機動戦士Gundam GQuuuuuuX 白い深淵   作:楽園の主

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第2話 ─赤いガンダム─

 

エグザべはそれを追い、捕捉。

宇宙に漂う岩を背に、姿を隠して様子を伺う。

 

「丸見えじゃないか、隠れようともしていない。本当に赤いガンダムなのか……?」

 

姿は確かに赤いが、本当に赤いガンダムなのか?

こんなところに現れてそう言って行動をとるものか?

そんなことを考えつつも、停戦信号を見えるように放つ。

しかし、それを無視した赤いガンダム。

 

「停戦信号は無視……ならやるしかないか。オメガサイコミュ、起動!」

 

起動デバイスを挿入するエグザべ。

その瞬間、何かを察知して回避行動を取った。

先程いた場所に、一筋のレーザーが走った。

まだマニュアル操作のまま。

周囲を確認、対面しているMSが放ったビットによるものだと彼は理解した。

 

「なんだこれッ!?」

 

驚愕したその瞬間、ビームサーベルを構えて突撃してくる赤いMS。

咄嗟に盾を構え、それで攻撃を受けつつ彼も武器を構えた。

盾を弾かれ、体勢を崩した所に、今度は頭部バルカンでの追い打ちだ。

瞬時に体勢を立て直し、何とか盾で受ける。

宇宙の岩塊が前を通った隙にグレネードを投げつけ、爆破。

 

「頭部バルカン、それにビット!?こいつ……本物のガンダムだ!!」

 

相手はサイコミュ搭載のMS、こちらはオメガサイコミュのロックが外れない。

マニュアル操作では防戦が精一杯だった。

それでも、凌ぎきれているというあたりエグザべも優秀なパイロットではあるだろう。

 

「くそッ!うぉぉぉおおお!!」

 

無理矢理突進、組み伏せてそのままスラスターの出力を高めた。

 

 

 

 

 

一方、その頃。

 

◆ダイオロートラース◆

 

「お帰りなさいませ、アズサ様。」

 

1人の女性が、彼女にそう言い、頭を深く下げる。

その後ろには、数十人もの社員だろう人達。追従し、動作を同じくした。

 

「ああ。準備は?」

「もちろん滞りなく。」

「"八咫烏"を出す。あと2人だ。」

「はっ。」

 

集団の前に立っていた女性がその声とともに皆に素早く指示を出す。

前を歩くアズサの後ろに、先程の彼女ともう1人、男性が後ろに着いてきていた。

 

「私と、もう1人は新人が参ります。彼は初陣ですので、バックアップには私が。」

「よ、よろしくお願いします!」

「緊張することは無い。戦闘になったとしても命の危険はない。出来るな?」

「当然です。」

 

社員、それも一部の人間のみが通行できる通路を行き、地下へと下る。

 

「お疲れ様です、アズサ様。」

 

警備の人間がそういいながら頭を下げ、道を開ける。

 

「楽しそうですね、アズサ様。」

「いやなに、ようやく大きく動き出しそうだと思ってな。」

 

笑みを浮かべながら、格納庫らしき場所へとたどり着く。

そこには、世間には公表されていない、大量のMSが保管されていた。

その内の3機に彼女らは乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆難民街◆

 

 

エグザべは赤いガンダムともつれ込んだままサイド6の難民街へと突撃、そこの空域に出た。

お互いに相手をはじき飛ばし、距離をとる。

 

「ここでビームを使うほど無法者じゃないか……!しかし……!!」

 

ビットからビームを放たないことを理解しつつ、ビットの突進を回避し続ける。

 

「サイコミュコントロールならもっと反応できるのにっ!!」

 

自分の力では、オメガサイコミュは起動できないのか。

悔しさからか、そんな言葉がもれる。

回避しつつも、ふたつあるビットのうちひとつを掴み、何とかもうひとつへと投げ飛ばしてぶつけ、両方破壊。

その爆炎に乗じて赤いガンダムは突撃、エグザべもただではやられない、とばかり格闘。

お互い吹き飛び、着地したがその勢いに地面を削る。

瞬間、表示されるアラート。

 

「操縦系が……無理させすぎたか!まずい、軍警が来る……!」

 

見つかって問題にする訳には行かない。煙幕弾を放ち、姿をくらませた。

そしてしばらく経つと、その場に軍警ザクが2機現れた。

 

「アラガ隊長!赤いヤツが見えません!」

 

ラゴウチはそう通信する。追い続けているのは赤いガンダムだ。

現段階では赤いガンダムも姿を消しており、しかし最後の目撃はここである。

 

《この辺りには地下の整備トンネルに続くリフトがあるはずだ。》

「建物の中だとわかんないっす!」

 

アラガ隊長、と呼ばれた人間が乗る軍警ザクは地面に着地、同時に辺りの建物の屋根を破壊し始めた。

 

《ラゴウチ!屋根を破壊して探せ!どうせ難民どもの不法建築だ!》

「了解!」

 

隊長の指示通りに、ラゴウチも破壊、リフトを探し始めた。

 

《……!?なんだ……?》

「?どうしたんすか?」

 

リフトを探す行動を止めずに、隊長なにかの違和感に気付く。

 

《鳥の呻き声……?》

 

そんなつぶやきの後、大きな足音が3つ響いた。

 

「ありゃあ……なんだ……?」

 

3機のMS。体高は軍警ザクとほぼ同じ。しかし機体の骨格が細い。

しかし、大きく特徴的なのは足と腕。

長く大きな袖のようなもので手を覆っており、足部分が巨大な鉤爪になっている。

3機ともそこまではほぼ同じ見た目で、カラーリングと細部が違う程度、強いて追加するなら武装が違うものを載せていることを確認できる。

既存のものとは全く違う見た目だ。

前に2機立っており、もう一機は後ろに位置しており、何らかの舞を踊るように機体を回転させたり跳ねたりしている。

 

《応援現着!アラガ隊長、対応します!》

 

アラガ隊長は赤いガンダムと接触した未確認のMSがいる、と報告が入るやいなや、応援を要請していた。

思った結果とは違うが、結果的にそれは有効的に働いた。

 

《俺とラゴウチはマルモを追う!頼むぞ!》

《了解です!!》

 

新たに軍警が4機到着、その3機の対応に入った。

アラガとラゴウチは、再び赤いガンダムを追う。

 

「!……赤いモノアイ……武装してるな?このジャンク屋め!!」

 

突然現れたザク。それとラゴウチは交戦を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今は使われていない整備用トンネル。

そこにエグザべはいた。

 

「一応機密はあるみたいだけど──」

 

ここなら隠していることになるだろうか。

そんな声が彼と、G-クアクスしかいない空間に木霊する。

煙幕に乗じて、リフトを降りたのだ。

場所自体はいくつかアズサから聞いていたようで、幸いにもすぐ近くにそれがあり、スムーズに逃げ込むことが出来た。

さて、これからどうするか。

思考を続けようとしたその時、ガシャン、と大きな音と共に風が吹き荒れる。

目線を向ければそこにはザクが。どうやらここまで落ちて来たようだ。

それに追従して、軍警のザクが降りてきて、手にする銃で頭を殴打した。

その後、気づいたのか、軍警ザクは彼の方を向いた。

 

《おい!ジオンがこそこそと何してんだ!》

「ま、まぁ待てよ!サイド6とはお仲間だろう!?」

 

戦争も終結した今、敵同士、という訳では無い。サイド6とは地位協定も結んでいる。

だが、それにサイド6は全て快諾している訳では無い。

国民は、それに納得していない。

 

《モビルスーツから離れろ!!》

「やめろ!こいつに勝手に触れるなッ!!」

 

後ろに後ずさりながら、近づいてくる軍警にそう告げる。

しかし、動きを止める気配も、話を聞いてくれる気配もない。

その時、突如床に転がる一機のザクが動き出し、無茶な姿勢のまま軍警に突進。

2機とも倒れる。その後、コックピットが開いて、一人の赤髪の少女が飛び出した。

そのままの勢いでエグザべの頭の上を飛び越え、G-クアクスへと搭乗。

少しの間の後、G-クアクスは起動し、頭部の展開ギミックが作動して目が光った。

それが作動したということは、オメガサイコミュが起動した、ということ。

 

「動いた……!?」

 

動いたと見るやいなや、軍警はそれに発砲。

それに対してG-クアクスは瞬時に、適切な動きで縦を構えて防御。

突進してくる軍警を飛び越えつつ回避し、落ちていたヒートホークを手にした。

振り返りながら、その武器を振るう。軍警ザクは横一閃に切り裂かれ、一撃で機能を停止した。

 

「嘘だろ……!?」

 

驚くのもつかの間、もう一機の軍警ザクが現れる。おそらく先程の軍警ザクのM.A.Vだろう。

それがG-クアクスに射撃。

G-クアクスは遮蔽に退避、それを軍警軍警ザクが追う。

射撃音の後、赤い光と共に、警告の文字が刻まれる。

 

「まずい、エアロックが!」

 

近くの非常出口に緊急退避したエグザべ。

そのまま地下にいる訳にも行かず、先程いた地表へと向かった。

近付くにつれて、振動が響く。

 

「なっ、なんだあのモビルスーツ……!?」

 

地表では、複数の軍警と、未知のモビルスーツ数機が戦闘を行っているところだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《抵抗するな!》

 

軍警達4機は3機に銃を構える。

それと同時に、後ろにいた一機が舞を終え、バッと袖のようなそれを大きくはためかせた。

瞬間、前にいた一機、カラーリングでいえば赤と白が特徴的なそれは突然走り出す。

異様な風貌もあるが、驚いたのはその機動力。

明らかに脚の回転が速く、既存MSの地上速度を遥かに超えている。

 

《ッ!速い!》

《撃てェ!》

 

比較的近くにいた2機はそれを射撃するも、左右に動かれ、当たらない。

少し後ろにいたもう2機は援護に入ろうとするが。

 

《ぐおっ!なんだ!?》

 

小型のビットのようなものが周囲から突進してきており、回避するか、当たってよろめいてしまい、援護に入れないでいた。

回避を利用して建物がある方に追い詰め、射撃した。

が、大きな袖のようなものを前に、盾のように構えるとそれに銃弾は弾かれた。

 

《何ッ!?》

 

見ればヒラヒラとしているのに銃弾を弾くとはどういうことなのか、と驚くのも束の間。

既に目の前に接近していた。一機は間近に迫っていたため、電磁警棒を素早く横へと振るう。

しかし、突然下へと体勢を下げたため回避されてしまう、しかもそのついでと言わんばかりにMSの大腿部を切り裂かれた。

一撃で左足の機能を止めてしまうほどの出力と鋭さ。でありながら足を完全に吹き飛ばす訳ではないコントロール。尋常ではない。

だが、足が止まっても上半身は動く。

下半身を固定、上半身を真後ろに向け、また電磁警棒を振り上げる。

MSは人型であって人ではない。関節の可動域はそれによって異なるが、人間の動きを超越はする。

振り上げた瞬間には更にもう一撃、強烈な斬撃を加えられ、また背後へと移動されてしまう。

 

《大人しくしやがれ!!》

 

少し遠い位置にいるもう一機が銃を構える。すると、足の大きな鉤爪でMSを捉え、身代わりにするように移動させた。

このまま撃てば同士討ち、当たり所が悪ければ爆発してしまう。と、一瞬躊躇した。

その隙をそれは逃さない。ガンッ、と音がしたと思えば、身代わりにしたMSを足蹴に飛び越えて肉薄していたのだ。

 

《なっ───》

 

そのまま、大きな鉤爪で縦に斬り裂かれてしまう。これで、一瞬にして2機が戦闘不能になった。

 

《くそっ!2機やられた!》

《ウザってェ!本体をやる!!》

 

最後尾に居た一機がこの小型ビットを操っているのだろうと考え、そちらへと射撃。

しかし、もう一機、大きな手裏剣のようなものを背負ったそれが射線に割り込み、その銃弾を袖のようなそれで弾いてしまった。

その後ろで、ふたたび舞を始める。

 

《くそ、ちょこまかと──ッ!!》

 

ビットに気を取られていたが、飛来してきたそれをギリギリで感知、腕を武器ごと切り裂かれたが何とか身体部分に当たらないようには回避できた。

飛んできたのは巨大な手裏剣のようなもの。

 

《どうやって飛ばしやがった!腕はものを持てるような構造じゃ──》

 

前を向けば、その答えが分かった。

背から飛び出したそれを、足の鉤爪に引っ掛けて飛ばしていたのだ。

足で投げている、と表現して間違いは無い。

驚愕しているうちに、その手裏剣は胴体と下半身を分断されてしまった。

投げた巨大な手裏剣はワイヤーのようなもので回収され、ふたたび背に戻る。

 

《な、なんなんだよこいつらァ!?》

 

もはや恐慌状態だ。何とか銃を構えようとするも、舞を終えた、1番後ろにいる一機。

それがただ一人残った軍警に片足を向けた。

すると、小型ビットは周囲に展開、軍警ザクの全身を縦横無尽に突進していく。

動けないようにする目的なのか、ほとんどの大きな関節は砕かれてしまった。

そして、最後の一撃、頭部を吹き飛ばされてダウン。

軍警4機はわずかな時間で撃破されてしまった。

最後の一機は、行動不能になる前にふたたび応援を要請していた。

しかし、正体不明の3機は走り去り、姿をくらませてしまった。

特徴的な、鳥の呻き声のような音だけを残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ソドン◆

 

 

 

 

 

騒動後、直ぐにエグザべは現行犯にて逮捕。それにより地位協定は適用されない。

それについて、G-クアクスのことも含めてざわざわとメンバーで会話していた。

 

「身柄の要求も出来んな……。G-クアクスは?」

「軍警察のザクを撃破したあとは、サイコミュの反応もロストしています。」

「誰かが持ち去った、ってことですよね。」

「誰か、って誰よ。」

「いや……あ、アズサ少佐とか。先にサイド6に向かいましたよね?」

「それはないだろう。彼女はいかに自由人といえど報告や連絡は必ずする。1度もないということはその線はないはずだ。」

「……この件、本国の総帥府にも連絡しますか?」

「いや、親衛隊には睨まれなくないな……。」

「困ります。なんとか、G-クアクスだけでも回収してください。」

「サイド6の当局にも頼み込んでみますか?」

「それじゃ総帥府に通報されるだろう!」

「ねぇ!エグザべくんの心配もしてあげなよぉ!!」

 

と、言った具合だ。混乱も混乱。さてどうしたものやら。

 

「……今日の天気は。」

「?……予定表では、晴れです。」

「いいですね、行きましょう。」

「?どこへですか……?」

 

そのままシャリアは操舵をしているタンギに指示を出す。

彼は表情1つ変えず、指示通りに進行。

ラシットは、頭を抱えた。

 

《ジオン軍所属ソドン!停船せよ!!》

「構いません。そのまま、微速前進です。彼女も待っています。」

「無茶苦茶ですよこんなのぉ!!!」

 

サイド6の声も無視し、そのまま侵入したのだ。

もちろん、壁をぶち破ったりしている訳では無いが、制止を無視している以上、無理矢理という表現も正しいだろう。

 

「……いいか、絶ッ対にミノフスキー粒子は撒くんじゃないぞ!」

 

そのままエグザべが拘留されているだろう場所へと向かっていく。

その姿はみなの目線に止まり、臨時ニュースにもなった。

昨日の事件からすぐにこれだ、多数のチャンネルの話題をかっさらっている。

一部では戦場に逆戻りだとか、逆にミノフスキー粒子が確認されていない以上戦闘状態にないと判断できるとか、その他にも憶測や噂が行き交っている。

そんな中、シャリアはエグザべを迎えに向かうべくサイド6へと降り立つ。

そこへと向かおうとした瞬間。

 

「待っていたよ、シャリィ。」

「アズサ少佐。昨日は大変でしたね。」

 

現れたのは、アズサだ。どうやら、目的も同じようだ。

 

「昨日はどちらに?」

「会社に。何かあってはいけないからな。」

「そうですか。見るに、なにもなかったようですね?」

「ああ、被害は0だ。」

 

そんな会話をしながら、歩を進める。目標の建物をみつけ、そこに入り、目標の人物を目の前に捉えた。

 

「ようこそ、イズマコロニーへ。」

 

そんな話をしている横から、2人は近づいていく。

SPらしき人間が、警戒して間に入る。

 

「誰!?」

 

2人は、答えない。が、迎えられた人の1人が、SPを抑えて1歩前へでた。

 

「シャリア・ブル中佐に、アズサ・フォーリナー少佐。……あなた方が……!?」

「お久しぶりです。カムラン首席補佐官。」

「……。」

 

1人ではなく、2人。一年戦争において英雄クラスの偉業を残した2人が現れたことに驚愕していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大使も困惑されておられた。……しかし……お二人共、まだ赤い彗星に振り回されているのですか?」

「その件は地位協定の適応除外……ジオンに優先権があります。」

「だからといって17バンチ事件の二の舞は……。」

「無論です。」

 

一瞬の沈黙。カムランはすい、と上空に目線を向ける。

 

「……あの強襲揚陸艦、まだ現役なのですね。」

「ジオンも懐事情が厳しいのです。」

 

事実である。戦争に勝利、独立したとて戦争での損失はある。

国として考えるならまだ建国したところと言ったところで安定とはまだ程遠い。

 

「ご冗談を。」

 

ふっ、と鼻で笑ったあとそう告げた。

 

「……彼女はずっと、あの様子ですか。」

 

後ろを振り向き、カムランはそういう。

後ろには、バイクで後ろを走るアズサが見える。

 

「ええ。我々の前ですら武装解除をしたことがありません。」

 

アズサの武装では、最低でも背中の装備を外して抱く、などの工夫をしないと狭くて車両には乗れない。

それを見越してか、バイクを持ってきていた。排気量も1500ccを越えているらしく、通常には出回らないデザインから恐らく自身でどうにかしたのだろう。

それを颯爽と乗りこなしている。見た目年齢20歳前後からのチグハグ感も否めない。

 

「プライベートでもですか。」

「彼女のプライベートについては我々も全くの未知です。今回ここに来たのは彼女の会社のことも含めていますが、本来はその件のはずだったのですが……。」

「なるほど……。」

 

ふたたびちら、と後ろを見るカムラン。

 

(あの排気量と車体サイズ……女性である細い体躯で何故こうも乗りこなせるのか……。)

 

排気量1000ccを越えてくるとなると大型バイクだ。それが1500ccを越えるとなるとモンスターマシン。

曲がらない、止まらない、真っ直ぐ走らないの三拍子が揃う、常人には走ることすらままならないはずのそれ。

それを涼しい顔で乗り、後ろを追ってくる。

 

「時が経てば経つほど謎が深まる人ですよ、彼女は。」

「……違いありませんが、貴方は十分の理解者に見えます。その貴方がそういうのなら、彼女のことをわかる人は今のところいないのでしょう。」

「……どうでしょうね。」

 

再びアズサの方をちら、と見る。彼女と目が合った気がしたカムラン。

ふと、気づく。

 

「……彼女、ヘルメットを着用していませんね。」

「この近辺は努力義務だったと把握していますが。」

 

それはそうだとしても、あそこまで堂々とされると、公的機関に属している身としてはなんとも言えない気分になってしまう。

とはいえ、空気感から察するに、シャリア・ブルとて完全に制御できているわけではないのだろう。

難儀な人を抱え込んでいるものだな、と。

そんなことを、カムランは思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"預けたもの"は引き取ります。」

 

す、とひとつの封筒を渡しながら、シャリアはそういった。

運転席に乗っていた女性、タマキはそれを受け取って中身を確認した。

それは、昨日付の、入国申請書だった。エグザべ・オリベの。

 

「……彼らは筋を通されたのさ。」

 

そういうことか、と感じた彼女の耳にガラスをノックする音が響いた。

ふと、振り向くとそこにはアズサが居た。

何か用なのか、と警戒しながら窓を開ける。

 

「大変ですね、貴女も。」

「え……?」

「相手を知るには、理解と寛容、そして相手の立場になって考え、理性的であることが重要です。」

「な、何を仰って……?」

「困り事があれば、こちらへ。」

 

すっ、と名刺を手渡された。そこには、ダイオ・ロー・トラース社 代表取締役 アズサ・フォーリナーと書かれていた。

近年にイズマ・コロニーにできた会社だ。

特に裏もなく、手広い範囲での業績があり、現在少し注目を集めている。

それの代表取締役だったのか、と少しの驚愕。

社長には、別の人間がいたからだ。

どうやらそこでは、社長と代表取締役は分かれているらしい。

 

「それでは。」

 

そういって、彼女は去った。

何を言っているのか全くわからなかった。一体なんだったんだろうか。

考える間もなく、カムラン首席補佐官にいわれるまま、彼女は車を発進させた。

それを見送り、残されたアズサとシャリアはドラッグストアに向かうことに。

 

「バイクはどうするんです?」

「もう来る。」

 

その言葉通り、ほんの少しするとトラックが近くに止まった。

 

「お疲れ様です、アズサ様。」

 

2人の男女が現れ、アズサに頭を下げて挨拶をした。どうやら会社の人間らしい。

トラックの後ろを開き、アズサはバイクをその中へ。

興味深く観察しようとしたシャリア。

しかし、社外秘なのかブラインドがかかった。

 

「少々お待ちください。」

 

他の人間どころかシャリアにも見えていないが、トラックの中にはバイクを置いているだけではなく、様々な機械が配置されている。

その隅から、彼女が着るにはオーバーサイズの上着を取り出した。

機械的なバックパックを一旦下ろして上着を羽織る。

すると、腕に付けていた機械は大きな袖に隠されて目立たなくなった。

その後、機械音がしたかと思えば、先程より一回り小さな機械的なバックパックが現れ、それを交換するように背負う。

そして、左目を隠すように覆う黒いそれに手を当てると、カシュ、という音を立てて外れた。

その後、コードなどを調整し、ブラインドの外へ出た。

 

「バイクはそのままにしておけ、連絡しておく。」

「はっ。」

 

言われるがままに、2人は返事をしてトラックに乗り込んで遠くに消えていった。

 

「では行こうか。」

「ええ。」

 

ドラッグストアへと向かって歩みを進めつつ、ちら、とアズサの方を見るシャリア。

初めてだった。

未だ軽度に武装しているが、正面から見た見かけ上の姿は非武装の姿。

それに、1部しか隠されていなかったとはいえ、素顔を見たのも。

何を警戒しているのか、と皆に噂されるほどの武装を外さなかった彼女。

 

(私がいるのにも関わらず、軽度までとはいえ武装を解除したのは信頼の証か、軽度の武装を残したのが不信の証か……。)

 

現状、アズサのこの姿をその目にしたのは軍内にいる人間の中でもシャリアだけだ。

それは信頼と言って差支えはないだろう。

だが、深読みすれば装備を残したこと自体が不信とも言える。

が、彼女が今まで1度も外さなかった顔のそれを。外して素顔を晒した。

やはり信頼されているのだろう。

 

「なにか私の顔についているか?」

「いいえ。むしろ、ついていないことを取り上げて言うべきでしょうね。」

「ふふ、間違いないな。私とて場は弁えるとも。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「差し入れの私服姿も様になってますねぇ。」

 

エグザべ・オリベ、釈放。建物から出た時に、階段の下にいたのはシャリアとアズサ。

アズサが、武装解除をしていたことには非常に驚いたが、状況が状況。

沈んだ気持ちでは、声を上げることはなかった。

3人は場所を移動、その道中に当時の状況を聞いた。

 

「民間人?」

「……女学生の制服でした。」

「どこのだ。」

「すみません、そこまでは……。」

「……軍警や、敵対勢力でなかっただけでも良しとしましょう。」

 

俯き、自分を責めるエグザべ。

G-クアクスが奪われてしまったのは自分の油断せいだ、と。

暗い表情で謝罪を口にする。

そんな彼に、傷が痛むだろう、と絆創膏を渡した。

シャリアに案内されるままに、しばらく移動すると、とあるBARにたどり着いた。

カウンター席に、3人は座る。シャリア、エグザべ、アズサ、の順に。

ふぅと一息ついて、また情報を伝える。

 

「その女学生がオメガサイコミュを?……興味深い。」

 

その瞬間、シャリアの端末に連絡が入った。

 

「……アズサ少佐、武装外したんですね。」

「いや、軽度に下げただけだ。」

 

オーバーサイズの上着の裾をする、と少し上げると、そこにはいつも通り、前腕につけられた機械がちらと見えた。

 

「それにしても、初めてです。その、顔をしっかり見たのは。」

「そうか。それは君で二人目だ。」

「その……ソドン内くらいでは外していてもいいんじゃないですか?そちらの方が、きっと皆も怖がりませんし。」

「ふむ、では君は怖がっていると。」

「あ、い、いえ、決してそういう訳では……。」

 

「GQuuuuuuXが動きました。」

「!!いつ!?」

「マスター。」

 

そう言うと、BARのマスターはモニターのリモコンを操作する。

60秒ほどのカウントダウンの画面へ変化した。

……クランバトルの中継映像だ。

 

「これって、ジャンク屋たちが始めた、ナントカバトルってやつですよね。ポメラニアンズ……?ふざけた名前だ。」

 

クラン名が表示された後、ブレるカメラで、機体を映し出す。

そこには。

 

「G-ク──」

─パァン!─

「いって!!」

「何を口にしようとした?貴様のいる場所はどこだ。」

「す、すみません……。」

 

話をしていた、その機体が写し出されていた。

しかし、それは本来機密の機体。衝撃とともに口にその名を出そうとしたが、アズサがエグザべをビンタして物理的に止めた。

 

「まぁ、ここでは問題ないがな。」

「……じゃあ俺殴られ損じゃないですか……。」

「それくらい気を張っておけということだ。」

 

叩かれた頬をいてて、とさすりながらエグザべは目線をモニターに戻す。

 

「……本当に民間人だったようですね。」

 

モニターから目を離さずに、シャリアは呟く。

その後に現れた機体。M.A.Vの機体が表示され、シャリアとエグザべは驚いた表情をした。

 

「……嘘だ……ガンダム……!?」

 

映し出されたのは赤いガンダムだった。

 

「……面白い。」

 

シャリアはニヤリと笑いながら、そう呟いた。

開始の合図とともに、G-クアクスは大きく動きながら周囲を見ていた。

その動きは、お世辞にもパイロットとしての動きとは言えない。

その直後、敵クランに補足され、射撃されていた。

回避の動きで赤いガンダムに衝突、当たりはしなかったが、これでは素人丸出しだ。

 

「これは酷い……なぜ赤い彗星がこんな素人と……。」

「あれは大佐ではない。」

 

断定したような語調で呟くアズサ、それにシャリアは同意するように頷く。

 

「大佐がM.A.Vの先陣を他人に譲るはずがない。」

「……M.A.Vは、貴方とシャア大佐が編み出した戦術だと聞きました。」

 

ミノフスキー粒子下での戦闘は、基本的に有視界で発生する。

であるならば、先に見つけた側が圧倒的に有利になる。

しかし、それは最初の一撃だけ。攻撃するには姿を晒さざるを得ないからだ。

初弾が躱されてしまえば有利だった状況はイーブンにまで戻る。

この時失うアドバンテージをお互いに補完し合う。

それがMS2機1組の、通称M.A.V戦術だ。

 

「と、突撃機動軍の教本にもあります。」

 

射撃を回避され、補足された味方を補完するように援護、そして2機が合流。

クランバトルの相手は、M.A.V戦術の基本に忠実に動いている。

もしかしたら、相手は元ジオンのMS乗りの可能性がある。

幾度となく射撃されるG-クアクス。

それを回避、もしくは盾で受けてダメージを避けている。

 

「それにしても……。」

「ここまでの全ての攻撃を回避しています。扱いの難しいGQuuuuuuXよりよく動く。」

「これって、サイコミュだけで機体制御を……!?危険です!」

「このパイロット……何者ですか。」

 

投げられた閃光弾。それをまともに食らったG-クアクスは動きを止めてしまう。

そこへ、突進する敵クランのMS。吹き飛ばされた先を狙う、もう1機のMS。

それを、赤いガンダムが手を握り、別方向へ投げることで回避させた。

当然、そうなれば狙われるのは赤いガンダム。

相手のヒートホークによる近接攻撃を手にしていたハンマーで受け、ダメージを回避。

しかしもう1機による蹴撃を受けて飛ばされた。

G-クアクスを狙う敵クランの片割れ。追い込むその向こうにはM.A.Vが待ち構える。

挟撃。距離が近づいた瞬間、G-クアクスは突然進路を下へと変更した。

真後ろから、ヒートホークが飛来、前にいた敵クランのMSの頭部へとクリーンヒットした。

 

「まさか、軌道を読んで誘い込んだのか!?」

 

閃光弾の後に突進され、その時に落としてしまったヒートホーク。

それの進路を先読みした、と見るのが正しいだろう。

 

「どこまで見えてるんだ……!?」

「「……。」」

 

すかさず頭部に刺さったヒートホークを抜いて、もう1機を狙いに行こうとするG-クアクス。

抜けないのか、もたついていた。

もちろん、その隙を見逃すはずはなく、背後から残った一機のMSが迫る。

それを、真下から赤いガンダムのハンマーにより妨害、ダメージを与えつつ吹き飛ばした。

無理矢理ヒートホークを抜いたG-クアクスはそのまま振りかぶり、残った一機のMSの首を切り落とした。

クランバトルのルールで、頭部を破壊された場合は撃破扱いになり、負けとなる。

G-クアクスと赤いガンダムはこのクランバトルに勝利した。

 

「……これが、本物のM.A.V……。」

 

実際に目にしたことがなかったのか、エグザべはそう呟く。

 

「……。」

 

シャリアは1口、グラスの中身を飲んで何を思うか、黙したまま。

 

「……ふふっ。」

 

口角を上げ、彼女は笑う。

 

「あ、アズサ少佐?何故、笑って……。」

「いやなに、面白いことになるな、と。」

 

その先の、展開をたのしみにしているように。

 

 

 

 




※蛇足

「あの、俺が言うのもなんですけどそんなこと言ってる場合では……。」
「貴様がかの機体を持ち帰っていればこうはなっていないがな?」
「あの、ほんとに、すみません……。」
「ふふ、いや、私としては構わん。面白そうだからな。」
「……上官として、叱るべきではありませんか?」
「それを言うならシャリィも上官だろう。二人で叱責するか?」
「ふっ、辞めておきましょう。エグザべくんの胃がもちません。」
「ならシャリィは叱るといい、私は肉体に直接伝えるとしよう。」
「いいですね。それなら大丈夫でしょう。」
「え、あの、いっ……その、勘弁して貰えませんか……?」
「冗談だ。」
「あぁ、よ、良かった……。」
「半分は。」
「半分……?」
「ははっ、本当に悪戯好きですね、貴女は。」
「あの俺アズサ少佐のこんな性格なの初めて知ったんですけど……。」

AIアートにて"アズサ・フォーリナー"のキャラ絵を近しい感じのものを出力出来ました。武装有りと、武装無しの状態どちらもあるのですが、どうです?

  • 見たいよ!
  • どっちでもいいよ。
  • みたくない……想像で補完します。
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