機動戦士Gundam GQuuuuuuX 白い深淵   作:楽園の主

1 / 3
とある存在がそこに居たら、というそんな話。
本編開始前、beginning的な。

誤字修正 2025 6/1
"後にゼクノヴァと呼ばれるこの現象はソロモン要塞の3/1を消失させて。"
▶︎"3/1"を"約3割"に修正
このままだとソロモンの3倍の大きさをゼクノヴァにより消失させることになり、牽引してる地球軍だけに留まらず、あろうことかグラナダすら巻き込むだろう範囲になってしまう誤字に気づいた為、修正しました。




第0話 ─白い深淵─

 

「何者だ。」

 

シャア・アズナブル少佐。彼が本日の執務を終えて自室へと戻るその時。

なにかの気配を感じ、そう話しかけた。

暗い道の先。そこから声が響く。

 

「お初にお目にかかる、シャア・アズナブル。いやなに、面白そうな者がいるなと思ってな。」

 

鈍い金色の瞳、白銀の髪。ひとつ外れた美しさを持った女性だと、彼は思った。

ガシャ、と機械類のような音と共に目の前に現れる。

隠密することも無く、平然と。

それでいながら、まるで霧の中から突然現れたかのように、その前の形跡が全く見えない。

機械類の音の正体は彼女の装備だった。

両腕の前腕部に装備されたものと、背に背負われた箱状のもの。

あとは顔の半分、片目を隠す仮面のようなそれ。

さらに彼女の背の後ろには尾を模したような機械がゆらゆらと揺れていた。恐らく、背中の箱状の機会の下部から伸びているのだろう。

それらの随所が怪しく光っている。

 

「直接、会いに来てしまった。」

 

相手を迎え入れるかのように両腕を開きながら、1歩、また1歩と彼の方へと歩いていた。

で、ありながら不思議と敵意は感じない。

 

「ここまでのセキュリティと見張りはどうした。」

「この程度であれば私の歩みを止めるに至らんと言うだけだ。」

 

セキュリティはともかく、見張りがどうなったかの明言が無い。

避けている、と言うならいいがもし殺されているとするならと考えた。

 

「少佐、なぜこんな所で立ち止まって──なッ、何者だ!」

 

一般兵だ。たまたまここを通ったのだろう、彼女の姿を見て警戒し、腰のホルスターからハンドガンを構えた。

その瞬間。

 

「怖がるな、こちらへ来い。」

 

ぐ、と腕を深く構えた前に前へと突き出すと、前腕部の機械からワイヤーが発射された。

先が複数に分かれ、一般兵を絡めとる。

驚いている隙に強く引き戻し、体勢を崩した彼は彼女の足元に転がった。

ワイヤーは機械に収納され、さらに腕を向けると、その機械から3つの針が発射された。

1つは転がったハンドガンを貫き、もう1つは脇腹の真横。最後のひとつ一般兵の顔の真横の床に刺さった。

 

「私は彼と話している。少し静かにしていろ。」

 

ずし、と一般兵の胸に足を置いて体重をかける。

そして、じ、と見つめると共に、尾を模したそれがゆら、と動いて先を顔に向けられた。

 

「命の取り合いになるなら、仕方ないということになるな。安心しろ、体の一部は残してやる。」

 

シュカ、と先が開いたと思えば、その先は鋭利になっており、勢いよく刺されてしまえば一溜りもない。

その刃先が、ゆっくりと頭に近づいていく。

一般兵は静かにすることを了承するように強く何度も頷いた。

 

「その装備はどこで?」

 

シャアが、問うた。

 

「私が作った。」

 

ワイヤーの射出、収納の速度。針の射出力。それだけでなく、その他にも1つ、放出孔があった。

孔は逆側に着いており、後ろに針を撃つためのものだろうか。別の用途であるなら、正面に撃つ際は肘を向けることにはなるが、どういう意図か。

尾のような武装も、先が鋭利になってたりすることから物理的な攻撃手段だろう。

さらに、ちらっとシャアには見えたが、バックパックには別の武装も何かついていた。

この分だと、仮面すらも攻撃手段でありかねない。

個人でこれを作ったのなら、相当な技術力だろう。彼は、そう思った。

 

「……何が目的だ。」

「聞く気になったか。なに、先程言った通りだ。シャア、貴様が面白そうだからここに来た。どうだ、私を置いてみる気はないか?メリットは、貴様ならもう分かるだろう。」

 

彼女の装備。この技術を、MSやMAに搭載できるものがあれば、軍事技術は飛躍を遂げる可能性がある。

それだけのポテンシャルをこの一瞬で感じた。

これを自分の手の元へ置ければ、大きな1歩となる可能性もある。

だが、この者が軍外の存在である以上、スパイの可能性がある。

直感はそうでは無いとは告げていたが、事実を並べれば否定できはしない。

だが。と。一瞬の逡巡。

直感に任せて、彼は答えた。

 

「──そこの君。報告はいい、この者は私が預かろう。ハンドガンの損壊もこちらから出す。」

「成立だな。シャア、これからの貴方の旅路、私が共に歩こう。面白い男である限り、な。」

 

そういいながら、ニィ、と彼女は笑う。

 

「名をアズサという。アズサ・フォーリナーだ。」

 

すっ、と手を差し出された。シャアは、握手に応じた。

 

(この選択、どうなるか──。)

 

ともかく、預かるとしても文書や記録に記載する必要がある。

シャアに連れられ、アズサは情報が保存されているところに向かった。

 

 

 

 

 

 

あれから。

 

 

 

 

 

 

シャアはアズサを正式にサイド3に迎え入れた。

整備士としての腕を認めて引き抜いた、ということになる。

 

「本日から整備士として配属になる。私直属の部下であり、専属の整備士にするつもりだ。アズサ、自己紹介を。」

「アズサ・フォーリナーだ。」

 

そういって整備士の者たちの前に現れた。

数日でその卓越した技術は頭角を現す。

既存の考えの枠に囚われない発想に、みなは驚いていた。

また、整備の手が速いこと速いこと。そして、どこかの部門が専門で、それ以外が不得手、ということもない。

本人はシステムが専門だ、というが触らせれば全てこなして終える。

そして。

 

「試運転が必要だが、今は操縦できる人がいないな……。」

「?乗ればいいだろう。」

 

そういって試運転すらこなす。

その手際から見るに、パイロットとしての適性も間違いなくあるだろう、と言われている。

 

「正直、どこにこんな人材が埋もれていたやら。少佐、彼女をどこで?」

「なに、少々街の工廠でね。」

 

出会いは伏せられているため、そうシャアは答えた。

そして。アズサの発想、開発技術は戦術すらも覆した。

ここ、サイド3は近々、ジオン公国として名乗り、独立するつもりでいる。

その際、地球連邦との戦争を起こすつもりだ。

が、戦力差は圧倒的。

どうにかそれを覆す必要があった。

それに対し、軍部も頭を悩ませていたが、アズサの一言。そして開発がそれを一気に覆されることになる。

 

「ミノフスキー粒子を戦術として組み込む?」

「ああ。」

 

アズサとシャア、そして整備長がそこにおり、ふと、机を囲んだ話し合いの中に彼女は言った。

さて、相手は地球連邦になる予定だ。それ

と相対するにあたっての壁はなにか、というと。

 

「戦力差、及びそれに伴った情報と、ビーム砲による長距離艦砲射撃や誘導兵器だな。」

「え、ええ。およそ30倍とも言われる戦力差です。まともに戦えば、勝負にすらなりません。」

「それを全て無効化する。」

 

ミノフスキー粒子は電磁波に干渉する粒子だ。

広範囲にジャミングを起こすことができる。

大量に散布することでレーダー及び無線通信の妨害を行う効果が期待できる。

それを行えば、相手の誘導兵器、及びレーダーを無効化するという。

確かに、それを行えば相手の主な攻撃手段は全て潰せるだろう。

 

「こちらも状況は同じ。接敵するタイミングが噛み合うだけで戦力差の部分は変わらない。戦術として長距離射撃がお互い不可能になる。であれば接近戦に特化すればいい──なるほど、MSやMAの実戦投入か。」

「君なら理解すると思ったよ、シャア。」

「なっ、それは……うぅむ。」

 

二人の会話についていけない整備長は、口を挟むことをやめて聞きに徹することにした。

そうすればアズサの口から無数に出てくる理論と戦術。

シャアもそれに頷きながら、理解し、聞き返す。

それを繰り返しているのをそばで聞いている整備長。

整備長も伊達に長では無い。言葉として理解はできる。

だが、発想を持ってそれを組み立てる彼女には驚かされてばかりだ。

 

「──というところか、今思いつくあたりは。」

「なるほど。今ある戦術論が全て覆りかねない、革新的だよ。」

 

そういった後、一言二言会話した後、シャアは軍部へと向かっていった。

整備長は、1度アズサに聞いたことがあった。

なぜここの整備士になったのか、と。

整備士として、機械に触れる者として優秀な彼女。

ここの整備士になるよりは、それこそ地球連邦の方に自分を売り込んだ方がもっと量を、そして質も良い仕事ができたのではないか、と思ってのことだ。

だが、その時彼女は言った。

 

「面白そうな男が、ここにいるからな。」

 

と。

最初は意味がよく分からなかった。

が、シャアを見て、彼女の戦術を聞いて。

ああ、アズサはここにいるべくしているのだ、と。

そう思った。

 

 

 

 

 

そして。U.C.0079 1月3日。サイド3は公式にジオン公国と名乗って独立。

地球連邦に宣戦布告した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!3番庫の機体整備をしたやつは誰だ!?」

「あ、アズサさんですが。」

「呼んでこい!誰が指の間から刃を出せるような武装を追加しろと言ったんだ!」

 

ある日は武装を勝手に増やしたらしい。

 

「騒々しい、なにがあった。」

「貴様勝手に武装を増やしたな!?」

「はは、なんだそのことか。」

 

笑いながら彼女は語る。打撃攻撃のインパクトの瞬間に刃を出せば、MSの機体内部に直接ダメージを与えられる。

で、ありながら武器を機体に隠す、という意図があると。

 

「む、むぅ……確かに少し有用に聞こえるが……。」

「あぁ、次は手を飛ばせるようにしてみようと思うのだが。」

「せめて本体に手をつけるのはやめろ!?」

 

勝手に手を加えてしまうが、戦術的価値があったり、既存のマニュアルより簡単に素早くできる手段であったりと否定しきれないことを度々する。

整備長が最初は怒鳴り、声を荒らげていたが、時を経るごとにだんだんと懇願するような声になってきた、という。

だが開発を楽しんでいるだけなのだろうか、根気よく言えば最終的に元に戻すことも多い。

引き際はわかっているのだろう。

問題にはなっていない、ということが殊更始末に負えない。

ああ、また整備長の酒の量が増えてしまうな、と。

皆から同情する目が増え、彼は胃を痛める日々を送っている。

そんな日々が過ぎていった。

 

 

 

 

 

U.C.0079 09.18.

 

 

 

 

 

「いつもと雰囲気違いますね、アズサさん。」

 

ひそひそと新人整備士達が噂している。

整備長も、何故かと聞きたいところだが、触らぬ神に祟りなしとも言うし、と悩んでいた。

かと言って、知らない間にとんでもないことをされても困る、と思い、聞いた。

 

「どうしたんだ、アズサ。」

「ん、いやなに。シャア──ああいや、少佐が作戦の日だろう。」

 

そういえば今日はシャア少佐率いる公国軍部隊がサイド7に潜入する日だ。

 

(彼が心配なのか?意外と乙女みたいな──)

「どんな面白いことをしてくれるかと思ってな。」

(ああ違った……。やっぱりアズサはアズサだ……。)

 

クックッ、と笑いながら目を細める彼女に、また胃を痛めそうな事がおきそうだ、と整備長は頭を抱えた。

 

「そんなことより貴様先程失礼なことを考えなかったか?」

「いやそんなことは。というか貴様とはなんだこっちは上官だぞ。」

 

そもそもシャア少佐が出撃することになったのは、アズサの手が加わったザクに乗ることを、ジーンが躊躇したからだ。

いかに元に戻したとはいえ、なにかまた追加武装を加えているのではないか、と思ってしまったわけだ。

そこに、シャア少佐が現れ、それならばと彼が出撃したと。

本部にはザクの不調という報告にはしているが、アズサが原因といえば原因だ。

初陣の新兵が、アズサの関わる機体にでくわしてしまった、ということに、整備長は同情してしまった。

そして。

 

「ふむ、公国軍部隊がソロモンへ帰還したと。」

 

なんでも、少佐は地球連邦からひとつのMSと、ペガサスと呼ばれる強襲揚陸艦を奪取したらしい。

またとんでもないことをしたと思うと同時に、これをアズサが聞いたら厄介なことになりそうだ、と整備長は思った。

ここはひとつ、シャア少佐が帰ってきた、ということだけを言うことにして、奪取の話は秘匿しようとした。が。

振り向くと既にアズサはどこかへ向かおうとしていた。

 

「待て待て!どこへ行く!?」

「少佐の元だ。彼のことだ、なにか持って帰ってきているんだろう?」

 

そう言って、彼女はここから姿を消した。

口に出していないのに、ソロモンへと帰還したという情報だけで彼女はなぜわかったのだろうか。

彼女はここでの本日の仕事は終えている。

もう、整備長は放置することにした。

 

 

 

 

 

◆ソロモン◆

 

 

 

 

「面白そうなことをしてくれたじゃないか、少佐。」

「アズサか。」

 

地球連邦のMS"ガンダム"と、強襲揚陸艦ペガサスを鹵獲し、ソロモンへと帰還したシャア。

その元に、アズサが現れた。

現在はそれらの解析中。それを面白そうだとアズサは1つ関わろうとしていた。

もちろん、見知らぬ者をかかわらせる訳には行かないとドズル中将は止めようとはする。

 

「お初にお目にかかります、ドズル中将。ファルメルに在籍する整備士、アズサです。」

「彼女はミノフスキー粒子を利用した戦術を私と共に考えた者です。」

「なるほど……あれの。」

 

その有用性はドズル中将も認めている。

全くの白紙からそれを思いついた、という点で優秀だと見抜いた彼は解析に関わることを許可。

アズサはキシリア、ドズルの両名共同の解析チームに参加した。

今までは、ファルメル内での行動に留まっていた彼女が、初めて外で活動する。

その解析が進み、技術は革新的に進んだ。

技術を取り入れたMSの量産が決定。ジオニック社のMS-14は開発競争に負けたということになる。

開発費が浮いた、と見るとドズル中将はビグ・ザムの量産を提言した。

しかし、開発はこれに難を示す。

ビグ・ザムはその巨体から資金が大量にかかる他、大きさにより被弾面積も広く、稼働時間も短い。

実弾ならともかく、ビーム砲による攻撃が主体の地球連邦軍と相対するには損失が大きい、という考えだ。

そこに。

 

「被弾が抑えられればいいのだな?」

 

アズサは一言、そう言った。

とはいえ、巨体故に機動性をあげるにも限界がある、どうするつもりかとみなは言った。

 

「ふむ……少し待て、考えてくる。」

 

そういって、その場を去ったアズサ。

なんだなんだ、とざわつかせてその場は終わり、次の日。

 

「考えてきた。これでどうだ。」

 

バサ、と開発陣とドズル中将の前に書類を置いた。

そこには、"Iフィールド・バリア"と記されていた。

ミノフスキー粒子を利用した機構で、ガンダムに載せられていたビームサーベルと似た理論のものだ。

そもそも、ビームサーベルというのはIフィールドを限定範囲に展開し、その中にメガ粒子を留めることによって近接戦に使う武器になる、という方式。

ではそれを薄く周囲に張り、バリアにすれば外部からのビーム攻撃を弾いたり逸らしたりすることが出来るだろうという理論だった。

確かに、これならば長距離射撃によるダメージを避けることが出来る。

至近距離戦に弱い、というのはその巨体故の話なので避けようがないが、これならばダメージのリスクも大幅に軽減することが可能。

さらに、稼働時間の問題についても少し触れていた。

放熱に関しては既存の機体から大きく変更できないなら現実的では無いが、システム面や武装の方面で、ガンダムを解析したことにより燃料効率をあげられる。

そうすれば、今までは稼働時間が20分とかなり短かったが、30分以上も見えてくると。

短いことには変わらないが、1.5倍の稼働時間、と言えば破格だ。

武装の威力増加まで相まって、こうなれば、ビグ・ザム量産の話も現実的だ。

 

「でかした!これならばよかろう!」

 

こうしてビグ・ザムの量産が決定した。とはいえ、理論だけではなんとも言い難い。

一機作り上げ、それを試運転して、という形になるが。

だが、理論を見ただけでも革新的だと言わざるを得ないとみなは感じたのか、アズサとは何者なのか、と思うものも少なくなかった。

 

「強襲揚陸艦ペガサスの改修も行っているが、それは?」

「私の専門はそれではない。出る幕はないだろう。」

 

即答し、またガンダムの方へと向かったアズサ。

解析が終了したあとシャアが乗るのならば、と識別色を赤に塗りあげる辺り、やはり彼をよくわかっている、という所か。

その間にも。

 

「そこのアズサとやら。その発想と腕を見込んで聞きたいことがあるのだが。強襲揚陸艦のことだ。」

「システムならともかく大型そのものについては専門外だが話だけなら聞こう。答えることが出来ることならば答える。」

 

大方ガンダムの方の作業が終えたのだろう、書類の方と顔を合わせる彼女に、機転が利くだろう整備士が話しかけた。

実際、アズサの評価は高いが評判がいい訳では無い。

ぽっと出でありながら整備、改修において優れ、さらにものの1日で今後を左右しかねない理論の提唱。そしてそれが上部に受け入れられて実装。

コツコツとキャリアを積み上げてきた人の、その存在への目線はというと、理解できるものはあるだろう。

さらに言えば、MSとはそもそも陸戦兵器のひとつだ。

アズサ自身によるミノフスキー粒子下での作戦によってこれまでの戦争理論は覆った事実は確かにあるが、やはり人の意識というのはそう簡単にひっくり返るものではない。

MSとMAを専門にし、ビグ・ザムの量産を確定させ、それらを主軸にした戦争を実現させた存在。

人は異端を遠ざける。そういう意味で、彼女は忌避されていた。

だが、この整備士は彼女の腕の良さを理解し、周囲の評判、そして彼女の性質はさておき、今この仕事をする上で、意見を聞くべき最も適した人材は彼女だろう、と考えた。

 

「どちらかといえばシステムだ。」

「なら少しは。どこのだ?」

「中央管制システムとセキュリティについて──」

 

そちらへ向かい、実物と対面しながら彼らが聞けば必ず答えが返ってくる。

悩む場面がこれば代案、もしくはそれをそのままに活かす方向で追加の案件を口にしたりなど、専門外とはなんだったのか、という程には関わっていた。

だが、それが終われば。

 

「もういいか?ガンダムの方にまだ手をかけたい。」

 

そう言って、またMSの方へと戻っていく。

キシリア閣下の指示にてそれを整備することになったが、そこまで傾倒するものか。

変人というかなんというか、とその場にいた皆は呆れたような視線を彼女に向けた。

実績はあれど新人と言っても過言では無い彼女。

だが、かの少佐直属の部下である、という事実が彼女を止められないでいる要素の一つ。

……もちろん、アズサはキシリア閣下の指示など全く知らず、興味もない。

ただ、シャアがそれに乗るのなら、という意思で持って、それに関わっていた。

そしてしばらく。

赤いガンダムと、強襲揚陸艦ペガサス改め、ソドンが完成した頃。

マリガンに連れられ、シャアは再びソロモンへと訪れていた。

なんでも、ソドンと赤いガンダムを月面グラナダへと届けて欲しい、という要件だとか。

2人が赤いガンダムを見ながら会話をしていると、彼女が姿を現した。

 

「しばらく振りだな、アズサ。」

「ああ。専用機に仕上げた、きっと気に入るだろう。」

 

整備と改修の大半を担った彼女との再会。

ここでの仕事は終えた、と発言するアズサ。

聞きたいことがあった、と彼女を連れ、シャアは一室に彼女を呼んだ。

先に彼はそこへ向かい、アズサは資料等を整理してからそこへ向かう。

 

「来たか。そこにかけてくれ。」

 

机に対面して座る2人。

 

「MSの整備の件、大儀であった。こちらが言った水準まで引き上げた上に、ガンダムの改修、整備まで。やはり君を専属にして良かったと思うよ。」

「そりゃあ光栄だな。少佐サマにそう言っていただけるとはね。」

 

ふふ、とアズサは笑う。

 

「して、君に聞きたいことがある。君は一体どこから……いや、この聞き方は回りくどいか。」

 

こつ、と指を机に当て、一瞬の沈黙。そして、それを切り出した。

 

「君は、この世界の人間では無いな?」

 

シャアは、冗談などではなく、真剣にアズサにそういった。

彼女はぴくり、と反応した。

至極僅かな反応、普通の人では気付かないほどのそれだが、シャアはそれに気がついた。

そしてニィ、と笑った。

 

「やはり君の元に来て正解だった。面白い、面白い男だよ君は。」

 

嬉しそうな顔で、鈍い金の瞳が彼を貫く。

 

「しかし、なぁ。この世界か。少し広義が過ぎるな。もう少し詳細に聞かないと分からないなァ、私には。」

 

目を細めながら笑い、わざとらしく、シャアの答えが、言葉が何かを楽しみに思っているようにそう言った。

妖艶とも、不敵とも取れるその笑顔。

 

「……いや、今はその答えで十分だ。」

 

答え、表情、そして直感。この一時だけで、シャアは確信めいた何かを感じとった。

だが、なんとなくまだ踏み込むのは危険かもしれない、と思った。

 

「ともかく、整備の件は大儀だった。これからもよろしく頼む。」

「もちろん、離れるつもりは無い。君が面白い男であるならね。」

 

裏を返すと興味を無くせば肩入れするつもりはないとも聞こえる。

そうなれば、もしかしたら霧の中へ消えていくように、いつの間にか姿を消すのかもしれない。

いつの日か、ここに現れたように。

そんなことを少しだけ彼は思った。

最後に、後回しにした本題のひとつを彼女に伝える。

 

「なに?キシリア少将が?」

「ああ。例の戦術、そしてIフィールドバリアの開発を担った者の顔を見ておきたいんだろう。」

 

グラナダから、彼女の招集を受けたアズサ。

もちろん、応えない訳にはいかない。

 

「了解。直ぐに向かおう。」

「意外だな。少しは嫌な顔をすると思ったが。」

「組織に属する以上、避けれないことがあることは理解しているからな。」

 

そのまま部屋へ戻って行き、しっかりと制服を着た後、その上から武装を付けて出てきた。

 

「久しぶりに見るな、それを。」

「私の技術力に関してならこれらも必要だろうと思ってな。あとは、万が一、だな。」

 

ガチャ、と手元の機械から音を鳴らせながら彼女はそう言った。

結局、シャアすらもその武装の全貌を見た事も聞いたことも無い。

だが、彼女の技術を一見でわかるのは間違いなくそれらだ。

シャアは未だここの外と、ソロモンの1部以外を知らない彼女を連れて、グラナダへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そなたが例の。」

「ファルメルに在籍する整備士であり、少佐専属の整備士でもあります、アズサ・フォーリナーです。以後、お見知り置きを。」

 

薄く笑みを浮かべながらそう、自己紹介をした。

キシリアはまずは、と、アズサに作戦の立案、Iフィールドバリアの開発など。それに対して賛辞を述べた。

 

「大儀であった。そなたはこの戦争において大きな成果をもたらした。」

「滅相もない。私はただ、思いついたことを述べた迄。作戦として立て、戦い、それを使ったのは皆ですから。」

 

謙遜を言うアズサ。

 

「して、その装備は?」

「私が作り上げたものです。なにぶん、か弱い女性の身ですから。自分の身は守れるようにと。あとは、私の技術を示すならば、これほど表すものは無いと思いまして。」

 

じ、とキシリアはその装備を一つ一つ眺める。

どれも精巧であり、既存の物とはかけはなれた異質であるということはひと目でわかった。

性能の説明がすぐに付随して来ないあたり、手の内は明かすつもりはない、ということか、とキシリアは理解した。

 

「ところで、サイコミュ搭載のモビルアーマーの開発が中止になりましたが、あれの現物はどちらに?」

 

その発言に、ぴく、とキシリアは反応する。

本来ならば無階級の新人がする発言とは思えない。

実際、周りの兵は無礼だとアズサを糾弾しようとしていた。

が、彼女には実績がある。ミノフスキー粒子下での戦闘作戦、Iフィールドバリアの開発。

それを考えれば、なにか思いついたことを言うつもりなのだろう、と思い、兵を止めた。

 

「現在も保管している。考えを聞こうか。」

 

小型化すればMSに載せることも出来るし、さらなる技術発展に繋がる。

だからそれを見せて欲しいと彼女は言った。

周囲の人間は何をバカげたことを、とザワつく。

そもそもMAほど大きなものに載せようとしていたものをMSに載せるなぞできるはずも無い。

だが、その場にいたシャアとキシリアは彼女ならそれを本当に成せるかもしれない、と思った。

 

「……今はフラナガン機関に保管されている。気になるならば、訪れてみるといい。」

「ありがとうございます。」

 

その後も一言二言会話した後、シャアとアズサはそこを離れた。

帰り道の間に、アズサはフラナガン機関に足を運び、シャアとはそこで別れた。

その機関内にて、しばらくの間滞在。そして本当にサイコミュを小型化させた。

アルファサイコミュ、と呼ばれ、まだ試作型だとアズサは言った。

シャアはそれを見て、ガンダムに載せることは出来ないか、と言った。

 

「実証実験はまだだが可能だ、すぐに載せよう。」

「試作アルファだと言っているだろう、まだ待て。」

「いや、私が許可する。」

「……はぁ、もういい。好きにしろ。」

 

アズサをよく思わない整備士。それも権限の大きい男が、強行してそれを載せた。

こうなれば彼女がなんと言おうとどうにもならないことは彼女自身、理解していた。

それならそれで、まだすることがある、と。

案の定というか、彼女はそれだけで止まらない。

やれるとこまでやると言わんばかりに、全天周囲モニター、そしてリニアシートを開発した。

その後、大型のMSを見て、呟く。

 

「ブラウ・ブロと言ったか?小型化して単座式にしよう。先の開発もここへ搭載する。」

 

自由に動きすぎだ、と最初こそ止められたが、戦術的価値があることや、実績があることからキシリア少将がこれを許可。

宣言通り、半分近く小さくなり、単座式に。

武装は有線制御式のメガ粒子砲、連装型が2つ、単装型が2つで計6。オールレンジ攻撃が可能になっている。

誰が呼んだか、それはキケロガ、と名付けられた。

そして、シャア仕様として、赤く塗装された、"赤いガンダム"の初陣の時は近い。

 

その、少し前。

 

「大佐に昇進したそうじゃないか。祝いに来てやったぞ。」

 

アポをとることも無く、大きめの鞄を持って突然現れたアズサ。

シャアが一人でいるところを狙って現れたが、場所すらも引き当てた彼女。

ニュータイプ同士とは、それほどのことが出来るということだろうか。

 

「まったく……私にそのような態度を取るのは君くらいだぞ、アズサ。」

「それを許しているのも君だろう?」

 

呆れながらもそれを不快に感じていない、そんな語気のシャア。

アズサは笑いながら彼の対面側に座った。

ごと、とワインを持ってきた彼女はグラスに注ぎ、シャアの前へ。

 

「皆が言っていたよ、技能は認めるが傍若無人が過ぎると。」

「なに、仕事はこなしているだろう。勝手に言わせておけ。」

「皆が胃を痛めていたぞ?」

「皆が適応しろ、私に。」

「傍若無人と言わせるだけあるな。」

 

酒を楽しみながら、談笑する2人。ある時、シャアは切り出した。

 

「そろそろ話してくれてもいいのでは無いか?私たちの仲だろう。」

 

前回に聞いた、アズサの正体について、だ。

 

「……ふゥん。」

 

ニヤ、と笑いながらアズサは黙る。

 

「……そうだな……構わない。が、その前に、この酒を飲んでみないか。」

 

ごと、とひとつの、比較的小さな瓶をカバンから取り出して彼女は置いた。ワインとは違い、恐らく瓶に色がついているだけで、中の酒は透明だ。

シャアは珍しそうにそれを見た。

 

「ワインより少し強い。あまり深く飲まないことを勧める。」

 

別の小さなグラスに少しだけ注いで、彼の前に置いた。

アズサの言う通り、ゆっくりと、少量それを喉に通した。

 

「これは……たしかにワインより強いが、違った味わいがあるな。」

 

喉越しがスッキリして、キレがある。ワインとは違う味わいがあるが、シャアはこれを美味しいと感じた。

鼻に通るアルコールが印象に残ったが、飲み手を選びそうだ、というのがシャアの感想。

 

「どこでこれを?君が作ったと?」

「私がと問われれば、そうだとも、そうでないとも言えるな。」

 

こと、と酒を置き、目線をそこからシャアへと向ける。

 

「幻想の楽園で作られた酒だ。」

 

口角は上がっているものの、アズサのその目線は、真剣そのもの。

シャアの直感が、ざわついた。

 

「……随分と夢見がちな少女のような言葉を選ぶのだな。」

「君の直感はどう告げている、ニュータイプ。」

「……。」

 

アズサが、軍の中からでもなく、突然霧の中から現れたように彼の前に現れて出会った。

見たことも聞いたこともない対人用の装備を身に纏い、自身で作ったと言った彼女。

直感で何かあると思い、引き入れてみれば整備士として優れているだけでなく、操縦士としても優れる。

彼女は周囲に隠しているが、ニュータイプでもあった。

ある時、自身の直感が彼女の正体を告げていた。

 

「シャア。君が以前、私にこの世界の人間では無いな、と言った時。"ニュータイプとは私が思うよりも鋭いのだな"と、そう思った。」

 

別の世界の存在ではないか。

そんなことを直感したものの、あまりに突飛な考えだ、と思っていたシャア。

だが、時が進めば進むほど、もしそうでなかったとしても正体を気にするようになった。

 

「少々理解できるように説明できる、伝えられる言葉がない。だが、君の直感に、思っていることに違いは恐らくない、とだけ答えておこうか。」

 

しかし、その直感に間違いはない。

アズサの答えに、確実な言葉はなかったものの、確信に迫ることができるだけの答えではあった。

 

「……やはり、あの時、君を迎え入れたのは間違いではなかった。」

「ふふ、君が否定しようと勝手に来たがな。私が面白そうなものを逃すわけがない。」

「それもそうか。」

 

時が過ぎる。他愛ない、いくつかの言葉を交わしながら2人は酒を飲んだ。

 

「これからも、よろしく頼む。友として。」

「もちろん。君は面白い男だからな。」

 

この軍の中でも、評価が高い彼女を味方におけるのは大きい。

きっと、シャアの目的を達成する際に、大きな手札となる。

それを差し引いても、より良い未来を共に目指せる、素晴らしい友だ。と、そう、彼は思った。

何の因果か、このしばらく後に、シャリア・ブル大尉ともこの部屋で話すことになる。

違いといえば、相手から来たか、こちらから誘ったかの違いだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイコミュを乗せた赤いガンダム、及びブラウ・ブロ改めキケロガの、初の実戦投入の日。

それはソロモンへの泊地攻撃となった。

アズサがビグ・ザムへの開発案を出し、グラナダへと向かったすぐ後に、ソロモンは地球軍の襲撃にあった。

拮抗していた戦いだったが、僅かに届かず、敗戦。ソロモンは地球連邦軍の手に落ちた。

ソロモンにいるそれの敵艦隊兵力の減衰を狙って、泊地攻撃するわけだ。

 

「すまない、シャア。私ではどうにもならなかった。」

 

目を閉じながら、アズサはそう言った。サイコミュの話だ。

本来ならまだ開発の余地があったそれだが、アズサにどうにもならないところで、それを研究しきれずに載せるしかなくなった。

 

「構わない。試作アルファ型とはいえ、その性能を疑いはしない。」

「もちろん、そこは期待していいとも。」

 

そんな会話の後、シャアは彼を、アズサの元に連れてきた。

 

「君にも紹介しておこう。シャリア・ブル大尉、私の友となった男だ。」

「シャリア・ブル大尉です。話には聞いています、アズサ・フォーリナー殿。」

「ん?ああ、アズサだ。……ああいや、アズサです。」

 

シャアの友人だから、と特段外行きの顔をせずに答えようとしたが、大尉である以上かなりの上司。

敬語は必要か、と言い直した。

 

「そう堅苦しくなる必要もあるまい、アズサ。」

「貴様が言うことでもないだろう。……いいのか、シャリア・ブル。」

「え、ええ。構いません。」

「なら遠慮なく。」

 

シャアの友人だからなのかなんなのか、シャリアは何故かアズサがどうしても部下というか、自身よりも立場が下の人間には見えなかった。

作戦前故に長い会話は出来なかったが、顔を合わせは済ませた、ということになる。

その後すぐに、2人は出撃。ソロモンへの泊地攻撃を行った。

サイコミュを搭載し、本来MAに載せるビットを使用しているとはいえ、それでもシャアの戦果は恐るべしというところ。

もちろん、シャリアとてそれを追うほどの戦果だ。

その結果に、ニュータイプ恐るべしだ、とキシリア少将は呟く。

こうなれば切り札ともなり得るサイコミュ。実戦投入を急がねばならない。

 

(しかし問題はギレン兄か。)

 

本来キシリアが考えていたことだけでも彼が問題には上がるが、ここにきてシャアの連れてきたアズサという存在。

技術者として卓越した能力、見つかってしまえばこれもまた大きな問題になり得る。

 

(全く、シャアめ。厄介な者を連れてきてくれたな。)

 

そんなことを思いながら、横へと視線を移動する。その先には整備長、つまりアズサの上司がそこにいた。

彼女のことが聞ければ、と呼び寄せたらしい。

 

「なにか言いたそうだな。」

「あっ!えぇと、いえ、その……自分が、言うような言葉では無いのですが……。」

「いい、言ってみろ。」

「その……。」

 

言葉を続ける。

出身不明、元所属不明。工場から拾ってきたとシャア大佐は言っていた。

士官学校や専門的な学問を学ぶ機関にいた訳でもない。

そして、本来の年齢はともかく、見た目は僅か20にも満たない、そんな少女に見える。

にもかかわらず整備の腕だけでなく、開発する力、それどころかパイロットの技能までもちあわせる始末。

言葉の強さ、そしてあらゆる存在に物怖じしない大胆不敵さ。

総合して。

 

「私にはもう、まるで化け物だ、としか……いえ、適切な言葉では無いとはもちろん理解しています。ですが──」

「構わん、だが本人には言うなよ。心に秘めておけ。」

「も、もちろんです。」

 

すい、と目線をモニターに戻すキシリア。

 

(先程私も、少しだけそう思ったからな。)

 

 

 

そして。

 

ジオン公国軍はマ・クベ艦隊を総司令としてルナツー攻防戦を開始、反抗に転じた。

一方、連邦軍のワッケインは敗北を受けいれつつもタダでは終わらない、とジオンから手にしたソロモンそのものをグラナダに落とす作戦を開始した。

ルナツーの攻略にほぼ全戦力を投じていたジオン公国軍にはこれを阻止する呼び戦力はなかった。

ただ1つ、シャア大佐が率いる隊のみが防衛作戦へ出ることとなった。

一隊でなんとかできるわけがない、という声を制止、シャアは作戦をみなに伝えた。

その作戦は、成功すればグラナダにはソロモンは落ち得ない、乾坤一擲の一手だった。

やらなければどの道みな終わり。作戦は決行。

その作戦に使われる爆破物を、アズサはソドンの中で作りあげた。

そして、作戦開始前。

 

「では諸君、行こうか。」

「シャア。」

 

彼は、アズサに呼び止められた。

 

「必ず帰ってこい。」

 

真剣な眼差しで、釘を刺すようにそう言った。

アズサがそう、強く言うのだ。何かあるのかもしれない。

そう思い、彼は一つ、頭の隅に留めておくことにした。

しかし、この、第二次ソロモン会戦の作戦中に、赤いガンダムのアルファサイコミュが暴走。

後にゼクノヴァと呼ばれるこの現象はソロモン要塞の約3割を消失させて。

作戦は失敗したが、結果としてグラナダへの直撃は回避されたことになる。

ルナツーとソロモンを失った地球連邦は戦争継続を断念。

ジオン公国に対して休戦を申し入れた。

時に、U.C.0080、1/3。1年に渡るジオン独立戦争は、地球連邦軍の完全撤退という形で集結。

戦争は終わった。が、シャアはソロモンの輝きとともに消えたままだ。

失意の中、シャリアはとある一室を訪れた。

 

「よく来たな。友の友、シャリア・ブル中佐。」

 

アズサに呼ばれたからだ。要件など、分かりきっているものだが。

あれから、シャリア・ブルは第二次ソロモン会戦や、その前後の功績が認められ、昇進。中佐となった。

アズサも、公国軍全体へ、そして今回の、一年戦争の利益貢献度合いが高すぎる故に、名が着く席へと立たせることになった。

彼女がいなければ戦争には勝てなかっただろう、勝てたとして、ソロモンは落ちていただろうというところも大きく評価され、一気に少佐となったらしい。

そんな彼女は飲み物をグラスに入れられ、席の前へと置いた。座るといい、ということだろう。シャリアは椅子に座る。

ここは、シャア大佐に、友と認めてもらった。あの人に付き従うと誓った部屋だ。

 

「……。」

「……。」

 

お互い目を合わせず、無音。静寂がこの部屋を支配していた。

アズサは窓から外を眺めている。

ふぅ、と小さく息を漏らし、背もたれに体を預け、目線を上にあげた。

なんとなく、肩の力が抜ける感覚がある。

アズサとはあまり顔を合わせていないが、同じ男を友としたからか、思ったより自分は彼女を信頼しているのかもしれない、と、思った。

 

「奴が。あの赤い彗星がこれで消える男だと思うか。」

 

アズサはこちらを向いていることにシャリアは気付いた。

金の瞳は真っ直ぐ彼を貫いており、不思議と魅入らせられるというか、そんな感覚を得た。

 

(白い深淵と呼ばれる訳だ……。)

 

シャア・アズナブルはジオン公国内で赤い彗星と呼ばれている。

誰もが扱い辛いと苦言をこぼし、あまりにも自由すぎて制御は困難。

整備長からは"化け物としか思えない"とまで評された彼女。

そんな彼女が彼に専属として付き従い、画期的な開発や整備の腕で確かに認められていた。

シャア大佐がゼクノヴァで消えてしまったのも、もしかしたらアズサに魅入られてしまったからでは、と実しやかに囁かれている。

転じて、"アズサに魅せられた者は、深淵に引きずり込まれる"などという話にまで大きくなった。

その噂から、赤い彗星と並べ、髪色と合わせて白い深淵と呼ばれている。

 

「いいえ。大佐はきっと生きている、私はそんな気がしてなりません。」

 

人類の未来のために。そう言ってシャリアは彼と手を取った。

その時の意志の強さ。ただで消える男では無い、そう信じている。

 

「ではどうする。」

「大佐を……そして、赤いガンダムを見つけます。必ず。」

 

そう、彼は強く言った。

 

「いい、いいな、シャリア・ブル。」

 

口角を上げ、笑う彼女。立ち上がってシャリアの前まで来た。

 

「利害は一致した。お互い協力しよう、面白い男であってくれよ。」

 

ずい、と彼の顔をのぞき込みながら告げた。

シャアがシャリアに、面白いと思った人間には積極的に協力すると言っていた。

それはこのことか、と合点がいった。

以来、ロストした赤いガンダムを、アズサとシャリアは追い続けている。

 

(あの時、貴方は何を見たのですか。シャア大佐。……大佐を乗せたまま、どこへ消えたのですか、赤いガンダム。)

 





別小説の梓です。それがここにいます。はい。
特に該当小説読まなくても大丈夫です。

AIアートにて"アズサ・フォーリナー"のキャラ絵を近しい感じのものを出力出来ました。武装有りと、武装無しの状態どちらもあるのですが、どうです?

  • 見たいよ!
  • どっちでもいいよ。
  • みたくない……想像で補完します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。