現政奉還記 B.O.W.編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 チベットの山奥の基地で起こったバイオハザードが一段落したと思いきや、今度は中国支部から都市達芝で異常事態が発生していると連絡を受ける聖龍HEAD。
 混乱に喘ぐ達芝で彼らを待ち受ける人々、そして恐怖と絶望は?

 今回は聖龍隊中国支部のメンバーとして「カードキャプターさくら」の李・小狼と従兄妹の李・苺鈴、「金色のガッシュ!!」のウォンレイとリィエン、「らんま1/2」のシャンプーとムースの面々が登場します。

※注意:この話はクロスオーバー物で、かつ他キャラと関与している為、実際のバイオ6のストーリーや台詞が多々異なる箇所が見受けられますので御了承ください。更には個人的解釈描写も多々あります。



現政奉還記 B.O.W.編 回想:達芝 絡み合う思想

[chapter:騒乱に包まれる都市]

 

 チベットの航空基地を発った聖龍HEADは、応援に駆けつけてくれたキューティーハニーの夫で盲目の剣士である早見青児と共にヘリで達芝(ターチィ)へと急行した。

 更にその道中、雪山などの低温環境では体が凍ってしまう体質であった為、待機していたHEADメンバーの一員であるアプリコットことウォーター・フェアリーと合流する。

 

 こうして彼らはバイオハザードで混乱に喘ぐ中国 達芝の混乱の渦中へと飛び込んでいった。時は2013年,7月1日。

 彼らはまず、市民の救助や避難そして状況の鎮圧に奔走していた中国支部の聖龍隊隊士の行方を追う事にした。

 達芝でのバイオテロによる災害と混乱で、活動中の隊士の何名かと連絡が途切れ所在が掴めなくなってしまったのだ。

 

 聖龍HEADは混乱に喘ぐ達芝を、至る所で猛威を振るう数多の生物兵器を薙ぎ倒しつつ同胞の隊士の捜索を開始した。

 

「…………許せ、同士よ」

 混乱の中起きた火災で鮮やかなオレンジに色づく夜の繁華街、其処で乗り捨てられた自動車に寄り掛かる同胞の聖龍隊士の首元に指を当て、完全に隊士の死亡を確認した総長のバーンズ。すると彼は相方であり同時に変身用のアイテムでもあるチップバードを刃渡り30cmもの刀に変形させると、それで躊躇する事無く息絶えた隊士の首を切断した。

「……ゾンビになるかもしれねぇ。致し方ない」

 そう自分が首を切り落とした同胞の隊士の亡骸を前に、バーンズは背後でその様子を見守っていた同胞の聖龍HEADの面々に背中越しで言った。

 周囲には他にも散らばる同胞の聖龍隊士や一般市民の骸、そして時おり聞こえる唸り声のような奇怪な音が鳴り響く現状に、誰もが悪夢の中に居るような感覚に走った。

 そして同胞の隊士の亡骸の首を切り落としたバーンズが立ち上がり、徐に背後のHEAD各員に前を向いては皆に指示を告げた。

「良いか、まだ安否が不明の聖龍隊同士がこの達芝の市内に居る筈だ。まずはそいつ等の捜索から始めるっ。急がねえとそいつ等の身も危ねえ」

 バーンズの指示を聞いて、表情に不安の感情を浮かべる一同。

「大丈夫、だと良いんだけど……」「星羅、そんな縁起でもない……!」

 星羅の一言に思わず反論するココ。

「だけど、こんな状況では最悪の事態も想定して置いた方が……」

「うん、思いたくないけど……此処まで酷いと何が起きていても可笑しくないよ」

 不安に満ちる面持ちで語るマーキュリーとジュピターの二人。

「…………小狼(しゃおらん)くん……」

「さくらちゃん……大丈夫、きっと小狼君たちの事だから無事に生き延びているわ。あの子達が強いのはさくらちゃんだって知っているでしょ」

 中国支部の隊士である婚約者の李・小狼(リ・シャオラン)と、その従兄妹であり友である李・苺鈴(リ・メイリン)の安否を気にするさくらに、ウォーターフェアリーが励ましの言葉を掛けて上げる。

「……とにかく、今は連絡が取れない隊士の捜索が先決だ。色々と思う所はあるだろうけど、行方が不明な同士との合流が何よりも優先事項だ」

「ジュニアの言うとおり……まずは所在が解らない聖龍隊の隊士を、仲間達を探す必要があるわ」

 ジュピター・キッドに変身したジュニアの話に、ミラー・ガールも続けて話し掛ける。

「取り合えず、今は市街地の中を捜索して行きながら中国支部の連中を見つけないとな……」

 と、エンディミオンが険しい面持ちで語っている、その最中。

「っ」「!」

 語り明かしている最中のエンディミオンが有無も言わず側らの同じHEADである木之本桜に、装備していた拳銃の銃口を向けた。

 そして次の瞬間、木之本桜に向けた銃口が火を噴き銃声が鳴り響いた。

「………………」

 余りにも突然の事に言葉を失う木之本桜と唖然とするその場の一同。

 さくらが後ろを振り返ってみると、エンディミオンの銃から放たれた銃弾が額に直撃して倒れるゾンビの姿があった。

 銃弾を喰らい倒れるゾンビを目の当たりにし呆然となる一同、そんな中エンディミオンは抜いた拳銃を再びホルダーに戻して皆に言った。

「此処も危なくなってきた。急ぎ同胞の中国支部のメンバーを探しに行こう」

 エンディミオンの言葉にHEADの皆は一丸となって同意した。

 

 そんな現状の中、総長バーンズは皆に指示を告げる。

「よし、みんな散らばるぞッ! 各隊ごとにそれぞれ市内に居る筈の中国支部の仲間達を救援するんだ! 無論、それと同時に市内各所で勃発している騒動の鎮圧にも力を注げ! 以上だッ」

『了解ッ』

 バーンズからの指示に全員が同意の掛け声を返すと、それぞれが市内各所へと散らばって行動を開始した。

 

 

 その頃、達芝市内で散らばっている聖龍隊メンバーは……

 

「……くっ……」

「苺鈴、しっかりしろッ……何とか聖龍隊の仲間と合流できれば良いんだが」

 負傷し動きが侭ならない従兄妹の苺鈴の肩を担ぎながら、懸命に荒れる現状の中を突き進んでいく小狼。この時、小狼は負傷した苺鈴の事はもちろん婚約を交わしているHEADの木之本桜の事を思いながら荒んだ街中を進み続けてた。

 

 更に別の場所では……

「リィエン、大丈夫か?」

「っ……ウォンレイ、ごめんなさい。足手まといに成ってしまって……」

「何を言ってるんだ! 私は少しも、そうは思ってない! 今はとにかく、この場から離れて安全な場所に君を連れて行かなければ……!」

「……ごめんなさい」

「別に良い、もう私達は夫婦ではないか。お互いに助け合うのは当然ではないか」

「ウォンレイ……!」

 魔物と人間という種族の壁を超えて結ばれた【金色のガッシュ!!】のウォンレイとリィエンの夫婦。乱れる戦況の中、受けた傷と疲労で参ってしまった妻のリィエンを気にしながら、夫のウォンレイは急ぎ聖龍隊の仲間との合流または安全な場所までの移動を速やかに行っていた。

 

 基本、二人一組で行動していた中国支部のメンバーの現状の中、一組だけ離れ離れになってしまった男女の二人が居た。

「ッ……! シャンプー、何処行っちまったか。無事でいてけれ……!」

 騒乱の戦況の中、行動を共にしていた女性シャンプーと逸れてしまったムースは、所々火災が発生している市街地の中懸命にシャンプーの姿を探していた。

 

 こうして、ウォーター・フェアリーと早見青児と合流した聖龍HEADの面々は、それぞれセーラームーンとエンディミオンを筆頭にしたセーラー隊、キューティーハニーと夫の早見青児そしてナースエンジェルと木之本桜にちせの編成部隊、コレクターズの三人と魔法騎士(マジックナイト)の三人の計六名の一組、東京ミュウミュウの六名による一隊、マーメイドメロディーの七名による一隊、ローゼンメイデン組による五体の人形から連なる一隊、そして総長バーンズを筆頭にした参謀総長のジュピター・キッドとウォーター・フェアリーにミラー・ガールの四名による一組、編成した各々の部隊は騒乱に喘ぐ達芝の市街地に中国組の面々を捜し求めて突き進んでいくのだった。

 

 

 

 

[絶望の被災都市]

 

 バイオハザードによる騒乱に包まれる達芝ターチィを突き進む聖龍HEADの各隊士たち。

 彼らは混乱の渦中を突き進みながらカードキャプターさくら】のキャラでHEADメンバー木之本桜の婚約者である李・小狼と従兄妹の李・苺鈴、【金色のガッシュ!!】の人間と魔物の夫婦であるウォンレイとリィエンの二名、そして【らんま1/2】のムースとシャンプーの男女二名を中心とした聖龍隊中国支部の隊士らの行方を捜索していった。

 

 しかし行く手を塞ぐ数多のB.O.WにHEADは悪戦苦闘の連続。

 町中を彷徨い歩く動く死体ゾンビだけにあらず、脚や腕の部分が異様に変異した異形の人型B.O.Wや、突如として繭の様に全身を包まれたと思いきやその中から飛び出してくるトカゲの様な生物兵器が、HEADの前に立ち塞がっては行く手を塞ぐ。HEADは見た事もない幾多のB.O.Wに戸惑いながらも、己の特殊能力や仲間との連携を講じては先を進む各々の部隊。

 

 そして遂にHEADの編成一隊が行方知らずであった面々の一組と苦労の末に再会を果たす。

「! ウォンレイ、大丈夫か!?」

「ッ、エンディミオン殿! それにセーラー戦士のご一行、来て下さったのですか」

 災害の混乱を避け身を隠しながら移動していたウォンレイ組と出くわしたのは、キング・エンディミオンを初めとするセーラー戦士達であった。

「ウォンレイっ……あれリィエン、彼女はどうしたの?」

 ウォンレイの傍らで壁に寄り掛かるリィエンの姿を見てセーラームーンが訊ねると、ウォンレイは苦渋の表情で申し上げた。

「わ、私が不甲斐無いばかりに……妻に怪我を負わせてしまいました。クッ……」

「ウォンレイ、そんな自分を責めないで。こんな状況だもの、二人が無事であっただけでも幸運だわ」

 愛する者を護り切れなかったと自責の念に駆られるウォンレイに、セーラーヴィーナスが優しく話し掛ける。

「……さぁ、今はとにかくリィエンの怪我を治してあげましょう。クィーン、お願いします」

「ええ、分かったわ」

 ぐったりと壁に寄り掛かるリィエンの容態を見て彼女の治療を優先事項と捉えたセーラーサターンは、自分達セーラー戦士の長であるネオ・クィーン・セレニティのセーラームーンにリィエンの怪我を治してくれる様願い出ると、セーラームーンは快く笑顔でリィエンの怪我を自身の治癒能力で治してあげた。

「ふぅ……どうもありがとう、セーラームーン。お蔭様で体も、おまけに心までも気持ちいいほどスッキリしたアル!」

「良かった、リィエンもウォンレイも無事で」

 怪我の治療を施してくれたセーラームーンに笑顔で礼を述べるリィエンに、治療したセーラームーンも笑顔で安堵する。

「それでは、急いで此処から離れましょう。早く二人の無事を伝える為にも他のHEADメンバーと合流しないと」

「どうだな……二人とも、移動できるか」

 セーラープルートからの提案にキング・エンディミオンが訊ねると、訊ねられたウォンレイとリィエンはセーラー戦士たちに答え返した。

「ああ、私達はいつでも大丈夫だ!」

「私もアル! 他の仲間達の事も心配だし、早く探してあげないと……」

「よし、此処も危なくなってきた。移動するぞ」

 そして一行はエンディミオンとセーラームーンを筆頭に、その場を移動した。

 

 一方、魔法騎士の三人とコレクターズの三人による一隊は荒れ狂う町中を出没する生物兵器を薙ぎ倒しながら確実に移動していた。

 生ける屍であるゾンビへと成り果てた罪亡き人々、そして変異し目の前に立ち塞がるクリーチャーを相手にしながらも彼女達は懸命に市民の救済と仲間達の捜索を行い続ける。

 

 その頃、総長バーンズを筆頭にした副長ミラーガール、参謀総長ジュピターキッド、ウォーターフェアリーの四名は連絡が取れなくなった仲間達の捜索を続ける。そんな中、彼らはようやく仲間の一人である男の姿を発見する事ができた。

「っ……其処に居るのは、ムースかッ?」

「っ? お、おお……バーンズでねぇか! それに他のHEADのお偉いさん方まで、わざわざワテらを探しに来てくれるとは感激じゃてッ!」

 組織の幹部であるHEADの面々が自分達の様な一介の隊士を探しに来てくれた事に心から感激するムース。

 四人は早速ムースにこの場を離れて、一旦はHEADの合流に向かおうとムースに言う。だが。「……ちょ、ちょっと待っとくれッ。実は、今さっきまで一緒に行動していたシャンプーと逸れてしまったんじゃ! バーンズそれに他の方々も、何とかシャンプーを探すのを手伝ってくれいッ。シャンプーを見つけない限り、わしだけ離れてしまうなんて事できん!」と、連れであるシャンプーを見つけるまで自分だけ去る事はできないと必死に反論するムース。彼の言動に対しバーンズを初めとする四人は彼の言論に渋々合意した。

「解った、それじゃオレ達と一緒にシャンプー探そうぜ。そんでもって、見つかったら二人一緒に避難してもらうからな」

「わ、解った。そんじゃ、シャンプーが見つかるまで宜しく頼んます」

 バーンズの言葉にムースは頭を下げては一緒にシャンプー捜索に行動を移すのであった。

 

 そしてキューティーハニーと青児夫婦を先頭に戦況を進む木之本桜とナースエンジェルそしてちせの五名は、迫りくる数々のB.O.Wを相手に立ち回りをしていた。

 腕脚が異様に発達したB.O.Wの強烈な一撃を受け止め、時には寸での所で回避しながら上手く反撃に立ち回る一行。

 だが、そんな彼女らの前に捜し求めている生存している一般市民や同胞の隊士の姿は入って来なかった。

 

 一方その頃、五体のローゼンメイデン組は何かを急いでいたのか懸命に火の手に包まれる市街地の中を飛行しながら移動していた。

 何かを捜し求めているのか、懸命に辺りに目を配る彼女達。その時、彼女達の目に、荒れている町中を進んでいるミュウミュウの六人組を見つけた。

 五人を見つけた真紅たちローゼンメイデン組は急降下しては、ミュウイチゴ達ミュウミュウ組の前に姿を見せた。

「ミュウミュウズ!」「あっ、ローゼン達……!」

 目の前に現れる真紅たちに立ち止まるミュウミュウの六人組。そんな六人に真紅たちは険しい面持ちで伝え始めた。

「良かった、あなた達が近くまで来てくれてて……実はさっき、この近くで中国組のメンバーを見つけたんだけど……」

「え! そうなの、みんな!」

 ミュウザクロが問い返すと、それに蒼星石が話し返した。

「ああ! さくらの婚約者の小狼と、その従兄妹の苺鈴の二人だ。だけど苺鈴の方はどうやら負傷しているみたいで、二人とも余り場所を移動できない状態みたいなんだ!」

 語り明かす蒼星石に続き、双子である翠星石もミュウミュウに語り出す。

「翠星石達が探している時に辺りを見回していると目に飛び込んできたんですが、負傷した苺鈴を小狼が担いで運んでいるのが確認できて……」

 そして最後に雛苺が悲しそうに話した。

「それを見て私達、急いで他のHEADの皆さんに伝えようと……私達だけじゃ、どうする事もできないから」

「そうだったの……ありがと、みんな! それじゃ私達を二人の元に案内してっ」

「解ったわ。こっちよ」

 自分たち人形の力量では救助が難しいと判断したローゼン達の気持ちを理解したミュウイチゴは笑顔で礼を述べると同時に彼女達に二人の元まで案内してくれるよう頼む。それに対し真紅たちローゼン組はミュウミュウズの六人を小狼と苺鈴の元まで案内するのだった。

 その道中、彼女らは同じく同胞の聖龍隊士の捜索に奔走していたマーメイドメロディーの八人と遭遇し、共に災害の市内で迷走している小狼と苺鈴の元へと向かった。

 街中に突如として現れる異形の生物兵器を撃退しながら、彼女達はようやく連絡が取れなくなっていた李・小狼とその従兄妹で負傷している李・苺鈴の元に辿り着いた。

「小狼! 苺鈴!」「っ、海斗さんに雅也さん!」

 二人の元に駆け付けた面々の先頭に居た二人を見て名前を呼ぶ小狼。そして負傷し心身ともに弱っている苺鈴に女性メンバーが治療してあげると、彼女らは小狼と苺鈴を引き連れて他のHEADメンバーとの合流を果たすべく、その場を後にした。

 

 そしてHEADの面々であるバーンズを始めとする4人と再会したムースと一行は、ムースと逸れてしまったシャンプーの行方を懸命に捜索していた。

 仲間であるシャンプーも同様に救おうと翻弄するバーンズ達以上に、ムースは自身が愛してやまないシャンプーの無事を誰よりも願っていた。

 そんな彼らが、とある雑居ビルにシャンプーの姿を求めて捜索に入っていると、ムースと同行している四人が何かを察知した。

「……誰か、このビルに居る……!」

 ジュピター・キッドが険しい表情で言うと、続いてウォーター・フェアリーとミラー・ガールの二人も言葉を口にした。

「確かに……誰か人の気配がする」

「うん、一人だけ……生きてる人の気配が感じるわ」

 三人の言動に、先頭を進んでいたバーンズも意味深な表情で言った。

「うむ、確かに……俺のテレパスはもちろん、見聞色の覇気でもしっかりと解る。誰か居るな、このビルに」

 この四人の発言にムースが血相を変えてバーンズに問い詰めた。

「な、なぬッ? それはシャンプーなのか? バーンズ、主らの見聞色の覇気とやらでもっと詳しく解らぬのか!? はたまた、主のテレパシーでシャンプーなのか違うのか解らぬかッ!?」

「お、落ち着けムース……済まねェが、見聞色では生きた人間だって事しか解らねェし、俺のテレパスじゃそいつが何も考えずただ呆然としている事ぐらいしか感知できないんだ。何だか放心状態みたいで、本当に何も考えてないって感じの奴みたいなんだな、これが」

 バーンズの説明を聞いて、ムースは落ち着きを取り戻しつつ話し返した。

「そ、そうか……では、急ぎその者の所まで行って確かめねば。シャンプーでなくとも、生存者なら助けるのが道理じゃしな」

「そうだな……取り合えず、その人間の元まで急ごう! 貴重な生き残りが生物兵器に変異しちまったら元も子もないからな」

 こうしてバーンズら一行は、急ぎ雑居ビルの内部に居ると思われる生存者の元へと向かうのであった。

 そして生存者の気配が感じられた階に辿り着いた一行は、その階を隈なく見回っては人の姿を探し出した。そして遂に彼らはその階で人の姿を発見した。その人物は……

「ッ……シャンプー!!」

 錯乱する床の上で地べたに座り込むシャンプーであった。彼女を見てムースは一目散にシャンプーの元へと駆け寄った。

「シャンプー、無事か! 何処か怪我してねぇだか?」

 彼女の容態を気に掛け話し掛けるムース、だが当のシャンプーは心此処にあらずと言った様子で完全な放心状態であった。

「しゃ、シャンプー……どうかしたか?」

 放心状態のシャンプーに呆然となるムース、ムースは自然とシャンプーの視線の先を追った。すると彼女の視線の先には異形のモノの存在が宙に浮遊していたのだった。

「ッ……!」

 シャンプーが見つめる先に浮遊している存在に愕然となるムース。

 更に其処へ同じ階の別室を見て回っていたバーンズ達も駆け付けては、ムースとシャンプーが見詰めるその存在に目を奪われた。

 それは小型の蟲が集団で群れているのだが、その大群がまるで人のそれも女性に近い姿を形作っているのであった。更にその群れの中には他の蟲とは違い一際大き白い虫が一匹だけ浮遊していたのであった。

 そんな異形の生物に脅威を感じたムースは自身が携帯していた銃器に手を伸ばして、その異形の生物を仕留め様とする。

 だが、その時。銃器を手にし狙いを付けようとするムースの手をシャンプーが静止させた。

「っ、シャンプー?」

 シャンプーの突然の行動に戸惑ってしまうムース。するとシャンプーは放心状態であった自分を何とかして奮い立たせる様に、ムースの顔を見詰めて彼に言った。

「……撃たないで……ムース、お願いだから、撃たないで……!」

「…………」

 シャンプーの瞳から放たれる彼女の必死の真情を察したムースは、彼女に言われるがまま銃器を下ろした。

 ムースに銃器を下ろさせたシャンプーは、そのまま目先の蟲の群集を直視し続ける。そんな彼女に駆け付けたバーンズが声を掛けた。

「……シャンプー」

 すると声を掛けられた瞬間、シャンプーは虚ろな瞳のまま言葉を返した。

「うん……分かってる、バーンズ……でも、でも……せめて、私の手で……」

 そう言い返したシャンプーは徐に自身の所持していた銃器を手に取り、その銃口を眼前の蟲の群れに向けた。

 虚ろな眼差しで蟲の群集その中でも一際大きい弱点であろう白い蟲に狙いを付けるシャンプーは、蟲の群集に話し掛ける様に、そして自分自身に言い聞かせる様に呟き始めた。

「ごめんね、ごめんね……これしか……これしか、してあげられなくて…………ゴメン……っ!」

 次の瞬間、シャンプーはゆっくりと引き金を引いた。そして銃口から放たれた弾丸は、まず白い虫に一発直撃し、更にシャンプーはもう一発二発と弾を撃った。

 そして何発もの弾丸を受けた白い虫は息絶えるように床へと転げ落ち、それに続いて白い虫の周りに展開していた小さな蟲の群集も地へと落ちた。

 蟲の群れを形成する生物兵器を狙撃したシャンプーは、ゆっくりと構えていた銃器を下ろしては再び黙然と虚ろな表情でその場に座り込んでしまう。

「……シャンプー……」

 虚ろな表情で座り込むシャンプーを目の当たりにして、ムースは彼女の心境を察してか掛けて上げる言葉が無かった。

 その時、シャンプーは静かにその瞳から一滴の涙を零した。

 シャンプーの心境、そして現状を黙視していた聖龍HEADの四名は彼女の悲痛な真情を察知するのだった。

 

 その後、シャンプーの話によると。

 彼女には聖龍隊で、まるで自分の事を姉の様に慕ってくれる女性隊士と出会い、二人は親交を深めていたという。

 そして今回の達芝のバイオテロでもその女性は混乱に喘ぐ市街地内で任務に就いており、シャンプーは混乱の中その女性隊士と合流しては共に市街地を突き進んでいた。

 だが、雑居ビル内に人の姿を確認した二人は、その者を追ってビルに進入したのだが、それが悲劇の元であった。

 ビル内に進入した二人、だが一瞬の隙を衝かれて二人が目撃した人物が何らかの物質をシャンプーと行動を共にしていた女性隊士に打ったのだった。

 そして何らかの物質を体内に打たれた女性隊士は、見る見るうちにその体が変異し、やがて繭の様な殻を形成すると次の瞬間にはその中から先ほどの蟲の群れが噴出したというのだった。

 自分を慕ってくれてた女性の変異する様を目の当たりにしたシャンプーは、その光景に思わず呆然としてしまい、更に物質を打った人物はその間いつの間にか何処かに逃亡してしまったのだという。

 そしてムースやバーンズ達が駆け付けるまで、シャンプーは変異してしまった仲の良い女性隊士の変貌した姿を眺めていたのだという。

 

 半ば放心状態のシャンプーを気遣いながらバーンズ達は彼女とムースを引き連れて他のHEADメンバー達と合流しようと移動を始めた。

 その道中、気落ちするシャンプーを懸命に励ましながら彼女の気を落ち着かせようと接し続けるムースとHEADのミラー・ガールにウォーター・フェアリー。シャンプーはそんな周りの励ましを受けて少しずつ落ち着きを取り戻していった。そして彼女は他のHEADメンバーや中国支部の同胞と合流するまでの道中で、バーンズ達に自分と変異させられた女性が目撃した人物の事を語り始めた。

 その人物は紫の服に赤いスカーフを首に巻いている黒髪のアジア系の女性である事。同時にシャンプーはその女が自分を慕ってくれてた女性隊士に何かを打っては彼女を変異させた事も恨みに満ちた目付きで語ってくれた。

 だが、シャンプーが最後に語ってくれた話を聞いてバーンズ達HEADは驚いた。

 その女は、以前シャンプーも国際指名手配書で見た事があるという女性であり、今は無きアンブレラにも通じていたといわれる謎多き女スパイ。

 

 エイダ・ウォンその人であったというのだった。

 

 

 

 

[交差する絶望の中の思想]

 

 連絡が途絶えてた中国支部のメンバーと再会できた聖龍HEADは、市街地外に設けられている避難場所その一角の聖龍隊仮設基地に全員が集合した。其処で各々が体を休めては自分達の身に起きた出来事を詳細に語るのだったが、その中で自分を真に慕ってくれた女性隊士を失ったシャンプーだけは気性を昂らせては同じ中国支部の面々とHEADの皆に強く言い放ってた。

「あの女よ! あの女が……エイダ・ウォンが今回のバイオテロに関わっているのよ!! そうでなければウィルスなんか持っている筈が無いアル……っ!」

「しゃ、シャンプー落ち着くだ……ッ!」

 涙目で怒りに囚われるシャンプーを必死に宥めるムース、しかしムースが宥めると同時にシャンプーはその場にしゃがみ込み深い悲しみの余り泣き出してしまう。

 そんな怒りと悲痛な感情に駆られるシャンプーを目の当たりにして、聖龍HEADと彼女と同じ中国支部の面々は居た堪れない痛心を胸に感じた。

 

 泣き喚くシャンプーが一通り胸中の想いを吐き出した後、彼女と同じ中国支部でHEADの木之本桜の婚約者でもある李・小狼が総長バーンズに訊ねた。

「確か、エイダ・ウォンって……女スパイとして国際的に指名手配を受けている」

 険しい顔色で訊ねる小狼の問い掛けにバーンズも同じく険しい顔色で答え返した。

「ああ、かのバイオハザード……その発端ともいえる製薬企業アンブレラとも通じていた女だ。しかし……」

 小狼に話し返すとバーンズは突然黙り込んでは考えに更けた。するとバーンズに代わりエンディミオンが意味深な面持ちで語り始めた。

「素性や目的、思想などが全て謎の東洋系の女スパイ。エイダ・ウォンという名も偽名の様で、アンブレラの元幹部であったアルバード・ウェスカーの許で暗躍していた時期もあった……しかし、その実態はアンブレラとは敵対関係であった「H.C.F」という企業組織からのスパイで、ウェスカーの許に居たのも実はアンブレラからH.C.Fに寝返ったウェスカーを影で監視し続けるという目的であったという」

 エンディミオンの話に続いてHEADと行動を共にしている早見青児も盲目のサングラスを光らせながら語り始める。

「そのH.C.Fがアンブレラと同じ製薬企業なのか、はたまた軍事産業の組織なのかは依然として不明ではあるが……だが、そのエイダ・ウォン自身が此処まで派手で大規模なテロを自ら人前に晒して行うとは考えにくい」

 思考に更ける青児の言動に、参謀総長のジュピター・キッドが一同に話し始めた。

「僕らが今追っている合衆国大統領補佐官のディレック・C・シモンズとそのエイダ・ウォンは過去に何度か接触したという情報は小耳にはしているんだけど……はたして、今回のテロにシモンズやエイダ・ウォンは本当に関与しているのかな?」

 考え込むHEADの面々を目の当たりにして沈黙を保つ中国支部の面々。

 と、HEADや中国支部の面子が各々思想に駆られていると、その沈黙を破るかのようにバーンズが皆に話し出す。

「……今はみんなそれぞれ思う所はあると思うが、まずはこの騒動の発端であるバイオテロについて調べる必要があるな。今、市街地を中心とした各地域で勃発しているバイオテロを色々と調べてみれば、本当にエイダ・ウォンがテロに関与しているのか、このテロの裏に補佐官のシモンズが潜んでいるのかが解る筈だ。シャンプー、辛いかも知れんが今はこのテロについて調査するのが先決だ。個人的感情は抑えておけ」

「わ、分かったアル……」

 バーンズに説き伏せられ、シャンプーは瞳から零れ続けてた涙を拭っては頷いてみせた。

 その時、総長バーンズに参謀総長ジュピター・キッドが鋭い眼光で話し掛けてきた。

「ところでバーンズ、実はさっきこのバイオテロが起こっている地域で諜報活動していた隊士から連絡が入ったんだけど……どうも、このテロに深く関わっていると思われる人物らがそれぞれ活動をしているらしいんだ。もしかしたら彼等から直接、話を聞いたり行動を共にしていれば何かしらの情報が手に入るかもしれない」

「なにっ? それは本当かジュニア!」

 キッドの話に表情を一変させて訊き返すバーンズ。そしてキッドはバーンズを始めとするその場の一同に神妙な面持ちで話し始めた。

「うん、まず最初に僕らが国連からも知らされていたトールオークスの事件から生死不明とされていた二名、レオン・S・ケネディとヘレン・ハーパーの二人だ」

「! レオン・S・ケネディって、確か今は合衆国直属のエージェントで、かのラクーン事件の数少ない生き残り……!」

 キッドの話したレオンの名に血相を変えて問い返すセーラーウラヌスに、キッドは話を続けた。

「そうだ。例のトールオークスで大統領護衛に当たっていたが、其処で大規模なバイオテロが発生した後行方知れずになっていたんだけど、この達芝にて姿が確認されたんだ。しかも彼と一緒に居るヘレン・ハーパーは、あのシモンズの部下でトールオークスのバイオテロに大々的に関与していると言われている女性エージェントなんだ。どういう経緯で二人が行動を共にしているのか解らないんだけど……」

「成るほど、トールオークスの被災者でもある二人なら何か詳しい事を知っている筈だし、接触した方が良いだろうな」

 話を聞いて納得していく堂本海斗に続き、バーンズが意味深な表情で徐に語り始める。

「その二人は現在、トールオークスのバイオテロに関与しているといわれているし……最悪の場合、二人を連行していかなきゃならないな」

 と、バーンズが語っているとキッドが更に話を続ける。

「それから半年前、とある内戦国でのバイオテロ鎮圧以来、戦前から姿を消していたクリス・レッドフィールド率いるBSAAも確認されている」

「なにッ! クリス・レッドフィールドといえば、あのラクーン事件にも深く関わったといわれ、更にその後はBSAAの活動で数多の戦歴を残している逸材ではないか!」

 優秀な戦歴を残しているクリスの名を聞いて声を上げるウォンレイに、バーンズが語り掛けた。

「ああ、確かにクリス・レッドフィールドは主に【ラクーン事件】と呼ばれる事件の一環でもある洋館事件で活躍した経歴を持っている。その後もBSAAのバイオテロに関する活動では目まぐるしい程の戦果を挙げている……半年前から失踪していたと聞いていたが、なにゆえ半年もの間居なくなっていたんだ?」

 再び考え込んでしまうバーンズの話に続き、キッドが話を再開する。

「そして最後に……シモンズ直属のエージェントである女性シェリー・バーキン。彼女からもシモンズの事を含めて色々と問い詰めないと」

「ちょっと待った! そのシェリー・バーキンって、まさか……!?」

 蒼の騎士こと青山雅也が咄嗟に問い返すと、キッドは真顔で彼に答えた。

「知ってのとおり……彼女もまた、レオン・S・ケネディと同じくラクーンシティの数少ない生き残りで、しかもアンブレラのウィルス研究員を両親に持っていた女性だ。今では事もあろうにシモンズ直属のエージェントとして活動している。考えたくは無いが、彼女自身がシモンズの企みに共謀している可能性も無くは無い」

 そしてキッドは最後に皆に対して付け加えた。

「……以上、この三組が現在この中国で活動しているらしい。彼らからは何らかの情報が入手できる可能性があり、接触する必要がある」

 語り続けるキッドの話を聞いて、一同は沈黙の中それぞれが思いに浸る。

 

 そんな沈黙を破り、バーンズが周りの同士達に指示を告げた。

「よし! まずは、その三組と接触して情報を得る必要性があるな! HEAD、各自その三組を捜索し彼らと共に混乱を鎮圧せよ!! 中国支部の連中は、この場にて待機ッ。避難してくる市民の誘導を最優先任務とするッ!」

 バーンズからの指示に同意の頷きをする中国支部のメンバー。しかし一人だけ、シャンプーだけは険しい顔でバーンズに言い返した。

「……バーンズっ、私も一緒に同行させてほしいアル!」

「なにッ?」「しゃ、シャンプー?」

 シャンプーの突然の申し開きに動揺するバーンズとムース。そんな二人や周囲の動揺には気にせずシャンプーはバーンズに熱く語る。

「私も行くアル! その人達から少しでも何か……あのエイダ・ウォンの事が解るかもしれないなら私も行くアル!」

「……シャンプー……」『…………』「…………」

 力強く発言するシャンプーの言葉に唖然となるムースに周囲の者ら、そして彼女の言動に強固な意志を感じ取ったバーンズは黙然と腕を組み見据える。

 そして「……ふぅ、まぁ良いだろう。ただし、さっきみたいに私情で先走るんじゃねェぞ」と、バーンズは渋々シャンプーが自分らと共に付いて行く事を承諾した。

「あ……ありがとう、バーンズ……!」

 バーンズの同意を得られたシャンプーは、心から彼に礼を述べた。

 更にシャンプーの決意に当てられたのか、他の中国支部のメンバーもバーンズに言い寄り始めた。

「総長! 僕らもシャンプー同様、連れてって下さいッ」

「お、お前ら……」

 中国支部の言葉に愕然となるバーンズ。

「私達もシャンプー同様、多くの仲間達をこの戦闘で失いました……! その仲間達に報いる為にも、どうか御供を……!」

「無論、一般市民の避難誘導も怠りませんっ。なのでどうか……」

 強い意志を感じさせる面構えを前に、バーンズは瞳を鋭くさせつつも言い放った。

「……解った、お前達を信じよう。頼む」

 バーンズの許しを受けて、中国支部の面々は力強く返事をした。

『はいッ!』

 

 そして聖龍HEADと中国支部の面々は、市内で行動していると思われる三組を捜索しに各々が一斉に散らばっては彼らの許へと向かうのであった。

 町は既に幾多の戦闘や混乱によって各所の至る所で火災が発生し物が散乱する有様へと変貌していたが、聖龍隊はそんな町へと突入して行くのであった。

 

 

 

 

[絡み合う思想と明かされる真実]

 

 市内で活動していると思われるレオン・S・ケネディとヘレナ・ハーパー組、クリス・レッドフィールドのBSAA組、そしてシェリー・バーキン組を捜索しては、彼等から今回のテロや大統領補佐官シモンズの裏事情などを聴取しようと、聖龍HEADと中国支部の面々は各自混乱する市内を駆け回り続けた。

 

 そして遂に聖龍隊は市内で活動中の三組と無事接触する事に成功する。

 聖龍隊は彼ら三組と行動を共にしながら、同時に事情聴取を行って事件の全貌を探ろうと奮闘する。

 しかし、それぞれ三組から各々の事情を聴いてみた所、三組の背後事情は完璧に食い違っていたのだった。

 

 まずレオンとヘレナ組からの話によると。大都市トールオークスで発生したバイオハザードに巻き込まれたレオンは、最終的にそのテロでゾンビ化してしまった大統領をやむなく射殺するを得なくなり、更にそのテロを引き起こしてしまったというヘレナの言い分によると、彼女は自分の妹を例の大統領補佐官シモンズに人質とされた事でテロを引き起こしてしまったというのだ。だが、ヘレナの妹は既にシモンズの指示によってその肉体にウィルスを投与され化け物へと変貌してしまい、二人は彼女と対峙しては殺めるしか手立てが無かったという。そして後にシモンズの謀略によって、二人はトールオークスのバイオハザードを引き起こした重要人物とされてしまい、更にレオンには大統領暗殺の罪までも着せられてしまった。二人は自分達の身の潔白を証明する為、そしてシモンズの悪事を暴く為に自分達の生死を隠して中国まで出向いてきたと言うのだ。

 

 それとは一方的にクリスらBSAA組の言い分はレオン達とは真逆のものであった。

 半年前、クリス率いるBSAAはとある内戦国でのバイオハザードに対応していたのだが、その戦闘中に隊員のほぼ全てが生物兵器に変異させられ、クリスはその戦闘中に頭を打っては記憶を失ってしまう。そして彼は病院を抜け出しては酒に溺れる日々を過ごしていたのだが、そんなクリスを探し当て連れ戻しにきたBSAAの隊員ピアーズ・ニヴァンスからの誘いにクリスは応じ、かつての自分を取り戻そうと再び銃を取りこの中国の地に降り立ったのだ。そして其処でクリスは半年前の記憶を取り戻す。それは半年前、家族の様に大事にしてきたBSAAの隊員達を生物兵器に変異させ、この中国でのバイオハザードを引き起こした相手が、あのエイダ・ウォンであった事を思い出したのだった。そして記憶を取り戻したクリスはバイオハザードを引き起こし、BSAAの隊員達を次々に化け物にしていったエイダに対し激しい憎悪を募らせていくのであった。

 

 そんな二組とは根本的に違い、かのラクーンの数少ない生き残りでもあるシェリー・バーキンは半年前より内戦国で傭兵をしていた一人の青年を任務の為に自分の上司であるシモンズの許へと連れて行こうとしていた。しかしその道中、彼女達は突然拉致されてしまい半年もの間軟禁されていたという。そして無事脱出した二人は其処から逃亡を続けていたのだという。

 

 三組が三組とも全く異なる言い分をしている事を聖龍隊組織内の衛星通信による無線で全て知ったバーンズは困惑せざるを得なかった。

 自分達が追っている大統領補佐官シモンズ、そしてこの中国でシャンプーと親しい女性隊士にウィルスを投与して逃亡したエイダ・ウォン。テロの背後に浮き彫りとなる人物達に多大なる懸念を募らせていくバーンズ。

 各々が全く異なる事情で動き、そして複雑に絡み合う思想の中、果たして自分達が行き着く真実は如何なるものか。

 バーンズは、三組と行動を共にしている同胞の仲間達に随時連絡を取って各自の行動を事細かく伝えるよう指示を出した。

 

 その後バーンズと副長であるミラー・ガールはBSAAのクリス組と合流しては彼らと行動を共にしていた。そのメンバーの中にはクリス同様、大切な仲間を殺されたシャンプーと彼女を心配するムースの二名も含まれていた。

 そして案の定、クリスとシャンプーの両名は仲間を化け物に変異させた張本人エイダ・ウォンに対して激しい憎悪を滾らせながら協同して彼女を追う。そんな二人の暴走を時おり制止させる為彼らを宥め続ける役に立ち回るピアーズとムース。

 そんな6人組は、ようやく工場付近でテロの首謀者と思われるエイダ・ウォンの姿を発見し彼女を追跡する。

 エイダの姿を見た途端クリスとシャンプーは先走りしては彼女を執拗に追尾する。だが、そんな彼らの行動を同じ工場内で目撃していた一組が慌てて駆け付けていく。

 一行はようやくエイダに追い付いてはクリスが彼女に銃口を向けて狙いを定めた。そしてクリスが引き金を引こうとした、その時。

 クリスが発砲しようとした瞬間、何者かがクリスに体当たりしては彼の狙撃を妨害した。クリスはすぐさま自分の狙撃を妨害した者と暗闇の中で乱闘を始めた。其処に武道に秀でたシャンプーも駆け付けてはクリスに加勢しようと、彼と取っ組み合っている人影にキツイ一撃を浴びせた。

 シャンプーの一撃を喰らって吹き飛ぶ人影、そして二人の元に追い付いたミラー・ガールやムースにピアーズ達は暗闇の中、クリスと乱闘をしていた人影にライトを向けた。

 すると、その人物はなんとレオン・S・ケネディ本人だったのである。

 狙撃を邪魔した人物がレオンであった事に驚く一同、だがクリスはすぐさま男二人の乱闘を側で冷然と眺めていたエイダに再び銃を向けては発砲しようとした。

 と、そんなクリスを見たレオンは已む無く彼に向けて銃を向けてはクリスに言った。

「クリスやめてくれッ」

 だがクリスは怒りに満ちた表情でレオンに言い返す。

「邪魔するなレオン! この女だけは俺達の手で……!」

 クリスが激情の声色で言うと、それに賛同する様にシャンプーもエイダに対して交戦体勢で戦う構えを取る。

 そんな今にも眼前のエイダを殺めようと殺気立つ二人にレオンは言い放った。

「銃を下ろしてくれ! 彼女は、このテロの重要な証人なんだ!」

 このレオンの発言にクリスは怒声で言い返した。

「証人!? フザケルな! この女はテロの首謀者だ!」

 これにレオンは否定した。

「違う。首謀者はシモンズ……合衆国大統領補佐官だ」

 だがクリスも退かずに反論する。

「この女は俺の部下を皆殺しにした!」

「俺達は大統領と7万人のアメリカ国民を失った!」

 一触即発の危険な状況が刻一刻と続く中、クリスとレオンの会話にシャンプーも加わった。

「……レオン、確かにその女が首謀者ではないとはいえ、彼女自身もテロに共謀したのは事実アル! 現にクリスだけじゃない、私も目の前でその女に大事な仲間を殺されたアル……!」

「…………」

 シャンプーの問い掛けにレオンは何も言い返す事ができず、クリスと銃を向き合ち続けた。

 今にも互いの銃が火を吹きそうな程の一触即発の現状に、クリスとシャンプーに同行するピアーズとムースそしてHEADのミラーガールは見ているしかできなかった。

 そんな息も詰まる空気の中、銃を向けあうクリスは眼前のレオンの背後で冷ややかに微笑むエイダを見てレオンに言った。

「ネオアンブレラだぞ……俺達にとって、この名が……」

 かつて存在した製薬企業アンブレラ。その組織が起こしたバイオハザードで幾多の恐怖と危機を目の当たりにした自分たちにとって、その組織の名を語る存在は因縁深いものであると語るクリスの言論に、レオンは一言返した。

「……分かってる」

「どうあっても、この女を信じるというのか?」

 クリスの質問に、レオンは彼とシャンプーに険しい顔色を向けて答えた。

「……ああ、信じる」

 そして二人がそのまま銃口を向け合う最中、その様子を傍観していたエイダ・ウォンが周囲のピアーズやムースにミラー・ガール達の様子を窺いつつ彼らの隙を見抜いては背後から何かを取り出して行動を起こそうとした、その瞬間。

「待て、エイダ・ウォン」

 彼女の頭に銃口を突き付けると同時に声を掛ける者が現れた。

 その声に気付き、クリスにレオンそして他の者達がその方に目を向けると、其処にはエイダの頭に銃を突き付ける聖龍隊総長バーンズの姿があった。

「バーンズ!」「総長っ」

 いつの間にか姿を晦ましていたバーンズに意表を衝かれるミラーガールとシャンプー。

「バーンズ……」「バーンズ撃つなッ、彼女は……」

 突然の事態に呆然となるクリスとは裏腹に、銃を突き付けられるエイダを目の当たりにしてレオンはバーンズに制止の声を掛ける。するとバーンズは銃口をエイダに突き付けながら返答する。

「皆様方、色々とこの女に対して思う所はオアリでしょうが、兎にも角にもコイツはテロだけでなくシモンズの裏を取る為の重要な参考人には違いない」

 そう言うとバーンズは自分が銃を突き付けているエイダに険しい強面で話し掛ける。

「エイダ・ウォン。お前さんが、このバイオハザードを引き起こしたのかどうかはまだ不明だが、少なくとも関与しているのだけは逃れない様の無い事実だ」

 銃を突き付けられるエイダは、余裕が感じられる冷ややかな笑みを浮かべては銃を突き付けるバーンズに目を向ける。

 更にバーンズは銃を突き付けたままエイダに話す。

「それと、うち等の情報網によれば、アンタと例の大統領補佐官シモンズは昔ながらの付き合いだそうじゃねえか。シモンズについても……いいや、トールオークスのバイオハザードについても知ってる事全てを話してもらおう」

 と、バーンズが淡々と語りながら視線を向けてくるエイダの瞳を見詰めている、その時。彼女の内なる意思がバーンズのテレパスにて彼の脳裏に直接伝わった。

「!」

 眼前のエイダの意思が、思想が頭の中に入ってきたバーンズは目を見開きながら愕然とした。

 そして徐に突き付けていた銃を離してしまった瞬間、バーンズは思わず言葉を発してしまう。

「……カーラ・ラダメス……!」

 そのバーンズの発現を聞いた途端、眼前のエイダは余裕を感じさせる冷然とした笑みから一転、口元を歪ませる激しい情状に満ちる表情に一変させ、次の瞬間彼女は携帯していた銃を手に取ってはバーンズに銃口を向けて有無も言わさず発砲した。

 エイダからの銃弾を頭部に喰らったバーンズは、そのまま背中から倒れてしまう。

「きゃあっ!」「ば、バーンズっ!」

 銃弾に倒れるバーンズを前に悲鳴をあげるシャンプーにミラー・ガール。

「こ、この女!」「バーンズ……!」「そんな、エイダ……!」

 突然バーンズに発砲したエイダに構えていた銃器を向けるピアーズ、そして倒れるバーンズを目の当たりにして愕然となるクリス、一方突如としてバーンズに発砲したエイダの行動に愕然とするレオン。

 ピアーズがエイダに銃を向けた瞬間、彼女はバーンズを撃った拳銃に続いて携帯していた閃光手榴弾を放り捨てた。手榴弾からの眩い光で辺り一帯が包まれると同時に目が眩む一同、そして光が納まりようやく目を開けてみると、エイダは逃亡しようと駆け出していた。

「あの女ッ」

 逸早くエイダに気付いたピアーズが彼女に向けて発砲するが、エイダはそのまま逃げ去ってしまう。

「クソッ」

 悔しがるピアーズ、そんな中彼女が投げた閃光手榴弾で視覚が麻痺していた皆々がようやく視界を取り戻してきた。

 視界が戻ったミラー・ガールにシャンプー、ムースはエイダの発砲を受けて倒れるバーンズに駆け寄る。

「バーンズ!」「総長!」「総長ッ、しっかり!」

 そして三人に続き、クリスにレオン、ピアーズにヘレナも倒れるバーンズに駆け寄ってくる。

「あの女……! おい、分かったかクソ野郎! あの女は平然と相手を撃ち殺す危険な奴なんだよッ!」

「……そんな、エイダ……」

 平然とバーンズを狙撃したエイダに怒りを剥き出しにしながらレオンに言い寄るピアーズ、一方のレオンはエイダの発砲に動揺し気が動転していた。

 だが、そんな時。

「ッ……オイオイ、オレを勝手に殺さないでくれよ」『!?』

 声に思わず顔を向けるクリス組とレオン組の四名。するとエイダに撃たれた筈のバーンズが徐に起き上がって見せた。

「バーンズっ」「な、何だと……!」

 起き上がるバーンズを前にして喜ぶミラー・ガールとは対照的に、銃で頭を撃たれた筈の彼が起き上がる様を目の当たりにして驚愕するクリス達。

 そして上半身を起こしたバーンズは突然自分の口の中から何かを吐き出した。

「ガァッ、ガッ、ガッ、ペッ」

 そして彼が口から吐き出したのは、一発の弾丸。

「こ、これって……」

 眼前で起こっている状況に理解が追い付かないヘレナにクリス達に、バーンズは立ち上がりながら説明した。

「ふぅ、何だお前さんたち知らねえのかい? オレ様は軟体生命体で、体の全ての細胞が消失しない限りは死なねェ男なのよ。故に、切り刻まれ様が銃で蜂の巣になろうが死なないのよ。それにしても急に撃ちやがって、あの女」

『………………』「す、すげェ……」

 平然と撃たれた頭部の箇所を押さえながら淡々と説明するバーンズの言動に、彼とは初見であるクリスにレオンそしてヘレナは唖然と言葉を失い、ピアーズは思わず呟いてしまう。

 そしてバーンズは立ち上がると不意に自身の肉体を変形させ、背中から翼を生やした。

「う、うわッ!」「ッ……!」

 背中から突如として翼を生やして見せたバーンズに驚愕するクリスやヘレナ達は表情を一変させる。

 そして翼を生やしたバーンズは周囲の皆に強い面魂で言う。

「オレは、あのエイダもどきを追う! クリス、ピアーズ! お前らも追いたいなら止めやしないが一つだけ! 余り感情を表に出しながらの行動は任務に支障が出るから、追って来るなら少し落ち着いてからの方がいいぜ」

『……』

 更にバーンズは続けてレオンとヘレナの二人にも告げた。

「あと其処のお二人っ、さっきウチ等の組織からの伝達によると、どうやらあのシモンズがこの中国に足を運んでいるみたいだ。何か得たければスグに行くのがオススメだぜ。それともう一つ……レオンの旦那、エイダに関しちゃアンタはかなり個人的な感情を向けてはいる様だが、所詮はその女の組織もアンブレラやトライセルの様な悪徳組織と変わりゃしないぜ。余り個人的感情で動かない方が世の為って奴だぜ」

 レオンとヘレナの二人にも告げたバーンズは、最後にミラーガールとシャンプー/ムース達に指示を出した。

「アッコ! お前は念の為にクリス達と同行しろッ、偽者とはいえ下手にあの女を殺されたんじゃ堪ったもんじゃない。あのコピー女は生きて参考人として捕らえるのがベストだ! それとシャンプー、ムースはレオンとヘレナ達に付いて行けッ。シモンズの悪行を止める為にも二人と協力してシモンズを追い詰めろッ! 確かジュニアとアプリが既にシモンズの部下であるシェリー・バーキンと合流している筈だ。協力してやれッ」

 そう皆に言い終わると、バーンズは飛び立ってしまった。

「そんじゃッ、俺は行くぜ! あの偽者を止めねェと、それこそ世界は終わりだ!!」

「バーンズ……!」

 言葉を掛けようとするも飛び去ってしまうバーンズを前にし釈然としないミラー・ガールに他の一同。

 そんな中、残された者たちは唖然としながら言葉を発した。

「今、彼なんて……?」「もどきに、偽者、って……」

 誰もがバーンズの残した言葉に疑問を感じられずには居た。

 

 そしてバーンズの指示の元、ミラー・ガールはクリスとピアーズのBSAA組と、シャンプーとムースの二人はレオンとヘレナの組と行動を共にし、それぞれの目的の為散らばって行った。

 

 

 

[腐敗の象徴]

 

 乱れる現状の中、行動を共にする聖龍隊メンバーと各々の顔ぶれ達。そんな中、シェリー・バーキン組と合流を果たした聖龍隊参謀総長のジュピター・キッドとウォーター・フェアリーはその道中、シェリー・バーキンに今回のテロやトールオークスでのバイオハザードには彼女の直属の上司シモンズが関わっている事実を伝える。

「……そんな、シモンズが……!?」

 キッドから事情を伝えられ、更にはシモンズの裏の顔を知らされたシェリーは俄かには信じられずに居た。そんな彼女にキッドは更に伝える。

「信じ難いけど本当なんだ。国連の方もシモンズの暗躍については前々から察してはいたが裏が取れず迂闊に手が出せないのが現状だったんだ。実際、彼の裏の素行を調べる様に僕らは国連に調査を依頼された身の上なんだ」

「…………」

 キッドからの話を聞いて俄かには受け入れ難いシェリーはその表情を次第に曇らせていく。

 そんな道中であった。シェリー組とレオン組とが市内でバッタリ再会したのだった。実は二組は少し前にも顔を合わせており、シェリーの方もラクーンシティでのバイオハザードの一件で世話になったレオンに信頼を寄せていたが、そんな彼からもシモンズの悪事を聞いていたので心中に不安を抱いていたのだった。

 だがそんな折、そんな二組の前にそのシモンズ本人が現れては彼らの前に立ち塞がったのだ。

 自らの部下達に銃を向けさせ二組の動きを封じるシモンズ、彼の悪気の無い言い分を前にキッドが彼に告げる。

「シモンズ! もうお終いだ、国連もアンタの企みを察しては動き出している! 大人しく投降しろッ!」

 だが当のシモンズ本人は反省の色も見せずに不適な笑みを浮かべながら平然とキッド達に言い返す。

「ふふ、聖龍隊参謀総長よ。何を言ってるのだ? 国連が私に手が出せると思うかね? 現に出せないで居るから、君たち聖龍隊に国連は依頼をしたのではないのか?」

 シモンズからの問い掛けにキッドは何も答え返せなかった。

 そしてシモンズは更に悪びれる様子も見せずに語り続けた。

「……全てはアメリカの、いいや全世界の為の行いだ。何事も全てが綺麗事で済まされる訳は無いだろう? 私はただ世界のパワーバランスを保つ為に当然の事をしたまでだ」

 そして全てを語り終わったシモンズは部下達に命じた。

「やれ」

 その一言で機関銃を構えた部下達は一斉にキッド達に向かって発砲した。

「危ないッ」キッドとレオン組は一斉に物陰へと身を隠す。

 だが「やめてっ」シェリーだけは上司のシモンズに発砲を止める様制止を掛ける。そんな彼女を、彼女と同行していた青年が寸での所で物陰に飛び込ませる。

 と、そんな二人を見たシモンズは銃を乱射する部下達に告げた。

「待て。あの二人は殺すな、まだ利用価値がある」

 そんな銃弾が降り注ぐ現状の中、レオン組とシェリー組そしてキッド達は物陰に身を潜めながら話し合っていた。

「此処は危ない、一先ず退こうッ。シモンズの罪状はこれで明らかだ!」

 キッドが語っていると、徐にシェリーは所持していたチップをレオン組とキッド組に渡した。

「この中にシモンズが欲しがっていた情報が入っているわ」

「ありがとう」

 キッドが礼を返すと、レオンがシェリーに言った。

「此処は俺達に任せて、君らは行ってくれッ。キッド、そしてウォーター・フェアリー、二人を頼む」

 するとこのレオンの発言を聞いた青年が彼に物申した。

「それは大丈夫だ、このスーパーガールの事は俺に任せてあんた等はあの野郎をぶちのめしてくれ」

「だ、だけど……」

 ヘレナが唖然とする中、青年は更に続けて言った。

「平気だ、俺にも色々と借りがあるしな」

 その青年の言葉を聞いて、キッドは彼に述べた。

「……解った。シェリー・バーキンの事は君に任せるよ。二人とも、どうか無事で」

「ああ」

 得意げに返事をした青年は、そのままシェリーと共にその場を去っていった。

 

 そして現場に残ったレオン組のレオンにヘレナ、そしてシャンプー、ムース、そしてジュピター・キッドとウォーターフェアリーは降り注ぐ弾丸の雨の中、シモンズとその一派を相手に交戦を始めた。

 弾丸を容赦なく撃ち続ける部下達、その様子を平然と眺め続けるシモンズ。だがその時、そんなシモンズの背後から何者かが忍び寄っていた。

 次の瞬間、その者は弾丸の雨の中奮闘するレオンやキッド達を見下ろしているシモンズに狙いを付けては何かを発射した。

「ウッ」

 首元に違和感を感じ、怯むシモンズ。そして、その何かを撃った者通称ジュアヴォはシモンズの部下達に銃撃され、消滅した。

 シモンズは首に撃ち込まれた注射器の様なモノをよろめきながら引き抜いた。そして引き抜いた注射器を見詰めながら苦渋の表情で呟いた。

「……あの女、考える事は一緒だったか……」

 そう苦しそうに呟きながら、シモンズはその場から歩み去ろうとするのを下方で銃撃を避けていたレオンやキッド達も確認した。

「シモンズが逃げる!」「追うぞ!」

 逃げるシモンズを視認するヘレナ、そしてキッドが皆に指示を告げては一斉に駆け出していく。

 当のシモンズは苦しみながら歩を進ませ、やがて市内を走行する電車へと身を落とした。

 それを見たレオンやキッド達はすぐさまシモンズを追跡する為、走行する電車へと飛び乗った。

 

 そして電車の最前線その屋根の上ではシモンズが携帯を通して何者かの話を聞いていた。

「あなたが私にくれたもの、そっくりお返しするわ……シモンズ。始めは不安や恐怖に苛まれるでしょうけど安心して。人でなしのあなたが、本当に人でなくなるだけ。全人類と共にね」

 その台詞を聞いたシモンズは、怒りをあらわにする様に携帯を握り潰した。

 そんなシモンズの背後からレオンやキッド達が迫ってきては、彼に言い寄り始める。

「シモンズ諦めろ、もう貴方に逃げ場などは無い。大人しく投降するんだ!」

 キッドがシモンズに呼びかける中、シモンズは走行する電車の上で振り返りつつ言葉を返す。

「私を追ってどうする? あの女を追え」

「あの女?」

 レオンが問い返すとシモンズはすかさず言った。

「エイダ・ウォンだ。あの女は私を裏切った、必ず何か企んでいる」

 すると、このシモンズの台詞にキッドが話し返した。

「安心しろシモンズ。そっちは此方の仲間が追跡している。アンタと同じく牢獄行きにしてやるさ」

 そしてキッドに続きレオンもシモンズに言う。

「俺達の追うべき相手はシモンズ……お前だ」

 するとシモンズは血相を変えて語り始めた。

「大統領の仇か? バカめ。あの男の言うようにラクーンの真実など公表してみろ。アメリカの権威は失墜し……結果、世界情勢は崩壊。世界そのものが混乱の後に破滅していた!」

 と、シモンズが語っていると彼に妹を殺されたヘレナが強く反論した。

「違うわ! 世界を破滅させているのは貴方よ! 大勢の罪の無い人を犠牲にして!」

 と、ヘレナの言い分に対してシモンズが怒鳴り返した。

「まだ分からんか! この国も大統領も、真実を明らかにして世界を破滅に導く……立派な……罪人だ……!」

 その時「うああァ……!」突然シモンズが首を押えながら苦しみだした。

 そして苦しみながらも語り続ける。

「あの女……復讐のつもりか……!」

 とシモンズが語り終わった次の瞬間。

「うあああぁぁ……ッ!!」

 突如として叫ぶシモンズに一同は騒然と化す。

 更に叫び上げるシモンズの肉体は膨張し、彼の填めていた指輪が砕け散ると同時に、シモンズの体は一瞬で炎上した。

 そしてシモンズは獣の様な雄叫びを上げながら立ち上がると、皹だらけの上半身を裂きながら変異した。

 四速歩行の獣の様な化け物に変異したシモンズは、眼前の6人に敵意をむき出しては襲い掛かった。

 

 激しい戦闘の末、変異したシモンズを走行する電車の前方に吹き飛ばしては、電車に撥ねさせた一同。

 そして電車に撥ねられ、再び電車の上に弾き飛ばされたシモンズは再び人の姿へと戻りつつも痛めた体と変異した細胞に苦しんだ。

 だがシモンズは、それでも敵意を消す事は無く向かってきた。

「分かってるのか、貴様ら…………この世界から私が消える事の意味が!」

 眼前のレオンやキッド達に語っていると同時に再び変異するシモンズ。彼にまずレオンが言い切った。

「世界に再び、安定が訪れるって事だ」

 そしてレオンに続きキッドもシモンズに言い切って見せた。

「簡単な事だ、シモンズ。アンタも大統領補佐官なら解っている筈だ……アンタが消えたって、単に代わりがその役職に就くだけで、世界がどうこうなる事はない。だろ?」

 二人の発言に怒りを覚えた変異シモンズは、屋根を強く叩いて感情をあらわにする。と、同時に屋根の一部が破損してしまい、それを目の当たりにしたシモンズはその破片を眼前の皆の方に力強く蹴り飛ばした。

 蹴り飛ばされた破片は一直線に一同の方に飛んできたが、その飛んでくる破片の前にシャンプーが飛び出しては御得意の拳法で意図も簡単に弾き飛ばして見せる。

 そしてシャンプーに続いてヘレナが構えていた拳銃を発砲し、シモンズ目掛けて弾丸を放った。

 頭部に弾丸が直撃したシモンズは、その変貌した容姿をよろめかせた。

 と、その時。レオンやキッド達と交戦していたシモンズにサーチライトが照射されては、その無残な姿が夜の暗闇に浮かび上がる。

 シモンズに照射した一機のヘリに搭乗していたのは、シモンズの属するファミリーであった。ファミリーは変わり果てたシモンズを見て、搭乗していた男が操縦士に告げる。

「もういい、行け」

 その一言でヘリは変異したシモンズを残して飛び去ってしまった。

「馬鹿な……! ファミリーが私を見捨てるはずが無い!」

 去ってしまうヘリを目の当たりにしたシモンズは、変異して変わった獣の様な声質で嘆いた。

 更に次の瞬間、嘆くシモンズは足元を滑らせてしまっては電車の上から落下、最前線の電車の車輪に巻き込まれた轢かれてしまう。

 更にシモンズが電車の下敷きになった瞬間、電車の車輪がレールから外れては脱線してしまい、電車が転倒する寸前にまで追い込まれてしまう。

 急ぎ揺れる電車の上から逃げるレオン達とキッド達。だが電車が転倒する寸前、キッドは窮地を打破する為皆に言った。

「もう駄目だ、飛ぶぞ!」

 叫んだ瞬間、キッドは電車から飛び降りちょうど走行していた橋の真下の海へと身を投じる。そしてキッドに続きレオンやへレナ、ウォーター・フェアリーにシャンプー/ムースも海に飛び込んだ。

 一同が海へと飛び込むと同時に、脱線した電車も同じく海へと落下した。

 

 

 

 

[遭遇する王族と本物]

 

 一方、工場内で取り逃がしたエイダ・ウォンを追って、クリスとピアーズそれにミラーガールが地上からジープで追跡していた。

 そして一足先にエイダを追い掛けたバーンズは、上空から軍港エリアに南下するエイダを目で追いながら追跡していた。

 

 そして一行は追跡の末、エイダが逃げ込んだ湾内の空母へと辿り着く。

 空母艦内に辿り着いたクリスにミラー・ガール達は、其処で配備されていたウィルス投与型の兵士に取り囲まれ身動きが取れずにいた。

 そんな中、上空から同じくエイダを追跡してきたバーンズが飛び降りてきては三人を囲む兵士を瞬く間に倒してしまう。

「バーンズ」「済まない、バーンズ総長」

 窮地を救ってくれたバーンズに駆け寄るミラー・ガールに礼を述べるクリス達。

 そんな三人にバーンズは余裕ある笑みで話し返した。

「良いって事よ。それよりも、早くあの女を追わねェと……あのままにしてたら事態は悪化の一途だぜ」

 こうしてバーンズと合流した一行は、群がる敵を蹴散らしながら追跡を続行するのだった。

 

 道中、バーンズはメタルバードに変身して群がる敵を難なく蹴散らしていく。そんな彼の戦法に目を奪われるクリスとピアーズは徐にメタルバードに訊ねた。

「それにしても……やるな君」「マジでスゲぇ……」

 と自身の体を刃物や電撃系の銃身に変形させて攻撃するメタルバードに、目を丸くするクリスとピアーズ。

 そんな二人にメタルバードは船内を只管突き進みながら平然と話し返した。

「別に。それより早く、あのエイダもどきを取り押さえねェと」「?」

 再びバーンズの口から発せられる言葉にキョトンとするミラーガール。

 そして一行がようやく艦内へと進入すると、その時艦内アナウンスから女の声が聞こえてきた。

「あなたが私にくれたもの、そっくりお返しするわ……シモンズ、始めは不安や恐怖に苛まれるでしょうけど安心して。人でなしのあなたが、本当に人でなくなるだけ。全人類と共に……今日まで世界を築いたのは、貴方と貴方のファミリーよ。でも明日、目にするのは……まっさらな世界」

 アナウンスが止むと、一行は再び船内を進んでいった。

 

 一行は艦内に設置されているエレベーターで上層階へ上って行くが、エレベーターが階に止まった瞬間、外に胸元の大きく開いた赤いシャツとタイトな黒のレザーパンツを着用している女性の姿が一瞬確認できた。その女性は他でもないエイダ・ウォンだった。

「エイダ!」彼女を見て追いかける一同。

 だがエイダは艦内扉の向こうに行ってしまい、更にその先には強固な電動シャッターが閉まりつつあった。

 エイダは悠然とそのシャッターの奥に行ってしまい、後を追う一同は急いで扉を開けては彼女を追う。

 しかしシャッターはエイダが通り過ぎた後に閉まりかかった。が、その時。

「彼女はオレが追う! お前らは別ルートを行ってくれッ!」

 そう言ってメタルバードは瞬時に自分の体を軟体化させては、閉まりかけていた電動シャッターの向こうに滑り込んだ。

「ふぅ~~、何とか間に合った……さてと、今のが偽者か本物かは分からねぇが追うとしますか」

 こうしてメタルバードは単身、先に進んでいったエイダの追跡を続行した。

 

 エイダを追うメタルバードは彼女の進んだルートを進み追尾していくと、やがて母艦の上層階その一室にまで辿り着いた。

 息を潜め物陰から室内を覗き込むメタルバード。すると室内は船長室の様に整えられた綺麗な部屋取りで、室内にデスクその上に置かれたアタッシュケースの前にはエイダが居た。

 メタルバードは彼女に気付かれない様にその様子を窺ってみる。

 一方のエイダはケースの承認システムを作動させてはケースを開いて中を拝見した。ケースの中にはボイスレコーダーと何かのファイルが収納されていた。

 中に入っていたボイスレコーダーを作動させるエイダ、すると機械には男の声が録音されていた。

「違う! エイダ・ウォンを作り出せ!」

 ボイスレコーダーの声を聞いて、エイダも物陰に身を潜めるメタルバードも声の主があのシモンズである事に気付く。

「なぜ、できない!? サナギにもっと遺伝子データを組み込むんだ!」

 レコーダーから荒々しいシモンズの声が飛び交う中、エイダはケースに納入されていたファイルを黙読し始めた。ファイルには今回のテロに使用されたウィルスに関する重要機密が鮮明に記されていた。

「別の実験体を用意しろ! そうだ、次の実験ではカーラを使え。背格好も、ちょうどいい。もちろん彼女には秘密だ……」

 黙々とファイルの情報を読み解くエイダは、更にケースに入っていたディスクも取り出し、更に奥の方に仕舞われていたファイルに目を通す。

「そうだ! いいぞ! これで彼女を手に入れられる! ただ一人、私に従わなかった彼女を! ハッピー・バースデイ……エイダ・ウォン!」

 エイダがファイルの最後のページに目を通してみると、其処には一人の若い女性がシモンズと一緒に納まっている写真が添付されていた。

 ケースの中に納入されていたファイル、そしてボイスレコーダーに録音されていたシモンズの台詞。これらを元にエイダは頭の中で全ての真実を理解した。

「そういうこと……」

 と、エイダが一人黙々と事実を悟っていた、その時。

「動くな」「ッ!」

 エイダの真後ろから銃口のような物を突き付け、声を掛ける者が。エイダは突然の事に驚くしかできなかった。

 そして思い切ってエイダが後ろを振り返ると、其処には誰も居なかった。

「え?」不思議と辺りを見渡すエイダ。

 彼女が周囲を見渡している、まさにその時。彼女の目の前に突如としてメタルバードが空中から浮かび上がる様にして出現したのである。

「! 貴方は……!」

 突如として姿を現したメタルバードに驚くエイダ。そして透明にしていた体を現したメタルバードは悠然とエイダの眼前を徘徊しながら彼女に話し掛ける。

「成る程な、アンタは本物のエイダ・ウォンって訳かい」

「本物……つまりは、もう一人の私についても既に知っている訳なの?」

 メタルバードの言葉に戸惑うエイダに、バーンズは悠然と話し続けた。

「ああ、実はさっき工場でアンタのコピーさんと出くわしてね……その時、彼女の脳裏からシモンズとシモンズのファミリーが作った世界に対する激しい憎悪が垣間見れたんでね」

 メタルバードはエイダが先ほどまで見ていたファイルを指差しながらエイダに話した。

「そのファイルにシモンズと一緒に写真に納まっている女……どうやら、その女が無理やりエイダにされたカーラの本当の姿らしいな」

「あら? 聖龍隊の総長さんとも在ろう御方が盗み見? ……悪い趣味だこと」

「何を言ってるんでい、盗み見に盗み聞きならアンタの方が十八番じゃねえか」

「……何処まで知っているの?」

 険しい顔でエイダが問い掛けると、メタルバードは笑みを浮かべながら悠然とした態度でエイダに話し始めた。

「……エイダ・ウォン。かつての悪徳企業「アンブレラ」とは敵対関係にある企業組織「H.C.F.」に属する産業スパイ。個人的な素性や目的などは 一切不明で名前も偽名である」

「ふ~~ん、一応は其処まで知っているのね。……他には?」

「今回のバイオテロはどうかは分からねぇが、トールオークスでのバイオテロ、そしてラクーンシティの滅菌作戦にも直接的に関わったシモンズとは旧知の間柄」

「そう……私の分身さんについては何か知ってるの?」

「ああ、それも殆ど偽者さんと遭遇した時に分かっちまった。それにアンタが先ほど作動させたボイスレコーダーからも真相は垣間見れるよ。……彼女の本名はカーラ・ラダメス、シモンズの下で働いていた研究員で15歳で既に博士号を取るほどの優秀な人材であった。しかしシモンズによって意図的にウィルスの実験体にされアンタに、そうもう一人のエイダ・ウォンにされてしまう。だがカーラとしての自我が戻った事により、シモンズに報復する事を決意する。そして彼女はシモンズとそのファミリーが望む「安定した世界」を崩落させようとウィルスを使って、こんな事を仕出かしちまったんだろうな」

 メタルバードの話を聞き終わった本物のエイダは冷ややかな微笑を浮かべながら甘い言葉を掛ける。

「……ふふ、さすがは二次元界でも随一のテレパスの持ち主だけはあるわね。超獣族の王子様♪」

「ふっ、下手なおべっかはいらねえぜ。それより此処まで来る間に、アンタに化けてたカーラについての情報は粗方入手している。やっぱ思っていたが、チベット山中の国連管轄化の施設を二箇所も襲っていたのは彼女だった。それについての情報も入手してるし、これで後は……」

「後は……?」

 エイダが問い掛けると、メタルバードは目の色を一変させて眼前のエイダの腕を掴んだ。

「アンタと……! アンタの偽者であるカーラを連行して洗い浚い吐かせれば全てはそれで納まる!」

 だがメタルバードに腕を掴まれたエイダは、余裕を感じさせる微笑で腕を掴むメタルバードに言った。

「あらあら、私を捕まえようとするの? まるでシモンズよ」

 だが、このエイダの台詞にメタルバードは血相を変えて言い返した。

「ウッセェ! あんな変態野郎と一緒にすんなッ! オレはアンタの所属する組織について全て吐かせるだけよッ!!」

 そしてメタルバードは半ば強引にエイダの腕を引っ張りながら彼女を連行しようとした。

 

 と、メタルバードがエイダを連行して行こうとしたその時。一発の銃声が響き渡り、二人の耳にもその銃声が確かに入ってきた。

 銃声を聞き付けた二人は急ぎ艦内の外に飛び出しては、辺りを見渡してみた。

 すうと上空を一機のヘリが飛び去っていき、更に辺りを見渡していたエイダの眼前に上方から、胸元が大きく開いた紫のシャツに赤いスカーフを首に巻いているもう一人のエイダ、カーラ・ラダメスが落下していくのが目に入った。

 何かが潰れた音が響いた次の瞬間、エイダとメタルバードは顔を乗り出して真下の甲板を見下ろした。其処には頭部から出血して動かなくなったカーラ・ラダメスの亡骸が横たわっていた。

「……ッ!」

 違う人間とはいえ、自分と寸分違わず同じ容姿の人間の死に様を目の当たりにしたエイダは慄きながらもしっかりと彼女の残骸を見据え続けた。

 そしてメタルバードは、先ほど飛び去ってしまったヘリを見て察知した。

「さっきのヘリ、シモンズのファミリーだ。ファミリーめ、既に手を回してたか」

 メタルバードは先ほどのヘリの搭乗していたのがシモンズのファミリーである事を察知し、同時にそのファミリーが自分達の権限と武力を用いて世界を崩壊させようとしたカーラの凶行を阻止する為、そして恐らくは口封じのために射殺したのだと推理した。

 と、メタルバードが真下のカーラの残骸に意識が行ってしまった瞬間を見計らって、エイダが単身母艦艦内の駆けて行っては脱出を図ろうとしていた。

「あ、こら待て! エイダ……!」

 逃げようとするエイダを視認したメタルバードは慌てて彼女を追った。

 と、エイダが一階下のエレベーターに搭乗しては扉を閉めようとした瞬間。

「待てッ! オレも乗るッ」

 そう叫びながらメタルバードは体を軟体化させてはエレベータの僅かな扉の隙間を通って搭乗した。

「駆け込み乗車は危険よ」「聖龍隊として、危険は日常さ」

 微笑みながら言葉を掛けるエイダにメタルバードは真顔で返事する。

 と、その時。エイダが所持する無線機から通信が乱入してきた。

「HQより、クリスとピアーズへ。エイダ・ウォンの言葉に間違いはないようだ。外海にミサイルを搭載した空母を確認、ミサイルは既に発射準備に移っている模様。急ぎ、これを阻止せよ」

 乱入による通信を聞いて、エイダへと変貌させられたカーラの言葉に偽りが無い事が再認識された。

 そしてエレベーターから降りたエイダとメタルバードは、狙撃され甲板へと落下したカーラに歩み寄る。

 エイダよりもカーラの亡骸に歩み寄ったメタルバードは、彼女の死体の前で合掌した。

「………………」

 黙祷するメタルバードを見て、エイダが話し掛けた。

異常者(ヒール)や凶悪犯罪者に対しては冷徹な聖龍隊でも、死者には手向けを掛けるのね」

 エイダの台詞にメタルバードは合掌していた顔を振り向かせて話し返した。

「相棒の台詞さ……悪党も、死ねばタダの仏さん。ってね」

「死なない限り情けを掛けて貰う事もない……テロリストや犯罪者、異常者(ヒール)は悲しいわね」

「お前さんも気をつけるこったな。アンタも既にテロリストの一員みたいだしよ」

 と、二人が淡々と話し合っていると、エイダが死に絶え横たわるカーラの亡骸を前にしては自分とそっくりな彼女の死体に話し掛ける。

「シモンズへの憎しみから……この世界を破滅に導こうと計画したのかもしれないけど…………それも出来ない……カーラとしての意識が貴女には残っていたのね……」

 更にエイダは若干表情に悲しみを浮かべながらカーラの亡骸に問い掛ける。

「私に連絡をとって来たとき……本当は、止めて欲しかったのよね?」

 有無も言わない死体に更に歩み寄るエイダは話し掛け続けた。

「バカね……シモンズに復讐したければ……相談に乗ったのに」

 自分に変えられてしまった彼女の骸に優しく話し掛けるエイダ。メタルバードもそんな彼女の気持ちを察してか、何も言えずに居た。

 と、周囲の空気が重くなったその時。横たわるカーラの手元から注射器のような道具が零れ落ちた。それを見たエイダにメタルバードは驚愕する。何故ならそれは、ウィルスを投与する為の特別な注射器だったからだ。

 

 そして

 

 

 

[憎悪に呑まれる空母]

 

「ッ、ウゲェ……ッ」

 突如としてもがき始めるカーラの肉体に、ゆっくりと後退していくメタルバードとエイダ。

 そんな中、もがくカーラは口から大量の粘液を吐き出しながら、遂にその全身を粘膜で覆うと同時に起き上がった。

 起き上がったカーラは口から大量の粘液をエイダとメタルバード目掛けて吐き出した。二人は咄嗟の回避で粘膜から身を防いだ。

 そしてカーラは自身が吐き出した灰色の粘液の中で倒れると再び起き上がり、立ち上がっては眼前のエイダ達に言い放った。

「なぜニセモノに助けを請うの?」

 粘液まみれの顔と体で言い切るカーラの言動に後ずさりを始めるエイダとメタルバード。

 更にカーラは苦しみながらもエイダに言い切って見せる。

「私が本物のエイダ・ウォンよ! 誰の助けもいらないわ!」

 体に塗れる粘液をクチャクチャと音を立てながら、カーラは更に言い切る。

「計画は完璧だわ……!」

 次の瞬間、カーラは更に口から粘液を吐き出し、彼女の周りの粘液も異様に動き出した。

 カーラは遂に頭から足までの全身を粘液で覆い被さってしまい、虚ろな瞳で言い放つ。

「もうすぐ、全てが崩壊する……! これまで人類が安定の為に築き上げたもの全てが!」

 そんな最中も、カーラの周辺は見る見るうちに粘液で覆われていき、やがてカーラ自身もその全貌を変異させていった。不敵な笑みを浮かべるカーラは、臨戦態勢に身構えるメタルバードとエイダに向けて問い掛けた。

「そのあとに残るものは、なんだと思う? ……クハハハ……クハハハハハ……ッ……何も無いわ! 永遠に安定しない世界……地獄よ!」

 そしてこれを最後にカーラはその原型を失くしては、二人の前から粘液のみを残して消えてしまった。

 辺りを見回す二人、だが何処からとも無く声が聞こえてきた。

「其処は私が支配する世界! このエイダ・ウォンが支配する……新世界!」

 不気味な笑い声と共に聞こえてくる声に警戒心を滾らせる二人。

 するとその時、二人の眼前に広がっていた粘液が突如二人に襲い掛かってきたのだ。

 メタルバードとエイダは急ぎ艦内に飛び込んでは鉄の扉を慌てて閉ざした。

 そしてエイダは窓の外に広がる粘液を見据えながら言う。

「残念ながら、あなたがニセモノよ」

 そしてメタルバードが見ている中で、エイダは最後に言い残した。

「さよなら、カーラ・ラダメス」

 そう変貌したカーラに告げると、エイダはそ脱出経路を探索しようと行動を開始した。だが、そんな彼女にメタルバードがすかさず声を掛ける。

「おい、待て」「……なに?」

 メタルバードからの一声に立ち止まり振り返るエイダ。メタルバードは険しい面持ちで彼女と話した。

「真実がどうであれ、アンタは一応は過去のバイオハザードに関与している重要参考人には違いない。こっからはオレと一緒に行動してもらおう」

 するとエイダは軽くため息を吐きつつ話し返した。

「ふぅ、もう追っかけはシモンズだけでうんざりなんだけど……」

「こっちだって好きでアンタに付いて行くんじゃねえ。今回のバイオテロの重要参考人だし、それにアンタの所属する組織について色々と話して貰わねェと……」

「……ふぅ、まぁ良いわ。好きにしなさい」

 エイダは内心渋々ではあったが、メタルバードと共に艦内を進む事となった。

 

 二人が艦内を進む道中、エイダは先ほどのカーラの異常な変異について語る。

「あの変異……おそらくC-ウィルスの強化型を打ったのね、カーラは」

「成る程……カーラは保険として自分の体にウィルスを投与していたって訳か」

 エイダの言葉を聞いて納得するメタルバード。

 と、二人が艦内を進んでいくと進路方向に数名のウィルス投与兵が銃を構えて此方に狙いをつけては待ち伏せていた。

 だがその時、空母そのものが激しく揺れてはメタルバードとエイダはふら付いた。

 更に次の瞬間、前方の武装していた兵士達が銃を構えて発砲しようとした矢先、灰色のスライムのような物体が兵士達を呑み込んでいった

 前方の通路がスライムで塞がってしまい、メタルバードとエイダはやむを得ず右折して別ルートを進んでいく。

 だが艦内を更に進行していくと、壁や天井の至る所からスライムが滲み出て来てるのが確認できた。

 その間も空母は異常に揺れては同時に何かが激しく軋む音が鳴り響く。そんな通路を駆け抜けて、二人は扉の前まで辿り着いた。

 扉を開けて先に進むと、其処は光もない暗闇に閉ざされた通路で二人はそれぞれライトで先を照らしては一直線に駆け出した。

 暗闇の中、進んでいくと辺りはスライムで埋め尽くされた空間も少なくなくなっていた。

 そんな暗闇の中、再びカーラの声が聞こえてきた。

「エイダ……私は……私は……エイダ……」

 更に進んでいくと、壁に張り付いたスライムからは幾多の手が生えてきては進行する二人の行く手を妨害する。

「シモンズ……シモンズ……」

 カーラの声が聞こえる中、二人は重量級の扉の前に辿り着いてはその扉を開けて先に進む。更に扉を抜けるとエイダはスライムが入り込まないようにと扉を閉ざした。

 と、二人が先に進もうとするとその部屋は既にスライムが至る所から発生し、更に行く手を塞ぐスライムには人の顔らしきものが浮かび上がっていた。

「ッ……カーラ?」

 スライムに浮かび上がった顔、それは先ほど変異して原型を失った筈のエイダ・ウォンと瓜二つのカーラ・ラダメスの顔であった。

 行く手を塞ぐカーラの顔に、メタルバードは右腕を砲身のような機械に変化させては強烈な電撃を放った。

「ぐああぁぁ」

 攻撃を受け呻き声の様な悲鳴を上げて怯んだ瞬間、メタルバードとエイダは顔の真下を駆け抜けては先を急いだ。

「あなたのその能力、素晴らしいわね。ウチの組織でじっくりと研究してみたいわ」

「ゴメンだね。オレは生物兵器製造には関わりたくない」

 メタルバードの電撃砲を目の当たりにしたエイダは賞賛しつつも軽くからかいを入れると、メタルバードはそれに真顔で速答する。

 

 と、そんなこんなで二人が更に艦内の奥へと進行すると辺りは完全にスライムに塗れていた。

 スライム塗れの通路を進行していくと、通路の先からカーラの顔面が二人を待ち受けていた。

 だが、エイダは焦る事無く、その顔面の手前に転がっていた液体窒素入りのボンベをすかさず撃ち抜いた。

 ボンベは爆発し、カーラの顔面は見事に粉々に砕け散った。

 再び二人は重量級の扉を開き、先へと進んでいく。が、その先は更にスライムによって埋め尽くされた空間となっていた。

 カーラの変異した肉体から滲み出た灰色のスライムに被われる空間を、二人は駆け続ける。

 その時、二人が左へと曲がろうとした矢先に側面のスライムの壁からカーラの巨大な顔面が浮き出ては二人に襲い掛かってきた。

 二人は急ぎ左へと曲がり通路を駆け抜けていく。と、その時。側面のスライムの壁から無数の手が生えてきてはエイダを捕らえた。

「ぐっ……」「エイダ!」

 メタルバードは両腕を電撃を帯びた刃物に変形させると、その両腕でエイダを捕らえるスライムの手を次々に切断して彼女を助けた。

 身動きできるようになったエイダと彼女を助けたメタルバードは休む暇もなしに迫ってくるカーラの顔面から逃避する。行く手を阻む突出して来る壁からの腕に足元から浮かび出るスライムの壁を乗り越えつつ、二人は一直線に駆けて行く。

 そして前方の開平してある扉が目に入ると、エイダは所持していたワイヤーショットで一直線に扉の置くまで抜けていく。そんな彼女に追い付こうとメタルバードも飛来しては扉の奥に飛び込んだ。

 扉の奥に飛び込んだ二人、だがカーラの顔面はあと数秒で此方を呑み込もうと迫り来る。その時、メタルバードとエイダの目に飛び込んできたのは、先ほども狙撃して爆発させた液体窒素入りのボンベであった。二人はそのボンベに狙いをつけて、それぞれボンベを撃ち抜いた。

 ボンベは全て爆発し、迫ってきていたカーラの顔面を一瞬で凍り砕く事に成功した。

 そして再び先に進むと、其処は液体窒素のボンベを貯蔵する倉庫であった。二人は其処で先に続くエレベーターを発見しそれに搭乗しようとする。

 だがエレベーター入り口にしてボンベの保管庫の入り口を塞ぐように、巨大な顔面が行く手を塞いでしまった。

 メタルバードとエイダは顔面の口に当たる隙間を狙って、奥に多数ある液体窒素ボンベを狙撃爆破しようと狙いを構える。

「憎い! 憎い! 殺してやる!」

 完全に面影すら失い変異しきったカーラを撃破する為にも、二人は狙いを定めて口内の先に在るボンベを狙撃した。

 二人が狙撃したボンベは連鎖する様に一瞬で全てのボンベが爆発し、巨大な顔面は木っ端微塵となりスライムに被われた空間も一瞬で凍て付いた。

 一瞬で砕け散ったカーラを視認して、エイダは撃破した彼女に言葉を掛けた。

「世界を崩壊させようとして必死だったわね……結果、自分自身が崩壊した……これが望んでいた結末だったの?」

 そして最後にエイダは、メタルバードと共にエレベーターに搭乗するとカーラに憐れみの言葉を残した。

「そろそろお休みの時間よ、カーラ……」

 そしてエイダとメタルバードはエレベーターで上へと昇っていった。

 

 空母その甲板に出た二人は、急ぎ着陸しているヘリへと駆け出しては空母からの脱出を図る。

「何処まで付いてくるの?」「お前さんを投獄するまでさ」

 一緒にヘリに乗り込んだメタルバードに対して問い掛けるエイダ、それにメタルバードは平然と答え返した。

 と、そんな最中「へへ、運転は任せな」と、そう言ってメタルバードがヘリの操縦桿を握る。

 メタルバードが操縦する中、ヘリは離陸し始め上昇する。

 するとへリが上昇するのと同時に一機の戦闘機が飛び立つのが目に入った。

「そっちは本職に任せるわ」エイダは飛び立ったBSAA組の戦闘機に声を掛ける。

 そしてヘリを操縦するメタルバードがエイダに話し掛けた。

「で……アンタはこれからどうする? オレとしちゃ、アンタから目を離す訳にはいかねぇけど」

 訊ねられたエイダは、空母より持ち帰ったカーラの博士号のトロフィーを見詰めながら答えた。

「こっちはこっちで……最後の掃除をしないと」

 この言葉を聞いたメタルバードは瞬時にエイダの考えを理解し、勝気な笑みを浮かべて言った。

「へへっ、そっか……そんじゃ、猛スピードで向かいますからシートベルトをお忘れなく♪」

「ふふ、頼りにしてるわよ。総長さん」

 エイダも口元を微笑ませてはメタルバードに言葉を返す。

 そしてヘリは一路、混乱に喘ぐ達芝に向かうのであった。

 

「私のような美しい女性と夜のフライトが出来るなんて、ツイてるわよあなた」

「アンタの様な悪女でなきゃ、もっと良かったんだが」

「あらっ、女性にとっては其処も魅力の一つよ」

「何を言ってんだい。素性も分からない女スパイを信用できるほどオレはバカじゃねぇ」

「……何だかあなた、相棒さんに似てきてるわよ」

「ウッセェっ」

 

 

 

[蔓延する絶望]

 

 同じ頃合、達芝の郊外では聖龍隊とBSAAが協力して避難する市民の誘導と治療に当たっていた。

 そんな現場に、先ほど変異シモンズと激しい攻防を繰り返し海へと身を投げたレオンとヘレナ、そしてジュピターキッドとウォーターフェアリー、そしてシャンプーにムースらが海から這い上がっては足を運ばせていた。

 彼ら6人に気付き、市民の誘導や治療に当たっていた他の聖龍HEADや中国支部の面々が駆け寄ってくる。

「二人とも無事かッ?」「ジュニアさん! ミラーガールや総長は?」

 駆け寄ってきた面々から問われるキッドは、心配する仲間達に話し始めた。

「何とかね……みんなは大丈夫だったかい?」

 問い返すとそれにマーキュリーとナースエンジェルが答えた。

「ええ、私達もそれぞれ市内で活動しながら市民の避難に助勢していた所なの……」

「私も、他のメンバーと一緒に暴動で怪我をした人達を治療していたところなんです」

「そっか……まぁ、無事で何よりだよ」

 疲労感に満ちた声色で話すキッドに、ウォンレイが問い掛けた。

「参謀長、例の女性……エイダ・ウォンは一体……?」

 するとウォンレイの問い掛けにフェアリーが代わりに答えた。

「総長が単身、追ってるわ。ミラーガールもクリス・レッドフィールドらと一緒に追跡しているから安心して」

 と、各々がそれぞれ話をしていると、クリスと通信を繋げていたレオンの携帯機から、クリスが大声で話し掛けてきた。

「レオンか? 今どこにいる!」

「クリス! 俺達は今、達芝の外れにいるんだが……?」

 すると通信機からクリスの声に続いてミラー・ガールの声が聞こえてきた。

「レオン! 急いで其処から……!」

「ミラーガール? あなたもクリス達と一緒に戦闘機に……」

 ミラーガールの声にセーラーサターンが話し返すと、次の瞬間ミラーガールは大声で叫んだ。

「逃げて!」『!?』

 大声を上げるミラー・ガールの一声に表情を一変させる一同。

 すると海上から一機のミサイルが飛んで来ては、彼らの真上を通り過ぎた。ミサイルは更に避難し終わり、胸を撫で下ろしては安堵する市民らの真上を飛来しては市街地の中央に近づいた。そして市街地の真ん中でミサイルは突然爆発し、中から黒紫の煙が辺り一帯に広がった。

 突如として市街地を襲う黒紫の煙に逃げ惑う人々、だが煙はそんな人々を次々に飲み込んでは周囲に不気味な静寂を漂わせる。

 煙に包まれ静けさだけが漂う市街地、そんな外の様子を屋内で人々が眺めていた。まさにその時。

 静寂漂う煙の中から突如として血塗れの手と口元、そして蒼褪めた顔色で迫り来るゾンビが窓ガラスに群がってきた。そして群がるゾンビは窓ガラスを打ち破り、屋内へと侵入しては生きた人々に群がり始めた。

 恐怖で絶叫しゾンビから逃げ惑う人々、だが彼らが外に逃げ出すと其処も既にゾンビで埋め尽くされていた。

 市街地は飢えるゾンビと悲鳴を上げ逃げ惑う人々で混乱し、完全に狂気で満たされてしまった。

 

 そしてミサイルの爆発で内部のウィルスが市街地に放たれた事を悲観するクリスとミラーガールは、それぞれの通信機で市街地にいるレオンや聖龍隊に呼び掛けてた。

「レオン!? レオン無事か!」

「みんな……みんな! お願い、応答して!」

 すると通信機からレオンが呼び掛けに応じた。

「ああ……大丈夫だ」

 レオンに続きエンディミオンがミラーガールに伝えた。

「俺達も無事だ、だが事態は最悪だ……」

 エンディミオンの言うとおり、町は逃げ惑う人々の悲鳴とゾンビに変異した人々の絶望に包まれていた。

 必死に応戦していくBSAAと聖龍隊の隊士達。だがゾンビはそんな彼らに集団で襲ってはその肉を貪るのであった。

「くそっ!」

 最悪の事態を防げなかった事に怒りをあらわにするクリス。

 そんな中、聖龍隊のHEADや隊士らはどうにか状況を打開しようとゾンビと交戦を始めた。

「行け行けッ、ゾンビを次々に排除するんだ!」

 現場を指揮しながらキッドも果敢にゾンビの群れに攻撃を仕掛けていく。そんな彼に従い、他の面々も眼前に群がるゾンビに攻撃技を放っていく。

 

 その頃、空母よりヘリで発ったメタルバードとエイダ・ウォンは、ウィルスが蔓延し至る所で暴動が起こる達芝の都市部へとヘリで入った。

 都市は既に蔓延したウィルスによってゾンビ化した市民やBSAAの武装した隊員が都市を動き回っているのがヘリの機内から確認できた。

 その時、ヘリの無線から地上で活動している隊員達の会話が聞こえてきた。

「こちらHQ、状況を伝えろ」

「ここはもうダメだ……! 辺り一面……!」

 地上ではゾンビ化した者が生存者である市民に襲い掛かり、次々に人々が倒れていく有様が見て取れた。

「……酷い、ほんとに地獄だ……」

 ヘリを操縦しているメタルバードが呟くと、隣の席に座っているエイダも呟いた。

「確かに、ここは地獄ね……」

 

 と、二人が地上の混乱を見下ろしていると前方で爆発が起きた。

 メタルバードがヘリを其処に向かわせると、其処ではゾンビに囲まれて負傷し思う様に動けなくなった同胞の聖龍HEADの面々やレオン、ヘレナの二人の姿が見られた。

「レオン……」

 レオンの姿を確認したエイダが思わず言葉を零す。そんな彼女の様子を横目で険しい面持ちで視認するメタルバード。

 と、地上の面々もヘリと搭乗する二人に気付いた。

「レオン、あの二人は……!」

「エイダ! 死んだはすじゃなかったのか……!」

 ヘリに搭乗しているメタルバードとエイダの二人を見て指差すヘレナと、エイダを見て戸惑うレオン。

「バーンズ!」「総長!」

 そしてレオンとヘレナの二人と同行していたセーラームーンに魔物のウォンレイが、エイダと同乗しているメタルバードに気付く。

「やっほーーッ、お前ら無事かーー?」

 当のメタルバードはヘリを操縦しながら、機内から通信機を通して地上のHEAD達に問い掛ける。

「バーンズ、今まで何やってたの!」

「いやぁ、ちょっとね。今、隣に居る参考人の同行している最中なのよ」

 HEADのセーラーマーズがメタルバードに訊ねると、メタルバードは笑顔で余裕綽々の態度で返答した。

「でもバーンズ、なぜ貴方がエイダと……! さっきミラーガールとクリス達から通信が入って、エイダ・ウォンが狙撃されて死んだって……!」

 眼前の生きたエイダに困惑するコレクターユイの問い掛けに、メタルバードは笑みながら答え返した。

「ああ、そっちのエイダは偽者だ。オレもこの目で撃たれる所見たよ。そんで今、オレの隣に居るのが本物だ」

「何っ?」

 メタルバードの発言を聞いて戸惑い始めるレオン。と、そんな中メタルバードは通信機を通して地上の聖龍隊とレオン達に告げた。

「よっしゃっ、お前ら! ちょこっと手助けしてやるから後は自分の身は自分で護れよッ」

 そう言うとメタルバードは操縦桿を握っては、ヘリに搭載されている機関銃の発射ボタンを押した。

 ヘリから放たれる無数の弾丸はあっという間に地上のゾンビ達を一掃すると、銃撃したメタルバードが再び地上の皆に声を掛ける。

「ほらほら、今の内に逃げろッ」

 通信機からメタルバードの一声に感化されて、地上の皆はその場から走り去ろうとする。

「レオン! 今の内に避難しましょう!」

 ヘレナに呼び掛けられるレオンは、言われた通りにその場から去ろうとする。だがゾンビの群れは再びレオン達の許へと群がってくる。

「クソッ! 数が多すぎる!」

 周囲の群がるゾンビに苦戦するレオンや同胞の聖龍隊を見て、メタルバードが再び通信機から言葉を掛ける。

「ははッ、特別サービスだ。聖龍隊屈指のパイロットのオレ様が直々に護ってやるよッ」

 景気良く啖呵を切るとメタルバードは銃撃を再開した。

 メタルバードが地上の聖龍隊やレオン達に群がるゾンビ達を銃撃していく最中、地上のレオンが聖龍隊の通信機を借りてメタルバードとヘリに同乗しているエイダに問い掛けた。

「エイダ、これもシモンズからの命令だったのか?」

 これにエイダは平然とレオンに答えた。

「さすがに、あの男でも此処までムチャはしないわ……」

 周囲のゾンビを撃退しながら、ナースエンジェルが皆を誘導する。

「みんな、こっちよ!」「最悪ね……」

 ナースエンジェルからの誘導に移動する一同、そんな中ヘレナは自分達の現状に対し愚痴を零す。

 そこにメタルバードが再び声を掛ける。

「よっし! ボーナスタイムだ、これでも喰らえッ」

 そう言ってメタルバードはヘリに搭載されているミサイルを一本発射した。

 ミサイルが直撃した地上は火に包まれ、ゾンビ達は火達磨になりながらも一掃された。

「ミサイルは数が限られているのよ。もう少し大事に扱わないと……」

「なぁに、景気付けよ、景気付け♪」

 限りあるミサイルを撃ってしまうメタルバードの行為に目を鋭くさせて言うエイダの言葉に、メタルバードは満面の笑みで話し返す。

「しっかり……一刻も早く此処を切り抜けないと……」

 負傷し疲労に喘ぐ同胞を庇いながら、ミュウイチゴが皆と共にその場を離脱していく。

 

 そして場をどうにか凌いだ地上の一行は、再び上空のヘリに目を向ける。するとヘリの中からメタルバードが地上の皆に言った。

「そんじゃっ、あとでまた落ち合おう! それまでは自力でどうにか凌いでくれッ!」

 そう言い残しメタルバードは隣にエイダを乗せたまま、ヘリでその場を離れていった。

 すると機内ではエイダがメタルバードに話し掛けていた。

「彼女達に話さなくて良いの? レオン達もそうだけど、みんな困惑してたわよ」

 エイダからの問い掛けにメタルバードは操縦しながら答えた。

「な~~に、長ったらしい説明は後でも十分さ。それよりもカーラが仕掛けた、この騒動を片付けるのが先だろ? お前さんもさっき掃除ないとって言ってたじゃねェか」

「……ええ、確かにそうね」

 メタルバードの話にエイダは微笑みながら同意した。

 と、二人が搭乗したヘリが先を進んでいるとエイダが一言。

「あら、どうやらお客さんが来た様よ」「え?」

 エイダの一言に操縦しているメタルバードも彼女の向けている視線の先を確認した。するとヘリの先に武装した兵士を乗せた別のヘリが此方に気づいていた。

「飼い主はもう居ないのに……涙ぐましい頑張りね」

 ヘリを一目見た途端、エイダも操縦しているメタルバードも前方のヘリが先ほど空母で絶命したカーラの差し金によるものだと察知した。

 そして敵のヘリが前へと飛び出してくると、こちらに向けて発砲してきた。

「こなくそッ」

 操縦しているメタルバードは、すかさず攻撃してきたヘリに反撃の発砲を放った。

 弾丸を受けた相手のヘリは操縦不能となり、混乱で人気の無くなった市街地の中に墜落していった。

「よっしゃァ!」

 敵のヘリを撃ち落したメタルバードは喜びの余りガッツポーズする。

 そんなメタルバードにエイダが横から口を挟む。

「まだよ、他にもヘリが私達を狙っているわ」

 案の定、他にも数機のヘリが二人が搭乗しているヘリを狙って出現してきた。

「おっとっと。そんじゃ此処は一発、腕の見せ所だな」

 メタルバードは一瞬操縦桿から手を離すと指の骨を鳴らしては、再び操縦桿を握り締めた。

 そしてヘリの前方に飛び出してくる敵のヘリを次から次へと迎撃していく。

 だがシモンズのファミリーによる迎撃ヘリは諦めずに二人を追尾する。

「随分、必死だわ……」

 次々に現れる敵のヘリを目の当たりにして、エイダは確信を得る。

「カーラ……よほどタワーには近づけさせたくないのね」

「タワーだと!?」

 エイダの発言にメタルバードが顔を向けると、彼女は平然とそれに答えた。

「この先のクアッドタワー、その地下にカーラの秘密の研究室が在る筈なのよ」

「成る程……で、アンタはその研究室で何か機密情報でも盗むのかい?」

「ふふ、いいえ……しいて言うなら、取り返すといったところかしらね」

 訊ねるメタルバードの問い掛けに淡々と語るエイダ。

 

 と、次々に出現する敵のヘリは遂にコックピットから直接兵士がミサイルを放つまでに攻撃が苛烈化してきた。

「あぶねッ」

 ヘリにミサイルが直撃する寸前、かろうじて回避してみせるメタルバード。お返しとばかりにメタルバードはミサイルを機内から撃ってきたヘリに向けて機関銃の弾をこれでもかとばかしに連射しては、ヘリを撃墜させた。

 

 そしてタワーに近づいた頃、待ち伏せしていたのか完全武装したヘリが二人を待ち受けていた。

「立派なのが来たわね……どうせなら私達のも、ああいうのが良かったわ」

 武装ヘリを目の当たりにしてしょ気るエイダに、メタルバードが景気良く言った。

「なぁに、肝心なのは武器の多さじゃなく操縦士の腕さ」

 そしてメタルバードが操縦するヘリは、立ち塞がる武装ヘリと交戦を開始した。

 敵の強力な砲撃を避けるため、ビルなどの建物の影に隠れながら攻撃を回避するメタルバード。そして敵の攻撃が止んだ一瞬の隙を衝いて、一斉に出現しては有りっ丈の弾丸をお見舞いしてやる。更に此処まで保持してきたミサイルも狙いを定めて前方のヘリに発射した。ミサイルが直撃してもなお、武装されたヘリは頑丈で中々墜落しない。だがそれでも諦めずに、もう一発ミサイルを放つメタルバード。ミサイルは敵ヘリに直撃し激しい爆煙を上げる。と、此処でようやく此方の攻撃が効いてきたのか相手のヘリから煙が上がっていた。

「よしッ、もう少しだ……!」

 メタルバードはヘリを旋回しつつ照準を定めながら更なる追撃を敵に放つ。そして最後のミサイルを敵に発射する。最後のミサイルも直撃するが、機体から煙と炎が出ているにも関わらず敵機体は此方に攻撃し続ける。

「しつこいわね……」

 執拗な敵の攻撃に嫌気がさすエイダ・ウォン。そんな彼女を横に座らせながらメタルバードは追撃を続ける。

「くゥ……いい加減、墜ちろッ」

 エイダ同様に中々墜落しない敵の武装ヘリに苛立ちが増してくるメタルバード。

 だが次の瞬間、敵武装ヘリは激しく出火しながら回転しつつ地上へと墜落していった。

「ふぅ、ようやく墜ちたか……」

「防御に関しては凄かったけど、攻撃だけは見掛け倒しだったわね……」

 墜落したヘリを眺めては一息つくメタルバードに、自分なりの評価を下すエイダ・ウォン。

 そしてエイダはメタルバードに指差しては、自分達が向かうべきタワーを指して言った。

「さぁて……私達はタワーで仕事の総仕上げしましょう……」

 と、そんなエイダにメタルバードは険しい目つきで言い返した。

「ああ、早く事を終わらせないと……それからアンタを連行する。それまでは死んでも目を離さないからな」

「ふふ、お熱い視線だこと」

 エイダは不敵に微笑みながらメタルバードに言葉を返した。

 そして二人は一路、タワーへと進路を取った。

 

 

 

[執拗なる欲望]

 

 クアッドタワー、そのモニュメントの麓まで辿り着いた二人が目にしたのは、先ほど窮地を救ったレオンとヘレナそして聖龍隊の同胞達に取り囲まれる変異したシモンズであった。

 ヘリのサーチライトを照射されたシモンズは、眩しい中ヘリの中に居たエイダに気付いた。

「分かったぞ、エイダ……! 私の命令を無視し……ウェスカーの息子を連れ去った理由が……!」

 もがきながら体内のウィルスと葛藤するシモンズは更に機内のエイダに言い放つ。

「貴様……よりによって奴の血で……C-ウィルスを強化したな!」

 と叫んだ瞬間シモンズの肉体は再び変異を始め、シモンズは苦しみだした。

 そんなシモンズの台詞を聞いたメタルバードは呆然とした顔で語った。

「あの野郎、自分の部下だった偽エイダとアンタの区別ができなくなっちまってるな……まぁ、自業自得だが」

 このメタルバードの発言に本物のエイダもシモンズを見下しながら言った。

「いいザマよ、シモンズ……エイダ・ウォンを独占しようとした報いよ」

 これを聞いたメタルバードはエイダに向かって言った。

「怖い女だこと……ま、他人から見たらどっちもどっちか」

「あら心外。あんな男と一緒にされるのだけは酷だわ」

 すかさず反論するエイダの言動に、メタルバードは不満ながらに謝罪した。

「へいへい、そりゃ申し訳ありませんね。ただアンタの様な素性も分からない女スパイと変態政治家って変わらねぇと思うがな……」

「…………」

 メタルバードの発言に腕を組んでは不機嫌そうな表情をするエイダ。

 そんな彼女の反感を買いながらもメタルバードは操縦桿を握り締めながら前方を見据えて言った。

「まっ、それよりも……今は目の前の害虫処理に専念しねぇとな」

「あら、その表現は気に入ったわよ……」

 二言目のメタルバードの発言には気に入りの念を感じるエイダ。

 そしてメタルバードは眼前の害虫、つまりは変異したシモンズに上空からの攻撃を始めた。

 

 変異を始めるシモンズは、その全貌を瞬く間にまるでティラノザウルスの様な恐竜に近い姿に変貌した。

「シモンズ……!?」

 巨大な恐竜のような容姿に変貌するシモンズに驚愕する地上の皆々。

「やれやれ……」

 変貌したシモンズに立ち回るレオンは零しながらも攻撃を続ける。

 そしてメタルバードの方もヘリから機関銃で弾丸の雨をシモンズに向けて乱射していく。と、そんな地上の有様を眺めていたエイダが口に出した。

「カーラ、此処にいて欲しかったわ。本当なら、あれの処理はあなたの仕事なのに」

 本当なら変異したシモンズを片付けるのは、問題を起こしたカーラであったと嘆くエイダ。

 そんな最中も、地上のレオンにヘレナそして聖龍隊、更には上空のヘリから攻撃を続けるメタルバードの猛攻の中、シモンズは強烈な雄叫びを上げつつも地上の面々に迫っていく。

 しかも変異シモンズは、その巨体からは想像も出来ない俊敏さで、上空のヘリに向かって跳びかかって来る。メタルバードはそれを回避しつつ、銃弾を浴びせ続ける。

 と、その時。エイダが操縦しているメタルバードに指差しながら言った。

「メタルバード、あれ……!」

 彼女の指差す方に目を向けると、変異シモンズの背中の部分に臓器のような核が目に付いた。

「あれか……!」

 エイダが指差す核が弱点だと察したメタルバードは、すかさず核に目掛けて銃を乱射した。

「グオオオオォォ……」

 核を撃たれた変異シモンズは見る見るうちにその巨体を縮ませては、元の人の形に戻っていった。それでも尚、射撃し続けるメタルバードの傍らで、エイダが苦しみ続けるシモンズを眺めながら口にした。

「カーラも、シモンズも……結局、C-ウィルスの力に飲み込まれてしまうのね」

 当のシモンズは、周囲それに上空からの猛攻を浴びても一向に倒れる様子が無く、その現状に事態を打破しようとメタルバードが行動を起こした。

「クッ、これじゃ埒が明かねぇ……! おい、エイダ! ちょっくら代われッ」

「えっ?」

 メタルバードは困惑するエイダと強引に席を交換し、エイダに操縦桿を握らせると自分はヘリの窓から身を乗り出しては地上の変異シモンズに狙いを定めた。

 そして彼は自身の右腕を電撃砲に変形させると、強烈な電撃を変異シモンズに放つ。

「喰らいやがれッ」

 そう言って変異シモンズに強烈な電撃を直撃させるメタルバード。電撃を受けたシモンズは大打撃を受ける。

 それを真横で見ていたエイダも、続け様に変異シモンズに銃撃を浴びせていく。

「バーンズに続けッ」

 メタルバードの猛攻振りを目にした参謀総長のジュピター・キッドは同胞の聖龍隊に大声で告げた。

 キッドの掛け声に続き、聖龍HEADのセーラー戦士達、キューティーハニーに早見青児、カードキャプターの木之本桜に李・小狼と苺鈴、魔法騎士、コレクターズ、最終兵器のちせ、マーメイドメロディーズ、ミュウミュウズ、ローゼンメイデン、そしてウォンレイとリィエン夫妻にシャンプーとムースの面々も挙って変異シモンズに攻撃を放っていく。

「ふふ、聖龍隊の彼らもやるわね。あの子達の特殊能力も細かく調べてみたいわ」

 聖龍隊の戦いぶりを眺めるエイダは変異シモンズの傍らに転がっている燃料ドラム缶に気付いては、それに向けて発砲、燃料缶は爆発し大打撃を受けた変異シモンズは再び人の形へと縮んでいく。

 人の形に戻ったシモンズにレオンが飛び掛かっては何度も顔を殴打する。

「殺す! 殺してやる!」

 幾度と無く攻撃を受けて怒りが増していく変異シモンズ、そんな彼に容赦なく地上の面々に上空のエイダとメタルバードは攻撃を続行する。

「ウオオオオオォォ……ッ!」

 巨獣の雄叫びを上げながら再び巨体の恐竜型に変異するシモンズ。

 そんな変異シモンズに上空のヘリからは、エイダが銃撃を、メタルバードが電撃を溜めた砲撃で攻め続ける。

 

 と、地上とヘリの両側から攻撃を続けている戦場に、突如として一台のジープが積み重なる廃車の山を飛び越えて登場した。

「おいおい、こりゃ何だ……?」

 ジープに搭乗していたのは、聖龍隊決死隊隊長のウェルズであった。彼は眼前に聳える巨大な変異シモンズを目の当たりにして動揺する。

「叔父さんッ」「ウェルズさん!」

 ジープで登場したウェルズに駆け寄る甥のキッドに他の聖龍隊士たち。そんな彼らにウェルズは状況を未だ飲み込めないまま、聖龍隊の仲間を呼び込む。

「まあいい! 乗れ!」

 ウェルズの一声に、堂本海斗と蒼の騎士の二人がジープの荷台に飛び乗り、搭載されていた二台のガトリング砲に手を掛けた。

 二人が飛び乗った瞬間、ジープは猛発進しモニュメント周辺を周りながら後方に迫る変異シモンズに銃弾を浴びせ続けた。

「もっと速度を上げてください!」「悪い! これが限界だ!」

 ガトリング砲を連射しながら運転するウェルズに声を掛ける海斗、だがウェルズは今の速度が精一杯だと返事する。

 そんな走り抜けるジープに狙いをつけて迫り続ける変異シモンズに、周辺から地道に攻撃し続ける他の聖龍隊士にヘリ機内のエイダとメタルバード。するとジープを追い掛け回す変異シモンズを見て、エイダが呟く。

「シモンズ……しつこい男は嫌われるわよ」

 そんな中シモンズは周辺に点在している廃車を巨体の口で咥えては、そのまま周囲の聖龍隊や駆け回るジープ目掛けて投げ飛ばし始めた。

「来るぞ! 気をつけろ!」

 一時ジープを停車させてガトリング砲を構えて待ち受ける海斗と蒼の騎士に注意を呼び掛ける運転手のウェルズ。

 そんな地上の攻防をヘリの中から銃撃しながら眺めるエイダが口に出す。

「派手にやってるわね……」

 そう言いながらエイダ自身もヘリの機関銃を連射して変異シモンズに攻撃を続ける。

「有りっ丈の弾丸をぶち込んでやれッ!」

 ジープを操縦するウェルズは、荷台でガトリングを乱射する海斗と蒼の騎士に指示しながらモニュメントの周りを駆け巡る。

 

 と、その時。変異シモンズはジープの後ろを取り、後部の部分を咥えては力いっぱいジープを投げ飛ばした。

「うわあぁッ!」

 ジープごと投げ飛ばされる海斗に蒼の騎士そして操縦者のウェルズ。三人は地面に投げ出され、ジープは炎上してしまう。

 投げ出された三人の許に駆け寄る周辺の仲間達、だがそんな彼らに変異シモンズは雄叫びを上げながら迫る。

「……此処からが本番らしい」

 銃を構えつつ眼前の変異シモンズに臨戦態勢を取るレオン。そんな彼同様にヘレナも聖龍隊も変異シモンズへの攻撃を続行する。

 その時、変異シモンズの様子が変わった。

「みんな気をつけて! 何か仕掛けてくるわ!」

 ヘレナが皆に注意を呼び掛ける中、その様子を見ていたエイダがぽつりと呟いた。

「あらあら、怒らせちゃったみたいね」

 そして変異シモンズは、その巨体な体を更に鎧の様な皮膚構造で纏っては迫り続ける。メタルバードはヘリの中から変異シモンズの傍らに置かれてたドラム缶を狙撃した。

 ドラム缶は爆発し、その炎と衝撃を受けた変異シモンズは再び人の形へと縮んでいく。その瞬間、エンディミオンが人の形へと縮んだシモンズに飛び掛かっては再度彼の顔面に幾度と無く拳で殴打した。

 だがシモンズは再び巨体へと変異しては雄叫びを上げつつ地上の面々に襲い掛かる。

「いい加減、くたばりやがれッ!」

 ヘリの中からメタルバードが中々倒れない変異シモンズに苛立ちながら、更に電気の砲撃で追撃していく。

 

「ウオオオオォォォ……」

 そしてようやく断末魔の如き雄叫びを上げながら、変異シモンズはその巨体を山が崩れる勢いで沈んだ。

 動かなくなる変異シモンズに駆け寄り、銃を向ける地上の一同。そんな彼らを上空からヘリのサーチライトで照らす操縦者のエイダ。

「お前らーー、大丈夫かーー?」

 エイダの横で援護攻撃を続けてたメタルバードが、地上の同胞達に声を掛ける。一方の操縦者エイダも地上のレオンに対して言葉を呟いた。

「いつまでも世話の焼ける男ね、レオン?」

 そしてエイダは彼らに呼び掛ける様に更に語り続けた。

「生き延びたければ、ちゃんと私達に付いて来なさい」

 次の瞬間、エイダは有無も言わさない勢いでヘリを上昇させ、その場から離脱する。

 

 

 

 

[執拗な変異者]

 

 モニュメント付近より離脱したエイダとメタルバードの二人は、ヘリにて目的の場所まで飛行していた。

「シモンズ……カーラ……此処で全部、終わらせてあげるわ」

 と、エイダが騒動の全てを終わらせる事を宣言してると、隣に同乗していたメタルバードが操縦者のエイダに声を掛けた。

「おい、エイダ! ちょっと待てッ、屋上に民間人が……!」

 メタルバードの指差す高層ビルの屋上には、逃げ遅れた人々が発炎筒を発火させては救助されるのを待ち望んでいる姿が確認できた。

「ふぅん、彼らが逃げれる時間くらいなら稼げそうね。無駄に人が死ぬのを見るのは飽き飽きなのよ」

 エイダは救出は時間的に無理でも、無意味に人が死ぬのをウンザリしていたエイダは彼らが生き延びれる時間を延ばしてやろうと決める。

 そして「総長さん、少しの間だけ屋上の掃除をするから手伝って」とメタルバードに掛けるエイダに、メタルバードも「おうッ、手ェ貸すぜ」と意気揚々とエイダの行為に賛同する。

 二人はそれぞれ、ヘリの銃撃と電撃の砲撃で屋上の生存者達に迫るゾンビの群れを次々に攻撃していく。

「皆さーーんッ、危ないですから動かないでくださーーい!」

 メタルバードはヘリの中から砲撃しつつ、流れ弾が市民に当たらない様屋上の人々に呼び掛ける。

 

 と、屋上のゾンビ達を一掃し終わったその時。エイダとメタルバードがヘリ前方の巨大な避雷針が目立つビルの屋上からも救難信号の発炎筒が上がっているのが確認できた。

 屋上には大勢の市民達と、市民を護ろうと奮戦するBSAAの隊員の姿が見て取れた。だが、そんな彼らにもゾンビが迫ってきていた。

 エイダは急ぎヘリを旋回させては、避雷針のビル屋上に近づき蔓延るゾンビ達に発砲した。

 と、屋上のゾンビ達に銃撃してると、その内の一体が手になんと爆弾を所持していた為、爆弾に弾が着弾し爆破。その衝撃で巨大な避雷針は折れて下のフロアで蠢いていたゾンビの一体に突き刺さる。

「……まあ今さら避雷針も必要ないわよね」「……」

 手違いとはいえ避雷針まで破壊してしまうエイダの言動に唖然とするメタルバード。

「私達に出来るのはこれまで……後は自力で生き抜いて頂戴ね」

 屋上のゾンビを一掃し終わるエイダはそう言い残しては、再び目的の場所まで向かうのだった。

 

 そして二人は遂に目的の場所であるヘリポート間近まで辿り着いたのだが、そのヘリポートには武装したBSAAのゾンビを多く含むゾンビ達が群がっていた。

「着陸の邪魔だわ、悪いけど其処をどいてちょうだい」

 エイダはヘリポートを埋めつくゾンビの群れを銃撃しては排除し始めた。一方のメタルバードもエイダに続いてヘリポートに群がるゾンビを一掃していく。

「おやっ? あの馬鹿でけェゾンビ、なんだか早めに倒して置いた方がいいかな?」

 メタルバードの目に留まったのは体全体が丸々と膨張した様な巨漢のゾンビだった。メタルバードは巨漢ゾンビに電撃砲を直撃させ、巨漢ゾンビを血の海に沈める。

 一方のエイダもヘリの機関銃でゾンビ達を次々と薙ぎ倒して行く。

 

 そしてヘリポートのゾンビを一掃した二人は、雷鳴轟く暗雲が立ち込める中、ヘリポートに着陸した。

「さあ……終わらせに行くわよ」

 全てに片を付けようと意気込むエイダに続き、彼女が逃亡しないよう目を光らせつつ後を追うメタルバード。

 二人はそのまま目標地点まで向かう事となった。

 ビルの合間をエイダがフックショットで向かい側のビルに飛び移ると、後を追ってメタルバードも滑空しながらビルの合間を飛び越える。

「さて……やる事リストの最終項目……ニセモノの痕跡を全て消さないと……」

 その道中、ぽつりと呟いたエイダの言葉にメタルバードが話し掛けた。

「カーラ・ラダメスの痕跡を全て消すという事は……お前さん自身に掛けられた今回のバイオテロの容疑を覆す事が出来なくなる事なんだぜ」

「そんな事はどうでもいいわ。私にとって、私の情報が他人に渡られる事の方が重大なの。勝手にテロの容疑を掛けたければ掛ければいいわ」

 エイダの言動にメタルバードは彼女が自身に課せているスパイとしての本分が、自身の複製であるカーラの存在証明を消さなければならないと自負しているのを悟る。

 

 そんなこんなで二人が移動したビルの内部を移動していると、ビルの窓から向かい側のビルそのエレベーターが激しく大破しながら揺れているのが目に入った。しかもそのエレベーターには、レオンとヘレナ、そして二人に同行しているジュピターキッドとウォーターフェアリーの4人が搭乗していた。

 激しく揺れては大破し落下寸前に陥るエレベーターから、キッドが皆に声を掛ける。

「……今だ、飛べッ」

 そして4人は崩壊するエレベーター内から反対側のエレベーター天井に飛び移り、難を逃れる。

 そんな彼らの様子を見て、エイダがその内の一人であるレオンに呆れた様子で言葉を掛ける。

「レオン……せいぜい気を抜かない事ね」

 そして所持していたマシンガンを装填しながら呟く。

「私も休んでいるヒマがないの……」

 と、エイダとメタルバードが向かい側のエレベーターの一台が崩落する様子を眺めているその時、突如二人のすぐ側のエレベーター入り口の扉が爆発し、外が丸見えとなった。しかもちょうど其処にエレベーターが下りてきたのだ。

「ちょうど良かったわ」

 そう言うとエイダは下りてきたエレベーターの屋根に軽く飛び乗り、メタルバードの方も彼女を追尾しつつエレベーター上部の屋根に飛び乗った。

 と、エレベーターが下降していると眼前のビルとビルの合間を通す渡り廊下の屋根上に、なんと未だに生き延びていた変異シモンズがその姿を見せた。

「エイダァァァ!」

「また痛い目にあいたいの? そういう陰湿な趣味なのかしら?」

 エレベーターに飛び乗っているエイダの姿を視認した変異シモンズが雄叫びに近い声で名を叫ぶと、それにエイダは渋々携帯していたライフルを構えて前方の変異シモンズに向けて発砲し始めた。

 すると渡り廊下上で動き回る変異シモンズは、尖った骨の様な欠片を此方に向けて連射してきた。その欠片がエイダに直撃する寸前「危ねッ」メタルバードが彼女の前に飛び出しては、鋼鉄の体で防いだ。

 メタルバードは両手を大きく広げながら背面のエイダに向かって話し掛ける。

「エイダ・ウォン、この場はお互いに協力するしかなさそうだ。俺が盾になりつつ反撃していくから、アンタはオレの後ろからそのライフルでシモンズを狙撃してくれ」

「ありがとう……便利な体ね、アナタの鋼鉄の肉体」

「オレ様の鋼の体は、こういう時にこそ役立つのよ」

 メタルバードとエイダが離し終わると、メタルバードは右腕を電撃砲に変形させ、エイダはそんなメタルバードの右肩にライフルを添えつつ、二人で前方の変異シモンズに向けて攻撃していく。

 と、二人が協力しながら変異シモンズと交戦しているその時。二人が飛び乗っていたエレベーターが変異シモンズの攻撃を受けて急降下し始めてしまう。エイダとメタルバードは急ぎ、変異シモンズが居る渡り廊下へと、エイダはフックショットで、メタルバードは翼で飛行して飛び乗った。

 そして再び眼前の変異シモンズに向けて、二人はそれぞれ壁と攻撃の役割を持ちながら狙撃していった。

「おかえり……エイダ……」

 エイダ・ウォンに執着があるシモンズは、姿が変わり果ててもなお彼女を求めては、攻撃を続ける二人へと突進してくる。

 変異シモンズの突進に回避する二人は、上手く立ち回りながら変異シモンズに反撃を続ける。

「ようやく、私の元に帰ってきたな……」

 尖った形状の欠片を乱射しながら、執着するエイダ話し掛ける変異シモンズに、エイダとメタルバードは攻撃を続行する。

「お前と私は……一つになるべき存在なのだ」

 変異しても尚、執拗に言い寄る変異シモンズの言動に嫌気が差してくるエイダ本人。

 その時、彼らが攻防を繰り返している渡り廊下が崩壊し、メタルバードとエイダは急遽もう一つ上の階に設置されている渡り廊下へと飛び乗る。だが変異シモンズも同じく別の渡り廊下へと飛び移ってた。

「不快だわ……」

 変異シモンズの自分に対する執着心に多大な不快感を覚えるエイダ。そんな彼女はメタルバードと共に攻め続けながら変異シモンズに問い掛ける。

「私が、いつあなたに身を捧げたの? コピーと一緒にしないで欲しいわ。エイダ・ウォンはあなたには従わない。それは私もコピーも同じなのよ」

 と、眼前の変異シモンズにエイダが自らの心情を語っているその時。

「バーンズ!」

 自分の名を呼ぶ声に振り返るメタルバード、すると後方の大破し停止したエレベーターの上に、移動していたレオンとヘレナに同行しているキッドとフェアリーの姿が見て取れた。彼らの姿を見たメタルバードはエイダに言った。

「エイダ、さっさとこんな変態野郎片付けようぜ」

 するとエイダは変異シモンズに発砲しながらメタルバードに申した。

「もう良いわよ。こんな男……私一人で充分よ」「なッ?」

 エイダの発言に愕然となるメタルバードに、彼女は更に続けて申した。

「見てるだけで良いわよ。こいつは私が片付けるから」

 エイダが銃撃しながら語っていると、眼前の変異シモンズは目の前のエイダと自分の部下であったカーラを間違えてか、こう離し掛けた。

「私が保ってきた安定を壊したな……ペットの分際で……!」

 そして変異シモンズは猛攻を受けて人の姿形へと戻ってしまった瞬間を見計らって、エイダがシモンズに飛び掛り顔を殴打する。

「なぜ私に従わない……?」

 顔を殴られつつもエイダに問い掛ける変異シモンズ。

 そんなシモンズは、今度は自分が魅了されてきたエイダについて語り始めた。

「美しい……お前は芸術品だよ、エイダ」

 そして再び四速歩行の獣の様な姿に変貌したシモンズは、エイダに問い掛けながら彼女に猛進してくる。

「私のそばに来てくれ……! さあ来るんだ、エイダ……!」

 エイダとメタルバードは、そんな自分勝手な言動をしてばかりの変異シモンズに狙撃していく。

 エイダへの身勝手な想いを告げながら、シモンズは人の形に戻っていく。

「なぜ私の愛を解ってくれないんだ……?」

 変異シモンズは立て続けにエイダへの執拗な想いを吐き散らしていく。

「君の瞳に私が映っている……! 良い、いいぞ! もっと! もっと見せてくれ!」

 エイダはそんなシモンズに跨ると、これでもかと顔を殴打しまくった。

「ああ! その目が私を惑わせる!」

 醜悪な言動ばかりを吐き散らすシモンズは、再度変異しつつエイダに忠誠を誓わせるような言動も吐いた。

「さあ! 私の前にひざまづくのだ! 私に忠誠を誓え!」

 更に変異シモンズは、自分に発砲し続けるエイダを前にして言った。

「私に従わないエイダは要らない。またイチから造りなおそう……」

「この変態がッ!」

 変異シモンズの度重なる悪質な言動に、メタルバードは怒鳴りながら電撃を放つ。

 と、二人が変異シモンズに攻撃をしていると、再び自分達が飛び乗っていた渡り廊下が崩れていき、慌てて二人は更に別の渡り廊下へと飛び移った。

「さあ、戻っておいで……私の可愛いエイダ……」

 

 

 

 

[共闘する三人]

 

 二人は別の渡り廊下の上へと飛び移ると、停止してしまったエレベーターからワイヤーを伝って上っていくレオンやキッド達の姿が其処から見れた。すると、そんなワイヤーを伝って登るウォーターフェアリーからメタルバードへ通信が入る

「バーンズ、それにエイダ聞こえる!? 其処から下のシモンズを撃って!」

 メタルバード達が視点を下に向けてみると、レオンやキッド達の下から猛烈な速さで駆け上っては迫る変異シモンズの姿があった。

 二人は駆け上る変異シモンズに攻撃していく、すると狙撃しながらエイダが呟いた。

「嫉妬されているみたいね、レオン」

 と、変異シモンズに向けて狙撃し続けていると、エレベーターワイヤーを伝って登るレオンに狙いを定めていた変異シモンズが突如として狙いを変えて狙撃していたエイダとメタルバードの方に飛び掛ってきた。

 エイダとメタルバードは突然飛び掛ってきた変異シモンズの攻撃で弾き飛ばされ、エイダはその場で気絶して動かなくなり、メタルバードは弾かれた勢いで真下に落下していってしまう。

「エイダ!」

 弾き飛ばされたエイダを見たレオンは、居ても立ってもいられず速攻でエイダの元へと駆け付ける。

「……ヘレナ、援護を頼むぞ」「レオン!」

 同行してきたヘレナに援護を任せつつ、レオンは急ぎエイダの元へと駆け付ける。

「エイダ、聞こえるか……」

 気絶するエイダに駆け寄っては彼女の身を起こしながら声を掛けるレオン。

「こんなところで、くたばる君じゃないだろ」

 と、気絶するエイダを介抱しているレオンに変異シモンズが迫る。

「お前に用は無い! エイダから離れろ! レオン!」

 レオンは迫る変異シモンズに狙撃し始めた。

「エイダ、こっちへおいで。私だけが……君の理解者なんだ」

「そういうのが一番、嫌われるんだぜ」

 身勝手な言い分に反論しながらレオンは変異シモンズに発砲を続ける。

「エイダ、目を覚ませ……」

 変異シモンズに射撃しつつレオンは彼女に何度も呼び掛ける。

「俺の知ってるエイダは、こんなところでくたばる女じゃない」

「悪運の強さは、お互い様だろ」

 其処に変異シモンズが鋭い形状の骨を連射してきた。レオンはエイダの身を庇い、自分の体を盾にした。

 変異シモンズの攻撃を一身に浴びてエイダを護るレオン。すると

「……変わってないわね」エイダが目を覚ました。

「お目覚めかい?」目覚めたエイダの顔を見詰めながら優しく言葉を掛けるレオン。

 と、二人が見詰め合っているその最中、変異シモンズが二人に猛進してきた。

「レオン! エイダ!」『!』

 キッドの声に振り返る二人、だが変異シモンズは既に二人の眼前まで迫ってきていた。

 万事休すと思われた、次の瞬間。

「コンニャローーーーッ!」

 突如メタルバードが空中から二人に猛進し迫る変異シモンズに強烈な飛び蹴りを喰らわせた。メタルバードの飛び蹴りを喰らって変異シモンズはその場から蹴り飛ばされ落下する。

 前触れもなしに上空から飛び蹴りを仕掛けたメタルバードに驚愕するレオンとエイダ、そして少し上から眺めていたヘレナにキッドそしてフェアリー。

 そして変異シモンズに飛び蹴りを喰らわしたメタルバードはレオンとエイダの前に降り立つと、眼前のエイダに言い切った。

「エイダ・ウォン! お前からは、まだ聞かなきゃならねえ事が山ほどあるんだ! こんな所でくたばって貰っちゃ困るんだよッ!」

 と、メタルバードが二人に言い切ったその時、蹴り飛ばされながらも渡り廊下に何とかしがみ付いた変異シモンズが再び現れた。

 メタルバードは再び立ち塞がった変異シモンズに前を向きながら、背面のレオンとエイダに話し掛けた。

「エイダ、それにレオン! オレに続いて変態シモンズを攻撃、あのクソ野郎を始末するぞ!」

 そう二人に告げたメタルバードは、頑丈な鋼の肉体を振るっては変異シモンズに接近して直接攻撃を仕掛けていく。

 そんなメタルバードの後方から、彼への支援狙撃を開始するエイダとレオン。

「シモンズったら、しつこいでしょ? あなたは、あんな風にはならないようにね」

「男は引き際が肝心だ。俺は心得ているつもりだよ」

「だったら結構」

 メタルバードの支援狙撃をしながら会話するエイダとレオン。そんな最中、メタルバードは接近して変異シモンズに鋭利な刃物へと変形させた両腕で果敢に斬り付けて行く。

 更に変異シモンズは背面の巨大な触手から鋭い欠片を発射して遠距離のエイダとレオンに攻撃を放つ、だがメタルバードは自身の体を布のように伸縮させて変異シモンズの攻撃を受け止める。

 すると変異シモンズは次に踏み足をすると次の瞬間、その場を駆け出してはエイダとレオンに突進攻撃を仕掛けようとする。だがメタルバードはそれを全身で受け止めては、無理やり変異シモンズの突進を制止してみせた。

 そんな懸命なメタルバードの奮闘に応えるかの様に、レオンとエイダの二人はメタルバードに足止めを喰らう変異シモンズに向けて狙撃を続けた。

 三人の必死な猛攻により、変異シモンズは再び人の形まで縮んでいくと、其処に間髪入れずメタルバードが跨りシモンズの顔面に鋼鉄の拳で幾度も殴り続けた。

 そして変異シモンズは再びその全貌を変化させては、獣のような形態で攻め続けた。

 

 そして三人の猛攻が続いていたその時、変異シモンズは自分を足止めしているメタルバードの一瞬の隙をついて彼の上を飛び越えては、遠距離から自分を狙撃し続けていたレオンに襲い掛かった。

「うわッ」「レオン!」

 変異シモンズに弾かれるレオン、彼は危うく高層ビルの渡り廊下の上から落下しかかったが寸での所で踏み止まった。だが、そんなレオンに人型に戻ったシモンズが忍び寄り、落下を繋ぎ止めているレオンの手を強く踏み付け出した。

 そしてシモンズはレオンの手を幾度も踏み付けながら問い掛ける。

「助かりたいか!? 死にたくないか!? ならば命乞いしろ! 泣いて私に助けを乞うのだ!」

 このシモンズの言動に、レオンははっきりと言った。

「お断りだ……!」

 レオンの言葉に怒りをあらわにするシモンズ、そして彼が更に強くレオンの手を踏み付け様とした瞬間

「その通りよ、シモンズ」

 シモンズの背後からエイダが駆け寄っては、シモンズに所持していたクロスボウの矢を突き刺した。

「なぜだ……! エイダ!」

 矢が刺さった箇所から夥しい程の血を噴き出しながら嘆くシモンズ。更に其処へメタルバードも駆け付けては、尖った針状に変形させた両腕を躊躇する事無くシモンズに突き刺した。

「エイダじゃなくて悪いが……アンタを痺れさせてやるよ」

 力いっぱいシモンズに自身の両腕を突き刺しながら言葉を掛けるメタルバードは、次の瞬間その突き刺した両腕から強烈な電撃を放ちシモンズの体に電流を流した。

「うああぁぁ……!」

 強烈な電撃を体に流されたシモンズは苦しみ、そしてそんなシモンズを突き刺したままメタルバードは彼共々渡り廊下の上から身を投げた。

 だがメタルバードは空中でシモンズから離れ、自分は上空へ浮上するのと相反してシモンズの方は燃え盛る炎の中へと墜ちていった。

 一方、それを見届けたエイダは華麗にフックショットで一人高層ビルの上へと向かうのであった。

「さよなら、シモンズ」

 炎の中に堕ちていくシモンズを見て、エイダは最後の言葉をシモンズに掛けた。

 

 

 

 

[害悪の末路]

 

 メタルバードによって落とされたシモンズは、真下の燃え盛る火災の中に身を包まれ、業火の中でもがき苦しんだ。

「うあ、うわあああぁ……」

 豪華に包まれるシモンズを見届けたエイダは、一人呆然と此方を見詰めてくるレオンを見て呟いた。

「なんて顔してるの? 私がサナギから生まれるはずないでしょ? でも……面白いから、黙っておくわね」

 そう呟くとエイダは手元の携帯機器からレオンの携帯機器に何かを送信しては、その場から立ち去っていった。

「エイダ!」

 彼女を呼ぶレオン、だがエイダは一人先へと進むのであった。

 エイダがレオンに送ったメッセージ、それは

「もう少し長く遊んでいたかったけど……行くわ。それと屋上にあなたたちへのプレゼントを用意しておいたわ。またね」

 

 そんな呆然と立ち尽くすレオンの許に、メタルバードが上空から降下してきてはレオンに問い掛ける。

「レオン! あの女、エイダは……!」

 問い掛けられたレオンはエイダの居た方角に目を向けてみる。メタルバードもそんなレオンの視線を追うが、其処にエイダの姿は既に無かった。

「クソッ、あの女! ドサクサに紛れて逃げやがって……!」

 地団駄を踏み締めながら悔しがるメタルバードに、レオンが話し掛ける。

「良いじゃないか……彼女は所詮、このテロに巻き込まれただけなんだから」

 エイダを信用しきるレオンの発言に、メタルバードは血相を変えながら言い返した。

「何言ってやがるんだッ! いっくら今回はたまたま巻き込まれただけだったとはいえ、前々からいくつもの事件に絡んでいる女なんだぞ!!」

 と激しくレオンに言い返すメタルバードの許に、ジュピターキッドとウォーターフェアリーがヘレナ・ハーバーと共に駆け付けてきた。

 

 メタルバードの指示の元、彼とエイダが乗ってきたヘリで脱出を図ろうと考えた一行は、一路屋上へと向かった

 だが、そんな一行の前に再び変異シモンズが更にその体を変異させて姿を現した。

「あの世へ行く準備は出来てるか、シモンズ」

「地獄がアンタをお待ちかねよ」

 更なる変異を遂げたシモンズに躊躇わず発砲していくレオンとヘレナ。二人に続き、メタルバードら聖龍隊の三人もシモンズに攻撃を仕掛けていく。

 全員の攻撃を受けたシモンズは、その場で膝を付き、更に屋上で群がっていたゾンビ達が一斉にシモンズ目掛けて喰らい付いてきた。

 シモンズがゾンビの群れに喰い付かれているその最中、一行は急ぎヘリが着陸しているヘリポートへと進行する。

「急げ! ヘリはあそこに停めている! アレで全員避難すっぞ!」

 メタルバードが指差す方角には、ヘリポートの中央に着陸している武装ヘリが見えた。

 

 と、一行がヘリ目指して進んでいる道中、突如巨大な肉の塊が飛んできた。

「うわッ!」

 驚き回避するメタルバード達。そして彼らが肉の塊が飛んできた方に目を向けると、其処にハエに酷似している巨大な怪物がビルの真上に陣取っていた。

「ま、まさかアレはッ?」「間違いない……シモンズだ」

 巨大なハエの怪物に驚愕するキッドに続き、メタルバードが視線の先のハエの怪物がシモンズの成れの果てである事を察する。

 そんな巨大なハエに変貌したシモンズに、一同は果敢に攻撃を放つ。だが此方側の攻撃を幾多にも受けたシモンズは、その不気味で醜悪な巨体に生えた翼で飛び掛ってきた。

「回避しろ!」

 メタルバードの一声で一斉に身を伏せて回避する一同、そして次の瞬間メタルバードは変貌シモンズに電撃砲を直撃させた。

 電撃砲を喰らった巨ハエのシモンズは真っ逆様に高層ビルの屋上から落下していった。

 と、シモンズに電撃砲を放ったメタルバードが砲身に変形させていた右腕を元の形状に戻しながら呟く。

「……ちッ、エネルギー切れか」

 体内に蓄積していた電気エネルギーが今の一発で切れてしまった事に口元を歪ませるメタルバード。

 そして一行は再びヘリが着地しているヘリポートへと足を急がせた。

 

 一行は遂にヘリポートまでもう少しの所まで辿り着いてた。だが目の前の屋上広場には無数のゾンビ達が群がり行く手を阻んでた。

 と、その時。長い触手のようなモノがビルの下から群がるゾンビ達に突き刺さり、そのまま下方に引きずり込んでしまった。

 そしてビルの下から更に巨大な全貌へと変異を遂げたシモンズが這い上がってきた。

「此処でシモンズには消えてもらおう! こいつに飛び回れてちゃヘリに近づく事もできねェ」

 メタルバードの発言に、周囲の皆は眼前に出現したシモンズに向かって狙撃し始めた。

「さァて皆さん、害虫駆除のお時間ですよ!」

 自身の両腕を鋭利な刃物に変形させては、巨大蝿シモンズの足関節に斬りかかるメタルバード。そんな彼に続き他の面々も巨大な蝿の姿へと変わり果てたシモンズに攻撃を続ける。

 と、巨大な蝿の姿のシモンズから触手が伸びては、辺りに点在しているゾンビを取り込み始めた。だが、そんなゾンビの一体に、先ほどエイダがヘリから狙撃した際誤って破壊してしまった避雷針が突き刺さったゾンビの骸も紛れ込んでいた。

 そして避雷針ごとゾンビを体内に取り込んだシモンズ、だが次の瞬間シモンズの肉体に取り込まれた避雷針に雷が直撃し、シモンズの変貌した肉体に大打撃を与えた。

「なるほど、これを使えば……」

 体内の避雷針に雷が直撃した事で大打撃を受ける様を目の当たりにしたメタルバードは、すぐさま落雷した衝撃で剥がれ落ちた避雷針の元へと駆け付ける。そしてそれを手に持つと、近くにいたゾンビの一体にその避雷針を突き刺した。するとそのゾンビをシモンズが吸収すると、避雷針はちょうど彼の頭部に埋まる形で取り込まれた。そしてその避雷針に落雷が直撃し、シモンズの全貌は次第に崩れるように崩落していった。

 そして致命的な一撃の下、シモンズは力尽きビルから真っ逆様に堕ちていった。

 

「よし急げ! ヘリはもうすぐ其処だ!」

 一行を先導しながらメタルバードは皆をヘリを停めているヘリポートまで誘導する。

 だが、そんな一行がヘリポートに集結するや否や、シモンズが再びビルを駆け上ってはヘリポートまで追い詰めてきた。

「シモンズ!」

 執拗に迫ってくるシモンズの醜悪な全貌を見上げるレオンと一同。そんな中、メタルバードが執拗なシモンズの追撃に嫌気が差してた。

「しつけェんだよッ!」

 メタルバードはシモンズの醜い巨体に飛び蹴りを喰らわせようと飛び掛った。

 だがシモンズはそれを容易に弾き返しては、メタルバードを弾き飛ばしてしまう。

「メタルバード!」

 弾かれてしまうメタルバードを前に彼を呼ぶヘレナと見据える一同。

 そして弾かれたメタルバードは、その一撃で完全に堪忍袋が切れてしまった。

「……オレ、キレたよ……!」

 次の瞬間、メタルバードは空高く飛び上がると、それと同時に天より雷が彼の体に落ちた。凄まじい雷の電撃を受けたメタルバードは待ったく動じずに地へと降り立つ。

 そして落雷による高電圧の力を右腕に集中させると同時にその右腕を強靭なまでの電撃砲身に変形させる。凄まじい電気を右腕から放出しながら、メタルバードは右腕の砲身をシモンズに向けて一言。

「これで終いにしようぜ……! 変態野郎が……ッ!」

 次の瞬間、メタルバードの右腕砲身から強烈な電撃が放たれシモンズに直撃した。

 強力な電気の砲撃をまともに受けたシモンズは、そのハエの様な巨体の外郭を崩壊させながら真下へと落下し、その醜態な外郭に被われていた人間の肉体が晒されては、そのまま真下のモニュメントその先端に突き刺さった。

「ぐはッ」

 貫通するモニュメントの先端部分に絶句するシモンズは、遂にようやく絶命するのであった。

 貫かれたシモンズの骸からは夥しいほどの血が流出し、モニュメントを伝ってその周囲の紋様に流れ込む。それは偶然か、血が流れた事により赤く染まったその紋章は、皮肉にもあのアンブレラの紋章と同じだった。

 

 凄まじいシモンズの死に様を高層ビルの屋上から見届けた一行は、余りの惨たらしい死に様に愕然とした。

 だが一人だけ、シモンズに妹を殺められたヘレナは惨い死に様に足し一言呟いた。

「……敵は討ったわよ」

 シモンズの死を前に妹への弔いの言葉を呟くヘレナに、レオン達はヘリへと向かうよう声を掛ける。

 

 そして一行がヘリへと辿り着いたその時、レオンがメタルバードに質問した。

「……メタルバード、さっきエイダからプレゼントがあるってメールを貰ったんだが、君は何か知ってるかい?」

「っ? いいや、オレは何も知らないが……」

 何も知らないと答えるメタルバードが、徐にヘリの操縦席に乗り込もうとすると、座席に一つの化粧用コンパクトが置かれてた。

「これはエイダの……?」「いつのまに……?」

 コンパクトを見てそれがエイダのだと直感するヘレナ、そして自分が気づかない内に座席に置いていたエイダの行為に唖然とするメタルバード。

 そのコンパクトを徐にジュピター・キッドが手に取り開いてみせる。

 すると一見、中は極普通の化粧コンパクトに見えたのだが、その白粉や紅が添付されてる部分が突如開き、其処から極小のメモリーカードが出てきた。

「ちょっと貸してくれっ」

 すかさずメタルバードがキッドからカードを渡されると、彼はそのカードを携帯してたパッドに挿入し中のデータを閲覧した。

 カードの中には、シモンズが違法な生物兵器製造に関与している事、そして彼がトールオークスでのバイオハザードを引き起こした決定的な証拠が記録されてた。

「レオン、これは……」「シモンズの犯行を示す証拠だ」

 保存されてたデータを見たヘレナとレオン。

「これで、あなたの無実が証明できる」「……君の無実もだ」

 互いの無実が立証できる事をヘレナにも告げるレオン。と、そんな会話を続けている二人にキッドが声を掛ける。

「さあ、今はとにかく此処から離れよう。話は後だ」

 二人はキッドの問い掛けに頷くと、一同は一斉にヘリへと搭乗し離陸するのであった。

 

 

 

 

[全てが終わろうとも]

 

 その後、中国でのバイオハザードは新たに開発されたJ-ワクチンにより事態は収束されつつあった。

 聖龍隊総長バーンズは今回の件での調査結果を国際連合本部に報告した。結果、シモンズの悪事はすべて国連や政府機関に露見し、彼のファミリーは国連の監察下に置かれる事となった。

 そしてバーンズは、今回の中国でのバイオハザードを引き起こしたエイダ・ウォンが実はシモンズによって造り替えられてしまったカーラー・ラダメスである事も国連に伝えたが、それは彼のテレパスでのみ解った事柄なゆえ物的証拠が無く、エイダ・ウォンは今回のテロに深く関与していると言う事で新たに国際指名手配を受ける事になってしまった。

 バーンズはこの事実をBSAAなどの組織にも伝えたが、表向きは国連と同じだった。

 更にバーンズは聖龍隊の中国支部にもこの事実を伝えた。特に目の前で妹分の様に大事にしてきた女性隊士をB.O.W.に変異させられたシャンプーは、完全にカーラを許す事はなかったが同時に一人の男に玩ばれた女性としてカーラの心情に理解を示した。

 

 中国でのバイオハザードが収拾してしばらく経った日の事。この日、バーンズはレオンと面会しては彼と対話した。

「……済まないなレオン。俺のテレパスで今回のバイオテロにエイダは関与はしてなく、エイダに変異させられたカーラの犯行だと主立った機関には伝えてはいるんだが、あいにくテレパスだけじゃ確証は得られずエイダの身の潔白を証明する所までは至らなかった」

「そんな……だがエイダではなくカーラという女性が今回の首謀者である事は、彼女の研究所や施設に何らかの物証があるのでは……!」

「それなんだが……」

「……………………」

 突如眉間のシワを寄せるバーンズにレオンは黙然と彼の話に耳を傾けた。 

 

 事態が収拾し、混乱が鎮まってきた頃合を見計らい、バーンズは聖龍隊の調査員と共にエイダが一足先に足を運んだはずのカーラの研究室に向かった。

 だが其処でバーンズ達が見たのは、完全に破壊されたコンピューターなどの機材、そして中央に存在する六角形のケースに納められた焼け焦げた抜け殻だけだった。

「……なんだ、これは?」

 中央に存在する焼け焦げた抜け殻を前にして、バーンズは自分の手に絡め取る抜け殻内部に残っていた粘液を見詰める。

 と、そんな不可解な物体の抜け殻と内部に残された粘液に気を取られていたバーンズに後方から調査していた聖龍隊士が声を掛けてきた。

「総長」「ん」

 振り返るバーンズに隊士は申し上げた。

「ダメですね、コンピューターなどの機械は完全に破壊されて中のデータも修復不可能です。かのエイダ・ウォンに変えられてしまったというカーラ・ラダメスに関する情報も全て消失してしまってます……」

「……そうか」

 隊士からの報告を受けたバーンズは、再び隊士に調査を続けるよう言付けると、足元に転がっていた無数の薬莢に気がついた。

 空薬莢の一つを手に取り見詰めるバーンズ。するとバーンズに今度は別の調査していた隊士が報告しに来た。

「総長、どうやら研究室内の機材を破壊したのはマシンガン等の銃器による弾丸の連射によるものみたいです。至る所に弾痕と、破壊された機材の中から弾丸が見つかりました」

「うむ、そうか……分かった、報告ご苦労。更に調査を続行してくれ」

「はいッ」

 バーンズは再び手に取った薬莢を見詰めながら想像した。

 この研究室に一足先に来たエイダ・ウォン、彼女が自ら研究室を破壊し尽くし炎上させたのだと安易に想像できた。

 彼女は一体、何を想い、何を感じて自らの複製とされたカーラの研究室を破壊したのか。

 聖龍隊総長バーンズ・ウィングダムズ・キングズは一人の謎めいた女スパイの誰にも読み解く事の出来ない心理について深く考えるのであった。

 

「……それじゃ、それじゃ……エイダは自ら、自分の身の潔白を証明するモノを壊したっていうのか!?」

「ああ、そう言う事だな」

 バーンズの話を聞いたレオンは血相を変えて問い返し、それにバーンズは真顔で頷いた。

「なぜ、なぜエイダはそんな事を……」

 エイダの行動に理解できず困惑するレオンに、バーンズは自分なりの解釈を説いた。

「おそらくは……カーラ自身にも、そして彼女やシモンズの研究施設にも、自分の遺伝子情報を始めとする個人データが残されていたからだろう。スパイとしては、自身の遺伝子を始めとする個人情報の漏洩は死活問題だからな。だからこそ、自身の偽者であるカーラの痕跡を完全に消し去り、更には自身の遺伝子データが保存されたと思われるシモンズの研究施設やカーラの研究室を破壊したんだろう」

「…………」

 バーンズの説明に、レオンは返す言葉も見付からないほど複雑な心境に陥ってた。

 そんなレオンに追い討ちを掛けるかのようにバーンズは更に話し続ける。

「……そう言う事なんで、レオンお前さんには悪いがエイダは今回のバイオハザードに深く関与している重要参考人として新たに指名手配する事となった」

「……!」

「仕方ないだろ? 彼女の潔白を証明する物的証拠は、全て彼女自身が消しちまったんだから。イドニア共和国や中国でクリス達の前に現れたのがカーラだという証拠も無くなり、更にカーラ・ラダメスという人間そのものの存在を物証する事さえできない始末なんだしよ」

「…………」

 話を聞いて、レオンは完全に口を閉ざしてしまった。

 

 と、バーンズはレオンとの話を終えてその場から立ち去ろうとした際、去り際にレオンに告げた。

「レオン、お前さんがあのエイダに対して、どう想っているか勝手だが……所詮は彼女の組織も、アンブレラと変わらない事を忘れるな。諜報活動なんかの裏の舞台では、女だけでなく迂闊に人を信用すると、とんでもないしっぺ返しを喰らわされるぜ」

 去り際に意味深な発言をするバーンズに、レオンは険しい面持ちでバーンズに話し返した。

「……なんだか似てきるな……君の相棒に」

 この言葉にバーンズは背を向けたままレオンに返した。

「いや、簡単には似れねェよ……アイツみたいに、何もかも信用しない人間には……オレは成れねぇよい」

 そう告げるとバーンズはその場を去っていった。

 

 そして去り際に彼は人知れず心の中で、今は聖龍隊に不在の相棒の事を想った。

(そう、あいつみたいに人を信用できない人間であったからこそ……オレたち二次元人の尊厳と未来は、護られて来れたんだ)

 

 

 こうしてバーンズを筆頭とする聖龍隊が過去に体験したアジアでのバイオハザード事件は、幕を下ろしたのである。

 

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