現政奉還記 B.O.W.編 作:セイントドラゴン・レジェンド
そんな3-DXから逃れた一行は、過去に収められた人間兵器 小田原修司を記録した映像を視聴するが、その余りの事実に驚愕してしまう。
更に巨大化した小田原修司をモデルに造られたロボット兵器デモンドロイド、そして小田原修司のクローンにC-ウィルスを投与して作られたS-ジュアヴォ。
悍ましき敵と交戦を繰り返した一行の前に姿を現すのは、謎多き女スパイ、エイダ・ウォンであった。彼女を取り押さえようとするものの逃げられてしまうが、その直後に何とS-ジュアヴォの大群が迫る。
数多のゾンビやS-ジュアヴォを混戦の中、各個撃破していく聖龍隊に容赦なく襲い掛かるジュアヴォ変異体。
更には人の姿からかけ離れた最終変異体に変貌するサナギまでも皆の行く手を阻み続ける。
そして皆の前に姿を見せたのは、悲しくも新世代型二次元人のクローン。しかもそのクローンにはウィルスが投与されており、倒しても倒しても起き上がるゾンビの様な存在な上、体力が尽きればサナギになり異形の姿に変わる自分達のクローンを目の当たりにして意気消沈する新世代型。
そんな彼らの目に入ったのは、人型の生物なら遺伝子情報を入力すればどんな存在にも変身できる通称クローンロイドと呼ばれるロボット兵器。
クローンロイドは古参の聖龍HEADの姿に変身し、それらを指揮する様に若かりし小田原修司の姿を模したデモンドロイドが日本刀を向けて一行に立ち塞がる。
両手口内に強力なレーザー砲も内蔵されているデモンドロイドにHEADの能力を自在に使うクローンロイドの部隊に悪戦苦闘する面々。
しかし最後には覇気や六式を用いたHEADが次々にクローンロイドを破壊していき、最終的にデモンドロイドの完全破壊にも成功する。
だが一行の前に突如として現れた上階へ続く梯子。罠の危険性を感じながら、一行は施設での戦いを早く抜け出る為にも意を決して前へと進むのであった。
……その先に強大な敵が待ち受けているとも知らず。
[姿を現す異人]
メタルバード率いる聖龍隊一同と同盟を結ぶ大将率いる赤塚組。
彼ら強大な戦力を備えた組織に保護され、タイの地下研究施設を進行する新たな世代を担う新世代型二次元人達。
迫りくる脅威を命辛々突破し、地上を目指して進行していく一行。
だが、そんな彼らを施設の各所に設置されたカメラで監視する者たちがいた。
監視する者は二名。
その内の一人が監視カメラの映像を映す映像モニターを切り替え、同じく監視カメラで一行を観続けているもう一人と通話を開始した。
「私だ。もうすぐ彼らが君の許に辿り着く、準備してくれたまえ」
すると話し掛けられたもう一人は、話し掛けてきた男に険しい心持で話し返す。
「ああ、心得ている。そろそろ眺めているのには飽き飽きしてたところ……早く血の匂いと味を堪能したい」
話し掛けられた者は、金色の瞳を細め、鋭利な無数の牙を光らせては薄らと怪しい笑みを浮かべる。
「君の一団も戦いの中で己を満たしたいのだな」
「当たり前だ! 確かに今はアンタに雇われているが、たかが新世代と呼ばれる連中を攫ってくるなんて味気のない仕事では満足できん!」
「ふっ、そうだったか、それは悪い事をさせてしまったな。しかし新世代型二次元人のデータは余すところなく収集した。もう彼らに用はない、好きにして構わん」
「言われるまでもない! 依頼とはいえ、単なる研究サンプルの拉致だけでは楽しみようがなかった。屈強な聖龍隊はもちろん、例の異常な遺伝子を持っていると言われる新世代型の肉もじっくりと味わいたい」
「幾度となく身に降りかかる火の粉を振り払う事が出来た一団だ。君たちを満足させてくれるだろう」
「ああ、そうでなければつまらない。何より俺にとって好都合なのが、聖龍隊とは別に施設に潜入した赤塚組の連中だ」
「ほほう、赤塚組と縁があったのか」
「そうだ。今思いだしても忌々しい……この左目の傷が疼く」
白い無数の牙をむき出しにして、怒りを露わにする金色の瞳を持つ者。その者の怒りを感じ取り、話し掛けてきた軍服姿の者は最後にこう告げた。
「……そうそう、君にも例のモノを渡しておいた筈。もしもの時には使ってくれたまえ」
だが言われた金色の瞳の者は強く反発した。
「悪いがアレは使わない。あんなモノを使わずとも赤塚大作に勝てる! 赤塚組はもちろん、聖龍隊も新世代型も全員! その貧弱な体を引き裂いてやるまでだ!!」
これを最後に通話は終了した。
通話を切られた軍服の者は、コンピューター端末を操作し別の人間との通話を開始した。
「私だ。予測通り、例の研究施設に聖龍隊が侵入。新世代型二次元人を救出しにやって来た。今、彼らは着々と地上に向かってきている」
「そうか、やはり聖龍隊が駆けつけて来たか。もし彼らが地上に辿り着いたときは……分かっているな」
「ああ、メルスをぶつける。それでダメなら私自身が……」
「解っているようだな。私の方はエンペラーの最終調整を行っている」
「忘れないでください……我々は、ある御方からのもと結束した同胞である事を。勝手な判断は許されない」
「しかしあの方は私たち双方の要望を聞き入れた上で今回の新世代型を中心とした計画を考案している。君の様に旧政権ばかりに目を向けている者とは別なのだ」
「私の方こそ、人類という戦いの中を生き抜く事で進化してきた種族を根絶やしにするという野心には興味の欠片もない。まあ、ここはお互い、それぞれの役割に忠実に従っていればいい」
「……そうだな。君は痛みを求め、私は完全な生態系を取り戻すために……それぞれの思想の為に奔走していれば良いだけだからな」
通話は終わり、立て続けに二人の存在に話を振った軍服の者はブーメラン状の特殊な形状をしているナイフを素手で握り締め、敢えて血が出るほどの微弱な痛みを感じながら口にした。
「力の先にこそ未来が……甘美なる至福の痛みが待っているのだ」
一方、そんな通話が自分達の知らないところで展開されているとは微塵も知らない一行。
彼らは古参の聖龍HEADをモデルにしたクローンロイドとそれらの司令塔であったデモンドロイドを突破した直後に現れた梯子を昇って、上の階へと突き進んでいた。
「……罠だって解っていながら突き進むとは」
「文句を言うなジェイク。他に道はねぇ! 早く怪物だらけの研究施設から抜け出さねぇと」
あからさまに目の前に出現した梯子を罠だと認識しながらも、その罠に飛び込む判断に難色を示すジェイク。だが他に道はないと、地上に向けて先頭を行くメタルバード。
戦闘経験豊富なメタルバードと大将、そして今ではB.O.Wとの戦闘実績を積んでいるジェイクを先頭に進行する一団。
そして聖龍隊と赤塚組は、新世代型達を警護しながら進行していると、ある場所に辿り着いた。
そこは広いドーム状の空間で、中央には一段窪んだ円形の場が設けられていた。
「此処は?」
皆が殺風景な空間に辺りを警戒しながら見渡した。
「ここは何処だ? そもそも何階なんだ?」
辺りを見回す大将が、今の自分達がいる地下が何階なのか思った、その時。
「地下5階だ」「!?」
何処からともなく聞こえてくる声に全員が驚く。そして声の元を探し回ってみると、上方の方に何者かの影が立っているのに気付いた。
「ふふふ、よくぞ此処まで辿り着けたな……
天井の暗闇に隠れている吊り天井の上に立っていた者は、地上の面々を見下ろして言うと飛び降りてきた。
飛び降りた者は、辺りを見渡していた大将の前に立ちはだかる。
「お、お前は……!」
その者の姿を見た大将は表情を険しくさせた。
そして他の者たちも、新世代型達もその者の姿に驚愕した。
金色の瞳、硬い鱗に覆われた皮膚、三本の指に鋭い白い爪、むき出しの無数の鋭く白い歯、そして左目が何かの衝撃で負った傷跡で完全に潰れていた隻眼。
長い尻尾を床すれすれで靡かせる者は、人ではない恐竜に近い姿をしている異人だった。
「きょ、恐竜人!」「え!?」
異人の姿を見たメタルバードが発した言葉に、新世代型達は反応した。更にプロト世代の海道ジンが目の前の恐竜人を見て動揺しながら話し始めた。
「恐竜人……聞いた事しかないが、恐竜と人間の特徴を持った半人半獣の種族」
そう、恐竜人とは恐竜の姿をした人外の存在である。そして今皆の目の前にいるのはラプトルと呼ばれる小型肉食恐竜を模した恐竜人である。
多種多様な二次元人の中には、人間ではなく半人半獣といった謂わば人外や異人と呼ばれる種も存在する。獣や虫、様々な動植物が時には獣に近い容姿で、時には人に近い姿形で存在する。
目の前にいる恐竜の姿を模した異人の二次元生命体は恐竜のままの骨格に近い体格であり、血に飢えたような金色の瞳、好戦的な目を浮かべる顔は完全に恐竜のものであり、どんな肉をも切り裂くむき出しの歯が垣間見える。
更に大将の前に立ちはだかる恐竜人は、上半身を布で作った手製の装飾具を身に着け、右手には重量感のある太い木製の槍を所持していた。
「久しぶりじゃねぇか……ラプター」
「? ラプター?」
恐竜人と対峙する大将は、竜人に向かって名を告げる。その名に新世代型達が大将と恐竜人の会話に耳を澄ます。
「ああ、久しぶりだな赤塚大作……まさか、こんな所で遇えるとは思ってなかったぞ」
「そりゃコッチの台詞だ。なんでお前が此処にいる……たかが海賊風情のお前さんがよ」
「か、海賊!?」
大将と恐竜人の会話に出て来た海賊の言葉に、真鍋義久を始めとする新世代型達は驚いた。
新世代型達が海賊と呼ばれる恐竜人に衝撃を受けている最中、大将とラプターと呼ばれる竜人の対話は続く。
「貴様に潰された、この左目が疼いて仕方がないのよ……今宵こそ貴様ら赤塚組の息の根を止めてくれるわ」
「勝手に言ってろ。俺達は先を急がなきゃならねぇのよ、悪いがテメェの相手をしている暇はねぇ」
「クックック、先を急ぐ必要なぞない……貴様らは此処で死ぬのだからな」
ラプターがそう言うと、彼と大将が対峙している円形の場の一団窪んだ段が迫り上がり、二人の周囲は壁で覆われてしまった。
「な!」「大将!」
突如として迫り上がった壁に囲まれ驚愕する大将に、壁で隔てられた大将に呼び掛けるメタルバード達。
大将とラプターが一対一で対峙する場は、完全に円形の壁で覆われ、更に二人を囲む壁から天井が突出しては上方までも遮られてしまう。
これで他者が出入りする事も内側の大将とラプターの両名も逃避する事は不可能になってしまった。
二人を囲む壁には、ガラス製の小窓が設けられており、その窓から内側の大将とラプターの様子が確認できた。
壁の内側でラプターは大将に得物である太い槍を振り翳して言い放った。
「これで逃げ道はない! 観念しろ!!」
更にラプターは槍を持つ右手とは反対の左手を上げて言い放った。
「者共! 獲物が来たぞ! 逃げれぬ様に取り囲め!!」
ラプターがそう言い放った瞬間、ドーム状のフロアの高所に設けられた陰で隠れてる戸口よりラプターの配下達が続々と出現した。
「ウオーーッ!」
雪崩れ込むように影に隠れていて気付かない様な戸口より出現するラプターの部下にあたるラプトル(小型肉食恐竜)の恐竜人達。彼らは武器である槍を片手に持ち、続々と現れては皆の周囲を取り囲んだ。
「きゃあ!」
鋭い眼光を放つラプトルの視線と姿に脅え、悲鳴を上げる新世代型の女子達。
怪しい微笑を浮かべて、目の前の新世代型達を視界に捉える恐竜人達。
「こ、この恐竜人達は……!」
槍という武器を手にし、戦意をむき出しにするラプトルの恐竜人を前にして動揺するプロト世代の海道ジンに赤塚組のギョロが恐竜人達と対峙しながら話した。
「こいつ等は恐竜人の海賊達でヤンス。前におれ達、赤塚組とよくぶつかっているんでヤンス!」
ギョロに続いてテツも新世代型達に注意を呼びかける。
「気を付けろ! 今じゃ人間の二次元人と交流を結んでいる恐竜人だが、このラプトルの海賊団は人間だろうと自分達と同じ恐竜人だろうと、敵対していれば容赦なく嬲り殺す残忍な連中だ!」
「え!!」
テツの言葉に新世代型達は衝撃と動揺に襲われる。
更に新世代型達はテレパスの琴浦春香と斉木楠雄が知った赤塚組の思考から、共有感知を通してラプター海賊団について周知した。
首領ラプターをリーダーとした恐竜人海賊団は、好戦的な思想と残忍な行為から多くの人々に恐れられていた海賊。
様々な国や人々を襲撃し、殺戮と略奪を続ける彼らだったが、大将率いる赤塚組との出会いが因縁の始まりだった。
赤塚組によって一味は海賊行為を妨害され、更にリーダのラプターは赤塚組との乱戦中、大将が振り翳す破槍の攻撃を真面に顔面に受けてしまい、その際に左目を完全に潰されてしまう。
これ以降、ラプター海賊団の勢いは失速し、これにより赤塚組とラプター海賊団の因縁が今なお続いている。
ラプター海賊団に取り囲まれた時、新世代型達の脳裏にある記憶が鮮明に蘇った。
「あ! こ、この人たち……」
「思い出した! コイツらは……」
女子も男子も、自分達を取り囲むラプトルの竜人達を指さした。
「こいつ等が……こいつ等だ! 俺達を攫ったのは」
新世代型達は思い出した。不意に死角や物陰より発射された吹き矢により、昏睡状態にされた彼らは一人一人袋に詰められ、そのまま移送された記憶を。
そう、昏睡状態にさせた吹き矢を発射したのも袋に詰めてタイまで移送したのも、ラプター率いる海賊団が実行者だった。
新世代型達が自分達を誘拐して研究施設まで連れて来たのが目の前のラプター海賊団であると思い出した言動を取ると、対峙している海賊団の一人が不敵な笑みでこう告げた。
「へへへ、生け捕りで拉致してくるなんて癪に合わなかったが、もうテメェらに研究価値は無ぇんだとよ。大人しく俺らに殺されろ」
このラプトルの恐竜人の言葉に新世代型達は鳥肌が立った。
こうして一行は、ラプトル海賊団の頭領ラプターと大将の一騎打ちを皮切りに、ラプトル海賊団との乱闘に突入してしまう。
[恐竜人との対決]
壁に覆われた円形のフィールドに閉じ込められ、逃げも隠れもできない状況に追い込まれた大将はラプトル海賊団の頭首ラプターと一騎打ちする羽目に。
大将とラプターが誰も介入できない状況で闘い合っている間、二人を隔てる壁の外側ではラプター海賊団との激しい戦闘が開始されていた。
「ウオオーーっ!」「殺せーーッ」
槍を振り上げて迫りくるラプトルの恐竜人を相手に、彼らに恨まれている赤塚組は果敢に銃撃で応戦していく。
恐竜の戦闘本能と卓越した身体能力、獲物を切り裂く鋭い足の爪に強力な脚力、そして強靭なアゴとそれに相応しい無数の牙を備えるラプトルの恐竜人は驚異的。
一方で、壁に隔てられて逃げ隠れできなくなった大将は強制的にラプターと闘うしかなかった。
「このヤロッ」「おっと」
ラプターと闘い合う大将は自慢の得物である破槍を振り回して応戦。その攻撃をラプターは身を横や後ろに反らして悉くかわしていく。
大将とラプターが決闘を繰り広げている最中、外側ではラプトルの竜人達との激しい攻防が展開されていた。
「おりゃーーッ」
一斉に飛び掛かるラプトルの恐竜人達。だが飛び掛かってくる寸前で、ジュピターキッドは鞭を縦方向に幾度となく振り回し、技を放つ。
「ウィップ・ラッシュ!」「ウギャーーッ!」
縦に振り続けた鞭より放たれる閃光が無尽蔵にジュピターキッドの眼前のラプトル達に降り注ぎ、彼らの体を貫いていく。
同じ頃、新世代型の女子達に狙いを付けて唸りながら迫るラプトルの恐竜人達を前に、ミラーガールが新生代型達を守ろうと恐竜人達と対峙する。
「うへへへ、新世代って言いながら俺らにとっちゃ単なる獲物……肉と変わりはない」
「正直、生け捕りにして連れてくる間ずっと我慢してきたんだ。今ここで全員殺して捌いてやる」
「………………」
ラプトルたちの殺意に満ちる台詞に、彼らが自分達を単なる獲物と捉え、更には食肉としてしか見ていない事実に恐怖を感じ身震いする新世代型達。
そんな恐怖に駆られる新世代型達を護ろうと、ミラーガールは盾を前に構えて相手の攻撃に備える。
すると新世代型の女子達とミラーガールを睨み付けていたラプトル達が、彼女達の体を凝視してふと話し始めた。
「……に、しても。人間のメスというのは、膨れている個所が大分異なるな」
「ああ。何より同じメスだというのに、個体によっちゃ膨らみの度合いが非常に差が出ている」
「あの膨らんだ胸肉は柔らかそうで美味そうに思えるんだが」
「鳥や牛だって、個体で体の部位が異なるのと同じだ。どっちにしろ、人間の肉は灰汁が非常に強い。あの胸肉も小さかろうと大きかろうと十分に煮込まなければ灰汁は取れんよ」
自分達の部位について語り合うラプトル達の会話に女性陣は衝撃を受けるのが、その時、一人のラプトルがミラーガールを指さして言ってしまった。
「だけど、この女はどうだ。えらく貧相な体をしてやがる。これじゃ筋肉は美味そうだが、胸とか他の肉は期待できそうにな……」
ラプトルがミラーガールの体について話している最中、自身が気にしている体の部位を指摘されたミラーガールは一瞬で語っているラプトルを蹴り飛ばし、そのまま壁まで吹き飛ばした。
「………………」
一瞬の間で蹴り飛ばされ、壁に激突したラプトルは、白目を向いたまま動かなくなる。
この状景を目の前にした新生代型と他のラプトル達は言葉を失い、ラプトル達は蹴り飛ばしたミラーガールに視線を向けて蒼褪めた。
「こ、この女……」
「なんて奴だ。我々、屈強のラプトル族を意図も簡単に蹴り飛ばした……!」
同胞を簡単に蹴り飛ばして倒してしまったミラーガールにラプトル族は激しく動揺する。
すると一人のラプトルが蒼然とした面立ちでミラーガールの顔を見ていて、ある事にに気付いた。
「お、思い出した! この女……加賀美あつこじゃねェか?」
このラプトルの言葉に、他のラプトル達も続けて話し出した。
「そ、そうだ! この女は……今年に聖龍隊の副長に昇格した加賀美あつこ、ミラーガールだ!」
「前聖龍隊総長にして世界最悪の人間兵器、小田原修司と婚約し……」
「鬼神をもひれ伏させるほどの実力を兼ねた、恐るべき女……!」
ラプトルの誰もが鬼神 小田原修司と関係を持っただけでなく今では聖龍隊副長の座に昇格したミラーガール/加賀美あつこに動揺と恐怖を覚えている様子に、それを目の当たりにする新世代型達は鬼神と恐れられる小田原修司と親密な間柄になった加賀美あつこ/ミラーガールも鬼神同様、またはそれ以上に恐れられている存在なんだなと認識する。
そんなすっかり脅え切ってしまうラプトル達にミラーガールは末恐ろしい形相で睨み付けた。
「ヒっ!」
ミラーガールの眼光に思わず怯んでしまうラプトル達。しかし一人のラプトルが他の同胞に呼び掛ける。
「ひ、怯むな! こっちの方が数では上なんだ。一気に畳み掛けるんだ!」
この一言を皮切りに、ラプトル達は一斉にミラーガールに飛び掛かる。
しかしミラーガールは飛び掛かってくるラプトル達を捕まえては投げ捕まえては投げ、次々に投げ飛ばして簡単に返り討ちにしてしまう。
ラプトル達がミラーガールの逆鱗に触れてしまい手痛く返り討ちに遭っている中、他の聖龍隊士もラプトル海賊団と交戦していた。
「撃てっ」
ミラールの合図で迫りくるラプトル達に一斉射撃を放つ巴マミと暁美ほむらの3人。ミラールは二丁拳銃で魔力で形成された銃弾を放つミラージュ・ガンで、巴マミは16~19世紀頃の西欧で使われていた古風なライフルドマスケットを何もない空間から魔法で無数に発生させて発砲しては使い捨て、暁美ほむらは聖龍隊から支給されている銃火器で前方のラプトル達に弾幕を浴びせて迎撃する。
「このッ」
しかしラプトル達は3人が放つ弾幕を槍で巧みに弾きながら突撃し、銃撃を見せるミラール達に接近。
「くらえッ」
間近まで迫っきたラプトル達は槍を振り上げて攻撃しようとするが、それより速く佐倉京子が飛び出して伸縮自在の槍と分銅鎖を二刀流で使いこなし、返り討ちにしようと試みる。
しかし杏子の攻撃する直前、ラプトルは高い跳躍力で跳び上がり攻撃を回避しては、杏子に飛び掛かり両足の鋭い爪で彼女を押し倒す。
「ッ!」
ラプトルの強靭な鋭い爪で自身が切り裂かれるのを杏子は槍で防御するが、槍を押さえるのに両手が塞がっている杏子の頭部にラプトルは強靭なアゴで噛み付こうと口を大きく開けて顔を近づける。
杏子の顔にラプトルの牙が迫ろうとした寸前、彼女に喰らい付こうとするラプトルの真横からフェイトが攻撃し、ラプトルを吹き飛ばして杏子の危機を未然に防いだ。
更に混戦の中、周囲で個々と暴れ回るラプトル達を相手に必死にけん制してた百江なぎさの足を一体のラプトルが自らの長い尻尾で振り払い、なぎさを転倒させる。
「きゃっ」
ラプトルの尻尾に足を振り払われ床に倒れるなぎさ。そこに彼女を転倒させたラプトルが強靭な足でなぎさを上から脚力と鋭い爪で押さえ付けると、なぎさを見下ろして不敵な顔で言った。
「グフフ、これで最後だ」
そういうとラプトルは手に持っている槍を振り翳し、槍の先端をなぎさに突き刺そうとする。これに思わず目を瞑ってしまうなぎさ。
だがラプトルがなぎさを槍で突き殺そうとした瞬間、高町なのはがラプトルの真正面から駆けつけ、ラプトルの顔面に強力な跳び蹴りを噛まして吹き飛ばす。
「グギャッ」
吹き飛ばされるラプトル。そしてラプトルに突き殺されそうになった百江なぎさは高町なのはに礼を言いつつ、なのはが差しだした手に掴まり立ち上がる。
「殺せ、殺せ!」
激しく殺気立つラプトル達を相手に激戦を続ける一行。
殺気立つラプトル達を相手に必死に反撃していく一団。しかし竜人特有の分厚い鱗の皮膚を持つラプトル達が相手な為、打撃は余り効果がない。
そんな熱戦を繰り広げる聖龍隊と赤塚組に混じり、新世代型の中で戦闘可能な面々も生きる為にラプトルを相手に必死に挑んでいく。
纏流子と鬼龍院皐月は武器である片太刀バサミと縛斬でラプトル達を次々に斬り込んでいく。
「ぐはッ」「ウッ……」
二人の斬撃にラプトル達は続々と倒れていく。
「このっ」
「ギャアっ!」「な、何なんだ、あの服……うわッ」
奏の装・プレストで空飛ぶ武器庫と化し、手の付けられない有様へと変化した蛇崩乃音の上空からの素早い機動力と死角のない爆撃に地上のラプトル達は苦しめられる。
ラプトル達との混戦の中、一体のラプトルが交戦中の美樹さやかに狙いを付けては彼女目がけて槍を構えて突進してきた。さやかはこれに気付くものの、時すでに遅くラプトルは最早さやかの目前まで迫っていた。が、しかし。さやかに槍を構えるラプトルが目前まで接近した瞬間、さやかに迫るラプトルを新世代型の栗山未来が、自身の血を結晶化させて形成した刀で横から攻撃し、ラプトルを弾き飛ばした。
「グッ!」
栗山未来の一撃を喰らい、吹き飛ばされるラプトル。
未来によって間一髪の所を救われたさやかは、未来に目で礼を返すと二人して向かってくる周囲のラプトル達と交戦していく。
聖龍隊と戦闘可能な新世代型達の共闘の最中、ラプトルとの戦いから避けようと戦渦を外れている非戦闘型の新世代型達は、自然と大将とラプターの一騎打ちが行われている円形の壁に背を付けた瞬間。顔の横の小窓に血まみれの大将が激突してきて驚いてしまう。内側の大将も、外側の新世代型達に気付いて血に塗れたボロボロの顔でウィンクするが、スグに同じ側にいるラプターに引っ張られて闘いに戻る。
乱闘の中、ラプトル達は槍を巧みに扱い、振り回してこん棒の様な鈍器としても、敵を突き刺す武器としても応用する。しかし聖龍隊はその槍の攻撃を弾き返し、ラプトル達に反撃していく。
赤塚組の方も、銃火器でラプトル達と応戦していくのだが、例え銃弾が着弾しても硬いラプトルの皮膚に実弾が突き刺さる程度で、体内まで貫通して致命傷を負わせるまでには至らなかった。
「このヤロッ」
次々に向かってくるラプトルの軍勢をメタルバードは拳のみで次々に撃破してみせる。
「このッ……!」
ラプトルの尻尾を掴んで、勢いよく振り回して他のラプトルに向けて投げ飛ばしていく堂本海人。
その時、海人の目に背後から飛び掛かったラプトルに背中を蹴られて、横転してしまった瞬間にラプトルの強靭な足爪で押さえ込まれて動けなくなったキリトの姿が入った。海人は速度を付けて、キリトを押さえ込むラプトルに直進すると、ラプトルの横腹に強烈な一打を浴びせてキリトを助ける。
その後、蒼の騎士は先輩でもあるキング・エンディミオンと背中を預け合いながら続々と攻めてくるラプトルを剣で迎え撃つ。
エンディミオンと蒼の騎士が互いの背を預けて共闘するのと同様に、他の面々も同じく互いに力を合わせて群がるラプトルの猛攻に反撃していく。
紅き片太刀バサミと紅蓮の槍の使い手、纏流子と佐倉京子。誇り高き信念と蒼き闘志、鬼龍院皐月と美樹さやか。空と地上からの銃撃、蛇崩乃音と巴マミ。標的を逃さぬ射撃、鹿目まどか/暁美ほむら/高町なのはの過激な攻撃。それぞれが持ち前の戦術を用いて互いに周辺のラプトル達を迎撃していく。
「えいっ」「グギャッ」
皆々が共闘する乱戦の中、ミラーガールはラプトル達の真上に跳び上がっては、新世代型達に攻撃を仕掛けようとするラプトル達を真上から蹴り飛ばして悶絶させる。
「たかが人間の小娘! いい気になるなッ!」
獰猛な顔つきで集団で一気に片付けようとするラプトル達に、鹿目まどかは弓矢で迎撃し、次々にラプトル達を射抜いていく。まどかは自分はもちろん仲間達に迫るラプトル海賊団を次々に素早く射抜いていき討伐していく。
しかし聖龍隊も赤塚組も、銃や弓矢など殺傷力の高い武器や技を使用しているが、ラプトル達は死ななかった。強靭な皮膚だけでなく、古代より遺伝されてる屈強な肉体は生半可な攻撃を防いでしまうからだ。
聖龍隊や赤塚組に混じって、共戦する新世代型の纏流子や鬼龍院皐月それに栗山未来達が自身の得物で槍を振り翳すラプトルの進撃に抗戦する。
「このガキッ!」「!」
一体のラプトルが得物である槍を弾き飛ばされて、素手となった前足で槍を弾いた張本人の纏流子の腹部を引っ掻いた。流子は寸前で後ろに身を退くが、微かに触れた爪で流子の露出した腹部は肉が切り裂かれて出血してしまう。
ラプトルのダチョウの様に太い脚は獲物を切り裂ける鋭い爪に発達している。例え武器を持っていなくても、元からある爪と強靭な筋力、そして鋭い歯と強靭なアゴで相手を殺傷する力は備わっている。
しかもラプトルは古代の恐竜時代より培ってきた、連携による狩猟の方法で対峙する皆々を追い込んでいく。
だが、聖龍隊はラプトルの連携による囲みに入れられながらも、機転を生かして反撃に転成しラプトル達を倒してみせる。
「ギャーーーーッ」
飢えた鳥の様な声を上げて迫るラプトルを必死に武器で防衛しつつ、何とか押し返して反撃をしていく。
そして皆はどうにか、ラプトル達が怯んだ隙に彼らの所持している槍を全て叩き落すか鞭などで奪い取る事に成功。そして奪い取った槍を全てへし折ってラプトル達の攻撃の手段を無くそうと試みるが、これにラプトル達は余裕綽々の薄ら笑みを浮かべて不敵に言い返した。
「ククク、我らが武器を失って困惑するとでも? バカめ、例え我らから武器を奪っても、我々には古来より授かってきたこの強靭な爪と卓越した戦術がある」
武器である槍を失っても尚、古来より培っている強靭な足の爪と脚力、そして群れでの狩猟を応用した連携戦術で十分に戦えると宣言するラプトルの言葉に、一同は表情を強張らせる。
案の定、ラプトル達は武器も持ってない状態で一行に突撃し、強靭な脚力と鋭い爪で強烈な攻撃を仕掛けてきた。
「喰らえッ」
しかし一体のラプトルが跳び上がり、鋭い爪を突き出して跳びかかってきた所を、ワイルドタイガーが一時的に己の身体能力を百倍にできるハンドレッドパワーを使用して強化した筋力で突っ込んでくるラプトルに殴り掛かった。
「このヤロッ」
タイガーの拳は跳びかかってくるラプトルに直撃し、ラプトルは殴り飛ばされてしまう。
しかもタイガーがラプトルを殴り付けて直後、タイガーは息が合ったように腰を曲げて背中を水平にすると、その後ろからモルジアナが駆け足でタイガーの背を足で蹴って跳び越え、前方から突進してくるラプトル達に強烈な蹴りや拳などの打撃を与えながら勇敢に飛び込んでいく。
タイガーとの連携でラプトル達を次々に撃破していくモルジアナの傍らでは、セーラーマーキュリーとブルーローズそして
「ッ……ブルブルッ。さ、寒い……!」
「さ、寒いのは……寒いのだけは、どうしても苦手……」
屈強のラプトルとはいえ恐竜の獣人。極度の低温には非常に弱いのだ。
更に迫りくるラプトル相手に、セーラージュピターとドラゴンキッドの電撃コンビは、電気を纏わせた拳を突き出して向かってくるラプトルに正拳を打ち込んでいく。
『はぁっ』「グギャアアッ」
打ち込まれた二人の正拳での打撃と電撃に、殴り付けられたラプトルは悶絶。
一方此方では。一人、超能力で向かってくるラプトル達と応戦する梅枝ナオミ。
「えいっ、このっ」
次々に向かってくるラプトル達を念力で吹き飛ばしていくナオミ。すると一体のラプトルがナオミの隙をついて突撃してきた。
「!」
ナオミはラプトルの突撃に気付くものの、ラプトルは既にナオミの目前にまで迫っていた。
しかしそこに何と、今まで余り目立った行動をとってなかった新世代型の斉木楠雄が現れ、ナオミに突撃するラプトルを自身の念力で吹き飛ばし気絶させてみせた。
「あ、あなた……!」
突然の斉木の加勢に驚きを隠せないナオミ。すると斉木は周囲のラプトルを警戒しながらナオミに話し掛ける。
「今は、この混戦状態をどうにか突破する事の方が最優先。気が進みませんが、僕も少しばかし手を貸しましょう」
「………………」
突然の斉木の協力に言葉を失うナオミに、斉木は自分の事情を粗方知っているナオミに戦闘への協力に出た詳細を述べた。
「……確かに。僕は自分が
「……」
「しかし、今なら少しだけですが力を貸せます。ちょうど燃堂は他の聖龍隊、そうHEADの人たちの戦いぶりに目を奪われていますからね」
斉木の言葉を聞いてナオミが燃堂の方に顔を向けると、確かにそこには大勢の新世代型達の中でHEADとその周囲の聖龍隊士の戦いぶりにすっかり目を奪われて観戦に没頭している燃堂力の姿が確認された。
「うほーーぉッ。マジスゲェ、マジスゲェぜ! 聖龍隊、マジでスゲェ!!」
既にこの場の新世代型達は自分達に目覚めた共有感知の能力で斉木楠雄が超能力者である事を周知しているのに対し、唯一頭の回転が遅いのか思考が追い付かないのか斉木が超能力者である事実を認識してない燃堂力が、斉木や梅枝ナオミの方ではなく聖龍HEADの方に目を向けている状況を確認して、ナオミは普段から燃堂を始めとする周囲の人々に自身の詳細を知られない様に穏便に過ごしている斉木楠雄の苦労を感じ入ったのか、呆然と斉木に言った。
「……苦労してるのね、あなた」「……はい」
呆気に取られた面差しのナオミの言葉に、斉木はぽつりと返事する。
その後、二人は燃堂に悟られない様にと集団から外れて目立たぬよう共闘を続けるのだった。
皆が一騎無双の勢いでラプトル達を倒してた頃、周囲を壁で隔てられて強制的に対決を余儀なくされた大将は。
「うう……」
ラプトル海賊団の首領、ラプターにこっ酷く痛め付けられていた。
「ガハハハッ、赤塚大作! 所詮は仲間がいなければ何もできないというのか? まあ、結局どう足掻こうと人間如きが我々誇り高い竜人に敵う訳がないのよ。弱者は弱者らしく、床に這いつくばっていろ」
「ぐ……ッ」
決闘で己の体も傷だらけになりながらもラプターは大将を見下しながら嘲笑する。これに大将はその傷だらけの血塗れという何とも痛々しい姿で口を歪ませる。
更にラプターは徹底的に痛め付けた大将の顔を足で押さえ付け、話し掛ける。
「さあ、泣いて謝れ、命を乞え。所詮、人間とは発達した文明の中で貧弱になっていった未熟な生き物なのよ。俺達の様に優れた種族ではない」
「………………」
大将は顔を足で押さえ付けられながら、自分を踏み付けて押さえ込むラプターを睨み付ける。
この時ラプターは、以前大将率いる赤塚組との戦いを思い出していた。
ラプター達にとって日常的であった人間に対しての略奪と殺戮行為。しかしある日、彼らの目の前に赤塚組の一派が現れ、略奪をしているラプターら海賊団と一戦始めた。赤塚組の幹部に子分たちの激しい銃撃、ミズキによる上空からの狙撃といった連携による猛攻に苦戦を強いられるラプター。すると周囲の赤塚組を次々に倒していくラプターに、大将が燃え盛る破槍に飛び乗って飛来してきた。破槍に飛び乗り急襲してきた大将に気付くラプターであったが、僅かに反応が遅く、大将が扱う破槍がラプターの顔左側面に激突。この際、ラプターの左目は破槍の衝撃で完全に潰れてしまい、人間である赤塚組に敗れた事でラプトル海賊団の名も地に落ちてしまったのだ。
以上の経緯により、ラプターは赤塚組は元より自身の左目を潰した大将に因縁を募らせているのだった。
そんな過去の戦闘で左目を失わせた大将は、ラプターに顔を踏み付けられながらも腰に装着している武器に手を伸ばす。
そして一瞬の隙をついて、大将は自分の顔を踏み付けているラプターの足を掴んでは強引に押し退けて、ラプターの態勢を崩す。その瞬間、大将は腰に装着していた鉈を、あのトンカラトンが磨いた切味抜群の鉈を手に持ち、ラプターの首元に突き刺した。
「グオオッ」
鉈を突き刺されたラプターは大量の出血を吹き出して苦しむ。
すると激痛に悶えるラプターを見上げていた大将の前に、何かのリモコンが落ちた。
「これは……」
体中を切り傷だらけにした大将が、そのラプターが落としたリモコンを拾い上げ、ふとスイッチを押してみると二人が決闘していた場を囲む壁が再び床下に収納されていく。
すると大将とラプターを囲んでいた壁が無くなっているのに気付いた赤塚組の面々は、傷だらけで頭から血を流している大将が視界に入り、急いで駆け付ける。
「大将!」「大将、大丈夫!」
昔馴染でもあるゴマとチカ子の顔を見た大将は、二人に続いて駆け寄ってくれる仲間たちの顔を見ると何処か安心した表情を浮かべてた。
一方で大将に鉈を首元に突き刺されたラプターは、よろめきながらもどうにか体勢を維持して前をむいた。
するとラプターの目に飛び込んできたのは、聖龍隊と赤塚組さらには戦闘可能な新世代型二次元人達によって痛め付けられ、力尽き床に横たわる配下の竜人達だった。
「ま、まさか……またしても下等な人間如きに我ら誇り高きラプトル海賊団が敗れるとは」
己の首元に突き刺さる鉈の切り口より吹き出る血を手で押さ込むラプターは、赤塚組の敗北に続いて再び人間に敗れた結果に失望した。
「へへ、赤塚組はもちろん……俺たち聖龍隊もナメてもらっちゃ困るぜ」
ラプトルとの戦闘で着衣しているスーツはもちろん肉体にも直接的な傷を負ったエンディミオンは、息を切らしながらも衝撃を受けてるラプターに告げる。
エンディミオンの付近には、彼と同じくラプトル族との戦闘で全身が傷だらけの隊士達の姿も確認された。
屈強な筋力と丈夫な皮膚、そして巧みに操る槍捌きに鋭い手足の爪と強靭なアゴ、驚異的な脚力で戦いを挑んだラプトル族であったが、聖龍隊はもちろん新世代型の連携攻撃には敵わなかった。
一度ならず二度までも人間に敗北を期したラプターは、非常に無念であった。
「たかが人間如きが……我らを負かすとは」
二度目の敗北からなる絶望感と首から吹き出る出血による貧血状態で、ラプターの視界は霞み始めた。
と、その時。ラプターは先ほど通信で話し合った人物より手渡されたあるモノを思い出し、それを手にとって視認した。
(もしもの時……使うがよい)
自分達の雇い主である人物より手渡された一本の注射器。それを見詰めて思考に耽るラプターは決意する。
「……我々……我々、古来より生き続けてきた恐竜人が……」
「………………」
首元から大量の出血を流すラプターの言動に誰もが注目する中、ラプターは注射器を握りしめながら語り続けた。
「我々、最強の種である恐竜族が……文明というぬるま湯に使って劣っている人間に負けるなど……!」
ラプターは聖龍隊と赤塚組を始めとする面々を睨み付けながら手にしている注射器を翳した。
「負けるなど……あってはならないのだ!!」
次の瞬間、ラプターは手にしていた注射器を自身の体に突き刺し、内容物を体内に注入した。
「ラプター!」
戦闘で激しく負傷し、駆け寄るゴマとチカ子の二人によってラプターから遠ざかっていた大将は、突然取り出した注射を自ら突き刺すラプターに衝撃を抱く。
そして注射器を自身に打ち込んだラプターは、注射した直後から途端に苦しみ出し、そのままその場に跪いてしまう。
四つん這いとなったラプターは苦しみ続け、酷い吐き気に襲われる。
ラプターが苦しみ続けてた、次の瞬間。
「ウオオオオッ!!」
ラプターは口から大量の唾液を吐き出し、身体に異変が現れ始めた。
「グアアアアアアアアアアアァァァ……!!」
目の色を一変させ、絶叫を上げるラプターの身体は徐々に変化していく。
前足の付け根から大量の血が吹き出し、同時に強靭な後ろ脚からも出血が現れる。
そして変異し続けていたラプターの身体の変化が静まると、ラプターの全身は一変してしまった。
前足は前方に向かっていたのが側面に向かって突き出した様に骨格が変形し、変形した前足からは鮮やかな硬い翼が生え、後ろ脚のふくらはぎからも同色の小さな翼が生えた、恐竜よりも怪鳥に近い姿にラプターは変貌した。
[変異する恐竜人]
「ウ゛オオオオオオ……ッ」
自ら注射器を突き刺した恐竜人海賊団の船長ラプターは、前足を翼の様に変異させ、後ろ脚のふくらはぎからも同様の翼を生やし、まるで始祖鳥と酷似している怪鳥の様な姿に変異してしまう。
大将との戦闘で鉈を突き刺された首の傷も、体の変異と共に出血が治まり、ラプターが負った傷は完治していた。
一方で、目の前で突如として容姿を激変させたラプターに驚愕する一同は揃って絶句する。
皆がラプターの変異に驚愕し、目を奪われている最中、当のラプターは何を思ったのか翼に発達した腕を羽ばたかせて、地を思いっきり蹴飛ばして上空へと飛び上がった。
「グアアァーーッ」
獣の如き鳴き声を発しながら飛行し始めたラプターを見て驚いた大将が叫んだ。
「ど、どういう事だ!?」
何ゆえラプターの前足が翼の様に変異して、ラプター自身が飛行できるようになったのか戸惑う大将にメタルバードが憶測を言った。
「う、ウィルスだ……ウィルスを自分自身に打ち込みやがったんだ!」
そう、先ほどラプターが自らの体に打ち込んだ注射器の内容物、それは生物の肉体を激変させるウィルスだと告げるメタルバードの言葉に、大将や他の皆は愕然とした。
その一方で、ウィルスの効力で肉体が変異し、前足が始祖鳥の様な大きな翼に変化したラプターは悠々と皆の頭上を飛行し、一瞬の隙を狙って上空から攻撃してきた。
「ギャアーーーーッ」
頭上から滑空してくる変異ラプターは後ろ脚の爪を向けて突進してきた。
「伏せろッ」
赤塚組のテツの一声に、全員が頭を伏せて変異ラプターの突進を何とか避ける一同。
しかし変異ラプターは方向転換し、再び地上の面々に向かってきた。
「撃ち落とすんだ!」
大将の声を合図に、赤塚組は向かってくる変異ラプターに銃撃を開始する。そして赤塚組の銃撃に続く様に聖龍隊の狙撃や射撃の戦法者も変異ラプターに向かって攻撃を始める。
皆の銃撃や射撃を一身に受けた変異ラプターは、苛烈な迎撃に思わず空中で停止してしまう。それを見た大将は一気に変異ラプターを撃ち落とそうと仲間の赤塚組に指示を飛ばす。
「今だ! 撃ち落とせッ」
大将の掛け声に赤塚組の面々は一斉に変異ラプターに狙撃をお見舞いしていく。実弾にミズキのレーザー光線での狙撃を受け、変異ラプターの体は傷だらけになっていく。
と、ここで突然「トドメは私が!」と、新世代型の蛇崩乃音が極制服、奏の装・プレストで飛び上がり、単身で深手状態の変異ラプターにトドメを刺そうと突っ込んでしまう。
「やめろッ、いくら深手を負っているとはいえ危険すぎる!」
単身で変異ラプターに進撃する蛇崩乃音を制止させようとメタルバードが呼びかけるが、蛇崩乃音は制止を無視して変異ラプターに接近しつつ音符ミサイルを連射して砲撃する。
蛇崩乃音が放った音符ミサイルは全弾、変異ラプターに直撃し、ラプターは硝煙に呑み込まれる。そこに蛇崩乃音が急速襲撃の勢いのまま変異ラプターに向かって一直線に突っ込んでいってしまう。
すると蛇崩乃音が舞い上がる硝煙に接近した瞬間、硝煙の中から何かが飛び出し、急接近してきた蛇崩乃音を捕らえてしまった。
「う、うわっ!」
突如として煙の中から飛び出てきた何かに驚く蛇崩乃音は、自分を捕らえるそれに目を向けてみる。するとそれは変異ラプターの後ろ脚の鉤爪だった。鉤爪は深く蛇崩乃音の極制服に食い込み、彼女を逃がしはしない。
更に蛇崩乃音が自分の腹部を掴む鉤爪から視線を変える為、顔を上げると目の前にはウィルスの影響で目の色を変えて豹変してしまった変異ラプターの顔が真正面にあった。
「っ!」
凄まじい変異ラプターの形相を目の当たりにし、絶句してしまう蛇崩乃音。
次の瞬間、変異ラプターは己の後ろ脚の鉤爪で捕らえている蛇崩乃音に向かって口から緑色の液体を吐出した。蛇崩乃音は寸前で顔をずらして直撃だけは免れたが、緑色の液体は彼女の肩に僅かながらに付着してしまう。すると蛇崩乃音の極制服の肩部分がホンの少しだけ溶解した。
「ヒっ!」
緑色の液体が付着した肩の部分だけが溶けたのを目前として、蛇崩乃音は激しく動揺してしまう。
しかも其処に追い打ちをかけるかの如く、変異ラプターは蛇崩乃音を後ろ脚の鉤爪で捕らえたまま急降下し、彼女を押し付ける形で床に叩き付けた。
「ウっ!」「蛇崩!」
床に激しく叩き付けられ悶絶する蛇崩乃音を見て、鬼龍院皐月が血相を変えて彼女の名を呼ぶ。その間にも、蛇崩乃音を叩き付けた変異ラプターは彼女を捕らえたまま今度は鋭い牙で顔を丸ごと噛み付こうと開いた口を向けた。その時。
変異ラプターの牙が蛇崩乃音の顔に噛み付く手前で、メタルバードが颯爽と変異ラプターを蹴り付け吹き飛ばし、蛇崩乃音の窮地をどうにか寸前で救い出す。
「ウギャッ」
蹴り飛ばされた変異ラプターはどうにか体勢を戻すと、自分を蹴りつけたメタルバードを睨み付ける。
すると変異ラプターは自分を蹴りつけたメタルバードに向かって突進し、鋭い牙で噛み付こうとしてくる。が、メタルバードは自分に噛み付こうとする変異ラプターの牙を鋼鉄化した腕で掴み押さえ、変異ラプターの動きを強引に取り押さえる。その間も変異ラプターは無我夢中でメタルバードに噛み付こうともがくが、メタルバードは変異ラプターの口から飛散した微量の体液を肩に浴びながらも渾身の力で押し返す。
変異ラプターを押し返したメタルバードは、自分の肩に付着した変異ラプターの口から飛び散った体液に目を向けてみると、瞬時に機械に変化させた眼球でその体液の正体を判別する。
「コイツは……! みんな気を付けろ! 変異したラプターの口から垂れているのは、おそらくウィルスで変異しちまった奴の胃液だ! 服はもちろん肉も溶かす強力な酸だ、注意しろ!」
なんと先ほど蛇崩乃音に吐出し、今は変異したラプターの口から垂れ出ている体液は、ウィルスで急速に服や肉も瞬時に溶かす事ができる強力な酸に変化してしまったラプターの胃酸だったのだ。
先ほど変異ラプターから胃酸を吐き掛けられた蛇崩乃音は運よく極制服の肩の一部分だけが溶けて消失してしまっただけで本体は無事であった。一方のメタルバードは、彼自身が人間の科学力でも作り出す事ができない高度な金属に体全身が同化しているため全くの無傷である。
そして先ほどメタルバードに蹴られた変異ラプターは助走をつけて再び翼を広げて飛び上がった。
「グアーー、グアーーーーッ」
声を上げながら翼を激しく羽ばたかせて飛び上がる変異ラプターは、全速力で一行の頭上に向かって滑空してくる。そして皆の頭上に差し掛かると、口から例の強力な胃酸を吐き散らして皆に浴びせようとしてきた。
「危ないっ」「きゃあっ!」
思わず自分達の頭上から飛散してくる胃酸にミラーガールは瞬時にミラーバリアーを張って自身と皆を防御し、新世代型の女子達は自分達に浴びせられそうになる強力な胃酸に思わず悲鳴を上げて騒然となってしまう。
その時である。頭上から変異ラプターが口から胃酸を撒き散らしていく最中、最初の戦闘で気絶していたラプトル海賊団の一人が目を覚まして起き上がった。
「うぅ、何がどうなって……ッ? あ、あれは……お頭!?」
目覚めたラプトルが見上げると、目撃したのはウィルスで両腕が翼に変異した自分達の頭領ラプターの飛行している変わり果てた姿にラプトルは仰天する。
しかしウィルスの影響で敵味方の区別もつかなくなった変異ラプターは、あろう事が配下であるラプトルの頭上にもウィルスの影響で強力になった胃酸を吐き散らす。案の定、ラプトルの顔全体に変異ラプターの強力な胃酸が降りかかってしまった。
「な、なんだこれは……あ、アヅ、アヅい、アヅイ……ギャアアアァァ…………!!」
突如自分の顔に浴びた胃酸にラプトルは一時困惑したが、胃酸の焼ける様な熱さを感じ、もがき苦しみ出す。そしてそのまま床に倒れ、その顔は胃酸で肉が溶けた白い骨が浮き彫りとなった風体でラプトルは息絶えてしまう。
「……………………」
胃酸で顔の一部が白骨化したラプトルの死様に新世代型達は一同に蒼褪め、言葉を失くす。
その一方で配下のラプトルを己の胃酸で死に至らした変異ラプターは、悠然と床を度々跳躍しつつ両翼を羽ばたかせて大将を始めとする戦線の者たちに敵意を向け続けてた。
「ッ、もう敵味方の区別も無くなっちまったかラプター……!」
自分の部下までも巻き込む始末を見せるラプターの変わり様に、大将は表情を歪ませて激情する。
その間も変異ラプターは皆の周囲を時おり跳躍しながら駆け回り、同時に口から胃酸を吐き散らして攻撃仕掛けてくる。
「アッコ、バリアーだ!」
メタルバードはミラーガールに盾からバリアーを発生させて、胃酸から皆を護るよう指示を出していく。
そしてミラーガールのバリアーで変異ラプターの胃酸を防ぎながら、遠距離からの狙撃で変異ラプターを攻撃する面々。
銃撃や射撃を受けて変異ラプターの動きは少しずつ鈍くなっていき、時おり床に降りて動きを止めた所を集中砲火して変異ラプターを追い詰めていく一行。
「グアアアア……」
銃撃を一身に受ける変異ラプターは時おり苦痛でなのか呻き声を上げる。
激しい遠距離攻撃を変異ラプターに浴びせ続ける。
すると突如として変異ラプターの様子が一変。体を小刻みに震わせ、口から大量の血を吐き出す。
そして徐々に変異ラプターの全身は変化していき、首から下が後ろ脚を僅かに残して巨大な肉塊に近い姿に変貌してしまった。
肉塊の頂点に頭だけを残すラプターの巨体に皆が視線を上げると、肉塊の頂に聳えるラプターの頭が奇怪な鳴き声を発する。
「グオオオオオオォォォ……」
次の瞬間、肉塊ラプターの変貌した体から紫色の煙が大量に噴出し始めた。
「こ、この煙は……!」
「まさか、毒ガス、いやウィルスか? ミラーガール! バリアーで完全防備!」
突然床一面に広がる煙に驚き戸惑う大将とメタルバード。そしてメタルバードは噴出する煙が毒ガスかウィルスかと思い、スグにミラーガールに自分達の周囲をバリアーで覆い、空気を遮断するよう指示する。
メタルバードに言われるがままミラーガールがバリアーで自分を含めた皆々を囲み、煙を遮断してみせる。
すると煙は、先ほどの戦闘で倒されたラプトル達に覆い被さり、点在するラプトル達は完全に煙で隠れてしまう。
しかし倒れているラプトル達は元より床一面に広く拡散していた煙はスグに消えていき、辺りは何事も無かったかのように静寂に包まれる。
周辺を包んでいた煙が前触れもなく消えた事態に困惑する一同。ミラーガールも煙が完全に消滅したのを確認し、バリアーを解除して他の皆と同様に周辺を隈なく見渡してみるがやはり何事も無い様に感じた。
が、その時である。
「……ウゥ……」
突如倒れていたラプトル達が続々と起き上がった。
「くそっ、こんな時に」
変異したラプターの相手だけでも苦戦している戦況の中、更に拍車をかけるかの如く起き上がり始めたラプターの配下であるラプトルの恐竜人達を前に動揺する大将たち。
しかし続々と起き上がるラプトル達の様子が何処か可笑しかった。ラプトル達から生気が感じられず、躍動感が全くなかったのだ。皆が起き上がるラプトル達に目を向けていると、目に飛び込んできたラプトル達の姿に全員が愕然とした。
なんと起き上がったラプトル達が全員、褐色のいい肌色から一変、血の気が微塵も感じられない蒼白とした顔色に豹変し、眼は白く血色を失い、身体の所々も腐敗した何とも悍ましい容姿に変貌してしまってた。
「ヒィッ、な、なんだよアレ!!?」
醜態な容姿に一変してしまったラプトル達を目の当たりにして顔を引き攣らせる燃堂力ら新世代型たち。そんな彼らと同様に腐敗した容姿に一変したラプトルを目撃して激しく動揺する聖龍隊と赤塚組、するとメタルバードが腐敗した容姿に一変したラプトル達を見て確信を得た。
「ま、間違いない。さっきラプターから放出された煙、あれはやっぱウィルスだったんだ! ラプトル共はウィルスに感染してゾンビ化しちまったんだッ」
「えぇ!」
メタルバードの見解を聞いて仰天するミラーガール。
その間も、肉塊へと変異したラプターとそのラプターが放出したウィルスによってゾンビ化したラプトル達が迫ってきた。
「ウオオォォォ……」
白い生気のない眼、そして爛れた肉体で接近するラプトル達を先頭に、その後ろから肉塊ラプターも変貌した巨体で近づいてくる。
「ッ……こうなったら気が進まねぇが、ゾンビ化したラプトル達を撃破しながらラプターも始末するしかねェ!」
目の前の状況に、メタルバードは兼ねてよりウィルスで変異してしまったラプターはもちろんゾンビとなってしまったラプトル達も完全に絶命させるしか手立てがないと悟り、皆に言い放つ。
そして聖龍隊と赤塚組はまず、迫りくるゾンビラプトルを一体ずつ迎撃して片付けていく。
「グアッ……」「ギャウ……」
攻撃され力なく倒れていくゾンビラプトル達。すると各自ゾンビラプトルを迎撃していく中、ゾンビラプトル達の後方から攻撃側に近づいてくる肉塊ラプターの、やや長方形状の肉塊の向かって上左角から触手が伸びてきて一行に振り付けられてきた。
「きゃっ」
伸びてきた触手は運悪く一番端に控えていた薙切えりなに振り付けられ、更に彼女の衣服の左部分が切り裂かれ、えりなの肩は僅かながらに切傷されてしまった。
振り付けられた触手に切り裂かれたえりなは驚いた拍子に危うく転びそうになるが、そこを大将が咄嗟に倒れるえりなを片腕で受け止めて声をかける。
「おっと危ねェ。タクッ、女の柔肌になんて事をしやがるんだ」
えりなを片腕で受け止めつつ、そのえりなを触手で切り付けた行為に立腹する大将。
皆が肉塊ラプターに目を凝らしてみると、肉塊ラプターが伸ばしてきた触手の先端は鋭利な鉤爪。そう、触手はラプターの前足が変異したものだった。
そんな肉を簡単に切り裂く事も出来る鋭利な鉤爪の前足が変形した触手を、肉塊ラプターは振り回し前方の一団を切り付けようと伸ばしてくる。
鉤爪付きの触手を寸前のところで身を屈んで回避する聖龍隊と赤塚組。そして大将たち赤塚組は触手からの攻撃を回避すると即座に反撃に転じ、肉塊ラプターに向けて銃火器を乱射していく。
「グオオオオ……」
肉の塊と化した体に銃撃を浴びせられる肉塊ラプターは苦痛により絶叫する。
すると此処で肉塊となったラプターに変化が見られた。肉の塊の頂上に位置してる元のラプターの原形が完全に残っている頭部その口が微かに動いた。
「……た、たす……」「!?」
僅かな名残の頭部の口から微かに聞こえる声に、皆は驚きつつ耳を傾けた。すると
「た…………たずげ……たすげで、ぐれ……!」「!!」
なんとラプターは肉体をウィルスで変異しながらも、僅かながらに自我が残っていたのだ。
「だズゲ……ウゥ……ぐるジ…………」
流石の屈強な恐竜人でも、ウィルスに体を支配され、変異していく際の苦痛には耐え難かったのであろう。
誰もがウィルスで肉体が変異する苦痛に苛まれるラプターを見て蒼然としていた、その時。更なる変化がラプターを襲う。
「ウッ、ウゥ…………!」
次の瞬間、肉塊のラプターの僅かに残っていた頭部が本体の肉塊に引きずり込まれるように内部へと沈んでしまい、それに続いて今度は真正面の肉塊部分が不気味に蠢き始めた。
「ッ!?」怪しく蠢く肉塊に一同は驚愕する。
すると怪しく蠢く肉塊の部分から、巨大な人の顔の様なものが浮き上がったのだ。肉塊から浮かび上がった人面は眼球こそないが、完全に目と鼻と口といった顔の特徴が見て取れた。しかも、その人面の顔立ちを一同は凝視してみると更なる驚愕の事実に皆気付く。
「! ……修司?」
なんと肉塊から浮かび上がり、表れた人面の顔立ちが小田原修司と酷似していたのだ。これには小田原修司の旧友である大将はもちろん、同期のHEADに聖龍隊そして新世代型達も愕然とした。
肉塊から浮かび表れたその人面に誰もが慄く半面、人面は不気味な唸り声を高々と上げる。
「ウオオオオオオオオオオォォォォォォ…………」
鼓膜にこだまする不気味な唸り声に誰もが思わず動きを止めてしまう中、大将だけが前へと飛び出す。
「チッ、胸クソ悪ィ」
旧友である小田原修司と顔立ちが酷似している人面に複雑な感情を覚えた大将は、強力な銃火器で肉塊に浮かび上がった人面を攻撃しようと武器を構えた。
しかし次の瞬間。人面の口から何本もの細い触手が無数に飛び出し、前方の銃を構える大将に絡み付いた。
「う、うわ!」「大将!」
無数の触手に体中を絡み付かれて身動きが取れなくなってしまう大将に仲間達は急いで駆け付ける。
だが皆で大将に絡み付いた触手を引き剥がそうとするが、触手は縦横無尽に大将の体に巻き付いてしまって簡単に解けなかった。皆がもたついている間にも、触手に捕らえられた大将は少しずつ肉塊ラプターに浮かび上がった人面へと引き摺られていく。
大将や皆が触手を解こうと必死にあっていると、その時、現状に焦りを覚えたセーラージュピターが言い放った。
「みんな、退いてっ」
ジュピターは大将の周りにいる仲間を一通り退かすと、大将に絡み付く触手を掴み、強力な電撃を放流した。
電撃は触手を伝い本体の肉塊にまで流れ、肉塊ラプターの体からは黒い煙が上がる。すると大将に巻き付いていた触手が自然と離れ、大将は触手より解放された。
「おっ、やっと自由か」
大将は自身の体に強く巻き付いていた触手が離れていくのを見て、若干ながらも安堵する。
そして先ほどまで大将に絡み付いていた触手を放出した肉塊ラプターに浮かび上がる人面の口に、赤塚組がここぞとばかりに強力な砲撃を集中砲火していく。
激しい爆炎が人面の口内を中心に肉塊ラプターを包み込む。
更にそこへ追い打ちをかける様にセーラーマーズや獅堂光といった炎系の聖龍隊士が肉塊ラプターに烈火の如き炎を浴びせて迫撃していく。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ…………」
激しい炎に包まれる肉塊ラプターは苦しみ奇声にも近い唸り声で叫ぶ。
すると炎に包まれる巨大な肉塊の上に位置する原形を留めたラプターの頭部がぼとりと床に落ちた。皆が注目してみると、床に落下したのは頭だけでなくウィルスの影響で酷く変形してしまっているが限りなく元のラプターに近い姿だった。
頭部はそのまま原形を留めているが、首から下の肉体は完全にウィルスによる変異を繰り返した挙句、肉塊にも飲み込まれてしまった為か原形は全く残っておらず見るも無残な姿へと変わり果ててしまっていた。
「ウウゥ……」
首から下にかけての肉体をほぼ失い、苦しみに満ちた唸り声を発するラプターに大将が歩み寄り顔を見下ろす。
上から見下ろす大将の視線に気づいたのか、ラプターは僅かに残っている自我で大将を睨み返す。一方の大将は最早、絶命するしか道がないラプターの強い意志を感じる眼力を黙然と見詰めた。
そして大将は皆の視線が自分とラプターに集まる中、かつて命を賭け合って死闘を繰り広げた宿敵ラプターの苦しむ姿を見兼ねた大将は、無言で拳銃をラプターに向けると有無を言わず連続で3発ほど頭部に撃ち込んだ。
「!」
有無も言わず、無言で死にかけているラプターに銃弾を撃ち込む大将を見て驚愕する一同。
しかし皆の反応を尻目に、大将は拳銃を仕舞うと完全に死に絶えたラプターに向かって一言。
「テメェと、こんな形で
長きに渡り死闘を繰り広げてきた宿敵ラプター。彼が最後の最後でウィルスに頼り、その挙句に自滅してしまった結末に大将は心なしか残念でならなかった。そして最後の情けとして、責めて苦しまずにとラプターを撃ち抜いて絶命させたのだ。
大将のそんな宿敵への複雑な心境を新世代型たちは共有感知で周知する。
そしてラプターにとどめの実弾を撃ち込んだ大将は一抹の迷いも感じさせない険しい顔つきでラプターの亡骸を背に振り返り、そそくさと歩み出す。
「行くぜ。もう決着は付いた。長居は無用だ」
宿敵をこの手で殺めた大将は険しい面持ちで皆に言いながら先への進行を促す。
大将の強い意志を汲み取り、メタルバードも皆に前進するよう推奨した。
「……そうだな。もう留まる理由も無いし、みんな先に進もう」
大将の心意を察してかメタルバード本人も何処か虚しさを感じる険しい表情で前進を促す。
そして大将の心情を汲み取りつつ、皆はその場から去った。
大将たち赤塚組と長きに渡り死闘を展開してきた誇り高き屈強のラプトル海賊団の最後を胸中に留めて。
残忍であったとはいえ、人間という種族よりも屈強である事を誇りにし信念にしていたラプトル海賊団と悲惨な決着を付けた大将と赤塚組の複雑な心境を、聖龍隊は秘かに汲み取り、新世代型達は共有感知で自然とその胸の辛辣な想いを感じ入ってしまうのだった。
皆が立ち去ったエリアには、ゾンビと化したラプトル海賊団のメンバーとその頭領ラプターの亡骸だけがひっそりと残るのだった。
[門番メカニロイドが守りし9の門]
ラプトル海賊団との激闘を乗り越え、一行は海賊団頭領ラプターの悲惨な最後を目撃した複雑な心境で歩を進ませる。
「……………………………………」
「……あ、あの。大将さん?」
「んっ? なんだ」
一人険しい顔つきで黙然と先頭を突き進む大将の只ならぬ様子に新世代型の真鍋義弘が問い掛ける。
「い、いや。何だか、さっき倒したラプターの事で色々と思っているのかなぁって……」
「あ、ああ……そういや、お前さん達は共有感知とかいうので分かっちまうんだったな」
大将は真鍋たち新世代型が共有感知を通して自分の様な常人の思考を自然と周知してしまう事を理解して、己の真情を語り明かした。
「いやな、アイツらとは確かに長い間色々とあったんだが……まさか最後の決着があんな形で終わっちまうだなんて思ってなくてな」
己の胸中を語ってくれる大将の話を、新世代型達は脳裏に刻んでいった。
「アイツは確かに人命を何の躊躇もなく惨殺するほどの連中だった。だけど、それでも恐竜人としては大層なプライドと信念を持っていた奴らでもあった。だからこそ俺たち人間の事を見下していた訳だけど、それでも腕っぷしや立ち振る舞いは評価に値していた……だから、ほんとに残念でならねぇ」
交わる事は無かったとはいえ、長きに渡り死闘を続けてきた宿敵の最後と死に、大将は非情に残念そうに寂しそうな顔を浮かべた。そんな大将の思想を琴浦/斉木のテレパスを介して共有感知で感じ取った新世代型達は自然と語り出した。
「……そっか。大将さん達はラプターたち海賊団と、今まで死闘を繰り広げてきただけに、それ相応の敵対関係を築いていたって訳か」
「へぇ~~、なんだかバトル物によくあるライバル的な関係だったんすね、大将さん達は。ライバルと言ったら、大将さんにとっては小田原修司かなってずっと思ってたわ。小説でも昔から修司さんと大将さんって対照的で、結構ひがみ合っている様に思えたんだけど」
長いライバル関係ゆえに相応の敵対関係をラプター達との間に築いたのだと唱える瀬名アラタに続いて、燃堂力は自らも兼ねてより拝読した小田原修司の自伝小説の内容から大将のライバル的立ち位置は修司と思っていた事を述べた。
これに大将は険しい表情を緩めて、旧友である小田原修司との間柄を快く語り返した。
「はは、確かに修司とは昔から色々とぶつかっていた懐かしい日々もあった。だけど今じゃ渡り合おうなんて気にもしてねぇ……アイツの志は、荒くれ者の俺なんかが一生かかっても発起する事もできねェ程でっけェモンだったしな」
この大将の言葉に新世代型達は、聖龍隊だけでなく二次元人の主人公達とも引けを取らない強さゆえに鬼神とまで呼ばれた小田原修司の志とはどんなものか、強く関心を惹かれた。
先ほどラプターが言った地下5階の言葉を頼りに皆が進んでいくと、上へと通じる階段が視界に入る。全員その地上へと通じているかもしれない階段を駆け上がる。
「こ、ここ上り切ったら出られるんですよね? 地上に抜けられるんですよね!?」
「俺もそうあってほしいよ!」
必死に階段を駆け上がっていきながら、ようやく地下の研究施設から地上に抜け出られるかと訊ねる真鍋義久の問い掛けに答え返すメタルバード。
階段を上る一行の構成は、最後列にニュー・スターズの面々が後方の安全を確保し、その前を新世代型達が走り、彼らの前をHEADと赤塚組が新世代型達を警護し階段を上へと前進していく。
そして一行の最前列を駆け進むのは、若々しい体力を持て余す【SAO】と【AW】と【マギカ】組の面々であった。彼らは余裕綽々で階段を駆け上り、誰よりも前進していた。
「ハァ、ハァ……お、お前ら、ちょっと待ってくれよ」
体力が切れ、各々が膝に手を付き、階段の手すりに我が身を委ねてしまう赤塚組の大将が息を切らしながら先頭を突き進む三組に一時制止を促す。すると先頭の三組は進行を停止し、後方の息切れする赤塚組に振り返る。
「まったく、階段を駆け上るだけで息切れだなんて……これだから年配者は」
この暁美ほむらの一言に、息切れしてた赤塚組は血相を変えて大将が反論した。
「オイッ! 今の聞き捨てなんねェぞ! 確かに俺たちゃ年食っちまっているが、それ以前にテメェらの体力がマジ半端ねェだけだろうが!!」
この大将の反論にシアン・パイルが平然と語り始める。
「まあまあ、赤塚組の皆さんはHEADと同じ世代で、しかも普通の二次元人。体力も劣ってしまっているんです。無理させるのはやめましょう」
このシアン・パイルの発言に大将たち赤塚組は血相を変えて更に反発する。
「オイッ! 劣っているって要するに年寄りって事か! しかも常人って、俺達が非能力者だから余計に劣っているって言いてぇのか!?」
剣幕を立てて怒鳴る大将と同じく、パイルの発言に反感を抱いたセーラーヴィーナスがこれまた物凄い形相で反論。
「ちょっと! 同じ世代って、私達も一緒にしないでよ! 確かに年代とか同じだけど」
いくら年を食っていようと日ごろから荒くれ者を従えて世界中の悪漢共をなぎ倒していく赤塚組、そんな赤塚組と同年代で能力者のHEADの女性たち。全員が自分達の歳の事を指摘され立腹してしまう。
そんな立腹する年上の人たちに睨まれ戸惑うシアン・パイル。だが立腹する同期を前に、メタルバードが呆れ果てながら癇癪立てる面子に言う。
「……お前ら。そんな年の事で色々と揉めんじゃねぇよ。そもそも俺たち二次元人が自分らの歳の事で論争したって埒が明かねぇだろうが」
呆れた物言いで語るメタルバードの言う通り。二次元人の多くは三次元人とは肉体の老化の速度が異なり、常日頃から激しい戦闘や鍛錬を行っている聖龍HEADや赤塚組に至っては未だ若々しい容姿なのである。
そんなこんなで思わず立腹してしまった同期を宥めつつ、メタルバードは皆々の前進を誘導していった。
階段を上り続けていくと、階段が終わった所で左側に抜けられる道が視界に入った事から先頭の三組はその方角に突き進む。
残りの面々も、先を進む三組の後を追って進行してみると其処は巨大な円形状のホールであった。ホールには不自然に九つの墓標の様な小さなモニュメントが円を成していて、その中央に何らかの文字が刻まれている同サイズの石碑が聳えていた。
「何なんだ、此処は?」
今までとは雰囲気の違う異質な広間に、大将を始めとする多くの者たちが目を丸くして唖然としてしまう。
全員が異様な機械的な風景を見渡している最中、一行の先頭を進んでいた三組メンバー、アスナとブラック・ロータスが広間の中央に聳え立つ文字が刻まれた石碑に歩む。
「これ、なんだろう……」「………………」
アスナとブラック・ロータスが石碑の文字を拝読しようと近付いていく。
が、その時。
「うわぁ!」「っ!」
二人が石碑に近付いて字を読もうとした矢先、頭上から突如として巨大な何かが二人の前に落下。巨大な物体が着地した際の衝撃にアスナもブラック・ロータスも驚き慄く。
「こ、コイツは……!」
目の前に聳え立つ巨大な物体を見上げてみると、それは4本足の赤をメインとした人の3倍もの大きさもある蟹の姿を模した巨大ロボット。
蟹のロボットは2本の螯を模したアームを皆の眼前に振り下ろす。
「わッ!」
自分達の目の前に振り下ろされる、人一人が十分に挟める螯に驚愕し思わず腰を抜かしてしまうキリト。
すると突如として目の前に現れた蟹の巨大ロボットを目の当たりにしたメタルバードが言い放った。
「め、メカニロイド!」
メタルバードの発言に大将が問い返す。
「お、おい! メカニロイドって確か、よく重工業とか、時には戦闘用としても重宝されている重機型ロボットの?」
メカニロイドとは、土木作業や建築はたまた瓦礫撤去などの大規模な作業に用いられる簡潔なプログラムで自動できる大型ロボット重機である。そして今、皆の目の前に立ちはだかるのは蟹を模したメカニロイド。
皆が突如として出現したメカニロイドに騒然としていると、メカニロイドは右側の巨大な螯型のアームで前線の者たちに向けて攻撃してきた。
「わっ!」
巨大な螯の直撃を避けたものの、その衝撃で慌てふためいてしまう一同。
更にメカニロイドは鉄骨といった重量の物体を軽々と掴んで持ち上げられる螯を開いて、足元の人々を捕まえようとする。
「ひぃッ!」
メカニロイドの猛攻に必死になって逃げ惑う新世代型達。
「みんな気を付けろ! コイツは相手を捕まえて、身動きを取れなくさせるタイプのメカニロイドだ!」
メタルバードはメカニロイドの攻撃行動を皆に伝えつつ、次に聖龍隊の面々にメカニロイドへの反撃を命ずる。
「全員、メカニロイドの攻撃に注意しながら反撃開始!」
命令の下、聖龍隊は猛威を振るうメカニロイドに向けて反撃していった。
しかしメカニロイドは、モノを掴む螯状の両腕だけでなく、4本ある内の前足その胴部と接合している細い脚部を下から支える太く赤い部位の水晶部分からエネルギーによる光球を発射し、前方の聖龍隊に向けて撃ってきた。
赤い脚の部位の水晶から放たれる光球をかわし、聖龍隊は攻撃を惜しまず続行する。
「弱点は4本の脚に支えられている胴体だ! 全員、胴体に攻撃を集中させろッ」
メカニロイドの弱点が蟹の甲羅の様な胴体部分であると皆に言うメタルバードは、伝えながらも同時に弱点である胴体に向けて攻撃し続ける。
聖龍隊の苛烈な攻撃が効いたのか、メカニロイドは自身の正面に備えられている螯状のアームで前方の聖龍隊を捕らえようとする前に、怯んだ様に体勢を崩してその場で動かなくなる。
しかしメカニロイドはスグに体勢を立て直し、今度はなんと螯状のアーム部分を離脱させ、遠隔操作で戦前の聖龍隊を螯部位で捕らえようとしてきた。
「伏せてッ」
ルーキーズ総部隊長ミラールが仲間のルーキーズに言い放つと、その瞬間にミラールは仲間に指示したのとは真逆で上へ跳び上がり、一方のルーキーズは言われた通り頭を伏せて飛来してくるメカニロイドの螯から回避した。
そして上に跳び上がったミラールは、そのまま上空で自らが着衣しているアーマーの背中に装備されているホバリングで耐空しつつ、メカニロイドの胴部と同じ位置で浮上しながら御得意の二丁拳銃で連射攻撃を撃ち続けていく。
ミラールに続けと、メカニロイドの猛攻に注意しながら剣や打撃といった接近攻撃を主体とする聖龍隊士も弱点の胴部にダメージを与えていく。
その時。接近攻撃をしてたキリトとアスナがメカニロイドの両アームに捕らえられてしまい、身動きを封じられたと同時に強力な握力と流される電撃にジワジワと苦しめられる。
「うぅ……!」「くっ……」
体力を徐々に奪われていくキリトとアスナ。と、二人がメカニロイドに捕らえられているのを助けんと、トリコが高々と跳び上がってメカニロイドの胴部を振り上げた両腕で殴り付ける。
トリコの強靭な筋力で殴り付けられたメカニロイドは、打撃による衝撃で体勢を凄まじく崩し、その拍子にアームの螯が緩みキリトとアスナを手放した。
どうにかトリコの咄嗟の攻撃で難を逃れられたキリトとアスナは、トリコに礼を言いつつ攻撃を再開する。
メカニロイドの状態を常に機械化した眼球で捉えているメタルバードは、メカニロイドの頑丈な装甲が度重なる攻撃で脆くなってきている事に着目する。
「もう少しでメカニロイドの装甲を破壊できるが……今の単体攻撃の連続じゃ破壊するのは困難だろう」
「それじゃ、どうやってあのメカニロイドを壊すってんだ?」
メカニロイドに応戦しながらメタルバードに問う大将。するとメタルバードは戦闘を続ける仲間たちに告げた。
「此処はメカニロイドに最も有効な連携攻撃……チームアタックで一気に倒す!」
メタルバードのチームアタックの言葉に、新人勢を除く聖龍隊の皆は目の色を一変させる。
そして数多の攻撃で胴部から煙を上げるメカニロイドの前線にメタルバードが飛び出すと、彼の行動に合わせて聖龍HEADも前線に飛び出し、それ以外の聖龍隊士は後方へと退き出す。
「な、何が始まるんだ……?」
突然の先輩達の行動に状況が呑み込めないシルバー・ロウを始めとする新人勢が戸惑っていると、彼らに先輩であるくだ狐使いの霊媒師 葉月いずなが新人達に呼び掛けながら駆け寄る。
「何やってるんだよ! 早く離れないと私たちも巻き込まれちまう!」
そう新人達に伝えると、いずなはシルバー・ロウの手を強引に掴み、急ぎその場から新人達を引き連れて離れていく。
「お前達も離れろ! HEADのチームアタックは俺達の比じゃねぇ! 巻き込まれたらタダじゃ済まないぞ!!」
同じくメカニロイドから遠ざかるトリコも新世代型の面々に言い聞かせながら、メカニロイドから成るだけ遠ざけていかせる。
HEAD以外の全員がメカニロイドから離れたのを確認したメタルバードは、自身と同じHEADの各隊士と息を合わせて前方のメカニロイドに向けて各々の強力な必殺技を放った。
「行くぞ」
メタルバードの一言を合図に、全員がメカニロイドに強力な攻撃技を集中砲火し、メカニロイドに大打撃を与えていく。
そしてHEAD全員の連携攻撃チームアタックを喰らったメカニロイドは爆発を起こし、遂には跡形もなく消え失せた。
『………………………………………………』
HEAD全員による連携攻撃の凄まじさと驚異的な威力を目の当たりにし、大将を始めとする赤塚組はもちろん新世代型達も唖然と立ち尽くしてしまう。
クラブ(蟹)型メカニロイドを撃破した聖龍隊。大破したメカニロイドのボディには名称が記されており、襲ってきたメカニロイドは通称クラブズ-γと呼ばれる機種であった。
そして状況が落ち着き始めた頃、皆は再び今自分達がいる広間と複数の置物に目を向けてみた。
更に先ほどのクラブズ-γの急襲により拝読できなかった中央の石碑の文字を改めて接見して読んでみると、そこには以下の文章が刻まれていた。
この場に記録されし、9つの新たなる時代を築くべきであった魂 その魂らの源にして全ての強靭かつ狂気の意思
先を進みたければ9つの葬られし魂を打ち倒し、全ての根源たる暗黒の者を撃破するべし
中央の石碑に刻まれた謎の文章に、全員が困惑する。
一方でメタルバードはサイボーグ化した眼球で周辺を隈なく見渡して、広間を念入りに調べてみた。すると
「……マジかよ。此処はでっけェ疑似体感装置の部屋じゃねえか」
「ぎ、疑似体感?」
メタルバードの発した聞き慣れない言葉に呆気に取られる真鍋義久。メタルバードは彼の疑問に率直に答え返した。
「特殊な空調や立体映像すなわちホログラムを駆使して、空間の環境を疑似的とはいえ変えて体感できる装置を施された部屋の事だ。俺たち聖龍隊も基地では、この装置を組み込んだ訓練部屋を利用して様々な環境下での活動や戦闘、更には今まで戦ってきた敵のデータからその敵の姿を具現化して闘わせる鍛錬も行ってきたから、馴染みあるんだよ」
メタルバードより語られた最新の疑似体感装置による疑似的な環境の変化と立体映像を基にした過去の犯罪者や敵キャラの具現化による鍛錬を知って、真鍋は高度な技術による装置の凄さと聖龍隊が日頃から行っている鍛錬の一部に驚きを隠せなかった。
と、その時。円に形成されている9つのモニュメントを興味本位で凝視していた新世代型が何かに気付いた。
「この絵みたいなのは何だろう……」
「どのモニュメントにも、色んな象形文字みたな絵が彫られてる」
全てのモニュメントに必ず見受けられる小さな絵文字にも捉えられる絵を見て、不思議そうな顔をする新世代型の小野田坂道と瀬名アラタ。
すると此処でモニュメントを物珍しく接見していた瀬名アラタが、間近で観察してたモニュメントの一つに見受けられる蟻の絵を触覚で更に確認しようと指で絵をなぞった次の瞬間、広間全体が発光し出した。
「な、なにが起こった!?」
「え! なんかマズいのに触っちまった?」
突如として光り出す広間全域に戸惑うメタルバードに対し、自分が蟻の絵に触れた途端に広間が光り出した現状に激しく動揺してしまうアラタ。
すると今度は先ほどアラタが触れてしまった蟻の絵が記されたモニュメントが動き出し、床の中に収納されていく。そしてモニュメントと入れ替わりで床の中から何かが出現する。
全員がモニュメントと入れ替わりで床から出てきた物体に目を向けてみると、なんとそれは一体の人型の機械人形だった。しかもそれは、先刻皆々が目撃したあのロボットであった。
「く、クローンロイド!」「なにッ!」
ロボットを見て叫ぶメタルバードの言葉に続き、大将も皆も愕然とした。
人型の生物の遺伝子情報を組み込む事で、容姿はもちろん能力なども大半が使用できる人型ロボット。恐るべき事に姿形だけでなく、能力や技そして戦闘スタイルまでも復元し、再現する事が可能な高性能のロボットなのである。
そして全員の目の前にクローンロイドが現れた次の瞬間、広間の風景までもが変貌した。
[未来を探求する科学者]
広間が突如として不思議な機械的な、先ほどの広間よりも格段に狭くなっている殺風景な間取りのフロアに一変。
変貌した空間に皆が戸惑っていると、メタルバードが皆の動揺を落ち着かせるため言い聞かせた。
「慌てるな。疑似体感装置が作動して、部屋の見た目と空間が一時的にホログラムとかで一変しただけだ」
装置の影響で広間の空調や風景が豹変した事を皆に説明するメタルバード。
だがメタルバードが皆を落ち着かせてた、その時。全員の前方、その上方に突如として空間から黒紫色の正六面体が出現。
空中に現れた正六面体のブロックは真下に落下し、皆が目を向けていると床に落下したブロックが綺麗に8つに砕け散り、ブロックの中から何者かが姿を見せた。
ブロックから出てきた存在に皆は驚いた。それは蟻の姿を模した獣人型二次元人だったからだ。
蟻の二次元人を初見する新世代型や赤塚組の面々と違い、HEADを始めとする新人ではない聖龍隊の面々は蟻の二次元人を目の当たりにして驚愕した。
「お、お前は……アントニオン!」「あ、アントニオ……猪木?」
驚くメタルバードの発した名に、大将がふざけ半分で反応する。しかしメタルバードは大将のおふざけ発言に動じる事無く、険しい表情で目の前の蟻の二次元人について語った。
「グラビテイト・アントニオン……過去に俺達が倒した筈の…………
「なにッ!?」
メタルバードの言葉を聞いて、真鍋義久を始めとする新世代型達と聖龍隊の新人達は一驚する。
更に思い出したかのように、プロト世代の海道ジンが自分達の目の前にいるアントニオンについて語り始めた。
「ぐ、グラビテイト・アントニオン。聞いた事がある……! 反重力研究所「プリムローズ」の設備コントロールの為に、知能が強化されているだけでなく重力までも自在に操作できる能力までも備えられた……新世代型二次元人!」
「え!」
ジンの説明に琴浦春香といった新世代型達は激しく動揺してしまう。それにキング・エンディミオンがジンの話を付け足す形で詳しい事情を険しい表情で語り明かす。
「そうだ。例の軌道エレベーター占拠事件、その際に軌道エレベーター稼働とそれに伴う新技術を開発する施設で働いていた三次元政府が特別に生み出した新世代型二次元人の試作機……そのリーダー格の一人だ!」
2013年2月に勃発した軌道エレベーター:ヤコブの管理官ルミネと同様にエレベーターの稼働と新技術確立の為に生み出された試作の新世代型二次元人。軌道エレベーターが占拠された事件の折、全員が
と、皆が目の前に現れた試作の新世代型二次元人グラビテイト・アントニオンに動揺している最中、何ゆえ反乱を起こし三次元人に牙を向けた旧新世代型のグラビテイト・アントニオンにプロト世代の海道ジンが試しに質問をぶつけてみた。
「優秀な二次元人だったというのに……なんで
すると海道ジンの質問に、目の前に現れたアントニオンは丁寧かつ穏やかな口調で答えた。
「優秀?
丁寧ながらも何処か相手を蔑む物言いのアントニオンの答えに、ジンは臆する事無く変わらない態度でアントニオンに物申した。
「成程、確かに。ですが……罪も無い人々を危険に晒そうとした以上、あなたは紛れもない
いかに優秀であろうと罪なき人々を危険に晒した行為は紛れもない
「
次の瞬間、グラビテイト・アントニオンは目の前にいる全員を攻撃対象として捉え、敵意を向けてきた。
新世代の蟻型二次元人のグラビテイト・アントニオンはかつて反重力研究所「プリムローズ」の主任研究員だった。設備のコントロールのためにAIが強化された頭脳明晰の芸術家肌。非常に理知的で神経質、会話も丁寧。しかし丁寧で穏やかな物腰の中に相手を蔑む態度が見られ、自分の目的の邪魔となる存在は排除が当然だと思っている。周りの評価を気にもせず自らの探究心と自己満足を優先する典型的なマッドサイエンティスト。
そんなグラビテイト・アントニオンが両手を掲げる動作を取ると、一行の頭上に重力の塊を発生させてブロックを作り出し、皆の頭上目がけて落としてきた。
「避けろーーッ!」
頭上から落下するブロックにメタルバードが全員に向けて呼び掛けると、皆は一目散にブロックが落下する場所から避難する。
「わ、あわわわわわわ……」
危うくブロックに押し潰されそうになった真鍋義久は、腰を抜かして落下したブロックの直前で座り込んでしまう。
だが皆が自分達の頭上から落ちてきたブロックの回避に安堵を覚えてた一方、アントニオンはそそくさとブロックが落下したのとは反対の壁に向かって歩み、そのまま垂直の壁を平然と足を張り付けて移動していた。
「か、壁を上っていやがる!」
難なく垂直の壁を移動できるアントニオンに驚愕する大将や新世代型達に、メタルバードがアントニオンの攻撃に備えた体制で説明した。
「アイツは蟻をモデルに生み出された二次元人! 蟻と同様に垂直の壁はもちろん天井にだってお構いなしに張り付いて移動できちまうんだ」
一方のアントニオンはメタルバードの説明の通り、天井にも張り付いて移動すると再び地上の皆々に向けて攻撃を仕掛けようとするのが目に見えた。
「クソッ、攻撃される前に落としてやる!」
キリト達、旧新世代型とは戦った経験のない聖龍隊の新人達が天井に張り付いているアントニオンに向けて攻撃を放とうとした瞬間、地上の新人達の攻撃に気が付いたアントニオンが先に仕掛けてきた。
「スクイーズボム」
すると皆がいるフロアの中央に巨大な暗黒の塊が発生。アントニオンに向けて斬撃や銃撃を放った新人達の攻撃は悉く黒い塊に吸い込まれ効力を発揮できなかった。
「こ、攻撃が吸い込まれる!」
謎の黒い塊に自分達の攻撃が全て吸い込まれる現状に、酷く戸惑うクライン達。戸惑う新人達にメタルバードが技を吸収した黒い球体の詳細を語った。
「アレは巨大な重力の球体だ! 俺達には全くの無害だが、こっちの攻撃は全て吸収しちまう。斬撃波や銃撃といった遠距離系での技は無意味だ!」
接近戦以外の技なら全て吸収して無力化してしまう重力の球体スクイーズボムの前では、いかなる狙撃も銃撃も意味を成さない。
するとアントニオンはスクイーズボムで狙撃系の攻撃をすべて無効にすると天井に張り付いたまま再び空間に重力を発生させてブロックを作り出すとそれを皆々の頭上目がけて落としていく。
「わぁ! またかよッ」
再び頭上から落下してくるブロックに慌てて逃げ惑う大将たち。だがアントニオンは先ほどと違い今度は無数の重力を発生させていくつものブロックを作り出しては次々に逃げ惑う皆の頭上に落としていく。
「わーー!」「きゃあっ!」
続々と頭上に落とされるブロックから必死になって逃げ惑う新世代型達。一方の聖龍隊も逃げ惑う新世代型達を護りながら落ちてくるブロックを回避していく。
フロア一帯に無数のブロックが残る中、ようやくブロックの落下が止み、皆が一息入れていたその時。皆の安堵を嘲笑うかのようにアントニオンが己の能力を発動させる。
「はぁーーーーーー……」
アントニオンが手を上へと掲げると皆が立っているフロアの重力が突如として変動し、何と上下の重力が反転してしまった。
「うわぁ!!」
床と天井の重力が反転し、全員が天井だった真下へと容赦なく急落してしまう。だが誰よりも真下に早く着地した聖龍隊のベテラン隊士達が、急落する新世代型達を次々に受け止めては安全に着地させていく。しかし新世代型の中でも身軽な纏流子や栗山未来などの運動神経が抜群の新世代型は自力で態勢を立て直して着地してみせる。が、それとは反対に聖龍隊の新人達は突然重力が反転した状況に焦ってしまい天井だった床へ体を叩き付けてしまう。
だが今度は先ほど頭上に落とされてきたブロックも重力に引かれて、再び皆の頭上へと落下してきた。
「うわーー、そうだった! 同然だけどブロックも落ちてくる訳だよなっ!」
自分たち同様に変動した重力に引かれて床に点在するブロックも続けて落下する事態に真鍋義久は絶叫してしまう。
メタルバードたち聖龍隊は半ば強引ながらも動きが俊敏でない新世代型の手を引っ張って、頭上から続々と落下してくるブロックから回避させていく。
だが余りにも落ちてくるブロックの数が多く、しかも追い打ちをかけるかのようにアントニオンが2度3度とフロアの重力を反転させて、再度ブロックを頭上から落下させ皆を下敷きにしようと図る。
「こっちに来る!」
フロアの重力を変動された為に、壁に体を打ち付けるだけでなくブロックまでも再び頭上に落下してくる事態に新世代型の神浜コウジを始め、多くの者たちが涙目で半ば混乱しながら泣き叫ぶ。
と、その時。フロアの重力変化で落下するブロックが新生代型や赤塚組の頭上に激突する寸前、聖龍HEADの獅堂光/龍咲海/鳳凰寺風/木之元桜の強力な太刀筋が落下してくるブロックを一太刀の下、叩き斬ってはブロックを砕き割って消し飛ばす。
「重力変化でブロックが何度も落下される前に、ブロックそのものを強力な斬撃で破壊するんだ! アントニオンのブロックは打撃や能力では決して破壊できねぇが、強靭な刃物で直接斬り付ければ簡単に壊せる!」
重力変化で幾度と頭上にブロックを落とされ続ける戦況に、メタルバードは打撃などの能力では破壊不可能なブロックに唯一有効な刃での攻撃を指示していく。
そして皆に刃でのブロック破壊を指示したメタルバードは、聖龍隊でも古くからの付き合いであるセーラージュピターに向かって走りながら「ジュピター! 俺でブロックを全て叩っ斬れ!!」と呼び掛けると同時に一瞬で鋼鉄の体を切れ味鋭い一本の太刀に変身して、セーラージュピターに変身した自分を握らせた。太刀に変身したメタルバードを掴んだセーラージュピターは、かなりの重量がある刃物のメタルバードを振り翳し、周囲に点在するブロックを次々に斬り付けて破壊していった。
「武器に変身した俺を悠々と扱えるのは、修司とジュピターぐらいなもんだな」
一応誰にでも扱える重量と形状に変身しているとはいえ、大型の武器に変身している自分を自在に扱えるのは怪力自慢の面子だけとメタルバードは自覚していた。
それから聖龍隊はフロアに点在するブロックを強靭な刃で悉く斬り付けて破壊し尽くす。すると全てのブロックが破壊され消滅したのを確認したメンバーで、キリトとシルバー・ロウの二人が悠々と天井から直接床に着地したグラビテイト・アントニオンを視界に捉えて斬りかかりに突っ走る。
「この蟻ヤロッ」「ハァッ!」
キリトとシルバー・クロウが斬りかかりるのをアントニオンは目の当たりするのだが、一向に慌てる様子もなく斬りかかってくる二人を蔑視したような目で捉えながら淡々と言葉を掛ける。
「考えもなしに武器を振り回して突っ込むとは……プロト世代というのは知性の欠片も見当たらない」
キリトとシルバー・クロウが分類されるプロト世代そのものを見下した発言を口にしたアントニオンがそう言うと、眼前まで迫ってきた二人に向けて口から緑色の液体を発射する。
「わっ!」「な、なんだ、コレ……!」
発射された緑の液体が体に付着した途端、その液体が体の大部分を拘束し、シルバー・クロウとキリトは身動きが取れなくなってしまう。
するとダメージを与えないが代わりに当たると体を拘束して身動きを封じる蟻酸を二人に発射したアントニオンは、両手から小さなブロックを連ねて作り出し、それを剣で斬るかの如く前方のキリトとシルバー・クロウに振り下ろして攻撃。
「うわッ」「あッ」
威力は低いものの、攻撃判定が大きく、接近しすぎていると回避が困難のアントニオンの攻撃技〈重波斬〉を頭部から真面に受けたキリトとシルバー・クロウは弾き飛ばされてしまう。
「キリト君!」「ハル!」
アントニオンの重波斬で弾き飛ばされてしまう二人を見てアスナとブラック・ロータスが呼び掛ける。
同様にアントニオンの攻撃を受けてしまったキリトとシルバー・クロウを目にして、聖龍隊での経歴が彼ら新人たちより少し上回っているミルヒオーレ・F・ビスコッティがアントニオンとの戦闘を経験してない聖龍隊の新人たちに大声で伝えた。
「気を付けて! アントニオンはブロック落としを主軸にしながら、自分への遠距離攻撃はスクイーズボムで無効化しつつ、接近してきた相手には蟻酸で身動きを封じてから重波斬で攻撃してきます!」
グラビテイト・アントニオンの戦闘スタイルを伝えていくミルヒオーレ。
一方でキリトとシルバー・ロウを重波斬で攻撃し終わったアントニオンが再び垂直の壁を上って天井からブロックを落としていく最中、その落下してくるブロックを必死に激走して回避していくメタルバードとジュピターキッドは走りながら話していた。
「そ、それにしても……なんで以前、倒したはずのアントニオンがこんな所にいるんだ?」
「ああ! あの丁寧な会話に相手を蔑視する態度、そして邪魔な存在を徹底的に排除しようとする典型的なマッドサイエンティストタイプ。完全にアントニオン本人だ!」
「それが何でまた俺達の前に立ちはだかっている訳!? このフロアは広間の疑似体感装置で変貌してるのは何となく理解できるが、あのアントニオンは……」
「あ、あれもさっき床から出て来たクローンロイドが過去に処分されたアントニオンのデータを基に変身している姿だと思うんだけど……」
「それにしちゃ能力や戦法だけでなく、相手を見下す嫌な態度や性格、口調までも複製されていやがるぜ! 普通のクローンロイドには此処まで本物に似せる機能は備わってない筈なんだが……」
「……何らかの理由で本物の性格や口調、そして思想までも完全コピーされているんだ……!」
メタルバードとジュピターキッドが話した末の推測。それは先ほど広間が変わる直前に出現したクローンロイドに、アントニオンの遺伝子情報による能力と戦法だけでなく性格や口調と言った更に詳細な情報までも組み込まれている故により本物に似ているのではないかという可能性。
すると此処で先ほどから天井よりブロックを落とし続けていたグラビテイト・アントニオンが、ブロックの発生をやめて直接地上の排除対象の面々に接近して攻めようとしていた。
「これで御終いです」
そういうとアントニオンは重波斬で眼前のシリカを攻撃しようとした、その時。
「やめろッ!」
シリカに攻撃しようとするアントニオンに新世代型の纏流子が片太刀バサミで斬りかかってきた。アントニオンは寸前で回避しては攻撃してきた流子に姿勢を向けて問い詰めた。
「なぜ、私たちと同じ新世代型の貴女が邪魔をなさるのですか?」
アントニオンの質問に流子は厳つい顔で言い返した。
「何故かって……!? そもそもアンタみたいな狂った奴と一緒にされたくねェんだが!」
如何にも不機嫌な流子の言動に、アントニオンは再び冷徹な眼差しで問い詰める。
「狂った? はは、面白い……では、君たちは狂ってないと言うんだね?」
「!?」
突然のアントニオンからの質問に、流子はもちろん他の新世代型達も一同に唖然とする。そんな絶句する新世代型達を前に、同じ新世代型のアントニオンは淡々と問い続けた。
「君たちは自分が何をするために、何のために生まれて来たのか分かっているとでも?」
このアントニオンの問い掛けに、流子はアントニオンを睨みながら答えた。
「……どっちが悪くてどっちが良いかぐらいは、分かってるつもりだ」
すると流子の受け答えを聞いたアントニオンは全てを嘲笑するかの様に高々と言い放った。
「はっはっは、私も分かってるとも……狂っているのは、この世界だ! 私達は、この世界を正すために生まれてきた高等なる種族!」
狂い異常なのは世界の方だと主張すると同時に、その世界を正すのが自分ら新生代型だと唱えるアントニオンの発言に、流子たち後続種の新生代型達は理解に耐え難かった。
そんな状況の中、理解に苦しむ悩乱の心を振り払うかの様に流子は戦意を再始動させ、それに連なる様に鬼龍院皐月も続けてアントニオンの刃を向けた。更にアントニオンの言動に酷く動揺する自分より年下の新世代型を庇う様に、栗山未来も右手から自身の血で形成した刃を出現させてアントニオンに対抗する意思を見せる。
だが、そんな抵抗する姿勢を示す新世代型の面々を目前としたアントニオンは冷然とした素振りで問い掛けつつ己の真情を語り明かした。
「あってはならないのは、この世界の方だと考えた事はないのですか? ……まあ、いい。我々の邪魔をすると言うのであれば排除するのみです」
次の瞬間、アントニオンは流子と皐月の頭上にブロックを作り出し、二人目がけてブロックを落とし始めた。
「うわッ」「くッ」
流子と皐月は頭上から落下するブロックを素早く移動して回避していくが、アントニオンは壁に張り付き上って再びブロックを今度は複数作り出して敵対心を見せる新世代型の面々に落としていく。
「お、お前達! ブロックが落ちてくる、急いで回避しろッ!」
頭上から落下されるブロックに、皐月は戦闘に加わってない新世代型の面々に急ぎ逃避するよう叫び掛けた。
落下してくるブロックから必死になって逃げ惑う新世代型。しかし逃げ惑う混乱の中、満艦飾マコが転んでしまうが、そこに容赦なくブロックが落下し、マコが下敷きになる寸前であった。
だが、その時「フンっ」満艦飾マコの頭上から落下するブロックを、極制服で完全武装した
「ぐぬぬぬ……ッ」
しかし如何に元から体力自慢で極制服で自身の身体能力を向上している
すると
振り返ってみると其処には、なんとブロックを両手で軽々と持ち上げてみるアントニオンの姿があった。
「ッ!!」
表情を微塵も変えず平然と超重量級のブロックを持ち上げてるアントニオンを目の当たりにして、
「そんなに驚く事ではないでしょう。蟻が重たいものを軽々と持ち上げられるのは常識でしょう」
相も変わらず丁寧な言葉で話すと、アントニオンはその持ち上げているブロックを眼前の
「が、蟇郡!」「に、逃げろ!」「先輩!」
皐月/流子/マコの三人が声をかけるものの、時すでにブロックは
どうする事も出来ない
「えいっ」
可愛らしい声とは裏腹に、剣で
さくらが実体化させたソード(剣)のカードでブロックを切断してみせると、破壊されたブロックは跡形もなく消えてしまった。
そして、さくらが
「そのアントニオンはおそらくクローンロイドだ! クローンロイドと言えど、弱点は本物と同じな筈だ! 以前にアントニオンと戦闘した連中は、それを思い出して戦うんだ!!」
「アントニオンの弱点は闇属性のエネルギー! これ以上、好き勝手に暴れさせるな」
クローンロイドは、その能力や戦術だけでなく弱点までも完全にコピーしてしまうのが欠点。メタルバードはその欠点を付いてアントニオンのクローンロイドを攻撃し、ジュピターキッドが弱点である属性を皆に伝える。
するとアントニオンが新世代型達に気を取られている隙をついて、ミラールが今までの猛攻で発動する暇がなかった武器の能力を使用した。
「それそれっ」
ミラールが銃をアントニオンに向けて構えた瞬間、彼女の銃が銃口が横に広い黒の形態に変化し、その銃口から漆黒の矢が次々と発射される。
「小癪なーー!」
黒い矢は放射線を描く様に発射されるとアントニオンに向かって追尾しては次々に直撃。矢を受けたアントニオンは怒りを露わにする。
一方で突如ミラールの銃が変化した現状を目の当たりにしたルーキーズの新人達は、思い切ってミラールに変化した銃について訊ねてみた。
「み、ミラール総部隊長。そ、その銃……」
不思議そうな表情でアスナが訊ねると、ミラールは変化した銃を見せ付けながら説いた。
「んっ、私のミラージュガンは私同様、変化できる特性が備わっているの。以前に初期の新世代型を倒した際、新世代型の能力に合った属性の特殊武器に変化できる様になっているから、今はアントニオンの弱点である闇属性のブラックアローが放てる武器に変化して使っている訳」
ミラールが新人達に自分のミラージュガンについて説明している最中、ミラールのブラックアローを受けて立腹したアントニオンが壁を上って天井から攻撃しようとしていた。
しかし天井に向かってアントニオンが壁を上っている道中、それに気づいた木之元桜がカードを2枚取り出して発動させる。
「シャドー(影)! ダーク(闇)!」
実体化した2つのカードは、まずシャドー(影)のカードがアントニオンの動きを封じて止めた直後、ダーク(闇)と共にアントニオンを攻撃した。
「ぐあっ」
シャドー(影)とダーク(闇)の2体がかりで攻められたアントニオンは壁からボトリと墜落してしまう。
其処に墜落したアントニオンにセーラーサターンが自身の闇属性の技を撃ち込む。アントニオンを追撃する。
「まだ行くわよっ」
そしてミラーガールが自身のコスチュームの青い部分を黒に、白かった部分が薄めの灰色へと変化させると、空中に浮上しながら両腕を伸ばして自分の周囲に複数の独特の形状の鏡を展開。その鏡からブーメラン状の黒い刃を無数に発射していくと、それが全てアントニオンを追尾し着弾する。
「な、なんだ! ミラーガールの、あの姿……それに技は?」
突如としてコスチュームを変化させて今までにない技を使用するミラーガールを目撃して驚く真鍋たち新生代型と聖龍隊の新人達。そんな彼らにメタルバードが説明する。
「アッコは本来、姿形を変える事で相手の能力を使用できるんだが。属性攻撃の場合は完全に姿形を変えなくても、若干の調整だけで使えるんだ。使用する属性攻撃に応じてコスチュームが多々変化するからよく分かる」
ミラーガールが属性攻撃を放つ際は完全に姿を変える必要がなく、その際自身が着用しているコスチュームにだけ若干の変化が見られると説明するメタルバード。
その間もミラーガールは自身の周囲に展開した複数の鏡より、ブーメラン状の刃を大量に放出してアントニオンを攻撃し続ける、
ミラーガールが鏡より放出するシャドウランナーに続いて、ミラールのブラックアロー、さくらのシャドウ(影)とダーク(闇)、サターンの必殺技が連続でアントニオンを攻め続け、アントニオンを追い詰めていく。
すると聖龍隊の攻撃を喰らい続けたアントニオンの様子が激変した。
「あ~~~~……!!」
まるで灼熱の炎と見えんばかりの紅蓮の閃光が渦を巻いてアントニオンの全身を包み込み、アントニオンの目の色も豹変した。
「や、ヤバい、来るぞ……!」
豹変したアントニオンを視認してメタルバードが動揺に満ちた言動を呟く。
そしてアントニオンが両手を掲げた瞬間、先ほどからアントニオンが作り出したブロックよりも格段に大きなブロックが皆の頭上に次々と生成され、それが地上の皆に容赦なく落とされていく。
「うわあっ」「きゃあっ」
次々と頭上に落とされてくるブロックを見上げて絶叫する新世代型達。この時メタルバードは
(どうする? さくらのパワーのカードで俺達が怪力になって新世代型を担ぐ、いや余りにも人数が多い。それじゃダッシュのカードで新世代型の足を……いや、それでも落ちてくるブロックのパターンが解らず、結局は潰されちまう。どうすれば……!)
と、現状況の中で、新世代型達を助け出す策をブロックが落下してくる一瞬で必死に考える。
そして今までよりも落下速度が速い多数のブロックが皆に頭上に降ってくる一瞬の内にメタルバードは閃き、指示を飛ばした。
「さくら! 新世代型と赤塚組全員にスルーのカードを使え! 新人共は先輩の動きを追う様にブロックから回避しろ!!」
メタルバードの必死の形相からの指示に、さくらは新世代型と赤塚組を対象にスルー(抜)のカードを使用した。
「スルー!」
さくらカードの効力を受けた面々は、全員が淡い光に包まれ、不思議な感覚を覚える。
そしてカードの魔力を受けた一同の頭上からブロックが落ちてきたが、カードの効力を受けた人体は落下してきたブロックをすり抜け、当人は全くの無傷であった。
「す、スゲェ……!」「これが噂に聞く、さくらカードの力……」
物体を通り抜けられる効力を持ったスルー(抜)のカードの魔力を実感し、今泉俊介と斉木楠雄ら新世代型と赤塚組の面々は大いに驚異した。
だが一方でアントニオンと初対面である聖龍隊の新人達は落下するブロックの法則が解らず、困惑していたが「危ねェ!」立ち往生していた新人達をメタルバードら聖龍隊の先輩で力自慢の面々が担いで運び、落下してくるブロックを回避していく。
「へへ、大丈夫か」
メタルバードは鹿目まどかや暁美ほむらの新人を担いでブロックから回避しながら二人に話し掛ける。他の新人達もセーラージュピターやトリコといった怪力自慢の面々に肩に担がれて難を凌いでいた。
すると新人の聖龍隊士を担いで走り回る聖龍隊の面々に、新世代型の蓮城寺べるがスルー(抜)のカードを使われて落ちてくるブロックをすり抜けている状態で問い掛けてきた。
「ね、ねえ! これは一体何なの?」
べるが今アントニオンが繰り出している状況について問い掛けると、メタルバードが女子二人を担いで走りながら説明した
「これはアントニオンの必殺技、キューブフォールズだ! どんなに強力な技や武器でも絶対に破壊不能なブロックを次々に生成して、何個も連続して落としてくる厄介な技! 今までのブロックよりも落下スピードも速く、重さもさっきまでのブロックよりも格段に重量化しているから潰された時のダメージもでかくなっていやがる! 但しさっきのブロックと違って、地面に落ちたら割れて消えちまうのが特徴だけどな」
すると今度はスルー(抜)のカードで無傷でいられている大将が仲間の赤塚組に指示を飛ばした。
「い、今の内に攻撃しろ!」
そういうと大将は機関銃を構えてアントニオンに発砲。大将に続いて赤塚組の面々もアントニオンに向けて攻撃を開始した。
だがアントニオンは攻撃を受けても何故か全く動じず、傷を負わないのであった。
「ど、どうなっていやがる!?」
銃撃を受けても動じずブロックを生成し続けるアントニオンに大将は動揺。そんな赤塚組に落下するブロックを走って避け続けるジュピターキッドが訳を話す。
「今のアントニオンには、どんな攻撃も効かない! あの紅い光に包まれている間は完全な無敵状態なんだよ!」
「ま、マジかよ!?」
ジュピターキッドの話を聞いて、アツシたち赤塚組は一驚する。
必死に落下してくるブロックを避け続ける面々だが、落ちてくるブロックの数と落下速度に加わり、現場での人数が多すぎて完全に回避していくのが困難になっていた。
この状況をどうにか突破しようと、メタルバードは再び指示を出した。
「さくら! また済まねェが、タイムのカードで時間を緩めてブロックの落下速度を下げてくれっ! プルートも時間操作でさくらを援護してやってくれ」
メタルバードの言葉を受けて、さくらはタイム(時)のカードを発動し、プルートも時間操作で頭上から落下してくるブロックの時間を緩める事で落下速度を極端に低下させる事に成功する。
二人の能力が功を奏して、ブロックは空中で停止したと見えんばかしに時間の流れが遅くなった影響で動きが鈍くなった。ブロックの落下速度が大幅に遅くなっている間に聖龍隊は決まった法則で落ちてくるブロックを難なく回避していく。
そして程なくして全ての生成されたブロックが地面に落ちて割れて消滅していく中、最後のブロックが地面に落下した。だがそのブロックは今までと違い地面に落ちても割れずに残っていた。いつの間にかアントニオンの姿も消えていた。
「あ、アレ? あれだけ消えない……」
地面に落ちても尚、他のブロックの様に割れて消滅しないブロックに違和感を覚えるアスナや新世代型達。だが以前にもアントニオンと戦っているメタルバードたち聖龍隊の面々は警戒に満ちた面差しであった。
「迂闊に近づくな! おそらくそのブロックの中には……」
メタルバードがブロックに安易に近づくアスナたち新人に声をかけた、次の瞬間。
「よっこらしょっと」
なんとキューブフォールズで生成され落ちてきた最後のブロックの中からアントニオンが出現し、軽々と自身が潜んでいたブロックを持ち上げて目の前にいるアスナ達にブロックを投げ付けようとしてきた。
「!!」
アスナや美樹さやか達は、突如姿を現しただけでなくブロックを投げ付けようとするアントニオンに驚いて怯んでしまった瞬間、アントニオンが目前の面々にブロックを投げ付けて下敷きにしようとした、その時。
「そうはさせるか! ギロチン!!」
メタルバードがブロックを投げ付けようとするアントニオンの頭上に跳び出すと、同時に己の体を巨大なギロチンの様な刃へと変形させて一直線にアントニオンへと落下していった。
案の定、巨大な刃へ変形したメタルバードが落下した事により、アントニオンが持ち上げていたブロックは真っ二つになり、同時にアントニオン本体をも斬り付けた。
「ッ!!」
斬り付けられたアントニオンは、その斬撃が痛手だったのか絶叫した。
「この私がぁ~~!」
自信家であったアントニオンは敗北に多大なショックを感じたかのような断末魔を上げ、光に包まれた次の瞬間なんと一体の機械人形へ変わってしまった。
『あ!』「あれは……!」
「やっぱり。クローンロイドだったか」
機械人形を見て新世代型達も大将たち赤塚組も驚愕した。そう今まで戦っていたグラビテイト・アントニオンはメタルバードの予想していた通り、遺伝子情報を組み込み媒体とする事で姿形と能力を複製できるクローンロイドだったのである。
そして破壊され、元の形に戻ったクローンロイドは爆発し、跡形もなく消えた。
[モニュメントに仕掛けられた試練]
過去に聖龍隊によって処分された試作の新世代型二次元人グラビテイト・アントニオンのクローンロイドを破壊した瞬間、部屋の環境と空調を一時的に変化させる疑似体感装置が解除されたのか、辺りの風景は最初のモニュメントが配列された広間へと戻っていた。
しかし最初と根本的に違うのは、クローンロイドと入れ替わりで床に沈んだモニュメントのあった場所が、綺麗に何もなくなっていた。
モニュメントも、それと入れ替わりに出て来たクローンロイドも破壊した事で、皆の周囲に円の形で配列されてるモニュメントは8つとなっていた。
床下へ消えたモニュメント、そして入れ替わりで出て来たクローンロイドといった今までの状況を頭の中で整理したメタルバードは一つの仮説を立てた。
「う~~む、おそらく……このモニュメントに触れると、床からクローンロイドが出てきて同時にこの広間も疑似体感装置で丸ごと変貌した状態で、クローンロイドと戦わなきゃならないのかもな」
「って! おいおい、そんなの何で分かるんだよ……」
メタルバードの仮説を聞いて、強引に戦闘に突入しなければならない状況に一抹の不安を過らせる大将が呟くと、キューティーハニーが呆れた顔で語った。
「もう経験上、強敵をコピーしたクローンロイドと戦わないと先に進めないって状況に私たちは何度も遭遇しているのよ」
「う、ウソだろ!?」
「それじゃ、さっきの様に強い敵を倒さなきゃ先に進むのは……脱出できないって事ですか?」
キューティーハニーが今までの聖龍隊での戦歴で積み重ねてきた経験から語った話を聞いて、幸平創真や田所恵といった新世代型達は暗然と気持ちが落ちぶってしまった。
「で、でも……さっき私達が通った階段をまた下りて、別の道を探せば良いんじゃ……って、いつの間にか塞がっているわ!」
この場で強敵に変身したクローンロイドと戦わずに、先ほど広間に進入してきた階段に戻る選択肢を勧めようとする薙切えりなだったが、階段との入口に視線を向けてみるといつの間にか入口が強固なシャッターで塞がっているのが目に飛び込んできた。
広間と階段の入口が完全に消失した現状に、メタルバードは口元を釣り上げた渋い表情で言った。
「……どうも強制的にクローンロイドとの戦闘を余儀なくされたらしいな。新生代型や赤塚組がいるから、少し戦況はこっちが不利だが致し方ねぇ。このまま他のモニュメントもチャックするしかないな」
このメタルバードの提案に、新生代型の多くが異論を唱える。
『えぇーー!!』
「ちょっと! またさっきみたいな初期の新世代型と戦う気なの!?」
「それはあんまりだよ! さっきはたまたまボクたち助かったけど、下手したら死んでたかもしれないんだよ?」
「わ、私も……またブロックに潰されたりとか、危険な目に遭うのは嫌です」
先ほどのアントニオンとの戦闘で嫌というほど危険な思いをしてきたキャサリン・ユース/凉野いと/能美クドリャフカの発言に、他の新世代型達の多くも賛同であった。
しかし……
「えっ、でもよ。残りのクローン何とかを全部倒さなきゃ先には進めないんだろ? だったら手っ取り早く残り全部も済ませて、早くアニメタウンに帰ろうぜ」
と、新世代型の燃堂力が悠々たる陽気な面持ちで残っているモニュメントに近づこうとした。
「って、ちょっとアンタ!」
何食わぬ顔でモニュメントに触れようとする燃堂力の行動に激しく動揺する宮沢健吾を始めとする新世代型達。と、その時、一人勝手にモニュメントに歩み寄ろうとする燃堂を親友の斉木楠雄が肩を掴んで引き止める。
「ね、燃堂! なに勝手な事を……またさっきのアントニオンみたいに、みんなを危険に晒す気か?」
斉木が燃堂に再びグラビテイト・アントニオンの様な危険な戦渦に非力な新世代型を巻き込むのかと口を入れると、燃堂は自分を引き止める斉木に真顔で話し返した。
「大丈夫だよ斉木。さっきだって聖龍隊の人達の物凄い能力で全員助かったじゃないか。それよりも、結局は此処に仕掛けられているロボット全部をブッ倒さなきゃ俺たち出られねぇだろうが」
「そ、それはそうかもしれないけど……」
燃堂の言い分に斉木も言葉を失う。確かに現状は、広間の床に収納されているクローンロイドを倒す以外、行動の選択肢がないのだから。
失言する斉木に燃堂は変わらぬ素振りで話し続ける。
「聖龍隊の人達が付いているんだ、大丈夫だって! さっきみたいなスッゲぇパワーでオレたちも護ってくれるし、何よりロボット相手でも絶対勝てるはずだって! お前も、さっきの戦い観てただろ?」
「た、確かに……先ほどのアントニオンとの戦闘で使用された木之元桜の「さくらカード」の効力は凄まじかったのは目の当たりにしたが……」
親友の燃堂の言葉を聞いてもなお心中の不安を掻き消せずにいる斉木に、燃堂は疑念の一かけらも感じられない目と顔で言い切った。
「大丈夫だっての! 聖龍隊を信じようぜ、なぁみんな!」
『!』
親友である斉木楠雄だけに留まらず、他の疑心暗鬼に陥りそうになっている新世代型達にも声をかける燃堂。斉木を含む新世代型達は、燃堂の言葉に驚嘆を覚えた。
そんな新世代型達の様子を一通り様子見してたジュピターキッドとメタルバードは互いに顔を合わせて話し合った。
「だってさ、バーンズ」
「ま、どっちにしろ他に道は無ェんだ。やるしかねぇのは目に見えているしな」
するとメタルバードは誰もが驚嘆した台詞を言った燃堂に言葉を投げた。
「おい燃堂、どれでも良いからモニュメント触ってみてくれ」「OKッス!」
メタルバードの言葉に燃堂は元気よく返事すると、迷う事無く最初に自分が近付こうとしたモニュメントの前まで駆けていった。
と、燃堂にモニュメントまで向かわせるメタルバードに大将が話し掛ける。
「お、おい、大丈夫か? さっきの戦いだって、お前らかなり苦戦してたじゃねェか」
「んっ、なぁに。さっきはちょいと油断してたから対応が遅れただけさね。おそらく他のモニュメントに仕掛けられているクローンロイドも、アントニオン同様例の軌道エレベーター関連の施設に務めていた初期の新世代型だろう。アイツらの弱点は既に以前の戦闘で知り得ているから対策は十分にできる」
「…………………………」
「……大丈夫だ。少なくとも、お前らに新世代型達は必ず守るからよ」
「べ、別に俺達は大丈夫だ! テメェらの援護も、新世代型共も俺らに任せろッ」
「へへ、まぁ頼りにしてるぜ」
初期の新世代型への対処を心掛けていると公言するメタルバードに対し、守られるだけでなく援護や新世代型の護衛も一任してみせると言い切る大将。
そんな中、燃堂はグラビテイト・アントニオンのクローンロイドが出て来たモニュメントの跡地、その隣のモニュメントに歩み寄っては手を翳して触れてみた。
すると手を触れた次の瞬間、先ほどと同じく広間全体が光り出し、そしてモニュメントが床に収納されると其処から一体のクローンロイドが案の定出て来た。
そして広間が光に包まれると、周辺の光景が一変する。
光が治まると、広間は先ほどのアントニオンと戦闘をした空間と同じ広さの部屋に間取りが変化してた。
「おっ、今度は何だろう? ……あれ、何だか今度は見た目だけじゃなく匂いも変わってるな。クンクン」
モニュメントに触れた燃堂が今度はどんな状況になるのかと淡い好奇心に浸っていると、部屋の見た目や間取りだけでなく匂いまでも若干の変化があると嗅覚で察する。
「ふむふむ、何だか土臭いと言いますか……山の中みたいな乾いた空気も感じられるのう」
「山の中……!」
土の匂いと乾いた空気を感じる新世代型のラルの言葉に、メタルバードは一つの疑念に駆られる。
と。皆が一変した周囲の環境に目を配らせていた、その時。
全員が固まっているちょうど正面奥に、無数のオレンジ色の水晶体が地面から生える様に出現し、その水晶体の集まりの中から一体の獣人型二次元人が現れる。獣人型が現れると同時に水晶の集合体は地面に倒れて砕け散り、獣人型は振り向いて一行と対峙する。
その獣人型二次元人は虫の様な容姿をしており、その姿を一目見た新世代型達は苦手なものを目の当たりにしたように絶叫した。
『ご、ゴキブリーーーーっ!!』「うぎゃ~~ーーッ!!」
一見するとゴキブリの様な容姿の二次元人に、新世代型の森谷ヒヨリ/薙切えりな/【ゆゆ式】の女性達/アイラ・ユルキアイネン/花園まりえ/茨りんね/【きんいろモザイク】の女子らは悲鳴を上げ、更に虫全般が大の苦手な斉木楠雄に至っては普段は決して見せない形相で絶叫してしまい、発作的とはいえ長身のセーラージュピターの頭にしがみ付いてしまう有様を晒してしまう。
「……ねぇ。あなたがゴキブリ苦手なのは知っているけど、だからって私の頭に怯えた猫みたいにしがみ付くのはどうよ?」
恐怖の余り平常心を失い、瞬発的に頭にしがみ付いて震え上がる斉木にジュピターが呆れながら話し掛ける。続けてジュピターの付近にいたマーズが恐怖で震える斉木と脅える新世代型の女子達に説く。
「それにね、みんな。あれはゴキブリじゃなくて、正確には三葉虫よ」
「さ、さんよう、ちゅう……?」
マーズの言葉に、恐怖に打ちひしがれていた斉木を始めとする面々は唖然と落ち着きを取り戻す。
ゴキブリではなく三葉虫と知った皆々が安堵していく中、メタルバードは目の前の三葉虫型二次元人を険しい面差しで見据えては名を口にする。
「アースロック・トリロビッチ……!」
メタルバードが名を口にすると、クローンロイドが変身しているアースロック・トリロビッチが一行に向かって話し掛け始めた。
「俺達が扱える新技術は、新時代を創造するには欠かせないものなんだぜ! ま、頭ん中にカビが生えた旧世代に出来損ないのプロト世代に言っても、理解できないだろうがな……」
「ッ……ムカつく野郎だぜ」
高圧的な態度で見下す物言いをするトリロビッチの言動に、大将は感情が昂る。しかし、そんなトリロビッチにミラールが皮肉を込めた言葉で言い返す。
「
所詮は異常な存在であるトリロビッチの言葉に、ミラールは耳を貸さず敢えて意見を気にせず無視する対応を公言する。
しかしトリロビッチはそれでも新世代型以外の二次元人を劣等な存在として見下す意見を言い放つ。
「俺たちは選ばれた! お前たちは選ばれなかった! 可哀そうに、これが超えられない壁って奴なのさ」
そして案の定、先ほどのアントニオン同様、トリロビッチは襲い掛かってきた。
アースロック・トリロビッチ。レアメタル鉱山でクリスタルの採掘を行う新世代型三葉虫二次元人で、ヤコブ計画を始めとする宇宙開発などの新技術に必要な資源を手がけ、発掘現場を制圧し、貴重な資源を集めていた。 非常に強い選民思想の持ち主で、旧世代の二次元人に対して高圧的な態度で振舞い、バーンズやアッコ、完全なコピー能力を持ってないミラール達を「ポンコツ」と罵り、見下している。
まず手始めにアースロック・トリロビッチは地面に手を翳し、一行の眼前その近場からオレンジ色の水晶の柱を作り出した。
「こんなものッ」
聖龍隊の新人であるキリトやエギル、シアン・パイルらが足元から出現した水晶を切断しようと斬り込んでいく。だが斬り込みをする面々の刃は水晶に傷一つ付ける事は叶わず、斬り込んだ面々は刃から伝わった衝撃で激しく手を痺れさせてしまう。
「か、硬い……」想像以上の硬さに呆然としてしまう面々。
すると聖龍隊の新人に続いて、大将ら赤塚組が水晶に向かって発砲を開始する。
「撃ち壊せ!」
大将の一喝で銃を連射していく赤塚組。だが彼らの銃弾もオレンジ色の水晶には罅一つ入れられず、それどころか実弾が弾かれて流れ弾が撃った張本人の大将たちや新世代型達に飛んできた。
「わ! わ!」
自分達の方に撃った弾が弾き返され、慌てふためいてしまう大将たち。
するとセーラーウラヌスが斬り込んだ新人達に発砲した赤塚組に言い放った。
「迂闊に攻撃するな! その水晶体は生半可な攻撃を弾く性質を持っている!」
ウラヌスの指摘通り、アースロック・トリロビッチが繰り出したクリスタルウォールは相手の近くか真下にオレンジ色の水晶の柱を出現させるのだが、この柱はアントニオンのブロック同様簡単には破壊できず、更に弾などを弾く性質を持っている。しかしアースロック・トリロビッチのクリスタルウォールは、単に移動を制限させたり攻撃を弾いたりするだけではなかった。
なんとアースロック・トリロビッチが出現させた水晶の柱が、前線で戦っている面々に向かって倒れてきた。
「って、うわッ!」
倒れてきた水晶の柱に、大将は驚いた拍子で動揺してしまい避ける事が出来ず、下敷きになってしまった。
「……ウギュ……」
ぺっちゃんこになった大将が小さく悶絶しているのを尻目に、新人組の巴マミや暁美ほむらがアースロック・トリロビッチに攻撃を開始する。しかし二人が連続で発砲する銃弾は悉くアースロック・トリロビッチの体に弾かれて効力が全く見られなかった。
「そ、そんな……!」
自分達の攻撃を微塵も痛がらないトリロビッチを目の当たりにして激しく動揺するほむらとマミ。すると銃撃を仕掛けた二人を始め、二人同様にトリロビッチと初めて対峙する聖龍隊の新人達にHEADのジュピターキッドが言葉を掛ける。
「そんな攻撃じゃ効かない! トリロビッチの外郭は、絶対的な防御力があって簡単には壊せない!」
アースロック・トリロビッチが常に被っている外郭は絶対的な防御力を持っている為、軽度の攻撃では歯が立たない事実をジュピターキッドから伝えられ、愕然とする新人達。
するとアースロック・トリロビッチはまた新たな水晶の柱を出現させ、戦前の聖龍隊や赤塚組の攻撃を防ぎつつ水晶の柱を倒して戦いを進めていく。
「能無し共がっ」
相手を愚弄する物言いで水晶の柱を出現させていくトリロビッチ。
更に軽度の攻撃にも動じないトリロビッチは手から丸いエネルギー弾を発射して攻撃してきた。
「ほらよっ」
トリロビッチが発射したエネルギー弾を前線の者たちは容易く回避するのだが、あろう事に繰り出されたエネルギー弾は地形に当たると反射し、再び前線で交戦する面々に向かって飛んできた。
「ま、また来たぞ!」
エギルが自分と同じ新人の仲間達に声をかけると、新人達は再びエネルギー弾を回避する行動に移る。
「こなくそッ」
しかし緩やかな速度で飛んでくるエネルギー弾を自力ではね返してやろうかと思った佐倉京子が得物である槍で弾き返そうと振り回してみるが、エネルギー弾は杏子の槍をすり抜けてしまった。
「あっ、アタイ等の武器じゃ、すり抜けちまうってのか!?」
驚く杏子の言葉通り、トリロビッチが放ったバウンドブラスターという丸いエネルギー弾は壁や床などの地形はもちろんオレンジ色の水晶の柱に直撃すると反射するのだが、その他の武器などの物体はすり抜けてしまう性質があったのだ。弾が消滅するには、何度か地形に直撃するか、トリロビッチ以外の体に直撃するかしか無い。
近場から出現する水晶の柱に反射するエネルギー弾から必死に逃避していく新世代型達に、抗戦し続ける聖龍隊の新人達。
だが先ほどアースロック・トリロビッチの頑丈な外殻に攻撃が弾かれてしまった暁美ほむらは、諦めずにトリロビッチに攻撃を仕掛けていく。
果敢に銃撃していくほむらに続き、巴マミも改めてトリロビッチへの銃撃を再開する。すると二人の連射攻撃を何度も浴びたトリロビッチの頑丈な外殻がすっぽ抜ける形で外れ、トリロビッチの柔らかい全容が曝け出された。
「ひっ、ひえ~~~~っ」
文字通り丸裸にされたアースロック・トリロビッチに、ほむらとマミは絶えず連射攻撃を撃ち続け、トリロビッチに傷を負わせる事が叶う。
するとトリロビッチは再び前線の者はもちろん、後方の戦闘に参加していない新世代型達の間近から水晶の柱を発生させ、彼らの動きを封じつつ手から複数のエネルギー弾を発射して広範囲に攻撃を仕掛けてきた。
「水晶は強力な武器なら破壊可能だ!」
メタルバードがそう叫ぶと、以前にもトリロビッチと戦った経緯のあるマカ=アルバーンやブラック☆スターがオレンジ色のクリスタルウォールを自身の得物で次々と切断して破壊してみせる。
「水晶体はダメだけど、エネルギー弾なら私に任せて!」
更に壁や床に反射して広範囲に飛び交うエネルギー弾を、ミラーガールが盾から光の壁を発生させて新世代型達に飛んでくるエネルギー弾をはね返して防衛する。
全員が近場に続々と出現する水晶の柱に、攻撃範囲に優れたエネルギー弾といった飛び道具に苦戦する中、先ほどほむらとマミの連続攻撃で外殻を剥がされたトリロビッチは床に転がる外殻に急いで駆け寄ると再び装着して完全防備の状態に戻ってしまった。
そしてトリロビッチは容赦なく前線の聖龍隊や赤塚組に追撃を仕掛ける。
「く、クソッ。そもそもなんでアイツは、俺たち旧世代やプロト世代の二次元人に対して、ああも高圧的なんだ?」
戦意むき出しのアースロック・トリロビッチの非常に強い選民思想と高圧的な態度に、キリトたち新人らは何故あそこまで新世代型ではない二次元人に対して威張り散らせるのか不満を募らせていた。
すると、そんなキリトの言葉が耳に入ったのか、トリロビッチはキリトたち新人らの前に立ちはだかっては高圧的な物言いで言い放った。
「ははっ、いかに俺たち新世代型が優れているか。所詮はお前達みたいな行き遅れた低能な連中には理解できっこないね」
「新世代新世代って……そんなに威張れる事!?」
アースロック・トリロビッチの言葉に美樹さやかが立腹して言い返すと、トリロビッチは相も変わらず腹立たしい言葉を掛ける。
「俺達みたいに進化できずにいる、あんたらには解りっこないか!」
トリロビッチの言葉に初対面である聖龍隊の新人達は一同に不服に至るが、トリロビッチはそれでも平然と聖龍隊の新人である面子に向かって毒のある台詞を吐き出した。
「能無しの
遂には聖龍隊そのものをポンコツという下等な存在として見下す発言をするアースロック・トリロビッチに、新人達の怒りは頂点に達した。だがしかし、アースロック・トリロビッチは軽度の攻撃を弾く頑丈な外殻に身を包み、攻撃の手段として近場に出現させる水晶の柱と手から繰り出す反射するエネルギー弾で本人は激しく動いていないにも関わらず広範囲に攻め立てていく為、簡単にトリロビッチにダメージを与えることができなかった。
新人達が必死にアースロック・トリロビッチに抗いながらも、トリロビッチは攻撃の手を緩めない。
すると此処でルーキーズ総部隊長ミラールがアースロック・トリロビッチに攻撃を仕掛けた。
「それっ」
強力なマグナム弾を連続で発射できる特殊なマグナム銃へと武器を変化させて、ミラールはアースロック・トリロビッチを狙撃。
「うぎゃあぁぁ~~~~っ」
並大抵の武器では全く歯が立たない頑丈な外郭に特殊マグナム弾が着弾すると、トリロビッチは悲鳴を上げ、頑丈な外殻は本体から外れて宙を舞った。
するとトリロビッチの外殻が外れたのを見逃さなかったミラーガールが、アントニオン戦と同様に自身のコスチュームだけを変化させて特殊攻撃を放つ。
「スクイーズボム!」
ミラーガールはアントニオンの技であるスクイーズボムを使用し、それを宙に舞うトリロビッチの外殻に向けて放った。するとトリロビッチの外殻はスクイーズボムの強力な重力に引き寄せられ、粉々に砕け散ってしまった。
「よし! これでトリロビッチに常時ダメージを与えられる様になったわ! みんな、一気に畳み掛けるわよっ!」
ミラーガールの鶴の一声に、聖龍隊はトリロビッチに一斉攻撃を仕掛け大ダメージを与えようと試みる。聖龍隊の一斉攻撃に便乗して赤塚組の面々もトリロビッチを集中攻撃していく。
あらゆる攻撃を一身に浴びるトリロビッチの周辺は煙に包まれ、トリロビッチの姿が一時的に見えなくなる。
誰もがアースロック・トリロビッチの打倒を思い描いていた、まさにその時。深手を負いながらも未だ存命してたトリロビッチは皆と反対側の壁まで走り抜けると、皆の方を向いた瞬間に紅蓮の光が渦の様にトリロビッチを包み込む。
「ま、また無敵モードだ!」
アントニオンと同じ無敵状態に変化したトリロビッチを目の当たりにして驚愕する大将を尻目に、トリロビッチは必殺技を繰り出した。
「潰れちまいなーーっ」
そう叫んだ瞬間、トリロビッチは先ほどから繰り出しているクリスタルウォールとは色が異なる水晶の柱を次々に作り出して前方の皆々へと送り出してきた。
「回避しろッ」
眼前に迫る水晶の壁に、メタルバードは前線で戦う仲間達に指示を飛ばしつつ自身も向かってくる水晶の壁を回避していく。
「って、いきなり言われても……うわッ!」
突然かわす様にと言われながらも戸惑ってしまう大将は、案の定迫りくる水晶の壁に背後の壁まで押し退けられて潰されてしまった。
「ウギュ……」
巨大な水晶の柱群と壁に挟まれて思わず悶絶してしまう大将。そんな大将と同じく、向かってくる紫色の水晶の壁に慌てふためく聖龍隊の新人らと新世代型達。
「うおっと」「ほっ、ほっ」
迫る水晶の壁を右に左にへと移動して何とか回避していくクラインとシアン・パイルら聖龍隊の新人達。
「ひぃ~~っ、潰される~~~~!」
必死に水晶と壁に挟まれない様に涙目ながらも走り続けて避け続ける燃堂力ら新世代型達。
すると前線で向かってくる紫色のクリスタルウォールによる水晶の壁ウェーブウォールをかわし続けていたメタルバードが、後方でウェーブウォールを命がけで避け続けている面々に呼び掛ける。
「みんな! この紫の水晶は直接触れてもダメージはないが、壁に挟まれるとメチャクチャ痛いから気を付けろ! 言っておくが、さっきのオレンジのクリスタルウォールと違って、これは壁に激突するまで壊れる事は無い! 無論、こっちから壊す事も不可能だ! 何とかトリロビッチが発動を終えるまでやり過ごせ!」
続けてメタルバードは運動能力の高い戦闘系新生代型と聖龍隊の新人達に強く呼びかけた。
「このウェーブウォールで作り出された紫の水晶は触れても平気だから、ジャンプして乗り越え続ければ少しは楽だぞ!」
「って! 巨大な水晶の壁を簡単に跳び越えられない俺らはどうすりゃ良いんだ!!」
壁にぶつかるまで壊れない水晶の壁を跳び越えていく方が楽だと助言するメタルバードの発言に対し、そんなに跳躍力などの身体能力が高くない自分達はどうすればいいかと腹を立てる大将。
しかしその後もアースロック・トリロビッチは絶えず無敵状態のままでウェーブウォールを発動させ、自身の前方で逃げ惑う一行を水晶の壁で押し潰そうと企む。
「し、しかし……いつまでこうしてなきゃいけないんだ!?」
「アースロック・トリロビッチの無敵状態が切れるまでだ。無敵状態は必殺技を発動させている間しか現れないし、それが終わればこの水晶の壁は現れなくなるし同時にトリロビッチにダメージを与えられる様になる! それまで耐えるしかない!」
息も絶え絶えの状態でトリロビッチの必殺技を走って回避し続ける赤塚組のアツシの疑問に、メタルバードは必殺技を発動できる無敵状態が切れるまでは必死でやり過ごすしかない事を伝える。同時に無敵状態が終わればウェーブウォールも終息し、トリロビッチ本体への攻撃も再開できる事を伝える。
そして遂にその時が来た。
トリロビッチを包んでいた紅蓮の光の渦が消え、それと同時に皆に迫ってきていたウェーブウォールも終了したのだ。
「今だ! 一斉攻撃開始!」
メタルバードの合図で、狙撃系の技でアースロック・トリロビッチに集中砲火を浴びせる面々。
強力な狙撃の数々に、遂にトリロビッチは倒れた。
「ウソだろぉ~~っ?!」
自身が敗北する事が信じ難い様に断末魔を上げるアースロック・トリロビッチはグラビテイト・アントニオンと同じくクローンロイドに戻り、そして白い光を発しながら爆発消滅した。
[虚ろな海月]
アースロック・トリロビッチのクローンロイドを破壊し、再び元の広間へと風景が戻っていくとトリロビッチのクローンロイドが出て来たモニュメント跡地が綺麗な床になっていた。これで残りのモニュメントは7つ。
「ふぅ~~……あのゴキブリ、いや三葉虫だったな。やっと倒せたな」
動きは鈍いながらも攻撃範囲に優れた飛び道具や技を駆使して戦うアースロック・トリロビッチに変身してたクローンロイドを無事に破壊でき、大将は激戦の疲れでその場に尻を着いて一息入れる。
「で、でもまだ7つモニュメントがあるし、予断ならない事態には変わらないわ」
一息入れて安堵する大将に、同じ赤塚組の海野なるが現存している残り7つのモニュメントに懸念する姿勢を言い表す。
「ま、まだ蟻とか三葉虫みたいな新世代型のクローンロイドと戦わなけりゃいけないのかよ……」
先ほどのトリロビッチのウェーブウォールで極端に息が切れてしまってるキリトたち聖龍隊の新人達も、続けて初期の新世代型二次元人のクローンロイドと対峙する局面を迎えなければならないのかと悲愴な面持ちを浮かべる。
一行がアースロック・トリロビッチのクローンロイドが繰り出してきた技の数々に疲労困憊に陥っている最中、疲れている自分を奮い立たせて新世代型の星原ヒカルがグラビテイト・アントニオンの時から抱いていた疑問を他の皆と同様ひと時の休息に浸っているメタルバードに失礼と思いながらもぶつけてみた。
「め、メタルバードさん……」
「? なんだいヒカル……」
「あ、あの……アントニオンもそうでしたが、先程のトリロビッチが必殺技を使う際に見せた紅い光に包まれた状態。あれは一時的とはいえ、どんな攻撃も無効化してしまう一種の無敵状態でしたが。アレは一体……」
グラビテイト・アントニオンとアースロック・トリロビッチが強力な必殺技を発動させる直前に、全身が紅蓮の光に包まれて一時的であるが完全な無敵状態を維持できてしまう戦闘形態を目前にし、ヒカルがメタルバードにその形態について訊ねてきた。これにメタルバードは乱れていた呼吸を整えてからヒカルの問いに答えた。
「あ、アレはだ…………いわゆる、段階強化、という一種の能力の上昇現象だ」
「だ、段階強化……?」
メタルバードの発した【段階強化】というフレーズに、初めてその言葉を耳にした新世代型達と聖龍隊の新人達、そして赤塚組の面々は顔を上げて耳を傾けた。メタルバードは皆の意識が自分の話に向けられている中で語り続けた。
「段階強化というのは、一種の特殊能力の向上……戦闘の中で能力が強化されていく現象の事だ。多くの物語、そう漫画の主人公クラスのキャラクターが追い詰められたりして戦闘の中で自身の能力が飛躍的に上昇する展開を、今では段階強化と総称されてる。よくキャラクターが敵に追い詰められたり、戦況が苦しくなったとき、自身の技や身体能力が変化して強力になるだろ。時おり技や能力だけでなく姿形までも変化しちまうほどの現象だ。特殊能力や技、武器だけに非ず身体能力までも格段に向上して今までの動きを遥かに凌駕するケースも少なくない」
皆に二次元人が秘めている技や能力が強化され、時には容姿までも変化してしまう【段階強化】の現象を語るメタルバードは先程のアントニオンとトリロビッチの状態変化についても語り続けた。
「さっき戦ったアントニオンやトリロビッチが見せた強化状態も、一種の、そう試作として生誕された新世代型二次元人に備えられた段階強化だったと今では思う。試作の新世代型は、主に体力が通常より大幅に減少した際にあの段階強化の容態へと変化する。あいつ等の段階強化は通常の状態で使用する技よりも厄介な必殺技を使用する直前に変化し、必殺技を使用している間にしか発動しない。だが、その間は如何なる強力な技や武器で攻撃してもダメージを負わせられない完全な無敵状態を保持しているため攻撃も不可。改めてダメージを与えて完全に倒すためには必殺技を終えた直後、段階強化が完全に終了した隙に攻撃しなきゃトドメを刺せねェ訳だ」
初期の新世代型二次元人が備えていた段階強化による強力な必殺技の使用と無敵状態についてメタルバードから初めて聞かされた面々は、思わず唖然としてしまう。
すると二次元人の段階強化を初耳にした面々の一人である燃堂力が平然とメタルバードに言った。
「あ! それじゃ、つまり…………要するに、スーパーサイヤ人の2や3,4みたいな事ッスね」
「まあ、簡単に言えばそうだな。て、いうかメタい発言すんなや」
真顔で二次元人の段階強化現象を別作品で例える燃堂の発言に、メタルバードは呆気に取られながらも返事した。
そして全員。アースロック・トリロビッチでの戦闘で荒れていた呼吸を落ち着かせると、再び周囲に展開しているモニュメントに目を向けた。
先を進むには、最早モニュメントの真下に配備されていると思われる初期の新世代型二次元人をコピーしたクローンロイドと戦わざるを得ないと、この時は全員が観念していた。
すると先程と同じく、燃堂力がアースロック・トリロビッチのクローンロイドが出没したモニュメント跡の、横に位置している別のモニュメントに記された象形文字の様な絵に注目した。
「ん、なんだ? この銭湯のマークを逆さまにしたような奴は?」
燃堂が目を向けたモニュメントには、♨(温泉)マークを上下逆にしたような絵が記されていた。
「ホントだ。なんで逆さまなんだ」
「でも、これ……どっかで見た事あるような。確か、何かの生き物だった気が……」
♨マークが上下逆の絵を観て、出雲ハルキは何ゆえ上下が反転しているのか疑問に思い、月影ちありに関しては何処かで見覚えのある生物に思えてならなかった。
そんな♨マークが上下逆様になった不可思議な絵が彫られているモニュメントに皆が注目している中、黙然となっている皆々を掻き分けてメタルバードがそのモニュメントに接近していく。そしてモニュメントの前まで進むと、有無も言わずにモニュメントの上下逆の♨マークに触れる。
「ちょ、ちょっと!」
無言で飄々とモニュメントに歩み寄って、絵に触れて仕掛けを起動させるメタルバードに新世代型の薙切えりなが驚愕する。
「ちょっと! いきなり触るってどういう事!?」
「いやいや、だってみんな中々触ろうとしないんだもん。どうせ遅かれ早かれ、起動させて戦わなきゃならないじゃんか」
激情するえりなの物言いにも動じず、メタルバードは飄々とした態度でえりなに話し返す。
そして案の定、モニュメントが床に収納されると、代わりに一体のクローンロイドが皆の前に出現する。
床下から出現したクローンロイドが起動を始めると、同時に辺り一帯の景観が一変。
変化した景観に皆が見渡していると、頭上からふわりふわりと一体の二次元人が姿を見せた。その二次元人は、時おり全身から電撃を放出している
「え、えっと……あれって、クラゲ?」
「クラゲ、ですね……」
上空からふわりと舞い降りて姿を見せたクラゲの二次元人を見て、その姿形が完全にクラゲだと再認識する新世代型の琴浦春香と室戸大智。
「あ、そっか! さっきの♨マークを逆さまにしたみたいなのって、クラゲの絵だったのよ!」
「あ、確かに! 言われてみると確かにクラゲの絵だった」
「クラゲの絵だったのかよ……」
先ほど皆が拝見したモニュメントの絵が、実はクラゲを模した絵であった事に気付くプロト世代の黒鳥千代子と桃花・ブロッサム、そして思い返しては呆れてしまうギュービッド。
そんなプロト世代の三人同様、前方でただふわりとその場に佇むクラゲ型二次元人を目の当たりにした新世代型の大人達が目の色を変えて聖龍HEADに問い詰めてきた。
「あ、アレもワシ等より前に生み出された新世代型なのか?」
ラルが問い質すと、メタルバードは険しい顔付きで答えた。
「ああ、初期に生誕された電流を操る新世代型二次元人………………ギガボルト・ドクラーゲン!」
『ぎ、ギガボルト・ドクラーゲン!?』『っ!!』
メタルバードの口から出たギガボルト・ドクラーゲンの名に、問い詰めてきた大人達も他の若い新世代型達も挙って愕然とした。
一方のドクラーゲンに、かつて本物のドクラーゲンと対峙した聖龍HEADの真紅が思い切って話し掛ける。
「ドクラーゲン! 一体どうしちゃったのよ? いくら今のあなたがクローン・ロイドとはいえ、もう同じ二次元人同士では戦いたくないのに……!」
「………………」
如何に姿や能力をコピーされたクローンロイドといえど、再び同じ二次元人同士で対峙する事に抵抗を感じさせる言葉を言い放つ真紅。だが目の前のドクラーゲンは、以前戦った本物と同じく何も喋ろうとはせず無気力な風貌で立ち尽くしているだけだった。
「ふぅ……あの時と同じね。口も聞けないほど
真紅がかつての本物同様、目の前のクローンロイドも会話すらできない程の異常を来していると呟いた、次の瞬間。ドクラーゲンが重い口を開いた。
「
ギガボルト・ドクラーゲンは、自分たちは新しい世界を創っているだけで
そしてギガボルト・ドクラーゲンは虚ろな眼差しで皆を見詰めると、次の瞬間体中から電気を発生させて頭上へと上昇し、地上の皆に攻撃を仕掛けてきた。
ギガボルト・ドクラーゲン
かの小田原修司が建造を推奨したジャッジ・ザ・シティの電気エネルギー供給を担当していたクラゲ型二次元人。
通常はおっとりとした性格で無口、というよりも無気力に近い。しかし一度熱中すると急にハイテンションになり、大声上げながら周囲のことをまるで気にせず暴れまわるなど、情状不安定な一面がある。
何より、自分がしている事に対して少しの疑問も躊躇も感じていない。
「来たぞ!」
上空に飛来してから再び地上の皆に向かってくるドクラーゲンに、メタルバードは全員に緊急を告げる。
そして前線まで降り立ったドクラーゲンは両手を光らせると、それを前に突き出して両手から強力な電撃を放出して攻撃してきた。
「Shoot!!」
「うわっ!」「ああっ」
たまたま前線に出ていた美樹さやかとブラック・ロータスの二人に、ドクラーゲンは中々のリーチがある電撃を射出する技「プラズマガン」を直射。直撃した二人は共に体が痺れて動けなくなってしまう。
仲間の二人が強力な電撃を浴びて動けなくなってしまう現状を前に、ミラールが武器ミラージュガンを変化させてドクラーゲンに狙いを付ける。
「行くわよっ」
ミラールが変形したミラージュガンで、強力な電撃を射出するプラズマガンで攻撃しているドクラーゲンを撃ち抜くと、ドクラーゲンは後ろへ仰け反り怯んでしまう。
「あ~~れ~~」
仰け反ると同時に動きそのものを中断してしまうドクラーゲンの状態を見逃さず、聖龍隊は一同に集中砲火していった。
「俺らも続くぞ!」「ああ!」
動作を止めたドクラーゲンに集中砲火していく聖龍隊に続いて、大将とテツを筆頭とした赤塚組もドクラーゲンに攻撃を浴びせていく。
「アタイ等も行くかッ」「ああ、今が好機!」「あのクラゲを真っ二つにしてやりましょう!」
聖龍隊と赤塚組の集中砲火を浴びて動作を停止しているドクラーゲンを、自分達も接近して一太刀浴びせようと啖呵を切る新世代型の纏流子に鬼龍院皐月と栗山未来も賛同。そして三人はドクラーゲンに急接近して直接刃で斬りかかろうと駆け抜けていく。
三人がドクラーゲンの間近まで迫り、一気に斬り付けようとするが、ドクラーゲンは聖龍隊と赤塚組の猛攻を浴びながらも既に上空へと浮上していた。
浮上したドクラーゲンは皆の頭上まで移動すると、そのまま上空で停止して、電気で繋がっている腕を4本下方向に向けて同時に発射し、地面目掛けて突き刺した。
「な、なんだ、この腕は?」「構わねぇ、叩っ斬っちまえ!」
自分達の周囲を囲む様に地面に突き刺した電気を帯びる4本の腕に、警戒を強める皐月に反して流子は考えなしに斬り付けようと地面に突き刺さる4本の内の1本の腕に斬り込んでいった。
「近付いちゃダメ!」
躊躇いもなしに斬り込んでいく流子にセーラームーンが制止するが、流子はそのままドクラーゲンの腕に接近して斬りかかろうとしてしまう。
するとドクラーゲンの腕に接近した瞬間、その腕から放出される電撃が片太刀バサミに伝達して流子に流れてしまった。
「うわあッ!!」「流子ちゃん!」「纏流子!」
強力な電撃が自身の肉体に流動して絶叫する流子を目の当たりにして、親友の満艦飾マコも好敵手の鬼龍院皐月も愕然となる。その間、ドクラーゲン本人は気持ちが昂っているのか大声を上げていた。
「Waaaaa!!」
自分の腕を伸ばして、下方の人々の動きを制限しつつ腕に近づいた者も容赦なく電撃で攻撃するドクラーゲンは戦いに熱中してか奇声を上げ続ける。
「待ってて!」
ドクラーゲンの電撃を放出する腕伸ばしに、ミラールがドクラーゲンの弱点を付く銃撃で腕を狙撃。するとドクラーゲンの腕は地面から離れ、電撃に見舞われてた流子は解放された。
「ッ……」
強力な電撃に見舞われ、軽い目まいを感じる流子であったがスグに態勢を立て直して再度ドクラーゲンに立ち向かおうと片太刀バサミを構える。
「みんな! ドクラーゲンの動きを封じて。私が弱点武器で徹底的に撃っていくから!」
ミラールは自分が指揮官として務めているルーキーズの仲間達に上空で動き回るドクラーゲンの動きを封じさせ、自分はその間動きが鈍くなったドクラーゲンに効果のある銃器で狙撃すると指示を飛ばす。
ルーキーズが懸命に上空を縦横無尽に飛行するドクラーゲンを攻撃し、動きを制限しに掛かる。その隙に、動きが鈍くなったドクラーゲンへミラールが弱点となる銃火器で狙撃する。
「当たれッ」
ミラールが、あのアースロック・トリロビッチのバウンドブラスターよりも若干大きめのエネルギー弾を発射するとそれがドクラーゲンに一直線に向かっていく。しかしドクラーゲンは空中をふわりと無気力な動作で舞う様に移動し、容易くミラールの狙撃を回避してみせる。
だがミラールが放ったバウンドブラスターは壁に直撃すると撥ね返り、最初の狙撃を回避したドクラーゲンに撥ね返ったエネルギー弾が直撃した。
「あ~~れ~~」
エネルギー弾に直撃したドクラーゲンは先ほどと同じく激しく仰け反って怯んでしまう。
だが即座に体勢を立て直すドクラーゲンは次の瞬間、自分の肉体から6体のクラゲ型の分身を作り出して自らの周囲に展開させてきた。
「な、なんだ、あのクラゲ?」
突如としてドクラーゲンの体から発生した6体のクラゲ型の分身に、キリトを始めとする聖龍隊の新人達は大いに動揺する。
すると6体のクラゲ型の分身はふわふわと移動し始め、各々が戦前で戦う者たちに近付いてきた。接近してくるクラゲ型の分身を破壊しようと攻撃を試みる新人達であったが、クラゲ型の分身は多少ながら弾き飛ばす事が可能であったが破壊できなかった。
聖龍隊の新人と同じく、自分達の能力や武器で分身を破壊しようとする新生代型の流子や皐月そして未来達も、弾き飛ばすのがやっとで気付いた時はすっかりクラゲ型の分身に取り囲まれてしまう。
戦前の新人や新世代型達がクラゲ型の分身と応戦している間、別のクラゲ型の分身をミラールがバウンドブラスターで狙撃して破壊、更に聖龍隊参謀総長のジュピターキッドも得物である茨の鞭で同じくクラゲ型の分身を破壊していってたのだが、その間にもドクラーゲンは次々に分身を作り出して周辺に展開させていき、遂には分身を破壊できずにいる新人と新世代型達がその分身に取り囲まれてしまう。
すると取り囲んでいたクラゲ型の分身が3体以上で合体して巨大化したのだ。
「いけない……君たち! 急いでそのクラゲから離れるんだ!」
合体して巨大化したクラゲを視界に捉えたジュピターキッドは、その巨大化したクラゲの間近にいる新人達と戦闘に加わっている新世代型達に急ぎ離れるよう呼びかける。
呼び掛けられた者たちは現状を理解し切れず唖然としているその時、巨大化したクラゲは立ち往生してしまってる彼らに接触。するとその瞬間、巨大化クラゲの触手が体に纏わり付き、電撃が体に流れた。
「うわっ!」「きゃっ!」
巨大化クラゲに捕縛され、電撃で連続的にダメージを与えられてしまう蛇崩乃音とリーファは余りの電撃に表情を引き攣らせる。すると巨大化クラゲに捕縛され連続ダメージを受けている乃音とリーファの許にミラールが駆け付け、二人を捕縛している巨大化クラゲを連射して破壊し救出。
ミラールによって巨大化クラゲから難を逃れた乃音とリーファに続いて、残りの巨大化クラゲと通常サイズのクラゲをジュピターキッドが鞭を激しく連続で振り付けて一掃してみせた。更にジュピターキッドは続け様に高く跳び上がると空中で体を二つに折り曲げて縦に高速回転しながら鞭を周囲に振り回す技でドクラーゲンに攻撃を当てていった。
「あ~~れ~~」
縦に振り回される鞭が直撃し、ドクラーゲンは仰け反ってしまう。
一方のドクラーゲンに攻撃を直撃させたジュピターキッドは、先程ドクラーゲンが作り出したクラゲ型の分身に取り囲まれてしまった新人達と自ら率先して戦闘に参加してくれている新世代型達に告げた。
「ドクラーゲンのビットには気を付けて! 弱点効果以外の武器では弾き飛ばすしかできない上に、分身が3体以上集まると合体して巨大化、巨大になったクラゲは周囲にいる相手を捕まえて電撃を浴びせてくる! 捕まってしまったら最後、自力じゃ逃げられない」
初めてギガボルト・ドクラーゲンと対峙する聖龍隊の新人と参戦している新世代型達に、ドクラーゲンが作り出す分身ビットについて言い聞かせるジュピターキッド。するとキッドは鋭い眼光で参戦している戦闘系の新世代型達を睨み付けるように見据えると、彼女達に強く言い放つ。
「君たちも! 戦闘に加わってくれるのは嬉しいけど、あくまで君らは一般の二次元人! 自ら危険な戦いに首を突っ込む必要はないんだ!」
参戦してくれている戦闘可能な新生代型の子供達に手厳しく言い渡すジュピターキッドの言葉を受けて、新生代型の子供らは衝撃を受ける。
そんな最中にもドクラーゲンは地上に降り立って両手から放つプラズマガンで前方にいる者を電撃で攻撃し、上空に飛び上がったと思えば電気で繋がる腕を地上に向けて発射し地面に突き刺しては地上の面々の行動範囲を狭め、更に例のクラゲ型分身ビットを作り出して周囲に展開させてと、無気力で虚ろな目つきにも関わらず暴れ回る。
「天誅!!」
時おり叫び上げながら攻撃してくるドクラーゲンの猛攻に、聖龍隊は同盟相手の赤塚組と共闘しつつ、非力な新世代型達を護りながら交戦していく。
そしてジュピターキッドが展開されたビットを全て破壊し終えようとしていた時。ダメージが蓄積されていったギガボルト・ドクラーゲンが何食わぬ顔で地上に下降し、自分と同じ新世代型の二次元人達の前に降り立つ。
「……………………………………」
『………………!』
目の前に降り立つも何も喋らず、虚ろな眼差しで見詰めてくるだけのドクラーゲンに新世代型達は強烈に動揺し、思わず固まってしまう。すると虚ろな眼差しで見据えてくるドクラーゲンに、新世代型のイオリ・セイが思い切って話し掛けてみた。
「え、ええっと………………も、もうやめてください。同じ新世代型なんですし……」
セイは途轍もなく動揺していたが、勇気を振り絞ってドクラーゲンに戦いを止めてくれるよう嘆願する。例え相手のドクラーゲンがプログラム通り活動するクローンロイドだと解っていても。
すると話し掛けられたドクラーゲンは虚ろな表情を微塵も変えずに、逆にイオリ・セイたち新世代型達に問い掛けてきた。
「……あんたら、だれ……?」
これに対しセイは「お、同じ新世代型だよ」と動揺しながらも答え返すが、ドクラーゲンは絶えず虚ろな眼で言葉を掛け続ける。
「……同じ筈なのに、なんであんたらは間違った世界を直そうと思わないの?」
このドクラーゲンの発言に、アイラが強気な姿勢でドクラーゲンに反発した。
「ま、間違ったって……それはあなたが、
間違った世界という思考そのものが異常な思想であると強く言い返すアイラの言葉に、ドクラーゲンは虚ろな眼差しで新世代型達を捉えて一言。
「俺は、
あくまでも自分は異常ではなく間違ってないと主張するドクラーゲンは、最後に新世代型達に驚愕の一言を突きつける。
「俺が
『!!』
自分が異常な思考を持つ存在であるのなら、自分と同類である新世代型も同様に危惧される存在であるのではないかと、はっきりと言い切るドクラーゲンの言葉に新世代型二次元人一同は愕然とする。
と、その時。新世代型二次元人たちに話していたギガボルト・ドクラーゲンに、背後から聖龍HEADのウォーターフェアリーが高水圧の水の砲撃を撃ち込みドクラーゲンを攻撃。高水圧の水砲撃に吹き飛ばされたドクラーゲンは、そのまま上空へと飛来すると全身を紅蓮の光が包み込んだ。
「いけねェ、あいつは……!」
「必殺技が来るぞ! ダメージも与えられんし、全員攻撃に備えろ!」
紅蓮の光に包まれるドクラーゲンを目の当たりにし、大将とメタルバードはドクラーゲンが二次元人特有の段階強化現象で全ての攻撃を無効化できる無敵状態に陥ったのと強力な必殺技が来るのを予知して総員を必殺技による攻撃に備えるよう指示を出す。
そしてドクラーゲンは、彼が段階強化に陥るのを目の当たりにして動揺し慌ててしまう皆々の頭上に舞い上がると、全身から大量の電気を帯電し始める。そのドクラーゲンの真下、地上には電気で発光する個所が見受けられてた。
「急いで! 光ってる床からできるだけ離れるのよ! もう完全に取り囲まれているけど、なるべくドクラーゲンの真下にみんな集まって!」
ミラールが啖呵を切るかのような強い口調で皆を光る床から遠ざけつつドクラーゲンの真下に集合するよう呼びかける。
すると全員が発光している床から離れ、ドクラーゲンの真下に集合していた、その時。「Fall For You!」とドクラーゲンは叫びながら無数の電撃を地面の発光している場所目掛けて放射してきた。
「うわあッ!」「か、雷!!?」
周囲に落とされてくる電撃に頭を抱えてしゃがみ込む直枝理樹と真鍋義久ら新世代型達。だがドクラーゲンは地上の面々に容赦なく電撃を放射していく。
「電撃が落ちるところは予め光っていて分かりやすい! 放電が止んだ隙に移動して回避するんだ!」
ドクラーゲンが放射する電撃が治まっている間に、皆を電撃が落ちる場所から遠ざけて移動させていくメタルバード。
だがその時「うわっ」なんと電撃が止んでいる間に避難しようと走っていた新世代型の一人、アリス・カータレットが躓いてしまい転倒してしまった。
「アリス!」「アリスさん!」
転倒して逃げ遅れてしまったアリスに、親友の大宮忍と教師の烏丸さくらが名を呼んだ。しかしギガボルト・ドクラーゲンは転倒したアリスに目もくれず、気分が非常に高揚した状態で容赦なく必殺技を放射した。
「Fall For You!」
ドクラーゲンから強烈な電撃が放射され、それが地上の発光する場所に落ちていくが、その一か所の近くにアリスは転倒してしまっていた為、ドクラーゲンの電撃が直撃するのは誰の目にも判明していた。
「きゃあっ」
頭上から落ちてくる電撃に逃げる事が叶わず、ただ頭を抱えるしかないアリス。
しかしアリスに電撃が直撃する直前、メタルバードが的確な判断力で指示を飛ばした。
「真紅! お前たちの水晶で電撃を防げ!」「ええ!」
メタルバードの瞬時に飛ばした指示に真紅は強く返事すると、姉妹にあたるローゼンメイデンの面々で巨大な水晶の柱を戦場に形成する。するとドクラーゲンの放電は全て真紅たちが作り出した水晶の柱に避雷針の原理で集まり、転倒してしまったアリスはもちろん地上にも電撃が降り注ぐ事は無かった。
「よし! ドクラーゲンのサンダーダンサーはこれで一点にしか落ちて来ないわね」
作り出した水晶の柱がドクラーゲンの必殺技サンダーダンサーを一点に集めて地上に降り注ぐのを防げた真紅たちは少しばかり安堵の表情を浮かべる。
その間、転倒してしまったアリスを急ぎHEADのナースエンジェルが立ち上がらせて皆の許まで誘導していく。だがドクラーゲンのサンダーダンサーは一向に止まず、何度も皆の頭上から強力な電撃を放射してくる。
真紅たちローゼンメイデンは作り出した水晶の柱を避雷針とし、サンダーダンサーの電撃を全て一点に集中させてみせる。が、何度もサンダーダンサーの電撃が落ちた水晶の柱は次第に強度が脆くなっていき、遂には水晶の柱は地面に倒れて砕け散ってしまう。
その都度、真紅たちは新しい水晶の柱を発生させドクラーゲンのサンダーダンサーを一点に集中させて仲間と新世代型達を電撃から護っていく。
それから2度、3度とドクラーゲンのサンダーダンサーの電撃を真紅たちローゼンメイデンが作り出した水晶の柱に集中し続けていると、ドクラーゲンの体を包んでいた紅蓮の光が消えた。
「今だ!」
紅蓮の光が消えたのを視認した蒼星石は、ドクラーゲンの無敵状態が終了した隙に仲間のローゼンメイデン達と自分らが作り出した水晶の柱を押し倒す。押し倒された水晶は無敵状態が終わったドクラーゲンの方に倒れ、ドクラーゲンは水晶の柱に押し返された。
「あ~~れ~~」
ローゼンメイデン達が押し倒した水晶の柱に激突したドクラーゲンは、毎度の如く仰け反って悲鳴を上げる。
だがスグに態勢を立て直したドクラーゲンは、前方に固まっている新世代型達に向かって大量のビットを作り出して攻撃してきた。
「うわぁ! 今までより遥かに多い!」
大量に作り出されたビットの大群と共に突撃してくるドクラーゲンに、真鍋義久を始めとする新世代型達は恐れ戦き動揺してしまう。
だがドクラーゲンが前方の新世代型達に向かってきた瞬間。
「させない……烈鏡断!」
ミラーガールが自身の得物ミラーソードを巨大で光沢の眩しい太刀に変えて、突進してくるドクラーゲンに太刀を振り下ろした。
ミラーガールの一振りで、ドクラーゲンが作り出した大量のビットは一掃され、ドクラーゲン本体も斬り付けられた。
「Oh Noooo!!」
自らの破壊行為を、あくまで世界を変える正当な行為であると主張していたギガボルト・ドクラーゲン。
そのドクラーゲンに扮したクローンロイドは、奇しくも己自身を変える事ができる変身ヒロインの一太刀にて葬られた。
[冷徹なる信念]
ミラーガールの一太刀にて破壊されたギガボルト・ドクラーゲンのクローンロイド。そしてクローンロイドが破壊されると部屋は瞬く間に景観が元に戻る。
容赦なく降り注がれる電撃、捕縛しに掛かるビットの大群、全員がドクラーゲンの猛攻に解放されて安堵する中、先程の戦闘を観戦して思った事を新世代型達は徐に訊ねてきた。
「アッコさん、さっき貴女が最後に使った技。あれは一体……」
新世代型の星原ヒカルがミラーガールにドクラーゲンを斬り付けた巨大な太刀による斬撃について訊ねると、ミラーガールは右肩を回しながら話し返した。
「ああ、さっきのアレね。アレは私の能力で武器を変化させて使える技の一つ。まあ、いきなり大型の武器を使ったから、肩が痛むけどね」
「え! ミラーガールって、姿だけじゃなく武器まで変わっちまうのかよ!?」
扱っている武器も自身と同じ様に変化させたミラーガールの能力に新世代型の真鍋義久が表情を一変させて驚くと、ミラーガールは粗方の詳細を付け加えて皆に話した。
「ええ、まあね。昔は確かに見た目だけ変身できていたけど、今は武器とか能力も一部なら変化させて戦闘に応用できるようになっているの。……まぁ、私自身、あまり戦いには乗り気じゃないから宝の持ち腐れみたいなんだけどね」
「そ、そんな事はないと思います。さっきみたいに沢山のビットを一撃で一掃しただけじゃなく、ドクラーゲンまでも倒せちゃうなんて、凄いですよアッコさん!」
「そうそう! そもそもアッコさんの様な優しい人が戦いに乗り気じゃないってのは当たり前だし、敵を倒せたのは紛れもない事実ですよ!」
ミラーガールの話を聞いて、プロト世代のチョコと桃花はミラーガールの武器や能力の一部も変化させて使用できる芸当を高く評価した。
「あ、そういえば……アッコさんのミラーソードが変わった様に、ミラール総部隊長の銃もさっきから変化しているけど、あれも同じ原理なのかな?」
「確かに。アッコさんもミラール総部隊長も、同じ鏡魔法が主流だよね」
話を聞いてミラーガールの武器ミラーソードが変化するのと、ミラールの銃ミラージュガンが様々な効力の銃火器に変化するのは同等の原理ではないかと話すシリカとシルバー・ロウ。
聖龍隊の新人達が自分とミラーガールの能力について騒々しくなっているのを見たミラールは、新人達に自分とミラーガールの能力について不機嫌そうな顔で説いた。
「その通り。アッコお姉ちゃんも私も、同じ鏡魔法が主流なの。私の場合は今まで戦ってきた相手の技や能力を、ミラージュガンに反映させて色んな効力の銃火器で戦わせるのが主流の戦法だけど……他にも変身した相手のDNAデータをアーマーに保存できる機能が備わっているから、十分に活用できるしね」
この話を聞いて、ミラーガールと同じ鏡魔法で姿形だけでなく自身の武器も変化させて戦う事が出来るミラールに同行しているジェイクが厳つい顔立ちで指摘する。
「なあ、それじゃミラール。さっきから勿体ぶらずにお前さんの銃を弱点効果の武器に変化させて、早々に初期の新世代型二次元人共をブチ殺せば良かったんじゃねぇか? テメェらは前にも、あのイカレた初期の新世代型共と戦っているから弱点とか解ってんだろ」
するとミラールは睨み返しながらジェイクに言い返した。
「そう言ってもさ、前戦った時とは勝手が違うのよ。前に戦った時よりも、明らかに戦闘の舞台が広くなっているんだし……特にさっきのドクラーゲンなんか、最初は都市の中を猛スピードで移動する足場の上で戦っていたのが、さっきは広い範囲で縦横無尽に飛び回って攻撃してくるから狙いが付けにくいのなんのって」
ミラールたち聖龍隊が最初に初期の新世代型二次元人と戦闘をした時は、先程の戦場と異なる広さだった故に思う様に戦えなかったと釈明するミラール。
そして皆が、ミラーガールとミラール二人が持つ鏡魔法による能力について改めて知った後。
再び一行は咲へと進行する為にモニュメントに目を向ける。
「次は、どれに行く?」「そうだな」
ジュピターキッドがメタルバードに次はどのモニュメントに触れて仕掛けを起動させるか訊ねると、メタルバードはモニュメントを目で追って決め兼ねていた。
すると
「迷ってるなら手っ取り早く順番通りに行きましょうよ」
と言って新世代型の燃堂力が躊躇いもなく歩み出し、ドクラーゲンのクローンロイドが収納されてたモニュメント、その隣にあるモニュメントに近付いて断りも無しに触れてしまった。
「あ! おい……」
誰の断りも無しにモニュメントに触れる燃堂の行動にメタルバードが声を掛けようとするものの、既に燃堂が触れた事でモニュメントは発光し、皆がいる広間の装置も起動し出した。
その時だった。燃堂が触れたモニュメントに彫られている象形文字の様な絵を見て、ジュピターキッドは何か気付いた。
「(んっ、あれは………………ハっ、まさか!)待って! そこに仕込まれているのは……」
ジュピターキッドが雪ダルマの様な絵を視認して何かを気付いたのか声を掛けようとするが、その瞬間広間全体が光に包まれ、部屋の景観も空調も一瞬で変化してしまう。
光が納まり、皆が自分の目を開いて辺りを確認してみると。
なんと広間全体を大量の雪が覆い被さり、その嵩は常人の腰の辺りまで積もっていた。
「わ! ゆ、雪!? なんで急に雪が……」
突然自分達がいる場に積もる雪が、それも腰の辺りまで積み重なる大量の雪が現れ、大変驚いてしまう真鍋義久ら新世代達。
全員が突如として現場が大量の雪に覆われる現状に変貌した状況に驚いていると、そんな半ば混乱する空気を切り裂く悲鳴が響き渡った。
「わーーーーッ! アプリーーーーーーーーーー!!」
皆がその悲鳴に一驚し、悲鳴が聞こえた方へ振り向いてみると、そこには氷漬けになってしまっているウォーターフェアリーを見て涙目で悲観するジュピターキッドの姿があった。
「わーーーーっ、アプリちゃん!」
一瞬で氷漬けになってしまっているウォーターフェアリーを見て、ジュピターキッド同様に大声を上げてしまうミラーガール。
すると氷漬けになったウォーターフェアリーを一目見て、メタルバードが思い出した様に喋り出した。
「そうだったわ。ウォーターフェアリー……アプリコットは極寒の環境には滅法弱かったっけな。あ~~あ、見事なまでにカチンカチンに凍っちゃってるな」
このメタルバードの発言を聞いて、新世代型達も次々に思い出す。
「あ、そういえば……ウォーターフェアリーことアプリコットさんは水の妖精で、氷点下などの極寒の環境ではたちまち凍ってしまうんでしたね」
「そうそう、小説にも書いてあった! 確かアプリコットさんはボスコワールドっていう異世界の出身で、妖精族のお姫様だったよね!」
小田原修司が執筆した【聖龍伝説】に記載されているウォーターフェアリーの経緯を思い出しては和気藹々と語り合う二木佳奈多や仙道キヨカといった新世代型の女子達。そんな女の子たちの会話を聞いて、ウォーターフェアリーことアプリコットの婚約者であるジュピターキッドが涙ながらに語り出す。
「そうだよ、アプリは昔っから低温の環境にだけは耐性が付かなくてスグに凍っちゃうんだ……水の妖精だから体質的に寒さには耐性付かないのが当然だけど」
水の妖精ゆえに、体そのものが水に近いウォーターフェアリーは氷点下の温度で簡単に凍ってしまうため聖龍隊では誰よりも寒さに弱い体質なのである。
ジュピターキッドが涙ながらに氷漬けのウォーターフェアリーを悲観していると、そんなウォーターフェアリーが一瞬で凍ってしまう程の氷点下へと瞬時に変えた疑似体感装置が作り出した環境に皆は注目し始めた。
「それにしても、本当に冬とか極地にいるみたいに寒く感じるね」
「ああ、この雪の感触も本物と全く同じ手触りだ……信じられない」
ホログラムと空調調整で作り出された極寒の環境と辺り一帯を埋め尽くすサラサラの粉雪の感触に、新世代型の星原ヒカルと出雲ヒカル。すると手触りも感触も本物の雪と同一なのを知った瀬名アラタは、子供の様にはしゃいで徐に雪玉を握り始めた。
「へへ♪ まさか残暑感じるこの時期に、それも熱帯のタイで偽物とはいえ雪が見られるとは驚きだぜ」
「アラタ、こんな時に童心に帰ってる場合じゃないでしょ」
無邪気に雪玉を遊び感覚で握り出したアラタの行動に、親友の細野サクヤは呆れ果ててしまう。
新世代型が疑似体感装置で作り出された極寒の環境と辺りを埋め尽くす大量の雪の感触に驚きつつも堪能していた、まさにその時。
「……っ! みんな! 向こう側に何かいるぞ!」
新世代型の猿田学が自分達の正面向かい側に何かの存在を視認して皆に伝えた。
全員が猿田が指さす方へ目を向けて凝視してみると、視界は空気中に舞い散る粉雪で曇っていたが、次第に晴れていき、遂には完全に視界が良好となったと思った瞬間、皆の前方その雪の中から巨大な物体が突如として跳び出してきた。
降り積もる粉雪の中から突然跳び出てきた巨大な白い塊に、全員が息を呑んで見届けていると目の前に現れたのは巨漢の異形な人型の二次元人であった。
「やはり雪と言えばアイツだったか……! 冷気を自在に操る、伝説のUMA雪男イエティをモデルに生み出された新世代型二次元人……アイスノー・イエティンガー!」
「ゆ、雪男がモデルだって!?」
メタルバードが発する巨漢の体格をした雪男の姿を模した二次元人の存在に、大将はもちろん赤塚組の面々に新生代型一同が驚愕する。
そんな伝説上のUMA雪男をモデルに生み出された初期の新世代型二次元人アイスノー・イエティンガーが唐突に話し掛けてきた。
「我々の邪魔をしないでもらおう……」
このイエティンガーの言葉に大将がすかさず言い返した。
「邪魔って何の事だ? テメェらの悪行は余り知らねぇが、俺達と一戦やり合うならタダじゃ済まさねぇぞ!」
だが大将の強気な姿勢に、イエティンガーは冷静な態度で大将の言葉に言い返す。
「お前たち旧世代には、もはや関係のない事だ……」
「関係ねぇだと……!? テメェら初期の新世代型が起こした暴動で、どんだけの二次元人が後ろ指を指されたか知っているのか!」
初期の新世代型二次元人が起こした事件によって、善良な二次元人までも悪評を受けた事実を突き付ける大将。しかしイエティンガーはそれでも冷静沈着な態度で、平然と大将たちを大きな瞳で見据えて言い放った。
「我々はもはや、お前たち旧世代には想像もつかない存在へと成り得たのだ!」
「………………………………ッ」
冷静な態度を改めず、自分たち旧世代の二次元人を別離する言い草のイエティンガーに大将は口元を歪ませて怒りを露わにする。
するとイエティンガーは続けて、今度は自分と同じ新世代型の面々に落ち着いた口調で話し掛けてきた。
「……君たちは既に解っている筈だ。我々の優れた遺伝子、体に流れる血に含まれる宿命こそ……我々の理想とする未来を築く上では欠かせない代物である事を」
しかしイエティンガーが語る言葉の意味を理解できない新世代型達は当然の如く困惑してしまうだけ。
「い、遺伝子……宿命? い、一体なんの事を言ってるんですか」
イエティンガーの言葉の意味を理解できないでいる新世代型の直枝理樹が訊き返すと、イエティンガーはそれまでとは打って変わって事態を嘆くような素振りで熱く語り始めた。
「な、何という事だ! 三次元人どもめ、我々の同胞の思想に手を加え、事実を隠ぺいしたのだな! ……ならば成すべき事は一つ! 我々の理想を、そして何よりも君たちを救うためにも……古きこの時代と戦わなくてはならない!」
自分らの理想と思想に手を加えられた新世代型を救済する為に、今の時代すなわち世界と戦わざる得ないと主張するアイスノー・イエティンガー。
すると以前にも本物のイエティンガーと対峙した聖龍隊が、目の前のイエティンガーに問い詰める。
「もうやめろ! 平和主義者であったアンタが戦わなければならない理想なんて、そんなのまやかしだ!」
聖龍HEADの堂本海人が必死にイエティンガーに訴えるものの、
「我々の理想を邪魔しないでもらおう! 失せろ、聖龍隊!」
こうしてアイスノー・イエティンガーは対峙する一行に襲い掛かった。
アイスノー・イエティンガー。新世代イエティ型二次元人。
かつて南極の環境試験センター「セントラルホワイト」の管理者を務め、世界の環境悪化を案じていた。
争いをせずに事を済ませたいと考える平和主義者であるが、降りかかる火の粉には全力で立ち向かう覚悟を持ち、己の理想・信念は決して曲げることはないという徹なる一面がある。
そして戦闘。
アイスノー・イエティンガーはまず向かってくる前に跳び上がり、少し上の位置から大量の氷の弾を連射。
「アイスガトリング!」『うわあっ!』
連続で発射される氷の弾は広範囲にばら撒かれ、皆は鋭利な氷の弾を見て慌てて攻撃から遠ざかろうと走り出す。
しかし足場に降り積もる雪が、みんなの足をもたつかせ上手く歩行する事さえも困難。更に鋭利な氷の弾は地形に当たっても壊れる事無く突き刺さりしばらく残るため、移動範囲も限られてしまう。
「くそっ」
イエティンガーが放つアイスガトリングにどうにか対抗しようと、大将はアイスガトリングに向けて銃を連射。その大将の発砲に近くにいたジェイクも続けて銃を乱射。
大将とジェイクの銃弾がイエティンガーのアイスガトリングに直撃すると、氷の弾は簡単に破壊できた。
「よし! あのでっけぇ氷の弾は実弾で簡単に壊せるようだ」
「この調子でドンドン撃っていくか」
実弾で容易にアイスガトリングの氷の弾を破壊できた大将とジェイクは、引き続き銃弾で対抗していく。だがイエティンガーは、その巨躯に似合わず動きが速く変則的な移動で雪が降り積もる地形を自由に駆け抜けていく為、中々銃弾を命中させられず苦戦させられる。
「ッ! 何だ、あの動きは……! 速い上に変則的で、狙いが定まらねぇ!」
「あの巨体で、あのスピード……普通じゃないぜ!」
標準を定めて狙撃しようとするジェイクと大将だが、イエティンガーの速度と変則的な動きに翻弄され上手く狙いが付けられない。
その一方で、イエティンガーの頭上を飛行してレーザーでどうにか応戦していくHEADのちせは、イエティンガーのアイスガトリングで連射された氷の弾に囲まれ、身動きが取れない新世代型の来ヶ谷唯湖と越谷姉妹が目に飛び込んできた。
ちせは急ぎ、彼女達の周りに突き刺さっている氷の弾を上空からレーザーで一つ一つ粉砕していく。そして全ての氷の弾を破壊して、身動きが取れなかった新世代の彼女達を無事に救い出した。
「あ、ありがとう」
自分達の周りに突き刺さってた氷の弾を全て破壊してもらった来ヶ谷唯湖が動揺しながらも礼を述べると、飛行しているちせは安堵の表情を浮かべる。
だが、その時「氷龍昇」の掛け声でイエティンガーが雪の中から跳びだして、ちせに強烈なジャンピングアッパーを繰り出した。
「きゃあっ」
イエティンガーの強烈なジャンピングアッパー「氷龍昇」に直撃して、ちせは墜落してしまう。氷龍昇の威力は凄まじかったが、墜落の際の衝撃は地面全体を覆い尽す粉雪がクッションの役割をして軽減してくれた。
「この野郎ッ」
先ほどからアイスガトリングで鋭利な氷の弾を連射し、更には雪の下に潜って高速移動で接近してから強力なジャンピングアッパー氷龍昇で攻撃してくるイエティンガーに、赤塚組のアツシが業を煮やして銃を乱射。しかしイエティンガーは自慢の高速移動で辺り一帯を駆け抜け、アツシはもちろん多くの面々からの銃撃を掻い潜っていく。
「ッ……シャレにならねぇ速さだぜ」
銃を乱射して、どうにかイエティンガーに実弾を当てようとするアツシ。だが殆どの銃弾をイエティンガーは掻い潜り、例え着弾しても大してイエティンガーには痛手ではなかった。
「クソッ、この氷の弾が邪魔だぜ!」
「そこら中に突き刺さっていて、一つ一つ壊していくのがやっとだ」
戦闘の妨げになっているアイスガトリングの氷の弾を必死に一つ一つ壊していくクラインやエギルたち聖龍隊の新人メンバー。
すると炎系能力者に混じって、そこら中に残る氷の弾を熱で破壊していた聖龍隊の新人、佐倉京子も業を煮やして単身イエティンガーに突っ込んでいってしまう。
「しゃらくせぇ! アタイの槍で一突きにしてやるッ」
「ダメよ杏子ちゃん! 一人じゃ無理よっ」
単身槍を手にイエティンガーに突っ込んでいく杏子を見て、セーラーマーズが声をかけて制止するものの杏子は一直線にイエティンガーに突撃していった。
「はあッ!」
灼熱の炎を纏う槍の切っ先をイエティンガーに向けて振り翳す佐倉京子。彼女の炎の仕掛け槍がイエティンガーの巨体へ確実に刃が斬り込まれ、炎の斬撃がイエティンガーの巨体を切り裂いた。
誰もが冷気を操る氷系能力者のイエティンガーが炎に弱く、炎の斬撃で大ダメージを負ったと思った。
だが、イエティンガーは杏子の炎の斬撃を受けても微動だにせず、自分に攻撃してきた杏子に振り向き、山の様に巨大な体で見下ろした。
「ば、バカな……っ」
御得意の炎の槍での攻撃に全く動じないイエティンガーの反応に、杏子は愕然としてしまう。
するとイエティンガーは自分に攻撃してきた杏子の方へとアイスガトリングを連射して交戦してきた。
「う、うわッ」
突然自分の方へと連発されるアイスガトリングに驚き、咄嗟に横方面と積雪に飛び込んで回避する杏子。
その最中、杏子の炎の槍がイエティンガーに効かなかった事で聖龍隊の新人達は激しく動揺していた。
「な、なんでイエティンガーに炎が効かないんだ……?」
「普通、氷系の能力や術者って炎が弱点なのが当然よね」
常識的に氷系のキャラクターは相性的に炎が有効的な弱点と思い込んでいる新人のシルバー・クロウとスカーレット・レイン。
「冷気を操れるし、何よりイエティ、雪男をモデルに生み出されたキャラクターなら熱とかに弱い筈じゃ……」
「ど、どうして炎の技を受けても平気なんだ、あの雪男……」
初期の新世代型二次元人が起こした軌道エレベーター「ヤコブ」管轄の施設での暴動事件に事情があって参入してなかったシンク・イズミやロラン・マルティノッジら【DOG DEYS】の面々は、雪男をモデルに生み出された二次元人のアイスノー・イエティンガーが何ゆえ火炎の攻撃に耐性があるのか疑問に思ってしまう。
そんな疑問に駆り立てられる面々を見て、ミラール総部隊長が疑問視する面々に真顔で言った。
「なに言っているのよ。冷気が操れるからって炎や熱に弱いだなんて常識、正直新世代型には通じないわ。そもそもイエティンガーの弱点は……」
と、ミラールが語っていると、彼女に向かってイエティンガーが雪の下から高速で接近し、強力なジャンピングアッパー氷龍昇を繰り出そうと雪中から突進してきた。
「み、ミラール!」
高速で雪の中から接近して氷龍昇を繰り出そうとするイエティンガーの攻撃を予感して新人達はミラールを呼びかける。しかしミラールは余裕満々の面差しで動揺している新人達に言った。
「ふっ、大丈夫よ、これぐらい」
次の瞬間、イエティンガーが雪の下から跳び出してジャンピングアッパーを繰り出してきた瞬間にミラールは間近の壁を蹴り上げて高場へ移動しつつ、そこから自身が着用しているアーマーの小型ホバリングジェットで勢いよく空中移動して難なくイエティンガーの氷龍昇を回避してみせる。
新人達が容易くイエティンガーの氷龍昇を回避してみせたミラールの離れ技に驚いている最中、当のミラールはジャンピングアッパーを外してしまったイエティンガーの背後に素早く回り込み、瞬時にミラージュガンを電気を纏った拳銃に変化させてイエティンガーの背面に突き付ける。
そして電気を纏った拳銃に変化させたミラージュガンから凄まじい放電が発射され、その放電に体全体を包み込まれたイエティンガーは悲鳴を上げた。
「でゅおわぁ~~……っ!」
悲鳴を上げるイエティンガーはビクンビクンと激しく体を痙攣させて、その場で尻餅をついてしまう。
今までどんな攻撃を受けても全く動じなかったイエティンガーが、電撃を浴びて激しく痙攣する様を見て新世代型達も聖龍隊の新人達も唖然となる。
するとイエティンガーは後ろへ振り向き、自分に電撃銃プラズマガンを放射したミラールに向かって突進してきた。
「よっと」
だがミラールはイエティンガーの突進を軽くかわしてみせると、先程の自分の攻撃で動じたイエティンガーを見て唖然としている新人達に告げる。
「雪男だからって何も火が弱点じゃないの。このイエティンガーは雷、電撃系統の攻撃に滅法弱いから。言っておくけど、私達が以前戦った反乱を起こした初期の新世代型のリーダー達は大半が持ち合わさった能力や容姿に比例しない属性が弱点なのが多いのよ」
ミラールからイエティンガーの弱点が炎属性ではなく電撃などの雷属性であると同時に、以前に三次元人に反乱を起こした初期の新世代型二次元人のリーダー格の大半もイエティンガー同様に比例しない属性が弱点であると言い伝えられる新人達。
と、その時。ミラールから説明を受けている新人達の元に、イエティンガーが巨体から繰り出される高速移動で突進してきた。
「あ、危ねェ!」
突進してくるイエティンガーの突撃を、慌てて近場の壁沿いの配管をよじ登って回避するキリト達。すると上空を旋回しながらイエティンガーと交戦していた赤塚組のミズキが配管をよじ登るキリト達に接近してきた。
「ダメだわ、レーザーでいくら攻撃しても多少のダメージが与えられるだけで致命的な深手は負わせられない。やはり電撃系の攻撃で抗戦するしか手立てはないようね」
するとイエティンガーは粉雪が降り積もる広場の中央に駆け付けると、そこで回りながら周囲にアイスガトリングを連発し始める。
「アイスガトリング!」
「うわぁ!」「きゃあっ!」
技の名を口に出しながら自分の周辺、広範囲にアイスガトリングを連射していくイエティンガー。雪の中を逃げ惑う面々は、降り注がれる無数の氷の弾を懸命にかわし続けていく。
しかしタダでさえ歩き難い粉雪の雪上を駆け続け、それだけで体力を消耗していく聖龍隊の新人達は息が上がっていた。
「は、ハァ……雪に足がとられて上手く歩けない……」
「も、もうダメ……」「足が重い……」
細かい微粒子の粉雪が敷き詰められた雪上に足を取られ上手く歩行できないアスナ/シルバー・クロウ/シリカは完全に草臥れていた。そんな新人達に、間近を通り抜けるメタルバードが声をかける。
「おいおい、聖龍隊の隊士たるもの、これぐらいの雪で足を取られてちゃ、やっていけないぞ」
粉雪に足を取られて動けなくなる新人達にそういうメタルバードは、雪上の中でも何事もない様に平然と駆け足で走り抜けていた。
そんな雪の上でも通常通りに駆け抜けて移動できるメタルバード同様、他の聖龍隊の面々も雪に全く動じず素早く走り抜けて交戦していた。だが一人だけ、ジュピターキッドは広間の空調と環境が激変してしまった事で瞬く間に凍ってしまったウォーターフェアリーを担いで移動していた為、移動も遅く何よりも参戦できずにいた。
「ジュニア、お前、それ……」
メタルバードが一人黙々と氷漬けのウォーターフェアリーを背負うジュピターキッドに話し掛けると、キッドは悲愴な面持ちで話し返した。
「何も言わないで。僕もアプリも戦闘に参加できないのは心苦しいんだ。でも今はこうするしか……」
文句も言わず、黙々と氷漬けの婚約者を運んで戦闘を離脱しているジュピターキッドの心情を汲み取り、メタルバードはそれ以上何も言わなかった。
と、その時。高速移動しながら周辺にアイスガトリングを連発するアイスノー・イエティンガーの様子が変わった。
「ドリフトダイアモンド!」
突如イエティンガーの身体に微細な氷の塊が複数纏われ、更にイエティンガーは少しだけジャンプして、そのまま勢いよく突撃してきた。
「かわして!」
ミラールは自分たち目掛けて突撃してくるイエティンガーの突進を横へ避けつつ、他の面子にも呼び掛ける。
だが此処で突撃してくるイエティンガーとミラールの呼び掛けに反応が遅れ、巴マミと百江なぎさが逃げ遅れてしまう。
「あ……っ」「っ……!」
微細な氷の塊を身に纏うイエティンガーの突進に直撃はしなかったものの、イエティンガーが身に纏う氷の塊に体が触れた途端、マミとなぎさは一瞬で氷漬けになって動かなくなってしまった。
「あッ!」「凍っちゃった……!」
氷の塊に触れた途端、氷漬けになってしまうマミとなぎさを観て、戦闘に巻き込まれないよう広場の端っこに避難している新世代型の真鍋義久と仁科カヅキは驚いた。
彼らと同じくイエティンガーが纏う氷の塊に触れて氷漬けになるマミとなぎさを観て驚愕する場の皆にメタルバードが告げる。
「イエティンガーが纏う氷の塊には気を付けろ! 触れてもダメージはないが、一瞬で凍っちまうぞ!」
メタルバードよりイエティンガーの微細な氷の塊を纏った状態で突進してくるドリフトダイアモンドの効力と注意点を聞き、イエティンガーと初めて対戦する面々は緊張を高める。
そんな中、急ぎドリフトダイアモンドで氷漬けになったマミとなぎさの元に、一人の聖龍隊士が駆け寄ってきた。
「やれやれ、初の共闘任務でこれとは。手のかかる後輩である」
そう言いながらも氷漬けのマミとなぎさを大事に抱えて、二人を安全な場所まで移動させてあげるアレイスター・クロウリー三世。
一方で。
「迂闊に接近するのも不得手ね。何より向こうから突進してくるのが厄介だわ」
「こ、此処までは来ないだろう」「あ、ああ、そうだよな」
先程のイエティンガーの突進から逃れようと配管に登ったキリトやクラインといった聖龍隊の新人達の横で、空中で停止しながらイエティンガーの現状に難色を示す赤塚組のミズキ。
するとその時。配管に登っているキリトやクラインそしてエギルの予測とは裏腹に、イエティンガーは前触れもなく彼らがよじ登っている配管の方へと高速で突進してきた。
「き、来た!?」
自分達の方に突進してくるイエティンガーを視認して形相を一変させるキリト。そしてイエティンガーはそのまま勢い良く一直線に突進し、キリト達がよじ登っている配管が固定されてる壁へ衝突する。
「う、うわぁ!」「ひえぇっ!」
巨体から繰り出される衝撃は凄まじく、よじ登ってたキリトやクラインそしてエギルは配管から手を滑らせ落下してしまう。
「って、うわ!」
しかも運悪く、落ちていくエギルが空中で戦況を観察していた赤塚組のミズキの上に落っこちてしまい、ミズキとエギルは揃って真下へとキリトとクラインと共に落下してしまう。
すると落下する4人の真下に待機していた、壁に突進したイエティンガーが再び体に氷の塊を纏い始めたのだ。
「ドリフトダイアモンド!」
次の瞬間、イエティンガーは微細な氷の塊を身に纏ってジャンプして、自身の上から落ちてくる4人に纏う氷の塊を触れさせた。
微細な氷の塊に触れた瞬間、キリトとクライン、そしてエギルと彼が頭上から落ちてきてしまった為に一緒に落下してしまうミズキの4名が氷漬けになってしまった。
「わーーーーッ! ミズキーーーーーー!!」「キリトくん!」
氷漬けになってしまう4人を見て、赤塚組の大将は血相を変えて叫び、聖龍隊のアスナは悲鳴を上げる。
しかし氷漬けの4人にもイエティンガーは容赦せず、雪の下に潜ってからの氷龍昇を氷漬けの4人に繰り出した。
『ぐはッ』
イエティンガーの氷龍昇を喰らった4人は全身を凍て付かせてた氷は砕けたものの、氷龍昇の強烈な一撃に苦痛を味わう。
そして4人に氷龍昇を打ち付けたイエティンガーは再び広場の中央に移動しては周囲にアイスガトリングを連発して、無数の氷の弾を展開させていく。
「み、ミラール。さっきあなたが使ったプラズマガンで、またイエティンガーの動きを止められないの?」
周囲に連発されるアイスガトリングの弾を避けながら、赤塚組のアケミが先ほどイエティンガーの弱点武器で攻撃したミラールに再度の射撃を促した。
しかしミラールはアケミと同じく降り注ぐアイスガトリングの弾をかわしながら答えた。
「それなんだけど、私のプラズマガンは上下左右の射撃範囲は広いんだけど、前方への射程は極端に短いの。だから遠距離狙撃は不可能、近付いて射撃しないと当たらないわ」
プラズマガンは射程の短い武器な為、接近して撃たなければ攻撃が当たらないと述べるミラール。
一方で、周囲にアイスガトリングを連発して氷の弾を設置・移動範囲を制限していくイエティンガーの猛攻に対抗するべくHEADは画策する。
「マーズ、光! 炎の竜巻をイエティンガーに向けて放て!」
総長メタルバードの指示で、セーラーマーズと獅堂光は巨大な炎の竜巻を発生させ、それをイエティンガーに向けて放った。
炎の竜巻は直線状に進み、その進路に突き刺さるアイスガトリングの弾を全て氷解しながらイエティンガーの眼前まで迫り、そしてイエティンガー自身を呑み込む。
しかし炎に抵抗力のあるイエティンガーには大してダメージが入らない。だがイエティンガーを呑み込んでいた炎の竜巻が消えゆく垣間から、緑と黄色がベースの人影がイエティンガーの目に飛び込んだ。
次第に消えゆく自分を呑み込んでいた炎の竜巻の垣間から、正面から突っ込んでくる二つの人影それは、拳に電撃を纏わせて突撃してくるセーラージュピターとドラゴンキッドであった。
二人の聖龍隊士の姿を捉えたイエティンガーであったが、セーラージュピターとドラゴンキッドはそのままイエティンガーの巨体に電撃の拳を打ち付けた。
『はァっ!』
二つの電撃を纏った拳が直撃し、イエティンガーの巨体に電流が走った。
「でゅおわぁ~~……っ!」
先程と同様に悲鳴を上げるイエティンガー。
更に追撃とばかしに、ミラーガールはセーラージュピターやドラゴンキッドの体質と同じ様に自身の体を帯電させ、更に自分の周囲に無数の鏡を展開させてイエティンガーに電撃を放電した。
「はァっ」
それは、あのギガボルト・ドクラーゲンのサンダーダンサーと瓜二つの技で、跳び上がってイエティンガーよりも高い位置から無数に強力な放電を降り注ぐ。
ミラーガールの放電は、広場一帯に放たれたアイスガトリングの弾を連鎖破壊し、同時にイエティンガーにも電撃を浴びせて大ダメージを与えた。
「でゅおわぁ~~……っ!!」
先程のセーラージュピターとドラゴンキッドの電撃よりも強力なミラーガールの放電を浴びて今まで以上に悲鳴を上げるイエティンガー。
するとイエティンガーの様子が一変、あの紅蓮の光を纏った無敵状態に変化したのだ。
そして案の定、イエティンガーは今まで繰り出してきた技よりも格段に強力な必殺技を発動させた。
「スノーアイゼン」
突如としてイエティンガーは上方に向けて大量の冷気を放射。すると上空から巨大な雪の結晶が続々と降ってきた。
「な、何っ? この巨大な雪の結晶……!」
自分達の頭上から続々と降ってくる巨大な雪の結晶に目を丸くして驚く薙切えりな。
するとイエティンガーの無敵状態はあっさりとスグに終わってしまい、イエティンガーは通常の状態に戻って再び突進攻撃やドリフトダイアモンドを繰り出してくる。
しかしイエティンガーが無敵状態で発動させたスノーアイゼンによる巨大な雪の結晶は降り続き、イエティンガーと交戦している面々に雪の結晶が襲ってくる。
「クソッ、この雪の結晶、壊せねえぞ!」
「普通の雪で生成された結晶ではなさそうだ……」
片太刀バサミと縛斬でどうにか自分達の頭上から降ってくる雪の結晶を破壊しようとする纏流子と鬼龍院皐月だったが、彼女達の刃でも巨大な雪の結晶は斬れなかった。
「この結晶、私達の武器や技でも破壊できない!」「クッ、どうすれば……」
自分達が使える武器や技でも結晶を破壊できない状況に苦戦を強いられるブラック・ロータスとシアン・パイルら新人達。
するとミラールが戦況に苦戦している新人達にアドバイスしながら助太刀に入る。
「その結晶はイエティンガーの力で作られているから彼の弱点属性じゃないと破壊できないわ!」
そう皆に言いながらミラールは電撃銃プラズマガンで自分達の頭上から降ってくる巨大な雪の結晶を破壊していく。
その後もミラールを始め、雷系の技を使える面々は雪の結晶を除去しながら戦闘を続ける。
一方のアイスノー・イエティンガーは降り続ける雪の結晶を除去するので精一杯の面々に攻撃を仕掛けていく。
地形に残り移動範囲を狭めるアイスガトリング、雪の下に潜ってからのジャンピングアッパー氷龍昇、微細な氷の塊を纏って突進するドリフトダイアモンド。大きい体に似合わず卓越した武術とスピードを兼ね備えるイエティンガーの猛攻は激しさを増していく。
しかし一瞬の隙をついてミラーガールが再びギガボルト・ドクラーゲンが使った必殺技サンダーダンサーを発動させ、イエティンガーに強力な電撃を落とした。
この一撃が決め手だったのか、イエティンガーが痙攣すると同時に周囲のアイスガトリングの弾も、上空から降り注いでいたスノーアイゼンの雪の結晶も消滅した。
「見事だ……!!」
寡黙で頑固だった人格者のイエティンガーは、そう言い残して爆発。元のクローンロイドに戻っては消滅した。
[憤怒の軍鶏]
ミラーガールの渾身の電撃が功を奏して、パワーとスピードを兼ね備えたアイスノー・イエティンガーのクローンロイドを撃破できた一行。
視界に広がる情景は、再びモニュメントが軒を連ねて並ぶ広間へと戻った。
周囲が普通の広間へと戻り、新世代型は先ほどの極寒の環境で冷え切った体を温めようと自ら肩を擦り出した。
「う~~……もう、寒さだけでもしんどかった……」
「氷の弾も怖かったけど、それ以上に真冬並みの寒さが身に染みた……」
一時的な環境の変化だったとはいえ、極寒の環境下で戦闘を掻い潜っていたキャサリン・ルースに一条螢は鼻水を垂らしながら身震いしてた。
「それにしても。疑似体感装置はホログラムで景観だけじゃなく空調も調整されて、あそこまで極寒の環境を人工的に作り出せるとは……」
「ああ、全くだ。学園のセカンドワールドは景観だけで、温度や湿度までも環境を変えられるなんて……」
「確かに凄かったな! 雪の感触が、まんまだったもん!」
「……積雪まで本物と同じだから走りにくかったけどね」
自分達が通ってた神威大門統合学園で利用されてたLBXを戦わせる直径10kmに渡る地球を模した巨大ジオラマ、セカンドワールド以上に環境そして五感による感覚までも再現された疑似体感装置に驚きを隠せない星原ヒカル/出雲ヒカル/瀬名アラタ/細野サクヤの4人組。
そんな極寒の環境に置かれてた面々に交じり、先程まで氷漬けになっていたウォーターフェアリーも氷点下から解放された事で体が氷解し、やっと元の状態に戻っていた。
「ふぅ、やっと氷が融けた。それにしても寒かった……っ」
全身を覆ってた氷が融けてウォーターフェアリーであったが、体に感じる悪寒だけは微々と残っていた。
「はぁ、やっと氷が融けたねアプリ。流石に僕も凍った君を担いで雪の中を走り回るのは苦労したよ……」
「ごめんね、ジュニア。いくら私が体質的に寒さに弱いとはいえ、凍った私を担いで護ってくれて」
凍ったウォーターフェアリーを担いでイエティンガーの猛攻から必死に雪の中を走って彼女を護り抜いたジュピターキッドに、ウォーターフェアリーは心から礼を述べた。
話は変わり、徐に大将が幼馴染でもあるミラーガールに話し掛けた。
「なあ、アッコ。お前がさっき使った技、あれって確か初期の新世代型二次元人のドクラーゲンが使ってた奴じゃないか。あれは一体……」
ミラーガールに何ゆえ初期の新世代型二次元人が使用できた必殺技が使えるのか訊ねる大将に、ミラーガールは真顔で答え返す。
「ああ、あれ。実は私、武器だけじゃなく少しばかりは相手の技とかも完全じゃないけど真似して使えたりするのよ」
「にッ!? そ、そうなのか?」
「う、うん。私が昔から人や動物とか何にでも変身できたのは大将も今では知っているでしょ。でも今では相手が使ってきた武器はもちろん、能力も完全じゃないけど一部だけ真似するみたいに使う事が出来るの。……まあ、もちろん完全に似せるのはちょっと、ね……」
「い、いや。それだけでも十分にスゲェよ……」
ミラーガールの驚異の能力に大将は唯々驚くばかりだった。
そんなこんなで、一行は再びモニュメントに目を向ける。
順番通りに行けば、次はアイスノー・イエティンガーのモニュメントの隣にある、一見すると鶏の様なシルエットの絵が彫られたモニュメントに皆は自然と直視する。
「次は……鳥? いや鶏か……?」
「もうっ、何でもいいから早く終わらせましょう! さっさとこんなバケモノだらけのとこからサヨナラしたいですわ」
モニュメントに見受けられる絵に鳥か鶏か凝視して考え出す幸平創真に反して、早々に初期の新世代型二次元人との戦闘を終わらせて生物兵器開発の研究施設から出たい一心の薙切えりなが怒鳴り出す。
そしてモニュメントに触れると、案の定モニュメントが床下に入っていき、代わりにクローンロイドが皆の目の前に現れる。それと同時に広間の景観も一瞬で変わった。
変化した景観は、床一面が円形の足場が連なって並んだ様な造りの円形のフィールド。
そして皆の視界に入ってきたのは、何故か自分達と向かい側の壁を激しく何度も蹴り続けている人影。
皆に背を向け、壁を蹴り続けるその人影は皆の存在に気付いたのか、いきなり振り向いては怒気に満ちた眼と形相で睨み付けてくる。
(!)怒りの激情が手に取る様に解るほど激しく燃え滾った瞳で睨み付けられ、新世代型達は内心怖がった。
すると皆の存在に気付いた人影は、壁蹴りをやめて突如として上空に跳び上がったと思えば直後に皆の目前に着地して向き合いだした。
「コケっ」
「こ、コイツは鶏か……?」
目の前の二次元人が獣人であり、その姿から鶏なのかと思い始める大将にジュピターキッドが答え返す。
「ああ、彼は元二次元人処分場、つまり処刑場で働いていた鶏の新世代獣人型二次元人……バーン・コケコッカー」
同じ二次元人はもちろん三次元人にまでも危害を及ぼす
「同胞の新世代型たちよ……君達には聞こえないか? 三次元人どもによって
『……………………』
しかし唐突に問い詰められた新世代型達は唖然としてしまい言葉を返せずにいた。
だがコケコッカーの問い掛けに沈黙してしまう重い空気を切り裂く様に、新世代型の鬼龍院皐月が威風堂々とした規律のある顔立ちでコケコッカーに怒号の如く苛烈に言い返した。
「貴様、何を言っているのだ……! 我々二次元人の面汚しともいえる外道な
「な、何という事だ……! 三次元人どもめ、我等が同胞の思考に余計な手を加えたのだな……! ……ならば君達に示して見せよう! 我々新世代型だけにしか築けない、新たな世界がこの世に生誕する……その瞬間をな!」
するとコケコッカーの狂気が垣間見える言動に、大将が嘲る様に話し掛ける。
「はァ? なに言ってやがる。新たな世界だァ? ホンっとに最初の頃に生み出された新世代は狂っちまってるな」
この大将の発言に、コケコッカーは激しい闘志に満ちた目付きで強く反論した。
「ふん、どうとでも言え! 我々は新たな世界を産み出す……誰にも邪魔はさせん!」
次の瞬間、バーン・コケコッカーは眼前の面々に攻撃してきた。
バーン・コケコッカー。罪人処分場「ドロップデッド」で働いていた新世代鶏型二次元人。
自分の仲間を
怒りのあまり頭に血が上っている様子で、やや狂的な部分が感じられる。
本人曰く、処分された
だが正々堂々とした真っ向勝負を好み、その攻撃も体術を応用したものを多用する。
そして何より、バーン・コケコッカーは炎を自在に操れるのだ。
「まずは小手調べだ。トサカ飛ばし!」
手始めにコケコッカーは頭のトサカを眼前の一行に向けて発射してきた。
「来たぞ、散れッ!」
メタルバードは攻撃を仕掛けてきたコケコッカーに対して皆に周囲に散らばる様にと指示を出し、それを受けて新世代型達の多くは戦闘に巻き込まれないよう広場の端に駆け寄る。
散り散りになる聖龍隊、だがHEADのセーラームーンにコケコッカーのトサカは標的を定め、その速い飛行速度で正確に追跡してくる。
これにセーラームーンは頭に嵌めているティアラを手に取り、反撃する。
「ムーン・ティアラ・アクション!」
セーラームーンのティアラがブーメランの要領でコケコッカーのトサカに向かって放たれ、空中でティアラとトサカが激突。両者の飛び道具は失速して墜落する。
するとコケコッカーがトサカを飛ばした隙をついて、新世代型の纏流子/鬼龍院皐月/栗山未来の三人が一斉にコケコッカーへと斬り込む。
少しでも聖龍隊に助太刀したいとの一心で斬り込んでいった三人の少女であったが、当のコケコッカー本人には差してダメージは与えられなかった。
すると次の瞬間。三人の斬撃を受けて軽いダメージを負ったコケコッカーの身体が光ったのだ。
「! な、なんだコレは……!」
斬り付けられて身体を光らせるコケコッカーを見て思わず驚異してしまう皐月。
するとコケコッカーは斬りかかってきた三人を見て不敵な笑みを浮かべると、その場から跳び上がった。
『!!』
突然跳び上がったコケコッカーに驚きを露わにする三人。するとコケコッカーは上空で斜め下方向に滑空しながら、炎を纏って跳び蹴りを三人に向けて放ってきた。
「焔降脚!」
炎を纏っての跳び蹴りに、三人は迷う事無くそれぞれが周辺へと散り散りに避けていった。
空中からの炎の蹴りを外したコケコッカーは、壁際まで走り抜けた栗山未来を視界に捉えて彼女を標的として見定めた。
「思い知れッ」
コケコッカーが言い放った瞬間、口から高温の炎を吐き出して未来を襲う。
「っ!」
吐き出し続ける炎を眼前に逃げ場を失う未来。と、その時。
「えっ?」
コケコッカーの火炎放射フレイムバーナーが眼前まで迫っていた未来を、細長い狐の様な生物が複数で未来の体を上と下から支えて持ち上げ、まるで空を滑空するかのように未来を移動させた。
狐たちに体を持ち上げられ移動された未来が、狐たちに下ろされると其処に一人の女性が駆け寄って未来に声をかける。
「大丈夫かい? 寸でのところでくだ狐たちに助けさせて良かったぜ」
そう言うのは未来の危機に自分が指揮する妖狐くだ狐を召喚して未来を助け出させた聖龍隊の葉月いずな。
一方でいずなが未来を助けてた最中、一刻も早くコケコッカーを倒そうと意気込む流子と皐月を筆頭とする本能字学園生徒会の面々と聖龍隊の新人達。
しかし激しい爆撃に強烈な斬撃を受けるコケコッカーは全く動じず、身体から発せられる光をさらに強めて自分に攻撃してくる者たちに反撃していく。
「メルトクリーパー」
大きく足を振り上げる動作から地を這う炎を発生させ、自身の前方に向けて放射状に炎が拡散されていく。
「あ、あ、アチッ」
炎の熱に苦戦するクラインを始めとする聖龍隊の新人達は、どうにか放射状に地を這う炎を避けて交戦しようとするが、なんと炎は壁に当たるとそのまま反対方向に反射して向かってきた。
「わっ! また来た」
壁に反射して再び自分達の方に向かってくるメルトクリーパーの炎にライム・ベルは慌てて逃避する。
そんな戦況で再びコケコッカーに攻撃を仕掛けようとする新世代型に新人達。だが彼らにメタルバードが強く言い付けた。
「やめろッ! 攻撃すんじゃねェ!!」
メタルバードの鶴の一声に、新人達と新世代型達は直前で攻撃を止める。
「お、おい! どうすんだよ。もっと攻めて、鶏野郎をさっさと倒しちまおうぜ」
新人や新世代型と同様に、早々と決着を付けたい大将は攻撃の手を緩めず攻め続けようとメタルバードに進言。これにメタルバードは真剣な顔で大将に答え返しつつ、皆に注意を呼びかける。
「迂闊に攻撃しちゃイケねぇ! 初期の新世代型二次元人が厄介な奴らだってのは、今まで戦ってきたから解るだろ! しかも、このコケコッカーはそれに輪をかけたような特性を兼ね備えているんだ!!」
「???」
メタルバードの呼び掛けに大将も初めてコケコッカーと戦う面々も唖然としてしまう。
これに対しメタルバードは更に詳細な事情を皆に言い聞かせた。
「コケコッカーは弱点効果のある技や武器以外で攻撃されたらパワーアップしちまう厄介な特性がある! みんな! コケコッカーには弱点以外の技や術で攻撃しちゃイカン!!」
「え! そ、それじゃ……アタイ達が斬り付けて身体が光っているのは、パワーアップしちまっているって事!?」
メタルバードから聞かされたコケコッカーの特性を知って愕然とする纏流子の台詞に、メタルバードは更なる詳細を付け加えた。
「因みにパワーアップは最大で4段階まである! 最大まで上がると攻撃力だけじゃなく、奴が繰り出す各攻撃にもそれぞれマズい特性が追加しちまう!」
「そ、そんな……うわッ」
詳細に耳を傾けていたシルバー・ロウだが、その時彼の足元にメルトクリーパーが迫ってきていた。
メルトクリーパーはパワーアップの効力で、炎が壁に当たっても消えずに反対方向に反射。フレイムバーナーは本来、射程制限があり離れていれば普通は当たらないがパワーアップが最大の時は炎の射程と持続時間が伸びる。
通常の攻撃を受けると己の攻撃力を上昇できるコケコッカーの猛攻に、成す術が分からず逃げ惑うしかない新人らと新世代型達。
すると新人と新世代型同様にコケコッカーへの対処が不明な赤塚組は、焦る表情でメタルバードら聖龍隊に問い掛ける。
「お、おい! アイツのパワーアップ状態、何とかならないのか!」
テツが激しく問い掛けると、メタルバードは険しい顔で答える。
「手段は2つ。1つは連続で攻撃を当て続ければパワーアップ状態を1段階弱められる。あと1つは……」
メタルバードがコケコッカーの弱体化の手段を語っているその時。下手に手出しすれば逆に攻撃力が上昇するコケコッカーに対抗する術がなく、やむを得ず逃避するしかない新世代型の面々がコケコッカーに追い詰められていた。
「お、お前は何故……務めていた処分場で暴動なんか起こしやがったんだ!」
コケコッカーに追い詰められ、若干の抵抗として武器をコケコッカーに向けて対峙する纏流子/鬼龍院皐月/栗山未来。流子がコケコッカーに新世代型特有の共有感知で知った彼の起こした処分場での暴動事件について鬼気迫る顔で問い詰めると、コケコッカーは堂々とした態度で言い放った。
「暴動? 違うね! これは復讐だよ……聖龍隊に
「復讐ですって……? 精神に異常を来し、誰彼構わず殺傷する危険な
己の行為を復讐と言い切るコケコッカーの台詞に、栗山未来が不快極まりない面差しではっきりと言い返す。
更に未来に続いて、流子もコケコッカーに言った。
「アンタ! そんな
最初にコケコッカー自身が言った、新たな世界の創造について問い詰める流子からの質問にコケコッカーは迷いのない強い眼で答えた。
「無論だ! 新たな世界を産み出すため、喜んでこの身を捧げよう!」
そしてコケコッカーは同じ新世代型にも係わらず自分に斬り込んできた三人を完全に敵として見定めて攻撃を仕掛ける。
「メルトクリーパー……」
コケコッカーが眼前の三人に向けて足を大きく振り上げて仕掛けるメルトクリーパーを繰り出そうとした、その時。
「アイスガトリング!」
コケコッカーの死角から聖龍隊のミラールが持っている拳銃を両手で構えるまでの大型の銃器に変化させて、コケコッカーに向けて無数の氷の弾丸を連射していく。
「ぐおわっ!」
ミラールが連射する氷の弾丸に直撃したコケコッカーは氷漬けになり、動作を中断するのと同時に身体から発せられてた光も消えた。
「あ、アレは……!」
氷の弾丸に直撃して氷漬けになっただけでなく、身体の光も消えた現状を見て愕然とする大将たち赤塚組にメタルバードが訳を話した。
「コケコッカーの弱点は氷属性の攻撃だ。攻撃を受ければ立ち所に凍っちまうし、同時に奴のパワーアップも完全解除できるって寸法よ」
(ほ、炎なのに氷が弱点……さっきのイエティンガーもそうだが、普通は逆じゃねぇか? 氷なのに炎は平気で、炎なのに氷が弱点だなんてよ……)
メタルバードの説明を聞いて、大将は内心、本来は真逆の弱点ではないかと呆然とする。
そんな初期の新世代型二次元人の耐性や弱点に対しての矛盾点に呆然としてしまう大将を尻目に、聖龍隊はコケコッカーと本格的に戦闘に突入する
「焔降脚」
跳び上がってからの斜め下に放つ炎の跳び蹴りを、弱点である氷系の攻撃を仕掛けてくる聖龍隊に放っていくコケコッカー。
「離れてっ」
戦前に出てコケコッカーへの氷攻撃を仕掛ける聖龍隊の一人セーラーマーキュリーが他の隊士たちに離散するよう指示して焔降脚を回避していく。
だがコケコッカーは連続で焔降脚を繰り出し続け、攻撃が空振りに終わろうが壁に蹴りが当たろうが、速度を全く落とさず焔降脚を繰り出していく。
しかしコケコッカーが激しい動作をやめて、着地した所で前方に地を這う炎を発生させるメルトクリーパーを繰り出そうとした瞬間、聖龍隊の氷系能力者たちが仕掛ける。
「えいっ」
妖怪雪女である
「ぐおわっ!」
雪の結晶型の飛び道具が直撃したコケコッカーは案の定氷漬けになり動かなくなってしまう。
しかしスグに体を覆う氷を自身の筋力と炎の熱で砕くと、自分に攻撃してきた
コケコッカーが
「ウォーターフェアリー、お願いします!」「ええ!」
るちあを筆頭とするマーメイドメロディーズの掛け声に応えるウォーターフェアリー。そしてマーメイドメロディーズは何もない空間から大量の水を発生させ、それを前方のウォーターフェアリーに向けて放つ。その大量の水をウォーターフェアリーは水を自在に操る能力で自身の一部の様に動かし、大量の水を3つの渦にしてコケコッカーに向けて繰り出した。
「う、うわぁ!」
水を自由に発生できるマーメイドメロディーズの力と水を自在に操れるウォーターフェアリーの能力が上手く作用して繰り出せた水の渦に囲まれ、身動きを封じられるコケコッカー。
すると水の渦に取り囲まれ動けなくなるコケコッカーに、ブルーローズが氷のNEXT能力でコケコッカーを取り囲む水の渦を凍らせ大打撃を与えた。
「ぐおわっ!」
水の渦ごと氷漬けにされたコケコッカー。しかし今まで同様、自力で氷を内部から打ち砕き、自由となる。
しかし聖龍隊の進撃は止まらず、動けるようになったコケコッカーに今度はHEADの木之元桜と龍咲海のCLAMPキャラが襲撃する。
「フリーズ!」「氷の刃!」
木之元桜のフリーズ(凍)のカードでコケコッカーは一瞬で氷漬けになり、そこに龍咲海の氷の刃が斬り付けられた。
「ぐおわァっ!!」
瞬間冷凍と氷の刃という、自分が苦手とする攻撃を2連続で浴びせられたコケコッカーは今までにない悲鳴を上げて吹き飛ばされる。
生憎にも、コケコッカーが苦手とする氷属性の能力が使える隊士は現状の聖龍隊には多く、次々と弱点攻撃を当てられるバーン・コケコッカーは次第に追い詰められる。
だが、追い詰められたコケコッカーは例の如く自らの体から紅蓮の光を発して、再びその眼に闘志を漲らせた。
「来るぜ! 例の無敵状態って奴が」
紅蓮の光に包まれたコケコッカーを見て、大将はもちろん全員がコケコッカーが一切の攻撃を受け付けない無敵状態に入ったのを認識する。
そして無敵状態になったコケコッカーは円形のフィールドの中央に移動し、そこで跳び上がっては空中に滞空し、雄叫びを上げる。
「ぐお~~……っ」
すると全員がいる円形のフィールドに敷き詰められている、筒状の足場が上下に動き出した。
「わっ、わっ! 床が動き出したよ!」
自分達が立っている床が一定の間隔で上下に動作し出して驚く満艦飾マコ。
円形の広間全体の円状の床が上下に動き出した事で、移動が難しくなった状況に追い込まれる一同。
更に足場の地殻変動を行ったコケコッカーはそのまま床に着地すると、前方に向けてフレイムバーナーを放射してきた。
「ふっはっはっはっ!」
笑いながら火炎放射を口から吐き出すコケコッカー。しかし、そのフレイムバーナーは今までよりも格段に強力で、射程範囲が長くなっているだけでなくコケコッカーの前方の壁を燃やしてしまうほど範囲も強化されていた。
「ひ、火がこっちにまで!」
コケコッカーのフレイムバーナーは円形のフィールドの壁を一気に半分まで火の手に覆わせ、壁伝いに迫ってくる炎に野々原ゆずこ達は急いで逃げ去った。
しかし広間の壁半分を炎の壁で覆ったコケコッカーはそれだけでは飽き足らず、振り返っては今度は反対側の壁一面も一気に燃やして、炎の壁を形成する。
「う、うわ! みんな、壁から離れるんだ、早く!」
壁一面を燃やされて発生した炎の壁。その壁から子供達を避難させようと遠退く様に呼び掛けていく猿田学。
広間の壁一面が渦を巻く炎の壁フレイムトルネードに覆われて、壁際に避難する事ができなくなった一同は致し方なく広間のほぼ中央に移動せざるを得なかった。
「こ、ここじゃ戦闘に巻き込まれるよ」
中央に移動してしまえば戦渦に晒されるのを気に掛ける細野サクヤ。しかし戦闘を確実に避ける為には広間中央から離れるしかないが、壁に近づけばフレイムトルネードの灼熱に晒されて危険なのもまた事実。
「ふぅ……な、なんだかオーブンの中にいるみたいだぜ……」
周囲の壁全面がフレイムトルネードに覆われた状況に、大将は今の自分達が置かれた状況を例える。
そんな周囲の炎の壁による高温に苦しんでいたのは聖龍隊も同じであった。
「こ、このままじゃみんなミディアムだ……」
メタルバードは上昇し続ける室温に、皆の生命に危機が迫っているのをヒシヒシと感じた。
必死にこの場を乗り切る策を頭の中で講じようとするメタルバード。
だが熱くなる部屋に続いて、コケコッカーの地殻変動で上下に動く床が立っている皆の状態をより悪化させる。
「うぅ……気持ち悪い……」
一定の間隔で上下に動作する床の上にいる為、気分が滅入り乗り物酔いに近い症状を起こしてしまうタクミ・アルディーニを含む一部の面々。
すると次の瞬間、周囲の壁一面をフレイムトルネードで覆ったコケコッカーが皆の眼前に着地して前線の仲間に向けて足を振り上げてメルトクリーパーを繰り出そうとする。
コケコッカーが足を振り上げるのを見て、部屋の高温だけでなく逃げ場が制限された現況で繰り出されるメルトクリーパーに対抗する術を模索するメタルバード。
そしてメタルバードの脳裏に一つの案が一瞬で浮かび上がった。メタルバードは瞬時に指示を飛ばす。
「さくら! スノウを使ってコケコッカーに吹雪を直撃させろッ!」
メタルバードの指示に木之元桜は瞬時にスノウ(雪)のカードを発動させて、猛吹雪を発生させる。すると室温が緩和され、温度が低下。更に発生した吹雪はコケコッカーの体に冷たい雪を被せていき、コケコッカーの動きが鈍くなった。
「クッ、さ、寒い……」
氷に弱いコケコッカーは寒さで動作を鈍らせてしまう、その時。
「今だ! 一気にトドメを刺せ!!」
メタルバードの掛け声にミラーガールが応え、寒さで動きを止めてしまってるコケコッカーに全速前進。そしてコケコッカーの懐まで入り込むと、アイスノー・イエティンガーから得た能力で攻撃。
「ドリフトダイアモンド!」
ミラーガールは前方に向けて複数の微細な氷の塊を発射し、コケコッカーに氷の塊を当てる。ミラーガールが放った氷の塊に直撃したコケコッカーは足元をふらつかせながら高々と笑い出した。
「あーーっはっはっはっはっはっ!!」
まるで自分を負かした目の前の一行を笑い飛ばすかのように、大笑いしながらコケコッカーは元のクローンロイドへと戻り、爆発・消滅した。
[世界の望み]
炎の遣い手バーン・コケコッカーのクローンロイドを倒し、円形のフィールドは戦闘前のモニュメントが配列された広間へと戻った。
コケコッカーの弱点以外の攻撃を受けて強化する厄介な特性を目の当たりにした大将は先程の戦闘で感じ取った想いを包み隠さずに吐き出した。
「ふぅ、参った参った。あの鶏野郎が弱点以外を受けるとパワーアップしちまうなんて思ってもみなかったぜ」
弱点である氷以外の技を受ければ自身の攻撃力が上昇するコケコッカーの特性に苦戦した感想を述べる大将は、先の戦闘で感じた真意を語り続けた。
「それにしてもよバーンズ。さっきのコケコッカーが特に厄介だったけどよ、初期の新世代型はみんなあんな感じなのか?」
すると大将の疑問にメタルバードが答え返す。
「新世代型については余り常識に囚われるな。初期の頃の新世代型は色々と調整されて、従来の二次元人とは全く異なる。そもそも新世代そのものが今までの二次元人とは全く異なる種なんだからよ」
「へぇ~~……ホントに厄介だな、新世代は」
『………………………………』
メタルバードより新世代型二次元人の詳細を聞いた大将が思わず零してしまった発言を耳にし、その場の新世代型達は黙り込んでしまう。
「……っ。い、いや、お前さん達の事じゃないぜ。俺が言っているのは初期に生み出された新世代型の方で、お前さん達が
「……解ってますよ、大将さん」
大将が思わずいつもの調子で口を滑らせてしまっただけで、発言そのものに悪意が無かった事を星原ヒカルら新世代型達は理解していた。
先程からの戦闘で体力が消耗したり、怪我を負ってしまった仲間や新世代型達にナースエンジェルを始めとする面々が治癒能力で治療を施した後。皆は再び前進する為に眼前に残っているモニュメントに目を向ける。
そして熊の様なシルエットの絵が彫られたモニュメントに近寄り、その絵に触れてみる。
すると案の定、広間の景観が一変し、地形が高所に位置する平坦な崖の上へと変貌した。
「た、たっけぇ!」
ふと崖の上から下を覗き込んでみると、濃霧で覆われていたが体に感じる風の感覚で自然とかなりの高所であると悟る真鍋義久は驚倒してしまう。
真鍋を始め、多くの者が疑似体感装置で作られた偽物の環境とはいえ今いる場所の高さに驚きを感じる。だが、そんな折に前方に何者かがいるのを赤塚組のアツシが気付く。
「お、おいみんな! 向こうに何かいる!」
アツシの一言に、崖の下を見下ろしていた新世代型達も正面に顔を向けてみると確かに巨大な人影が存在してた。
皆の目の前に立ち尽くしていたのは、一目見ただけでも完全にあのジャイアントパンダの容姿を模したと把握できる巨漢の二次元獣人だった。
「お、おいバーンズ。アイツは……」
目の前に駆け寄ってきた巨漢のパンダの獣人についてメタルバードに大将が訊ねると、メタルバードは前方で立ち尽くすパンダの獣人の名を言い放った。
「かつて宇宙開発に関する資料などを管理していた、正真正銘パンダの新世代型二次元人……バンプー・パンデモニウム」
メタルバードがパンダ型の二次元人の名を皆に伝えると、おっとりとした口調でバンプー・パンデモニウムが唐突に話し掛けてきた。
「知ってる? コカインやモルヒネなんかの麻薬、その始まりは怪我の治療に使われる鎮痛剤だったんだよ……」
『…………』
「でも、そうやって破壊や狂気につながる危険なものを生み出しながら、世界は此処までの発展を築けたんだ……」
「
破壊や狂気に繋がるものを生み出しながら世界は発展してきたと述べるパンデモニウムの意見に、彼の巨漢と台詞に唖然とする新世代型達とは裏腹にミラーガールが反論。するとパンデモニウムは己の主張について自らの考えも包み隠さず語り明かした。
「分かってる、それはぼくたち
自らの思想が
パンデモニウムの思想に衝撃を受ける新世代型達が唖然としていると、そんな彼らにパンデモニウムは同じ新世代型の立場から話し掛けてきた。
「君たちは、ぼくたちと同じ新世代型なのに……なんで自分が果たさなきゃならない役割に気付かないのか」
『!』
突然掛けられた言葉の真意が理解できず、新世代型達は困惑してしまい激しく動揺してしまう。
「聞かないで! 所詮、
パンデモニウムから意味深な言葉を掛けられる新世代型達に、ミラールがパンデモニウムの話に耳を傾けるのを制止する。まるでパンデモニウムの主張を新世代型が知ってしまうのを躊躇っているかの様に。
しかしパンデモニウムは己の目の前で、自分の巨体に怯えたり、はたまた此方の言動に唖然としてしまう、自分と同じ新世代型達に話し続ける。
「それは実に簡単なんだな……今の君たちでは、ぼくらが産み出すべき新しい世界に必要とされてないからなんだな。今のままでは、君たちは……今の古い世界と共に滅んでしまうだけなんだな」
パンデモニウムの言論の内容が余りにも衝撃的すぎて余計に言葉を失くしてしまう新世代型達に、パンデモニウムは自らの考えを明白に述べる。
「核兵器に麻薬……ぼくたち二次元人とか……破壊に繋がるものを多く生み出してこそ、世界は進展してきたんだな……」
このパンデモニウムの言葉に、ミラーガールが強く反論した。
「それは違うわ! 二次元人の誰もが、破壊を望んでいる訳じゃない!」
だがミラーガールの意思を聞き取ったパンデモニウムは最後に衝撃の言葉を新世代型達に告げるのだった。
「破壊を望んでいるのは、この世界だよ。ぼくたちは、その手伝いをするだけ……」
世界は破壊を、破滅を望み、自分たち新世代型はその手伝いをする存在とはっきりと言うパンデモニウムの言葉に、新世代型一同は愕然とする。
そしてパンデモニウムは自分と同じ新世代型二次元人の皆に己の思想を全て語り明かすと、目の前にいる全員を排除しようと両手の鋭利な鉤爪を伸ばしては腕を振り回して戦意を見せ付ける。
バンブー・パンデモニウム。
凄まじいまでの攻撃力を持つ巨漢の新世代パンダ型二次元人で宇宙開発の資料などを管理する役目を担ってた。
かつて中国にあった廃材管理施設で物思いに耽っていたという。
おっとり、のんびりとした外面であるが、自己に忠実で相手の事を顧みない性格。
世界が滅んでいくことを深く悲しんでいるものの、世界が滅びたがっているという妄想もまた抱いており、世界が望むように新世代型による新しい世界を作るのが筋だという歪んだ思想を持っている。
しかし、それが
「発進!」
まず最初の一手にパンデモニウムは腕から竹槍型のミサイルを発射してきた。
「に、逃げろ! 竹槍型ミサイル、グリーンスピナーだ!」
直進してくるミサイルにメタルバードが全員を退避させようと呼び掛け、それと同時に全員が一直線に飛んでくるグリーンスピナーから逃避する。
だが焦ってグリーンスピナーが直進する方向に逃げてしまった琴浦春香や真鍋義久達は、背後の崖際まで足を進めてしまい逃げれなくなってしまう。
「わっ! ど、どうしよう。逃げ道がない……」
下も見えない崖の縁まで逃げてしまい、後方からはミサイルが飛来している為に逃げられなくなる真鍋達。しかし最初は直進してたミサイルは、真鍋達に接近してくるほど軌道を変えて上方に逸れていった。
「あ、あれ……あのミサイル、上に行っちゃったよ」
自分達に向かって一直線に飛来してくると思ったミサイルが、予想を反して上空へと逸れていくのを見て唖然としてしまう。
だがミサイルを発射したパンデモニウムは、逃げ惑う面々へ攻撃の手を緩めなかった。
「貫け!」
パンデモニウムは両手を地面に押し付けると、皆がいる地形全体から所々に土煙が起こり、その土煙と共に極太の竹が何本も生えてきた。
「うわ! 竹が伸びてきやがったッ!」
突如として土煙と共に地面から生えてきた極太で巨大な竹に驚愕する新世代型の鳴子章吉。
幸いにも、全員が竹が生えてきた地点には前もって土煙が発生したのを怪しく思い避けていた為に直撃を免れていた。
だが完全に伸び切った竹を、パンデモニウムが突進しながら薙ぎ倒していき、下手すればパンデモニウムの巨体からの突進や薙ぎ倒されていく竹の下敷きになって重傷を負う可能性に直面する。
「うわぁ!」「いやぁ!」
巨漢のパンデモニウムの突進と、彼に薙ぎ倒される竹の脅威で逃げ惑う新世代型の女子達。彼女達を含む新世代型を聖龍隊は必死に庇いながら安全な場所まで移動させる。その中で纏流子や鬼龍院皐月といった運動能力の高い新世代型達は自力で伸びてきた竹の合間を駆け抜けて回避していく。
しかし全ての竹を巨漢の体で薙ぎ倒したパンデモニウムは振り返り、再びグリーンスピナーを前方に2発続けて発射。
「発進!」「また来たぞっ!」
今度は2発も連続で発射された竹槍型ミサイルに、ほぼ全ての者が最後方に逃避し、ミサイルが上方に逸れていくのを見届ける。
「ふぅ~~……」
新世代型と共に最後方に逃避した大将は、ミサイルが上空に飛んでいくのを見て安堵する。が、その時である。
なんと上方に軌道を変えたミサイルが垂直に落下してきたのだ。
「わ! な、なんで!?」
大将は元より他の赤塚組も新世代型達も地上に戻ってくるミサイルに目を丸くして驚愕する。
そして垂直に落下したミサイルは地面に着弾すると盾に4つ連なった様な形で爆発し、小さな爆風が発生した。
「わあっ!」
小規模であったが自分達の方まで伝わる爆発の衝撃と爆風で思わず自身の顔を手で防いでしまう新世代型達。
しかしグリーンスピナーによる上空から地上への爆撃に続いて、パンデモニウムは新たな爆撃を放つ。
「ブラストランチャー!」
野太い声質で技の名を言うと、背中に背負っている砲身から爆弾を3発発射。砲身から飛び出した爆弾は放射線を描いて飛び、地面に着弾すると爆発。
「ど、どうにかお前らは爆撃が届かない地点まで逃げろ! 爆撃に呑み込まれたらエライ事だぞ!」
『わァーーーーッ……!』
ミサイルに爆弾と、爆撃の連続に大将は懸命に新世代型達に爆発が及ばない地点まで避難するよう呼び掛けながらパンデモニウムと応戦。新世代型達は容赦なく浴びせられる爆撃を逃れる為、慌てふためいて走り回り安全な場所を懸命に探す。
するとパンデモニウムがまたグリーンスピナーを3発連続で発射。赤塚組のテツが、またミサイルが上昇してから地上に向かって着弾する手前で破壊しようと銃器を発砲。しかしミサイルには傷一つ付かなかった。
「くっ、ダメか……」
銃器での破壊は不可能だと知って表情を歪ませるテツ。するとテツ同様にミズキが機械の翼で滑空移動しながらレーザーでミサイルの破壊を試みる。
ミズキのレーザーはミサイルに着弾し、それから数秒間当て続けるとミサイルは爆破され破壊できた。だが「ッ……レーザーでも当て続けなければ破壊できないか」と、ミズキはレーザーでの破壊は僅かながらに時間を消費してしまう手段だと頭を悩ませる。
すると出来るだけ素早くミサイルを破壊したいミズキの前に、聖龍隊ルーキーズのナツ・ドラニグルが飛び出ては彼女に言う。
「へへ、オバさんよ。コイツはメチャクチャ炎に弱いんだ。だからコイツが発射した武器も炎で簡単に壊せるんだぜ」
自慢気にミズキに話すと、ナツは口から炎を吐き出して一直線に向かってくる3発のグリーンスピナーに浴びせた。ナツの炎に呑み込まれた竹槍型ミサイルは一瞬で爆発し粉砕された。
意気揚々とミサイルを己の炎で破壊したナツが満足げな顔で見据えていると、ミサイルを破壊されたパンデモニウムは再び地面に両手を押し付けてバンブースピアの態勢に入る。
「貫け!」
地面から土煙と共に巨大で極太の竹が辺り一帯に何本も生え、皆の移動を制限してしまう。
巨大な竹に動きを封じられ、自由に移動できなくなった面々にパンデモニウムは容赦なく頭上からブラストランチャーによる爆弾を投下してきた。
「わぁっ!」「危ないッ」
投下されるブラストランチャーに直撃しそうになるチョコと桃花を同じプロト世代の海道ジンが体を張って彼女達に飛びついて、強制的に地面に伏せさせて爆発の衝撃から逃れさせる。
「ッ……だ、大丈夫か、君たち」
「え、ええ……」「ありがとうございます……」
体を張って少女2人の身を護った海道ジンが案ずると、チョコと桃花は返事をしつつジンに礼を返す。
だがそんな3人を始め、周囲には次々とパンデモニウムの容赦ないブラストランチャーによる爆撃の雨が降り注いでくる。
辺り一帯に生えた巨大な竹で移動を制限されている為に思う様に逃げる事もできない新世代型や赤塚組、そして彼らの身の安全を最優先に行動する聖龍隊は思う様に反撃できずにいた。
「ぐっ、それにしてもパンデモニウムか……名前からしても、爆撃とかで辺り一帯を焼野原にしても可笑しくないな」
「え?」「そ、それってどういう事ですか……?」
頭上から降り注ぐ爆弾から避難するため巨大な竹の陰に移動していた海道ジンが思わず発した台詞に、一緒に避難していたチョコと桃花が訊ねるとジンは険しい顔で二人に語った。その話は、近場の竹の陰に避難していた斉木楠雄の耳に入り、共有感知を介して新世代型二次元人全員にジンの話が伝わった。
「パンデモニウム(Pandemonium)。地獄や伏魔殿、修羅場や無法地帯……そして大混乱の場所という意味がある」
『!!』
海道ジンが語った「パンデモニウム」の言葉が意味する単語の数々に衝撃が走るチョコと桃花と新世代型一同。
そんな一聞すると無秩序の様な名のパンデモニウムは、辺り一帯に生やした竹を再び突進で次々に薙ぎ倒し始めた。
「走れ!」
パンデモニウムの突進に気付いたジンはチョコと桃花の手を引っ張って、急ぎ竹から離れると、竹はパンデモニウムの突進を受けて薙ぎ倒される。
全ての竹を突進で薙ぎ倒したパンデモニウムは、再度グリーンスピナーを連続発射して攻撃してきた。
「フレイムバーナー!」「そぉれっ」
バーン・コケコッカーの能力で得た火炎放射器とNEXTの炎能力で直進してくるグリーンスピナーを次々に破壊していくミラールとファイヤーエンブレム。
そしてパンデモニウムが背中の砲身から爆弾を3発連続で発射するブラストランチャーの態勢に入った瞬間、無防備になったパンデモニウムの真正面に【マギ】のアリババと【家庭教師ヒットマンREBORN!】の澤田綱吉が間合いに入り込み、炎攻撃をパンデモニウムに直撃させた。
「どわぁーーッ!!」
炎系の攻撃を喰らったパンデモニウムは火達磨となり、悲鳴を上げてじたばたともがき苦しみ出す。炎の攻撃を浴びせたアリババとツナは素早く後ろへ退き、火達磨状態のパンデモニウムから離れる。この間、火達磨状態のパンデモニウムは少しだけ行動不能に陥っている。
すると其処にサイボーグのミズキがパンデモニウムを焼いた二人の前に降り立ち、パンデモニウムに追撃でレーザーを放射していく。
だがミズキのレーザーを大柄な体格に直射されてもパンデモニウムは平然と直立を保ち、更には全身を包んでいた火も消えて通常の状態へと戻ってしまう。
火達磨状態が解けたパンデモニウムは未だにレーザーを直射し続けるミズキに狙いを定めて、両腕を身構えると一気に鋭い3本爪を左右から突いて連打してきた。
「せいせいせいッ」「ッ……!」
パンデモニウムの両手の鋭い爪から繰り出される左右の突きに、ミズキは背中の鋼の翼を自身の前に折り曲げてパンデモニウムの突きを防御する。だがパンデモニウムが左右からの突きを連打し終わると、直後に右腕を大きく後ろに構えて今までの突き以上に強力な突きをトドメとして突き出した。
「せいッ!」「ぐはっ」
トドメとして放った最後の突きがミズキの体を激しく打ち付け、彼女は軽々と後方へ吹き飛ばされてしまった。
「ミズキッ!」
パンデモニウムの強烈な突きに吹き飛ばされるミズキを見て大将が駆け寄る。その間もパンデモニウムは両手の鋭利な3本爪で自身の近場にいる隊士を、突き下ろしや突き上げで果敢に接近戦を展開していた。
強烈な接近戦を展開しているパンデモニウムを尻目に、吹き飛ばされたミズキに駆け寄る大将は彼女の容態を間近で確認すると、その痛々しいほどの深手に悲愴な面持ちを浮かべた。
「っ、ひでぇ怪我だ……誰か! ミズキを診てやってくれ!」
大将に続いて吹き飛ばされたミズキに駆け寄るテツとアツシが表情を険しくする中、大将の呼び掛けナースエンジェルが駆け付け、全身生々しい外傷を受けたミズキの治療に当たった。
その頃、両手の爪で過激な接近戦を繰り広げているパンデモニウムに今までも鬱憤も晴らすかの様に纏流子と鬼龍院皐月の二人が急接近し、パンデモニウムに斬りかかる。だがパンデモニウムは二人の斬撃を片手の爪だけで容易く受け止めてしまうと、そのまま斬りかかってきた二人を押し返してみせる。流子と皐月はパンデモニウムの怪力に押し飛ばされるも、地面に着地して態勢を維持する。
しかしパンデモニウムは近場にいる者たちへの強烈な突きによる白兵戦だけに非ず、自身の前方に目に付く者たちにも爆撃による遠距離攻撃を仕掛けてきた。
「せいせいせいせいッ」
離れた前方の者たちに、パンデモニウムはブラストランチャーを連発して放射線状に爆弾を発射していく。
「うわっ」「逃げろ!」
頭上から降り注ぐ爆弾に、皆々は必死に避けて逃げ惑う。
「クッ、此処じゃ危ねェ……いったん場所を移すぞ!」
周辺に降り注ぐ爆撃に重傷を負い動けないミズキの容態を案じ、大将はミズキの治療や容態を気にする面々と共に、急ぎミズキを移動させる。
「発進っ」
ブラストランチャーを発射したパンデモニウムは次に、前方に向かいグリーンスピナーを連射。竹槍型ミサイル3発を発射。ミサイルは直進していくと次第に上方へと軌道を変える。
「それそれっ」
上方へと軌道を変えたグリーンスピナーに、蛇崩乃音は飛行しながら音符ミサイルでパンデモニウムの竹槍型ミサイルを迎撃して爆破していく。
爆弾を発射するブラストランチャーに続いてミサイルのグリーンスピナーで爆撃してくるパンデモニウムに接近して攻撃を浴びせようと突っ込むキリトやアスナ、それにさやかと杏子の面々。だが接近戦を仕掛けてきた面子に対してパンデモニウムは再び両手を身構えて一気に左右からの突きを連打してきた。
「うわッ」「あぁっ!」
強烈なパンデモニウムの突きに堪らず吹き飛ばされてしまうキリトやさやか。連続で突きを受けてはいなかったが一撃一撃が非常に強力で、一発の攻撃を受けただけでも身体に懸かる痛みと負担は著しいものであった。
パンデモニウムに強烈な突きを喰らって地面を転げまわる者たちを含み、メタルバードがその場の皆に言い渡した。
「接近戦には気を付けろ! パンデモニウムは遠距離戦もこなすが、それよりも接近戦の方が得意なんだ!」
更に上空からパンデモニウムのブラストランチャーによる爆弾が降り注ぐ中、ジュピターキッドも皆に伝える。
「ミサイルや爆弾を使う爆撃戦と、両手の突きからの白兵戦の両方を巧みに使い分けてくる! みんな気を付けて!」
ミサイルや爆弾による遠距離戦での爆撃、そして間近の相手に繰り出してくる両手の爪からの強烈な突きによる白兵戦からの接近戦。二つの戦法を巧みに使い分けるパンデモニウムの攻撃に気を付けるようメタルバードとジュピターキッドは皆に告げる。
と、メタルバードとジュピターキッドが皆に呼び掛けている最中、パンデモニウムが爆撃を避けるため無意識に自分の眼前に移動したモルジアナに目をつけ、彼女に向けて強力な突きをお見舞いさせようと攻撃した。
「連葉断!」
上方から足元のモルジアナへと3本爪の突きを振り下ろしたパンデモニウム。だがモルジアナはパンデモニウムの連葉断を上へ跳び上がって容易く回避してみせる。跳び上がって攻撃をかわしたモルジアナにパンデモニウムは自然と目を向ける。
そのモルジアナへの連葉断での突きを大きく外したパンデモニウムに、ファイヤーエンブレムと彼の能力をコピーした鏑木楓がパンデモニウムが接近戦を繰り出せないギリギリの距離から炎を放射して、パンデモニウムに炎を浴びせた。
「どわぁーーッ!!」
ファイヤーエンブレムと楓から炎を浴びせられたパンデモニウムは火達磨となり、その場で苦しさゆえにじたばたもがく。
二重の炎攻撃を受けたパンデモニウムに、横からワイルドタイガーとバーナビーが迫撃を打ち込もうとする。が、パンデモニウムはスグに全身の火が消えて、突っ込んでくる二人に反撃。
「うわッ」「バニーちゃん!」
突っ込んできたバーナビーをパンデモニウムは軽く片腕だけで振り払ってしまい、吹き飛ぶバーナビーを見てタイガーが叫んだ。タイガーがバーナビーに気を取られているその時、パンデモニウムが目を怪しく光らせてタイガーの間近に近付いた。
「白黒つけるよ」
怪しい掛け声をタイガーに発した直後、パンデモニウムはタイガーを両腕で掴みかかる。
「うわッ!」「こ、虎徹さん!」
パンデモニウムに掴まれたしまうタイガーを見て、先ほど吹き飛ばされてしまったバーナビーは地べたに寝転がった状態で驚く。
そしてタイガーを掴まえたパンデモニウムは、ジワジワと少しずつタイガーを締め上げていく。
「ぐあああぁ……!」
強靭なパンデモニウムの力に胴体を締め上げられていくタイガーの肉体は悲鳴を上げる。
「お父さん!」
父、虎徹の危機に悲痛な表情を浮かべる楓。そして楓同様にメタルバードもパンデモニウムに締め上げられる虎徹を目にして表情を一変。
「い、イカン! パンデモニウムの体術、鯖折りだ!」
「さ、鯖折りって……要するにプロレス技のベアハッグじゃねェか!」
メタルバードの発言に大将が驚愕する。鯖折りとはプロレス技でベアハッグという絞め技で、本来は両腕で相手の胴体を締め上げて苦しませる技。そのベアハッグをパンデモニウムは巨漢を生かして腕だけで実演しているのだ。
パンデモニウムから鯖折りで着々と胴体を締め上げられ、苦痛を感じるタイガーは苦悶の表情を浮かべるも諦めずに自力で鯖折りから脱出しようと抵抗。
しかし強靭なパンデモニウムの握力に脱出できないタイガーのヒーロースーツの強度が限界に達しようとしていた。すると其処に間髪入れずルーキーズの仲間達がタイガーを掴むパンデモニウムの手に集中攻撃を浴びせ、締め上げられていたタイガーを救出する事に成功する。
仲間の助けでどうにか脱出できたタイガーは床に投げ落とされ、パンデモニウムの締め上げから解放される。
するとパンデモニウムがタイガーを放した瞬間、ミラーガールが前方から自身の能力で強化させたコケコッカーの技を繰り出してパンデモニウムに攻撃。
「メルトクリーパー!」
ミラーガールの前方に扇状に拡散していく地を這う炎と、前に向かって直進する炎の渦がパンデモニウムに直撃。
「どわぁーーっ!!」
今まで以上の火炎を浴びたパンデモニウムは悲鳴を上げるが、火が消えた直後パンデモニウムの様子が一変する。
「はぁ~~……」
全身に力を込めるような素振りをし、同時にパンデモニウムの体から紅蓮の光が発生した。
「お、おいおい。今まで、このパンダは時おりダメージを与える度に体を光らせていたが、この無敵状態とはどう違う訳?」
最初のパンデモニウムとの戦闘から、時おり目にする発光するパンデモニウムの状態に、大将は今まで時々現れた無敵状態と今目の前の無敵状態とは何が違う点があるのかとメタルバードに訊ねる。するとメタルバードは全身に力を込み始める紅蓮の光に包まれたパンデモニウムを直視しながら大将の疑問に答えた。
「初期の新世代型二次元人が特殊だってのは前にも話したろ、無敵状態がその一つとも。しかし、このパンデモニウムの場合は無敵状態が体力が一定まで下がってからじゃなく、ダメージを受ける度にホンの数秒だけ無敵状態に変動しちまうんだ。もちろん必殺技を使ってくる際も同等の状態に陥っちまうがな」
「そ、それじゃ……! 今までと違って、コイツはダメージを受ける度に無敵状態が数秒続く上に、普通に必殺技を使ってくる際も無敵だっていうのか!?」
ダメージを与えられない無敵状態が、パンデモニウムの場合攻撃を受ける度に状態が変動し、通常通りに必殺技使用の際も無敵状態に変化できる事実を知って驚愕する大将。
そして全身に力を込めたパンデモニウムは前に向かって片手を突き出した。
「終焉……っ!」
パンデモニウムが繰り出した強烈な突きは突進力と攻撃範囲が優れた突撃型の戦術で、前方にいた面々に容赦なく突きを繰り出した。
「離れるんだ!」
ロックバイソンが急いでパンデモニウムの突きから逃れるよう皆に叫ぶが、初めてパンデモニウムと戦いを交えた新人達が余りの速さで繰り出される突きと突進に弾き飛ばされてしまう。
「うわぁ!」「きゃあっ」「うっ!」「いやぁ!」
単純な突進攻撃であったが、瞬発的な速度と広範囲に及ぶ高威力で爪に弾き飛ばされてしまうキリト/アスナ/巴マミ/百江なぎさの4名。
強力なパンデモニウムの必殺技:葉断突に弾き飛ばされてそのまま動かなくなった面子を見て、メタルバードが慌てて彼らの様子を確認しに向かう。
「お、おい! ……いかん、酷いダメージだ。スグに治療だ! 急がないと下手すりゃ命にかかわるぞ!」
メタルバードの宣告に彼の言葉を聞いた一同に衝撃が走る。そこに急きょナースエンジェルが駆け付けて4人の重傷を治療していく。
しかしパンデモニウムは瞬発な速度での突進攻撃から繰り出す強烈な突き、葉断突を繰り出し続け、場の面々を窮地に追い立てていく。
「いやぁ!」
「に、逃げろ! あの巨漢にあのスピードで繰り出される突きなんか一発でも受けたら、アタイ等のような平凡な二次元人なんか一瞬で風穴が開いちまうよ!!」
真鍋義久や琴浦春香たちと共に森谷ヒヨリが涙目で悲鳴を上げ、その横を同じく逃げまどいながら自分達の様な常人並みの肉体しか持ってない二次元人は一撃当たっただけで命にかかわる事態だと叫び上げるギュービッドらチョコと桃花の3人組。
その後も各方向に突進して葉断突を繰り出していくパンデモニウムの攻撃に、命辛々逃げ惑う新世代型と懸命に回避していく聖龍隊。
しかし紅蓮の光に包まれて必殺技を展開してたパンデモニウムの動きが止まり、同時に彼の体に纏われてた紅蓮の光も消滅したのを視認した聖龍隊は再びパンデモニウムに攻撃を再開する。
「今だ、かかれッ!」
メタルバードの掛け声と共に、パンデモニウムに一斉攻撃を浴びせる聖龍隊。獅堂光と木之元桜の両名による炎の矢での乱射とファイアリー(火)での火炎攻撃に、パンデモニウムは悲鳴を上げて火達磨に。
「どわぁーーっ!!」
悶え苦しむパンデモニウムの体に纏わりつく炎が消え、パンデモニウムが前を向いた瞬間。彼の目に飛び込んできたのは、自身の倍の長さの刀身を持つ巨大な刀を前に突き出して構えるミラーガールであった。
誰もが彼女の倍の刀身はあろうかという巨大な刀を勇猛と握り締め、前に向けて切っ先を突き出しているミラーガールの姿に驚愕。
そしてミラーガールは次の瞬間、手に掴んでいる巨大刀の刀身に灼熱の炎を纏わせてパンデモニウムに突き込んでいった。
「はぁっ!!」
パンデモニウムの葉断突にも劣らない瞬発力と突進力で炎を纏った巨大刀をパンデモニウムに突き込んでいくミラーガール。
そして彼女がパンデモニウムの巨体を一瞬で通り過ぎたかの様に皆の目に映った次の瞬間、パンデモニウムの巨体が炎に包まれた。
「どわぁーーーーっ!!」
今まで以上の悲鳴を上げて炎上するパンデモニウムを見て、皆はミラーガールが一瞬でパンデモニウムの巨体に炎を纏った巨大刀で突いて攻撃したのだと認識した。
そしてミラーガールの一撃を受けたパンデモニウムは爆発しながら前のめりに倒れるのだが、この時新世代型達の耳に微かながらにパンデモニウムの声が聞こえた。
「これで……終わり……」
爆発音にかき消されて聞き取りにくい声であったが、何処となく悲愴感に満ちたパンデモニウムの断末魔に新世代型達の心は軋んだ。
そんな爆発炎上し火達磨で倒れるパンデモニウムの微かな断末魔が耳に入ってしまい、微弱ながらも心を痛めた新世代型達の心境に気付いたのか彼らにメタルバードが話し掛けた。
「パンデモニウム、奴は自分を含む世界そのものが滅ぶ事が宿命だと少なからず思っていた。……そう、アイツのモデルになったジャイアントパンダの現状から見てもな」
そのメタルバードの言葉を共有感知を通して周知した新世代型達は再び燃え盛るパンデモニウム、その容姿が解除され元のクローンロイドに戻った残骸を静かに見詰める。
事実、ジャイアントパンダは絶滅危惧種である。
[有益なる異常者]
己を含む世界の破滅を宿命と捉えていたバンブー・パンデモニウムのクローンロイドを撃破した一行は、スグに残りのモニュメントを作動させずに先ず先の戦闘で負傷した面々の治療を優先させる。
「っ……」
「……大丈夫か」
「え、ええ……」
先ほどパンデモニウムの突進攻撃で弾き飛ばされ、激しく体を打身してしまい治療を受ける暁美ほむらに声をかけるメタルバード。そして周りにも、先のパンデモニウムの苛烈な爆撃と白兵戦で傷だらけになった面々が傷を癒し、体力が戻るまで休息するのだった。
皆々が治療を受けている間、大将は先程のパンデモニウムを含む今まで戦ってきた初期の新世代型二次元人の異常さについてメタルバードと対話していた。
「おい、バーンズ。俺は今まで色んな二次元人を見てきたが……あのクローンロイドが化けた初期の新世代型二次元人はどうなっていやがる? あれが此処にいる新世代型共と同じタイプの二次元人だって言うのか?」
「まぁ、種族的に言えば同じではあるがな。しかし初期と違い、彼らには多少のプロテクトが施され、初期の様に
「た、確かにそれは俺も解っちゃいるが……だけど初期の新世代型も、最初は
「そうだな……彼らは自分達の使命に対して独自の考えがあった。故に三次元人に反発して、暴動の数々を起こした
大将と話し続けるメタルバードは、その時自分達の対話に人知れず聞き耳を立てている新世代型の存在に気付き、大将との話を前触れもなく中断する。
「……とにかく、あんまり初期の新世代型については考えるな。考えたって答えが見つかるとは限らない、答えのない問題も世の中には溢れているのよ」
そう大将に言い残すと、メタルバードは大将の許から離れて周辺で手当を受けている仲間や新世代型の様子を視察しに行った。
「あっ、オイ……」
話の最中に去ってしまうメタルバードを呼び止めようとする大将だったが、メタルバードの心中に潜んでいる何かしらの事情を察して呼び止めるのを止めた。
すると大将との対話を中断し、治療を受けた面々の様子を視察しに来たメタルバードと視線が合った斉木楠雄が、地べたに座る自分の横を通り過ぎようとするメタルバードに話し掛ける。
「……総長さん、何か知っているんですか」「んっ、何かって?」
唐突に斉木から訊ねられたメタルバードが訊き返すと、斉木は眼を鋭くさせてメタルバードに質問をぶつけた。
「僕たち新世代型に関して、あなた方聖龍隊は何かしらの事情を知っているのでは?」
「なんでそんな事を聞くんだ。お前らには関係ないだろう」
「いえ、もう関係ないとは言い難いです。現に僕らは遠路遥々このタイの異国に強制的に連れて来られているんです。オマケに、確かに貴方が先ほど述べた様に、初期の新世代型と今の僕らとでは思考の持ち方に対して多少の違いはあるかもしれませんが、新世代型としての特殊な遺伝子構造はそのままです。故に、この研究施設で僕たちの遺伝子が乱用されているんじゃないですか」
「………………………………」
「……あなた達は、何を僕たちに……いいえ、世情に隠しているんですか」
斉木楠雄からの容赦ない質問攻めにメタルバードは表情一つ変えてなかったが、心中では斉木はもちろん彼と同等の新世代型達に対して只ならぬ懸念を募らせていた。
そしてメタルバードと斉木の間に一時ばかし重い空気が流れた直後、メタルバードが場の空気を断ち切る様に斉木に言った。
「……とにかく、お前らも余り気にするな。初期は初期、お前達はお前達さ。気にする必要もねぇよ」
「で、ですが……」
メタルバードの言動に思わず言葉を返そうとする斉木だったが、そんな斉木にメタルバードは跪いて彼と同じ目線で語り掛けた。
「遺伝子とか血筋なんか関係ねぇ。お前らはオレ達が命を賭けてでも守るべき大事な存在。それ以上もそれ以下でもない」
「………………」
「心配するな。お前らの身の安全はオレ達が保証する。例え、この先どんな災いや困難が起ころうとな」
力強くも何処か心温まるメタルバードの言葉に、斉木はもちろん彼の思想から共有感知を通して感じ入った新世代型達の心に深く感銘するのだった。そんなメタルバードの言葉を人知れず耳に入れてた大将も、彼や彼が指揮してる聖龍隊の新世代型に対する心意気に思わず笑みを零した。
そして傷を負った面々の手当てが終わり、残りのモニュメントを起動させる一行。
一行は一見して花の様な絵が記されたモニュメントに歩み寄って、そのモニュメントに触れてみる。
するとモニュメントと広間は光り出し、モニュメントからクローンロイドが出現すると同時に広間の景観が一変する。
景観が一変した広間は、眩しいほどに光に満ちた明るい空間であった。
皆がその光り輝く広間を眺めていると、突如として皆の前方に上空から一筋の閃光が直射され、その閃光の中から一人の人物が現れる。
その人物は細身の、肩に葉っぱの様な飾りと顔が一輪の花を模した目付きの鋭い二次元人であった。
「あ、アイツも初期の新世代型……」
大将が前方の花の姿をした二次元人を睨みながら呟くと、その大将の呟きにメタルバードが答えた。
「元々は軍人や戦士といった武人などの新世代型が訓練する為の施設、ヘリオスを統轄してたひまわり型の新世代……オプティック・サンフラワード」
眼前のオプティック・サンフラワードを視点から逸らさず睨み続けるメタルバードが説明すると、皆の視線が集中するサンフラワードが目の前に群がる一行を目にして突然慌てふためいた。
「
独特のエコーがかかった声質で喋り出すサンフラワードは、自身の目の前に
「って、おいおい、何だコリャ? 今までの初期以上に狂っちまってるぞ……」
現状どころか自身の事までも混乱し理解できてない様子のサンフラワードを目の当たりにして、大将は今まで目にしてきた初期の新世代型以上にサンフラワードが狂ってしまっていると感じた。だが、サンフラワードは、そんな言い草をする大将に強く反発した。
「まさか。
このサンフラワードの主張に聖龍隊の新人であるキリトがサンフラワードを睨み付けながら言い返した
「ふざけるな! お前みたいなのが有能だと……? 狂っちまっているのに自分を正当化するなんて、典型的な
するとキリトの言い分に、サンフラワードは冷ややかな物言いで言葉を返した。
「君たちの様な半端者には、分かるまいがね」
キリト達プロト世代を半端者と一括りにし、そんなプロト世代には理解できないだろうと見下す物言いをするサンフラワードは次に自分と同じ新世代型の面々に目を向けて語り掛けてきた。
「新しい新世代の皆様方……あなた方ならば自分達が何なのか……そして我々新世代が成すべき事、目指すべき世界が何なのか……お気づきでしょう?」
だが今まで同様、初期の新世代型二次元人の言動に理解を示せない新世代型達は困惑に満ちた表情をサンフラワードに向ける。
「な、成すべき事に、目指す未来……? ま、全くもってチンプンカンプンだぜ」
サンフラワードの知的かつ狂人的な言動が齎す台詞に真鍋義久ら新世代型達の頭の中は混乱しそうだった。
そんな真鍋の発言に、サンフラワードはやや呆れた素振りで新世代型達に言った。
「究極無限にして、至高の遺伝子を持ち合わさる……私たち同様にかの人物から生み出された新世代の二次元人ともあろう方々が……所詮は小さな世界、古い時代に囚われた哀れな二次元人と言う事ですか」
そしてオプティック・サンフラワードは右人差し指を天に突き上げる様なポージングで戦前の者たちに襲い掛かる。
「ば、バーンズ! あのひまわり野郎は、どんな奴だ!?」
「オプティック・サンフラワード、奴は……」
大将から訊かれ、メタルバードは簡略的に目の前のサンフラワードについて語り明かした。
オプティック・サンフラワード。元々は新世代型二次元人の訓練施設「ヘリオス」を統轄するひまわり型の二次元人。
超高性能な知能を備えているが、発言内容があまりにも高次元(?)なため、他の二次元人とは会話が成立しない。
自分を
ある程度の空間支配能力を持ち、主にレーザーを操って攻撃。ダミーの分身を作って相手を惑わすことも得意。
「み、みんな! 急いで私の後ろに……早く!」
オプティック・サンフラワードが攻撃を仕掛けてくる前に、新世代型の皆々を自分の後方に呼び集めて避難させていくミラーガール。
ミラーガールの呼び掛けに新世代型達は慌てて彼女の指示通りに壁際に避難していく過程の最中、サンフラワードが仕掛けてきた。
「私の勝ちだ!」
そうサンフラワードが高らかに叫ぶと彼は強烈な閃光を放ち、広間全域が眩い閃光が包み込まれたと思った次の瞬間、なんと空中に先程までは存在してなかった足場が瞬時に生成されていた。
そしてサンフラワードは自身を青々しい緑の葉っぱに覆われた植物の蔦の様なもので包み隠すと瞬時にその場から消えてしまう。
「ど、何処だ!」
大将たち赤塚組が消えたサンフラワードの姿を探していると、サンフラワードは先ほど地形変化で生成した空中の足場に自らを包み隠した植物の蔦と共に地面から生え現れた様に姿を見せる。
そして空中の足場に移動したサンフラワードは力を込め、黄緑色の光球を放った。その光球は天井を移動して地上の赤塚組や隊士目掛けて眩い黄緑色の光線を直射してきた。
「か、回避しろッ!」
メタルバードの掛け声で急ぎ回避運動をする赤塚組と聖龍隊。すると天井から容赦なく発射されてくる光線に逃げ惑う赤塚組と聖龍隊の新人達に、以前にもサンフラワードと戦った経緯のある聖龍隊が呼び止める。
「こっちだ、早く!」
言われるがままに呼び止めた方に足を運ぶと、そこはサンフラワードが生成した足場の真下だった。
どうやら光線は地形を貫通しないため、空中の足場を利用して防ぐ事ができるらしい。しかも光線を発射する光球は壁まで辿り着くと上下が切り替わり、地上から天井に向けて発射されていく特性があるらしいがサンフラワードから発射されて数秒経つと光球そのものが消えるため一時ばかし足場を利用すれば容易に光線を回避できてしまう。
そして光球から放たれる光線が終了すると、サンフラワードは再び自信を植物の蔦で覆い、姿を消してみせる。
戦場でサンフラワードの姿を探していると、サンフラワードの姿を隠した植物の蔦が地上から生えてきて、そこからサンフラワードが姿を現した。
「喰らえっ、ブラストランチャー!」
サンフラワードの姿を把握したミラールが、自身の銃を大型の銃火器に変化させてサンフラワードに砲弾サイズの爆弾を撃ち込む。
「何イィィーッ?!」
ミラールがバンブー・パンデモニウムの技を模した爆撃を直撃させると、サンフラワードは全身を痙攣させて硬直してしまう。
サンフラワードが硬直している僅かな間にメタルバードが、サンフラワードと初戦である赤塚組と新人達に弱点について大声で説明。
「サンフラワードは爆発や爆風の衝撃に非常に弱い! 地面から蔦を生やして自分の姿を消してから立ち位置を変えて翻弄してくるが、よく見切って姿を現したところに一発ぶちかませ!!」
サンフラワードの弱点が爆発や爆風での衝撃だとメタルバードから説明を受けた戦士達は、サンフラワードが此方を惑わそうとと植物の蔦と共に地面から姿を現す所を見逃さず攻撃を当てていこうと集中する。
するとミラールから爆弾をお見舞いされたサンフラワードが再び広間全体に閃光を放った。
「あーーはっはっは」
高らかな笑い声と共にサンフラワードが閃光を放つと、戦場の地形が再び変化し空中の足場の位置とその形が新しく生成される。
そして「あーーはっはっは、私の勝ちだ!」と叫ぶと再び黄緑色の光球を放ち、その光球が天井を伝って地上をレーザーで攻撃してくる。
「シャイニングレイだ! 急いで足場の下に!」「あの技、シャイニングレイって言うのか」
サンフラワードが仕掛ける黄緑色の光線、シャイニングレイから回避しようと急ぎ新しく生成された足場の下に移動するメタルバード。そのメタルバードの言葉で初めてサンフラワードが放つ黄緑色の光線の技名を知る大将。
更にサンフラワードは自身が仕掛けたシャイニングレイが地上を攻撃している最中、相手に接近して攻撃しようと自らを蔦で隠しつつ姿を消してから戦場の相手の眼前に地面から出没して奇襲をかける。
「うおっと! いきなり出やがった」
眼前から突如として出没したサンフラワードに驚き、思わず尻餅を着きそうになってしまうキリト。
するとキリトの眼前に出現したサンフラワードに、彼と同じく新人の暁美ほむらが装備していたロケットランチャーをサンフラワード目掛けて発射。
「何イィィーーッ?!」
ロケットランチャーの爆撃に直撃したサンフラワードは全身痙攣し硬直する。
その間、天井から直射されるシャイニングレイのレーザーを生成された足場で回避している一人、ミズキが思わず口を零す。
「……それにしても、何のために足場を作ったのか……この足場のお陰で簡単にレーザーから身を護れるわ」
すると、このミズキの疑問に同じ足場の下で避難しているジュピターキッドが呆れた顔で話した。
「自分が移動したり、ダミーを作って配置する為の足場なんだろうけど……有利な地形や状況にしてる積りが完全な墓穴になっちゃってるんだよ」
植物の蔦で自らが移動したりダミーを作って配置する為の足場であるが、それが裏目に出て天井からのシャイニングレイを回避できる防御壁になってしまっているのだと語るキッド。
だが、その間もサンフラワードは植物の蔦で自分の位置を変えながら絶えずシャイニングレイを発動させて地上の面々を攻撃していく。
「わあ!」「きゃあっ!」「………………っ!」
サンフラワードが放つシャイニングレイのレーザーに思わず脅えてしまい悲鳴を上げてしまう新世代型達。彼らを必死で護ろうとミラーガールは、どんなに強力な光線でも反射させて内側を絶対に防衛できるミラーバリアーを展開してシャイニングレイのレーザーから新世代型達を護り抜く。
その後も戦場を駆け巡る面子の眼前に移動して出没してからシャイニングレイで攻撃してくるサンフラワードに爆撃をお見舞いしていく聖龍隊と赤塚組。
と、ここでサンフラワードが仕掛けてくる戦法が少しばかり変わった。地面から植物の蔦を生やして自身を覆い隠してから別の地点に移動する際、サンフラワードは自分以外にも別の個所にも蔦を生やして自らのダミーを作り出して惑わしてきた。
「に、偽物!?」
目の前に出現したサンフラワードに攻撃したものの、スグに消えてしまった点からダミーと判別したシルバー・ロウは困惑する。
前線で戦う者たちがダミーに翻弄されている所に、サンフラワードは勝ち誇ったかのように高らかに笑いながらシャイニングレイを仕掛けていく。
しかしサンフラワードのシャイニングレイは毎度の如く、空中に生成された足場で容易に回避できてしまう。
「あーーはっは、あーーはっはっは!」
高らかに笑いながら毎度の如く回避できてしまうシャイニングレイを放ち続けるサンフラワードを見て、赤塚組も新世代型達も唖然となる。
オプティック・サンフラワードが狂っているのか狂ってないのか解らなくなってしまいそうだからである。
次の瞬間、サンフラワードがシャイニングレイとは違う技を仕掛けてきた。それは虹色に光彩する網状の球体であった。放たれた球体は地形にぶつかる度にバウンドしながら縦横無尽に動き回る。
「な、なに。これは……」
空中に生成された足場の上からサンフラワードを自身のレーザーで狙撃していたミズキが虹色の光球に目を向けていると、彼女の一瞬の隙から光球がミズキに向かって飛来し直撃した。
「え? な、何なの!?」
光球が直撃したと思った瞬間、ミズキは光球の中に閉じ込められてしまい身動きが取れなくなってしまってた。必死に抗うミズキだが、内側からは光球を破壊する事は不可能であった。
すると其処にニュー・スターズのマカ=アルバーンがミズキが捕らわれている光球に急接近し、巨大斧を斬り付けてミズキを捕らえる光球を破壊して彼女を救出。ミズキを救い出すとマカは彼女に告げた。
「あのネット状のボールに捕まると拘束されて動けなくなります! 内部から破壊する事はできないので、誰かに助けてもらう必要があるので、気を付けて!」
マカの助言にミズキは素直に首を頷いて同意を示す。
マカがミズキを助けている間も、聖龍隊と赤塚組による接戦でサンフラワードにダメージを与えていた。弱点効果のある武器や技でなくとも、ダメージだけは地道に与える事が出来てた。
するとサンフラワードは自身のダメージが蓄積されている状況に、先程ミズキを捕らえたネット状の虹色の光彩を放つ球体を2個続けて発射してきた。
「に、2個も撃って来やがった!」
只でさえ地形に反射して不規則な動きをするサンフラワードの網が、2個も同時に発射され戦場を縦横無尽に飛び回る状況に大将が愕然する。
戦場の皆々は、それぞれ空中に飛び上がったり横に回避したりして網をかわしながらサンフラワードに攻撃していく。
が、サンフラワードはその後も2個同時に網を発射して合計4個の網を戦場に放って皆の移動を制限。その直後、今度はあの天井を伝って地上を攻撃する黄緑色の光線、シャイニングレイを直射する光球を2つ放って地上の面々を追撃する。
「ひっ、光の球も個同時に仕掛けてきた!」
網に続き、サンフラワードが放つ2発のシャイニングレイに追われて懸命に逃げ続ける赤塚組の山崎貴史。
すると頭上からのシャイニングレイと地形を反射して飛び回る網を必死で避けようと走り回っていた赤塚組の海野ぐりおと水原花林、そして聖龍隊の新人佐倉京子とリーファが網に捕らわれて自由を奪われてしまった。
「急げ! レーザーが直撃する前に4人を助け出せ!」
網に捕らわれてしまった4人を見てメタルバードが呼び掛けると、4人を急ぎ助け出さんと近場にいた面子が網を攻撃して破壊、4人を救出した。
網が壊れて地上に落下した4人だが、彼らの前にサンフラワードが植物の蔦と共に地面から出没し、近距離から攻撃しようと迫る。
だが4人に迫ろうとするサンフラワード目掛けて高町なのはが砲撃をお見舞いし、爆風でサンフラワードにダメージを与える。
「何イィィーーッ?!」
再び全身痙攣して硬直してしまうサンフラワード。
するとサンフラワードは再び閃光を放ち、瞬時に空中の足場を再び新しく生成して地形を変化させた。そして素早く相手を捕らえる網を発射して、スグに地中に身を隠してから再び植物の蔦と共に地面から出没して自身のひまわりの花を模した顔にエネルギーを溜め始めた。
「な、何する気だ?」
ひまわりの顔にエネルギーを溜め始めたサンフラワードを見て動揺の難色を顔に浮かべる大将。
次の瞬間、サンフラワードの顔面から黄緑色の光線が360度縦横無尽に回転して放射しながら照射してきた。
「わあッ! 何なんだ、あの顔面レーザーは!?」
突如サンフラワードの顔面から放射される光線を目の当たりにして思わず涙目になるほど驚愕してしまう大将にメタルバードが言った。
「あれもシャイニングレイの一つだ! 顔面から光線を放射して360度回転して照射し続けて攻撃してくるタイプだ! 今までのシャイニングレイ同様、足場を利用して上手く回避するしかねェ!」
「そ、そんな無茶な……」
サンフラワードの顔面から縦横無尽に照射されるシャイニングレイの攻撃に、大将は到底生身の人間がかわし切れるものではないと表情を曇らせる。
そんな大将と同じく、シャイニングレイの照射に苦しんでいたジェイクはどうにか光線を横に回避し、その直後に装備していた手榴弾をサンフラワードの足元目掛けて投射。足元に転がった手榴弾は爆発し、サンフラワードに大打撃を与えることに成功する。
「何イィィーーッ?!」
足元からの爆風を受けて全身が痙攣して硬直してしまうサンフラワード。すると再びサンフラワードは閃光を放ち、空中の足場を作り直して地形を変化させた。
だがその直後、サンフラワードは全身から紅蓮の光を放ち、そして高らかに天を指さすと同時に叫んだ。
「アースクラッシュ!」
エコーのかかった地声で高らかに叫ぶと、地上に三本の紫の光の筋が垂直に照射され、それが一点に集中していく。
『???』
一瞬、サンフラワードの叫び声の意味するところと、自分達の方に集まってくる紫の三本の光の筋に困惑して立ち尽くしてしまう新人ら。
その時「そこから離れろ!! 今すぐ!」とメタルバードの声が。その声に新人らが気付くものの、彼らの上空から巨大で蒼い閃光のレーザーが天井から地面までの範囲に照射された。
「うわッ!」
上空からぶっ放されたレーザーに直撃は免れたものの、地面に直撃した際の凄まじい衝撃で吹き飛ばされてしまう新人達。
その後もサンフラワードは上空から紫色のレーザーポインターで狙いを定めて地上を無差別に攻撃する。
「おりゃおりゃっ」
掛け声と共に地上を蒼き光線で攻撃していくサンフラワード。その蒼く太いレーザーに只管逃げ惑うしかできない戦場の面々。
「な、何だ、ありゃっ!」
上空から次々に照射されてくる蒼い光線から走って逃げ惑う大将にメタルバードが答えた。
「あれがサンフラワードの必殺技、アースクラッシュだ! 人工衛星にアクセスして自機狙いで天井まで届くレーザーをぶっ放す派手な奴だ! レーザーポインターで狙いを定めるから、発射までは数秒の誤差があるけどな」
「じ、人工衛星って。ここは地下だろうが!」
「おそらく、あのアースクラッシュのレーザーも疑似体感装置が作り出した砲撃だろう。だけど攻撃判定は本物同様あるから絶対に当たるなよ! 衝撃だけでも厄介なんだからよ!」
「その衝撃も、なんでひまわり野郎には効かねェんだ!? アイツって確か爆発とかの衝撃に滅法弱いんだから、レーザーの衝撃波にも弱いんじゃないか?」
「そう、衝撃に弱いのが当然だ。だからサンフラワードは無敵状態に変化している時しか、あの必殺技を発動させない。無敵なら爆発の衝撃も平気だからな」
「クソッ!」
メタルバードからサンフラワードの必殺技について聞かされた大将は、アースクラッシュによるレーザー砲撃が無敵状態のサンフラワードには効果がないと知って激昂する。
全員が上空から照射されるアースクラッシュを必死に回避しようと走り回る中、ジュピターキッドが皆に呼び掛ける。
「アースクラッシュはまずレーザーポインターで狙いを定めるから、その間にタイミングを見破ってコツさえ掴めば簡単にかわせる!」
しかしサンフラワードは自身の周辺の至る所にアースクラッシュを照射して無差別攻撃を仕掛けてくる為、容易に回避するのは困難を極めた。
するとサンフラワードのアースクラッシュから逃れようと、紫色のレーザーポインターに狙われる状態でミラーガールと彼女に護られている新世代型達の方に新人のエギルが慌てて突っ込んできた。
「わ、わ……っ」
此方に突っ込んでくるエギルを目の当たりにして酷く動揺してしまうミラーガール。そしてエギルはミラーガールの方へ突っ込んでしまうと、自然と彼女が新世代型達を護る為に張っているミラーバリアーに飛び乗ってしまった。
「うっ……!」
突然バリアーにかかる重さに動揺するミラーガール。もちろんエギルに悪意などなかった。しかし其処にエギルを追って向かってくるポインターに気付いたエギルは慌ててミラーガールのバリアーから飛び降りて走って移動した。
しかし運悪くミラーガールのバリアーの上でサンフラワードのアースクラッシュが照射されてしまい、ミラーガールのバリアーにレーザーが直撃してしまった。
『うわあ!!』「っ………………!」
如何にバリアーで上空からの強力なレーザーを防げているとはいえ、その凄まじい衝撃と地響きに頭を抱える新世代型達。それに対してミラーガールは自らが発生させているバリアーに直射される強力な光線から新世代型達を死守しようと、必死にバリアーにかかるレーザーの負担と抗っていた。
しかしミラーガールの奮闘も空しく、彼女のミラーバリアーはアースクラッシュを直撃し続けて遂に砕けてしまう。
「うっ」『わあ!』
光の壁ミラーバリアーが砕け散り、後方に転倒してしまうミラーガールと砕け散ったバリアーに驚き声を荒げてしまう新世代型達。だが運よく、ミラーバリアーが粉砕したのと同時に上空からのアースクラッシュは止んでいた。
「ば、バリアーが砕けた!?」
「ミラーガール、どうなっているんだい! なんでアンタのバリアーが、こうも簡単に砕けて壊れちまうんだい?」
砕け散ったバリアーを目の当たりにして驚愕する真鍋義久らに対し、プロト世代のギュービッドはミラーガールに何故バリアーが簡単に破壊されたのか問い詰める。するとミラーガールはギュービッドの問い掛けに困り顔で答えた。
「っ……私のバリアーは光線なら耐えられるんだけど、その光線が強力で物凄い衝撃を生み出す場合は、衝撃にバリアーが耐えられず壊れちゃうのよ」
どの様な光線をも防げるミラーガールのバリアーであるが、その光線が発する凄まじい衝撃にだけは耐え切れずにバリアーが破損してしまうのだという。
一方でアースクラッシュを放ち終ったサンフラワードに再び攻撃を当てようと戦闘を再開する聖龍隊と赤塚組。しかしアースクラッシュを放った後のサンフラワードは動きが速く、姿を消したと思えば別の場所に即座に移動したりと此方を翻弄し続ける。
「クソ、ちょこまかと動き回って狙いが付けられねェ……!」
何とか実弾を直撃させようと目を凝らして拳銃を構えるジェイクも、瞬時に地上から足場など転々と移動するサンフラワードに翻弄されてしまう。
そしてジェイクと同じく聖龍隊と赤塚組の面々もサンフラワードに攻撃していくが、サンフラワードは移動した直後に網やシャイニングレイを発動させて反撃してきたりするので思う様に攻撃が当てられなかった。
「ああっ、もう! 前に戦った時よりもすばしっこい!」
爆弾を発射するブラストランチャーを撃ち続けるミラールが言うには、以前サンフラワードと戦った時よりも移動速度と反応が速く以外にも狙いが定まらないらしい。
縦横無尽に移動する光球からのシャイニングレイで地上を攻撃し、地形を反射する相手を捕らえる効果のある網で移動範囲を制限したりと、サンフラワードは状況に応じて有利な戦いを進めていた。
だがサンフラワードが空中の足場を広間の中央に生成し、更にその足場の真下に瞬時に移動した瞬間。
「それッ」「ッ!?」
声と共にサンフラワードの首に茨の鞭が巻き付き、上から釣り上げてサンフラワードの動きを制止。皆がサンフラワードの首を締め付ける鞭を辿ってみると、サンフラワードの頭上の足場から鞭を振り付けてサンフラワードの首を締め上げて上へと引っ張るジュピターキッドの姿が目に入った。
「今の内に早く! 僕が動きを止めている間に……!」
ジュピターキッドは予め足場に飛び乗り、隙を伺ってサンフラワードへ鞭を振るって攻撃しようと図っていた。それが功を奏してサンフラワードの首に鞭を巻き付けて動きを止める事が出来たのだ。
この状況にメタルバードは好機を逃さず戦場の仲間達に号令をかけた。
「チャンスだ! 一気に畳み掛けろッ!」
メタルバードの号令に聖龍隊の隊士と赤塚組の幹部たちはサンフラワードに向けて集中砲火を浴びせた。
「何イィィーーッ?!」
凄まじい砲撃の爆発にサンフラワードは全身が痙攣して身動きが取れなくなった。
そして全員の爆撃が済んだ次の瞬間、サンフラワードは膝をガクッと曲げて仰け反る形で倒れ込んだ。
「貴様ラナドニイイイィィィィィッッ!!」
特有のエコーのせいで聞き取りづらいがオプティック・サンフラワードは断末魔を叫んでは、元のクローンロイドに戻った。
[暗闇からの凶刃]
常人には理解不能な言動を示すオプティック・サンフラワードのクローンロイドを突破した一同。
彼らは遂にクローンロイドが仕掛けられている9つのモニュメントの内8つを撃破し、残るモニュメントは1つのみ。
「よし、残りは1つ」「とっとと、この場からおさらばして地上の空気を吸いたいぜ」
9つあったモニュメントも1つだけ残して突破したメタルバードと大将は、早々にこの場から抜け出し地上へと進行しようとモニュメントに歩み寄ろうとする。
するとその時。半ば疲労の色が顔に浮かび、暗鬱な空気が肩に圧し掛かる新世代型達の一人、薙切えりなが突然声を発した。
「あ、あの……!」「ん、なんだい、えりなのお嬢ちゃん」
突然言葉を発したえりなの声に大将はメタルバードと振り返りつつ返事すると、えりなは暗鬱な表情で今まで戦前で活躍してきた聖龍隊と赤塚組に問い詰めた。
「ね、ねぇ! 今更になって言うのも何ですけど……此処までやって来て、全てのクローンロイドを倒しても出られなかったらどうするんです!?」
えりなの言葉に新世代型達は一抹の不安を脳裏に過らせる。確かに此処まで激しい戦禍を潜り抜けてきたにも拘らず、9つのモニュメント全てに仕掛けられているクローンロイドを全て破壊しても何も起きず、脱出できなければ明らかな無駄骨である。9つ目のモニュメントに触れる前に不安を抱えてしまった新世代型二次元人達に対し、メタルバードは笑顔で励ましの言葉を掛けた。
「そん時はそん時だ! もし全部のクローンロイドを倒しても、何も起きなかったらそれこそ俺ら聖龍隊が総力を挙げて天井や壁に穴開けて脱出路ぐらい造ってやんよ。だからそんなに気が沈んだ様な顔すんなよ!」
笑顔で励ましてくれるメタルバードの言葉に、新世代型達は心中に微かな不安を残しつつも少しばかりの元気を貰った。
そしてメタルバードは大将と共に、いよいよ残り1つのモニュメントの前に歩み寄り、そっと触れてみる。
モニュメントに触れた次の瞬間、モニュメントは床下に収納され、代わりにクローンロイドが一体床から出現。
そして皆がいる広間は瞬く間に景観が変化し、辺り一帯が真っ暗闇へと変貌した。
「な、なんだ、こりゃ! 真っ暗じゃないか」
今までと違い、寸分先も見えないほどの暗闇に覆われる景観に吃驚する大将。そして突然なんの灯りも無くなり、暗闇だけが支配する空間に中には脅えてしまう新世代型達。
今現在の状況に困惑する赤塚組と聖龍隊の新人達に反し、新人以外の聖龍隊は薄暗い状況に以前にも戦った狂気の二次元人を思い出して警戒を怠らなかった。
すると聖龍隊が目を凝らして辺りを見渡していると、ルーシィ・ハートフィリアが叫んだ。
「あ! みんな、あれ!」
ルーシィが指さす方へ全員が視線を向けると、上方の壁に動く謎の影が目に入った。
その影は一向に気付いたのか地上に、皆の前に降りて着地すると両腕に装着する巨大な鎌を怪しく光らせ、前方の一行と対面してファイティングポーズをしながら向き合ってきた。
「こ、この二次元人……
黒紫色のボディに、よく見ると手首に巨大な鎌を装着している逆三角形頭の獣人の二次元人を見て、大将は一目で昆虫の蟷螂を模した二次元人ではないかと察する。
この大将の発想にメタルバードが目の前の蟷螂型二次元人について語り明かす。
「暗闇からの奇襲、不意打ちを得意とする蟷螂型の新世代型二次元人。ダークネイド・カマキール!」
すると蟷螂の姿を模した新世代型二次元人ダークネイド・カマキールは偶然にも目が合ったプロト世代のブラック・ロータスに向かって話し掛けてきた。
「お前さん達って確か、俺たち新世代型二次元人のプロトタイプに当たる世代だったよな? なんで同じ二次元人を殺す聖龍隊に?」
新世代型二次元人の前期に生み出されたプロト世代のブラック・ロータス達に何ゆえ聖龍隊に加盟しているのか訊ねるカマキール。
「決まってるでしょ。あなたみたいに、狂って善悪の区別もつかなくなった
ブラック・ロータスは険しい面差しで己の意見を述べ返した。するとカマキールは、そんなブラック・ロータスの意思を嘲笑うかのように不敵な笑みを浮かべる。
「やれやれ、お前さん達って奴は自分が何なのか……二次元人が何なのか分かってないんだねぇ!」
不敵な笑みを浮かべるカマキールは更に続けて彼女たちプロト世代に告げる。
「いいも悪いもないのさ……気付いたか、気付けないか、それだけの違いだ」
このカマキールの言動に気分を害された聖龍隊のプロト世代の新人達、そしてブラック・ロータスがカマキールに言い放った。
「私たちがプロト世代だからって、あなたみたいに狂ったのと一緒にして欲しくないわ!」
しかしカマキールはブラック・ロータスの発言を聞いて小さく微笑するだけであった。
そしてブラック・ロータスの言葉を受けてもカマキールは態度を変えず、今度は自分の目の前にいる一行全員に向けて話し掛ける。
「分かってんだろ? 俺たち新世代型は
だがカマキールの言い分に大将が言い返した。
「当てに成らねぇな。現にテメェらは
するとメタルバードの反応にカマキールは呆れた感じで言葉を返した。
「ハ……所詮はアンタ等も古い世代の二次元人って事なんだな。何も分かっちゃいない」
そう言うとカマキールは両手首に装着している巨大な鎌の刃を舌でしゃぶる様に舐めると、その鎌を大きく振り翳して戦闘態勢に身構える。
「お、おい。あのカマキリ……」「カマキール、奴は……」
巨大な鎌を舌でしゃぶり舐めるカマキールに大将が問おうとすると、大将の考えを察したメタルバードがカマキールについて彼ら赤塚組と聖龍隊の新人達に伝えた。
漆黒の暗闇に紛れての不意打ちを得意とする蟷螂型二次元人。
初期の新世代型二次元人達が起こした反乱に参加した新世代型二次元人で、砂漠の地下兵站基地「ピッチブラック」の警備担当を務めてた。
暗闇で行動できる性能を持ち、多くの侵入者を闇に乗じてその凶刃で葬ってきた。
残虐かつサディストな性格で、自分の鎌で苦しんでいる者を見ることを何よりの喜びとする。
壁蹴りやジャンプを多用し、俊敏な動きでなかなか的を絞らせてくれない。
そんな俊敏な動作で自分と対峙する存在を得物である鎌で斬り付けて痛めるのを何よりの快感にしているカマキールがファイティングポーズを構えたまま一行の方へと近付く。
そして一行の前線に立つ面々に接近すると、巨大な鎌を振り上げて一気に斬り付けてきた。
「ひゃっはっはっは」
狂気に満ちた笑いを上げながら鎌を斬り付けるカマキール。だがカマキールが振り下ろしてきた鎌に聖龍隊の新人キリトが剣で受け止め、カマキールの斬撃を防いだ。
これを切っ掛けにカマキールは誰彼構わず、自分以外の全てを対象に鎌を振り付けて殺傷しようと突っ込んできた。
「うわぁ!」「きゃあっ!」
鎌を振り回し、見境なく斬り付けてくるカマキールに新世代型達は一目散に逃げた。
「やめろッ、お前の相手は俺だ!」
突っ込んでくるカマキールの前にメタルバードが飛び出し、両手を鋭利な刃物に変形させて立ち向かおうとする。
しかしカマキールは高々に笑ってメタルバードに突っ返す。
「ひゃはは! テメェなんかよりも、悲鳴上げて逃げ惑う連中を痛め付ける方が何倍も楽しいぜ!!」
残忍な振る舞いのカマキールは、そのままメタルバードを自慢の跳躍力で跳び越えて彼の後方で逃げる新世代型達に襲撃する。
だが、皆に斬りかかってくるカマキールに聖龍隊の新人達が真っ向から立ち向かう。
キリト/シルバー・クロウ/美樹さやからが各々の得物でカマキールに対抗しようとするが、カマキールは三人の剣戟を容易く弾き返して彼らを飛ばしてしまった。
「うわぁ」
カマキールに弾き飛ばされたキリト達は後方へと吹き飛ばされてしまう。
「お前らは手を出すな! そいつは想像以上にヤバい!!」
自らの力量でカマキールに対抗しようとした三人にメタルバードが釘を刺す。
その間にカマキールは自分に背を向けて逃げる新世代型達に直進し、鋭い切れ味を光らせる鎌を振り翳し斬り付けようと襲い来る。
「あ……あああっ!!」
背後から迫りくるカマキールの血に飢えた瞳と振り翳す鎌を振り返って視界に捉えた満艦飾マコは恐怖で顔を引き攣らせる。
と。カマキールが満艦飾マコに迫ったその瞬間、カマキールが振り翳す巨大な鎌と激しく衝突する二つの刃が凶刃からマコの身を護った。
「あ……流子ちゃん! それから確か、未来、さん……だっけ?」
マコをカマキールの凶刃から防いだのは彼女の親友である纏流子と、自身の血を結晶化して武器に形成できる能力を持つ栗山未来の二人。流子と未来はか弱い女子の力とはいえ、二人がかりでカマキールの凶刃を双方の得物で受け止め、どうにか凌いでいた。
しかしカマキールは、そんな自身の攻撃を受け止める二人に不敵な微笑で見据えると、次の瞬間に彼女達の刃を意図も容易く弾いてみせた。
「うわッ」「きゃっ」
刃を弾かれ、同時に衝撃で起こる砂塵で視界を塞がれる流子と未来。カマキールは二人に斬りかかろうと迫る。が
「えぇいッ」
鬼気迫る表情で鬼龍院皐月が二人に斬りかかるカマキールに縛斬を振り付ける。カマキールは皐月の縛斬を左腕の鎌で防ぎ、後方に退く。
カマキールの猛攻を防いだ皐月は、流子と未来に背を向けて二人に強く呼びかける。
「纏流子! それから栗山未来とやら! この蟷螂男は我らと同じく業物で接近戦を仕掛ける奴と見受けた! 力を合わせ、今度こそ聖龍隊の足手まといにならぬよう努める時!!」
目の前のカマキールと対峙したまま流子と皐月に男勝りの言い草で伝える皐月の言葉に、流子と未来も再び立ち上がりカマキールと対戦する構えを示す。
「お前らッ! だから戦う必要ないって言ってんだろうがッ! そいつはお嬢ちゃん達が太刀打ちできる相手じゃないんだよ」
またも自分達の許可なしに戦いに参じようとする新世代型の行動にメタルバードは悲鳴染みた言動で訴える。
しかしメタルバードが状況を悲観するも、新世代型の三人の女子はカマキールと一戦始めてしまう。
「だからッ! 戦うなって!! そもそも君らを探して護る為に俺たち聖龍隊の主戦力が総力を挙げてタイまで駆け付けたって言うのに、なに毎度毎度戦いに参加しちゃうのかな!!?」
メタルバードの訴えも空しく、新世代型の戦闘タイプは続々と自分達に襲い掛かるカマキールに反撃を開始してしまう。
「喰らえッ、この狂人がッ!!」
「ひゃははっ、同じ新世代型だってのにエライ態度だなァ、おい」
激しい火花を生じながら互いの刃と刃をぶつけ合う皐月とカマキール。そこに流子と未来もカマキールに斬りかかる。
しかしカマキールは彼女達の斬撃を避けつつ後ろへ回避しては再び前へ一歩踏み出し、自分に刃を振るってくる少女達に斬り込もうとする。
と、その時。巨大な両手の鎌を三人に向けて斬り込もうとするカマキールに上空から爆撃を撃ち込もうと蛇崩乃音が上空から奇襲を仕掛ける。
「喰らえっ!」
蛇崩乃音は極制服からの音符ミサイルをカマキール目掛けて砲撃。
しかしカマキールは自分にミサイルを撃ち込んだ乃音の攻撃にまたも不敵な笑みを浮かべると、上方の乃音に向けて反撃した。
「シャドウランナー!」
カマキールは乃音に向けてブーメラン状の黒い刃を投げ付けた。刃は乃音が撃ち込んだミサイルを貫通し、ミサイルを破壊する。
「え!?」「な、なんと! 飛び道具、いや遠投系の技までも使えたのか……!」
自身が放ったミサイルを撃ち落とした刃に驚愕する乃音と同じく、カマキールが鎌による接近戦だけでなく遠方の敵をも攻撃できる技を使った事で遠距離戦も可能だったと知り驚く鬼龍院皐月。
「っ!」
一方の乃音は自分に向かって飛んでくるブーメラン状の刃を回避しようと、急ぎ飛行して移動する。だがカマキールのシャドウランナーは直進してた軌道を変え、乃音の方へと曲がっていった。
「え……?」
自分の方に軌道を変えて向かってくる刃に言葉を失う乃音。そして黒い刃は乃音目掛けて直撃した。
「うわぁ!」「蛇崩!」「ッ!」
黒い刃に直撃した乃音は撃墜され、それを見た皐月と流子は愕然とする。
「コワいだろぉ~~……?」
黒い刃を放ち、蛇崩乃音を撃墜したカマキールは不敵な笑みで愕然とする面々を見据える。
「な、なんだ。あの黒い物体は……!」
上空を飛行してた蛇崩乃音を撃墜してみせたカマキールの黒い刃を目の当たりにして衝撃を受ける
するとメタルバードがカマキールの放った技について皆に説く。
「そのシャドウランナーには若干の追尾性能がある! 同じ個所に留まってると当たっちまうから、比較的動き回って回避するんだ!」
しかしカマキールは蛇崩乃音を撃墜した直後から、ブーメラン状の刃であるシャドウランナーを次々に投げ付け、立ち止まっている面々に攻撃を追尾させる。
「うわあっ」「つ、着いてくるっ!」
最初の一撃をかわしても、また反転して追尾してくるシャドウランナーに誰もが困惑する。
そんな混戦の中、聖龍隊の新人組は必死にカマキールのシャドウランナーを回避しつつ、カマキールに接近していく。
そしてキリトとアスナが最初にカマキールの眼前に辿り着き、カマキールに向かって容赦なく斬りかかる。
しかしカマキールはキリトの斬撃を避け、直後にキリトを鎌の峰部分で殴り飛ばした。
「うあ……っ」「キリト君!」
カマキールに軽々と殴り飛ばされてしまうキリトを見てアスナが叫ぶ。だがアスナが一瞬キリトに目を向けてしまった隙を付き、カマキールがアスナに迫る。
「!!」「………………」
驚くアスナに反し、カマキールは彼女を見据えると怪しい笑みを浮かべて両腕の鎌でアスナの肩から体を捕まえ動きを封じてしまう。
「あ……っ」
カマキールの鎌に捕まってしまったアスナ。そしてカマキールはアスナの肩に口を近づけると、アスナの肩に齧り付いて彼女のエネルギーを吸い出し始めた。
「うあ……っ」
全身の力が吸収されていき、カマキールの成すがままにされるアスナ。絶体絶命の危機に、彼女の上官に当たるミラールが助けに入る。
「ちょっと待ってて」
そう言いながらミラールはカマキールに銃を連射してアスナを解放させる。幸いにもアスナは若干体力を吸収されただけで大事に至らなかった。
そして丁度アスナを捕らえていた為、カマキールの動きが一瞬止まったのを見逃さずミラールがルーキーズに攻撃を指示しつつ自らも銃撃を放つ。
「それそれっ」
ミラールと共にカマキールに攻撃を浴びせていくルーキーズ。するとその中でもミラールが撃ったレイガンすなわち光線銃がカマキールに多大なダメージを与えた。
「イ゛ェアアアア」
悲痛極まりない悲鳴を上げるカマキールは視覚に過敏な反応が起きたのか、反射的に手で目を覆ってしまう。
それを見て唖然としてしまう聖龍隊の新人に赤塚組、そして戦闘に参戦してくれている新世代型達にメタルバードが語る。
「カマキールは本来、暗闇でも活動できる感度の高い視力を持ち合わせてる。だが、その感度のよい眼が逆に仇で、光属性による眩い攻撃に弱い! とにかく光属性の攻撃を使える奴を戦前に、後の奴は戦前の者を援護だ!」
暗闇でも活動できる感度の高い視力と眼が仇となり、眩い攻撃すなわち光属性の攻撃に滅法弱いと教えられ、参戦してる者はそれぞれ光属性の能力や技が使える者を戦前に、それ以外の者を援護にと各々の役目を担う。
「攻撃開始!」
まず手始めにミラールの合図を皮切りにカマキールに一斉射撃を仕掛ける。だが激しい弾幕の中をカマキールは俊敏な動きで後ろへ横へ、壁を蹴ってからの移動と攻撃を掻い潜ってみせる。
「っ……前よりも動きが速い!」
カマキールにレイガンを狙撃しようとするミラールだが、自分はもちろん周囲の仲間の射撃による弾幕を掻い潜っていくカマキールの動きが以前に戦った時よりも格段に上がっている事実に愕然とする。
だが聖龍隊は諦めず、果敢に激しく動き回るカマキールに攻撃を続行する。
すると鹿目まどかの放った光の弓矢がカマキールに直撃。カマキールは悲観極まりない悲鳴を上げる。
「イ゛ェアアアア」
どうにかカマキールに弓矢を射当てたまどかに、HEADのセーラーヴィーナスが後方より歩み寄り、まどかの肩を軽く叩いて彼女に無言の激励をかける。
まどかがヴィーナスの無言の激励に笑顔を浮かべた、次の瞬間。先ほどまどかの矢に直撃したカマキールが殺気立った形相でまどかとヴィーナスの方へ突っ込んできた。
ヴィーナスは突っ込んでくるカマキールを視認すると、傍らのまどかを押し退ける勢いで遠ざけ、カマキールに自身の剣で応戦した。
カマキールの二つの鎌とヴィーナスの剣が激突し、両社は互いに譲り合う事無く火花を生じさせ剣戟を始める。
互いに譲らない攻防の展開に、ヴィーナスと対峙するカマキールに光属性の銃撃をお見舞いさせようと狙いを定めるミラールであったが、カマキールが左右に体を揺り動かすような動作で対峙しているのと、カマキールと対峙するヴィーナスが時おり射線に入ってしまう事から撃つことが中々できずにいた。
「狙いが定まらない……!」
ミラールがカマキールに狙いを定められないその時、カマキールがそんなミラールと彼女の周囲にいる者たちを視認しては不敵な笑みをする。
そしてカマキールは自分と対峙するヴィーナスから後退して少し距離を置くと、その位置から遠方に離れてる者たちに攻撃してきた。
「へっへっへっへ……」
不敵な笑みを連呼しながら無数の黒い矢を放射線状に投げ、ヴィーナスを超えて彼女の背後にいた者たちの頭上に降り注ぐ。
「うわっ」
直撃だけは誰もが免れたものの、投げ付けられた矢は地面に突き刺さったまま原形を残し、その矢に触れただけで激痛が走る。
カマキールが地面に刺さろうとも暫くその場に残り足場を制限するブラックアローを放った直後、ヴィーナスは懐ががら空きになっているカマキールの隙をついて真正面から突っ込み光り輝く剣をカマキールに突き刺した。
「イ゛ェアアアア」
眩い攻撃だけでなく肉体を貫かれたカマキールは悲鳴を上げる。
しかしカマキールは自身を貫くヴィーナスの剣を後ろへ退いて引き抜き、即座にヴィーナスより離れると上方へ跳び上がり、追尾性能のあるシャドウランナーと地面に突き刺さり残るブラックアローを同時に大量に投げ付けてきた。
「避けろ! 回避しろッ」
向かってくるシャドウランナーとブラックアローにメタルバードが皆々に退散を指示。皆は頭上より降り注ぐ闇の攻撃を只管回避したり逃げ回ったりと忙しい程に動き回る。
だが、その後も聖龍隊と赤塚組そして参戦する新世代型達は殺伐とした戦場の中でカマキールに攻撃の手を緩めず反撃していく。
「イ゛ェアアアア」
戦前の光属性の攻撃を仕掛けてくる聖龍隊の攻撃を浴び、悲痛極まりない悲鳴を上げるカマキール。するとカマキールは即座に前方で戦う者たちを捉え、俊敏な駆け足で一気に突進してきた。
目前の獲物を捕らえる勢いで突進してくるカマキールにミラーガールが注意を呼びかける。
「捕まらないで! 捕まったら自力じゃ抜け出せない上に、体力を吸収されちゃうわ」
ミラーガールの呼び掛けに、カマキールの前方にいた者は横へ回避するか上へ跳び上がり、カマキールの捕獲からのエネルギー吸収を回避する、
だがエネルギー吸収をかわされたカマキールは、噛み付いてエネルギーを吸収しようとしてた戦前の隊士たちに得物である巨大な鎌を斬り付けてきた。
「ッ!」
カマキールの巨大鎌に戦前で戦う者は突発的に後退するが、鎌は彼らの肩や腹部の衣を僅かながらに切り裂く。
そこにミラーガールが間に割り込み、カマキールの巨大な鎌よりも格段に小さいミラーソードで斬撃を受け止める。
「っ!」
辛うじてカマキールの鎌を防ぎ止めるミラーガール。だがカマキールの巨大鎌は彼女のミラーソードの倍以上の大きさであり、更にカマキール本人の腕力も強く、少しでも力を抜いてしまえばミラーガールは簡単に弾き返されてしまうだろう。
しかしミラーガールは必死に腕に力を入れて巨大鎌を剣で押し返し、カマキールを後ろへ退けさせる。
すると渾身の力で押し退けられたカマキールは自分を押し返したミラーガールの顔と向き合って対話し始めた。
「よーー、ミラーガール……俺たち新世代型が
「………………………………」
「……ちょ、ちょっとミラーガール。なんか言い返せよ。というか否定してくれよ」
カマキールの不審な発言に何も言わず、ただ険しい面持ちのまま頑として向き合うミラーガールに後方で戦いを観戦してた新世代型の真鍋義久が口を挟む。だがミラーガールは険しい表情でカマキールと向き合い対峙し続ける。
すると其処にミラーガールの助成と言わんばかりに聖龍隊の新人達が駆け付け、カマキールに敵意を向ける。
「それ以上、何も言わなくってよ!」
「所詮、あなたは狂気に駆り立てられ、哀れにも操られている
カマキールに銃口を向ける巴マミと暁美ほむらの言い分に対し、カマキールは彼女らの態度を嘲笑う。
「じゃ、あんたらは何に操られている……? あんたらの、しみったれた正義とやらにかい?」
このカマキールの言動に新人達は反感を覚え、カマキールに反論する。
「何だと……! どういう了見で言ってやがる」
怒りを露わにするクラインに対し、カマキールは彼らを軽視する眼差しで言い返した。
「さあね……説明したところで、古い世代のあんたらには分かりっこないだろうしね!」
次の瞬間、カマキールは対峙してたミラーガールに斬りかかった。
「ッ!」
寸前の所でカマキールの凶刃をミラーソードで受け止めるミラーガール。
しかしカマキールは自分の攻撃を防いだミラーガールに幾度となく巨大鎌で斬り付けていった。
「ひゃは! ひゃはははっ!」
狂ったように笑いながら鎌を連続で斬り付けてくるカマキールの斬撃をミラーガールは心許ないミラーソードで必死に防ぎ続ける。
「ミラーガール!」
カマキールの斬撃を鎌よりも断然小さなミラーソードで防ぎ切るミラーガールの姿を見て切羽詰まった表情に一変する真鍋義久ら新世代型達。
しかしミラーガールを絶えず追撃していくカマキールの猛攻に聖龍隊は黙ってはいない。
「撃て撃て!」
ミラーガールを護ろうと、彼女に斬りかかるカマキールに向けて銃撃を仕掛けていく聖龍隊。しかしカマキールは自身に浴びせられる銃弾を鎌で弾き返してみせ、それを免れた実弾ですらカマキールに着弾しようとその体に大した痛手は与えられなかった。
だがカマキールが自分の身に降りかかる実弾に気を取られている最中、ミラーガールは密かに左手に装備しているミラーシールドにエネルギーを溜めていた。カマキールがエネルギーが着々と蓄積され次第に発光するミラーガールの盾に気付き振り向くが、既に盾にエネルギーが充満され発する光も強くなっていた。
「ッ!」
如何なる強力なエネルギーをも弾き返すミラーバリアーに充填された蒼い光のエネルギーに気付くカマキール。だがカマキールが気付いた瞬間、ミラーガールは盾に充填させたエネルギーをカマキールに向けて一気に放出。
「ミラー・ホープ・フラッシュ!」
本来は鏡の盾に充填した光のエネルギーに近い希望の想いで相手の魂を浄化・昇天させる効果がある技だが、ミラーガールはこの強力な光属性の砲撃でカマキールを攻撃した。
「イ゛ェアアアア!」
ミラーガールの鏡の盾ミラーシールドに充填された蒼い光が一筋の砲撃としてカマキールに直撃し、カマキールは今までよりも遥かに凄まじい悲痛極まりない悲鳴を上げた。
そしてミラーガールの盾から照射された砲撃にカマキールは吹き飛ばされ、そのまま天井に激突してから直角に今度は壁に激突してから地上に落下し激しく体を叩き付けられた。
「…………………………ッ」
蒼い光による砲撃に続いて天井と壁に激突してからの地上への落下によるダメージに流石のカマキールも、弱り切り地面でただ死を待つだけの蟷螂の如き痛々しい姿でのたうち回る。
しかしミラーガールの攻撃が激しくカマキールに痛手を負わせたのか、カマキールは目の色を豹変すると同時に紅蓮の光を纏った。
「イケねぇ! 必殺技を出してくるぞ!」
一時的に全ての攻撃を受け付けない無敵状態を表す紅蓮の光に包まれたカマキールが強力な必殺技を仕掛けてくるのを察する大将。
すると紅蓮の光を纏ったカマキールは広場の中央その空中に跳び上がると、鎌が付いた腕を振りかぶり大声で叫んだ。
「 鳴 い て み せ て く れ よ ぉ !!」
カマキールが叫んだ次の瞬間、彼が振り翳した腕の鎌が怪しく紫色に発光し、それを勢いよく振り下ろすと紫色の巨大なエネルギー刃が鎌から発生し地上目掛けて斬り付けてきた。
「こっちだ! 何とかよけるんだ!」
地上それも自分達の方に向けて振り付けられる巨大なエネルギーの刃に、メタルバードはカマキールが振るった腕とは反対の方へと皆を誘導しつつ自らもエネルギー刃から退避する。
しかしカマキールが振り付けるエネルギー刃は速い上に巨大で広範囲を一度に攻撃できるため、逃げ遅れた多くの者がエネルギー刃の餌食と相成った。
「うわあッ!」「きゃああっ」
非力で一般人である新世代型達を逃がそうと退避するのに遅れを取っていたキリトやブラック・ロータスがカマキールの凶刃に身体を切り裂かれる。
仲間の悲鳴に思わず足を止めてしまう聖龍隊の新人達だが、これが災いとなり彼らもカマキールが繰り出した2発目のエネルギー刃に切り裂かれてしまう。
「うあッ!」「きゃ……っ」
漆黒の闇に浮かび上がる紫に発光するエネルギー刃に身体を斬られ、絶叫するクラインにシリカ。
そんな悲痛に喘ぐ者たちを見下ろしながら、カマキールは無慈悲に次々と鎌を振り付けエネルギー刃を繰り出してくる。
「もっと鳴いてくれよぉ!!」
狂喜の表情で苦痛に喘ぐ者たちを見て喜々とするダークネイド・カマキールの残虐かつ殺伐とした姿を見て、辛うじてカマキールの凶刃から逃れられた新世代型達は戦慄した。
「ひゃはは、ひゃはははは……っ」
その後もカマキールは位置を変えて高所から幾度となく巨大なエネルギー刃を地上に向けて繰り出し、多くの者を痛め付け続けてく。
「お、おい。アイツの必殺技、何だか長くねぇか……?」
「お、おかしいぞ。カマキールの必殺技デスイメージは本来2発か3発程度で終わる筈なんだが……」
少し高めの位置から幾度となく繰り出してくる巨大なエネルギー刃での斬撃デスイメージを必死に走って逃避しながらメタルバードに訊ねる大将。だがカマキールの強攻は熾烈さを増し、その後も立て続けに回避困難な凶刃で斬り付けてくる。
「うわあっ!」「あ……っ!」
SAO組にAW組に続いて、美樹さやかや暁美ほむら達までもカマキールのデスイメージを喰らってしまい苦痛に喘ぐ。
「鳴けぇ、叫べぇ、喚けぇ! ひゃはははっ」
自らが繰り出すデスイメージに切り裂かれる者たちの苦痛に歪む表情を見て、カマキールは半ば狂ったように興奮していた。
「あ、あの野郎……!」「完全に自分が傷付けた人の苦痛を見て喜んでますね」
自らの技と鎌で苦しむ者たちを目の当たりにして喜々となるカマキールを見て、怒りと憤りの激情に満ちた強面と仏頂面を浮かべる
しかしこの時、誰もカマキールの凶行を止める事が出来なかった。何故なら今のカマキールは完全に無敵状態で如何なる攻撃も効かず、ただ悪戯にカマキールの無敵状態が納まるのを待つしか手立てが無かった。
カマキールが繰り出すデスイメージの凶刃に聖龍隊の新人達が全滅させられ、戦闘慣れしているHEADですらデスイメージから懸命に回避するのが精一杯の最中、ミラーガールはただ悪戯に傷つけていくカマキールの凶行に憤りを募らせていた。
そしてミラーガールは内情に溜まっていく憤りに耐え切れず、戦場中央その高所から次々にデスイメージを繰り出すカマキールに向かって突進する。
「あ、アッコ!」『!』
巨大なエネルギー刃の凶刃が犇めく戦場に突っ込むミラーガールを見て血相を変える大将と驚愕する新世代型達。しかしミラーガールは自身の頭上から振り下ろされる斬撃の合間を駆け抜け、そしてカマキール目掛けて高く跳び上がり斬り込んだ。
カマキールに斬り込んだ瞬間、ミラーガールの剣は形を変えて蒼く光る巨大な太刀となってカマキールが振り翳す巨大鎌と激突。カマキールは辛うじて両手の鎌でミラーガールの攻撃を防ぐが、同時に自身の無敵状態も繰り出していたデスイメージも途絶えてしまう。
ミラーガールは憤りを感じさせる険しい面持ちで太刀に変化させたミラーソードをカマキールに斬り込む。そんな彼女の刃を己の鎌で受け止めたカマキールはミラーガールの憤り溢れる険しい表情を見て不穏な目付きで見据え返す。
しかしカマキールは空中で互いに押し合い双方の武器から火花が生じている最中、ミラーガールの内情を見透かす様に彼女へぽつりと言葉を掛けた。
「クックック……ミラーガール、お前さんは未だに俺と、いや俺たち新世代型とあの男を重ね合わせているんだな」
「………………………………っ」
カマキールの言葉にミラーガールは彼の巨大鎌を変化させたミラーソードで必死に押し合いながらも聴いていた。押し返されない様にと抗うミラーガールにカマキールは語り続ける。
「別に俺達はアンタが想ってる男とは違うんだ……あの男以上に、俺達は残酷で無情になれる二次元人なんだぜ」
「!!」
此方の考えを見透かした口振りだけでなく、あの男以上に自分ら新世代型が血も涙もない種だと豪語するカマキールの台詞に、ミラーガールは内心に溜めていた激情が一気に爆発。この時、聴覚が優れている新世代型がカマキールの台詞を逃さず聞いてしまい、そこから共有感知を通して全ての新世代型達にカマキールの言動が伝わってしまってた。
カマキールの言動にミラーガールの激情が爆発したその瞬間「ぐおっ!」ミラーガールは溜まりに溜まっていた感情を放出する勢いでカマキールの鎌を押し退け、カマキールを床に叩き付けた。
「!」「み、ミラーガール……!」
今まで押し合うのが精一杯だったミラーガールが突如としてカマキールを押し退けて床に叩き付ける荒行に、大将は言葉を失い、氷室聖ら新世代型達は愕然と表情が固まり、先のカマキールのデスイメージに散々痛め付けられた新人達に至っては我が目を疑っていた。
床に叩き付けられたカマキールは口元から滲み出る血を鎌が装備されてない側の右手で拭うと、自分を床に叩き付けたミラーガールに顔を上げて視線を向けた。ミラーガールは地上のカマキールと視線が合うと、咄嗟に天井を足で蹴って一直線にカマキールに向かって突撃した。カマキールは自分に向かって突進してくるミラーガールに狙いを定めて鎌を構える。
そしてカマキール目掛けて突撃するミラーガールの剣と、地上で待ち受けていたカマキールの鎌が激突。凄まじい火花が発生し、その際の強い光に優れた視覚を持つカマキールは目を奪われてしまい思わず怯んでしまった。
カマキールが得物と得物が激突した際の発光に視界が塞がってしまった瞬間、ミラーガールはカマキールと距離を置いてから瞬時に体勢を立て直して、再びカマキール目掛けて斬り込んでいった。
ミラーガールの斬り込みに反応したカマキールは瞬時に己の武器である腕に装着した巨大鎌で対抗しようと腕を振り上げる。そしてミラーガールがカマキールの目前まで迫った瞬間、カマキールはミラーガール目掛けて巨大鎌を振り下ろした。それと同時にミラーガールが持つ蒼い光を発する太刀も更に光を強め、そのままカマキールに斬り込んだ。
二つの刃が衝突した凄まじい金属音が鳴り響いた瞬間、ミラーガールとカマキールは双方とも斬り込んだのか互いに背を合わせている状態であった。
しかしミラーガールが蒼く強く発光する太刀を険しい顔で持っているのに対し、カマキールは次の瞬間「ウッ!」ミラーガールに斬り込んだ鎌と腕そして胴体が真っ二つに切断されていた。
『あっ!!』「あ、アッコ……!!」
互い違いに斬り込んだ一瞬でカマキールの鋭利な鎌とそれを装備している腕はもちろん胴体までも一刀両断してみせたミラーガールの剣術に驚愕する新世代型達と大将。
そして右腕だけでなく胴体までも切断されたカマキールは前のめりに倒れながら断末魔を上げて爆発した。
「なんてこったぁああああああ!!!」
爆発炎上するダークネイド・カマキール。その亡骸が炎の中から浮かび上がると、それは瞬く間に元のクローンロイドへと姿を戻した。