現政奉還記 B.O.W.編 作:セイントドラゴン・レジェンド
だが、その議長も既に体内に特別な強化型C-ウイルスが植え付けられていたため、突然変異を起こして襲い掛かってきた。何とか苦戦の末、変異した議長を倒した一行の前に対策本部が設けられている国立競技場の巨大モニターにとある人物が不敵に姿を映し出す。
彼の名はゴールドマン。新世代型達をラプター達に誘拐させ、彼らを監禁した上で様々な生体兵器の開発に着手していた製薬企業のトップであり、あのアルドウ・ウラジェールと共に小田原修司の複製兵器を一行にぶつけたりした上に、タイの都市部にウイルスを拡散させて大規模なバイオハザードを起こした張本人。そして何よりアジア連合の特殊部隊と結託して皆の命を始末しようとまでしていたのだ。
ゴールドマンは密かにウイルスを植え付けて突然変異させた議長に捨て台詞を吐くと、続け様に彼の家族を捕らえてウイルスで知性のない異形に成り果てたという残酷な現実をモニターに映し出して協力者であった議長を絶望のどん底に叩き落した。
最後にゴールドマンは新世代型達を命がけで警護する聖龍隊と赤塚組に、生き残りたければ自分の許まで辿り着き、人類の終焉を未然に防いでみせろと意味深な発言を告げた。
[暗雲]
「ようやく私の許に来るのだな……聖龍隊。運命の扉は、今開かれる……」
宣戦布告というべき発言を告げたゴールドマンは、1人己の自社ビルの最上階その自室にて一行が自分の許に辿り着くのを待ち望んでいた。
一方、ウイルスで突然変異したアジア連合軍の特殊部隊総指揮官である議長を苦戦のすえ倒した聖龍隊と赤塚組、そしてその二組に護られて今に至るまで無事でいる新世代型二次元人たちは今後の行動について談義していた。
「……どうするバーンズ」
「どうするも、こうするも……そもそも、あのゴールドマンって名乗ってる野郎が言ってる事が本当なら放っておけないだろ。まあ、それよりも無暗に奴の許に進撃するより、今はまず新世代型達の安全を確保するのが優先しねェと」
ゴールドマンへの信憑性についても疑わしいが、まずは新世代型二次元人たちの身を護るため彼らの安全を確保するのを優先させるメタルバード。だが大将はこれに難色を表情に浮かべる。頼りのアジア連合の特殊部隊そのものが敵対してきた上に、先ほどの変異した総指揮官の猛攻で部隊はほぼ壊滅していたからだ。
と、メタルバードや大将たちが今後の方針について論議していると先ほど激しい攻撃を浴びせられた末に、ひび割れた様な亀裂だらけの体に戻り果てた議長が虫の息で言葉を発し始めた。
「うぅ………………」
同じ二次元人を葬り去る協力者だと信じ切っていたゴールドマンに強化型C-ウイルスを投与され変異されただけでなく、最愛の家族すらもウイルス投与されて毛むくじゃらの生物に変異しているのを見せ付けられた議長はどん底の絶望感に苛まれていた。
「………………」「……こ、殺してくれ……ッ」
哀れみの目で議長を見据えてた大将に、絶望の渦中である議長は目前の大将に自分を殺してほしいと嘆願してきた。
地位も名誉も権力も、人間の一線を越えて異形の存在へと成り果ててしまった彼にとっては既に無になったのも等しい。更に最愛の家族すらも自分同様にウイルスを投与されて人語も発せられない獣同然の異形に変えられた現状を突き付けられた議長の絶望は想像を絶するものだという事を、大将は察していた。
すると大将は徐に装備している拳銃を取り出すと、弾倉の弾を装填。その装填の際の音と大将の表情から、彼が何をしようとしているのかを瞬時に察したミラーガールは思い留まるよう訴える。
「大将、もう彼は十分苦しんだわ。これ以上は……」
贖罪の苦痛を十分に感じた事からトドメを刺すのを思い留まって欲しいと、ミラーガールは悲痛な面差しで大将に慈悲を願い出る。だが大将は冷徹な顔で昔馴染のミラーガールに話した。
「アッコ、もうコイツはこのままでも苦しむ一方だ……協力してた相手に裏切られ、人間で無くなり、挙句の果てには家族すら怪物に変えられて生きる希望ってのも失くしちまってる。このまま生かすよりも死なせた方が、コイツ自身の為でもあるんだぜ」
「で、でも……」
「……このご時勢だ。生かすよりも死なせた方が慈悲深いってもんなんだよ」
大将の言い分に戸惑うミラーガール、だが大将自身も最後には悲愴な顔付きで答えたためミラーガールはそれ以上彼に返す言葉が見付からなかった。
そして大将は懐から取り出した拳銃を構えると、銃口を弱々しく死に掛けている議長であった生物に向けて躊躇わず引き金を引いた。
一発、そして二発、三発と。合わせて三発の銃弾を死に掛けの議長であった生物に撃ち込む大将。ウイルスの影響で凄まじい不死性を備えていた議長だったが、最後に計三発の弾丸を受けてようやく死を迎える事ができた。
「…………………………………………」
慈悲と哀れみの意味も込めて銃弾を撃ち込んだ大将と、彼の想いを知ってもなお居た堪れない悲痛な心境に駆られるミラーガール。二人の心意を理解しながらも、その場の誰もが暗然となり言葉を失くした。
議長の最後を見届けた一行は、ようやく本腰を上げて現場からの撤退を進めようとするが。
「おい、それで新世代型たちを護送する手段ってないのか?」
「まだ現存してる軍用車に乗せて移送しようと思ったんだが……あいにく、どれも鍵がなくて動かせないんだよな。それに全員を乗せるには残っている車じゃ数が少ねェし」
このバイオハザードの黒幕、ゴールドマンの許に向かう前に新世代型たちを安全な場所まで護送する予定だったが、全員を乗せるには残ってる軍用車では数が足りず、更に鍵がないため簡単に走行させる事も侭ならないと大将に答え返すメタルバード。
するとその時、皆が今後の行動について議論を醸し出していると「う、うわわ……っ」何かに脅える様な霞んだ声が皆の耳に入り、全員がその声の方へ一斉に顔を向ける。
「っ!」
顔を向けた先には、真っ青な顔色で腰が抜けたみたいに地べたに座り込む兵士の生き残りが1人見えた。しかも兵士は二次元人たちが自分の方へ一斉に顔を向けた瞬間、更に驚き一層顔色を蒼褪める。
「お前は……」「さっきの……」
いくら上官の指示といえど容赦なく発砲してきた兵士の1人にメタルバードと大将が険しい表情を向けると、兵士はすっかり脅え切ってしまう。
「く、来るな……来るな、バケモノ!」
尻込みしながら二次元人を完全に怖れの対象として捉える三次元人の兵士の言動と蒼褪めた表情に、新世代型達は兵士が如何に二次元人を恐怖と捉えているかを自然に察する。
新世代型たちが自分らを白眼視する三次元人の兵士に各々複雑な心境を抱いている一方、メタルバードと大将は緩和な態度で自分達に脅え切る兵士に言った。
「……安心しろ。お前さんに構っているほど今のオレらに余裕は無ぇ」
「とっとと消えやがれ」
メタルバードと大将が投げ捨てた言葉を聞いて、兵士は二次元人たちに銃を向けながらその場を立ち去ろうと慌てて走り出す。
「……良いんですか。彼を放っておいて」
自分達を射殺しようとした兵士を敢えて見逃すメタルバードと大将の行動にプロト世代の海道ジンが問うと、メタルバードは神妙な面持ちで答えた。
「今のオレ達が優先しなきゃイケねえのは、お前さん達の身の安全だ。それ以外の事は多少は目を瞑らねェとよ」
「………………」
「……それに、アイツはアジア連合直属の兵士。これ以上、三次元側と揉め事を起こすのは利口じゃない」
メタルバードの説明を聞いて、海道ジンも他の二次元人たちも胸中に抱いた複雑な心境がより一層膨らんだ。
その時だった。新世代型たちが胸中の蟠りを募らせていると、暗く沈んだ空気を引き裂く絶叫が響いた。
「うぎゃあっ!」
全員がその叫び声に驚き一斉に顔を向けると、視線の先には先ほどメタルバードと大将が見逃した兵士が胸部を切り裂かれて絶命していた。
兵士を切り殺したのは、鋭い爪と爬虫類の様な強靭な鱗と俊敏な動作で獲物を狩るB.O.Wのハンターであった。ハンターは金色の眼光で一行を睨み付け、新たな標的として見定めた。
「! ハンター!」「また厄介なのが現れたわね」
突如姿を現し、生き残った兵士を一撃で葬ったハンターを一目見て驚愕する大将の横で、赤塚組のミズキがレーザー銃に変形させた右手でハンターに標準を定めると迷わず射出。
「グギャッ」
ミズキが放った一筋の光線はハンターの額を貫き、その一発でハンターは絶命した。
「どうやら、この場に留まるのもマズいな」「だな。また移動とは癪にさわるが」
ハンターといったB.O.Wが出現する現場に滞在するのは危険と判断するメタルバードに対し、大将はせっかく苦労して対策本部まで辿り着いたにも関わらず頼りにしてた三次元界の部隊に裏切られた為に再び移動しなくてはならない羽目になった現状に不服する。
そして一行は敵となるB.O.Wが現れ始める緊急対策本部から急きょ離れるため移動を再開する。
だが彼らに襲い掛かる災難は、B.O.Wだけではなかった。一行が足を駆け出そうとした矢先、周辺の至る所から電子表示式のタイマーが取り付けられた物体が現れ、現れた次の瞬間にはタイマーの表示が動き出したのだ。
「ッ! なんだアレは!?」
突然周辺の至る所から出現した時限式の物体に戸惑う皆々。メタルバードは即座に現れた物体をスキャンして調べてみる。するとタイマーが設置されてる幾つもの物体が何なのか判明した瞬間、メタルバードは血相を変えて飛び上がるほど驚いた。
「ま、マジか! アレは……爆弾だ!」
「ば、爆弾!?」「!!」
「ああ、それも強力なヤツだ……この辺り、そう避難地区一帯は軽く吹き飛ぶぞ!」
メタルバードが識別した事で爆弾だと分かった瞬間、大将や皆々が驚く最中、メタルバードは更に爆弾の威力は凄まじく今自分たちがいる避難地区そのものが消え去る程の代物だと大声で告げた。
突如としてタイマーが表に現れた時限式爆弾とその威力に騒然とする一方で、聖龍隊は愕然とする新世代型たちに呼び掛ける。
「みんな急いで! 走るのよっ」
大声で皆に走り抜けて爆弾の勢力が届かない場所まで向かうよう推奨するセーラームーンの呼び掛けに、全員が一斉に駆け出した。
全員が突然現れた強力時限式爆弾の威力が及ばない場所まで退避するため駆け続けていると、やはり行く手に何故か隔離されてる筈の避難地区に侵入してきたハンターが進行を妨げる。
「邪魔だ!」「そこを退け!」
目の前に立ちはだかるハンターに尻込みする事無く、聖龍隊の新人隊士キリトとシルバー・クロウは目前のハンターを一刀両断で斬り捨て撃破してみせる。
真っ二つに切断されたハンターの亡骸を横目に、一同は駆け足を緩まず突き進む。
だが更に進行する皆の前に、今度は一気に五体ものハンターが出現し、連携を取りながら二次元人たちを追い詰める。
再び行く手を阻むハンター達にキリトやシルバー・クロウだけにあらずリーファやアスナ、佐倉杏子らが迎撃せんとする。が、先ほどのように一体一体を倒すのとは訳が違い、連携を取りながら攻めてくるハンター達に戦況は押され気味であった。しかし、ハンター達を相手に苦戦を強いられる聖龍隊士を目視した大将を始めとする赤塚組が彼らに加勢しようと発砲。銃弾はキリトの剣を鋭利な爪で受けつつ彼と対峙していたハンターに直撃し、弾丸が直撃した事でハンター自身は怯んでキリトから離れる。その隙を突いてキリトは対峙していたハンターを斬り付けて撃破した。
その他の聖龍隊士と対峙していたハンターらも、赤塚組の銃撃で体制を立て直そうと一歩下がった隙を突いて聖龍隊士に悉く倒される。
勢いに任せて駆け続ける一行の視界に、とある光景が飛び込んでもきた。
「ど、どうなってんだ? 制御が利かない……!」
「く、来るな! うわぁ……っ」
先刻、自分たち二次元人を攻撃した際にアジア連合の特殊部隊兵士が用いた生体兵器を制御し操作する機械。それが突如として全く生体兵器を制御できなくなり、制御の利かなくなった生体兵器に兵士達が襲われる戦慄の光景が駆ける皆の目に飛び込んできた。
「どういう事だ? さっきまで制御できてたハエなんかの変異体が兵士を襲っていやがる……」
先刻までは安易に制御できた上で襲撃にも用いられたウイルスで攻撃的に変異したハエの大群に襲われる兵士を見て、大将は何ゆえ制御できなくなったのか疑問に思う。すると大将の疑問に聖龍隊参謀総長のジュピターキッドが推測を述べた。
「多分、連合軍に協力してたゴールドマンが何らかの方法で装置を使っても生体兵器を制御できなくしたんだろう」
更にジュピターキッドは先ほど目視した爆弾についても関連性を推測した。
「さっきの爆弾も、おそらくゴールドマンが仕掛けてたんだろう。二次元人には否定的な思想を持ってた議長が、三次元人の一般人が避難する地区に爆弾を仕掛けるとは考えにくいし……人間という種そのものに反感を持つゴールドマンが僕らか議長側か、生き残った方を消す為に仕掛けたと考えたほうが辻褄が合う」
避難地区一体を吹き消す威力の爆弾も、ゴールドマンが生存した者を一掃するために仕掛けた物だろうと推測するジュピターキッド。
そんなアジア連合の手から離れて制御不能となった生体兵器は、無論この場を離れようと駆け続ける一行にも襲撃してきた。
「来やがった!」
案の定、進行方向先から黒い塊の如く群れを成して向かってくる人肉を腐敗させるハエの大群を捉えて、大将が皆に呼び掛ける。
「っ!」「む、虫! また……ッ!」
前に変異したハエの大群に顔を蝕まれて非常に怖い思いをした新世代型の速水ヒロがか細い声で形相を一変する一方で、常日頃から虫に対して尋常でないほど恐怖を抱いている新世代型の斉木楠雄は迫り来るハエの大群に血相を変えて脅えてしまう。
だが以前同様、ただ単に接近させまいと向かってくるハエの大群を迎撃する体制が即座に布かれた。
「撃ち落とせ! 前みたいにヤラれっぱなしはゴメンだぜ」
以前の様に訳の分からない状況下で一方的に体中を蝕まれるのを癪に感じ入る大将は、向かってくるハエの大群に尻込みせず威勢よく仲間の赤塚組と共に戦前に出る。そして大将の様な非能力者はショットガンなどの拡散できる銃火器で、そして幹部衆で唯一能力者のミズキは拡散式レーザーで目前にまで迫ってきたハエの大群を砲撃。微小なハエの個体は散弾と拡散されたレーザーに撃たれて死滅する。
強力な火力で迫るハエの大群を素早く一掃した赤塚組の功績に誰もが感無量の中、一行は再び足を前へと進めた。
そしてどうにか避難地区と感染区域を隔離する為のバリケードまで辿り着いた。
「よし、また市街地に出るのは不安だが……やむを得ない」
バリケードを越えて避難地区から脱出し、再びゾンビと化した民衆が蔓延る市街地に踏み入るのは不安であるが、爆発まで寸前の避難地区から撤退する為に致し方ないと意を決する発言をするテツ。
だが此処で不測の事態が起こっていた。
「アウーー……」「! いけない! ゾンビがバリケードを突破している」
群がったゾンビが急ごしらえで設置された金網のバリケードを強引に突破して、避難区域に侵入しているのを目の当たりにしたディープ・ブルーが叫ぶ。
そしてバリケードを突破したゾンビは案の定こちらに襲い掛かろうと向かってきた。
「余り相手にするな! 近付いてきた奴だけ押し退けて、どうにかして俺達もバリケードを突っ切るんだ」
迫ってくるゾンビに極力相手にせず、接近してきた個体のみ動きを止めるなどの迎撃を反し、自分達も避難区域を脱出するためにバリケードを突破しようと告げる大将。
しかしその最中も突破してきたゾンビが続々と二次元人たちに襲い掛かってくる。
「接近を許さないで!」
スター・ルーキーズ総部隊長ミラールは迫ってくるゾンビを撃退しようと銃撃しながら同時に仲間達に指示を出し、彼女の指示に従って美樹さやかや巴マミらが向かってくるゾンビを迎撃していく。
と、其処にゾンビに続いてハンターも出現し、ゾンビ共々二次元人に襲い掛かる。聖龍隊と赤塚組は集団で襲ってくるゾンビに加えて、強靭な戦闘力で攻撃してくるハンターも返り討ちにしてみせる。
すると二次元人たちがゾンビ達を迎撃していると、すぐ近くから悲痛な叫びが聞こえてきた。
「ぎゃあぁあ!!」
一行がゾンビやハンターなどの敵を撃退しながら突き進んでいく道中、先ほど此方に敵意をむき出しにして銃撃してきたアジア連合の特殊部隊その生き残りの兵士達が続々と群がるゾンビや屈強なハンターに惨殺されていく戦慄の情景が視界に飛び込んでくる。
「……なんか、さっきの事を考えると……」「いい気味、って思っちゃうな……」
「そう言うな。そう思いたくなるのも解るけどよ」
倒されていく三次元人の兵士達を目撃して、先ほど自分達を殺そうとした彼らに対して複雑な心持を口走るモルジアナとアリババにメタルバードが言葉をかける。
先行きも見えない暗雲漂う戦況の中、二次元人たちは生存の道に辿り着こうと懸命に殺伐とした現状を駆け抜けるのであった。
[猛進]
避難区域と感染地区を隔てるバリケードを突っ切り、再びゾンビが徘徊する都市部に足を踏み入れざる得ない二次元人たち。
「また市街に出ちまったが、これからどうするんだ?」「う、う~~ん……」
強力な爆弾が仕掛けられた避難区域から一歩出たのは良いが、ゾンビが未だに徘徊する都市をどう進行するのか問い詰めてくる大将にメタルバードは悩んでしまう。
だが悩んでいるメタルバードにセーラーマーキュリーが言う。
「メタルバード、今は悩むより少しでもこの場から離れるのが先決よ! あの爆弾の威力が正確に分からない以上、少しでも離れて爆発から逃れないと……!」
「そ、そうだな。とにかく少しでもこの場から離れるかッ」
優柔不断に成り掛けていたメタルバードに提言するマーキュリーの言動に、メタルバードは背中を押される形で一刻も早い現場からの撤退を決断する。
そして再び荒れた都市を進行しなくてはならなくなった二次元人達であったが、彼らの進行先に乗り捨てられた大型二階建てバスが目視できた。
「バスだ!」「そうだ、あれに乗って移動すりゃ楽だぜ」
乗り捨てられた二階建てバスを前にして、赤塚組の山崎貴史やアツシはバスでの移動を提案。この発言を受けてメタルバードと大将は新世代型を含む全員を即座に目前の二階建てバスに搭乗させる。
「乗れ乗れ、ほれ早くっ」
速やかに新世代型たちをバスに搭乗させる大将。そして新世代型たちが1階や2階の座席に落ち着くのを見計らうと、彼らに続いて聖龍隊の隊士や赤塚組の幹部達もバスに搭乗していく。
「な、なあ! 乗ったのは良いけど、鍵もないのにどうやって動かすんだよ……ッ!」
搭乗するや否や、座席横の通路で掴まり立ちをする聖龍隊と赤塚組。すると彼らに運転席真後ろの席に琴浦春香と共に着席した新世代型の真鍋義久が、バスを運行するのに欠かせない鍵がないのを視認して、どうバスを動かすのか問い詰める。
すると真鍋が不安に思っていると、彼の目に予想だにしない聖龍隊の行動が飛び込んだ。まず聖龍HEADのちせがサイボーグならではの触手を運転席に伸ばして機械を弄り出す。
「!?」真鍋がちせの行動に驚いていると、触手で弄っていたエンジンがものの数秒で動き出した。
エンジンが動き出したのを確認すると、今度はちせと同じHEADのセーラーウラヌスが運転席に移動してハンドルを握る。
「はるかの姉ちゃん。F1とは勝手が違うけどよ、大丈夫か」
「問題ない。こう見えて聖龍隊では様々な車種の運転マニュアルを一通り覚えてる。あくまで安全走行を心掛ければ大した事はないよ」
「そ、そうか……」
速さ重視の車種とは異なる為に運転は大丈夫かと問う大将に、元プロのF1レーサーであった天王はるかことウラヌスは明瞭に言い切り、これに大将は唖然としてしまう。
そしてセーラーウラヌスの運転により、全員が搭乗した二階建てバスは走り出した。
炎上する車、割れたウインドガラス、荒れ果てた道路を突き進む二階建てバスの車内からでも悲惨な都市の情景は痛いほど分かり易かった。
だが荒廃した都市を突き進むバスに、走行中にも関わらず荒れた都市を徘徊するゾンビ達がバスに飛び掛かり、窓枠にしがみ付いたのだ。
「きゃあっ!」
窓側の座席に着席してた新世代型のアリス・カータレットは執拗に窓枠にしがみ付いて這い上がろうとするゾンビに脅える。其処に赤塚組の海野なるが銃を手に駆け寄り、閉められていた窓を少し開けて銃身を外に出すと、銃口をゾンビに向けて発砲。銃弾を浴びたゾンビは力尽き、窓枠から手を離して落下した。
しかし道路脇から飛び掛ってきたゾンビの撃退に安心する暇も無く、今度はバスの進行先にまるで行く手を阻むかのように集団で固まるゾンビの団体が現れた。
「そこを退きやがれッ」
バス前部の窓から身を乗り出して前方のゾンビたちに向けて銃撃を仕掛ける大将。
だがその時、集団の中のゾンビで一際目立つ二体の巨漢のゾンビが付近にあったドラム缶を持ち上げてバスの方へと投げ付けてきた。
「うわッ!」
二体の巨漢のゾンビが投げ付けたドラム缶はバスの正面に激突し、正面のガラスは粉々に砕け散ってしまった。
「やったな!」
二つのドラム缶を投げ付けられ正面の窓ガラスを大破された攻撃に、赤塚組のアツシに山崎貴史らは砕け散って吹き抜け状態となったフロントガラス部分からゾンビの大群に向けて銃弾の雨を連射する。
皮肉にもバス正面の窓ガラスが損失した事で攻撃の範囲が広がった為に、反撃として銃撃を浴びせられるゾンビの大群は悉く撃ち抜かれ全滅。
前方を塞いでいたゾンビの大群を銃撃で一掃されたのを視認して、運転手のセーラーウラヌスは再びアクセルを踏んでバスを走行させる。
だがしばらく進むと、またしてもゾンビが前方で集合して進行の妨げになっていた。
「次々と忙しいぜ!」
一時的にバスを停車させて前方のゾンビに銃撃を開始する大将率いる赤塚組と聖龍隊。だがその時、前方に集うゾンビの大群に皆が気を取られている隙に、停車しているバスの左右両脇の窓に続々とゾンビが集まり、激しく大型バスを揺らし始めた。
「わあっ」「コイツら! 俺達を外に出させようとしてるッス!」
力尽くで車内の人間を襲おうと、左右から激しくバスを揺らし出すゾンビたちの行動に新世代型の手島純太と巻島祐介たち車内の皆々は動揺する。更にゾンビ共は強く窓ガラスを叩いた為に、ガラスが割れて完全に無防備な状態に陥ってしまった。
この混乱に車内の聖龍隊は急いで着席している人々を押し退け、ガラスを破壊して窓から車内に侵入しようとするゾンビ達を撃退していく。
「このヤロッ、出て行きやがれッ!」
窓から侵入しようとするゾンビをブラック☆スターが蹴り飛ばしたりなどして、強引にゾンビ達を車外へと追い出そうと躍起になる。
更に侵入して来ようとするゾンビ達に、新世代型の纏流子や
「このッ、気色悪いんだよッ!」
威勢の良い啖呵で侵入しようと手を伸ばしてくるゾンビの手や頭部を斬り付けて強引に外へ追い出そうとする流子。その一方で猿田学や
停車したバスの左右の窓から車内に侵入しようとしてくるゾンビの来襲に、車内は混乱の一途である中、果敢にも車内に侵入してくるゾンビを返り討ちにしてみせる新世代型の姿も確認できた。
と、その時。バスの前方を遮っていたゾンビの大群がようやく片付けられた。
「今の内に……!」
進行方向にゾンビの集団がいなくなったのを確認するや否や、運転してるセーラーウラヌスは再びアクセルを踏みハンドルを握り締めて走行を再開させる。
だがその後も、走行するバスを目撃したゾンビが続々と進行する道路の真ん中で固まり出し、バスの走行を妨害する一方であった。
「ヤロッ、ヤロッ。もう近付くんじゃねェよ」
進行先で群がり行く手を阻むゾンビ達に向かって果敢に発砲し迎撃しながら進む二次元人たち。その中でも赤塚組頭領:赤塚大作は大破して吹き抜けとなったバスの正面に陣取り、前方で走行の邪魔になるであろうゾンビを悉く狙撃して片付けていきながらバスの進行を補佐する。だが群がってくるゾンビの群集による走行妨害を突破しながら進んでいたその時、思わぬ事態が起こってしまう。
なんと角を曲がろうとした矢先、曲がる為に速度を少しばかし落としたホンの僅かな隙に周辺のゾンビ達が急接近し、バスの周囲を完全に取り囲んでしまった。
「い、いけない! これじゃ動けない……!」
走行が侭ならない現状を目の当たりにし、運転手のセーラーウラヌスは愕然とする。そんな彼女にメタルバードが言った。
「構わん! 一気にスピードを出して突っ切れ! ゾンビの集団に突っ込んで道を切り開くんだ!」
ゾンビに取り囲まれて身動きが取れにくくなっている現状で、メタルバードはバスの速度を一気に上げてゾンビの集団の中を強引に突っ切って突破するようウラヌスに指示を出した。
正直ゾンビの群衆の中に、一階の窓ガラスが全て割れて無防備と化している二階建てバスで突っ込むのは安全面を考慮すると同意せざる判断にセーラーウラヌスは迷った。
しかし迷走してるウラヌスにメタルバードが急かした。
「急げ、ウラヌス! モタモタしてたら、ゾンビ共が車内に雪崩れ込んで来ちまうぞ!!」
メタルバードの言葉にウラヌスが一瞬後ろを振り返ると、確かにガラスが割れた窓からゾンビ共が常軌を逸する勢いで車内に侵入しようとしているのが目に映った。
車内の混然とした状況を認識して、ウラヌスは再び正面に険しい顔で見据えるとアクセルを力いっぱいに踏み締め、二階建てバスを猛発進させた。
「うわっ」
突然、猛スピードで発進したバスに驚いてしまう搭乗者達。
しかしウラヌスの決断が功を奏したのか、バスはゾンビの群集に突っ込んでもビクともせず、多少の血飛沫が車窓から入り込んでしまうのを除けば、ゾンビを次々にバスで轢き殺しながら強引に進行が可能であった。
それからも道路に集まり出しているゾンビを頑丈な二階建てバスは容赦なく轢き潰しながら全速力で突き進んでいった。
だが、道路を猛スピードで進行中、二次元人達が搭乗するバスの目前にトンでもない障害が迫ってきていた。
なんとゾンビの群集を突っ切るのに必死で速度を落とさずバスを走行させていた矢先、角を曲がった瞬間にバスの目前に車高の低いトンネルが立ちはだかった。
「! 伏せろッ!!」
一行を乗せた二階建てバスの進行方向に現れたトンネルを目視して、バスの二階にいた聖龍隊のラビが同じ階層にいる仲間と座席に座る新世代型達に向かって叫ぶ。すると2階にいた面々は自分達の身に降りかかる危険を察知して、即座に背中を曲げて頭を抱えた体勢で自らの姿勢を低くした。そして次の瞬間、二階建てバスはトンネルに突入し、バスの二階その屋根部分がトンネルの上部に激突して根こそぎ剥がれ落ちてしまった。
「ッ……!」
2階に搭乗している新世代型達は身体を低くし顔を下に俯かせて、剥がれ落ちるバスの屋根の残骸破片が無数に降り注ぐ惨状を必死に堪える。
そしてどうにかバスは低いトンネルを通過する事ができた。だが2階の屋根は完全に剥がれ落ち、バスの二階部分の屋根は完全に崩落して消滅してしまった。
屋根が完全に無くなった事で見渡しが良くなった光景を目の当たりにし、2階の新世代型達はその惨状に愕然と言葉を失くす。
しかし2階建てバスが最上部の屋根を失いつつも走行に支障は出ず、その後も無事に進む事はできていた。
だがしかし、屋根を大破し崩落させた事でバスの景観が見違える中、車内で大人しく席を着いていた一人が、ぼそりと呟いた。
「………………な、なあ。ところで気になったんだけど……俺たち結局、どこに行くんです?」
『!!!!』
運転席後ろで大人しく座ってた新世代型の真鍋義久が思わず発した一言に、運転席近くの面々は呆気に取られ愕然とした。
「そうだよ! 俺たちゃ結局どうすりゃ良いんだよッ!!」
頼りにしてた特殊部隊の裏切りと半壊により、完全に行き場を失ってしまった現状を思い出し途方に暮れる大将たち。
「バーンズ! 冗談抜きで、この後どうする? 新世代型達を避難させる為にも、護送したいのは山々なのに手段が無くなっている! このままじゃ何れボク達の身も……!」
バスのハンドルを握り締め正面を見据えながら問い続けるセーラーウラヌスの質問に、メタルバードは無言で考え込み黙然としてしまう。
と、その時。聖龍隊の無線から通信が入った。
「こちら本部……こちら聖龍隊本部……総隊長、応答お願いします」
「っ、レイか! よかった、通信が回復したみたいだな」
先刻のアジア連合の特殊部隊との交戦中、通信を妨害されて以来、通信が途絶えたままだった本部からの通信にメタルバードは思わず笑みを零す。
此処でメタルバードは間髪入れず通信が途絶えた以降の出来事を本部に伝えた。
「レイ、助かった。実は新世代型たちの安全地帯までの護送を受け入れてもらおうと辿り着いた避難区域でアジア連合から派遣された特殊部隊に一方的に攻撃された! 指示していたのは現場でオレ達の前にも姿を現したアジア連合の議長だ。奴はオレたち二次元人への反感思想を抱いていたらしく、殲滅させようとして来やがった。……その議長も最後にはウイルスに侵されて巨大な怪物に変貌したから俺達が倒したんだがな」
更にメタルバードは回復した通信で入手した新情報を本部の通信士レイに伝え続けた。
「それに一つ判明した事がある。オレ達が最初に進入した地下研究施設、その施設と地上のオフィスビルを所有している上に、アルドウや恐竜人と結託してオレ達と生体兵器を衝突させていた張本人……そしてアジア連合の議長とも手を組んで、オレ達を始末しようとした挙句、議長自身にもウイルスを投与した主催者って名乗ってた奴……そいつが判明した。ゴールドマンって野郎だ」
メタルバードからの現状に至る報告を全て傍受する通信で聴取したレイは、報告内容にも上がっているゴールドマンたる人物の名を聞いて本部側で得た情報をメタルバード達に伝え返した。
「ゴールドマン……此方でも調べていましたが、やはり関与していたようですね」
「何かゴールドマンについて知っているのか?」
「はい。ゴールドマン、本名カレッブ・ゴールドマンはアジア系英国人でタイに本社を置く大手製薬企業の最高責任者。タイのみに有らず、東南アジアの各所に支社を置いている世界有数の財団トップでもあるゲノム理論の権威者です」
新世代型二次元人の誘拐から監禁中の被験者として用いった遺伝子実験、それらを行っていた研究施設を発端に都市部に蔓延したウイルスによるバイオハザード。そしてアルドウ・ウラジェール、恐竜海賊団、アジア連合の特殊部隊と議長らと結託した一連の東南アジアでの騒動の黒幕こそ、ゴールドマンであったのだ。
「ゴールドマンについては解った。因みに、奴の背後関係までは掴めているか?」
黒幕ゴールドマンの詳細について本部より知らされたメタルバードは、今回の大規模なバイオハザードを含む一連の新世代型二次元人の遺伝子を利用した実験の背景にも関与している者がいないか疑いゴールドマンの背後関係について訊ねた。
「いえ。研究の出資などを含み、ゴールドマン以外の人間が関与していた詳細な情報はまだ入っていません」
「そうか……」
背後関係については未だ情報を掴んでない現状を聞いたメタルバードは思い出した様に通信士のレイに言い放った。
「……そうだ、レイ! オレ達は今、街ん中を進行中なんだが、またルートを指定してくれ。こうなったら、オレ達だけで新世代型たちを護送するしかないんだ」
最早、外部からの助けを新たに期待するのは得策ではないと判断したメタルバードは、もはや聖龍隊の組織力だけを頼りに行動するしかないと本部に伝える。これを聞いた通信士レイは即決でメタルバードに返答した。
「了解、皆さんの現在地は衛星で既に捕捉しています。都市郊外付近で警備に就いている部隊まで案内します……比較的、汚染に晒されてない郊外近くまで辿り着ければ現場の部隊と合流し、保護した新世代型の方々を護送しやすくなると思います」
「解った! そこまで案内、頼む!」
聖龍隊の部隊がゾンビなどの脅威が他所まで拡散するのを防ぐため郊外付近に滞在している事情から、本隊との合流を果たした後に新世代型の護送に加勢に入らせる考慮にメタルバードも強く同意した。
かくして聖龍HEADを筆頭とした本隊は、都市郊外付近に滞在している筈の防衛部隊と合流を果たすため、アニメタウン本部の通信士レイの誘導の元、聖龍隊の部隊が滞在しているであろう郊外までバスを走らせるのであった。
[空襲]
アニメタウン本部の通信司令部。そこに在籍している通信士レイの誘導の元、聖龍隊と赤塚組に護衛される新世代型たちを乗せた二階建てバスは都市郊外で任務に当たってる聖龍隊の部隊と合流した末に、保護してる新世代型達の安全地帯までの護送を行おうと道路をひたすら走り続けてた。
「もう随分、走っているが……」
「まだ、この先だ……俺らの仲間が警備している前線は」
長らくバスで走行している現状で大将が若干の焦りを感じさせながら呟くと、それにメタルバードは仲間である聖龍隊の部隊が被害を拡大させまいと警備に就いている郊外の前線にはまだ距離があると教える。
すると走行する二階建てバスの前方に、軍人か一般人が組み立てたと思われる簡易的な防壁が見られ、しかもその防壁にはちょっとした高さを跳び越えられないゾンビ達が群がっていた。
「お、おい! 前……どうすんだよッ」「構わない、ウラヌス突っ込め!」
前方進行方向に設置されている簡易的な防壁と、それに阻まれ立ち往生してしまい詰まってしまってるゾンビの大群を視認して大将が戸惑うものの、同じく目視したメタルバードは簡易的な防壁と群がるゾンビの大群に躊躇わずバスを突っ込むよう運転を任されているセーラーウラヌスに指示を飛ばした。
運転手ウラヌスはメタルバードの指示通りに、防壁とその手前に群がるゾンビの群集に二階建てバスに突撃し、防壁やゾンビ共を蹴散らす豪快な走りっぷりで突き進む。
木材や鉄条網で構成された防壁は大破し、ゾンビ共は血肉を飛び散らして弾かれていく。
「よし、このまま突き進めッ」
目の前の障害を突破してメタルバードは勢いに乗ったまま猛進せよと意気込む。
しかしゾンビの群集を掻い潜り、次第にゾンビなどの生体兵器の姿が見えなくなり始めて皆が半ば安心した、その矢先の事。
なんとバスの横からオープンカーに搭乗したゾンビ達が現れた。するとゾンビが運転する車のボンネットの上に乗り上がる別個体のゾンビが、戦闘で破損して割れたバスのガラス窓に向かって飛び移り、1階の窓から車内に侵入しようとして来た。
「うわぁっ!」
ガラスが割れているため吹き抜けの窓から侵入して来ようとするゾンビに、1階の座席に着席している大宮忍やアリス・カータレットら新世代型の女子達が絹を裂くような悲鳴を上げる。と、そこに聖龍隊の新人隊士リーファが駆け付け、窓から侵入しようとするゾンビに一撃喰らわせ、窓の外に叩き落した。
車内に侵入しようとするゾンビを外に追い出した瞬間、今度はバスを運転するウラヌスがハンドルを回して真横につくゾンビ達が搭乗するオープンカーに体当たりして反撃。その隙に車窓に銃口を向ける赤塚組の面々が車に搭乗しているゾンビに向けて発砲。全てのゾンビが銃弾を受けて倒れると、彼らが搭乗していたオープンカーは失速し、バスとオープンカーが突き進んでいた公道の脇に連なる建物の一角に追突し爆発炎上した。
何とかオープンカーでのゾンビの追撃を逃れた一行が、そのまま道成に真っすぐ突き進んでいると何処からともなく今まで見たこともない銀色の光沢に包まれたゾンビがレーザーの小刀を両手に携えて頭上から急襲してきた。
「うわぁっ!」
突如目の前に現れる銀色の不気味な容姿のゾンビに驚愕する巻島祐介を始めとする新世代たち。しかも、その銀色のゾンビは他にも数体、上方から奇襲を掛けるかの様に屋根が剥がれ落ちた2階建てバスの2階部分へと続々と着地してきたのだ。
「ッ、新手か!」
先刻の走行で屋根が剥がれ落ち、無防備になってしまった為に敵の襲撃を受け易くなってしまった2階で、襲ってくる敵に対して臆する事無く勇敢に立ち向かい続けてる新世代型の鬼龍院皐月は今までとは明らかに異なる未知の敵にも勇敢に縛斬で斬りかかっていった。銀色のゾンビは今までのゾンビと違い俊敏な動きで狭い足場の中で皐月と刃をぶつけていくが、一瞬の隙をついて皐月は対峙していたゾンビを一刀両断に斬り捨てて葬って見せた。
「さすが皐月ちゃん!」「アタイも負けてらんねえぜ!」
親友の皐月が見事に銀色のゾンビを斬り捨てた光景を目の当たりにし喜々とする蛇崩乃音に反して、活躍する皐月を見て自らの戦意を一層高める纏流子も頭上から奇襲してくるゾンビを次々に片太刀バサミで斬り付けていく。
そんな積極的に戦闘にも加わってくれる新世代型達の助力も相まって、早々に2階に降り立った数々のゾンビ達を撃破する事ができた。
公道を突き進んでいくと、前方に停車しているバンが3台ほど認識できた。二階建てバスが、そのバンの前まで近付いていくと突然そのバンの後ろ側が全開し、中から武装したゾンビが続々と出てきてバスの進行を遮った。進行を阻む武装ゾンビに聖龍隊と赤塚組は銃撃を展開し、接近してくるゾンビ達を難なく射貫いて突破。2階建てバスは再び走り出した。
バンから出現した武装ゾンビの部隊を突破した一行が改めて突き進んでいくと、今度は前方に炎上する車が2台ほど視認できた。燃え盛る2台の車の間を通過して走行すると、先ほども現れた銀色のゾンビが再び頭上から屋根が剥がれたバスの2階部分に着地して奇襲してきた。
「遠慮なく斬っていくぜ!」
頭上から奇襲を仕掛けてきた銀色のゾンビ2体に対して聖龍隊の新人隊士であるキリトとアスナは容赦なく斬りかかり、ゾンビ達が新世代型達に危害を与える前に排除してみせた。
だが奇襲してきたゾンビ達を撃破したのも束の間、バスの進行方向正面にゾンビの侵攻を防ぐ為に設けられたと思われるバリケードが見えた。
「突っ切れ!」
前方に確認できる障害物のバリケードに対し、メタルバードはバスを運転するセーラーウラヌスに速度を緩めずそのまま防壁を突破するよう指示した。ウラヌスも防壁を突破する勢いでブレーキを踏まず、逆にアクセルを全開まで踏んで速度を上げる。そしてバスは猛スピードと元からの大きな車体が功を奏して頑丈な鋼鉄のバリケードを難なく突破する事ができた。
しかし鋼鉄製の防壁に突っ込んだため、2階建てバスのエンジンは煙を吹いて完全に機能停止してしまった。
「……確か、この先でウチの増援部隊が待機している筈だ」
先ほど本部からの通信で入った情報が正しければ聖龍隊の増援部隊が待機している筈だと述べるメタルバード。
そして一同は一抹の不安を抱えながら走行不能になったバスから降りて、待機している予定の聖龍隊の部隊の許に進行する。
だがバスから降りてしばらく進むと、案の定ゾンビの集団が待ち受けていた。しかし聖龍隊と赤塚組は迫ってくるゾンビ達を難なく撃破し、足を止めず直進していく。
しばらく突き進んでいくと、辺りに目立った建物が見られなくなった景観が広がる様になっていた。
全員が張り詰めた空気の中、中にはいつ敵が襲撃してくるか警戒する者、中には度重なる常軌を逸した生命との激闘を乗り越えてドッと蓄積された疲労に心身が襲われる者など、見られる様になった正にその時。
「グギャアアアァァァ……」
前進していた皆の耳に、聞き慣れない奇怪な鳴き声が何処からとも無く響いてきた。
「! この鳴き声は、なんだ……?」
何処からか聞こえてくる奇怪な声に、大将の脳裏に一抹の不安がよぎる。
そして奇怪な鳴き声が聞こえてきて一瞬の様な時が過ぎた、その時である。
「っ! そ、空よ!」
屋根が剥がれ落ち、見渡しが全快したバスの二階に待機していた聖龍HEADの真紅が空を指差して声を上げた。
見上げてみると、上空から何体もの飛行物体が此方に向かって飛来してくるのが視界に飛び込んできた。
「あ、アレはなんだ!?」
一階で地上からのゾンビに抗戦するため待機していた赤塚組のテツが、上空から飛来してくる物体を確認するため思わず一階の窓から身を乗り出して見上げて驚愕する。
一方で、同じく窓から顔を覗かせて上空から来襲してくる飛行物体を視認したメタルバードは、飛来してくる物体が何なのか一瞬で見極めた。
「アレは………………新世代型クローン!」「な、何!」
メタルバードの発した一言に、車内の誰もが愕然とした。
先刻も確認された、ゴブリンに酷似した異常な容姿とはまた打って変わり、まるでロボットの様な角々とした形相に、それに伴い全身を覆う鎧の様な硬い鱗も何やら無機質な見た目に変化していた。だが何よりも衝撃的であったのが、変化した新世代型クローンの胸部には遺伝子元の新世代型二次元人その人面がくっきりと浮き彫りになっていたのだ。
「あ、あの顔……!」
上空から接近してきた更なる変異を経た新世代型クローン、その胸に自身の顔を含め見知った人面が浮かび上がっているのを視認して直枝理樹を始めとする新世代型たちは愕然と言葉を失くした。
「グギャアアアァァァ……!」
そして更なる変異を起こして容姿を豹変させた新世代型クローンは、バスの二階に陣取っている人々を捉えると一気に降下して襲ってきた。
「わあっ!」
上空から滑空し、空襲してきた新世代型クローンに元となった新世代型たちは悲鳴を上げて混乱する。
だが空襲してきた新世代型クローンに、二階で警護に当たっていた聖龍隊の隊士と赤塚組幹部が反撃する。
「このヤロッ、コッチ来んな!」「これでも喰らえでヤンスッ」
赤塚組の幹部にして、頭領の大将とは古い付き合いのゴマにギョロは向かってくる新世代型クローンに果敢に銃器で応戦する。
その傍らで真紅を始めとするローゼンメイデン達は、飛来してきた新世代型クローンを掴んで振り回した上で投げ飛ばしたり、各々の技や武器で抗戦を開始する。
この戦闘に一階の者達が加勢しようと車内の階段で二階に上がろうとしたが、飛来してきた新世代型クローンは一階の窓からも車内に侵入しようと窓辺に近寄ってきた。
「クソッ、下にも群がってきやがったか……!」
二階の手勢に加わろうと意気込んでいた大将も、一階から侵入しようとする新世代型クローンの猛攻に顔を渋らせる。
仕方なく大将を始めとする一階にいた面子は、一階の窓から侵入しようとしてくる新世代型クローンの侵入を阻止するため、窓際で進攻を防ぎ始めた。
一方、二階では屋根が損失しているため新世代型クローンの群れは容易に車内へと侵入して内部の人々を殺めようと襲っていた。
「クソッ、攻撃が全然効かないぜ……!」
二階で聖龍隊や赤塚組に混じって新世代型クローンと交戦するジェイク・ミューラーは、鋼鉄の様に硬い黒光りする新世代型クローンの鱗に銃撃もナイフによる攻撃も全く歯が立たない状況に苦戦する。
「ギャアアアァァァ……ッ!」
耳の中で木霊する新世代型クローンの異様な高い鳴き声と迫力に、ただただこの状況が終わるのを待望する新世代型たちは恐怖に打ちひしがれる。何より彼らを怖がらせるのが新世代型クローンの外見的特長である胸部の人面、それは紛れも無くクローン元である新世代型二次元人の顔であり、自分達の顔を胸部に持つ新世代型クローンは結局は自分達のクローンなのだと新世代型たちは痛感するのであった。
「くっ……ダメだ、スグに傷が……!」
交戦中の聖龍隊隊士アレン・ウォーカーは自身の得物で鋼鉄並みの硬度を持つ鱗に覆い尽くされてる新世代型クローンに斬り付けるが、脅威の再生力が健在なためスグに傷は跡形も無く消滅してしまいダメージを与えるのすら困難であった。
「ッ……傷がスグに消えるだけじゃない、数もキリが無い……!」
「このままじゃラチが明かないわ!」
二丁拳銃で上空から空襲してくる新世代型クローンと応戦するデス・ザ・キッドと背中を合わせながら周囲の敵と交戦するマカ=アルバーンの両名は、傷を負っても瞬時に再生してしまうだけでなく多数で攻めてくる新世代型クローンに悪戦苦闘を強いられていた。
「クッ…………バーンズ、何か手はねェのか!?」
「今、考えてる!!」
空襲してくる多数の新世代型クローンを相手に、懸命に抗戦する大将は同じく徹底して戦うメタルバードに対抗策を求めるものの、効果的な解決案は見出せずにいた。
と、苦しい戦況下で滑空して惑わしていた新世代型クローンに狙いを付けようと構えていた聖龍隊の高町なのはに一体のクローンが飛び掛かった。なのはは必死に自分に飛び付いた新世代型クローンを振り払おうともがくが、クローンの握力は凄まじく中々引き離せすにいた。そこに近くで戦闘してたジェイク・ミューラーが駆け付け、高町なのはに飛び付く新世代型クローンを彼女から引き離す。だが問題は此処から。なのはから引き離せた新世代型クローンは、今度はジェイクに向かって襲い掛かろうとしていた。これにジェイクはクローンを足で床に押さえ付けるが、クローンの凄まじい強力で押さえ付けるのがやっとであった。ジェイクは咄嗟に装備しているナイフを手に持つと、自分が扱える銃火器では全く歯が立たない新世代型クローンの強固な鱗に包まれてない胸部の人面に向かって半ば我武者羅ながらもナイフを突き刺した。
「この……ッ」
無我夢中でナイフを手に取り、胸部の人面に刃物を突き刺したジェイク。すると胸部の人面に刃が貫通した直後、突き刺された新世代型クローンは突然苦しみながら小刻みに暴れ出した。
「グギャアアア……ッ」
苦痛に喘ぐ声を発しながら床上でもがき出した新世代型クローンは、次の瞬間その体が瞬く間に消滅してしまった。
「何っ?!」突如目の前で苦しみながら消滅した新世代型クローンに刃を突き刺したジェイクは驚いた。
そして目の前で新世代型クローンの一体が消滅した事に驚いたジェイクは、この事を他の面々に伝えるために叫んだ。
「おい! このクローン共、胸の人面を攻撃したら消えたぜ!」「なにっ?」
ジェイクの伝達を聞いて、二階建てバスの側面などにしがみ付いて内部に侵入しようとしたり襲い掛かろうとしている新世代型クローンに、自らも滑空したり壁に張り付いてクローンを蹴散らしていたメタルバードが反応した。そしてジェイクの意見を聞いたメタルバードは機械化した眼球で群がる新世代型クローンの肉体構造を念入りに調査してみた。すると彼らの胸部に浮かび上がる人面に驚愕の真実が隠されていた。
「そうか……! みんな! 新世代型クローンの弱点は胸の顔だ! 人面のちょうど真下に心臓が在りやがる!!」
「な、何だって!」
メタルバードの叫び声を聞いて、大将や皆々は驚いた。新世代型クローン、その弱点は胸部に浮かび上がる遺伝子元の新世代型二次元人、その人面の真下に存在する心臓だったのだ。
このメタルバードの言葉を聞いて、新世代型クローンと交戦する皆々は総じて胸部の人面へと狙いをつけた。
「ハッ」「グギャァ……ッ」
「このッ」「ギャ……ッ」
人面の下に心臓があると知るや否や、先ほどまで苦戦に感じていたデス・ザ・キッドにマカ=アルバーンは躊躇う事無く新世代型クローンの胸部の人面に攻撃。銃弾が人面に貫通する個体も、顔の部分を深く斬り付けられた新世代型クローンの個体も揃って消滅。
「か、顔……!」「チッ、なんだか後味悪ィぜ」
人面が弱点に通ずる箇所であると知った新世代型の栗山未来に纏流子は、自分達のクローンである新世代型クローンの胸に浮かび上がる自分達の顔に攻撃しないと倒せない事実を目の当たりにして衝撃を受けた。
だが手を拱いている暇もなく、複雑な心境の中で戦闘に参戦する新世代型二次元人は、目前の新世代型クローンの胸部そこに浮かび上がる人面に向かって攻撃をした。
「これも生き延びるため……! 仕方が無い」
同じく自分達のクローンと交戦に入っていた
おそらく彩瀬なるのクローンであった新世代型クローンは、皐月の縛斬に人面を突かれて跡形も無く消えた。
その後も次々に新世代型クローンは、弱点である胸部の人面その真下の心臓を攻撃された事で全て倒された。こうして上空から空襲してきた新世代型クローンは全て殲滅に至った。
「……………………………………………………」
自分達のクローンである新世代型クローン。その胸部に浮かび上がった変異前の人面、すなわち元の遺伝子であった自分達の人面を攻撃する事で跡形も無く消滅したクローン。
新世代型たちは、自分のクローンが自分自身の顔を攻撃された事で消滅した光景に衝撃を受け、愕然と言葉を失くしてしまうばかりであった。
上空より襲撃してきた新世代型クローンを突破し、二次元人たちを乗せた二階建てバスは走行し続けるのであった。
[強襲]
上空より飛来し、空襲してきた更なる変異を経た新世代型クローンと激しい死闘を繰り広げた二次元人たち。
彼らが乗車する二階建てバスは、感染区域の境目である郊外付近で警備に当たってる聖龍隊の部隊と合流するべく進行していた。
「もうスグの筈なんだが……」
走行するバスの車内から周囲を見渡すメタルバードは、もうじき聖龍隊の部隊が警備の為に待機している地点に辿り着くので隊士の姿を探していた。
そして隊士の姿を探していたメタルバードの遠目に、聖龍隊の隊士らしき人影が確認された瞬間。メタルバードが声を発しようとするが、何やら視線の先に確認できる隊士達が交戦している様に映った。
「っ? なんだ……どうも戦っているみたいだが」
既に市民の避難も完了し、周囲にはゾンビなどの目立った生体兵器も確認されない状況で戦闘に走る聖龍隊士を目視して疑問に思うメタルバード。
疑問が残るまま、バスは戦闘を繰り広げている聖龍隊の近場で停車。メタルバードや大将がバスから降りて現場の聖龍隊士に何事かと問い掛ける。
「おい、どうしたんだ!」「なんだ? 何と戦っているんだ」
メタルバードと大将の問い掛けに答えたのは現場で戦闘の指揮を執っているミスティーハニー、本名葉月聖羅であった。
「あ、バーンズ……それに大将くん。よかった、みんな無事だったのね」
「それよりも、どうしたんだ。何だかやけに騒々しいな」
「そ、それが……巨大な敵と、今交戦中なのよ」
「? 巨大な敵?」
振り返ったミスティーハニーは新世代型たちを捜索しに向かった聖龍隊の面々と赤塚組の無事な姿を見て安堵し、それにメタルバードが更に問い詰めると彼女は巨大な敵と交戦中と答えた。この巨大な敵に大将が首を傾げた、その時だった。
「気をつけて!」「!」
聞き覚えのある声にメタルバードと大将とミスティーハニーの三人が反応して顔を向けると、遠方より真っ黒な巨体に紅い光がひび割れた外皮から漏れているという異質な全貌の異形が突進してきた。
「な、なんだアレ!」
「み、みんな急いでバスから出ろ! 真っ直ぐコッチに向かってくる!」
前方より猛スピードで突進してくる黒い巨体に飛び上がるほど驚く大将の傍らで、メタルバードは黒い巨体が一直線に此方へと向かってくるのを目の当たりにして急きょバス車内に残っている皆を外から出させ危険から避難させようとする。
無論、バス車内からでも黒い巨体が迫っているのが把握できたので、車内の皆々は現状を素早く理解し急いでバスから外へ退出し始める。
「お、押さないで! 慌てず、一歩ずつ……」
混乱に喘ぐ状況の中で皆が思わず押し合って車外へ退出しようとしてしまう現状でイオリ・リン子を始めとする大人達は子供達が怪我しないよう呼び掛ける。
しかし猛進してくる黒い巨体の速度は緩まず、一直線に二階建てバスへと突っ込んできていた。
「い、急げ! バスに突っ込むぞッ!」
二階建てバスに突進してくる黒い巨体に動揺しながらも、車内の皆に一刻も早くバスからの退出を急がせる大将。
そして車内に残っていた面々が外に出たのを見計らい、メタルバードと大将さらにミスティーハニーもその場から退散して巨体の突撃を回避する。
皆がバス車内から出て離れた直後、黒い巨体はメタルバード達が乗車していた二階建てバスに直撃。重量級の二階建てバスは、黒い巨体の突撃に弾かれ意図も簡単に吹っ飛ばされ、大破されてしまった。
「な……何だよ、あのデカイの!?」
黒い巨体が今まで自分達が利用してきた二階建てバスに突っ込んで吹き飛ばした現状を目撃して、半ば涙声で新世代型の真鍋義久が大声を上げる。
すると真鍋の涙声に反応してか、黒い巨体は二本の足でしっかりと地面に立って真鍋ら新世代型たちの方に振り向いた。
自分達の方に振り向いた黒い巨体の顔を見て、新世代型たちはもちろん聖龍隊や赤塚組も愕然とした。
「セェェリュゥゥタァァアァァイ…………!!」
その黒い巨体は、またしても容姿をガラリと変貌させているものの間違いなく地下研究施設から執拗に追い回して来ている3-DXであった。
「う、ウソだろ……ッ!」「まだ生きてんのかよ……!」
再び激しい攻撃を受けて変異した3-DXに衝撃が走るメタルバードに対し、前の激しい烈火を一身に浴びても未だ生存している3-DXの脅威の生命力に唖然とする大将。
しかも3-DXは積年の恨みが溜まっているかのようにバスから急いで降りた面々を睨み付けると、彼らの方に足を進ませ始めたのだ。
「き、来た……!」
今までよりも明らかに肉体が強化されているであろう風貌に激変した3-DXが向かってくるのを前にして、赤塚組のアツシは思わず背筋に悪寒が走った。
怒りに満ちた形相を浮かべる3-DXの接近に伴い、聖龍隊と赤塚組は臨戦態勢に入る。
その時。黒い大山の如き3-DXが歩み寄っていた最中、その巨大な足を止める攻撃が3-DXに浴びせられた。
「グッ………………」
黒い巨体に攻撃が当たり、鉄に弾かれるような音が生じると同時に攻撃してきた方へ顔を向ける3-DX。メタルバードや大将たちも攻撃を仕掛けた方へ顔を向けると、其処にいたのは。
「おい、デカイの! ボク達が相手だっての忘れないでよっ!」
「まず私達のお相手をするのが筋ってモノよッ」
3-DXに攻撃を仕掛けたのは先ほどもメタルバード達に声をかけたデューイ、その横には武装した芹沢ルリ子の姿も目視できた。
そんな二人を認識した3-DXは、攻撃目標を新世代型や彼らを護衛する聖龍隊や赤塚組ではなくデューイとルリ子の二人に変えて再び歩き出した。
更に其処へ追い討ちをかけるかのように向かってくる3-DXの顔面に、おそらく強力なバズーカであろう砲撃が直撃。砲撃を顔に受けても傷一つ負わない3-DXの禍々しい眼に捉えられた砲撃してきた者は。
「俺達を忘れるんじゃねェぜ、へへ」
と、得意げに笑みを浮かべる聖龍HEADの堂本海斗の双子の兄ガイト。その後ろには彼が隊長を任せられているブラック・ラヴァーズ、その隊士である沙羅/イズール/エリル/ユーリ/マリア/ブラック・シスターズのシェシェとミミ/レディー・バット/蘭花/あららの姿が。
ガイト達を目視した3-DXは、急に歩く速度を速めたと思いきや突然走り出した。
「テメェら迂闊に手ぇ出すな! そいつはタダの生体兵器じゃないんだ!!」
メタルバードの制止が響くも空しく、砲撃を受けた3-DXは速度を上げて遂には四つん這いで地を駆けて一直線にブラック・ラヴァーズの方へと突進していく。
「ッ、離れるぞ!」
3-DXの突進に先駆け、ガイトは突進攻撃を回避するため指示を飛ばす。彼の指示を聞いてブラック・ラヴァーズの面々は散り散りになって3-DXの突進から回避する。
そんな突撃を除けられた3-DXが止まった瞬間に、周辺の聖龍隊士たちが此処ぞとばかりに3-DXに攻撃。集中砲火を浴びせた。
「攻撃の手を緩めるな! こんなの逃がしたら堪ったもんじゃない!」
仲間と連携を取りながら攻撃の火力を緩めず攻め続ける月詠イクト。彼の言葉通りに3-DXを取り囲みながら攻撃を浴びせ続ける森あいにプラス/本郷唯/穴戸レナ/ハルカ・ヘップバーン/ジェラール・フェルナンデス達。
しかし彼らの猛攻を浴び続けても一向に3-DXは負傷せず、それどころか執拗な攻撃に鬱憤が募り、それが怒りの感情と変化してしまった。
「ウゥ…………ウガァッ」「うわッ」
怒りが頂点に達した3-DXは岩石の様な右拳を振り上げると、それを一気に地面へと殴り付けて凄まじい衝撃波を発生させた。その衝撃波に周囲を取り囲んで応戦してた聖龍隊特殊精鋭部隊マン・ヒールズの面々は吹き飛ばされてしまった。
「だから言わんこっちゃない……おい、俺達も加勢してこの場を乗り切るしかねぇみたいだぜ」
「そうだな。もう移動手段のバスもお釈迦だし、ここはアイツらを手助けして一緒に避難するしか手立ては無さそうだしな」
衝撃波に弾かれるマン・ヒールズを目撃してメタルバードは自分達も加勢しようと提案。これに大将も同意して、新世代型二次元人救出に駆り出された聖龍隊と赤塚組はマン・ヒールズと共闘して更なる変異を果たした3-DXに交戦を開始した。
マン・ヒールズ。
別称、聖龍隊特殊精鋭部隊と名称される彼らは、部隊の戦力を統合的に指揮するリーダーをミスティーハニーが担い、聖龍隊結成時より聖龍隊に加盟しているデューイとかつての鎧天狗であった芹沢ルリ子が加盟。その後はガイト率いるブラック・ラヴァーズを皮切りに『ふしぎ遊戯』の本郷唯、『うえきの法則』の森あいとプラス、『しゅごキャラ!』の月詠イクト、『真・女神転生Dチルドレン ライト&ダーク』の穴戸レナ、『レジェンズ-甦る竜王伝説-』のハルカ・ヘップバーン、近年に入隊してる『FAIRYTAIL』のジェラール・フェルナンデスも加わった聖龍隊でも指折りの特殊部隊である。
彼らマン・ヒールズは時に聖龍隊や二次元人の権限を維持するため、聖龍隊は元より政府の汚れ仕事なども請け負う、いうなれば聖龍隊版スーサイド・スクワットである。
余談であるが、ニュー・スターズの卑怯番長、そしてスタールーキーズの門脇将人/ミヤビ/ゼブラもマン・ヒールズのメンバー。その他にも様々な事情や、過去に悪事を働いてしまったキャラが中には不本意ながらもマン・ヒールズに加盟している。
前総長、小田原修司は聖龍隊という組織の維持と二次元人の尊厳を護るための手段として秘密裏に彼らを動かした事も多々あり、最悪の場合二次元人の権威を護る為なら彼らマン・ヒールズを見捨てようとした事も少なくない。
そんなマン・ヒールズを加えた総力は、ゴツゴツとした質感の筋肉繊維が剝き出しになった様な漆黒の外皮に覆われ、その外皮から体に沿ってひび割れの様な亀裂からまるで冷えて固まりかけたマグマを彷彿とさせる赤い光が漏れている全貌の3-DXと交戦を開始した。
「ウガア……ウガ…………ッ」
既に片言の人語も発する事すら難しいほど興奮状態に陥っている3-DXの周囲に、聖龍隊と武装した赤塚組が散り散りに展開して完全包囲する。
「バーンズ! それに大将……二人とも、アレが何なのか知ってるの?」
常に3-DXの動きに警戒しながらメタルバードと大将にミスティーハニーが訊ねると、メタルバードが彼女の問いに答えた。
「あ、ああ、実は………………」
メタルバードは無線を通じて、現場で新たに合流したマン・ヒールズの面々に3-DXの詳細を伝える。3-DXは最強の遺伝子を持つ小田原修司の複製兵器の試作機の一体として生み出され、このバイオテロにも関与しているアルドウ・ウラジェールによって聖龍隊という組織に対して強い敵愾心を抱いている為に執拗に追ってきている事実。さらに度重なる戦闘で幾度となく肉体を変異させてより強靭な生物へと進化している事実も伝えた。
3-DXの説明を聞いて、その脅威にマン・ヒールズは改めて震撼していると、周囲に展開している面々を捉えた3-DXは間髪入れずに脅威の跳躍力で跳びかかり襲ってきた。
「来たわッ」「クッ」
跳び上がって上方から押し潰す要領で襲撃してくる3-DXに、攻撃の対象であるミスティーハニーとデューイは急いで退避。間一髪、巨体の3-DXから逃れられた。
「ウガァ…………セ……セェェリュゥゥタァイ…………!!」
跳躍しての攻撃をかわされた3-DXは再び片言ながらも敵意を向ける聖龍隊の名を高らかに発する。そして着地した地点の目前に乗り捨てられていた自家用車を両手でしっかりと掴むと、それを持ち上げると同時に豪快に振り回し始め、回転の勢いで車を投げ飛ばす。
「うわっ! マジかよ!」
体を回転させて勢いを付けながら持ち上げた車を投げ飛ばしてみせた3-DXの攻撃手段に、目が飛び出るほど驚くメタルバード。彼らは何とか投げ飛ばされた車から回避したため難を逃れられた。
投げ飛ばされて大破した車が炎上し、その車からガソリンが漏れ出し戦場である道路の一部分が火に包まれる地獄絵図の様な景観の中で3-DXは猛威を衰えさせず果敢に戦前へと進攻する。
「ウガアァ……ッ!」
進攻してきたと思いきや、突如走り出した3-DXは戦前まで駆け出すと再度跳び上がり、今度は両手両足を大きく開いてボディ・プレスで圧し掛かろうとしてきた。
「う、うわぁ!」「ひぃっ! よりにもよってプロレス技!?」
まさかのプロレス技で攻めてきた3-DXにセーラームーンとヴィーナスは慌てふためきながらも走り抜け、3-DXの攻撃から逃げ切る。
するとボディ・プレスを仕掛けて地面に腹這い状態となった3-DXの隙をついて聖龍隊と赤塚組が遠距離攻撃。
「今だ! 攻撃しろ」
メタルバードの号令で3-DXに様々な属性攻撃による遠距離攻撃が浴びせられるものの、3-DXはビクともしない。そして3-DXは苛烈な攻撃を一身に浴びながらも平然と立ち上がり、再び周囲に展開する面々を品定めするかのように見回した。
「……まったく。あの人のクローンなだけに、こりゃまた厄介だぜ」
驚異の耐久を誇る3-DXを見て、マン・ヒールズのガイトは異常なまでの肉体強度に呆れてしまう。
すると次の瞬間、3-DXは自分の周囲に展開して攻撃してくる聖龍隊や赤塚組に歩み寄り、目前まで迫ると豪腕を前へと勢いよく振り回して攻撃してきた。
「退避! 退避!」
豪腕を振り回して攻撃してくる3-DXにルーキーズの総部隊長ミラールは退避を命令。そして隊士が離れた時に振り回される3-DXの豪腕に彼らが身を潜めるのに用いていた車が軽々と吹き飛ばされて、退避していた隊士たちの方へ飛ばされてしまった。
「わあっ!」
飛んできた車に六道りんねの使い魔、六文は叫び声を発しながら慌てて逃げる。
その間も3-DXに対して聖龍隊と赤塚組は出来うる限りの攻撃を行う。だが…………
「っ……バーンズ! 攻撃が全く効かないぞ!」
並みの銃火器は兎も角、電撃・氷・水・風、などなど……多彩な攻撃で攻め続けても更なる変異を果たした3-DXには微塵の効果も見られない事実をメタルバードに説くエンディミオン。一方のメタルバードも3-DXに電気の砲撃を直射させるも全く効果が見られない現状に戸惑っていた。
メタルバードは必死で3-DXへの対策を脳内で構想した。その時。
「! メタルバード、見て」「3-DXの動きが止まったわ!」
攻撃を展開してたコレクターユイとコレクターアイの声にメタルバードが3-DXを見ると、3-DXは肉体に炎を浴びせられているだけで簡単に動きを止めてしまってた。
「ッ………………」
まるで攻撃をひたすら堪え続ける様に、その場に片膝を着けて固まった様に動かなくなる3-DX。すると動かなくなっていた3-DXが突如として立ち上がった。
「ウオオオ……ッ!!」
地を揺らすほどの咆哮を発する3-DX。すると全身に見られる固まりかけたマグマの様な亀裂から大量の蒸気が放出された。
「!! ……」
全身に生じた赤い光が漏れてる亀裂から、一気に大量の蒸気を放出させる3-DXにメタルバードや大将を始めとする面々は言葉を失う。
だが全身の亀裂から蒸気を放出する3-DXの体に更なる変化が見られた。
なんと腹部の外皮が花弁の様に4つに開口し、巨大な異形の口が現れたのだ。これには二度も驚いて失言してしまう皆を前に、開いた口からも亀裂同様に大量の蒸気が粘り気のある体液と共に体外へ放出されていった。
「……あ、アレはなんだ……」
腹部より異形の口が、まるで花の様に開口すると途端に大量の蒸気を吐き出す勢いで放出するさまを見て、大将は我が目を疑ってしまう。
この異常な3-DXの生態にメタルバードはいち早く機械化させている眼球で3-DXの肉体を分析してみると、驚きの結果が判った。
「……そうか! 以前にも増して体内の発熱作用が上がっちまっているから、その熱を逃がすために皮膚の亀裂から蒸気と一緒に熱を放出してるが、それだけじゃ間に合わないから腹部の口からも熱を逃がしてるみたいだ」
メタルバードの分析によれば、以前にも増して3-DXは体内の発熱作用を向上させている為に、上がり過ぎた体温を下げる為に外皮の亀裂から熱を蒸気として放出してるが、それでは冷却が間に合わない事から腹部の外皮を開口させて其処からも大量の熱を放出して体外に逃がしているのだという。
異様な腹部の口から体内に発生した熱エネルギーを蒸気として放出して体外に逃がした3-DXは、開口してた腹部の口を閉ざすと再び猛威を振るい始めた。
「セェェリュゥゥタァァアァァイ…………!!」
体内の熱を逃がし終えた3-DXは、再び異常なまでに敵視してる聖龍隊に向かって猛攻を仕掛ける。
周囲に展開してる面々は3-DXの突進などの攻撃を回避しながら各々で応戦する最中、大将とメタルバードは遺棄された車の陰に身を潜めて会話していた。
「それにしてもよ、なんであのデカイのがあんなになっちまったんだ」
「……まあ、多分、オレたちが前に火炎とかの攻撃で過激に熱を浴びせちまったから変異したのかも知れねぇ……って、いうかそれしか思い付かねぇし」
「って! それじゃ、強くさせちゃったのはバーンズたちって事じゃない!」
大将とメタルバードの話を無線で聞いていたミスティーハニーは思わず応戦しながら叫んでしまう。
一方で3-DXに炎を浴びせた隊士達は、炎を浴びせればダメージは負わせられないが動きだけは一時的に止められる事に気付いて再度3-DXに取り合えず灼熱の炎を浴びせてた。
「ッ……けどよ、動きは止めれるが、この後はどうすんだ!?」
「分からないわ……でも、今はとにかくコイツの動きを止めるだけでもしないと!」
熱心に炎を放射するナツ・ドラニグルがこの後の行動について隣のセーラーマーズに問うと、彼女は不明ながらも3-DXの動きを止めるだけでもしなければならないと答える。
そして烈火を浴びた3-DXは先ほどと同じく体内に溜まった熱を逃がすため腹部の口を開口して蒸気を放出した。
と、その腹部の口から蒸気を放出している様子を見た大将はある事を思い付いた。
「そうだっ」
大将は一直線に腹部の口から蒸気を放出している3-DXに向かって走り出した。
「た、大将?」
突然の大将の行動に彼の意図が掴めずミラーガールは困惑してしまう。
ミラーガールだけでなく皆が大将の動向に注目する中、大将は周囲に熱気がこもる3-DXの目前まで辿り着くと装備品の手榴弾を手に取った。
「これでも喰らえッ」
手にした手榴弾を開口している3-DXの腹部の口に放り込む大将。すると大将が放り込んだ手榴弾を呑み込んだ瞬間、全開してた口が閉まり、同時に大将自身も瞬時に3-DXから離れた。そして大将が離れた次の瞬間、放り込まれた手榴弾が3-DXの体内で爆発した。
「ギギャアァァ……ッ」
体内での爆発に激痛を感じたのか、悶絶してしまう3-DX。その様子を見た大将は声を上げて皆に言った。
「やっぱりな! 体ン中からじゃ、流石に攻撃は防げねぇみたいだ」
ゴツゴツとした岩肌の様な漆黒の外皮は銃弾はもちろん様々な属性攻撃を防げるが、その外皮の内側である体内からの衝撃には成す術が無い事が立証された。
さらに大将が起こした攻撃が3-DXの容態に変化をも生じさせた。なんと先ほどの手榴弾の爆発を体内にお見舞いされた3-DXの全身を覆うゴツゴツとした質感の筋肉繊維が剝き出しになった様な漆黒の外皮、その一部が体内爆発の衝撃で吹き飛ばされ剥がれ落ちた事で内部の肉質が曝け出されたのだ。
「あそこだ! 外皮が剥がれた箇所を攻撃するんだ」
如何なる攻撃をも防いでしまう漆黒の外皮が剥がれ落ちた正面胸部に攻撃を集中するよう呼び掛ける赤塚組のテツは、自らも装備している小銃を連射して露出した赤い部分を狙撃していく。
すると今まで全く効いてなかった攻撃の数々が、熱い装甲の外皮が剥がれ落ちた箇所にだけ効いていた。
「なるほど、外皮を剥がせば中は脆いって事か」
多種多様の攻撃を防げる外皮が剥がれた内部は案外脆い事を知って、メタルバードも再度3-DXに向けて電撃砲を発射・攻撃を再開した。
赤い血流の激しい内部が露出した正面に向けて攻撃を展開する一同。だが痛みを感じる外皮が剥がれた正面を気にして、3-DXは剥がれた箇所を庇いながら前進して反撃してきた。
「き、来た……うわっ」
弱点である露出した正面を庇いながら前進してくる3-DXを前に取り乱してしまうシルバー・クロウ達を目前にした3-DXは、両手を頭の上まで振り翳すと一気にそれを振り下ろして強烈な打撃を彼らに与えようと攻撃。
「避けてっ!」
咄嗟にブラック・ロータスが呼びかけた事も幸いし、【アクセルワールド】の面々は3-DXの攻撃を寸前で回避する事ができた。
その後も周囲の面々が3-DXに攻撃を仕掛けるが、3-DXは唯一の弱点である外皮が剥がれた胸部を庇っていたため攻撃を当てる事が難しくなっていた。
「また手榴弾をブチ込んでやる! お前らは援護を頼む」
思う様に事が進まない状景を見た大将は、状況を打開するために再度3-DXの腹部口内に手榴弾を放り込んで追撃せんとメタルバードたち聖龍隊に突撃する際の援護を頼むと同時に突っ走る。
3-DXが突撃していく大将に気付いて攻撃を仕掛けようとした瞬間、聖龍隊は持てる戦力を出して大将の突撃を援護。3-DXは自身の体に浴びせられる攻撃に痛みすら感じないものの、鬱陶しく感じたのか大将への意識が薄らいだ。その瞬間、大将は颯爽と3-DXの懐に飛び込み、手榴弾を放り込もうとしたが。
「ッ、ダメだ! 腹の口が開かねぇ!」
そう、3-DXの腹部にある口はあくまで体内の熱を逃がす為のもので、体内に発した熱が一定を超えない限り開く事はなかったのだ。大将はやむを得ず3-DXから距離を置く。
「聖龍隊! 大将を援護、3-DXに火炎攻撃だ!」
やむを得ず退く大将を見兼ねて、メタルバードは聖龍隊の隊士達に3-DXの火炎攻撃を指示。3-DXに炎を浴びせ、先ほどの様に体温を急上昇させて蓄積された体内の熱を腹部の口から放出させる事で再び開口させようとした。
「ファイアリー」
聖龍HEADの木之本桜が繰り出すファイアリー(火)に続いて他の炎属性の聖龍隊士も3-DXに灼熱の炎を放射。
「グアアア……ッ」
黒山の如き巨体に浴びせられる烈火の炎に、体内の温度が急激に上昇する3-DXは苦しんでいる様な声を発する。
そして狙い通り、体内の温度が急上昇した3-DXはその場で動けなくなり、案の定腹部の口を4つの花弁を開く様に開口させて体内の熱を一気に蒸気として放出した。
「今だ!」
腹部の口が花の様に全開したのを目視した大将は、再び3-DXに向かって駆け出し懐に突入した。そして「ほらッ、喰らえ!」と、手にしていた手榴弾を開口している腹部の口の中に放り込んだ。
手榴弾を放り込んだ瞬間、大将は素早く離れ、手榴弾を放り込まれた3-DXの腹部の口は閉ざされた。そして次の瞬間、最初の手榴弾での攻撃同様、体内で爆発した手榴弾の威力で3-DXの態勢は崩れ、体を覆う装甲の様な漆黒の外皮が剥がれ落ちた。
「ッ………………!」
声にもならない苦痛を発する3-DXは、体内爆発で腹部だけでなく背面や胸部までも曝け出された。
「背中にも弱点ができた! 狙え狙えッ」
胸部や背面にも見られる硬い外皮が剥がれた内部に向かって、大将は狙いを付け易くするため地面に寝転がって小銃を連射し、彼の指示で他の赤塚組も3-DXの外皮が剥がれた箇所を狙って攻撃していく。
「グゥ………………ッ」
外皮が剥がれ耐久性が失われた箇所を集中的に攻撃される3-DXは苦痛で動きを鈍らせる。だが赤塚組は攻撃の手を緩めず、そこに聖龍隊も加勢して3-DXを一気に畳み掛けようと攻め続ける。
するとその時、3-DXが攻撃を浴びせられる中、再び動き出しては自らを攻撃してくる者たちに反撃を行おうと前進した。
「こ、コッチに来たぞ!」
強力な機関銃で応戦する月詠イクトと、その傍らで同じく応戦しているガイト率いるブラック・ラヴァーズは目前に迫ってくる3-DXに動揺する。
だが彼らが動揺し一瞬ばかし動きが止まっていたその時「グオオオォォ………………ッ!!」地を揺らすほどの咆哮を3-DXが発声。その咆哮を真正面から受けたイクトにブラック・ラヴァーズの面々は怯んでしまい完全に動けなくなってしまった。
しかも彼らが余りの咆哮に動きを止められただけでなく思わず耳を塞いでしまい目を瞑ってしまってたその時、強烈な咆哮を発した3-DXの腹部の口が全開し、その口内から熱気と共に大量の体液が放たれた。
「うわっ」「きゃ! な、何これ……」
運悪く、3-DXの一番近くにいたブラック・ラヴァーズのエリルとマリアに放たれた体液が被ってしまい、彼女達は非常に戸惑った。
すると粘液を浴びた二人を目視した3-DXが両手を頭の上に振り上げ、攻撃態勢に入った。
「お、お前ら逃げろ!」
攻撃態勢に入った3-DXを見て、ガイトは目前のエリルとマリアに急ぎ離れるよう呼びかける。だが二人が浴びた白い透明の体液は糸を引くほど粘り気があり、エリルとマリアは思う様に体が動かない。そこに3-DXが両腕を振り下ろして眼前の二人を漆黒の外皮で覆われた巨石の様な拳で殴り掛かった。
エリルとマリアは思わず動揺から表情を固め、強烈な打撃を覚悟した。が、その時であった。
「こんニャろッ」
両拳を高々と振り上げた3-DXの真横から、ルーキーズの岩崎月光が仲間のハチカヅキを担いで力の限り彼女で3-DXを殴り付けた。
超硬度の鉢を頭に被るハチカヅキで横からなぐり付けられた3-DXは勢いよく吹き飛ばされ、強固な外皮で覆われている腕がアスファルトの道路を抉り、一直線に吹き飛ばされた痕跡がハッきりと残る。
月光にハチカヅキで殴られて吹き飛ばされた3-DXは朦朧としながらも立ち上がろうとすると、其処に追い討ちを仕掛けようと月光とハチカヅキに続いて進撃する他の聖龍隊士が駆け付ける。
「
吹き飛ばされた3-DXの腕に抉られたアスファルトを更に踏み付けて砕いてしまうほどの巨体を誇る金剛番長が必殺技:
結果、金剛番長と3-DX二つの巨体が仕掛けた
「うわっ」「きゃあっ」
その一方で同じ
「ぬぅ……!」
不覚にも自身が繰り出した技と形だけを真似された反撃で威力が相打ちされ、双方共に吹き飛んでしまった事実に金剛番長は苦渋の思いを強いた。
その傍ら、金剛番長と3-DXが繰り出した技のぶつかり合いで生じた衝撃波で体中に粘り付いていた体液も吹き飛んだ為にエリルとマリアの両名も辛うじて自由になってた。
「い……今のうちなら」
金剛番長と激突して朦朧と動かなくなった3-DXを視認して赤塚組の山崎千春、旧姓:三原が動けなくなっている3-DXに急いで駆け寄り、おそらく攻撃の反動で体内に篭った熱を放出している為に開いている腹部の口に手榴弾を投げ込もうとした。
そして山崎千春が3-DXの目前まで駆け付けると、所持している手榴弾を手に取り、放り込もうと手榴弾の安全ピンを抜こうとした。その瞬間「う、うわっ!」なんと手榴弾を放り込む手前で3-DXが目の前の山崎千春に気付いてしまい、彼女を巨大な豪腕で捕まえてしまった。
「ち、千春ちゃん!」
親友である旧姓:三原千春の危機を直視して聖龍HEADの木之本桜が叫んだ。一方の千春は3-DXに捕まり、自由が奪われていた。
「グゥゥ……ッ」
獣の様な唸り声を発する3-DXの研ぎ澄まされた紅い眼光を目前に、千春はその3-DXの腹部の口が未だ開いている事に気付いた。そして離さずに所持し続けていた手榴弾のピンを抜くと、すかさず3-DXの腹部の口の中に放り投げた。
「っ……プレゼントよ!」
そう言って腹部の口内に手榴弾を放り投げる千春。3-DXは自身の腹部に異物が放り込まれた感覚に一瞬ばかし千春から意識が遠のいたその瞬間、千春は3-DXの手首を蹴り飛ばして握力を弱めると素早く逃げ出して離れる。
そして千春が離れた次の瞬間、彼女が放り投げ入れた手榴弾は3-DXの腹部内で爆発し、3-DXは再び大打撃を受けてしまった。
「グゥゥ………………ッ」
悶絶して動けなくなる3-DXに周辺に展開している聖龍隊と赤塚組は一斉射撃を開始する。
「もう少しで倒せるかもしれないぞ!」
自身を守る漆黒の外皮も胴体部分のは殆ど剥がれ落ち、赤い筋肉組織が晒された無防備な状態で無数の攻撃を浴び続けている3-DXをもう少しで倒せると思っている大将は皆に呼び掛ける。
しかし3-DXは無防備な容態に変化し、無数の銃弾や攻撃に晒されているにも関わらず未だその猛威が衰える事はなかった。
「セェェリュゥゥタァァアァァァァイィ…………ッ!!」
むしろ攻撃に晒されて、3-DXの興奮が上がってしまっている様だった。
「クソっ、まだ倒れねぇのか……!」
幾度となく攻撃しても倒れる気配が見られない3-DXの猛威に大将は焦りを感じていた。
と、その時。装甲の様な漆黒の外皮が剥がれた3-DXの左胸部に紅い臓器らしきものが覗いているのをメタルバードが遠目で認識した。
「っ。あれは……!」
紅い臓器らしき物体にメタルバードは機械化させてる眼球で咄嗟に調査してみた。すると紅い物体の正体が判明した。
「あれは……間違いない、心臓だ! 肥大化した上に膨張してる心臓が見えてるぜ!」
漆黒の外皮が剥がれた左胸部に確認できる紅い臓器、それは度重なる変異を得て肥大化・膨張した心臓であった。
メタルバードから3-DXの漆黒の外皮が剥がれ落ちた胸部に微かに確認できる紅い臓器が生物にとって重要でかつ致命的な弱点である心臓だと伝え聞いた赤塚組のテツはライフルを構えて狙撃の体勢に入る。そして深呼吸すると静かにライフルの引き金に置いた人差し指をゆっくりと引いた。
次の瞬間、テツが構える狙撃銃の銃口から一発の弾丸が一直線に3-DXへと放たれる。弾丸はテツの狙い通り、3-DXの胸部に微かに視認できる心臓へと一直線に向かっていく。そして弾丸は3-DXの心臓に被弾し、そのまま貫通して背面を抜けていった。
「グオオ……ッ」「やった!」
弾丸が心臓を貫き3-DXが唸ると、それを目視したテツは思わずガッツポーズを取って喜んだ。
こうしてテツが放った弾丸が心臓を貫通した事で3-DXもようやく倒れるかと、狙撃したテツも他の面々も思った……だがしかし、心臓を撃ち抜かれてもなお3-DXは活動を維持していた。
「ウオオオオオオオォォ……ッ!」
心臓を撃ち抜かれても未だ存命している事を主張しているかの如く、3-DXは天に向かって雄叫びを発する。
「心臓を撃ち抜かれても、まだ生きてんのかよ……!」
「あれだけの生命力だ。心臓に多少の損傷を与えても、スグには死なないんだろう」
仲間のテツによる一発の弾丸が心臓を貫通してもなお生存している3-DXに落胆する大将に、メタルバードは3-DXの桁違いの凄まじい生命力ゆえに心臓に負傷させたとしても簡単には倒せない事実を述べた。
しかしこの状況に先ほど狙撃したテツは諦めず、果敢に3-DXの外皮が剥がれた箇所に覗く心臓へと銃弾を発射。二発目、三発目の弾丸も心臓に着弾。すると此処でようやく3-DXの動きが鈍くなってきた。
「ギュオオオォォォ……ッ」
この弱りきった容態の3-DXにメタルバードが一斉攻撃の合図を出した。
「弱りきっている今がチャンスだ! 総攻撃!」
電撃・炎・水・氷・風・光などなど多種多様な技が3-DXに向けられ放たれ、一身にその数々の技を受ける3-DXには最早我が身を護る強固な外皮は欠落し完全に防備する事はできない。
そして長きに渡る3-DX。漆黒の外皮に覆われ、固まりかけたマグマの如き赤い光が漏れる亀裂、体内の高温を冷却する為の蒸気噴出を行うまでに至った小田原修司の驚異の複製兵器との戦いは幕を下ろした。
「セェェリュゥゥゥタァァアァァァァイ……………………ッ……!」
断末魔の如き最後の片言を発した3-DXは、その場に倒れ完全に動かなくなった。
「や……やっと倒れた……」「………………」
ようやく激戦の末に生命反応を停止した3-DXを視認して蒼褪めた表情で唖然とする大将と戦闘に加わっていたミスティーハニー。彼らと同じく他の面々も桁違いの凄まじい生命力と戦闘力を備えた3-DXとの戦闘を終えて心底安堵した。
既に現場は、凄まじい戦闘の傷跡で道路は大破し、一行がやってきた道は燃え盛る車が山積みとなって後に退く事すら叶わなくなっていた。
「や、やっと倒せたけどよ……これからどうすんだ?」
大将が聖龍隊に問うと、ミスティーハニーも対称や皆と同様疲れ切った表情で答え返した。
「わ、私たちが使ってた車も全部あの敵に壊されちゃったし……このままじゃ、それこそゾンビの格好の獲物だわ」
既にマン・ヒールズが搭乗してた車も3-DXに破壊されてしまい走行不能の現状で、このままではゾンビに襲撃されてしまうとミスティーハニーは語る。
するとその時、戦闘を傍観し同行していた新世代型の小野田坂道が自らの視線よりやや上の方へと指差した。
「あっ、あれ……!」
小野田坂道が指した先には、天まで聳えているかのような高層ビルが在った。
既に本部からの情報で自分達の現在地、及び目の前のビルが何なのか知っていたメタルバードは一言発した。
「……コイツが……ゴールドマンの」
偶然にも皆の目前に在る、その50階は有ろうかという巨大ビルはこのバイオハザードを引き起こした張本人ゴールドマンが本拠地にしている彼の自社ビルであった。
「此処がゴールドマンの本拠地か」
天まで聳える巨大ビルを見上げてメタルバードが重い表情で呟く。
[原罪]
一方、自らが仕掛けた策略通りに誘導され自社ビルに到着した二次元人たちの存在を知るゴールドマンは、最上階の社長室にて静かに彼らが己の前まで辿り着く事を待ち望んでいた。
「とうとう辿り着いたか、私の手はず通りだ。運命の扉は、今開かれる……」
もはや引き返す選択肢も失った一行は、新たにマン・ヒールズも加えてゴールドマンが潜伏している彼の自社ビルに突入。そんな聖龍隊と赤塚組に護られながら、逃げ道すら奪われた新世代型達も同行を続けてた。
すると案の定、ビルの入り口からゴールドマンの手により全身を機械で改造されたゾンビが3体ほど何もない所からいきなり姿を現して迫ってきた。どうやら機械改造により体を透明にする能力を得た様だ。
だが透明化を解除して姿を現し襲ってくるゾンビ達を一行は難なく撃ち抜いて容易く突破した。
そして正面玄関を抜け、ビル内部に突入すると広いエントランスホールが視界に広がった。
「まるで中に招かれているようだな」
改造ゾンビしか配置せず、難なく侵入を許した状況にまるで自分達を招いている様に感じるキング・エンディミオン。
一行はまず、ゴールドマンが居ると思われる最上階まで早急に辿り着けるエレベーターに直行しようとエントランスホールに設けられてる円形の設置物を迂回しようと進む。
すると行く手に、両手にレーザーナイフを携えたサイボーグゾンビが2体、突如として姿を現し、小まめに瞬間移動しながら徐々に接近してきてた。近付けさせまいと、赤塚組が銃で迎撃すると攻撃が当たる度に転倒して動きが止まった。だが2体のサイボーグゾンビの後ろからもう1体別の個体が同じく瞬間移動しながら接近してくるのが目で捉えられた。
「近付けさせるな!」
啖呵のいい大将の号令の下、彼と同様戦前に出ている赤塚組の幹部たちは銃撃で接近してくるサイボーグゾンビと応戦。するとゾンビ達は手に携えたレーザーナイフを遠投してきた。だが赤塚組は取り乱す事無く、落ち着いて投げ付けられたナイフに銃弾を当てて的確に撃ち落としながらゾンビ達にも絶え間なく攻撃を当て続けていく。そして1体また1体と倒し、遂に最後の1体を遠投されるナイフを撃墜しながら漸く倒した。
全てのサイボーグゾンビを突破した一行は、再びエレベーターに向かって進み出す。
メタルバードと大将の二人が先頭に立ち、真っ先にエレベーターの前まで行くと、エレベーターが開いて中から顔にバイザーを装着した両腕がレーザーソードに付け替えられたサイボーグのゾンビが2体出現し斬りかかってきた。これに大将は装備していた銃で応戦し、メタルバードはゾンビがレーザーソードで斬りかかってくる所を刃に形状を変化させた自身の両腕で防ぎつつ逆に斬り倒した。
そして最低でも大人5,6人が乗れるであろうエレベーターに誰が乗り込もうとかと話題が浮上しそうになった、まさにその時。
「うわっ!」
1階に到着したエレベーター前で固まっていた一行に、突如として何処からともなく閃光が放たれ、その衝撃で多くの者が吹き飛んでしまった。
「うおっ」「ッ!」
閃光の衝撃で転倒してしまった大将とメタルバードの両名は、そのままエレベーターの室内に転がり込んでしまう。しかも二人が転がり込んだ拍子にエレベーターが起動してしまい、大将とメタルバード二人だけを乗せてエレベーターは停止する事無く上へ上へと昇っていってしまうのであった。
「バーンズ!」「大将っ」
二人を乗せて上昇するエレベーターを見上げて、ジュピターキッドとミラーガールが名を呼ぶが時既に遅し。
すると皆が二人を乗せて上昇していくエレベーターを見上げていると、後方から声が呼びかけてきた。
「フハハハ……さあ、これであの二人は最上階に辿り着くだろう。その間に我々は、我々だけで宴を楽しもうではないか」
その声にエレベーターを見上げていた全員が振り返ると、上方高くに声の主である赤いローブを身にまとった怪人が浮いていた。
「お、お前は……!」
空中に高く浮上している白い仮面で素顔を隠している謎の怪人に向かってキング・エンディミオンが問い掛けると、怪人は地上の面々を見下ろして問いに答えた。
「我が名は………………………………イクシオン」
この名を聞いた一部のキャラ達は不安な真情を顔に出した。
「イクシオンか…………いやな名前だ」「へっ? なんで?」
名前を聞いて嫌な名だなと呟く山崎貴史に対し、隣にいた同じ赤塚組のアツシが何でと不思議がって戸惑いの表情を浮かべると、山崎貴史や他のキャラたち同様にその名に対しての知識を持っているジュピターキッドが重苦しい面立ちで語った。
「イクシオン、またの名をイクシーオーン………………神話で語り継がれる、最初の殺人者だ!」
ジュピターキッドが語った衝撃の事実。
イクシオン、またはイクシーオーンと名称される神。ギリシャ神話で語り継がれる神の一人で、イクシオンは義父に当たる神を大きな炭火を仕掛けた落とし穴に嵌めて殺害したと云われている神。これによりイクシオンは、ギリシャ神話では血縁者を最初に殺した神として伝承されている。
肉親を殺めた神イクシオンの名を語る怪人は、白い仮面を着け、赤いローブを身にまとった怪人で、見た目は人間に近く、人間の言葉も流暢に喋ることができていた。
そんなイクシオンは両手にククリ刀と呼ばれる特殊な形状をしているナイフを携え、自らの周囲に紫色のオーラを無数に飛ばしながら地上の面々に向かって語り掛けてきた。
「貴様らが真に、この乱れた世を生き延びられるか……真に生き残る価値があるか、私が見定めてやろう」
そういうとイクシオンは地上の面々に向かって攻撃を仕掛けてきた。
「き、来た! 隊士、展開して新世代型たちを護れ! 同時にイクシオンに反撃」
メタルバードのいない現場で代わりに指揮を執るジュピターキッドの指示で、聖龍隊の各隊士らは周辺に展開して新世代型たちの護衛及びイクシオンへの反撃態勢に突入。
それに続いて赤塚組も同様にイクシオンへ銃口を向けて周辺に展開。
怪人イクシオンとの戦闘に突入した。
一方、エレベーター室内では。
「……もう後戻りもできないな……こうなりゃ前進あるのみだ」
不慮の事態によりエレベーターに吹き飛ばされたメタルバードは、上昇するエレベーター室内で腹を括り大将と二人だけで進攻する決意をしていた。
場所は戻り、1階エントランスホールでは。
怪人イクシオンからの猛攻に地上の面々は凌ぎを削っていた。
「ハッ」
イクシオンは両手に携えるククリをブーメランの様に投げ飛ばして、遠距離からはもちろん接近してからの斬り付け攻撃までも自在に繰り出してきた。
「はっ、えいっ」
イクシオンからの斬撃にセーラーウラヌスなどの刃物を武器とする者たちは、果敢に刃でイクシオンの斬撃に対抗していく。
するとイクシオンはナイフでの斬り付け攻撃を一旦やめ、お次は周囲に漂わせている紫色のオーラからエネルギー弾を形成して発射、飛ばしてきて攻撃してきた。
「これは任せてっ」
物体のないエネルギーなら難なく撥ね帰せるミラーガールは瞬時に戦前へと飛び出して、イクシオンが放ったエネルギー弾を鏡の盾で弾き返す。
すると此処でイクシオンは地上に降り立ち、空中を浮遊する際に使用している紫色のオーラを戦前で戦う一行に向けて放ち、眼前でそのオーラを弾かせ、目晦ましに用いた。
「うッ……」「め、目が……」
戦前でイクシオンと応戦してたミュウイチゴに七海るちあはオーラが弾けた際の眩い光で視力が一時的に不能に陥ってしまう。そんな彼女達にイクシオンは武器であるククリを投げ付け、彼女達の晒された肌を著しく傷付ける。
露出している腕などの箇所にククリで切り傷を負わせられた乙女達であるが、怯む事無く眼前のイクシオンに反撃する。
するとイクシオンは、戦闘には直接参戦していない新世代型たちにも攻撃を仕掛け始めた。
「うわっ!」
鋭利なククリが自分達に投げ付けられた状景に直枝理樹を始めとする新世代型たちは戸惑うばかり。
しかし彼らに浴びせられようとしたククリを聖龍隊のマカ=アルバーンやリナリー・リーが弾き返して新世代型たちを護り切る。
だが、これにイクシオンは遺憾を感じたのか目付きをより鋭くさせて攻撃の嵐を一層激しくしてきた。
両手からククリを投げ付けると同時に、周囲に展開させている紫色のオーラからもエネルギー弾を発射しての二重攻撃を仕掛けてきた。
「っ、何とか防ぐんだ!」
ジュピターキッドの声が響く中、エネルギー弾はミラーガールのバリアーでどうにか防ぐ事は成し得たが、彼女の頭上を飛来していったククリだけは聖龍隊や赤塚組の手を潜り抜け、新世代型たちに向かって飛んでいった。
鋭利なククリが新世代型たちの目前まで迫ろうとしていた、まさにその時。その飛来してきたククリを弾き返して防いでみせた者達が戦前に名乗り出てきた。
「アタシ達がいるって事、忘れないで欲しいね」
「我らも此処まで共に苦楽を体験した身の上……助太刀いたします!」
纏流子と
「私も……ここまできて、やられたら堪ったもんじゃありません」
同じく皆と長く同行している栗山未来もイクシオンとの攻防に参戦の意志を示した。
「あらら、彼らが同行してきた新世代型なの? 結構、血気盛んね。まあ、若いからかもしれないけど」
「それは助かる。正直、アイツには応戦するのが必死なんだ。自分の身は自分で護って欲しいね」
参戦の意思を見せる新世代型たちに先ほど合流したマン・ヒールズの芹沢ルリ子にデューイが物申すと、デューイの発言に
「失礼だが貴殿! 我らは己が身を護るだけにあらず! 己が身に降り注ぐ災厄も自らが手で振り払う所存! 見くびらないでもらいたい」
「???」
「あ、あーー……気にしないでください。コイツ、前からこんな感じなんです」
自身の身を護るだけでなく戦力としても加勢する意気込みを伝える皐月であったが、彼女の少し気難しい言動に唖然としてしまうデューイとルリ子。そんな二人に流子が通常通りの皐月だと説明する。
そして戦力に加わった新世代型たちが戦前に出たのを視認したイクシオンは、高速で空中を浮遊移動して戦前に出た新世代型たちにククリで斬り付けようと眼前まで迫った。だがこれを栗山未来が自身の血を結晶化させた刃で、
攻撃を防がれたイクシオンは一旦後退し、体勢を立て直して再度攻撃に転じようとする。
「何処が弱点とかは解らないが……取り合えず弾をお見舞いするでヤンス!」
大将がいない赤塚組に指示を飛ばすギョロの一声で、赤塚組は全員がイクシオンに向けて銃撃戦を展開。無数の銃弾がイクシオンに浴びせられる。
その傍らで赤塚組のミズキが、聖龍HEADのちせと共にイクシオンへレーザーを発射し迎撃しようとしていた。だがイクシオンは自分に向けられる銃弾や光線を少しでも弾こうと、両手に携えるククリを投げ飛ばして空中で銃弾を弾きレーザーを曲げて、武器を防御にも用いていた。
「あのククリ、どうもタダの金属じゃない……そうか、一種の水晶に近い鉱物、いやエネルギー体でできてる」
イクシオンが幾度と投げ付けたりして手から離しているにも関わらず、絶えず両手に見られるククリは金属ではなく一種のエネルギーで構成された武器であるため無限に繰り出せているのだとジュピターキッドは推測した。
そしてイクシオンの接近してからの斬り付け攻撃に新世代型たちは数少ない戦闘タイプの纏流子や栗山未来らによって攻撃を防がれる事で難なく逃れ、その間聖龍隊と赤塚組はイクシオン本体に攻撃の雨を浴びせて一刻も早い対処を進めていた。
すると激しい攻撃に幾たびも晒されたイクシオンは、形勢を逆転させようと空中で高速回転し、強烈な竜巻を発生させてから急接近し戦前の者達に斬りかかる。
「うわっ!」
突如として紫色のオーラを用いて浮遊しながら交戦してたイクシオンが高速回転し、強烈な竜巻を発生させてその中から急接近してから戦前の者達に斬り付ける行動に、戦前に出てない新世代型達も驚き叫ぶ。
「きゃあっ」「ッ、いったぁい……!」
急接近してきたイクシオンの斬撃で、晒している腕や肩に切り傷を負わせられて痛みに表情を歪ませるミミとシェシェ。
「怯むな! 攻撃を続けるんだ!」
ジュピターキッドは皆がイクシオンが発生させた竜巻に怯んでしまう中も、皆に呼びかけながら鞭で近場にあったゴミ箱を捕えるとイクシオンが身を潜める竜巻の中へと放り込む。
「グッ、ッッ……!」
身を潜めていた竜巻の中にステンレス製のゴミ箱を放り込まれた事でゴミ箱と激突、それによって動きを停止してしまい竜巻も消えてしまったイクシオンはゴミ箱を放り込んだジュピターキッドを睨み付けた。
「……バーンズ、大将。今ごろは……いや、あの二人だ。大丈夫だろう」
イクシオンと熱戦を繰り広げる戦況の中で、ジュピターキッドはエレベーターで進行していった二人の安否を気にしかけたが、スグに二人なら大丈夫だろうと目の前の戦いに集中する。
一方、不覚にもエレベーターに乗り込んだメタルバードと大将は、そのまま最上階の50階までエレベーターが直行した事で早々に進攻を続けていた。
「いやぁ~~、さすが金をかけているだけあるぜ。いい仕事してまんなぁ」
「って! なに惚れ惚れしてやがんだ! 今は間取りや造りを眺めてる場合じゃないだろッ!」
道中、大将はおそらく客人を招き入れる為に造られたであろう豪勢な和室に目を輝かせていた。そんな部屋の隅々まで眺め続ける大将にメタルバードは急かしていた。
再びビル50階を進攻していく二人の前には、ビル玄関前から出現するサイボーグ系のゾンビが両手にビームサーベルを備え付けて向かってきた。
「へへっ、今じゃもう怖くもなんともないぜ」
幾度となく異形の存在と対峙してきた大将にとって、最早サイボーグのゾンビなぞ恐怖の対象外であった。
そんな行く手を阻む改造されたゾンビ達を悉く撃破していくメタルバードと大将は、目的のゴールドマンがいるであろう社長室まで足を進ませるのであった。
そしてメタルバードと大将の二人は、遂にゴールドマンが待機している彼の社長室にまで辿り着いた。
社長室に踏み込むと、そこには黒の革張りの豪華な椅子に座って二人を待ち続けてたゴールドマンが出迎えた。
「待ち侘びたぞ……聖龍隊新総長メタルバード、そして赤塚組頭領 赤塚大作」
「ゴールドマン! 貴様は何をしているのか分かっているのか!」
大将と共に踏み込んだメタルバードがゴールドマンに激しく問い詰めると、ゴールドマンは淡々と説き始めた。
「全て承知の上だ、君たちこそ分からないのか? 生物界のバランスを乱してきた人間……今まで自然界に対して犯してきた罪……人類という欲望に塗れた種が本来背負っている原罪を……」
『…………………………』
「私は人類が乱してきた自然を、生態系を取り戻すため……強欲な種を排除し、世界のバランスを取り戻し保持するために私はこの計画に賛同したのだ!」
徐々に熱く説き出すゴールドマンに、メタルバードと大将は毅然とした態度で対峙し続ける。
「生物界のバランスを護るため、人類の……二次元人、三次元人全ての種の上に新たな生物を創造し、本来あるべき自然を取り戻す!」
そして熱弁したゴールドマンはスッと立ち上がると眼前の二人に言い放った。
「さあ最後の戦いだ、生物界の頂点に君臨する支配者は2つといらない。出でよ! 新しき支配者、S-エンペラー」
立ち上がったゴールドマンが右側に腕を振るうと、突然3人がいる部屋が上昇し、そのまま屋外に。するとメタルバードと大将の目に、自分達がいる部屋と同様に屋外へ上昇してきた幾つもの管に繋がれた球状の物体が確認できた。
と、同時に。同時刻に1階のエントランスホールの大画面にメタルバードと大将、そして二人と対峙するゴールドマンが映し出された。
「! あれ……!」
偶然にも丁度イクシオンを戦闘不能に陥れた直後に映像が映し出された為、エントランスホールで戦闘を繰り広げていた面々も大画面に目を向ける。
すると大画面に目を見入られる面々に、倒された筈のイクシオンが立ち上がり前触れもなく語り始めた。
「フッフッフッフ……Sエンペラーも目覚めたようだ。これで、この乱れ切った世界にも変革が訪れ……一新される事だろう」
「な、なんだと!」
イクシオンの一言にマン・ヒールズのデューイが激しく反応する。
その頃、球状の機械に稲光に近い強力な電流が与えられ、二人がその激しい電気による稲光に思わず目を背けてしまっていると、球体から半透明の水晶の様な体をした人型の物体が飛び出した。
空中に浮かび続けるその人型は神々しいほどの光沢を放つ水晶の体に、胸には赤いコアが。更にその水晶の者は顔の前で腕を組みながら片言で喋り出した。
「ワタシハ……ワタシハ……シゼンカイノチョウテンニタツモノ。ニンゲンヲ、フルキシュヲホロボスモノ……ニクムモノ。ワタシハ、S-エンペラー……スベテヲコワシ、スベテヲサイセイスル」
自らを自然界の頂点に君臨し、人間を含む全ての古き種を憎しみ滅ぼす者と語る、その水晶の者は顔の前に組んでいた腕を下げて地上のメタルバードと大将の2人を見下ろした。
その瞬間、S-エンペラーの顔を視認した2人は驚愕。同じく1階のエントランスホールの面々も、巨大モニターに映し出されたS-エンペラーの顔を一目見た瞬間、一同の全身に衝撃が走った。
なんと水晶の様に半透明の肉体を持つS-エンペラーの顔が、あの小田原修司と寸分違わず一致していたのだ!
小田原修司と瓜二つの顔を持つS-エンペラーを前に驚愕し、言葉を失くしているメタルバードと大将にゴールドマンは不敵に語り掛けた。
「フフフ、究極にして至高の遺伝子を持つ小田原修司。彼の破滅を誘うともいわれる遺伝子こそ、新たな世界を創造するのに相応しい! さあ、かつての旧友と戦うがいい」
そう、ゴールドマンは有ろう事に小田原修司の遺伝子を用いてS-エンペラーを生み出していた。S-エンペラーのSは、ShujiのSの意味を成していた。
S-エンペラーの覚醒と明らかになった素顔に、目前の大将とメタルバードだけでなく映像越しでその状景を目撃した1階の面々も衝撃を受けていた。
その時「ふふははは……これで、これでお前達も終焉だ……!」不敵に笑うイクシオンの顔から着用してた白い仮面が外れ、その仮面が床に落ちる音が辺りに木霊した。
そして皆がイクシオンに顔を向けると、彼らの目に驚愕の光景が飛び込んだ。
なんとイクシオンの素顔、それもまた小田原修司の顔と瓜二つであった! ただ完全に瓜二つではなく、左頬側面から首筋にかけて肌が緑色に変色しており、口周辺も同様に不気味な緑色に変色した何ともおぞましい形相だった。
「!!」
イクシオンの素顔までも皆が旧知している小田原修司の顔と酷似している状況に、全員が声にも出ないほど愕然としてしまう。
すると、そんな愕然とする皆々に素顔を明かしたイクシオンが悠々と語り出した。
「ははハハ……この私も、何を隠そうと小田原修司のクローン。真に強き存在と対峙するべく、この場に現れ、貴様らと刃を交えたまでよ」
イクシオンの言葉に衝撃を受ける面々に、イクシオン本人は語り続けた。
「人とは何か……それは真に強さを欲する生き物なり! 弱さは罪、弱さは恥……そんな自我の下で己が力を極限まで高め合い、競い合い、そして醜くも戦い合い、殺し合う存在……それがニンゲン! さあ、本能のまま戦おうぞ……我らが! いや俺達が望むまま、傷付け合い殺し合い……思う存分、戦いという名の宴を披露しようぞ!!」
人間は戦いを望む生き物と主張し、故に死力を尽くして戦い合おうと強く激しく豪語するイクシオンは、その小田原修司の顔立ちに酷似した醜い形相で眼前の一行に説き伏せる。
するとイクシオンが着衣している赤いローブの背中が次第に膨れ上がっていき、イクシオン自身も自然と猫背になっていった。そして膨張した背中がパッカリと割れ、その中から容姿や風貌を一変させたイクシオンが脱皮するかのように一新させた姿を現した。
脱皮する要領で第二形態に移行したイクシオンの姿を目にして一同は衝撃と焦燥そして驚愕で表情を一変してしまう。
第二形態のイクシオン、それは全身ふやけた生白い皮膚に顔は最早人間のものではない形相の、有名なB.O.W.タイラントやネメシスを彷彿とさせる異形の容姿へと変貌してしまった。
こうして最上階では小田原修司の遺伝子から創り出された新たなた自然界の頂点にして全ての種を滅ぼさんとするS-エンペラーと、それに対抗するメタルバードと大将の激戦が。
1階のエントランスホールでは、同じく小田原修司の遺伝子から造られていたイクシオンの驚愕の第二形態との戦いに突入する聖龍隊と赤塚組の激戦が。
二つの激戦が今、繰り広げられる事と相成った。
[象徴]
遂に今回のバイオハザードの黒幕ゴールドマンの許へと辿り着いたメタルバードと大将。
だが二人の前に、またも旧友である小田原修司の遺伝子から創り出された驚異の生命体、その名もS-エンペラーが立ちはだかった。
自然界の新たな頂点として生み出されたS-エンペラーは人間を含む古い世代を憎しみ、それらの種を根本から滅ぼす存在だと自負していた。
そして、そのS-エンペラーとメタルバード&大将の戦いが今始まろうとしていた。
S-エンペラーは半透明な水晶状の体に、周囲に多数の同色の球体を飛び交わしてメタルバードと大将に迫ってきた。
「来たぞ」「ああ、覚悟は出来てるぜ」
戦いの幕開けを告げるメタルバードに反して大将は覚悟を決めた顔付きで迫るS-エンペラーに真っ向から対峙する。
するとS-エンペラーは手始めに、自身の周囲を飛び交う水晶体を自在に宙で踊らせながら二人にぶつけようとしてきた。
「こんなんで俺らの相手が務まるかってんだ!」「そうよッ」
自分達に向かって飛んでくる水晶体にメタルバードは電気を纏った刃に変形させた右腕で、大将はショットガンで水晶体を弾き返して難なく攻撃を防ぐ。
更にこのとき、メタルバードは同時に機械化している眼球でS-エンペラーを調査し、弱点を探っていた。
「大将! 奴の弱点は胸の赤いコアだ、其処を狙うぜ!」
「おうッ、わかった!」
調査した結果、S-エンペラーの弱点が胸部に見られる赤いコアである事が判明したメタルバードは大将にもその事実を伝えると彼は意気揚々と返答して更に激しく銃撃を仕掛けていく。
だがS-エンペラーも当然ながら反撃してきた。周囲に展開させる多数の水晶のビットを鋭利な剣に変形させてメタルバードと大将に斬りかかる。
「大将、危ない!」
斬り付けられそうになる瞬間、メタルバードは素早く大将の眼前に飛び出て剣に変形したビットからの攻撃に我が身を盾にして対峙する。が、剣に変形したビットの剣戟は凄まじく、普通の物理系の攻撃では全く傷一つ付かないメタルバードの鋼鉄の肉体を軽々と切り付けてしまった。
「うわッ」
斬撃を受けたメタルバードは怯んで後ろへと体勢を崩すが、スグに自身の胸部に付けられた切り傷を見て愕然としながらも体勢を立て直し反撃に移る。
するとS-エンペラーは追撃といわんばかしに、ビットだけでなく両腕までも鋭利な剣に変形させて一気に二人に斬りかかろうと迫った。
「させるかッ」
しかし今度は攻撃を受けんと、大将がS-エンペラーに向けてショットガンを連射。それに続いてメタルバードも電撃砲を連続で放射してS-エンペラーを怯ませ、攻撃を阻止してみせた。
その頃、戦闘タイプの新世代型達も参戦して戦力を増加した聖龍隊と赤塚組の本隊は1階にて第二形態へと変貌したイクシオンとの激戦を展開していた。
だが、第二形態へと変異を遂げたイクシオンとの戦闘は生半可なものではなかった。
「う、うわっ!」
誰よりも接近して攻撃せんとしていた新世代型の
と、其処に動きが止まった瞬間を狙って赤塚組が一斉射撃を展開するが、第二形態に変貌したイクシオンはその巨大な体躯からは想像できないほど俊敏な動きで射撃を回避し、残像が見えるほどの素早い動作で応戦する聖龍隊や赤塚組を撹乱していく。
「は、速すぎる……!」
「落ち着いて! 必ず動きが止まる瞬間があるわ、其処を狙えば……」
余りにも早すぎるイクシオンの動きに動揺してしまうアツシを始めとする面々にミズキが冷静に狙撃するよう指示を飛ばす。
するとイクシオンは動きを止め、正面を向けたと思いきや両手を白く発光させ始めて何やら仕掛けようとしていた。
「!? 何かする気だわ……!」
「どっちにしろ、今のうちだ! 一斉に撃ち込めッ」
何かを仕掛けようとしているのは明白のイクシオンに対し緊張を張り詰めるミスティーハニーだが、それに反してガイトは動きを止めたイクシオンに向けて一斉攻撃を展開していく。
すると次の瞬間、イクシオンは発光させた両手を地面に突き刺すと、突き刺さった箇所から半透明な水晶を発生させたのだ。
「な、なに!?」
両手を地面に突き刺すと同時に水晶を発生させたイクシオンにキング・エンディミオンらが驚いていると、更に発生した水晶の塊からクリスタルのドラゴンが作り出され、その二頭のドラゴンは天空に円を書く様に舞い上がると皆の頭上から一気に降下して鋭利な牙で攻撃し掛けようと迫ってきた。
「ど、ドラゴン!!?」「そ、そんな……こんな事もできるのか?」
発生した水晶からクリスタルのドラゴンを作り出し、そのドラゴンで攻撃する事もできるイクシオンの能力に愕然とするワイルドタイガーとバーナビー。
「う、撃て撃て! 兎に角、あのドラゴンを撃って何としても壊すんだ!」
頭上から降下してくるドラゴンに愕然としながらも、自分達に向かって鋭利な牙で攻撃してくる水晶のドラゴンをどうにか破壊しなければと赤塚組のテツが皆に銃撃を促す。
そして一斉にドラゴンに向けて銃撃が浴びせられると、どうにか水晶のドラゴン二頭は粉々に砕け散り、破壊する事ができた。
だがイクシオンの猛攻は止まる事を知らず、イクシオンは更に発生させられる水晶を用いて攻撃しようとしていた。
するとイクシオンの胸部に、赤いコアらしきものが確認でき、イクシオンはそのコアからエネルギーを発生させて水晶を生成しているのが目に見えた。
「そうか、あの胸からエネルギーを発生させて水晶を生成しているのか!」
セーラーウラヌスは胸のコアからエネルギーを発生させて、そのエネルギーで水晶を自力で生成させて攻撃に用いているイクシオンの生態を説く。
そして胸のコアから発せられるエネルギーで水晶を生成したイクシオンは、両腕に水晶で形成した剣を握り、横方向に素早く動き出す。
「は、速い!」「これじゃ、さっきの形態の方が遥かにマシだぜ」
残像が垣間見える程の動作で右へ左へ動いて此方を撹乱するイクシオンに、海斗とガイトの兄弟は愕然とする。
そしてイクシオンは残像が見えるほどの速度で移動しつつ撹乱しながら確実に接近し、両手の水晶の剣で容赦なく斬り付けて来た。
「うわッ」
鋭い一太刀を浴びて悶絶するエンディミオンを始めとする戦前の隊士たち。一方で一撃を与えると両手の水晶の剣が砕け散ったイクシオンは後退し、体勢を立て直して再び攻撃しようと身構える。
イクシオンは次に発生させたエネルギーを手に凝縮し、剣ではなく斧を両手に形成。その斧を次々に成形すると続け様に戦前に向けて斧を投げ飛ばして攻撃してきた。
「抗戦しろッ!」「撃ち落とすのよ!」
赤塚組のテツとミズキは次々に投げ付けられてくる水晶の斧を狙撃して地面に落下または撃ち抜いて破壊して抗戦する。
すると自生するエネルギーで生成した水晶でドラゴンや剣、斧を成形した攻撃を全て防がれたイクシオンは新たな動きをみせた。
それは何と、今まで通り残像が視界に見えるほどの速さで移動したのだが、その際に全身を透明化させて、より視界に自分が捉えられない様にしたのだ。
「き、消えた!?」
「違うわ! 自生してる水晶を生み出すエネルギーを利用して、光が自分の体を屈折するようにしたんだわ!」
水晶を自生するエネルギーで光を屈折させる事で己を透明化させていると、真紅は驚愕する穴戸レナに説く。
一方で自生するエネルギーで光を屈折させて自身を透明化させたイクシオンは、素早い動作に付け加えて透明になった体躯で皆の視界に捉え難くなった状態で再び手に水晶の剣を携えて接近。斬り付けようとかかって来た。
「!!」
だが斬りかかる瞬間、剣を振り上げるイクシオンの肉体が若干ながら薄らと視界に捉えられる様に、それを目の当たりにする新世代型たちは言葉を失くしてしまう。が、彼らに斬りかかろうとする瞬間だけに姿を捉えられるイクシオンに聖龍隊が強烈な攻撃をイクシオンに浴びせて、イクシオンを弾き飛ばした。
「…………!」
弾き飛ばされたイクシオンは激痛で悶絶したのか、その場にしゃがみ込み動きが完全に止まった。其処に赤塚組と聖龍隊が一斉攻撃を放つ。
1階にて本体が第二形態のイクシオンと死闘を繰り広げていた最中、その1階の液晶大画面に最上階でのメタルバードと大将対S-エンペラーの激闘が公開されていた。
「クソ、クソッ。動きが速すぎるぜ……!」
素早い動作で翻弄しながら水晶のビットを巧みに操って攻撃してくるS-エンペラーに追い詰められる大将。
どんなに攻撃を当てててもビクともしない耐久性に加え、俊敏な動きで周囲に展開するビットから繰り出される強烈な攻撃の数々に悪戦苦闘していた。
だが、そんな大将に傍らで絶えずS-エンペラーに攻撃を仕掛け続けるメタルバードが声をかける。
「諦めるな! 必ず勝算はある……!」
諦めなければ必ず勝てる、そういうメタルバードの言葉には力強いものが感じられた。
更に「下の連中も今ごろは命懸けで戦っている。それなのに俺達が頑張らなくちゃ意味がねぇだろう!」と、メタルバードは1階で死闘を展開する仲間達の事も考えて、今目の前の敵に集中していた。この言葉を聞き、傍らの大将も二人の死闘をテレビジョンで拝見している1階の面々も勇気付けられ、俄然と目の前の敵であるそれぞれの驚異イクシオンとS-エンペラーに攻撃を激化させていった。
決して諦めない。それは戦士に限らず、全てのものに言える力強い言動。
聖龍隊と赤塚組。双方が胸に秘めた、この想いで命を懸けて戦う様を目撃した新世代型たちは、自然とその激しい戦火に心を奪われるのであった。
そして。
「ウオオオオオォォォ………………ッ」
遂に集中攻撃を浴びたイクシオンは、その山の様な体躯を跪き、力尽きた。
「やったぁ!」
強敵イクシオンを撃破した喜びに歓喜に沸く一同。彼らの目の前には、全身から蒸気を上げるイクシオンの亡骸が跪いたまま停止していた。
皆がイクシオンの撃破に喜々とする中、ジュピターキッドが1階の大画面を指して言った。
「ほら、ちょうどバーンズ達も終わったみたいだ」
ジュピターキッドの言葉で、皆が大画面に目を向けてみると、画面には激しい銃撃を受けて苦しみ出すS-エンペラーの姿が映し出されていた。
「フエツヅケルニンゲン、フエツヅケルヨクボウデ……ハメツガセマッテイル。イマノセカイハワタシヲ……ハメツトイウシュウエンヲヒツヨウトシテイル。ソウダロ…………マイ、フレンド」
「テメェに心配されなくても、未来はオレ達が切り開いていく!」
「二度と修司の名を語るんじゃねェ! この偽物がッ!」
友である小田原修司を語るS-エンペラーに、メタルバードと大将はトドメの攻撃をS-エンペラーに浴びせた。
トドメを受けたS-エンペラーはもがき苦しみながら大爆発し、そのまま跡形もなく爆死して消え去った。
[存在意義]
1階では総戦力を喰い止める為に立ちはだかったイクシオンを。最上階では究極の生命体S-エンペラーを撃破した聖龍隊と赤塚組。
最上階では、S-エンペラーを撃破したメタルバードと大将が、このバイオハザードを引き起こした黒幕ゴールドマンに言い寄っていた。
「ゴールドマン!」
「諸君、これで全てが終わった訳ではない」
「言いたい事はそれだけか!」
メタルバードと大将が言い寄るのを目前に、ゴールドマンは淡々と落ち着いた様子で二人を前に語り始めた。
「結局、今のこの世界は君たち二次元人……そして、あの小田原修司が望んだ姿へと変貌した。だが増えすぎた人間に恐怖を抱き、破滅が近付いているのに気付かないのか?」
このゴールドマンの言葉に、メタルバードと大将はスグに返事が返せなかった。そして二人同様に、大画面越しに彼らの対話を視聴している1階の面々の胸中にも重い感情が込み上げていた。
そして最後に、ゴールドマンは最上階の屋上その端まで後ろ向きで後退するとメタルバードと大将、いや映像で今の自分たちを傍観している1階の二次元人たちに忠告とも言える言葉を発した。
「いずれ私の……第二第三の後継者が現れるだろう」
そういうとゴールドマンは「さらばだ、諸君」そう言って背中から身を投げ出して50階の自社ビルから投身自殺した。
「っ!」
1階の大画面で、その様子を目撃したジュピターキッドは、スグにゴールドマンが身投げした方へと顔を向けた。すると1階の出入り口その屋根に身投げしたゴールドマンが激突し、窓ガラスに大量の返り血が透明な窓を真っ赤に染め上げた。
「きゃあっ!」
視点的にゴールドマンの体は視認できないものの、窓ガラスを真っ赤に染め上げた大量の返り血を目の当たりにして新世代型のキャサリン・ユースらを始めとする女子達は思わず目を背けて悲鳴を上げてしまう。
一方、ゴールドマンの死を確認したメタルバードと大将は最上階の屋上で重い空気の中、語り出していた。
「終わったな」「ああ」
世界そのものの終焉を防ぐ為に、世界を侵し続ける人間の終焉を目論んだゴールドマンの言葉や思想、そして死に様を目撃した二人は居た堪れない心境であった。
「ゴールドマン……もし第二第三の後継者が現れたとしても、オレ達は戦い続ける」
「人が……己の力で生きようと思う意志がある限り……」
「あばよ、ゴールドマン」
メタルバードと大将は自ら命を絶ったゴールドマンに、ささやかな哀れみの言葉を言い残して帰路に着いた。
進攻していった道を戻る二人の前には、既に多数の敵は出現せず、完全にS-エンペラーや創造主のゴールドマンの死によって全ての個体が消滅したのは容易に察する事ができた。
そしてエレベーターで再び1階に戻ってきたメタルバードと大将の二人に1階で戦っていた仲間達が駆け寄る。
「バーンズ!」「大将、大丈夫!?」
仲間達の温かい出迎えに心を晴れやかにする余裕もない二人は、若干の気鬱が垣間見える表情で皆の出迎えに応えた。
「ああ、みんなも無事みたいだな」「う、うん! なんとか……」
「ミズキ、テツ。お前らも無事で何よりだったぜ」
「いえ、こっちはみんながいたから……」「大将もご苦労さん」
メタルバードの言葉に返事するミラーガール。そして仲間の安否に安堵する大将の気遣いに反応するミズキとテツ。
だが皆の肩に圧し掛かる重い空気だけは一掃されず残るままであった。が、大将は一刻も早くこの場から離脱して新世代型たちの護送に徹するよう皆に言い渡そうとした。
「……お前ら、それで…………ッ、う、後ろ!」
言い渡そうとした大将が突然叫んだ言葉に、皆が後ろを振り返ると、なんと其処には先ほどの戦闘で倒したはずのイクシオンが再び起き上がり右手の爪を鋭利な刃物の様に変形させて襲い掛かろうとしていた。
「ま、まだ生きていやがったのか!」
先ほどの苛烈な攻撃を受けてもなお存命しているイクシオンの驚異の生命力に愕然とする月詠イクト。
そして起き上がったイクシオンは、右手の巨大な鋭利な爪で眼前の
と、その時。誰もがイクシオンによって
誰もが突然の砲撃音に驚き、呆気らかんとなっている中、
「だ、誰が一体……」
しかし問題は、誰がイクシオンの背後から背中の心臓に向けて砲撃を撃ち込んだのかという疑問だった。
全員が自然と、イクシオンの後方に目を向けていくと、其処には全身を黒い衣服で包み隠し、右手には巨大な対戦車ライフルを装備している謎の人物が立っていた。
「お、お前は!?」
突如として姿を見せる謎の黒服の人物に警戒し出す大将やその他の一同。だが一人だけ、ミラーガールは謎の人物が携えている対戦車ライフルを見て皆に呼び掛けた。
「ま、待ってみんな! この人は……間違いない。研究施設で私たちをリッカーの群れから救ってくれた人よ。ほら、あのライフル……修司が国連軍に身を置いていた時に支給された特注品のライフルと同型のモノよ!」
ミラーガールの指摘で全員も思い出した。
地下研究施設でリッカーの群れに襲われていた際、窮地を救ってくれた砲撃をお見舞いした特大の対戦車用ライフル。それを片手で扱える事から、みんなは目の前の人物があの時の危機を名も告げず救ってくれた張本人であると察し、誰もが愕然とした。
その人物は対戦車用の特大で重量級のライフルを床に投げ捨てる様に置くと、全身に羽織るボロボロの布切れ同然のフードに手をかけ素顔を晒した。
明かされた人物の素顔を目の当たりにした一同は、その素顔を認識した瞬間全身に迸る衝撃が走った。
「!! ……修司?」
フードを取った謎の人物、その素顔を目の当たりにした一同は揃って愕然となり大将は眼を丸くして言葉を発する。フードの素顔、それは顔の左半面が醜く爛れているものの明らかに小田原修司の顔立ちであった。
すると顔左半面が醜く爛れている修司そっくりの男は、弱々しい口振りで閉ざし切っていた口を開いて語り出した。
「クローン製法による遺伝子の情報伝達は百パーセント完璧じゃない…………幾度と無くクローンを繰り返し生み続ければ、遺伝子の構造は次第に崩れていき画像がボヤケ始めてしまう………………不完全なクローンとして長い間、特殊な培養液の中で時を過ごしてきた俺はどうにか自力でカプセルを突き破り外へと出たものの……目的もなしに生き続けるのは忍びなかった。最強の小田原修司の複製生体兵器MELUSの試作品の一体として生み出された俺は、生存機能が著しく欠しく……そんな中で微かに記憶にあるお前達を自然にサポートしていた………………」
長々と己の出生について語る存在の話を聞いて、HEADや赤塚組そして新世代型たちは地下の研究施設で目撃した試作品MELUS素体として造られた三体の試作体を思い出した。その内、素体002-DXはメルス本体として立ちはだかり、003-DXは通称3-DXとして執拗に追跡してきた事を脳裏に浮かべ、そして001-DXなる試作体だけが確認されていなかった事を改めて思い出した。目の前の顔半分が醜く爛れてしまっている小田原修司は、その001-DX本体なのであった。
「つまりテメエは、修司のクローン……その粗悪品って訳か」
試作品MELUS素体001-DXの素性と外見から、大将は001-DXが小田原修司のクローンでは粗悪品であり研究の為だけに保存されていただけの代物で、僅かに記憶に残っていた自分達に対して地下の研究施設内で度々援護していた事実を知って呆然とする。
すると001-DXは弱々しい言葉で二次元人たちに説き始めた。
「人は古より二つの力に魅入られていた……どんな運命にも抗える力、武力…………そして、生物には決して逃れられぬ死という末路を回避できる不死…………人々は遥か古代より、その二つの力を強欲なまでに欲し続けてきた………………」
「………………………………」
「…………故に、皮肉ながらも人間は……その欲望によって自ら破滅し、不死とは程遠い悲惨な最期を遂げてきた。この俺を……小田原修司という絶対的な力を望み続けたが故に、人々は自ら破滅の道へと突き進んでしまった………………」
絶対的な力、不死という常人には決して得られない領域。それらの力を強欲に欲し続けた結果、人間は絶対的な力を得た小田原修司の複製を大量に生み出し、このバイオハザードが引き起こされ自ら破滅に足を突っ込んだ現況を説く001-DXの重苦しい言葉に、二次元人たちは心を痛めた。
この時、大将は虚ろな眼差しの001-DXを見て、もう余命も僅かである事を自然と察した。
大将は、このまま試作機として苦しみながら生きる事よりも、一人の生物として楽に死なせる決意をした。そして大将は徐に拳銃を抜き取ると、その銃口を目前の001-DXに向けた。
「た、大将!」
突然の大将の行動に、仲間の赤塚組も新世代型達も騒然となる。だが大将は自らの考えを変えず、目の前でただ苦しみながら生かされ続けた試作機の気持ちを汲み取り、自らの手で自らの旧友のクローンの命を召してやろうと引き金に指を置いた。
そんな目前の大将に、001-DXは朧げな言葉で訴え始めた。
「生とは何か…………生きるという事を……俺はクローンでありながら自問自答を繰り返した………………何の目的もなしに、はぁ……ただ同じ環境で生み出された生物を無作為に殺し続ける日々に、俺は何を見出していたのか………………」
クローンでありながら生きるという生物の行動について疑問を持ち続け、その渦中で同じ施設で生み出された生体兵器を倒し続ける日々に自らは何を見出していたのかを説く001-DX。
「記憶が……ぼやけてしまう…………かすれてしまう………………頭の中に浮かぶ光……それは、お前たちか………………」
薄れ行く意識の中で、微かに記憶に残留している光の如き希望は二次元人なのかと問う001-DXに大将は言葉ではなく目で答えた。
(……俺にも解らねえ……)
自分たち二次元人が希望なのかどうか、その答えすら見出せない大将は目で訴え返すと、躊躇う事無く目前の001-DXの額に銃弾を撃ち込んだ。
一発の銃声が響き渡る中、全員がその銃声と大将の行動に愕然と硬直してしまう中、銃弾を撃ち込まれた001-DXは静かに瞼を閉じながら後ろめりに倒れ込み、完全に生命としての機能を停止させるのであった。
クローンとはいえ、旧友を殺めて楽にさせた大将は複雑な心境で取り出しだ拳銃を再び懐に仕舞い込んだ。
そしてその場を去ろうとした大将は、徐にメタルバードに問い掛けた。
「なあ、バーンズ……」
大将の問い掛けに顔を向けるメタルバードに、大将は質問をぶつけて来た。
「俺たち二次元人って、何だろうな」「なに……?」
突然の大将の質問に、質問を受けたメタルバードはもちろんその質問を聞いた周囲の仲間達は愕然とした。
だが大将は質問を留める事無く、メタルバードに問い掛け続けた。
「修司も俺らに言ってくれた。二次元人は三次元人が間違った道を進ませないようにする為の学びであり道標であると……だけど、俺達は本当に三次元人の役に立っているのか。特殊能力を持つ持たない関係なく、絵から出てきたバケモノと恐れられ、見くびられ……挙句の果てには混沌の象徴として忌み嫌われる存在に今は成り下がっちまった。確かに修司の想いは痛いほど解る。俺達に希望を見出してくれているのにも感謝してるさ。でも、こんなゾンビだらけの悲劇を招いたのも、結局は二次元人の技術が齎した結果でもある。俺達は、本当にこの世の中にいても良いのだろうか」
旧友である小田原修司は二次元人を希望として未来への導であると公言してくれた。しかし、その反面自分たちの存在や技術が三次元人たちを誤った道に誘ってしまうのもまた事実。こんな二次元人が存在していいのか疑問に感じる大将の言葉に、メタルバードは重い口を開いた。
「……それは、オレにも正直解らねぇ」
メタルバードの言葉に誰もが衝撃を受ける中、メタルバードは更に続けて物申した。
「だがな。オレたち二次元人の技術は兎も角、その生き様や言動……誇りを見てくれた三次元人が何かを想い、そして何かを行動してくれる事にオレは意味を感じている。その思想や言動が如何に未来を変えていくかまでは俺にも余地できねぇ。でも……オレはそれでも三次元人を信じてみる。そう、一人の女が……一人の三次元人を信じ抜いた様に、な」
語り終わったメタルバードは、ミラーガールに顔を向けて彼女を見詰めた。その様子から、彼が言う三次元人を信じ抜く二次元人が誰なのか一目瞭然であった。
そして最後にメタルバードは戦い終えた皆に向かった力強く言った。
「運命は自らの力で切り開くものだ、生半可な連中にオレたちは止められやしない!」
これに大将も同じく力強い言動で答えた。
「ああ……生きる意志がある限り……」
こうして全員がゴールドマンの自社ビルから撤退しようとその場から立ち去ろうとした。
すると、出入り口真横から二人の人物が一行に声をかけてきた。
「皆さん!」
「ウッズ! ウェルズ!」
声をかけたのは、前聖龍隊総長より市長の座を就任したジュピターキッドの実父にして初期の頃より聖龍隊のサポートを行ってきたアニメタウン市長ウッズ・J・プラント。そして彼の横で同じく皆を出迎えたのは、現場の指揮も執ってる特攻決死隊隊長にしてジュピターキッドの叔父でウッズの双子の弟のウェルズであった。
戦場の皆を心配して駆け付けて来てくれた二人にメタルバードが反応すると、ウェルズが都市の現状を報告した。
「街は次第に沈静化されていってる。もうすぐで迎えも来るはずだ」
「そうか、それは何より」
ゾンビなどの異常事態で埋め尽くされた都市も、聖龍隊や現地の軍人らの活躍で沈静化されつつあり、同時に保護した新世代型たちを護送する為の迎えの軍用車もやってくると聞いてメタルバードは安堵の表情を浮かべた。
更に其処へウッズが朗報を皆に知らせた。
「それからコカですが、精密検査の結果、彼女は大丈夫との事です。もう心配ないです」
「そうか! コカが……」
ウィルスによって運命を翻弄された少女コカも、精密検査の結果もう心配ないとの事であった。
街の沈静化、そして新世代型たちよりも前に保護した少女コカの安否を知ったメタルバードは力強く前へと一歩を踏み出そうとした。
そう、聖龍隊の戦士 その新たな戦いに向けて
だが、その時であった。
「っ?」突如として無線から緊急を要するアラームが鳴り響いた。
「此方バーンズ。どうした、何かあったか?」
メタルバードが無線に応答すると、無線の向こうから激しい爆音と共に隊士達の慌ただしい声が聞こえてきた。
「こ、此方18部隊! 現在、謎の敵と交戦中……我々だけでは歯が立たない、至急応援を! ご、ゴールドマンビルの前です……う、うわあッ!」
激しい爆音と共に聞こえてきた悲鳴を最後に、無線は途切れた。
「もしもし! もしもし!?」
メタルバードは無線で応答を呼びかけるものの、既に無線相手は事切れているのか応答はなかった。
「もうすぐで脱出できるっていうのに……今度は何だ?」
じきに新世代型二次元人達を護送する手はずが整う直前だというのに、いま自分たちがいるゴールドマンビルの前で起こった謎の戦闘
だが彼らは知らなかった。このバイオハザードによる混乱、そして聖龍隊や赤塚組さらには新世代型二次元人たちの奮闘を人知れず傍観している者が近くにいる事に。