現政奉還記 B.O.W.編 作:セイントドラゴン・レジェンド
目を逸らさず現実と向き合う彼らの奮闘を拝見してください。
※それから今シリーズのオリキャラである三人の家族の名前の由来を御教えします。
ラッグ・ドウェル→ドラッグ(麻薬)売る
コカ→コカイン(麻薬の一種)
ルヒネ→モルヒネ(これも麻薬の種類)
三人とも麻薬つながりの名前でした。
[chapter:前兆]
聖龍HEADと赤塚組幹部衆、そして黒衣衆がD-ワクチンで変わり果てたコカの母を倒した頃。
コカの父であり麻薬王のラッグは人気の無くなった温室へと一人で足を運んでいた。
様々な精密機器で隈なく様子を観察されている温室中央に聳える巨大な植物。その植物にラッグは歩み寄り、そして微笑を上げるのだった。
「クハハハハ……早くこうすべきだったな、ルヒネ」
コカの母であり妻であった女性の名を呟きながら、ラッグはヴィーナス像に目を向ける。
そして所持していた蛇の紋章が彫られた拳銃を地に捨てると、ラッグは巨大植物へと歩いていく。
「愚かな日本人どもよ、怪物を倒せると過信しおって」
ラッグが語る中、巨大植物と繋がっている心電図の針が異常なまでに揺れ始める。そしてラッグが巨大植物の前に立ち尽くすと彼は掛けていたサングラスを外しながら語り出す。
「だが忘れるな、お前達が深淵をのぞき込む時……深淵は、お前達を飲み込むのだ」
するとラッグの眼前の巨大植物が動き出しては、その巨大な蕾を開きラッグへとその開口を近付けるのだった。
一方その頃、HEADと幹部衆に黒衣衆はラッグの娘であるコカと共に、怪物に変異したコカの母ルヒネを倒し、再びラッグの追跡を開始した。
「ラッグが逃亡した、上空から補足してくれ」
姿を晦ましたラッグの行方を衛星で補足する様にと聖龍隊本部に通信で伝えるメタルバード。そんな彼の周囲には同じHEADメンバーのウォーターフェアリーことアプリコット、セーラー戦士たち、キューティーハニー、ナースエンジェル、カードキャプター、コレクターズ、魔法騎士、元最終兵器のちせ、ミュウミュウズ、マーメイドメロディーズ、ローゼンメイデン。そして参謀総長のジュピターキッドことジュニアと副長のミラーガールこと加賀美あつこ。
そして赤塚組の頭領 赤塚大作こと大将に幹部衆のギョロ/ゴマ/チカ子、海野ぐりお/なる夫妻、水原花林、秋夏子、山崎貴史/千春夫妻、市川一太郎/レイコ夫妻、テツ/ふゆみ夫妻、アケミ/アツシ夫妻、最後にミズキらが自分達の武器の手入れと不備などのチェックを行う。
更に黒衣衆のガトリンガーこと本名 神埼悟、白蓮坊こと斉洋早蔵と黒蓮坊こと安蔵兄弟、ソンヒこと韓国人の損尼、綿貫鞠乃こと欲尼、そして大闇行蘭らは怪しい眼付きでHEADと幹部衆を無言で見入っていた。
そしてメタルバードは本部と連絡を取り終わると、周囲の皆に進行するよう告げる。
「よし、行こう。まだラッグから新世代型の行方について聴取しねえと」
メタルバードの発言に、皆がその場から移動しようとした。まさにその時だった。
突然大地が揺れ出し、皆の足元がふら付いた。
「何だ?」
突然の揺れに動揺する大将たち。すると屋根や壁から震動によって砂埃が舞い散り、一行は何事かと辺りを隈なく見渡した。
更に何かがぶつかる様な大きな音が響きつつ再び埃が舞い散る。更にその後も二回目、三回目と音は次第に近づきつつあった。
(何か来る!)
直感的に巨大な何かが近づいて来るのを地響きと音で感じる大将。
(これは大きい……大きすぎる! 今の俺達じゃ、とても戦えない!)
次第に近づきつつある巨大な存在に恐怖し始める大将。この時、大将以外の幹部衆も彼と同様に恐怖で頭が満たされてしまってた。
(来るな!)(来ないで!)
幹部衆の男も女も、近づきつつある巨大な存在に脅えては心の中で祈願した。
そして次の瞬間、大きな物音と共に視界が遮られるほどの埃が周囲に拡散。その埃が次第に静まっては、皆はそっと瞼を開けて視界を広げた。すると
「こ……こいつは?」(これは何だ!)
何と皆の目の前に天井を突き破って巨大な生き物の一部と思われる部位が、四本の爪を地面を抉るまで突き刺し、その爪の周囲を囲うように六本のかぎ爪が目立つ部位。しかも四本の爪と六本の爪の垣根から数本の触手が伸びてきては、それがHEADや幹部衆たちに襲いかかって来た。
「い、今まで何処に、こんな馬鹿でかいのが!?」
眼前に突如として出現した巨大な部位に驚愕しつつも、メタルバードは部位目掛けて攻撃を始める。
メタルバード達が攻撃を与え続ける中、部位から生えている触手が攻撃する者たちに襲い掛かる。
「応戦しろ!」
メタルバード自身も応戦する中、同時に皆に指示を告げていく。そんな彼の指示を聞いて、ウラヌスやヴィーナス、更には魔法騎士の三人は自身の得物を振るい続けては向かってくる触手を振り払っていく。
「攻撃、効いてるのか?」
「オレにも分からん、とにかく攻め続けろ」
余りにも巨大すぎて自分達の攻撃が効いているのかさえ分からなくなる大将の問い掛けに、同じ心境のメタルバードが答え返しつつも迫撃を続けていく。
(こんなデカい奴を、どうやって倒す!? せ、せめて……俺達にもアッコやバーンズ達みたいに、特殊能力が使えたら……)
巨大な生物の部位に総攻撃し続ける大将ら幹部衆の面々は、せめてHEADの様な特殊能力があれば良いと心の中で思い耽る。
次の瞬間、皆の攻撃を受けて巨大な部位の様子が変わった。
「殺したか?」
大将が言うと、巨大な部位は地に突き刺さっている四本の爪だけを抜き残しては、大量の血潮を噴き出しながら突き破ってきた天井へと上がっていった。その場には、巨大な部位の一部であった四本の爪とその爪が突き刺さり激しく抉れた現状だけが残った。
「あれは何なの?」
見た事もない生物の巨大な部位に怖がり困惑するコカ。
「武器が弱い」「一時撤退して、態勢を立て直そう」「うむ、そうだな」
幹部衆のアツシ/テツの提案に同意するメタルバードは、皆で現場の貨物室から出ようと入室してきた扉に駆け出そうと顔を向けた。だが皆が入室に使った扉は、先ほどの巨大な生物の急襲で落下した瓦礫によって進行不能となっていた。
そんな八方塞がりの現状の中、大将は人知れず思い悩んでた。
(力が出ない、体が弱ってる……俺も、もう歳だしな。悔しいが、今はバーンズやアッコ達が唯一の頼りだ)
年季が入り衰えた肉体に年波を感じる大将。と、大将や皆が瓦礫によって塞がれた出入り口に目を向けていた正にその時。
「ねえ、あれ!」と、コカが貨物室の一角を指差した。
皆がコカの指差す方へ目を向けると、巨大生物の襲撃によって崩壊した壁の向こう側に通路が繋がっていた。
「隠し通路か!」「よし、あそこを進むぞ」
晒された通路への入り口を目にして声を上げる山崎貴史に、その通路を進もうと皆に告げるキング・エンディミオン。そして一行は急ぎ、剥き出しになった通路への出入り口へと進行する。
「ここが唯一の出口か」「急ぎましょう」
参謀総長ジュピター・キッドとHEADのウォーター・フェアリーが通路進行先を確認しつつ、皆と共に通路を進んでいく。
通路の先を進み、その先を右折すると其処からは壁や床が全く舗装されてない洞穴状態の通路となっていた。
「上では一体、何が?」
緊迫し切った状況下の中、通路を進みながらセーラーウラヌスが先ほど天井を突き破って出現した存在について懸念していた。
更に一行は通路の奥へと注意深く、ゆっくりと進む。と、その時、一行の後方の土壁から突如として矢じり状の巨大な触手の先端が飛び出してきた。
「きゃあっ」「な、何あれ!」
突如として壁から現れた巨大な触手に驚くミュウイチゴとセーラームーン。一行は後方より迫る矢じり状の触手から逃れようと駆け出す、が後方に出現した触手と同形の触手が前方からも突如として現れては一行の眼前に迫ってきた。
眼前まで迫る触手に対し、瞬時に身を伏せながら颯爽と回避していく一行。だが、その内のセーラーサターン/ミュウレタス/山崎千春/市川レイコ/アケミらが前方からの触手の攻撃に掠ってしまう。小規模の損傷と出血を生じてしまった面々だったが、それでもどうにか前方からの触手から逃れてはその先の整備されてる通路へと駆け込んだ。
(情けねえぜ、逃げる事しかできねえとは……赤塚組の頭領としての面目が無ぇぜ)
ただ只管に逃げ続けるしかできない自分達の現状に、情けない心境に駆られる大将。
すると、その整備された通路に駆け込んだ一行の先に上へと続く階段が目に入った。
「出口だ!」
一行は急ぎ通路を直進し、その先の階段を駆け上った。だが
「ウッ……」「コカ!」
階段を駆け上がろうとしていた矢先、コカがウィルスによって拒絶反応を示している右腕を押えては苦しみだした。そんなコカの様子を見てメタルバードが必死に声を掛ける。
そんな拒絶反応で苦しみ出すコカを前に、幹部衆のテツと海野なるが怖気づく。
(今、この子が覚醒したらどうするんだ!)
(怖い……この子まで私達の脅威となるなんて、怖い!)
そしてコカは何とか足を再び歩ませては、皆と共に階段を上っていく。
一行が階段を上り、その先の鉄の扉を押し開けては外へと飛び出した。
[変異]
全員が外へ飛び出てみると、辺りはすっかり夕日で色鮮やかに紅く染まっていた。
そんな眼前の鮮やかな景色の中、皆は辺りを見渡し十分に警戒する。
と、その時だった。皆の目の前に突如として巨大な何かが降って来たと思えば、周囲一帯に砂埃が舞い上がり、更に目と鼻の先に在ったコンテナが丸々地面に埋まった。
「何だ!?」
驚き慄いている幹部衆の面々にメタルバードと堂本海斗が大声で告げた。
「下がれッ!」「隠れろ!」
二人の声に一同は近くのコンテナが密集している場所まで駆け込んでは物陰に身を潜めようとした。
だが、そんな皆の眼前に先ほど貨物室の天井を突き破ってきた巨大な生物の一部が大地を激しく踏み締め、コンテナを物の見事に大破させる。
「こ、コイツもB.O.Wなのか?」
目の前を塞ぐようにして踏み締めてきた巨大な物体に、大将はこの巨大な物体も今まで自分達の行く手を阻んできた生物兵器なのかと慌てふためく。
更に巨大な物体はその後も続けて皆の行く手を阻んでは、一行の動きを完全に封じてしまう。そして衝撃によって地に倒れる大将やメタルバードたちが起き上がっては、自分達の動きを阻み続けるその巨大な存在に目を向ける。
その存在を見た一行は、その全貌に驚愕した。
赤いデコボコの球状の体に無数の巨大な棘が生えては、下側には四本の細長く先端が鋭い足、更に尖った頭部の左側には鋭い鎌が、右側には先ほど貨物室に出現した複数の爪で形成されている足が。皆の視界を塞ぐほどの巨大な全貌を見せ付けていた。
「デカすぎる!」「何て奴だ!」
幹部衆の海野ぐりおに市川一太郎が叫ぶ中、巨大な怪物は先端が尖った四本の足を地面に突き刺してはその巨体を固定しつつ、巨大な鎌で眼前の皆々に切り掛かってきた。
「うわァ!」「きゃあっ!」
振り翳される巨大鎌に脅えつつも恐怖し逃げ惑う水原花林に海野なる。そんな戦況の中、大将はただただ眼前の巨大な脅威に内心恐怖で混乱していた。
(ダメだ! こんな奴には勝てない!)
その時、鎌を振り回し地上の面々に怪物が猛威を振るう中、歓喜に満ちた声が皆の耳に届いた。
「素晴らしい! これがウィルスの……Dの力か!」
「お父様!?」
聞き覚えのある声にコカが反応した。皆の前にその巨大な全貌を露にする怪物、それはコカの父であるラッグが変異した姿だった。
(ラッグ、さっきまで人間だったはず……)
(なぜ短時間で、これほどまで強大な怪物に!?)
先ほど倉庫で顔を合わせたばかりのラッグの、巨大な姿形への変貌に驚きと動揺で内心満たされる貴史と千春の山崎夫妻。
変貌したラッグを見て、メタルバードが咄嗟に気付いた。
「あの植物と融合しやがったんだ……!」
メタルバードは、ラッグが温室に聳えていたウィルスで巨大化した植物と融合して、今目の前の巨大な怪物へと変異したのだと感ずる。
その時、変異したラッグが突如巨大な鎌を振り回しては一行に再度切り掛かってきた。
「よ、避けろ!」
キング・エンディミオンの咄嗟の掛け声に反応し巨大鎌の追撃を寸での所で回避する一同。そんな騒然とした状況の中、変異したラッグは娘のコカに話し掛ける。
(これがウィルスの力だと言うのか!)
(これほど強くて巨大な怪物に変身してしまうなんて!)
ラッグの変わり果てた巨大で驚異的なその全貌に愕然としてしまう一太郎とレイコの市川夫妻。
「おいで、コカ。お前の苦しみを取り除いてあげよう」
変異ラッグは娘のコカまでも自身の中に取り込んでは、彼女の苦痛を失くして上げようという歪んだ思想を抱いていた。
そんな中、変異ラッグは今度は巨大な爪で形成された触腕を拳のように丸めては、それで地上の面々に打撃をしてきた。
「うわぁッ」
車ほどの巨大な触腕で殴りかかられ、それを涙目で回避する幹部衆たち。
そんな混迷とした戦況の中、メタルバードは皆に指示を告げていく。
「とにかく攻撃しろッ、何もしないままじゃコッチがヤられるだけだ!」
メタルバードの指示の元、変異したラッグの巨体に攻撃を放っていくHEAD。
(頼む、助けてくれ!)(死にたくない!)
眼前に立ち塞がる巨大な変異ラッグの猛攻の中、脅え震えながら逃げ惑うアツシとアケミ夫妻。
だがそんな彼らの猛攻に変異ラッグは怯む事無く、それどころか攻撃してくるHEADに向けて巨大鎌を振るって来た。
セーラー戦士たちにキューティーハニーらは、鎌での攻撃を瞬時に後ろへ後退しては回避し、それと同時に変異ラッグへの追撃を続ける。
(なぜ……なぜ逃げないのよ、ハニー!)
(りりかちゃん、怖くないの?)
変異したラッグの圧倒的な強さを前にしても、決して後退りせず立ち向かう旧友のキューティーハニーとナースエンジェルを目にして疑問に思う秋夏子と水原花林。
だが、今度は巨大な触腕による追撃がHEADに迫ってきては彼らを押し潰そうとする。HEADのミュウミュウズやローゼンメイデンは、これを辛うじて回避しては反撃に転じてく。
(バーンズ! アッコ! ……HEAD、助けてくれ!)
必死に応戦するものの桁違いの強烈な変異ラッグの猛攻に対応できず、大将は懸命に攻撃を避けながら悲願する。
(俺達の力は、こんなものなのか!)
自分たち能力を持たない者の戦力の低さを痛感する大将は、ただただ変異ラッグの攻撃を必死に回避しながら効力の低い銃火器で応戦するしかできない現状に苛立ちにも似た激情を昂らせていた。
「ダメだ、まったく効いてない!」
変異ラッグに攻撃を続ける蒼の騎士を始めとするHEAD、だが変異ラッグに痛手を負わせる事は叶わなかった。更に変異ラッグは惑う幹部衆へ再度触腕を振るっては殴りつけて来る。
「う、うわぁーーッ」
巨大な触腕から逃れようと銃火器を構えつつ辺りを駆け巡る幹部衆は、変異ラッグの触腕や鎌での追撃から逃避するしか出来なかった。
[決心]
俄然悠然と猛威を振るってくる変異ラッグの動作に、さすがのHEADも物陰に身を潜めながら攻撃の隙を窺っていた。
「さすがに……これはマズいよな」
「うん、確実にマズい」
物陰から身を伏せながら会話するメタルバードとジュピターキッドは、所構わず猛威を振るい続ける変異ラッグの激しい動作に、常に警戒する。
そんな二人と同じく、物陰に退き好機を窺う聖龍HEADの面々。
そして、そんな彼らと同じく物陰に身を隠す赤塚組幹部衆の面々。だが彼らは異常なまでに血相を蒼褪めさせては脅えていた。
「……大将」「……」「……大将!」「!」
二度、大将に声を掛けるミラーガール。彼女からの問い掛けに、ようやく大将は二度目の掛け声で気付く。
「あ……アッコ」
「大丈夫? さっきから大将たち、凄く顔色が悪いわよ」
ミラーガールの言うとおり、大将を始めとする幹部衆の面々の顔色は恐怖と疲労ですっかり困憊しているのが目に見えた。
そんな中、大将は脅えた表情でミラーガールや聖龍HEADに震える唇で問い掛ける。
「……怖くないのか」
「……?」
「お前達は怖くないのか? 動き回るだけじゃなく、下手したらコッチまで感染して同じゾンビになっちまうウィルス……ゾンビだけじゃねえ、ウィルスで色々と変異して凶暴になった生物。そんなのと相手して、お前達は怖くないのか!?」
『…………』
いつもは強気な性格の大将が見せる弱気な態度に、幼馴染のミラーガールや聖龍HEADは返す言葉を失くす。
「お、俺達は……確かにアニメタウンを出てから、いろんな国に世界でと腕を奮って戦い抜いてきたさ。だ、だが……そんな俺達が戦ってきたのは、ほとんどがテロリストや海賊、頭のイカれた
大将の口から語られる彼の真情、しかしそれは彼だけに非ず幹部衆の誰もが同じ心境であった。
今まで赤塚組は無法者である海賊やテロリストと対峙して来た事は多々あった。しかし、ウィルスという未知なる脅威によって変異したゾンビや数多の生物兵器との戦闘で、彼らは心の奥に少しずつ生物脅威に対する恐怖心を芽生えさせてしまってた。そしてそれが、いま自分たちの目の前に立ち塞がる巨大な変異ラッグを目の当たりにして、完全に心中に満たされていた恐怖心が溢れ返ってしまったのである。
度重なる生物兵器との戦闘、そして今 目の前に立ちはだかる巨大な変異ラッグを前にして戦闘の自信さえ失いかけては身を縮ませてしまう大将たち赤塚組幹部衆。ふと、そんな縮み上がっている大将は内心必死に隠し抑え様としている恐怖心で満ちた目をメタルバードたちHEADに向けてか細い声で訊ねる。
「……お前達は、怖くないのか? 今まで、あんな馬鹿でかいだけでなく色んな意味でヤバイ化け物どもと戦って来て……怖くなかったのか!?」
心の奥から湧き出る恐怖心を必死に抑えながら語り掛ける大将の問い掛けに、聖龍隊総長メタルバードは静かに大将たち幹部衆に語り始めた。
「…………そりゃオレ達だって怖いさ。誰であろうと、こんな窮地に立たされちゃ怖気付いちまう」
「……」
「でもな……それでもオレたちは、聖龍隊は突き進まなきゃいけねえのよ。確かに昔っから俺達は日常的に非日常的な脅威と対峙しては激しく戦い続けてた、それでも未だに怖いモンは怖いんだ。ウソじゃねえ。だけどオレ達が……オレ達にしかやり遂げられねえ事なら、オレ達がやり遂げなきゃならねえのよ。オレらの様な、畏敬の存在は特にな」
「っ……!」
メタルバードの発言に微かな衝撃を受ける大将に、メタルバードは語り続けた。
「そう……オレたち特殊能力者は、所詮は生物兵器となんら変わらない異形の脅威と世間に見られているのが実情よ。でもよ、そんな異端の特殊能力者だからこそ……並大抵の存在じゃないからこそ、同じ並大抵とは程遠い脅威と対抗できるし、何よりその脅威から人々を守ってゆける。これは、オレたち能力者が自ら選んだ道なんだ」
『………………』
メタルバードの話を聞いて、大将たち赤塚組幹部衆は言葉を失い彼の話に耳を傾け続けた。
「この世には無力な人間はいねえ、しかし非力で戦う事すら侭ならない人も多いのが現実だ。だからこそ、そんな人々に代わって己自身を剣にさせ、時には守るための盾として生き続け戦い続ける。それがオレたち聖龍隊なんだ」
そして最後にメタルバードは、夕日を浴びて逆光を背負うその勇姿で同胞のHEADと共に凛々しく力強い面立ちを幹部衆に向けて言った。
「オレたちは単に能力者だとか、王だとか神だから英雄なんかじゃねえ。ただ……誰かの為に戦い、誰かの為に強く生きてる、それだけなのさ」
『………………』
メタルバードを始めとする聖龍HEAD、副長のミラー・ガール/参謀総長のジュピター・キッド/ウォーター・フェアリー/セーラームーン/キング・エンディミオン/セーラーマーズ/セーラーマーキュリー/セーラージュピター/セーラーヴィーナス/セーラーウラヌス/セーラーネプチューン/セーラープルート/セーラーサターン/キューティーハニー/ナースエンジェル/木之本桜/コレクターユイ/コレクターハルナ/コレクターアイ/獅堂光/龍咲海/鳳凰寺風/ちせ/ミュウイチゴ/ディープ・ブルー/ミュウミント/ミュウレタス/ミュウプリン/ミュウザクロ/七海るちあ/堂本海斗/宝生波音/洞院リナ/かれん/ノエル/ココ/星羅/真紅/蒼星石/彗星石/金糸雀/雛苺らが向ける彼らの凛々しくも力強い意志が感じられる面魂を眼前にして、大将たち幹部衆は言葉を失くして見入ってしまう。
そして最後にメタルバードは大将たち幹部衆に告げた。
「だが忘れるな。お前達も自分ができる事だけでいい、精一杯やり遂げろ。それだけで十分な努力なんだ」
眼前の脅威だけに目を向けるのではなく、己の周囲に居る全ての存在をも守衛するメタルバードたちHEADの勇姿を目の当たりにして、大将は思い起こした。
昔からの馴染みでもある聖龍HEADの旧友達。そんな彼らは己に課せられた宿命を受け入れつつ、それ以上に過酷な現実と逃げずに向き合い、そして目を背けずに対峙している。なのに自分達はどうだ、眼前の脅威に脅えまともに戦う処か無様に逃げ惑っているばかり。
そして大将達はメタルバードたちの話と勇姿を目の当たりにして決心した。能力はもちろん、才能に秀でていようがいまいが、それは関係ない。己がやれる事を、やり遂げられる最上の行動に移るべきだと改めて決心するのだった。
こうして赤塚組幹部衆ギョロ/ゴマ/チカ子/海野ぐりお・なる夫妻/水原花林/秋夏子/山崎貴史・千春夫妻/市川一太郎・レイコ夫妻/テツ・ふゆみ夫妻/アツシ・アケミ夫妻/ミズキ/そして赤塚組頭領 赤塚大作らは己の中に犇いていた恐怖心を振り切るかのように、弱腰だった表情をシャキッと凛々しく強い顔立ちに一変させた。
そして大将は、自分たち脅えては弱腰になっていた幹部衆を尻目に戦い続ける聖龍HEADを前に強く言い切った。
「そうだ……今をとやかく言っている場合じゃねぇ。生き抜く為にも、そして
大将はそう言い切ると弱腰だった足腰を立たせて、眼前に聳える変異ラッグにその闘志を向ける。
と、その時である。「大将ッ」「良いモンがあったぜ!」その声に大将を始めとする幹部衆にHEADは顔を向けた。するとテツとアツシの二人がラッグ邸の前に並んでいたジープの荷台の上で身体を乗り上げては大将達に車内からある物を担ぎ上げるとそれを見せ付けた。
「これで一気に片を付けようぜ!」
「いっちょ派手にぶちかましてやろうぜッ」
テツとアツシが担いでいたのは、ジープに積まれていた重量級のガトリング砲であった。そんな二人の姿と言動に、大将は清々しく幹部衆の皆に大声で告げた。
「よっしゃァ! 聖龍隊だけに活躍させちゃ赤塚組の名折れだ。いっちょ派手に暴れ回ってやろうぜ! 赤塚組、ここから挽回よォ!!」
大将の掛け声を合図に幹部衆の面々は各々と決心を固めては、それぞれ携帯していた銃器およびラッグの軍隊が軍備していた武器を手に眼前の巨大な変異ラッグに向かって行った。
そんな戦況の中、コカはウィルスの拒絶反応によって苦痛に感じる右腕を押さえながら悶絶していた。
そして彼女はウィルスの影響で完全に変異した父を見続けては悲しげな表情で悟るのだった。
「今、分かったわ……この苦しみは、人であることの証し。それが消えるというのなら、私は人間ではなくなるということ……」
変貌し巨大な怪物の姿で周辺を破壊していく父の変わり果てた姿を見て、少女は苦しみながらも決心した。
「イヤよ……私は人間のまま、死ぬことを選ぶ!」
そしてコカは立ち上がり、皆が一心に変異ラッグへの攻撃を続ける中、変異し猛威を振るい続ける父に向かって走り出した。
皆が変異ラッグに向かって走り出すコカに気付いた次の瞬間、変異ラッグが巨大な触腕を振るい翳すのがメタルバードの目に止まった。
「コカ、やめろ!」
ウィルスで変異するのを望まず人間のままで死ぬ事を選び、ラッグに向かって突貫していくコカの姿を目にしたメタルバードは彼女を止めに走り出した。
(待て、なぜ死にに行く! 命を粗末にするな!)
変異ラッグに向かって走り出すコカを見て、大将は攻撃の手を止めて彼女に視線を向けた。
そして皆が注目する中、コカは一直線に触腕を振り下ろしてくる変異ラッグに向かって走る。そんなコカに巨大な触腕が振り下ろされようとした、その時。駆け寄ってきたメタルバードがコカの手を掴んでは彼女を引っ張り、触腕がコカに直撃する寸前に彼女を救った。
「きゃあっ」「ッ」
だが触腕が地面に振り下ろされた衝撃で、二人はそのまま戦闘で窪んだ地面に転がり落ちてしまった。
「バーンズ!」
メタルバードとコカの安否を気にして駆けつけるHEADと幹部衆の面々。当のメタルバードはコカの身を守ろうと、彼女を覆うようにコカに抱き付いていた。
「バーンズ……」
身を挺して自分を守ってくれたメタルバードの行動に呆気に取られるコカ。
だが、その時。そんな二人の上から変異ラッグの尖った足が追い打ちを仕掛けてきた。それを見たコカは自分の上に重なっていたメタルバードを押しのけ、自然とウィルスで苦痛を感じていた右腕を翳した。
その瞬間、コカの右腕は異常なまでに赤く発光し、そして尖った足が彼女のその腕に直撃した途端、巨大な足はみるみる内に無数の火の粉と散っては焼失し、足の焼失に苦痛を感じる変異ラッグ。
そして焼失した足を退かして見ると、コカのウィルスで変異していた右腕には炎が纏われていた。そんなコカの右腕から滴れる血は、何と発火していた。
「コカ、お前……」
自らの血を発火させて変異ラッグの巨大な足を焼失させたコカを目の当たりにしたメタルバードが彼女に問い掛けると、コカは平然とメタルバードに答えた。
「私は、ここにいるわ」
自身の意思は保たれている。そうメタルバードに答えるコカの言葉と、彼女が見せた発火能力にHEADも幹部衆も、そして黒衣衆も全員が愕然とした。
(どういうことだ!? ウィルスで強くなったのなら、化け物に変異する筈じゃ……!?)
大将たち幹部衆はコカの姿を見て、彼女が怪物に変異しないまま能力を覚醒させた事に対して多大に驚いた。
そして皆、足の一部を焼失し苦しみだす変異ラッグを視界に捉えては再び攻撃の態勢に戻る。
「大将、それに他の幹部衆! 集中しろ!」
「近づけば攻撃されにくいぞ!」
先ほどのコカの覚醒した光景を目にし半ば呆然となる幹部衆に声を掛けていくメタルバードとキング・エンディミオン。そんなHEADの面々に大将は厳つい顔で反論した。
「名案だな! 踏み潰されなければの話だが」
案の定、足の一本を失いながらもその巨体は健在である変異ラッグの全貌を見上げながら反論する大将たち。
その時、尖った形状の足が一行目掛けて踏み下ろされてきた。足はしっかりと地面に突き刺さり、一同は場所を変えて態勢を立て直そうとするものの、その行く手を塞ぐように別の足が眼前の地へと突き立てられた。
皆が眼前の巨大な足に目を向けている、その時。
「あそこを狙って!」「コカ!?」
コカが単身でその場に駆け付けて来ては驚くメタルバードたち。するとコカは徐に右腕を胸へと翳すと、それを一気に前へと振り払う。コカが振った右腕の傷口から血が飛び散ると同時に、その血が発火し変異ラッグの巨大な足の関節部分に炎が直撃しては炎上した。
(彼女にも能力が!)(血液が発火するのか?)(何て力なの!)
コカの発火する血液その特殊能力を目の当たりにして、ミズキ/テツ/ふゆみら幹部衆は驚愕した。
そして右腕から発火する血を放ったコカは、その右腕から苦痛を感じるものの皆に声を掛ける。
「早く!」
コカの血を浴びて炎上する変異ラッグの関節部分に攻撃するよう皆に言う彼女の言動に、メタルバードはすかさず言葉を返す。
「分かった!」
コカの行為を無駄にしない為にも、メタルバードは変異ラッグの間接を攻撃しつつ皆にも同じく攻撃するよう指示を出す。
「関節だ、関節を狙え!」
メタルバードの指示の元、HEADと幹部衆そして黒衣衆はコカの発火する血が付着した関節部分を集中的に攻撃していく。
「いいぞ、動きを止めていられる!」
攻撃の間、変異ラッグの動きを封じていられる事を確信するメタルバード。だが、そんなメタルバードに大将たち赤塚組が攻撃しながらも反論する。
「簡単そうに言ってくれてるが、コッチは銃器で狙いを付ける事も侭ならないんだぞ」
激しい動作と地響きで上手く標準を合わせられない大将達の発言に、メタルバードも言い返す。
「お前達なら簡単だろ?」
「コッチはお前らと違って
そう二人が言い合っている最中、地中から変異ラッグの巨体から伸びてきた触手が迫ってきては、その尖った形状の先端が攻撃する皆々に襲い掛かる。
触手の鋭利な攻撃に辛うじて回避する一同。そんな状況下の中でも一行は果敢に変異ラッグの関節部分を集中的に攻撃し続けていく。
だが、変異ラッグも攻撃され続ける足を上げては、その鋭い先端で地上の面々を踏み付け串刺しにしようとしてくる。そんな変異ラッグの攻撃にHEADや幹部衆そして黒衣衆は上手く回避しながら反撃に移る。
そしてようやく攻撃を集中させていた関節が砕けては、変異ラッグの足を一本損失する事に成功した。
「やっと1本か」
苦労して、やっと一本の足を失くさせた一行だったが、大将がそれでも未だに聳える変異ラッグの巨体を見上げては皆に言う。
「俺たちも長くは、もたないぞ」
するとメタルバードが新たな指示を皆に告げる。
「よし、別の箇所も続けて行くぞ!」
その指示に従い、メタルバードと一行は変異ラッグの死角へと移動すると他の足も同様に関節から攻撃しようとした。
しかし「何だ?」変異ラッグの腹部から何かが飛び出てくるのを大将や皆が気付く。すると変異ラッグの腹部から多数の球体が排出される様に放たれてきた。
「分裂?」
体の細胞を分裂させる様に、体内から球体を放出していく様を見てミュウザクロが言葉を発する。そして体内から分裂し放たれた球体に攻撃が当たると、それが化学反応を起こしたのか一瞬で爆発したのだ。
「爆発したぞ」
放出されていく球体が爆発していく様を間近で見た者達が怯んでいる最中、山崎貴史が「これを利用すれば……!」と思い立っては放出される球体を次々に機関銃で攻撃していく。すると攻撃を受けて爆発する性質を利用して、球体が自分達に直撃する直前に、全ての球体を爆発撃破する事が叶った。
そして全ての球体を処理し終わると、一行は即座に変異ラッグの足関節への攻撃に転ずる。
だが関節へ集中攻撃していくその最中、地面から飛び出てきた変異ラッグの触手が、その鋭い先端で攻撃していく者達を狙っていた。それに気付いた面々は、即座に自分達を狙おうとしている触手に攻撃しては、触手を撃退させては地中へと退避させた。
そして再び関節部位への攻撃に集中する一行。その時、攻撃していく最中にもコカがその場に駆け寄っては自身の発火する血液を右腕から放出させては、変異ラッグの関節に直撃させる。
「任せて!」「コカ、無理するな」
そんなコカにメタルバードが声を掛ける中、彼女が放出した発火する血を浴びて炎上する関節に更なる追撃を続行する一行は、遂に関節部分を破壊しては変異ラッグの二本目の足を奪う事に成功する。
「やった!」「何とかなったわね……」
二本目の足を破壊されて、山の様にその巨大が崩れる様を見て歓喜する女性達。だがそんな喜々とする地上の面々に変異ラッグは彼らの行為を嘲笑うかのように語り出す。
「私は何度でも再生する。前よりも強さを増して! 飲み込んだもの、全てと一体となるのだ! お前もだ、コカ!」
「そうはさせねえ!」
変異ラッグのその言葉を聞いたメタルバード達は、彼の思い通りにさせまいと体勢を崩した変異ラッグの前へと立ち回った。
(俺達の今まで見てきた世界は、ほんの一部だけだった。無限の可能性と共に、無限の危険性をも秘めた、全く新しい世界が、今、俺達の目の前にある。バーンズ、アッコ、そして修司……お前達は今まで、これほどまでの脅威と人知れず戦ってきたんだな。それがお前達の成せる正義の一つ……自分達の命も惜しまず未知の脅威にまでも挑んでいく、その意思こそが……お前達が修司から受け継いだ意志の賜なんだな)
人智を超えた未知なる生物脅威にも、怯む事無く果敢に挑み続ける聖龍HEADの勇姿を目撃して、大将は改めて彼らの強靭な意志を見直した。
[決着]
だが、皆が変異ラッグの前へ移動しその巨体に戦闘態勢を向けた次の瞬間、その巨大な全容姿の頭部と思わしき白い尖った形状の殻が、突如開いては中からウィルスで巨大化した植物と一体化したラッグの変わり果てた姿が、その容姿を露にした。
「私の真のパワーを見よ!」
植物と同化し変わり果てた姿から、身振り手振り己の主張を語り続けるラッグ。だがその時、ラッグの様子が変わり始めた。
「な……何だ、これは! どういうことだ!」
小刻みに震えるラッグ、彼の意思と連動するかのように纏わり付く朱肉は震え続ける。
「体が……! Dが私を取り込んでいく!」
ラッグの意思がそう叫んだ次の瞬間「何故だァ!」と絶叫すると同時に、ラッグはその変わり果てた姿を巨大な体内に飲み込まれてしまった。
「お父様!」
父のラッグの叫びを目の当たりにした娘のコカは悲痛な叫びを上げる。
「ウィルスに飲み込まれたぞ!」
完全にD-ウィルスに精神と肉体を吸収されるラッグを目撃し、メタルバードは愕然とした。
「普通の人間が制御できる筈ないのよ」
そしてメタルバードと同じくウィルスに取り込まれるラッグを目の当たりにして愕然と語るキューティーハニー。
(あんたじゃ、弱すぎて制御できなかったようだな。ラッグ……)
(強力な能力であればある程、並大抵の人間では制御する事は困難なのよ)
ウィルスに飲み込まれてしまったラッグを見て、大将とミズキはラッグの末路に哀れみに近い感情を向ける。
そして完全にD-ウィルスに意思を取り込まれたラッグは、もはや自我を失くしては眼前の一行に襲いかかって来た。
「来るぞ!」「構えろ!」
完全にウィルスによって支配された変異ラッグの荒々しい様子に表情をしかめるジュピター・キッドに対し、その変異ラッグの敵意にメタルバードは皆に応戦の構えを取るよう指示を告げる。
一行は再び、ラッグを取り込んだその巨体の頭部目掛けて攻撃していき、同時に放たれる巨大鎌の攻撃にも身を低くしては回避しつつ応戦していく。
(修司から生み出されたウィルスの可能性……それは無数の未来を生み出す可能性だ)
変異ラッグに攻撃しながら大将は思い耽ってた。
(そう、世界を救う事も……滅ぼす事も! 数多の特殊能力と同じ可能性を秘めた力、それがD-ウィルス!)
電撃/炎/風/打撃/斬撃など多種多様な攻撃で攻め続けるHEADに、強力な銃火器を中心に応戦する幹部衆、更に黒衣衆のガトリンガーと大闇も得意の飛び道具で果敢に攻めていく。そんな中、変異ラッグの触手が再び地中から攻撃していく地上の面々に向かって進攻してきたのが一行の目に入ってきた。
「来やがった!」「回避しろッ」
地中から進攻してきた触手に、大将とメタルバードは大声で叫ぶ。そして皆、瞬時に自分達に向かってきた触手の強烈な攻撃に身をかわした。そんな戦況の中ですら、大将はこれ程までに一人の人間を変異させたD-ウィルスについて思いを馳せていた。
(力を使いこなせれば、世界を思うがままにする事も救済する事も可能だ! 問題は、そのどちらかに自身を導いていけるかだ)
更に大将は、傍らで共に戦い続ける聖龍HEADに横目を向けながら思った。
(これだけ強力な力、確かに野放しにはできないよなHEAD……これほど人を狂わせられる力は、単に世界を混乱させ破滅させるだけだ。怖いのに、恐ろしいのに立ち向かっていくお前ら聖龍隊は……いつまで戦い続けなきゃいけないんだろうな)
大将は次第に、延々と戦い続ける宿命を背負う聖龍隊に向けて哀愁に近い感情を向けていた。
各々が眼前に聳える変異ラッグに猛攻を仕掛ける中、コカが自身の発火する血を変異ラッグに向けて火の玉として放った。
「すべて燃やし尽くすわ」
そう言いながら、コカは何度も自身の右腕の傷口から大量の血を放出させては、燃えて火の玉と化した血液が変異ラッグへと直撃していく。
「大将ッ、お前らもっと撃て! コカの頑張りを無駄にするな!」
「分かってらァ!」
コカが自身の血を失いながらの追撃に、メタルバードは大将たち赤塚組幹部衆に更なる追撃を指示していく。当の大将達は当たり前の如く派手に迎撃しながら力強く返事する。
HEADの特殊能力による連続攻撃、幹部衆の激しい迫撃、更にはコカの自身の血を使っての発火攻撃を受け続けて、変異ラッグは次第に弱まり始めた。
しかし、それでも尚コカは惜しみなく自分の血を放ち眼前の変異ラッグに火炎攻撃を続ける。その場景にメタルバードが彼女に言い寄る。
「コカ、もういい! それ以上、血を使うな」
メタルバードは惜しみなく自身の血を噴出していくコカを心配し、すかさずHEADの同士に告げた。
「お前らコカを止めろ! これ以上、彼女に血を使わせるな……死ぬぞ!」
その言葉を聞いて、HEADはコカに駆け寄っては彼女に言い寄った。
「コカ、もういいわ」「あなたは下がってて」
それ以上、自身の血を使わせない様にコカに優しく言い寄るマーキュリーとナースエンジェル。二人がコカを後退させるのを視認し、木之本桜がカードを片手に構えて語り始める。
「これ以上、コカちゃんに血を使わせる訳にはいかない。コカちゃん、あなた以外にも炎を使えるのよ。そう、私も」
そして木之本桜は構えていたカードを唱える。
「ファイアリー!」
さくらはファイアリー(炎)のカードを発動させて、変異ラッグに向けて紅蓮の炎を放った。
「私達も続きましょう」「うん!」
さくらに続いてセーラーマーズと獅堂光の両名も激しい火炎の攻撃を変異ラッグに向けて放射していく。
数多くの攻撃を受けて、遂に変異ラッグはその巨体を横転させ地に体を沈める。
「とどめだ!」
横転した変異ラッグに最後の攻撃を仕掛けるため、メタルバードは砂煙舞う中を駆け出しては変異ラッグに仲間と共に駆け寄った。
一同が力尽き倒れた変異ラッグに駆け寄ると、開いていた頭部の内部からウィルスによって吸収されたラッグ本人が弱々しい声で駆け寄ってきた皆々に言った。
「私を殺してくれ……」
ラッグの最後の言葉を聞いて、メタルバードは左腕の砲身をラッグに向け右手を上げて肩より高く上げては変貌したラッグを見据えながら言った。
「……ああ」
そして次の瞬間、メタルバードは上げていた右手を下げた瞬間、周囲の仲間たちは一斉に弱点でもあるラッグが吸収された頭部内部を攻撃した。
皆の攻撃を浴びた変異ラッグは、攻撃を一身に受けた頭部部位から大量の血を噴き出してながら、もがき苦しんだ。そしてそのまま、大量の血を噴き出しながら断末魔を上げてはその巨大な全貌を完全に地へと寝かせた。
力尽き絶命した変異ラッグ、その巨体からウィルスの影響なのか、はたまたコカや聖龍HEADの炎攻撃による影響なのか、激しい炎が発生し瞬く間に山のような巨体が火に包まれていった。
そして変異ラッグの巨体は火達磨に包まれ、その亡骸は炎によって焼失していった。
[静寂]
D-ワクチンで巨大化し変異した植物と融合し迫ってきたラッグを、苦労のすえ撃退する事ができた聖龍HEADに赤塚組幹部衆、そしてラッグの許に身を寄せたというかつての同胞に接触しに来た黒衣衆の面々。
体内のDによるものか、それともコカの放った発火する血液の作用なのか、死に絶えると同時に激しく炎上する変異ラッグのその巨大な亡骸を前にして、変身を解いたバーンズとジュニアが険しい面立ちで語り合っていた。
「ラッグは倒した、そしてコカも無事とは言い難いがどうにか化け物に変異する事無く落ち着いてくれた。だが……」
「うん、結局ラッグが率いていた「聖なる蛇たち」の軍隊が関わっていたと思われる新世代型の失踪については、依然として情報が全く無い。あるとすれば、ラッグが変異する前言っていた「ある企業との取引で使わせてもらった」って言っていたけど……おそらくはコカに移植する為の臓器を手に入れるため、臓器と彼ら新世代が交換されたんだろう」
「そうだな……だが、その企業ってのが未だに不明だ。これじゃ失踪した新世代が何処にいるのか、皆目見当が付かねえぜ」
ラッグが誘拐/失踪に関与していると思われた新世代型二次元人の行方。しかし彼らに関する情報は、ラッグの居城にはもちろん彼の口から明かされる事も無く、ラッグが死亡した事により暗礁に乗り上げてしまった聖龍隊。新世代型の二次元人たちは、一体どこに連れ去られてしまったのであろうか。
と、その時。バーンズとジュニアが話し合っていると、そこに黒衣衆の面々が歩み寄っては二人に話し掛けてきた。
「ふふふ……お二方、どうもこれから先の行く末に一見を見出せないでいるようですな」
「チッ、まだ居るのかよ……もう、お前達がオレらと一緒に意味は無ェぜ。さっさと姿消さねェと、オレが修司に代わってお前らをぶちのめすぞ」
「ふふふふ、おお怖い怖い」
話し掛けてきた黒衣衆のガトリンガーに舌打ちしつつ強面で反論するバーンズ、それにガトリンガーは不気味に微笑で言葉を返した。
するとガトリンガーに続き欲尼がバーンズ達に話し掛けてきては同時にある物を二人に差し伸べた。
「そうね、私達があなた達と一緒に居る理由はもう無いものね。それと同じで、私達にとってはこれもまた必要のない物」
「ん、何だそれは?」
欲尼が差し出した物を見てバーンズが問い返した。それは一枚のデータ保存用のSDカードであった。そして、そのカードに対して大闇行蘭が述べ始める。
「わらわ達が此処に……ラッグの許へ立ち寄る前に手に入れた情報よ。それに、かつてのわらわ達の同胞がラッグの許に身を寄せた事が記されてあったのじゃ」
大闇に続き、損尼もバーンズ達に述べていく。
「そう、そして何より……このデータはラッグと裏で繋がっていたと言われる企業を通じて入手したのよ」
「な、何だと!?」
損尼の発言に衝撃を受けるバーンズ、すると其処に白蓮坊が意味深な言動を突きつけて来た。
「ラッグが裏取引で人間の臓器と交換したって言う新生代型……もしかしたら、そいつ等が連れて行かれた企業ってのが、そのデータの入手元の企業なのでは?」
『…………!』
黒衣衆の話を聞いて愕然となるバーンズとジュニアは自然と手渡されたSDカードに目先を持っていった。
そしてバーンズが再び顔を上げてみると、其処には既に黒衣衆の姿はなく、彼らは何処かに消え去ってしまってた。
「あ、あいつ等……!」
煙のように姿を消した黒衣衆の姿を探そうと辺りを見回すバーンズ、だが彼らの姿はどこにも無かった。
その場に残されたのは、彼らが入手したという企業の情報が入ったSDカードと不気味なほどの静寂だけであった。
その後、HEADと幹部衆は要請に駆けつけた聖龍隊の部隊移送用の巨大ヘリに搭乗しラッグの居城を後にした。その中には無論、父であるラッグによってウィルスを投与され、更に戦闘の最中そのウィルスに覚醒した少女コカもいた。
ヘリの中、ラッグの居城を険しい面持ちで見据える大将や幹部衆の面々。そんな疲労困憊で重く苦しい空気に包まれるヘリの中、コカが悲しげに呟き始めた。
「死ぬべきだったわ。父と一緒に……」
そんな悲しく呟くコカの言動に、彼女の側らで腰を据えていたミラーガールが優しく話し掛ける。
「あなたが死ぬ必要なんてないわ。これからもあなたは、生き続けなきゃ」
ミラーガールは優しい微笑でコカに変わらない態度で話し続ける。
「コカ、あなたには生きる義務があるわ。そう、体の中の少女達の為にも……」
父によって誘拐され、強引に自分の体内に臓器を移植された多くの罪無き少女達。その少女達の為にも行き続けなければいけないと悟られるコカは、ミラーガールの訴えに対し力強く頷くのだった。
そしてコカとミラーガールは、開放されているヘリの横ドアから夕日に染まる東南アジアのジャングルその美景を眺めた。
そんな光景を同じ機内で眺めながら、大将はコカに対して人知れず感じてた。
(コカ……お前さんも、この世界に生きる新たな能力者に……生命体として生まれ変わったんだな。おそらく、これからお前さんは能力者として険しい茨の道を歩む事になるだろう。俺の周りにも、そして聖龍隊にもそんな輩が五万といるから良く解る)
更に大将は、そんなコカに優しく接し続けるミラー・ガールや聖龍HEADの面々に視線を向けては彼らに対しても同じように思う。
(バーンズ、アッコ。俺はもう、お前達に対して何も言わねえ。例え、俺達とお前らがコインの裏表の関係であろうとも……俺たち赤塚組も同じ、修司の意志を酌む輩だって事を忘れないで欲しい)
その後、コカの身柄は国際連合に預けられ、ウィルス保持者という理由で厳重な監視体制を敷かれるのだった。
しかしその後、彼女の肉体が変異したという報告が聖龍隊に入る事はなかった。
コカが自我を、心を持ち続けられた理由とは?
遺伝的作用? 生命溢れる東南の熱帯雨林の地のおかげか?
ウィルスは、力は増殖を続ける。形を変え、より強さを増しながら
人の体の中で……人の心の中で……人が望む限り、永遠に……
その後、HEADと幹部衆は黒衣衆より手渡された一枚のデータカードより、ラッグと関わっているとされるアジアの企業へと向かう。
そこで彼らを待ち受ける、新たな脅威と戦いを
今は誰も知らないのだった。