機動戦士Gundam GQuuuuuuX 白い深淵   作:楽園の主

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ほとんど日常回。流し見でも問題は無さそう。趣味で書きました。




第3話 ─閑話休題─

 

 

(時間と場所はあっているよな……。)

 

なんだかんだあったが、本来は交流会や彼女の会社を見るのがメインだ。

この日は、名付けるならば懇親会。

中佐2人、少佐1人、少尉2人、伍長1人と羅列すればとんでもないメンバー構成。

本来はアズサ、シャリア、ラシットと加えてエグザべの4人のつもりだったが、興味があるからかコモリとセファも着いて行くことにした、と言ったところだ。

それ故か食事処も高級な場所ではなく、個室があり、のびのびと肩肘を張らずにゆっくり出来る場所が選ばれていた。

サイド6をよく知る、アズサ本人が選んだ場所だ。

 

「エグザべさん、早いですね。」

 

そんな声とともに、セファが現れた。集合時間30分前、十分に早い。

雑談を混じえつつ、10分前程度まで待つとコモリが現れた。

 

「2人とも早いじゃん。」

「コモリ……あのな、いくら懇親会とはいえ、中s……じゃなかった、上司が来るんだぞ。待たせる訳には行かないんだから、念の為にもう少し早く来た方が──」

「かったいなぁ、大丈夫だったじゃん。」

 

軽口を叩いていると数分して、ラシットとシャリアが集まった。

3人は気持ち少し背筋を伸ばして挨拶を返す。

 

「……彼女は?」

「珍しいですね。待ち合わせに遅れることは今まで無かったのですが。」

 

そんな話をしていると、大型のバイクが近くに止まった。

運転していたのがアズサのようで、降車し、その近くで待っていた男性といくつか言葉を交わした。

彼は深く頭を下げた後、バイクに乗ってどこかへと去った。

 

「待たせたか。」

 

その声とともに、シャリア以外はみな、言葉を発さずに目を見開いて彼女を見た。

 

「……なんだ貴様ら、何か変か。」

 

服装としてへそ出しだったり片方の肩が出ていたりとまぁそこも目を引くが、だ。

いつもつけている仮面もなければ機械の尻尾もない。

ほぼ武装をしていないのだ。

気になるといえば、胸元上部中央にある機械だが、それはさておきだ。

 

「貴女が武装解除をした姿を初めて見たからですよ。」

「私とて場は弁えるが。」

「……そうでしょうか。」

「なにかいいたいことでもあるのか?」

「ふふ、いえ?なにも。」

「おい、あるだろうその言い方は。」

 

心做しか柔らかな雰囲気での話。

もともとシャリア・ブルには仲が良さそうだが、それよりも少し踏み込んだ、そんな雰囲気。

 

「しかし、すまない。待たせたようだな。」

「いえ、それほど。何か問題でもあったかと思っていましたが。」

「少しな……。」

 

会社を持つ身だ、本当に何かあったのかとエグザべは少し心配していた。

アズサは、はぁ、とため息をついた。

 

「この身なりだ。バイクに乗っているだけで何度も職務質問されてしまってな。」

 

アズサの見た目は非常に若い。むしろ、幼いと言えるほどのそれ。

普通に免許を持ち合わせてはいるが、見た目の年齢はもはや20に満たないとも見える。

落ち着いた雰囲気と話し方でなんとか20と少しといったところか。

 

「ふふ、若い見た目が仇となったか。ちなみに、何回くらいだ?」

「こればかりは仕方ありませんが、3度ほど。なぜ今日に限って頻発するのか……。」

「はははっ、それは大変だったな。」

(艦長ニッコニコだ……。)

 

溜息をつきながら言うアズサに、ラシットは楽しげにそう話しかける。

いつも振り回されている仕返しだろうか。

口には出さないが、そう思ってしまうセファ。

ともあれ、全員集合できたので食事処へ。

わいのわいのと会話しながら道を歩くこと数分、その場所へと着いた。

すっ、とエグザべが扉を開け、みなが入る。

受付にアズサがいくつか言葉を告げると頭を下げ、案内を始めた。

完全個室の座敷席に案内され、靴を脱いで上がって順番にテーブルの前へ。

 

「シャリィ、最初は何を?」

「そうですね……以前話していたビールは?」

「こっちの欄だ。ラシットさんも、どうされます?」

「知ってはいるが1度も飲んだことがないからな……どうせならそれを──」

 

と、自身の上司が選んでいるのを尻目に、スっとコモリとセファにメニューを渡すエグザべ。

麦芽を大元にしたアルコール飲料、ということは知られているが、ジオン公国で一般的に嗜まれている、という訳では無い。

各々が選び終わり、暫く。飲み物が店員から渡された。

 

「この場は無礼講で楽しみましょう。」

 

そう、シャリアがみなに言った。

わいのわいのと会話が行き交う。

 

「ん、苦味が強めだな。」

「人によっては味は好まないという。また、愛好家の中には味ではなくのどごしを楽しむものだ、という者もいるな。」

「なるほど、落ち着いて飲むよりは一気に流すと。」

 

そんな会話をしながら、先程届いた枝豆を片手で食べ続けるアズサが気になって仕方がないエグザベ。

 

(器用だな……ってもう食べ終わってる!?)

 

随分早い消費に驚かせられた彼。

 

(ともかく、上官の前だ。無礼講と仰ってくれたとはいえ気をつけないと……。)

 

ちら、と彼が隣をみるとわいわいと話しながら普通に酒を飲むコモリとセファ。

その姿に、気にしてるのは自分だけなのか、と眉間を抑える。

 

「エグザベ。」

「うおっ!?は、あの、はい!」

 

真隣にアズサがいた。先程まで机の対面にいたはずなのに、音もなく隣にいたことに驚いてしまった。

 

「一旦、件のことは置いておけ。今は楽しむことだな。」

 

ずい、と近づきながら彼女はそういった。

 

「あの、わかりました、わかりましたから。近いです。」

「?そうか。」

 

すい、と少し離れるアズサ。

本人は自覚していないようだが、他人との物理的距離が近いとみなは思っているようだ。

 

「ワインを見ると、思い出します。大佐、今どこに……。」

「また言ってるな、シャリィ。」

「いいでしょう、感傷に浸りたい時もあるのです。」

「……私からすればお前も同じだがな、アズサ。」

 

わいのわいのと話し合う3人。傍から見ても、仲が良く見える。

まぁ、ギスギスしているよりはいいだろう。

さて、自分は何を頼もうか。

そうのこうのしていると、もちろん踏み入った話も出てくる。

ここの個室はアズサが案内しただけあるが、かなり高精度の防音を敷いており、プライバシーも守られていると。

そのような話も、安心してできる場所だ。

 

「しかし……一年戦争では、本当にコイツの技術が役に立った。よくもまぁ、こちらに居てくれたものだ。」

「もし地球軍にいたと考えると……恐ろしいですね。」

 

本来優勢であったのは地球軍の方だった。

逆転のきっかけはシャアがガンダムを持ち帰ったこと。

その後、彼女の発想、技術、戦闘理論で戦況を覆した。

しかし、一年戦争時にアズサが地球軍にいたと仮定するなら。

ジオンに入らず、その時に地球軍の開発や整備に携わっていたとしたら。

シャアは帰ってくるにしろ、突入した者たちは無事にすまなかっただろう。

ガンダムもこちらの手の中になかっただろう。

そう、ラシットは思っていた。

 

「私がせずとも、誰かがしたこと。それを早めたに過ぎませんよ。」

「何を言うか、それが偉業だと言っているのだ。」

 

なんだかんだと厳しく言う彼女だが、認めているところは認めているのだ。

普段の動向はアレだが、と言うところか。

 

「あとは少し落ち着きがあるといいんだがな?」

「落ち着いていますとも。面白い人や物事の傍にね。」

「ウチの艦内で、という話をしているのだ。」

 

笑いながら言うアズサに、ラシットは呆れた顔で返した。

 

「ジオン内での戦闘訓練や、MSの模擬訓練も常にトップに位置しています。皆も、貴女から学ぶことは多いでしょう。」

 

度々、MSの模擬戦闘訓練や、実技での戦闘訓練にアズサに声がかかり、そこで皆の相手になる機会があるという。

本来、整備士に位置する彼女だが、エグザベとの訓練の様子を1部が見かけたことからそうなったとか。

 

「あれからどうです?エグザベくん。」

「いいえ、1度も。ただ、得るものはあります。学ぶことが多い。」

 

戦闘訓練で相対した時、完全武装で重く、機動力も無いはずの彼女に一撃も有効打を入れたことがない、という。

先を読まれているというか、なんというか。

一手で複数の択を迫らせてくる上に、その対処に対する択を用意してきているというのが正しいか。

もちろん、その訓練で彼女は武装を使ったことすらない。

実践で全てを使えば、どれ程の兵が彼女の前に地に伏すだろうか。

 

「経験の差だ、同じ経験を積めば大体の人間は同じことができるだろう。」

「んなわけないでしょ……。」

 

思わず、コモリからそんな言葉が漏れた。

 

「あ、そういえばあの人たちどうなったの?」

「あぁ……皆が思ってる通りだよ。」

 

以前、1度ほかの隊の人からエグザベに対して言われたことがある。

アズサとの訓練なんぞ羨ましい、と。

実技になれば生身と生身の戦いになる。

組み伏せてやら、勝負の時に胸に手が当たってやら、セクハラのような考えで訓練をしたい、などという者がいたという。

 

「かなり止めたんだけど、どうしてもと言ってきてさ。……深くお願いして、何とか了承してもらったよ。」

 

痛い目に合うのは目に見えていたし、そんな考えで訓練なんぞ言語道断だ、と断っていたのだが、複数から何度も言われて、根負けしたらしい。

アズサにお願いしたところ、興味無いと切り捨てられたが、そこをなんとか、と食い下がったと。

その時、言われたことは、"痛めつけるがいいのか?"だった。

この機会だ、お灸を据えてもらおうとお願いしますと、返事したわけだ。

 

「あの時はどうでしたか?」

「ん?あぁ……興味をもてる者は居なかったな。」

 

当人に聞いた当時は、相当ハードな訓練になったと聞いた。

複数でかかっても掴めるどころか、かすることもなかったと。

散々ボッコボコにされた後ペナルティでキツイトレーニングを課され、次の日に傷と疲れを持ち越すことになったらしい。

当然だ、あんな気持ちで生半可に挑む人じゃない。

その話を聞いた時、そう思ったエグザベだった。

 

「……そんな凄いの?」

 

何気なく、隣からそう問われた。声の主はコモリだった。

 

「凄まじいの一言だよ。1度だけだけど、片手で投げ飛ばされたことがある。」

 

もちろん、エグザベ自身の勢いなどの力を含めてだろうが、それでも片手で投げたのは事実。

恐ろしく技量が高いという証左だ。

 

「何を言うか。あれは貴様が勝手に吹っ飛んで行っただけだろう。」

「え゙!?いやいや、あの時胸倉を完全に掴んでましたよね!?」

「そうだったかな?いやぁ、私は怖くて怖くて、身を屈めただけなんだがなぁ。」

「すっごい笑ってましたよねあの後!?」

 

フハハ、と彼女は笑う。記憶に残っていることから見るに、彼女にとってエグザベという存在も興味をもてる存在なのだろう。

 

「一撃、食らわせて欲しいものだな?エグザベ少尉。」

「……精進致します。」

「ハハハ、あまりいじめないようにお願いしますよ。」

「む、心外だなシャリィ。いじめてなどいないとも。」

 

その後も、楽しい時間は流れる。

脳裏に過ぎることもあるが、一旦それは置いておいて、この時間は楽しめた。

そして、終わりの時は来る。

 

「支払いは──」

「もう既に済ませている。」

「でしょうね。上司の顔くらい立てて欲しいものですが?」

「何かと迷惑をかけている面もあるからな。ここは先手を打たせてもらった。」

「……そう自覚しているならもう少し気をつけろと何度も言っているんだがな?」

「ふふ、そうですね。これからもご迷惑おかけします。」

「だからァ……!」

 

上官に対する態度ではないが、それを許されているのはその人間性からか。

ホテルは既に近くで取っているようで、念の為1人につき1部屋とまた豪勢に。

さらに、部屋同士も近くならないように配慮もされていた。

さて、解散だと言う時。

 

「なんですかあの体ぁ!おっぱい大きいしスラッとしてるし身長高いし!なんですか!?ニュータイプはスタイル良くなきゃなれないってことですか!?あれじゃニュータイプじゃなくて"乳"タイプですよ!あははっ!」

「よ、酔いすぎですよ〜……。エ、エグザベさんももう行きますか?」

 

ふらっふらで変なことを虚空へ話すコモリを何とか補助して歩かせながらセファは苦笑い。

酒が進んでいないなどと言いながらアズサが絡んだ結果がこれだ。

完全に酔い潰されている。視線もあちらこちらに行っており、訳の分からないことを話していたりもする。

そのアズサはというとケロッとしている、たちが悪い。

 

「いや、僕は少し風に当たってからいきます。」

 

酔いつぶれたコモリは当然として、皆ももうホテルに戻るようだ。

夜の風に当たりながら、少し考え事でもしようかと考え、ホテルの場所だけ電子マップ確認し、1人夜の街を歩く。

 

「……──」

 

温まった身体に夜風が気持ちいい。ふと、自分に課された指令を思い浮かべる。

ソドンにいるシャリア・ブル。彼の動向には、キシリア目線怪しい部分が多すぎる。

彼が、何かをしでかさないか。ギレン派ではないか、と。

それを調べるためにソドンへ来た。

一年戦争時の彼は、両派閥の指令を聞いていた。

戦争中は考える余裕は無かったが、キシリア目線で考えれば、ギレンの司令も聞いていた、という所を怪しんでいるらしい。

言われればそうだ。

そしてその時、隣にいるアズサ少佐のことはどうなのか、とエグザベは聞いた。

すると帰ってきた言葉は。

 

奴のことはいい、放っておけ。

 

そう言っていた。確かにキシリア、延いてはジオンに仇なすかと言われれば何となく、そんなことはしないだろうという気はする。

 

(優しいとか、そういう訳では無いが人がいいのだろうという気はする。)

 

それだけに、怒らせたら怖いのだろうという、そんな気もするエグザベ。

 

(親衛隊のギャンについても、随分関わってくれたと聞いたし、あの人がギレン派だとも思えない。)

 

ジオン軍のMSやMA、それに当たるシステムや外部武装に至るまで、そちら関係にはだいたい関わっている。

また、資金提供もあるからジオン軍自体になにか害をなす気もないように思える。

ただ、それはそれとして怪しい部分は本当に多い。

自分のやりたいことをやっているだけなのだろうが、それでも軍としては確認を取る必要はあるだろう。

賢しい者は真意を隠す。

虎視眈々の内部からの崩壊を狙っている可能性がないとは言いきれない。

……一年戦争においての功績がある以上、そこまでのことを画策している可能性は低いと見えるが。

 

(それはキシリア様も、放っておけというわけだ。)

 

そうなれば、優先順位はシャリア・ブル中佐に傾くだろう。

ふぅ、と考えに整理を付けて、一息つく。

体が少し冷えてきた。あまり離れてしまっても、迷う可能性もある。

そろそろホテルに戻ろうか、と思ってその場で踵を返、そこへ向かう。

途中。

 

「ん、散歩は終わりか。」

 

道にある店から出てきたアズサに出会ったエグザベ。雑談を交える。

ソドンから出て、ほかに話せば、アズサが雑談を興じるというのも珍しいと聞いた。

ソドンで見る限りそうでも無いと思うけど。そんなことを思った。

 

「して、件の2号機の2人目も?」

「……はい。」

「そうか。……どちらも同期だったらしいな。」

 

2号機。G-クアクスの2号機である、ガンダム・フレド。通称、GFleD。

グラナダで開発されたそれは、当然アズサも関わっている。

フラナガンスクールから選抜されたニュータイプがそれのテストパイロットに選ばれていた。

現在2名、それに選ばれたがそのどちらもがエグザベの同期。

そして、その2人は不審死している。

結果、ガンダム・フレドはテストパイロットに選ばれたものは死んでしまう呪われたMSだ、とまで言われている。

 

「呪いとは何を滑稽なことを。考えずとも何故か分かるものだが……さておき、全く嫌なことは重なるな?」

「……すみません。」

「否、謝ることは無い。起こることは起こる。」

 

ふっ、と謝罪を一笑した。G-クアクスの件に関してはほぼ事故だ。

エグザベは、彼なりにできることはした。その上で起こったことなのだから、それは仕方がない。

責任の所在はどこかと問われれば彼だが、全て彼が悪いかといえばそうではないだろう。

 

「……また戦争が、起きるんでしょうか。」

「連邦か?」

「いえ、その……。」

 

エグザベは、少し下を向いて考えた。

どことどこが、と口にしてはいないが、頭によぎる未来、派閥争い。

 

「……人間が価値観を共有し、手を取り合うことはとても暖かく、満ち足りたことだろう。だが現実は悲しくなるほどにそうじゃない。」

 

組織と組織、そういった広い規模だけの話ではない。

たった1人と1人の間でも、人間は互いが違いすぎる。

誰しもその違いを認め、お互いに譲歩できる訳ではない。

規模が大きくなれば大きくなるほどそれは不可能に近くなる。

 

「人間は争うことを辞められん。愚かしいことに見えるかもしれんが、それは仕方がないことだ。そうは思うが、私は他者に与えられる絶対的な死を肯定する訳では無い。だが死というのはいつか起きること。早いか遅いかだ。」

 

エグザベには、表情は見えなく、どういう感情が込められているかは不明だ。

 

(諦観……だろうか。)

 

諦観してしまうほど、幾度も死と別れを経験したのだろうか。

見た目の若さとは裏腹に、とても深い経験を重ねたような、重みのある言葉だった。

その見た目に騙されそうになるが、自分よりも長く、そして年上だ。

一年戦争も経験している。そうなれば、そうなってしまうのも頷ける。

そうこうしていると、もうホテルへと着いた。

 

「……語りすぎたな。さて、酔いは覚めただろうがもう休むといい。」

「ありがとうございます。」

 

そう言って、自分の部屋番号を目指す。

フロアも違うのだろう、アズサとはエレベーターで別れた。

先に降りる彼女、扉が閉まる直前に。

 

「敵はどこにいるかわからないものだな、エグザベ。」

「ッ……。」

 

最後に、そう言い残した。その目は、顔は、不敵に笑っていた。

 

(何か知っているのか……?)

 

相対すればするほど、考えれば考えるほど彼女が何を考えているのか、どこの陣営なのか分からなくなる。

 

(中佐なら、分かるのだろうか。)

 

その中佐を調査しているところなのだが、そんなことをふと思った。

最優のニュータイプと思われる彼なら、少佐の考えも全てわかるのだろうか。

とはいえ、ここで考えていても仕方がない。

部屋に入り、備え付けられた風呂に入って、休むことにした。

 

(明日は……予定通りならアズサ少佐の会社へ向かう日か。)

 

本来ならキシリアに放っておけと言われた彼女のことだ。

たまたまとはいえ、一応彼女の周囲を視察する機会を得たのは僥倖か。

 

(ラシット艦長はあまり重く捉えていないみたいだけど──)

 

艦長とは少し違い、エグザベ目線では今回の視察は重要な意味を持つ。

シャリア・ブル中佐がもし、ギレン派だと考えられるのなら、それと仲がいいアズサもそちらへと傾いている可能性はある。

視察とともに、彼女のことも見ておかなければ。

そう思いながら、眠りの波に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

───

 

 

 

 

 

 

 

「アズサ様、おかえりなさいませ。」

 

社長である女性が、アズサへと向け、深々と頭を下げた。

その後ろには複数の社員が控えており、同様に頭を下げている。

 

「良い、許す。」

「はっ。」

 

その言葉と共に、その場に数人を残して持ち場へと戻っていった。

その一瞬だけで、彼女の立場、そしてどれだけの人なのかと言うところが伺える。

 

「ようこそ、ダイオロートラース社へ。」

 

アズサから後ろにいる皆に向き直り、そう告げた。

その後は会社の大まかな説明を社長である女性から聞いた。

会社の内部を見ても、特にこれといった怪しいところはない。

本当に手広い事業をしている、と言ったところだ。

様々な話を聞いて、女性のソドンクルーが化粧品やらなんやらに興味を示していたくらいか。

 

「と、言ったところでしょうか。もし、現場を見学したいというのであれば──」

 

案内人と皆が話す中、社長である女性と、アズサに対して、シャリア・ブルが問うていた事が、エグザベの気にかかった。

 

「クランバトルについて、どう思われますか?」

 

なぜ今、2人に聞くのだろうか。世間話にしては、真剣な表情だ。

 

「正直なところ、それがあることで1部製品が売れていますし、修理依頼も来ていますから……。」

 

苦笑いしながら、そう社長は言った。

 

「MSの戦闘を見れるからな、娯楽として私は見ているよ。」

 

アズサも、否定的な意見ではないらしい。

彼女は面白さを追い求める人、それはそうだろう。

エグザベはその言葉に納得した。

ふと、自分自身が見かけたMSのことを思い出した。

 

「MSといえば……先日、軍警を謎のMSが襲ったそうですが、あちらはご存知ですか?」

「ああ……面白いMSだったな。是非、こちらで解析したいものだな。」

 

口角を上げ、怪しい笑みでアズサはそう答えた。

 

(やはりというか、アズサ少佐が見逃すはずもないか。)

「余計なことを!するんじゃないぞ。」

 

その辺で、ラシット艦長が話に割り込んできた。

面白そうだと見るやいなや行動をする彼女に、厄介事を持ってくるなと言う警告。

 

「……あのMSがどこの所属かは?」

「軍警と敵対しているようだがジオンでもないようだからな。クランバトルに参加しているどこかだろうが……さて、どこの所属だかな。」

 

シャリア・ブルの問いに、彼女はそう答えた。

相変わらず含みがある言い方だ、これだから真意を読み取れないし、怪しめばいいのか信頼すればいいのかわからなくなる。

ただ彼女は、面白がっているのだろうが、それに振り回される周囲はたまったものではない。

 

「おい、アズサ。わかっているんだろうな。」

 

ジヌロ、とアズサを睨みながらラシットはそう詰め寄った。

余計なことをするな、と2度3度と釘を刺しているのだ。

 

「ええ、ええ。わかっていますよ。」

「本当だか……。」

 

やれやれ、と大きなため息を彼女はついた。

言っても無駄かもしれないが、それでも言わなければ気が済まないのだ。

その後も、しばらく時間を過ごしたが、彼女にその時点で怪しい部分は見当たらなかった。

収穫といえば、彼女が実際どんなことしていたかをその目で見たことと、ソドンクルーの大半が土産を持って帰ったくらいか。

 

(キシリア様は放っておけと言っていたけど、やはりそれでいいのかもしれないな……。)

 

エグザベはそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

───

 

 

 

 

 

その後。

とある場所にて、シャリアとアズサは二人で会話をしていた。

 

「少佐。例の件に関してですが──」

「手は打っている。」

「何機ほど、待機させているのですか。」

「そうだな、6機ほどか。」

「平然と言うのですね。」

 

1会社がMSを許可なく製造していることは許される行為ではない。

当たり前の話。軍用兵器を位置づけられるものだから。

 

「シャリィには隠すことでもないからな。聞かれていないから言わぬだけで、聞かれたら答える。」

「……そうですか。」

 

アズサは口角を上げたまま、シャリアを見つめていた。

 

「安心しろ、面白い人間がいる限りそこに私はいる。」

 

何かを察したように、彼女はそう言った。

そのまま、2人は今後の話を少しだけした。

シャリアは確証を得られない。本当に目の前の存在が、味方なのか。

 

 

 

 

 

───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アマテ・ユズリハ。奇妙な出会いから、いつのまにかジークアクスのパイロットになり。

赤いガンダムの搭乗者、シュウジ・イトウとM.A.Vを組み、現在ポメラニアンズとしてクランバトルに参加している。

それの、四戦目。勝利で収め、喜びのままに帰ろうとしたその時。

 

─!乱入発生!─

 

「シュウジ!これ……!」

「大丈夫、今まで通りに行こう。と、ガンダムが言っている──」

 

2人にとっては初の出来事だ。

そもそも、クランバトルにおいて乱入が発生する機会は多くない。

その機会の少なさから、乱入に出てくる機体にどんなものがあるか、などの情報も全く定まっていない。

だからこその難易度の高さなのだが。

 

─狂騒の宴・見えざる一閃─

 

モニターに表示されたその文字が、消えた時。

少し遠くにその姿が見えた。

 

「なにあれ……。」

 

巨大な球体に、蜘蛛のような足が4本生えたという異様な見た目の機体だった。

球体部分だけで大きさは15mにもなり、足を完全に伸ばすとかなりの大きさになる。

MSというよりは、MAだ。

クランバトルではMAの使用は禁止されているが、乱入してくる機体にその制限はない。

遠くに佇むだけで、こちらへはやってこない。

拍子抜けか、と思われたその時。

ガコン、と何かが巨大な球体に隙間が開いた。

瞬間。

 

─カッ!!─

「わっ!眩し──」

─デーデーデッデレデレデェェェン!!─

「うっっっるさい!!!!」

 

とんでもない光量と、爆音での謎の音楽。

通信回線に無理矢理割り込んで爆音を奏でられ、M.A.Vであるシュウジの声が全く聞こえない。

ミラーボールのようにチカチカととんでもない強さの光を当てられては視界も当てにならない。

その時、直感が危険を囁いた。

マチュは、手にしたヒートホークを前に構える。

 

─ガァンッ!─

「うわっ!」

 

見えてはいないが、かのMAのM.A.VであろうMSが攻撃してきたのだろう。

攻撃自体は重くはないが、この光量と爆音の中では認識は難しい。

通常の人間であれば、突破は困難だったかもしれない。

だが彼女らはニュータイプだ。

 

[大丈夫だよ、マチュ。落ち着いて。思う通りに、動くんだ──]

 

ニュータイプは感応能力により、精神世界での会話を可能とする。

短い会話でも彼の声を聞いて落ち着きを取り戻したマチュ。

 

「そうだ、落ち着かないと。」

 

爆音がなり、明滅する視界の中、何度も攻撃してくる機体。

双方を交互に攻撃しているようだ。

 

(あんまり痛くない!タイミングさえ分かれば……!)

 

奥のMAは攻撃してこない。妨害をするだけなのだろうか。

ともかく、攻撃してくる機体を何とかしないことには近づけすらしない。

 

「……ッ!!今!!」

 

直感。それがタイミングを告げた。思い切り、ヒートホークを振り下ろす。

ちょうどそのタイミングで、何かに当たった感覚があった。

完璧なタイミングで振り下ろされたそれはMSをいとも簡単に砕いた。

 

「あとは──」

 

そう思い、MAの方を見ると、小さな影が見えた。シュウジはもう既にそちらへ向かっているようだ。

マチュも急ぎ、そちらへ向かう。

 

「あ、っぶない!」

 

迎撃装備は流石にあるようで、どこからかバルカンのようなものを放っているらしい。直感で避けたが、いくつかを掠めた。

軸をずらしながら接近していく。足の接続部は幾分か光がマシらしく、上に出れば多少は姿が影として見えた。

すると、脚を広げて回転し、吹き飛ばそうとした。

縦に動くことで2人は回避、そこをビーム砲で狙撃するも、それを予測した2人はさらに回避。

シュウジが放ったハンマーが球体上部にヒット、装甲を剥がした。

そこへ──

 

「そこだぁぁぁあ!!」

 

マチュが全力でヒートホークを振り下ろす。

 

─バチッバチバチップァプァプァーン!!─

 

エアホーンのような音を爆音で響かせたあと、爆発。

音と光は止んだ。後に確認すれば、先に攻撃してきた機体は10~12mほどと小さく、装甲も薄いようだった。

完全にこの相性で合わせる前提のデザインなのだろう。

かくして、ポメラニアンズは乱入に対して初の勝利を収めたチームともなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで4勝目……乱入を数に含めるなら5勝目、負け無しです。」

 

再生機器に流されている動画を止めながら、コモリは言う。

クランバトルに参加しているかのチームのことである。

ジークアクスと、赤いガンダムのマブが、無敗で進んでいる。

 

「うーむ、素晴らしい。……このパイロット、もうガンダムクアックスを使いこなしている。」

 

ポメラニアンズという名で参加している2機だが、裏ルートの利用、及びアズサの協力もあるが未だ掴めていない。

シャリア・ブルは2機が一網打尽にできるなら好都合だとは言う。

しかし彼女としては、研究結果としてサイコミュ同士の共振がゼクノヴァの原因だ、という仮説も出ているため、放置するのは危険だという考え。

 

「誰にでも動かせるものではないんですよ、特にオメガサイコミュはね。フフッ……。」

(なんで嬉しそうなんだ……。)

 

怪訝そうに片眉を上げ、彼女はシャリア・ブルをじ、と見つめた。

 

「しかし……乱入してきた機体、とても普通とは思えませんね。戦術的価値があるのかどうかはさておき、異様すぎます。」

「あれらを作った存在は、おそらく楽しんでいるだけなのでしょう。そこにコストの面や、価値などは先んじるものではないのです。」

 

誰か1人を想像しながら、彼はつぶやく。

 

「あれを作りそうな人、1人しか思いつかないんですけど……。」

「奇遇ですね。私もそうです。」

「……報告は?」

「しない方がいいでしょう。確定した情報ではありませんし。」

 

それに放っておいた方が、こちらに良い方へ働くだろう。

そう、シャリア・ブルは思うことにした。

 

(もし、直接対面することになってしまったと仮定して、現状でどのような戦力を保有してるか今はまだ予測もつかない。)

 

今を楽しむ彼女のことだ、もし敵にしてしまえば、世の中の情勢や自身の身のことなど後回しにし、引っ掻き回すだけ引っ掻き回すなど想像に安い。

相手するにしても今は早すぎる。

そう考え、放置することにした。ある程度の詮索はしながら。





誤字があったらすみません。それではまたいつか。

AIアートにて"アズサ・フォーリナー"のキャラ絵を近しい感じのものを出力出来ました。武装有りと、武装無しの状態どちらもあるのですが、どうです?

  • 見たいよ!
  • どっちでもいいよ。
  • みたくない……想像で補完します。
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