現政奉還記 B.O.W.編 作:セイントドラゴン・レジェンド
その後、一行が進んでいくと彼らの前に立ちはだかる関門が。それは生前、聖龍隊によって処分された初期の新世代型達を複製した幾つものクローンロイドであった。様々な能力と戦法を使う新世代型二次元人を過去に相手にしてきた聖龍隊は、どうにか難なくこれを突破。しかし新世代型二次元人を突破した後に現れた存在に聖龍隊は言葉を失った。それは前聖龍隊総長小田原修司の思想概念から生れた強敵、闇人であった。相手の能力を無力化するだけでなく複製して自由に使いこなせる闇人の猛攻に聖龍隊も誰もが苦境に追い詰められる。だが小田原修司の旧友である赤塚大作は、闇人の心の隙間を衝く言動を吐いた事で、闇人は煙の様に姿を消した。
闇人を突破した彼らは、やっと地上に出られ誰もが安堵したその時。一行を待ち受けていた男がそこに……。男の名はアルドウ・ウラジェール。小田原修司とも面識があった彼こそ、ラプター率いる恐竜海賊団に新世代型達を誘拐するよう依頼し、更にラプターにウイルスを渡した張本人であった。アルドウは一行に小田原修司の遺伝子から造り出した驚異的な生体兵器メルスを投じ、殲滅せんと図る。圧倒的なパワーで攻めるメルスを様々な銃火器と能力で反撃していく一行だったが、メルスは倒された事で更に強化された状態に進化してしまった。進化したメルスに必死で応戦した一行は、遂にメルスを突破。だが安心も束の間、今度はアルドウ本人が彼らの前に立ちはだかった。驚異的な身体能力で追い詰めようとするアルドウにメタルバードが直々に対峙。アルドウはそれに対し、体内のウイルスを開放し怪物化した状態でメタルバードと交戦を始める。ウイルスの影響で姿を変え、強化したアルドウであったがメタルバードには敵わず、己の至福である痛みを感じながら力尽く。
こうして地下研究所から地上のオフィスビルの1階で繰り広げた死闘を乗り越えて、全員が晴れて太陽を拝められた。が、待機している筈の聖龍隊の部隊が壊滅し、新世代型達を護送する算段が狂ってしまう事態に。
やむを得ず一行は、ゾンビが溢れ返っているであろうタイの都市部へ足を進ませるのであった。自分達を敵視する脅威が、まだ待ち受けている事を知らずに……
[逃げ場なし]
「我がエンペラーの目覚めは近い……諸君らは何処まで生き延びられるかな」
球状の物体に納められた人型を見据える男は、ただ一人で己の許に彼らが辿り着くのを心待ちしていた。
一方、メルスに続いてアルドウ・ウラジェールとの戦闘を突破した一行は避難方法として待機させていた聖龍隊部隊の壊滅を目の当たりにして、やむを得ず徒歩で荒廃したタイの都市を進むしか選択できなかった。
既に都市の機能は完全に壊滅し、そこら中にゾンビと化した市民が徘徊し死体などの肉に群がる惨状が広がっていた。その惨状の中、向かってくるゾンビを蹴散らして突き進む一行の姿が確認できる。
「あーーっ! ゾンビ、ゾンビ、ゾンビ! ようやく地上に出られたと思ったら、まだゾンビん中駆け抜けなきゃならないとは……!」
「文句言うな。つべこべ言ってたって始まらない、とにかく前進あるのみだ」
ようやく研究施設から脱出できたというのに、頼りの支援部隊は巨大なナニかによって壊滅させられ、足である軍用車は全て大破した事で自力で荒廃した都市を進行しなければならなくなった事態に不満を吐き散らす大将。そんな彼にメタルバードは文句を言わず、立ち止まらずに進行を続けるよう声をかけていく。
そして二人は後方に、仲間である聖龍隊士と赤塚組の幹部、そして保護した大勢の新世代型二次元人達を引き連れて現状を突破する。
「近寄るんじゃねぇ!」
進路方向前方にふらつくゾンビが此方を視認し、迫って来るのを確認した赤塚組幹部のアツシは装備している小銃を連射してゾンビを撃破。
「バーンズ、ところでこの後どうする? 言っちゃなんだが、戦えない新世代型達が大勢いる時点で明らかにコッチは不利だ」
メタルバードに今後の活動について訊ねると同時に、戦闘に参加できない非力な新世代型達を大勢護りながら進行していくのは困難である事実を突き付ける大将。すると訊ねられたメタルバードは右腕をレーザー銃に変形して、前方のゾンビ達を悉く撃ち抜きながら答え返した。
「確か市街を抜けた郊外に、アジア連合による特殊部隊が待機している緊急対策本部が設けられている筈だ。どうにか一般人である新世代型達の保護だけでも頼んでみよう」
アジア連合が派遣した特殊部隊によって設けられたタイのバイオハザード対策の本部まで辿り着き、聖龍隊でも赤塚組でもない新世代型達の保護を要請してみようと提案するメタルバード。
こうして一行はタイのバイオハザードに対して設けられた緊急対策本部まで進行し、アジア連合の特殊部隊に助けを求める方針で話が決まった。
「此処まで汚染が広がってるのか!?」
目の前に広がる惨状を前にして、メタルバードはウイルスが都市部を確実に侵攻し、バイオハザードが拡大している現状を改めて実感する。
すると前進しようとしていた一行の真横から突如ゾンビが集団で襲い掛かってきた。
「このッ」
襲ってくるゾンビに大将を始めとする赤塚組が一斉射撃を放ち、ゾンビたちは無数の銃弾を浴びてその場に倒れ込む。
「市街地なだけにゾンビがウジャウジャいやがるッ!」
バイオハザード発生前は人手で賑わっていたであろう市街地な分、そこで平穏な生活を過ごしていた人々が感染しゾンビに成り果てて彼方此方にいる現状に焦りの表情を浮かべる大将。
と、自分らに向かってくるゾンビを次々に撃破しながらメタルバードは完全機械化に変身している体内の通信機で通話し出した。
「レイ、目的地である対策本部までの道のりは?」
「そのまま公道を進んで、信号のところを左折してください」
通信士の助言に従い、メタルバードは皆を引き連れて信号のところまで一直線に走った。
そして信号のところまで辿り着き、指示通り左に曲がろうとするが通過してきた後方の道からゾンビの大群が追ってきているのが目に入った。
「あの数のゾンビを一掃するには手がかかる……!」
進行してきた道から迫ってくるゾンビの大群をメタルバードが気にかけていると、同じく後方から迫るゾンビの群集を脅威に感じていたセーラージュピターが行動に出た。
「えいっ」
後方から迫るゾンビの大群を進行させまいと、セーラージュピターは持ち前の怪力で付近に乗り捨てられてる車を持ち上げて迫ってきているゾンビの群集に向かって投げ飛ばした。
ジュピターが投げ飛ばした自家用車がゾンビの群集の前に落下し、ゾンビの進行を多少ながら阻めた。だが広い公道に車1台だけではゾンビの進行を完全に防ぐ事はできず、ゾンビ達はセーラージュピターが遠投した車の横を通過して絶えず向かってくるのが目に見えた。
「まだまだ……っ」
車1台だけでは公道を塞いでゾンビの群集の進行を防ぐ事は出来ないと判断したセーラージュピターは手当たり次第に近くに乗り捨てられている車を投げ飛ばし、最初に投げ飛ばした車の方に放り投げる。そして彼女が放り投げた車は横に上へと積み上がり、遂には完全に公道を塞いでゾンビの進行を喰い止める事に至った。
「ふぅ、施設と違って広いから戦いやすいわ」
今まで自分達が戦ってきた地下の研究施設と違い、広々とした屋外では自慢の怪力を思う存分に発揮できるセーラージュピターは心なしか満足気であった。
「……な、何だかジュピターのねえちゃん。スゲェけど以前にも増して勇ましいな……」
「ああ、昔みたいに男勝りの怪力や性格を気にしていた頃が今は懐かしいよ……」
目の前で繰り出されたセーラージュピターの荒業に圧倒される大将に、メタルバードは昔の木野まことを思い返しながら受け答える。
しかしセーラージュピターの怪力が成せる荒業によって迫ってくるゾンビの集団から逃れたのも束の間、今度は進行方向から続々とゾンビが怒涛の勢いで迫って来ていた。
「まあ、確かに。ここは今までの地下と違って広いから思う存分に戦えるぜ! 全員、向かってくるゾンビ共を遠慮なく薙ぎ倒せ!!」
セーラージュピターの発言通り、今まで戦闘を展開してた地下とは異なり広い屋外での活動は自分達の真価を十二分に発揮できるとメタルバードは仲間に号令をかけて共に対峙するゾンビ達を薙ぎ払っていった。
そして正面のゾンビ達を次々に刃に変形させた両腕で斬り付けていきながらメタルバードは体内の通信機で再び通話し出した。
「レイ、この先は?」「そのまま直進してください」
指示通りメタルバードはゾンビ達を薙ぎ払いながら前進する。
「こぉのッ!」「はッ!」
生者である自分達に容赦なく襲い掛かってくるゾンビ共を躊躇する事無く斬って捨てる纏流子と鬼龍院皐月は、周囲のゾンビの集団を認識して絶えず片太刀バサミと縛斬を握り締める。
「えいっ」
流子と皐月同様に栗山未来も自身の血を結晶化させた刃で襲ってくるゾンビを斬り付けていく。
すると各々が襲ってくるゾンビを攻撃している最中、遠くの方から明らかに人型ではない物体が素早い動作で此方に向かってくるのが見えた。それはウイルスに感染した犬で、既に息絶えて死んだ人間同様生きた人間を襲う様に変異してしまったゾンビ犬であった。3頭ほどのゾンビ犬が駆け付けてくるのが目に入った大将は、瞬時に構えていた銃を犬たちに向けて発砲。銃弾を受けたゾンビ犬たちは力尽きて崩れる様に倒れ込む。
だがゾンビ化した犬を片付けた直後、進行しようと炎上する車の横を離れて通過しようとした矢先、その燃え盛る車の中から火達磨のゾンビが歩を進ませる一行に襲い掛かろうと迫ってきた。
「きゃあっ!」
火達磨のゾンビに近寄られそうになり、ゾンビの熱さよりも恐怖で悲鳴を上げる新世代型の大宮忍。だが火達磨のゾンビが彼女に触れるより前に、聖龍HEADの龍咲海が水の技で火達磨ゾンビを吹き飛ばし事なきを得た。
「し、忍ちゃん、大丈夫!?」
火達磨ゾンビに襲われそうになった大宮忍を気にかけ、慌てて親友のアリス・カータレットが声をかけると忍は動揺しながらも頷いて応えた。
更に前進していくと、一行は小さな病院の前を通り過ぎようと慎重に歩いていると、病院の玄関からゾンビ化した白衣の医者らしき中年男性が飛び出してきて一行に襲い掛かってきた。怯える新世代型達に対し、大将ら赤塚組は躊躇わずゾンビ化した医者を銃火器で撃ち抜いた。銃弾を浴びた医者だったゾンビは銃痕から大量の血を噴き出して後ろめりに倒れ込んだ。
だが医者であったゾンビを銃撃で撃退したのも束の間、医者だったゾンビに続いて今度は看護師姿の女性のゾンビが何体も病院の窓ガラスを突き破って外へと飛び出てきた。が、即座に窓から飛び出てきた看護師ゾンビを悉く赤塚組は迎撃し、看護師だったゾンビ達は銃弾が貫通し続々と倒れる。
「……病院までもか……」
病気や怪我で滞在してたであろう病院までもゾンビで溢れ返る悲惨な現状に心を痛める大将ら。
と、皆がゾンビ化した医師や看護師らが飛び出てきた病院を見詰めているとプロペラ音が耳に入ってきた。「?」皆がプロペラ音に上空を見上げてみると、バランスを失ったヘリが病院目掛けて突っ込んできた。
「離れろッ、伏せろッ!」
ヘリが病院に激突するのが目に見えたメタルバードは慌てて全員をその場から遠ざけると同時に頭を防御するよう呼び掛けて、ヘリの激突に備えさせる。そして思惑通り、ヘリは未穴の頭上で病院に激突した直後、炎上しながら皆の目前に墜落する。
「うわァっ」
目の前に墜落したヘリの爆発の衝撃に巻き込まれながらも、メタルバードの迅速な対応でその場から離れさせていたため誰も大事には至らなかった。
そして目前で激突して爆発した後に墜落して炎上するヘリの残骸を見て大将が唖然と呟く。
「そ、それにしても……なんで墜落したんだ」
「多分、パイロットがウイルスに感染してヘリの操縦が失われたんだろう……」
大将の疑問に、メタルバードはヘリの操縦者がウイルスに感染した事で自我を失くし、次第に操縦不能と至り墜落したのだろうと推測する。
そして炎上するヘリの残骸を見届けた一行が進行を再開。行く手に迫るゾンビらを撃破しながら前進を続ける。
すると此処で大将が不意に思った疑問を口に出した。
「そういや……研究施設からお前さん達と通信してるのは誰だ?」
地下の研究施設の初め頃より聖龍隊と通話している相手について大将が訊くと、メタルバードは改めて大将ら赤塚組はもちろん新世代型達にも語り返してくれた。
「そうだ、紹介が遅れたな。さっきからオレたちを誘導してくれているのが、オペレーターのレイだ」
「レイです、宜しく。アニメタウン本部より、通信衛星を通して現場の皆さまをサポート致します」
メタルバードが語り返すと同時に皆に開示した機械化した右腕から突出させた液晶画面に映し出される、黒い前髪で目が隠れている長髪の若い男性通信士が画面越しに赤塚組と新世代型達に一礼する。
「レイたち、聖龍隊のオペレーターは通信で現場のオレたちを的確に指示するだけでなく、コンピューターを用いて瞬時に情報を解析してくれる」
「アニメタウン本部の通信支部では、有事の際には支部のみで全ての聖龍隊を支援および指揮する事が可能です」
メタルバードの紹介で改めて赤塚組と新世代型達に顔を公開したレイは、その後も一行が出来るだけ進行できる上に有利な状況に立てるよう通信を介して皆を支援してくれた。
と、全員が聖龍隊の通信士レイを知り得た、その時。後方から炎上するヘリの機内から火達磨状態のゾンビが2体出現し、此方に向かってきた。急きょ聖龍隊は背後から迫ってくる火達磨の元操縦士であろうゾンビ2体を撃退し、事なきを得る。
道端はもちろん建物からも、どこからも湧いて出てくるゾンビなどの脅威に圧倒されつつも前進するしか手立てがない一行。
逃げ場のない恐怖は確実に彼らを追い詰めていた。
[連鎖する変異]
いつ何処から危険が迫っているか判らない、逃げ場のない恐怖に追い詰められるも一行は必死で足を休ませず駆け続ける。
そして一行は聖龍隊の通信士レイの誘導の元、自動車進行禁止の道路に進入してた。
「歩行者専用道路か……そういや屋台が並んでいるな」
逃げ込んだ道路は車が走行できない横幅の代わりに、道脇にいくつものタイ特有の屋台が一列に並んでいた。
「何か出てくるか分からん……ここも慎重に進むぞ」
赤塚組幹部のテツは皆に警戒を呼び掛けつつ、小銃を構えたまま前進する。そんな彼に続いてその他の全員も静寂に包まれる歩道を突き進む。
すると前進してた一行の目に、道脇の壁に寄り掛かる死体が映り込んだ。その死体はゾンビに食い千切られてはおらず、それらとは一線を敷く異様な死体であった。
「このオッサン……」
「ゾンビに殺されたり、喰われたりするより……自分で命を終わらせたみたいだな」
その死体は現状に絶望し、自ら喉を掻っ切って自殺した中年男性の死体であった。大将とメタルバードは如何に現在の状況が生者にとって絶望的なのか改めて再認識された。
そんな自ら首を切り裂いて自殺し、首の傷口から大量の血を流して死亡している男性の横を一行は通り過ぎていく。
そして自殺体を通過し、続いてタイ特有の屋台売店の横を通り過ぎようとメタルバードと大将を筆頭とする戦力を持った面々が先頭を行く。
と、全員が屋台の横を通り過ぎようとした、その時「きゃあっ!」まるで絹を引き裂く様な女性の悲鳴が歩道に木霊した。
「ど、どうした!?」
集団の後方から聞こえた悲鳴に驚き、大将が悲鳴の方へ慌てて声をかけると視線の先には表情を強張らせる新世代型の薙切えりなの姿があった。
「あ、あ……っ!」
えりなは非常に血の気のない表情で、震える指で一点を指して不気味がっていた。
彼女が指さす方に他の皆も視線を向けると、そこにはタイの屋台ガラスケース内に陳列される商品が並んでいた。それはサナギや幼虫、コオロギやバッタなどを揚げた調理品であった。
「な、なんだよ、タダのコオロギなんかの揚げ物かよ。まったく、驚かせやがって」
「で、ですが! 余りにもグロテスクで、虫唾が走りますわっ」
「おっ、虫だけに虫唾が走るってか。ウマい! 座布団一枚ッ」
「って! フザケないでっ!」
虫の揚げ物に関して不気味がるえりなの発言に対し、大将は気を利かせた積りで返事するがその台詞にえりなは逆に立腹してしまう。
すると虫の揚げ物を不気味に感じ入る薙切えりなに思うところがあったメタルバードは彼女に話し掛けた。
「まあまあ、お嬢ちゃん。そう腹を立てるな。確かに虫料理は一見、不気味だけど、これも一種の文化ってもんだ。見た目はグロテスクでも珍味なマナコとかだってあるし、日本人だって虫料理は口にしてるだろ。ほら、蜂の子やイナゴの佃煮とかよ」
しかしメタルバードの話に、えりなは不快ながらに反論。
「私をそこらの下手物料理を貪る庶民と一緒にしないでください! 腹立たしい……」
「ッ、お前、また……」
庶民料理を毛嫌いする薙切えりなの普段と変わらない態度と発言に毎度の事ながら反発する幸平創真。二人の今にも衝突しそうな雰囲気を察し、二人の間に大将が急いで入る。
「ま、まあまあっ、そう邪険になるなって……。確かに、庶民とかは関係なく虫料理は余り見た目的に良いモノじゃないとはいえな。えりな、タイでは虫はソウルフードとして人気を博しているんだぜ」
どうにか二人の間を取り持つ大将に続き、メタルバードも彼の話に補足を付け加える。
「そうだぜ。それにな、信じられないかもしれないが、今では世界規模で虫料理は注目されているんだぜ。未来での新しい食材としてな」
「な、何ですって!?」
メタルバードの話に不意を突かれる勢いで驚愕するえりなに話は続いた。
「そうだぜ。虫には生物が生きていくには欠かせないアミノ酸や良質なたんぱく質が豊富で、しかも調理の過程では大変美味だと今じゃ国連が推奨する次世代の食材として世界中が注目しているんだ。人口増加に対して問われる食糧難を凌ぐ手段としてな」
「そ、そんな……」
メタルバートから説明を受けて、昆虫料理が国連をも納得させる栄養豊富で美味な新たな食材として注目されている事実に驚きを隠せない薙切えりな。
そんな驚嘆しているえりなに自然と大将も説明に付け加える形で彼女ら新世代型達に語り出してしまう。
「まあ、お嬢ちゃん。確かに虫料理ってのは見た目はアレだが……この御時勢、
「そ、そん……っ!」
「ちょっと待った!
大将の説明に、近い将来多くの国々で食されるであろう未来食に心身ともに嫌悪感にも近い衝撃が走る薙切えりなに対し、説明が耳に入った薙切えりなと同じ新世代型の真鍋義久は
真鍋の質問に大将は内心(ヤベッ、口が滑った)と焦ってしまうが、既に真鍋以外の新世代型達の視線が大将に集中してしまってた。
問い詰められた大将が口を濁す中、メタルバードが問答に困惑している大将に変わって新世代型達に語り明かしていった。
「……原則に
「そ、それじゃ……私たち二次元人は、増えすぎた人口を減らすために敢えて処分されて存在そのものを消されている訳なんですか!?」
語り明かされた実情を聞かされたプロト世代のチョコはメタルバードに悲痛な顔で問い返すと、メタルバードも重い表情で答えた。
「無論、二次元人だけを処罰の対象にしてたんじゃ差別とかの問題視に挙げられるという事で、二次元人と同等に三次元人の多くも
二次元人同様、処罰を受ける三次元人の多くがテロリストなどの危険極まりない思想を持つ人間であり、二次元人で
と、そんな昆虫料理談義に続いて
「ああっ!」
メタルバードと大将が昆虫料理について薙切えりなと幸平創真と談義を交わしていると、またしても女性の悲鳴が。
全員が悲鳴の方へ顔を向けると、恐怖で表情を引きつらせる新世代型の月影ちありと近衛ねねの目の前に、腰にエプロンを着用してる女性のゾンビが迫っていた。
おそらくは屋台の店員だったと思われる女性のゾンビに、赤塚組のミズキはレーザーでゾンビの額を貫いて倒した。
だが、この戦闘音が引き金となったのか付近で倒れていた死体が続々と起き上がりゾンビとして一行に迫ってきた。
「チッ、潜んでやがったか……!」
建物の内部や物陰に潜んでいたゾンビ達が、生者の自分達の存在に気付いて接近してくるのを必死で銃火器で応戦する大将。
大将率いる赤塚組が銃撃でゾンビの頭部を攻撃して倒していく中、聖龍隊もそれぞれに特技でゾンビを攻撃して二度と起き上がれない様に抗戦していく。
幾度の銃声と剣劇が鳴り響く歩道のど真ん中でゾンビに囲まれ、身動きが取れなくなってしまう一行は、迫りくるゾンビを撃退しながら身を潜めるしかなかった。そんな彼らの頭上から、一行の様子を眺める存在に気付かず。
そして粗方のゾンビを片付けて、先へと進める様になったのを確認した大将が大声で皆に呼び掛けた。
「よし! 今のうちに突破するぞ!」
大将の威勢のいい声に応え、メタルバードも新世代型達を誘導するため手を大きく振りかざす。
「道は拓けた! 突っ走るぞッ」
メタルバードの合図と誘導に反応し、聖龍隊と赤塚組が護衛してくれる中、新世代型達は駆け出そうとした。が、その矢先
「う、うわァ!」
突然の絶叫に皆の足が止まった。
「な、何事!?」「ブンタ!」
歩道に響く絶叫にセーラーネプチューンが声を発すると、新世代型の笹川ノゾミが上を見上げて声を荒げる。彼女を始めとする皆の視線の先には、なんと空中に浮かび上がる嵐山ブンタの姿があった。ブンタは非常に焦った様子で、ただただ慌てふためくばかりであった。
凝視してみると、なんとブンタの両肩に手を突っ込んで彼を持ち上げる生白い腕が認識できた。生気のない、その腕を辿ってブンタの頭上に注目してみると巨漢の彼を持ち上げられるとは思えない細い腕で掴んでいる黒髪の女性らしき存在が確認できた。
嵐山を持ち上げるその異様な女性は、眼球が陥没した様な顔に手足がクモのように長い異形の姿だった。その異形の女性が建物の上から壁を這う様にして嵐山ブンタを捕まえて持ち上げていたのだ。
「た、助けて……ッ」
眼球が陥没し完全に無くなっている不気味な女性の異形に捕まり、心底恐怖と悍ましさで助けを乞う嵐山ブンタ。
そこに聖龍HEADの鳳凰寺風が風の矢でブンタを捕まえている異形の女性を射撃し、風の矢を受けた異形は思わずブンタを捕まえていた手を放してしまう。
「うわっ」
解放された嵐山ブンタは、そのまま尻から勢いよく地面に落下してしまう。
「ブンタ!」「大丈夫?」
仲間の吹野タダシと笹川ノゾミが尻もちをついたブンタの許に駆け寄り声をかけると、ブンタは尻を摩りながらも「だ、大丈夫……」と返した。
しかしブンタを放してしまった手足が異様に細長い生白い長髪の女は、ブンタを始めとする一同の頭上から皆を見下ろし再び襲い掛かってきた。
『う、うわぁ!』
嵐山ブンタを始めとする面々は、頭上から急襲してくる異様な女の異形に恐怖し絶叫。だが彼らに襲い掛かろうとした寸前、聖龍隊のトリコが豪腕で迫ってくる異形の女を殴り付けて吹き飛ばす。
強烈な豪腕による打撃は凄まじい衝撃と風を生じ、豪腕に吹き飛ばされた女は後方の歩道奥まで飛ばされて動かなくなった。
「よし、もう大丈夫……って、うわッ!」
異形の女を殴り飛ばしたトリコが安堵しそうになったその時、ふと付近の頭上を見上げてみると目に飛び込んできた事態に驚愕した。なんと今さっき彼が殴り飛ばした女以外にも、何体もの手足がクモのように細長い色白で長髪の女らしい容姿の異形が、陥没した眼で此方をジッと見据えていたのだ。
「他にも居やがる!」「早く逃げるぞ! 頭上から何するか分かったもんじゃねェ!」
他の個体も数体、建物の屋根から壁を伝って接近しているのを視認した大将とメタルバードは急いでこの場からの撤退を指示する。
と、全員が頭上から迫る細長い手足の女達から逃れようと駆け出そうとした矢先、頭上とは全く別の場所から別の危機が迫っていた。
「きゃあっ!」
頭上から迫る細長い手足の女達から逃れようと全員が駆け出そうとした矢先に聞こえる悲鳴。その悲鳴の方へ全員が一斉に顔を向けると、そこにはゾンビに襲われ、今にも首筋を噛み付かれそうになっている新世代型の猪熊洋子の姿が。
「洋子ちゃん!」
ゾンビに襲われ噛み付かれそうになっている猪熊洋子の姿を確認し、彼女の名を呼ぶクラスメイトの大宮忍と同じく動揺する小路綾。
そこに皆々と同行しているジェイク・ミューラーが猪熊洋子に噛み付こうとするゾンビに向けて銃を発砲。ジェイクの放った銃弾は猪熊洋子を襲うゾンビの頭部に着弾し、ゾンビはその一弾で倒れた。
噛み付かれそうになった猪熊洋子が安堵しそうになっていると、先ほど彼女に噛み付こうとしていたゾンビにメタルバードと大将が注目してみると驚愕の事実が判明した。
「お、おい! コイツ……」「さっき見かねた自殺体じゃねぇか……!」
なんと猪熊洋子に襲い掛かったゾンビは、先ほど全員が見掛けた自ら首を掻っ切って自殺していた中年男性の死体であった。
驚いた事にゾンビに成るまいと自ら命を絶った自殺体までもウイルスに感染して動く屍に成り果ててしまっていた。最悪な事に生前ウイルスに感染していなかろうと、死体になった後からでもウイルスによって死者はゾンビへと変貌してしまうのである。つまりゾンビになるのを恐れ絶望する余り、自ら命を絶っても結局はゾンビに成り果ててしまう残酷な現状が待ち受けているのだ。
自殺した死体までもゾンビに成り果て襲ってきた事態に驚きを隠せない一行。だが、そんな自殺死体からゾンビに成った中年男性を銃弾で仕留めたジェイクはこう告げた。
「どうやら頭を攻撃すれば完全に殺せるみたいだな。この男も、首の動脈を切っただけだからゾンビになっちまったんだろう」
ジェイクの所見のとおり、おそらくは頭部に致命的な損傷を受けてない場合のみ死体はゾンビに成り果てしまう為、動脈を切っただけではゾンビ化を防げないと判断できた。
と。全員が動脈を切って出血多量で死んだ自殺者が成り果てたゾンビに注目している最中も、例の頭上から迫る手足が細長いクモのような容姿の女達が確実に迫っていた。
「イケねぇ! こいつらの事もあったんだ!!」
自殺したにも関わらずゾンビに成り果ててしまった人間を思慮していた間に迫ってくる異形の女たちの存在を思い出す大将。
だが事態は更に悪化し、建物の壁から異形の女達が這って来るのと同時に歩道向こうから数十体ものゾンビたちも群がってくるのが目に飛び込んできた。
「ゾンビの御一行がやって来たわ! 迎え撃ちましょう!」
そう仲間の赤塚組や同盟相手の聖龍隊に呼び掛けながら幹部の海野なるが小銃を構えて迫ってくるゾンビに向かって銃を連射。それに続いて他の赤塚組幹部も一斉射撃を展開する。
飛び交う銃弾の弾幕で無数の銃弾を浴びるゾンビの群れ。だが弾幕を掻い潜り一部のゾンビのみが戦前に接近してしまう。そして戦前で銃撃を続ける赤塚組に攻撃を仕掛けようとした瞬間、噛み付こうとするゾンビに新世代型の栗山未来が自身の血を結晶化して形成した刃で斬り付けて撃退した。
斬り付けられ悶絶するゾンビを斬り捨てた栗山未来に続き、彼女と同じく新世代型の纏流子と鬼龍院皐月も間近まで接近してきたゾンビを一刀で斬り捨てて戦闘に助成する。
「近づいて来たゾンビは問答無用で斬り捨てていくぞ! ここでやられたら元も子もない!!」
威風堂々とした物言いで配下の四天王はもちろんライバルである流子にも呼びつけて行く皐月は、その間も凄まじい気迫で近づいてくるゾンビを悉く得物である縛斬で斬り付けて行った。彼女の言うとおり、ようやく自分達を監禁していた地下の研究施設から脱出できても今ここでゾンビなどの脅威にやられてしまえば元も子もない。
だが大方のゾンビが弾幕で一斉に片付いたが、それでも数体のゾンビは現存し更に頭上から建物の壁を伝って下りてくる細長い手足の女達も絶えず此方へ迫ってきていた。
「全然片付かないぞ……!」
「銃声なんかの衝撃音を聞き付けて、街中に潜んでいるゾンビや変異体が群がっているんだ!」
一向に片付かないゾンビや変異体といった脅威に焦りを見せ始める大将に対し、メタルバードは銃撃などの苛烈な衝撃音が街中に溢れ返っているゾンビや変異体を呼び集めてしまっていると仮説する。
戦前で応戦する面々が続々と群がってくるゾンビなどの脅威に必死で抗戦している最中、1体のゾンビが歩道に展開されている屋台の横を通過しようとした時、誤って1本のガスボンベが倒れてしまった。倒れたガスボンベが歩道の真ん中まで転がるのが目に映ったセーラーマーズは瞬時に思い付いた。
「っ、そうだわ!」
マーズは咄嗟に能力で火の矢を出現させ、その矢を歩道の中央に転がるガスボンベ目掛けて放った。すると火の矢が直撃したガスボンベは爆発し、歩道に群がっていたゾンビや女の変異体を爆風が呑み込む。
「うわっ」
爆発による熱風が直撃し、思わず顔を腕で覆ってしまう一行。だがマーズの狙い通りガスボンベの爆発に巻き込まれ、多くのゾンビや女の変異体が死滅した。
「そうか! 屋台のガスボンベを利用したってのか」
「仕方ねェが、もう主もいない屋台だ。ガスボンベを利用して敵を一掃しろ!」
店先で商品の昆虫を揚げるために用いられるガスボンベを利用して、歩道の敵を一掃する作戦に乗じる大将とメタルバード。
するとガスボンベに引火させる策も含めて、マーズに続いて獅堂光も同じく炎の矢で前方のゾンビたちを射抜き始める。
炎の矢で応戦する聖龍HEADに続けと、新世代型の蛇崩乃音も音符ミサイルを用いて爆撃を展開。屋台ごとミサイルで吹き飛ばし、自分なりにガスボンベに引火させてゾンビを一掃させようと試みる。
セーラーマーズと獅堂光の炎の矢、そして蛇崩乃音のミサイルによる連携で歩道の屋台が続々と大破するのと同時に転がり倒れたガスボンベに引火し次々と大爆発が連鎖。歩道は爆発による爆炎に包まれる。
連鎖する爆発によって歩道はすっかり黒こげとなったが、同時に歩道を移動するゾンビも建物の壁から這って近づいて来る女の異形も全て片付き、一掃する事ができた。
「ふ、ふぅ……どうにか片付いたようだな」「また他のゾンビが来る前に先へ行こうぜ」
苦難の末、ゾンビたちを一掃できた戦況に安堵するメタルバードに反してジェイクは新たな脅威が群がってくる前に急ぎこの場を去ろうと言う。
そして全員が再び足を進路先へと進ませようとした。
が、しかし。
「う、うわぁ!」
全員が足を前に進ませようとした矢先、またも悲鳴が。
「ッ!」
悲鳴に驚き後方を振り返ると、最後尾にたまたまいた新世代型の速水ヒロがうつ伏せの状態で転倒してた。彼の下半身に目を向けると、そこには先ほどの爆発を運よく逃れた細長い手足の女がヒロにしがみ付いて、そのまま後ろへと引き摺っていた。
「わあっ」「ひ、ヒロ!」
異形の女に捕まり、そのまま何処かへ連れて行かれそうになる速水ヒロを目の前に彩瀬なると神浜コウジは絶叫。
だが皆が驚き立ち竦んでいる最中も、女はヒロを連れ去ろうと彼を引き摺りながら後退していた。が、その時。
「こ、この……ッ」
ヒロが連れてかれるのを阻止しようと大将が銃を構える。が、女は大将の狙いに気付いたのか捕らえているヒロを盾にしながら後退してしまう。
(クッ、このままじゃ、あのガキが……)
ヒロを盾にされた事で迂闊に発砲できなくなり、大将は非常に困惑する。と、その時。大将の目に先ほどの爆発にも用いた小型ガスボンベが1個、無傷の状態で飛び込んだ。
「ッ、これで……!」
銃が使えない状況で大将は、目に映った小型ガスボンベを掴むと、それを持ったまま勢いよくヒロの方へと駆け出した。
「うおおおッ!」
ガスボンベを持って走り出す大将は、ヒロを引き摺る女の目前まで駆け付けると持っていたガスボンベを両手でしっかりと掴んで、ガスボンベで女を直に殴り付けた。
大将が殴り付けた一撃で怯んだ異形の女は動きを止めたが、その手は絶えずヒロを捕らえて放さない。すると大将は更に異形の女を殴り続ける。何度も鋼鉄製のガスボンベで殴り付け、次第に女の頭部から赤い血が滴り、色白の肌を伝って地面に落ちる。そしてようやく女の手は緩み、その隙に捕らえられてた速水ヒロは女から逃げ出し皆の許へと駆け出す。
「あわわ……っ」
人間離れの怪力でしがみ付かれ、捕まっていたヒロは蒼褪めた面持ちで急ぎ女から離れる。そして異形の女がヒロを離したのを確認した大将も、鈍器に用いたガスボンベを頭から血を噴き出す女の間近に置き捨て後退する。
「みんな、離れろッ」
後ろ向きで女から数歩下がった大将は、背後の皆々にこの場から距離を置くよう投げ掛ける。
そして大将の言葉に従い、彼を除いた全員がその場から離れたのを見計らった大将は拳銃を構えて先ほど女の間近に置き捨てたガスボンベに狙いを定めた。そして構えた拳銃を発砲、銃弾は狙いを定めたガスボンベに着弾。ガスボンベは爆発し、痛みに悶絶してた異形の女は爆発に巻き込まれた。だが「うおぉッ!」ガスボンベから数歩しか後退してなかった大将も爆発の衝撃を受けて、爆風で吹き飛ばされてしまった。
「大将!」
爆風に吹き飛ばされ、地面に倒れる大将にミラーガールが駆け寄る。一方で速水ヒロを襲った異形の女はガスボンベの爆発で黒焦げになり、完全に絶命していた。
「大将……!」「ッ……だ、大丈夫だ」
派手に吹き飛んだ大将に幼馴染のミラーガールが心配して声をかけると、大将は痛がりながらも無理やり平然を装う。
そして大将が撃ち抜いたガスボンベの爆発で眼前の敵が居なくなり、辺りに静寂が流れ出すとメタルバードがミラーガールに呼び掛けながら皆に言い渡す。
「アッコ、大将を連れてこの場から離脱するぞ! また変異した敵が群がってくる前に少しでも進まねェと」
メタルバードの言葉を受けて、ミラーガールは爆発で負傷した大将に肩を貸して彼を連れて歩き出す。その他の皆々も急ぎ、この場から遠ざかろうと聖龍隊と赤塚組の警護の中を再び進行し出した。
ウイルスによる変異の連鎖は、留まる事を知らなかった。
[来襲]
湧いて出てきた異形の女にゾンビと化した人々の猛襲を撃破した一行は、まず先ほどの戦闘による爆発で負傷した赤塚組頭領、赤塚大作、通称、大将の怪我を治療するため、一時的に足を止めてた。
「…………よし、これで大分治ったわ。けど、さっきみたいな無茶はもうしないでくださいよ」
「ハハっ、こんぐらいの怪我、別に動作も無かったぜ、りりかの嬢ちゃん。……けど、毎度毎度あんがとよ」
爆発による火傷を含んだ外傷の治療を行い、自身の治癒能力で完全に傷痕すら消滅させたナースエンジェル。彼女に治療してもらった大将は、ホンの掠り傷程度で大した外傷では無かったと粋がるが礼だけはキッチリと返した。
「へ、HEADの御一人を呼び捨て……しかも嬢ちゃんって…………」
今や日本からも完全独立を果たしているアニメタウンという一大国家を担う聖龍HEADの一人、ナースエンジェルに対して友好的な態度で接する大将に驚きを隠せない一色慧を始めとする新世代型たち。だが旧知の間柄である聖龍HEADと赤塚組の頭領及び幹部達にとって、これが普通なのである。
「へへ……よっしゃッ。もう痛くもなんとも無いぜ」
ナースエンジェルの高い治癒能力で傷口はもちろん痛みすらも完全に癒えた大将は意気揚々と立ち上がる。
大将がナースエンジェルの治療を受けていた一方、メタルバードは体内に内蔵してある通信機器で再びアニメタウン本土の通信司令部と通話していた。
「此方メタルバード。現在、タイ市街を進行中。途中でゾンビを始めとする変異した人間との戦闘に発展、その最中で赤塚組頭領、赤塚大作が負傷。現在、治療をしている……レイ、この先の進路は?」
敢えてヒーロー名で名乗るメタルバードは今さっきの事態も含めて報告した上で今後の進路について通信士のレイに問い掛けた。
「はい、今し方通過した歩行者専用の公道を抜けて、そのまま右の歩道を突き進むと広い公道に出ます。そこを左折して直進した先の十字路まで向かってください。そこからまた左折して直進した後に、また指示します」
「なるほど、十字路まで行けばいいんだな…………ところでレイ、研究施設の前に待機させていた支援部隊なんだが。結局、全滅していた訳だが、そもそも支援部隊として要請してたマン・ヒールズは居なかったが連中はどうしたんだ?」
目的地である郊外の緊急対策本部までの道のりを通信士のレイから聞いたメタルバードは、続いて保護した新世代型たちを安全地帯まで運ぶ任を負わせた聖龍隊支援部隊として要請している筈のマン・ヒールズの姿が、壊滅されてた部隊に見えなかった事実を伝えるとレイは丁寧に返答した。
「はい! 聖羅さんは……あ、いや、マン・ヒールズの皆さんは感染者が他所に侵攻するのを防ぐ為にとアジア連合から要請がありまして、そちらへの助成に駆け付けています。どうも人手が、かなり少ないみたいで……」
「そうか、それは仕方ないか……三次元政府からの要請を無闇に断る事もできねェしな(相変わらず聖羅に想いを寄せているな、レイは)」
新世代型二次元人の保護と安全地への避難を任せていた支援部隊を請け負わせたマン・ヒールズは、三次元側であるアジア連合からの要請を受けて感染者の侵攻を防ぎに向かったと通信士レイから聞いたメタルバードは、レイが今でも葉月聖羅に淡い恋心を抱いている事を察する。
それから一行はレイの指示した通りの道順で突き進み、公道である道路に辿り着いた。
道路も他の道と同じく、慌しいバイオハザードの混乱で乗り捨てられたいくつもの自動車が目立ち、その中には炎上している追突車も多く見受けられた。
一行はその道路に出ると左折し、そのまま直進して十字路まで向かう。だが道路を進もうとする一行の前に案の定ゾンビが立ち塞がる。
「……邪魔ね」
行く手を遮るゾンビに冷静と鋭い一太刀を浴びせて瞬殺してみせる聖龍隊のクローム髑髏。
だがクローム髑髏が一掃した3体のゾンビの他にも、続々とゾンビが一行に向かって接近してきていた。
「相手にしてばっかは居られねェ! 大概は無視して進行し続けるぞ!」
剣で接近してくるゾンビを次々に切り倒していくキリトやアスナを横目に、メタルバードは余り相手にせず先を急ぐよう皆に言い渡す。
そして群がってくるゾンビを薙ぎ払いながら懸命に道を切り開いていく一行は、どうにかゾンビの攻撃を凌ぎながら前進していく。
ようやく信号が設けられてる交差点十字路まで辿り着く事ができた一行。十字路にも道路同様、多くの車が乗り捨てられ、搭乗者を待ち侘びる様にポツンと置かれたままだった。
「次は此処を左だな……」「ああ、それからまた……」
と、大将とメタルバードが十字路を左折した後の事を話し出そうとした、その時。
物凄い轟音と砂煙が十字路の右側の道路から流れ込んできた。
「うわッ!」「なんだ?」
轟音が響いたと同時に舞い込んでくる大量の砂煙という事態に驚き慄く大将とメタルバード。
そして全員が十字路に入る直前の道路の真ん中で立ち止まっていた、その時「セェェリュゥゥタァァアァァイ…………」と不気味な唸り声に近い雄叫びが響き渡った。
「お、おい……これって……!」「ま、まさか……!」
不気味な雄叫びを聞いた途端、大将とメタルバードは表情を引き攣らせ、それと同じく新世代型の皆々も聞き覚えのある叫び声に顔色を蒼くした。
と、その時。「うわあっ!」突如、目の前に自動車が吹き飛んできて、新世代型の女子達は驚いて悲鳴を上げる。すると車が飛んできた右の道路から、舞い上がる砂煙に巨大な影が浮かぶ。そして砂煙の中から現れたのは。
「セェェリュゥゥタァァアァァイ……!!」
『で、出たーーーーッ!!』
舞い上がる砂煙の中から現れたるは、地下研究施設で幾度も一行を追い掛け回し、猛襲を仕掛けてきた小田原修司の複製兵器、試作品MELUS素体003-DX、略称3-DXであった。
先の地下研究施設から地上へと辿り着いた一行の前に、あのアルドウがぶつけてきた強大な生体兵器メルスの試作品の一体として造り出された凶暴性が非常に高い小田原修司の副産物である。
だが今の目の前に現れた3-DXは、その巨体な容姿がガラリと変貌していた。腕や足、胸部や背中に至る全身のあらゆる箇所に、まるで鎧や防具を連想させる黒くて薄い塊に覆われていたのだ。
全身を黒い装甲で覆いつくした風貌に変化している3-DXは、十字路の右側の道路から辺りに乗り捨てられてた車を荒々しく吹き飛ばしながら移動していたが、十字路の手前で立ち往生している一行の存在に気付いてしまう。
「セェェリュゥゥタァァアァァイ…………ッ」
標的と認識されている聖龍隊の名を轟かせる3-DXの雄叫びと威圧に、当人の聖龍隊はもちろん赤塚組も新世代型達も騒然と化す。
と、その時である。3-DXが一行の存在に気付き、襲撃しようと足を進ませようとした矢先、3-DXの背中に何かの金属が突き刺さっているのが一行の方から視認できた。
「あれは……っ」
3-DXの背中に突き刺さる金属に見取れるメタルバード、だが同時に3-DXの自身の背中に突き刺さっている金属に気付いた。すると3-DXは背中に突き刺さっている金属を自ら強引に引き抜き、それを前方へと投げ捨てる。目の前に放られた金属に一行が目を向けてみると、それは自動車後部に取り付けられているワイパーと呼ばれる部品であり、しかもナンバープレートが付いたままの状態だった。
目の前に放られたナンバープレートを見て、メタルバードが表情を一変させた。
「こ、コイツは……ッ」「! どうしたんだ、バーンズ?」
表情が一変したメタルバードを見て大将が驚きながらも訊ねると、メタルバードは口を開いた。
「このナンバープレート……聖龍隊の軍用車両のものだ!」
「な、なにっ!? そいつは、どういうこったバーンズ!」
3-DXに突き刺さっていた車のナンバープレートが聖龍隊が所有する軍用車両のものだと聞いて、新世代型たちと共に驚愕する大将が問い返すとメタルバードは血相を変えて言った。
「分かったぞ、地下の秘密施設と繋がってたビルの前に待機させていた支援部隊を壊滅させたのは……3-DXだ! 聖龍隊を象徴する魔鳥のシンボルが描かれてた車両を見て、3-DXはすぐさま待機していた部隊が聖龍隊だと認識して襲撃しやがったんだ!!」
「マジかよ……!」
地下の研究施設で保護した新世代型たちを護送すると同時に増援として要請していた聖龍隊の支援部隊。それを壊滅させたのが3-DXであると、背中に突き刺さっていたナンバープレートを見て推理するメタルバードの話に愕然とする大将や新世代型たち。おそらく背中に突き刺さってたナンバープレートは、待機していた聖龍隊の支援部隊を襲撃した際に背中の肩部分に突き刺さってしまったのであろう。
そんな待機させていた聖龍隊の支援部隊を強靭な戦闘力で壊滅させた3-DXは、突き刺さっていたナンバープレートを引き抜いて捨てると、充血した眼で正面の一行を睨み付けて一気に襲い掛かってきた。
敢然と前を阻む3-DXは、周囲に点在する破棄された車を持ち上げては眼前の一行に向けて投げ飛ばして攻撃してきた。
「ウオオッ」「伏せろッ」
雄たけびを上げながら車を持ち上げる3-DXを見た直後、メタルバードは全員に3-DXの攻撃に備えて自分達の周囲にも在る車の陰に身を伏せるよう呼び掛ける。そして全員が車の陰に隠れた直後、身を潜めている車に3-DXが投げ飛ばした車が激突する。
「クソッ、抗戦だ!」
猛威を振るう3-DXに対抗しようと大将が仲間の赤塚組幹部に攻撃を指示。幹部達は所持している銃火器で3-DXに銃弾の雨を浴びせる。
だが激しい銃弾を一身に浴びせるが、3-DXの身体に張り付いた装甲の様に硬い黒い物体に銃弾が弾かれ、効果がなかった。
「弾が効かない……!」「何なんだ、あの装甲は!? 前には、あんなの無かったぞ!」
銃弾を意図も容易く撥ね返してしまう3-DXの外皮に見られる黒い物体に愕然とする赤塚組のテツに続き、3-DXの全身を覆う黒い装甲が以前には見られなかった事を指摘する山崎貴史。
その戦況を見て、メタルバードはレーダーとなっている眼球で現在の3-DXの状態を事細かく調べ始める。すると3-DXの全身を鎧の様に覆う黒い装甲について驚きの実態が判明した。
「あ、あの装甲みたいな黒いのは…………
「か、かさぶた?!」
メタルバードの一言に驚愕する大将ら周囲の一同を尻目に、メタルバードは続けて説明した。
「そうだ。あの全身を覆う鎧の様な黒い塊は、3-DXの血が外皮で固まって鋼鉄の様に変異した人間でいえば瘡蓋だ!」
「冗談だろッ! カサブタがあそこまで硬くなる訳ないだろ! 銃弾すら弾いちまうんだぞ」
「多分、ここまで来る間に体内のウイルスで肉体が度重なる変異を起こして、それに体が耐えられず出血したんだと思うが、D-ワクチンによる肉体変異は体内の血流を速める効果があるという……それに伴い血小板が固まる能力も高まって、固まった血液は鋼鉄の様に硬く変異して全身を鎧の様に防御する様に自然と進化しちまったんだろう」
驚く大将たちにメタルバードが説くには、度重なる変異で出血を起こした肉体は、血液内の鉄分が相乗効果を生み出して鋼鉄並みの強度を持つ瘡蓋に変異して全身を鎧の様に防御するよう進化したのだと推測する。
そんな銃弾をも弾く黒い瘡蓋の鎧を纏う3-DXは、自身に浴びせられる銃弾の雨を諸共せずに地面を揺らすほどの巨体で抗戦する赤塚組の方へと接近してきた。
「セェリュウゥタァァイ……」「ッ、近寄るな!」
不気味な唸り声を発しながら迫る3-DXを牽制しようと絶えず銃を撃ち続けるアツシら赤塚組。だがそれでも変わらず3-DXは赤塚組に迫り、そして間近まで接近すると丸太の様に太い腕を振り翳し、赤塚組の幹部らを一括して殴り飛ばそうとする。だがその時、赤塚組幹部のミズキがレーザーで迫る3-DXを射ると、銃弾を弾く瘡蓋の装甲を貫通して初めて3-DXに傷を負わせられた。
「ウオオオッ……」
自身の身体を貫通するレーザーに痛みを感じ、思わず怯んだ3-DXは後退してしまう。
だがミズキのレーザーに痛みを覚え、怯んでしまった3-DXはスグに態勢を立て直し、再び巨躯で歩み寄り接近してきた。
「近付けさせるな! あの巨体で殴られたら一溜りもないぞ!」
巨体を誇る3-DXの接近で浴びせられる直接攻撃は危険極まりないと判断したメタルバードは、なるべく接近させないよう距離を取りつつ牽制しながら攻撃していくよう仲間達に告げる。
先ほどのミズキのレーザーによる効果とメタルバードの指示で、聖龍隊はレーザーなど鋼鉄をも貫通できる技や能力で3-DXと抗戦。しかし3-DXは最初のミズキの光線に慣れたのか、自身に浴びせられる数多の技を両腕で顔だけを防御しながら3-DXは歩み寄り着実に戦前と距離を詰めていく。
そしてゆっくりと戦前にちかづいて行った3-DXは腕で防いでいた顔で戦前の面々を見下ろすと同時に、右腕を大きく振り上げて殴打しようとした。
「や、ヤバい……ッ」
剛腕の拳が自分達に降りかかると直感するキリトら聖龍隊が蒼然となったその時、車に身を伏せていた美樹さやかが単身戦前に飛び出し、苛烈に3-DXへと剣を振り翳して斬り付けた。
さやかが3-DXの鋼鉄並みの強度を誇る黒い瘡蓋の装甲を斬り付けると、彼女の迫力に押されてか3-DXは少しばかし退く。が、瘡蓋の装甲を斬り付けた美樹さやかの腕は微弱ながら震えていた。
「っ……か、硬い……」
まるで鉄の板を斬り付けたかのような感覚に美樹さやかは腕が痺れてしまってた。
しかし美樹さやかの斬撃を受けて退いた3-DXは再度態勢を立て直して視界が塞がるほどの巨体を迫らせる。すると接近してからの遠距離攻撃は悪手だと判断した聖龍HEADの魔法騎士、光、海、風の三人もさやかに続くよう3-DXの前に飛び出し各々の剣で強烈な一撃を斬り付ける。
「はぁっ!」
光を先頭に海と風も続けと3-DXを斬り付ける。が、3-DXの身体を防御する瘡蓋の装甲は予想以上に硬いだけでなく厚く、致命的な痛手は与えられない。それどころか、さやかと同様、鉄を斬り付けた感触で三人の手は激しく痺れてしまった。
「っ……本当に鉄みたいに硬いわ」
「まるで、鉄の板を斬り付けたみたいですわ……」
血が固まっただけの瘡蓋の装甲が想像以上の強度を持っていた事に龍咲海と鳳凰寺風は戸惑いを覚える。
すると接近して斬り付けられた3-DXは、間近まで接近して斬り付けてきた者たちを仕留めようと近くにあった車を持ち上げて投げ付けようとした。
『っ!』
美樹さやか、そしてHEADの魔法騎士の三人がそれに気づいた瞬間、3-DXは彼女達をに狙いを定めて持ち上げた車で潰そうとした。その瞬間、メタルバードの電撃砲が3-DXが持ち上げた車に直撃して、車は3-DXの頭上で爆発し吹き飛んだ。爆風を頭部に受けた3-DXは態勢を崩し、またしても退いてしまう。
3-DXが目を晦ましているその間、戦前に飛び出して直接斬りかかりに行った美樹さやかと魔法騎士たちは急いで撤退する。
戦いが思った以上に長引く状況を視感して、メタルバードは何か策はないかと考え始める。
そして改めて戦況を確認してみると、3-DXや自分達の周囲にはいくつもの車が点在しているのが視えた。その中でメタルバードが講じた一件は……
「……全員! 今は3-DXの息の根を止める事よりも、新世代型の身の安全が最優先だ! ここは敢えて完全に殺さず、せめて奴の動きを止める事だけを考えろっ!」
「そ、そんなこと言ったって……そもそも、どうやってアイツを止めるんです!?」
非難を最優先にするため敢えて倒さず動きのみを封じるよう言い渡すメタルバードの考えに対し、猛威を振るい続ける3-DXを如何に止めるのかとデス・ザ・キッドが問い返す。
すると此処でメタルバードは自身が講じた策を皆に伝え始める。
「まずはさくら! フロート(浮)を使って目に付く車を全て浮かばせろ!」
この指示を聞いて木之元桜は一瞬戸惑うものの、言うとおりにフロート(浮)のカードを発動させて周辺の車を全て浮かび上がらせた。
「よし、次は護にナオミ! お前達の念力で浮かび上がった車を全部、3-DXに纏わり付かせろ! その間、俺と同じ風属性の能力者と炎属性の能力者は準備しておけッ」
メタルバードの考えが深く解らない一同であったが、エンディミオンと梅枝ナオミは念力を用いて浮かび上がり地面との摩擦が零となった車体を全て3-DXに纏わり付け始める。
「アアっ、アウッ」
念力で次々と自分に纏わり付く車体に3-DXは強引にもがき始める。
すると此処で能力発動を待機させられている風属性と炎属性の能力者たちの一人、HEADの獅堂光に指示が出た。
「今だ光! 3-DXに向けて緋焔の舞を仕掛けろッ!」
念力で全身に車体が纏わり付く3-DXに向けて強烈な炎の竜巻、
「風属性の隊士! 俺と共に光の
纏わり付いた車体で身動きが取れない3-DXを呑み込む炎の竜巻に強烈な風を送り続けて竜巻を維持しつつ、同時に炎も絶えないよう風が送られる竜巻に更なる炎が送られる。
風と炎を取り込んでいく竜巻はみるみる巨大化し、その竜巻が発する強烈な熱風が周囲に拡散。熱風で上がり続ける温度に汗が滝のように流れ始める大将ら赤塚組と新世代型たち。
そして数分、維持された巨大な炎の竜巻から発せられる高温は鉄をも容易く熔解してしまうほどまで上がり、フロート(浮)と念力によって3-DXに纏わり付いている車体の金属は熔け始めてた。
やがて車体が熔け出した事で、3-DXの全身は熔解した真っ赤な金属で覆われ始める。その間も聖龍隊は絶えず炎と風を竜巻に送り続け、車体の金属を熔解させるほどの高温を維持し続けていくが竜巻の周囲の温度は高まり、その場の全員は体から汗を噴き出す始末。
そして熔け出した車体の金属が完全に3-DXの全身を覆ったのを見計らい、メタルバードは新しい指示を繰り出した。
「炎やめッ。風属性は引き続き、送風……炎属性は後退し、替わって水属性の面子は大量の水を竜巻に向けて放水!」
指示に従い、炎属性の隊士らは手を止め後退し、彼らに替わって今度は水属性の隊士らが炎が消えた竜巻に向けて大量の水を放水。炎が消え、風だけとなった竜巻に水が取り込まれ、炎でなく水の竜巻が3-DXを呑み込んだ。
やがて水の竜巻によって大量の水蒸気が昇る中、熔けた車体の金属は急激に冷やされ、どす黒い金属の塊へと変わり果て3-DXの巨体を完全に覆い尽してしまってた。
「……もういい、放水も止めていいぞ」
炎の竜巻で熱せられ熔けた車体の金属が放水による冷却で固まり、3-DXの全身が覆われたのを視認したメタルバードは仲間に送風と放水を止めるよう指示。
放水が止まり、交差点十字路の中央には体中に付けられた自動車が熔けた事で分厚い金属に覆われた3-DXが目に止まった。
「………………………………」
3-DXを覆い動きを奪う金属は急速に冷却された為に未だ水蒸気を上げる様を見て、大将らは目の前で繰り出されてた炎や風の能力が如何に強力で凄まじいものだったか思い知り、唖然となる。
「……な、なるほど。炎の竜巻で貼り付かせた車を熔かして金属で覆ったところで、水で冷やして固めて完全に動きを封じたって訳か」
メタルバードの考え出した策を理解した大将だが、一方のメタルバードは3-DXの動きを完全に封じたのを確認すると安心せず皆に言い渡す。
「これでしばらくは奴も動けないだろう。3000度を超える炎の竜巻に包まれたってのに、まだ死んじゃいねぇ……。アイツがまた活動を再開する前に、早くこの場から離れよう」
3-DXが己の身体を包み込む金属を打ち破り、再び活動できる前に早々と現場を離れて先を急ぐよう進言するメタルバードの言葉に従い、全員は進行を再開させた。
車体を全身に張り付かせた事で一時的に3-DXの動きを封じた間に、炎と風で自動車を熔解させて液状化した金属に3-DXを覆わせた後、水で熔けた金属を冷却して3-DXを分厚い金属に覆わせて動きを完全に奪うメタルバードの策は成功した。
こうして一行は来襲した3-DXを倒さず、先を急ぐため敢えて動きを封じただけで済ませ、再び足を進ませるのであった。
分厚い金属に覆われ、動きを封じられながらも未だ息のある3-DXをその場に残して。
[再来]
十字路交差点で3-DXを灼熱の竜巻で自家用車を熔解させた金属で覆い包み、身動きを封じた後の事。
「……ぷはっ……いやぁ、すっきりしたぜ」
タイ市街の公共給水所いわゆる水飲み場で、蛇口を捻り冷たい水で顔を洗って涼む大将の姿が確認できる。
大将の周囲には、同じく先ほどの3-DX戦で灼熱の想いをした聖龍隊に赤塚組、そして新世代型たちが体中から湧き出た汗を拭き取り、各々で水分を補給したりと体を涼ませて休めていた。
「ふぅ、しっかし何も車を貼り付けた所に劫火の竜巻を浴びせて車を熔かし、金属の膜で覆い被せて動きを封じなくても……他にも手があったんじゃねぇか?」
水で顔を洗い冷やした大将は防弾チョッキを脱ぎ、その下に着込んでいる汗でずぶ濡れのシャツを脱ぐと、そのずぶ濡れのシャツを手で力いっぱい染み込んだ大量の汗を絞り出しながら、先ほどの策についてメタルバードに問い掛ける。
「オレだって急いで考えて出した策さ。あの場合は、とにかく戦闘を避けて新世代型たちの身の安全を優先させなきゃならなかった……そこで完全に息の根を奪うより、一時的に動きだけを封じられるよう車を熔かして金属の膜で封じ込める策にしたって訳さ」
先ほどの策で大変暑がり汗まみれになった皆とは正反対に、全く暑がる様子も見せないメタルバードは急な対応で必死に策を講じた末での対処だったと述べる。
「それにしても……テメェはいっくら暑くても、体が金属だから汗一つ掻かなくて良いよな」
変身時は体の隅々まで完全に金属化できる為に汗を全く掻かないメタルバードに大将が羨ましそうに言うと、メタルバードはドヤ顔で答えた。
「オレって基本、この姿の時は体内器官を完全にコントロールできるんでね。だから汗も意識一つで掻かない様にもできる訳」
「クッ、羨ましい……」
ドヤ顔のメタルバードの表情に微かな怒りを覚えながらも、体内器官を自制できる彼の身体能力を羨ましく思う大将。
メタルバードと大将が会話している最中、新世代型たちの方も3-DX戦での熱気で溢れ出た汗を拭っていた。
「ふぅ~~……」「………………」
汗を拭う新世代型の井ノ原真人を思慮深い顔で見据える聖龍隊のジュピターキッド。そんなキッドの視線に気付いたのか、真人はキッドに訊ねる。
「……っ、どうしたんです?」
「あ、いや……結構、汗掻いたんだなって……何だか義兄さんのこと思い出して……」
大量に掻いた汗を拭う自分を見据えるジュピターキッドに真人が訊くと、キッドは動揺しながらかつての義兄小田原修司の事を思い出していたと答える。
「って、あれだけ巨大な炎の竜巻が目の前で起きていたら……常人なら汗を掻かないほうが可笑しいですって」
「あ、ああ、そうだね……」
小田原修司が汗っかきという事実を以前から耳にだけは聞いている真人は、先ほど目の前で展開されていた灼熱の状況下でなら誰でも大量に汗を掻くのが普通と返す。それにジュピターキッドは同意を述べるが、その挙動には何処か意味深げな様子が見られた。
そして汗まみれのシャツを絞って少しばかし涼んだ大将は、他の皆も給水したりと休息したのを確認すると号令をかけた。
「よしッ、また前進するぜ!」
大将に続いてメタルバードも先を急ぐため彼に同意する。
「あーー……レイ、聞こえてるか? 今現在の俺らの地点から目的地までの進路は?」
前進に同意するメタルバードは通信で本部と連絡を取り、目的地までの道のりを確認してもらう。
「はい、聞こえています。そこから歩道を進んで、その先の噴水広場を右折してください」
「分かった、噴水だな。また連絡する」
取り敢えず噴水を目印に前進する事を決めたメタルバードは、皆を先導して先に進む。
それからしばらく進んだ一行の前に、メタルバードが目印と決めていた噴水が現れた。
「おっ、あれだな」「あそこを確か右にだったな」
噴水を確認したメタルバードと大将は、背に仲間達を引き連れて前進。
だが、その噴水の周辺と水場に何やら蠢く黒い物体が皆の目に止まる。
「……な、何かいるぞ」
噴水の中や周りの縁の所に止まる、その黒い生物の正体…………近づいてみると、それはカラスだった。
「か、カラスか……なんだ」
蠢く黒い生物に脅えてた瀬名アラタを始めとする新世代型達はホッと胸を撫で下ろす。
だが安心したのも束の間。噴水周辺のカラスは群れており、そのカラス達が噴水広場まで駆け付けた一行へと一斉に顔を向け、紅く怪しい眼光で睨み付けて来た。
「っ!」
紅く殺伐とした眼光を向けてくるカラスの群れに3-DXの時とは逆に背筋が凍り付くキャサリン・ユースら新世代型たち。
「カアカア……カア…………」
怪しい眼光を光らせるカラス達は、まるで獲物を見据える様に続々と一行に視線を向けていく。
そして次第にカラス達は一行の周囲を取り囲むように、彼らの四方周辺に飛び交って広がっていく。
「な、なんなんや、コレ……!」
周辺に群がり、自分達を取り囲み出したカラスの群れに半ば恐怖を覚える新世代型の鳴子章吉。
そんな一行の周囲に集まり出すカラスの異常な紅い眼光と行動を観察して、大将は蒼褪めた面持ちでメタルバードに言う。
「な、なあ……これって、まさかよ……」「ああ、間違いない……」
震える唇で声をかける大将にメタルバードも彼に近い心境で答えた。
「……感染者の肉を喰ったんだ……!」
ウイルスに感染し、ゾンビに成り果てた人間の死肉を啄ばんだ為に同じく感染し凶暴化したのだと険しい表情でメタルバードが言った。次の瞬間……
「カアァーーーー……ッ!」
カラス達は一斉に飛び立ち、群れで襲い掛かってきた。
「うわぁーーーーっ!」
突然のカラスの群れでの襲撃に頭を抱えてその場にしゃがみ込む一行。
「このっ、このーーっ!」
集団で襲ってくるカラスの群れに赤塚組のアツシは銃を乱射してどうにか抗戦しようとする。が、予想以上にカラスの数が多く、頭上を飛び交うカラスを撃ち落とすのは至難の業であった。
上空から来襲してくるカラス達に対抗しようとアツシに続いて赤塚組幹部が射撃を開始するが、既にカラスは数羽でのグループというべき集団を作り、中には5,6羽で一人の人間を襲う惨状が確認された。
「きゃあっ」
カラスの襲撃に遭い、顔や腕をくちばしや爪で引っかかれ痛々しい生傷を負ってしまう九条カレン。
だが聖龍隊は一部隊で襲撃するカラスにも反撃しようと、人単体に群がるカラス達を強引に引き離してから処理していく。
「くっ……数が多い。これじゃ、まるでヒッチコックの『鳥』だな」
「ああ、それはオレも知ってるわ。確かに、この惨状はまさしくソレだな」
多数のカラスに対して荊の鞭で応戦するジュピターキッドは、カラス達の襲撃の様子がまるでヒッチコックの「鳥」の如く凄まじい惨状だと述べると、片手をレーザーに変形させて抗戦するメタルバードも思わず同意してしまう。
「うわあっ……!」
しかし上空のカラスで、地上からの攻撃を掻い潜った個体が人間をくちばしや爪で襲い続けてた。必死でカラス達の攻撃を逃れようと、頭を抱えながら手を振り回し抵抗する仁科カヅキ。だがカラス達は容赦なく地上の面々を攻撃し続ける。
「こなくそッ」
すると此処でメタルバードが右腕を電撃が拡散する特殊な電撃砲に変形させて、付近のカラス達を拡散する電撃で一掃していく。
その後もメタルバードを始めとする聖龍隊や赤塚組の功労で、どうにかウイルスで凶暴化したカラスを全て片付ける事ができた。
「はぁ、はぁ……まさか此処でカラスと一戦するとは思ってなかったわ……」
「昔っからウイルスに感染して人間襲うカラスはいたんだぞ、ジェイク……」
バイオハザードの発端ともいえるアンブレラに所属していた父を持つジェイク・ミューラーの言葉にメタルバードが返す。
一行はどうにかカラスの襲撃をも退かせ、再び足を進ませる。
そして噴水広場から通じる道で右に向かい、直進するとその先はタイの商店街であった。
既に商店街にも人の存在は確認できず、ここも他所と同様、災禍に見舞われた後の光景だけが広がっていた。
「……誰もいないな」「逃げれた奴と、死んだ奴しかいないだろうがな……」
人っ子一人いない商店街の光景に大将が呟くと、メタルバードは非力な市民は逃げ果せられたか襲撃に遭い死んでしまわれた人々のどちらかしかいないであろうと物悲しく答え返した。
そんな生者の気配が感じられない商店街を一行が進もうとした、その時。上空から何かが飛来してくるのを新世代型の真鍋義久が気付いた。
「あ、あれ……」
真鍋が指差す上方へ皆が視線を向ける。すると確かに上空から翼を持った人型らしき物体が何体も視認できた。
「あれは一体……」
翼を持った謎の物体を見て皆の動揺が高まる。すると、その謎の物体が此方へと急接近してきたのだ。
「く、来るぞ」
飛来してくる謎の飛行物体に大将が動揺しながらも皆に呼び掛ける。次第に飛行物体は彼らの方へと確実に接近しつつあった。
そして謎の飛行物体が目視できる程の距離まで接近した時、その物体の異様な容姿に誰もが愕然とした。
「なんだアレ!」
飛行物体の実態、それは全身が不気味に黒く硬い鱗の様な皮膚を持つ人間離れしたゴブリンに近い容姿の怪物であった。その怪物には背中に両翼が生えており、怪物はその両翼で空を飛行していた。
すると上空から接近してきた怪物が接近してきたと思いきや、突如頭上から滑空して襲ってきた。
「うわぁ!」「こ、こいつ等は……!?」
上空から急襲してきた怪物に驚き怯える直枝理樹ら新世代型達を横目に、飛来してきた謎の生物に激しく動揺しながらも赤塚組のテツは銃火器で懸命に応戦し出す。
何体も空から姿を現し襲ってきた生命体に果敢に応戦を展開する聖龍隊と赤塚組。だがこの時、怪物と対峙した双方と新世代型達は衝撃を受ける。
「こ、こいつら……!」
対峙した怪物の形相を見た途端、全員に衝撃が走った。何と怪物たちの顔にホンの僅か、同行している新世代型二次元人達の面影が見受けられたのだ。
「どういう事だ、これは!」「こいつらの顔、まるで……!」
自分達が護送している新世代型達の面影を持つ怪物を相手に、聖龍隊のラビとキリトは格闘しながらも愕然としてしまう。
一方の新世代型達も、自分らの面影を感じさせる顔をしている怪物を目の前に唯々驚くばかりであった。
「何なんだよ、この化け物たち……!」「俺達にクリソツじゃねェか……!」
自分達に酷似している怪物の急襲を回避しながらも、その面影を感じさせる顔立ちに真鍋義久や燃堂力ら新世代型達は驚愕してしまう。
すると怪物たちと交戦しているメタルバードが、戦いながら怪物の正体を察した。
「こいつ等! 間違いない……研究施設で遭遇した新世代型のクローンだ!!」
メタルバードが発した言葉にその場の誰もが衝撃を受ける。地下の研究施設で造り出され、一行と遭遇した新世代型二次元人のクローン、その成れの果てであった。
「ギャアアッ」
ゴブリンに近い容姿と両翼を生やして上空での活動も可能となった新世代クローンは、奇声を上げて地上の面々を襲い続ける。
「きゃあっ!」「く、来るな!」
人間とはかけ離れた牙と鋭い爪で見境なく襲ってくる新世代クローンに能美クドリャフカは逃げ惑い、四宮小次郎は必死に抗う。
襲い掛かる新世代クローンに反撃しようと、ジェイクは所持している銃で新世代クローンを狙撃。だがジェイクの放った弾丸は新世代クローンの腕を貫通し、風穴を開けるも、すぐに穴は塞がってしまう。
「! スグに再生しちまうぞ!」
異形の姿形や飛行可能にまでなった両翼だけでなく、傷も瞬く間に回復してしまう再生力を持つに至った新世代クローン。
驚異の進化を果たした新世代クローンに攻撃し続けるも、彼らの高い再生能力は戦う面々を追い詰めていく。
「クソッ、いくら撃ち抜いたり斬り付けてもスグに再生してキリがねぇぜ! そもそも、なんでこいつ等も此処に居んの!? さっきの3-DXも同じだけどよ……!」
「あの地下の研究施設には、オレ達が通ってきた道以外にも都市郊外の工場と通じている道も多々あった。多分、3-DXもコイツ等もその道を辿って出て来ちまったんだろうよ」
ショットガンで新世代クローンの腕や胸部を撃ち抜くもスグに再生してしまう相手に苦戦を強いられる大将が思わず吐いた疑問に、メタルバードも電撃砲で応戦しながら3-DXやクローンが地上に出てきた理由を推測する。
「うわあっ」
聖龍隊や赤塚組が応戦する渦中で、変わり果てた自分達のクローンに襲い掛かられ逃げ惑う新世代型達。だが彼らの中にも今の苦境を自力で乗り越えようと、纏流子や鬼龍院皐月、そして栗山未来といった者たちも新世代クローンとの戦闘に参加していた。
一方で、その混乱の最中、自分以外の新世代型達の様子を逃げ惑うフリをしながら観察してた斉木楠雄が辺りを確認する。
「うわあっ、うわあッ!」「キシャアッ!」
尋常ならざる形相で襲い来るクローンに恐怖で只管逃げ惑う燃堂力。無二の親友が逃げ惑う有様、そして彼を含む多くの新世代型達が自分らのクローンから逃げ続ける混沌を視認した斉木楠雄は、誰もが自分に気を止めていない現状を確認すると前方から向かってくる新世代クローンに右手を伸ばす。
「グギャッ」
斉木楠雄が新世代クローンに手を向けた瞬間、襲い掛かってくる新世代クローンは派手に吹き飛ばされ、後方の建物に突っ込みガラスを突き破って店内にまで吹き飛ばされてしまった。斉木少年はこの時、誰もが逃げるのに必死で自分に注目しておらず気にも止められていないのを確認した事で、他人には内密にしている自身の超能力で向かってくるクローンを吹き飛ばしたのである。
どんな斬撃や銃撃を受けても、瞬時に再生してしまう新世代クローン。その腕を斬り落としたとしても、やはり腕は再生してしまい完全に元通りに修復されてしまう始末。
誰もが猛襲する新世代クローンを倒す術が見いだせていなかった、まさにその時。偶然にも奴らの弱点が判明した。聖龍HEADのコレクターアイが新世代クローンの片腕を掴み回し、そこにセーラーヴィーナスがチェーンでアイが振り回すクローンの首を斬り付けて攻撃。するとクローンの首は切断され、首と胴体が切り離された瞬間クローンの体は瞬く間に消滅してしまった。
「こ、これって……!」
「そうか……! いくら再生能力が高くても、首を切断されたら生命機能が消える筈だわ!」
首を切断された瞬間に消滅する新世代クローンにセーラーヴィーナスが驚く一方、コレクターアイは新世代クローンが首を切断されれば如何なる再生能力でも修復不可能な上に生命機能が完全に停止すなわち死に絶えて肉体が消滅する事実に気付く。
これを機に、全員が新世代クローンの首を切断して完全に息の根を止めに懸かる。
次々と首を斬り落とされて消滅していく新世代クローン。だが、その光景を目の当たりにする新世代型たちは自分らのクローンという事で複雑な感情を滾らせていた。
「ふんッ、そりゃッ!」
変形させた両腕を用いて新世代クローンと交戦するメタルバードは、左腕の三又槍でクローンの胸を突き刺して動きを止めた直後に右腕の刃で首を一刀両断して完全に息の根を止めてみせる。
そして全ての新世代クローンの首を切断し片付け終わったと思った一同が戦いを止め静まり返る殺伐とした現場を見据える。
と、その時。大将が欠けている存在に気付いた。
「っ? アッコは?」
加賀美あつこことミラーガールの姿が無い事に気付く大将。だが彼女はすぐに見つかった。
「あっ、あそこ!」
セーラーマーズが指差した方には、激しい戦闘の最中で新世代クローンと精肉店に突っ込んでしまい、店内で激しく格闘するミラーガールの姿があった。
「アッコ!」
ミラーガールの姿を確認した大将が急いで彼女の許に駆け付けようとした矢先、精肉店の中でクローンと格闘中のミラーガールに進展があった。
追い詰められた彼女は背後に戦闘の最中に稼働してしまった挽肉製造機の高速回転する刃に挟まれ、前には新世代クローンが彼女に詰め寄る。だがミラーガールは怯まず、クローンが自分に詰め寄ってきた瞬間、クローンの背後に素早く立ち回り高速回転する挽肉製造機の刃にクローンを押し付けた。
「ギュオオオオオ……ッ」
回転刃に引き込まれる新世代クローンは瞬く間に細切れにされ、ミラーガールの顔にはクローンの血肉が大量に飛散した。
そして対峙した新世代クローンを挽肉製造機で片付けたミラーガールは、顔中を血塗れにしながら精肉店の中から出ていき皆の許に合流する。
「あ、アッコ……大丈夫、か……」
血塗れとなったミラーガールに動転しながらも大将が問い掛けると、ミラーガールは平然と「ええ、大丈夫」と受け答えた。
そして慣れた様子でミラーガールは合流すると仲間から渡されたタオルで顔に飛び散った血を拭い取る。
「………………よし、全部片付いたな。だが数的にこれで全部じゃなさそうだ」
戦闘が一段落した現状を確認するメタルバードだが、今さっき自分達を襲った新世代クローンの数が少ない事から、まだクローンの個体が存在している危険性を示唆する。確かに新世代クローンは、誘拐された新世代型達と同数である為まだ個体が健在している可能性がある。
「また別のクローンが襲ってくる前に、先を急ごう」
新たな新世代クローンが再来する前に、早くこの場から去ろうと言う大将の意見に同意し、全員進行を再開する。
[壊れた日常]
突如、上空から滑空して襲撃してきた新世代型二次元人のクローン、通称新世代クローンと激しい攻防を展開した一行。微かな
ようやく首の切断という新世代クローンの致命的な弱点をついて撃破したものの、安心はできなかった。襲来してきた新世代クローンの数が少なかったのだ、まだ多くの新世代型たちの遺伝子から生み出された個体が未だに健在であり来襲してくる可能性を考慮して、一行は急ぎ対策本部まで足を進ませるのであった。
「……よし、敵影なし!」
「油断するな、またさっきみたいに上空からやってくる可能性もあるんだからな」
小銃を構えて前進する赤塚組。曲がり角を曲がった所で、敵であるゾンビや変異体の存在がない事を後方の仲間に伝える幹部のテツだが、頭領の大将は先ほどの新世代クローンの様に上空から襲来する可能性も十分にあると伝える。
そして辺りを警戒しながら銃火器を構える赤塚組を先頭に、一行は市街地を進行していた。
市街地はタイの市民が日常を過ごしていたと思われる名残がいくつも見受けられ、バイオハザードの発生前は変わらない日常が其処に流れていたのだと容易に想像できた。
「全員、気を付けろ。何処から異常化した生物が現れるか分かったもんじゃない」
常に周囲に警戒するよう呼び掛けるメタルバードに、彼に付いて行く聖龍隊も周囲を見渡しながら前進する。
すると一行が通過しようとする道の脇に配置されている看板に新世代型の真鍋義久が喰い付く様に見入ってしまう。
「……キャバ……BAR……」
看板に書かれている文字と艶っぽい色彩に目を奪われる真鍋に、琴浦春香や御舟百合子たちは冷ややかな目を向ける。
と、其処に「はいはーーい、君にはまだ早いよ」と、ジュピターキッドが看板に見入る真鍋の襟を掴んで引き離す。
一方で新世代型も含んで、若い女性陣は思わず見入ってしまう真鍋に冷めた表情で呆れてしまう。
すると看板に見入ってしまってた真鍋にメタルバードが忠告した。
「真鍋、この看板……正確にはニューハーフバーって小さいながらも記されているぞ」
「え、ニューハーフっていうと、つまり……」
「つまり……オネエやオカマバーって事だ」「!!」
メタルバードの告げた事実に衝撃を受ける真鍋義久は、全身の毛穴が見開いた。
そんな衝撃を受けて毛穴が全開する真鍋を尻目に、ジュピターキッドが呆れた顔で言う。
「まあ、タイって世界でも随一のニューハーフ大国って言われてるからね」
ジュピターキッドに続き、再びメタルバードも意味深な表情で述べた。
「修司が言ってたぜ……タイで美女を見かけたら、8割がた男と思え、って」
「はっ、8割も……!?」
メタルバードが公言する、かの小田原修司の言葉に真鍋義久は再度衝撃を受けてしまう。
するとジュピターキッドが、タイが如何にニューハーフ大国に至ったか、その背景を述べ始める。
「元々タイって、韓国とかと同じ様に徴兵制度ってのがあって、一定の年齢に達した男子が強制的に軍に入隊されちゃうんだよね。かつては、それを拒む為に男から女に性転換を受けたって話も聞いているよ。……まあ、性転換で徴兵を免れようとする男子が増えた事からタイの国政は性転換を受けた男子も容赦なく入隊を認可したって言うけどね」
「はぁ……ま、まあ、年頃の男子にとっては青春を謳歌できる時期に軍隊に入隊されるのは辛いでしょうしね」
話を聞いて新世代型の猿田学は、タイの青年達が自分の青春真っ盛りの時期に軍隊への入隊が死ぬほど辛いであろうと察する。
だが、場の皆々がタイの青年たちが青春時代を台無しにされる徴兵制度に抵抗しようと性転換を受けていた事実を知り得た矢先、メタルバードがトンでもない事実を皆に話した。
「まあな……実を言うと昔、修司の提案で日本でも徴兵制度を取り入れて、青年達を鍛え上げようって政策が出た事があったんだよな」
「ッ! つ、つまり……日本の青少年たちも青春を奪われ掛けてたのか!?」
明かされた事実を聞いて驚愕する真鍋ら新世代型達に、メタルバードは話を続けた。
「ああ、ただ無駄に青春を過ごすよりも軍隊で心身を鍛えた方が、国にとっても本人にとっても良い傾向だろうなって事からな。まあ、諸々の事情で施行されはしなかったが」
「そ、それは……どうかと思うけど」
日本に一定年齢の男子を徴兵する制度を組み入れようとしていた修司の考えに賛同できない真鍋であったが、そんな彼と皆々にメタルバードは更なる事実をつき付けた。
「ああ、それと……修司、日本だけでなくアニメタウンにも徴兵制度を取り入れようとしてたんだぜ」
『ッ!!』
日本に留まらずアニメタウンにも徴兵制度を導入しようとしていたという修司の政策に今まで以上の衝撃を受ける真鍋義久と、大将を含む大勢の男性諸君。
「ホントッスか!!?」
若者の青春を奪う徴兵制度をアニメタウンにも導入されようとしていた事実に思わず問い返す真鍋に、ジュピターキッドがその後の経過について語ってくれた。
「ああ、ホントだよ。まあ、これも反対意見が多くて実際は施行されずに保留されたけどね」
コレを聞いて真鍋義久を含む多くの青年が心から安堵し、嬉しさ満面の顔を浮かべる。
『よ、良かった~~……』
保留となり実際に施行されなかった政策に安堵した男子諸君はその場に崩れるように膝を着いて各々申す。
「趣味に恋愛……楽しさいっぱい、夢いっぱいの青春を軍隊で台無しにされずに済んだぁ」
「施行されてなかったら、俺達も軍に強制入隊されてかもしれないしな……」
「反対してくれた人に心からお礼を述べたい……!」
爛漫の青春が奪われたかもしれない政策が施行されてなかった事態に真鍋義久だけでなく同じ新世代型の井ノ原真人に宮沢謙吾らは感激致す。
「……そもそも、タイや韓国の徴兵制度なんか何で取り入れようとしたんだろう……」
如何に小田原修司が日本やアニメタウンに徴兵制度を導入しようと思い至ったのか思う森谷ヒヨリの疑問に、これまたジュピターキッドが答え語った。
「義兄さんは余り、いい青春を過ごせてなかったからね。青春時代そのものを無駄に過ごさせるよりも、愛国心や心身を育む為に導入しようじゃないかって思っちゃった訳」
「まあ、発達障害者だったしね……」
「普通の健常者と違って、余りいい思い出が無かったのかも……」
ジュピターキッドの話を聞いて琴浦春香や御舟百合子は複雑な思いを膨らませる。
と、一定の年齢に達した男子を軍隊に強制入隊させて鍛え上げる徴兵制度が日本だけでなくアニメタウンにも導入されかけた事が過去にあった事を知って皆がそれぞれ様々な心境に至っていると、そんな彼らを見据える怪しい視線が。その見据えるモノは物影から一行を視界に捉えると、次の瞬間一気に距離を縮めて向かってきた。
「っ…………きゃあっ」
最初に気付いたのは、その存在に真っ先に狙われ襲われ掛けた新世代型の棗鈴であった。
しかし彼女に襲い掛かろうとしていた異形のものに、聖龍隊のフェイトが真っ先に反応して素早く撃退して棗鈴を護る。
全員が棗鈴に襲い掛かろうとしていた異形の存在に目を向けてみると、それは一見しても男とも女とも見れる体躯で、俄かには男女の区別が付けづらい異形のゾンビであった。
「こ、このゾンビは……!」
男女の区別が難しい異形のゾンビを始めて目撃する大将たちは、異形のゾンビに取り敢えず発砲して完全に倒す。
だが一体のゾンビを倒した直後、周辺の建物から続々と同じ異形の容姿をしたゾンビが出現し、此方へと歩いてくるのが皆の目に止まる。
「何なんだ、このゾンビは!」「初めて見るタイプだが……とにかく、応戦しろ!」
迫り来る無数の異形のゾンビを前に動揺が高まる堂本海斗らの横で、初見のゾンビ相手に果敢に銃撃を開始する赤塚組。
異形のゾンビが接近する前に、頭部を撃ち抜いて完全に撃破。銃撃を掻い潜り間近まで接近してきた相手には容赦ない斬撃で斬り付けて倒していく一行。
程なくして突如出現した異形のゾンビ全てを撃破した一行は、周辺に転がる男女共に見分けがつかない程の奇形したゾンビの亡骸を改めて観る。
「ほんとにコイツらは何なんだ? 男、いや女……」
「どちらにも見て取れる容姿、いや奇形だな……」
自分達が倒した異形のゾンビの亡骸を見下ろす大将とテツは、面妖な面持ちを浮かべて謎のゾンビを見詰めるばかり。
と。皆々が不可思議なゾンビを見ている中、メタルバードは謎のゾンビについて調べていた。するとゾンビの正体が明らかに……!
「このゾンビ共………………みんな性転換手術を受けた形跡がある!」
「なにっ? それって、どういうことだバーンズ」
メタルバードの調査結果に大将が問い詰めると、メタルバードは事の真相を語った。
「このゾンビ共は、みんな性転換手術を受けて男から女に変わった人間ばかりだ。多分、性転換を行った事で逆転した体内のホルモンバランス……それがウイルスの影響でバランスが著しく崩れた事で、男とも女とも区別が難しいほど体が変異してからゾンビに成り果てちまったんだろう」
驚いた事に今し方自分達を襲ったゾンビは、生前に性転換手術を受けた人間がウイルスの影響で逆転している体内のホルモンバランスが崩れた事で男女とも区別が困難な異形のゾンビに成り果てたものだったのだ。
「……この奇妙なゾンビ、ニューハーフを文字ってハーフィーと補足しておこう」
メタルバードはウイルスに感染した事で体内のホルモンバランスを崩した人間が変異したゾンビを、ハーフィーと命名した。
それから間もなく、一行は倒したハーフィーの亡骸が横たわる道を突き進み、先へと急ぐのであった。
しばらく市街を進むと、先ほどのハーフィー同様これまでにない新しい敵が目の前に出現した。
「うげっ、何だよあの頭!」
聖龍隊のナツ・ドラニグルが思わず叫んでしまったその敵は、頭に芋虫の様な生物がくっ付いた何とも痛々しい姿のゾンビであった。
頭に芋虫をつけた、その敵は人語に近い唸り声を発しながら異形化した手を前に突き出して迫っていた。
「変な奴らだな。コイツらもさっさと片付けちまおうぜ」
眼前に迫る異様な敵を前に、ジェイクは躊躇う事無く発砲、撃退していく。そんなジェイクの言動に続いて他の面々も迫り来る敵を撃ち抜き、斬り付け、悉く薙ぎ倒す。
飛び交う閃光、振られる斬撃、数多の武力が目前の脅威を難なく返り討ちにしてみせる。
と、そんな最中、迫り来る敵を斬り捨てていた聖龍隊のアレン・ウォーカーが何かに気付いた。
「っ、この敵……何だか人の言葉を喋っている様な……」
「あ? 人語を喋るって……」
「確かに何処か言語に近いような……ちょっと音声を調べてみるか」
アレンが発した台詞に仲間の神田ユウが反応すると、同じくアレンの台詞を耳に入れたメタルバードは念の為にとゾンビたちが発する唸り声のような奇声を体内のボイスレコーダーに記録して音声調査をしてみる事に。
目の前で襲い掛かる敵が発する音声を調べるメタルバード。そして驚愕の事実を彼は知ってしまう。
「な……なんてこった……!」
芋虫が頭部に接合した容姿のゾンビ、その唸り声を録音し調査したメタルバードは蒼然とした。
「ど、どうしたんだよバーンズ……」
応戦しながら大将が蒼然とするメタルバードに訊くと、メタルバードは動揺の眼を向けて話した。
「そ、それが……こいつらの声を調べてみたら……ちゃんとした言葉を喋ってやがるんだよっ」
「しゃ、喋ってるって……こいつらが!?」
話を聞いて動揺してしまう大将や周辺の仲間達に、メタルバードは自身が調べた結果を述べた。
「こいつらは単なる感染者じゃねぇ……頭に張り付いている芋虫、あれが人間に寄生して変異させた元凶だが……! 寄生されている連中の声を逆再生してみたら、列記とした言葉なんだ」
メタルバードは自分達に遅い来る敵は、頭に芋虫の様な生物が寄生した人間であり、彼らが発している唸り声のような奇声は実際に逆再生してみると明らかに普通の言語だと述べた。
そしてメタルバードは体内の録音装置で記録した敵の唸り声を逆再生したものを聴かせた。
『……助けて……助けて……っ! っっ……たずけて……助けてぇ!』
逆再生してみた敵の鳴き声は、確かに人間の言語そのものであった。それも悲痛な助けを求めている訴えだった。
自分達を襲う寄生されたゾンビは、微かな自我が未だに残っており苦痛に喘いで今なお助けを求めている現状に誰もが戦慄した。
だが、いくら救済されたとしても既に頭部を寄生されて身体にも変異が現れている人間を救う手立ては残っておらず、聖龍隊と赤塚組は心苦しい思いを振り切り、迫り来る寄生された人々を倒すしか術が無かった。
人間の欲望により、破壊された日常がもたらす狂気に新世代型達は震撼するばかりであった。
[蟲]
数多の異形の敵が蔓延るタイのとある市街地を駆け抜け、ひたすら突き進む一行。
新世代型二次元人の保護を容認してもらう為、目的地である緊急対策本部まで一心不乱にひた走る。
「……何だか、ここいら辺はヤケに死体が多いな」
「そうだな。本当ならゾンビに変異しちまうのが殆どなのに……」
市街地をひたすら突き進む一行の先頭を行く大将とメタルバードの目に映ったのは、何かに蝕まれた様な状態の凄惨な死体がいくつも道脇に転がっていた。
その時。駆け足で進む一行の耳に、何処からともなく耳障りな音が入ってきた。「ッ、なんだ?」最初にその音に気付いたのは、常人離れした聴覚を持つ聖龍隊のゼブラが立ち止まると、彼に続いて他の人々も耳障りな音に気付き始める。
思わず立ち止まり、周辺を見渡し始める一行。耳障りな音は次第に大きくなっていき、着実に此方へと近付きつつあるのが誰の耳にも理解できた。
皆が謎の音に立ち往生してしまっていた、その時。「っ、何あれ?」と、新世代型の
「な……何だ、アレは?」宙を舞いながら蠢く塊に赤塚組のテツが表情を険しくする。
何よりも、その黒い塊が耳障りな音の根源であったのだ。「この音……無数の羽音の様だが」聴覚に捉えられる耳障りな音が、無数の羽音に近いと蠢く塊を見詰めるメタルバードが呟く。
と、皆が遠くで不気味に蠢く黒い塊に見入っていた、その時。黒い塊が無数の羽音を高鳴らせて、一気に此方へと急接近してきた。
「なッ、なんだなんだ……!」突如として自分らの方へ向かってくる黒い塊に驚く大将。
不気味に宙で蠢く黒い塊は、そのまま彼らの方へと急接近。そして眼前まで接近した瞬間、黒い塊の正体が明らかとなった。
「む……虫だ!」
なんと黒い塊の正体は無数の羽虫であった。そして黒い塊の如き羽虫の群集は一気に皆を呑み込んだ。
「うわあっ!」
黒い塊に呑み込まれ、反射的に顔を腕で覆い防ぐ一同。だが黒い塊は彼らを通過せず、そのまま周辺を取り囲む様に黒い渦へと形を変えて全員を包囲してしまう。
「ッ……く、口に虫が……ッ」「っ……!」
新世代型の棗恭介や直枝理樹を始めとする皆々は、口や目に羽虫が入らない様に顔を伏せて隠すしか成す術は無かった。
「む、虫! 虫ィィッ!!」
常人以上に虫が大の苦手である新世代型の斉木楠雄は、普段の冷静沈着な様子とは一変し、自分達を包囲し飲み込む羽虫の群集に恐怖し絶叫してしまう。
そんな誰もが羽虫の群集に包囲され、自由が利かなくなった現状に誰もが立ち往生する中、周囲の現状が気になった新世代型の薙切えりなは静かに顔を上げて塞いでいた瞼を開いてみた。だが彼女の目に飛び込んだのは、周囲の景色ではなかった。
「い……いやあっ! は、ハエ!」
なんとえりなの眼前に映ったのは、彼女の身体に止まるハエの姿。そう、黒い塊を形成する羽虫の正体はハエであったのだ。
皆がハエの群集に纏わり付かれ、思う様にできない現状の最中、ある異変が起き始めてた。
「な、なんだか……首筋とかに違和感が……!」
「うん、でも何も見えない……っ」「肌が何だかピリピリするな」
無数のハエに動きも視界も遮られる中、肌が露出している身体の部分に違和感を覚え始めるモルジアナ/アラジン/アリババの3人。
と、全員がハエの大群に行動を阻まれた上に視界も遮られてしまってる最中、メタルバードは周囲の状況を確認しようと思い切って瞼を開いた。すると丁度、メタルバードの視界に【マギ】の3人が入り、彼らの素肌に集るハエの群集が目に飛び込んだ。しかもハエが集る彼らの皮膚の異常にメタルバードは気付いてしまった。
「! お、お前ら! 肌が……!」
メタルバードの呼び掛けに3人は各々の露出している身体に目を向けてみると、その異常な事態に3人は絶句してしまう。
「ひぃッ!」「は、肌が……!」
「肌が……ハエに喰われてる!?」
アリババ/モルジアナ/アラジンの3人の目に飛び込んだのは、ハエに集られている自分達の素肌が半ば蝕まれたかのように爛れてしまっていて、思わずハエが自分達の肉を貪っているのかと思ってしまう惨状に3人は衝撃を受ける。
一方で自分達に集ってくるハエの大群に反撃が開始されていた。「えいっ!」聖龍隊のドラゴンキッドは、自身から発せられる電撃で周辺のハエを一掃する。
「おりゃああっ!」更に佐倉京子も炎を纏った槍を頭上で水平に振り回し、飛び交うハエを巻き込んで一掃。
だがハエの大群は一向に減る様子が見られない。
しかもハエによる予想外の事態は、これだけではなかった。
「う、うわあ……っ」
突然、辺りに響き渡る悲鳴。声の方へ目を向けると、そこには新世代型の速水ヒロに無数のハエが群がり彼の上半身を覆い尽くしてしまってた。
「ひ、ヒロ! くそっ、あっち行け……ッ」
ハエの群集に襲われているヒロを目の当たりにした神浜コウジは急いで彼の許に駆け付けようとするものの、自分の周囲を飛び交うハエの大群に行く手を阻まれ、コウジは必死に周辺のハエを手で振り払って追い払おうとする。
「うぅ……」
その間、速水ヒロはすっかり全身をハエに覆い尽くされ、身動きの取れなくなった彼は堪らずその場に蹲ってしまった。その状景を目撃したメタルバードは颯爽とヒロの許へと駆け付けると、まず彼の顔を覆っているハエの大群を手で振り払って呼吸困難に陥らない様にする。そしてヒロの顔に群がるハエを粗方追い払ったメタルバードは蹲る彼に声をかけた。
「ヒロ、大丈夫か……」
メタルバードの呼び掛けに反応し、伏せていた顔をメタルバードに向けるヒロ。だがメタルバードの目に衝撃の光景が飛び込んだ。
「! ひ、ヒロ……! お前!」
余りの惨状に気が動転したメタルバードは思わず大声を発してしまう。彼の目に飛び込んだ惨状、それはハエを追い払った速水ヒロの顔の面積半分が酷く爛れてしまっていたのだ。
「うぅ……っ」顔が酷く爛れてしまったヒロは、苦痛に喘いでいたのか悲痛な声で呻く。
そんな酷く顔が爛れたヒロを目の当たりにしたメタルバードは、ヒロの症状を治してもらおうと急ぎ彼をナースエンジェルの許まで誘導させた。
「ナースエンジェル! 今すぐ……」
「バーンズ! 今は、このハエをどうにかするのが先よ! コレじゃ何もできないわ……」
ナースエンジェルにヒロの爛れた顔の治療を行ってもらおうとするメタルバードだったが、ナースエンジェルはハエの大群に囲まれている現状を打破するのが先決だと訴え返す。確かに現場には無数のハエが群れを成し、到底治療する余裕すらない状況であった。
「チッ、ヒロ、少し待っててくれ」
メタルバードは傍らのヒロの体勢を低くさせ顔を伏させると、右腕を電撃が拡散する形状の砲口に変形させて自らも周囲を飛び交うハエの撃退に参戦する。メタルバードの変形した右腕から放たれる電撃は、空中で拡散されて広範囲に電撃を撒く事で多くのハエを一掃する事ができた。
そしてメタルバードもハエの撃退に参戦したのも相まって、周辺を飛び交うハエの大群は見る限りその数を激減させていった。
「今だ! ここから離れるぞ!」
急ぎ現場からの撤退を皆に告げるメタルバード。その瞬間、全員が一斉に駆け足でその場を走り抜けてく。
「この、このッ」
メタルバードを始めとする聖龍隊も、執拗に追尾してくるハエの大群を電撃や炎の技で撃墜しながら撤退していった。
その後、一行はどうにか人間に集るハエの大群を振り切り、少し落ち着ける場所で足を休めていた。。
「ひぃ~~……」
「まさかハエに身体を蝕まれるなんて~~……」
「っ~~……」
肌の露出が多いアリババ/アラジン/モルジアナの3人は、ハエに集られた為に軽く爛れてしまった身体に思わず涙ぐんでしまう。
一方、そんな3人よりも酷く、しかも顔が爛れてしまった速水ヒロは他の誰よりも症状が悪いという理由で1番最初にナースエンジェルに診てもらってた。
「……よし、今のところはこれで大丈夫と思うけど、定期的に治していきましょう。何度も治療すれば元の綺麗な顔に戻れるわ」
速水ヒロの顔を診察すると同時に自身の治癒能力で治して上げたナースエンジェルは、今後も定期的に治癒する事でヒロの爛れてしまった顔を痕も残らず綺麗に感知できると優しく説明。これにヒロは顔に残っている爛れた箇所に感じられる違和感に苛まれながらも無言で一礼する。
その後もナースエンジェルの診察が行われている最中、メタルバードは先ほど大群で襲撃してきたハエに集られて、身体の皮膚が爛れてしまった面々の症状を見て回った末に一つの推測を立てた。
「あのハエ……どうやら肉を腐敗、いや溶かしちまう唾液を分泌しちまってたんだろう」
「おいおい。腐った肉に集るハエが、まさか人間様を溶かしちまうツバなんか出しちまうとは……恐ろしいぜ」
傍らでメタルバードの話を聞いていた大将は、人肉をも溶かしてしまう唾液を分泌できるハエの脅威に改めて実感した。
その頃、苦手であるハエの大群に追い回された心労も相まって、新世代型の斉木楠雄は他の皆と共に道の脇で腰を下ろして一休みしていた。が、腰を下ろしていた斉木の地に着けていた手に何か得体の知れない感触が走った。
「!」先ほどのハエの大群といい、自分が苦手な虫に襲われた直後の斉木は自身の手の甲に伝う動く感触に背筋が震え上がるほど敏感になっていた。
そして斉木は恐る恐る、何かが伝う己の手に目を向けた……その瞬間「うぎゃああぁあッ!!」一息入れて、静まり返っていた場の空気を切り裂く程の絶叫が斉木の口から飛び出した。
「な、なんだ!?」
突然の斉木の尋常ならざる悲鳴に近くで休んでいた真鍋義久らが何事かと驚き、慌てて斉木の許へと駆け寄った。
「ど、どうしたんです!?」
尋常でない叫び声を発した斉木に御舟百合子が心配そうに声をかけると、斉木は震える指で先ほど動転した拍子に飛んでしまった虫を指した。斉木が指し示す彼の前方には、黒光りする1匹の昆虫がいるだけであった。
「……って、何だよ。タダのコオロギじゃないか」
先ほど斉木の手の甲を移動し、更には彼が驚いた拍子に目の前の地面に振り落とされたのは単なる黒い光沢を放つ1匹のコオロギであった。
「コオロギって……ゴキブリや今さっきのハエに比べれば可愛いもんじゃないですか」
いつもは冷静沈着な斉木が大声を上げるほどの事態に何事かと焦っていた室戸大智も、害の無いコオロギに飛び上がるほど驚いた斉木の反応に思わず笑ってしまう。
だが斉木は、それでも態度を変えず目の前で活動する1匹のコオロギに対して極端なまでに脅え切り、コオロギが軽く跳ねただけでも身を震わせてしまう。
そんな斉木を見兼ねて、彼と同じくテレパシーを扱える琴浦春香が斉木の目が届かない場所までコオロギを移動させてあげようと、地べたのコオロギを摘むと手の平に乗せた。
「っ! こ、琴浦春香……君は、平気なのか? 虫に触れるだけでなく、それを乗せられるだなんて……!」
黒い光沢を放つコオロギを意図も簡単に摘めただけでなく手の平にも余裕で乗せられる琴浦春香の行動に斉木楠雄は思わず我が目を疑ってしまうが、驚かれた琴浦春香は呆然と斉木楠雄に私情を語った。
「い、いや、その………………私の場合は、逆に解らないから平気って言うか……心が読み取れないからこそ気兼ねなく触れ合えるって感じで……」
「! ……理解できないから怖いんじゃなく、理解できないからこそ触れ合える、か……僕とは正反対だね」
テレパスで人心が読み取れる二人だが、思考が読み取れないから虫に対して敬遠傾向の斉木楠雄に反して、彼とは真逆で過去にテレパスで不遇の思いをしてきたからこそ思考が解らない虫などの生物と気兼ねなく触れ合えるとコオロギを手の平に乗せたまま明言する琴浦春香に斉木は愕然としてしまう。
と、斉木が琴浦春香の真情に驚きを感じていたその時「痛っ!」琴浦春香が手に痛みを感じ思わず声を上げてしまい、同時に手の平に乗せていたコオロギも振り払ってしまった。
「こ、琴浦!? どうした……?」
突然、手に痛みを感じ声を上げた琴浦春香を気にして真鍋義久が声をかける。そして琴浦は真鍋と共に痛みを感じる手の平に目を向けてみると、なんと出血していたのだ。
「な、何があったんだ」「分からない、急に痛くなったと思ったら血が出てて……」
手の平から微量ながらも出血している状況に真鍋が問い詰めるが、当の琴浦も何ゆえ痛みを覚えた上に出血したのか解らなかった。
すると二人は先ほどまで琴浦が手の平に乗せていたコオロギを思い出して、痛みで振り落としてしまったそのコオロギを探し出した。地面をなめずり回す様に見渡した二人は、すぐにコオロギを見つける事ができた。
が、地面にいたコオロギを凝視してみると口元が微かに赤くなっているのに気付いた。更に目を凝らして見てみると、コオロギは微小の肉を口で回しながら器用に貪っていた。
「ひッ!」「お、お肉を食べている……まさか、私の……!?」
微小の肉を頬張っているコオロギを目撃した真鍋は慄き、琴浦は先ほどまで自分が手の平に乗せていたコオロギが肉を食しているのを目の当たりにし、コオロギが口に入れている肉が自分の手の平から食い千切った人肉ではないかと蒼褪める。
と、その時。真鍋と琴浦が彼女の肉を貪っているコオロギに目を奪われていると、琴浦に齧り付いたコオロギの真後ろの草陰から、続々と別個体のコオロギの群れが出てきた。
「ひィッ!」
地を跳ねるオロギの大群に、またしても悲鳴を上げてしまう斉木楠雄。
だが草陰から続々と出現するコオロギの大群は見る見るうちに、その数は激増。遂には黒い絨毯の如く、道路を覆い尽くすほどの大群が皆の目前に広がった。
「な、何だよ、この虫は!」
目の前に続々と出現するコオロギの大群に棗恭介らが不気味に感じ入る、その時。地面を跳ねて移動していたコオロギ達が人間に接近した途端、高く跳び上がると一斉に目前の人間達に群がる様に跳び付いた。
「う、うわぁ!」「く、来るなぁ!」
突如として跳びかかって来たコオロギの大群に、女子達は悲鳴を上げるが、それ以上に斉木楠雄が尋常じゃないほど涙目で絶叫してしまう。
だが真の恐怖は此処からであった。人間に跳び付いたコオロギの大群は、硬い草木を噛み千切れる強靭な顎で跳び付いた人間に齧り付き出したのだ。
「うわっ」「イテテッ、こ、このコオロギ、噛み付いてきやがる……!」
身体に跳び付いたと思いきや、強靭な顎で噛み付いてくるコオロギにタクミ・アルディーニや
突然集団で跳びかかり身体に纏わり付くコオロギの群れに皆が困惑していると、其処に「離れてろッ」と大将がコオロギの大群の前線にいる面々を引かせて、群れ目掛けてショットガンを乱射して散弾を浴びせて撃退してみせる。
大将がコオロギの群れに散弾を浴びせて牽制すると、彼に続いて他の赤塚組も手榴弾などで大群と応戦。さらに聖龍HEADの獅堂光も炎を纏う剣を振るい、迫り来るコオロギの大群を追い払おうと必死になる。
だが大群を形成するコオロギの勢いは留まる事を知らず、数も減る所か益々増えていく一方であった。
「な、なんでコオロギが人間なんか襲うんだ……!?」
「こいつらもウイルスで変異して人間の味を覚えちまったんだろう」
迫り来るコオロギの大群に抗戦しながら大将の疑問にメタルバードが答える。
「それに数が多すぎるぜ……一体どこから湧いて来やがるんだ?」
「タイには食用でコオロギの養殖所兼直売所が至る所にあるからな……多分、そっから湧いてるんだろう」
余りにもコオロギの数が多い事にも疑問を抱く大将に、メタルバードはタイの各所に食用としてコオロギの養殖所がある事実を述べる。
人喰いコオロギの襲撃に必死で抗う中、身体に跳びつくコオロギを振り払いつつ、地面を跳ねて迫るコオロギの群れを迎撃して懸命に抗戦する一同。
やがて一行は大群で迫る人喰いコオロギの襲撃を撃退しながら、命辛々ようやく逃れる事ができた。
「はぁ、ハエに続いてコオロギまで人間様を襲うとは……おっかねぇこった」
散弾銃で迫ってくるコオロギの群れを撃退し続けた大将は、様々な虫が変異して人間を襲う事態に心から衝動していた。
一方、コオロギの大群に襲われて危うく噛み殺されかけた新世代型たちであったが、その中でもひと際恐怖で精神を消耗していた斉木楠雄はすっかり変わってしまってた。
「モウヤダ……オウチ、カエリタイ……ッ」
「あ、あの……斉木が可笑しくなっちゃってるんですけど……」
「心配するな、燃堂。ただ斉木は異常なまでに虫が苦手なだけだ」
変異して凶暴化した虫の大群に襲撃された事で片言になってしまってる斉木を前にして、彼の親友である燃堂力が動揺している所にメタルバードが単に斉木が常人以上に虫に対して恐怖心を持っている事実を述べる。
人肉を溶かした上で腐敗させて食すハエ、人喰いコオロギの大群
集団で飛び交い、襲ってくる昆虫の脅威を目の当たりにした一行
大群という脅威で襲い掛かる蟲の恐怖から逃れた一行だが、まだまだ先行きは長いのであった。
[ゾンビ・エレファント]
数多の蟲からの襲撃に、心を磨り減らす新世代型二次元人たち。彼らを警護しながら、聖龍隊と赤塚組は急ぎ対策本部まで足を駆け、いつの間にか住宅街に侵入していた。
「お、おい……対策本部まで、後どれぐらいだ?」
「もうすぐの筈だ……!」
アジア連合が派遣した特殊部隊、彼らが陣を置く緊急対策本部まで駆け続ける一行の先頭を行く大将とメタルバード。
と、皆が住宅街を進行していた、その時。
前方の右側の民家から轟音が響き、その大きな音に一同は足を止めた。
「な、何だ?」
突如として響き渡る轟音に誰もが驚き足を止めると、轟音に続いて民家の方から何やら凄まじい砂煙が舞い上がる。
そして次の瞬間、更なる轟音が響き渡り、砂煙を上げた民家が一気に崩落。瓦礫と化した民家から大量の砂煙が舞い上がり、一同が進行しようとしていた道路一面に砂煙が拡散。すると道路一面に広がった砂煙の中に、裏手から民家を突き破って破壊した巨大な何らかの影が見て取れた。
「な、何かいるぞ!」
民家の裏手から家屋を破壊し、崩落する民家の舞い上がる砂煙に映る巨大な影に赤塚組のテツはもちろん誰もが警戒を張り詰める。
そして崩落した家屋の瓦礫を蹴散らして、道路一面に舞い広がる砂煙の中から民家を突き破って破壊した巨大な存在が姿を現した。
その巨大な生物の正体は「バオオオォォォ……ッ」巨大な象であった。
「ぞ、象!?」
「ゾウいう事だ」「って、ギャグ言ってる場合か」
頑丈な家屋を突き破って出現した巨象に驚愕する大将ら赤塚組と新世代型達の反面、その傍らでギャグをさらりと言うメタルバードにジュピターキッドがツッコむ。
だが硝煙の中から現れた巨象は、道路を進んでいた一行に気付いたのか、明らかに正気ではない殺気立った眼光を向ける。そして穏やかで大人しそうなイメージの巨象とはかけ離れた血走った様な紅い眼で睨み付けると、巨象は彼らの方へと突進してきたのだ。
「こ、こっちに来る!」
巨象が自分たちの方へ突進してくるのを目の当たりにし、半ば混乱してしまうアツシら一同。
だが巨象が走り出し、自分たちの方へ向かってくるのを目の当たりにした聖龍隊は咄嗟に近くに乗り捨てられている車を持ち上げて移動させては、突進してくる巨象の前に車を置いて突撃を未然に防ぐ。
一方、目の前に車を放られる形で置かれた為に突撃を阻止された巨象は一層興奮してしまい、高らかに咆哮を上げると眼前の皆々に敵意をむき出しにしてしまう。
「バオオオォォ……ッ!」
高らかに咆哮を上げた次の瞬間、巨象は前足を高々と上げると、その前足で一行との間に置かれた障害物の車を踏み付けて強引に突破しようとしてきた。
「わあっ!」
目の前で車を踏み潰して破壊する巨象の猛威に慄く新世代型たち。だが巨象の突破を防ごうと、大将率いる赤塚組は踏み潰した車を乗り越えて此方へ進攻しようとする巨象の真正面に集中射撃。
「バオォ……ッ」真正面からの顔面への集中射撃に巨象も堪らず怯み、後ろへと退いてしまう。
後退する巨象を良く視て見ると、巨象の突き出てる牙は右側のが半ば折れており、大きな片耳は千切れ、更には生々しい傷が灰色の巨体の至る所に見受けられた。
「やっぱりコイツは……!」「ああ、完全にウイルスに侵されてる……」
車の陰から銃を握り締める大将と同じ赤塚組のテツは退かせた巨象の状態を凝視し、巨象がウイルスに感染して暴走しているのを理解する。
だがウイルスで攻撃性と凶暴性が向上した巨象は、その痛々しい生傷だらけの巨体を振るって再び突進してきた。
「近寄らせるな! あの巨体がマトモに突っ込んできたらタダじゃ済まないぞ!」
巨体から繰り出される突進や攻撃を危険視するメタルバードは、成るべく巨象を自分たちの方へ接近させないよう皆に指示を飛ばす。
だが突進してくる巨象に銃器などで集中砲火を浴びせるものの、象本来の分厚い皮が銃撃を和らいでしまっているのか今度は怯むことなく突っ込んでくる。
「み、みんな離れろ! 巻き込まれるっ」
巨象が目の前まで突進してくるのを見て、大将が周囲の面々に呼び掛けつつ急いで防壁に用いていた車から離れる。すると大将を含む戦前で巨象に向かって銃を発射していた面々が身を潜めるのに使ってた車を、突進してきた巨象が難なく蹴り飛ばして突破してしまう。
「げぇ!」「意図も簡単に車を……」
いくら力自慢の象とはいえ、踏み潰されて変形してしまった車を容易く突進の勢いだけで蹴り飛ばしてしまう光景に誰もが衝撃を受ける。
「バオォ、バオオォ……ッ」
一方の巨象は更に興奮してしまったのか、咆哮を発し暴れ回る。
「わあっ!」
暴れ回る巨象に新世代型達は逃げ惑い、逃げ惑う新世代型を尻目に聖龍隊や赤塚組は果敢にゾンビ化した巨象へ攻撃を続ける。
その頃、猛威を振るう巨象と距離を置いていた大将とメタルバードが何気なく話してた。
「なあ、バーンズ。無理にゾンビ化した象を倒すより、撤退して別の道から進んだ方が良いんじゃねェか?」
「ダメだ! 対策本部に行くには、もう此処の道しか残っちゃいねェんだ」
ゾンビ化した巨象との戦闘を避け、別ルートから進行する事を意見する大将。それに対し、メタルバードが言うには対策本部に辿り着けるのは現状の道しか残されてないと訴え返す。
すなわちゾンビ化した巨象を倒す以外、手立てはないのである。
だが大将とメタルバードが議論している間も、凶暴化している巨象は手当たり次第に暴れ回り、目に付く人間を追い回し続けてた。
「ヒーローマン! ゾウを押さえ付けるんだっ」
パートナーのジョーイからの指示を受け、稲妻のロボット:ヒーローマンが暴走する巨象を真正面から受け止め、動きを封じる。しかしウイルスの影響で筋力などの肉体能力が上昇している影響か、圧倒的な力量を誇るヒーローマンを僅かながら押し返し始めた。
巨象に押し返されそうになりながらも懸命に耐えるヒーローマン。だが巨象に押され始めた為にヒーローマンの体勢が若干崩れた、その瞬間、一瞬の隙をついて巨象は体勢が崩れたヒーローマンの胴体を長い鼻で締め付けると、そのまま前方へ投げ飛ばしてしまった。
「バオオッ」「ヒーローマン!」
雄叫びと同時にヒーローマンを鼻で前方に投げ飛ばした巨象に対し、ジョーイは投げ飛ばされた相棒ヒーローマンの許に駆け付ける。
ロボット:ヒーローマンを投げ飛ばした巨象は、力尽くでヒーローマンに押さえ付けられた為か余計に興奮が増して、周囲に展開している聖龍隊の隊士に狙いをつけて猛威をぶつけ出した。
「き、来たよみんな!」
凶暴化した巨象が自分達に敵意を向けた事を伝えるHEADの獅堂光。
そして巨象はリーチの長い鼻を振り回し、太い前足で正面の相手を踏み付けようとしたりと更なる猛威を振るう。
「バオオオ、バオオオォォ……ッ」
殺伐とした眼から鮮血を垂れ流す巨象は、傷だらけの巨体を更に傷つけ周囲の人間達を襲い続ける。
そんな痛々しい容姿に変貌してしまった巨象に僅かながら心を痛めながらも聖龍隊は攻防を展開する。
おそらく此処まで来る間にも人間や建物を攻撃してきた為か、外皮がボロボロの鼻で正面の鳳凰寺風とアスナの両名が構える剣を交えさせる巨象。更に遠距離から巴マミや暁美ほむら、そしてミラールを始めとする銃撃タイプの隊士が巨象に向けて発砲。だが分厚い象皮が銃弾の威力を弱めてしまい効力は薄かった。
と、銃撃を仕掛けてた面々に巨象が気付き、生気の無い眼光を向けて銃撃隊に突進してきた。
「!」
銃撃してた面々は巨象の突進に驚くが、次の瞬間「うおりゃッ」と威勢の良い声でメタルバードが巨象の前に立ち塞がり、瞬時に巨象の長い鼻を掴んで動きを封じようと懸かった。
「総長!」「バーンズ!」
メタルバードを総長と呼ぶ巴マミらに対して呼び捨てにするミラール。だがメタルバードは態度を変えず、彼女らに応答する。
「い、一旦下がれ……コイツは接近して戦うには、ちと危険だ……!」
今にも巨象の強力で振り払われそうになりながも懸命に腰に力を入れて踏ん張るメタルバードに、近くにいたセーラージュピターが駆け寄ろうとした。
「バーンズ、私も……」
「いや! ウイルスに感染している以上、無闇に接触するのは危険だ! 生身のお前は近付くな……」
「だ、だけど……」
自らも巨象を押さえる為に加勢しようとするセーラージュピターに、メタルバードはウイルスに感染してゾンビ化した象に接触するのは危険と判断してセーラージュピターの接近を拒む。しかしセーラージュピターは不測の事態を予期していた。それは……
「う、うわぁ!」
なんと巨象の鼻を捕まえていたメタルバードが、巨象の強力に力負けしてしまい振り飛ばされてしまった。
「てッ」
振り払われ、地面に体を打ち付けられたメタルバードの胸部には巨象の象牙が擦れた痕が見られる。其処にセーラージュピターが駆け寄り呆れた顔で言う。
「やっぱりか……バーンズ、自分が腕力までは思う様に強化できないって時々忘れてない?」
全身を鋼鉄に変化させるだけでなく、機械化させて様々な機器に自由自在に変形できる万能なメタルバードも、自身の筋力を自力で増強させるのには限度があり怪力の相手と力で勝負するのは余り得意では無いのである。
そんなウイルスで凶暴化した巨象と力負けしてしまい投げ飛ばされてしまったメタルバードを尻目に、巨象は未だ周囲の人間達を視認すると一方的に猛威を振るい襲い続けてた。
「バオオ、バオオオォ……ッ」「大人しくしなさいっ!」
暴れ続ける巨象にコレクターユイを始めとしたハルナ/アイの3人は装備しているステッキを変化させて先端から光る電子の網を放出し、連携して電子の網を巨象の正面から被せて何とか動きを封じようと三位一体で懸かる。が、巨体で暴れ回る巨象の動きを封じ続ける事はできなかった。
成す術が見つからない戦況の中、巨象が突然、自分が突き抜けて破壊した家屋の方へ戻っていった。
「あ、アレ? 帰ってくれるのかな……?」
巨象が自分達を襲うのをやめて撤退してくれるのかと不思議に思う新世代型の直枝理樹は心なしか少し安堵する。
だが巨象が自らやって来た方へ退いたと皆が思った、次の瞬間。なんと巨象は向きを反転させ、一行の方へと振り返った。
「な、何する気……?」巨象の動向に注意を光らせる赤塚組幹部のミズキ。
すると振り返った巨象は一気に駆け出し、巨体を唸らせて一行の方へと向かってきたのだ。
「な、何ッ!」「助走をつけた訳か……!」
一旦退いたと思いきや、実は助走をつけてからの突進だったと理解した大将や山崎貴史であったが、既に巨象は目前まで迫っていた。
間近まで迫る巨象の突進を、如何に防ごうか必死に考えを出そうとするメタルバード。すると彼の目に、巨象との戦闘で破損して大量の水が漏れてしまっている消火栓が飛び込んだ。
(これだ!)
破損した消火栓から湧き出るように大量の水が漏れてしまい水浸しの道路を見たメタルバードに策が閃いた。
「聖龍隊! 道路に向けて冷気を放てッ! 道路全体に氷を張らせるんだ!」
メタルバードが突然発した指示に戸惑いを感じつつも、言われたとおり水浸しの道路に向けて聖龍隊は各々強烈な冷気を発射。案の定、大量の水で溢れてる道路は一面凍り付き、氷の膜が形成された。すると突進してきた巨象は道路に張り付いた氷に足を取られ、そのまま勢いよく転倒。激しく地面を揺らす。
「バオオ……ッ」
転倒した巨象は、そのまま氷が張り付いた道路を滑ってしまうが、どうにか一行の戦前で止まってくれた。
「倒れてる今がチャンスだ!」
横向けに倒れる巨象に攻撃の機会を垣間見たメタルバードは、戦前の仲間達に転倒した巨象へ集中攻撃を指示すると同時に自らも攻撃を加える。
「バオッ、バオオォ……」
集中攻撃を一身に受ける巨象は、苦痛に満ちた声を上げながら凍て付く道路の上でもがき続ける。
やがて攻撃を受け続けた巨象の巨体から大量の血が流れ出て、道路に張り付いた氷の氷上を鮮血で紅く染めていく。
「な、なんか可愛そう……」
「だけど、もうゾンビになっちゃってるし、助けようにも手遅れだし……」
苛烈な攻撃を一心に浴び続ける巨象の痛々しい流血の姿と悲痛な鳴き声を目の当たりにし、新世代型のキャサリン・ユースと鹿島ユノは心を痛めた。
だがウイルスに感染して既に死に絶えているにも関わらず、ゾンビ化して活動している象を救う手立てもない現状で、聖龍隊と赤塚組は心を鬼にして巨象に攻撃を集中させる。
そして「バオオオォォ………………ッ」遂に巨象は断末魔を上げて、完全に活動を停止した。
「………………………………」
ゾンビ化していたとはいえ、倒した巨象に居た堪れない心境を感じ入る一同。
しかし此処で立ち止まる事も許されない状況で、メタルバードや大将といった指揮する者は再び先を急ぐため皆を先導して進もうとした。
が、その時。
「っ! 待て! 何か来る!」
最初に巨象が突き破ってきた家屋の方から、巨象とは別の大きな影が出てくるのに気付いたHEADのエンディミオンが声を上げる。
そして一同が、その影に目を向けるとそれは……「パオオォ……」「ぞ、象……? しかも子供……」崩落した民家から出てきたのは、子供の象であった。進行先に現れた小象に誰もが驚きを発した。
姿を見せた小象は弱々しく鳴きながら、力の無い足取りで先ほどの戦闘で倒されたゾンビ化した巨象の方へと歩み寄った。よく見てみれば小象の身体にも生々しい傷が無数にあり、至る所から出血していた。何よりも、小象の目も巨象と同じく血の気が通ってない生気の無い眼であったのだ。
「あの小象……!」
大将や皆が凝視してみると、小象も既にウイルス感染でゾンビ化しているのが一目瞭然であった。
だが小象がゾンビ化しているだけに皆の目が集まっている訳ではなかった。なんと小象が先ほどの戦いで倒されたゾンビの巨象の許に歩み寄ると、自分の鼻で倒された巨象の亡骸を優しく擦り始めたのだ。
「パオオ、パオオォォ……」
既に息絶えゾンビ化してしまっているにも関わらず、小象の生気の無い眼からは何処となく哀愁が漂い、完全に小象が大人の巨象を労わる情景に観えた。しかも小象は倒された巨象が生き返ってほしいのか、何度も頭を擦り付けて巨象を起き上がらせようとする。
巨象の亡骸に寄り添う小象の情景を見て、メタルバードが衝撃の事実に気付いてしまった。
「ッ! あの二頭……まさか、親子?」「っ!?」
メタルバードの一言に周囲の皆も愕然とした。そう倒された巨象は母象で、その後にやって来た小象は母象を追ってきた子供だったのだ。
ゾンビ化つまり既に死んでいたとはいえ母親の亡骸に寄り添う小象の姿は見るも耐え難い情景であり、その場の誰もが心を締め付けられた。
が、その時。母の傍らに寄り添っていた小象が、今まで母象の亡骸にしか意識が向けられてなかったのだが此処で一行の存在に気付いてしまい生気の無い眼をギラリと向けた。
血の通ってない眼で睨み付けるゾンビの小象の眼光に、一同思わず怯んでしまう。
そして最も恐れていた事が。ゾンビ化してる小象が、支配しているウイルスの影響か、はたまた母象を殺された憎しみなのか、一行の方へと向かってきたのだ。
「ッ……!」
完全に小象が自分達を敵視して襲い掛かってくるのを察して大将たちは迎撃体勢に入る。が、先ほどまで母象の亡骸に寄り添っていた小象の心情を思うと戦意が揺らいでしまう。親子共々、ゾンビに成り果てようと互いを思いやる気持ちだけは残っていたのではないかと脳裏で思い悩む。
そんな敵意むき出しで迫ってくるゾンビの小象を迎撃しようにも、誰もが悲しき小象の境遇を思うと攻撃を躊躇ってしまう。
だが、全員が小象への攻撃を躊躇っていた、まさにその時。皆の肩に圧し掛かる重く静寂な空気を吹き消す銃声が辺りに木霊した。
「ッ!」「!」
小象の心情にメタルバードや皆々が感極まり、各々で圧迫する空気を心身で感じ取っていた面々は突如としてそんな重苦しい空気を一掃する銃声が耳の中に響いた事で我に返り、咄嗟に銃声の方へと一斉に顔を向ける。
皆が注目する視線の先には、険しい顔付きで迷う事無く自分達の方へ向かってくる小象に銃を発砲したジェイク・ミューラーの姿があった。
「じぇ……ジェイク……!」
厳つい強面で向かってくるゾンビの小象に発砲するジェイクに、メタルバードはもちろん他の皆々も激しく動揺してしまう。
だがジェイクは一発の銃弾では倒れない小象を視認すると、更に容赦なくゾンビ化した小象に向けて銃を連射。何発もの銃弾を小象にお見舞いする。
皆の動揺を尻目にジェイクは、迷わず、躊躇わず、痛々しい姿に変貌してしまった小象に容赦の無い銃撃を続け、小象は何発もの銃弾を正面から浴びて苦痛に喘ぐ。
「バオォ……」
そして真正面から全身に銃弾を浴びた小象は、悲痛な鳴き声を上げながら横のめりに倒れて完全に動かなくなった。
無情な銃撃を一身に浴びて倒れる小象を目の前にして絶句する皆に対し、ジェイクは眉一つ動かさず冷徹に倒れる小象を見据え続ける。
「お、おいジェイク! お前……」
毅然とした態度で小象を撃ち抜いたジェイクに大将が詰め寄ると、ジェイクは平然と言う
「もう、あの小象はウイルスで死んじまったゾンビだったろ。とっとと楽にさせる為にも殺してやるのが当然だろうが」
「そっ、それはそうかもしれねぇが……!」
平然と言い切ってしまうジェイクの言葉に、大将は何も言い返せなかった。
そして誰もがジェイクの行動と彼に撃ち抜かれて血の海に沈んだ小象の亡骸に愕然とする中、小象を撃ち抜いたばかりのジェイクが何事も無かったかのように「さあ、早く行こうぜ。またウイルスで変異した怪物が現れても可笑しくないんだしな」と、皆に言うと一人で先を歩き出してしまう。そんなジェイクに誰もが唖然と硬直していると、ジェイクは皆を急かした。「ほれっ、早く行こうぜ!」
ジェイクの言い分も最もであり、一同は複雑な心境を抱いたまま歩き出した。
進行を再開した一同は、先ほど自分達で倒した母親象と、ジェイクが毅然と撃ち抜いた小象の亡骸の横を歩いていく。
ゾンビという異質な存在に成り果てていたとはいえ、親子の象の情景を目撃した一同は改めて現状で起きているバイオハザードに憤りを感じ入るのであった。
[地雷]
ゾンビ化した象の親子を心苦しくも撃破した一行は、ようやく目的地である緊急対策本部まで後一歩の所まで辿り着いていた。
「な、なあ! アジア連合の部隊が腰を据えている本部って、もうすぐなんだよな!?」
「もうすぐの筈だ! ここの公道を突き進めば、もう目と鼻の先だ!」
地下の研究施設で保護した新世代型二次元人たちを避難させてもらおうと、アジア連合が派遣した特殊部隊が待機しているバイオハザードに対する緊急対策本部までの道順を訊ねる大将にメタルバードは目前までと答える。
だが、そんな彼らの行く手に、同然の如くゾンビ化した多くの市民が立ちはだかる。
「クソッ、こんなところにまで群がっているのか……!」
ジェイクが目の前で群れを成しているゾンビに向けて発砲しようと銃を構えた、次の瞬間。歩み寄ってくるゾンビの足元で赤く光る配置物に、ゾンビが足で踏み付けた瞬間。
「うわッ!」
突如ゾンビが踏み付けた赤い光を発する配置物が爆発し、爆発の衝撃波と熱風が一行を襲った。
「な、なんだ今のは!?」
突然爆発した物体に驚きと困惑を感じる大将が叫ぶと、その爆発した物体が何なのか瞬時に把握したメタルバードが説明した。
「じ、地雷だ! 地雷が仕掛けられてやがる!!」
「な、何だと!」
メタルバードが発した地雷という単語に大将もその他の一同も驚愕する。
見てみると、辺り一面赤いランプが点灯している地雷が無数に設置されていたのだ。
「くっ、アジア連合の部隊め……こんなモンまで仕掛けているのか」
「ゾンビの侵攻を防ぐためだろう……だが、俺達も立ち止まってはいられない。地雷はランプで設置場所が一目見て判るから、踏まないように気をつけて進めば……」
ゾンビの侵攻防止のために仕掛けられたであろう地雷とはいえ、同時に自分達の進行の妨げにもなっている現状に目を疑う大将に反してメタルバードは設置場所が識別できる事から爆発しないよう注意して進めば問題ないと断言する。
「こんな街中に地雷とは……」「踏んだら、確実にあの世行きだな……」
一応生きた人間が踏まない様にと考慮されているのか、地雷の場所は赤いランプだけでなく直接道路に設置しているため判別し易いのだが、それでも誤って踏んでしまえば間違いなく死亡してしまう地雷を街中に配置する現状に赤塚組のテツとアツシは息を呑む。
と、皆々が道路の至る箇所に設置されている地雷に注意しながら進んでいると、生きた人間である彼らの許に案の定ゾンビと化した民衆やそれに混じってゾンビ犬までも襲ってきた。一行は迫るゾンビやゾンビ犬を悉く迎撃し、どうにか近寄らせまいと健闘する。
「近寄るなッ」
参戦してた新世代型の纏流子が眼前まで迫ってきたゾンビ犬を片太刀バサミで斬り付けて弾き飛ばすが、弾かれたゾンビ犬は彼女達が戦闘を繰り広げている公道に遺棄されている車に叩き付けられ落下するのだが、運悪くその真下に地雷が設置されており斬り付けられたゾンビ犬は地雷に触れてしまった為に辺り一帯を巻き込むほどの爆発が起こった。
「うわあっ!」
吹き荒ぶ爆風に混じり、新世代型達の絶叫が木霊する。
「足元に気を付けろ! まだ残っているみたいだ!」
遺棄された車の陰など、見落としがちな所にも地雷が隠れている現状を皆に忠告するメタルバード。
だが地雷だけでなく、周囲に群がるゾンビにも目を配らせ対処しなければならない戦況に聖龍隊も赤塚組も懸念を張り詰める。
「うおっ! 大勢来やがった!」
何処から湧いて出てきたのか、一気に視界を覆い尽くすほどのゾンビが進行方向に溢れ出てきたのを見て激しく動揺してしまう大将。
すると進行を遮るゾンビの群集を前に、メタルバードが機転を利かせた。
「地雷を利用しろ!」
メタルバードは咄嗟に群がるゾンビの間近に設置されている地雷を狙撃して、地雷を爆発させる。地雷の爆発にゾンビの多くが巻き込まれ、大半が一掃された。
「いつゾンビが踏んで爆発するか分からないよりも、敢えて爆発させてゾンビを一掃させた方が得策だろう」
メタルバードが講じた策にキング・エンディミオンも納得し、ゾンビらが接近する前にその間近に設置されてる地雷を爆発させて、一気にゾンビと地雷の処理を同時に片付ける。
しかし全員が調子よく迫るゾンビを撃破しながら進行していた正にその時。数メートル先でゾンビが地雷に触れてしまったのか突如として爆発が起こり、その衝撃で吹っ飛んだ一台の車が皆の方へと飛んできたのだ。
「危ない!」
爆発の衝撃で飛んでくる車に大して声が飛び交うが、宙に舞った車は容赦なく皆の目前まで迫る。すると其処に、聖龍隊の新人、キリトとシルバー・ロウが二人掛りで眼前に飛来してきた車を叩き切り、激突を寸前で防いだ。
ゾンビの襲撃に加え、いつ爆発してしまうか分からない地雷の恐怖も相まって全員が慎重に歩を進める。
全員が用心深く前へ前へと進行していると、何と皆の視界に公道に遺棄された車の上を跳躍して移動しつつ此方に向かってくる異形の存在が飛び込んだ。それは強靭な生体兵器ハンターであった。
「来やがった! このまま突っ切るぞ!」
車上を跳び越えて一気に攻めてくるハンターに赤塚組は銃器を発砲し、応戦しつつ進行を止めず一気に駆け出す。ハンターは幾度の銃撃と強力な銃撃を受けて、その爬虫類の様な体躯が地に沈んだ。
此処で進行してた面々が、進めば進むほどゾンビと化した人間や犬、そしてハンターなどの強力な生体兵器が目に付くようになっているのに気付いた。
「……おいおい、何だか数が増えてきてねぇか」
進行するほど敵の数が増えてきている現状に大将が懸念を呟く。
すると皆の目の前に、道路に設置された無数の地雷とその先に設けられた幾重の鉄条網などで構成されたバリケードが立ち塞がった。
「お、おい! この地雷の数……それにバリケードもやけに多いぞ!」
目の前に設けられている数々の地雷やバリケードの多さに大将は驚いてしまう。だが反対にメタルバードは今まで以上に数多く設置されている地雷とバリケードを見て逸早く察した。
「一般人の避難所としても設けられている緊急対策本部が近くなってる証拠だ! あと少しの辛抱だ」
新世代型達にあと少しの辛抱と声をかけるメタルバードは、地面に設置されている地雷に気をつけながら接近してくるゾンビを撃退していく。
しかし緊急対策本部の目前まで辿り着いた一行の前に、乗り越えるのが困難なほどの巨大なバリケードが設置されており、進行を遮っていた。
「ッ、おいおい、どうすんだコレ」
目の前を覆うほどの巨大なバリケードの網に手を掛け、困惑する大将。
バリケードの門に目を向けてみると、内側から南京錠でしっかりと閉場されており外部からの進入を完全に防がれてしまってた。
「この先だぜ、アジア連合の部隊が待機している筈の対策本部があるのは」
閉め切られたバリケードの門の先にアジア連合から派遣された特殊部隊が駐在している筈の対策本部があると告げるメタルバード。だが門を通過したくとも、内側から鍵が掛けられていて進入する事ができずにいた。
「どうにかして鍵をぶっ壊しちまおう! 緊急の事態だしよッ」
新世代型たちの身の安全を確保するのが先決と、大将は門を施錠する鍵を外側から破壊して強引に突破しようと言い出す。
しかし大将が強引に事を運ぼうとした矢先、周囲のバリケードに群がっていたゾンビ達が近付いてきた。
「チッ、俺らの肉を欲しがって群がってきやがったか」
「鍵は俺らでどうにかする! お前らは近付いてくるゾンビ共を片付けてくれッ」
新鮮な肉を欲するゾンビが自分達に群がってくるのを見て舌打ちをするメタルバードに、大将は鍵の開錠を強引に突破する間のゾンビの対処を聖龍隊に一任する。
かくして聖龍隊は眼前に迫るゾンビ共を次々に撃破していき、その間赤塚組は外側から強引に内側の鍵を破壊しようと試みる。
そして赤塚組は苦労の末、鍵を破壊した上で門を強引に開門させる事に成功する。
「早く中に入れ! 全員が入ったらすかさず門を塞ぐんだ!」
強引に開門した門から新世代型たちを内部に進入させていく大将は、全員が門を通過したら即座に強引に突破してしまった門を如何なる手段を用いてもゾンビなどの脅威が追ってきたり侵入するのを防ぐ為に門を塞ごうと皆に言う。
そして新世代型達に続いて聖龍隊も門を通過し、最後に赤塚組が後方から侵攻してくるゾンビを迎撃しながらバリケード向こうに進入するのを見計らうと、メタルバードが単身ゾンビが群がる門の前まで歩み寄り、大将らが強引に突破してしまった門を溶接して開場できないようにした。
「これでゾンビ共もしばらくは入ってこれない。早く特殊部隊と合流して、新世代型達も避難させてもらおう」
ゾンビの侵入を一時的に防ぐ為に門を溶接したメタルバード。こうして一行は地下研究施設で保護した新世代型二次元人の避難を特殊部隊に要請するため、急いで部隊の許に向かうのだった。
内部に進入した一行の目の前には、アジア連合が派遣した部隊の物と思われる数多くの軍用車に備品が無数に点在していた。
「ふぅ、ようやく静かになったな。ゾンビがいないだけで此処まで安心できるとは」
視界にゾンビの様な異形が居ないだけの静かな風景に大将は多大な安心感を覚える。
「何はともかく、まずはアジア連合の部隊に新世代型の連中を匿って貰わねぇと」
静かになった現状に浸る事もなく、大将は特殊部隊に市民同様、新世代型たちを安全な場所まで避難させる為にも護送して貰わなければならないと自覚する。
そして皆々は、至る所に点在されてる軍用車の間を通って先を進む。
が、不思議な事に特殊部隊の隊員はもちろん人っ子一人見当たらないのだ。
「……どうしたんだ、これは?」「誰も見当たらないぞ……」
辺りをいくら見渡しても人影すら視認できない静寂な状況に一抹の不安を抱いてしまうメタルバードと赤塚組のテツ。
一行は人影を探索しつつ、軍用車の間を通って前進していく。そんな前進する一行を、遠くからスコープ越しに視認する人物がいた。
「目標、敷地内に侵入しました」
「例の奴らは同行してるか?」
「はい、標的は全てオール・クリア。生存しています」
「よし、作戦開始。排除に懸かれ」「了解」
スコープで一行の動きを逐一遠視しながら無線で会話する人物は、行動に懸かろうと準備する。
その一方で、一行は人影が全く見当たらない避難地帯でもある筈の緊急対策本部の敷地内をひたすら歩き続けてた。
「どうなってやがんだ。もう一般人は安全の為に遠くへ移送されて居なくなってるのは分かるが、軍人まで居なくなってるのは有り得ねェ筈なんだが……」
既に対策本部に避難した一般人は安全のため国外など遠方へ移送されているのは大概理解できるが、市街にゾンビなどの脅威が蔓延る有事が未だ終わってない事態に軍人までも姿を消しているのは可笑しいと薄々察する大将。
ゾンビ侵入を防ぐバリケードの唯一の出入り口である門を突破して、アジア連合の特殊部隊が設けた緊急対策本部その緊急指定避難区域の敷地内に突入した一行が、新世代型二次元人も都市の一般人同様に遠方まで避難させるため移送を委任してもらおうと人の姿を探し回ってた……その時。
新世代型の真鍋義久が軍用車であるジープの横を通過した途端、彼の頭にレーザーサイトが照射された。真鍋の頭にレーザーサイトが照射されるのを見たメタルバードは慌てて彼に飛び掛った。
「伏せろ!」
メタルバードが掛け声と共に真鍋を押し倒した次の瞬間、一発の銃声と同時にライフルの弾丸が真鍋の背後の軍用車に着弾した。もしメタルバードが押し倒さなければ、ライフルの弾丸は確実に真鍋の頭部を貫通していた。
「………………!」
いきなり自分目掛けてライフルの実弾が飛んできた事態に、真鍋は言葉を失い愕然とする。
だが真鍋を狙撃した一発の銃声が合図なのか、周辺から続々と武装した集団が現れる。
「なっ、なんだなんだ!?」
突如出現すると瞬く間に周囲に展開する武装した集団に新世代型の猿田学らは激しく動揺してしまう。
そして出現した武装集団は、構える小銃の銃口を一斉に向けると完全防御の覆面に装着している無線で小さく一言発した。
「
次の瞬間、周囲に展開した武装集団が銃で攻撃してきた。
「うわぁ!」
慌てて軍用車の物陰に駆け込み、身を隠す一行。だが武装集団は攻撃の手を緩めず、小銃を連射しながら少しずつ距離を縮めてきた。
「な、なんだアイツら!」「いきなり撃ってきやがった……!」
突然自分達に向けて銃撃を仕掛けてきた集団に酷く戸惑う赤塚組のアツシに聖龍HEADの堂本海斗。
無数の銃弾が飛び交う中、メタルバードがいきなり銃撃してきた武装集団を再度確認しようと身を隠す軍用車の物陰から顔を覗かせる。すると武装した集団が着衣している戦闘服に縫い付けられてる紋章がメタルバードの目に飛び込み、驚愕させた。
「アレは…………アジア連合のシンボル!?」
「何っ? それじゃ、アイツら……!」
メタルバードが驚きの余り発した一言に傍らの大将は目を丸くする。そして無数の銃弾が飛び交う激しい銃撃戦の中、メタルバードは攻撃してくる武装集団の正体を言い放った。
「アイツら…………アジア連合の特殊部隊だ!!」
[猛攻]
アジア連合の特殊部隊が設けたバイオハザードの緊急対策本部、そして同時に一般人の避難所としての役割も持っていた区域に一行が進入した途端、突如として襲撃してきた武装集団。それは聖龍隊と赤塚組が新世代型二次元人の避難移送を要請しようとしていたアジア連合から派遣された特殊部隊本隊であった。
何ゆえアジア連合の特殊訓練を受けた精鋭が襲撃してくるのが理解に苦しむ一行を尻目に、特殊部隊は銃撃の手を緩めず銃器の引き金を引いたまま距離を縮めていき確実に接近して来ていた。
「な…………なんでアジア連合の部隊が俺達を攻撃するんだ!?」
「お、オレに言われても……っ」
何ゆえ三次元政府のアジア連合が派遣した特殊部隊が自分達に奇襲を仕掛け、襲撃してきたのか困惑する大将がメタルバードに問うが彼はもちろん誰にも状況が呑み込めなかった。
すると先ほどから進行する皆に無線で誘導していた通信士のレイから通話が入るが……
「……何が起こってるんです……? 通信……妨害され…………」
通信士レイからの無線が途切れてしまった。そうやらアジア連合の戦闘部隊が妨害電波を用いて聖龍隊への無線を全て遮断しているらしい。
しかし一方的に銃撃してくるアジア連合の部隊に対して、大将ら赤塚組が反撃に乗り出そうとした。
「コッチも撃ち返すぞ! 反撃開始!」
大将の号令で赤塚組一同は一斉にアジア連合の部隊に反撃し銃撃を開始。赤塚組の銃撃にアジア連合の部隊は軍用車などの物陰に身を潜めて反撃を凌ぐ。だが…………
「やめろッ! 三次元人を殺したら、いや傷付けただけでも
自分たち二次元人を創造した三次元人に下手に抵抗すれば、精神に異常をきたした
そしてメタルバードは赤塚組を制止した直後、体内の機械を用いてアジア連合軍の無線を傍受して彼らの話を聴いてみた。すると。
「攻撃してきました!」
「よし、今より私の権限で奴らを全員、
「了解!」
何やら初老の男性らしき人物が現場の兵士から状況を聞いて、反撃してきた赤塚組を含む一行全員を危険極まりない
「うわっ!」
自分たち目掛けて連射される銃弾の雨に身動きすらできなくなってしまう新世代型達。
そして変身時には全身を機械化してる事で、体内の機械でアジア連合軍の無線を傍受しているメタルバードは、同時に聖龍隊の仲間達が装備している受信機にも自らが傍受するアジア連合軍の無線を送信して彼らの会話を聴取させてた。
「おいおい! コイツら味方じゃなかったのかよ!!」
「その筈だったんだが……!」
聖龍隊が耳元に装着している受信機から漏れるアジア連合軍の会話を耳にしたジェイク・ミューラーは、銃撃を避けようと身を潜めて凌いでいる傍らメタルバードにアジア連合軍が味方側で新世代型たちの保護を任せられる筈だったのではと確認するが、当のメタルバード本人も当初の目論見とは異なり攻撃してくる軍に対して酷く戸惑ってしまってた。
だが問答している暇はもちろん疑問に感じ入る暇もなく、アジア連合軍は銃撃の手を緩めることなく追撃に拍車を掛けてくる。
「ッ、取り敢えず新世代型たちの周りを俺達で囲んで防壁を形成するんだ」
まずはアジア連合の特殊部隊から新世代型達を死守するため、彼らを囲むように聖龍隊と赤塚組は陣営を作り彼らを銃弾から防ごうとする。
そして自分達が防壁となり新世代型たちを護衛する陣が形成されたのを確認したメタルバードは遂に反撃の指示を出した。
「後々、問題にならないよう絶対に殺すなよ! 持っている銃器や足とか急所を狙いつつ、気絶させたりしてこの猛攻を阻止するんだ!」
決して殺めず、銃器などの急所以外の箇所を攻撃して成るべく気絶させる傾向で反撃するようメタルバードは皆に念を押させる。
そして聖龍隊と赤塚組はアジア連合軍へと反撃。彼らが攻撃に使う銃器を狙撃して地面に落とさせる。
「うわっ」「っ!」
手元を攻撃され、思わず銃器を落としてしまう連合軍兵士。
だが迫り来る兵士に攻撃し、銃器を落とさせたり足元を攻撃して転倒させたりしていた矢先、遠くから一行に向けて強力なロケットランチャーを狙撃しようとする兵士の姿をジュピターキッドが目視する。
「させるかッ」
ジュピターキッドは此方に進撃してくる兵士の一人を荊の鞭で捕まえると、その兵士をロケットランチャーを撃とうとしている兵士目掛けて投げ飛ばし、砲撃を阻止しようと図る。
「うおッ」「!」
投げ飛ばされた兵士は砲撃しようとしていた兵士に激突し、双方共に気絶。だが二人が衝突する寸前、ロケットランチャーの引き金が引かれてしまい一発の小型ロケットが飛んできてしまう。
「撃ち落とせ!」
向かってくるロケットに気付いた大将は仲間の赤塚組に呼びかけ、共に飛来してくるロケットを撃ち落とそうと狙撃する。結果、ロケットは空中で被弾し爆破されて皆は難を逃れられた。
その時、一人の兵士が一行を吹き飛ばそうと手榴弾を放り投げようとしているのが確認された。これにウォーターフェアリーは巨大な水の弾を形成して、手榴弾を投げようとする兵士に向けて水の弾を発射。兵士は腹部に巨大な水の弾を受けて、損傷しなかったものの強烈な衝撃を受けた事で思わず昏倒してしまった。しかし此処で思わぬ事態が。なんと兵士が投げようとした手榴弾がピンを抜かれた状態で地面を転がり、あろう事か一行の傍らに駐車されてる軍用車の真下に入り込んでしまった。
「は、離れろ!」
想定外の事態を目の当たりにしたメタルバードは咄嗟に大声で叫んだ。そして皆が一目散に離れていった次の瞬間、車の真下に潜り込んだ手榴弾は爆発し、爆発の勢いで軍用車は真上に跳び上がる様に吹き飛んでしまった。
爆発で吹き飛んだ軍用車が地上に落下した時には、爆発を逃れようと一目散に散った一行はなんと大きく三つの集団に分かれてしまってた。
「くそっ、仲間や他の新世代型と距離が離れちまった」「どうする、バーンズ」
目に映る範囲内とはいえ、他の面々と距離が離れてしまった戦況にメタルバードとジュピターキッドは困惑し問答する。
「……取り敢えず、分散した皆とまた合流できるまで応戦しながら進むんだ」
一瞬悩んだメタルバードは再び全員で移動できる様に、兵士達と応戦しながら進行しつつ皆と合流していく方針を決めた。
だが三つの集団に分かれてしまい、いつもの連携できる仲間と分離されたりと戦力を分断された彼らに連合軍は好機を見逃さず、分断され困惑している彼らに兵士はバズーカを発射。小型ミサイルが一直線に飛来してきた。
「来るぞ! 迎え撃て!」
沢田綱吉ことツナが仲間達に飛んでくるミサイルを迎撃して撃ち落とすよう指示。無事にミサイルは迎撃され空中で爆発したが、ミサイル爆破の粉塵の中から新たに発射された別のミサイルが今度は2発富んできていた。
「間に合わない、伏せろッ」
2発のミサイルを迎撃する時間がないと直感した獄寺隼人は回避するよう呼びかける。そして回避するが、直進するミサイルは後方の軍用車に直撃して爆発。車を大破させた。
更に別の集団の所では、連合軍の兵士らが激しい銃撃を展開すると同時に歩行兵が片手に近接戦闘用の武器である斧を掲げて進撃してきた。
「近寄らせるな!」
斧を片手に歩行してくる兵士の進攻を阻止しようとニュー・スターズ総部隊長フロートが迫撃を開始。兵士の進攻を食い止め様としたが、攻撃された兵士らは接近を諦めて所持していた斧を戦闘に加わっていない新世代型たちの方へ遠投して一矢報いようと試みる。しかしこの攻撃に現状の新世代型たちの中では数少ない戦闘タイプの纏流子が飛んでくる斧を片太刀バサミで振り落とし、阻止した。
「やめろッ! アタシ達は敵じゃない……!!」
「無駄だ、纏流子……! 向こうは我々の話など聞いてはくれまい」
投げ付けられる斧を振り落としてスグ自分達に敵意がない事を呼びかけ相手の連合軍に伝えようとする纏流子に、後ろから
その間も兵士達はマシンガンで激しい銃弾の雨を直射し続けていた。
どうにか銃撃の雨から新世代型たちを護衛しながら、兵士達を殺めないよう細心の注意を懸けて反撃しつつ進行していき、ようやく三つに分断されたグループが一つに合流する事が叶った。
「どうにか合流できたな。で、バーンズ。これからどうする……?」
「とにかく進むしかできねぇ……! 何故こんな事態なのか、兵士を統率している奴に問い詰めねェと……」
合流を果たした一行。連合軍からの容赦のない猛攻に対して今後どうするのかという大将の質問に、メタルバードは何ゆえ連合の特殊部隊が自分達を攻撃するのか確かめる為に兵士を統率している人物に会うため進行するしかないと答えて前進を再開する。
そして連合の特殊部隊から激しい銃器による猛攻を潜り抜けて、一行が前進しようとしたその時だった。
「標的は第一線を突破。第二作戦に移行、生体兵器を投入します」
「許可する」
一行が特殊部隊が指定する戦前を突破したのを視認した兵士が無線で次の作戦への移行を伝えると、おそらく統率していると思われる人物が作戦の移行と実行を許可した。
すると一人の兵士が背負っている機械が発動し、その機械が発動した瞬間どこからともなく無数の羽音が前進する皆の耳に入る。
「この音……まさか……!?」
聞き覚えのある無数の羽音に聖龍HEADのキング・エンディミオンが表情を強張らせる。そして前進していた一行の視界に飛び込んできた群集に誰もが衝撃を受けた。
「アレは……さっきのハエじゃないか!」
なんと一行の視界に飛び込んだ無数の羽音の正体は、先ほど遭遇した際に多大な被害を与えられた攻撃的に変異した人体を腐敗させられるハエの大群であった。人肉を腐敗させられる特殊な唾液を分泌できる様に変異したハエの大群は、驚いた事にしっかりと統率が執れている様に集団で上空を飛び交い、前進していた一行へ襲ってきた。
「ふ、伏せるんだ! なんで変異したハエの大群が……!?」
「まさか…………あのハエ、制御されているのか!?」
凶暴性が向上したハエの大群が何ゆえ今この時に襲撃してくるのが赤塚組の市川一太郎が困惑する傍らで、同じ赤塚組のテツは先ほど襲ってきた大群とは違い統率が成されているハエ達を前にして俄かには信じ難かったが何らかの方法で操作・制御されているのではないかと頭によぎる。
このテツの発言に現場の誰もが騒然となった。
「バカな……! なんでアジア連合の部隊が、生体兵器を制御できる術を得ているんだ!?」
アジア各地のテロを、時には国連軍と共に鎮圧する役目を担ってるアジア連合の特殊部隊がウイルスで変異した生物といった生体兵器を制御した上で思いのままに操作できる術を持っている事実にメタルバードは驚愕する。
何は兎も角、前進するには先ず周辺を飛び交うハエの大群を片付ける必要があった。最初に遭遇したハエの大群同様、ショットガンでの散弾など広範囲に攻撃が拡散される技や武器で応戦しつつハエを撃ち落としていく一行。空中を物凄い速さで飛び交うハエを狙うのは難しかったが、何度も拡散性の技で狙撃する内にハエの数は減少し、遂には大群そのものを撃退させられた。
「よし、次が来る前に進むぞ!」
また新たなハエの大群といった生体兵器が自分達に仕向けられる前に進行する事を推奨する大将。
そして一行は再び駆け足で前進していくが、そんな彼らの前に一目見ただけでも重装備であると明白な兵士がゆったりとした動きで一度に三人も現れて進行を阻む。
「最新鋭の強化装甲だと……!? こんなものまで持ち込んでいたのか!」
前進に隈なく強力な銃撃を防げる分厚い装甲を装着し、更に対戦武器として強力な銃撃が可能なガトリング砲が両手でしっかりと装備され、背中にはそのガトリング砲で連射される大型の銃弾が無数に装填されている弾倉が背負われていた。
そんな強化装甲に身を包み、強力なガトリング砲を携える三人の兵士は目の前の二次元人たちを目で捉えると、ほぼ同時にガトリング砲を連射して攻撃してきた。
「隠れろッ」
強烈な銃撃を連射してきた三人の兵士に、メタルバードは急いで物陰に隠れて苛烈な銃撃を回避するよう呼び掛けた。だが最新鋭の強化装甲に身を包んだ兵士を物陰から撃退しようと赤塚組が発砲するが、分厚い装甲が阻んで並みの銃器では歯が立たなかった。
しかも全員が強化装甲の兵士達に進行を阻まれている最中も、後方から追撃してきた他の兵士達が発砲してきたため、前後に挟まれて身動きできなくなってしまった。
「正面と後方からの進撃を食い止めろ! 正面の強化装甲兵には強力な攻撃で押し返すんだ!」
2方向からの攻撃を防ぎつつ、正面から攻めてくる強化装甲に身を包んだ兵士に対しては強力な攻撃などで押し返しながら戦闘不能に至らせよとメタルバードは現場の仲間達に指示する。
正面から烈火の如くガトリングを連射してくる強化装甲兵に、大将ら赤塚組は強力な銃火器で兵士本人を死なせないように武器であるガトリングを中心に銃撃を開始。だがガトリング砲は思った以上に頑丈で、兵士本体に銃弾が着弾するも分厚い装甲からなる防弾装備に生半可な銃撃は効果が薄かった。
一方で後方から追尾してくる兵士からの攻撃を阻止しようと、彼らが所持する銃器だけを器用に狙撃したり、足元など急所を外して転倒させて戦闘不能に至らせたりして進攻を阻み続ける。
その頃、行く手である正面に阻む強化装甲の兵士と対峙し続ける赤塚組を尻目に、その傍らでは聖龍HEADのコレクターズの三人が何やら自分達が装備している端末を弄っていた。
「……おい、こっちが戦ってる横で、なに変てこな機械なんか弄ってんだ!」
赤塚組と共に正面から攻め続ける強化装甲兵に銃撃しているジェイクが、戦闘に参加せず黙々と腕に装着している機械を操作しているコレクターズの三人に文句を言うと、コレクターユイが文句を言うジェイクに訳を話す。
「あの強化装甲、最新の装備でガトリングなんかの機能はコンピューター端末で制御されている筈なの……! だからハッキングできれば最低でもガトリングの機能だけは停止させられるかもしれない」
連合軍が装備している強化装甲の一部にはコンピューター端末が使用され、そこから上手く遠隔ハッキングできれば武器であるガトリングの機能だけを停止させられる可能性がある事を伝えるユイ。
だがその一方で、連合軍の兵士達は一向に自分達を殺害しない意思を示し続ける相手に対して、戦意むき出しで進撃していた。
「これでも喰らえッ」
進攻してくる兵士らを相手に、赤塚組は閃光手榴弾を投下。小銃を連射しながら進攻していた兵士達は強烈な閃光で目が眩んでしまい思わず足を止めてしまう。だが閃光を免れた兵士はそのまま進攻を続け、半ば近付いた途端に装備していた斧を投げ付けて攻撃してきた。
「このッ」
しかし自分達に投げ付けられてくる斧を、纏流子や栗山未来が自身の得物で素早く弾き落として攻撃を防ぐ。
普通の装備をしている兵士には何とか対応できていたが、行く手を阻む強化装甲の兵士3名には有効な手が施せず、しかも強力なガトリングを連射しながら時おり接近してはガトリングを鈍器に直に殴り掛かろうとまでしてきた。
「クッ、こうなったら……テメェら! ショットガンだ、ショットガンを使え! あの頑丈な装甲なら致命傷には多分ならないだろう。一気に押し返せ!」
生半可な銃撃では一向に怯まず進撃してくる強化装甲に身を包んだ兵士相手に、大将は強力な銃撃であるショットガンの使用を仲間に指揮する。分厚い装甲なら大して致命傷にはならないだろうとの考慮からである。
大将の指示を受けて赤塚組は強化装甲の兵士に向けてショットガンを連射。すると負傷したかは不明であるが、強化装甲兵は強力なショットガンの銃撃に怯んだのか思わず立ち止まって膝を着いてしまう装甲兵。これを見て赤塚組は一気に畳み掛けようと装甲兵に集中攻撃を浴びせる。
しかし強化装甲に身を包んだ兵士はスグに立ち上がり、体勢を立て直すと再び進撃してくる。
「ダメだ! このままじゃ、やられる!」
強力な銃撃で怯ませられるとはいえ、所詮は致命傷を与えない程度の攻撃。そんな攻撃を受け続けてもなお進攻を止めない装甲兵の幾度とない猛攻に次第に押されていく大将たち。
そして強化装甲を纏った重装備の兵士は遂に戦前の間近まで迫った瞬間に、戦っている聖龍隊や赤塚組に護衛されている新世代型達にガトリング砲を向けた。
「!」
新世代型達に攻撃の手が向けられるのを目視した大将も、ガトリング砲を向けられた新世代型達も愕然とし言葉を失くす。
だがその時「このヤロッ」と威勢よくメタルバードが戦前に接近した途端に新世代型達にガトリングを向けて銃撃しようとしていた装甲兵に飛び掛かり、銃撃を寸での処で阻止した。一方の飛び掛れた装甲兵は、突然の事態に困惑してしまい上手く対処できずに動揺してしまうばかり。しかし例え困惑していなくとも、銃身の長いガトリング砲とそれらの重装備で近接戦闘が難しい強化装甲では、掴みかかって来る相手に対処するのは困難である。
するとメタルバードが一人の強化装甲兵に飛び掛るのを間近で見た他の装甲兵2名が、メタルバードにガトリング砲を向けて抗戦しようとする。が、その隙を見逃さなかった赤塚組の頭領である大将は2人のうちの一人に飛び掛かり、直で兵士に殴り掛かる。残った一人の装甲兵は、掴み掛かってからの直接攻撃を仕掛ける場景に唖然としつつも再びガトリング砲を構えて攻撃せんとした。
が、その時「ハッキング、完了!」とコレクターユイの声が。その瞬間、掴み掛かって来たメタルバードと大将にガトリング砲を向けて銃撃を仕掛けようとしていた装甲兵の銃器を始めとする一部の機能が停止してしまった。
「!? じ、銃が……!」
突然使用不能となるガトリング砲に困惑してしまう兵士。その隙を見計らって聖龍HEADの堂本海斗が剣で兵士が持つガトリング砲を斬り付けた。ガトリング砲の砲身は切断され、完全に使用不能となったのを目の当たりにした兵士は激しく戸惑い、その隙に今度は蒼の騎士が兵士に飛び掛かり、その兵士の背後を海斗が掴んで、二人掛りで兵士の体勢を崩した瞬間に強烈な打撃を与えて気絶させた。
一方のメタルバードと大将も、コレクターズによるハッキングでの銃火器機能の停止をついて、強化装甲兵にパンチや電撃などで攻撃して気絶させた。
「正面の敵は片付いた! 進むぞッ」
行く手を阻んでた強化装甲の兵士三人を戦闘不能にすると、大将は皆に前進を呼びかける。
だが最新鋭の強化装甲で武装した兵士を倒した後も、ありとあらゆる方面から兵士が出現し、容赦の無い猛攻を続行する。
「なんで、こんな事が……!」
何ゆえ自分達がアジア連合の兵士に攻撃されなければならないのか、なぜ彼らは自分達を本気で殺そうとしているのか。
多くの疑問が生じる中で、一行は兵士達の猛攻を掻い潜って、ようやく避難区域でもある緊急対策本部の拠点その広場へと辿り着いた。
[混沌の象徴]
アジア連合の特殊部隊からの猛攻を凌ぎ、ようやく拠点である広場へと辿り着いた一行。
広場は大勢の人々が避難できるスペースが確保されており、その場所だけガラリと空き地になっており、その周りを囲む様に様々な銃火器や補充用の弾丸などが積まれた軍用車が至る所に駐車されていた。
「やっと着いたか」「いつのまにか兵士の姿が見えなくなってる……」
ようやく避難場所に到着したものの先ほどまでアジア連合の特殊部隊に猛攻されていた現状から安堵する事もできず、いつの間にか猛襲していた兵士達が姿を眩ましている事に、一行は逆に不安が煽られた。
すると辿り着き、足を止めていた一行の前に一人の初老の男性が立っていた。
「ん、あいつは……」
まるで自分達が辿り着くのを待っていたかのように、ただ此方を見据えて立っている初老の男性に大将が気付く。
そして男性に近付く一行が声をかけてみる。
「あ、貴方は……」「…………」
新世代型の二次元人に声をかけられるが、男性は眉一つ動かさず険しい顔付きで二次元人たちを睨み付ける。
と、皆が自分達を鋭い眼光で見据え続ける初老の男性を見入っている時、男性の顔を見て愕然としていたメタルバードがやっと言葉を発した。
「あんたは…………議長、アジア連合の議長じゃねェか! なんで此処に……!?」
「なにっ?」「!」
目の前の男性がアジア連合のトップである議長だと知り、大将を始め全員が驚いた。
そして黙然と二次元人たちを険しい形相で見据えてたアジア連合議長は閉ざしていた口を開いて語り始めた。
「やあ久しぶりだね、聖龍隊の諸君。まさか君らは兎も角、常人の赤塚組や新世代型までも生存しているとは……驚いたよ」
主にアジア諸国でも活動している聖龍隊とは顔馴染みである議長との対面に、聖龍隊のトップであるHEADは唖然と言葉を失っていた。そんな聖龍HEADを始め、目前の一同に議長は語り続ける。
「その尋常でない戦闘力、いや人間を凌駕する力は健在の様だ。研究施設で幾多の怪物どもと死闘を繰り広げたにも拘らず、全員が生き延びてしまっているとは……」
「! なんでアンタが研究施設の事を……まだアジア連合はもちろん国連にも伝えていない筈だ」
アジア連合はもちろん国際連合にも地下研究施設の事は通達しておらず、現段階では聖龍隊しか知り得てない事実をアジア連合の議長が知っている現状に堂本海斗が驚愕し問い返す。が、議長は答え返さずに淡々と自分のペースで語り続けた。
「君達を根絶やしにする為にも、わざわざ金を積んで恐竜人に依頼して新世代型共を拉致し、そのDNAで強化した生体兵器を大量に製造して君らを潰そうとしたのだが……はぁ、やはり作り物のバケモノは本物の
「ッ! まさか……新世代型を誘拐させ、そのDNAで強力な生体兵器を造っていた黒幕は……!」
アジア連合議長の言葉にキング・エンディミオンを始めとする全員が表情を凍り付かせた。しかし問われた議長はコレに対して素気なく答えた。
「いやいや、私はアジア連合の議長として差し伸べられるだけの手助けだけはしたが、発案したのは別にいる。君ら、ただイタズラに世界を狂わせる異端な存在を消し去る為の計画を私に持ち掛けたのはね」
「なにッ、それはどういう事だ!」
議長としての立場からできる限りの助成をしていただけと述べるだけでなく、自分達が世界を狂わす異端者だと言い切る議長の冷淡な発言に新世代型の
「……かつて君ら二次元人がこの世に現れて以来、世界情勢は著しく乱れ続けてきた。小田原修司という発達障害者が率いる君ら危険な能力を持ち合わせる二次元人の軍隊、聖龍隊に世界は当初警戒していたばかりだった」
「………………」
「……だが君らの存在を懸念してばかりもいられなかった。最初に世界の情勢が今に至るまでに狂い始めたのは、忘れもしない12年前の9月11日……そう、アメリカ同時多発テロ! 全ては、あの時から狂い始めてしまった……!」
世界情勢が今に至るまで狂い始めたのが2001年9月11日のアメリカ同時多発テロだと説く議長の話に、二次元人たちは張り詰めた空気の中で聴いていた。……彼らの周りを連合の特殊部隊兵士が取り囲み始めているのに気付かないまま。そんな現状の中で議長は語り続けた。
「世界情勢は、その一連のテロから全てが変わり出してしまった……当時は国籍も出身も不明だったロシア人でチェルノブイリ出身のドラゴンが率いる革命軍士が活動を始め出し、その他にも多数のテロリストが世界中で猛威を振るい出した! そんな混乱に乗じて、今度は貴様ら二次元人から発生した
「そ、それはそれで良かったんじゃないの?
淡々と語り続ける議長に新世代型の薙切えりなが
「しかしだ! 私達は小田原修司に騙されたのだ……!!」
「修司に騙された……?」
小田原修司に騙されたと言い放つ議長の言葉に、彼とは旧知の間柄である大将は唖然とする。そして議長がその訳を話し始めた。
「そもそも私達が納得した最初の法案には、問題のある二次元人は全て処分する方向で記されていた。しかし……! 正式な法案として連合や国連の議会に提出された書類は改ざんされていた。奴は、小田原修司は……異常が見られる危険な二次元人を、全て処分しない内容の法案とすり替えていたのだ!」
「何だとっ! 修司の奴が、まさか……!」「……!」
連合や国連に提出された法案の内容を記した書類を、未然に小田原修司が一部を改ざんした書類とすり替えて提出していたと告げられて、修司を良く知る大将率いる赤塚組に近年生まれたばかりの新世代型たちは愕然とした。だが、そんな彼らにアジア連合の議長は更に衝撃の事実を語った。
「小田原修司は当初、我々を無理やりに納得させる為に全ての異常が見られた二次元人を殺処分する法案を開示してきた。我々は奴に欺かれ、その法案を可決する方向に動いた。が、それを機に小田原修司は密かに動き出し、当初の法案とは一部が違う書類にすり替えた後に議会で可決させたのだ! 結果、奴の謀略で未だに異常と判断された二次元人どもはブラック・リストという不必要な名簿に記されるだけで、のうのうと生き延びてしまっている……!」
非常に悔しい真情で語る議長の言葉を聞いて、大将率いる赤塚組に新世代型たちは再び愕然とさせられた。
「……おい、待てよ。つまり修司がすり替える前の法案は、今ブラック・リストに記載されている二次元人も死刑される内容だったってのか?」
昔は敵側だったり悪堕ちしてしまったキャラクターが記載されているブラック・リスト。本来は、そのリストに名前を記されて要注意人物として見なされるだけの二次元人までもが殺処分される内容の法案であり、その法案が正式に可決される寸前に小田原修司がブラック・リストを導入した内容に改ざんした書類とすり替えていたのだと知った大将は厳つい形相で議長に問い詰めた。すると議長は興奮した様子で大将たちに怒鳴り返した。
「ああ、その通りだ! 奴の悪知恵に、我々アジア連合の者達も、国連の連中もいっぱい食わされた! 本来なら我々、創造主ともいえる三次元人に危害を加えかねない二次元人は全員皆殺し……いや、処分する目論見だったというのに、小田原修司の奴が余計な手を加えたのだよ!!」
この議長の怒鳴り散らす発言に、ブラック・リストに名を記されている新世代型の森谷ヒヨリ、四宮小次郎、速水ヒロらは、書類がすり替えられていなければ今ごろ自分達は生きてはいなかった事実に愕然とし、顔面蒼白に至ってた。
同じく過去にアニメタウンで反乱軍を結成し、その後も聖龍隊に反旗を翻した故にブラック・リストに自分達の名が記されている赤塚組の方は議長の発言に対して感情を高ぶらせてた。
「つまりなんだ! ……修司が書類をすり替えるなんてヤボな真似していなかったら、俺達はもちろん他のブラック・リストに名が載っちまった二次元人も処分されていたって訳かい!!」
「そうだ! いつ如何なる状況で精神だけでなく肉体にも変化が生じ、我々三次元人に危害を及ぼす二次元人を一掃するために賛成していたというに……小田原修司は下らぬ感情で、改心したフリをしてるだけの
「ッ……!」
二次元人を、いつ心変わりして危害を齎すかもしれないバケモノと言い切る議長の発言に大将は憤りを感じ言葉を呑んだ。
更に議長は二次元人の影響で激変した世界情勢についても感情を高ぶらせて語り続けた。
「貴様ら一般の二次元人どもだけではない………………正体は未だ解らぬが、おそらく貴様らの様に狂った二次元人であるジャッジ・ザ・デーモン! 二次元人がこの世に現れてから、ほぼ同時に姿を現したこの怪物はアジアに留まらず世界各地で多くの虐殺行為を繰り広げた! 私の様な権力者はもちろん、一般の凶悪犯までもその毒牙で容赦なく惨殺してくれた! アジア各国でも奴の残忍な犯行は確認されている」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 正体は解らないって……それじゃ、その何とかデーモンは二次元人じゃないかもしれないじゃない…………」
「黙れ! 内臓を抉り出したり、眼球を突き刺して苦しませて惨殺したりと……こんな凶行、貴様ら二次元人でなければ誰だという!!」
正体が判明していないジャッジ・ザ・デーモンを二次元人だと決め付ける議長の思想に赤塚組の海野なるが否定しようとするが、残忍な殺しをするのは二次元人だと議長は決め付けていた。
全員が議長の一言一句に様々な感情を滾らせていた、その時。感情が高ぶり過ぎた議長は思わず本音を零してしまった。
「そう、ジャッジ・ザ・デーモン……正体が解らずとも、貴様ら二次元人の影響で出現したのは確かだ! 私の出身地区も昔から浸透してたカースト制度、並びに誘拐婚を行っていた若者やその親族一同をデーモンは非情な輩と判断して次々と虐殺していった……! 遂にはカースト制度も誘拐婚も悪辣な習慣と世間から冷遇されて完全に制度は撤廃、誘拐婚も凶悪犯罪と一貫されて一族もろとも国外追放される始末。古からの風習がデーモンのお陰で全て消滅してしまった……!!」
時には名誉殺人という非人道的行為も常習されるカースト制度、及び女性を誘拐して強引に挙式を上げて結婚させる誘拐婚が、ジャッジ・ザ・デーモンの活躍で全て悪習と世間から認識されて今では完全に風化したか消滅してしまったと告白する議長の発言に全員が唖然。そして大将が険しい面立ちで議長を睨み付けた。
「おい、何だよ。さっきから偉そうに言ってやがるが……結局は自分が生まれた地区での悪習を正せられたのを逆恨みしてるだけかッ!」
当初より二次元人の出現で世界情勢が来るってしまい混乱の一途を辿ってると豪語してた議長が、実は自分の出身地区での風習を改めさせられた事から逆恨みしてた事実に大将は怒りをあらわにした。
が、その時。議長を睨み付けて啖呵を切ろうとしていた大将の頭にレーザーサイトが照射され、その紅い閃光に大将自身も気付く。すると大将に続いて周囲の皆々にも、頭はもちろん体中に銃のレーザーサイトが照射され、全員の身動きが封じられてしまった。
全員が標的として捉えられ、身動きを完全に封じられると、彼らの周囲に続々と銃を構えたアジア連合の特殊部隊が隊列を展開して二次元人たちに銃口を向けたまま取り囲んでしまった。更に周辺の軍用車の屋根上などの高所からも、ライフル銃を向けて臨戦態勢を維持する兵士の姿が確認された。
二次元人たちに銃口を向ける兵士達が周辺に展開したのを視認した議長は、それまでの興奮していた情状とは一変し、実に落ち着いた素振りで目前の二次元人たちに対して話を締め括ろうとした。
「さて、思わず興奮して長話してしまったが……ここらでそろそろ終いにしようではないか。私も兵士達も、君らの様な異端な存在を相手にするのは酷だからね」
「………………………………」
議長の冷淡な口調に二次元人たちが息を呑んでいると、議長の穏やかな表情が一変して冷徹な面構えへと変貌した瞬間、議長は冷たい態度で二次元人たちに言った。
「アジア諸国のため、ゆくゆくは全ての世界のため、君たち二次元人は滅んでもらわなければならない…………さらばだ、混沌の象徴よ」
二次元人を、争いや狂乱の根源である混沌の象徴と言い占める議長の発言は、その場の多くの二次元人の心を揺さぶった。
そして彼ら二次元人たちに銃口を向ける兵士達が引き金を引こうとした……その時!
「うっ……ウゥ…………」
突然、アジア連合議長が苦しみ出した。
「! ……?」「ど、どうしたんだ……?」
苦しむ様子を見せ始める議長に、メタルバードと大将はもちろん他の面々も動揺する。
「ぎ、議長! 議長! 大丈夫ですか?」
突如として苦しみ出した議長に、傍らで銃を構えていた兵士達が慌て出す。
「お前ら! 何をしたんだ!」「い、いや、俺達は何も……」
議長の急変に兵士の一人が二次元人たちに銃口を向けて問い質すが、それに大将が自分達は関与していないと弁論しようとするものの……「黙れ! どうせ貴様らが変な能力を使っているんだろッ」と、二次元人の特殊能力で議長を苦しめているのだと思い込んでいる兵士は彼らの弁論を聞き入れてはくれなかった。
二次元人たちと兵士達の間に緊張が走る中、一人苦しみ続ける議長は遂に両肘を地に着けて、右手を胸に押し当てると同時に左手も地に着けて、跪く形で一層苦しんでいた。
「っっ…………!」
体中が燃える様に熱く感じる異常な状態に陥っていた議長は、まるで走馬灯の様に過去の出来事を思い返していた。それは一人の自分より若い男性と対峙していた時の事であった。
「ご、ゴールドマン…………まさか、私にも………………!」
体内から炎が吹き上がる様な灼熱の感覚に襲われる議長は薄れゆく記憶の中で一人の人物と対談した後に、その人物に勧められて健康診断と称して処置室の椅子に座り込んで思わず眠り扱けていた際に、体内に何かを注射された経緯を思い出していた。
そして遂に議長の服が内部から裂き始め、蒸気を発しながら全身にひび割れの様な亀裂が無数に生じると体内から触手の様なものが無数に飛び出てきた。
「うわッ!」
蒸気と共に体内から飛び出てきた触手に、議長の両脇にいた兵士二人は弾かれてしまい、それぞれが左右の軍用車に激突してしまう。
「なッ!」「こ、これは……!!」
全身に生じた亀裂から触手を飛び出させて変異していく議長を目の当たりにし、大将やジェイク・ミューラーを始めとする全員が愕然とする。
「お、おい……コイツは……」
「ああ、間違いない………………強化されたC-ウイルスだ!」
一方で見覚えのある変異にジュピターキッドが衝撃を受けながら問うと、その隣のメタルバードが大声ではっきりと答えた。
アジア連合議長は現場にいるジェイク・ミューラーの遺伝子を用いて強化されたウイルス兵器。通称:強化型C-ウイルスに感染していたのだ!!
[根元]
「ぐああああああぁぁぁああ……!!」
全身から凄まじい蒸気を噴出しながら、ひび割れの様な亀裂を生じて変異していくアジア連合の議長。彼を変異させているのは、過去のバイオテロでジェイク・ミューラーの遺伝子で強化されたC-ウイルスである。
「は、離れろ! どんどん巨大化していく」
議長の変異が巨大化だと認識したメタルバードは、議長の変異に巻き込まれないよう皆をその場から遠ざけようと呼び掛ける。
メタルバードの呼びかけに新世代型たちを含め総員が駆け足で離れていく中、突然の変異を起こした議長を前にした兵士達は混乱するばかりだった。
「うわあっ」「た、退避! 退避ーーッ!」
突然の議長の変異に兵士達は困惑し、騒々しく逃げ出し始める。
アジア連合の特殊部隊兵士の大半が変異した議長に驚いて逃げ出す一方で、変異を起こした議長は全身の亀裂を展開させて、さながら可変式ロボットの様にその体躯を変化させていった。
そして急いで離れた聖龍隊と赤塚組が変異を完全に成し遂げた議長の一変した姿を見上げて愕然とした。
変異した議長の姿。それはまるで巨大肉食恐竜ティラノサウルスの如き体格と巨体であった。
「ウオオオオオオオォォォ………………ッ」
地を揺らすほどの咆哮を発する変わり果てた議長は、その変貌した姿で地上のメタルバードたちを口内の巨大な眼球で見下ろした。
そして凄まじい巨体を歩ませて、目の前の二次元人たちに襲い掛かった。
「来るぞ!」メタルバードの一声で最初の攻撃を共に回避する大将。
ウイルスで議長が変異するという突然の事態に困惑する特殊部隊の兵士が逃げ去っていく中、戦闘経験豊富な赤塚組は近くの軍用車内に積まれてる弾薬や銃火器を拾い上げ、即座にそれらを使用して変異した議長と応戦を開始する。
ここで変異した事で巨大化した議長を改めて見上げたメタルバードとジュピターキッドはその全貌に衝撃が走った。口内の巨大な眼球に、腹部にも見られる複数の眼を持つティラノサウルスの様な凄まじい巨体。それはかつて中国で確認された強化型C-ウイルスで変異したシモンズの形態そのものであった。
「まさか強化型C-ウイルスを、議長が投与していたなんて……!」
「いや、さっきの議長の様子じゃ……多分、知らずにウイルスに感染または投与されていたんだろう」
アジア連合の議長が前もって強化型C-ウイルスを投与していたと推測するジュピターキッドに対し、メタルバードは先ほどの変異する直前の議長の様子から本人の知らない内にウイルスに侵されていたのだと推測する。
すると変貌した議長に見覚えのある様子を示すメタルバードとジュピターキッドに大将が駆け寄り、変異した議長への対抗策を問い掛ける。
「な、なあ! あの巨体、お前達は知っているのか? そんじゃ、どこを攻撃するのが妥当なのか知ってたら教えてくれッ」
大将の問い掛けに、過去に戦闘を経験したメタルバードが受け答えた。
「口ん中のでかい目玉と、腹のところの眼が基本的な弱点だが、普通に身体を攻撃しても通用する。だけど前に戦った個体は、不死身に近いほどタフでいくら攻撃しても中々倒れなかったから、全員注意しろ!」
大将に以前戦った経緯のある個体、人間の名で言えばディレック・C・シモンズが変異していった形態での特徴として、凄まじい程の巨体とそれらを支える圧倒的なタフネスを有しており、不死身と思ってしまうほどの不死性を備えた変異体であると、メタルバードは大将だけでなく他の仲間達にも伝える。
そしてメタルバードより説明を受けた聖龍隊と赤塚組は攻撃を開始。ウイルスで攻撃的な異形に変貌してしまった議長は激しい攻撃に晒される。
しかし主な弱点である腹部の眼に滞りなく砲撃が直撃するものの、変異した議長は圧倒的なタフネスで攻撃を諸ともせず、逆に攻撃してくる地上の面々に反撃しようと巨大な口で噛み付こうとしてきた。
だが以前に聖龍HEADが交戦した事もあるシモンズの変異体と同等の変異を果たした議長との交戦中、HEADはシモンズと議長とでは異なる個所が一点だけある事に気付いた。
それは「ウゥ…………ニ、ニジゲン、ジン……!」議長はダイナソー形態のシモンズとは違い、僅かながら人語を発する事ができていたのだ。だが、ウイルスに肉体を支配されているためか今では完全に二次元人への反感いや憎悪しか抱いていないようだ。
赤塚組の強力な銃器による火力、そして聖龍隊の強烈な能力による攻撃が巨体に浴びせられていく苛烈な戦況の真っただ中で、新世代型たちはミラーガールに安全な場所まで遠ざけてもらっていた。
一方、赤塚組の銃撃と聖龍隊の強烈な能力での攻撃を浴び続ける議長に、双方からの攻撃は余り効果が見られなかった。
「攻撃は効いているのか!? 全然動じないぜ」
巨大化した議長に銃撃を続ける大将に、彼の横で電気の砲撃を放つメタルバードが
「効いてると思うが、攻撃の手を止めるな! あの姿に変異したら、想像以上にタフな体力になっちまうんだよ」
攻撃の効力が目に見えなくとも、ウイルスで変異した影響で想像以上のタフネスを得てしまう為になかなか倒れることがない事実を述べるメタルバード。
すると此処で攻撃を受け続けてた議長が動きを見せ、なんと自分に攻撃してくる戦前の聖龍隊と赤塚組の面々に向かって爆転して上方から尻尾を叩き付ける形で飛び掛かってきたのだ。
「わあっ」「よ、避けろ!」
変異した巨体で思わぬ形で飛び掛かり尻尾を叩き付けてきた議長の攻撃に、戦前で議長を攻撃していた面々は慌ててその場から走り去り回避する。だが着地した議長は即座に間近にある軍用車に噛み付くと、それを銜えて力いっぱい自分に抵抗する聖龍隊と赤塚組の面々に向けて投げ付けてきた。
「わあっ」
飛んでくる車に、ミュウイチゴやセーラームーン達は大慌てで退避する。
「グオオオオオオオオオォォォオオォ………………ッッ」
と、その時。変異した議長は今まで以上に強烈な咆哮を発し、その瞬間議長の周囲に展開して応戦していた面子は皆動けなくなってしまい、一時的に行動不能に陥ってしまった。
しかし強烈な咆哮で動けないのもホンの数秒、その数秒を乗り切り戦士達は即座に議長へと攻撃を再開。また眩いほどの鮮烈な能力での攻撃が空中を飛び交い、変異した議長に浴びせられ続ける。
すると議長の様子が一変。なんと変異した時のように体から蒸気を噴出させると、膨れ上がった巨体が瞬く間に縮んでいき元の人間の形態へと戻った。
「許せん……! 貴様らだけは……!」
全身がひび割れの亀裂だらけの風貌の人間形態へと戻った議長は、ウイルスの支配か攻撃での痛みでか苦しみ喘ぎながらも二次元人への恨み辛みを吐き続ける。
そこにメタルバードが颯爽と駆け付け、人間形態へ戻った議長に駆け寄ると付近の仲間達に叫び掛ける。
「オレが議長を取り押さえる! その間に、みんなは議長に集中攻撃してくれ!」
仲間に呼び掛けたメタルバードは次の瞬間、議長に飛び掛かり彼に跨って動きを押さえると同時に議長の顔を幾度も殴り付けて直接攻撃を仕掛ける。一方、付近の仲間達はメタルバードが議長に跨り彼の顔を殴り付けている最中、メタルバードの全身が鋼鉄に変化しているのを周知している事から躊躇わず攻撃を仕掛けた。仲間の攻撃は鋼鉄のメタルバードには効果がなく、痛手を負うのは彼に殴られ続ける議長のみであった。
しかしメタルバードの直接での打撃と周囲からの攻撃を浴び続けた議長が、再び全身の亀裂から蒸気を噴出させ始めるのを視認したメタルバードは急いで彼から離れると同時に皆にも呼び掛けた。
「離れろッ、また巨大化するぞ!!」
以前にも同様の変異を見せたシモンズと交戦した戦歴があるHEADは、蒸気を噴出させるのが変異の前兆である事を知っているため対処しやすかった。
そして案の定、議長は再びティラノサウルスの如き巨体へと変貌する。
またしても巨体へと変貌した議長に周囲の皆々は攻撃を再開しようと仕掛けようとした矢先、議長はまたもあの咆哮を発して周辺の戦士達の動きを止めてしまう。
「ッ………………!」
強烈な咆哮で動きが止められ、次の一手を思案する大将。その大将の視点に、特殊部隊が寄越した軍用車に給油する為の給油車が目に付いた。
(アレだ!)
先ほど自分達に銃撃してきた特殊部隊が寄越した軍用車の中でもひと際目立つ赤く丸みを帯びた給油車に大将は銃を向ける。
「テメェら、離れろ!!」
給油車を狙う大将は大声で変異した議長の周囲に展開する配下の赤塚組や同盟相手の聖龍隊の面々に呼び掛ける。すると銃を給油車に向けている大将の目論見に逸早く察した配下のミズキが即座に自らも周囲の仲間達に呼び掛ける。
「みんな離れて! 爆発に巻き込まれるわ!」
大将とミズキの呼び掛けを機に、周囲に展開してた戦士達もようやく大将の狙いが何なのか察して変異した議長と給油車から離れる。そして皆が離れたのを確認した大将は、更に狙いをつけている給油車に変異した議長が接近したのを視認すると指をかけてた銃の引き金を引いて発砲。放たれた数発の銃弾は給油車のタンクに直撃し、そして給油車は大爆発。その爆発に巻き込まれた議長は、再び人間形態へと戻ってしまうほどの損傷を受けた。
「おりゃおりゃ! 容赦するな! もう完全に人間じゃなくなっちまってるし、ハチの巣にしちまいな!」
議長が人間形態へと戻ったのを確認した大将は、既に議長がウイルスで変異して取り返しの付かないところまで行ってしまった事実から、攻撃を躊躇わず容赦なく銃撃せよと仲間の赤塚組の面々に伝えながら己も議長へ銃撃を見舞わせる。
しかし圧倒的なタフネスと兼ね備えている凄まじい不死性で、議長は倒れる事無く再び巨体へと変異して猛威を振るうのだった。
雄叫びを発しながら周囲の聖龍隊や赤塚組を無差別に攻撃してくる議長。その中々倒れないタフネスと不死性に業を煮やした赤塚組のテツが、同じ赤塚組の仲間達に指示を出した。
「有りっ丈の弾丸を注げ! ここで倒さなかったら、被害は俺たちだけじゃ済まない……ッ!」
今ここで議長を倒さなければ、自分達だけでなくその他にも被害を与え続けるだろうと推測するテツは、今自分達が所持している弾薬を全て消費しても構わないほど銃撃をより激しくするよう仲間に指示する。
更にここでメタルバードも「給油車だけじゃない! その辺にある爆発物も上手く利用して戦え!」と、周辺にある物を上手く利用して戦況を有利に進ませるよう指示を出していく。
聖龍隊と赤塚組。両勢力は互いに現場に存在するあらゆる弾薬や爆発物を利用しながら、猛襲を仕掛けてくる巨体へと変貌した議長に反撃を続行。しかし多種多様な銃器や特殊能力による攻撃を受けてもなお、議長は付近の二次元人へ敵意を向ける一方であった。
懸命に議長へ攻撃を続行する聖龍隊と赤塚組。その二組に絶えず猛襲し続ける議長は自らに反撃してくる地上の面々を視覚で捉えていたその時、彼の目に新世代型達へ被害が被らないよう奮闘してるミラーガールの姿が入った。
「ウオオオオオオオォォォ……ッ」
ミラーガールを視界に捉えた議長は、怒り狂うかのように強烈な咆哮を天に向けて放った。
「!?」
突然天に向かって咆哮を発する議長に、議長と応戦してた誰もが唖然とする。
その一方で議長は、視界に捉えたミラーガールに向かって巨体を歩ませ、近付いて行った。
「ミラーガール! それに新世代、逃げろ! 総員、変異した議長をミラーガールたちに近付けさせるな!!」
巨体を歩ませて接近していく議長をミラーガールたちに近付けさせまいと、メタルバードは戦闘している仲間達に呼び掛ける。
「グウゥゥ……ッ……ミ、ミラーガァァル……」
すると敵意に満ちた唸り声でミラーガールの名を発する議長。その突然の発言にミラーガール本人も彼女の背後で大人しく戦況を見守る新世代型達も蒼然となった。
そして目前まで迫ろうとしている議長は、おぼろげな意識の中でミラーガールに頭ごなしに言い始める。
「キサマガ…………ソモソモ、貴様ガイタカラ世界ハ狂ッテシマッタノダ……!」
ミラーガールの存在が世界を狂わせたと言い始めた議長の言動に、新世代型達は愕然としミラーガール本人は発言に衝撃を受けてか神妙な顔付きのまま表情を固めてしまった。
更に異様な巨体へと変貌してる議長はミラーガールに強く言い放つ。
「……キサマガ、二次元人ノ始祖タル貴様ガイルカラコソ……! 多クノ気ガ狂ッタ二次元人ドモガ、コンニチマデ大量ニウマレテシマッタノダ……!!」
二次元人の始祖であるミラーガールの存在こそ、今日まで多くの正気ではない二次元人の出生に繋がったと告げる議長の言葉に、ミラーガールは力強くも真意を衝かれたかのような表情のまま固まってしまい、彼女同様に背後の新世代型達も衝撃を受ける。
だが衝撃を受けるミラーガール達に議長は更に責め立てた。
「コノ世ニ多クノ二次元人ヲ……キョウキトコントンヲウミダシタノハ…………キサマダ! ミラーガールゥゥ・・・・・・!! キサマコソガ、キョウキトコントンノ、コンゲンダーーーー……ッ!」
二次元人を狂気と混沌の象徴だと結論付けるだけでなく、そんな二次元人の始祖たるミラーガールを狂気と混沌の根元だと半ば吼え猛る議長の発言に戦場の誰もが愕然とした。
そして議長は全ての鬱憤を洗い浚い吐き散らした後、ミラーガール達の間近まで迫ると更に片言雑じりの言葉で食って掛かる。
「オマエガイナクナレバ……! 二次元人ノ始祖タル貴様ガイナクナレバ、キット多クノ二次元人モ消滅スルハズ……ダカラ、キエロ! ミラーガール……ッ!!」
始祖であるミラーガールを殺めれば、その他の多くの二次元人も同時に消滅すると吐き散らした議長は、その巨大な眼球が存在する口を開いてミラーガール達に迫る。
「……っ!」「いやあっ!」
巨大な眼球が存在する大きな口が目前まで迫り、私怨の対象と捉えられてるミラーガールも彼女が庇う新世代型達も愕然としてしまい動けなかった。
だがその時。ミラーガール達に巨大な口で噛み付こうとする議長の胴体を横から強烈な跳び蹴りを浴びせた人影が二つ。
「ウオオオォ……ッ」
横腹を激しく蹴り付けられ、悶絶しながら著しく体勢を崩した議長はそのままの勢いで吹き飛ばされ転倒してしまう。そしてミラーガール達に噛み付き攻撃を仕掛けようとした議長に、真横から奇襲の如き強烈な蹴りで議長の攻撃を阻止した二名が華麗に地上に着地する。
「ハッ、どうだ! これがハンドレッドパワーの使い道だ、こんにゃろーーめッ! ミラーガールはもちろん、新世代型の子達にも手は出させないぞ!」
「そもそも始祖たるミラーガール……いや加賀美あつこが死んだだけで全ての二次元人が消滅するだなんてタダの噂、都市伝説なんです。彼女一人に何か遭っただけで都合よく僕らが消えて堪るもんですか。それ以前にレディーに手を上げるのは見過ごせませんしね」
威勢よく二人掛りで蹴り飛ばした議長に啖呵を切るワイルドタイガーこと鏑木虎徹、そして冷めた顔で広まってるだけの都市伝説を安易に信じて行動に移した議長を軽蔑の眼差しで見据えるバーナビー・ブルックスjr。
そんな二人が見据える視線の先では、タイガーとバーナビーに蹴り飛ばされて著しく体勢を崩した議長が、崩れた体勢を立て直そうとしていた。それを直視したセーラーマーズが仲間の聖龍隊、それも自身と同じ炎系能力者たちに合図した。
「みんな! 一斉に火炎攻撃開始! いっちょ派手に燃やし尽くしてやりましょう!」
活気よく仲間に呼び掛けたセーラーマーズは激烈な炎技を繰り出して、一直線に議長へと灼熱の炎をお見舞いする。彼女に続いて、同じHEADの獅堂光に炎属性の技が使えるキューティーハニーに木之本桜、更にその他の聖龍隊士であるシャナ、アリババ、沢田綱吉、ナツ・ドラニグル、ファイヤーエンブレム、そして新人の佐倉杏子が巨大化してる議長に向けて一斉に強力な炎を放射して追い込んでいく。
激しい烈火に全身を焼かれて苦しむ議長。更に炎による高温が付近の爆発物に引火し、大爆発してしまった。
業火の如き火炎と爆発による衝撃という二重の強烈な攻撃を喰らった議長は堪らず、その巨体を縮小し元の人間の形態へと戻った。
「この私が……ありえない!」
すると議長が人間形態に戻った途端、大将が駆け寄り、満身創痍の議長に跨ると間髪入れずに顔を何度も連続で殴り付けた。
「アッコを殺すだァ? ……もう一片いってみろ!!」
幼馴染であり初恋の女性であるミラーガールを殺めんとした議長の言動に、大将は我を忘れるほど怒り議長の顔を何度も殴打した。
すると大将に殴られていた議長の全身に生じる亀裂から蒸気が噴き上がるのを視認したメタルバードが駆け寄り、議長を殴り続ける大将を急いで議長から引き離す。
「大将離れろッ! また巨大化するぞッ」
以前にも強化型C-ウイルスで変異したタイプと戦闘を経験したメタルバードたち聖龍HEADは、例え攻撃を受け続けて人間形態に戻っても再び亀裂から展開して変異を繰り返す事実を知っているのだ。
そして大将に殴り続けられてた議長は、身体から噴き上げる凄まじい蒸気の中で再びティラノサウルスの如き巨体へと変異する。だが聖龍隊と赤塚組は戸惑わず、再び巨体に変異した議長へ攻撃を展開する。
様々な能力による何重もの攻撃、それに加えて幾つもの銃撃をウイルスで変異した議長に浴びせていく両勢力。
しかし激しい攻撃を絶えず受け続ける議長は、苛烈な攻撃の苦痛に喘ぎながらまたしても二次元人への怨恨を言い始めた。
「ウゥ……かーすとモ、あじあノイニシエカラノ伝統モ…………フウシュウガスベテ、トダエテシマッタ。オマエタチノセイデ……!」
カースト制度を始めとするアジア諸国に残っていた伝統的風習が途絶えてしまったのは、全て二次元人のせいだと豪語する議長の発言にメタルバードは軽く言い退けた。
「人間の風習ってのは、長い時間の中で勝手に風化して消えちまうもんなんだよ。オレ達を恨むのはお門違いってもんだ」
風習というのは長い時間を得るといづれ風化して自然に消滅してしまうものであり、自分たち二次元人を恨むのは根本から間違っていると伝えるメタルバード。
そして何千発という銃撃と、数多の能力での攻撃を受け続けた議長の様子に変化が見られた。
「ギュオオオオオオオオオオォォォォォ………………ッ」
断末魔を上げる議長は、その変異した巨体を地面に寝そべるよう倒れ込み、完全に活動できなくなった。
議長と交戦してた面子が地面に寝そべる彼に警戒しながら注意深く歩み寄ると、動かなくなった巨体の中から全身をひび割れの様な亀裂で埋め尽くされた人間形態の議長が、排出されるように巨体の中から姿を出現させた。
「うう……っ」
排出された議長は、全身をひび割れた様な亀裂で覆い尽された容姿で弱々しく苦しみに喘いでいた。
二次元人を狂気と混沌の象徴と述べただけでなく、そんな二次元人の始祖であるミラーガールこそ狂気と混沌の根元であると断言したアジア連合議長。
その議長もまた、狂気と混沌を生み出すウイルスに支配され、異形の姿と相成った末に倒れたのであった。
[主催者]
「ううぅ…………っ…………」
強化型C-ウイルスに侵され、ティラノサウルスの如き巨体へと変貌した末に聖龍隊と赤塚組によって暴走を止められたアジア連合議長。だがウイルスによる感染と数多の攻撃を受けた影響で、最早その命は風前の灯であった。
「この野郎、よくも散々好き勝手に言ってくれたな……!」
殆ど二次元人という理由だけで自分達を殺めようとし、好き勝手に罵声を浴びせてきた議長をまた殴り付けようと、気が晴れない大将が掴み掛かろうとした矢先、暴走気味の大将をメタルバードが抑制する。
「待て、もうコイツは虫の息だ。それ以上に、解らない事がある……」
大将の肩を掴んで彼を制止したメタルバードは、気になっている疑問点を既に息も絶え絶えの議長に問い詰めた。
「……おい、話してもらおうか。なんで連合軍が生体兵器を操れる手段を持っていやがるんだ?」
自分たち二次元人を襲撃した事よりも、その襲撃に用いられたウイルスで変化を来たしたハエといった生物を制御し更には操作できる術を何ゆえアジア連合の特殊部隊が持っているのか議長に訊ねるメタルバード。
更にメタルバードは議長に質問攻めを仕掛ける。
「答えろ! お前もアルドウらの一味なのか!? 恐竜人を金で雇って新世代型を誘拐し、全員を地下の研究施設最下層に監禁にして実験体にしていやがった内の一人なのか!!」
新世代型たちが囚われていた地下研究施設の存在を知っていただけでなく、自ら恐竜人を金で雇って新世代型たちの誘拐・拉致に関連してた様な口振りを発した議長を、メタルバードは研究施設を抜け出してスグに対面した旧勢力の軍人アルドウ・ウラジェールの協力者の一人なのかと議長に激しく問い詰める。
するとメタルバードの鋭い目付きと激しい口調での尋問に、議長は苦しみながらも不敵に微笑しながら言い返した。
「はは、ハ……もう、遅い。二次元人の……いや、鬼の遺伝子を組み込まれた新世代型のデータは…………今ごろ貴様ら二次元人を……はぁ、狂った世界を変えるために使われてるだろう……」
まるで此方を挑発するかのように不敵に微笑する議長の態度に、メタルバードは更に激しく問い詰めた。
「言え! 主催者とは誰だ? 施設でオレ達を嘲笑うかのように挑発してきた奴は!? ……ゴールドマンとは何者だ!!」
「ば、バーンズ! もう相手は死に掛けてるのよ。答えるのも、やっとの状態なんだから……」
激しく問い詰めるメタルバードに、ミラーガールは議長の容態を察して半ば興奮するメタルバードを宥める。
するとその時。避難所として設けられた現場に設置されている、おそらく感染や現況を避難者達に伝えるための巨大モニターに電源が入り、画面には砂嵐が表示される。
「!」
突然の巨大モニターの起動に誰もが思わず画面に目を向ける。
すると巨大画面にスーツを着た如何にも企業の重役らしい男性が映し出された。
「! あ、アイツは……?」
見たことも無い男が、モニターに高級デスクを間にカメラ目線で椅子に座している映像に大将は謎の男について疑問に思う。
するとモニターに映る男は、不敵に微笑しながらウイルスで変異した議長と激しい接戦を繰り広げて死闘の末に生き残ったその場の二次元人たちに語り掛けてきた。
「聖龍隊諸君、私がゴールドマンだ。君らの中には薄々気付いている者もいると思うが……実際にアルドウと手を組み、彼と共に恐竜人を雇って新世代型を誘拐させて彼らの遺伝子を利用した今回のバイオハザードを引き起こした主催者たる人物は、何を隠そうこの私だ。ついでに言っておくと、君らが迷っていた地下研究施設……その建物を含む関連企業など全て私自身の固有財産さ」
「な、何っ!」
自らアルドウ・ウラジェールと結託し、恐竜人に新世代型二次元人の誘拐を行わせた後に彼らを監禁して遺伝子を用いた実験を行っただけでなく、タイ都市部を壊滅させたバイオハザードを引き起こした人物。地下の研究施設の上に建てられたオフィスビルは元より企業の持ち主である主催者は自分だと告白するゴールドマンなる人物に、メタルバードは心底愕然とする。
ゴールドマンの突然の登場と告白に皆が騒然とする中、ゴールドマンは徐に語り明かした。
「……それにしても議長。せっかく私が貴方自身が忌むべき二次元人を葬り去れる力を与えたというのに、満足に勝てないとは……やはり人間という種は、どう足掻いても厳戒というものがあるらしい」
「なッ……! で、ではやはり……私にウイルスを投与していたのは、貴方だったのか……!?」
ゴールドマンの言葉に、予想してた不安が的中していた議長は深く衝撃を受ける。
「な、何故だ! 何故この私を……! 我々の目的は同じでは無かったのか? 世界のバランスを崩し続ける二次元人を滅ぼす為に、我々アジア連合と共に協力していたのでは……!!」
二次元人を滅ぼすという共通の目的の為に結託していた筈なのに、協力者の一人である自分ウイルスを投与したゴールドマンの行動に疑問を抱く議長だったが、そんな議長にゴールドマンは平然と述べた。
「貴方はどうやら根本的に勘違いしていらっしゃる。私がそもそも、このバイオハザードを引き起こしたのは貴方の様に利己的な人間が嫌ってる種を倒す為ではない。……そう、貴方の様に強欲で利己的な人間という種そのものを滅亡させる為にこの計画に賛同したのだ。二次元人だの、三次元人だのと下らぬ区別はしてはいない」
「な、何だと……!!」
バイオハザードなどを含めた一連の計画に加わっているのは、二次元人や三次元人という区別を隔てず人間という種を滅ぼす事が真の狙いだと独白するゴールドマンの言葉に議長は尋常でないほど衝撃を受けた
更にゴールドマンはモニター越しに、画面を凝視する聖龍隊と赤塚組、そして新世代型たちに人間の形態に戻ってる議長に淡々と嘲笑の口振りで悠長に語り続けてきた。
「ああ、そうそう。そういえば君の家族、この現世奉還の混乱で暴徒と化した二次元人に襲われるのを嫌った君はアジア連合の一部隊に家族の身柄を預けたようだね」
「! な、なんでそれを……」
自分の家族の事を知っているゴールドマンの話に驚愕する議長。するとゴールドマンは衝撃に浸る議長にある映像を見せながら語り続けた。
「実は君の家族を預かった部隊には、既に私の息がかかってたのだよ。ほら、ごらん。君の家族は以前のようにカースト制度などというカビの生えた風習に縛られるだけの哀れで傲慢な人間ではなく、人間とは違う全く新しい生命として立派に生まれ変わった。これで心置きなく生き永らえるだろう」
そういうゴールドマンが映し出される巨大画面の左上の小さな枠には、まるで獣の様に全身が毛で覆われた生物の様に変異してしまった女性と男子らしき物体がもぞもぞと動いているのが確認できた。
「うあ…………うあああぁぁああああ………………ッ!」
最愛の家族が獣当然の異形に変わり果てた現実を突き付けられ、議長は家族を失った喪失感と裏切られた絶望感で大声で慟哭してしまう。
そして議長を絶望の淵に叩き落したゴールドマンは、微塵も変わらぬ態度で嘆く議長を尻目に聖龍隊と赤塚組と新世代型たちに語り掛けてきた。
「はっはっは、諸君らが私の邪魔をするのは構わないが、いずれどちらが正しいのか解る時が来るだろう。真に世界を救済できる力と、ただイタズラに世界を引っ掻き回す異端者……既に自然界とは頂点に立つものが君臨し、そのものだけが世界を、自然を統一できる価値があるのだ。その価値が君ら二次元人に……今の人類にあると思うか?」
「………………………………」
不穏な空気の中、ゴールドマンの一言一句に息を呑んで黙然と聞き入れる二次元人たち。すると此処でゴールドマンが予想だにしない発言を二次元人たちに述べた。
「諸君、本当に生き残るべき種が自分たちなのか……はたまた人類であるのか知るべきだと思わないか? ならば皆、私の許まで来るが良い。君達が本当に生き延びたいというなら……今まで通り、人類という身勝手な存在を護りたいのなら是非……」
なんとゴールドマンは一般人も含まれる新世代型たちを引き連れた状態のまま、自分の許へと辿り着き己の計画を阻止してみろと半ば宣戦布告に近い言動を二次元人たちにぶつけた。これには聖龍隊総長のメタルバードに赤塚組の頭領赤塚大作も愕然。
そして最後に、ゴールドマンはまるで人間そのものを軽蔑するかのような態度と言動で二次元人たちに言った。
「では諸君、いずれ会える時を楽しみに……」
鼻で嘲笑するゴールドマンの計画と、それを阻止する機会を敢えて与えてきた彼の余裕と自信に、俄然闘志が燃えてきたメタルバードは強い意思が表れた眼と面魂でゴールドマンからの宣戦布告を受ける覚悟を決めた。
「ゴールドマン、テメェの野望……俺達が必ず断つ!」