学園アイドルマスター Synchro Stars‼︎ 作:R_Glay
美鈴追加が控えており、親愛度コミュを楽しみにしつつ書いていきます。
ーー7月某日、初星学園大講堂
巨大なホールを埋め尽くすほどの観客の視線は、ある一点に集まっている。そこはこの日のために多数の機材や装飾で飾られたステージ。未だスポットの点いていないステージに注がれる期待と羨望の眼差しは、ある人物の登場を今か今かと待っていた。
今日は初星アイドルフェスティバルーー通称H.I.Fの本戦。すでに数組、数人のアイドルたちがパフォーマンスを終え、最後の一人を残すのみであった。学園最大のイベントのトリ、それは学園で最も注目を集めるアイドルの特権。観客たちの期待はこの時に最高潮に達する。
ーー静寂。
満席、数万人の詰めかける大講堂には意外な静けさが広がっている。誰もが「早く」と胸の内で乞い願うのが聞こえるほどの緊張感に、相反するほどの凪が、より期待感を高めていた。
そして次の瞬間ーー
ーーステージに現れた
ーー数分前、大講堂控室
「緊張は?」
「大丈夫!」
熱狂渦巻くホールの歓声がかすかに聞こえる控室。今日の参加者に与えられた一室には、その出番を待つアイドルとそのプロデューサーがいる。
二人にとってはいつものルーティン。程よい緊張感を感じるものの、不安や油断は無い。ステージに上がる子たちは皆、強者揃い。ワクワクゆえか、武者震い一つ。
「う〜ッ……! ふぅ〜〜〜〜、よし!」
「いい調子ですね」
普段と変わらないアイドルの様子に、プロデューサーは笑みをこぼす。彼にも気負いや心の乱れは無い。アイドルへの強い信頼の表れであった。
「ーー確認は以上です」
「オーケー!それじゃあ……」
これもルーティンの一つ。ステージ上での流れを浚い終えると、二人は手を掲げーー
ーーパンッ
ハイタッチ。気合いを入れる二人の大事な儀式であった。
「いってきます」
彼女はステージへ向かって歩く。その背中は大きく、自信に満ち溢れていた。
ーー現在、大講堂
圧巻の一言だった。これまでの全てを前座、余興にしてしまうほどのパフォーマンスに息を呑む。先ほどまで本命の登場を待っていた観客たちは、静寂を解いて割れんばかりの歓声をあげている。ホールがビリビリと揺れているのが分かる。それだけではない。自分自身の心臓が、この熱狂に呼応して早鐘を打っている。ステージ上の彼女に目が奪われる。いま目を離せば一生後悔するとさえ思わせる何か。
ああ……そうか、先輩はこれを言っていたのか
眩いほどの光を放つ、学園一番の彼女のカリスマ性がそう思わせるのだ。
しかし、このような夢幻も儚く終わる。たった数分のパフォーマンス、まさに刹那の出来事のようであった。
万雷の拍手を受けて彼女はステージを後にする。応えるように、客席に手を振る彼女の姿は、煌々と照らされるスポットライトと紅いの衣装も相まって、太陽のようであった。誰もいなくなったステージをスポットライトが名残惜しそうに照らす。観客たちの拍手も彼女の後ろ髪を引くように鳴り続けていた。
ーー大講堂控室
ホールの熱狂を離れ、控室のドアを叩く。扉を開けたのは彼女のプロデューサーであり自身の先輩でもある男だ。
「どうだった? 一番星のパフォーマンスは?」
先輩は得意気な表情を浮かべながら問う。
ああ、これは、俺がどう答えるか分かっている顔だな。
「概ね予想通りです。俺が全く予想出来ていなかった結果だという理由で」
「ふふっ、なにそれ」
俺の間抜けな返答に笑うのは、先ほどまでステージに立っていた彼女だ。表彰式に控えてお色直しをする彼女は鏡越しにこちらへ視線を向ける。
「貴方から見て、今日のパフォーマンスは何点かしらーー」
「ーー120点」
即答だった。自分でも驚くほど早く出た答えだった。全く、素晴らしいライブだったな、と。彼女はその様子にまた笑う。言ってから気恥ずかしくなった。
「ああ、いえ……素晴らしいライブだったので……」
「だそうよ? プロデューサー、あなたは?」
今度は先輩、プロデューサーへ話を振る。
彼女のパフォーマンスは完璧以上のものだった。まだ学園に入ってプロデュースについて学び始めたばかりの俺ですら思う。彼女は天才だと。
「……まだまだ。80点ってとこですかね」
「なッ!?」
「あらら、手厳しいわね」
驚く俺を他所に、二人は事も無げな様子で続ける。
「歌い出しの安定感はまだ改善の余地ありです。目線や指先への細やかな気配りは素晴らしかったかと……ああ、それと、後半振り付けを咄嗟にアレンジしたのはどうしてでしょう」
「え!? 舞台袖にいたのに見えてたの!?」
ライブの反省会を流れるように始めた先輩と指摘されても軽口を叩く彼女。俺は二人の世界観をただ見ていることしかできなかった。
「ーーと、まあこんなところです」
「ええ、次は気をつけるわ」
今一度改めて思い知らされる。学園トップのこの二人とは、今の自分ではまさに
「そろそろ表彰式です。舞台袖まで移動しましょう」
「そうね、じゃあ、私たちは行くわ」
そう言って、置いてけぼりの俺を気に留める風でもなく、二人は控室を後にする。三年間で積み上げられた二人にしか成せない空気を感じて呆然としていたのも数秒で、俺も控室を後にする。すでに決まりきった結果であったが、表彰式を待つためにホールへと戻る。
ライブ後ほどとは言わないものの、ホールには未だに観客の熱狂が渦巻いているようだった。表彰式を待つこの時間、適度な喧騒と緊張があり、一度冷静になった頭ではこの光景が新鮮に捉えられた。
誰が、どのユニットが最優秀となるのか、どのパフォーマンスが素晴らしかった、この歌をまた聴きたい。そういった会話が聞こえてくる。
しかし、その中でも皆が口を揃えて言うことがあった。
誰もが口を揃えて言った。まるで催眠術にかかったように皆が同じことを言っている。まさに彼女のカリスマがそうさせているのだと思わされる。
そして、程なくして、皆の予想を裏切ること無く表彰式が始まった。
「今年の
学園長の力強く高らかな宣言がホールに木霊し、観客の拍手と歓声が後に続いた。
この歓喜の中で、目元に手を当てる先輩の姿を舞台袖に見つけたのは、俺だけだろう。
お読みいただきありがとうございます。
気長に次話追加をお待ちください。