現政奉還記 B.O.W.編 作:セイントドラゴン・レジェンド
[黒い狂気]
蒼く輝く巨大な太刀に変化させたミラーソードでダークネイド・カマキールのクローンロイドを一刀両断に破壊したミラーガール。
そしてダークネイド・カマキールのクローンロイドを破壊すると暗闇に閉ざされていた広間は、元の9つのモニュメントが存在していた広間へと戻った。
こうして初期の新世代型二次元人、そのリーダー格だった9人を模したクローンロイド全てを突破した一行は全ての試練を乗り越え、安堵し切ったのかぐったりとその場に各々が腰を下ろした。
そんな中、メタルバードは先程カマキールのデスイメージで身体に致命的な損傷を受けた新人達の許に歩み寄る。彼らは一撃とはいえデスイメージを受けて深い傷を負ってしまい、動く事すら侭ならない状態で床に横たわっていた。
「お前ら大丈夫か?」
メタルバードはそんな深手を負い動けなくなっている新人達に声をかける。
「そ、総長……」「も、もう全身が痛いぜ……」
斬られたのは1箇所だけの筈なのに痛みが全身に感じられる現状に苦しむ桐ヶ谷和人と壺井遼太郎。
「くっ、いてて……」「はぁ、はぁ……」
凄まじい斬撃で苦痛に喘ぐアンドリュー・ギルバード・ミルズに、大量の出血で見るからに痛々しい姿で呼吸が荒い綾野珪子。
「っ………………」「大丈夫? スグに済むわ」「………………」
体の痛みに顔を歪ませる桐ヶ谷直葉に傍らで自身の治癒能力で治療を施しているナースエンジェルが言葉を掛けていく様を、隣でぐったりと虚ろな眼で黙然と見詰める結城明日奈。
「い、痛いよ……っ」「っ………………」
切り傷から生じる激痛に苦しむ有田春雪と同じく、その横でデスイメージによる深手に苦しむ黒雪姫。
「うぅ……」「手当の数が足りない。ジュニア君! あなたもこっちに来て手伝ってくれる?」「分かった」
黛拓夢の全身に残る生々しい傷跡を懸命に自身の力で治していくセーラームーンだが、苦しむ怪我人の数が多いため多少の治癒能力を持っている参謀総長のジュピターキッドに助勢を求めると、ジュピターキッドは快く承諾し怪我人の治療に懸かる。
「い、痛いです……」「なぎさちゃん、気をしっかり……うっ」
デスイメージで切り裂かれた箇所を押さえながら苦痛に表情を歪ませる百江なぎさに、巴マミが自分の身体の痛みを余所に励ましていく。
「ち、チクショーー、あのカマキリ野郎……!」「杏子、あんまりカッカしてると傷に障るよ……」
床に寝そべりながらもカマキールに深手を負わせられた事に苛立ちを覚える佐倉京子に横で寝そべる美樹さやかが言葉を掛ける。
「ほ、ほむらちゃん……大丈夫」「ま、まどか……何とかね」
普段から仲のいい鹿目まどかは隣で横たわる暁美ほむらに声をかけるが、二人ともデスイメージで息も絶え絶えの状態。
傷つき力尽いてしまう同じ聖龍隊の仲間に、傷を治し癒す事が出来る能力を持つものは総動員で負傷者の手当てを行う。
「……なんだか申し訳ない」
「そうだよね。みんな私達を守るのに必死で攻撃を受けたんだもん」
自分達を避難させるのに必死だった為にデスイメージを受けてボロボロになった聖龍隊の新人達を目の当たりにして心を痛めるチョコと桃花。
すると深手を負い、横たわりナースエンジェルに治療を施してもらってる桐ヶ谷和人にメタルバードが歩み寄り声をかけた。
「キリト、お前達の装備、どうもさっきの一撃で壊れちまったみたいだな。少し見せろ」
「え、ええ……」
ナースエンジェルに治療してもらってる和人は朦朧としながらもメタルバードに腕に装着してた何らかの装置を渡す。和人に続きメタルバードは他の面々にも声をかけた。
「おおい、お前らのも貸せ。俺が直せるかどうか、この場で見てやる」
メタルバードの指示を受け、結城明日奈/綾野珪子/篠崎里香/壺井遼太郎/アンドリュー・ギルバード・ミルズ/桐ヶ谷直葉/有田春雪/黒雪姫/倉島千百合/黛拓夢/上月由仁子らはメタルバードに自身の腕に装着してた装置を預ける。
腕に装置を着けてた面々から受け取ったメタルバードは床に胡坐を敷いて徐に各々の破損した装置を点検し出した。
「………………何だ、それ?」
預かった装置を機械化した眼球で細部まで点検しながら同時に様々な器具に変形した指先で修理していくメタルバードに大将が訊くと、メタルバードは修理を続けながら答え返した。
「これは聖龍隊が開発した電子プログラムの実現化が可能な装備だ。電子、すなわちコンピューターやバーチャルで会得した能力などを現実の空間でも使用できる代物よ。これを装備すればコンピューターやバーチャルでの電子の世界で習得した技や武器、能力を電子データとして機械が読み込み、現実空間でもバーチャルの能力が使える様になるって訳」
「コンピューターの世界で得た能力をデータとして読み取る事で、それを実現化する……おいバーンズ、それってまさか例の小説にも出てた……」
着々と装備を修理していくメタルバードの様子を凝視する大将が訊ねると、メタルバードは着実に破損した装置の修理を済ませつつ大将に語り返した。
「ああ、そうだ。かつてオレ達が異次元からの脅威と対抗する為、コレクターズの様に電脳世界でしか活躍できないヒロインを現実の世界でも、その電脳世界で会得した能力を使える様にした装置を改良したもんだ。人の想いを増大化させるルミノタイト、初期の装置はそのルミノタイトを組み込む事で電脳世界で習得した能力や体術を装着した人間の意志つまりは記憶という想いを高める事で、極限まで電脳世界での能力を現実の世界でも体現させた上で変身できる様に聖龍隊は開発した。後に、様々な異世界すなわち物語の科学力で改良が進められ、今では手足に装着する事で仮想世界で会得した能力や特技が使えるだけでなく、仮想世界での容姿にも変身できる訳よ」
「人の想い、すなわち体に染みついた戦いの記憶や経験を装置が再現してるって事か?」
「そうだな、装着している人間の意志と記憶がバーチャルでの戦闘実績をデータ化させ、それを装置が読み込む事で現実の世界でもバーチャルと同様に戦闘が行える訳だ。まあ、聖龍隊では電脳世界やバーチャルでの鍛錬だけでなく現実世界でも心身の鍛錬は怠ってねぇから、電子と現実どっちでも有利に戦える様には指導しているけどな」
「まっ、そうだよな。いっくらバーチャルとかコンピューターの中で強くても、現実で戦えなかったら意味がないもんな」
電脳世界で活躍する隊士たちの意志や経験を電子データとして読み取る事で現実でもバーチャル同様に変身して戦える装置についてメタルバードから一通り聞いた大将は、電子の世界で能力や技を体得するだけでなく現実の世界でも聖龍隊は鍛錬を怠らせず日々精進させている事を理解すると、大将は重傷の体を治療してる普段から装置を装備して変身できる聖龍隊の新人達について徐にメタルバードに訊いた。
「それじゃ、アイツらも結の姉ちゃん達みたいにバーチャルの……コンピューターの世界で戦っていた連中なのか?」
余りコンピューターなど高性能な部類に精通していない大将が自分よりも年上であるコレクターユイこと春日結たちと同様に、聖龍隊の新人達も電子の世界で戦歴を積んだのか訊ねる。
「そうだぜ。キリトに春雪たちは仮想世界と呼ばれる、一種のバーチャルゲームの中で起こった事件で活躍してた連中だ。その一連の事件にコレクターズを筆頭とした聖龍隊が駆け付け、その際に共闘していったのを切っ掛けに奴らを聖龍隊に加入させる流れができた訳だ」
大将の問い掛けに答えるメタルバードは、続けて仮想世界で活躍した経歴から聖龍隊に参入した新人達を大将に改めて紹介した。
「まずキリト、本名は桐ヶ谷和人。そのキリトと恋仲のアスナこと結城明日菜。この二人はSAO組の主戦力だ。その他の名称で呼ばれているのでシリカこと綾野珪子、リズベットの篠崎里香、クラインの壺井遼太郎、新人の中では最年長の黒人でエギルことアンドリュー・ギルバード・ミルズ、そして最後にキリトの妹であるリーファこと桐ヶ谷直葉。そして次はAW組の方で主戦力のシルバー・クロウってのが、通常の姿では肥満体質の有田春幸、戦略に長ける美少女ブラック・ロータスこと黒雪姫、ライム・ベルの倉島千百合、剣術に秀でた秀才シアン・パイルこと黛拓夢とスカーレット・レインの上月由仁子。以上だ」
聖龍隊に新たに参入したバーチャルでの戦闘に長けた聖龍隊士をメタルバードから紹介された大将は、彼らバーチャルなど仮想世界で戦歴を積み上げてきた面々に対して感じた疑問をメタルバードにぶつけた。
「なあ、バーンズ。あいつらがバーチャルっていうか、コンピューターのいわゆる仮想世界ってので戦歴を挙げて来たってのはお前さんの説明で大体わかるが……俺は余りコンピューターとかバーチャルってのは難しくて理解できねぇが、奴さん達の腕前は大丈夫なのか? 現実の実戦でも上手く立ち回れるのかい?」
仮想世界でない現実の戦況でも新人達は上手く戦えるのか問う大将に、メタルバードは素っ気無く答えた。
「まあ、一応はコレクターズ監修の元で実戦でも活用できる戦法を叩き込んではあるが……何分、現実での戦闘に駆り出したのは今回の現政奉還が初めてでな。確かに未だ不安な要素があるだろうが、あいつらの事だ。上手くやってくれるだろう」
「ふぅ~~ん……」
メタルバードの素っ気無い返答に大将は真顔で反応する。
すると此処でメタルバードが行動を起こした。
「よしっ。修理終わり! 完全に修復できたぜ」
キリトや春雪たちの装置を修理し終わったメタルバードは立ち上がると、装置を装着して戦う新人達の方へ顔を向けて問い掛ける。
「そいつらの怪我はどうだ?」「はい、もう大分治ってます」
問い掛けにナースエンジェルが答えると、メタルバードは治療を受けた面々に歩み寄って一人一人に修理し終わった装置を手渡していった。
「ほれ、どうにかデータ体現プログラムも修復できた。データの再構築も済んでいる。戦闘に支障は出ないだろう」
「は、はい」
キリト達はメタルバードから各々修理された装置を受け取り、再び装着して万全の装備と状態でバーチャルの世界と同じ容姿に変身する。
治癒能力による回復と修理された装置により再び万全の状態に戻れた新人達。彼らの再起を確認したメタルバードは即行でこの場からの移動を思い描いていた最中、メタルバードの視界に広間の中央に群がる新世代型達の姿が映った。
「? どうしたんだ、お前ら」
メタルバードが中央で群がる新世代型達に声をかけると、その群集の一人、普段は無口である青八木一がメタルバードに顔を向けて声を返した。
「いえ、それが……」
新世代型達の並々ならぬ様子に気になったメタルバードは、彼らが群れている中に入って皆の視線が集中している方へ視線を向けた。すると其処には夜空の如く漆黒の台座がいつのまにか存在していた。
「なんだコレは……? さっきまで、こんなの無かったぞ」
ダークネイド・カマキールと戦闘に入る前までは無かった筈の台座にメタルバードが注目していると、後ろから薙切えりながメタルバードに声をかけてきた。
「ちょっと、聖龍隊の総長さん! いつまで、こんな所で油売ってる積りなんです!? さっさと行きましょうよ……って言うか、全部のクローンロイドを倒したっていうのに何も変わり映えしないじゃないですか!」
早々に研究施設から脱出したいえりなだが、9体全てのクローンロイドを破壊しても変わらない広間の現状に不満を爆発させてしまう。
メタルバードはえりなの不満の声を耳に入れながらも、目の前の台座に視線を向ける。すると台座には以下の文章が彫られてた。
「9人の門番との死闘を乗り越えた者たちよ 地上への誘いを真に求めるのなら 古の時より存在する強大な闇を打ち負かし いざ地上へと還り行かん」
謎めいた文章に目を配らせるメタルバード。すると思考に耽るメタルバードの意思を感じ取ったのか、台座が突如として光り出した。
「な、なんだ?」
目の前の台座が前触れもなく光り出して驚くメタルバードとその他の一同。台座から溢れる眩い光が皆を、広間を包み込んでいく。
そして光が納まっていき、眩さの余り思わず目を瞑ってしまった皆が静かに瞼を開く。
すると広間は今まで見てきた変化した空間とは全く異なる空間へと一変していた。灯りもなく、それでも薄らと部屋の隅や間取りなどは視界に捉える事ができた。
薄暗い空間で目を凝らしていると、皆の前方に一人の人物がぽつんと佇んでいた。凝視してみると、その人物は全身に黒いローブを着衣しており、頭にフードを被って完全に容姿をローブで覆い隠している状態で皆に背を向けていた。
「……アレ? ギュービッド、いつの間にソッチに移動したんだ?」
「って! アタシは此処にいるよ!!」
皆が前方に佇んでいる黒ローブの人物に目を向けていると、新世代型の燃堂力が黒ローブ姿の人物を同行しているプロト世代のギュービッドだと思い込んで声をかけてしまうが、当のギュービッドは微塵も移動しておらず集団の中にいた。
燃堂力が思わずギュービッドだと思ってしまった黒ローブ姿の人物。その人物が不意に皆の方へと振り向いて正面に身構えた。すると黒ローブが正面の皆に向かって唐突に話し掛けてきた。
「フフッ、久々だな……いや、何年ぶりだろうなァ。お前らと顔を合わすのは」
『!』突然話し掛けてきた黒ローブに一同は驚いた。一方の黒ローブは絶えず、そのまま話し掛け続ける。
「フフフ……あれから大分経つな。それにしても未だお前らは詰まらぬ正義やら優しさやら、くだらない事ばかり語っている様だな」
「て、テメェは誰だ!」
不敵に微笑しながら話し掛けてくる黒ローブに大将が問い詰めると、黒ローブは徐に頭に被ってるフードの縁を両手で掴み、そして一気に脱いで素顔を晒した。
「……!!」「な……ッ!」
黒ローブの素顔を見たメタルバードと大将は血相を変えて絶句した。二人と同じく、他の者たちも黒ローブの素顔に驚愕し我が目を疑った。
全員が驚きの余り言葉を失った黒ローブの素顔、それは
「……ひゃは、ひゃーーはっは! 久しぶりだなァ………………聖龍隊」
それは怪しくも狂気に満ちた太々しい笑顔を向ける、小田原修司の憎悪と狂気の権化。闇人だった。
「闇、人……お前、なんで此処に……」
目の前の闇人に激しく動揺するメタルバードは指をさして問うた。すると闇人は狂気染みた笑みを薄ら浮かべてメタルバード達に言い返す。
「ははは、なぜ俺が此処にいるか……そんな事はどうでも良い。それよりも解ってる筈だ、俺とお前らが出くわした時……」
『…………………………………………』
怪しい闇人の口振りに皆が黙って聞き入れていると、闇人は意を決するかのように眼前の皆々に言い放った。
「俺と出逢うとき、それは………………戦いの始まりだァ!!」
闇人は只ならぬ形相で一行に襲い掛かった。
[闇の脅威]
闇人
二次元人が三次元人の思想概念より生まれる生命体である様に、闇人もまた同じである。自らの不遇な出生に苦しみ、自分を生み育んだ全てを憎悪する様になった小田原修司の思想概念から生まれた存在。己を生み出した全てを憎悪している為に、何事においても暴力的で好戦的な性格である。狂気的な性分であるが、現実主義者の様に理に適った思想を抱くなど明白な考えも持っている。小田原修司の容姿は元より、彼が持つ強大な闇の能力の核でもある闇人の能力は小田原修司を遥かに凌駕している。1度だけ聖龍隊と戦い、小田原修司とも決着をつけていたが、その後も小田原修司の潜在意識の中に潜んでいたと言われる。現在では聖龍隊や二次元界の間で伝説の敵役と言われるほど名が伝わっている。
その薄い褐色肌で紅い瞳の闇人は両手に黒いオーラを纏って、一行に向かって突っ込んでくる。
「く、来るぞ!」「な、なんで闇人が……!?」
前方から迫ってくる闇人に応戦する構えを示しながら皆に呼び掛けるキング・エンディミオンに対し、セーラームーンは何ゆえ闇人が目の前にいるのか酷く戸惑っていた。無理もない、闇人は本来あの小田原修司の潜在意識的な存在であり、かつて聖龍隊と小田原修司本人により討伐され既に消え去った筈なのだから。しかも何故か目の前の闇人は、過去に聖龍隊と対峙した12歳の小田原修司の姿だったので余計に混乱してしまう。
しかし、その闇人は好戦的な笑みを浮かべて躊躇わず拳を振り翳した。
「うおッ」
闇人が振り翳した拳を間一髪で回避する戦前に陣取ってたセーラーマーズ。マーズがかわした闇人の拳はそのまま床に直撃し、陥没した。
闇のオーラ/覇気を纏って放たれる闇人の一撃は驚異的であり、一撃だけでも大打撃を被るのは明白である。今まで闇人の名前だけは知っていながらも、その実態を始めて目撃する者たちは闇人の凄まじい実力に只々愕然としてしまう。
一方で最初の攻撃をマーズにかわされた闇人は、敵陣である聖龍隊へ突っ込み、隊士達を押し退けて集団の中に押し入ってきた。
「うわッ」
僅か12歳の男子とは思えないほど強靭な力で押し退けられる聖龍隊を尻目に、闇人は敵陣の中央まで辿り着く。
そして中央に辿り着くと素早く両手を床に付け、そこを中心に黒い渦が床一面に広がり始める。
「な、なんだこれは?」「まさか、これは……!」
黒い渦に戸惑うキリトら新人達に反し、アリババは黒い渦に見覚えがあった。皆が黒い渦に気が動転してしまっている最中、逸早く黒い渦の危険を察知したHEADは素早く跳び上がった。
「渦から離れろッ!」「はっ?」
跳び上がったHEADのメタルバードの声に赤塚組の大将や他の聖龍隊士が気付くが、次の瞬間、床一面に広がった黒い渦が渦の上にいる皆を呑み込み始めた。
「な、なんだ、コレ!?」「間違いない、この技は……!」
突如として自分達を呑み込む渦に焦るシルバー・クロウに対し、澤田綱吉は足元から自分達を吸収していく渦に確信を得る。
そして寸前で回避できたHEADを除いた聖龍隊と赤塚組は瞬く間に黒い渦に呑み込まれて消えてしまう。
「
皆を呑み込んでしまった巨大な闇の穴を繰り出した闇人が叫ぶ。目の前で大勢の人が渦に呑み込まれて消えてしまう現状を目の当たりにした新世代型達は言葉を失くす。
更に闇人は皆を呑み込んだ闇を再び自分の体内に戻すと、その闇を一気に噴水の様に吹き上げる。
「
闇人が吹き出した闇からは、先ほどの
「お、おい! しっかりしろッ」「……うぅ……」
床に放り出された面々に、跳び上がって
「こ、これは……!」「間違いない。総長の……修司さんの……!」
「そ、総長の……いや、修司さんの能力を何故?」
相棒であるロボットのヒーローマン共々、闇人の
「オラオラッ」「ぐッ」
闇人に蹴り付けられる者たちは悉く、凄まじい蹴りの威力で壁まで飛ばされてしまう。
「あッ!」「せ、聖龍隊の人達が……!」
たった一発の蹴りで壁まで吹き飛んでしまう聖龍隊の面々を前にして、愕然とする新世代型の女子達にイオリ・セイら。
更に聖龍隊の面々に続いて闇人は同じく
「くっ……!」
赤塚組のミズキが闇人の蹴りを受ける直前、一瞬で左腕をレーザーに変形させて闇人に射撃。ミズキの攻撃は闇人の顔を掠め、それに闇人は思わず動きを止めた。
「ッ………………!」「………………!」
レーザーで自身の顔を掠められた闇人は怒りに満ちた形相で狙撃したミズキを睨み付け、一方のミズキも自分を睨み付ける闇人を睨み返し、まさに一触即発の寸前であった。
「な、何なんだ、今の黒い渦は……」
黒い渦、
「みんな気を付けて! 闇人は修司の能力を、そのまま使ってくるわ!!」「えッ!?」
ミラーガールの言葉に衝撃を受ける聖龍隊総合部隊の面々。総合部隊の者たちは以前に小田原修司と共闘した事があり彼の闇の能力や戦術などを熟知しており、新人達も話にだけなら聞いた事があった。
多くの能力者は、基本的に1つか2つなど能力を持ち合わせている事が多い。炎に氷、風など。また能力の名称は、超能力や霊能力などを除いたものは漢字1文字か2文字で表すのが常識。そして小田原修司が持つ能力は闇である。元来、二次元界では昔より闇は邪悪な力として懸念されており、主人公やその側のキャラなどには余り見られなかった闇の能力。近年は、一部だけだが闇の能力を持つ英雄やヒロインも目立っては来ている。しかし小田原修司の闇の能力は、主人公や味方サイドそして敵側の二次元人が持つ能力とは一線を引く異質極まりない能力なのである。
ミラーガールの呼び掛けに皆が反応したその頃、当の闇人は自分にレーザーで射撃してきたミズキと激しい戦闘に突入していた。
ミズキは縦横無尽に戦況を移動しつつ闇人へレーザーを撃っていくが、闇人はこの射撃を容易く回避しながらミズキとの距離を詰めていく。次第に接近してくる闇人に警戒してか、ミズキは背中のブースターを噴射させて素早く後退し、闇人から遠ざかる。しかし後ろへ退いて離れていくミズキに闇人は彼女の方へ手のひらを突き出した。すると手のひらから漆黒の闇が生じ、同時に闇から凄まじい引力が発生して後退するミズキを引き寄せようとする。突然の引力にミズキは抗おうとするが抵抗も空しく一瞬の内に闇人の方へと勢いよく引き寄せられる。闇人は自分の方へ引き寄せられ勢いよく向かってくるミズキに対して拳を振り上げ、ミズキが急接近した所へ腹に拳を入れた。
「ぐは……ッ」
闇人に腹へ拳を入れられたミズキは激しく悶絶し、そのままの勢いで壁まで吹き飛ばされてしまった。
「み、ミズキさん!」「ミズキ……!」
壁に激突するミズキを見て愕然とする真鍋義久ら新世代型達と彼女が所属する赤塚組の頭領大将。
離れているミズキを強引に引き寄せた漆黒の闇を発動させた闇人。基本的として小田原修司が持ち合わせている闇の能力は五通りある。
対象を強引に引き寄せた上で、迫ってきた対象に攻撃を加えたりする事が出来る引力。この引力は有形/無形関係なく、多くの物体を引き寄せられる特性があり、小田原修司はこの力で周辺の物体を触れる事無く持ち上げたり、移動させたりと、超能力でいう念力と同等の芸当が行える。だが闇の引力が最も引き寄せるのは能力者の能力そのものである。小田原修司が直に能力者に触れる事で、能力者の能力は闇に引き寄せられて無力化されてしまう。これは能力の実体が闇に呑み込まれて実力が発揮できない為と思われる。直に能力者本人に触れる以外でも、小田原修司本人の意思が届く周囲や範囲でなら領域を展開させ、その領域内にいる能力者の力を封じて生殺しにできてしまう。
「この……っ」
ミズキを殴り付けて壁まで吹き飛ばした闇人に聖龍隊の暁美ほむらが2丁拳銃で銃撃。だが銃声に気付く闇人はほむらの方に手を横払いすると、闇人目掛けて直射される銃弾が瞬く間に失速し、床にポトポトと落ちていく。
「え……!?」
自分が発射した銃弾が失速して床に落ちていく様を目の当たりにする暁美ほむらは愕然とし、そんな彼女に闇人は怪しく笑むと両腕を構えて手から黒い覇気を吹き出すとそれを一瞬で拳銃に変えてほむら目掛けて連射してきた。
「っ!」
闇人からの銃撃にほむらは回避しようと移動するが、彼女を狙う銃撃の連射はほむらを追い続け、そして走る彼女の脚に銃撃が着弾してしまう。
「あ……っ!」
脚に着弾を受けたほむらは痛みで転倒してしまう。
「ほむらちゃん……!」
先の
ほむらの転倒を目の当たりにし、仲間の危機にと今度はブルーローズが携帯している高圧水鉄砲を闇人に向けて氷の弾丸を連射。しかし闇人は意図も簡単にブルーローズが連射する弾を掻い潜り、更に避け切れない弾は手刀で砕いて防ぐ。
悉く自分の攻撃を回避していく闇人に次第に苛立っていくブルーローズ。しかし苛立つブルーローズの心境を理解してか、闇人は如何にも挑発的な顔つきでブルーローズの方に今度は両手を突き向ける。するとブルーローズが所持する氷の弾を発射できる高圧水鉄砲が、2丁とも闇人の方へ引き寄せられてしまった。
「あ!」
児童向けの商品として企業が作った玩具とはいえ、武器が手から離れて困惑するブルーローズ。すると武器を引き寄せた闇人は、2丁の銃を両手で受け取ると不敵な面構えで困惑するブルーローズに話し掛けてきた。
「ははっ、お前さんの能力って……こんなんだろ!」
そうブルーローズに言うと闇人は奪い取った水鉄砲を向けて引き金を引いた。するとやや薄らと闇の様な色で冷気を纏った水が一直線にブルーローズに浴びせられ、その水は瞬く間に凍り付いてブルーローズの体を氷漬けにしていった。
「い、いや、いやあぁぁぁ……!!」
ブルーローズは足元から氷漬けにされていき、遂に全身が氷で覆われてしまう。
「ブルーローズ!」
仲間のブルーローズが奪い取られた水鉄砲で逆に氷漬けにされる様を見て激情するワイルドタイガー。
「わはははっ、自分の能力と武器で逆に氷漬けになるとは、どんな気分だ?」
奪い取った水鉄砲で氷漬けにしたブルーローズに闇人は小馬鹿にする様な面構えと言動で挑発する。
「ど、どういう事だ……なんでアイツはブルーローズの能力を真似したみたいな芸当ができるんだ……?」
奪取した水鉄砲で噴出した水を対象者に浴びせると同時に瞬く間に凍て付かせて相手を凍らせるといった、ブルーローズの氷のNEXT能力に近い芸当をやってのけた闇人に戸惑いの目を向けるキリト。すると其処に最初の攻撃を回避したHEADが闇人に攻撃を仕掛け、セーラーマーズや獅堂光といった炎系能力者が氷漬けのブルーローズに駆け寄り彼女の体を覆う氷を融かして救助に着手する中、暁美ほむらが発射した銃弾が失速して地に落ちたのと彼女が使用した拳銃と同形の銃を闇人も手から出現させて反撃した戦法、そしてブルーローズの銃を奪取して彼女の氷の能力を使った闇人の戦法を目撃して酷く混乱する現場の皆々にセーラーマーキュリーが説明する。
「闇人の攻撃に注意して。彼は修司君同様の闇の能力を……いえ、彼の闇の能力の実体ともいえる存在! 修司君同様に闇の能力を極限まで使いこなして攻撃してくるのは目に見えてるわ! 自分に向かって飛来する物体や放たれた物質の運動エネルギーを闇の能力で吸収する事で失速させて落下させるのも雑作もない事。そして闇の能力が持つ特性の一つである、影のエネルギーに近い闇を利用した複製の効果でほぼ全ての能力が自在に使えるの! そう、楓ちゃん、あなたの様に……。しかもコピーした能力に闇の力が作用する事で、何倍も威力や効力それに範囲なんかも増幅した状態で能力を繰り出してくる!」
「な、なにッ!?」
マーキュリーの説明に聖龍隊の隊士達も赤塚組も、そして新世代型達も驚愕する。
能力を始めとするエネルギーすら引き寄せて無力化してしまう故に、人の能力だけでなく物体の運動エネルギーをも無力化させる事で弾丸なども容易に失速させられる闇の能力。更に闇は影に近い自然エネルギー故に、影が物体の形を反映する要領で他人の能力を複製できてしまうだけでなく闇の能力が作用する事で、その能力や技の威力や効力そして範囲までも何倍に増幅した状態で複製した能力を使う事が出来ると知って、誰もがチート級の能力に驚きを隠せなかった。
しかもセーラーマーキュリーは縦横無尽に動き回りながらHEADと交戦する闇人に攻撃を当てようとしながら、更に闇人が持つ小田原修司の闇の能力の特性を皆に語る。
「そもそも、闇の能力とは実体のないエネルギー、光のエネルギーと対なる能力。形を持たない闇のエネルギーは本来、人体を傷付けられない特性があるけど、その代わり相手の精神や神経に直接闇のエネルギーで攻撃できる驚異的な効力があるの! 闇の能力で攻撃を受ければ、普通に体を攻撃された以上に激しい苦痛が全身を襲うわ!」
「つ、つまり……普通に殴られたり斬られたりする以上の痛みを相手に与える事が可能だという事か……!」
セーラーマーキュリーの丁寧な説明を聞いて、実体のない闇のエネルギーは人体に損傷を与えられないが神経や精神に直接攻撃できる特性から肉体的痛感以上の激痛を相手に与えられるのだと知った新世代型の鬼龍院皐月は愕然する。皐月同様に、マーキュリーの説明を受けて先ほど闇人に自分が使用している拳銃をコピーされて、その銃で脚を撃ち抜かれた暁美ほむらは撃たれた際に覚えた並々ならぬ激痛の訳が分かった。闇人の能力で複製された銃弾が、普通の銃撃以上の激痛を着弾した相手に感じさせていた。
するとHEADと交戦を始める闇人も、久しぶりに対面したかのような口振りで激しい戦闘を展開しながら話し始めた。
「ははははっ、久しぶりだな聖龍隊! そうだ、闇とは本来実体のない力、エネルギー! 肉体に損傷を与える代わりに、精神そのものに直接ダメージを与える事が出来るのが唯一無二の闇のパワー! 相手の体に傷を負わせられないが、普通の攻撃で感じ入る痛み以上の激痛を相手に与え、苦悶に至らせる事が可能なのだッ!!」
かつて対峙したHEADと対戦する闇人は、徐に両手から剣を出現させて二刀流の剣戟をHEADに差し向ける。
「それそれそれッ」
巧みな剣捌きを左右から繰り出す闇人の猛攻に、HEADは斬撃を防ぎながら必死に抗戦する。
「このッ」
総長メタルバードを筆頭とした主戦力の面々は闇人に一撃与えようとするが、闇人は攻撃を察知して直撃する寸前で回避してみせる。その間、ブルーローズの氷を融かして彼女を救出してたマーズや獅堂光達が、ようやくブルーローズの氷を融かし彼女を自由にできてた。
首から下の全身を氷漬けにされてたブルーローズは、救ってくれたHEADに礼を伝えるのも疎かにする勢いで自分を凍て付かせた闇人に再び向かっていく。
闇人に攻めていくブルーローズを視認して、最初の闇人の
聖龍隊士と同じく闇人の
しかし闇人は聖龍隊と赤塚組に包囲されながらも余裕満々の面構えで薄ら笑みを浮かべると、自分を取り囲む面々に向かってクロスボウを右腕に出現させて乱射してきた。
「おりゃおりゃっ!」「くッ」
無差別にクロスボウを乱射してくる闇人の攻撃に、メタルバードを始めとする聖龍隊は射撃を回避したり指示している得物で弾き返して防いだりして難を逃れる。
クロスボウを乱射し終わった闇人に、聖龍隊のマカ=アルバーンが巨大斧を振り翳して接近戦で闇人に斬撃を仕向けようと勢いよく迫る。しかし闇人はマカの一撃を難なく後退して回避すると、彼女の戦意と攻撃を笑いながらも評価した。
「ひゃははっ、その戦意いや殺気は気に入った! 俺も見合った戦いをしなきゃな」
そういうと闇人は再び闇の能力による複製でマカが扱う巨大鎌と同形の鎌を出現させ、マカと激突する。
「く……っ」「ヒヒヒヒ……ッ」
闇人の黒い巨大鎌による斬撃を自分の鎌で辛うじて防ぎ止めるマカに対し、闇人は自分の攻撃を辛うじて防いだマカの必死な表情を見て不敵に微笑む。
そして互いの鎌を激しくぶつけ、火花を散らしていた闇人とマカは次の瞬間に双方とも後方へ退き、互いに態勢を立て直す。するとマカと離れた闇人に、聖龍隊の巴マミと美樹さやかが反撃を仕掛けた。
「フィナ・フィナーレ!」
巴マミの自身の周囲に無数の銃器を展開してからの激しい銃撃が闇人に容赦なく降りかかる。しかしマミの銃撃が闇人に直撃する寸前、闇人は自身に黒い靄の様な闇を纏うと一瞬で消えてしまった。
突如として消えた闇人に動揺するマミ。だが彼女が動揺していると、そのマミの背後に先ほど闇人を覆い隠した闇が何もない空間から現れ、その中から闇人が姿を現した。
マミの背後から現れた闇人が彼女に攻撃しようとした瞬間、今度はマミの姿が突如として消えた。
「えぇッ!? 今度はアッチが消えた!」
闇人同様に姿を消して攻撃を回避したマミを見て新世代型達は吃驚。そしてマミは闇人から少し離れた場所に姿を見せる。
「い、今のは……」
だが当のマミは唖然としていた。何故なら一瞬で姿を消して闇人の攻撃を回避したのは彼女の意志では無かった。そんな瞬時に移動したマミを一際凝視する視線が新世代型達の群衆の中に。それは超能力者である斉木楠雄の視線であった。この時新世代型達は自分達の思考を共有できてしまう意思疎通能力の一種、共有感知で斉木楠雄が人知れず闇人と激闘を繰り広げる聖龍隊を観戦していると目に入った巴マミの危機に対して反射的に自身の能力の一つである
此処で斉木楠雄の目が一際ギラリと光った。その眼光に思わず彼に意識を向けていた斉木の親友、燃堂力以外の新世代型達が背筋に寒気を感じる。これは斉木本人が親友である燃堂力に自分が超能力者である事を悟られない様、自分と燃堂以外の新世代型達に公言させまいと念を押しての威圧だった。
そして戦況は、マミへの攻撃を新世代型の斉木楠雄によって阻まれた闇人に、今度は美樹さやかが攻撃した。
「それっ」
美樹さやかは自分の周囲に無数の剣を展開させ、それを闇人目掛けて一斉に発射。だが闇人は美樹さやかが発射した無数の剣に対して右手から黒い棍棒を出現させ、それを前方で激しく回転させて向かってくる無数の剣を悉く弾き防いでしまう。
「ッ!」
自分が放った攻撃全てを棍棒で意図も容易く弾いて防御する闇人の対応に愕然とするさやか。それに対して闇人は自分に無数の剣を繰り出してきたさやかに不敵な笑みを向けた。
「お前らの攻撃、中々面白いな。気に入った」
そういうと闇人は先のさやかの攻撃を全て弾いた棍棒を消すと、両手を左右に突き出して自身の周囲に無数の銃身と剣を出現させた。
「あ、アレは……!」「私達の……!」
美樹さやかと巴マミは愕然。闇人が見せ付けた技は、さやかとマミ二人の技を完全に合わせた代物であった。
そして次の瞬間、闇人は自分の周囲に展開した銃と剣で一斉に攻撃してきた。無数の銃から火花が吹き出し、無数の剣が銃弾と共に一直線に飛んでいく。銃撃と剣の砲撃に、元の術者であるさやかとマミはもちろん他の聖龍隊や赤塚組も回避しようと走り出した。
無数の剣は次々に壁に突き刺さり、いくつもの銃撃は壁に穴を作り出し、まさに現場は修羅場と化した。
美樹さやかの何もない空間から剣を出現させる能力、そして巴マミの銃を出現させる技。これらの二つを複製して同時に使えるのも闇の能力の神髄である。
闇は実質、影に近いモノであり、影が光に照らされて物体の形を地上に映えさせる様に対象者が使用する武器や能力・技をある程度だけだが複製して繰り出せられる能力。しかも闇の能力の影響で威力などが強化された状態で相手の技や武器が使用できる。
更に注目すべきが戦闘時に置ける闇の能力の特性。闇というモノは実質、物質すなわち形を成さないエネルギーなため物体や人体そのものを破壊するのは通常不可能なのが常識であるが、人体の場合は損傷を与えられない代わりに精神や神経に直接攻撃できる特性が備わっている。これ故、肉体には傷を付けられないが通常以上の痛みを相手に与える事が可能である。例えば小刀で皮膚を擦傷する程度が、まるで全身を切断された様な激しい痛みを伴うまでに至るのだ。
と、此処で闇人が繰り出してくる美樹さやかと巴マミの技を合体させて向かってくる銃撃や剣の中をブラック☆スターが掻い潜り、単身闇人に猛進していく。
「うおりゃーーッ!」
猛々しく飛んでくる銃弾や剣の合間を掻い潜り、闇人に接近していくブラック☆スター。そして闇人の間近まで近づいた彼は、相棒である
しかし「フッ」と闇人が軽く口元を笑んだ瞬間、闇人の全身を黒い靄が覆い尽し、そして黒い靄と共に闇人は瞬時に消え去ってブラック☆スターが振り付けてきた鎖鎌の刃から逃れた。
「な、なにッ!」「また消えた、どういう事だ……!?」
黒い靄と共に姿を消して自分の攻撃を回避した闇人に驚愕するブラック☆スターと同様、目の前で一瞬で姿を消して攻撃を回避した闇人に戸惑いの色を隠せないデス・ザ・キッド。
すると突如として消えた闇人が、再び何もない空間から姿を現す。
「ど、どうなってるんだ?」
此方の攻撃全てが直撃する寸前で姿を消しては、次の瞬間には別の場所に姿を現す闇人の所業に戦いを観戦してた新世代型の面々も唖然としてしまう。すると瞬時に別所へと移動する闇人の芸当を観察した斉木楠雄が冷静に分析した上で口を零した。
「まさかコレは………………瞬間移動?」「なんだって!?」
斉木楠雄の発言に、ギュービッドはもちろん他の面々も一同に驚く。
と、その時。瞬時に移動した闇人にセーラーヴィーナスとセーラーウラヌスの両名が剣で斬りかかる。
「おおっと」
二人の剣戟を咄嗟に両手に出現させた双剣で防いだ闇人。しかしヴィーナスとウラヌスはそれでも諦めずに果敢に闇人に剣を振るっていく。
ヴィーナスとウラヌスが闇人の相手をしている間、先程から自分達の攻撃を瞬時に移動して回避する闇人に戸惑う聖龍隊の面々にメタルバードが言い放つ。
「さっきから見てりゃ、不安ばっかりの攻撃してやがるなテメェら! 闇人もとい修司の闇の能力には空間支配力も含まれているのを忘れたか貴様ら!」
「く、空間支配力?」
メタルバードの言葉に驚愕する真鍋義久ら新世代型達の反応を見て、メタルバードは聖龍隊の面々や動揺している新世代型達に詳説した。
「修司の闇の能力には空間を支配するほどの影響力が備わっているんだよ! その支配力を利用すれば、自分の周囲の空間を思いのままにする事も、空間を超えて別の場所へと移動したりもお手の物なんだ!!」
「そ、そういえば……確かに修司さんって自在に自分の周りの空間を思い描いた通りの空間と言うか、思った通りの世界観にしちゃってたな……」
「シリアスな場面でも、思いっきしギャグ満載の情景にして面白がっていたっけな……」
メタルバードの説明に、かつての総長小田原修司が空間支配力で自分の周りの空間を思いのままの景観にしていた事を思い出す聖龍隊の日ノ原革と門脇将人。
「う、ウソだろ……空間から空間への瞬間移動も可能な訳なのか……?」
同じくメタルバードの説明を聞いて、小田原修司の闇の能力が空間を支配できる力で瞬間移動すらも成し得てしまう事実に愕然とする真鍋義久ら新世代型達。
対象の物や人物を引き寄せる引力
引き寄せた相手の能力を吸い込んで無力化してしまう吸収
引力に引き摺り込み、吸収した物や人物を放出する解放
能力者の能力や武器を思いのままに強化して使えてしまう複製
これらが伴って人々を脅かす強大な恐怖が生まれる。
引力/吸収/解放/複製/恐怖
五つの闇の脅威に聖龍隊と赤塚組を筆頭とする一団が挑む
[闇との死闘]
「さあ、もっと楽しもうじゃないか!」
様々な特性を兼ね備えた闇の能力を使いこなす闇人は、まるで戦いを心底望むかのような好戦的な言動で自分を取り巻く面々に言葉を掛ける。
次の瞬間、闇人は能力で3mばかしの棍棒を両手から出現させ、それを巧みに操りながら周囲の面々と距離を詰め始める。
聖龍隊と赤塚組は棍棒を右手に所持する闇人と一定の距離を保ちながら攻撃に備える。
そして距離が埋まった一瞬の隙に闇人は手にする棍棒を振り回して攻撃を開始する。
「そりゃッ」
闇人から繰り出される強烈な一撃を寸での所で回避していく面々。しかし闇人の猛攻が納まる事はない。
と、その時。闇人の死角から大将の合図で赤塚組が一斉射撃を仕掛ける。彼らの銃器から無数の実弾が闇人目掛けて放たれる。だが闇人は全てのエネルギーを無力化する闇の能力で弾丸の運動エネルギーを0にして失速、全弾床へと落としてしまう。
全ての弾丸を失速させ、床に落とした闇人が余韻に浸っていると、次の瞬間闇人の背後に回っていた赤塚組のミズキが闇人に向けて鉄板をも貫通するレーザーを直射。しかし闇人は自分に向けられて発射されたレーザーの方へ手を翳すと、その手から闇が生じ、その闇にレーザーが直撃したと思われた瞬間レーザーが僅かながらに折れ曲がってしまった。
「なに!?」
直射したレーザーの弾道を折り曲げられて直撃を免れた闇人を目の前にして愕然とするミズキ。彼女と同様、直射するべきレーザーが手から発生した闇で曲がってしまう光景に観戦していた者も含めて全員が驚愕する。
「ど、どうなっているんだ!? レーザーが曲がったぞ……!」
直射するレーザーの軌道を、僅かとはいえ手から生じる闇で捻じ曲げてみせた闇人の芸当に新世代型のレイジは愕然とする。
すると闇人が自分に向かって直射されるレーザーを捻じ曲げて直撃を免れる光景に愕然とする一同にミラーガールが説明した。
「あの闇は空間を支配する力で、少しながらも空間を歪ませる事ができるの! 空間を歪ませる事でレーザーの軌道を曲げて直撃を防いでしまうの!」
ミラーガールが言うには、闇の能力の空間支配力の作用で、空間を多少ながら歪ませる事で物質を持たないレーザーなどの直射される攻撃を曲げて回避できてしまうという。
物質のある弾丸は運動エネルギーを吸収され、失速させる事で着弾を免れ、レーザーなどの物質を持たない直射される攻撃は空間を歪ませる事で軌道を曲げて直撃を回避できてしまう闇の能力。
しかし驚異的な闇の能力を前に、聖龍隊は怖気付かない。ミズキのレーザーを空間を歪ませて捻じ曲げる事で回避したばかりの闇人に、まず佐倉京子が槍を突き出して闇人に突撃。だが闇人は杏子の槍での突撃をヒラりと身を反らしてかわすと、素早く杏子の後ろに回り、少女である杏子の尻を力いっぱいに蹴り飛ばす。
「ウッ!」
背後から蹴り飛ばされた杏子は床へと転倒し、そこに闇人は容赦なく転倒した杏子へ追撃の蹴りを何発も入れて彼女を苦しませる。
「ウッ、ウ……」
何発も連続で蹴りを入れられる杏子は苦痛の余り悶絶し、強気な性格ゆえに悲鳴などの声を出すのを躊躇ってか痛みに耐えながら必死に口を閉ざす。
と、そこに「やめねえかッ!!」と聖龍隊のトリコが物凄い剣幕で闇人に迫り、顔面に拳を殴り付けようとする。が、トリコの拳が顔に直撃する寸前に闇人は軽く頭部を横へ反らして殴打を難なく回避。続いて一瞬の内にトリコの拳をかわした闇人は、顔の横を逸れるトリコの腕を両手で掴むと相手の力を利用して容易く投げ飛ばした。
「うおッ!」
殴打する積りが逆に投げ飛ばされてしまったトリコは、その巨体を床に叩き付けられてしまう。
巨体のトリコを155と言う身長で投げ飛ばした闇人に、今度は高町なのはやフェイトそして八神ハヤテを中心とした【StrikerS】の面々が闇人を包囲する。なのは達に包囲される闇人は不敵な笑みのまま自分を取り囲む面々と対峙し、何かを企んでいた。そして先陣を切って高町なのはが闇人に砲撃を仕掛けようとした瞬間、彼女が使用する武器に闇人が急接近してその武器を掴む。そして高町なのはが武器を持ったまま彼女ごと振り回して周囲の面々を吹き飛ばす。
吹き飛ばされた面々は陣形を激しく崩され、振り回された武器を掴んだままの高町なのははその武器ごと闇人に放り投げられてしまう。
暴れ回る闇人の動きを封じようと聖龍隊は躍起になって陣を展開していく。それを見た闇人は紅い眼光を光らせると不敵な面構えで周囲を取り囲む面々に言い渡す。
「ククク、それじゃこんなのはどうだ?」
そういうと闇人は天に向けて右腕を突き出すと、手のひらから靄状の闇を噴出して辺り一帯を漆黒の霧で覆っていった。
「な、何する気だ……」
自分を含め、辺り一帯を闇で覆っていく闇人の行為に懸念を募らせる大将。
そして辺りを覆った闇が次第に薄れていくと、皆の目の前に大勢の闇人の姿が映った。
「な、なんだコレは!?」「闇人が増えた……?」
聖龍隊のゼブラに新世代型の猿投山渦は視界に広がる景観に愕然とする。何故なら自分以外の人物が全て闇人であり、戦闘に不参加の新世代型達の人だかりも闇人の集まりに変貌していたからである。
「お、おのれ闇人!」
目の前の闇人に鬼龍院皐月が縛斬を振り下ろす。だが、その斬撃を受け止めたのは蛇崩乃音だった。
「わっ? そ、その声……皐月ちゃん?」「なッ、その声……蛇崩か」
互いの声を認識し、皐月が刃を振り下ろしたのが蛇崩乃音であり、自分に刃を振り下ろした闇人が幼馴染の皐月であると理解する蛇崩。
この不可思議な現象は新世代型達だけではなかった。
「こ、コイツ!」「うわっ」
隣にいた闇人に聖龍隊の念仏番長が思わず殴り付けるが、その闇人に見えたのは仲間の剛力番長だった。そして殴られた剛力番長も自分を殴ったのが闇人に見えていた。
「ど、どうなってやがる? みんな闇人に……」
現場の皆々の姿が揃って闇人に見えてしまう状況に半ば混乱してしまう大将。すると全員が仲間同士で攻撃している混戦の中、メタルバードが強く皆に言い付けていく。
「お、落ち着け! 一旦、冷静に……」
混乱する状況を宥めようとしたその時、メタルバードの頭部を跳び上がって蹴飛ばして攻撃してきた人影が。メタルバードが自分を蹴飛ばした者に目を向けると、それは太々しい笑みを浮かべる闇人であった。
「あ、アイツが本物だ! みんな本物を……ぐへっ」
メタルバードが自分を蹴飛ばした闇人が本物であり、本物を攻撃するよう言い渡そうとするが後頭部を仲間の誰がに殴られてしまう。肝心の皆々は自分以外の人間全てが闇人に見えてしまっている為、本物を認識できず手当たり次第に攻撃してしまう。
その混戦を利用して、本物の闇人は仲間同士で叩き潰したり状況に混乱して何もできない面々に手当たり次第攻撃していく。本物に攻撃されても、仲間と本物の区別ができない面々はすぐ近くにいる闇人の姿に見える仲間に攻撃してしまう。
誰が闇人でだれが仲間が全くの区別がつかない混戦状態の中、本物の闇人は仲間同士で戦い合う状況を目の当たりにして面白がっていた。
しかしその時。混戦する戦況の中を一つの眩い蒼い光が戦場をあまねく照らした。
「っ………………?」
頭上に燦々と灯る蒼い光に皆の視線が向くと、次の瞬間その光が強烈に発光し出した。
「うわっ」
余りの眩しさゆえに全員が目を覆ってしまう。そして強烈な蒼い光が納まり、皆が顔を上げて目を開けてみると視界には今まで闇人に見えていた仲間達が正常の姿で捉えられていた。
「み、みんな……」
先程まで全員が闇人に見えていた仲間を攻撃していた中、ようやく互いの姿を捉える事が出来て仲間同士の戦いは静まった。
そして自分以外を闇人に見えてしまう現況を打破した蒼い光の真下に皆が目を向けてみると、そこにはミラーガールの姿があった。
「あ、アッコ……」
皆の目に映った異常を解いてくれた蒼い光を発したミラーガールの姿を見て赤塚組のギョロが唖然とすると、ミラーガールは一仕事終えた様な笑顔を浮かべる。ミラーガールの聖なる光はある種の幻程度なら解いて、正常な視界を取り戻させる効果がある。
全員の目に映る幻を解いたミラーガール。だがその時、皆の幻を解いたミラーガールに本物の闇人が急接近し彼女に刃を突き立てる。
「アッコ!」
闇人の刃に押されるミラーガールに大将が血相を変える。だが当のミラーガールは刃が自分に突き刺さる寸前で、自分のミラーソードで刃を受け止めてどうにか防げていた。
「ふふ、久しぶりだな、ミラーガール……」「………………っ」
久方ぶりの再会の様な口振りで刀を突きたてながら語り掛ける闇人に対し、ミラーガールは闇人の攻撃を必死にミラーソードで防ぎつつ険しい表情で闇人と対峙する。
ミラーガールと闇人が対峙していると、そこに闇人の死角からHEADの龍咲海が剣を振るって闇人に斬りかかる。だが海の斬撃を咄嗟に気付いた闇人は反射的に対峙していたミラーガールの目前で跳び上がり、海の斬撃を回避する。
そして再び多勢に無勢の状況に戻った闇人は、凄腕の聖龍隊と赤塚組を前にしても平然と振る舞う。
皆が闇人への反撃に転じようとした次の瞬間、闇人は今度は自分自身を闇で覆い、完全に闇で覆い尽す。
「こ、今度は何をする気だ」全身を闇で覆った闇人に警戒する大将。
すると次の瞬間。闇人を覆ってた闇は分裂し、辺り一帯に拡散。分裂した闇に目を向けていると、その全ての闇から何人もの闇人が姿を現したのだ。
「な、なに!?」
分裂した闇の中から現れる複数の闇人に酷く動揺してしまう聖龍隊。無論、その戦況を観戦している新世代型達も分裂した闇人に驚きを隠せなかった。
「ど、どういう事だ!?」
分身した闇人を目の当たりにして酷く戸惑う赤塚組のテツにHEADのキング・エンディミオンが全員に聞こえるよう大声で語る。
「またさっきと同じ幻覚だ! 闇の能力には幻覚などの幻を周囲に反映させて相手を惑わす効果もある! だが偽物とはいえ戦闘力は本物と寸分違わず同じ! 一定の時間またはある程度のダメージを当てれば消せる筈だ。みんな目の前の闇人全員に注意しろ!」
キング・エンディミオンの言葉に聖龍隊と赤塚組が気を張り詰めていると、そこに分身した闇人が多勢で攻めてきた。
『おりゃおりゃッ』
複数で攻めてきた闇人は、思い思いのままに各々の聖龍隊や赤塚組に直接殴りにかかったり跳び上がって顔面に膝蹴りを喰らわそうと襲撃していく。
これには聖龍隊も赤塚組も各々が散り散りにさせられ、最高で2,3人で一人の闇人を相手にしなければならなかった。しかし例え3人で1人の闇人を攻めようと、闇人は単身だけで様々な武器や能力を繰り出して難なく反撃して相手を返り討ちにしてしまう。
「み、ミラーガール!」
大勢の闇人による撹乱戦法にメタルバードは先ほど同様にミラーガールの幻術を解く事ができる蒼い聖光で分身全てを一気に消滅させようと、ミラーガールに呼び掛ける。これにミラーガールは顔を頷かせ、再び蒼い光を放出しようと盾を真上へと向けようとした。しかし分身した闇人はこれは見逃す訳はなく、蒼い光を放出しようとするミラーガールに集団で襲い掛かる。
「うわっ」
別々の方角から膝蹴りや肘打ちなどで打撃を浴び続けるミラーガールは、光を放出する機会が得られず仕舞いだった。
だが、この集団でミラーガールを襲撃する闇人達の有様を見て彼女に好意を持つ大将が憤怒した。
「この野郎!」
大将はミラーガールに襲撃する一人の闇人のフードを掴むと、そのままミラーガールとは反対の方向へ投げ飛ばした。投げ飛ばされた闇人は床上で表情を歪ませていると、その闇人の真横から赤塚組のミズキがレーザーの刃で闇人を頭部から真っ二つに切断。すると頭部を切断された闇人は一瞬で消えてしまった。
「これは………………」
切断した闇人が消えるのを目の当たりにしたミズキが唖然としていると、その状景を目撃したメタルバードが周囲の仲間達に聞こえる様に告げた。
「闇人の分身は一定のダメージか、人間でいえば致命傷を受ければ忽ち消滅する! こうなったら面倒くさいが片っ端から倒しまくれッ!」
メタルバードの一言にHEADの堂本海斗と蒼の騎士が闇人の分身とぶつかり出した。
「こうなりゃヤケクソだ!」「よくよく思い返せば、修司さんとの鍛錬でも似た様な事があったっけ」
海斗と蒼の騎士が昔を思い返しながら周囲の闇人の分身と戦闘を始めると、彼らに続いて他のHEADも闇人の分身と戦い始める。
セーラームーンやキューティーハニーが自分達に襲い掛かる闇人の分身を次々に撃破して消滅させていく中、そんな旧友の奮闘振りを前にした赤塚組も躍起になり闇人の分身に突撃する。
「このっ」
赤塚組の海野なるが分身の1体に急接近し、分身の頭部に銃口を突き付けて躊躇わずに引き金を引いた。銃声と共に分身の頭部を銃弾が貫通し、分身は力尽きた様子で倒れる。すると倒れる途中から体が消滅し、完全に消え去った。
「そうか! 近距離からの狙撃には対応しきれないと見た!」
なるに頭部を撃ち抜かれ消滅した分身を見た大将は、至近距離からの銃撃に闇人は対応が遅れて回避しにくいと判断する。
聖龍隊と赤塚組が分裂した闇人の軍勢に抗戦している最中、分裂した分身は参戦していない新世代型達にも猛威を振るってきた。
『きゃあっ!』
禍々しい形相で襲い掛かってくる闇人に新世代型の女子達は悲鳴を上げた。だが次の瞬間、新世代型に襲い掛かった闇人のフードが掴まれ、掴まれた闇人は床に投げ付けられる。そして投げ付けられた闇人の眉間に投げ付けた者が銃を突き付けた。
投げ付け、銃を突き付けたのは新世代型と同行して自然と警護に回っていたジェイク・ミューラーであった。ジェイクは分身に銃を突き付けた次の瞬間、迷わず引き金を引いて分身の頭部に風穴をあける。ジェイクに狙撃された分身は後方に倒れ込み、そして消滅した。
「チッ、たかがガキが調子乗ってんじゃねぇぞ」
不機嫌な面構えでジェイクは文句を口に出す。実際、目の前の闇人はまだ小田原修司が12歳ごろの容姿だった。
一方で他の分身も全て、聖龍隊と赤塚組の奮闘で片付いていた。場に残ったのは本物の闇人だけだった。
「ククク……」
再び追い詰められたにも拘らず不敵な笑みを零す闇人の態度に只ならぬ気配を感じる一同。
しかし迷っている余裕もなく、闇人が生まれた思想概念の持主、小田原修司に関して余り周知してない聖龍隊の新人達が数で闇人へ進撃した。
「おいッ、もう少し考えて攻めろ……ッ」
数と言う勇気で闇人に進撃してしまう新人達を見てメタルバードが制止を呼びかけるが、時すでに遅し。闇人は自分に向かってくる周囲の新人達に対して両手を左右に真っすぐ伸ばして迎撃してみせた。
「それッ」
闇人が左右に腕を伸ばすと周囲に強力な電撃が放電され、闇人に一直線に突撃した新人たち全員が電撃を浴びて痺れてしまった。
「うわあッ!」「きゃあっ」
強力な電撃に全身が痺れ、その場に膝をつく新人達。だが膝をつく新人達に闇人は容赦なく両拳に電撃を纏って追撃していく。
「ぐはッ」「きゃっ」
膝をついているクラインやライム・ベルに闇人は電撃を纏う拳で頭部を力いっぱいに殴り付けていく。その時の闇人の表情は実に狂気染みた笑顔だった。
次々に電撃を纏う拳で容赦なく面白おかしく追撃していく闇人の横暴に、今まで黙って観戦していた戦闘系の新世代型達は我慢の限界だった。
「もう我慢ならん!」
闇人の横暴に耐え切れなくなった新世代型の鬼龍院皐月が戦前に飛び出すと、彼女に続いて纏流子や栗山未来といった面子も闇人に戦意をむき出しにする。彼女らの戦意を感じ取り、闇人が顔を向ける。その表情を見た戦前と後方の新世代型全員は闇人に並々ならぬ狂気と破壊衝動を垣間見た。
そして闇人は自分に敵意を向ける新世代型を視認すると、一気に彼女達に急接近して間合いを詰めるや否や、流子や皐月が認識するより前に彼女達の曝け出された脇腹に強烈な拳による一撃を入れる。
「グッ」「がッ」
闇人に電撃を纏った拳で脇腹を殴打された流子と皐月は激しく悶絶し、僅かな隙を生んでしまった。その隙に乗じて闇人は更なる打撃を二人の頭部に殴り付けて少女らを苦しめる。
「皐月ちゃん!」「このッ! よくも鬼龍院様を」
脇腹を殴打しただけでなく頭部にまで強烈な打撃を喰らわした闇人に蛇崩乃音と猿投山渦が攻撃しようと動いた。だが二人がぞれぞれ動いた瞬間、闇人はまず自分に向かって突撃してきた猿投山の頭頂に跳び上がって踏み付け、そのまま常人離れした脚力で猿投山の頭を蹴り出して彼の体を床へと叩き付けた。
「ぐはッ」
頭頂を足の裏で踏み付ける形で蹴られて床に叩き付けられた猿投山は悶絶。一方の闇人はそのまま猿投山の頭を踏み台にして、着服している極制服の機能で上方に飛び上がろうとしている蛇崩乃音に迫っていた。蛇崩は闇人に気付くものの、闇人は彼女よりも弱冠高く跳び上がるとそのまま背後に回り、蛇崩の背中に手を翳した。そして次の瞬間、背に翳した手から球状の闇が出てきて闇人はその球体を一気に射出。蛇崩は黒い球体と共に床へと吹き飛ばされ、激しく床に減り込んだ。
「がは……っ」
激しく床に吹き飛ばされた蛇崩は床上に減り込んで動けなくなってしまう。
「コイツっ!」「よくも蛇崩を……」
蛇崩を床に吹き飛ばしてから着地した闇人に纏流子と鬼龍院皐月が先ほどの反撃も兼ねて後ろから襲い掛かる。しかし後方からの剣戟に闇人は両腕に闇で幾つもの鋭利な突起物を作り出して、その突起物で正面からの斬撃を悉く防いでいく。
「な、なんだ、あの突起物は……」
刃での攻撃に対して闇人が腕に現した突起物を見て新世代型の猿田学が疑問視してると、メタルバードが全員に聞こえる様に説明した。
「あれはいわゆるブレードエッジと呼ばれる武具に似せた突起だ。ブレードエッジは正面から繰り出される至近距離での斬撃を突起物で防ぎながら相手と応戦する防具を闇人は闇の能力で具現化して使用してるんだ!」
正面からの斬撃を受け止めて防ぐブレードエッジの説明をメタルバードが語り終ると、大将は最寄りの聖龍隊士に話し掛けた。
「な、なぁ。お前ら、よく修司と鍛錬って名目で戦ってただろ? 修司の思想概念から生まれてる闇人の戦術とか、次に何仕掛けてくるかぐらい分からないのか?」
「そ、それが……確かに闇の能力で分身を作ってもらってからの混戦や、能力を無力化した状態での鍛錬はしてもらいましたけど……ですが完全に全てを見知ってる訳じゃないんです」
「それに、小田原修司の闇の能力は変幻自在……思い通りの武器を生成して自在に扱う事もあれば、好きな様に戦況を操作できる手腕もあって。正直言って応対するのも厄介な能力なんですよ」
大将からの問い掛けに聖龍隊の小松とココは不安混じりの表情で目の前の闇人との激闘の戦況を観戦しながら答え返す。
戦いは更に苛烈を極め、闇人は実力者揃いの聖龍隊を悉く返り討ちにしていく。
「そりゃッ」『ッ!』
闇人に攻撃を無力化されただけでなく、互いに顔面を叩き合わされ言葉も出ないほど悶絶するナツ・ドラニグルとグレイ・フルバスター。
鹿目まどかが射撃した弓矢を全て左手に生じた闇で吸引すると、反対側の左手に闇を発生させて其処から吸引した矢を全て射出し反撃する闇人。
右手を炎で、左手を電撃で纏わせて二種の攻撃で手当たり次第殴り付けて猛攻を続ける闇人。
相手が巨大な武器を使って攻めてくる場合、闇の能力で具現化した巨大な武器で応戦していく闇人。
「おらおらッ、こっち来な!」
更に挑発をかけて自分に向かってきた高町なのはと鹿目まどかの連携をかわすと、彼女達を先ほども出現させた棍棒を振り回して弾き飛ばし一掃してみせる。
その時。一瞬の最中に闇人の死角から聖龍隊のアスナが斬りかかり、闇人の首を斬り落とそうと攻めかかった。
「えいっ!」
掛け声と共に剣を闇人の首目掛けて振り付けるアスナの斬撃に、闇人も気づく。そしてアスナは闇人の首に剣を斬り込んで、首と胴体を切り離してみせた。
「や、やった………………え……?」
闇人の首を斬首し得て歓喜しそうになった瞬間、彼女は自分の目に映る光景に我が目を疑った。アスナの足元に転がる生首は闇人の物ではなく、彼女が心より愛してやまない異性、桐ヶ谷和人、通称キリトの生首が転がってたのだ。
「そ、そんな……え……?」
アスナの顔から一気に血色が引いていき、蒼褪めた彼女の脳内は同時に酷く混乱し出した。
「そんな……まさか、今のはキリトだった訳……嘘、ウソ……」
今自分が斬首したのは闇人ではなく恋人のキリトだったのではないかと、その場に崩れるアスナは煩悶に陥ってしまう。次第に彼女の目から大粒の涙がポロポロと零れ出して、終いには恋人の死と自ら恋人を斬り殺したという喪失感と罪悪感に苛まれたアスナは頭を抱えて慟哭してしまう。
「私が、キリトを………………いやあああぁぁ……っ!!」
心身ともに圧し掛かる絶望感に打ちひしがれながら慟哭するアスナ。下手をすれば彼女の精神は崩壊寸前であった。
蹲り大声で慟哭するアスナ。だがその時、絶望に苛まれる彼女の耳に微かに声が聞こえてきた。
「……アスナ………………アスナ…………………………アスナ!」「!」
次第に強くなっていくその声にアスナが自分を取り戻し、顔を上げた瞬間。アスナの目に映ったのは忌々しい面構えで泣きじゃくり絶望に打ちひしがれる自分を見据えながら此方に向かって拳を振り上げる要領で突き出そうとしている闇人の姿だった。
「ッ!」
絶望に襲われる自分に殴り掛かろうとする闇人を視認するアスナだが、彼女が視認した次の瞬間に闇人はアスナの顔面を思いっきり殴り付け、吹き飛ばした。闇人に殴り飛ばされたアスナは後方の壁まで吹き飛び激突した。
「アスナ!」
闇人に顔面を殴られ壁に激突されるアスナを見て騒然としているのは、先ほどからアスナの名を呼び掛け続けていたキリトだった。
一方でアスナを殴り付けた闇人は、先程まで失意と絶望に襲われていたアスナを蔑む悪態で笑い飛ばした。
「ひゃははっ! 愛する者を自分の手で殺してしまう絶望感は半端ねぇよなァ………………誰かに殺されるよりも、自分の手で殺してしまった時の方が何倍も苦痛だろうよ」
自らの手で愛する者を殺めてしまう絶望感に苛まれたアスナを嘲笑する物言いで高らかと笑い飛ばす闇人。
そしてアスナが闇人に殴り飛ばされる情景を目撃したメタルバードが再び皆に呼び掛ける。
「惑わされるな! 闇の能力には相手に幻覚を見せて恐怖に陥れたりする効力も備わっている! 目に映る全てが真実だと思わない事だ! 下手すりゃ、幻覚で感じる恐怖で精神が崩壊して完全な廃人になっちまうかもしれない」
闇の能力には相手に幻覚を見せたり、その幻覚を用いて相手に絶大的な恐怖を覚えさせ植え付ける効力も備わっており、最悪の場合精神が崩壊して廃人に至ってしまう経緯も珍しくないとの事。先ほどアスナが闇人と誤って斬首してしまったキリトも、実は彼女の目に反映された幻覚だったのだ。
更に闇人との激闘は果てしなく続く。
相手の能力や使用する武器に応じて巧みに戦法を変えて交戦する闇人の戦術には目を見張るものがあった。
「気を付けろ! 相手に応じて戦い方を変えてきやがる!!」
メタルバードは闇人は元より小田原修司とも戦闘経験が少ない赤塚組や新人達、そして新世代型達に闇の能力の変幻自在の戦いに注意を呼びかける。
かつて闇人と激しい攻防を繰り広げた古参の聖龍HEADの攻撃を掻い潜り、戦場を駆ける闇人は目にも止まらぬ速さで手に出現させた小刀で相手の懐を切り裂き、闇の能力ならではの激痛を相手に与えていく。
「ぐッ……」
懐を闇の能力で具現化された小刀で切り裂かれ、傷はないが途方もない激痛が体に走り、思わず膝をついて悶絶する者が続出する。
そんな闇人の戦法を見て、メタルバードが再度皆に言い渡した。
「闇人も修司同様、狙撃や射撃なんかの遠距離戦じゃなく強烈な武術による接近戦だ! 一定の距離を保ちつつ応戦しろッ」
「だ、だけど……狙撃や射撃での攻撃も全て吸収された上で返されちゃうし、それでいて接近戦も危険って、打つ手ないわよ!」
遠距離からの戦法よりも接近してからの戦法を好んでいると説くメタルバードの話に、ミラールは狙撃なども全て闇の能力で吸収された上で反射されてしまう為に成す術がないと反論する。
闇人が繰り出す変幻自在の戦法に、皆が苦戦を強いられている最中、その闇人が好戦的な面構えで敵陣の中を手から出現させた棍棒で薙ぎ払いながら一直線に突撃していく。そんな闇人に聖龍隊のシリカが武器を振り付けて不意打ちで迎撃しようと試みる。だが闇人はシリカの攻撃を所持している棍棒で弾いて、二人はそのまま交戦。シリカは必死に闇人と抗戦するが、闇人は一瞬の隙をついてシリカの武器を弾き飛ばして彼女を無防備に。そこへ追撃とばかしに丸腰のシリカに迫る闇人は、所持していた棍棒を消してから彼女の頭を左手で押さえ、次に右手で力いっぱいシリカの腹部を突き上げる形で拳を喰らわした。
「ぐっ!」
頭を押さえられ、腹部に強烈な殴打を入れられたシリカは激しく悶絶し絶句してしまう。そんな苦痛に表情を歪ませるシリカが膝をついた瞬間、闇人は情け容赦なく彼女の後頭部にも強烈な打撃を与えて完全に戦意を失わせた。
「し、シリカ!」「くそっ、さっきから!」
仲間のシリカが叩きのめされ、先ほどはアスナを精神的に追い詰めるという卑劣な手段で痛め付けた闇人の所業にクラインもエギルも他の皆々も怒りが込み上がる。
と、仲間が次々に痛め付けられる惨状を目の当たりにして、モルジアナが闇人目掛けて攻撃を仕掛けていく。
「はァッ!」
しかし闇人の頭部へ跳び蹴りを喰らわそうと跳びかかるモルジアナだったが、闇人はモルジアナの蹴りが直撃する直前に彼女の足を掴んで軽く投げ返した。
「よっしょと」
闇人に軽々と投げ飛ばされたモルジアナは勢いよく壁に激突し、骨が砕けた様な鈍い音が辺りに鳴り響いた。
「モルジアナ!」
壁に投げ飛ばされるモルジアナを見て愕然とするメタルバードに反し、彼女を投げ飛ばした張本人の闇人は鳴り響いた骨の砕ける音に対して高笑いを上げる。
「ははははッ! いやあ、やはりいつ聞いても骨の砕ける音は爽快だな!」
生きた人の骨が砕ける音に快感を覚える闇人の言動に新世代型達は思わず恐怖で寒気を感じてしまう。
するとお次は剛力番長が、二つの巨大な得物を振り翳して闇人に急接近してからの反撃に転じた。
「ええいっ」
一瞬の隙をついて闇人の背後から聖龍隊の剛力番長が得物の巨大な鉄球棍、しおちゃんことみそちゃんこを振り翳して闇人に強烈な一撃をお見舞いする。
剛力番長が振るった強烈な一撃は闇人を押し潰し、闇人は陥没した床に減り込んでしまう。
「や、やりましたわ!」
普段のお嬢様口調で喜々する剛力番長。だがその時、床に減り込んだ闇人自分の背面に叩き付けられたしおちゃんことみそちゃんこを持ち上げながら徐々に立ち上がる。
「はは……効いたねぇ、今のは」
不敵に微笑みながら立ち上がる闇人の言動に激しく動揺する剛力番長。すると闇人は自分を叩き付け、床に減り込ませたしおちゃんことみそちゃんこの柄を掴んだ瞬間強引に剛力番長の手から引き離して強奪した。
「っ!」
自分の武器を二つとも強奪された剛力番長は一瞬ばかり動揺してしまい、その一瞬の間に闇人は強奪した二つの鉄球棍に黒い靄を纏わせてから剛力番長を殴り付けた。
「それッ」「っ!!」
闇人が殴り付けた黒い靄を纏ったしおちゃんことみそちゃんこに剛力番長は吹き飛ばされ、壁に激突した。
「ぐはっ」
壁に激突した剛力番長は激しく悶絶する。そして床へと転がる様に横たわる。
「剛力!」「大丈夫か」
横たわる剛力番長の安否を気にかけ、金剛番長や卑怯番長らが駆け付ける。しかし駆け付けた仲間の呼び掛けに剛力番長は応答できなかった。
「ぐあ………………っ」
「ど、どうしたんだよ拳! お前さん、ご自慢のヒュペリオン体質で生半可な打撃は効かねぇ筈だろ」
応答できない程の苦痛に悶絶する剛力番長に、彼女特有の鋼鉄よりも頑丈な特異体質による強度ゆえに普通は打撃が効かないだろうと仲間の念仏番長が問い掛ける。
そこに悶絶する剛力番長と仲間達に追撃しようと闇人が迫ってきた。迫る闇人に金剛番長達が気付いた瞬間、その闇人に真横から聖龍HEADのミュウイチゴが迫撃を仕掛けていく。
「この……ッ」「……っ」
ミュウイチゴの素手での闘技に闇人も自身の能力で出現させてた武器などを全て消失させて、互いに拳同士で激しく闘い合う。
闇人の相手をミュウイチゴが務めている間、メタルバードがナースエンジェルを従えて闇人の強烈な打撃を喰らって悶絶している剛力番長の許へ駆け付ける。
「体に痛みがまだ残っているんだな。気休めだがナースエンジェル、拳の体の痛みを和らがせてくれ」
メタルバードの指示で剛力番長に癒しのオーラを放射していくナースエンジェル。その間にメタルバードは攻撃を受けた剛力番長を含めた戦闘要員達に注意事項を告げた。
「黒いオーラに気を付けろ! あの黒い靄の事だ! アレは闇人から発せられる闇の覇気そのもの。闇の覇気を纏った武器や闘技は全て相手の体質に関係なくダメージを与えてくる! 闇の力が相手の精神や神経に直接作用して痛みを与える効果が、闇を纏った武器や拳にも備わる! 故に鋼鉄以上の硬さを誇るヒュペリオン体質でも、体そのものがサイボーグとして強化されている肉体だろうと、関係なく相手に悶えるほどの激痛に襲われるぞ!」
闇の覇気を纏った武器や拳などの闘技が強度な肉体ではなく神経そのものに激痛を与える故に、攻撃によるダメージは避けられないと豪語するメタルバードの話を聞いて愕然とする一同。
幾多の能力者、そして体術に秀でた聖龍隊の屈強な隊士達を悉く叩きのめし、完膚なきまでに痛め付けていく闇人の進撃は一向に収まる気配が感じられなかった。
闇人は不敵な笑みを、自分と対峙する聖龍隊と赤塚組、そして戦いを観戦する新世代型達に向けるや否や、忌々しい程の苛立った顔付きで皆に言い放った。
「俺に勝とうなんて無駄な希望は捨てる事だな。所詮、夢や理想が叶えられるのはおとぎ話の中だけの虚構。現実に夢見たってバカバカしいんだよッ」
[悲しい闇]
多種多様、変幻自在、縦横無尽。
数多の戦術と武器を使いこなす闇人の悪態をついた戦闘に赤塚組や戦闘型の新世代型はもちろん、闇人を生み出した思想概念の持主である小田原修司と戦闘経験を積み重ねている聖龍隊の強者達も全く歯が立たなかった。
「うぅ………………」
完膚なきまでに叩きのめされ、体内を巡る激痛に苦悶する面々。極制服で極限まで身体能力を高めた上で各々の武装で高い戦闘力を身に着けている纏流子や鬼龍院皐月たち。一族に伝わる術で抗おうも返り討ちにされた名瀬兄妹。自らの血を結晶化して戦うも闇で具現化した多種多様な武器の前では歯が立たなかった栗山未来。新しい時代に生み出された新世代型も闇人が持つ強大な闇の能力の前では赤子の手を捻る様に容易く敗北してしまう。
「こ、こいつは……!!」
屈強な猛者たちが次々に痛め付けられ、床上に沈められる惨状を目の前に新世代型の仁科カヅキは愕然と表情が固まってしまう。
闇人との激戦を新世代型達が観戦し、戦っていた者たちが全員痛め付けられる惨状に思わず傍観していると、闇人に痛め付けられながらも未だ戦意を失ってない聖龍隊のクローム髑髏が立ち上がり闇人に挑んでいった。
「このーーッ」
三又槍を巧みに振り回し、闇人に刺突仕掛けようと突撃するクローム。しかし彼女が闇人に接近し、槍を棒術の如く振り回して闇人を牽制しつつ生じた隙をついて懐に突き刺そうとした瞬間、闇人は自分の腹部に槍が突き刺さる寸前に体を横へ反らして刺突を回避。「!」これにはクローム自身も驚き動揺してしまうが、次の瞬間に闇人は自分の腹部の横を通った三又槍の柄を掴んで強引にクローム髑髏を引き寄せる。そしてクロームが至近距離に入るとすかさず強烈なラリアットを彼女の首筋に打ち当てた。
「グッ……」
首筋に強烈なラリアットを当てられたクローム髑髏は忽ち吹き飛ばされ、地べたに転げ回ってしまう。
クローム髑髏の突撃が失敗に終わったのを視認して、彼女に続けとばかりに今度はリナリー・リーが立ち上がって闇人目掛けて高々と跳び上がって急襲する。
「えーーいっ」
上空から強烈な跳び蹴りを仕掛けるリナリー。しかしリナリーの跳び蹴りも闇人は彼女の蹴りを片手で軽々と受け止めてしまうと、素早くリナリーの脚を受け止めた手とは反対の手で掴むと容易く床に叩き付けた。
「きゃっ」
蹴りを仕掛けた脚を掴まれて床に激しく叩き付けられるリナリー。
「リナリー!」「クソッ、さっきから好き勝手にしやがって……!」
仲間を次々に叩きのめし痛め付けていく闇人の横暴に癇癪を起こしたアレン・ウォーカーとラビは残った体力を振り絞り闇人に攻撃を仕掛けようと走り出す。だが敵意を向けてくる二人に気付いた闇人は、走り寄ってくる二人に手のひらを差し向けるとその手から黒い球体を二つ発射した。二つの球体は闇人に向かって走るアレンとラビに直撃、すると球体は二人の足元に黒い渦が発生し、アレンとラビは自分達の足元に発生した黒い渦に下半身まで呑み込まれ身動きできなくなってしまった。
「な、なんだコレ?」「う、動けない……」
下半身を完全に黒い渦に飲み込まれ、上半身だけが自由になる状態に困惑するラビにアレン。すると下半身を闇の渦に捕らわれて身動きできなくなっているアレンとラビに闇人が殺気に満ち溢れた形相で迫ってきた。
『!!』
殺伐とした雰囲気で迫る闇人に微かな恐怖を悟るアレンとラビ。二人が眼前に迫る闇人に恐怖を抱き始めていると、闇人は両手に闇を纏い始め、その闇が徐々に形を成していくと硬くて巨大な装甲へと変形したのだ。闇人は両手に武装した闇の能力で具現化した硬度な装甲に対して喜々とした不敵な笑みを浮かべると、その巨大で頑丈な装甲を纏った両拳をアレンとラビの脳天に振り下ろした。
『ぐあああッ!!』
脳天に強烈な一撃を打ち付けられたアレンとラビは絶叫してしまう。だが闇人は脳天に打撃を受けて意識が朦朧としている二人に容赦なく、今度は二人の顔面にアッパーカットの要領で拳を打ち付けてアレンとラビを殴り飛ばしてしまう。殴り飛ばされた二人はそのまま床に叩き出され、気を失ってしまう。
「ひゃはははッ、弱い弱すぎるぜ!」
無残に負けていく屈強な隊士を見て、闇人は彼らを嘲笑い飛ばす。
「ち、力の差があり過ぎる……」
戦いを傍観していた新世代型の黒川冷は、戦闘経験が無いとはいえ闇人と対峙している者たちの力の差が圧倒的だと自然と解ってしまう。
だが戦いに絶望視している新世代型達の前で、未だ戦意を失わず敢然と闇人に立ち向かおうと聖龍隊の八神ハヤテと暁美ほむらが武器を闇人に向ける。
「こ、この……」
僅かに残った力で闇人に向けて発砲するほむら。だが闇人は両手に発生させる闇で次々と発射される弾丸を受け止め、そして失速させて銃撃を防いでいく。
「よっ、ほら、よっしょ」
銃弾が発射される度に様々な体勢で弾丸を失速させて着弾を防ぐ闇人の仕草に暁美ほむらは若干ながら苛立つ。すると闇人がほむらの弾丸を失速させている最中、その隙に八神ハヤテが闇人の背後から急接近して得意の接近戦を仕掛けようとする。しかし闇人はほむらからの銃撃を防いでいる最中でも周囲の気配を敏感に察知していた為、背後から接近してくるハヤテの存在に既に気付いていた。
「コイツがッ」「ッ!」
背後にハヤテが接近した瞬間、闇人は彼女の方へと振り向いて不意にハヤテへ拳を振り付けた。しかしハヤテも闇人が前触れもなく繰り出してきた攻撃に反応し、咄嗟に闇人の拳を受け止めて防御する。打撃を防いだハヤテへ闇人は立て続けに闘技で応戦。身長差では子供の姿の闇人に勝っているハヤテであるが、闇人は逆にその小柄な体躯でハヤテの闘技を俊敏にかわし続け、かわすと同時に彼女の体の各急所に強烈な一撃をお見舞いしていく。
「ッ………………」
悉く自分の攻撃をかわされ内心焦りを募らせるハヤテ。しかし彼女が焦りを感じ始めたその時、ハヤテが繰り出した拳を闇人は体を横に反らして回避し、同時に彼女が突き出してきた腕を掴むと強引に捻ってハヤテの腕を挫かせた。
「ッ!」
腕を捻られたハヤテは激痛に襲われ、堪らずその場に膝をついてしまうが、闇人は彼女が膝をついた瞬間にハヤテの頭部を押し付けて顔面を床に力いっぱいに叩き付けて悶絶させる。悲鳴すら上げる暇もなくハヤテは顔面を床に強打されて参ってしまう。
「………………!」
残忍な手口も見られるが、闇人の凄まじい戦いぶりを目の当たりにした綾瀬なるを始めとする新世代型達は思わず息をのむ。
そして闇人は今し方、自分が痛め付けた八神ハヤテを見下す眼差して彼女に悪口を浴びせた。
「夢なんて現実に叶えられる訳ねェだろうが」
悪口を浴びせると闇人は床に顔面を強打され蹲るハヤテに蹴りを入れて更なる苦痛を与える。
その時、悪態の限りをつく闇人に腹が立った佐倉京子が考えなしに一直線に闇人へ突っ込んだ。杏子の仕掛け槍が幾度にも折れ曲がり、その先端の槍が闇人目掛けて刺突していく。が、闇人は自分に向かってくる仕掛け槍を片腕に巻き付けて、その腕に力を込めて槍を持つ杏子を強引に自分の方へ引き寄せる。
「うわッ!」
得物の仕掛け槍ごと引き寄せられた杏子に、闇人は腕を大きく振り翳して杏子が接近してきた所に強烈な拳による打撃を浴びせた。
「がッ」
打撃を受けた杏子は苦痛に声を上げ、そのまま宙を舞う。だが彼女が宙を舞った瞬間、闇人は杏子へ更なる追撃を与えて彼女を完膚なきまでに痛め付けた。
と、闇人が杏子を痛め付け終わった時、闇人は自分の頭上に気配を感じる。見上げてみると、なんと頭上にはHEADのローゼンメイデン達が丸く陣を形成して浮上していた。
「今よ!」
真紅の合図でローゼンメイデン達は自分達の力を集結させ、一瞬で闇人を巨大な水晶の中に閉じ込めた。誰もが闇人の動きを封じられたと思ったその時、闇人を閉じ込めた水晶に亀裂が生じた。その亀裂は瞬く間に広がり、そして次の瞬間には広がった亀裂から水晶が粉砕し、中から闇人が再び自由の身となって姿を現した。
「だ、ダメか……!」
砕け散った水晶の破片に巻き込まれ、体中をボロボロにしながらも蒼星石は起き上がる。すると自分を一瞬とはいえ閉じ込めた水晶を生み出したローゼンメイデン達を冷たい視線で見下ろす闇人が言葉を掛ける。
「くだらない希望は見ない方が得だ」
次の瞬間、闇人は床に散らばる水晶の欠片を素早く拾っては、その欠片をローゼンメイデン達に投げ飛ばした。
「うわっ」「きゃあっ」
連続で投げ飛ばされる鋭利な水晶の欠片に顔を腕で覆う翠星石と雛苺。だが闇人は足元に散らばる欠片全てが無くなるまで、目にも止まらぬ速さで欠片を拾っては連続で投げ付けていく。
そして全ての欠片を投げ終わった闇人。するとその背後から闇人の横暴に耐え切れず、生傷だらけのナツ・ドラニグルとルーシィ・ハートフィリアが連携で攻撃を仕掛けようと急接近。だが二人の急襲に素早く気付いた闇人は両手から闇の能力で具現化した鎖を飛び出させ、迫るナツとルーシィの首に巻き付けた。
『!』
首を鎖で巻き付けられただけでなく、具現化の元である闇の能力の影響で二人とも魔力が封じられ抵抗できなくなっていた。そんな二人を闇人は首に鎖を巻き付けたまま闇の能力で二人に懸かる重力を無力化して宙に浮かす。
「わッ!」「な、なにこれ?」
鎖が巻き付いた状態で宙高く舞い上がる現状にナツもルーシィも慌てふためく。だが二人が慌てるのも束の間、闇人は重力の無力化を、一気に闇の能力で強力な重力が懸かるように一瞬で変化させ、ナツとルーシィを強大な重力で高所から床へ叩き付けた。
「ぐあッ!」「がはっ」
床に叩き付けられた両名は強力な重力の影響で床に減り込み、激しく体を強打した。
ナツとルーシィが床に伏せられると、その状景を目撃したブラック・ロータスが自らも闇人へ出撃する。しかし向かってくるブラック・ロータスに闇人は厳めしい顔つきで振り返ると、自分と彼女の間に闇の能力で発生させた黒い靄を広げてブラック・ロータスの視界を遮る。ブラック・ロータスが黒い靄に気付くものの中に突入してしまうと、靄で視界が塞がるブラック・ロータスの頭上から闇人が後頭部に両手を当て、全体重を彼女の頭に押し付けてブラック・ロータスの顔面を床に押し滑らせて痛め付けていく。
「っ!」
流石のブラック・ロータスも床上に顔面を押し当てられ、擦り付けられる痛みには苦悶の表情を浮かべる。
「そ、そんにゃ………………っ!」
目の前で次々に屈強な戦士でもある聖龍隊士が敗れ、痛め付けられる惨状に森園わかなは悲痛な表情で愕然と蒼褪める。
と、その時。闇人は自分が聖龍隊を始めとする戦士を痛め付ける惨状を観戦している新世代型達に目を向けると、徐に彼らの方へ足を向かわせた。
「っっ! ……」
冷酷無情な闇人の冷め切った眼光と此方に足を向かわせる現状に新世代型の速水ヒロは恐怖で顔を引き攣らせ酷く脅えた。
しかし新世代型達に足を向かわせる闇人に、床上に倒れてたミラーガールが痛みに苛まれながらも制止の言葉を掛ける。
「ま、待って……」
嘆願する様に闇人に声をかけるミラーガール。しかし闇人が彼女の声に気付いて顔を向けた瞬間、ミラーガールの瞳が闇人の目に入ってしまった。ミラーガールの瞳が目に入った瞬間、闇人の表情は激変し、一層と表情が険しくなった。すると闇人は右手から闇を出現させ、それを有無も言わせない勢いでミラーガール目掛けて発射した。
「あっ……!」「ミラーガール!」
闇人が発射した闇の塊は粘着性があり、ミラーガールは目元に付着した粘り気のある闇をどうにか引き剥がそうと必死になる。一方でミラーガールの目が粘着性の闇で塞がれた光景を目撃した新世代型達は、ミラーガールの鏡の様に透き通った瞳と目が合った瞬間に表情が険しく激変した闇人の態度を見逃してなかった。
そしてミラーガールの瞳を闇で覆い隠した闇人は再び新世代型達に歩み寄り、彼らに接近すると徐に話し掛けてきた。
「……お前さん達も下らない人間の……娯楽の為にバカみたいに創られたんだな」
漫画という娯楽から創作された事をほのめかす言動を悪態をつきながら語る闇人に自然と意識が向けられる新世代型達。更に闇人は彼らに世知辛い現実についても淡々と語り継いでいく。
「この御時世、理想ほど馬鹿げた幻想は無ェよな」
『………………』
更に闇人は物語と言う意味合いから多くの争いや戦闘に巻き込まれる二次元人の顛末についても語り出した。
「二次元の者は戦いから決して逃れられぬ……哀れな
『………………………………』
「娯楽の為だけに争い傷付け合い、醜くいがみ合う滑稽な
更に更に闇人は、そんな二次元人を小馬鹿にする様な言動で新世代型達に問い詰める。
「なぜ自分が傷つき、そして争いの渦中に巻き込まれてしまうのか……まあ、今さら言う必要もないがな」
不愉快極まりない闇人の言動に苛立ちを募らせ始める新世代型達の表情を見て、闇人は更に彼らの怒りを煽る様に自らの存在意義を主張し始めた。
「俺は破壊するだけ……命を奪い、人の平穏を壊し、そして全てを滅ぼす事だけが俺の存在理由! 簡単な事だろ? お前ら二次元と言う創作物を作り出せるなら、その創作したものを壊すのも創造主の一族である俺にしか成し得られない事実を!!」
二次元人を創造した三次元人ゆえに、その創作した物語や存在を破壊し滅ぼす事も可能だと強く主張する闇人の言葉に新世代型達は息を呑んだ。
「お前たちの世界は現実の世界である三次元界と融合した事で、ちょっとばかしの変化が生じてる筈だ。だけど、それで何が変わった? 三次元人は自分達から見て不愉快極まりないキャラクターや自分らを殺傷する二次元人を
現実の三次元界と自分達の二次元界が融合した現世でも、多くの二次元人が様々な理由で命や存在を抹消され、更には三次元人からの冷遇や蔑視など二次元人には生きにくい世の中で夢や理想などは全く価値がないと力説する闇人。
すると闇人の主張に異議を唱える声が飛び交った。
「た、例え三次元人から余りよく見られなくても……!」
「私達は、私達の夢の為にこれからも頑張り続ける!」
様々な自身の夢や理想についての主張が飛び交う中、そんな声を聴いた闇人は激しく昂って怒声を上げた。
「ふざけんじゃねェ!!」『!!』
辺りに響き渡る怒声に身を震わせる新世代型達。
闇人は怒りに満ちた口調で新世代型達に吐き散らした。
「いい加減、夢とか希望とか下らねェもん見てんじゃねェぞ! そんなのが叶えらるほど世の中、甘くはねェんだよ! 罵られて見下されて、騙されて奪われて……そんな現実で貴様ら二次元人に何ができる!!」
最後に闇人は出生について猛々しく言い放った。
「生まれた時から出来損ないのバケモノが……世の中に認められる訳が無いだろうがァッ!!」
自分を生んだ親も、世界も。この世の全てを恨み憎しむ言動を洗い浚い吐き出す闇人の言動に新世代型達は衝撃を覚えた。それは小田原修司の自伝本にも記載されてたが、彼が発達障害者として周囲から迫害され実の家族とも不仲となってしまい天涯孤独の身の上ゆえに当初は自分を生み出した親も世界も心の底から激しく憎悪していた実情を新世代型達は思い出した。
新世代型の誰もが、自らの出生について親はもちろん世界の全てに憎悪を向ける闇人に只ならぬ感情を抱いていた。
まさにその時。
「……いい加減にしろよ」「!」『っ……』
謎の声に闇人も新世代型達も反応し、闇人が声の方に振り向いた瞬間、闇人の胸倉を掴む者が。その人物こそ闇人に声をかけた赤塚組の赤塚大作、通称大将である。
大将は闇人の胸倉を掴んで少年の姿の彼の顔を自分の顔に近づけさせると、突拍子に胸倉を掴まれて動揺してしまってる闇人に静かであるが激しく言い詰め始めた。
「……テメェは昔の修司のまんまだな。短足で小生意気で、世知辛い現実を心から嫌っちまって……」
「………………」
「……何よりも、自分の出生……自分が他人の愛情や優しさを感じられない異端な存在、障害者として自分を生み出した母親や世の中、いや自分自身を激しく忌み嫌っちまって……」
「………………ッ」
「……だがなッ! 自分の生い立ちばっか呪ってたって何の進歩もねェんだぞ! 修司はな、アッコや聖龍隊の連中と出会ってから色々と変われた! 時おり世の中をひっくり返すようなドデケェ山を起こして世間を引っ掻きまわした事も1度や2度じゃねぇがな……要するに修司は少しずつだが確実にアッコ達のお陰で変われたんだ! それに比べてテメェはどうだ? まだガキの頃の修司のまんまじゃねェか!」
「………………!」
「その証拠に、テメェはアッコの綺麗な
大将の熱弁に少年の姿の闇人は真意を衝かれて表情を強張らせる。
「ガキの頃から全く進歩できてねぇ、テメェにとやかく言われる筋合いはコッチにはねェんだよ! ……いつまでもウジウジウジウジ異端な自分に嫌気さしてんじゃねぇぞクソガキがッ!!」
闇人に啖呵を切る大将の物言いに新世代型達は唖然とし、闇人本人は自分の胸倉を掴む大将の手を必死に引き剥がそうともがき続ける。
最後に大将は友である小田原修司の少年の姿をしている闇人に言い放った。
「何も変われねぇ奴が……変わり続けた俺らにとやかく言う資格なんかコレっぽっちも無ェんだよ!!」
この言葉に闇人の様子が一変。闇人の姿が徐々にぼやけていき、闇人自身は更に激しく胸倉を掴む大将に抵抗を見せた。
「くそっ………………クソーーーーーー……ッ!」
まるで真意を大将に衝かれて激しく悔やむ様に叫ぶ闇人は次の瞬間、一瞬でその姿が完全に消えた。
「え?」「き、消えた……」
つい先ほどまで対象に胸倉を衝かれ激しく説かれていた闇人の姿が一瞬で消えてしまい、目を丸くして驚いてしまう蓮城寺べると仁科カヅキら新世代型達。そして彼ら同様に今まで胸倉を掴んで離さなかった大将も、自分の目の前から瞬く間に消失してしまった闇人に驚愕して呆然としてしまってた。
「ど、どうなってるんだ……?」
新世代型と大将と同じく突然消える闇人に驚き起き上がるメタルバード達負傷者ら。
と、此処で先の闇人との戦闘で負傷した者たちが自分らの体に感じる違和感に気付く。
「あ、あれ……なんでだろう、痛くない」「ほんと。どういう事かしら?」
闇人との戦闘で激しく痛め付けられた体から痛みという痛みが全て消えている容態に驚きつつも戸惑いを隠せない鹿目まどかと暁美ほむら。
よくよく周りを見渡してみると、闇人と繰り広げた戦闘の痕跡すら綺麗に消滅していたのである。
「ど、どうなってるの?」
突然の状況に把握できず困惑する一方のジュピターキッドが首をかしげていると、メタルバードが唐突に口を開いた。
「まさか………………今までのは全部、幻か?」
「ま、幻!?」『!?』
メタルバードの発した言葉にミラーガールも新世代型達も、そして他の面々も激しく反応する。メタルバードは自分の言葉に反応した面々に考えを説いていった。
「今までの疑似体感装置で作り出された敵と違って、闇人との戦闘の痕跡が俺らには全く残ってないだろ。戦場になったこの部屋も斬撃などの痕跡や、打撃による床や壁の窪みが跡形もなくなっちまってる。何より今まで闇人の攻撃を受けて激痛に襲われてた俺達の体から痛みが綺麗さっぱり消えちまってる。もしかしたら今まで戦ってた闇人は何らかの方法で俺達の脳内に作られた幻だったのかもしれねぇ」
最初から今までの闇人そのものが幻であったと説くメタルバードの話に一同は愕然とした。
「……確かに。初期の新世代型のクローンロイドとは肉体に損傷が残ったけど、闇人との戦闘で感じた激痛は今では全く感じられないわ。クローンロイドじゃないとすると、やはり考えにくいけど幻だったかもしれないわ」
メタルバードの説に赤塚組のミズキも複雑な心境ながらも納得する。
「い、今まで聖龍隊の戦士をメチャクチャに痛め付けてた闇人が幻!?」
「あ、あんなに強かったのに、まさかただの幻だったなんて……なんか信じられない」
激戦を繰り広げた闇人が幻だったと聞かされ、プロト世代のギュービッドとチョコは俄かには受け入れ難かった。
すると此処で一つの疑問を新世代型達が悟った。
「そ、それにしても……なんで幻の闇人が聖龍隊、ううん、私達の邪魔したのかな?」
「色んな技や能力使ってきたけど、あれも全部が全部、私達が見た幻覚だったのかな」
新世代型の福原あんと小鳥遊おとはは顔を合わせて話す。
引力/吸収/解放/複製/恐怖……今や世界を劇的に変化させた五つもの異質な闇の能力を持つ小田原修司の思想概念から生まれた聖龍隊最大の敵、闇人。
一方で、その幻の闇人に激しく説教を怒鳴り散らした大将は一人呆然と立ち尽くしていたが、その時自分の目に入ってきた光に気付いて声を上げた。
「っ……お、おい、あれ! 光が……」
大将が指さす方へ皆も顔を向けると、その視線の先には一筋の光明が差していた。
「あの光は……」「……行ってみるか」
差し込む光明に皆は唖然とするが、微かな望みを託して大将はその光の方へ向かおうと提案する。
そして全員、幻だったと思われる闇人で受けた激痛も綺麗に消えた聖龍隊と赤塚組も含む一行は差し込む光明の中へと突き進んでいった。
皆が光明の中を突き進むと、そこは巨大ビルのエントランスホールであった。
「こ、ここは……」
「出口だ! 地下の研究施設を抜けて、1階のホールに出られたぞ!」
闇人との激闘を終えて皆が辿り着いたのは、今まで自分達が彷徨っていた地下の研究施設の真上に建てられたビルの1階、地上だった。
全員は喜々としながら1階のエントランスホールの正規の出入り口から外へ脱出しようと駆け足を踏んだ。
しかし………………
[メルス]
「ようやく出られる……っ」
「やっと出られるよ! 日本に帰れるよーーっ」
外へ脱出できる喜びを身に染みて感じ入る余り、泣きじゃくりながら思わず抱き合って互いに喜び合ってしまう真鍋義久とギュービッド。
そして皆が喜び合いながらビルの出入り口へと駆け出したその時。
何処からともなく拍手音が響き渡り、皆の足が立ち止まる。
「ッ?」
拍手音に立ち止まる大将が音の出所を探そうと辺りを見渡す。
するとその時、新世代型の九条カレンが声を上げて指さした。
「あ、アレ!」
皆が九条カレンの声に反応し、彼女が指さす方に目を向けると、その先は吹き抜け構造のビル内部その5階のフロアから此方を見下ろしながら拍手を鳴らす一人の人物が見受けられた。
「て、テメェは……」
突然の登場に大将を始めとする一同全員がその人物を直視する。すると皆の視線を一身に浴びるその人物は笑顔で下々の一行に話し掛けてきた。
「……まさか此処まで辿り着けるとは。それも、一人の犠牲者も出さずに……さすがだな、歓迎しよう」
全員の視線の先、5階のフロアから1階の皆を見下ろす人物。それはブラウン色のオールバックに逞しい体躯、そして黒紫の軍服を着衣している男性であった。
謎の男性に見下ろされる中、新世代型の琴浦春香はその人物の顔を凝視すると鮮明に記憶が思い返された。
「あ! こ、この人……」
震える指で男を指す琴浦春香の記憶は、共有感知を通して他の新世代型達にも伝わった。
新世代型達は思い出した。地下の研究施設で目にした若き頃の小田原修司が映されてた軍隊の集合写真。その写真の中で少年だった小田原修司の隣に映っていたガタイの良い男性軍人、その人であった。
「コイツ、若い頃の小田原修司と一緒に写真に写ってた軍人……!」
写真の事を思い出した真鍋義久は上階から自分らを見下ろす軍人を見上げて声を荒げる。しかし此処で一つの違和感を新世代型達は気付いた。
「だ、だけど……この人、写真に写っていたのと大して変わらない」
「確かに。小田原修司が少年の頃の写真だった筈なのに、あの写真に写っている時と差して老けている様には見えないわ」
少年時の小田原修司と映っている為、10年以上前の写真である筈だが目の前の軍人はその写真に写っている頃と大して容姿が変わってない、年を取ってない様に感じる新世代型の能美クドリャフカと棗鈴。すると若く見えると言われた軍人は高貴な振る舞いで話し返した。
「ははは、永遠の命を持つと言われる君たち二次元人にそう言われると少し嬉しく思うよ」
「なにッ?」
軍人の言葉に真鍋義久ら一行が動揺の感情を顔に浮かべるのを視認した軍人は皆にこう言った。
「君たち二次元人を私は少しばかし羨ましく思ってる。……かつて二次元人の中には三次元人に認められた故に、他の生命が決して得られない永遠の命を貰い受けた種も存在していた。【サザエさん】、【ドラえもん】、【クレヨンしんちゃん】……かつて多くの二次元人がその存在を高く評価された事で永遠に存在する権利を得られた故に物語の中の時を止められ、老いもせず永久の時を生き続ける事ができてた。……だが、小田原修司が君たち二次元人の世界と私達の三次元界を融合させてしまった事で、かつて永遠の時を生き永らえる許可を得た二次元人の止まってた時を動かしてしまった。故に、かつて永遠の命を授かった二次元人も今は我々同様に同じ時の中で老い始めてしまった……実に嘆かわしい事だ」
かつて永遠の命を持っていた二次元人も、三次元界と融合を果たした現在では同じ時間の中を過ごす様になってしまった為に永遠の時間を奪われ老化していく現状を丁寧に語る軍人。
突如、目の前に現れた軍人の話にメタルバードが異議を唱えた。
「それは違うぜ。オレたち二次元人は永遠を生き続けるより……三次元人と同じ時間の中で限りある人生を歩んでいこうと決意したまでだ。奪われたんじゃなく、あえて永遠を捨てただけさ」
永遠の命や時間を奪われたのではなく、同じ時間の中で共に三次元人と限りある生を歩む為に自ずと捨てたと主張するメタルバード。
そしてメタルバードの話の後、大将が突然現れた軍人に厳つい顔で問い詰めた。
「……テメェこそ誰だ、名乗りやがれッ!」
激しい感情の大将に問われた軍人は笑いながらも答える。
「はは、そうだな。君らの事を周知している私が名乗らないのも多少ながら理不尽というものだ。私の名は………………アルドウ・ウラジェール」
「アルドウ、ウラジェール……」
不敵に眉を吊り上げて名乗る軍人アルドウ・ウラジェールの名に表情を険しくする大将。
皆がアルドウ・ウラジェールの名を聞かされると、アルドウは続けて皆々に自分の素性を語り明かした。
アルドウ・ウラジェール
かつてアメリカの外人特殊部隊に配属されており、実はそこで様々な知識と戦術を新得しようと渡米してきた小田原修司と面識を持つ。その後、小田原修司が国際連合より世界の法案を大々的に改案する権限を得たのち、修司の思想に共感してたアルドウも権威の上がった国連軍の秘密特殊部隊それも高い地位の軍人に抜擢された。彼の人脈は幅広く、それを用いて様々な軍事的作戦や計略を策謀していたという。
するとアルドウは徐に普段から常備しているブーメラン状のナイフをクルクルと回しながら取り出すと、その鋭い切れ味を誇る刃を直に握り締めて自分の左手を自傷する。これを目撃した一同は大変驚愕した。しかしアルドウは自ら傷付けた手から生じる痛みを苦しむ様子もなく、それどころか傷から滴る血を見詰めながら心地良さそうな表情を浮かべる始末。実はアルドウは常備しているナイフを用いて自分自身の指や舌を傷付ける癖があるのだが、これは痛覚に対して独特の価値観を持っているからである。
更にアルドウは自前の厳つい整った顔を一行に向けて語った。
何と彼は国連軍が所有していた人間兵器、小田原修司の体から抽出されるD-ワクチンに対してアルドウは1000万人に1人の確率で存在するという適応者であり、D-ワクチンによる筋力強化を受け付けず、またDをベースに作られたウィルスに感染しても脳細胞や肉体に劣化が全く起きない完全適応者であり、これによりアルドウは軍内部でも高く評価され、それも含めて最高の地位に上り詰めていたという。
「………………そんなテメェが、なぜこんな所に」
アルドウの話を聞いて大将が問うと、アルドウは鋭い眼光で語った。
長年、軍の最高幹部の地位に君臨してたアルドウ。しかし昨年12月、小田原修司が国連に自らの地位と権威を返上し、国連から彼の人権が返還された後、アルドウの立場も大きく変わった。小田原修司の兵器としての使用権限が全て白紙にされ、彼の遺伝子を用いた軍事活用ができなくなってしまい、これを機にD-ワクチンの適応者であるアルドウも軍上層部から追われたのだという。
「……修司の脱退で軍での立場が無くなったお前さんが、何ゆえ此処に」
軍上層部での居場所を失ったアルドウにメタルバードが問うと、アルドウは余裕ある素振りで答えた。
「私はな、聖龍隊……彼と、小田原修司と同じなのだよ。この二次元世界と融合を果たした三次元界、いや世界で更なる情報を、もっと刺激的なデータを求めるようになり、知りたくなってきたのだ」
脱退した小田原修司と同様の情報、感情を知り得たいと述べるアルドウの思想に唖然と表情を固めてしまう新世代型達。アルドウはそのまま昂った様子で熱弁を振る舞った。
「かつて小田原修司は、人は痛みを、苦痛を知ってこそ学び成長できると言っていた。戦争と言う痛みを、差別と言う苦痛を……非情な世界の真実を知る事で人は成長できる存在だと自負していた!そして非情な世界を変えられるのは人が苦痛や真実を知るだけではない、人々の理想より生まれ出た二次元人の存在もまた世界の変革に携わると豪語していた! 故に私も今になって知りたくなった……世界の真実を、本当の痛みを……変わり続ける二次元人の可能性にな!」
「……………………………………」
昂りながら熱弁するアルドウに皆が騒然としていると、アルドウは更に驚愕の事実を語り明かした。
「真実を、痛みを知る事で変わり続ける二次元人……そんな君たちの事を良く知る為にも、私は竜人共に金を与えてこの地まで連れて来させたのだがね」
「! な、何っ!?」
そう、新世代型二次元人達をラプター率いる竜人海賊団を金で雇って攫わせたのはアルドウだった。更にアルドウの口から衝撃の事実が。
「だが……ラプターは実に惜しかった。君らと同じ二次元生命体であるにも拘らず、容易に自分を変える事ができなかった。……私が授けたウィルスを用いても、宿敵である赤塚組ですら殺められなかったのだからね」
「な、何だと!」
ラプターを変異させたウィルス。それをラプターに手渡しのもアルドウだった。
「く、狂ってる……!」
アルドウの言動と思考に狂気じみたものを感じた新世代型は揃って嫌悪感を示した。しかしアルドウは、そんな新世代型達に上の目線で告げる。
「苦難も、罪も、痛みと共に受け入れ、新しく生まれ変わる。この至福、生まれたばかりの君たちには理解できぬだろうね」
すると、そんなアルドウの話を聞いて大将が険しい表情で問い詰めた。
「おい、そんじゃテメェか……此処の研究施設の親玉は、タイの都市にウィルスを撒き散らしたのはテメェか!」
タイの地下研究施設を運営し、更にはウィルスを流出させてタイの都市を壊滅させたのかと激しく問い詰める大将。問い詰められたアルドウは冷め切った面差しで答え返した。
「フフ、残念ながら私は此処の管理を務めていただけで主催者と言う訳ではない。ただ施設内での君たちの活躍は詳細に拝見させてもらった。実に素晴らしい戦闘データだったよ、君たち聖龍隊にセブンズ・ガードの赤塚組、そして新世代型の諸君のは……」
自分は製薬企業が建造した研究施設の管理を詰めているだけの雇われた身であると告げるアルドウにメタルバードが再び質問をぶつけた。
「その主催者……もしかしてゴールドマンって言わないか?」
「ほぉ、もう知っていたのか、社長の事を。我々は、ある御方のもと結束した同胞……まあ、彼は私とは違う目的があるらしいがね」
メタルバードがアルドウに訊ねたのは、パラサイダーの所で発見した書き殴った様なメモに記されていたゴールドマンと呼ばれる、おそらく社長なる人物の事。これにアルドウは不敵に笑みながら話し返した。
すると皆が愕然としていると、アルドウは自分が立っている5階のフロア、その奥からゆっくりと歩んでくる巨大な存在を一行に紹介した。
「紹介しよう、二次元人と三次元人が共生した事で新たに造りだされた驚異……」
アルドウが喋ると、彼の背後から現れた巨体の存在は5階の高さから1階のエントランスホールに飛び降り、皆の前にその巨体を晒した。
「……コードネームMELUS。Dの破壊力と脳内に組み込まれたコンピューターによる完全制御の精密さを融合させた、完璧なまでの戦闘マシンだ」
アルドウが告げる生物兵器の名に一同は驚愕した。それは施設内で遭遇した生物兵器3-DXの兄弟機でもあれば、何者かによって何処かへ運び出された代物でもあった2-DXだった。2-DXを運び出したのは他でもない、アルドウ本人だった。同時に3-DXに強大な聖龍隊への敵愾心を植え付け、施設内で嫌というほど襲撃させたのもアルドウだった。
目の前に立ちはだかる2-DX、通称メルスに動揺する一行にアルドウは楽しそうに眺めながら言った。
「楽しんでくれ……このうえない痛みを! ククク……」
立ちはだかるメルスは紅い瞳を一行に向けて、臨戦態勢に入った。
メルスはアーマーなどの重装備により、ロケットランチャーを担ぐ右腕を除いた左腕と両脚による3足歩行で一行を捉えながら距離を詰めてきた。すると右肩に担いでいるロケットランチャーから連続砲撃を仕掛けてきた。
「ロケットランチャー!?」
「やっぱり修司のクローンから、こんなモンを造ってやがったか!」
施設内で自分達を執拗に追跡してた3-DX同様、小田原修司の優れた遺伝子を用いて生み出されたクローンを改造されて造り出されたメルス。素体であるD-クローン、すなわち小田原修司のクローン体の脳内に高性能コンピュータを埋め込み、循環器系を人工臓器で強化させる事により、従来のB.O.W.よりも優れた完璧な制御と運動性の向上を実現させている。肉体を覆う特殊合金のアーマーは銃火器をものともしない耐久力を有し、ウイルスによる暴走を防ぐ拘束具としての役割を持つ。だが運動性に関しては、その重装備によるものなのか、移動は主に左腕と両脚による3足歩行によるもの。しかし武装として右肩に巨大な4連装ロケットランチャーが装備されており、火力は最強。何よりもベースが筋肉強化した小田原修司であるだけに格闘による戦闘力も高く、巨大化した左腕で殴りかかったりしてくる。まさにアルドウ・ウラジェールが言う様に「小田原修司の破壊力とコンピュータ制御の精密さを融合させた」最強の生物兵器。
「どうする? まともに戦っても効かなそうよ」「弱点を探せ!」
左腕と両脚による3足歩行で接近してくるメルスは、近付きつつも戦前に強力な4連ロケットランチャーを連射。メルスの砲撃に戦前の面子は急いでエントランスホールに配置されているモニュメントに駆け寄り、それを防御壁として利用してメルスの砲撃から身を護る。
激しいメルスの4連ロケットランチャーでの砲撃は全弾モニュメントに着弾し、モニュメントは瞬く間に粉砕される。だが皆が驚異の破壊力に驚くよりも早く、粉砕したモニュメントの台座が床に収まり跡形もなくなった。
「お、おい。壁みたいなモニュメントが床に消えたぞ」
「ま、まさか……!」
敢えて壁の様な形状のモニュメントが粉砕すると同時に床へ消えていくのを目の当たりにする大将とメタルバード。すると砕けたモニュメントが床に消える様子に驚くメタルバードを視認したアルドウの口から衝撃の言葉が出た。
「フフ、お察しの通り。此処のエントランスホールは君たちの到着を見越してB.O.Wの性能も確認できる試験場に作り変えておいた。心置きなく、かつての友のクローンであるメルスと命を削り合うがいい」
「余計な事してんじゃねェよ! いや、それ以上にビルの1階ホールをそんな理由で作り変えんじゃねぇッ!!」
新世代型二次元人達を救出した聖龍隊と赤塚組の到着を見越して1階ホールをB.O.Wの試験場に作り変えたアルドウに怒鳴り返す大将。
一方で武装している4連ロケットランチャーでモニュメントを破壊したメルスは戦前で戦う者たちに急接近し、左の剛腕で殴り付けた。
「うおッ」「フロート!」
メルスの剛腕に
皆、強力な火力を誇るメルスと距離を置いて抗戦しようとするが、距離が離れた途端にメルスは再度ロケットランチャーを連射して交戦する。
「また撃ってきたぞ!」「丁寧に撃ち落とせっ」
4連ロケットランチャーの砲撃に戸惑う大将にメタルバードはロケット弾1発1発を丁寧に狙撃して防ぐ様に言い渡していく。
と、ここでランチャーの砲撃を確実に撃ち落としていく聖龍隊と赤塚組に、非力な新世代型達が涙目で泣きついてきた。
「お願いです! もうこの際、どんな強力な技や魔法でも何でも良いから、あの怪物さっさと倒して!」
「もう少しで、やっと外に出られるってのに、あんな怪物に殺されるなんてゴメンだ!」
必死に泣きついてくる新世代型の森谷ヒヨリと四宮小次郎の懇願に呆れながらも彼らの要望通りに応戦していく聖龍隊と赤塚組。
そして相手が強大なB.O.Wだと認知してクローンロイドや闇人戦では余り活躍できなかったジェイク・ミューラーも果敢にメルスに攻撃していく。
「オラオラっ、こんなデカブツ容易に倒してやるぜ!」
躍起になるジェイクを見たアルドウは、薄ら笑いながら言った。
「ははは、やはりアルバード・ウェスカーの子だな。血は争えないとは良く言ったものだ」
そんな中、赤塚組にジェイクはメルスに発砲していくが、メルスが装備している特殊合金のアーマーは如何なる弾丸をも撥ね返してしまう。
「クソッ、弾が効かねぇぜ」「いっくら撃ち込んでも攻撃が効かなきゃ意味が無ェぜ」
絶えずメルスに発砲していくジェイクと大将だが、特殊合金アーマーの耐久力を前に唯一の攻撃手段である銃火器が防がれ歯が立たない状態だった。
そんな面子を見兼ねて、聖龍隊が特殊能力による超火力の攻撃をメルス向けて仕掛けた。すると特殊合金アーマーに微かな亀裂が入ったのを大将は見逃さなかった。
「今だ! これを喰らえッ!」
大将は聖龍隊の攻撃を受けて一時的に動きを止めたメルスの足元に手榴弾を放り込む。放り込まれた手榴弾は爆発して、亀裂が入ったアーマーを少しばかし剥がし取る事に成功する。
「よし! これでアーマーを全部はぎ取って攻撃できる!」
「アーマーが剥がれた個所を集中して攻めろ! そのうち他のアーマー部分も剥がれ落ちるだろう」
手榴弾でアーマーが剥がれて攻撃が効く事に歓喜する大将に対し、メタルバードはアーマーが剥がれた個所へ攻撃を集中するよう冷静に指示を出していく。
すると再びメルスがロケットランチャーを連射。
「ロケット弾は俺らが撃ち落とす! お前らはメルス本体を攻め続けろ!」
大将は叫びながら向かってくるロケット弾を赤塚組の仲間と共に銃器で狙撃して撃ち落としていく。その間、聖龍隊はありとあらゆる特殊能力でメルスを迎撃。
「爆撃なら私だって!」
近距離戦を避けて遠距離からの攻撃をメルスに仕掛け続ける聖龍隊と赤塚組を見て、極制服で飛行してから上空からのミサイルでの爆撃に長けた新世代型二次元人の蛇崩乃音がメルスに向けて
度重なる苛烈な攻撃を浴び続け、メルスの特殊合金アーマーは大破され、本体も多大な損傷が目立ってきた。しかしメルスは止まる事無くロケット弾による爆撃と接近からの打撃での攻撃を引き続き仕掛けてくる。
「タフな奴だぜ!」
聖龍隊の強力な攻撃を浴び続けても尚、猛威を振るうメルスの耐久性と体力に圧巻されながらも銃を撃つことを止めない大将。メルスは此処でロケット弾を発射すると同時に接近して、爆撃と打撃による波状攻撃を仕掛けてきた。大将たち赤塚組は平凡な銃器でロケット弾を狙撃するが、接近してくるメルスに動揺してか1発だけ逃してしまい、ロケット弾とメルスが戦前まで迫ってきた。だが其処にミラーガールが拳銃に変化させたミラーソードでロケット弾を撃ち抜き、迫るメルスに強烈な蹴りによる打撃を当ててメルスを怯ませる。
皆がミラーガールの対応に驚き目を丸くさせていると、メタルバードが驚き手を休ませてしまってる大将たち赤塚組に声をかける。
「何してる! 動きが止まった今がチャンスだ! 有りっ丈の弾丸をぶち込んでやれッ!」
メタルバードが大将たちに銃撃を推奨する中、メタルバードたち聖龍隊もミラーガールの蹴りを受けて怯んで動きが止まったメルスに集中攻撃を浴びせる。
だが聖龍隊の集中攻撃を受けたメルスは再び移動し出し、戦前で戦う者たちの頭上に跳び上がって重量級の巨体で押し潰そうとしてくる。
「うわッ」
間一髪でメルスの圧し掛かり攻撃を回避したキリトは、すかさず一撃メルスに斬り付けると一目散に遠ざかる。
メルスからのロケットランチャーをエントランスホールに点在するモニュメントを盾に防ぎながら確実に攻撃を本体に直撃させていく聖龍隊と赤塚組。しかし脅威の耐久性と体力の高さでメルスは安易に倒れない。
「まだ倒れないのか!?」
小銃を連射し、手榴弾を放り込んで特殊合金アーマーを剥がして抗戦する大将が異様に耐久の高いメルスに難を示す。
だが、その時。遂にメルスが装備している特殊合金アーマーが全て剥がれ落ち、メルスは無防備の状態になった。
「よっし! アーマーも全部なくなった。全身のダメージも目立ってきたぞ」
「イケる! 一気に畳み掛けましょう!」
自信を防御すると同時にウィルスの暴走を制御する特殊合金アーマーが全て剥がれ落ち、全身の損傷も目に見えて目立ち始める傾向に喜々とする大将と同様、メルスの蓄積されたダメージが積み重なっている状態を見て一気に決着を付けようと皆に訴えるキューティーハニー。
そして全員、特殊アーマーを剥がされ無防備になったメルスへ集中砲火。メルスは抗う暇もなく、爆炎に包まれていった。
集中砲火を受けたメルスは、遂にその巨体を床に沈めた。
[変形]
激しい苦戦の末、遂に小田原修司のクローン素体を改造して造り出された最強のB.O.Wメルスを撃破した一行。
しかしメルスを突破し、皆が安堵しそうになったその時。5階のフロアから自らが仕向けたメルスとの激戦を観戦していたアルドウが怪しい笑みで自慢げに語り始めた。
「残念ながら……メルスは制御から解き放たれた」
すると倒されたメルスの亡骸、その背中が不気味に蠢き出し、体内で何かが蠢いているのが目に見えた。
「体内のDの進化速度は、もはや予測不可能だ。神ですら手なずけられぬ、君ら二次元人をも超えたバケモノが生まれるだろう!」
クローン元である小田原修司の体を構成するD-ワクチンが齎す生命の進化、その速度は科学的観念からも最早予測がつかない域に達したと豪語するアルドウ。更に彼はD-ワクチンで進化を果たしたメルスが辿り着くのは、二次元人という異種を超越する存在であるとアルドウは高らかに言い放った。
次の瞬間、背中が不気味に蠢いていたメルスの体内から巨大な物体が飛び出し、それが上方で4つに分かれると物体はそれぞれ3階のフロアに強靭な爪で掴まり胴体を支えた。
『………………………………!!』
メルスの死骸から飛び出したその異形に、一同は言葉を失くした。
「グオオオォォォ………………ッ」
飛び出たその異形は、上半身全体を覆う特殊合金アーマーで機械的な容姿をしてたメルスの時よりも巨大化した4本爪の両腕と上半身、左右に開く口、胸と両肩部分に紅い核が見られ、背中からは無数の触手が伸びているのが確認できた。下半身は肥大化した脊髄に成り代わっており、その脊髄は4つに分岐して四方に3本の爪で3階フロアに掴まって巨大な肉体を支えている状態で響き渡る咆哮を上げていた。
「……コイツ! 変形しやがった!」
身体から無数の触手が生え、左腕だけでなく右腕までも巨大化した事で左右対称の姿になったとはいえ、完全に人型とはかけ離れた生物的な姿へと変貌したメルスを目の当たりにして大将が絶叫する。
すると第二形態に変形したメルスは背中から生えてる触手を操って、その無数の触手から何本ものレーザーを一行に向けて発射してきた。
「避けろ!」
メタルバードを始めとする戦前の者たちは咄嗟に横へ回避してレーザーを避ける。が、彼らの後方で戦いを見届けるしかできない一般の二次元人達にレーザーが向かっていた。
「うわぁ!」
自分達に向かってくるレーザーに脅える瀬名アラタら新世代型達。するとミラーガールが新世代型達の前に飛び出し、瞬時にミラーシールドを前に構えて魔法陣の様な鏡の丸い壁を展開させて直射してくるレーザーを全て反射させて新世代型達を死守する。
「レーザーだけなら私一人で防げるわ! みんなは変形したメルスと抗戦して!」
ミラーガールの呼び掛けにメタルバードは即座に応えた。
「解った! アッコ、お前は新世代型を警護しろ! 他の連中は第二形態に変形したメルスに徹底抗戦開始だ!」
皆に指示を飛ばすと同時に右腕を砲口に変形したメタルバードが第二形態に変形したメルスに攻撃を開始する。メタルバードに続いて他の面々も第二形態メルスへ攻撃を開始。
メルス第二形態。度重なる戦闘によりアーマーが破壊され、肉体のダメージで生命の危機に陥ったことで暴走状態になったメルスは、瞬時に4つに分岐した肥大化した脊髄で直接3階のフロアに掴まって地上の敵を見下ろしながら殲滅する異形化した形態。第一形態よりも巨大化した腕と身体から生えた無数の触手から発射されるレーザーが武器。
その第二形態メルスは新世代型達の方へレーザーを直射し終わると、今度はそのレーザーを回避した戦前の面子に向かって再びレーザーを発射する。
「また来たぞ!」
2度目のレーザー攻撃にもメタルバードは皆に回避を指示していき、瞬時に向かってくるレーザーを皆と共に回避する。
レーザーを回避した途端、即座に第二形態メルスに攻撃。しかし巨大化した体に攻撃を浴びせても、大して効果が見られない。
「図体がでかくて、どこ狙えばいいか分からねェ!」
巨大化した体の何処を狙えば効果的なのか解らず、悪戦苦闘する大将。と、その時。大将は巨大化した第二形態メルスの両肩と胸の紅いコアに目を付けた。
(あそこか!?)
赤いコアへの攻撃が有効なのかと思い切り、大将は紅いコアに向けて発砲。すると紅いコアを撃ち抜いた瞬間だけ、メルスの様子が若干ながらも変わった。
「! 今、手ごたえがあったぞ!」「みんな! 肩と胸の裂け目が弱点みたいよ!」
コアへの銃撃で其処が弱点と判別できた大将。そして大将がコアを撃ち抜いた事で弱点が判明したのを受けてミラーガールが皆にメルスの弱点を伝える。
「よし! 全員、集中攻撃!」『了解!』
ミラーガールの発言を受けて、メタルバードは第一線で戦う仲間達に指示を飛ばす。
すると弱点である紅いコアを攻撃され続けたメルスが、再び触手からレーザーを地上に直射するとそのまま此方に向けてきた。全員、横へ移動して回避しようとするがレーザーも此方へ追尾してくる。その追尾してくるレーザーをまた回避すると、レーザーの発射は消滅した。だが安堵する暇もなく、すぐにメルスは第一のレーザー攻撃を回避した面々に向けて再度のレーザーを放ってきた。
「ッ!」
神田ユウを始めとする戦前の面子は第二波のレーザーを寸前の所で回避して難を逃れる。が、メルスは今度は皆の横側にレーザーを発射して、それを横へ向けて直射してきた。絶えず発射されるレーザーを回避し続ける面々。
こうして絶えず発射されるレーザーを3回に渡って回避していった面々。するとメルスの様子が一変し、メルスは徐に身体に生える触手を自分を支える4岐の脊髄に向けて伸ばし、その先の3階フロアの通気口に無数の触手を通す。
「な、何をするつもりだ……!」
4方向先の通気口に無数の触手を伸ばして通すメルスの行動に戸惑う面々。すると皆がメルスの行動に傍観していると、なんと皆がいる1階の通気口からメルスの触手が無数に飛び出してきた。
「わ! 触手が……!」
メルスの触手が無数に飛び出てきた通気口は2ヶ所、メルスを前に戦う面々の左右その通気口から同時に出現。その光景に赤塚組のアツシは動揺を隠せない。
そして左右の通気口から飛び出た無数の触手は、三又の手先を伸ばしてメルスに抵抗する面々を攻撃しにかかる。
通気口から伸びてくる触手に抗戦しようと、皆はまずメルス本体への攻撃を一旦止め、左右から迫ってくる無数の触手を攻撃。銃撃や斬撃を受けた触手はたちまち引き下がり通気口に戻っていくが、数が多い触手は全て反撃するのに大変な手間がかかった。
しかしどうにか通気口から迫ってきた触手全てを攻撃して撤退させる事に成功。だが全ての触手を撤退させたメルス本体は、再び触手を身構えてレーザーを発射する体勢に入る。その僅かな隙に銃撃を行う者たちはメルスの赤いコアに向けて発砲、すると3ヵ所のコアが全て攻撃で塞がった瞬間、メルスはちからつきたかのように3階から1階のエントランスホールに落下。すると床に倒れ込んだメルスの背面に両肩/胸と同じであろう巨大なコアが身体から覗かせていた。
「見て! アレは……」「ああ、わかってる。多分あそこが弱点だ」
落下したメルスの背面に観られる巨大な紅いコアが弱点と悟った赤塚組のミズキと聖龍隊のメタルバードは、休む事無く他の皆と共に背面の巨大なコアを攻め続けた。
「神だがバケモノだが知らねェが覚悟しやがれ!」
ここぞとばかりに所有している弾薬を有りっ丈紅いコアに撃ち込んでいく大将。
すると床に落下した拍子に晒してしまった弱点の背面の巨大なコアを攻撃され続けたメルスは、突如巨大な2本の腕で自分を攻撃してくる者たちへ前進してきた。そして近付くと両腕で跳躍したと同時に巨大な片腕を戦前に向かって振るって攻撃。
戦前で戦う者たちは皆慌てて巨大な剛腕を咄嗟に回避。だがメルスはもう一方の剛腕も振り付けて2度目の打撃を放つ。2度目の打撃に辛うじて態勢を低くして回避する事が出来た面々。だが第二波の打撃を回避した次の瞬間、剛腕を避けた赤塚組のアケミをメルスが巨大な両腕で捕まえてしまった。
「アケミ!」
メルスの剛腕に捕らわれた妻のアケミを見て彼女の名を叫ぶ夫のアツシ。すると彼同様に捕らわれたアケミを見上げながら大将が配下の赤塚組一同に言い放った。
「撃て撃て! 撃ってアケミを助けるんだ!」
大将の号令の下、メルスに向けて一斉射撃を展開する赤塚組。しかしメルスはアケミを一向に放さず、それどころか背面から触手を2本覗かせて捕らえているアケミを狙ってた。アケミはメルスに捕まりながらも自分を狙う三又の触手を狙撃して抵抗する。
「! 口を狙って!」
メルスの背後から迫る触手を狙撃するアケミにHEADの木之元桜が口部をも狙撃するよう言葉を投げた。そしてメルスに捕まったアケミと地上の面々は、メルスの口部へと集中攻撃した。すると口内を激しく攻められたメルスは堪らず捕らえていたアケミを放して体勢を崩す。アケミが着地すると、それに続いてメルスも口部への攻撃の影響か再び1階に落下して弱点である背面の紅いコアを曝け出す。そのコアに向けて一同が一斉射撃を開始すると大将が難色を浮かべた顔で徐に口を開いた。
「何だか嫌な予感がするぜ!」
大将が呟いたその時「みんな避けて! 触手が!」と新世代型達を警護していたミラーガールが叫んだ。なんとメルスが通気口に触手を通すと、通気口内から壁を打ち破って皆の頭上の天井から触手先の三又の爪を露わにした。地上の面々は慌てて頭上から建物の一部を打ち破った触手を迎撃して返り討ちにするが、なんと触手はそのまま伸びて攻撃してくるだけに留まらず建物の一部であるコンクリートの塊を掴んで投げ飛ばしてきた。
「この、このっ」
極制服を着た面子の中では唯一爆撃などの遠距離狙撃が可能な蛇崩乃音が空中を飛行しながらメルスの触手が投げ飛ばしてくる瓦礫を音符ミサイルで次々に破壊して地上の皆を護る。
「よくやったぞ蛇崩!」
蛇崩乃音の成果を称賛する鬼龍院皐月。
そして蛇崩乃音が音符ミサイルで瓦礫を破壊し、他の地上で戦う面々がメルスの触手を全て狙撃し終わると、メルスは再び触手を構えてレーザーを発射してきた。
「また来たぞ!」
直射されるレーザーを瞬時に回避していく大将たち。その後もメルスは2度、3度と戦前で応戦する者たちにレーザーを発射、それを瞬時に回避してやり過ごす面々。
すると此処で聖龍HEADのセーラーヴィーナスが皆に言う。
「ねぇ、そもそもみんなで一箇所に固まっているのはヤバいんじゃない? ここはさ、一旦あのメルスの周りに展開して四方八方から攻めるのが得策だと美奈子は思うんだけど」
この突拍子もないヴィーナスの提案にメタルバードも激しく同意した。
「そ、そうだな! みんな! メルスの周りに展開するぞ! そんでもって攻撃しまくって少しでもメルスを撹乱させながら応戦していくんだ!」
ヴィーナスの提言に簡単に同意したメタルバードは即決で皆にメルスの周囲に散らばって攻撃を展開して戦うよう言い聞かせた。そしてメタルバードの言葉を受けた射撃タイプの攻撃が可能な面々はメルスの周囲に展開し応戦を始める。
すると自身の周囲に散らばり展開して戦い始めた面々を視認したメルスは、身体に生える触手を器用に1本1本別方向に向けて各所に散らばり攻撃していく各々へレーザーを発射し出した。
「うわッ! 別々の方角に撃てるんかい!」
全くの別方向に容易くレーザーを各個発射していくメルスの攻撃を慌てた表情でかわしていく大将は、四方八方へ触手を向けて無数のレーザーを別々に発射できるメルスの動作に驚き慄く。
自分達に向かってくるレーザー射撃を回避しながらメルスに反撃とばかりに射撃していく面々。弓矢が、銃弾が、メルスの弱点である紅いコアに直撃して確実にダメージを蓄積していく。
「ったく、渋とさだけは一級品だな!」
大将と共に紅いコアを攻撃し続けるメタルバードは、メルスの驚異的な体力に唖然としつつも的確にコアを狙い撃ってダメージを与えていく。
赤いコアへの狙撃の最中もメルスは攻撃を続ける面々に触手から繰り出すレーザーを発射して抗戦。そんな個々を狙い撃ちできる触手でのレーザーに大将が応戦しながら文句を言った。
「ああ! 別々にレーザーで攻撃できるなんてズリィぞ! ……アッコ! お前の鏡魔法で俺ら全員をレーザーから護ってくれよ!」
個々に発射できるレーザーを、全ての光線を反射して防げる鏡魔法で各々を護ってくれるようミラーガールに願い出る大将。しかしミラーガールはこれに難色を示すような顔を浮かべて答え返す。
「全員をそれぞれ護れるバリアーを展開させるほど、私そんなに強くないんだけど!? 今はホント、新世代型の子たちを護るので精一杯なのよ! 無茶ぶりは止めてよねっ!」
一人で大勢の新世代型二次元人達をメルスのレーザーから護衛するミラーガールは、大将の無理難題を突っ撥ねる。致し方なく、大将はメルスへの攻撃に再び専念する。
狙撃と射撃の攻撃が可能な面々が戦前に出て、他の隊士たちはミラーガールと共に新世代型達の警護に回る。そんな中、弱点の赤いコアを攻撃され続けるメルスは再び通気口に無数の触手を通して、触手での直接攻撃を仕掛けてきた。
「また触手が来るぞ!」
メルスが通気口に触手を通していくのを視認したメタルバードが周りの皆に伝える。が、その直後に触手は通気口を通ってミラーガールが防御する新世代型達に攻撃してきた。
「き、来た!」
通気口から続々と出てくる三又の触手が迫ってくるのを目の当たりにし表情を引き攣らせる新世代型の仁科カヅキ。しかしミラーガールのバリアーに阻まれ、触手は内側のミラーガールと新世代型達に手出しできなかった。するとバリアーに阻まれ往生している触手に、戦前を退いていた接近戦タイプの聖龍隊士達が蹴散らしていった。
殴り、斬り付け、蹴り飛ばしと様々な戦法で迫りくる無数の触手を撃退していく聖龍隊。そんな激しい攻撃を受けて触手は堪らず通気口へ退散していくが、無数の触手を相手に奮闘する聖龍隊士に新世代型の真鍋義久が声をかける。
「な、なあアンタら! 確かアンタ達って悪魔とかそんな感じの敵と山ほど戦ってきたんだよな? それに前総長の小田原修司とは面識がある……だったら小田原修司のクローンを改造して造られたこんなバケモノ一瞬で倒せないの!?」
「冗談言わないで! 確かに今までAKUMAとか色んな敵と戦ってきたけど……こんな巨大で規格外、それも修司さんの遺伝子から造られただけでも十分に厄介だよ! まだ遥かにAKUMAとかの方が可愛いく見えちゃう!!」
「そうだ! 俺達、本人と何度も試合しているから分かるんだが……あれほど味方ならいざ知らず、敵に回したくない奴は草々いない! そんな厄介な男のクローンってだけでも本音はやり合いたくないんだよッ!!」
新世代型の真鍋義久の問い掛けに涙目で小田原修司本人の畏怖を訴えるアレン・ウォーカーと蒼々とした顔で本物でないとはいえ小田原修司と戦い合うのを極力恐れる発言をする神田ユウ。
アレンと神田を始めとする接近戦タイプの隊士達が迫りくる触手を全て追い払った直後、メルス本体が地上からの射撃攻撃に対応しようと自身の巨体を支える4つの分岐した脊髄を1本ずつ動かして3階から4階、5階へとその巨体を移動させていく。
「あ、アイツ! 上の方に逃げやがったぞ」
「違う! 場所を移動して少しでも有利に戦えるよう自分の位置を変えているんだ!」
巧みに4つに分岐した脊髄を動かして上へと移動していくメルスに声を荒げる大将とメタルバード。そして己の位置を高くしたメルスは再び上方から触手を使ってのレーザー乱射で地上を攻撃し出す。
「避けろ! とにかく避け続けて攻撃のチャンスを待つんだ!」
手当たり次第に敵と認識した相手にレーザーを発射してくるメルスの猛攻にメタルバードは回避しながら耐え忍び、反撃の機会を待つよう皆に言う。
そしてメルスがレーザーを乱射し終わった瞬間、地上の狙撃と射撃可能な面々はメルスの弱点である紅いコアへ攻撃を集中させた。
両肩、胸部の紅いコアに銃撃と射撃の連射を浴びたメルスは耐え切れず再び地上に落下してしまい、背中の巨大な紅いコアが晒される。
「もう少しだ! これで一気に片を付けるぞ!!」
晒された背面の巨大なコアを狙い、メタルバードは仲間達にも一気に事を成し遂げるためにも巨大なコアに向けて一斉射撃を仕掛けるよう言い放つ。そしてメタルバードと共に狙撃/射撃の面々は第二形態メルスの最大の弱点である背面の巨大なコアへ集中射撃を連発していった。
「ギュガアアァァ………………ッ」
弱点である紅いコアを何度も攻撃されたメルスは紅いコアから血飛沫を飛散させながら激しくもがき苦しみ出した。苦し紛れにメルスは暴れ回ると同時に触手を手当たり次第にそこら中にぶつけていき、触手がぶつかった個所は破損し瓦礫が1階の面々に落ちてきた。落下する瓦礫に地上の聖龍隊士や赤塚組は的確に避けて難を逃れる。
そして遂にメルスの巨体を支えていた分岐した脊髄が1本掴まっていた3階のフロアから離れ、それに続いて反対側の脊髄も力尽き、最後には全ての脊髄に力が入らなくなったのかメルスの巨体は真っ逆さまに1階のエントランスホールに落下。
「グオオオォォ…………………………」
力のない断末魔の唸りを発しながら1階に落下するメルス。
『………………………………………………………………』
落下し、うつ伏せの状態で絶命したメルスを前に呆然とその巨体を傍観する新世代型達。
そして聖龍隊の超常的な能力と赤塚組の銃撃による火力で苦労の末ようやくメルスを倒した一行を、5階のフロアから彼らを見下ろすアルドウが第二形態メルスの戦闘中ずっと閉ざしていた口を開いた。
「クハハハハ……進化したメルスをも打ち倒すとは。やはり君らは彼と、小田原修司とは色々と相性がいいようだな。人の愛情を感じられぬ彼にとって、君ら二次元人とは
「何だと……ッ!」
アルドウの言葉に大将は怒りを露わにする。しかし目下の大将たちの激情を視認しながらもアルドウは語り続ける。
「やはり彼の、小田原修司の思惑通り。二次元人は数多の試練、葛藤を乗り越えてこそ未知の領域に踏み入れられる潜在能力があると見た。日常からかけ離れてこそ、人は新たな領域へ……未知なる非日常へと足を踏み入れることができる」
「偉そうに上から言ってんじゃないわよ!」
5階フロアから自分達を見下ろして論するアルドウを癪に感じたミラールが銃口を向ける。ミラールに続き、暁美ほむらも5階のアルドウに向けて銃を構えた。
するとアルドウは何時までも上の階から語る自分の立場を考慮して1階の皆々に言う。
「クハハ、そうだな……いつまでも特等席で見物するのは、いささか失礼というモノだな。何事も、相手の本質を見極めるには相手と同じ目線で向き合うのがベスト」
そういうとアルドウは徐に5階から飛び降り、皆がいる1階のエントランスホールに平然と着地すると何事も無かったかのように厳ついながらも端正な面立ちで前方の皆々を見据える。
『!』(! コイツ……普通じゃねェ……!)
5階の高さから悠々と着地したにも拘らず平然としているアルドウを目の当たりにして、一同もメタルバードも愕然とする。
皆が高所より飛び降り余裕で着地したアルドウに唖然としていると、アルドウは前方の皆を見据えて再び語り出す。
「……確か、修司は言ってたな。二次元人は変わり続ける種族……君たち二次元人は非日常、超常的な環境の中でこそ影響を受け、成長する事ができる。平和の中で生きられぬ彼同様、君ら二次元人もまた争いの中でしか成長する事はできない」
「な、何を言ってるの! 二次元人全員が好戦的だなんて思わないでっ」
アルドウの物言いに癇癪を越してしまった新世代型のイオリ・リン子が反発するが、彼女の言葉にアルドウは不敵な面差しを向けて言った。
「ふふふ、何、否定する事はないさ。所詮、人と言う生き物は争いの中でしか成長する事が出来ない……それは三次元人の思想から生まれた君らも同じな筈。二次元人もまた、争いの中でしかシンカできない種なのだ」
「お、俺たち二次元人が争いしか起こせないって言うのか……ッ!」
アルドウの思想に反発の意思を示す新世代型の瀬名アラタ。アラタの言葉にもアルドウは表情一つ変えず、悠々と落ち着いた物腰で語り返す。
「その通りだ新世代型よ。歴史を見返してみればスグに解る事……文明の発展、科学の発達は全て人の争い、戦争から成り立つものだ。そして人から闘争心、すなわち競争心を無くしてしまえば社会の歯車は著しく乱れ、やがては崩壊してしまうだろう」
言葉の一つ一つに懸念を感じつつも完全に否定する事もできない新世代型達は一同に表情を険しくする。そんな彼らにアルドウは淡々と語り続ける。
「人は今以上の発展を……成長を成し遂げるには今以上の、世界を革新に導ける件が必要なのだ。平穏な日常は人を堕落させ、失望させるだけだ」
「その為だけに……タイの街はもちろん、ここの地下研究施設にもウィルスをばら撒いてバイオハザードを引き起こしたっていうの!?」
世界を革新に導くという名目の下、ウィルスを散布したのかと問い詰める聖龍隊のアスナの質問に、アルドウは真意を答えた。
「私は、ある人物の思想の下……研究施設全域にウィルスを撒き散らしただけだ。それが発端となり、都市部にまでもウィルスが拡散していっただけの事。なぁに、平凡な世界が一つ消えただけの事……君ら二次元人なら日常的だろ」
『………………!』
アルドウが発する一言一句に憤りを募らせていく一行。そんな昂る感情が表れる一行の顔を視認するアルドウは不敵で澄ました顔で一言問うた。
「私が狂人だと思っているのかね?」
「当たり前だろ! 一体、何人もの罪もない人々がウィルスの犠牲になったと思ってるんだ!」
アルドウの問いに普段は冷静な面持ちのセーラーウラヌスも怒りを露わにして強く言い返す。するとアルドウは表情一つ変えない面差しで平然と言い切った。
「後の世で英雄と……歴史に名を刻む者に、まともな人格者はいない」
更にアルドウは衝撃の言葉を平然と前方の面々に告げた。
「……それは、君たちも等しく同じだろう。聖龍隊、HEAD、そして新世代型の諸君」
歴史に名が記される英雄や偉人に正常な人格者はおらず、二次元人もそんな正常でない者だと断言するアルドウの言葉に衝撃を受ける新世代型達。
皆が数々のアルドウの台詞に衝撃を受けているが、アルドウはそんなの御構い無しにと淡々と語り続ける。
「聖龍隊よ、私も君らも同じではないか……我々は小田原修司の権威の下、共に世界の平穏を維持してきた。しかし今、その政権が消失した事で世界の安定が著しく乱れてしまった。その歪みが今となって現政奉還などと言う世情の混乱を招いているのではないかね」
アルドウの言葉に聖龍隊は一同に顔を険しくするが、アルドウは遠慮なく語り続ける。
「この乱世と言う混乱に見舞われた世界には、小田原修司とは別の改革……いや、変革と言うべき流れを見出すべきだと思う。我々は小田原修司によって新たな世界を知る事が出来た。君ら二次元人は現実を、私ら三次元人はそんな現実を変えられる可能性を秘めた理想を……君たち二次元人が変わり続ける様に、この世界もまた変わり続けなければならない!」
同じ小田原修司の権威の下、同じく世界情勢の安定を培ってきた立場として話を進めるアルドウ。更に今の混沌とした現政奉還の時こそ新たな変化を世界に促す必要性があると説くアルドウの熱弁に、メタルバードは目付きを鋭くさせてアルドウに言い返した。
「お前と一緒にするな。いいかアルドウ、修司は確かに国連に自分を兵器として身売りしてまで権力と言った特殊能力以外の力も欲してた……だが、それは全て相容れない二次元人と三次元人が共存できる世界を築く為にだ! 無論、自分を認めてもらいたいという望みもあったが、それ以上に自分が産まれた三次元界が二次元界と融合した上で二次元人と三次元人が共存する世界こそ悲しい現実を変えられると信じていたからだ!」
メタルバードが語る小田原修司の真意は、初めて耳にする新世代型達の脳内を凄まじく駆け巡り、彼らに衝撃を与えた。
だが衝撃が脳内を駆け巡る新世代型達に反し、アルドウは落ち着いた素振りで自身の真意を目の前の一行に語り返す。
「私は彼と同じなのだ……二次元界と融合し、二次元人と言う全く異なる種と共存する世界。そんな世界にすら未だ蔓延る不条理な現実を前に変わり続ける二次元人と世界、その行く末に並々ならぬ痛みと至福が待っていると」
次の瞬間、アルドウは顔を向けて問い掛ける。
「君達も、委ねてみぬかね? 静粛の痛みもまた………………いいものだ」
[アルドウ・ウラジェール]
第二形態メルスを倒したのも束の間、今度は5階から1階へ平然と着地する到底人間とは思えない荒業を見せ付けた元軍人アルドウ・ウラジェールが一行の前に立ちはだかった。
小田原修司を主軸とした世界政権の終焉と共に職を失ったアルドウは、今回のタイ地下研究施設のバイオハザードを何者かの指示で引き起こし、竜人海賊団を金で雇って新世代型達を研究目的で誘拐させた依頼人。
そのアルドウが軽々と5階の高さから地上に落下したにも関わらず平然としていられる肉体で一行の方へと不気味なまでに歩み寄る。
接近してくるアルドウに聖龍隊の暁美ほむらが発砲。しかし彼女が発砲した銃弾はアルドウの胴体に着弾するものの、銃弾は衣服を貫通する事無く着弾するとそのまま床へと落ちてしまう。
「え!?」
自分が撃った銃弾が衣服を貫通しない事実に衝撃を受けるほむら。その光景を目撃したメタルバードは銃弾が貫通しない訳を素早く察した。
(衝撃吸収性防弾着か!)
アルドウが着衣している軍服は、爆発などの衝撃を吸収して和らげる効果もある特殊な防弾性のある衣服だった。
しかしアルドウの衣服に銃弾が効かないのを目の当たりにしても、ほむらは果敢にアルドウに銃を発射して弾丸を撃ち込んでいく。しかし軍服に全ての弾丸の衝撃を吸収され損傷を与えられない中、アルドウは遂にほむらの眼前まで迫った。
そして拳銃を連射しているほむらの手を、拳銃ごと片手で軽々と持ち上げると焦るほむらの顔を見て言った。
「ふふふ、こんなオモチャなど意味はない」
そういうと、アルドウは拳銃を握るほむらの手を掴んでいる自身の手に力を入れた。
「ぐああーーーーっ!」「ほむらちゃん!」『!』
拳銃を握り続けるほむらの手を掴むアルドウは、彼女の手を掴んでいる自らの手に力を込めや否や、ほむらの手の骨が激しく軋み、ほむらは激痛の余り絶叫する。余り自分の弱さを表に出さないほむらが大声を上げて苦痛に表情を歪ませているのを見た鹿目まどかは悲痛な顔で彼女の名を叫び、アルドウが容易くほむらの手の骨を砕いてしまうのを目の前した一同は愕然とする。
そして意図も容易く暁美ほむらの右手の骨を粉砕したアルドウは、手の骨を砕かれて激痛に悶えるほむらを軽くその辺に投げ捨てると再び一行の方へと前進し出した。
「こ、このッ」
仲間のほむらを痛め付け、床に投げ捨てたアルドウに感情を昂らせたキリトが勇猛果敢に斬りかかった。彼に続いて同じく剣を戦闘に用いる美樹さやかもアルドウに進撃した。
キリトとさやか、二人がアルドウに刃を振り翳し斬り付けようとした瞬間、突如としてアルドウの姿が一瞬で消えてしまう。
『!』
攻撃を当てる直前に一瞬で消えてしまったアルドウに深く動揺するキリトとさやか。すると二人が攻撃を外した次の瞬間、アルドウは再び姿を現してキリトとさやかを驚かせる。
『っ!』
驚く二人。だがアルドウはそんな二人に容赦なく拳を振り付ける。
「うわッ」「っ!」「キリト!」「さやかっ!」
アルドウに容易く吹き飛ばされてしまうキリトとさやかを見て叫ぶアスナと佐倉京子。
と、ここで単身猛威を振るう謎の身体能力を持つアルドウにセーラー戦士達が動いた。
「みんな行くわよっ!」
セーラームーンの掛け声の下、セーラー戦士達は素早くアルドウの周囲に展開して完全に包囲し動きを封じる。だが、この状況にアルドウは全く臆する事無く平然とした態度で余裕綽々にセーラー戦士達に話し掛けてきた。
「聖龍隊、いやHEADよ。君達も昔よりは、聖龍隊を結成した当初よりは強くなっている筈だ。君達は、この理不尽で不条理な現実を知った事で……」
アルドウの言葉にセーラー戦士達は表情を変える事無く険しい面差しで戦闘態勢を維持する。だが、次の瞬間アルドウが不敵な面構えでセーラー戦士達に言った。
「世界の真実、本当の痛みを……また味わってみるかね? 修司に思い知らされた時の様に」
この発言にセーラー戦士達は一同に表情と目付きを一変させ、次の瞬間には全員が一斉にアルドウに向かって肉弾戦で攻撃を仕掛けた。
セーラー戦士達の殴打や蹴りを何発も、それも目にも止まらないほどの速さで連続で仕掛けてくる打撃を一身に受けてもアルドウは表情一つ変えず澄ました顔で立ち続けてた。
「う、ウソだろ? HEADの、それも古参の筈のセーラー戦士達の攻撃を、打撃とはいえ平然としていられるなんて……!」
常人なら筋肉は内部出血し、骨は容易く砕けてしまうセーラー戦士達の打撃を受けても平然と立ち続けていられるアルドウの様子に、真鍋義久を始めとする新世代型の面々は驚愕する。しかもセーラー戦士達の打撃を受けても立っていられるアルドウは、攻撃を受け続けながら語り出した。
「相手の気持ちを理解する、それと同じく世界の真実を知る事で君たちは……いや、我々人は成長する事が出来る。違うか?」
相手の心意を知る事と、世界の真実を知る事は等しく人を成長させると語るアルドウ。
そしてセーラー戦士達はアルドウに精一杯の打撃を浴びせた後、一旦後退してアルドウを見据える。
「な、なんて奴……!」「アレだけの攻撃を浴びせても、顔色一つ変えてないわ」
幾度となく打撃を集中的に浴びせたのにも関わらず平然と立ち尽くしているアルドウの常人離れした肉体の強度に驚きを隠せないセーラーマーズとセーラーヴィーナス。
先程から一方的に攻撃を仕掛けていく聖龍隊が屈強な肉体のアルドウを見据えていると、次の瞬間アルドウが消えた。
「ま、また!?」
一瞬で消えたアルドウにキング・エンディミオンや皆々が驚いた瞬間、消えたアルドウがいきなり皆の目の前に姿を見せた。
「わッ!」
突如目の前に現れたアルドウに驚き、思わず所持していた銃を発砲してしまう大将。するとアルドウは自分に飛んでくる弾丸を高速で横移動して安易に回避してしまった。
「な、なに……!」
視覚に残像が見えるほど常人の域を超えた速さで移動するアルドウに我が目を疑ってしまう赤塚組のテツ。その異常なまでのアルドウの速さを目にして、メタルバードは心と頭の中で察した。
(目にも止まらない速さで移動できるのか……! 残像が見えるほどの速さで斬撃も銃弾も簡単にかわした挙句、一瞬姿が消えた様に錯覚しちまった訳だな)
先程からアルドウが姿を一瞬で消したのも、銃弾や斬撃を回避したのと同じく高速移動で動いていた為に消えた様に見えたのだと理解するメタルバード。
するとアルドウは只ならぬ威圧感を醸し出しながら眼前の皆々に問い掛ける。
「諸君らも戦いを生業としているなら、解るだろう。命を削り合う時間にこそ、至福がある。流れる血こそ、命の歓喜だ」
流血や苦痛、互いの命を削り合う時こそ至福。と、語るアルドウの言葉に全員が険しい面差しを向ける中、メタルバードは面と向かってアルドウに言い切った。
「……オレたち二次元人は確かに争いの歴史を多く歩んできた。しかし、いやだからこそ平穏のひと時が如何に大切かを学んでる。テメェが二次元人を、どう思うが勝手だが……少なくとも、修司は二次元人を争いばかりする種族とは思ってなかった」
メタルバードの厳格ある言葉に新世代型達は胸を貫かれた様な衝撃を覚えるが、この台詞を聞いたアルドウは不敵に口元を緩ませると小田原修司を始めとする大方の三次元人の思惑について語った。
「激しくも苛烈極まりない二次元人の生き様、そして人知を超えた異能に魅入られない者がいようか。所詮、小田原修司とて、そんな異能を持つ君ら異端な二次元人に興味を……いや、共感を覚えていただけだ」
長々と続くアルドウとの問答に時間を消耗してしまったと感じ始めるメタルバードは、ここで一人戦前に出てアルドウの眼前に対峙する。
そしてメタルバードは対峙するアルドウに厳つい顔を向けて、はっきりと言い放った。
「テメェの言う事も一理ある。オレ達はあくまで理想と言う、修司が言うには甘ったれた世界で生きてきた。現実と言う不条理な世の中、そして痛みを伴う真実を知った事で俺達は少しずつ変わって来られた。……何もかも修司の受け売りだけどな」
メタルバードの告白に新世代型達は唖然とする中、アルドウだけは彼の告白を聞いて納得したような言い分を返した。
「なるほど。君達も彼と同様、痛みを生きる糧として受け入れているのだな……」
世界の真実と言う苦痛を受け入れ、それを生きる糧として今生していると説くアルドウ。
そして告白したメタルバードは臨戦態勢の構えに入ると、アルドウに鋭い視線を向ける。メタルバードの戦意むき出しの眼光にアルドウも礼節ある口振りで答えた。
「君が本気で戦うというのなら、私も実力を出し切るというのが礼儀というモノ」
更にアルドウは徐に両腕を構えてメタルバードと向き合う状態で言い放った。
「……いいだろう、もとは君等はもちろん私も彼とは同志。我々はお互いに確かめ合う必要があるのかもしれない。痛みの真の意味を知り、その先にある至福を求め……生への喜びを楽しもうではないか!」
強い面差しで明確に語り終ると、アルドウは徐に自身の両腕を顔の前に身構える。すると次の瞬間、アルドウの身体が痙攣し出し、何事かと皆が注目してるとアルドウの両腕から衣服を突き破って無数の薄赤い触手が飛び出た。
『!!』
突如、両腕から触手が飛び出るアルドウを前にして誰もが愕然と表情を引き攣らせる。そして唸り声を発しながらアルドウは色白の皮膚に左眼球から微かに触手が飛び出し、口からは核の様な紅い球体が飛び出した不気味極まりない風体へ変貌。更に袖口から出現した触手は両腕を融合させ、1本の太い触手へと変形。触手の先は凶悪な爪へと変化しで猛烈に振り回して周りを威圧。そして色白の肉体は背中から4本の細い長い触手が垣間見えていた。
「やれやれ、またバケモノか……いささか飽きたか相手してやるか」
自身の体内で抑制してたD-ウィルスの力を解放し、異形の怪物へと変貌するアルドウを前にしてメタルバードは渋々ながらも闘う事を決意する。
D-ウィルスの力を解き放ったアルドウ、通称アルドウモンスターは一本の太い触手に変形した両腕を眼前のメタルバードに向けて力いっぱいに振り下ろす。メタルバードはこれを回避、同時に自らの体内で抑制してたウィルスの力を解放したため異形の怪物に変貌したアルドウに言葉を掛ける。
「惨めな姿だぞアルドウ! それしきでオレ達を止められるとでも思ってるのか?」
アルドウモンスターの太い触手での攻撃を回避したメタルバードが、まず思ったのは背後の仲間、非力な新世代型達の事だった。彼らが戦闘に巻き込まれるのを防ぐ為にも、メタルバードは驚異的な跳躍で左横の2階フロアへと跳び上がり場所を移動する。
2階に移動するメタルバードを見定め、アルドウモンスターも変形した両足と背中の触手を駆使して壁を伝って追尾してくる。そしてメタルバードに接近するや再び太い触手で殴り掛かる。
「バーンズ!」
1階の皆々が心配そうにメタルバードに声をかけると、彼は闘いを観戦する皆に伝える。
「お前らはそこで待機! コイツは俺一人で片付ける!」
メタルバードはずば抜けた脚力と両翼で2階フロアを飛び交い、冷静にアルドウモンスターの動きと傾向を観察する。
(曲線的な動き。だが、止まった所を叩けば……)
吹き抜け構造のエントランスホールその曲線状の壁を伝って接近してくるアルドウモンスターの動きは素早く、簡単には狙いが定まらない。しかし接近して攻撃してくる際に僅かながら動きが止まる点に、メタルバードは注目する。
その後もメタルバードは2階に続き3階まで跳び上がり自分を追尾してくるアルドウモンスターを注意深く見定めながら攻撃の機会を窺う。すると執拗に自分を追尾してくる余り、多少ながら息が上がってしまうメタルバードに声が聞こえた。
「バーンズ君、息が上がっているようだが?」
アルドウモンスターが発した言葉にメタルバードも、その声が聞こえた1階の皆々も驚愕した。アルドウは異形の怪物に変貌しながらも知性と自己は鮮明に残っていたのだ。
と、その時。執拗に追跡してくるアルドウモンスターの追撃にメタルバードが空中を交互に飛び交った瞬間、アルドウモンスターの背面に紅い核が見受けられるのをメタルバードは見逃さなかった。紅いコアを視認したメタルバードは一つの思惑を確かめようと、右腕をレーザーキャノンに変形させてアルドウモンスターの背面の赤いコアを狙撃した。
するとアルドウモンスターは激しく体を痙攣させて、明らかに痛みに悶えているのが確認できた。
「……弱点は背中か! 喜べアルドウ、痛みを与えてやるぞ!」
背中の赤いコアが弱点と判明したメタルバードは、2階、3階と1階の皆々の頭上を飛び交いながら一瞬の機会を逃さず的確にアルドウモンスターの背面の弱点を狙い撃ち続ける。
すると背面の弱点を攻め続けられるアルドウモンスターは攻撃してくるメタルバードの方を振り向くと、胸部に鮮烈に浮き出た紅いコアをメタルバードの方へ飛ばしてきた。
「なにっ?」
自分の方に飛んでくる紅い球根の様な物体に目を向けるメタルバード。すると紅い物体はメタルバードの頭上で破裂し、その破片がメタルバード目掛けて飛散してきた。
「ッ!」
頭上より降り注ぐ無数の紅いコアの硬く鋭利な破片を狙撃して破壊していくメタルバード。だがメタルバードが頭上から仕掛けられた破片に気を取られてる間にアルドウモンスターは接近し、両腕が一対になった太い触手の凶悪な爪でメタルバードを捕らえた。
「うおッ!」「メタルバード!」
凶悪な爪に掴まれ、身動きができないメタルバード。捕まってしまった彼を見て動揺の表情を激しく浮かべる新世代型達。
だがしかし、メタルバードは必死に抗い、どうにかアルドウモンスターから逃れる。しかし彼が着地したのは、運悪く皆の目の前であった。
再び集ってしまった面々の眼前にアルドウモンスターも追って着地し、集団への攻撃として胸部の紅いコアを発射する。
「っ、撃て撃て!」
先程のアルドウモンスターが発射した胸部のコアが弾け飛ぶのを視認してる大将は、仲間の赤塚組に頭上から次々に降り注ぐ紅いコアの欠片を狙撃するよう指示。赤塚組が上方に銃を乱射して破片を全て銃弾で破壊。しかし全員が頭上から降り注ぐ紅いコアに注目する隙をついてアルドウモンスターが目前のメタルバードを太い触手で再び捕まえる。
「ッ!」「バーンズ!」
再度捕らえられてしまうメタルバードを目の当たりにし、悲痛な面持ちを浮かべるミラーガール。するとメタルバードを捕らえたアルドウモンスターは、捕まえたメタルバードを勢いよく投げ付けた。
「うわッ」「ば、バーンズ!」
投げ付けられたメタルバードは壁に激突し、悶絶。それを目撃した大将たち一同は愕然とする。
すると壁に激突したメタルバードに目を向ける一行に、アルドウモンスターは胸部の紅いコアを発射。コアは頭上で破裂し、欠片が続々と頭上から飛散してくる。
「慎重に狙い撃って!」
赤塚組ミズキの指示に従い、赤塚組の面々と銃を手に持ち抗戦する聖龍隊の暁美ほむら、そして新世代型の
そして苦難の末、ようやく破片を全て狙撃し終わり安堵する面々。だが安心したのも束の間、安堵する皆々にアルドウモンスターが太い触手を振り上げ、凶悪な爪で掴みかかろうと迫る。
が、アルドウモンスターが爪で狙撃を行っていた戦前の面々に掴みかかろうとした瞬間、皆とアルドウモンスターの間に先ほど壁に投げ飛ばされたメタルバードが入り、皆に襲い掛かる凶悪な爪を強靭な鋼鉄の腕で押さえ込み動きを封じる。
「ッ……本当に惨めな姿に変わっちまったな、アルドウ!」
凶悪な爪を両手でしっかりと掴んだメタルバードは、そのまま太い触手を振り回してアルドウモンスターを投げ返す。しかしアルドウモンスターは変形した奇形の両足と4本の細長い触手で難なく壁に張り付いてしまう。
するとアルドウモンスターは徐に地上の面々に話し掛けてきた。
「二次元人どもよ、まだまだこれからだぞ?」
そう言った瞬間、アルドウモンスターは4本の触手で壁伝いを移動しながら胸部の紅いコアを次々に発射。放たれたコアは皆の頭上で破裂し、無数の鋭利な破片が皆を襲う。
「み、みんな離れろッ」「頭を護るんだ!」
新世代型の黒川冷と氷室聖が皆に言い聞かせながら共に後退していく中、大将率いる赤塚組が破片目掛けて銃器を連射。
「おりゃあっ!」
破片を次々に撃破していくが、数が余りにも多く対処するのが難しくなっていた。
「みんな!」
メタルバードも降り注ぐ破片の対処に回ろうとすると、赤塚組の幹部たちがメタルバードに叫び掛ける。
「来るな! お前はアルドウの方に専念しろ!」「コッチは私達に任せて」
アツシとミズキの言葉に、メタルバードは再び怪物へと変貌したアルドウに立ち向かう。
1対1で闘い合うメタルバードとアルドウモンスター。しかしメタルバードが放つ電撃砲をいくら浴びようと、アルドウモンスターは倒れる事無く太い触手から繰り出す凶悪な爪と胸部から放つ紅いコアでメタルバードを追い詰めていく。
「これしきのことで……」
如何に鋼鉄の肉体に機械化する身体を持ち合わせようと、一向に倒れる気配のないアルドウに威圧されていくメタルバード。するとアルドウモンスターはメタルバードがフロアからフロアへ飛び移ろうとした瞬間、彼の足を凶悪な爪で捕まえると素早くメタルバードを1階の床へ投げ落とした。
「うおッ!」
投げ落とされたメタルバードは体を激しく床に叩き付けられ、陥没した床の上に倒れる。
「! バーンズ……!」
ミラーガールを始めとする皆々が床に叩き付けられたメタルバードを心配そうに見詰めていると、そこにアルドウモンスターが駆け寄ってきた。
「痛みこそ至福! 苦しみこそ歓喜!」
痛みに対する独自の解釈を狂喜している口調で述べるアルドウモンスターに、赤塚組を始めとする面々は銃弾を大量に浴びせる。だがアルドウモンスターは怯む事無く眼前の面々に太い触手を振り下ろす。アルドウモンスターの攻撃に、聖龍隊の佐倉京子が凶悪な爪を得物で受け止める。彼女に続いてHEADの木之元桜もソード(剣)のカードを実体化させてアルドウモンスターの触手をはね返そうと試みる。しかしアルドウモンスターは容易に二人を押し退けてしまう。
「ぐッ!」「きゃっ!」
押し退けられてしまう杏子とさくら。すると楽々と一本の太い触手で二人を押し退けたアルドウモンスターが得意げに狂言を吐く。
「どうだね!? これが苦痛を受け入れた者の強さだ!」
己の強さを自負するアルドウモンスターは、更に太い触手を容赦なく振り付けて無慈悲に凶悪な爪で襲い掛かってきた。
『ッ!!』
襲い来る凶悪な爪に表情を引き攣らせる新世代型達、そしてどうにか抗戦しようと各々武器で対抗していく聖龍隊。だが聖龍隊が向けた武器は全て凶悪な爪で弾かれ、アルドウモンスターの触手は一直線に新世代型達に迫りくる。
『ああっ!』「誰も私を、絶望させることは出来ないのだ!!」
恐怖に打ちひしがれる新世代型達に己の力に陶酔するアルドウモンスターの触手が迫る。
と、アルドウモンスターの触手の凶悪な爪が迫ろうとしたその時。一直線に向かってきた触手に上空からメタルバードが飛来して勢いよく蹴り潰して動きを止めてみせた。
「……狂人が!」
解き放ったウィルスの力で自ら痛みに酔いしれるアルドウモンスターにメタルバードが厳つい顔で一言掛ける。
そして自分の触手を頭上から踏み付けてきたメタルバードにアルドウモンスターの標的が移行。アルドウモンスターは再びメタルバードに襲い掛かり、執拗な追いかけっこが再開された。
「滑稽だな……」
吹き抜け構造のビル内部のホールを飛び交い、上へ上へと駆け上ってくメタルバードは自分を追跡してくるアルドウモンスターを視界に捉えて思う。するとメタルバードを追いながらアルドウモンスターが熱く主張してきた。
「痛みを感じる事は素晴らしい! 痛みは、苦しみは人を成長させる……より強く変われるのだ!」
苦痛は人を成長させると呼号するアルドウモンスターにメタルバードはレーザーキャノンに変形させた右腕で狙い撃つ。メタルバードの電撃砲に直撃したアルドウモンスターは1階の床に真っ逆さまに落下し、それを追ってメタルバードも地上に着地する。
「オレ達は一刻も早く、この場から逃げなきゃならねえのによ……」
早々にビルから脱出し、更にはバイオハザードに見舞われたタイから離れたい一心のメタルバードはアルドウモンスターとの戦闘を切り抜けたかった。
更にメタルバードは、かつて自分の相棒であり前聖龍隊総長だった小田原修司の政権に従えていたアルドウに向かって問い掛ける。
「修司の建てた大元の政権は、すでに消滅して新しく創り返られた。忠誠を誓っても何も残らん」
アルドウに訴え掛けるメタルバード。だがウィルスの影響で異形となったアルドウモンスターは自分と対峙するメタルバードや新世代型達と、痛みや苦しみについて語り合いたい心境だった。
「痛みだ! もっと激しい痛みをくれええええええ!!」
今まで苦痛を生きる力と戦う力の糧にしてきたアルドウは、自分を攻撃する面々に深い激痛を求める始末。
そしてアルドウモンスターが皆の前に移動した瞬間、メタルバードは最大出力の電撃砲をアルドウモンスターの背面に狙い撃って弱点の赤いコアを狙撃した。
メタルバードが放った最大出力の電撃砲を弱点の背面に受けたアルドウモンスターは、瞬く間に全身を鮮やかな赤色に光らせると苦しそうに両腕から形成される太い触手を床に叩き付ける。
「まだだ……もっと深い痛みを……ヲオオオオ!」
断末魔の咆哮を上げたアルドウモンスターは望み通りか自分が欲していた痛みを感じながらも、更に痛みを望みながら前のめりに倒れる。そして床に倒れたアルドウモンスターは瞬く間に体がドロドロの液状に溶けて全貌を失ってしまった。
[終わらぬ悪夢]
力尽き、変貌した肉体が不気味に液状へ溶けて死滅したアルドウモンスターの死に様を見届けた一行は、人であったアルドウ・ウラジェールの亡骸を後にその場を去った。
一行が赴くは、今まで自分たちを捕らえた上で徘徊させつつ恐怖の異形と交戦してた悍ましい地下研究施設を隠ぺいする為のビルの外である。
薄暗い地下を抜け、恐ろしいメルスとアルドウモンスターの戦闘を生き抜けた面々はようやく外の光に我が身を照らせる事が出来た。久方ぶりの日光に、長時間牢獄に捕らわれていた新世代型達は日の光りに思わず眩しさを感じずにはいられなかった。
正規の正面玄関を抜けて外で飛び出した一行は、メタルバードを戦闘に足を速める。
「そ、それで……これからどうする!?」
今後の行動方針を訊ねる大将にメタルバードは答える。
「なに、地下に潜る前に大勢の人間を一気に護送できる軍用車を手配しておいた。一般の新世代型二次元人達を護送できる聖龍隊の軍用車をな。それで一気にタイ郊外まで脱出するぞ」
メタルバードは無事に脱出できた際の為、予め聖龍隊が所持する大勢の人間が乗用できる軍用車を前もって手配していた。
そして一行は速足で、その軍用車が待機している筈の地点まで走り続ける。と、言ってもビルから出てすぐ近くの地点であるため、容易にその場所に辿り着けた。
「よし、此処の筈………………!」
駆け足で辿り着いたメタルバードがそこで目にしたのは、破壊されエンジン部分から火を吹いている待機させていた軍用車であった。
「コイツは……!」
大破された軍用車を認識して唖然となる大将。一方で新世代型達は目の前に広がる惨状に言葉を失った。
大破し炎上する数多くの車、所々に見受けられる夥しい量の血痕、そして空気中に漂う焼け焦げた臭いに混ざり合う血の臭い。新世代型達は地下研究施設とは違えども酷似する惨状に愕然とする。
一方、破壊されている軍用車の傍らに転がる軍服を着た死体にジュピターキッドが凝視すると、彼はぽつりと呟いた。
「……ウチの隊士だ」
破壊された軍用車の傍らに転がっていた死体は聖龍隊の隊士であった。
蒼然と成りつつある皆々が徐に大破された軍用車とその傍らに転がる聖龍隊士の死体から辺りに視線を向けて見渡してみると、大破された聖龍隊の軍用車は1台だけでなく他にも大人数の新世代型達を護送する為に駆け付けた多くの軍用車が何台も破壊され、中にはひっくり返されてしまっているの見受けられた。そして最早鉄の塊と化した軍用車の傍らや運転席には死に絶えた聖龍隊の隊士が確認できた。
「どうなってやがるんだ……そもそも、軍用車がひっくり返されてるってだけでも異常だぜ」
軍用車に乗って駆け付けてきた隊士たちの死体を目にした大将は、死体以外にも大破されただけでなく強大な力でひっくり返され大破された軍用車の現状にも多大な異常さを感じずにはいられなかった。
「ダメだ。どの車も壊れてしまってる」
大破しひっくり返る軍用車を全て視てみたセーラーウラヌスは、どの軍用車も使えなくなっている事を見定める。
「なにか、巨大なのが物凄い怪力で車を破壊した奴がさっきまで此処にいたんだろう。そして同時に隊士達の息の根も……」
正体不明の巨大な存在が怪力を駆使して軍用車でやって来た聖龍隊士を襲撃して、彼らを殺めただけでなく数台の軍用車も自力で破壊したのだと推測するメタルバード。すると、このメタルバードの発言を耳にした新世代型の薙切えりなが端を発した。
「そ、それじゃ……! その巨大な何かがまだ近くにいるって事ですの!?」
『!!』
えりなの言葉に皆の空気が張り詰めた。武装した聖龍隊士を何人も殺め、更に彼らが搭乗してきた重量級の軍用車を自力で破壊した上にひっくり返してしまう程の強力を持つ存在がまだ近くにいるのではないかと一抹の不安に苛まされる。
だが、この状況に聖龍隊と赤塚組は微塵も動揺せず、二つの組織を従えるメタルバードと大将は力強い面魂で新世代型達に言葉を掛けた。
「……お前達」
メタルバードの問い掛けに新世代型達は彼に顔を向ける。するとメタルバードに続いて大将も彼らに話し掛ける。
「どうやら、まだ………………地獄は終わらないみたいだぜ」
大将の言葉に衝撃が走る新世代型達。そして大将は両手に携えるショットガンをリロードして先を見据える。
メタルバードと大将が見据えるのは、バイオハザードによる混乱で人の気配が全く感じられないタイの都市であった。あちこちから火の手が上がり、物が乱れる惨状が広がる状景を静かに見据える聖龍隊と赤塚組。
そして戦闘のメタルバードと大将が足を前に踏み出して歩き出すと、後方で動揺している新世代型の皆々にミラーガールが強い表情からも優しく言葉を掛けた。
「さあ、行くわよ」
ミラーガールの優しい言葉とは裏腹に、彼女が浮かべる力強い表情を目にして新世代型達は自分達が置かれている現状を自然と察する。
そして彼らは再び歩み出す。
荒廃し、もはや生きた人がいないであろう都市の方へと。
燃え盛る街並み。荒れる道路。そして時おり聞こえてくる奇怪な鳴き声または唸り声。
明らかに人でないモノが徘徊するであろう都市部の方へ一行は歩むしか選択肢はなかった。
生者のいない街を突き進む一行。
彼らの苦難はまだ、終わらない。