現政奉還記 B.O.W.編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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前々回からの続きになります。
 スター・ルーキーズがモンゴルでの演習を行っている最中、HEADと赤塚組そして黒衣衆はようやく目的地であるラッグの居住まで辿り着いた。
 だが、そのラッグの娘であるコカから語られた衝撃の事実と彼女を襲う脅威が聖龍隊や赤塚組に迫っていた。


現政奉還記 B.O.W.編 紅く染まりし居城にて

[chapter:夕日に染まる戦場で]

 

 コカは全てを語ってくれた。

 15歳の時、母と同じ不治の病にかかり、その際D-ウィルスに治療と称して感染させられた。

 しかしD-ウィルスは適合しない限り、宿主の脳細胞を破壊し乗っ取ってしまう。

 かの革命軍士はもちろん世界中の研究者ですら制御困難であったD-ウィルス、例外は無いはず。

 ラッグは知っているのだろう、コカを怪物に変えない方法を。

 

 聖龍HEAD、赤塚組幹部衆、黒衣衆はウィルスを投与されたコカの案内の元、彼女の父親であるラッグの居城付近まで接近していた。

 その居城から少し離れた高所の上より、双眼鏡でラッグの居城前を念入りに観察する聖龍隊総長バーンズに参謀長ジュニア。

 双眼鏡から見た居城は、その門前にジープや防壁など強固な防衛戦前が敷かれては突入するのが困難に見えていた。

「……ただの置物とは思えねえな」

「うん、完全に僕らを待ち受けているって感じだね」

 門前の警備体制に険しい顔色で見据えるバーンズとキッド。

 すると其処へ赤塚組の頭領、大将が歩み寄っては二人に声を掛けに来た。

「バーンズ、ジュニア」

 大将に呼び出され、二人が茂みの中へと歩むと其処には他の聖龍HEADに赤塚組幹部衆そして黒衣衆が軒を連ねて一同に集っていた。

 そんな集会の中で大将はバーンズたちHEADに険しい面持ちで問い詰めた。

「手遅れになる前に、あの子をどうにかするべきだ」

 大将が言うあの子とは、他でもないウィルス感染者のコカの事だった。

「あの子が俺たちの脅威になるのは時間の問題だ」

 大将に続き、他の幹部衆の面々も親しい間柄のHEADメンバーに口々に言う。

「そうね、もしあの子の変異が戦闘中にでも起きてしまったら、私達が板挟みにされ兼ねないし」

「あの子……コカには可哀そうだけど、しばらく距離を保つぐらいの事はしておいた方が……」

「俺も皆の意見に賛成だ。コカの変異が、いつ何時起きるか、まるで見当が付かないんだ。彼女自身が危険な存在には変わりないしな……」

 幹部衆のミズキ/アツシ/テツが険しい顔色で告げると、他の幹部衆も語り始めた。

「確かにウィルスに感染してるから、何とか助けたいとは思うんだけど……」

「いつ、そのウィルスの影響で怪物に変異するか解らないと言うのに……」

「いつ爆発するか解らない爆弾を抱えている様なモノよ」

「俺らも同意見です」

「そう、自ずと自分等の戦況を不利にしていく様なもんでヤンスよ」

 海野なる、ぐりお夫妻/水原花林/ギョロ/ゴマらも感染者のコカと行動を共にするのを躊躇うばかり。

 するとバーンズは大将たち赤塚組に説く。

「ラッグは彼女が変異するのを防ぐ術を知っている筈だ。彼女を連れて行って、それを突き止めたい」

 バーンズは肝心のコカがウィルスの影響で苦しむ様を遠目で見詰めながら赤塚組の面々に説いていく。

 更にバーンズは大将に自分が携帯していた小型機器を差し出しては、その画面を彼に見せた。

「D-異常事態対抗兵器シークレットナンバーXXXX……お前達は国連から特命を?」

 画面に表示されていたのは、国際連合より聖龍HEADに与えられた特命の内容文であった。それはD-ワクチンなどに関する脅威に対して聖龍HEADが直々の特命を受けては、Dに関する問題を解決していくという内容であった。

「修司から生み出されたD-ウィルスを根絶するのがオレ達に与えられた特命であり……そしてオレ達自身の使命なんだ。お前達にも、ぜひ協力してほしい」

 バーンズからの真からの頼みを聞いて、大将達は半ば顔を背けつつもバーンズ達に答えた。

「俺達はセブンズ・ガード。国連や政府の命を時には受けて生計を立てている……そんな俺達が、国連直属の任に就いている連中には逆らえないな」

 自分たち赤塚組こと国連傘下の非合法組織セブンズ・ガードに、国連から直々の命を受けている聖龍隊には逆らえないと豪語する大将。

 そんな大将達の会話を聞いて、腰を下ろしていた黒衣衆の面々も腰を上げてはバーンズ達HEADと大将たち幹部衆に言葉を掛けた。

「ふふふふふ……ようやく進攻をお決めになられましたかな、皆さん」

「ッ、てめェら……」

 不敵で怪しげな微笑みで言葉を掛けてきた黒衣衆の白蓮坊に大将が口元を歪ませつつも彼らに顔を向ける。すると白蓮坊に続き他の黒衣衆の面々も語り始める。

「クックックック……やっと決めやがったか。遅いったら、ありゃしねえぜ」

「そうよね、攻めるなら早々と攻めて、早く事を済ませちゃいましょうよ……フフフ」

 不気味に小笑いする黒蓮坊に損尼、すると不気味に微笑を浮かべながら見据えてくる黒衣衆にミュウザクロが問い詰めた。

「……あなた達はこれからどうするつもり? 未だに私達と行動を共にしているけど……」

 ミュウザクロの質問に欲尼が答え返した。

「なに私達は、あのコカって子の事よりも、彼女の父親であるラッグの許に身を寄せたかつての同胞について知りたいだけなのよ。別に国連からの特命とか、ウィルスに感染した少女の安否とか全く気にしてないから」

 不気味な面構えで平然と答える欲尼は怪しく微笑すると、彼女に続いて他の黒衣衆も連なる様に小刻みに怪しげな微笑を発するのだった。

 そんな奇怪かつ不敵な存在の黒衣衆に警戒の念を抱き続ける幹部衆は、再び聖龍HEADと顔を合わせると表情を穏やかに変える。

(そう、俺達も所詮はただの駒……お上の命には逆らえない逆賊だ……)

 内心、自分等の存在に対して想う大将はバーンズに手を差し伸べると、彼と熱い拍手を交わした。

「行こう、ぶちのめしてやろうぜ」

 こうして、聖龍HEADと赤塚組幹部衆、そして黒衣衆はラッグの居住に攻め入るのであった。

 全ては、ラッグと接触したと思われる元革命軍士の研究員、そしてD-ウィルスを打たれたコカがなぜ怪物に変異しないのかを探る為、そして何よりラッグが関与していると思われる新世代型の失踪について全てを調査する為に。

 

 

 一行はラッグの門前まで忍び足で歩み寄っていく。門の周辺は軍用トラックや砂袋による防御壁、更には物資運搬用のコンテナなどが多数確認でき、脇には監視塔が立っている、まさに要塞の如き構えであった。

「セキュリティは完璧だな」「とんでもない門構えだ」

 先頭を歩み寄るバーンズと大将は、門の周辺に配置されているトラックや防御壁を見て攻防戦前に懸念を抱く。

 するとその時、何処かに設置されている監視カメラから自分たちの存在を気付いたのか、辺りにスピーカーからの声が響き渡る。その声は居住の主であり、コカの父である麻薬王ラッグの声であった。

「お帰り、コカ。日本人達よ、娘を送り届けてくれた事に礼を言おう」

 ラッグがスピーカー越しに話しかけてくる最中、周辺の至る所から無数のゾンビ兵が出現してきた

「お前達、日本人達を抹殺し、コカを私の所へ連れてくるのだ」

 主のラッグの命を聞き、ゾンビ兵達はバーンズ達に迫りくる。

「あんなに大勢!」

 多数のゾンビ兵が目の前に群がってくるのを目の当たりにしたコカが悲鳴を上げる中、HEADと幹部衆さらには黒衣衆が戦闘を開始した。

「行くぞ、HEAD! ゾンビ共を蹴散らしてやれッ!」

 バーンズの指示を皮切りに、HEADは眼前に迫りくるゾンビ兵達に攻撃を仕掛けていく。

(ラッグ、お前はこんなジャングルの奥で何を企んでいやがるんだ?)

 大将も、東南アジアの密林奥地で潜むラッグの企みに関して懸念しつつも、駆け寄ってくるゾンビ兵に果敢に発砲していく。

「構えろ!」

 更に大将は、自分の仲間である幹部衆に指示を告げつつ、全員で迫り来るゾンビ兵に狙撃して行った。

「まだまだ行くぜッ、てめぇら! 此処が正念場だ、有りっ丈の弾丸をぶち込んでやれ!」

「OーーKです、大将!」

「こんな雑魚ども、さっさと片付けちまいやしょうぜッ!」

 大将の声掛けに、景気良く銃弾を連射しながらギョロとゴマが返答する。

「こうなったら俺達も惜しみなく砲弾ぶちかましてやるッ! アケミ、もっと砲弾寄越せッ」

「生憎、こっちも手当たりしだい砲撃してるから寄越すほどの弾は無いわっ」

 テツ/ふゆみ夫妻はロケットランチャーなどの大型の砲撃火器で周囲のゾンビ兵を片っ端から排除していく。

 だが、門前の周辺に停車しているジープや設置されているコンテナから続々とゾンビ兵が飛び出してはHEADと幹部衆オマケに黒衣衆にまでも襲い掛かってくる。

「ラッグの軍隊か」「聖なる蛇たちだ」

 飛び出してくる上半身裸体な上、継ぎ接ぎだらかの背中に蛇の刺青を彫っているゾンビ兵を視認しつつ果敢に反撃していくバーンズと大将。

 すると一行の前方、その防御壁から爆発物を抱え込んだゾンビ兵が、抱えている爆弾を一行に向けて投射してきた。

「どうなってるんだ!?」「爆弾を抱えてる!」

「爆弾を狙え! 上手く使うんだ」

 困惑する一行に、キング・エンディミオンが指示を告げながらもゾンビ兵が抱えている爆弾目掛けて拳銃を発砲した。爆弾に銃弾が着弾した途端、爆弾は大爆発を起こし身に着けていたゾンビ兵もその周囲のゾンビ兵も巻き込んでは一掃してしまう。

「ノドジロルリインコの羽ばたき……その力、喰らいなさい!」

 自身の武器である弓を引き、ゾンビ兵の軍勢に強烈な光の矢を放ち消し飛ばすミュウミント。

 だが、そんな戦況を目の当たりにしつつ大将は群がるゾンビ兵に応戦しつつも懸念を募らせていくばかりであった。

(化け物たちに、ウィルスに感染した娘……いくら多額の報酬を出すって言われても、もうやりたくもない仕事だぜ)

 ゾンビ兵の群れを避けるよう、その場を回避しながら安全な進入路を探す一行。だがゾンビ兵は至る所から這いずる様に出現する。

 群がるゾンビ兵に動じず攻撃していく一行、だがそんな一同の前にゾンビ兵に続き今度は二足歩行の巨大蛙型B.O.Wも出現してきた。

「カエルも来たぞ!」

 堂本海斗が目の前に出現したカエルに躊躇する事無く発砲し撃退しながら周囲の皆にも新たな敵の出現を知らせる。そんな中、マーメイドメロディーズの面々は癒しと希望の合唱を歌いながら同時に大量の水を操っては巨大な波を発生させ、その大波でゾンビ兵を一網打尽に撃退していく。

「きゃっ」「コカは下がってて……大丈夫、必ず守るわ」

 群がってくるゾンビ兵などのB.O.Wに怖がるコカを、セーラーマーキュリーは身を挺して庇いながらも加護してあげた。

「おらおらおらッ、どうだカカって来やがれッ!」

 迫りくるゾンビ兵の群集に大将は二丁拳銃ならぬ二丁マシンガンで眼前に迫るゾンビ兵を激烈に撃退していく。

 だがゾンビ兵の数は一行に減る気配が無く、それどころかコンテナやジープの荷台から続々とゾンビ兵が無尽蔵に出現してくる。

「また来た!」「怯むな! 応戦しろッ」

 倒しても倒しても出現してくるゾンビ兵に冷や汗を流しながらもアツシは山崎貴史やその他の同胞に応戦していくよう呼び掛けていく。

 しかし至る所から出現してくるゾンビ兵に一行は次第に追い詰められていく。

「逃げろ!」

 次第に逃げ道を阻まれてゆく一行に、バーンズはその場から逃げ切るよう指示を告げる。その指示にガトリング砲を砲撃していたガトリンガーや自身の得物を巧みに扱って応戦していた黒衣衆の面々も大人しく従った。

(全部ウィルスの仕業なのか? 狂ってやがる!)

 自分達の前に姿を見せ襲いくる数多のB.O.Wという脅威に対し、大将はその全てがウィルスだけによる猛威である事に正気の沙汰ではないと感じ始めてた。

「手厚い歓迎だな」「やめてほしいぜ」

 真空刃や刃物に変形させた両腕で攻撃を展開していくメタルバードに変身したバーンズの言葉に、ショットガンを豪快に撃ち続ける大将が口元を歪ませて返事する。

 そんな戦況の最中、一行は止む事の無いゾンビ兵の出現に眉間のしわを寄せては困惑していた。

「クソッ、キリがない!」

「このままじゃ屋敷に辿りつけねえぞ」

 皆が口々に言う中、突然コカが皆を先導する様に言い放った。

「みんな、こっち! この先にお屋敷に通じてる地下通路があった筈」

 コカの視線の先、そこにはコンクリートで周りを囲んだ鉄の扉が在った。一同はコカの告げた地下通路目指して一気に駆け出した。

 だが鉄の扉に近づいた途端、その扉からもゾンビ兵が出現しては一行に襲い掛かった。

「はァッ!」

 しかし一瞬の内に黒衣衆の損尼が双小刀を巧みに使い回してはゾンビ兵の首元を掻っ切って見せた。

 バタバタと倒れるゾンビ兵を確認した一行は、後方から出現しては迫ってくるゾンビ兵を相手にせず一目散に地下通路への入り口に飛び込んでは扉を閉める。

 

 

 

 

[暗闇の地下通路]

 

 鉄の扉を抜けると、そこには地下へ続く階段があり一行は一歩ずつ踏み締めながら下へと下りていく。

 階段を下りると其処には長方形の出入り口が暗闇の中で口を開けて待っていた。一行は警戒しながらも、その出入り口の奥へと足を進ませる。

「暗いな」

 出入り口を進んだ先の通路を進みながら、大将は光なき通路を包む暗闇に呟く。

 暗闇の中を突き進む一行、だがその通路の脇には三つの鉄格子が嵌められ、その鉄格子の中には無数のゾンビ兵が閉じ込められていた。

「ここは何なんだ? B.O.W小屋か?」「らしいな」

 無数のゾンビ兵が鉄格子を掴みつつ唸り声を発している様子を見て口を開く大将にメタルバードが受け返す。

「ね、ねぇ……ここ、走り抜けた方が良いんじゃない?」

「さ、賛成……」

 今にも鉄格子を打ち抜けて襲い掛かってきそうなゾンビ兵を見て怖気るセーラームーンにヴィーナス。

 と、その時「あっ!」一行が通過した入り口に鉄格子が降りてきては退路を塞がれてしまい、思わずコカが声を上げた。

 更に一行の前方も突如として上から壁が降りてきては行く手を塞いでしまい逃げ道を奪われてしまう一行。

「閉じ込められた!」

 暗闇の中を前後とも退路を絶たれて閉じ込められた大将たち一行は激しく戸惑った。

 更に一同が閉じ込められて間もなく、ゾンビ兵を閉じ込めていた鉄格子が上がっては、内部のゾンビ兵が一斉に通路へと解き放たれたのだった。

(クソ、ここでウィルスを投与して普通の兵士をゾンビにしていやがったんだな)

 暗闇の中、迫りくるゾンビ兵に応戦しながら大将は一人思いに耽る。己の目に映る尋常でない人智を超えた脅威に。

 真っ暗闇の中、鳴り響く銃声、飛び散る血沫、喰らい付くゾンビ兵の群れに悪戦苦闘する一行。そんな先も見えない戦況の中でもガトリンガーや幹部衆そしてHEADは眼前に迫るゾンビ兵に一斉砲撃を放っていく。

 

 ようやく全てのゾンビ兵を倒しきった一行、だが彼らが閉じ込められた状況だけは変わらない。

 と、そんな時、コカが一人暗闇の中を壁伝いに歩きながら壁を手探りで確かめていく。

「待ってて、どこかに隠し通路があったはず……」

 そしてコカは壁にある蛇の紋章のプレートに気付き、そのプレートを押してみた。するとプレートが張られた壁が窪むと同時に開平し、先へと進める通路が出現した。

「よし、出られそうだ」

 出現した通路への入り口に海野ぐりおが一声発する。

「お手柄だぞ、コカ。よし行くぞ」

 大将の一声を合図に一行がそのまま隠し通路へと進入しようとすると、通路の内部を見てコカが「ハッ!」と驚いた。

 なんと通路の壁や廊下が網目状の赤い膜で一面覆われていたのだった。しかも膜で被われた壁には多数の人骨が埋もれていたのだ。

「何だ?」「ラッグの犠牲者たちだろう」

 壁に埋もれた人骨を見て、メタルバードと大将が言う。

「どうして……」

 父であるラッグの仕業に悲痛な顔で困惑するコカ。

「行こう、ラッグを探すんだ」

 と、壁に埋もれる人骨に足を止めている一同にジュピターキッドが話し掛ける。

 だが、その行く手は右と左の道と分かれていた。

「道が分かれてる」「どっち行くんだ?」

 ミラーガールと大将が問い掛ける中、メタルバードが進む道を選択した。

「こっちに行くぞ」

 そう言ってメタルバードは皆を引き連れて、右側の道へと進行していく。

 一同が進行する通路、その壁には未だに無数の人骨が埋もれ、より一層不気味さを感じさせた。

(人骨だらけじゃねえか。ラッグの奴は一体、何を?)

 足を進ませるにつれてラッグの真意を疑念していく大将、だが彼らには最早戻るという選択肢は無かった。

 懐中電灯を照らし、一寸先の闇を進んでいく一行。すると彼らの行く手に二体の巨大な昆虫型B.O.Wが闇の中から現れた。

「きゃあっ!」

 虫の苦手な女性キャラが思わず叫ぶ中、大将やその他の男性陣は足元まで近寄ってきた巨大な虫に容赦なくショットガンやら威力抜群の火器を放射していく。

「やっ、やけにでけぇカマドウマだな、オイ」

 撃退する巨大な虫の容姿から自己解釈でカマドウマと口に出す大将、そんなカマドウマに酷似した巨大虫は強固な装甲なのか弾丸が余り効かず、ようやくジュピターやマーズの様な特殊エネルギーによる攻撃で仕留める事ができた。

 巨大カマドウマを撃退し再び歩を進ませる一行、だが今度は暗闇の中からゾンビ兵が走ってきては喰らい付こうとしてきた。

 低い唸り声を発しながら迫るゾンビ兵に、真紅が拳を浴びせて怯ませては、その隙を突いてウラヌスが短刀でゾンビの首を切断していく。そのウラヌスに続いて、ミュウミントも光の矢をゾンビ兵に放っては攻撃していく。

 

 そんな戦闘を続けていた一行の前に、先ほどと同じ蛇の紋章が彫られたプレートが貼り付けられている壁が目の前に立ち塞がった。その壁に近づくと、センサーが反応したのか壁は自動的に開平しては先に進めるようになった。

 隠し扉を抜けると、そこは先ほどとは別の長い地下通路にゾンビ兵を入れて置く為なのか牢屋が三つあった。しかも一つの牢屋の鉄格子は派手に折れ曲がっていた。

 先ほどと同じ暗闇に包まれる通路を見渡しながら、大将は一緒に行動している感染者のコカに対して再び警戒の念を抱き始めていた。

(頼むから、この暗闇でモンスターなんかにならないでくれよな……)

 東南アジアの密林奥地に侵入してから幾度と無く遭遇してきた異形の存在たちに只ならぬ恐怖感を抱き始めてた大将は、口に出してはいないモノのウィルス感染者であるコカに危機感を募らせていた。

 と、大将や他の皆が周囲を見渡しているその時、鉄格子が激しく折れ曲がっている牢屋から無数のゾンビ兵が無数に飛び出してきては一行を襲い掛かってきた。

 牢屋の奥から続々と眼前に群がるゾンビ兵に攻撃を仕掛けていく一行。炎や水、電撃や氷だけにあらず衝撃波など多彩な能力でゾンビ兵を次々に薙ぎ倒して行く。

 灼熱の炎によって焼き尽くされる腐敗した肉の腐臭、それと同じく雷の力で焼け焦げるゾンビ兵の臭いが時おり鼻にツンと来ては顔を歪ませる女性たち。

 そして最後のゾンビ兵を幹部衆の市川一太郎がグレネードランチャーで一掃した次の瞬間、彼らの前方に見えていた出口に突然鉄格子が降下しては閉ざされてしまった。

「またか!」

 先ほどと同じく閉じ込められる状況に追い込まれ掛け、大将が厳つい顔をしかめる。

 と、その時、今度は後方の通路を壁が降りてきては塞ごうとした瞬間、すかさずメタルバードが下降する壁と床の間に身を入れては鋼鉄の体で必死の支えと身を投じる。

「は、早く潜れ!」

 必死の形相で皆に言うメタルバードの言葉を聞き付け、一同は素早く壁と床の隙間を潜り抜けていく。

「早く早くッ」

 壁の向こう側に逸早く潜った秋夏子や山崎千春等の面々は、潜り抜けようとする者の手を掴み素早く引っ張り上げては助勢する。

 そして全員が潜り抜けたのを確認したメタルバードは体を軟体化させ壁のつっかえから抜けると同時に元の体形へと変化させた。

「間一髪だったな」「ああ、全くだ」

 辛うじて全員が窮地を脱した事に安堵する幹部衆のテツとキング・エンディミオン。するとその時、一息入れていた七海るちあが進路方向先にある物に気付いて指差した。

「見て、はしごよ」

 潜り抜けた先には、行き止まりの壁の側面に鉄梯子が設置されていた。一行は、その梯子を上り先へと進んでいった。

 

 

 

 

[豪邸内の攻防]

 

 梯子を上りきると、其処は広い中庭が目に付く豪邸の中であった。そう、目的のラッグの居住である豪邸内にようやく進入する事ができたのだった。

 豪邸を進もうとした矢先、一行の前に白衣を身に着けた三人の死体が転がっていた。だが、その白衣の死体を目にしたコカは激しく動揺し、大将が彼女に問い掛ける。

「あれは誰だ? 知ってるのか」

 するとコカは悲痛な面持ちと口調で答え返した。

「あの人たちは、私の主治医のお医者様だったの……なぜ私の病気が治ったのか聞き出したせいで……お父様の仕業だわ……」

 悲観するコカに、ジュピターキッドが優しく話し掛ける。

「そう自分を責めないで……」

 キッドがコカを手厚く慰めている最中、大将や赤塚組幹部衆の面々はラッグの行いに関して背筋を震え上がらせていた。

(ラッグは蘇生薬として、ウィルスを研究していたってのか)

(彼らは口封じで処刑されたんだ)

 不治の病の治療薬として、死者を生き返らせる蘇生薬として、ウィルスを研究していたラッグはその事実を知った医者達までも口封じに殺された事を大将やテツたち幹部衆は悟った。

 

 そして一行は中庭の側らの通路を通っては先へと進行していく。が、その時どこからともなく「キュルル」という聞き慣れた奇声が皆の耳に入った。

「今のは何?」

 コカが声を上げる中、一同は辺りを見渡し警戒を募らせる。

 と、次の瞬間、一行が進んできた道の後方から声の主である細身の鋭い爪を持つ尖った頭部のB.O.Wが出現しては近寄ってきた。

 しかし、細身のB.O.Wが姿を見せた途端、真紅がその尖った頭部目掛けて強烈な拳を一発当ててはB.O.Wを吹き飛ばしてしまう。だが吹き飛ばされたB.O.Wは起き上がり、再び一行に駆け寄っては鋭い爪で攻撃しようと仕掛けてきた。が、そんなB.O.Wにミュウミントが大気の力を凝縮した光の矢を放っては、それがB.O.Wに直撃、強烈な風が発生しては吹っ飛ばしてしまった。

 ミュウミントの攻撃でやっと一体突破できたのも束の間、今度は二体目が豪邸の屋根から飛び降りて来ては中庭に姿を現した。

「気をつけろ!」

 蒼の騎士が叫ぶ中、今度は立て続けに三体目が彼らの行く手に姿を現し、一行を困惑させる。

 一行はどうにか場を整える為に、上手く中庭を通過しては立ち位置を変えて反撃の糸口を掴もうとする。しかし中庭を通過した途端、その先の通路の奥から蛇の刺青を彫ったゾンビ兵が駆け寄ってきた。

「う、うわっ……!」

 突然目の前まで迫ってきたゾンビ兵に驚く海野ぐりおは、咄嗟に所持していたグレネードランチャーでゾンビ兵に反撃していった。

 すると反対側からも先ほど出現した二体のB.O.Wが迫り来ては、近場にいたセーラープルートやネプチューンに引っ掻き攻撃を仕掛けていった。

「ぐ……っ」「ッ……」

 B.O.Wの鋭い爪による攻撃は地味であったが確実に痛みを与え、二人に痛感を覚えさせる。

 そんな二人を襲ったB.O.Wに、龍咲海の水技が放たれた。

 海の攻撃を受けた二体のB.O.Wは水浸しの床の上で完全に動かなくなっていた。

「ラッグは何処にいるんだ?」

 広い豪邸内を見渡しながら、邸内の何処かに潜伏しているラッグの居所を探す大将の言葉に、邸宅に住んでいたラッグの娘コカが皆に語った。

「この先に、立ち入り禁止の場所があるわ」「案内してくれ」

 コカの言葉にメタルバードが問い掛けると、コカは素直に道案内をした。彼女の案内の元、一行は邸内の扉の先へと進入していった。

 

 コカに導かれるまま一行が扉を抜けると、そこは辺り一帯が熱帯植物で埋もれているドーム型の温室であった。

「何だここは?」

 眼前に広がる植物の空間を見て大将が言うと、コカがそれに答えた。

「温室よ」「温室というよりは……植物園だな」

 自分達の周囲に広がる植物ばかりの景観にメタルバードは温室よりも植物園に近い印象を受ける。

 その時、温室の中央に聳える巨大な植物に大将が目を奪われた。

「あの真ん中のは何だ?」

 異様なまでに巨大な上に見た事もない異質なその植物に皆が目を奪われている、その時。ダムで遭遇した五本の鎌状の腕を持つ巨体なB.O.Wが温室の階段テラスの上から一行を見下ろしていた。

「また、あいつだ!」

 ダムでも一戦交えた巨体のB.O.Wに気付く大将たち、そしてそのB.O.Wはテラス通路から一行の前へと着地しては立ち塞がった。

 一行は巨体B.O.Wに果敢に攻撃を仕掛けては、次第にB.O.Wを退かせていった。

 B.O.Wを後退させつつ攻撃していく一行、一方のB.O.Wは二本の鎌状の腕で防御しながらも前進する。

 だが、ようやくB.O.Wは力尽きては前のめりで倒れ込んだ。

「よし、行きましょう」

 B.O.Wが絶命したのを確認した鳳凰寺風が皆に言葉を掛けた、その時。

「おい、黒衣衆」「はい、何でしょう?」

 大将が前触れも無く黒衣衆に声を掛ける、それに白蓮坊が受け答えすると大将は真顔で彼らに言った。

「確かお前さん達は……元革命軍士の研究員を尋ねるために、ラッグと接触したいんだよな」

「ああ、そうだが」

「昔の同胞を尋ねての自分探しの旅路じゃよ」

「それが何か?」

 大将からの問い掛けに真顔で答え返す黒蓮坊/大闇/損尼に、大将は親指で指しながら言った。

「そんじゃ、お前さん達とは此処でお別れだな」

 そういう大将が親指で指差す方に皆が目を向けると、そこには生い茂った草木の中に埋もれている一体の遺体が転がっていた。その遺体を目にしたメタルバードは思わず声を上げた。

「ッ! みんな見ろ、こいつは確か黒衣衆が探していた元革命軍士の研究者だ」

 同胞のHEADに呼び掛けるメタルバード、実は前もって黒衣衆より彼らが追っていた元革命軍士の研究者の写真を拝見させてもらっては顔を覚えていたのだった。そして、その研究者が今みなの目の前に遺体として捨てられていた。

「用済みって訳か」

 幹部衆のテツは研究者の遺体を見て、ラッグによって用済みとして殺されたのだと確信する。

 そして一行は再び足を進ませようとするが、その前に大将が探していた研究者と遺体とはいえ遭遇できた黒衣衆に問い掛けた。

「おい、お前達はいつまで俺らに付いてくるんだ。もう探していた元同胞の死体は確認しただろ」

 すると大将からの仏頂面の問い掛けに大闇行蘭が真面目に答え返した。

「なになに、わらわ達も此処まで来れば退き戻るなんぞ無粋な真似はできぬわ。ほれ、良く言うじゃろ……旅は道連れ、とな。細かい事は言わず、わらわ達も引き続き同行させておくれや」

「………………」

 不気味で怪しげな大闇たち黒衣衆の返答に仏頂面で何も言い返せない大将たち幹部衆。これにHEADと幹部衆は仕方なく彼らの同行に何も言わず、そのまま先を進む事となった。

 そして一行が進もうとすると、眼前は植物で埋もれた光景ばかりで先に進むには鉄網の上り通路を進むしか手段が無かった。

「上っていくしかないな」

 大将がそう呟きながら一行が階段を上り、温室の周囲上部に伝ってる通路を進んでいく中、大将はふと先ほどの元革命軍士の研究者の末路について思い更けていた。

(用が済めば捨てられる……生き残る為には、より強くなるしかない。修司、お前の気持ちがやっと分かった気がするぜ)

 この世で生き残りたければ、結局は強さしか手段がない。その事実を噛み締めながら大将は、かつての旧友であり先代聖龍隊総長 小田原修司への真情に少しばかりの理解を得た。

 階段を上がり、テラス通路を渡って温室を抜けようと進行する一行。そんな中、大将は温室の中央に聳え立つ巨大な植物を目にしながら再び思い耽る。

(まさか、ウィルスで巨大化させたのか? どんな実験をしてやがったんだ……)

 と、大将が一人物思いに耽っているその最中、一行の前に蛙型のB.O.Wが何処からとも無く飛び出てきては襲い掛かってきた。

 先頭に居たメタルバードがこれに対し咄嗟の砲撃、砲身に変形させた右腕から電撃の弾を発射しては蛙型のB.O.Wを撃退して見せた。

 だが、温室の彼方此方からその蛙型B.O.Wの鳴き声が聞こえてきては、今度は後方に出現した。

 後方に回っていたテツとふゆみ夫妻が機関銃で蛙型B.O.Wを迎え撃ち、無数の弾丸を浴びたB.O.Wは即座に倒れては動かなくなった。

 そして再び一行が歩を進めてた、その時「上よ!」とコカが咄嗟に上を指差しては声を上げた。皆が顔を上向かせると、真上から例の五本鎌の巨体B.O.Wが降って来た。

 巨体B.O.Wがテラス通路に落下した衝撃と重みで、通路は大破。一行は辛うじて通路が大破する前に全員渡りきっては難を逃れた。

 しかし上空から落下してきた巨体B.O.Wは、驚異的な跳躍力で跳び上がってきては一行の前に立ち塞がる。

 一同はこれに一定の距離を置く為、一旦はその場を駆け出し少し離れた場所まで移動すると巨体B.O.Wに向けて攻撃を開始した。

 皆の攻撃を受けて、B.O.Wは後退しつつ怯みながらも最後は前のめりに倒れては先頭不能と化す。

「急いで此処を抜けるぞ!」

 皆の先頭に立っているメタルバードが、皆に一刻も早い温室の突破を指示ずると彼らは一斉に駆け足で通路の末端の階段を駆け下りる。だが階段を下りてすぐ、一行の前にダムでも見かけた植物型のB.O.Wが二体、一行にジワリジワリと迫ってきてた。

「久しぶりだな、植物人間」

 そう言いながら大将は植物型B.O.Wにグレネードランチャーを放っては応戦し、更に大将に続いてマーズ/獅堂光の炎属性コンビが植物型B.O.Wに火炎攻撃を放った。二体の植物B.O.Wは瞬く間に焼け焦げてはその場に倒れるのだった。

 そして一行は再びコカを引き連れて、温室の中を進んでいく。するとようやく彼らの前に温室から抜け出られる扉が視界に入った。

 だがそんな時、温室内の溜池から蛙型のB.O.Wが二体続けて飛び出てきては一行を襲う。

「来たぞ!」

 メタルバードが皆に告げると同時に右腕の砲身を構えて迎撃に備えると、彼と同じく迎撃に備えてセーラージュピターが技を放つ体勢に入った。そして二人同時に強烈な電撃を放っては蛙型B.O.Wを撃退する。

 そして再び一行が扉の方へと振り返ると、なんと扉付近に点々と転がっていた兵士の死体が動き出し、一行に迫ってきた。更に立て続けに今度は上から巨体な五本鎌のB.O.Wが落下しては着地し、周囲のゾンビ兵を巨大な鎌で薙ぎ倒しながら一行へと迫り寄ってきた。

「オラッ、かかって来いや!」

 そういきり立ちながら幹部衆のアツシが小型のロケットランチャーを構えては、ミサイルを巨体B.O.Wに向けて発射した。

 アツシの発射したミサイルに直撃したB.O.Wは断末魔を上げながら前のめりに倒れこむ。しかもその他のゾンビ兵のほとんどが、その巨体B.O.Wの鎌によって倒され、残りは他のHEADや幹部衆たちが応戦して片が付いた。

 

 そして一行は数々の難敵を倒しつつも、ようやく温室を抜ける扉へと辿り着く事ができた。

 

 

 

 

[力の制御と移植されし命]

 

 扉を抜けると、そこは一風変わって殺風景なコンクリの壁に被われた何の変哲も無い通路だった。

「コカ、大丈夫か?」「ええ」

 エンディミオンがウィルス感染者のコカの容態を気にしつつも、一行は殺風景な通路を進んでいく。

 通路を進んでいくと、その先にエレベーターがあった。一行はエレベーターに搭乗すると、エレベーターは下へと下降していった。

 エレベーターに登場してる中、幹部衆の面々は次第に近づきつつあるラッグへの関心で頭を一杯にしていた。

(もうすぐ真相に辿り着くわね。ラッグ、まさか貴方と同じものに私も興味を抱くなんて……)

(みんなが、あなたとウィルスを恐れてる……)

(何が世界政府をも恐れさせるんだ?)

 狭い密集したエレベーターの中で、内心ラッグと彼が所持しているウィルスへの思考を募らせるミズキ/秋夏子/そして彼らの頭領である大将。

 そしてエレベーターが停止し、皆がエレベーターから出ると曲がり角の通路の角奥から二体のゾンビ兵が静かに歩み寄っては一行に迫る。これにセーラーヴィーナスとウォーターフェアリーが即座に反応し、ヴィーナスは光の鎖で、フェアリーは巨大な水の手裏剣で歩み寄ってくるゾンビ兵を撃退した。

 だが、その時「うわ!」ヴィーナスの放った光の鎖がゾンビ兵の腰に携帯されてたポーチに直撃した途端、それが爆発し一同は思わず怯んでしまう。おそらくポーチの中に火薬などの引火物が入っていたのだろう。

 何はともあれ、ゾンビ兵を撃退した一行はそのまま通路を突き進み、その眼前に現れた鉄の扉を開いて内部へと進入する。

 

 鉄の扉を抜けると、そこは貨物倉庫の様な殺風景で広い空間であった。そこにはフォークリフトを始め、一角には様々な木箱や荷物が棚に並んでいた。

「ここは一体……」「殺風景な場所だな」

 広い空間を見渡しながらラッグの姿と敵の気配を探るメタルバードや大将、そしてHEADに幹部衆と黒衣衆。すると彼らの真上、その運搬用クレーンが設置されている鉄骨の上を細身のB.O.Wが移動しているのが皆の目に入った。

「気をつけろ!」

 上方の敵を見上げながら一同に気を付けるよう言い渡す大将。

 そして一行は上の敵に気を付けつつ、木箱や財物が並んだ棚と棚の間を一気に通り抜けようとした。だが、そんな一行の前に突如としてゾンビ兵が出現し向かってきては噛み付こうとしてきた。向かってくるゾンビ兵に一斉攻撃を放ち、瞬く間に撃退する一同。しかし、そんな地上での騒ぎを聞き付けてか上方のB.O.Wが皆のスグ上へと姿を見せた。

「上に!」

 コカが上を指差しながら叫ぶと、上方のB.O.Wは地上へと飛び降りてきた。が、着地した瞬間にセーラージュピターの電撃を喰らって派手に吹き飛ばされる。だがその間も他のB.O.Wが駆け寄ってきては地上の面々を狙って来た。

 棚と棚の間のような狭い場所での戦闘を避けるため、一行は即座に移動しつつ広い場へと足を止める。そんな一同の許にB.O.Wは続々と駆け寄っては襲い掛かってきた。

「遊んで欲しいのかい?」

 余裕を感じさせる笑みを浮かべながら大将がショットガンをB.O.Wに向けて豪快に連射する。そんな大将に続いて他の皆々も周囲に寄ってくるB.O.Wを蹴散らしていった。

 攻撃を喰らって派手に吹き飛び、そして動かなくなるB.O.Wが辺りに点々と転がる。

 そして全ての敵を倒し切り辺りに静寂が漂う中、赤塚組が倉庫の奥に在った空間に気付いた。

「あれは何だ?」

 視線の先、そこには薄いビニールカーテンが張られた小部屋が確認できた。

「イヤな予感がする」

 ビニールカーテンの奥に薄っすらと見える薬品棚や手術台を見て、メタルバードは何やら不吉な予感を抱いた。

 

 一行がカーテンの向こうへと足を運ばせると、そこには一台の手術台と様々な薬品そしてガラスの容器がズラリと配列された棚が多数目に付いた。

「ここは……」

 倉庫の奥に存在していた空間、そこに不自然に置かれていた手術台に手を置きながらこの場所に言い様のない疑惑を募らせるナースエンジェル。

 更にHEADの一人であるコレクターユイが棚に並んでいるガラス容器に目を向けると、殺伐とした表情で口を開いた。

「全部、人間の臓器よ……」

 なんとガラス容器に入っていたのは、様々な人間の臓器だった。

 手術台、そしてその周囲の棚に陳列されている人間の臓器が納められたガラス容器に皆が目を奪われる。そんな中、ミュウプリンが手術台のスグ手前に掛けられた帯状のビニールカーテンに気付き、そっとそのカーテンをめくっては奥を覗いた。が、その瞬間「うわあっ!」ミュウプリンは驚愕し腰を抜かしてしまった。

「プリン?」

 思わず腰を抜かして地べたに座り込むミュウプリンに声を掛けるメタルバード。だがミュウプリンは酷く血の気が引いた蒼褪めた表情でカーテンの向こう側を震える人差し指で指した。

 只ならぬミュウプリンの様子にメタルバードは警戒しつつも彼女が指差すビニールカーテンに近づき、そしてカーテンをめくってみた。カーテンの向こう側にあったモノを見たメタルバード、そして他の面々は異常に驚愕した。

 カーテンの向こうにあったのは。ビニール製の袋に詰められた無数の少女達の死体であった。しかもメタルバード達はその少女達の顔を見て更に驚いた。なぜなら、袋詰めの少女達は彼らが最初に足を運んだ村に貼られてた失踪した少女たちのポスターその顔写真の顔であったからだ。

「失踪してた少女たち……」

 忽然と失踪していた年端も行かない少女たち、彼女達の無残な姿を目の当たりにして呆然と言葉を失ってしまう一同。

 その時、ウィルス感染者のコカが突然苦しみだした。

「うゥ、うあ……っ!」「コカ!」

 苦しみだし膝を着いてしまうコカに急ぎ駆け寄るメタルバードと彼女の急変に同じく駆け寄るナースエンジェルとセーラーマーキュリー。

 もがき苦しみ出してしまうコカに寄り添う面々、だがその時である。

「臓器を取り替え続ける……それ以外に手立てはないのだ」

 と語らいながら皆の目の前に姿を現したのは、HEADと幹部衆が追っている麻薬王であり同時にコカの父であるラッグ・ドウェルであった。

「何だと?」

 ラッグの語りに険しい強面で問い返す大将、するとラッグは平然と眼前の一同に語り始めた。

「ウィルスの暴走を防ぐ方法……これ以外に手立ては無いのだよ。だが、それもあと3年で済む」

 父であるラッグの話を聞いて、コカは苦しみながらも悲痛に語り始めた。

「私が死んでいれば……こんな悲劇は起きなかったのに」

 自分が病で普通に死んでいれば、罪の無い少女達が臓器を抜き取られ死ぬ事も、村やダムにウィルスが侵され人々がゾンビになる事もなかったと語るコカ。だが、そんなコカの言葉を聞いて父のラッグは悲しげに淡々と語り明かす。

「おお、お前が死ぬなんて考えたくもなかった。コカ、お前は何も悩む事なんてないんだ……獣が獲物を狩るのは自然な事だ、そして更に強く成長する事もだ」

「それはアンタの勝手な理屈だろ!」

(ウィルスに魅せられた狂人が!)

 父親として娘の死を望まない考えと同時に、殺しまでも自然現象と捉えるラッグの思考を聞いてメタルバードと大将は激情を募らせた。

 そんな中、ラッグの話を聞いてミラー・ガールが血相を変えてラッグに問い詰めた。

「ま、まさか! ラッグ、貴方が連れ去った新世代の二次元人たち……その子達の臓器も」

 蒸発した新世代型二次元人、彼らの失踪に関与しているラッグにその新世代型の二次元人たちの臓器も摘出し使用したのかと問い詰めるミラー・ガールの問い掛けに、ラッグは平然と答え返した。

「ああ、彼らか……安心したまえ。奴らの様に得体の知れない輩の臓器を娘に移植するはずは無いだろ……彼らはある企業との取引で使わせて貰ったに過ぎない。その企業が保管している臓器と引き換えに、新世代型を被検体として提供したのだ」

 そしてラッグは静かに眼前の皆々に語る。

日本人(ジャパニーズ)達よ、娘を導いてくれた礼だ……意味のある死を与えてやろう」

 そう語らいながらラッグはゆっくりと後退しつつ、皆の前から姿を消した。

 そしてラッグが後退していく中、皆の真上に不気味で巨大な影が怪しい二つの赤い目を光らせながら忍び寄ってきた。

 

 一行がラッグを追ってカーテンの内部から出ると、彼らの目の前に村の教会で遭遇した巨大B.O.Wが立ちはだかった。

「村にいた奴だな!」「コカ、出てくるな!」

 立ちはだかる巨大B.O.Wに銃を向ける大将と、戦闘態勢で迎え撃つ気満々のメタルバードはコカに手術室から出ないよう呼び掛ける。

 そして眼前のB.O.Wに攻撃を開始する一行。だがその最中、迎撃する赤塚組の面々は再び自分等の前に姿を現した巨大B.O.Wに対して疑心な心持ちで発砲していた。

(この化け物もラッグが作り出したのか?)

(これがD-ワクチンの……小田原修司が投与した最強の筋肉強化ワクチン)

(あのワクチンが、こうして形を変えて私達の前に……!)

(修司のパワーアップの姿を見ているが、こいつは姿形まで完全に化け物じゃないか! 修司の方がまだ人間染みてたぞ)

 と、大将/ミズキ/なる/アツシらの各々が銃火器を発射しながら応戦しつつ目の前に立ちはだかる巨大B.O.Wについて思いを募らせていく。

 と、その時。眼前のB.O.Wがその巨大な顎で銃器を連射している面々を突き飛ばした。

「くっ」

 B.O.Wの顎で突き飛ばされ体勢を崩す海野なると秋夏子の二名。

 二人が立ち上がり、周囲を見てみると既に其処には巨大B.O.Wの姿は無かった。辺りを見渡していると、巨大B.O.Wは何と資材運搬用の鉄骨リフトの上に移動し、地上の面々を見下ろしていた。

「クソッ! 上を取られた!」

 メタルバードが叫んだ次の瞬間、巨大B.O.Wは大きな口から胃酸を吐き出しては真下の面々にそれを散布しようとした。が、地上の面々は寸での所で胃酸の攻撃を回避し、巨大B.O.Wと距離を置いては再び攻撃を仕掛ける。

 だが皆の攻撃は巨大B.O.Wにとっては雀の涙ほどしか感じてないのか、B.O.Wは一向に倒れるどころか苦しむ様子を見せない。しかも背中のエラの部分から巨大な針状の骨を噴出してはそれを飛ばしてきた。

 辛うじて集中攻撃を受けると軽く怯む程度の効果はあるものの、B.O.Wはその長い寸胴の巨体と四本の触手をうねらせながら果敢に一同に迫ってくる。その時、メタルバードが貨物室の一角に詰まれた木箱の山を見て皆に指示を告げる。

「あそこから上に行くぞ!」

 メタルバードの指示に、赤塚組の頭領である大将も声を上げる。

「あっちだ! 走れ!」

 一行は一斉に木箱へと駆け出し、そして積まれてる木箱に足を掛け上へと駆け上る。そして巨大B.O.Wと同じ目線になった一同は再び攻撃を仕掛けていく。

「よし、今だ!」

 B.O.Wが攻撃を受けて怯んだ隙に、大将が皆に一声かける。そして一同は続々と木箱の上から同じ高さに位置しているリフトの上へと跳んで移動する。

「ここから一斉攻撃だ!」

 リフトへと飛び移った一行は、メタルバードの合図で再びB.O.Wへと一斉攻撃を放つ。B.O.Wはその不気味で歪んだ顔と巨大な顎を開いては敢然と攻撃を受け続ける。

 そして一斉攻撃を受け続けていたB.O.Wは弱ったのか、二本の足をよろめかせては体制を崩し始めた。

「もらった!」

 B.O.Wが足をよろめかせたのを間近で見た大将は、追い討ちとばかりにアサルトライフルをB.O.Wに射撃した。

 攻撃を受け続けていたB.O.Wは体勢を立て直すのか、上がっていたリフトの上から地上に降りた。

「逃がすか!」

 地上に降りたB.O.Wを見て、事もあろうか大将はB.O.Wの上へと飛び降りてはその巨体に更なる追撃を仕掛けた。

「くらいやがれ!」

 B.O.Wの頭部目掛けてショットガンを連射していく大将、一方のB.O.Wは自分に跨りかつ頭部を集中攻撃する大将をどうにか振り払おうと、その巨体を激しく揺らし始める。

 そしてB.O.Wは上半身を一気に振り上げては、跨る大将を地面に落とした。

 落下した大将が立ち上がり、B.O.Wに再度攻撃を開始しようと顔を向けると、B.O.Wは蓄積されたダメージなのかはたまた怒りによる激情でなのか体を一瞬とはいえ赤く変色し出した。そして遂にB.O.Wは、その水色に近かった体色を染め上げるように赤く変色させては牙を振るって来た。

 赤く変色したB.O.Wは眼前の大将に急接近しては彼を押し飛ばし、そして近づいてはトドメを刺そうと接近していく。

「このままじゃ、やられる!」

 眼前に迫る巨大B.O.Wに冷や汗を掻き始める大将、そんな大将を上方から攻撃し続けていた一行が心配そうに呼び掛ける。

「大将、逃げろ!」「いけない、このままじゃ……!」

 必死に呼び掛けるテツとミズキ、そして彼らに続いてミラー・ガールも悲痛な表情で悩みぬく。

「ど、どうしたら……」

 そんな苦悩している上方の皆に大将が言い放つ。

「こいつの動きを止めてくれ!」

 だが一行の脳裏には良い方法が思い付かず、刻一刻と大将に危機が迫ろうとしていた。

 

 

 

 

[人としての名残り]

 

 その時だった、B.O.Wの様子が一変し、大将とは別方向にその顔を向けた。

 B.O.Wの視線の先、そこには静かにそして優しく母から聴かされた子守唄を歌うコカの姿があった。

「コカ?」

 突然子守唄を歌い出すコカ、そしてコカの子守唄に反応していきなり大人しくなる巨大B.O.Wにメタルバードも他の一同も愕然とした。

 心の奥に響き渡る大河のせせらぎにも似た、優しく何処か悲しい母の想いが伝わるその子守唄を歌い続けるコカ。そんなコカにB.O.Wは敏感に反応してか次第に近づいていく。

「コカ、逃げろ!」

 近づいていくB.O.Wを見て、上方からメタルバードがコカに呼び掛ける。そんなコカとコカの歌う子守唄に反応するB.O.Wを傍観しては、大将は心の奥で驚いていた。

(歌に反応している! まさか、この化け物かつては人間だったのか!?)

 子守唄に反応するB.O.Wの様子に、大将や幹部衆はこのB.O.Wがかつては普通の人間であったのかと疑い始めた。最早、人の姿を連想できないその容姿を前にしながらも。

「コカ、その歌をやめるんだ!」

 スピーカー越しに父のラッグが娘のコカに歌を歌うのを止めるよう制止する。

 その時、歌を歌っていたコカが突然ウィルスで変異し包帯を巻いていた右腕を押さえ付けながら苦しみだし、そして膝を着いてしまう。苦痛に喘ぐコカは右腕を押さえながらも皆に語り明かした。

「大丈夫……この歌を歌うと、なぜかその怪物は襲ってこないの」

 だが、そう語っているコカが歌うのを止めた途端、B.O.Wは元の水色の体色に戻っては苦しむコカに一歩一歩と近づき始めてた。

「マズいぞ!」

 コカに歩み寄るB.O.Wを目撃して声を上げるメタルバード、そして地上の大将はその光景を見て即座に行動に移った。

「バーンズ、アッコ! 俺達で行くぞ!」

 そう叫ぶと大将はコカに近づいていくB.O.Wに向かった銃を乱射しながら猛進していく。

 そして大将がB.O.Wの眼前へと立ちはだかると、B.O.Wは怒りの激情で体を真っ赤に変色させては目付きも青い瞳から攻撃的な赤い瞳へと変化させて敵意を向けてきた。

「おらおらおらおらおらおら!」

 両手に機関銃を持っては激しく連射していく大将に続き、他の面々も上方からB.O.Wの死角でもある背面部分を集中的に攻撃していく。

 HEADと幹部衆に同行してきた黒衣衆の面々もB.O.Wの死角である背面に向けて連続攻撃を放っていく。ガトリンガーの激しい連続射撃、大闇行蘭の八つの数珠での遠距離攻撃が的確にB.O.Wへと連打していく。

 巨体に次々と撃ち込まれる弾丸を浴び続け、真っ赤に体を変色させつつも苦しみ出すB.O.W。

「今だ、早く上がって来い!」

 怪物が怯んだ隙にメタルバードが地上の大将に上へと上がってくるよう呼び掛ける。その言葉に大将は即座に木箱を階段代わりに駆け上っては、貨物室のフレームへと移動する。

「急げ!」

 仲間の呼び掛けに急ぎ駆け上がる大将、そして鉄骨の上へと移動し終わると大将は再び地上のB.O.Wに向けて銃火器を連射して行った。

 更に大将や皆は怪物の上にあるフレームやリフトを次々に渡りつつ巧みに場所を変えながら戦闘を続ける。

「落ちるなよ」「そっちこそ」

 互いに皮肉交じりの言葉を掛け合いながらも息の合った連携攻撃を追撃していく面々。

 だが、そんな連携による連続攻撃を受けても怪物は体を激しい赤色に変色するばかりで一向に倒れる様子が無かった。

「しぶとい奴だぜ」

 マシンガンを連射しながら中々倒れない怪物に愚痴を言う大将。

 その時、攻撃を受けてばかりいた怪物が突如跳び上がっては上方の皆に飛び掛かってきた。

「危ない!」

 皆が一斉に姿勢を低くし、そして立ち上がって周囲を見回してみると怪物は後方のリフト上へと移動していた。

 だが、移動しては動きを一瞬止めた怪物の隙を衝いては全員怪物目掛けて一斉攻撃を放った。

「くたばれ!」「もう少しだ、一気に行くぞ!」

 威勢よく掛け声を放ちながらショットガンをぶっ放す大将に続き一斉攻撃を放てと声を掛けるメタルバードの電撃砲、他の面々も強烈な銃撃と砲撃、更には必殺技を怪物目掛けて放った。

 一斉攻撃を受けて、怪物は姿勢を崩してそのまま地上に側面から落下し倒れ込んだ。

「やったか?」

 コンクリートの床に落下し側面から倒れこむ怪物を見下ろしつつ、一同は高所から地上へと飛び降りて移動する。

 地上に降りても尚動かない怪物を尻目に、メタルバードと大将は先ほどまでその場に居たラッグの姿を探しては辺りを見渡した。

「ラッグが居ない」「追うぞ」

 メタルバードと大将が言うと、他の面々も同じくラッグを追跡する為その場から駆け出した。

 

 と、皆が駆け出したその時、先頭を走っていた大将の足元に一本の巨大な針状の突起物が放たれ床に突き刺さった。

 皆が突起物が放たれた方へ目を向けると、先ほど地上に落下した怪物が虫の息で体から突起物を射出して来たのだった。

 そして次に放たれた突起物が大将目掛けて放たれては、大将はそれに拳銃で応戦する。が、大将の放った弾丸は巨大な突起物を掠める事しかできず、突起物は大将の胸へと一直線に向かっていく。

「大将!」

 誰もが大将の胸に巨大な突起物が直撃し、彼の重症を脳裏に浮かべた……が、次の瞬間。

 豪快に無数の弾丸を連射しては、その弾丸の数と勢いで突起物が瞬く間に穴ぼこだらけにしつつ弾き飛ばされる。

 皆が無数の弾丸を連射した方に目を向けると、豪快に連射していたのはガトリング砲を構えていたガトリンガーであった。

 ガトリンガーの咄嗟の行為で命拾いした大将は、彼に対して半ば複雑ながらも即座に攻撃の姿勢に戻っては再び怪物目掛けて銃弾を浴びせていく。

 そして銃弾を浴び続けて弱っていく怪物に対し、赤塚組幹部衆は一気に優勢を感じてか前へと全員出てきては一斉射撃を開始する。幹部衆の連射していく銃弾や砲撃を浴び続け、胴体/触手/突出した顎と様々な部位に損傷を受けていく怪物は遂に「ウオォーーーー……ッ」

 発砲し続ける幹部衆の足元に空薬莢が落ちていくのと同時に、怪物も絶叫を上げてはそのまま山が崩れるようにして倒れる。

「大丈夫ですか?」

 先ほど大将に向かっていた突起物をガトリング砲で弾き飛ばしたガトリンガーが何食わぬ顔で歩み寄っては大将に言葉を掛ける。これに対し大将は厳つい強面でガトリンガーに返事をする。

「別に……大した事ない(まさか、こいつ等に借りを作っちまうとは)」

 厳つい顔でガトリンガーに言葉を返す大将。

 だがそんな最中、コカが撃沈された怪物を見ては、何を思ったかその怪物に足を歩ませた。

 皆が怪物に歩み寄るコカに視線を集中させる中、怪物の方もコカにそっと触手を寄せては、彼女の右手の平から頬へと優しく触手を接する。そして青く何処か優しげな瞳でコカを見詰めながら、怪物は眼前まで歩み寄ってきたコカに視線を向ける。

 そんな優しい瞳と優しく接してくる怪物を目の当たりにして、コカは初めて気付いた。

「お母さま?」

 もはや人の原型すら感じさせない、その巨体な風貌からコカは微かに母の面影を感じ取った。

 そして人ですらなくなった変わり果てたコカの母は娘の記憶を取り戻したのか、その青い瞳から一滴の涙を零すと同時に静かにその瞳を閉じるのだった。そして娘に優しく触れ合っていた触手も力尽きては、ぐったりと地に落ちた。

 そんな母娘の悲痛な情景を目の当たりにし、聖龍HEADと幹部衆は構えていた武器を下ろして悲痛な心境に駆られる。

 コカは静かに変わり果てた母の亡骸を前にし、その悲しい心意を口に出した。

「他人を犠牲にしてまで生きていたくない……」

 変貌し、そして死に絶えた母と向き合い悲しみに暮れるコカ。そんな彼女にミラー・ガールが歩み寄っては優しくコカの肩を抱き寄せ静かに慰める。

 

 

 ウィルスは力を生む、そして同時に絶望をも生み出してしまう。

 だが何よりも……悲しみを、生み出してしまう。

 

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