原作知識があればみんなを幸せに出来る…はず   作:UUNO

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第9話

トロスト区奪還作戦から数日あけた今日。他の兵士たちがトロスト区内の巨人を掃討したり、戦場の処理をしている間、僕は病室のベッドに腰を下ろしていた。

 

今回僕は原作とは多少違う動きをしてみた。よくバタフライエフェクトという、前世では些細な出来事で未来が変わるという現象を耳にしたが、今のところ原作と差異はないようだ。

 

多分、この世界は多少のことでは原作崩壊しない…と、思う。というのも、僕はちょくちょく原作を崩壊させかねない動きをしてきた。クリスタの件やアニの件。そして今回の件などなど。しかし、実際は原作通り進んでいる。

それが引っかかりすこし考えてみたのだが、多分この進撃の巨人の世界は歴史の流れが強すぎるのだ。バタフライエフェクトが起こっていないんじゃなくて、バタフライエフェクトが起こった上で原作に沿って動いている…というのが近いか。運命的な力が作用しているのか未来のエレンが操作しているかは分からない。けど僕が少し何かを変えたくらいで結末がガラリと変わってしまうことはないと思っていいはず。

 なので今後は多少は原作から外れた行動も視野に入れていく。まぁ、読めなくなると困るから原作に沿って行動してきたが、パラディ島の敵であるマーレ勢や世界各国との和平が最終目標である以上、島の中でどれだけ原作崩壊を起こそうが大丈夫なんだけどね。

 

 

 

…時間的に見てそろそろエレンの審問が始まるだろう。本来ならば僕も参加したかったのだが、医者に止められてしまった。傷は全部浅いしなんの問題もないと伝えたのだが、問題がない事が問題なのだと。

実際にこの目で見れないのは少し不安だけど…エレンが意識を失いミカサに殴りかかっていない為、原作より少しだけ楽に調査兵団へ入れるだろう。憲兵団団長は上に言われて嫌々参加している審問なだけに、本気でエレンを取りに来ているエルヴィン団長達に舌戦で敵うはずもないし、原作通り進むとみていいはずだ。

 

 

この数日後のソニーとビーンが殺害される頃には満足に歩かせてもらえるだろう。復帰したらすぐに新兵勧誘式がある。その前にアニに会っておきたい。

 彼女はこの後憲兵団に入る為、今この時を逃したら次に会うのは戦場…壁外調査のときだ。戦闘の結果僕かアニのどちらかが死んでしまったらもう2度と会うことは叶わない。仮に結晶化したとしても、僕は彼女に会いにいくつもりはない。そうなれば全てをアルミンに任せるつもりだ。

 そこまで原作通りに話が進んでいってしまっているのなら僕の介入は必要ない。アルミンが5年かけてアニを堕とすだろう。そうなってしまうと僕はただのおじゃま虫だ。それは少し…というより、かなり堪える。…うまく喋れるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁアニ。一週間ぶり。少し話さないかい?」

 

「…あぁ。ちょうど私もアンタ聞きたいことがあ

ったんだよ」

 

「うん?なんだい?」

 

「アンタ…なんで訓練で手を抜いてたんだ?」

 

「少し事情があったんだけど…それが無くなってね。だから今後は手を抜かないよ。…たとえ相手が君だったとしても」

 

「…そう」

 

「あぁ。…それよりアニは憲兵団に行くんだろう?」

 

「そうだけど」

 

「なら君と会うのもこれで最後になるかもしれないね。君は強いから、人を相手にしても殺してしまわないように気をつけなよ。そうすれば…あとは僕がどうにかしてあげるからさ」

 

「なんだいそれ…別に誰も殺しゃしないよ」

 

「……本当だね?約束だよ?」

 

「…?あぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…少し含みを持たせる程度を予定してたんだが、喋りすぎてしまったな。そろそろ彼らも僕というイレギュラーに気付いているんじゃないだろうか。ライナーやベルトルトは調査兵団に入るだろうし、僕ももちろん調査兵団だ。つまり、コンタクトを取ろうと思えばいつでも取れる。そのうち彼らの方から訪ねてくるだろう。

 

ベルトルトは…原作通り行けばアルミンの餌になってしまうだろう。ライナーは放って置いても最後まで生き残るはずだ。アニはまだ直接的に人を殺したり壁を壊したりしたわけじゃないので、頑張ればまだ調査兵団に引き込める。

 団長が無理そうだと判断したらザックレー総統に現王政の人間を芸術に変えることと引替えに優遇してもらおう。彼らは僕のハッピーエンドには必要ない。

 

 

…ひと月後の壁外調査で、アニが人を躊躇いなく殺すのならば僕も彼女を止めなければいけない。それ以外なら…出来る事なら調査兵として迎え入れたい。そのための下準備は済ませとかなきゃね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『第57回壁外調査を開始する!!前進せよ!!』

 

 

 

 

僕らが調査兵団になってはじめての壁外調査が始まった。僕はカラネス区内ではエレンの援護班で、索敵陣形展開後は中央の荷馬車護衛班で、リヴァイ班の左斜め後ろだ。

 この位置を獲得するためにエルヴィン団長やリヴァイ兵長に何度か直談判しにいったところ、思った以上にすんなり受け入れてもらえた。なんでもトロスト区奪還作戦を死者1名で成功させてみせた僕に期待をしている…とのことだ。

それならと思い、適当な辻褄を合わせながらミケ分隊長やミカサなどの手練れを右翼側に配置してみたらどうかと進言したが、これまたすんなり受け入れてもらえた。どうやら彼らの中でも色々と試行錯誤している段階らしく、今回はいくつかある候補に入っていた左右の翼の強化を優先させた陣形で行くそうだ。

 

なのでアニが多数の巨人を連れてきてもかなり少ない被害で乗り切れるだろう。

前回のように0で…とは言わない。急な来敵と違い、僕ら調査兵団は自ら死地を訪れる者たちだ。彼らもある程度の覚悟はしている。

 

 

 

 

 

 

 

アニは…どうしているのか。平地に出てからの時間を考えるともうそろそろアルミン達と接触しているくらいなのかな。僕がクリスタを変えてしまった事でアルミン達に2頭の馬を連れていかなかったらどうしよう。…まぁヒストリアでも別に人の命を軽んじることはしないはずだ。女神か口うるさいヒストリアか…ぐらいの違いだろう。ライナーはどちらでも喜びそうだが。などとぼんやり考えていたら右側から口頭伝達が回ってきた。

 

 

 

「口頭伝達です!!右翼側に数体の巨人!!応戦している模様です!以上のことを左に回してください!!」

「だそうだ。行ってこい!新兵!」

「はい!」

 

 

 

 

 

 

…数体?原作では多数の巨人を引き連れ、右翼索敵が1部機能しない甚大な被害を受けたはずだ。ミケ分隊長やミカサの存在を加味しても、やはり犠牲が少なく感じてしまう。アニは…叫びで巨人を連れてきてないのか?だとしたら…揺れているとみていいのか…?

 

 

 

 

「口頭伝達です!!右翼側に数体の巨人!!応戦している模様です!!以上のことを左に回してください!!」

「……聞いたかペトラ。行け」

「ハイ!」

「兵長!…来ました」

「…そうか」

 

 

 

アニや知性巨人の存在は先んじて団長達に伝えてある。この壁外調査でエレンが狙われる可能性が高い事も。先日のトロスト区奪還作戦で少し活躍した程度の新兵の言葉なんてそれほど宛にしていなかっただろうが…そんなもの、実績を残しまくって僕の発言を無視できなくしてやればいいだけだ。

 

オルオやエレンがなんのことか言及するだろうが、僕には関係のない。彼らのことはリヴァイ兵長に丸投げだ。……巨大樹の森が見えてきた。僕はアニがこの森に入り次第、増援に入らなければいけない。人間同士の時は僕の方が強かったが、巨人になったアニと人間の僕。力比べと行こうじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

◾︎

 

 

 

 

 

 

…ようやく森に辿り着いた。とりあえずは入り口付近の木に立って様子を見よう。このまま順当にいけばアニも来る頃なんだが……来たな。しかも5、6人の兵士を引き連れて。…目に見える限りでは…誰も殺してはいないか。攻撃はしているが、致命傷になるほどではない。むしろ殺さないように気をつけている様にすら見える。

 

こんなエレンを奪えるかどうかの瀬戸際ですら人を殺していないということはつまり…アニは、まだ誰も殺していない。と考えるのが自然だ。僕の言ったことを思い出して、人を殺すことを躊躇ってくれている…!

 これで僕は彼女を保護することに全力を注ぐ事が出来る。彼女が人を殺さないというのなら、僕も彼女の事を殺させない。…行けない。年甲斐もなく気持ちが高揚してしまっている。

 

彼女を生かす覚悟が固まった。今なら何でも出来そうな気分だ。アニの足止めなんて、僕1人で十分だと思えるくらいに気分が良い。まぁ足止めと言ってもアニの周りをチョロチョロ飛び回るだけなんだけどね。どうせうなじへの攻撃通らないし

 

 

「リアム!!!」

 

 

 

今の声は…エレンか?ふとエレンに目を向けると、なんとも形容し難いぐちゃぐちゃな表情をしていた。

 

僕のことを心配してくれているようだ。このままいけばエレンが巨人化しかねない。それでは作戦が丸々破綻してしまうので、出来るだけ心配をかけないよう、にこやかに。一言だけ声をかけておくとしよう。

 

 

 

「エレン!彼らを信じろ!」

「…!…進みます!!」

 

 

 

 

よし、あとは僕がアニを引きつけるだけの簡単な作業だ。攻撃は最小限。それも、移動には関係ない上半身をメインで刻んでいく。こんな走り回ってるアニの足にアンカーなんて刺そうもんなら振り回されて一瞬で脳みそのスクランブルエッグが出来上がってしまう。腱か膝裏を削れないこともないが、そっちは1歩間違えればサッカーボールだ。

 

…っと、アニのやつ、加速しやがった。ということはもうすぐアニが捕縛できるはず。あと一太刀入れれば僕も離脱するとしよう。切る場所は…腰あたりにしとくか。…良し。離脱だ。

 

 

 

『撃て!!』

 

 

すぐ近くでエルヴィン団長の声が聞こえたと思ったら、そのすぐ後に何かを射出した音が響き渡る。立体機動を駆使して音の方へ向かうと…成功だ。アニの捕縛に成功していた。僕は急ぎエルヴィン団長の元へ向かう。

 

 

「作戦は成功したようですね。団長」

「まだ油断はできない。しかしこのポイントまでよく耐えてくれた」

「右翼側の人たちがなんとか時間を稼いでくれたようなので。それがなければ不可能に近かったでしょう」

「そうか…」

「えぇ。…それよりもエルヴィン団長。少し女型の巨人と2人にしてもらえませんか?話したい事があるんです」

「…君がハンジと同じタイプの人間とは思わなかったな。」

「違いますよ。彼女だけ。特別です。上手くいけば彼女をあそこから引きずり出せるかもしれません」

「それなら最初から肉を削ぎ落とせば良いだろうが。何を言ってやがる」

「兵長。…彼女に何度か刃を突き立ててわかった事があります。彼女は任意の場所を硬質化できるはずです。」

「…どういうことだ」

 

「あの巨人の視界から攻撃をしかけた際、刃が通らない場合がありました。死角から同じところを攻撃した時は通っていたので、任意で体を硬化できると見て良いはずです」

 

「なら君はどうやって巨人の中身を引きずり出すと言うんだ?」

「それはまぁ…僕の話術で。あまり聞いて欲しくないことも言ったりするんで、僕の声が届かないくらいの場所で見ていて下さい」

「…たしかにここまで被害が少なく済んだのは君の神がかり的な予見のおかげだ。…そこまで言うなら、君にかけてみるとしよう」

「ありがとうございます。エルヴィン団長」

 

 

 

アニがここまでしてエレンを欲しがったのは、故郷にいる父親の元に帰るためだ。しかし、調査兵団の人間を殺さないように立ち回ってきたのは僕のことが脳裏にチラついたから。

 どちらを取るか悩んでいるのならどっちも与えてしまえばいい。僕にそれが出来ると分かったらアニたちが僕と敵対する理由が何もない。

 ライナーやベルトルトも本来はみんなと敵対したくないはずだ。ならば敵対する理由をなくしてしまえば良い。つまり、アニ達が僕の味方になりやすい環境を作り出すのだ。

 

 

 

「やぁ。君と会ったのは1ヶ月ぶりかな?まさかこんなにはやく再会するとは思ってもいなかったよ」

 

 

立体機動装置を使い耳元に近づき、一言声をかけて反応を見る。アニは…驚いているな。一瞬だけど体が強張った。

 

 

「どうやら中身がバレているのに驚いているようだが…君の体の動かし方や走り方をみて、僕が気づかないとでも思ったのかい?僕の観察眼が人より多少優れている事なんて、君もよく知ってるだろ?…久々に君の声が聞きたくなって来た。そこから出て来て話をしないか?」

「……」

「反応なし、か。全く。僕は君が女型の巨人だろうがなんだろうが気にしないんだけどな。

…君の目的もわかってる。壁外の故郷に帰るのが目的なんだろ?そのためにエレンが必要だった。…だけど、もう安心だ。僕に任せれば君達3人は誰も殺さずに、誰にも殺されずに故郷に帰れると約束する。僕ならそれを実現できる。僕は君との約束だけは絶対に違わない。だから、出て来てくれないか」

「……」

「信用できないというなら、硬質化を続けると良い。逃げたいなら叫びで巨人を呼んでそれに紛れて逃げればいい。僕はそれでも何も言わないし、君の正体を誰かにバラすこともしない。ただ…僕のことを信じてくれるなら、硬質化を解いて、そこから出て来てくれ。これからのことについて話し合おうじゃないか。」

 

 

 

 

さて、アニは僕のことを信じてくれるか否か。アニのうなじを覆っている手をどかすため、そっとブレードをあてる。が、少し待っても硬質化はされない。……どうやら信じてくれたみたいだ。アニの巨人体の手首を切り落とし、うなじのまわりにスペースを開ける。すると、うなじからアニが出て来た。アニが出て来た瞬間に僕の体は弾けるようにアニへと駆けていき、彼女のことを強く抱きしめていた。アニも少し戸惑いながらではあるが僕の背中に手を回してくれた。

 

 

 

 

「…おい。エルヴィン。あいつは…何を言いやがった?」

「…分からない。…しかし、彼が人類が巨人に勝利の為の鍵になるのは確かだ。…もしかすると、エレン以上に」

「…そうか。」

 

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