現政奉還記 B.O.W.編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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現政奉還記 B.O.W.編 侵食する脅威

[chapter:Dの力]

 

 その昔、一人の学者が居た。その名は「ゼルトン・プラトニクス」通称Drゼルトンと呼ばれた学者である。

 Drゼルトンは細胞学にて、人の遺伝子つまりは細胞を全く新しい遺伝子固体として強化し作り変えようと、一つの特別なワクチンを作り出した。そのワクチンこそ「D-ワクチン」なのである。

 

 ゼルトンが生み出した、そのD-ワクチンは人の細胞を劇的に変化させ、強固な細胞にする画期的なワクチンになる筈だった。

 だが、そのワクチンは人体に適合しない限り正しく作用せず、当初の頃は投与してもスグに被験者を死亡させてしまう代物であった。

 ワクチンの適合者を求めたゼルトンは、遂に軍事政権に協力を求めるまでに至ってしまった。だが、これが後々大きな過ちへと発展してしまう。

 

 軍はゼルトンの生み出したD-ワクチンを、人体を強化・発展させる為の云わば「新人類生誕」には使用せず、純粋に軍力強化として兵士に投与し続ける様にワクチンを使用した。

 だが軍内部でも、ワクチンに適合する人材は中々見付からず、遂に軍は外人部隊より志願者を募ってD-ワクチンの適合者を発掘しようと考えた。

 そして、その外人部隊の一人こそ、当時まだ13歳の小田原修司であったのだ。

 

 軍は若干13歳の小田原少年にもワクチンを投与した。結果、小田原修司はD-ワクチンに適合し、屈強な肉体を得ると同時に体質までも変化させる事となった。

 だが、D-ワクチンの影響で肉体を強化した小田原修司は同時にその身体を巨大化させると共に一時的だが理性を失っては暴走してしまうという欠点までも得てしまった。

 これにより軍当局は小田原修司を一時的に徹底した管理化に置き、それと同時に彼にサバイバル術などの徹底した戦術を叩き込んでは最強の戦闘マシーンへと育成し始める。

 しかし小田原修司の暴走時による多大な損害費用によって軍事政権は、もはや個々の権力だけで小田原修司を育成および養う事が出来なくなってしまった。だが彼は唯一無二のD-ワクチン適合者にして貴重な生存者。手放す事は実に惜しい逸材であった。

 そして遂に軍政権は小田原修司の更なる軍事利用を用いる為にも、彼への所有権を国際連合にそのまま受諾する顛末へとなった。

 

 こうして小田原修司は、その身柄を国連に完全に引き渡され、更に国連下の許で今後人間兵器として扱われ続ける取引を修司自身が求めた。これにより小田原修司の人権は国連に渡され、彼自身には人権はもちろん戸籍や出生記録そのものが完全に国連の手の内に入ってしまった。

 だが、その間も小田原修司は国連の下で様々な任務や諜報活動を行いつつ、アニメタウンに帰還しては軍事政権下で習得した様々な手法を聖龍隊に取り組み、聖龍隊を巨大化しつつ強固な組織へと変えていった。

 

 だが、D-ワクチンを打ち軍から聖龍隊に帰還した小田原修司は一変していた。それは容姿などが少しばかり逞しくなった事ではなく、風貌その様子であった。

 彼は軍および国連の下で様々な職務に就いた事で世界の現実を目の当たりにしては、更に屈強かつ現実的な思想に彼の心境が変化した事だった。

 

 

 しかし、何よりも彼が軍から帰ってきて一番変わったのがD-ワクチンによる彼の能力習得である。

 小田原修司はD-ワクチンの力で、興奮すると体内のドーパミンやアドレナリンとD-ワクチンが過剰反応し全身の筋肉が異常膨張し、瞬時に巨体な筋骨隆々の大男へと変貌する。

 Dの力で変化した彼は異様な容姿へと変貌し、Dの影響で体内の血流が激しく流動する事により過剰な熱反応が体内で起こり、時おり全身から湯気が立ち昇る様に成る処か、筋肉組織の異常発達と激しい血流が相まって全身が赤黒く変貌するのである。

 

 問題なのが、Dの力で大男に変貌した小田原修司が一時的に理性を失っては自我を保てなくなり暴走してしまう事であった。

 巨大化した上に常人の何十倍もの筋力に身体能力が上昇した小田原修司の暴走状態に、当時の聖龍HEADや聖龍隊の隊士達でも取り押さえることが困難だったという。

「…………修司……ッ」

 暴走した修司を取り押さえようとしたが抵抗され返り討ちにあったバーンズは深手を負って横たわっていた。そんな彼の眼前には、自分と同じくDで暴走した修司を取り押さえようと試みたが力では敵わず痛め付けられ空しく横たわる聖龍隊の仲間達の痛々しい姿が広がっていた。

 

 修司の体内に存在するDは、直接全ての細胞に作用しては修司の肉体いわば筋力を常人の倍以上までに増大させ強化してしまい、一度Dで体格を倍化した上に強化させた小田原修司を止めるのは至難の業であった。

 だが後に小田原修司は、その自我を保ちつつDでの肉体強化を保てるまでに自身を成長させ、無事に周囲の仲間達にも損害を出さずに連携していく事が出来るようになった。

 更に小田原修司の体内のD-ワクチンはその後、独自に変化していき、小田原修司は遂に自身の筋力強化を超えた更なる変化をも成し遂げた。

 それは彼、小田原修司の遺伝子が体内のD-ワクチンと結合し始めた頃、聖龍隊の後方支援を主な職務としているウッズが直々に調べた結果、何と小田原修司の遺伝子そのものが変異し始め通常の人間の遺伝子とは完全に異なる構造へと変異したのだった。

 それ以降、小田原修司は戦術や戦況に応じた様々な変異を成し遂げるようになった。彼の変異した細胞と体内のD-ワクチンの作用で、小田原修司は多種多様な容姿の異形の存在へと変身を遂げるまでに至った。

 時には人狼に、時には鳥人に、またある時は巨大な竜へと変身しては数多の敵勢を薙ぎ倒していった。

 もはや人ではない存在に成り果てた修司であったが、それを彼は苦とは思わず、むしろ誇りであり喜びに近い感情で受け入れてた。これは彼自身の真情であるのだが、異形の存在に成り果て通常とは異なる存在に変わり果てようと「弱い存在」で在り続けるよりはマシだと自負していたからである。簡単に言えば、小田原修司は異形であろうと恐れられようと弱い事の方が何より嫌っているのだ。

 

 後に小田原修司の遺伝子から取り出されるようになったD-ワクチンは彼の体内で劇的な変化を遂げており、一種の改質酵素にも近い物質としても用いられるようになった。

 これにより国際連合や世界保健機構は小田原修司の遺伝子から新たな物質へと改善されたD-ワクチンを摘出し、それを元に様々な病気の対抗薬を開発した。その中には癌の特効薬なども含まれ、結果的に世界中で不死の病とされた病気の3分の1が治療可能となった。

 

 だが、修司の体内から取り出されたD-ワクチンは改良などの人の手が加えられてない素の状態で投与すると人体を劇的に変化させ、最悪の場合異形の怪物へと変異してしまうケースがある。これによりD-ワクチンでの非合法な生物兵器開発や人体改造などが後々まで盛んに行われる様になってしまったのである。

 そんな中、改善されたD-ワクチンから新たに生み出されたウィルス、D-ウィルス。これによって通常の生物兵器が一定の条件を満たしていれば強化されるまでに現状が悪化してしまった。

 D-ワクチンとD-ウィルス、経緯などは違うものの、二つとも小田原修司から生み出されたものには違いないのだ。

 

 だが生物兵器や人体改造などの問題を残しつつも、今なお世界中でD-ワクチンから生み出された改善薬で難病を克服していく人々が居る事も現実である。

 それが、自ら弱い人を捨て強き異形の者に成り果てた小田原修司から生み出されたものであったとしても……。

 

 

 コカが感染したD-ウィルスは、下手をすれば世界中に拡散する危険性があった。

 なぜ父親のラッグは娘であるコカに感染させたのか?

 そして何故コカは、修司や不法に投与した者達のように姿を変えず、今も人間であり続けるのか?

 

 

 

 

 

[目覚めし総長]

 

「……バーンズ! ……バーンズ!」

 自分の名を呼び続ける声に、バーンズは目を覚ました。

 ラッグの謀略でダムの貯蔵水を一気に放出すると同時にその激流に押し流された自分達。そしてバーンズが目覚めて起き上がってみると、其処は最初に訪れていたダムの放水坑であった。

「大丈夫か?」

 何度もバーンズを呼び起こしていたのは、赤塚組頭領の赤塚大作こと大将であった。呼び起こしてくれた大将に、バーンズは虚ろ眼で話し返した。

「でもないが、休んでいる暇も無い」

 そう返事をしたバーンズが徐に自分達の居る放水坑の端から水底を見下ろしてみると、水中に見えたのは何と最初に自分達が通った貯水場の淵の通路であった。どうもダムの水が放出された事で水位がかなり上がった様である。

「オレ達、随分流されてきたな」

「ああ、取り合えず今は他のメンバーを探しながらラッグを追おう」

 こうしてバーンズと大将は自分達と同じく激流に流された仲間達を捜索しながら再びダム内部を進んでいくのであった。

「かなり水位が上がってるな」

 水位が上昇している様を見てバーンズに言う大将。そんな二人が進んでいく鉄格子の通路にも、血塗れの死体が点在しているのが確認でき、いつ動き出しても可笑しくなかった。

 と、死体の横を通過して進んでいると突然大将が転倒してしまった。彼が足元に目を向けると、通路に点在していた死体の一体が動き出し自分の足を掴んでいるのが目に入った。

 大将とバーンズは即座に動き出したゾンビに攻撃しては撃退して行った。

 すると今度は水位の上がった水面下から肉食魚が飛び掛り、続いて二足歩行のカエルの生物兵器までも水中から眼前に出現した。

「暗闇、水流、怪物……大変な一日だぜ、タクッ。腕に自身のある相棒が、せめてもの救いだな」

 出現し続ける異形の脅威と対峙しながら愚痴を零す大将の発言に、バーンズが敵と応戦しながらおちょくる。

「仲良く手でも繋ぐか?」

 そんな発言を口にするバーンズに、大将がショットガンでカエルの怪物を撃退しながら言い返す。

「冗談言うより、もっと倒せ」

 

 そんなこんなで放水坑の敵を全て倒しきった二人は元いた場所へ戻る為にも先を進み、通路の端にある扉を潜った。

「慎重に行こう」

 二人が扉を潜ったその時、扉を閉めた途端に通路の奥から声がした。

「バーンズ、大将!」「その声は……!」

 自分達の名を呼ぶ声に聞き覚えのあったバーンズが振り向くと、通路の置くからローゼンメイデンの五人が飛来してきた。

「良かった、お前ら無事だったか」「何とかね」

 バーンズからの問い掛けに水流によって多少湿った衣服の蒼星石が答える。

「二人とも……ホントに無事でよかったぁ~~」

「はは、何も無くこたねェだろう。雛苺の嬢ちゃん」

 バーンズと大将、二人の無事を確認して涙目になる雛苺に、大将が若干恥ずかしがりながらも優しく言葉を返す。と、そんな二人の会話を目にして翠星石が言葉を投げ掛ける。

「ヒナっ、大将やバーンズは身体だけは丈夫なんですし、心配する必要なんかないですぅ。それよりも他のHEADのみんなの方が心配ですぅ!」

「オイオイ、俺らの事も気に掛けてくれや。翠星石の嬢ちゃんよ……」

 翠星石の発言に呆然としつつも話し返す大将。

 そんな大将と合流したローゼンメイデンの五人にバーンズが話し出した。

「さあ、ここでジッとしてても始まらねェ。兎に角さっきラッグと出くわした場所まで戻りながら他のみんなと合流しよう。きっとみんなも俺らと再会する為に流されてきた所まで戻っているだろうよい」

「そうね、私達も先に進みましょう」

 バーンズの指示に返事を交わす真紅、そして一行は再び歩を進めた。

「それにしても……あのコカって子、まさかラッグの娘さんだったとは……」

 顔を傾げる雛苺の発言に大将が厳つい顔で物申した。

「報告書には記載されてなかった。もしかしたら戸籍上は存在してない愛人の娘なのかもしれねェな」

「だとしても……こんな真っ暗闇を通って逃げるほど父親が嫌いなのかしら?」

 大将の話に今度は金糸雀が首を傾げる。

「真相は本人に聞くとして……オレ達の目的は、あくまでラッグだ。あの娘じゃない。そうだろ?」

「ええ、その通りね」

 皆に問い掛けるバーンズに真紅は首を頷かせて同意する。

 

 と、皆が話しているその最中、突如目の前に先ほども出現した細身の異形の怪物が出現した。

「ッ、はぁっ!」

 前触れも無く現れた怪物に、真紅が小さな人形とは思えないほど強力な拳を怪物の額に直撃させては吹っ飛ばす。真紅によって吹っ飛ばされた怪物は小刻みに微動しつつも最終的には動かなくなった。

「……いつ見ても、真紅の異常なまでの体術は圧巻だな」

「うむ……」

 呆然とした表情で互いに会話する大将とバーンズ。

 再び暗闇に包まれる通路をライトを照射して進む一行、そして一行は通路の先に続いていた扉を通り抜ける。

「ここはダムの入口付近か?」「ああ、見覚えがあるぜ」

 大将からの問い掛けにバーンズが答える。そこはコカや皆と駆け上った階段のフロア、その最上部に位置する通路であり、階段はダムの放水で水位が上がった為に完全に水没していた。

 そのまま通路を進もうとすると、上の階と水面の両方からカエルの生物兵器が出現し一行に襲い掛かってきた。

「チッ、挟まれたか」

 バーンズと大将、そしてローゼン達は挟み撃ちにされた次の瞬間、水面に出現したカエルが突如なにかによって真っ二つに切断された。

「なにッ!」「!」

 突如切断されたカエルに驚く大将とバーンズ、そしてもう一方のカエルをローゼン達が倒した直後、階段が水没している水中から何かが浮上してきては水面から顔を覗かせてバーンズ達に素顔を見せた。

「総長! それに大将さんにローゼンのみんな!」

「おおッ、なんだ るちあ達か! 水の中から現れるとは、さすが人魚というかお前達らしいな!」

 水中から顔を出したのは、声を掛けてきたアクア・レジーナの七海るちあに宝生波音/洞院リナ/かれん/ノエル/ココ/星羅、そして唯一の男性隊士であり同時に隊長として隊を纏める堂本海斗らマーメイドメロディーズの面々であった。

 るちあ達は二足歩行の形態に変身しては通路に上がりバーンズらと顔を合わせた。

「良かったぁ、バーンズ達が無事で」

「でも他のみんなは、まだ合流してないみたいだね」

 バーンズたちの顔を見て安堵する波音に対し、まだ全員が再会してない事に感づくリナ。

「まあな、だがさっきの場所まで戻りながら進んでいけば他の連中とも遭遇できるだろう」

「そうね、早くみんなと合流する為にも先を急ぎましょう」

 バーンズの提案にノエルも同意の発言を返しては、一行はマーメイドメロディーズの面々を加えて再び先へと進む。

 そして扉に差し掛かった時、大将がバーンズに話し掛けた。

「お前の記憶力が試される時だな」

「分かってる。来た道を辿って行きゃぁ良いんだろ……やってみるぜ」

「フフッ、頼もしいぜ」

 バーンズの返答に大将は鼻で笑いつつも頼りにした。

 そして道は右折/直進/左折の三つに分かれており、バーンズは自分の記憶を頼りに道を選んだ。

「こっちだ」

 一行はバーンズの選んだ左の道へと進んでいく。するとその先の曲がり角を曲がった途端

「やっぱり、居やがったか!」

 案の定、曲がり角の先には生物兵器が待ち受けており、しかもゾンビや巨大クモなどではない植物型の人間の様なB.O.Wが二体も待ち伏せていた。

 全員、一斉に植物系のB.O.Wに攻撃しては撃退していく。

「気を抜くなよ」

 応戦しつつ皆に声を掛ける大将。そしてその先の角を曲がり、壁際の扉に近づいてはドアノブを回す大将だが鍵が閉まっていた。

「開かない」「別の道を行こう」

 大将の答えにバーンズは返事すると、そのまま進行し続ける。

 と、その時。目の前を何かが物凄い速さで通り過ぎては同時に「キュルル」という聞き覚えのある奇声が聞こえてきた。しかもそれが通り過ぎた直後、その何かが向かった先で激しい衝撃音が響いたのだ。

「なんだ!?」「行ってみるぞ!」

 突然の衝撃音に驚く大将達を引き連れて、バーンズは駆け出した。そして曲がり角を左折すると其処には先ほど眼前を通過した細身のB.O.Wが倒れていた。

「これは……!」

 動かなくなっているB.O.Wを目の当たりに足が止まる一行、すると奥の暗闇から一筋の光がバーンズらの方を照らした。一瞬眩く思うバーンズらに暗闇の中から声が掛かった。

「バーンズ! それに大将君にローゼン達! るちあちゃん達もっ」

「その声……光かッ?」

 バーンズ達が光が照らし出される先を見据えてみると、其処には魔法騎士(マジックナイト)の獅堂光/龍咲海/鳳凰寺風の三人が武器を身構えつつ携帯してるライトを向けていた。

「おおっ、姉ちゃん達か! おめェさん達も無事だったんだな!」

 大将が嬉々とした表情で言うと、三人は笑顔で大将に話し返した。

「へへ、まあね……」

「まさかダムの放水で流される破目になるとはね」

「でも、どうにか大事には至りませんでしたし……後は他のみんなと合流するだけですわ」

 光/海に続き語る風の話に、バーンズも同意する。

「その通りだな。まぁ、みんなそれぞれ丈夫だし生きているだろうけどよ」

「そんな呑気な……」

 バーンズの発言に思わず呆れてしまう大将であった。

 

 

 

 

[合流していく一行]

 

 そして新たに魔法騎士の三人と合流したバーンズらは先を進んでいく。すると前方に扉を確認し、皆はその扉を開けては先へと進んだ。

 扉を開けて出てみると、其処はダムの外壁それも高所の階段にで、出た途端目の前には広大な東南アジアの密林が広がっていた。

「外に出たな」

 扉を潜り、ダムの外壁に設置されている階段を上って行く一行。そして階段を上がると其処には再びダム内部に続く扉があった。

「行くぞ」

 バーンズの声を皮切りに、一行は扉を抜けては再び暗闇が続く内部へと進入する。

 と、その時。扉を潜って内部に侵入してスグ背後から突然巨大な虫型のB.O.Wが二匹現れた。

「何だ!?」

 突然の来襲に慄きながらも一行は果敢に攻撃しては虫型のB.O.Wを撃退した。

 と、一行が二体の虫型B.O.Wを撃退し終わった時だった。暗闇の奥から自分達とは違う銃声が響き渡ってきた。

「今のは……!?」

「もしかしたら、みんなかもしれねえ……行くぞ大将!」

 暗闇に包まれる通路の置くから響いた銃声に、バーンズは皆を従えて銃声のした方へと駆け出した。

 バーンズらが掛け付けて見ると、そこではゾンビや細身のB.O.Wと交戦している最中のコレクターユイ/コレクターハルナ/コレクターアイの三名と一太郎とレイコの市川夫妻が居た。

「結! 春菜! 愛!」「一太郎ッ、レイコ!」

 応戦を続けていた面々を見て名を呼び掛けるバーンズと大将。するとB.O.Wの群れと一戦を終えた彼らが二人の呼び掛けに気付いた。

「バーンズ! それに他のみんなも……」

「大将、大丈夫だったか?」

 呼び掛けに答えるユイと一太郎、彼らの許にバーンズ達も駆け寄ってくる。

「良かった、あなた達も大事無いわね」「ええ、何とか……」

 真紅からの問い掛けに真顔で答える愛。

「ううぅ……でも、おかげですっかりビショ濡れですわ」

「災難だったわよね、ホンと」

 涙目になる春菜に返す波音。そんな中、結がバーンズに問い掛けた。

「バーンズ、他のみんなは?」

「まだ会ってねェが……おそらく、みんなも元居た場所まで戻っている筈だ。俺達もこのまま進めば合流できるだろう」

「そうね、先に行きましょっ」

 バーンズの意思に結も同意しては、コレクターズの三人と市川夫妻を加えて一行は歩を進めた。

 

 そして暗闇が支配するダム通路を一行が進んでいると、突然全身が赤く変色したゾンビ兵が猛烈な速さで走ってきた。

「速いぞ!」

 眼前まで一気に突っ込んでくる赤い体のゾンビに怯みつつも、大将達は的確に撃退していく。

 すると赤いゾンビを相手にしているその最中、通路の奥から何かの発射音の様なのが聞こえてきた。

「これは、レーザーの……ミズキかッ?」

「ちせかもしんねェ、急ぐぞ大将!」

 発射音が光線のだと気付いた二人は、サイボーグである仲間のちせかミズキかと思っては急遽駆け出していく。

 そして通路の先では、確かにレーザーを発射する衝撃音を響かせる、ちせとミズキの両名が居た。しかも二人に背を預けるかのようにテツ/ふゆみ夫妻とアケミ/アツシ夫妻が反対側から迫るゾンビ兵と応戦していた。

「ちせ!」「ミズキ! それにてめェらも無事だったか!」

 駆け付けてきたバーンズと大将に一同は返事をした。

「バーンズ……ええ、どうにか」

「中を捜索していると、みんなと合流して……それからは他のみんなを探しながら一緒に行動していたのよ」

 ちせとミズキの話を聞いて、バーンズと大将は気を落ち着かせつつも再び先へ進もうとした。が、次の瞬間。

 

 一行の前方と後方の両側から赤いゾンビ兵が一斉に襲い掛かってきたのだ。

「挟まれた!」「クッ」

 挟み撃ちに追い込まれた大将とバーンズは仲間と共に両方から攻めてくるゾンビ兵の軍勢に応戦し続ける。

 だが次々と闇の中から襲ってくるゾンビ兵の軍勢に悪戦苦闘する一行、皆がゾンビ兵の軍勢に苦戦を強いられていたその時だった。

「バーンズ、みんな! 大丈夫か?」「総長、ご無事で!」

「衛! それに雅也ッ!」

 迫ってくるゾンビ兵の後方から戦闘を聞き付けては掛け付けて来てくれたエンディミオン率いるセーラー戦士達、そして反対側のゾンビ達の後方からは蒼の騎士こと青山雅也率いる東京ミュウミュウの面々が駆け付けてきたのだった。

 更に「大将、みんな、平気?」「おおッ、その声はなるか! 無事だったんだなッ」と幹部衆の海野なるが夫のぐりおと共に駆け付けてきたのを確認した大将が喚起に沸く。

 そんな集結した皆々を見て、バーンズが皆に指示を言い放った。

「よし、揃った所でこの場を巻き返すぞッ! 何としても、このゾンビ共を一掃するんだッ」

 そして一同、バーンズの一声を皮切りに迫り来るゾンビ兵に反撃して行った。

 一同が力を合わせて共闘した結果、迫り来るゾンビ兵の軍勢はどうにか納まり一時はその場を乗り切る事が出来た。

「いや~~来てくれて助かったぜ、お前ら」

「良いのよ。私達も暗闇の中を彷徨っていたら銃撃とかが聞こえてきたから慌てて駆け付けて……」

 難を逃れた事を述べるバーンズにセーラー戦士のマーズが受け答えをする。

「私達も銃声とかが聞こえてきたから、逸れた仲間が戦っていると思って急いで駆け付けたんだニャ」

「いや、お陰で何とか乗り切れたぜ。ありがとよミュウミュウズ」

 駆け付けて来てくれたミュウイチゴ達ミュウミュウズに礼を述べ返すメロディーズの堂本海斗。そんな面々の横で大将も無事再会を果たしたなるとぐりおの二人と対話をしていた。

「良かったテメェらホントに~~ッ、てっきり溺れちまってドザエモンになってねぇかと心配してたぞっ」

「はいはい、心配掛けたわね大将」

「それよりも、他のみんなとも早く合流しないと……僕らと同様、無事で居てくれたら良いんだけど」

 思わず男泣きで心配する大将に優しく気を掛けるなる、そして他の仲間達の安否を気にするぐりお。

「急いで他のみんなと合流して先へと向かわないと……あのラッグから娘であるコカの事も含めて色々と問い出さないと」

「うむ、そうだな。急ぐぞ、みんな」

 セーラーマーキュリーからの言葉にバーンズも同意しては、再び暗闇を進み始めた。

 

 するとバーンズ達は道が二手に分かれている局面に再度出くわした。

 直進するか右折するか、バーンズは悩みながらも右に進む事にした。

「こっちだ」

 バーンズの選択に従い他の一同も彼の後を付いていく。すると彼らの耳に何かがカサカサと蠢く音が微かながらに聞こえてきた。

 皆が辺りを警戒する中、突然後方に巨大クモがその異様な全貌を露にして出現する。一同が巨大クモに一斉攻撃していると、今度は天井から巨大クモが張り付きながら距離を縮めてきていた。

 天井を伝って忍び寄ってくる巨大クモにも猛攻しては撃退する一同。するとその時。

 通路の死角から赤い閃光が幾つも天井の巨大クモに浴びせられて行った。何事かと戸惑う一行の前に、巨大なガトリング砲を持ち上げてはクモを狙撃した黒衣衆のガトリンガーが現れた。

「ガトリンガー」「てめェ、無事だったのか……」

 ガトリンガーの顔を見た途端、表情を歪ませる大将たち幹部衆の面々にガトリンガーは真顔で申し上げた。

「皆さん、ご無事でしたか。それは何よりで……ククク」

 怪しげな笑みを零すガトリンガーに不快感を募らせていく幹部衆を尻目に、そのガトリンガーの後ろから木之本桜と貴史/千春の山崎夫妻が姿を見せた。

「おめェら!」「さくらちゃん!」

 三人の姿を見て驚きの表情を見せる大将とセーラームーン、すると三人は事情を語り始めた。

「激流に流された後……目を覚まして内部を彷徨っていると」

「運がいいのか悪いのか、ガトリンガーと出くわしちゃって……」

「それで仕方なく、ここまで同伴していたって訳」

 そんなさくら/千春/貴史の言い分を聞いたガトリンガーは不気味に微笑みながら三人の発言に対して申し返した。

「ククク、随分な言い様だな……ここまで一緒に共闘し合った仲だと言うのに。白状だなぁ」

「やめてくれ。あんた等と仲だのと触れ合いたくないんだよ、ホントに」

 ガトリンガーの申し返しに貴史が真顔で反論する。

 そんな殺伐とした中、一行は再び足を前へ進ませる。

 

 すると今度は後方に点在していた数体の死体が起き上がり、此方へと迫っているのが目に入った一同は、即座にすぐ側面に通じていた扉を開けては飛び込む勢いで戸を潜った。

 扉の先は、先ほどバーンズらが通った水没した階段のフロアに通じている空間であったが、目の前の現状を見て大将たち幹部衆が声を上げた。

「まさか!」「水位が上がってる!」

 なんと先ほど階段を水没させていた以上に水位が上昇し、確実に増水している状況であった。

「水攻めかよッ」「急いで脱出するぞ」

 ダムの放水での水攻めに表情を渋らせる大将に、バーンズが指示を仰いだ。

「行くぞ!」

 そして皆、一気に駆け出しては先ほども自分らが使用した業務用エレベーターに駆け込んでは上へと上昇していった。

 

 

 

 

[新たな追っ手]

 

 エレベーターが止まり扉が開いては出てみた一行の前には、最初に通過した下り坂の水路であった。

「やっと戻ってきたな」「ああ」

 ようやく流された地点に近い場所まで戻ってこられた一行は、最初のときと同じく水路に架けられた鉄格子の渡し橋を渡ろうと直進した。

 すると橋を渡っていた一行に突如コウモリの群れが鋭い牙を剥き出しては攻撃してきた。

「ここでの戦闘は危険だ! 先を急ぐぞ!」

 飛来してくるコウモリの群れと応戦しながら駆け出すバーンズと皆。するとコウモリに続いて今度はカエルのB.O.Wが現れた。

「こいつ!」

 カエルのB.O.Wに果敢に発砲していく大将たち幹部衆。するとその時

「後ろだ!」

 バーンズの掛け声に皆が後ろを振り向くと、細身のB.O.Wが鋭い爪を振るっては襲い掛かってきた。

 一行は即座にこの場を離れようと、機関室に続く扉まで向かおうとするもののコウモリの群れが邪魔で思う様に動けなくなっていた。

 一同が立ち往生しているその時、突如水路を流れる水が生きているかの様に動いては滑空するコウモリの群れを一気に飲み込んでは一掃した。

「……ッ!」

 一行がコウモリの群れを飲み込む水に目を奪われていると、水路の上方から呼び声がした。

「バーンズ! みんな!」

「ッ、キッド! それにアプリ……!」

 バーンズ達が声の方に目を向けると、そこにはジュピターキッドとウォーターフェアリーの二人の姿が見受けられた。

 その時、そんな二人に気付いたのか細身のB.O.Wが二人に向かってきた。

 だが二人の眼前まで迫っていた次の瞬間、キッドとフェアリーの前に颯爽と飛び出しては細身のB.O.Wを一刀両断してしまう赤いコスチュームの麗しい女性が現れた。

 キッドとフェアリーに迫るB.O.Wを一瞬で倒して見せたのは、他でもないHEADの一員であるキューティーハニーであった。

「ハニー!」「ハニーさん」

 目の前に現れては敵を一刀両断して見せたハニーの咄嗟の行動と姿に衝撃を受けるキッドとフェアリー。すると彼女に続いて幹部衆の秋夏子が駆け付けて来た。

「みんな良かった、ここに居たのね」

「夏子! なんだハニーの姉ちゃんと一緒だったのかッ」

 無事に姿を見せた夏子に頭領の大将は喜ばしく思った。

 更に夏子は親指を後ろに向けながら大将達に告げた。

「私達だけじゃないわよ。此処まで来る途中で他の面子とも合流しているわ」

 そう言う夏子の後ろからは、ナースエンジェルと水原花林、更には黒衣衆の白蓮坊と黒蓮坊に損尼/欲尼らまでも現れた。

「花林! ……それとオマケに黒衣衆も一緒か」

「おやおや、随分接し方が違いますねぇ。差別はいけませんよ、差別は」

 大将の反応に対し白蓮坊が不敵に反論する。

「私と夏子が一緒のときにナースエンジェルと水原さん達と出会えて……それから黒衣衆の面々ともね」

「そっか……これで後はアッコとギョロ/ゴマそれにチカ子、そして嫌だが大闇だけだな」

 ハニーからの説明を受けて、バーンズは残りの面々を気にし出す。

 

 そしてほぼ全員が揃った状態で、一行は再度機関室への進入に移る。

 一行が機関室へ進入すると、そこは変わらず辺り構わず血痕が飛び散った凄まじい現状で死体がいくつも転がっていた。

 機関室を抜けようとする一行に、バーンズが険しい面持ちで告げた。

「ラッグが隠してるものがある筈だ」

 この先にあるラッグの居城に隠蔽されているものを確認する為にも進行していく一同。

 いつ起き上がっては襲い掛かってくるかもしれない死体を気にしつつも進んでいくと、その先には隙間から滞りなく水が溢れ出ている厳重な鉄の扉が硬く閉ざされていた。

「放水中のようだな」

「ああ、まずは放水を止めなきゃ扉は開かねえな」

「どこかにバルブがある筈だ」

 鉄の扉の上に表示されている[LOCK]のランプを見上げながら会話するバーンズと大将は、放水を止める為のバルブを探し始めていた。

 と、バーンズ達が放水を止めるバルブを探し周辺を見渡していた時だった。

「バーンズ!」

 機関室に逸れていたミラーガールが駆け込んできた。

「アッコ!」

 駆け込んできたミラーガールの姿を見て笑みを浮かべるバーンズ、すると彼女に続いてギョロ/ゴマそしてチカ子、更には大闇刑蘭もその場に駆け付けて来た。

「ギョロ、ゴマ! それにチカ子、無事かッ」

「へ、へい」「どうにか」

「いや~~一時はどうなるかと思ったダワサ」

 三人を見た大将が言葉を掛けると、ギョロ/ゴマ/チカ子の三人は各々返事した。

 一方のミラー・ガールもバーンズと顔を合わせて対話していた。

「アッコ、お前らもどうにか無事だな」

「ええ、流れ着いて目が覚めたらあの子が横で倒れてて……それから一緒に此処まで来る道中、ギョロやゴマ達に刑蘭さんとも会えて、そっから……」

「ってアッコ、ちょっと待てよ。あの子って……」

「ああ、そうだったわね。目が覚めるとあの子がスグ横で倒れていたの……今も一緒よ、ほら」

 バーンズと対話していたミラー・ガールが振り返ると、機関室への扉の影から血が付着している純白のワンピース姿の褐色娘が顔を覗かせていた。

「コカ! どうして此処に?」

 少女を見てバーンズも、そのバーンズの声で少女の存在に気付いた他の面々も驚きの表情をコカに向ける中、ミラーガールがバーンズにコカが此処にいる理由を述べ始めた。

「彼女、私達が激流に呑まれたのを見て、自分もスグ逃げ出しては後を追って激流に飛び込んだらしいのよ……」

 ミラーガールが説明しているとコカはバーンズの前まで歩んでは、彼を始めとしたその場の皆に申し訳なさそうに話した。

「みんな、生きてて良かった……父のせいで、もしもの事があったらと思うと……ホントに良かった」

 父の行為で危うい場面に追い込まれた一同に対し、コカは皆の無事に心から胸を撫で下ろした。そんなコカにバーンズが険しい顔色で問い詰め掛けた。

「コカ、ラッグとの間に一体、何が……」

 と、バーンズがコカに質問している真っ只中、突如水が溢れ出ている鉄の扉が激しく軋んだ。

 滞りなく放水され続ける大量の水で今にも屈強な鉄の扉が大破しそうな状況に、大将が叫んだ。

「オイッ、放水を止めないと扉がもたないぞ!」

 するとその時、コカが機関室のパイプや機械で包囲されている空間を指差して言った。

「見て! あそこにバルブが!」

 ダムの放水を止める為のバルブに気付いたコカは、有無も言わずに張り巡らされたパイプの下を潜ってはバルブの許まで単身向かってしまう。

「コカ、待て」

「これで放水が止まる筈、みんな待ってて」

 バーンズの静止を聞かずに一人でバルブを回してはダムの放水を止めようと試みるコカ。だがその時、バーンズ達の周辺に点在していた死体が起き出しては襲い掛かってきた。

 HEADと赤塚組幹部衆、そして黒衣衆は襲い向かってくるゾンビ達に応戦を始める。

 と、一つ目のバルブを回し終えたコカが次のバルブへと駆け出した直後、彼女と同じ機関室のパイプ入り乱れた空間内に転がっていた死体が起き上がり、コカに狙いを定めた。

「コカ、後ろだ!」

 バーンズはコカに身の危険を伝えるとすぐに立ち回っては彼女を視界で捉えられる位置まで移動する。

 その時、コカの悲鳴が聞こえバーンズらが顔を向けると、先ほど起き上がったゾンビがコカに襲い掛かってた。

「助けて!」

 噛み付いてこようとするゾンビの攻撃に、必死に抵抗するコカの悲痛な声にバーンズが指示を出した。

「ローゼン! お前達は体が小さい、パイプや歯車の隙間から入ってコカを助けろッ」

「分かったわ!」

 バーンズの指示に従い、真紅を始めとしたローゼンメイデンの人形達が内部に突入してはコカに迫るゾンビを撃退してみせる。

 ローゼン達によって助けられたコカは、再びダムの放水を止めようとバルブを回そうとする。

 そんなコカに気を掛けている最中も床に寝転ぶ死体は続々と起き上がり、ゾンビとして襲ってきていた。

「こんな時に!」

 コカの身を護りながらも迫ってくるゾンビの猛攻に顔を歪ませる大将や他の一同。そんな中、バーンズがバルブを回し続けるコカに呼び掛ける。

「敵はオレたちが! コカはバルブを! 手が足りなかったらローゼン達に手伝わせるんだ!」

「分かった!」

 迫り来るゾンビと応戦しながら声を掛けてくるバーンズに、コカも力強く返事をする。

 ゾンビ達を次々に撃退していくHEADに幹部衆、そして黒衣衆。一方のコカもダムの放水を止めるべくバルブを次々に回していった。

「最後の一つ!」

 そしてコカはようやく最後のバルブを閉めようと回していると、そんな彼女にゾンビが迫っていた。だが、コカに迫るゾンビに逸早く気付いた蒼星石は自身の得物である庭師の鋏でゾンビを切り倒した。

 

 蒼星石がコカに迫るゾンビを切り倒し、コカがバルブを閉めているその時、機関室の一角に設置されていたスピーカーからラッグの声が聞こえてきた。

「コカを発見した、すぐに連れて来い。手遅れになる前に」

「見付かったな」

 スピーカーからのラッグの言葉に自分達の存在を気付かれた事を悟る大将。その時である。

「何だ?」

 突如、機関室と水路を結ぶ扉から衝撃音が聞こえ、それと同時に扉が見る見るうちに歪んで行った。その光景を見たバーンズは目を細めながら皆に言った。

「コカを連れ戻しに来た奴だ」

「逃げ道は一つしかない」

 バーンズに続きキッドが皆に唯一の逃走路である頑丈な鉄の扉の前まで皆で向かうが、まだ放水が納まらずに扉は硬く閉ざされたままであった。

「開かないのか?」

 慌てる大将にバルブを閉じたコカが扉の前で困惑していた。

「開かない……放水は止めたのに、なぜ?」

 そんな困惑するコカに、キッドが言う。

「バルブを閉めても、すぐには放水は止まらない。大量の水を放水しているんだ、数分は時間が掛かる」

 そんな切羽詰る状況下の中、向かい側の扉は益々歪んでいき今にも抉じ開けられそうだった。

「あいつが入ってくるぞ」

 コカを追って追尾してくる存在に多大な危機感を感じつつ、テツも次第に焦りを見せていた。

 その時だった。ようやく放水が完全に納まり、頑丈な鉄の扉のロックも解除された。

「開いた!」

 一行は即座に扉を開けて先に急ごうとしたその瞬間、向かい側の扉が遂に破壊され追跡者が追ってきた。

[急いで」

 コカは皆の先頭に立って誘導しようと放水路に飛び出した。一同もコカに続き扉を抜けては即座に鉄の扉を閉めて振り切ろうと必死だった。

 そして早く場を離れようと駆け出した瞬間、またあの「キュルル」という奇声が聞こえては同時に細身のB.O.Wが鋭い爪を振り翳しながら迫ってきた。

「気をつけろ!」

 エンディミオンが皆に叫びつつ細身のB.O.Wに応戦していく。だが細身のB.O.Wは体の肉が少ないのか身軽で、俊敏な動きで壁や床を自在に移動しながら一同を翻弄し続ける。

「動きが速い!」

 狭い通路とは違い、広い放水用の水路内で俊敏な動きをするB.O.Wに苦戦を強いられる大将や幹部衆。

 そんな中、バーンズは逸早くB.O.Wの動きを見切っては白刃の風の刃を放った。風の刃はB.O.Wに直撃し、一刀両断にしてしまう。

 B.O.Wを倒した一行は即座に移動し、水路の端に設置されている梯子を駆け上り上部の通路へと急ぐ。と、その時

「みんな、後ろ!」

 コカの突然の言葉に皆は後方を振り返ると、そこには二体のカエルのB.O.Wがいつの間にか居た。二体のカエルにキッドは得物である鞭を振るって牽制していく中、ヴィーナスが光の矢を形成して二体のカエル目掛けて放った。

 矢が直撃したカエルは動かなくなり、一同は再び梯子を駆け上っていく。

「コカ、離れるなよ!」「分かったわ」

 梯子を駆け上りつつ、コカに告げるバーンズに、コカ自身も強く頷く。

 

 そして全員が梯子を上り、上の通路を進んではダムから脱出しようとした矢先

「何だ、あいつは!」

 大将が通路の下方を指差して叫んだ。そこは先ほど一同が通った鉄の扉、それが押し開けられては扉の前に異様な五本鎌の腕を持つ巨体の怪物が佇んでいた。

「また新しい奴か」[一旦逃げるぞ!」

 五本の鎌を持つ異様な巨体のB.O.Wを前に新手の敵と認識する堂本海斗らに、バーンズが態勢を立て直す為にも一旦退く事を皆に指示する。

 そして全員、通路の先にあった業務用の巨大エレベーターに搭乗すると急いで上の階へと進ませた。

 

 

 

 

[語られる少女の真情]

 

 全員が搭乗したエレベーターが止まり扉が開くと其処は通路となっており、皆がその通路を通ろうとエレベーターから出ると通路には既に植物型のB.O.Wが犇いていた。

 一行は迷わず植物型のB.O.Wに攻撃しようと構えた瞬間、バーンズが指示を告げた。

「マーズ! 光! さくら! お前らの能力で、この植物を焼き尽くせッ」

 指示を受けたセーラーマーズと獅堂光は自身の炎系の技で、そしてさくらは炎のカードを発動させて植物型B.O.Wを一掃した。

 一掃され焼け焦げた臭いが残る通路を進んでいく一行、そして通路を抜けると其処からはダムの水が流れ行く川や周辺の密林が眺められた。その高所から空を眺めた大将が、バーンズ達HEADの皆に言葉を掛ける。

「早くラッグと決着ケリを付けねェと日が暮れるぜ」

 空の色を見て、もうじき夕暮れ時になる事を察する大将は、一刻も早くラッグとの決着を付けて、この一件を終わらせようとHEADに言う。

 するとその時コカが通路の出口スグ横にある階段を指して皆に言った。

「ここを登ればダムの上よ!」

 コカの言葉通りに一行は、その階段を登ってはダムの上へと向かってく。

 

 階段を登って先へと進む一行は、無事にダムの頂上へと辿り着いた。其処は人気の無い殺風景な場所で、ジープが二台ほどしか停車してない現場だった。

「敵は居ない」

 現場を見渡し、辺りに敵である存在が居ない事を確かめる蒼の騎士を始めとするHEADや幹部衆の面々。

 だが、そんな彼らの前に先ほどの巨大な鎌の形をした腕を五本持つ異形で巨体のB.O.Wが颯爽と何処からとも無く跳んで来た。

「敵いるじゃねェか!」

 巨大なB.O.Wに発砲しながら辺りを確認した面々に叫ぶ大将。そして彼を始めとする幹部衆は巨体のB.O.Wに幾つもの弾丸を放っては押し返していく。

 無数の弾丸を一身に浴びたB.O.Wは、前のめりで激しく倒れては完全に動かなくなった。

 ようやく巨大なB.O.Wを倒した面々が息をついた次の瞬間、向こう側の塀から同じB.O.Wが塀を飛び越えて出現した。

「まだ居るよ!」

 二体目の巨体B.O.Wを視認して幹部衆の山崎貴史が慄きながらも姿を現す二体目に射撃していく。

 だが皆が二体目のB.O.Wに気を取られている中、なんと後方からも同型のB.O.Wが現れては迫ってきた。

「今度は二匹で来やがったぜ」

 二体目を狙撃していた大将が三体目を見て口元を歪ませる。

 そして一旦、一同は登ってきた階段の付近まで後退しては迫り来る二体の巨体B.O.Wを相手に交戦を開始した。

「慌てるな! 落ち着いて、1体ずつ倒すんだ!」

 態勢を立て直しながら応戦していく皆に、バーンズも指示を出しながら必死に向かってくるB.O.W二体相手に応戦していく。

 迫りながらも時には猛攻で後退していく二体のB.O.W相手に怯まず攻撃していくHEADや幹部衆に黒衣衆の面々の行為に、後ろで控えていたコカがそっと声を掛ける。

「私を守ってくれるの?」

 このコカの問い掛けにバーンズが力強く返答した。

「当然だろ」

 と、バーンズがコカの問い掛けに答えている最中も二体のB.O.Wは次第に距離を縮ませていた。

「迫ってくるぞ」

 必死に応戦しつつも距離を縮めていく巨体のB.O.W二体に苦戦を感じ始める大将。

 そしてようやく皆の集中砲火を浴びて一体目がまず力尽き、そして次に二体目も前のめりで倒れ込んでは動かなくなる。

「よし!」

 二体のB.O.Wが倒れるのを目の当たりにして喜びの余りガッツポーズをとる幹部衆のアツシ。

 

 二体の巨体B.O.Wを倒したバーンズに皆は、再度辺りを見渡しては全ての敵の排除を終えた事を再確認した。

 そして周辺に敵が居ない事を完全に把握したバーンズは、神妙な面持ちでコカに訊ねた。

「コカ、ラッグの所に行く前に、君に聞きたい事がある。なぜ君は逃げ出した?」

「それは……」

 問い詰められたコカは、暗い面持ちで顔を下に向けてしまう。そんな彼女にバーンズは更に言い寄る。

「ラッグは、なぜ実の娘である君にD-ウィルスを?」

「…………」

「手遅れになる、とは?」

 バーンズはコカに、なぜラッグが実の娘に危険極まりないD-ウィルスを投与したのか、そしてスピーカー越しでラッグが言っていた[手遅れになる]の言葉の意味を問い詰めた。

 やがてコカは暗い沈鬱な面持ちでバーンズ達に語り始めた。

「本当なら、私は此処にいる筈の無い人間なの」

 そうバーンズ達に語ったコカは徐に自身の右腕に巻いていた包帯を解き始めた。

 包帯を外したコカの右腕を見て、大将たち幹部衆もHEADもその場の全員が息を呑み驚愕した。なぜなら彼女の右腕は赤黒く不気味に変色した異様な状態であったのだ。

「D-ウィルス!?」

 コカの変異した右腕を見て、それがD-ウィルスによる変化であると直感で悟るバーンズに聖龍HEADの面々。そんなHEADに幹部衆、黒衣衆の面々にコカは再び語り出す。

「治療のためにウィルスを、うつされたの」

「治療だと?」

 コカの発した治療の言葉に反応した大将にすかさずコカは答えた。

「母と同じ病気にかかったとお医者様に診断されたの。治る見込みはない、って……」

 悲しげな表情を俯かせるコカの心情に、大将やバーンズ達は胸を締め付けられた。そしてコカは辛い心情を語り続けた。

「この地に住む人だけがかかる病気らしいの。母は私と違い、ワクチンを打たれたみたいだけど……結局、母は死んだわ」

 自身はウィルスを、そして母はD-ワクチンの方を投与された結果、母の方は死んでしまった事を語るコカは、更に悲痛な面持ちで語り続ける。

「でも何とかして、私は……」

 悲しく痛心に至るコカの心意を感じ取った聖龍HEADと赤塚組幹部衆は、それ以上コカを問い詰める事は無かった。そして彼女の話に淡々と耳を傾けて無言で聴き入ってた黒衣衆の面々。

 

 

 不治の病にかかり、その治療の為に自分にはウィルスを母にはワクチンをそれぞれ投与され、結果的には母だけが死亡し自分だけが辛うじて生き延びた実情を皆は知ったのだった。

 

 ウィルスも、ワクチンも、双方とも力を欲するがために生み出された物質。

 求める者の末路は、強大な力を得た狂人か、はたまた苦しみながら死に絶える骸か。

 全ては投与した者の潜在的な遺伝子と意思が関わっているという。

 

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