ピアノの音が鼓膜を打ち脳髄へ望みを届ける
暗く冷涼、密閉された空間と中央に浮かぶ穴、取り囲み用意された三席の椅子と、何処までも白く、何よりも狭い黒の壁
流れているのはソナタ『月光』
何故に流れているのか、当然己が指定し流したから、聞きたくなったから、考え事には有っているから、そういう気分だったから、思って居るから
或いはそうでなければ何故流れているのだろうか
操られているから、そう願われたから、手招きをされたから、誘導されたから、入れ替えられたから、乗ってやったから、それとも
そうあれかしとされたのだから
目の前に一つ、ペストマスクを被り白い翼を生やした白熊のぬいぐるみが、王冠を被っている
音とはかくも心地良いが、しかしてそれは如何にも悍ましい
言語であり、自然であり、工学であり、軌跡であり、娯楽であり、表現であり、夢想であり、現実であり、数字であり、波長であり
詰まる所
伝達だ
世界と世界、己と己、他者と他者、それ即ち…
自己と奥底と言う絶対に対する揺らぎであり、他者と言う存在しない物の記録を辿る意思をたった一人だけの己へ促す狂気の毒物
音とは真理を溶かし崩す神殺しの槍で有るのに、結局の所それは真理によって動く過程であり、如何したって根源にはたどり着けないロンゴミニアドである
振動とはやはり世界の鼓動、故に知性は粒子の運動に時と名付け運動している物が存在している仕切りを空間と名付けた
過去も未来も現在もまやかしであれど、空が空でありただの領土だとしても、それは正しく境界である
所謂、ヨグ・ソトース、ダオロス、トルネンブラ、という奴だ
「壊れた者達からこの世で最も美しい演奏が繰り広げられる……それをダ・カーポと名付け静かな演奏団体と名乗り限定空間内での永劫の演奏に区切るだなんて何て機能美だ、流石プロムン」
「謂れの無い称賛がプロムンを襲っている現場に居合わせてしまった己の不幸を嘆きたいな」
「おや、居たのか」
椅子の前に用意された円卓の上から消えたぬいぐるみに代わって、己の理路整然とした真っ当な言い分に対し反応を返す非存在を辿れば、ペストマスクを被り和装を羽織る翼を生やした男が立っている
「だが"鳥"よ、僕の中のシュナジャンちゃんはそうだそうだと言って居るよ」
「ツッコミを放棄した方が良いか?"王冠"、どうせお前の中にしか世界は無いのだからという話だろう、詰まる所、結局謂れは無いではないか」
「其処に気付くとは矢張り天才か」
「唯一その「椅子」から離れられない頭クリオネのメビウス某に褒められても損した気分にしかならんのは何故なのだろうな……クラシックか?というか『月光』なのか」
「有名所にはそれ相応の味が有ると再確認している所だ、脳髄キャンディー阿頼耶識味のタール臭がするね」
そう返せば、深いため息と共に「椅子」へ座る同志たる友の姿を眼海へ写す
「誉め言葉か?それ…いや誉め言葉だな、お前のその発言が読み解けた時点で俺はもう駄目だと思う……しかし珍しいな、大体ボカロか師匠の楽曲が流れている所だが」
「偏見此処に極まれり、クラシックとかジャズにエレクトロスウィングも聞くよ僕は、バラードを聞くと拒絶反応で呼吸困難になって死にかけるのとメタル系を聞くと虚無になるだけで」
「てっきり電子音にしか食指が動かんものとばかり、そういえば何時か何処かでクラシック連続摂取耐久とか言って10時間ぶっ通しで聞いてグロッキーになって居たか……筋金入りの音楽中毒だな」
「ぶっちゃけ一日音楽聞いて無いと身体活動が露骨に不調起こすから割と実害出るタイプの禁断症状出てる」
「手遅れじゃ無いか」
「それもまた善し……"白熊"は?こっちに来るだとか何処かで聞いて来たか?」
「いや、アイツに関してはここ数日顔も連絡も合わせていない」
"白熊"が一週間もの間持ち堪えられているという話に些かの驚愕を覚えながらも会話は続いて行く
「そうか、僕も一週間程途絶えているな、まぁあの人の事だ、どうせ今日も今日とて死んだ魚の群の中見分けが付く程の孔彩を澱ませながら有りもしない完全なパートナー探しに躍起になっている事だろう、酷く健気な事だ」
「恐らく直喩的に表現し切れる限度まで練り上げた言い方を発露しなくとも良いんじゃ無いかね...後、それを言われたら俺もそろそろ本格的に分解比較に手を貸してくれるパートナーを見つけなければならないんだがね」
「大変そうだね、HAHAwwウケるww」
「お前のせいでこの始末に成り果てて居る訳だが?」
「オメェのせいでこうなってんだがァ?」
同志たる友との会話は其処に大した付加が無くとも弾む物だな等とふと思ったその時に、もう一つ残った「椅子」の側に新たな非存在が表れている、コミカルにデフォルメされた着ぐるみの様な白熊の頭部を被り、ボアジャケットを羽織る男が立っていた
「おっと、やっと来たね"白熊"、後それについては何時も言っているだろう?結局君達は此処に辿り着いてしまって居たさ」
あぁそうだとも、この電脳安楽椅子に座る者は、生来生まれきっての適正者なのだから
「否定し切れはしないがモヤモヤするな、お前が表面張力の均衡を崩した張本人だというのは変わらないぞ」
「ざっけんなオレの罅割れに丁寧にピン刺しやがってよ、ハァ~~~(クソデカ溜息)……ママエアロ」
そう心底呆れた様に言い放てば、何とも深海を看揺るが如き顔で「椅子」に座るもう一人の同志たる友の姿よ
しかしまぁ、こと此処に至り姿形等甚だ自由だと言うのに、律儀なアバターで来るものだ、もう少し遊びを以て此処にやって来てもいい物だと思うのだがなぁ
「相変わらずの白熊っぷりだね、氷海で過ごすのは案外心地良いとでも」
「オレを氷海に直々に突き落とした奴がのうのうと何か言ってる…しっかしお前も何でアバター変えたんだ?言うがぶっちゃけお前個人の性癖で作っただろそのアバター」
「あぁ、其処に突っ込むのか、面倒くさくて俺は言及を避けて居たんだが…そのアバター初めて見る物だよな、どうしたんだ?」
中々に胡乱、というよりも何だか触れづらい物に手を突っ込んで観る様な眼を向けられながらも、
「あぁ漸く其処にツッコミをくれた、どうだいコレ、知り合いに頼んでデザインして貰ったんだ、大まかには自分で考えてねぇ…中々の自信作だよ」
「だろうな」
「だろうな」
FUFUFU…このパーペキな白髪ロリボデーとクリオネパーカーコートにメビウスモチーフの黒い骨で組まれた尻尾
そしていつもの左眼二瞳右眼四瞳と王冠を備えて
「中身が全身黒色の男なのを前提としていると些か認識のバグが酷いぞコレ」
「普通にそのアバター良いな……オレも何か作って貰いに行こうかなァ…」
「フッフッフッ……そしてもう一つ……手足が短すぎて事有る毎に何かに届かない事態が多発する様になった、年齢設定ミスったね、マジで」
「渾身のドヤ顔をしながら言い放つ事では無いじゃないか?」
「最後いきなり真顔になるのやめてくれ、笑う」
「いや、本当に、君達作って貰う時には年齢設定をちゃんと考えた方が良いぞ、8歳とか適当に設定した僕の様になるぞ…本当に…せめて14歳からスタートした方が良い……マジで……」
陶磁の茶器にあれ程の重量が有ったとは、普段の生活上では丸っきり感じる事の無い実感だった、おかげで全身大火傷を負ったが
「ガチトーンじゃん、オレ逆にちょっと興味沸いて来た」
「俺もそこまで言われると経験してみたくなるな」
「まぁ新鮮と言うか、幼少の頃はこの様な物だったのか、何て得難い経験ではあるね、一応注意はするのだが…アレだ、飲み食いするのがマジで辛い、ペットボトルだの箸だのが真面に使えんぞコレ、其処だけガチキツイ」
胃の容量や満腹中枢、肌や内臓は権能でどうとでもなるが、アバターという形式が邪魔をして一定値以上の物理現象の起点を肉体に設定すると内側から弾け飛ぶのが辛い所だ、もういっそ別の手段でも覚えようか
「まぁそれは見ればわかるな、ティーカップにストローぶっ刺さってる絵面が酷過ぎて」
「今日の何飲んでんの?薫りやべぇんだけど」
「ウバの8分30秒」
「相変わらず色々な意味で冒涜的だな……久々にバニラバーボンでも頂くとするかね」
「オレはダージリン」
各々が各々好きな様に紅茶を楽しみつつ、一息をつかせ音に耳を傾ける
あぁ、そうだ、"傾けている"
「そういえば何で二人共此処に?何となく今日来るだろうなと思って待っていたが」
「俺の方は手掛けてた文章が書き終わったからな、お前に目を通して貰おうと来た」
「お、何だ、ビナ先の続きか?オレは特に理由は無ぇけど、暇になったし…麻雀にでも誘おうと思ってな」
暇を持て余して致し方無い此方としては麻雀ならば乗る他ないな、小説の方は…データベースに既に入っているか
「後であの吸血鬼でも呼んで三麻を打つか、で"鳥"の方の小説は……コレか、へぇ!オリジナルなのか、てっきり何時もの二次創作かと思ってたのに」
「ビナ先でも鏡でも無いの?ちょっとオレも気になる」
「一次創作を作りたい欲が湧いて出て来て抑えられなかったな、お前に前「惚れ桜」の話をされただろう?あの時に密かに考え始めてな」
「年 単 位 の 孵 化 期 間」
数年前の話から目の前の物が出力されているのか、酷く懐かしい
「草……これ良いじゃん、梶井基次郎?」
「あぁ、大まかには、というか惚れ桜自体がそうだったからな」
「ふーむ、雪崩に咲くは惚れ桜……僕好みの話だね、成程…故に、と言う是非と結末、他者との関係性の本質の話にも似ているな」
「春になったから桜が咲き…積もる念を以て冬を殺す…欲と連鎖した…そうして桜を見る為に自分で…いや違うな、〖結局春は終わる〗のか、良いな、面白い」
「そうして言って貰えるのならこのまま出しても良いか…良し、投稿完了」
「ひっさびさに"王冠"が真面に頭使ってる所見た、脚本の人そこまで考えてないと思うよ」
「真顔でなんてこと言うの"白熊"」
「ぶっちゃけ考えて無かった所まで言われたが、言われてみれば確かにとはなったな、公式設定と言う事で」
「コロンビア……そうだね、桜の花びらには一枚一枚夏が入ってるのか、僕好みの浪漫だ
「ほんと語彙を捏ね繰り回す能力だけはあるよな……お、吸血鬼から連絡来た、麻雀やろうぜ」
吸血鬼からの返答も来たか、あの人も忙しいだろうに麻雀となると熱を上げるな
「お、やるか、ちょっと待っててくれ、今繋げる…」
「俺もやって良いか?そろそろデュエルにも飽きて来たんだ、麻雀を学び始めるには丁度良い」
「"鳥"初めての麻雀体験か…良し、四麻で、あっちも良いって来たよ、僕もう入ってるから」
「オレももう入ってる、そっからそのボタン押して入って…後は画面にその内招待通知来るから」
「OK、俺も入った」
「じゃやるか、右上に役一覧有るから…」
数えェ!!
ッシャオラァ!大三元!!
四暗刻でーす
リーチツモ清一色一盃口一気通貫ドラ4でもっかい数えだ、飛べオラァッ!
見てこれ純全ドラドラ…あ、裏乗った、親っ跳ねでーす
他家リーチ下に置いて字牌待ちダマこそ正義……
性格悪過ぎじゃ無い?
オメェの十八番じゃねぇか
ツモ…国士…十三面待ち……二倍…役満…!!(無駄イケボ)
草ァ!
「何で僕等四麻なのに漢気で打ってるの?」
「知らん、そもそも俺は男気と言う物が良く分かって居ない、取り合えず字牌待ちが強いという事だけ分かった」
「君麻雀の才能有るよ」
「キモ待ち厨が二人になった……(絶望)」
お前も他人の事を言えないだろうに、"白熊"
「あぁーあ疲れた疲れた、ちょっと僕休憩、適当に何時もの書いてるよ」
「オレも休憩すっかー、吸血鬼も紅茶淹れに行ったし…今日は何を題材にするんだ?」
「案外楽しい物だな麻雀…俺も休憩だ、どうせ付き合わされるんだろう?」
「今日は……そうだねぇ……前々からずっと燻っていたんだ、『果実』何てどうだろう」
「『果実』か、知恵の実、善悪の実、生命の実…」
「そこで行くのなら…楽園にある実、という部分も面白そうだ」
「結構面白そうだなぁソレ、考えて行くとするか……」
さて、電脳安楽椅子の時間だ
「起点とすらば、アダムの食したとされる知恵の実だ、これはまぁ解り易い、我々の言論に当てはめるのならそれは、楽園と言う限定世界に置けるパーツ、詰まる所自我無き劇場の内にて〖考える自分〗を得るという事」
「一種の阿頼耶識の様な考えとすると納得は行くな、テトラグラマトンの事を絶対だとは思って居ないが、或いは絶対たるそれと相互する世界…人無き原初のそれは正しく神が世界を欲し世界が神を欲した、お前のメビウスに沿うであろう1.2元論の理想形と言える」
「まぁ逆に知恵の実を食った時にその人になる前の何かが人になったから、こうして川が流れて居る事しか知覚出来ない訳だけどさ」
「僕がさんざ人とは己が矮小な神である事を忘れた成れ果てで有ると言い立てているが…その補填にはなり得るだろうね、詰まる所蛇とは食いつくされ次の神になった知性であり、知恵の実とはその蛇たる最後の儀式を食む事と言う訳だ」
「蛇は果実だと言い張るのはお前位だろうな、だがそうか、やはりそうなればお前にとって蛇とは神を人にした原罪で有り世界を生み出した救世主であるのか」
「そうなるだろうね、神の指先で有る人になる前のそれは知性では無くただの一つの大きな虚だ、0でなく、1でなく、マイナスですらなく、εでも第二軸でも無い、数字ではない、原理でもない…」
「そうだなぁ…呼吸を意識する事が無い様に、鼓動を意識する事が無い様に、意識が有る事を意識する事が無い様に、言ってしまえば人になる前の何かの名前は『神の無意識』或いは『何かの土台』である…っつー事かね」
「正しく、以てソレであると言えるね」
「"何かを誰かの神に成り果てさせる"というお前の真理が前面に押し出された論理だな、俺の"意識とは反絶対であり「物」とはその反対である"とはメインが違うだけ興味を惹かれる」
「"記憶と繋がりが0に浮かんでいる"ってオレのと半分は同じだが、論点違うから全く違う説が出て来るから面白いわ」
「自我と認識を崇高としている僕等にとって共有の可能な部分を僕独自に編んでしまえばこうなるね、『蛇たる果実』…君等はどうだい」
「ふむ………ならば俺自身の論点で構成しうるソレの解析とするか、そうだな…知恵の実とは即ち蛇であると言ったが、それは蛇が知恵の実を備え用いたという事、なれば知恵の実そのものの形を述べるとするか」
「良いね、確かに僕は知恵の実とはどういう立ち位置なのかを述べただけだ」
「他者に知恵を与える木の実とは何か、解体をするならば…果実とは、果肉と皮に分かれている物だ、だが形而下を以て述べるならば果肉と皮には漫然とした違いしかあるまい」
「せやな、ただ果実と言う某の表面と中心であり果肉と皮に分かれて居ようがそれは果実の果肉と果実の皮でしかねぇ訳だ」
「そうだ、果肉を無限に薄く削ぎ落し続ければそれは皮が消え果肉が露出し、そして同時に果実の表面が其処に有る事になる、果肉は無限に中心化し果肉は皮になり続けるだろう」
「…成程、ならば一体皮と果肉の分けられている理由とそれに連なる本質は何なのだろうか、という話か」
「この場合は、そうだな…単純に、皮を食べられないモノ、果肉を食べるモノとしよう、そうとすれば納得がいくのだ、古来より食とは即ち同化に行き着くもの…「果肉」とは"己になり得るモノ"である」
「…なぁるなる、腹に収めた時点で果肉は己に成り果て皮になるのか、詰まる所皮は食べたくとも食めば果肉となる、皮自体を食する事は出来ねぇのか」
「あぁ、ともすればそれは、枝葉が如く捻じ曲げてしまえば、器は反実体と解釈する事、それが最も納得の行く形だ」
「皮とは情報を内に溜める表面であり、果肉とは未来にて実態を失い過去にて物質を失った情報そのもの………」
「例えるのならば、本だ、紙は食えないが、インクに表された文字という情報を読み取り把握する事は出来る…そして、取り込まれたモノは消化され栄養に昇華される、それは正しく「情報」と言う果肉ではないのか」
「そして切り分け、口にし、感想を持つ、果実ひとつ取ってもその真実は無限に存在する、まるで薄く薄く切り盗られた果実の如く、解釈という名の同化は根差し広がり続ける」
「俺はこれを、『理解の果実』と名付けよう」
「果実そのもの何てどう分解するんだと傍目から見て途方に暮れてたが良くやるなぁ……しかもめっちゃ綺麗に出来てるし」
「『理解の果実』か…昇華と同化、咬合と咀嚼、手に取れば盗る程、成程納得の行く話だね、これは面白い」
「テンションが乗って居ればこれ位はすっと出て来るんだがな、如何せん筆が乗らない状態が続くとメンタルに来る……」
「めっちゃわかる、つーかオレは筆バッキバキにぶち折れた側だしなぁ…」
「たった今書きかけで放置してるのが複数ある僕にとっても耳が痛い話だね……」
「はァ~~……そういや次はオレか、さーて何考えるかねぇ」
「果実の価値と形は既に決まってる事だし…次は味かな?」
「味…詰まる所本領、果実によって引き起こされる解釈という部分か」
「そうとなればオレにとっての果実は…そうだな、知恵の実が何を齎すかという部分に着目するか」
「齎す…何を以て人の前身を人とするか、だな」
「ふ~む…そう、「羞恥の果実」…とでも呼ぶか」
「へぇ、恥の実か、でも言いたい事は漠然と察せられるね」
「オレの川は相互循環だからな、自身の不知覚性に覆われた部分を見つけ出せるのは他者しか居ない、それは羞恥だ、アダムとイブは善悪を以て無花果の葉を纏ったんだよ、それは他者の瞳を認識したという事だ」
「ふむ……あぁ、つまり…『差を恥じる』と?」
「…あぁ、成程…感情、裁定、羞恥、依り合わせて言えば、俺達の用いる自己分解のそれか」
「そういう事よ、他者を通じて、眼前の目を鏡とし、恥と言う概念に囚われる……他者から向けられたそれは恥だという発言には微塵の価値も無いんだ、結局の所自身が他を鏡に恥を感じ生み出す事が知恵の実の本質」
「それは自己を認識する事、その為に必要なのは……不足を感じる感性と、それに繋がる自と他の差を考える枠組み…人類という言葉の本来の意味、生物の本質…成程、正しく「恥」なのだね」
「彼岸と此岸を分かつという理は俺達の物にも通ずるな」
「オレの論理が高速で食い尽くされて鋭化されていく音がする」
「まぁこの場所ってそういう物だし」
「違いない」
「んまぁせやな」
「『蛇たる果実』『理解の果実』『羞恥の果実』、各々個別に口にしていったけれど、なんだか綺麗に収まったね」
「ゴリ押しのすり合わせと言わないか?だが俺は満足の行く物だったな」
「人の原本、知性の本質、やっぱり此処は何度解体してもし切れないな、また別角度から試さなければ」
「あぁそういえば、結局『知恵の実』に対する結論ってどうする?オレ的には"鏡"かね」
「ふーむ…そうだな、人の本質は二つある、記憶と比較だ、世界と世界を比較し、過程の仮定と結果の過程を比較し、己と他者を比較し、知恵とは何かを覚える事、知性とは何かを比べる事」
「詰まる所矢張り、正確な名称を用いるのならば……『比較の果実』というのが、最も適切なのだ」
「"比較"か…賛成だ」
「オレも」
「なら記録のタイトルは『比較の果実』としよう、レポートは後で上げておくよ」
「分かった」
「おーっす」
「小休止を挟むか、あぁ"王冠"、コーヒーが飲みたいんだがリストって何処に行ったか覚えてるか?」
「あれ?その辺更新するかって最後に手を入れたの"鳥"じゃ無かった?」
「あぁすまん、ブルー〇イズマウンテン実装しようとオレが入力したままだった、流すわ」
何をしているんだ、というかどうやって再現したんだ、まさか最近の渡航記録はお前か"白熊"
「ちょっと待てかなり気になるぞ、俺ソレにするか、キングのコーヒーは常にエンターテインメントで無くてはならない」
「"王冠"は僕なんだがなぁ、紅茶飽きたしドクペにしよ」
「お前紅茶何杯飲んだんだ?数えて無かったが凄い勢いで消えてった気がする」
「42杯」
「アホだろお前、致死量じゃねぇの」
「くりおねが便利過ぎて溺れそう」
「とっくの昔に溺れてるから安心しろ、オレはガラナで」
好きだねソレ、ドクペとペプシを合わせて4で割った感じがするから其処まで美味しいとは思えなかったんだけど
「しかしまぁ、人ってのは大昔からあんまり変わらんもんよねぇ、楽園の果実か、食べるに良い瑞々しい果実の溢れる場所を楽園と言うなら人は根っから餓えと運命共同体か」
「まぁ、食とは同化と言うならそれは知恵を得た全ての対価だろう、理性とは本能を論理化する為の物、延いては理性とは即ち本懐だ」
「そうさな…過去何が有ろうとも餓えは蝕み、未来が解らずとも腹の満ちは失せる、有る意味では僕の真理と同質だね、過去も未来も現在もただの仮定、今ただそれだけ、世界は無く、己も無く、ただ総て等しく境界が失せ、結局僕と言うだけ」
「アァ~~…言われてみればそうだな、〖くりおね〗も〖いあ・あざとーす〗も知覚現象としては餓えに近いのか」
「別方面で"白熊"の真理とも近いかな、〖からーかっと〗は兎も角〖ひゅーまのいど・ぜろ〗はガッツリ餓えだし」
「まぁ別方面でな」
「逆に俺の〖はこ〗も〖とじたひとみ〗も余り餓えとは関連性が無いか」
「餓えとどれ程離れられるかみたいな感覚だしね、アレは」
「夢見る我等に基軸無く、求める全てに不変無く、確かに飢えから逃れる為の物だと言われても否定は出来ないな」
「オレらもオレらで碌でも無いもん生み出しちまったよなぁ、幾つ実証現実が壊れて作り直した事か」
いやぁ、白熊の時は〖からーかっと〗で一回やらかしただけだが、鳥の時はやばかったなぁ、〖とじたひとみ〗で幾つ物質宇宙がトんだんだろうか
「毎回作り直してるのは僕だけどね、君等もそろそろ物質宇宙と情報次元位作れる様になってよ、魂魄までとは流石に言わないから」
「無茶言うわァ、有る意味情報次元なら出来ない事も無いけどオレの権能は創るんじゃなく分ける事と繋げる事と維持する事だけなんだよ、"王冠"みたいに何でも出来る訳じゃねーの」
「俺も物質宇宙はやろうと思えば出来ない事はないだろうが……情報次元は無理だな、そもそも俺の権能は塗りつぶし鎖す事で内と外を分け露出させる事それのみだ、転移や世界線操作は得意だが流石に情報次元を1からと言うのは無理がある」
「意外と疲れるんだよアレも、全部丸っとやるのが一番楽だけどやってる事だけ言えばマニュアル動作のプッチ神父だからね、【バックルーム】有るから記憶と記録や魂魄の再現性については楽できてるけど」
そもそも知性が記憶と記録を行って存在してる理由そのものだからなぁ、【バックルーム】が有る限りコピペは簡単通り越して出来て当たり前だ
「やっぱずりィよソレ、オレも欲しい」
「でもこれ現状僕しか出来て無いじゃないか、まぁ条件風に言えば〖くりおね〗の所有者が『川描者』で尚且つこの「椅子」に座る事が必須な訳だから僕以外に出来る奴が居ても問題だけども」
「確か…直接表すなら「ありとあらゆる知性に対する有る限りの疑問への強制的な回答」と「それに基づく存在証明に巻き込まれた逆因果の巡り」だったか?まぁ〖くりおね〗と〖いあ・あざとーす〗で証明し続けてる以上それが通常現実より優先されるのは分かるが、狂気だな」
「やっぱ要らね、んなもん持ってたら日常生活も送れなくなるわ」
「実際真面に送れて無いから此処に座り続けてるんだよねぇ………」
「やーいニート、知恵捨ト、略してニーチェ」
「これ以上ない程の
「言うな、オレが一番自覚してる」
「酷い言い草だ」
「そもそも電脳安楽椅子に座って居る以上、重度の
「まぁぶっちゃけ真面に人間が実行出来る精神からは当の昔に門前払いを喰らっている、在る意味での精神疾患者だ、しかも結構重症の」
「やめてくれ…改めて言われるとダメージが深い……」
「俺もさっさとこんな「椅子」卒業したいんだがなぁ」
「オレも」
「でも何かあったとする"鳥"が去る可能性が砂漠に落ちた水滴が移動せずに残り続ける程の確率であったとして、"白熊"は此処を去れると思う?」
「無理に決まってんだよ!ンな事分かっとるわい!クソったれェイ!」
「それはつまり俺も去れんと言ってるのと同義じゃ無いか?」
「出来るの?」
「無茶を言う」