴォはナイフを振り回しながら急接近してきた。

 このナイフを我武者羅に振り回して接近する変異体はグラヴァ・ベグウナツ。三つの蝉のような頭部を持つ変異体で、自身の身も顧みず倒されるまで標的に近寄り攻撃を繰り返すため非常に危険な存在である。これは三つの頭部それぞれが独立した意思を持っていて、それぞれが別々の行動を取ろうとした結果による。因みにベグウナツは「暴走」を意味する。

 そんな自身の身も顧みず倒されるまで標的に近寄り攻撃を繰り返す非常に危険な変異体のグラヴァ・ベグウナツが、無尽蔵にナイフを振り回し新世代型達に接近してくるのをHEADのミュウイチゴがナイフが振り下ろされる瞬間に腕を受け止め、それぞれが独立した意思を持つ三つの頭部を肘打ちで粉砕し撃破し、新世代型達を身を挺して守る。

 同様に他のHEADも独立した意思を持つ為に暴走するベグウナツの変異した三つの異形の頭部を攻撃して、ベグウナツを灰に還す。

 

 群がるS-ジュアヴォやS-ゾンビの群集に応戦しながら道を切り開き進んでいく一行。

 行く手を塞ぐジュアヴォやゾンビを狙撃しながら進路先を切り開いていく赤塚組に続いて、同行しているジェイクも同様に敵の頭部を狙撃しながら追撃で強烈な体術を喰らわして反撃していく。

 だが先頭を行く大将ら赤塚組の上を影が横切り、大将が最初にその影に気づいて視線を向けた。するとその飛行する影に大将は驚いて一声を上げてしまう。

「アウエ!?」

 意味のない言葉を発してしまうほど驚いた大将の声で他の赤塚組も頭上を飛行する存在に気づき目を向ける。

 皆が目を向けた先で飛行していたのは、なんと下半身が蛾の様な姿に変化した逆さまに飛翔したS-ジュアヴォであった。

「と、飛んでる!?」

 蛾の様な姿と翼で逆さまに飛翔するS-ジュアヴォを見上げて驚愕してしまう新世代型の森園わかな。

 しかも飛翔するS-ジュアヴォには先ほどのスカカネ同様に銃を所持していたのだ。

「わわわわわわっ」

 頭上を飛翔しながら銃を発砲してくるS-ジュアヴォの群れに、必死に銃弾を避けていく大将。

 大将が頭上からの銃撃に困惑している最中、HEADの木之元桜がカードを発動させて頭上の飛翔する変異体S-ジュアヴォを狙う。

「ショット」「グアァ」

 さくらが発動したショット(撃)のカードで狙撃された空中のS-ジュアヴォは床に落下し焼失する。

 狙撃された変異体はノガ・レトゥ。下半身が蛾のような姿に変化し、逆さになって飛翔するのが特徴。羽はその脆弱そうな外観に反して耐久性が高い。レトゥは「飛行」を意味する。

 しかし他の個体は上空からの銃撃を行いつつ、接近しては変異してない両腕で地上の皆々を捕まえようと接近する。

 そして一体のノガ・レトゥが一人の新世代型を捕まえてしまう。

「うわあ、放して!」

 弾が尽きた銃器を棄てて空いた両腕で捕まえたのは新世代型の速水ヒロ。ヒロは両脇を押さえられ、飛翔するレトゥに拘束されてしまう。そんなヒロの危機に聖龍HEADのちせがレーザーでヒロを捕らえて離さないレトゥに狙撃して救出する。

 逆さになって飛行し、何とも言えぬ体勢からでも銃器を扱い更には両腕で相手を捕らえてしまうノガ・レトゥ。そのレトゥに対してセーラージュピターは敢えて逆にレトゥの両腕を捕まえては、自力で床に引き摺り下ろすと同時に叩き付けて、最後に電撃を帯びた拳でレトゥにトドメを刺す。

 

 と、上空を飛翔するレトゥに皆が気を取られている最中、レトゥと抗戦してた水原花林の死角から何者かが強烈なローリングソバットで攻撃してきた。

「うわっ」

 強力な蹴りで吹き飛ばされ転倒した花林が、自分を蹴り飛ばした存在に目を向けてみると、それは下半身が鎧の様な硬い装甲で覆われているS-ジュアヴォだった。そのS-ジュアヴォは戦闘慣れしているかの様に適度な距離を保ちつつ、対峙する者の隙を見定めては強烈な蹴りを腰を捻り回して繰り出してきた。

 頑丈な下半身を持つ変異体はノガ・オクロプ。下半身が硬質化し、ほとんどの攻撃を寄せ付けなくなる。ノガ・スカカネほどではないが脚力自体も強化され、跳び蹴りを放ってくることもある。オクロプは「装甲」の意味。

 すると忽ち3体のオクロプに囲まれてしまう先頭の者たち。咄嗟に銃撃を浴びせていくが、オクロプは銃撃を掻い潜り急接近しては強化された脚力で跳び蹴りを放ち、反撃してくる。

 これに大将は跳んで蹴り上げてくるオクロプの繰り出された蹴りを瞬時に回避して、無防備である上半身その胸部に先ほど入手したトンカラトンが砥いだ鉈を突き刺して一撃で葬った。

 強力な脚力で跳び蹴りを繰り出すオクロプに、HEADのメタルバードを始めとする聖龍隊は放たれた蹴りを受け止め、瞬時に蹴りの勢いも利用してオクロプを床に叩き付けて発火させていく。

 飛翔するレトゥに厚い装甲に下半身を覆ったオクロプの追撃に何とか歯止めを繰り出せた戦前者らは、再びS-ジュアヴォやS-ゾンビの追跡を逃れながら進行していく。

 しかし此処で暗闇の中を突き進む一行の耳に、何やら不気味な音が入ってきた。まるでゴキブリなどの虫が這ってくるかのような音だった。

「……何なの? このカサカサって音」

 視界が暗闇で狭まった現状で聞こえてくる音に異様な感覚に襲われるプロト世代の黒鳥千代子ことチョコ。

 そして微かな灯の中を壁や天井を這って姿を現したのは、全体にかけて複数の足が出現した蜘蛛に酷似したS-ジュアヴォだった。

『きゃーーーーっ!!』『く、クモーーーーっ!』

 蜘蛛の様な不気味な容姿のS-ジュアヴォの出現に涙目で脅え本気で嫌悪感に襲われる新世代型の女子たち。

 壁や天井を這って銃器を手にして現れたのはノガ・トゥルチャニエ。複数の足が出現して蜘蛛のような姿に変貌した変異体。素早い上に壁や天井を移動し死角から攻撃を仕掛けてくる。トゥルチャニエは「徘徊」を意味する。

 複数の足が出現してクモの様な不気味な容姿へと変異したノガ・トゥルチャニエの出現に新世代型たちはパニックに陥った。

「く、来るなーー!」「マジで怖い!!」

 素早い動作で天井や床を徘徊して近づいてくるトゥルチェニエの存在に、本気で怖がり泣き叫ぶ新世代型達。

 すると一体のトゥルチェニエが新世代型たちに飛び掛かり、それが新世代型たちを警護するミラーガールに飛びついて来た。が、ミラーガールは飛び掛ってきたトゥルチェニエを意図も簡単に空中で受け止めては、そのまま床に叩き付けて最後にミラーソードで一突きにして倒してみせる。

 だがミラーガールが自分に飛び掛かってきた個体を撃破したのも束の間、今度は別個体のトゥルチェニエが壁を這いながら空いている両腕で新世代型の一人を捕らえてしまう。

「ウガァッ」「うわぁ! や、やめろっ」

 トゥルチェニエに両肩を掴まれ、恐怖で混乱に陥る新世代型の仁科カヅキは何とかトゥルチェニエから逃れようと激しく抵抗する。だがトゥルチェニエは強靭な握力でカヅキを放そうとはしない。

 捕まってしまったカヅキの危機に、大将がカヅキを捕らえて放そうとはしないトゥルチェニエの頭を掴み、強引にカヅキから引き離したと同時にトゥルチェニエの後頭部を壁に激突させる。

「グワァ……」

 後頭部を激しく壁に強打されたトゥルチェニエは、あっという間に体が発火し焼失する。

 

 しかし危機に直面していたのは仁科カヅキだけではなかった。

 周囲に群がるS-ジュアヴォと抗戦している面々にも同様の窮地に立たされる場面に晒されていた。

 必死に抗戦を続ける赤塚組幹部の市川一太郎に一体のS-ジュアヴォが間近に迫り、一太郎が所持していた小銃を取り合っていた。そして次の瞬間、S-ジュアヴォは一太郎から銃を取り上げると、無防備になった一太郎に攻撃してきた。

「!」

 武器を取り上げられ、無防備になったところを攻撃されそうになる一太郎が半ば諦めかけたその瞬間、その情景を偶然にも目撃した聖龍HEADのちせが一太郎の危機を察した。

 一太郎の危機にちせは足元に転がっていた鉄パイプを器用に足で蹴り上げては利き腕でそれを摑まえ、持ち替えると瞬時にパイプを一太郎に迫るS-ジュアヴォに投げ飛ばした。

「グアッ」

 ちせが投げ飛ばした鉄パイプはS-ジュアヴォの頭部を貫通し、頭部に鉄パイプが貫通したS-ジュアヴォは力尽き倒れながら肉体を発火させつつ灰となる。

 一方の助けられた一太郎は、前々から話にも聞いていた大人しい性分のちせが見せた離れ技に目を丸くして驚いてしまう。

 そして別所ではルーキーズの手勢とノガ・スカカネの大群が攻防を凌ぎ合っていた。

 ノガ・スカカネはバッタの足へと変形・巨大化した下半身でルーキーズの面々を見下ろしながら同時に手にしてる銃器で苛烈な銃撃戦を繰り広げていた。

「まず銃をどうにかするのよ! 高い位置からの銃撃では此方が不利なだけよ」

 総部隊長ミラールの指示で、まず手始めにスカカネが装備している銃器を狙撃して巧みに撃ち落とし、スカカネを丸腰の状態にしていくルーキーズ。

 しかしスカカネは武器を持たずとも、変形した足から繰り出す強靭な脚力による蹴りの数々でルーキーズと戦闘を続ける始末。

 先ほどの戦闘でスカカネの弱点が変異した下半身の下腹部であると知ったルーキーズは、それぞれの戦術でスカカネの下腹部を狙って攻撃していきながら倒していく。

 だが攻撃を免れたスカカネは一瞬の隙をついてルーキーズ隊士を巨大なバッタの足で蹴り飛ばしていく。

 スカカネに蹴り飛ばされ、床に放り出されるルーキーズの隊士にスカカネは更なる追撃をしようと巨大な足を歩ませて忍び寄る。

 そのスカカネの隙をついて、HEADの宝生波音がルーキーズに忍び寄るスカカネの背後に回る。だが背後に駆け寄る波音の存在にスカカネも気づいてしまう。そしてスカカネは背後に回った波音に向けて強烈な後ろ蹴りをお見舞いしようと態勢を変えた。

 だが波音は背を向けるノガ・スカカネの後ろ蹴りに即座に反応し、直撃する寸前でその蹴りを出した脚を捕まえ、そのまま体を回転させながらスカカネを横へと転倒させる。そして弱点の下腹部を得物で追撃し逆に倒してみせた。

 更にS-ジュアヴォだけでなく、研究施設の研究員がゾンビ化した個体が手に斧を握りしめて新世代型の鹿島ユノ/薙切えりな/田所恵/蓮城寺べる、4人の少女の背後に迫っていた。

「! おい、後ろだ! 気を付けろッ」『!?』

 周辺のS-ジュアヴォと健闘してた六道りんねの叫びに、彼が示す背後に目を向ける4人。少女らが背後に目を向けると、そこには真っ赤な斧を振り上げた白衣の研究員姿のゾンビが立っていた。

『うわぁ!』

 斧を振り上げるゾンビの存在に気づいた少女らは、恐怖と焦りで頭の中が混乱してしまう。

 だが4人の少女らの絶叫より早くゾンビに気づいた大将が、斧を振り上げるゾンビと少女らの間に入って振り下ろされる斧を寸でのところで受け止めて難を脱する。そして振り下ろされた斧を持つゾンビの腕を受け止めた大将は、ゾンビの腕から強引に斧を奪い取り、逆にその斧でゾンビの頭頂を殴り付けた。

「そりゃッ」

 奪い取った斧で殴り付けたゾンビは、頭に斧が突き刺さったまま床に倒れあっという間に溶けて消失する。

 だがしかし、大将がゾンビを片付けた後も新世代型の二次元人達にS-ジュアヴォは容赦なく襲い掛かってくる。

「ウアアーーッ」『きゃあっ』

 聖龍隊や赤塚組が乱闘の最中、両腕ともにルウカ・スルプに変異したS-ジュアヴォが雄叫びを上げながら新世代型の子供達に迫り、肥大化した両腕で殴り掛かろうとした。

 その瞬間「おい、子供(ガキ)に手ェ出すんじゃねぇよ」と、スルプの背後にジェイクが回り込み、背後から胴体を取り押さえ、そのままバックドロップで両腕スルプを打倒した。

 ジェイクのバックドロップで後頭部を床に強打したルウカ・スルプは瞬く間に肉体が発火し焼失して消えていく。

 お次は壁や天井を這うトゥルチェニエが仰向けの態勢で地上の面々に銃を向けた。

 と、そこにセーラームーンが自らのティアラを天井や壁のトゥルチェニエに投げつけ、それが円を描く様にトゥルチェニエが持つ銃器を弾き飛ばす。

 しかし銃器を弾き飛ばされたトゥルチェニエらは、そのがら空きとなった腕で今度は直接地上を駆け回る者たちを捕まえに懸かる。

「う、うわぁです!」

 懸命に駆け回りながら周囲のS-ジュアヴォと応戦してた百江なぎさを天井のトゥルチェニエが逆さの態勢で捕らえては取り押さえてしまう。

 すると、なぎさの危機に近くにいた巴マミがなぎさを捕らえて放さないトゥルチェニエを狙撃しようと斜め上に向けて銃口を向けて構える。次の瞬間、マミの構える銃口から放たれた弾丸はなぎさを真上から捕らえるトゥルチェニエの顔面に直撃。トゥルチェニエの顔に巨大な風穴が空き、捕まってたなぎさは自由となり狙撃されたトゥルチェニエは瞬く間に肉体が発火し消滅。

 しかしマミがなぎさを捕まえたトゥルチェニエを狙撃したのだが、他のトゥルチェニエ個体が別の人々を襲いにかかる。

「ウアァッ」「きゃっ!」

 壁を伝うトゥルチェニエに背後から両肩を掴まれ、逃げられなくなってしまう新世代型のイオリ・リン子が慄き驚いたその時。

「おうりゃッ」

 リン子を捕まえてるトゥルチェニエを間近で迎撃してた大将が即座に頭を掴み、そのままトゥルチェニエの頭を壁に叩き付けて肉体を発火させる。

 皆がそれぞれ様々な個体のS-ジュアヴォに激戦を繰り広げている現状で赤塚組の山崎貴史も懸命に周囲のS-ジュアヴォを撃破していく。だが山崎貴史が周囲のS-ジュアヴォを片付けていくのに夢中になっていると、死角から片腕を盾の形状に変異させたルウカ・ベデムが防御体勢で突進してきた。

「ッ!」

 死角から一瞬の隙を衝かれて突進攻撃を受けた山崎貴史は床に倒れてしまう。そして瞬時に立ち上がると体勢を立て直して先ほど自分に突進してきたベデムに姿勢を向ける。

 山崎貴史と対峙したベデムは、再び変異した盾の腕を前に構える防御体勢で貴史に接近してくる。そして間近まで近づいたベデムが盾に変形した腕で貴史を殴り付けようと盾の腕を振り上げて、一気に振り下ろして攻撃を仕掛けてきた。が、瞬時に貴史は振り下ろされた腕をかわし、空かさず隙ができたベデムの顔面に貴史は強烈な打撃を浴びせて倒す。

 

 戦闘可能な者たちが総動員でS-ジュアヴォとの乱闘を繰り広げ、続々と各個体を撃破していくもののS-ジュアヴォの数は減る気配を見せない。

 すると其処にS-ジュアヴォの大群が更に押し寄せてきた。

「ヤベェ。あの数はいくらなんでもマジでヤバい」

 押し寄せてきたS-ジュアヴォの大群に顔から血の気を引かせていくメタルバード。すると彼にはある考えが思いついた。

 余り乗り気ではなさそうなメタルバードであったが、やむを得ない事態に彼は急ぎ同じ乱闘で激戦を続けるセーラージュピターの方に走った。

「ジュピター、S-ジュアヴォの大群だ! ここは気に食わねぇが例のアレで一気に対応すっぞッ! オレを受け取れッ」

「えっ? え、ええ!」

 突然のメタルバードの指示に困惑してしまうセーラージュピターだったが迫るS-ジュアヴォの大群を前にメタルバードからの指示を受け、受け入れ体勢に入る。二人が向かい合った瞬間、メタルバードは体を変形させながらジュピターへと飛び込み、ジュピターは体をくの字に変形しブーメラン状に変形したメタルバードを自慢の怪力でしっかりと受け止めた。そしてジュピターは自らの能力で電気を発生させ、同時にメタルバードの金属の体に強力な電撃を帯電させる。そしてジュピターは電撃を帯電したブーメラン形状のメタルバードを迫りくるS-ジュアヴォの大群に向けて勢いよく腰を捻って投げ飛ばした。

 ジュピターの強力な電撃を帯電した巨大ブーメランのメタルバードには外側に強靭な刃が光っていた。そしてS-ジュアヴォの大群に突っ込んだブーメランはジュピターの電撃と鋭い刃で、切り裂かれると同時に電気を浴びて一度に多数のS-ジュアヴォが一掃できた。

 強力な電撃と怪力を持つセーラージュピターに変幻自在の鋼の肉体を持つメタルバードの連携によって、群がってきたS-ジュアヴォの大群が一掃されたのを見届けた新世代型達は一時の安堵に浸った。

 しかしメタルバードとセーラージュピターの己の能力を生かした連携攻撃を持っても、全ての群がるS-ジュアヴォを倒し切れてなかった。

「お、おい。まだ大分、残っているぞッ」

 眼前に迫ってくるS-ジュアヴォの大群を指さして激しく動揺の表情を浮かべる大将。

 すると、そんな大将の前方。群がるS-ジュアヴォの中から上半身が肥大化し、まるで白い芋虫がまとわり付いた様な容姿に変貌してる個体が迫ってきた。芋虫だらけの容姿に唖然とし立ち尽くす大将だったが、その異様な容姿のS-ジュアヴォを一目見たメタルバードは急ぎ戦前に飛び出し、芋虫だらけの容姿のS-ジュアヴォに向けて技を放った。

風掌波(ふうしょうは)!」

 右手のひらを前に突き出し発生する強風。その強風によって生じた凄まじい風は周囲の者たちにも吹き付けてきた。

「う、うわっ!」「なんて風だ……!」

 余りの強風に思わず顔を腕で覆い隠してしまう琴浦春香に真鍋義久を始めとする新世代型達。

 一方でメタルバードの繰り出した強風の矛先にいた芋虫のS-ジュアヴォは、真正面から強風を受けて後方に吹き飛ばされてしまう。だがそれだけでなく、吹き飛ばされる芋虫がまとわり付いた容姿のS-ジュアヴォが床に倒れる直前で内部から爆発。辺りの他のS-ジュアヴォを爆風に巻き込んで爆散したのだ。

「は、破裂しやがったぞ。あの芋虫野郎……!」

 目の前でメタルバードの強風で吹き飛ばされた芋虫がまとわり付いた容姿のS-ジュアヴォが内部から破裂し爆発した現状に、大将はもちろん初めてその光景を目撃する新世代型達や聖龍隊士の面々は空気中に未だに残る爆発したS-ジュアヴォの血飛沫を視界に捉えて愕然とする。

 そんな大将たちを始めとする初見の皆々に、メタルバードは爆発したS-ジュアヴォについて説いた。

「アレには気を付けろ。あの個体は近づいてから自爆する厄介なタイプの変異体だ!」

「あ、アレ爆発すんのか?」

「そうだ! 爆風は以外にも広いから注意しろッ。逆にあの爆発による爆風を利用して周囲の敵を巻き込ませるんだ!」

 大将に強く言い付けるメタルバードの説いた変異ジュアヴォは正式名称テロ・エクスプロジヤ。上半身が肥大化し、芋虫がまとわり付いたような形状に変貌したジュアヴォ。標的に近寄り自爆、または攻撃を加えられることで爆発する厄介な変異体。爆風は攻撃範囲が広いうえに敵味方関係なくダメージを与えるため、状況によっては此方側の攻撃手段にも用いられる。因みにテロは「体」エクスプロジヤは「爆発」を意味する。

 メタルバードに爆発タイプの変異体テロ・エクスプロジヤについての対応を聞いた皆々は、即座にS-ジュアヴォの群衆の中に紛れているエクスプロジヤに狙いを定めていく。そして攻撃を当てるとエクスプロジヤは倒れ、瞬時に周囲のS-ジュアヴォを巻き込んで爆発する。

 こうして時おり敵勢の中に確認できるテロ・エクスプロジヤを攻撃しながら同時に周囲のS-ジュアヴォを討伐していく皆々。

「くッ、まだかよ聖龍隊の総長さんよ! これじゃキリがねぇぜ!!」

「落ち着け纏流子。いくら総長に就任して、まだ一年も経っていないとはいえ聖龍隊の戦士としては創設以来、長きに渡って戦ってきた経験豊富な御方だ。必ず的確な指示で我々を導いてくれる筈だ、今は辛抱しろ」

 宿敵同士でありながらも互いに背を預けて修羅場を潜り抜けようと共闘する纏流子の先の見えない戦況への鬱憤に、彼女に背を預けている鬼龍院皐月が経験豊富な聖龍隊総長のメタルバードなら的確に指示を出して戦況を打破してくれると言い聞かせる。

 しかし鬼龍院皐月の信頼を余所に、メタルバード自身も倒し切れないS-ジュアヴォの大群に難色を感じていた。

「バーンズ! この群れを全部倒すのは無理だ! とっとと別のエリアに逃げ込んで体制を立て直そうぜ!!」

「わ、解ってる! 兎に角、今はS-ジュアヴォの群衆を突っ切って別の区画に進行する!」

 汗だくになりながら周囲のS-ジュアヴォを狙撃していく大将の言葉に、メタルバードは焦りつつも言い返し同じくS-ジュアヴォに反撃を繰り出していく。

 その時。赤塚組でも過去に自衛隊に所属していた為に戦闘経験が豊富なテツが物陰に隠れながら地道に進路を切り開こうと遠方のS-ジュアヴォを一体ずつ狙撃していた最中、一体のS-ジュアヴォがテツに接近してきたのだ。その近づく個体に気づいたテツは装備していたサバイバルナイフでS-ジュアヴォの胸倉を切り裂いて攻撃した。

 しかし「あ……あれ?」なんと切り裂いた筈の胸部には切り傷一つなく、逆に攻撃に用いたナイフの刃が零れ落ちてしまう現状にテツは目を丸くする。

 改めて間近のS-ジュアヴォに目を向けてみると、その個体は胴体にまるで爬虫類の様な鱗をまとった容姿をしていたのだ。

 直感的に鱗で攻撃が防がれてしまったと察したテツは、瞬時にナイフから拳銃に持ち替えては、拳銃で鱗を纏ったS-ジュアヴォの足に照準を向けた。だがその現状を目撃したメタルバードは焦った様子でテツに言い放った。

「テツ、やめろ! 足を攻撃するんじゃない!!」

 だがメタルバードの呼びかけも空しく、テツは鱗を纏うS-ジュアヴォの足を狙撃してしまった。すると足を撃ち抜かれたS-ジュアヴォの両足が瞬く間に装甲に覆われていき、下半身は完全に硬質化してしまった。

「!!」

 胴体の強靭な鱗だけでなく、撃ち抜いた足までも装甲に覆われ下半身そのものが強化したS-ジュアヴォの現状にテツは激しく動揺してしまう。

 そして両足が装甲で覆われたS-ジュアヴォは、強烈な回し蹴りを繰り出しテツを吹き飛ばした。

「うわッ」

 回し蹴りを真面に受けたテツは有無も言えない勢いで蹴られ転倒してしまう。そんなテツに追撃を与えようと脚力が強化された装甲を下半身にまとう鱗の体を持つS-ジュアヴォが近づいてくる。

 と、そこに「危ないッ」と、テツに追撃を与えようとするS-ジュアヴォに聖龍隊のアレン・ウォーカーが瞬時に駆け寄り、強靭な攻撃でS-ジュアヴォを一撃で葬ってしまう。

 そしてテツを助けたアレンは無言で転倒してるテツに手を差し伸べ、優しく立ち上がらせる。そんな二人に冷静沈着なミュウザクロが駆け寄り、以前にも達芝(ターチィ)で確認した経緯のある先ほどアレンが倒したS-ジュアヴォの変異体の種類について二人に話した。

「今のはテロ・クルルジュストといって、胴体が強靭な鱗で覆われた変異体よ。盾のベデム同様に胴体への攻撃が殆ど効かない上に、迂闊に足を攻撃すると今度はその足が変異してしまう個体でもあるわ。しかも変異しやすいのがノガ・オクロプという下半身が硬い装甲に覆われた種で、スカカネほどじゃないものの脚力も強化される変異種だから二人とも気を付けて」

 ミュウザクロの説明に、助けられたテツも助けたアレン・ウォーカーも無言で同意し首を頷かせる。

 テロ・クルルジュスト。クルルジュストとは「鱗」を意味し、その名の通り胴体に強靭な鱗をまとった変異ジュアヴォの一種。盾の腕を持つルウカ・ベデムと同じく胴体に対する射撃のほとんどを受け付けない。また脚を攻撃するとノガ・オクロプのように別の部位が強固になることがあるので頭部を中心に攻撃するか体術で倒すのが都合がいい。

 そして下半身が強化され、硬質化した装甲で覆われたノガ・オクロプ。これも硬質化した下半身への攻撃は殆ど受け付けなくなり、脚部がバッタの様に変異したスカカネほどではないものの脚力自体も強化され、強力な跳び蹴りを放つ事ができる。オクロプは「装甲」を意味する。

 

 ノガ・オクロプにも変異したテロ・クルルジュストを撃破した一行が狂暴化してるS-ジュアヴォの群衆を掻き分けて、どうにか辿り着いたのは別のフロアへと抜けられるであろう強固な鉄製の両開き式の扉であった。

「やった! これで先に進める♪」

 プロト世代のギュービッドが上機嫌になったのも束の間、その扉は電子ロック式で開錠には困難な代物であった。

「どうする? 前は塞がった扉、後ろは修司そっくりのジュアヴォの大群!」

 大将が電子ロックで塞がれた扉に遮られ、後方に迫るS-ジュアヴォの大群に焦る最中、メタルバードが指示を飛ばした。

「落ち着けッ。まずはコレクターズ、この電子ロックを解除しろ! 扉を開けるんだ。他の連中は群がってくるS-ジュアヴォを少しでも牽制していくんだ!」

 メタルバードは自分と同じ聖龍HEADのコレクターズのユイ/ハルナ/アイの三名に電子ロックの解除を命じ、自分を含む他の戦闘員は時間稼ぎとして群がってくるS-ジュアヴォを迎撃しつつ牽制していく役回りを言い渡す。

 そしてメタルバードを始めとする者たちは群がってくるS-ジュアヴォを迎撃する側に立ちまわり、コレクターズの三人が電子ロックを開錠するまでの時間を稼いでいく。

 迎撃体制に入る聖龍隊に赤塚組、そして戦闘可能な新世代型たち。

 だが、そんな彼らに集団を掻き分けて急接近してきたルウカ・スルプが巨大化した両腕を振り回し、前方の戦前者たちに攻撃を仕掛けていく。

 しかし両腕共に変異したスルプに対してミズキが頭部を狙撃、スルプは一瞬で発火し焼失する。

 するとお次は群衆の頭上を跳び越えて、戦前にバッタの足へ変異したノガ・スカカネが飛び出してきた。スカカネはその巨大な足で強力な蹴りを繰り出そうとしたが、その寸前で弱点である下腹部を攻撃され断末魔を上げながら焼失した。

 コレクターズの電子ロックの開錠が進んでいく最中、飛び交う弾幕を掻い潜って一体の奇怪な頭をしたS-ジュアヴォが急接近してきた。そのS-ジュアヴォは口から粘着液を吐き、戦前で活躍してるリナリー・リーに粘着液を吐きかけた。

「うわっ。なにこれ……ベタベタする」

 リナリー・リーが自身に浴びせられた粘着液で動きを封じられつつ困惑してる最中、更に異質な頭のS-ジュアヴォはリナリーに別の液体を吐き掛けた。そこにミラーガールが急ぎバリアーでリナリーに液体がかかるのを防いだ。鏡のバリアーに触れた液体はジュワッと煙を発した。

 ミラーガールがリナリー・リーへの攻撃を防いだ瞬間、仲間の神田ユウが攻撃してきた変異体ジュアヴォに反撃し倒してみせる。

 リナリー・リーを襲い、神田ユウに倒された変異体ジュアヴォはグラヴァ・スルウズ。胸から頭にかけて獣や虫が入り混じったような奇妙な形状に変異したジュアヴォ。粘着液を吐いて動きを封じつつ溶解液で攻撃する。弱点は後頭部の肥大した部分。スルウズは「粘液」を意味する。

 だが神田ユウが倒したのとは別の個体のグラヴァ・スルウズが戦前で電子ロックの開錠を防衛する者たちに駆け寄ってきた。

 粘着液を吐いて相手の動きを封じつつ溶解液で攻撃する変異体、胸から頭にかけて獣や虫が入り混じったような奇妙な形状に変異したグラヴァ・スルウズが接近してきたのを視認したジュピターキッドは、奇形の頭部をヘッドロックの要領で取り押さえつつ、弱点である後頭部の肥大した部分を肘で打撃を与えて粉砕し見事に焼失させてみた。

 続いて接近してきたのは、真上の天井を伝って進攻してきたノガ・トゥルチェニエ。

 天井を徘徊するノガ・トゥルチャニエの真上からの掴み攻撃にウラヌスは逆にトゥルチェニエを天井から引き摺り下ろし、そのまま脳天を床に叩き付けて焼失させた。

 立て続けにS-ジュアヴォを倒していく聖龍HEADに隊士の面々を見て、大将たち赤塚組も腕を振るい接近してくるS-ジュアヴォを迎撃していく。

 だがその過程の中で、狙撃された箇所が変異し別の変異体へと変貌してしまうS-ジュアヴォも幾度となく目についた。S-ジュアヴォは筋肉などの人体組織がD-ワクチンで強化された小田原修司のクローンから直接作り出された生物兵器で、従来のジュアヴォ以上に肉体が変異しやすく、容易く体の部位が強化してしまうのだ。

 その中には本来のジュアヴォでは確認されにくい変異体も目撃された。例えば片腕が巨大化したスルプに、常に暴走状態に陥っているベグウナツ化したS-ジュアヴォ変異体は、巨大化した片腕を我武者羅に振り回し、兎にも角にも猛進してくる。

 そんな厄介である片腕がスルプ化し頭部がベグウナツ化した暴走状態のジュアヴォ変異体の猛攻に、皆が一定の距離を保ちながら反撃の隙を窺う。そして急接近してきた所を、ミラーガールが巨大化した腕を取り押さえ、へし折るとその腕で独立した三つの意思を持つ頭部を殴り付けて処理していく。

 更に群衆の中に混じっている「動き回る爆弾」の如しテロ・エクスプロジヤを確認すると、誰もが有無も言わずに遠距離から狙撃してはエクスプロジヤを爆発させて周囲のS-ジュアヴォを爆風に巻き込ませ、一掃していく。

 

 すると此処でようやく電子ロックの開錠に専念してたコレクターズから伝言が。

「みんな! どうにかロックは解除したわ。早く先に!」

 コレクターユイに言われ、メタルバードはまず最初に新世代型達を扉の向こう側に急進させていく。

「よし、急げ急げ! ここは俺らが防衛すっから、お前たちは早く先に行けッ。ミラーガール、お前も先に進んで扉の向こうに敵がいないか確認しておいてくれッ」

「分かったわ! さぁ、みんな急いで!」

 メタルバードからの指示でミラーガールは新世代型達を先導しつつ、全員を進ませていく。

 ミラーガールが新世代型達を誘導している間、メタルバードたちは開き切った扉にS-ジュアヴォを近づけさせないよう必死に抗戦を続ける。

 そしてほぼ全員の新世代型達の誘導が終わったとき、メタルバードは未だ戦前に残って共に戦ってくれてる新世代型の二次元人達にも扉の先へ進むよう呼びかける。

「お前達も早く先に進むんだ! あとは俺達に任せろ、早くッ」

「し、しかし……」

 メタルバードより先への進行を急かされる鬼龍院皐月であったが躊躇いを覚えてしまう。そんな皐月にメタルバードは更に強い言動で言った。

「早くしろッ! お前達が十分に強い事も、俺達に協力したいって真情も解ってる。だからって無暗に自分の命を危険に晒すな、みんなの許に早く向かうんだ!」

「………………」

 自分達の真情を理解してくれているメタルバードの優しさを感じながらも、やはり退きに躊躇いを覚えてしまう皐月。そんな皐月に、彼女と共に戦っている纏流子や本能字学園生徒会の面子が言葉をかける。

「鬼龍院、ここはバーンズさんの言うとおりだ! テメェもさっき言ってただろ。聖龍隊の総長なら的確な指示をくれるって。ここは総長の言葉に甘えて一緒に行くぞッ!」

「鬼龍院様、メタルバードの……纏流子の言う通りです。ここは一時、撤退を」「皐月ちゃん!」

「…………分かった。この場は聖龍隊と赤塚組の方々に任せて、我々は同族である新世代型の者たちの許へと向かおう」

 纏流子に続いて訴える蟇郡苛(がまごおりいら)蛇崩乃音(じゃくずれののん)らの言葉に、皐月はようやく現場からの撤退を受諾する。

 そして鬼龍院皐月の受諾を受けて【キルラキル】のメンバー以外の戦闘可能の新世代型達もメタルバードに一言告げて先へと進む。

「ではバーンズさん、僕たちも先に向かいます。お気をつけて」

「総長さん、あなた達もどうか無理をしないで」

 斉木楠雄と栗山未来はメタルバードに言い残すと、名瀬博臣と名瀬美月の兄妹と共に全開した鉄の扉を通り抜けていく。

 戦闘可能な新世代型も扉を抜けたのを確認したメタルバードは、今度は赤塚組に撤退を指示する。

「次は赤塚組! お前達も先に行けッ」「了解」

 ミズキが強く返事をすると同時に、赤塚組は一斉に扉を潜り撤退していく。だが大将一人だけが現場に残る。

「俺はこれでも赤塚組の頭だ! 退く訳にはいかねぇ!!」

 小銃を乱射しながらS-ジュアヴォと抗戦する大将を見て、若干呆れながらもメタルバードは次に配下の聖龍隊の各隊士に呼びかける。

「聖龍隊! S-ジュアヴォに注意しながら後退! コレクターズ。全員が扉を潜り抜けたら即座に閉めろッ! 他の者たちはS-ジュアヴォが進入できないよう体制を崩すな」

 そう皆に呼びかけると、聖龍隊の隊士はルーキーズから順次にニュー・スターズ、そしてHEADへと扉の奥へと進行し、最後にメタルバードと大将が迫りくるS-ジュアヴォに攻撃をしながら後退しつつ扉を通過。

 全員が扉を潜ったのを確認するとコレクターズは即行で電子プログラムを作動させ、全開させた扉を閉め始める。

 しかし扉が完全に閉まるまでの動作が遅く、僅かな隙間からでもS-ジュアヴォが通り抜けようとするのが目に入り、全員は扉が閉め切るまでS-ジュアヴォを攻撃で押し戻していった。

 

 そして鉄製の扉は完全に閉まり、悪魔の名を持つS-ジュアヴォの大群と一行の間を遮ることがようやく叶った。

 

 

 

 

[サナギ]

 

 完全に扉を閉め切り、群がり迫るS-ジュアヴォの大群をようやく撒いた一行。

「はぁ、はぁ…………どうにか凌げたな」

 相次ぐS-ジュアヴォとの乱闘を何とか突破でき、メタルバードは息を切らし安堵する。

「そうだな、はぁ…………さっさと進もうぜ」

「ああ、そうだな」

 自分達を含む全員が全力で通過した鉄の扉に前を向いたまま、大将がメタルバードに速急な進行を促すと彼もそれに同意する。

 そして大将は進路方向へと振り返ると即座に駆け足で前進しようとした。が、その瞬間。

「ッて! ……何なんだ、もう」

 後ろに振り替えるや否や駆け出そうとした大将の顔に何か硬いものが激突し、思わず尻を着いてしまう。そして打った額を押さえながら自分と激突したものに目を向ける大将の前にあったのは緑色の不気味な粘液が硬質化した人型の物体であった。

「な、なんだ、これは……?」

 眼前に聳える人型の硬質な物体に唖然としてしまう大将。しかも、その緑色の物体は他にも各所に複数点在してた。大将同様に聳える謎の物体に目を奪われる皆々。

 すると其処にジェイク・ミューラーが謎の物体を見て驚いた様子で言った。

「サナギ……! また厄介なのが来ちまったな」

「さ、サナギ?」

 ジェイクの発したサナギの言葉に、大将はもちろん詳しい事柄を知らない者たちは一同に唖然としてしまう。するとジェイクに続きメタルバードが深刻そうな面差しでサナギについて語り始めた。

「C-ウィルス感染者の成れの果てだ。ウィルスの活性化に伴う高温の影響で肉体が発火後、ごく稀に体内から粘着質の体液を排出して体全体を覆ったのがサナギの現象だ。サナギ化のタイミングは重度のダメージを負った時やC-ウィルスの突然の変異、感染の直後など個体によりかなりのバラつきがあるがな」

「感染者の成れの果て……そ、それで。サナギに変異した感染者は、どうなるんだ?」

 メタルバードより感染者からサナギへの変異までの経緯を聞いた大将は、その後のサナギに変異した個体はどうなるのかを恐る恐る訊ねた。するとメタルバードは表情を変えず険しいまま話した。

「サナギと化した個体の体内では体組織の溶解と再構築が行われ、ジュアヴォとは全く異なる種が誕生する。通称、完全変異体。その完全変異体は、それぞれ異なる特性を持っていて、用途によってはB.O.W.として扱われる種も多い」

『……………………』

「……要するに、今までのジュアヴォとは桁違いにヤバいって事だ」

 詳細な説明を語るメタルバードの言葉に、初めてウィルスによるサナギ化現象を目の当たりにする大将ら赤塚組に新世代型、そしてHEAD以外の聖龍隊は絶句してしまう。

 するとメタルバードの説明を聞いて、新世代型の氷室ヒジリがぽつりと言葉を零した。

「ウィルスへの抗体があって良かった」

 このヒジリの無意識の発言に新世代型の誰もが心の内で愕然とした。自分たち新世代型二次元人には如何なるウィルスの抗体が予め備わっている事実がある。だがそれは同時に自分達が普通の二次元人ではないという複雑な事実をも表している。

 新世代型達が、自分達に備え付けられている特殊な遺伝子構造によるウィルス抗体への事実に複雑な感情を抱いてしまう中、場の重たい空気を察しながらも大将がメタルバードに一つの提案を言う。

「と、ところでバーンズ。このサナギっての、今のうちに壊した方が良いんじゃねぇの? 確かサナギの中じゃ、ジュアヴォ以上に凶悪な生物兵器に体が変化していっているんだろ?」

 大将の出した提案にメタルバードも同意し、承諾した。

「そうだな。完全変異体が出てくる前に、今のうちに壊しちまうか」

 だが大将とメタルバードの会話を聞いたジェイクが二人に話しかける。

「だけどお二人さん。このサナギはそう簡単に壊せねえぞ。バーンズも前に達芝(ターチィ)でサナギ化したジュアヴォと一戦交えたから知っているだろ」

 ジェイクの言う通り。サナギの外郭は非常に強靭なため、破壊は困難であるのだ。例えば高威力のマグナム銃、エレファントキラーでも5発も撃ち込まないと破壊できないのだ。

 しかし、この破壊困難なサナギに対してメタルバードは強気な姿勢で言葉を返す。

「大丈夫だって。まぁ、ここは特殊能力者の俺らに任せてくれや」

 そう言うとメタルバードは右腕を電撃砲に変形し、眼前のサナギに砲口を向けるや否や強力な電撃の砲撃を放った。

 メタルバードが放った電撃の砲撃を浴びたサナギは一瞬でその強靭な外郭が砕け、崩壊しては粉々になっってしまった。

「う、ウソだろ? あの硬いサナギが簡単に……」

 普通は簡単に破壊できないサナギを、意図も簡単に破壊してしまうメタルバードの砲撃に驚いてしまうジェイク。そんなジェイクにメタルバードは真顔で語り掛ける。

「確かにサナギは強力なマグナムとかでも破壊するのは難しい。だが電撃にだけは滅法、弱いからな。電気による技や能力で壊そうと思えば簡単に壊せる」

 サナギの弱点が電撃であるとジェイクに語り掛けるメタルバードは、眼前のサナギの破壊を確認すると直後に仲間の聖龍隊それも自分同様に電撃系の能力を持つ隊士に指示を告げる。

「聖龍隊! 電撃で今のうちに辺り一帯のサナギを全て破壊しろ。完全変異体が孵化する前に弱点の電撃で早々と壊しておくんだ」

 メタルバードの指示を受けて、電撃系統の能力を持つ者らが周辺のサナギに駆け寄り持ち前の能力で破壊しようと試みた。と、その時。

 

 電撃系の能力者がサナギを破壊しようと駆け寄っていく最中、何処からともなく武装したS-ジュアヴォが再び現れたのだ。

 S-ジュアヴォはサナギを破壊しようとする能力者に駆け寄っては得物である青竜刀で剣舞しながら斬りかかっていく。だがこれに聖龍隊の隊士は瞬時に反応し、斬撃を回避しては即座に反撃に回っていく。

「えいっ」「ウギャアッ」

 振り回される青竜刀が自身に直撃する寸前で両手で刀身を受け止めたセーラージュピターは、受け止めた刀に直接電気を放流し相手のS-ジュアヴォに電撃をお見舞いする。

「はァッ」「グアッ」

 同じく電撃系の能力者ドラゴンキッドは振り下ろされた刀を避けると、がら空きの胴体に電気を帯びた正拳を突き出してS-ジュアヴォの体から煙を上げさせるほどの電撃を浴びせる。

 激しい電撃でS-ジュアヴォを倒していくジュピターとドラゴンキッド。だがその二人に腕が長い触手の様に変形・肥大化したルウカ・カヴァタネが、その肥大化した腕を振り回して攻撃してきた。

 セーラージュピターは瞬時に攻撃を予知し、ドラゴンキッドの姿勢を強制的に低くさせて双方ともにカヴァタネの攻撃を回避する。

 猛威を振るうカヴァタネを見兼ねたニュー・スターズの総部隊長フロートは、改造した自身の体の右腕を切り離し、鎖で繋がった右手でカヴァタネを捕らえる。そして即座に鎖から通電する電気でカヴァタネに放電をお見舞いする。

 フロートの鎖付き右手から放電された電撃を受けてカヴァタネは肉体を発火させ焼失していいった。

「アウッ。たかが前総長のクローンから作られた生物兵器如きが、おれ達に歯向かうなんぞ百万年早えぜ!」

 ご自慢の改造を重ねた屈強の肉体を見せつける様にポージングをするフロート。

 しかし皆が再登場したS-ジュアヴォに気を向けてしまってる最中、まだ破壊できてなかったサナギの内の一つが突如として罅割れ、内部から高温の蒸気を吹き出した。

 そして罅割れ、蒸気を吹き出すサナギの中からエリマキトカゲに酷似した生物が飛び出してきた。

「と、トカゲッ!?」『ッ!!?』

 サナギを脱皮して中から出現したトカゲを目の当たりにして驚愕する大将と新世代型達。

 と、そんな彼らにメタルバードが注意を呼びかける。

「気を付けろ! そいつは針を飛ばして強力な一撃を繰り出してくるぞ」

「は、針?」

 メタルバードの発言した針の単語に一瞬きょとんとしてしまうアレン・ウォーカー。

 すると次の瞬間、メタルバードの言った通りエリマキトカゲ似の個体が針の様に変形した体の一部を飛ばして攻撃してきた。

「危ねぇ! ☆シールド!」

 発射された針が新世代型の森園わかな/蓮城寺べる/神浜コウジ/速水ヒロ/仁科カヅキらに直撃する直前に、フロートが間に入っては瞬時に左腕の星マークがある上腕筋を盾に変形させて発射された針を防ぐ。

 だが「アウッ!」なんと発射された針の威力が高く、星の盾で直撃は防いだものの大柄な体格のフロートは吹き飛ばされてしまった。

 このエリマキトカゲ似の完全変異体はストゥレラツ。セルビア語で「射手」を意味する名の通り、針の様に変形した体の一部を飛ばして攻撃する種。この針による攻撃は相手を吹き飛ばせる程強力なだけでなく散弾するように飛ぶため攻撃範囲が広く仰向けでも当たってしまう。

 ストゥレラツはその後も距離が離れてる対象者に対しては針を射出して攻撃を仕掛けていく。しかも自分に攻撃が振り掛かりそうになると素早く移動し回避してしまう。

 それどころか、リナリー・リーと剛力番長の二人がストゥレラツに接近して直接打撃で攻撃を仕掛けようとすると、ストゥレラツは周囲に消化液を吹き出して二人を牽制する。

「うわっ」「きゃっ」

 周囲に吹き出した消化液が顔にかかり、思わず怯んでしまうリナリーと剛力番長。するとストゥレラツは更にこれでもかと目くらましの煙幕を体から噴出し、周辺に煙幕を張って距離を置こうとペタペタと非常に素早く立ち回る。

 そんなペタペタと時おり爬虫類らしい小刻みな動きで駆け回るストゥレラツに、混戦の中で女子の思わぬ発言が聞こえてきた。

「なんか……かわいい」「え! 今なんて!? このトカゲが可愛い?」

 混然としている戦況の中で聞こえてきた言葉に、大将は目を丸くして驚いてしまう。

 そんな中、素早い立ち回りで動き回るストゥレラツを2人がかりで取り押さえ、背後をディープ・ブルーがガッチリと押さえたまま正面からキング・エンディミオンがストゥレラツの無防備に晒された腹部に何度も強烈な殴打を打ち付けていく殺伐とした情景を前にしながら、参謀総長のジュピターキッドは心の中で人知れず思った。

(確かに、従来の動物と原形が近いし大きさも丁度いいし。今までのジュアヴォや生物兵器と比べたら、まだ可愛げがあるかな)

 ジュピターキッドも今まで施設内で遭遇した生物兵器などの敵に比べたら、ストゥレラツはまだ現生物としての原形が色濃い為に爬虫類として見ればまだ可愛げがあると改めて実感した。その間にもエンディミオンによって殴打されていったストゥレラツは他のC-ウィルス感染個体と同様に消滅した。

 すると今度はその現状に別個体のストゥレラツが2体、出現しては接近し程よい距離で針を射出してきた。

「そいつは素早いが捕まえて殴りかかれ! 見た目に反して外皮が柔らかいから打撃や殴打には滅法弱い!」

 別に現れたストゥレラツに対してメタルバードは、素早く立ち回るのをどうにか取り押さえて、弱点である柔らかい外皮に対して殴打していけと指示を飛ばす。

 その指示に従い、美樹さやかと佐倉杏子が素早く動き回るストゥレラツに接近する。すると二人が近づいてくるのを察したストゥレラツはさやかと杏子に針を射出してきた。だが散弾の様に拡散して射出された針に、さやかと杏子は瞬時に反応し身を反らして回避。そしてさやかは素早くストゥレラツの背後に回り取り押さえ、杏子はその間にストゥレラツの柔らかい腹部を滅多刺しに拳で殴り付けていく。

「キュアァ……」

 さやかと杏子の連携で殴打されたストゥレラツは鳴き声を発しながら消滅していった。

 更にもう一体のストゥレラツにはジェイクが頭を押さえつつ、そのまま足の膝でストゥレラツの腹部に強烈な打撃を与えていた。

「オラオラオラオラッ」

 物凄い剣幕と自前の強面でストゥレラツを膝で殴打していくジェイクの風貌を見て、全員が心の中で思考が一致していた。

(……ヤクザだ……)と。

 そして背後から両腕でストゥレラツを押さえつつ膝で殴打し続け、ジェイクは単身でストゥレラツを倒してみせた。

 

 針と化した体の一部を射手してくるストゥレラツを突破した一行が、再び前進していこうとする。と、前方にS-ジュアヴォが再出現し、皆の行く手を遮る。

「距離を保って応戦しろっ」

 メタルバードの指示が飛び交う中、片腕が長大化したルウカ・カヴァタネが触手の様な太く長い腕を振り回し、自身より離れた標的に掴みかかろうと仕掛けてきた。

 と、カヴァタネに標的として狙われ、長大化した触手状の腕で捕らえられそうになったセーラーウラヌスが素早く接近してきたカヴァタネの腕を脇で押さえ込み、弱点である腕の先端部分に短刀を突き刺して反撃する。ウラヌスの反撃で弱点を突き刺されたカヴァタネはオーバーヒートし肉体が発火して消滅していった。

 すると前方に聳えていたサナギに亀裂が入り、次第にそれが広がっていくのが目に見えた。先ほどのストゥレラツの様に中から出てくるのかと思われたのだが、思いの外サナギから出てくるのにやたら時間がかかっていた。

「な、何が出てくるんだ?」「構うな! 躊躇わず攻撃して破壊しろッ」

 何が出てくるのかと不安に駆られ躊躇してしまう大将たちに、メタルバードがサナギから敵が出てくる前に攻撃せよと指示を出す。

 だが皆が躊躇ってしまった為に、サナギから高温の蒸気が噴き上がり、噴き上がる白い蒸気の中からその蒸気を体から噴出する赤黒い巨体の生物が出現した。

「こ、今度はゴリラ!?」

 エリマキトカゲ似のストゥレラツに続いて現れたゴリラの如き巨体の生物に驚愕する大将。そんな彼を始めとする皆々に出てきた巨体の生物は蒸気を噴出しながら突進してきた。

「避けろッ」

 メタルバードの一声に皆が散り散りに離れ、突進攻撃を避けていく。

 ストゥレラツとは反対に硬い外皮で全身が覆われた強靭な肉体の完全変異体はナパドゥ。名はセルビア語で「突撃」を意味し、あのジュアヴォ以上に体温が高く、常に体から蒸気を噴出する事で体温を一定に保つ生体機能がある変異体である。

 更に前述のストゥレラツとは対照的に、その巨体を生かした突進や腕力を武器に、戦前の居合番長やブラック☆スターに腕を振り回して殴りかかってきての接近戦を得意としてた。ナパドゥの接近戦に居合番長とブラック☆スターは瞬時に回避し、先ほどのストゥレラツと違い距離を置いて離れる。

 しかしナパドゥは体から蒸気を吹き出しながら硬い外皮と巨体による突進攻撃で周囲の皆に手当たり次第に猛威を振るう。

「うわぁ!」「きゃあ!」

 巨体から放たれる突進に硬い外皮による剛腕が襲い掛かり、新世代型達は必死に逃げ惑う。

「このッ」

 剛腕を振り回すナパドゥの腕を片太刀バサミで受け止める纏流子。だが硬い外皮により腕は刃で斬れず、更に強靭な筋力で押される片太刀バサミを持つ流子の腕は震えていた。

「ッ……!」

 剣戟でならいざ知らず、力では圧倒されていく流子は表情を一層と険しくさせてナパドゥと対峙する。

 すると其処に「そぉりゃぁ!!」流子と宿敵の関係である鬼龍院皐月が縛斬を手にし、ナパドゥに斬りかかった。だがナパドゥの外皮に阻まれ、ナパドゥを流子から遠ざける事しか相叶わなかった。

「くっ、縛斬でも斬れないか……!」「鬼龍院……!」

 自慢の縛斬ですら断ち切れない強固な外皮に苦戦を覚える皐月に反し、その皐月に助けられ唖然とする流子。そんな二人にナパドゥは巨体を唸らせた突進で向かってきた。

『!!』

 硬質の外皮で刃が立たないナパドゥの突撃に困惑する纏流子と鬼龍院皐月。と、その二人に後ろから声が。

「テメェら! 退いてろッ!!」

 と、流子と皐月を半ば強引に押し退けてナパドゥの前に飛び出したのは銃火器を装備してる大将であった。大将は装備してる武器の一つショットガンを手にすると、ナパドゥに向けてショットガンを連射。

 若干、無我夢中で流子と皐月を押し退けてショットガンを連射していった大将の行為であったが、その連射が功を奏したのかナパドゥの硬い外皮が剥がれ、その下にある赤い筋肉質の肉体が曝け出された。しかも銃撃を受けて膝をついたナパドゥの外皮が剥がれた背中には赤い肉体の表面に薄らと白っぽい神経らしきものが見えた。

「大将、その神経を攻撃しろ! その中枢神経がそいつの弱点だ!」

 メタルバードから叫び掛けられ、大将は即座にショットガンで連射で外皮が剥がれ落ちただけでなく膝をついて怯んだナパドゥに更なる追撃を与えていった。浮き彫りとなった中枢神経に無数の散弾を浴びせられたナパドゥは最後に断末魔を上げて倒れ、そして消滅した。

 ナパドゥの外皮は硬質で威力の低い武器では容易に壊せないが、耐久力は余りないため威力の高い武器を使えば外皮を剥がすのは比較的容易である。更に、その背中の外皮の下にある白っぽい中枢神経が弱点でもある。

 大将が纏流子と鬼龍院皐月の二人と対峙していたナパドゥをショットガンの連射で撃破し終わった丁度その時、別個体のナパドゥが突進してくるのが綾瀬なるの目に映った。

 綾瀬なるが突進してくるナパドゥに動揺しながらも指をさすと、そのナパドゥの存在に気づいたセーラーサターンが臆する事無く突進を跳び越えて、背中を向けたナパドゥの背後から強靭な技を放って強固な外皮ごと消滅させた。

 そのサターンの戦う様子を凝視した他の聖龍隊士も、ナパドゥの突進に対する術を見て学んだ。

 そして突進してくるナパドゥにサターンと同じく臆する事無く、目前まで迫ってきた所を黙然と跳び越える暁美ほむらは、即座にナパドゥの背面に向けて銃を乱射する。ほむらの放った銃撃の連射はナパドゥの強固な外皮を剥がし、立て続けに弱点の中枢神経をも弾丸で幾度と貫き、ナパドゥはあっという間に消滅した。

 一方で男性陣は跳び越える事無く、ナパドゥの突進を真正面から受け止め、その瞬間に強烈な膝蹴りを直撃させて強固な外皮を一瞬の内に剥がし落とす。そして各々が自身の得物でナパドゥの中枢神経を攻撃し、突破していった。

 

 ストゥレラツ、ナパドゥ。遠距離戦と接近戦の得意な二種類の完全変異体との戦闘を突破し、だいぶ先へと足を進められた一行には度重なる疲労の色が見えていた。

 しかし足を止める訳にもいかず、ジェイク・ミューラーを始めとする経験者たちが先導していく中を新世代型達は足を前へと踏み出していく。

 微かな灯りを元に先へと進み、皆が曲がり角を右へと進行していくと再び前方に例の如く1体のサナギが不気味に聳え立っていた。

「ま、またかよ……! まことの姉ちゃん! それにドラゴンキッドの嬢ちゃんも! また電撃で木っ端微塵にしてくれッ」

 再び強靭な戦闘力を持つストゥレラツやナパドゥとの戦闘を避けたい大将は、即行でセーラージュピターとドラゴンキッドに電撃でのサナギの破壊を呼びかける。

 と。大将が二人の電撃系能力者にサナギの破壊を推奨している最中、そのサナギが罅割れていくのが新世代型の目に飛び込んできた。

「わっ、た、大変や! サナギに罅が……」

 新世代型の鳴子章吉が罅の入っていくサナギを怯えた表情で指さす中、更に罅は広がっていきサナギの内部から何か骨が飛び出たような腕が飛び出てきた。その腕は激しく突出した骨を鳴らしながら、内部よりサナギを破壊して完全にその全貌を晒した。

「な、何だ。アレは……!」

 猿田学らを始めとする、それを見た者たちは一同に蒼然と化した。それは人型ではあったが、人間としての名残は右腕だけに集中しており、他の肉体の殆どが変異によって造り替えられた造形。

 しかも人間として名残がある右腕も、肋骨と動脈が集結してまるでチェーンソーの様に変形している異質極まる存在。

 その異質極まる存在は、右腕の肋骨と動脈が集結した骨の刃をチェーンソーの様に動かすと、その腕を振り上げたまま一行へと迫ってきた。

「こ、コイツは……!」

 チェーンソーの様な右腕を振りかざす、その存在を目の当たりにしたジェイクは驚愕の余り絶句してしまう。

 皆が絶句してしまうジェイクに只事ではない事態を察する中、同じく聖龍HEADもチェーンソーの腕を持つ異形の者を前にして驚愕し、そして総長のメタルバードがチェーンソーの右腕を持つ異形を指して絶叫した。

「う、ウソだろ。まさか此処で…………此処で出てくるなんて! ウビストヴォ!!」

「ウビストヴォ!?」

「殺害って意味だ! こいつは右腕がチェーンソーの様に発達していて、右腕の刃でズタズタに切り裂くまで執拗に追い回してくる厄介極まりない野郎だ!!」

 叫んだ名に問い返す大将に、メタルバードはウビストヴォについて簡潔に答え返した。

 サナギを打ち破って出てきた異形は、変異体の中でも通称最終変異体と呼ばれる個体種。その名もセルビア語で「殺害」を意味するウビストヴォ。他の変異体と比べると人型を保っているが、実際のところは人間の名残は右腕に集中しており、その肉体の殆どは変異によって造られたものである。右腕に肋骨と動脈が集結してチェーンソーのようになっており、骨の刃で相手をズタズタに切り刻む。しかし心臓が内部にあるため、チェーンソーの右腕は武器でもあれば弱点でもある。

 ウビストヴォは骨の刃を唸らせながら一行に迫っていき、振り翳してた骨の刃で殺害対象として捉えた存在をズタズタに切り裂こうと向かってきた。

『き、来たーーッ!!』

 ギュイインと凄まじく音を唸らせて迫ってくるウビストヴォに、恐怖を感じ顔から血の気を引かせる新世代型達は一斉に絶叫した。

 皆が恐怖で慄いている最中、HEADの鳳凰寺風がウビストヴォとの間に入って得物である剣で振り下ろされる骨の刃を受け止めた。刃と刃が衝突し合い凄まじい火花が散る中、風は懸命にウビストヴォの刃を受け止め続ける。そして渾身の力でウビストヴォの刃を押し退け、一瞬ばかしウビストヴォをよろめかせた。

 しかしウビストヴォはすぐに態勢を戻し、再び右腕の刃を振り翳して向かってきた。

 実はウビストヴォの脅威はチェーンソーの様に発達した右腕だけでなかった。それは一度、殺害対象を捉えると何処までも執拗に追い続ける執念深さ。ウビストヴォはサナギから出てすぐ目についた一行を殺害対象として捕捉し、完全に息の根を止めるまで追い続ける性質を見せるのだ。

「コッチを見なさいっ、バケモノ!」

 新世代型に迫るウビストヴォに、立ち位置を移動して少し離れた場所から赤塚組のミズキが呼びかけ、ウビストヴォの気を自分の方へと向けさせる。そして同時にウビストヴォに向けて自身の右腕をレーザー砲に変形させて、強烈な砲撃を浴びせようと試みる。それを見たHEADのちせも同等にミズキと共にレーザーを浴びせようと標準をウビストヴォに向ける。そして二人がウビストヴォに強力な光線を放ち、ウビストヴォの右腕の心臓を破壊できた。

 ミズキとちせのレーザーを直撃したウビストヴォの右腕の心臓は破壊され、ウビストヴォは即死し前のめりに床へと倒れた。

「や、やったか……?」

 二人の強力な砲撃で心臓を一撃の下に破壊されて即死したウビストヴォを目の当たりにして、大将が完全なるウビストヴォの突破を予期した、その時。

「気を付けろ。そいつは簡単には、くたばらねぇ。心臓がダメになってもすぐに再生しちまう奴だ」

「何っ?」

 ジェイクの発した言葉に戸惑う赤塚組のテツ。案の定、ジェイクの言う通りウビストヴォは破壊された心臓を驚異的な再生力で蘇らせ、自力で蘇生してしまった。

「そ、そんな! 生き返ったなんて……ッ!」

 心臓を破壊されてもスグに蘇生してしまったウビストヴォを見て、驚愕の余り涙目で脅え切ってしまう新世代型の真鍋義久。

 ウビストヴォは有り得ないほどの生命力と再生力を持ち、一回やそこら心臓を破壊されてもすぐ蘇生し、原型さえ残ればすぐ復活する驚異的な強さを秘めていた。

「迂闊に近づくな! バラバラに切刻まれるぞ!!」

「言われなくたって、あんなのに近づく訳ないでしょッ!」

 メタルバードからの注意掛けに真鍋義久は泣きじゃくりながら反論する。

 ここでメタルバードは手を挙げ、それを合図に聖龍隊と赤塚組がウビストヴォを取り囲むように点在し配置につく。そして各々がウビストヴォと距離を保ちながら狙撃で撃破しようと戦闘を開始した。

 ミラールを中心に暁美ほむら/巴マミ/フロートなどの狙撃系の隊士がウビストヴォに強烈な弾丸をお見舞いしていく。弾丸を受けてウビストヴォは著しく態勢を退ける。

 何発も強力な銃撃を受けたウビストヴォは堪らず片膝をついて怯んでしまった。

「今だなッ」

 ウビストヴォが膝をついて動きを止めた所をジェイクが駆け寄り、間近で強烈な跳び蹴りを放ちウビストヴォに追撃を与えていく。

 更にウビストヴォに致命的な損傷を負わせようと、メタルバードは聖龍隊の面々に指示を出した。

「何でもいい! ウビストヴォの奴に特殊能力でダメージを与えていけ! 炎で焼き尽くすのも良いし、氷で粉砕しても構わない。電撃で痺れさせるやり方でもいいから、とっととコイツを倒して先を急ぐぞ!!」

 指示を聞いて聖龍隊は速攻でウビストヴォに能力で攻めていった。

 紅蓮の火炎を放射し、強烈な電撃を遠距離から浴びせていく。強力な攻撃を浴びて床に四つん這いになるウビストヴォに、大将たち赤塚組が銃口を向けたまま近付き、そして接近すると頭領の大将が仲間に呼び掛けた。

「一斉射撃だ! 有りっ丈の弾丸を浴びせてやれッ」

 大将の掛け声を切っ掛けに、赤塚組の面々は構えていた銃器で一斉にウビストヴォに銃弾の雨を注いでいった。

 火達磨に電撃、そして銃弾の雨に晒されて追い詰められていくウビストヴォ。そしてウビストヴォの心臓は絶える事ない攻撃に耐えられず、遂に破裂した。

「よし、今度こそ……」

 度重なる攻撃で、ようやく絶命してくれたかと思う大将。だが彼らの安堵も束の間、破裂した心臓は再生し、ウビストヴォは再び蘇生してしまう。

「まだなのかよ……! しつけェ野郎だぜ」

 執拗に追い回し、そして再生しては蘇生してしまうウビストヴォの復活に大将は険しい表情で顎の汗を腕で拭う。

「あの腕の心臓をどうにかしないと何度でも復活しちゃうよ」

 右腕に内蔵されてる心臓の再生機能をどうにかしない限り限りなくウビストヴォに追い回される事を指摘するジュピターキッド。

 破壊されても再生し延々と機能し続ける心臓を持ち、幾度となく蘇生できるウビストヴォに戦況を乱れていく中、メタルバードは険しい面持ちでウビストヴォを見詰めてた。

 そして右腕の骨の刃を稼働させる心臓を見詰めてたメタルバードは、ウビストヴォの心臓を撃破する手段を閃いた。

「よしッ、こうなったら……」

 以前にもHEADやジェイクと共に達芝(ターチィ)でウビストヴォを苦戦の末に突破した時の事を思い出しながら、メタルバードはウビストヴォに飛び掛かった。

「このッ」「メタルバード!」「バーンズ!」

 単身半ば捨て身でウビストヴォに飛びつくメタルバードの突然の行動にジュピターキッドとミラーガールを始めとする皆々は驚く。しかし皆が驚いているのを尻目にメタルバードは必死に右腕を振り回すウビストヴォにしがみ付き続ける。

「ぐ……ッ」

 轟音を響かせ骨の刃を唸らせるウビストヴォを取り押さえるメタルバードは、その猛威を振るうウビストヴォの右腕に自身の腕を伸ばしていく。そして伸ばした腕を軟体化させてウビストヴォの右腕に巻き付けた。皆がメタルバードの行動に理解できずにいる最中、メタルバードは巻き付けた腕を次第に締め付け、ウビストヴォの右腕を激しく軋ませた。右腕に集結してる肋骨が軋み、動脈は圧迫され、轟音を唸らせる骨の刃はそれでも稼働し続けている状況でも、メタルバードは締め付けている腕を放さず緩まず、ウビストヴォの右腕を締め上げ続けてく。

 そして締め上げ続け、軋んでいった肋骨はバキバキと音を立てて砕けていくのが皆の耳に伝わると次の瞬間、ウビストヴォの右腕を締め付け続けてるメタルバードの巻き付いた腕は、締め付ける力だけでウビストヴォの右腕を切断し、完全にウビストヴォの右腕を強引に切り離してしまった。

 床に広がるウビストヴォの血に場の一同が愕然と目を奪われた。そして心臓という生体維持には欠かせない臓器が内部にある右腕を切り取られたウビストヴォは激しく悶え苦しみながら不死の生命力を途絶えるのだった。

「ふぅ……」

 全身にウビストヴォの返り血を浴び、手にはもぎ取ったウビストヴォの右腕を持つメタルバードは一仕事終えたように軽く吐息しつつ自らが殺めたウビストヴォの亡骸を見下ろす。そして血まみれのメタルバードが見下ろすウビストヴォの亡骸は他のC-ウィルス感染体と同じく、その肉体を発火させ瞬く間に焼失していく。

「ふーー、少々強引だったが心臓入りの腕を引き千切れば、いくら不死身に近い再生力でも簡単に蘇生はできないみたいだな」

 そう言いながら自らが引き千切ったウビストヴォの右腕を床に放り捨てるメタルバード。床に右腕を放り捨てると、そのウビストヴォの右腕も本体同様に発火し焼失した。

 そしてメタルバードは血塗れの風貌で皆の方へと振り向く。皆は血塗れで振り向くメタルバードにギョッとするものの、本人は態度を変えずそのまま皆に言い伝える始末。

「よし、そんじゃ行くか。なぁ」

「いや、まずテメェの血をどうにかしてくれや。俺らがドン引いちまうわ」

 全身血塗れの風貌をしているメタルバードを前にして、大将がメタルバードにまず全身の血を拭う事を指摘する。

 

 そして苦戦の末にメタルバードが血に塗れながらも強敵ウビストヴォを撃破し、更に彼が全身の血を拭ってから一行は再び前進する。

 すると前方に銃器を構えて待ち構えるS-ジュアヴォが横一列で並んでいるのが皆の視界に入ってきた。

「敵だ、応戦するぞ!」

 前方のS-ジュアヴォを視認したジェイクは携帯している拳銃を前方のS-ジュアヴォに向けると同時に、傍らで走行してる聖龍隊士の暁美ほむら/巴マミ/ミラールの三名に呼び掛ける。ジェイクに呼び掛けられた三人の女性も同様に前方のS-ジュアヴォに自身の得物である銃器を向けて狙撃していった。

 4人の狙撃で弾丸を喰らったS-ジュアヴォ。だが体に弾丸を受けたS-ジュアヴォの肉体から粘着質の体液が染み出し、瞬く間に粘液が体全体を覆い薄い緑色のサナギへと変貌してしまった。

「ヤベェ、サナギに変化しやがった! サナギから何か出てくる前に急いで駆け抜けろ!」

 瞬く間にサナギへと変異したS-ジュアヴォを目の当たりにしたメタルバードは、皆にサナギとサナギの合間を縫って急ぎ駆け抜けろと言い放つ。

 一行はサナギとの間を掻い潜りその場から離れようと足を急がせる。だが皆がサナギの合間を駆け抜けていく最中、そのサナギからもストゥレラツやナパドゥといった完全変異体が出現してくる。

 完全変異体から逃れる為に駆け足で先を進む一行の前に、別のS-ジュアヴォが続々と出現し行く手を阻んだ。

「邪魔だ、退けッ!」

 進行先に待ち受けるS-ジュアヴォに大将が小銃を向けて発砲し撃退しようと試みる。

 しかし大将が狙撃したS-ジュアヴォは先ほどの個体と同じく、銃撃を受けて倒れる度に体液を染み出して体全体が緑色のサナギに覆われていってしまう。

「サナギが増えていく始末だ……時間が無駄だ、ジュアヴォを倒してサナギに変わっても破壊しないで無視して先に進んでいくぜ!」

 狙撃して倒す度にサナギへと変異していくS-ジュアヴォを前に、ジェイクは数が増えていくサナギ個体に対して完全に無視して気にせず前進していこうと皆に言い切る。これにメタルバードも先ほどからの完全変異体との戦闘で自分はもちろん皆の体力や弾薬が消費している現状を気にしてジェイクの提案に乗る。

「ジェイクの言うとおりだ! 一々サナギに気を取られていたんじゃ時間も体力も消費しちまう! ここは無益な戦闘を避けて一気に駆け抜けるぞ!」

 皆もジェイクの提案とメタルバードの指示に従い、サナギの破壊を行わずS-ジュアヴォとの戦闘も極力避けて前へと進んでいった。

 

 次第に周囲をS-ジュアヴォの群衆に囲まれながらも、一行は大きな両開き式の電動扉の前まで辿り着くと迷う事無く扉の奥へと駆け込んだ。

 

 

 

 

[衝撃!新世代型の複製]

 

 数多の小田原修司のクローンを基に造り出されたS-ジュアヴォやそれから派生したサナギを掻い潜り、一行は何とかして電動式の扉の向こうへと飛び込んだ。

「は、早くこっちに! クローンが、ジュアヴォの群れが駆け付ける前に!」

 赤塚組のアツシが後から駆け付けてくる新世代型たちや聖龍隊の面々に声を掛けながら扉を通過させていく。

 そして全員が扉を通過したのを確認すると、コレクターズの三人が扉の横に配備されたボタンを押して急ぎ扉を閉める。

「はぁ、はぁ……ど、どうにか撒けたな」「ああ」

 息を切らしてS-ジュアヴォの追撃を撒いた事に安心する大将と彼に言葉を返すメタルバード。

 

 一行がS-ジュアヴォの追手から逃れる為に、急いで駆け込んだ空間を見渡してみると、そこは体育館程の大きさの色白な部屋だった。

 更に見渡してみると、左右の壁一面には無数の球形のガラスが視認できた。

 そして皆が直視すると前方奥の方には入ってきたのとは別の扉が目に映った。

「な、なんだ此処は?」

「なにかの研究室だってのは解るけど……壁一面のガラスは何だろうか。何か中に納めているみたいだけど」

 殺風景なただただ広い空間を見てポカンとする新世代型の念堂力に反して冷静に自室の状況を見定める斉木楠雄。見たところ、壁一面に見受けられる無数の球形ガラスは管となっていて、それが壁内部に埋め込まれている構造であると認識できた。

 皆が壁一面のガラス製のカプセルに目を奪われている最中、新世代型の薙切えりなが傍観してる面々に向かって言い放った。

「皆さん、こんな所に長居は無用ですわ! さあ、向こう側の扉を抜けて早くこの施設から脱出しましょうっ」

 えりなの言い分に皆が納得し、向かい側の扉へと足を進ませようとした。まさにその時。

 壁一面に内蔵されてる無数のポッドから白い靄が吹き出し、前触れもなしに全ての密閉されてたカプセルが壁から突出しては全開したのだ。

「な、なんだなんだ!?」

 ニュー・スターズのフロートが突如として壁から飛び出したカプセルに驚く最中、白い靄が辺りを包んでいく

『……………………』

「な、何が起こるっていうんだ」

 何の前触れもなく壁に仕舞われていたカプセルが突出し、中から白い靄が噴出する状景を前にして愕然となる新世代型にジェイク。

 皆が壁から出てきたポッドに目を向けていると、カプセルの一つから生白い手が外に飛び出てきた。

「ッ」「きゃあっ!」「な、何か出てきた!」

 カプセルの中から現れた生白い手を見て、表情を険しく一変させるメタルバードとは反対に、恐怖で涙目で抱き合ってしまう新生代型の御舟百合子と琴浦春香の二人。

 一同がカプセルより出てきた白い手に気を取られていると、なんと他のカプセルからも続々と生白い手や足が出てきては、人型の何かがカプセルより自力で這い出てきた。

「な、なんだ今度は!」「新手のB.O.Wか!」

 続々とカプセルより出てくる生白い体の人型の存在を前にして慌てふためくアツシに反して冷静に銃器を向けるテツの赤塚組幹部二名。

 そして弱々しい力で這い出てきた色白の人型に対して赤塚組やジェイクが発砲を開始。カプセルより出てきた色白の人型に弾丸を浴びせていく。

 しかし銃弾を受けた色白の人型は倒れる事無く、辺りを覆う白い靄の中を徘徊する様に歩き始める。色白の人型は次第に此方へと接近し、その全貌が少しずつ白い靄の中から明白になってきた。

 全員が白い靄の中から自分達へと歩み寄ってくる人型の存在に只ならぬ警戒心で強張った表情を浮かべる。

「アウーー……」

 両手を前に突き出して、まるでゾンビの様に歩み寄ってくる人影に新世代型達は脅え切り、聖龍隊と赤塚組が警戒態勢を敷く中、壁一面のカプセルより現れた人型の生物は遂にその全貌を靄の中から現した。

「し、新種のゾンビか。 ……! そ、そんな!」

「ええっ!?」「なにッ!」「まさか……!」

 銃を構える大将が白い靄から全貌を現した人影の実体を視界に捉えた瞬間、余りの衝撃で驚愕した。そしてその衝撃はミラーガールにメタルバード、ジュピターキッドも同じだった。

 大将たち以外の他の面々も、白い靄から姿を見せた人影に同様の衝撃を受けて、愕然としてしまった。

 カプセルより白い靄と共に出て来たのは、白い靄から全貌を見せた人型の影の実体は。

 

 

 なんと新世代型 真鍋義久と瓜二つの顔だちをしている、肌と眼球が色白の不気味な人間だった。

「お、俺!?」

 自分と酷似している色白の人間を見て同然の如く驚愕する真鍋義久本人。

 すると真鍋義久と瓜二つの人間の後ろから、続々と他の人影も白い靄から姿を明らかにしていく。なんと他の人影も真鍋義久同様に、一行の者たちと瓜二つの容姿を持つ不気味な人間達であった。

「ぼ、僕が!」「あ、あれは私!?」

 目の前に現れる不気味な体に自分達と酷似している顔立ちの人間に驚愕していく新世代型の室戸大智に朱鷺戸沙耶(ときどさや)

 迫ってくる色白の人間は、全て顔立ちが新世代型の二次元人と瓜二つであった。

「こ、コイツらは何なんだ! やけにガキ共と似ているぞ」

 無数に出現した色白の人間全てが新世代型の子供達と瓜二つの顔立ちである事に半ば混乱してしまう大将。

 しかしカプセルより現れた人間と似ていたのは何も子供だけではなかった。黒川冷や四宮小次郎といった大人の新世代型と酷似している人間までも視界に入ってきた。

 老若男女問わず、新世代型と顔立ちが酷似している死んだ魚の様な生気のない白い眼の不気味な人間を目前にして、恐怖と混乱で頭がいっぱいになってしまう新世代型達は大いに動揺してしまう。

「な、何なの。この色白の、琴浦さん達とそっくりなのは……ひっ!」

 周囲に群がってきた琴浦春香と瓜二つの色白の人間を凝視して、動揺と恐怖で顔が真っ青になるチョコ。彼女たちギュービッドと桃花の眼前に、その琴浦春香に似ている人間が迫り怖気づいてしまうチョコ。

 更に続々と徘徊しながら姿を見せ、近寄ってくる自分達と同じ顔立ちの人間達に新世代型達は愕然とし口を開けて驚くばかり。

「そ、そんな! 僕が……」

「お、俺はもちろんハルキやヒカル達、学園のみんなが揃ってる!」

 自分達と同じ顔立ちをしている色白の不気味な人間を目の当たりにして騒然となる直枝理樹に瀬名アラタ。

「り、流子ちゃんに蟇郡先輩……みんなみんないる!」

「バカな! 我々と酷似しているとは、一体全体どうなってるんだ!?」

 親友の纏流子や蟇郡苛(がまごおりいら)を始めとする自分同様、研究施設に連行された本能字学園の面子の顔が全員揃っている現状に驚きを隠せない満艦飾マコ。そしてマコ同様に纏流子らと共々、自分達と顔立ちが酷似している色白の生気のない人間達を目の当たりにして我が目を疑う鬼龍院皐月。

「ま、マジかよ! 田所にえりな……他の連中まで、今この場にいる面子が見事に揃っていやがる!」

 視界に映る全て色白の不気味な人間の顔、それが自分を含めこの場にいる新世代型二次元人と同様の顔立ちである事に現状を見渡した幸平創真は驚愕。

「ど、どういう事? 私達と同じ顔だなんて……」

 同様に自分や友人達に似ている人型が目の前を徘徊している現況に半ば信じ難い心境に駆られる野々原ゆずこ。

「ぼ、僕達にそっくり」「どうなってんだ、まったく」

 目の前を徘徊する自分等と酷似した存在に状況が呑み込めず困惑するイオリ・セイと親友のレイジ・アスナ。

「きゃあっ! 何なの、このそっくりさん達!」

「私達に似すぎ! と、いうか不気味すぎる!」

 余りにも酷似している顔立ちとは裏腹にその他の容姿は色白のふやけた裸体という不気味な全容に顔面蒼白で悲鳴を上げる月影ちありと近衛ねね。

「この人間……いいえ、生き物は何なの? なんで私達と似ている訳なの!?」

 人間とも思えない風貌ながらも顔だけは自分達と酷似している点に、多大な不快感を覚えてしまう綾瀬なる達【プリティーリズム・レインボーライブ】の子供達。

『……………………』

 一方で騒然となる新世代型の集団の中で唯一険しい面持ちで自分等と酷似している人間達と対峙している【境界の彼方】の4人。

『っ………………!』

 無論、自分達と瓜二つの顔立ちをしている異質な存在を目前として恐怖で声すら出せなくなっている【のんのんびより】や【きんいろモザイク】の少女達も見受けられる。

 そんな状況で迫りくる異質な存在に、思わず逃げ出そうとしてしまう者もいたが、すぐに異質な存在が新世代型と酷似している顔を向けて取り囲み逃がそうとはしなかった。

「お、俺!? うわッ」

 逃げ出そうとした矢先に行く手を阻む自分と瓜二つの顔立ちの人型に驚愕し立ち往生してしまう念堂力。

「く、来るな! このバケモノ……わ、ワテらと似ているから、なんか複雑やな」

 ゾンビの様に腕を伸ばして迫ってくる色白の人型に抵抗するが、自分達と似ている存在に複雑な思いで必死に蹴り飛ばしたり押し返したりして抵抗していく鳴子章吉たち。

 

 周囲をすっかり埋め尽くすほど出現した新世代型二次元と酷似した色白の生気のない人間達を目撃して唖然とする聖龍隊。

 すると騒然となる空気を断ち切るかの如く、メタルバードが言葉を発した。

「そ、そうか! コイツらは……」

「バーンズ、この新世代型にそっくりな連中が何なのか解ったのか?」

 場の空気を切る勢いで発言したメタルバードに、大将が周囲に群がる新世代型と酷似している人型の生物について何か察したのか訊ねた。するとメタルバードは重く険しい表情で衝撃の話を口にした。

「コイツらは……新生代型のクローンだ! おそらく間違いない」

「な、何だと、クローン!?」『!!』

 メタルバードの発した言葉に大将も新世代型本人たちを含んだ他の一同も驚愕する。そんな一驚する皆々にメタルバードは話を続けた。

「確か新世代、お前たち此処に連れて来られた時に色々と薬を打たれたり採血されたりしてたんだよな! 多分その時に採取された血液から遺伝子を抜き取ってクローンが作られたんだろう」

 メタルバードの話に驚き慄く赤塚組に新世代型達。しかしメタルバードの話はこれだけではなかった。

「しかもコイツら、修司のクローンと同じで色んなウィルスやワクチンを投与されて強化されているみたいだ! 今さっき此処のコンピューター端末にハッキングしたらC-ウィルスとか色んなの持っていやがるよ、このクローン共」

 話を聞いて愕然と言葉を失くす大将ら赤塚組に新世代型の二次元人たち。

 この一連の話を聞いたジェイクが焦った表情でメタルバードに言い放った。

「どうすんだ! さっきからS-ジュアヴォや変異体との戦闘で、俺や赤塚組の弾薬は尽きかけているんだぞッ! 流石にこの数のクローンとやり合うのは分が悪いぜ」

 ジェイクの言う通り、彼や赤塚組が所持している弾薬は度重なる戦闘で著しく消費してしまい僅かしか手持ちにない現状である。

「バーンズ、ここはどうする? 僕らの特殊能力で一掃するのが手っ取り早いだろうけど、僕達も今までの疲労が積み重なって余り無理な戦闘はできない」

「………………」

 ジュピターキッドの話は事実だった。如何に強力な能力者でも、その能力を酷使すれば精神力や体力が消費し減ってしまう。メタルバードはこのまま聖龍隊で新世代クローンと戦闘を初めていいのか悩んだ。

 と。新世代クローンの大群に状況を追い詰められてた、まさにその時であった。

「総長、ここは私が」「!」

 一人の者がメタルバードに対して名乗りを告げ、それにメタルバードは反応した。

 皆がその者に視線を向けると、その者は聖龍隊スター・ルーキーズ総部隊長ミラールであった。

「ミラール! やってくれるのか?」

 突然のミラールの名乗りに総長メタルバードが問うと、ミラールは余裕を感じさせる表情で話し返した。

「ええ。実を言うと私、一応は有事が起こった際の為に力を極力使わず温存させていたの。こう言った、皆の戦力が疲労困憊した時の為にね」

 このミラールの話を聞いて、彼女が指揮する総部隊ルーキーズのナツ・ドラニグルがミラールに文句を言った。

「おい、ミラール! それじゃテメェ、今まで手抜きで戦っていたのかよ」

 今までの戦闘に本気を出さず余力を残して戦っていたのかと問い詰めるナツに対し、ミラールは銃を構えて不敵に言い返す。

「まあね。一流の戦士足るもの、緊急の事態の際に力は温存しておくものよ」

 そしてミラールは己の武器ミラージュ・ガンを両手に携え、前へと歩んでくと同時に皆に言った。

「私一人で十分。みんなは戦えない人たちの警護にあたってちょうだい。こんな出来損ないのクローンたち、全員で戦うだけ時間と労力の無駄よ」

 己が指揮するルーキーズだけでなく、先輩にあたるニュー・スターズや幹部のHEAD、そして同盟相手の赤塚組といった目上の立場にすら勝気な台詞を告げるミラール。

 最後にミラールは新世代クローンの大群を前にしながら余裕ある笑みを口元に浮かべて対峙つつ、そのクローンの元である新世代型二次元人達に言葉をかけた。

「フフ……私に撃ち抜かれたくないなら、そこにいなさい」

 かくして聖龍隊スター・ルーキーズ総部隊長ミラールの単身での戦闘が開始された。

 

「アウーー……」

 両手を前に突き出して歩み寄ってくる新世代クローンにミラールは臆する事無く二丁拳銃を手にし、前方に激しく連射の嵐。次々に新世代型のクローンを撃ち抜いていく。

「グアァ……」

 ミラールの銃弾に撃ち抜かれていく【琴浦さん】に【境界の彼方】のクローン。これに本物(オリジナル)である琴浦春香や栗山未来たちは凄まじいミラールの銃撃戦に驚きを感じつつ、複雑な心境を抱いてた。

 更に銃撃戦を展開するミラールに【リトルバスターズ】のクローンたちが駆け寄っては猛威を振るおうとするが、ミラールは新世代クローンの攻撃を跳び上がって回避すると即座に下方に向かって銃撃を放つ。真上からの銃撃に、流石の新世代クローンも銃弾の雨の中で苦しむ。

 次第にミラールの周りは新世代クローンに取り囲まれ、新世代クローンは一気にミラールに襲い掛かる。しかし囲まれたミラールは未だ余裕の表情を浮かべているのを新世代型達は気づいてた。

 前方に迫る【ダンボール戦記ウォーズ】の新世代クローンにミラールは突進しながら銃撃、そして敵中に飛び込むと周囲にショットガンを無差別乱射し新世代クローンを牽制してみせる。

 と。ここでミラールの圧倒的銃撃戦を傍観する本物(オリジナル)の新世代型二次元人に混ざって戦闘を観察してたプロト世代の海道ジンがある事に気づいた。

(……! カプセルから出てきたクローンに僕がいない? やはりクローンが生み出されたのは僕以外の新世代型のみか)

 自身のクローンが見当たらない事でジンは、研究施設に連れて来られた二次元人では自分の様なプロト世代は省かれ、新世代型二次元人のみのクローンが生み出されてる事実に気付いた。

 一方のミラールは敢然と迫りくる複数の敵を、強烈な銃撃で宙に舞い上がらせては即座に二丁拳銃をマシンガンに変化させて、連続射撃で敵を高々と銃撃で舞い上がらせる。

 苛烈極まるミラールの銃撃戦を観戦する新世代型達は、この時ミラールの銃撃が燃え上がっているのに気付いた。

「み、ミラールさんの銃撃。何だか燃えている様な……!」

 新世代型達と観戦してたプロト世代のチョコが慄いていると、彼女の発言にルーキーズのトリコがその疑問に代わって答えた。

「ミラールの基本的な戦術は、火炎系の魔力を主軸とした銃火器で応戦するタイプなんだ。銃撃も、それで発砲される銃弾も紅蓮の炎で燃え上がる効力。ゆえに、銃撃をしているミラールの近くにいる敵も炎に巻き込まれ、銃弾を受けた敵も容赦なく炎の弾幕で燃え上がったり爆発したりするんだ」

「ば、爆発っ?」

 トリコの説明を聞いて新世代型の真鍋義久は驚愕する。

 そんな中、当のミラールは前方の新世代クローン達に燃え上がる炎の二丁拳銃を巧みに扱い容赦ない連射による迎撃を繰り広げる。燃える銃撃を行うミラールの付近にいる新世代クローンは、銃撃による爆炎に巻き込まれ、銃弾を受けた新世代クローンは肉体が燃えながら吹き飛ばされていく。

 炎の銃撃を繰り出していくミラール。そんな彼女に新世代クローン達は数で圧倒しようと勢いを押し返そうとする。

 だがミラールは向かってくる新世代クローン達の真上に跳び上がると、真下のクローン達に向かってマシンガンを連射しながら銃撃の勢いでゆっくりと地上に下りていく。

 と、集団で迫る新世代クローンと激しく抗戦するミラールに、井ノ原真人/燃堂力/猿田学/蟇郡苛(がまごおりいら)/堂島銀/田所迅らの巨漢の新世代クローン達が一斉に襲い掛かろうとしてきた。だがミラールは決して動じず、銃器をお次はロケットランチャーに変化させて標準を迫りくる巨漢の新世代クローンに定めて狙いを付けた瞬間、引き金を引いて一気に追撃ランチャーを連射し巨漢の新世代クローンを悉く爆撃していった。

 更に迫りくる三枝葉留佳/二木佳奈多(ふたきかなた)/篠目アカネ/キャサリン・ユース/森園わかな/りんね/凉野いとといった新世代型の少女達の新世代クローンが波の様に押しかけて来るのに対し、ミラールは魔力で形成したダイナマイトを懐から取り出して前方に巻き散らし、爆撃で群がってくる新世代クローンを爆発に巻き込んでいく。

 しかし銃撃や爆撃を受けても、何度も起き上がる新世代クローンを前に戦いを観戦してる皆々は激しく動揺し始めた。

「おいおい、どうなってるんだ。アイツら倒れる気配が無ぇぞ!」

 激しいミラールの銃撃を受けても尚立ち上がる新世代クローンを目撃して、今までジュアヴォやゾンビといったB.O.Wと戦ってきたジェイクも焦りの色を隠せずにはいられなかった。

 だがミラール本人は焦る事無く、動揺もせずに背後の新世代型達に静かに瞳を向けて言い放った。

「見せてあげるわ、銃とはこのように扱うって!」

 新世代型達に銃火器の戦闘を目撃させると豪語するミラールの言葉に、新世代型達は言葉を失った。

 激しく、苛烈に銃撃で周囲の新世代クローンと抗戦するミラールの姿に、思わず目を奪われてしまう本物(オリジナル)の新世代型達。するとそんな新世代型達にルーキーズの隊士はこう告げた。

「謙遜、爆音、それが今のミラールの言葉」

 激しい銃声や爆音の中でも己の姿勢を崩さず徹するミラールの生き様を言い表す言葉だった。

 その時、自分達と顔立ちや体格が酷似している新世代クローンを躊躇なく撃ち抜いていくミラールの戦いぶりを見て本物(オリジナル)の燃堂力がぽつりと呟いた。

「な、何だか複雑だな。俺達と瓜二つの相手が次々と撃たれていくのを見ると……」

 自分たち新世代型二次元人から作り出された容姿が酷似している新世代クローンを迷いなく撃ち抜いていく戦いぶりに心境が薄暗くなっていく燃堂力。そんな彼の言葉を聞いてかミラールは不敵な顔で言った。

「盲目的ね、でも私だけはそれを認めない」

 如何に自分達と酷似した相手とはいえ敵対している関係なら目を背けず撃ち抜くという、理性的な判断を下してる故のミラールの格言。

 そんな盲進せず新世代クローンを見定め、的確に標的を撃ち抜くミラールの苛烈な戦術を目の当たりにする新世代型の中から言葉が発せられた。

「怖くて堪らねえのに、心が躍る……!?」

 最早、対峙する敵だけでなく観戦する者の心までも射抜くミラールの戦術に対し、ルーキーズ隊士は自分達の信条を口にする。

「前線にて力を示す、それがルーキーズの戦闘意義」

 未来を担う聖龍隊の新人育成部隊としても名を馳せるスター・ルーキーズとして、戦場の前線に躍り出て真価を発揮するのが筋である。そう言うルーキーズの姿勢から並々ならぬ覇気を感じる新世代型達。

 一方のミラールは後方に、時には前方に体を転がし回避しつつ同時に強烈な銃撃で周辺の新世代クローンを粉砕していく。

 相も変わらないミラールの戦姿に聖龍隊は彼女の経緯について言葉を発する。

「歴史をも変えた二次元人の変わる能力……その申し子の一人!」

 古来より多くの二次元人が持つ「変える能力」ミラールはその変身・変化の能力を持つ申し子の一人と断言される。

 連射連撃の嵐。その渦中のミラールは絶える事ない銃撃を繰り出しながら鋭い眼光で口走った。

「弾を惜しみはしない、それは驕りの始まり故に」

 銃弾を惜しまず攻撃を続ける。もし弾丸や能力に惜しみを感じる時は思い上がりの兆しである。少女の頃から歴戦を積み重ねてきたミラールが戦いの中で得た悟りでもあった。

 ミラールの連なる銃撃を浴び続け、新世代クローンは派手に吹き飛び、その身を燃やしながら宙に舞う。だがそれでもミラールの銃撃は止む事はなかった。

 勢いが収まる処か激しくなるミラールの形勢を目前で観戦する新世代型の一人、瀬名アラタがミラールの戦いぶりを見て思った。

「だ、だけど……多くの部隊を引き連れる総部隊長が自ら戦前に出ていいのかな」

 複数の部隊を引き連れて戦う総部隊長の立場でありながら、御自ら戦前に出る姿に若干の戸惑いを感じるアラタ。そんなアラタにルーキーズでは最年長のワイルドタイガーが調子の良さ気な笑みで言い返した。

「鶏口もなるも牛後となるなかれ、って奴さ」

 大きな集団や組織の末端にいるより、小さくてもよいから長となって重んじられる方がよいという事。すなわち聖龍隊という巨大な組織の隅で待機するよりも、ルーキーズという複数の部隊を引き連れて戦前に徹する方が良いと思っているのだ。

 多種多様な銃火器で攻めていくミラール、そして彼女の戦いを黙然と傍観するルーキーズ。彼らの情景を見て、プロト世代の海道ジンは思い出した。

「全は個、個は全……それがルーキーズの考えだという」「え?」

 ジンの突発的な発言に、傍らにいた新世代型の美都玲奈が顔を向ける。するとジンは今自分が発した言葉について語り明かす。

「聖龍隊も当然だが、ルーキーズは個々の戦力をフルに活用して戦うという。個々の戦力を最大限に生かしつつ、全兵力に繋げていく……種族や能力、それらを問わず入隊してる聖龍隊ならではの戦術だ」

 一致団結しつつも、一人一人の特性や長所を生かして戦力を増やし、戦果を発揮していく。全は個、個は全……すなわち皆は一人の為に、一人は皆の為に全力を尽くすという戦法である。

 美都玲奈や瀬名アラタを始めとする者たちがジンの発した言葉に聞き入っていた最中、ミラールは銃をショットガンに変化させて自身に向かってくる直枝理樹や斉木楠雄などの新世代クローンの顔面に散弾を撃ち付けると同時に周囲の敵とも牽制を図る。

 ショットガンで周囲を牽制しつつ、別の時にはマシンガンを連射して抗戦するミラールを唖然とした心意で眺める新世代型たち。

 更にミラールは迫りくる琴浦春香/棗鈴/鹿島ユノ/水戸郁美らの少女の新世代クローンをマシンガンに変化させ弾丸を連射し弾幕で押し切ってみせる。その様子に本物(オリジナル)の少女達は冷然と自分達のクローンを機関銃で狙撃していくミラールに唖然としてしまう。そんな彼女達の視線に気づいたミラールは、少女達に目線を向けて当然の様に告げた。

「不思議がる事は無いわ、私達の専門は戦いなんだから」

 自分達の専門は戦う事。このミラールの毅然とした態度に戦いを傍観する新世代型達は一同愕然となる。

 不気味な白い眼で見据えながら向かってくる纏流子/鬼龍院皐月/幸平創真/野々原ゆずこ/大宮忍/アリス・カータレットなどの新世代クローンにミラールは特別な弾をお見舞いした。それは着弾して数秒も経たない内に爆発するという効力の銃弾。この銃弾を受けた新世代クローン達は銃弾を受けて間もなく着弾が爆発、その威力で次々に吹き飛ばされていった。

 ミラールの銃撃戦法は勢いを増していき、新世代クローンに容赦ない銃弾の雨を浴びせていく。

「戦いだからと鳥めく輩達、それは一時の名誉に過ぎない!」

「なんという高みに上り詰めているのだ……!」

 戦火の中で活躍すれど、その戦果は一時ばかしの名誉にしかならない。常に次の目的や目標に向かって戦歴を挙げていく姿勢を言い表すミラールの台詞に、新世代型の鬼龍院皐月は只ならぬミラール達ルーキーズを始めとする聖龍隊の真価を改めて垣間見る。

 

 そんなミラールの銃弾の嵐、激しい弾幕を浴び続けても一向に倒れない新世代クローンの群れ。此処でミラールは最後の切り札と言うべき技を繰り出した。

「銃弾の嵐を起こし、戦場に吹き荒れる!」

 己の生き様、己の戦ぶりを表す言葉を言い放ち、ミラールは手に携える銃を己の真上に放り投げた。

 すると二丁拳銃が無数の銃火器へと変化・増大し、ミラールの上方には拳銃やマシンガンなどが大量に宙を舞っていた。

『じゅ、銃火器が増えたーーッ!!』

 得物である二丁拳銃を無数の銃火器に変化・増大させるミラールの秘術に新世代型達は目を飛び出させるほど驚愕し切った。

 豊富な銃火器に変化した武器をミラールは、まず手始めに二丁拳銃を受け止め腕を突き出し回りながら周囲へ連射、続いてマシンガンを手にすると連射性を向上させてからの激しい弾幕といった銃器を持ち替えながらの激しい銃撃を連続で浴びせる。そして全ての銃火器を撃ち終わると最後にロケットランチャーに持ち替えて自身の周囲に爆撃の雨を降らし尽くし、銃撃の嵐を巻き起こして辺りを一掃した。

「危ないっ、離れろ!」

 苛烈なミラールの連続砲撃は、近場で待機していた他の皆々にも被弾しそうになる。メタルバードは急いで新世代型達を後ろに退かせ、同時にミラーガールはバリアーを張って自分を含む皆の身を護る。

 銃撃の嵐による銃弾を全て撃ち終ったミラールは、周囲に横たわる新世代クローン達の中央で嵐の後の静けさを感じつつ、拳銃を顔の前に構えながら最後の台詞を口にする。

「私は私の為に戦い、私として死ぬ。誰の許しも乞いはしない……」

 そう言うとミラールは構えてた銃を親指で回転させながら腰のホルダーに装入して一言。

「文句がないなら言いなさい、これが私の生き様よ!」

 もはや王女としてではなく一端の戦士として生き抜いていく覚悟を感じさせるミラールは、床に倒れる新世代クローンの真ん中で顕然とした態度で眼光を光らせるのだった。

 

『…………………………』

 ミラールの秘技を目の当たりにして辺りは静寂に包まれ、戦ぶりを観た多くの者が烈火の如き弾幕を目撃して驚き慄き、口を開けて立ち尽くしてしまう。

「相変わらず激しいな。ミラールの銃撃は」

「そうだね。昔の未熟で経験不足の異常者(ヒール)ハンターとは、すっかりかけ離れてる」

 皆が言葉を失い口を開ける中、メタルバードやジュピターキッドを始めとする歴戦の猛者である聖龍隊と赤塚組は、今や熟練の戦士として成長したミラールの姿に感銘を受けていた。

「……ま、まぁ。これでようやくクローンの群れは倒れただろうな」

 凄まじいミラールの戦法に肝を抜かれたジェイクは、そのミラールの周辺に散らばる新世代クローンの状景を見て、クローン達が完全に息絶えたと半ばの安心感を覚えた。

 が。皆が新世代クローンの完全なる討伐を思い込み始めた、その時。

 なんとミラールの激しい数々の凄まじい銃撃を受けた新世代クローンが続々と起き上がりだしたのだ。

「って! ウソだろ!?」「アレだけの銃弾を浴びて、まだ死んでねぇのかよ……!」

 弾幕に爆撃を無数に浴び続けても未だ死なず起き上がる新世代クローンを目の当たりにして、大将は驚きジェイクは激しく動揺する。

 しかし次々に起き上がる新世代クローン達は襲いに懸からず、その場で小刻みに体を震わせ始めた。

「? なんか様子が可笑しいぞ」

 ジェイクが新世代クローン達の異常を指摘する。

 すると次の瞬間。新世代クローン達の体から緑色の粘液が排出され、その緑色の粘液に体が覆われると同時に粘液が凝固してしまった。

「お、おい! これは……」

「さ、サナギ!? 寄りにもよって新世代のクローンがサナギに成りやがった!」

 なんと数多の銃撃を浴びて、爆撃に晒された新世代クローンがS-ジュアヴォ同様に更なる変異を構築する為のサナギに変異してしまった。

 全ての新世代クローンがサナギに成った現状を目の当たりにして愕然となるメタルバードたちHEAD。

 と。皆が自分達の目の前で、新世代型二次元人より作り出された新世代クローンがサナギに変貌した現状に言葉を失い佇んでいる状況にメタルバードが一喝した。

「みんな! クローン達がサナギに成っている今の内に、奥の扉に向かって突っ切れ! いつサナギが孵化するか解らないが、サナギになっている今の内に正面の扉に向かって駆け抜けろ!!」

 メタルバードの一喝に聖龍隊と赤塚組に護衛されている新世代型達は、向かって真正面に見える扉に視点を向けて一直線に駆け出した。

「急げ! サナギが孵る前に扉に向かうんだ!」

「扉を開けろ! サナギ化している今の内に全員別のフロアに移動するんだ!」

 大急ぎで新世代型達を中心とする護るべき人々を誘導していく大将に続き、メタルバードは仲間の聖龍隊に真正面の扉を開けて全員が通れるよう指示を飛ばす。

 だがサナギと化した新世代クローンの合間を縫って皆が走り抜ける中、そのサナギにヒビが入り高温の蒸気が吹き出した。そして中から異形の姿へと変貌した新世代クローンが出て来た。

「ギギャアァーー……」

 サナギから出て来たのは、サナギに成る前の新世代クローンとは顔立ちが掛け離れた異形の怪物が出現した。

「は、早く扉を開けてくれッ。サナギが孵っちまった!」

 サナギから出て来たのは、西洋の子鬼といわれるゴブリンにそっくりな背中に蝙蝠の様な翼を生やした異形の怪物。その怪物を見て大将は慌てながら扉の開閉に手間取る聖龍隊に訴えかける。

 そしてようやく扉が開き、新世代型達は一斉に扉を潜り抜けてその先に駆け込んでいく。

 扉の奥に雪崩れ込んでいく新世代型達にプロト世代の海道ジンやチョコ達が通過していくのを誘導しながら確認していく聖龍隊と赤塚組。そんな状況の中、サナギから孵ったゴブリン姿に変貌した新世代クローンが再び群れを成して後方から滑空しながら迫ってきた。

「ピギャーーッ!」

 奇声を発しながら背中の翼で滑空して迫る新世代クローンに追われる本物(オリジナル)の新世代型達。

 しかし後方より迫るゴブリンの姿に変貌した新世代クローンを赤塚組が砲撃で狙い撃ち、迎撃して抗戦する。

 そして新世代型にプロト世代、聖龍隊に赤塚組の面々が扉を通過していき、最後に双方の頭であるメタルバードと大将が追尾してくるゴブリン姿の新世代クローンを迎撃しながら後退していく。

 追撃してくる新世代クローンを迎撃しつつ後退するメタルバードと大将は、そのまま扉を抜けるとメタルバードが仲間に叫ぶ。

「今だ! 扉を閉めろッ」

 メタルバードの指示で扉は迅速に閉められた。しかし扉が完全に閉まる寸前で変異した新世代クローンが隙間から腕を伸ばし、扉向こうの者たちを恐怖に陥れる。

 更に新世代クローンが腕を押し入れている為に、扉が完全に閉まらなくなってしまってた。扉を完全に閉めて新世代クローンの追撃を逃れる為に、メタルバードや大将は扉の隙間に腕を突き入れ伸ばしてくる新世代クローンの腕に攻撃していく。

 新世代クローンの腕を押し退け、苦労の末に扉は完全に閉まり新世代クローンから逃れられたと皆が思った次の瞬間。

 強靭な力が加わったのか分厚い鉄の扉が凹み浮き上がった。

「ッ!」

 分厚い鉄の扉が強靭な力で此方側に凹んだ現状に驚き怯む大将。その間も扉は内側から激しく打撃が加えられているのか凄まじい衝撃音が鳴り響く。

 強引に扉を突破されるのを恐れたメタルバードは聖龍隊の仲間達に急いで告げた。

「聖龍隊! 氷系の能力で扉を氷漬けにしろ! 氷で扉を塞いで、中からクローンが出て来れないようにするんだ!!」

 メタルバードの指示に、氷系の能力者は総力を挙げて氷塊で扉を覆い内側より突破されないようにしていった。

 

 そして新世代型二次元人のクローンである、新世代クローンとを隔てる鉄の扉は強固な氷塊で覆われ、どうにか新世代クローンの追撃を凌ぐ事が叶った。

 

 

 

 

[複製のロボット]

 

 

 メタルバードは鋼鉄の扉を打ち破ろうとする変異した新世代クローンの追撃から逃れる為、仲間に指示を出して扉を氷塊で覆いクローンが来られない様にした。

 そして氷塊に包まれた扉を確認すると、メタルバードは直ちに皆々に次の指示を飛ばした。

「よし、クローン達も氷で覆われた扉をこじ開けられないみたいだ。今の内に此処から離れるぞ」

 即行でこの場から遠退き、再び脱出に向けて上階に足を運ばせようとするメタルバード。だが

『……………………………………』

「……? ど、どうしたんだ、お前ら?」

 呼び掛けに答えず、その場で暗い面持ちで下を向く新世代型達。彼らから発せられる並々ならぬ負の情状を間近で感じ取ったメタルバードが問い掛けると、新世代型の琴浦春香が暗い表情で答えた。

「だって……私達から作り出されたクローンが、あんなに恐ろしいなんて」

「………………」

 先ほど自分達に襲い掛かってきたクローンの猛威を恐ろしく感じると同時に、その恐ろしい存在が自分達から作り出されたクローンである事実に悲観する新世代型達の心境を察して言葉を失くすメタルバード。

 どうにか新世代型を元気付けようと、メタルバードは自分なりに新世代型達を励ました。

「で、でもよ……所詮はクローンはクローンだ。コピーであって本物じゃない。本物のお前達が落ち込む事はない。はは」

 しかしメタルバードの励ましを耳にしても、新世代型達の気は滅入ったままであった。

「だけど……それでも僕達から作られたって事実には変わりありません」

「俺らから作られたクローンが、あそこまで攻撃的だなんて……しかも最後にはジュアヴォ同様、サナギに変異してより驚異的に変貌したし」

 心痛な面持ちで語る直枝理樹と瀬名アラタの言葉に皆が心を締め付けられていると、再び琴浦春香が口を開く。

「新世代型ってだけで誘拐されて、挙句の果てにはクローンまで作られて……私達って何なの……」

「琴浦さん……」

 新世代型の二次元人という名目だけで誘拐され、遠い異国の地まで強制的に連れて来られ、自分達の遺伝子を用いられ複製であるクローンまで作り出された境遇の新世代型。そんな彼らの苦心と悲痛な想いを感じ、友人である琴浦春香の言葉に心を痛めるチョコ。

 聖龍隊も赤塚組も。そして一緒に連れて来られたプロト世代の海道ジンや自ら侵入してきたギュービッドに桃花・ブロッサム。そしてジェイク・ミューラーも新世代型二次元人の度重なる現状に感化する。

 そんな悲しみに暮れる新世代型の気持ちを汲み取ってか、ジェイクが徐に言葉を掛けた。

「……まぁ、色々と気苦労が多そうだが、今は取り敢えず前に向かって突き進むしか無ェんじゃないか。悩んでたって、立ち止まってたって何も解決できねぇんだ。自分の出生や血筋で苦労して、悶々と悩む暇があったら少しでも前向きに生きてみようぜ。そうすれば見えてくる兆しってのも、多少は感じられるさ」

 己の出生や血筋で揉め事に巻き込まれ、苦労の末に立ち止まっていても何の解決にもならない。悩み、立ち止まるよりも少しでも前を向いて生きていれば明日への希望が兆しとなって見えてくる。そう新世代型達に伝えるジェイクの言葉は実に重みがあった。父親からの忌まわしき血で既に平穏な日常に戻る事ができなくなったジェイクならではの言葉だからだ。

 ジェイクの言葉を噛みしめ、新世代型達は今自分達がすべき事は生きる為に前を向いて一歩ずつ歩んでいくべきだと意気込んだ。そして新世代型達はその場から立ち上がり前進する姿勢に戻った。

 新世代型達に励ましの言葉を投げかけたジェイクの行動に静かに感銘を受けるメタルバードや大将たち。

 そし一行は再び前進を再開した。

 

「兎に角、あの新世代クローンは氷塊で閉じ込めた。だがいつまで持つか分からん、少しでも上の階に向けて進まねぇと」

「そうだな。幸いにも、この辺には弾薬とかが落ちてるし、どうにか凌げるしな」

 氷塊で扉を塞ぎ、新世代クローンを閉じ込める事に成功したものの、いつまで凌げるか分からないメタルバードは少しでも前進していく事を提唱する。一方で大将は扉を抜けた先で落ちている弾薬を調達して、少しばかし銃器による戦闘が可能な状態に持ち堪えた。

 そうして再び先頭を聖龍隊や赤塚組の面々が歩み、物陰に身を潜めつつ敵がいないか確認しながら前進していく。

 すると進路の先に武装したS-ジュアヴォの姿が確認された。S-ジュアヴォが銃を携え、通路を徘徊しつつ警備に務めている様子を確認して、ルーキーズのアスナが駆け足で警備しているS-ジュアヴォの背後に接近し、近づいた瞬間得物の剣でS-ジュアヴォの胸部を一突きに貫いた。

「ッ……!」

 声にならない断末魔を上げたS-ジュアヴォは瞬く間に肉体が発火し、たちどころに消滅した。

 更に前進する一行。すると再び進行する通路の奥にS-ジュアヴォを確認。再度アスナが駆け寄り、先ほどと同様にS-ジュアヴォに一太刀浴びせようと試みる。

 しかしアスナが接近していくと、彼女の存在にS-ジュアヴォが気付き、携えている銃器をアスナに向けて応戦する体勢に入った。しかしアスナは臆する事無く、銃を構えるS-ジュアヴォの右腕を上方から振り下ろした剣で斬り付ける。だが右腕を損傷したS-ジュアヴォは瞬く間に体内のC-ウィルスの作用で傷が再生するのと同時に傷ついた腕が変異していった。そしてS-ジュアヴォの片腕はルウカ・スルプの状態に変化し、変異したS-ジュアヴォは巨大化した腕で前方のアスナに強烈な打撃を与えようと腕を横に振り翳した。だがアスナは振り付けられる腕を、膝を曲げて体勢を低くする事で回避するとS-ジュアヴォのがら空きの下半身に下段斬りを放つ。脚に損傷を受けたS-ジュアヴォだが、今度は傷を受けた両足が変異し、装甲を纏ったノガ・オクロプへ変異する。S-ジュアヴォは強化された脚力で体勢を低くしているアスナの顔側面に向けて強烈な回し蹴りを繰り出した。しかしアスナは咄嗟に後ろへと退いて攻撃を回避、その瞬間後方にいた赤塚組の海野ぐりおがアスナと攻防を繰り広げるS-ジュアヴォの頭部を狙撃する。頭を撃ち抜かれたS-ジュアヴォは一瞬で発火し灰化して消えた。

 僅かな時間の中でS-ジュアヴォと攻防を展開したアスナ共々、先へと進行する一同。そんな中、大将が先ほど新世代クローンと激しい抗戦を繰り広げたミラールに話し掛ける。

「おい、ミラール。お前さん、さっきの戦いで疲れてねぇか。能力の使用で疲れが溜まってんなら戦前から退いても構わないんだぜ」

 だが大将の気遣いにミラールは余裕満々の表情で話し返した。

「大丈夫よ、これぐらい。あんな多少の銃撃戦で疲れたりするほど柔じゃないわ」

 不愛想な面構えで大将に話し返すミラール。

 

 その後、しばらく通路沿いに突き進んでいくと景色が少しずつ変わっていき、何やら機械的な部品や機材が目につく様になってきた。

「……ここは何だ?」

 ジェイクを始めとする皆々が、変わりゆく景観に戸惑いを感じつつ足を進ませていくと、天井の通風孔からS-ジュアヴォの変異体、ノガ・トゥルチェニエが続々と天井を這って出現してきた。

「ま、また出て来た!」「きゃああっ」

 天井を複数の足で虫の様に素早く徘徊するトゥルチェニエの不気味な動きに、再び悪寒を覚える新世代型の女子達は堪らず悲鳴を上げてしまう。

 素早い動作で天井や床を移動するトゥルチェニエに大将とジェイクが狙撃しようと銃を構える。

「まるでゴキブリだな……」

 複数の足で移動するトゥルチェニエに狙いを付ける大将は、その動き回る様子を見て呟く。そして銃の引き金を引いてトゥルチェニエの頭部を狙撃した。

「グアッ」

 頭部を狙撃されたトゥルチェニエは床に落下し、そのまま灰となって焼失していく。

 残りのトゥルチェニエも聖龍隊が武器や能力を使わず、素手で倒していった。

「このっ……」

 天井を移動し真上までやって来たトゥルチェニエが伸ばしてきた両腕を逆に掴みかかり、逆さまのトゥルチェニエの上半身を膝打ちで何度も打撃を与えていくセーラーヴィーナスは、最後に力尽くでトゥルチェニエを天井から引きずり下ろし、脳天を床に直撃させて強烈な打撃でトドメを与えてトゥルチェニエを倒した。

 更に壁を這って移動するトゥルチェニエを、いい加減にうんざりした表情でメタルバードは頭を掴んでは後頭部を壁に叩き付けてトゥルチェニエを消し去った。

「まったく……もうウンザリだぜ。修司のクローンに続き、新世代のクローンやらジュアヴォやら。ほどほど疲れたぜ」

 精神的に気付かれしてるメタルバードは度重なる生物兵器との戦闘に参っていた。

 

 それからしばらく歩き続ける一行だが、通路の景観は益々機械的に変化していき、そして通路を進んでいると巨大な人型の機械が製作途中の様子で壁際に置かれていた。

「こいつは、ロボットか」

「まさか此処の施設は生物兵器だけでなくロボット系の兵器までも拵えていたのか」

 壁際に見受けられた巨大な人型の機械を見た大将とジェイク。その二人の会話にメタルバードも意見を出した。

「多分そうだろうな。デモンドロイドも配備されてたし、ロボット兵器とかの製作も行っていたのかもな……今となっては解らず仕舞いだが」

 バイオハザードが発生し、研究所員が全てゾンビにへと変貌してしまった現状では詳しい事は解らないであろうと述べるメタルバード。確かに壁際に寄りかかっている製作途中のロボットは何処かデモンドロイドにも見えた。

 更に奥へと進行していくと、今度は標準サイズの人型ロボットが数体、壁際にいくつも並べられて放置されていた。

「このロボット、見た事がねぇ代物だな……」

 常日頃より機械仕掛けの兵器を自主製作する赤塚組の頭領 大将は初めて目にした人型のロボット、アンドロイドの様な機械人形を間近で凝視していく。

 すると大将が凝視するアンドロイドを同じく目を凝らして観察したメタルバードが、アンドロイドの正体に気付いた。

「コイツは……クローンロイド」

「く、クローン、ロイド……? またクローンか? 一体、何なんだよ、バーンズ」

 メタルバードが発したクローンロイドの言葉に一同が反応し、大将が訊ねるとメタルバードはクローンロイドについて語り出した。

「クローンロイドは生物の遺伝子情報を機体に読み込ませる事で、その遺伝子の持主と瓜二つの姿形はもちろん身体能力や特殊能力もほぼ使えちまうロボットだ。今では二次元人、三次元人問わず大半の人間の遺伝子情報を電子データ化して読み込ませれば、人種や種族を問わず人型の生物なら何にでも変身できちまう代物さ」

「と、と言うと……例えば武術に優れたり、特殊能力が使える人間の遺伝子もプログラムに変換して、その情報を機体に読み込ませれば、容姿はもちろん武術や特殊能力が使えちまうって事か?」

「まあ、そうだな。武術や体術はクローンロイドの機体構造が頑丈であればあるほど可能になるし、技術も前もってプログラミングすれば大抵の技量は備わる。特殊能力も完全ではないがある程度までならコピー可能だしな」

「……」

「要するにクローンロイドってのは遺伝子情報を元に体術や能力をコピーするロボット、遺伝子から複製されるクローン同様に姿や能力をコピーして使用できるでロボット。それがクローンロイドだ」

 クローンの様に、遺伝子を用いる事で容姿だけでなく能力までも多少ながら扱う事ができるアンドロイド、クローンロイド。遺伝子情報をインプットし、それにより容姿は元より武術や能力までも使用可能になるアンドロイドの存在に、話を聞いた大将を始めとする赤塚組に新世代型達は愕然とした。

 更に話を聞いた大将は、クローンロイドについて語ってくれたメタルバードに己の頭に浮かんだ疑問をぶつけてみた。

「そ、それじゃバーンズ、まさかとは思うが……テメェら聖龍隊の能力者とかの遺伝子も組み込んで瓜二つの姿に技や能力なんかも使えちまうのか? このクローンロイド……」

「……まぁ、多分な。このクローンロイド、半獣半人とわず二次元人なら何にでも変身可能だしな。現に昔、俺らと対峙した異常者(ヒール)というか二次元キャラクターに姿形と能力をコピーしたクローンロイドと俺達がぶつかった事もあるしな。俺達の遺伝子も普通にクローンロイドに組み込めば、変身して姿や技なんかいくつか使えちまうかも」

「ま、マジかよ……!」

「もちろん完璧に真似できる訳じゃない。例え姿形を完全に似せる事はできても、一部の能力や技が使えなかったりするんだ。読み込ませた遺伝子の能力者によっては、完全に複製や再現が行えなかったり最悪機能しなかったりもする。過去に修司の遺伝子を読み込ませたクローンロイドを作動させたら、修司の闇の能力が余りにも強力だった為に機体がオーバーヒートしてショートしたうえ爆発しちまったケースもあるって聞いた事がある」

「は、はぁ……要するに、強力な能力や技までは使えないって事か。しかし、もしこのクローンロイドで能力者の遺伝子を読み込ませたのと戦う羽目になったら、おれ少し不安だな」

「大丈夫だって、心配すんな。今のところ、このクローンロイドとか辺りの放置されてるロボットは最早ただの残骸で、能力や技を使ってくる前に動きもしやしねえよ」

 メタルバードの話と説明を聞いて、少しばかし安堵する大将。だが、それとは反対に新世代型達は姿形だけでなく能力や技をも一部とはいえ複製できるクローンロイドに未だ衝撃を受けていた。

 

 一行は再び、無人と化した施設に放置された動く事のないクローンロイドを始めとするロボットが隣接する通路を進んでいった。

「……に、してもメタルバード。能力者をコピーできるクローンロイドが、何でタイの研究施設なんかにあるのかな?」

 先ほどの話を聞いて、何故クローンロイドがタイの地下研究施設に存在しているのか疑問に思った新世代型の瀬名アラタが訊ねると、メタルバードはそれに進行しつつ答えた。

「確かにクローンロイドは余りにも高性能なため、ほんの一握りの国家や組織しか所有する事ができないと聞いている。下手をすれば強力な能力者をコピーして、いくらでも最強のクローンロイド軍隊も編成できるからな。しかし生きた生身の能力者と違って能力や技が一部しか使用できない点を見れば本物を戦前で使った方が良いって話が世論ではあるがな。何よりクローンロイドの維持費や製作費とかもバカにならないって言うし、赤字の元でもあるからな」

「そんなクローンロイドがなんで、この研究施設にあるんですかね?」

 瀬名アラタに引き続き、新世代型同様に現存について疑問視する聖龍隊の新人 百江なぎさも訊ねるとメタルバードは変わらぬ対応で答え返した。

「多分ここの研究施設は、生物兵器だけでなく精密機械とかのロボット兵器までも手掛けてたんだろう。さっきから通路の端で置き去りにされてる、この辺のロボットとかは、おそらく製作途中の奴だろう」

「造りかけか……それでもクローンロイドの様な費用の掛かるロボットを所持・製造できるんだから、やはり此処の研究所には多額の資金が動いているのは間違いないですね」

 なぎさの問い掛けに答え返すメタルバードの話を聞いて、新世代型の星原ヒカルが施設の裏で動いている資金についてポツリと指摘するとメタルバードは「そうだな」と一言返した。

 

 そんな製作過程の途中で、無人と化した施設に放置される幾多のロボットが目に付く通路を進んでいくと、その先に電動式の両開き扉が皆の視界に入って来た。

 その扉の前まで歩み寄ったメタルバードが、扉の横に表示されてる文字を読み上げる。

「何々……ロボット兵器製作支部?」

 扉の横に記された文字からするに、扉の先はロボット兵器の製造などを行う部署であるとメタルバードは察した。

 周囲を見渡しても他に進める道がない事から、メタルバードは仕方なくその部署に入る事にした。

「他に道は無ぇし、試しに此処に入ってみるか」

「そうだな。何か脱出への糸口が見つかるかもしれねぇしな」

 メタルバードの提案に大将も同意した。

 そして一行は、その扉を抜けてロボット兵器の開発を担当する部署に足を踏み入れるのであった。

 

 

 

 

 

 全員が扉を通り室内に足を踏み入れると、そこは殺風景で機械的な光景が広がる部屋だった。

「何だか、さっき通って来た俺達のクローンがいた広間と似た風景だな」

 様々な機器が常備されてるロボット製造研究を担ってる部屋の景観を目にして、新世代型の嵐山ブンタは先ほど通過した新世代クローンが安置されてた研究室と似た風景に呆然とした。

 部屋は白が目立つ殺風景な景観に、至る所に製作途中のロボットがそのまま残されているのが目に付いた。

「さっきのクローン共が出現した部屋と見比べると、半分ほどの広さだな」

 全員が足を踏み入れたロボット製造室を見渡してみると、先ほど急いで駆け抜けた新世代クローンが安置されてた体育館ほどの広さの研究室より半分の広さだと認知するフロート。

 

 だが、皆が無人のロボット製造室を徘徊する様子を、その部屋に設置されている監視カメラを通して眺めている者がいた。

「フフ、ここまで来れたか。人間共(ヒューマンズ)

 その者は金色のトカゲの様な瞳でモニターに映る一団を凝視したまま、手元にあるスイッチを鋭い爪で軽く押した。

 

 謎の人物がスイッチを押したその時。一行が滞在する部署の扉が自然とロックされてしまった。

「!?」

 突然、背後の扉にロックがかかってしまった事態に驚く一同。

 それと同時に部屋の奥の床が、いくつもの丸い筒状で上昇した。その筒状の前方には扉みたいなのが見受けられた。

 皆々が突如として部屋の奥から出現する筒に目を奪われていると、その筒状の扉が機械仕掛けで開き始めた。

 全員が次第に開いていく筒状の入れ物に視線を向ける。そして筒状のカプセルから人の手が開け口の縁を掴むのが目に飛び込んできた。

『!』

 人の手が出て来た展開に誰もが驚愕する中、他のカプセルからも続々と人影が出て来た。

 そして床から出現したカプセルより出て来た者たちは、皆の眼前に立ちはだかる様に姿勢を皆に向けていた。全員、その登場した存在の姿形に我が目を疑った。

「お、おい、何だよこりゃ……あれは全員……バーンズ! アッコ! それに修司!? テメェらじゃねぇか!!」

 前方に立ち尽くす人物らの顔を見て大将が叫んだ。なんと床から出現したカプセルより出て来たのは、小田原修司を先頭としたセーラー戦士達にキューティーハニー、ミラーガールにメタルバード、ジュピターキッドなどのHEAD達であった。

「う、ウソだろ!? どうして……」

 眼前に立ちはだかる自分達と一緒に行動してきたHEADとは別のHEADの姿に状況が理解できず混乱してしまう一同。しかし戦闘経験豊富なHEADを始めとする聖龍隊士は目の前に立ちはだかる小田原修司達の正体を逸早く察知する。

「コイツは……修司と同形のデモンドロイドに、俺達のクローンロイド!」

「な、何だとッ!!」

 メタルバードの発した言葉に、目が飛び出るほど驚愕し反応する大将。

 今、皆の目の前に立ちはだかる小田原修司、いやデモンドロイドを先頭に、その周囲にメタルバード/ミラーガール/ジュピターキッド/ウォーターフェアリー/セーラームーン/セーラーマーズ/セーラーマーキュリー/セーラージュピター/セーラーヴィーナス/セーラーウラヌス/セーラーネプチューン/セーラープルート/セーラーサターン/キューティーハニー/ナースエンジェル/木之元桜/コレクターユイ/コレクターハルナ/コレクターアイ/獅堂光/龍咲海/鳳凰寺風/ちせといった、聖龍HEADの面々と同じ身形で顔を揃えていた。

 小田原修司の戦闘力を備えたデモンドロイドにHEADの姿形をしたクローンロイドが皆の前に対峙する。

 そして立ちはだかるHEADのクローンロイド達。その筆頭に立つ和服姿の小田原修司と瓜二つのデモンドロイドは、腰に下げている日本刀を逆手で鞘から引き抜くとその切っ先を前方の一団に向けて戦意を示した。

「や、ヤベェ! 俺達とヤル気だぞ、あのロボット共!」

 刀を向けられ一瞬怯んでしまう大将の傍らで、メタルバードが顔を引き攣らせて言い放った。

「仕方ねぇ……全員、デモンドロイドとクローンロイド達の急襲に気を付けろッ!」

 

 次の瞬間、刀を鞘から逆手で引き抜いたデモンドロイドは一直線に前方のメタルバード達に迫って来た。更にその後ろからHEADのクローンロイドまでもデモンドロイドに続いて一団に向かっていく。

 

 

 

 

 

[強襲のクローンロイド! HEADが見せる驚異の覇気]

 

 

「非力な新世代型を死守しろ! なるべく修司や俺らのロボットとは戦うな! 距離を置いて己の身だけを優先しろ!!」

 第一線で進撃してくる小田原修司と瓜二つのデモンドロイドにHEADをコピーしたクローンロイドと交戦するメタルバードは、赤塚組やHEAD以外の聖龍隊士に新世代型と己の身の安全を優先するよう指示を飛ばしていく。

 しかし、そんな周りに目配りをしているメタルバードに容赦なくデモンドロイドが切味抜群の日本刀を斬り付けて猛威を振るっていた。

 メタルバード以外のHEADも、各々が自分と瓜二つのクローンロイドと激しい攻防を繰り広げていた。

 空中からの攻撃をかわし、瞬時に地上を駆け抜けて攻撃を踏み込んでいくクローンロイドに真っ向から挑んでいくHEAD。

 だが、容赦ないデモンドロイドとクローンロイド達の攻撃から新世代型を護りつつ同時に回避していくルーキーズのミラールは、黙然と敵の攻撃を傍観する気にはなれなかった。

 そしてミラールは遂に武器を手にし、ミラージュ・ガンでクローンロイドに攻撃を仕掛けていった。

「そりゃそりゃそりゃっ!」

 二丁拳銃で宙を素早く移動するちせのクローンロイドに発砲していくミラール。だがちせのクローンロイドは目にも止まらぬ高速移動で飛行し、ミラールの銃撃をかわしていった。

 そして次の瞬間、ちせのクローンロイドがミラールの眼前まで迫るとレーザーに変形させた右腕の砲口をミラールに向けた。砲身にエネルギーが充填されていく瞬間、ミラールは愕然としてしまってた。

 と、その時。ちせのクローンロイドがミラールにレーザーを放とうとした瞬間、赤塚組の大将が自分だけの武器でミラールにレーザーを放射しようとするちせのクローンロイドに側面から不意打ちを咬ました。

「おりゃッ!」

 巨大な得物を振り回して叩き付けて来た大将の打撃に、ちせのクローンロイドは遠方に吹き飛ばされる。

 己の武器を方に担いでミラールに背を向けた状態で目を向ける大将は、ミラールの無事を確認するや否や即座にメタルバードに叫び掛けた。

「おいバーンズ! こりゃ、新世代型を護っている間に俺達が先にやられちまう! ここは俺達も戦って少しでも応戦していった方が無難だぜ!」

「分かった! 但し無茶はすんなよ! 修司とほぼ同じ戦闘力のデモンドロイドにオレ達HEADのクローンロイドだ! 十分に気を付けろッ」

 メタルバードが大将たちに無理のない参戦を同意している最中、聖龍HEADは古参のHEADメンバーのクローンロイドと激しく応戦する。

 そんな中、颯爽とミラールを助太刀した大将が担ぐ巨大な武器を目にした新世代型達が騒然と化した。

「た、大将さんのあの武器は……」

「確か今まで、ずっと背中に背負っていた錨みたいな奴だったけど……」

 今まで大将が背中に装備していた船の錨に形状が似ている自身の背丈ほどもある武器を目にして唖然とする新世代型の琴浦春香と真鍋義久。

 大将はタイに進攻する前より、ずっと背中に錨状の背丈以上の大きさの武器を装備していたのである。

 新世代型たちが大将が担ぐ錨の武器に目を向けていると、皆の視線に気づいた大将が新世代型たちに自分が愛用している武器を自慢気に見せつけては淡々と語り出した。

「へへ、これは俺専用の武器で破槍(はそう)ってんだ。ゾンビとかにゃ、勿体なくて使う気が沸かなかったが、HEADを複製したロボット相手なら腕が鳴るってもんよ」

 そう自慢そうに語る大将が右手に握りしめる破槍は、船の碇をモチーフにした槍の様な武器。柄には鎖が巻き付いていて、穂先はこの鎖に繋がっていて脱着が可能。大将はその碇槍を右手だけで軽々とふるい、近~中距離を制していく豪快な戦闘でクローンロイド達と応戦していく。

 そんな大将の激しい熱戦を目の当たりにして言葉を失くす新世代型達。

 

 大将の参入で戦況が少しばかし変わりつつある状況を前にして、新世代型達にも動きが見られ始めた。

「……攻撃が激しい。僕達も下手をすれば攻撃に巻き込まれて大事に至ってしまうかも」

「そ、そんな! こんな所で、たかが本物を複製しただけのロボットに襲われて一巻の終わりだなんて嫌だわ!」

 目の前で繰り広げられる戦況を視感する新世代型の斉木楠雄の言葉に、同じ新世代型の薙切えりなが拒絶する。

 すると眼前で自分らと同じ容姿のクローンロイドと激しい攻防を展開していく聖龍HEADの面々を見て、新世代型の鬼龍院皐月が言い放った。

「……ここは我々も参戦しよう。いくら容姿や一部の能力が使えるとはいえ、たかがロボット風情。我々も少しは戦力の足しとして加勢しようではないか!」

「へへ、そうこなくっちゃ。黙って喧嘩を眺めているほどアタシは柔じゃない」

 鬼龍院皐月の思考に賛同の姿勢を見せる纏流子と本能字学園生徒会員たち。

 更に皐月や流子たち同様に、相手が本物を真似ているだけのロボットと高をくくった新世代型達も参戦の意思を示し出した。

「私達も少しは戦力になるかも!」

「確かに……ここまで激しい戦闘じゃ、何れ私たちの方にも飛び火するのは目に見えているわ」

「ふっ、ここは僕達も参戦させてもらうとしますか」

 そういって栗山未来/名瀬美月/名瀬博臣らの三人も戦闘に参入していった。

「お前ら! なに戦前に出ているんだ! ナメていると痛い目にあうぞ!!」

 いきなり戦前に飛び出していく戦闘可能な新世代型達を見て、メタルバードが喝を入れる。

 しかし既に鬼龍院皐月と纏流子と栗山未来の三人は、事もあろうに全てのクローンロイドを束ねているデモンドロイドが日本刀を鞘に納めた瞬間を狙って、刃を納めた隙にと一斉にデモンドロイドの懐に飛び込んでいった。

 だが三人がデモンドロイドの眼前まで踏み込んだ、その時。

「危ない、離れろッ!」『!』

 デモンドロイドに接近して斬りかかろうとする流子/皐月/未来の三人にメタルバードが血相を変えて叫ぶ。三人はメタルバードの呼び掛けに気付くものの、時すでにデモンドロイドの懐間近に踏み込んでしまってた。

 三人がデモンドロイドの懐に踏み込んだ、その瞬間。一筋の閃光がデモンドロイドの腰左より広がり、その閃光が三人を包み込んだと戦況を傍観していた他の新世代型達が思った正に一瞬の出来事。閃光に包まれた三人は激しく吹き飛ばされ、後方の壁まで弾かれてしまった。

「うわッ」「っ!」「きゃっ!」

 一瞬に生じた閃光に弾かれ、壁に激突してしまう流子/皐月/未来の三人。そんな三人を弾き飛ばしたデモンドロイドに目を向けてみると、デモンドロイドはいつの間にか左腰の鞘から日本刀を逆手で抜刀し構えていた。

『…………!』

 目にも止まらぬ速さで抜刀したデモンドロイドの居合に弾き飛ばされた三人は、その異常なまでの抜刀の速さに目を丸くして唖然としてしまう。

 そんな三人にメタルバードが自分を含むHEADの姿形を複製したクローンロイドと抗戦しながら強く言い聞かせた。

「お前ら、いくら戦い慣れているからって修司のデモンドロイドに迂闊に近づくな! 修司は聖龍隊でも、いや二次元人と比べてもトップクラスの抜刀術の達人だ。鞘に刀を納めているからって気を抜くな! 一瞬で斬り付けられちまうぞ」

 デモンドロイドの基となった小田原修司の卓越した抜刀術に対して聞かされた三人はもちろん、その話を耳にした新世代型達とルーキーズの新人勢は極め抜かれた小田原修司の抜刀の速さに驚愕した。

 その超人的な速さで刀を抜いたデモンドロイドは、再び刀を逆手で持ったまま鞘に納めると、刀を握ったまま標的である聖龍隊士に突っ走ってきた。

「!」

 眼前に向かってくるデモンドロイドに反応し、焦りながらも咄嗟に得物である剣でデモンドロイドの攻撃を防ごうとする美樹さやか。だがデモンドロイドはさやかに接近するや、またも一瞬の内に鞘から刀を抜いて、逆手で刃を押し切る勢いでさやかに刀を斬り付けてくる。さやかは咄嗟に剣で防いだが、力の差は圧倒でさやかが防御する剣を今にも弾き飛ばす勢いで迫るデモンドロイド。

 と、此処でさやかは自分の剣が弾かれる前にと行動を起こす。自らが羽織るマントから無数の剣を出現させて、デモンドロイドに応戦しようと試みる。しかし一瞬早くデモンドロイドの刀がさやかの剣を弾き飛ばしてしまう。だがさやかは出現させた無数の剣をその瞬間にデモンドロイドに向けて発射し難を逃れようとする。デモンドロイドはさやかが発射した無数の剣を防衛本能で咄嗟に回避するが、さやかは構えていた剣を弾かれただけで難を逃れられた。

 さやかが発射した無数の剣を回避したデモンドロイドだったが、一瞬ばかし反応が遅れてしまったのか右腕の手首当たりが剣で損傷を受けて、人工皮膚が剥がれ内部の機械が覗いていた。

 

 デモンドロイドが複製元の小田原修司と同様の抜刀術で戦前の者たちを圧倒している中、他の聖龍隊士も果敢に迫ってくるHEADのクローンロイドと攻防を続けていた。

 ミラール/巴マミ/暁美ほむらが前方のHEADのクローンロイドに向けて発砲していく。だが、そんな彼女らの上方から謎の銃撃が三人に襲い掛かって来た。

「わ、わっ!」

 上空からの銃撃に驚き、怯んでしまうミラール達。彼女達が上空からの銃撃に動揺し、上を見上げてみると其処には木之元桜のクローンロイドが事もあろうに「撃(ショット)」のカード効力を使用し、地上の面々に向けて発砲していたのだ。

「お、おいマジかよ! さくらカードの効果まで受け継いでいやがるのかよ、このクローンロイド共!」

 撃(ショット)のカード効力をまで使えるさくらのクローンロイドに驚愕する大将に、側で戦っているメタルバードが事情を説明し出した。

「そうとう高性能な造りなんだろうよ、このクローンロイドは!」

 魔法などの特殊能力までも使える高性能クローンロイドに激しく動揺してしまう大将。そんな大将に突如として死角から複数の殺気が接近してくるのを、大将は培ってきた経験から察知した。そして死角から奇襲してきた殺気に対して己の得物である破槍で受け止めた大将が、殺気を放つ対象に目を向けると驚いた。なんとキューティーハニー/鳳凰寺風/コレクターハルナ三名のクローンロイドが自身の武器で大将に斬りかかろうとしていたのだった。

「クッ、嫌に似ているから、何とも戦いにくいぜ……!」

 三人の斬撃を受け止める大将は、その余りにも酷似している姿形からまるで本人と殺し合っている様な複雑な心境に陥る。しかし三人のクローンロイドはそのまま勢いをつけて。大将を後方へと押し出す形で退かせる。

 後ろへ押し退けられつつも、何とか態勢を維持しながらキューティーハニー/鳳凰寺風/コレクターハルナら三人のクローンロイドと対峙する大将。だが、そんな大将に真横から今度はセーラーマーズのクローンロイドが右手に炎を纏わせて迫って来た。迫るマーズのクローンロイドに素早く気付いた大将は、マーズのクローンロイドの攻撃をかわそうと身を退いた。だがマーズのクローンロイドの炎を纏う右手が微かに大将の頭に当たってしまい、大将の角刈りの頭髪がチリチリと燃えてしまった。

「アチアチアチッ」

 頭についた火を必死で消そうと酷く焦る大将。大将は頭の火を懸命に掻き消していく中、燃える頭に大混乱しながら戦いを仕掛けて来たデモンドロイドとクローンロイド達に対して思った疑問を口に出した。

「そ、そういや……このクローンロイド共、なんでかケモ耳の嬢ちゃん達にるちあの人魚っ子、それにローゼンの人形共だけが見当たらないな」

 向かってくるHEADの姿形をしたクローンロイドの中に、ミュウミュウズやマーメイドメロディーズそしてローゼンメイデンの姿が見当たらない事実を大将は口にした。この大将の発言にメタルバードが周囲から無尽蔵に襲い掛かってくるHEADのクローンロイドと攻防を繰り広げながら答えた。

「おそらく古参のHEADメンバーだけをコピーしたのしか、いないんだろう……!」

「そもそもクローンロイドは遺伝子を使わなきゃコピーできないロボットなんだろ! なんで古参とはいえHEADのお前たちのクローンロイドが此処に存在しているんだよ!」

「その気になれば戦場で零れ落ちた血から遺伝子を抽出して、それを利用できちまうだろう……厄介な事だぜ、まったく」

 メタルバードは大将の質問に答えつつも猛威を振るってくる自分達HEADのクローンロイドと激闘を続けていく。

 しかしデモンドロイドを中心としたクローンロイドの脅威は容赦なく聖龍隊と赤塚組の面々を傷つけ、同時に非力な新世代型達までも戦火に巻き込まれ、戦況は悪化の一途を辿っていた。

「……!」

 強烈な太刀筋で後ろへ押し出されてしまうアスナ。そのアスナを刀で押し出した小田原修司と瓜二つのデモンドロイドは、後ろへ退かれ怯んでしまってるアスナの隙をついて彼女へと刀を逆手で構えて突進してきた。

「コイツ!」

 アスナの危機にキリトが迫りくるデモンドロイドの前に飛び出し応戦しようとする。しかし一瞬でデモンドロイドの太刀筋に得物を弾かれ、キリトの前は無防備と化してしまう。前方に対して無防備となったキリトにデモンドロイドは刀を逆手で押し出す要領で斬り込んでくる。キリトは咄嗟に刀の刃をかわそうと身を退くが、向かって左に体を移動すれば日本刀の刃が容赦なく自分に直撃してしまうため、キリトは向かって右へと身をかわす。だがデモンドロイドの刀を握る右手は、横へ移動して攻撃を回避しようとするキリトを追撃するかのように右拳が追尾していく。そして次の瞬間、刀が握られるデモンドロイドの右拳はキリトの顔面に直撃し、殴打されたキリトはその凄まじい衝撃で吹き飛ばされた。

「うおッ!」

 追尾してきたデモンドロイドの拳で殴り付けられたキリトは壁に激突し、悶えてしまう。

 キリトに深手を負わせたデモンドロイドは更に周囲にいる他の聖龍隊士にも攻撃を仕掛けていく。

「は、速い!」

 尋常でない動きで接近してくるデモンドロイドの素早さに驚愕してしまうシアン・パイル。

 そして無数の鋭い閃光が【AW】や【魔法少女まどか☆マギカ】の面々に直撃したと思った次の瞬間、彼らの体を無数の斬撃が襲い掛かる。

「ぐああっ」

 一瞬で体中を斬り付けられて絶叫を上げては悶絶する面々。一方で一瞬の斬撃を皆に斬り付けたデモンドロイドは悶え苦しむ皆の背後に瞬時に移動しては斬り込みの余韻に浸る。

 新人とはいえ多くの聖龍隊の隊士たちを一瞬で無数に斬り付けたデモンドロイドは、その状景を目の当たりにして唖然と立ち尽くしてしまってる新世代型の満艦飾マコに気付いたのか、彼女に紅い眼光を向ける。そして次の瞬間、デモンドロイドは姿を消したと思いきや高速移動で瞬時に満艦飾マコに迫って来た。

「…………」

 一瞬で自分の眼前まで迫って来たデモンドロイドにマコは衝撃を受け、立ちすくみ動けなくなってしまう。そんなマコにデモンドロイドは逆手だった持ち手を瞬時に握り替えて、通常通りの持ち方で日本刀をマコに振り下ろしてきた。

 マコに刃が直撃すると思われた、その時。満艦飾マコに刃が直撃する寸前で本能字学園の生徒会四天王の一人である蟇郡苛(がまごおりいら)がデモンドロイドの眼前に立ちはだかった。

「フンヌッ」

 荒い鼻息でデモンドロイドの日本刀を受け止め、刃からマコを死守してみせた蟇郡苛(がまごおりいら)。しかも彼の体力も凄まじく、強力であるデモンドロイドの力と互角に押し合う事ができていた。

 本気でデモンドロイドと力の限り押し合う蟇郡。強靭な力と力が押し合い続け、蟇郡は必死にデモンドロイドに抗戦する。だが蟇郡が振り付けられた刃を必死に受け止め防いでいるその最中、蟇郡と対峙するデモンドロイドの口が大きく開いた。

「!?」

 突然、口を大きく開くデモンドロイドに唖然としてしまう蟇郡。すると開いた口の内部に眩い光が集結していくのが目に映った。その時。

「蟇郡!」

 突如、蟇郡の真横から鬼龍院皐月が蟇郡に跳び蹴りを喰らわして、彼を吹き飛ばした。蟇郡が皐月によって蹴り飛ばされたその瞬間、デモンドロイドの口内に蓄積された光が砲撃として放たれた。

「うわッ!」「ッ……」

 皐月の咄嗟の蹴りで直撃は免れた蟇郡も、瞬時にデモンドロイドの砲撃に気付いて蟇郡を蹴り飛ばして直撃だけは回避させた鬼龍院皐月も、二人ともデモンドロイドの砲撃による衝撃で吹き飛ばされて床に転倒してしまう。

『口からレーザー撃ってきたァ!!』

 口内にエネルギーを蓄積してレーザー砲を放つデモンドロイドの砲撃を目の当たりにして、新世代型達が一同に我が目を疑うほど驚愕してしまう。

 一方で先ほど皐月の咄嗟の蹴りでレーザー砲撃の直撃だけは免れたものの、砲撃の衝撃で吹き飛ばされてしまった蟇郡苛(がまごおりいら)に、彼が身を張って護ってくれた間に離れて衝撃から難を逃れられた満艦飾マコが駆け寄り、蟇郡を気にする。

 するとレーザ砲の衝撃で鬼龍院皐月と蟇郡苛(がまごおりいら)を吹き飛ばしたデモンドロイドに、背後から大将が燃え盛る破槍を振り回して攻撃してきた。背後から頭部に破槍の打撃を受けたデモンドロイドであるが、頭部が少し焼け爛れ、焼け焦げた顔面の半分の機械が現れ、ロボットとしての顔面が不気味に曝け出された。そして顔半分が焼け爛れたデモンドロイドは、大将に紅い眼光を向けては小田原修司と全く同じ声質で喋った。

「……損傷軽微、攻撃を強化。任務を続行する……」

 そういうとデモンドロイドは左腕を振り払い、片腕だけで巨漢の大将を意図も簡単に薙ぎ払い、吹き飛ばしてしまった。

「うおッ」

 片腕だけで軽々と弾かれた大将は、吹き飛ばされながらも何とか態勢を立て直す。

 小田原修司をモデルにしたデモンドロイドを筆頭に戦闘を仕掛けてくる古参HEADメンバーのクローンロイドに戦況が押される中、ちせと龍咲海のクローンロイド2体と激しい攻防を展開する赤塚組のミズキは、執拗に攻撃を仕掛けてくるちせと海のクローンロイド2体に反撃を繰り出した。

「ッ!」

 瞬時に右腕をレーザー砲に変形して、執拗に迫ってくるちせと海のクローンロイドに砲撃を放つが、相手のクローンロイド2体は容易くかわしてしまわれた。

 攻撃をかわされたミズキは地上に降り立ち、仲間達に呼び掛ける。

「これじゃキリがないわ! もう焼け石に水よ」

 するとミズキの後ろからも彼女の意見に同意する発言が飛び交ってきた。

「そうだよ! 俺たち普通の人間が、特殊能力者相手に勝てる訳がねぇ!!」

「そのとーーり! 一方的にヤラれるばかりだよ!」

 ミズキの意見に賛同する発言を交わしたのは、ミズキの後ろで鳳凰寺風のクローンロイドが起こした竜巻に巻き込まれ、抗う事も侭ならないでいる赤塚組のアツシと山崎貴史が竜巻の中でミズキの意見に賛同したのだ。

 

 流石の聖龍隊も、戦闘経験豊富な赤塚組も、小田原修司と古参の聖龍HEADメンバーとほぼ同じ戦力を持ったデモンドロイドとクローンロイドの軍勢に叩きのめされ、ボロボロにされてた。

 しかしデモンドロイドはクローンロイドの筆頭に立ち、戦前で佇むメタルバードと傷だらけの大将を始めとする一行に睨みながら自らが指揮するクローンロイド達に指示を出した。

「命令続行……敵を全て排除せよ」

 デモンドロイドは聖龍隊や赤塚組など関係なく、部屋に侵入してきた全員を強制的に排除しようとしていた。

 ここでメタルバードは大将たち自分らHEAD以外の面々を後方へと退かせる。

「大将、お前たちは一旦下がれ。他の隊士も新世代型の全面警護に回れ! ここは俺達で何とかする!」

「お、おい大丈夫かよ? 相手は修司はもちろん、お前らの能力を一部だけだがコピーしているロボット軍団なんだぞ! お前らだけで大丈夫か?」

「大丈夫だ。これ以上、お前達に犠牲が出るのは避けたいんでね」

 メタルバードは大将と他の面々に話しては後ろに退かせ、自分達HEADだけが戦前に残る。

 次の瞬間、戦前のメタルバードのクローンロイドが、本物のメタルバードに向かってきた。皆がメタルバードに向かっていくクローンロイドのメタルバードに目を奪われる中、攻撃を仕掛けられる本物のメタルバードが行動した。

「武装色」

 メタルバードが呟いた瞬間、彼の銀の光沢を放つ全身で上半身だけが薄い黒に変色した。それを見て大将たち赤塚組も、新世代型達も目を奪われる。

 そして薄い膜の様に上半身を黒くしたメタルバードに、クローンロイドのメタルバードが拳を懐に激しく殴り付けたのだが、何と逆に攻撃してきたクローンロイドのメタルバードの腕が大破してしまった。先ほどより新世代型達が観ていた限りでは、本物のメタルバードとクローンロイドのメタルバードの肉体の強度は殆ど同じで、腕力などの筋力による身体能力もクローンロイドは複製している筈なのに、攻撃を仕掛けたクローンロイドの方が逆に深手を負う事態に観戦していた面々は我が目を疑った。

 そして自分の腹部にボディブローを打ち込んでは逆に腕を大破してしまった自身のクローンロイドに、本物のメタルバードは頭を掴んでは強引に体勢を低くさせた。

「いくらオレに似せようと……本質、実力までは完全に複製できないのが現実だ!」

 そう叫んだ瞬間、本物のメタルバードは無理やり体勢を低くさせたクローンロイドのメタルバードに向かって、上半身同様に黒く変色した足でクローンロイドのメタルバードを蹴り上げた。本物が放った強烈な蹴りにクローンロイドは全身に衝撃が走り、メタルバードのクローンロイドは木っ端微塵に吹き飛んだ。

『クローンロイドが、たったの一撃で粉砕!!?』

「マジか! 偽物の方も本物同様、鋼の強度で簡単には壊せない筈なのにッ!」

 たった一蹴りで粉砕されたメタルバードのクローンロイドを目の当たりにして驚愕する新世代型達に大将。鋼の肉体を持つメタルバードのクローンロイドも、本物と同一の強度を誇っているにも関わらず攻撃しただけで返り討ちにあい更に他愛もないボディブローで粉砕される状景に俄かには信じられない一同。

 本物のメタルバードがクローンロイドの自分を粉砕し、機能停止に陥らせた最中、他の聖龍HEADも各々でクローンロイドと戦闘を再会していた。

 敵勢の中央に足を踏み入れたウォーターフェアリーは、静かに自分の周辺に敵であるクローンロイドが集まってくるのを待っていた。そしてコレクターユイ/セーラームーンなどのクローンロイドが一斉にウォーターフェアリーに襲い掛かってくるのを見受けたHEADのセーラーマーキュリー/木之元桜/龍咲海/マーメイドメロディーズが、ウォーターフェアリーに向けて技を発動させた。

 マーキュリー/海/マーメイドメロディーズは水の技を、さくらはウォーティ(水)を発動させてウォーターフェアリーの周辺に大量の水を発生させる。その大量の水による大波で押し返られそうになるクローンロイド達だったが自力で耐え抜いて、再び攻撃を仕掛けようとする。しかし発生した大量の水をウォーターフェアリーは自在に操り、まるで生き物の様な造形にしては暴れ回るクローンロイドを次々に水の触手で捕らえていく。

 ウォーターフェアリーが水の触手で捕らえたクローンロイドの一体、コレクターユイのクローンロイドにジュピターキッドが宙を蹴り上げながら上昇しては狙いを付ける。そして胴体を水で捕らえられたユイのクローンロイドにジュピターキッドは真上から片足を伸ばして、そのまま足でクローンロイドのコレクターユイの首を断頭してみせた。

『!!』

 いくら偽物とはいえ、コレクターユイと瓜二つのクローンロイドの首が吹き飛ぶ情景を目にして衝撃が走る面々。そんな彼らの足元に、ジュピターキッドが足を振り下ろして断頭したユイのクローンロイドの頭部が転がってきた。

 転がってきたユイの頭部に驚愕する一同だが、破壊された為かクローンロイドはユイの容姿からガラリと変わり、本来の無機質な白無垢の頭部へと元に戻った。此処で皆は、クローンロイドは破壊されて機能を停止すると元の無機質な形状に姿が戻る事を知った。

 クローンロイドのコレクターユイを破壊したジュピターキッドは、次に自分の背後から襲い掛かってくるナースエンジェルのクローンロイドを察知しては、視界に捉えてないナースエンジェルのクローンロイドの首に自身の得物である茨状の鞭を振るって巻き付けた。

 完全にナースエンジェルのクローンロイドの首を鞭で捕まえてみせたジュピターキッドは、たまたま正面で木之元桜のクローンロイドと激突していたメタルバードに声をかける。

「バーンズ! これの処理を手伝ってくれっ」

 ジュピターキッドの言葉を受けて、メタルバードは即座にキッドの考えを察した。

 そしてメタルバードは木之元桜のクローンロイドを捕まえては担ぎ上げ、更に二人はそれぞれナースエンジェルのクローンロイドと木之元桜のクローンロイドを捕らえたまま放さず、空中で両名のクローンロイドを激突させて双方を粉砕した。

 床にナースエンジェルのクローンロイドと木之元桜のクローンロイドの破片が散らばり、それに続いて床には二人を模していたクローンロイドが2体とも元のロボット姿で落下する。

 

 次々とクローンロイドを撃破していくHEADを見て、一気に戦況が有利になっていく状況を感じながらも新世代型達はHEADに表れた変化に気付いた。

「な、なぁ。さっきからクローンロイドを壊していくHEADの人たちの体、何処か黒っぽく変色してないか?」

「言われてみると……それに変わったのは体だけじゃない。なんだか武器も同じ様に変化している」

 新世代型の神浜コウジと速水ヒロが指摘する通り、HEADの面々の体の一部分が微かに黒に変色し、それと同様に手にする武器までも若干の変化が感じられた。しかも、そうやって変わった身体や武器でクローンロイドに攻撃を当てていくと、不思議と最初の戦闘では破壊できなかったクローンロイドの部位を見事に破壊できてるのだった。

 微かに変化した身体や武器を新世代型達が眺めていると、その傍らで先ほどのクローンロイドとの戦闘で負傷し傷ついた大将が草臥れた様子で口を開いた。

「まさか、アレが……覇気って奴か?」

「は、覇気……?」

 大将が発した覇気という言葉に真鍋義久を始めとする新世代型達が耳を傾けると、プロト世代の海道ジンが思い出したかのように語り出した。

「聞いた事がある。世界中のほぼ全ての人間が備わっているという能力だが、開花させるには相当な鍛錬が必要なため実際に使える人は限られているという特殊能力だ」

「す、全てって……! そんじゃ、俺達の様な普通の人間にも扱える特殊の力って事か!」

 海道ジンの話を聞いて新世代型の真鍋義久が思わず聞き返してきた。それにジンは真顔で答えた。

「そ、そういう事になるが……でも、実際に扱える人間を見たのは僕も初めてだし、何より本当に一握りの人物しか使えないって話だ。万人が持っているとしても能力を開花させない限り使えないのが覇気だという」

 真鍋ら新世代型達に語り聞かせるジンに続いて、ボロボロの体で疲れ切っている大将も覇気について語り始めた。

「今では世界中の強豪ともいえる悪党や軍人たちが会得している覇気だ。事実、実力本位の国連軍においても、中将以上の昇進には覇気の習得が絶対不可欠だという」

 更に大将は戦渦の中で戦い続ける聖龍HEADを目で追いながら、覇気について語り続ける。

「聞いた話じゃ、覇気には3つのタイプが存在するっていう。多くの体得者はこの3つの内、2つのどちらかに特化させて開花させるのが筋だという」

 そう語る大将が目で追う先には、次々にクローンロイドに強烈な一撃を浴びせていくジュピターキッドの姿が。しかしそのキッドの背後から、ちせのクローンロイドが標準を定めてキッドを狙い撃とうとしていた。キッドは背後のちせのクローンロイドに気付かず、その場に立ち尽くしたまま。ちせのクローンロイドは躊躇う事無くキッドに容易く体を貫通する光線を放った。だが直射された光線にキッドは姿勢を変えないまま、死角からの狙撃をかわしてみせる。

「あれは見聞色。視界に入ってない敵の攻撃やその位置、次に何をしてくるかが予測できる回避系の覇気」

 ジュピターキッドがちせのクローンロイドの狙撃を少し体を反らして避けるのを見た大将は、それが相手の攻撃などを先読みして避ける事が出来る見聞色の覇気だと語る。

 その後、ジュピターキッドは背後より狙撃してきたちせのクローンロイドに顔を向けると、自身の武器である鞭を一層と握り締めると、その鞭が黒く変色した。ジュピターキッドはその黒く変色した鞭を振り付けて、ちせのクローンロイドに直撃させていく。するとちせのクローンロイドは鞭を浴びた個所から綺麗に裂けていき、真っ二つにされて爆発した。

『ただの鞭が、鋼鉄のロボットを簡単にブッた切った!!』

 相手に打ち付けるだけの威力しか普通はない鞭が、鋼鉄のクローンロイドを簡単に裂いてしまう光景に新世代型達は再び我が目を疑ってしまう。そのクローンロイドを断ち裂いてしまう鞭の威力を前にした大将が再び口を開いた。

「あれは武装色の覇気。本来は見えない鎧を纏った感覚で自分の肉体を鋼鉄の様に硬くする覇気だが、武器にも纏わせる事で同様に硬化させる事もできるという」

 大将の話の通り、ジュピターキッドだけでなく多くのHEADが自分の身体や手に持つ武器を覇気で硬化させて、クローンロイドに強烈な一撃を葬っていた。

「か、体や武器を硬くしたり、見えない相手の攻撃まで予測できるなんて……言っちゃなんだけど、ここまできたら最早人間じゃない」

 二つの覇気を駆使して戦う聖龍HEADを前にして、新世代型の真鍋義久はHEADの強さに人間離れした感覚を抱く。

 そんなHEADの強豪ぶりに動揺してしまう新世代型に、大将も傷だらけの顔を緩めて自慢気に話し掛けてきた。

「おいおい、そんなに引くな引くな。かく言う俺様も、実は多少ながら覇気とか使えるんだぜ」

「ほ、本当っすか!?」

 大将の突然の発言に驚く真鍋が訊き返すと、大将は自慢そうに話し続けた。

「ああ、かつて新時代到来と言われた時期に、世界に進出した悪党や軍人なんかが荒れ狂う時代を生き抜くために会得していくのが覇気なんだ。俺らも少しばかし使えるんだぜ。へへ」

「それじゃ、なんでさっきのクローンロイドとの戦いとかじゃ使わなかったのにゃ?」

「ッ、そ、それは……」

 新世代型の森園わかなに指摘された大将は著しく動揺する。その大将の様子を見て、プロト世代の海道ジンが指摘する。

「覇気には格式があると聞いている。まだまだ鍛錬が足りなかったり、その本人の資質が足りないと覇気の威力は低減する。事実、同じ覇気の使い手同士が衝突した場合、より強力な覇気の使い手の攻撃が通るというしね」

「って、こら若ェの! 余計なこと言うんじゃねェよ!! 何より俺達の覇気が弱いんじゃなく、バーンズ達の覇気の方がバケモノ並みに尋常じゃないだけで決して俺らが弱い訳じゃねェ!!」

 ジンに事実を衝かれた大将は、自分達の覇気が弱い訳ではなく、HEADの覇気の方が数段どころか常人離れした強さだと主張する。

 

 一方で次第に頭数を減らされてくクローンロイド達は、戦いで損傷が激しく見受けられるデモンドロイドを筆頭に再び猛攻を仕掛けようと並々ならぬ速さで駆け抜けてきた。

 だが高速で迫ってくるクローンロイドを視認して、キング・エンディミオンに堂本海人らHEADの男達が動いた。

(ソル)

 次の瞬間、HEADの男達は目にも止まらない加速でその場から消えた。戦いを観続けている新世代型達は突然消えるHEADの男達にド肝を抜かれる。そして姿を消した一人エンディミオンが獅堂光のクローンロイドの背後に姿を現すと、速攻で覇気を纏わせた剣で獅堂光のクローンロイドを一撃で叩き斬った。

「あ、あれは……!」

 驚異の瞬発力で姿を消したエンディミオン達を目撃して、その移動手段に慄いてしまう新世代型の水戸郁美。すると同じくその状景を目撃した大将が真に迫る顔で言った。

「アレは正規の軍人が多く身に着けている体術、六式。その一つだ」

「六式……」

 大将が言葉に表す六式に、星原ヒカルら新世代型達は衝撃を受けた。大将は引き続き、戦いを視感しながら六式についてその詳細を新世代型達に聞かせる。

 ミュウイチゴたちがクローンロイドに向けて放っているのは通称 指銃(シガン)という、硬化させた指を弾丸の速さで相手に撃ち込む単体向けの攻撃技。

 コレクターアイのクローンロイドが仕掛けてきた蹴りに対して本物のキューティーハニーが発動した体術は紙絵(カミエ)。敵からの攻撃で生じた風圧に身を任せて、攻撃をかわす体術。

 そしてキューティーハニーの紙絵で攻撃をかわされたコレクターアイのクローンロイドは、そのままハニーの後方にいた本物のコレクターユイに飛んできた。だがユイはクローンロイドのアイが直撃する寸前で上半身を硬化させ、体術 空木(ウツギ)を発動。これによりクローンロイドのコレクターアイは逆に飛ばした蹴りを放つ足を大破させて自由に動けなくなる。そこにユイは持っているバトンを電子データで剣に変化させてクローンロイドのコレクターアイを上から斬り付けて爆破させる。

 更に機械による精巧な造りによって生み出される速さで駆け巡るクローンロイド達に、HEADは対抗するため(ソル)で瞬時に移動すると、次に月歩(ゲッポ)という爆発的な脚力で空を蹴って宙を移動する体術で空中に移動してはクローンロイド達の真上から襲撃していった。

 頭上からの攻撃を妨害しようと、デモンドロイドが口内のレーザー砲で頭上のHEADメンバーを砲撃しようとする。が、逆に砲撃を阻止しようとメタルバードがデモンドロイドに向けて、強力な蹴りで巨大な鎌風を起こす嵐脚(ランキャク)を放ちデモンドロイドの砲撃を防いだ。

 強靭な体術の六式を存分に発揮して次々にクローンロイドを破壊していく聖龍HEADに皆が驚嘆する中、大将だけは何故かしかめっ面で戦いを静観していた。

「? 大将さん、どうしたんですか?」

 不満そうな表情をしている大将が気になり声をかける新世代型の瀬名アラタ。すると大将は仏頂面で真意を明かした。

「いや、何……どうも俺様は六式とか余り好きじゃなくってね。今のご時世、正規の軍人とかが率先して取り入れている体術で……如何にも宮仕えの体技って感じだからな」

 正規軍といった公務員の様に政府直々の役人が取り入れている視点から、お役所仕事を好ましく思ってない大将にとって六式は余り気に入ってなかった。

 

 大将が不服ながらも六式について新世代型達に説明している間、聖龍HEADは遂にデモンドロイドとクローンロイドではジュピターキッドとミラーガールの3体を残して全て破壊し終えていた。

 大破して電流による火花を散らせるクローンロイドの残骸の中で、メタルバードはかつての相棒である小田原修司と瓜二つのデモンドロイドを追い詰めていた。

 そして一瞬の隙をついてデモンドロイドが握ってる日本刀をへし折る事に成功した。

 唯一の装備品である日本刀を折られたデモンドロイドは、折られた刀を凝視し使用不能であると認識すると、それを床に放り棄てた。そして再度、自分らと対峙する聖龍HEADを機械の眼で見据え、戦意を示す。

 次の瞬間、デモンドロイドは口を大きく開けると共に両掌を前に突き出すように向けた。その向けられた口内と両掌に光が凝縮されていくのが見て取れた。そして凝縮された光が強力なレーザーとして口内と両掌の3箇所から発射された。

 3点から発射されたレーザーはHEADの足元に向かって放たれたが、メタルバードを筆頭とした聖龍HEADは瞬時に跳び上がり上方へと回避する。レーザーは床に直撃し爆発。

 上に跳び上がって攻撃を回避したHEADに、デモンドロイドの背後より疾駆するジュピターキッドとミラーガールのクローンロイド2体は、デモンドロイドの背中を借りて上方へ跳躍。上に回避したHEADを追撃しようと跳びかかってきた。

 自分達を追って跳びかかって来たジュピターキッドとミラーガールのクローンロイド2体を前にして、まず本物のミラーガールが自分のクローンロイドが振り翳すミラーソードを自身のミラーソードで受け流すと、瞬時にクローンロイドのミラーガールの背後に回り空中で強靭な脚力で横方向に蹴り飛ばす。ミラーガールが蹴り飛ばした彼女のクローンロイドを今度はセーラームーンが空中で下方向に蹴り飛ばして床に叩き付けた。叩き付けられ、軽くショートするミラーガールのクローンロイドに本物とセーラームーンが真上から強烈な追撃を浴びせて完全破壊を達する。

 もう一方のジュピターキッドのクローンロイドは空中でミュウイチゴとるちあの両名に踵落としを脳天に打たれ、床に叩き付けられた所をキューティーハニーとセーラーウラヌスが連続で斬撃を浴びせ続け、ジュピターキッドのクローンロイドを機能停止に陥れた。

 最後に残ったデモンドロイドは前に突撃後、素手と化した両腕を激しく振り回して周辺のHEAD達に強靭な打撃を与えていこうとするものの、HEAD全員が見聞色の覇気で意図も簡単にかわしていく。状況的に追い詰められたデモンドロイドは唯一の遠距離攻撃である口と両手からのレーザー砲撃を放つ構えをして、標的として捉えているミラーガールに向けて3点集中砲火を撃った。が、ミラーガールはこれを華麗に跳躍して回避。彼女はスグに今では婚約者となっている小田原修司に似せて造られてるデモンドロイドを鋭い眼で捉えると、体技 月歩(ゲッポ)で宙を瞬時に移動しては(ソル)で地上を高速移動してデモンドロイドに強力な打撃を一瞬の内に何発も浴びせていく。ミラーガールの目に映らないほどの高速移動で体を連撃されていくデモンドロイドは、その凄まじい連続打撃に重量級の体が宙に浮くほど激しく攻撃される。そして激しい連打で宙に浮いたデモンドロイドにミラーガールは容赦なく高々と蹴り飛ばす。上に蹴り飛ばされたデモンドロイドに、蹴り飛ばしたミラーガールと総長メタルバードそして参謀長のジュピターキッドの三人が高速で接近し、メタルバードは鋼の拳、ジュピターキッドは武装色の覇気で硬化させた鞭、ミラーガールはその美しい脚で、一度に同時にデモンドロイドに打ち付けた。

「ギギギ……ッ」

 三人から受けた強烈な打撃にデモンドロイドは激しく機体を損傷し、床に叩き付けられる。そのデモンドロイドに追撃と言わんばかりに上空からミラーガールとメタルバードとジュピターキッドの三人が急降下し、ミラーガールはデモンドロイドの顔側面に膝落としを、メタルバードは両膝を先端が鋭い針に変形させて、ジュピターキッドも同じく鞭を硬化させた状態で形状を槍の様に変化させて、床に叩き付けたデモンドロイドにトドメの攻撃を浴びせた。

 三人の激烈な攻撃を一身に浴びせられたデモンドロイドからは凄まじい衝撃が床を這って伝わってくるのが新世代型達には感じられた。

 そして最後の攻撃を喰らわせた三人が即座にデモンドロイドから離れると、三人が離れた直後デモンドロイドは大爆発し、原形が残らないほど吹き飛んだ。

『………………………………』

 絶対的強さを誇ってたデモンドロイドを、3人がかりでトドメを刺して爆発破壊した現聖龍隊のビッグ3の戦力に観戦する新世代型達は言葉を失くしてしまう。

 一方でデモンドロイドにトドメの攻撃を仕掛けた3人は、爆発炎上するデモンドロイドを背景に床へと綺麗に着地するのだった。

 

 すると此処で思わぬ事が起こった。

 部屋の一番奥。デモンドロイドとクローンロイドが出現した場所もよりも奥に見えてた半球状の壁の一部が突如として上がり、その奥から上へ上がれる梯子が窺えた。

 

 

 本気を出したHEADによって、僅かな時間で破壊され機能を停止されたクローンロイドの残骸が無数に散らばる現状を唖然とした心持で見据える新世代型達。

 一方で全てのクローンロイドとそれらを束ねる役割を担ってたデモンドロイドを撃破し終わった聖龍HEADは、余程草臥れた様子で体の筋を伸ばしていた。

「あーーーー……やっぱ久々に六式とか覇気とか使うのは体に応えるわぁ」

「ほんと、流石にキッツイねぇ。最近は六式や覇気を使う程の事件や処理なんて無かったから余計にね」

 仕事終わりの社会人の様に体の背筋を伸ばして、体に懸かった負担を気にするメタルバードやジュピターキッドら聖龍HEAD。そんなHEADの面々に、先ほどの戦闘で少しばかし負傷した大将が朦朧とした表情で歩み寄り、声をかける。

「お前ら……ほんとにバケモノ並みに強いよな。久々に本気で戦ったのを見たが、やっぱ何度見ても凄ェぜ」

 この大将の言葉にメタルバードは笑顔で返した。

「へへ、今のご時世……強豪揃いの悪党がのさばっている中、これくらい強くなきゃ職務は全うできねェぜ」

「へっ、相変わらず大変だな。宮仕えって奴は……俺はやっぱ性に合わねぇ」

 笑顔で返すメタルバードの言葉に、大将は宮仕えの聖龍隊に対して難色を示しながらも呆れてしまう。

 

 そして傷だらけの大将や赤塚組、聖龍隊の面々に新世代型達の怪我を少し休んだナースエンジェルが能力で一人ずつ治癒していった。

 傷を負った者たちの治療が行われる中、メタルバードと一足先に治療してもらった大将が先ほど開いた上に続く梯子の方を直視していた。

「…………におうな」

「え? くんくん……やっぱ死体だらけの研究室とかばっか通ってきたから、死臭とか付いちまってるか」

 におうなと発言するメタルバードの言葉を聞いて大将は自分の体臭を嗅いでしまう。そんな大将にメタルバードが強く言った。

「その臭うじゃねェ! 今、目の前に見える梯子の事言ってんだよ!!」

「へ? 何が臭うんだ?」

「何がって……可笑しくねぇか? 俺らがクローンロイドにデモンドロイドを倒してスグに上への出口が現れるなんて……これは完全に誰かが何処かで遠隔操作している」

「何処かで? 遠隔操作?」

「考えてもみろ。俺たちが此処に侵入してから通信を傍受して話し掛けてきた主催者って名乗る奴の事。それだけじゃない、道中おれ達を助けた素振りをした謎の狙撃手。何かと俺達以外の連中がいただろ」

「…………」

「どう考えても、誰かが俺達を監視して色々と遠隔操作でゾンビとか解き放ったり、今もデモンドロイドとクローンロイドを起動させて俺達とぶつけさせたのは見え見えだ。そして奥の壁を上げて俺達に梯子を昇らせて上に来るよう仕向けているのが解らねぇのか? 絶対、これは罠だ」

 クローンロイドとデモンドロイドを破壊した直後に現れた上へと続く梯子に対して、メタルバードは自分達が施設に侵入した時から監視している何者かが誘導している罠だと言い切る。

 だが現れた梯子を罠だと言い切るメタルバードの考えに、大将は真顔で言い返した。

「……そんじゃ、お前さんはどうする積りなんだ? ここまで来て、また引き返すってのかい」

「っ…………」

 大将から思わぬ指摘を受けて返す言葉が見つからないメタルバード。そんな絶句してしまうメタルバードに大将は飄々とした態度で言い切った。

「まっ、罠だとしても何とかなるだろ。オメエらもいる訳だしな」

「……!」

 完全に軽い気持ちながらも自分達を信頼し切ってくれる大将の発言に、メタルバードは何も言い返せなかった。

 メタルバードは自分たち聖龍隊に信頼を寄せてくれる大将に押し切られる感じで、目の前に現れた梯子を昇って先に進行していく事を承知せざる得なかった。

 

 

 

 しかし、突如として現れた梯子を昇る事に決めた一行を施設の至る所に配備されてる隠しカメラを通して人知れず監視している者がいた。

 その者は、分厚い鎧の様な硬いうろこ状の皮膚に覆われた鋭い爪の手を、口先が尖った形状の顔に当てながら金色の鋭い眼光で映像に映るメタルバードや大将、そしてその他の一同を奇観するのであった。

 

 

 

 

 

[登場するクリーチャー及び機械兵器紹介]

 

S-クローン

 かつて国連が所有していた人間兵器 小田原修司の遺伝子より造られたクローンである。

 その多くが実験用に作り出された代物だが、中には様々なウィルスを投与して強靭な生態兵器として作り変えられた個体も存在している。

 クローン個体はウィルスを投与されてないため、凶暴性や攻撃性はないものの、僅かな生態本能で近場にいる対象者にしがみつく行動をする。

 

 

3-DX

 正式名称:試作品MELUS素体003-DX。略称して3-DXと呼んでいる。

 聖龍隊が施設に忍び込み、何かのはずみで戦闘本能が呼び覚まされるよう特殊な暗示を植え付けられた小田原修司のクローン個体。

 他にも1や2が存在しているが、1は何処かへ逃亡。2は、3に暗示を仕込んだ人間の手によって持ち出されてる。

 3-DXは他のクローン個体と違って様々な実験を繰り返しているため、常時筋力が通常の人間よりも倍増した巨体を誇っている。その巨体から繰り出されるパワーは圧倒的。更に攻撃性や凶暴性も増していて、暗示により聖龍隊や彼らに護られてる新世代型達にも激しい攻撃性を向けている。

 何より他のクローン個体や生態兵器と違う特徴としては、自ら摂取したゾンビなどの生態兵器で体内に取り入れたウィルスを逆に支配してしまう事である。

 本来、ウィルスを体内に宿せばそのウィルスに肉体を支配されてしまうのだが3-DXは逆にそのウィルスを己の細胞に同化させ支配する圧倒的な抗体を持っている。これはオリジナルである小田原修司の遺伝子からなる特性と見られる。

 

 

デモンドロイド

 小田原修司をモデルに製造された戦闘マシーン。

 自らを鬼と自称してた小田原修司をモデルに造られた事からデーモンのアンドロイド、通称デモンドロイドと呼ばれてる。

 今回、出てきたデモンドロイドは巨大化した小田原修司をモデルに造られた対置型で警備ロボットの様なプログラムを施され、外装も内部構造が丸裸の簡単な造りの代物であった。

 他にもデモンドロイドには様々な機種が存在しており、その多くは外装もしっかりと舗装されていて容姿も小田原修司を完璧に似せている。これは主にデモンドロイドを所有している国連が、排除対象である異常者が極端に小田原修司を恐れているため敢えて似せていると思われる。

 機種の中には主に人型と巨大化型の2種に分類されている。その中には軽量の装備を纏い身軽で機敏な動作を行える刀を主流とした戦法の人型の通称サムライ型、重装備で超火力の銃器を扱える人型と巨大化型の2種が存在している重装備型、更には何の装備もないがその見た目とは反して高度なテクノロジーを組み込んで両手・口部よりレーザー砲撃を可能とした巨大化型の主力デモンドロイドなど様々である。

 これらのデモンドロイドはプログラムを施されているだけの大型機械に分類されており、工学的にはロボットではない。故にプログラムには対象物を破壊するという内容の下で人間に対しても攻撃が可能である。

(ロボット法では、自我すなわち自らの意思がある機械人形をロボットと定め殺傷を禁じている。しかしデモンドロイドはプログラム通りの動作で対象を破壊できる自我のない戦闘マシーンな為にロボット法には引っかからない)

 ※他版権作品でのポジション的には【ONEPIECE】のパシフィスタ

 

 

S-ゾンビ

 施設内を徘徊してたS-クローンが空気感染でC-ウィルスに感染してゾンビ化した個体。

 本来、小田原修司のD-遺伝子は数多のウィルスに対して抗体を持っているため感染しない筈なのだが、施設内を徘徊してる最中に生体機能が消滅した為に死滅した細胞にC-ウィルスが感染してしまった模様。

 従来のC-ウィルス感染個体のゾンビと違い、筋力が予め発達した小田原修司のクローンな為に本来のウィルス効力と相成って強靭な運動機能を兼ね備えてしまってる。故に通常の人間以上に機敏な動きが可能となり、様々な武術で挑んでくる。

 またゾンビにしては体温が著しく高い。これは元々小田原修司のD-遺伝子がD-ワクチンで筋力が発達した結果、発熱作用が凄まじく上昇した為に、クローンである個体も同様に体熱が高いのである。

 

 

S-ジュアヴヴォ

 これはS-ゾンビと違い、最初から生体兵器としての利用を目的に小田原修司のクローンにC-ウィルスを直接投与して造られた個体。

 筋力が発達した小田原修司の遺伝子から造り出されたクローンにウィルスを投与しているため、通常のジュアヴォ以上に運動能力が高い。床に倒れても素早く飛び起きる。

 従来のジュアヴォと違う点は変異しやすい点である。普通のジュアヴォはごく一部が部位欠損すると様々なタイプの変異体へ変化するが、S-ジュアヴォの場合は全ての個体が変異するのが特徴。

 変異しやすい個体である以外は従来のジュアヴォ同様に、ウィルスの影響で凶暴性が増し攻撃的である。更にプロの格闘家でもあった小田原修司のクローンから派生しているのか、同じS-ジュアヴォ同士なら連携して様々な銃撃戦や共闘を展開する事も可能である。

 またD-ワクチンで肉体を強化され、体熱も高くなった小田原修司のクローンから派生した個体ゆえ、従来のジュアヴォ以上に体温が高い。

 武装は上半身のみチョッキを装備し、腰には短ズボン、手には様々な銃火器や刃物などを武器に戦う。これは敢えて軽装備で戦わせ、肉体を損傷させて強靭な変異体へと変貌させるのが狙い目だと思われる。それ以外は従来のジュアヴォ同様に顔が複眼である。

 更に肉体の運動能力が上昇しているが、肉体への打撃によるダメージには従来のジュアヴォより効果がある。但し銃撃による損傷は肉体に変異を齎す為に注意が必要である。

 

 

新世代クローン

 研究施設に連行され、監禁されてた新世代型二次元人の遺伝子より作り出されたクローン。

 新世代型二次元人全員の頭数が揃っており、顔立ちなどの骨格も全て本人らと同じ。ただ肌が色白で若干ふやけている裸体で、眼球は白く生きた人間とは到底思えない容姿。

 前述の小田原修司のクローン同様に、研究施設で様々な処置を施されている為にC-ウィルスを始めとする多くのウィルスやワクチンの反応が見られる。

 S-ゾンビやS-ジュアヴォ以上に耐久力が高く、高威力な銃火器や能力を用いても倒す事は不可能。しかも体力が尽きると体内のC-ウィルスなどの影響でサナギに変化し、更なる変異を起こす。その変異した姿は様々であるが、基本的にゴブリンに近い容姿へと変貌する。

 

 

クローンロイド

 遺伝子情報を組み込む事で、容姿はもちろん能力なども大半が使用できる人型ロボット。人型の生物なら姿形を完ぺきに複製できる。能力や技を使用し戦術も再現する事が可能。

 しかし体術や武術の場合は、予めプログラムして動作を行える様にした上に、機体の耐久性を向上させなければ使用が限られてしまう。

 また特殊能力も使用できるが完全ではなく、威力が劣り、使用できる技の数も限りがある。更に本物と同様の動作が可能になるが、覇気まで使用できないのが難点。

 更にロボットといっても、デモンドロイド同様に自我を持たない完全な機械の為に、プログラムの内容による命令でしか可動しないのが基本。

 主に戦力が不足している際の補充要員や、訓練用の軽戦闘型が主流。または侵入者を排除するという簡単な命令を実行するだけの代物である。

 

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