原作知識があればみんなを幸せに出来る…はず   作:UUNO

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第7話

 

 

『後日 配属兵科を問う。本日はこれにて『第104期訓練兵団』解散式を終える…以上!』

 

「「「ハッ!!」」」

 

 

 

偉そうな年寄りたちの長話で退屈していたが、ようやく解散式が終わった。僕はどうせ調査兵団行きが決まっているので、上位者10名に入ってしまったら他の訓練兵の選択肢を奪う事になってしまう。

 

なのでユミル同様定期的に手を抜いていた。命を懸けて戦わねばならない兵士を育成する機関で、手を抜いて訓練する人間が評価されるはずもなく、問題なく上位者10名から外れることが出来た。

 

 

 

今は…日が落ちてから3時間ってところか。トロスト区襲撃まであと12時間もないかもしれない。明日、ここに居る訓練兵の何割かは確実に消えてしまう。緊張からか焦りからか食べ物も喉を通らない。こんなに感情を覚えたのは前世でも今世でも初めてだ。

 

 

 …だめだ。このままここにいたらエレンとジャンの言い合いに確実に首を突っ込んでしまう。今彼らの戯言を受け流すだけの余裕を僕は持ち合わせちゃいない。喧嘩で体力を使うなんてバカらしいことはしたくないので、早々に立ち去るとしよう。上位者10名に入っていない僕が5番と6番を制圧なんてしちゃったら2人のメンツも潰れちゃうしね。

 

 

 

「サシャ」

 

「?なんれふか?」 

 

「食事中にごめんね。今日は少し食欲が湧かないから僕の分も食べてくれないかい?」

 

「っ‼︎ほんとうれふか!」

 

「うん。ちゃんと噛んで食べなよ?」

 

「わかりはひた!」

 

 

 

どうやら僕の話よりも食事に夢中なっているらしい。邪魔しちゃ悪いしさっさと部屋に戻ろうかな。…とうとう明日だ。明日の結果次第で全てが決まると言っても過言じゃない。

 

今までみんなの見てないところで血が滲むなんて言葉じゃ表し切れないほど努力してきた。そのせいで死を覚悟したのだって一度や二度なんてもんじゃない。その全ては明日。原作になるべく近づけつつ、なるべく少ない被害でトロスト区の襲撃と奪還を乗り切るためだ。

 

 

 ふつふつと気持ちが昂ってくる。…いけない。感情的になったらダメだ。常に冷静に立ち回らなければ。明日を乗り越えられないようならハッピーエンドなんて夢のまた夢だ。今日はもう寝て、明日のことは明日の僕に任せるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 ◾︎

 

 

 

 

 

 

 

賑やかな朝だ。ここにいる人たちは数時間後に壁が壊されるなんて思ってすらいないのだろう。…予定より少し早いが、少し早めに配置に着いておこう。僕の班は固定砲整備第3班。

 

 

つまりエレン達の班の隣だ。かなり間隔があいているから何をしているかはっきりは見えないけど…今頃サシャが盗んで来た肉を食べるか食べないかのくだらない論争を繰り広げているとこだろう。

 

 

…これからベルトルトが壁を破壊して、この賑やかな街は巨人に蹂躙される。非常に憂鬱な気分だ。有事の際はリーブスさんと提携して避難誘導と物資の支援をして貰えるよう手配しておいた。多分これで避難が遅れる事は無くなるだろうけど、規模が大きすぎて訓練が出来ていないのが少しネックだろう。

 

 

 

 …来たか。この嫌な豪音を聞くのも5年ぶりだ。全く嫌になる。圧倒的な存在感と破壊力を持ち、僕ら壁内人類における死の象徴。距離の離れた僕たちの班にまで聞こえてくるその轟音と爆風の根源へ目を向けると、早々に固定砲と開閉扉に穴を開けてしまった。

 

 

 

「総員!直ちに超大型巨人出現時の持ち場に就け!」

 

 

固定砲整備第3班班長の声が僕の耳に届いた。5年も音沙汰無かった超大型巨人がいきなり現れて即座に指示ができるあたり、彼も有能だと言って良いだろう。

 

 

 

 

「それでは訓練通りに各班ごと通路に分かれ駐屯兵団の指揮の下補給支援・情報伝達・巨人の掃討等を行ってもらう。前衛部を駐屯兵団が。中衛部を我々率いる訓練兵団が。後衛部は駐屯兵団の精鋭部隊が。…我々はタダメシのツケを払うべく住民の避難が完全に完了するまでこのウォールローゼを死守せねばならない。なお…承知しているだろうが敵前逃亡は死罪に値する。みな心して心臓を捧げよ。解散!!」

 

「「「ハッ!!」」」

 

 

 

僕が振り分けられたのは中衛部後方の30班。エレンが班長を務める34班は中衛部前方なので、持ち場がかなり離れる。戦場が混乱して来たら合流してもいいが、その時にはエレンは巨人化してしまっているだろう。

 

 トーマス達も助けたかったが…30班の班長はライナーだ。真面目で責任感の強いマルセルを真似ている彼が、上位者でもない僕が勝手な行動を取るのを許してくれるとは思えない。

 

 

もし抜け出せて助けに行っても間に合わない可能性もあるし、仮に間に合ったとして彼らを救ってしまうとエレンが巨人の力を発現するイベントがなくなるかもしれない。そうなってしまうと今度はライナー達にローゼの内門を破られる可能性が出てきてしまう。それだけはダメだ。

 

 

 内門まで破られたら兵士たちが何人いても足りない。住民がシーナに避難する頃には兵士は誰も残っていないだろう。それに…どうやら間に合いそうもない。遠くからざっと見ただけでもかなりの巨人がいる。前衛まで駆り出されているエレン達の班はもう壊滅寸前だろう。

 

 

 

そして……足元に転がっているのはつい昨日まで僕と食事を共にしていたモノ。…彼らが死ぬことはわかっていた。覚悟もしていた。しかしいざ目の当たりにするとやはり少し心にくるものがある。

 

本当なら花のひとつでも手向けてあげたいが…今はそんな悠長なことは言ってられない。とりあえず近くの巨人を片して訓練兵のみんなが固まっている屋根裏を目指すとしよう。いくら場所がないからってあれは一箇所に固まりすぎだ。

 

たまたま本部に巨人が集まっているから良いがあれでは身動きが取りにくくなってしまう。ついでに死体から何本かガスを拝借していく。君たちの無念は僕が晴らすから、許しておくれ。

 

 

 

 

 

「私は…強い…あなた達より強い…すごく強い!…ので私は…あそこの巨人共を蹴散らすことができる…例えば…一人でも。あなた達は…腕が立たないばかりか…臆病で腰抜けだ…とても…残念だ。ここで指をくわえたりしてればいい…くわえて見てろ」

 

「ちょっとミカサ?いきなり何を言い出すの!?」

 

「あの数の巨人を相手に一人で相手する気か?そんなことできるわけが…」

 

「…できなければ…死ぬだけ。でも…勝てば生きる。戦わなければ勝てない…」

 

「ちょっとまって!!」

 

「リアム!?無事だったのか!」

 

「うん。ちょっと寄り道してただけだよ。ギリギリ間に合ってよかった。」

 

「…間に合ってよかった?あなたは…何を持っているの?」

 

「殉死した彼らから使えそうなガスを何本か拝借してきた。そんなに多くはないから壁を登れる程じゃないけど…それでも、本部に突っ込むくらいは出来るはずだ。僕はもうすでにガスを補充してあるからまずはみんなで分けてくれ」

 

 

「お前…そんなことを…」

 

 

「ほとんどの遺体は損傷が激しいから使えそうなガスはもう残ってない。ミカサは僕と一緒に先導と巨人の排除を頼みたいから1番ガス付有量が多いこれを」

 

「…わかった。あなたの指示に従おう」

 

 

「よし。…聞いてたか!僕とミカサが先導する!生きたいやつはついて来い!」

 

「あいつ…俺より弱いくせに生意気な事言いやがって…!」

 

「…リアムのヤロォ…やってくれるじゃねぇか…お前ら!上位10名にも入ってねぇ奴がこんだけお膳立てしてくれたんだ!ここで動かねぇと本当に腰抜けになっちまうぞ!」

 

「そいつは心外だな…」

 

「や、やい腰抜け!弱虫!ア…アホ!」

 

「あいつら…」

 

「ちくしょう…やってやるよ…」

 

「「「「「うおおおおおおおおおお!!!」」」」」

 

「急げ!」

 

「二人に続け!」

 

「とにかく短期決戦だ!補充したとはいえ心許ねぇガスがなくなる前に本部に突っ込め!」

 

 

 

 

 

 

よし。上手く乗せれたみたいだ。多分これでミカサのガス欠は回避できるだろう。少し原作と違う行動になってしまったが…仕方ない。原作で避難誘導を遅らせていたリーブスさんが商会を使って僕達を手伝ってくれたおかげで原作より早く撤退命令が出ているはずだ。

 

 

タイミングがズレたならエレン巨人がミカサを助けれないかもしれない。これで本来アルミンの作戦で行う予定だったエレンの誘導は必要なくなった。そうなると彼らが巨人の正体に気付けなくなってしまう。

 

 

そうならないようガス探しの時に先に本部周辺まで誘導しておいた。これでエレンの生存確認をしてミカサが安心出来るってものだ。最終章の彼女ほんとに報われないから少しでも幸せになって欲しいよね。

 

…さて。やっと本部が見えてきた。ここからはミカサとアルミンの仕事だ。

 

 

 

「ミカサ!あとは任せた!」

 

「…!?何を言って…」

 

「行け!本部に突っ込め!」

 

 

 

 

よし。ほとんど欠けることなく無事にみんな本部の方へ向かって行った。本来生き残る人数よりもかなり多いはずだ。…やっぱり必要な死と割り切っても堪えるものは堪える。

 

全てを救えると思うほど傲慢ではないし、僕が助けれるのはせいぜいこの手の届く範囲だけ。だからせめて手を伸ばせば救える命はひとつも漏らさずに救いたいと思っている。

 

 

そもそも、僕が目指していたのは全員が笑って終われるハッピーエンドだ。そのために一般兵士達が死んで良いと言うのはお門違いにも程がある。彼らもまた帰る場所がある一人の人間なんだ。

 

だから…僕の身を削ってでも彼らを助けて見せる。彼らがガスの補充を終えるまで本部に巨人は通さない。エレンと僕の共闘で何としても時間を稼いでやろうじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

「オイ!リアムはどうした!おっ死んじまったのか!?」

 

「本部に突っ込んでくるまではいたぞ!」

 

「…!あいつ、本部の外にいる巨人と戦ってやがる!」

 

「…あのヤロォ…カッコつけやがって…!」

 

「やめろ!ジャン!今外に出ても死ぬだけだぞ!」

 

「っ!…くそっ!…死んだらただじゃすまさねぇぞ…リアム!!」

 

 

 

 

 巨人の数がだいぶ減ってきた。みんなが本部に入ってからかなり時間も稼げたしエレンもまだピンピンしているりなんなら僕が手伝ってるせいで物足りなさすら感じてそうだ。

 

ほとんど討伐は終えてるが…最後の一体は出来ればみんなが出てくるタイミングで倒し切りたい。今回エレンの巨人化が持つ強い目的意識は、巨人を殺す。出来るなら仲間を殺した巨人を殺せたらなお良い。ってとこだ。

 

目的を達成したら巨人化が解ける以上、みんなの目の前で巨人を殺し尽くし、巨人のうなじから食われたはずのエレンが出て来るところを見せておきたい。3年間僕が関わったマーレ組が今後どう動くか知りたいのは勿論だが、さっきも言った通りミカサを安心させてあげたい気持ちが大きい。

 

 

「おいリアム!ガスの補給は完了した!とっととこっちに来やがれ!!」

 

 

「了解!僕も少しガス補充する!」

 

 

無事本部内の巨人を討伐してガスの補充も終えたようだ。うーん、やっぱりジャン怒ってる?彼は元々死に急ぐ生き方は好きじゃないみたいだし仕方ないかもな。みんな続々と出てきているしそろそろエレンと奇行種をぶつけて僕も合流しよう。

 

 

「いやぁ、危なかった。もう少し遅かったら全然死んじゃってたよ」

 

 

「…アンタ生きてたんだね」

 

 

「当たり前でしょ。僕が無謀なことをするタイプじゃないことくらい知っているじゃんアニ」

 

 

「何の策もなかった癖によく言うよ…」

 

 

「あ、やっぱバレてた?」

 

「リアムテメェ…自分で発破かけといてカッコつけた真似すんじゃねぇよ!!」

 

「そんなに怒んないでよジャン。僕はみんなの生存率が一番高い方法を取っただけだ。実際、僕のおかげで生き残った兵士が何人いる?」

 

 

「それとこれとは話が違うんだよ…!」

 

 

「そんな事より…今はあいつだ。巨人を殺す巨人。みんなも気になってるんじゃない?」

 

「…確かに…どうにかしてあの巨人の謎を解明できれば…この絶望的な現状を打開するきっかけになるかもしれないと思ったのに…」

 

「同感だ!あのまま食い尽くされちゃ何もわからず終いだ!どうにかしてあの巨人を生け捕りにして調査すべきだ!」

 

「正気かライナー!!やっと…この窮地から脱出できるんだぞ!?」

 

「たとえばあの巨人が味方になる可能性があるとしたらどう?…どんな大砲よりも強力な武器になると思わない?」

 

「!?……味方だと…?本気で言ってるのか!?」

 

「あ…あいつは…トーマスを食った奇行種……!?」

 

アアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

 

 

「…!顎の力だけでうなじをえぐり取った…!」

 

「まるで巨人の弱点を理解しているような動きだな…」

 

「あ…!」

 

 

「流石に力尽きたみてぇだな。もういいだろ……ずらかるぞ!あんな化け物が味方なわけねぇ。」

 

「「「…」」」

 

「……?オイ…?」

 

 

 

ここまではおおむね順調だ。多少の違いはあったがほとんど原作通りに進めている。とりあえずは第一関門突破というべきか。しかしキッツ率いる駐屯兵団とその後のトロスト区奪還作戦。加えて法廷での裁判まで、少しでも間違えたらエレンが死にかねないことに変わりはない。気を抜いてうっかりなんて事がないようにしなくちゃね

 

 

 

「一体…何が……」

 

「これをエレンがやったってことか…?」

 

 

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