機兵大戦スティルバース   作:四季永

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 『虚空剣』に命を救われた星華は、搭乗したアースリィガンダムと共に彼等の艦に身を寄せる。だがアースリィの情報は外部に知れ渡っており、別勢力『ヘルハウンド隊』の追撃が迫りつつあった。


虚空に舞う風

「おはよう星華。寝心地はどうだった?」

「はは・・何か余裕が無いってのが嘘みたいだ。居住設備は充実してるんだね」

「事実オレの目覚まし機能二回はタンマにしたからなー。オイフリット坊主、こいつたまに凄い寝返りを打つから同室のお前は気をつけろよ?」

「なっ、また事実にも無い事をっ」

 聞いたところによると、この部隊員が活動を続ける上で希望した条件は、

高い生活水準の維持で一致

 だそうだ。

 

「てっきり当分宇宙食じゃないかって覚悟したけど・・・」

「口に合わなかった?」

「そんな・・むしろ逆だよ逆。宇宙で焼き鮭食べれるんだなぁ、今って」

 少しだけど、こんな時は微笑むんだな。伊奈帆はどうやらこの隊では家事を一手に任されているらしく、腕前・・・という大層なものでは無いが、それは本物だ。

「俺の前いた所は肉や魚なんて贅沢モンだったぜ? 今の報酬はこれの為にあるような感じだな」

「褒め言葉と受け取っておきます」

「スパイクさん、珍しいじゃないですか。昔話なんて」

「新入りがいるからな。少しは寄らないとだろ?」

 食卓の空気は、今の所悪くはない。悪態をつかれる事も無いし、これなら父と会うまでも曇らず過ごせるかもしれない。

 

機兵大戦スティルバース

第2話

『虚空に舞う風』

 

「さて、美味い朝食が終わった所でこれからの話だ。皆が知っての通り、これから『ラボ』に向かう訳だが」

「その口振りだと朗報じゃ無さそーだな」

「ああ。実はラボから通信が入ってな、この艦を追跡していると思しき一隻の小型艦を捕捉している。機動兵器を搭載しているなら約一時間後に接触する可能性がある、そうだ」

 一同に緊張が走る。

「さながら食後の運動ってか。昨日整備しといて正解だったな」

「・・・やっぱり目的はアースリィなんでしょうか」

「そこで自責に駆られるのは無しだ。先ずは生き延びる為の行動を起こせ。機体の整備とか、な」

*

「目標は進路を変更しました。このままだとデブリの群れです」

「奴ならそう判断するだろうな。ジール、艦の制御は任せられるか」

「僕は構いませんが・・・彼等をここでやれる、のですか?」

「今回の襲撃は結果を重視しない、奴を見極める為のものだ」

「おおっ、燃えてるっすねぇ隊長。じゃあ少しは弄ってさしあげましょうや、あの薄情モンを」

 

「周囲のデブリには警戒しろ。・・・覇刃侍助、ガンダム戦国アストレイ、出陣!!」

「ゼドス・八焔、ガンダムⅩ魔王、出るぜえっ!」

「ベル・フラウィン、ウイングガンダムフェニーチェ、出撃します!」

*

「遠方の艦より3つの輝きが見えました、恐らく・・例の追手です。各自コクピットに直行してください」

 敵襲。

 そう言っても差し支えない報告が、伊奈帆の冷徹な声色と共に艦内に響き渡る。

「恐らく連中の標的は第一にアースリィ、次いで俺だろう。スパイク、俺と共に前に出れるか?」

「あんたの案ならちっとは信用できそうだ。追い抜かれんなよ?」

「えっ、無茶ですよレヴァさ、隊長! 隊長機が最前で戦うなんて」

「オイいつからそんな固い思考になったよ、星華。あいつが一番強いからに決まっとろーが」

 冷や水を浴びたかのような指摘。ハッとして思わず、

 パンっ

 両手で自分の頬を叩く。

「少しは冷静になったか。・・続けるぞ、フリットと星華はこちらの指示があるまで艦の防衛に徹しろ、以上だ」

 

「新しい同胞が加わったからあえて言っておく。名誉の戦死とやらは考えるな。俺達のこの世界は生き残った者が前に進める、それを忘れるな。・・・レヴァ・エクリス、ガンダムアメイジングエクシア、出るぞ!!」

「こういうのは苦手で慣れねぇんだが・・スパイク・スピーゲル、ソードフィッシュⅡ、行ってくるぜ」

 

「星華はあれが・・・もしかして初陣だった?」

「・・まだ実感が湧かない。自分が何をやっているのか」

「とりあえずは生き延びて、それから考えよう。・・死んだら、何も出来ないから」

*

「さぁて、まずはご挨拶に一発っと」

「ベル、ゼドスが撃ったのが合図だ、各個撃破にあたれ」

 

「随分デカい光だな・・・って」

「そういう事だ、避けろ!!」

 ガンダムⅩ魔王より放たれたその大きな光は直進し、広範囲に渡り漂うモノを焼き尽くしていく。

「かわせたか・・少し雑な狙いの付け方だったが」

「それが奴のやり方だっただろう、レヴァ」

「!?」

 

「受け止めたか。目の付け方は衰えていない、少し安心したぞ」

「その機体は! ・・覇刃、侍助。貴方か」

 斬り返さずに距離を取る。不用意な反撃は逆に別の隙を生む。自分を知る、相手ならば尚更だ。

「呼び方に戸惑うか。貴様は既に私の部下では無い、解っているだろう?」

「・・そうだな、少し驚いただけだ。貴方がこうも早く追って来るとは!」

 アメイジングエクシアが直進する。下手に回り込む事はしない、それで隙を突いて勝てる程甘い相手ではない。

「貴様は頭は悪くなかった、だからこそ問う、何故あの時消えたのだ? 貴様の身を置くこの場はあまりにも不確かな存在だ、戦う者が不確かな思いを持ってはならん!」

 攻撃が届かない。侍助の駆るガンダム戦国アストレイは名の通り鎧武者然とした外観で二振りの刀を主武器とする。既に使いこなしているのだろう、その刀捌きはアメイジングエクシアの攻撃の粗を見抜き、弾く。

「どうした! 真っ向で勝てないならば策を練らねば勝てぬぞ!!」

「策、か! 確かにこの状況が続くなら勝てんな!」

 

 

「速いっ・・! ただの戦闘機だと油断した!?」

「歪な見た目だと思ったがそういう事か、パイロットの腕前は褒めねえとな」

 ソードフィッシュⅡは遭遇したウイングガンダムフェニーチェに、追われているかの様な構図で戦闘を繰り広げている。フェニーチェの機体としての特徴は、装甲やメインスラスターを左側の部位に集中させている。

無論これは設計上のミスなどでは、恐らく無い。

(不安定・・・みてーな計算された動きってか。まるで酔拳だ)

 現時点ではハッキリと直撃と見做せるものは感じない、だが長く逃げ続けていたらいつかは当たり墜とされる。

「意地でもこの構図は変えねえとな・・・ん?」

 

 

「まだ戦うつもりか。当てられないのは分かっているだろう」

「戦闘手段は残っているからな。足掻かなければ生きていけない、だろう?」

「ならば、まず腕から斬り落とす」

 状況は好いとは言えない。だが負けるつもりは無い。主武器である大剣を構え、突進する。それを迎え撃たんと、戦国アストレイは、

 

「悪いなあ、乱入勝負と行かせてもらうぜ!!」

 一騎打ちに水を差すかの様に、ソードフィッシュⅡの射撃が戦国アストレイの突進を遮る。だがこれはレヴァの意図するところだ。

「隙だなっ!」

「くっ」

 間合いに突入する。その斬撃によって一振り、刀が切れた。

「随分軍人らしい戦いをするようになったな」

「武人では生きてはいけないという事を知ったからだ」

*

「一機、向かってくる・・!」

「ガキならそれでも落とせると判断したか? 舐められたモンだな」

「どっちにしろ迎え撃つ!」

 

「本命が出張って来るかあ! てっきり中がビビッて隠れんぼしてくると思ったぜ」

「怖がってばかりでいられるもんかっ! それに一人で戦ってる訳じゃない」

 アースリィガンダムが接近戦で敵を引きつけ、フリットの駆るガンダムAGE-1がドッズライフルで狙い撃つ。

「ガキにしては考えるじゃないの。だけど解りやす過ぎるなあ!」

 ビームサーベルの出力は拮抗している、だが相手はプロだ、このまま斬り合いを続けていてもいずれ技術差で押し負ける。

「くそっ当たらないっ。浮かんでるデブリのせいか? 何度と戦っている筈なのにっ」

「一対二でまさかここまで・・・ここまでしょっぱいとはなあ! 所詮はガキだ、もう一撃ぶっ放すまでもねえ」

 戦闘の様相は翻弄されて・・否、それどころかあしらわれている。実力の差を見せつけられ、だがそれでも落とされまいと足掻き、焦りが生じる、悪循環だ。

「オイ明らかにバカにされてるだろーが! 言っとくがアースリィは高性能機なんだぜ、ここで苦戦してんのはお前がまだ」

「解ってるよライト! 誰が遊びで戦うもんか、死に物狂いなんだよ!!」

 ビームライフルが当たらない、ビームサーベルが届かない。そこで出来た隙に蹴りや殴打が入る。

「何か少し違ってんな・・・! じゃあ見方を変えろ! 多分こいつは必死な感覚で戦って勝てる相手じゃねえ」

「じゃあどうするんだ!?」

「冷静になれ。技術で勝てないんなら敵機を探れ。兵器ってのに完璧は無い、どっかに苦手分野ってか、弱点があるハズだ、それを探せ」

 無茶言ってくれるな。

 

 

 だが、分析は嫌いじゃない。

「星華・・・!?」

「後退? 逃げながら戦うつもりかよ?」

 動きを変えた位で、そう上手くは行かない。相変わらず、ライフルは当たらない。

(ここからでも、奴の背部に砲身みたいなのが見える。さっき見えた大きい光は間違いなくそれだ。エネルギーは多分あのスラスターから来てる。・・・)

 

「オイどういうつもりだあ?」

 大き目のデブリをサーベルで切り裂き、押し出す。

「フリット! その機体をマークしてて!」

「勝算がある!?」

「少しだけど!」

 通信は手早く済ませた、後は実践だ。近くのデブリの塊を切り分け、X魔王に向けて押し出す、この繰り返し。

「何だあヤケになったかあ? 障害物を増やしてるつもりなんだろーが、こちとら一気に吹っ飛ばせんだよっ!」

 Ⅹ魔王が背部の、大型の砲を構える。エネルギー放出の為のスラスターが展開し、青く輝いた。

「ファイアアッ!!」

 ガンダムⅩ魔王を象徴する武装、ハイパーサテライトキャノン。ハイパーと名付けられているのであればオリジナルが存在する筈なのだが、この機体には発見時からそう登録されており・・・現在はその理由は伏せる。

「長射程広範囲のお手本・・か! 避けるのは厳しいぜ!? このままじゃあの光に飲まれて御陀仏だ」

「分かってる! フリット、ドッズライフルで奴のスラスターを!」

「そういう事か!」

 主武装から潰していく。攻撃を受けずに生き残るなら常套手段だ。

「当たれっ!」

「チッ、威力が落ちるだろが!」

 発射態勢にあるX魔王には、その攻撃は気づけても避けようが無い。放たれたドッズライフルのビームはスラスターを貫通し、バランスが崩れる。

「今だろ星華!」

「分かってるっ!」

 ビームサーベルで接近戦を仕掛ける。だがそれは敵機も同じ動きだ。

「大砲潰せば有利になれると思ってんのかぁ? プロ舐めんなよプロを!」

 どうすれば有利になれる。どうすれば追い払える。戦局を変える策を成した星華の頭にはむしろ余裕が減っているようにも見えた。

 

 

「よく持ち堪えた、今から助太刀に入る!」

 

「何いっ!?」

 デブリの群れを物ともせず突っ走るその姿は、まるで旋風の如く。

「コズモレンジャーJ9参上! ってね」

 MSの二周りは大きいであろう真紅のロボット。

「ヤバっ・・・!?」

 既にX魔王は回避の行動に移っていた。だがそのロボットはサーベルの持ち手を、すれ違い際に斬り落としていた。

「悪ぃな坊主達! このまま隊長さんの元に直行する、あとは何とかしな!」

 

「今の・・・凄い速かった。あの機体は」

「あれは宇宙の始末屋・コズモレンジャーJ9の主力ロボット・ブライガーだよ。凄いスピードだろ? 銀河旋風って呼ばれてるだけはある」

 二人が呆気に取られる矢先、伊奈帆から通信が入る。

「二人とも無事みたいだね。少し予想外の援軍が来たのは・・・とりあえず艦に戻って。敵機の撤退も確認したし、あの人達がいればもう不利という事は無いだろう。・・この場は、だけど」

*

「どうやら勝負あったようだな、ブライガーはお前の隊で墜とせるほどヤワな存在じゃない」

「スーパーロボット・・・か。この『レガシー』の産物でも所詮はMS、構想の異なる存在にはやはり敵いはしないか」

 照明弾が放たれる、撤退の意思表示だ。

「正軍に戻る気も無いのだな」

「知り過ぎた、身だからな。・・貴方も随分としつこい」

「私とゼドスはお前を落とせる。だが彼女は、」

「そういう未練は捨てた、早く去れ」

*

「助太刀による参戦、感謝します。・・・こんな戦争の舞台には、貴方達は現れないかと」

「力を持ちながら雲隠れをしている訳にもいかないだろう。我々J9が戦うべき悪を見定めて戻った、それだけの事だ」

 コズモレンジャーJ9のリーダー・かみそりアイザックことアイザック・ゴドノフ。あだ名通りの鋭さを感じるその男と、握手を交わすレヴァ。それを遠目に見る星華の表情はどこか複雑である。

「何か不満がある、星華? あの人達は僕等の仲間だよ、そんな目で見ちゃ」

「・・悪意がある訳じゃないんだ。でもああいう大人の握手ってのは、何か腹の探り合いをしてる気がして」

「戦争という状況だから、そう見えるかもしれないけど・・・星華の気持ちは、解らないでも無いけど」

 

「おっ、どうしたよ浮かない顔して。お子様は無邪気な方が可愛げがあるぜ?」

「そうそっ。現実ってのに人生振り回されてちゃ勿体無いしね」

 一人の男と一人の女が、星華とフリットに声を掛ける。その声色は、軽妙かつ気さくだ。

「貴方達もJ9の・・」

「飛ばし屋ボウィーとエンジェル・お町ですね。活躍はお聞きしています」

 二人の名を指したフリットの顔は、冷静を装っているものの瞳に輝きを感じる。

「・・まいったねこりゃ。俺ちゃん達ヒーローって目で観られるの慣れてないのよ」

「そんな・・紛れもない英傑じゃないですか! 数多の犯罪組織を壊滅させた功績は」

「オイ冷静になんな。変な方向に持ち上げすぎてるだろーが」

 フリットの危うさを指摘したのはライトだったが、それには星華も気づいてはいた。だがそこまでいく勇気が出せなかった事を、不甲斐無く感じた。

*

「へえ、お前さんが実質的な艦の中枢ってワケか」

「僕の左目に搭載されている、アナリティカルエンジンの拡張機能です。改造を加えた艦のコンピュータと結合して兵装の管制が行えるようになっています。・・相当無理のある手だったそうですが」

J9のメンバー、ブラスター・キッドこと木戸丈太郎は一人艦のブリッジに足を進めていた。艦を預かる者の姿を、個人的興味で確かめに来ていたのだ。

「艦を支えるは氷の王子様、か。褒めてるつもりはねーぞ、こんなガキを事実上の艦長にする状況は何なんだか」

「それだけ僕等の懐は厳しいんだと・・思います」

  伊奈帆が一瞬見せた不満気な顔を、キッドは見逃さなかった。この少年にも人間的な感情は見せるのだと、小さく溜息をついた。

*

「見えてきたな、あれが一応・・我々が『ラボ』と・・・呼んでいる場所だ」

 

それは一般的なコロニーには及ばないが、複数人居住するには充分な程の大きさだ。輝きを放ち駆動しているところを見ると、ライフラインも整っていると見える。

 ただ、

「これ、安全性ギリギリですよね・・・なんというかツギハギみたいな・・」

「鋭いな星華少年、その通りだ。ここは我々J9の本拠跡地含め、複数のコロニー跡地を寄せ集めて建造した基地だ」

 整合性の無い歪な形なのはその為か。それを目の当たりにした星華には、言い様の無い戦慄が過ぎる。

「・・・顔色悪いよ、星華」

「・・何でもない」

 彼等について来てからある程度理解してはいる・・筈だった。だが今まで見てきた世界とは裏の物をこの目で見た時、自分もまたそこに足を踏み込んだ事実を受け入れなければならないと、覚悟にならない覚悟を、突きつけられたように感じた。

「青い、青いぜ星華。宇宙に上がる時からこの道を歩む事を、何で想像出来なかった? ええ?」

 

 

 

to be continued・・・・

 

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