スマホで簡単エントリー、最短5分でデスゲーム   作:ぎむねま

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とにかくジャンプしろ

 キラー?

 

 逃げながらも、まさやんとか言うジャージサングラス野郎の言葉が引っ掛かっていた。

 

 一体、どう言う意味だ?

 色々知っていそうなアイツらの存在も含めて、意味が解らない。

 

 しかし、今考えるべきは闇からどうやって逃げ切るか、だ。

 

 スマホで地図を確認すれば、既に闇のスレスレを駆けている状態。

 分岐をひとつ間違ったら死だ。

 

「こっち!」

 

 いよいよ俺の代わりに木之瀬さんがルートを選び始めた。

 俺が体力的にへばって来てるのが原因です。

 

 なさけなーい。

 

 そうして出た先はマップの中でも一際大きい大広間。

 

 しかし、なんだこれ。

 下にフロアが見える。

 

 二階のデッキ部分と言えば解るだろうか? 壁沿いに張り出した通路であった。

 向かいの壁にも通路があって、ちょうど体育館の二階部分みたいな感じ? と言えば通じるだろうか? 一階部分は大広間になっている。

 

 飛び降りたら怪我しそうな高さ。

 

 しかし、それ以上にヤバいのは、既に部屋の半分が闇に飲まれている事だ。

 ひょっとしたら、部屋の奥には大階段でもあって一階と二階を繋げていたのかも知れないし、向かいの通路とも繋がっていたのかも知れないが、闇に飲まれて見通せない。

 

 そんで逆側は壁。

 つまり、この張り出しは行き止まり。どこにも繋がっていないのだ。

 

 怪我を覚悟して、一階に飛び降りる位しか逃げ場がない。

 

 呆然としていると、木之瀬さんに腕を引っ張られる。

 

「ねぇ、篠崎くん! コレなに?」

 

 木之瀬さんが指差したのは、床の上でピチピチと飛び跳ねる……何コレ?

 

 魚だった。

 

 こんな遺跡の中、魚が地面を飛び跳ねている。それも、何匹も!

 全て羽が生えた真っ黒な魚であった。

 

 なんだこれ? トビウオ??

 

 床の上を無数の魚が飛び跳ねる様は、あまりにも不気味。

 

 俺はすぐにARを起動。白い四角をタップする。

 

≪ スカイフィッシュ ≫

 

 それだけ。

 

 意味が解らない。

 スカイフィッシュだと? UMAか?

 

 今もまた、闇の中からスカイフィッシュが飛び出した。

 ピチピチと地面を跳ねながら闇の中に戻ると、すぅーっと泳いでいく。

 

 まさか!

 

 俺は闇に向けてARを起動した

 

 ピピピッ!

 

 無数に浮かぶ、白い四角。

 百? 二百? いや、もっとだ。

 

 無数のスカイフィッシュが闇の中を泳いでいる。さながら闇の水族館。

 

 この中に入ったらどうなる? 溺れるのか?

 何にしろ、きっとロクでも無い事になる。

 

「降りよう!」

 

 イチかバチか、一階部分に飛び降りるしかない。

 

「ダメだよ! 見て!」

 

 木之瀬さんに言われて下を見ると、下ではゴブリンやスケルトンがうじゃうじゃ闊歩している。

 飛び降りたら、あっと言う間に囲まれる。

 

 戦う? 馬鹿な! こんな数と戦っていたら終わりだ! すぐに時間切れ。

 

 どうする? どうしよう?

 

 張り出したデッキは途中から闇に飲まれている。どこにも繋がっていない。

 かといって下に飛び降りたらモンスターのエサ。

 引き返せば闇に呑まれるし、ジャージだって追ってくる。

 

 コレ、詰んでない?

 どこにも逃げ場がない!

 

 そもそも、この部屋の出入り口は何個だ?

 三つだ。来た道を除くと二つしかない。

 

 まずは一階正面。一番目立つ。

 体育館の入り口を想像して欲しい。両開きの金属扉は開けるのに難儀しそうだ。ひょっとしたら鍵だって掛かっているかもしれない。

 

 なのに、飛び降りれば最後、モンスターの大群との死闘が待っている。

 

 となれば狙うはもう一つの扉。ちょうど、俺達が来た扉の反対側。

 向かいの壁にも二階部分にデッキがあって、そこにも扉がある。

 

 部屋の半分が闇に飲まれていなければ二階デッキは壁沿いに繋がっていたのだろうが、ダメージ覚悟で闇の中を突っ込むか? さっきの魚を見るとソレは良いアイデアに思えなかった。だとしたら向かいの扉に行く事は無理だ。

 

 いや? 本当にソレしか無いのか?

 

「木之瀬さんあそこ!」

 

 部屋の真ん中。一抱えもある大柱が倒れて、向かいの二階デッキに引っ掛かっている。

 

「アレで、どうするの?」

「それは……」

 

 プランはこうだ。

 二階から一階に飛び降りると同時、ナナメに倒れた柱を駆け上がって、向こうの二階部分にジャンプする。そんだけ。

 大量のモンスターもソコまで追っては来ないだろう。

 

 言うまでもなく、リスキー。

 いきなりアクションゲームみたいな動きを要求されている。

 

 しかし、コレが一番生存確率が高そうだ。

 雑魚を処理して大扉を開ける時間も戦力もない。闇の中を突っ切るのも怖い。

 

 木之瀬さんが覚悟を決めた表情で言う。

 

「先に行って良い?」

「もちろん」

 

 俺は肯く。

 そう、この場合、先に降りた方がむしろ安全なのだ。

 飛び降りて、モンスターを無視してダッシュで柱を駆け上がればよい。

 

 一方で、後から降りる方は大変だ。

 モンスターが群がる柱を掻き分けて、二階に駆け上がる必要がある。

 更に言えば、しんがりとしてモンスターを寄せ付けないように立ち回る必要まで出てくる。

 

 だが、迷う時間も無い。

 次の収縮が始まれば、この部屋の全てが闇に飲まれるのだ。

 

「いくよ!」

 

 木之瀬さんはひらりと地面に降り立った。判断が早い!

 

 ――ギャッ! ギャッ!

 

 一斉にモンスターが動き出す。

 機械的に、それこそゲームのモンスターが起動したかのような挙動。

 

「うぉー」

 

 俺は二階から騒ぎ立てる事で対抗する。

 ガントレットを叩きながら、大声で叫ぶ。

 

 何匹かのモンスターがコチラを見るが、役に立っただろうか?

 続いて、俺も落下。転がるように着地して衝撃を逃がすと、柱の根元までダッシュ。

 

 ――ギャーッ!

「離して! もうっ!」

 

 柱を駆け上がろうとするが、木之瀬さんはゴブリンに足を掴まれていた。

 

「おらぁ!」

 

 そこを横からぶん殴る。ゴブリンは吹っ飛んで行った。

 

「ありがと!」

 

 言いながらも、木之瀬さんは凄い勢いで柱を駆け上っていく。頼もしいね。

 ヒラヒラ舞うスカートを下から見上げながら、俺はゴブリンを蹴散らしながら、四つん這いで柱を上る。

 

 いや、別に屈んでパンツを覗こうってんじゃなくてね? 手で柱を抱えながら後ろ足で柱に取り付くゴブリンを蹴っ飛ばしてるんだわ。

 

 こうなってくると、ガントレットの俺が後からで良かった。ガントレットと言っても、手の平は金属で覆われていないタイプなので、ガッチリ柱を掴みながら追いすがるモンスターを攻撃出来る。

 

「ゲッ!」

 

 振り返れば、まるで地獄の蜘蛛の糸だ。

 無数のモンスターは、柱の根元で大渋滞を起こしていた。

 

 だが、悪くない。

 こんな数とまともに戦っていたら、時間切れの前に死んでいた。

 

 後は、俺が柱を駆け上がるだけ。

 無理のある作戦と思ったが、中々順調。

 

「きゃっ!」

 

 その時、空から女の子が!

 いやもう、ふざけんな!

 

 木之瀬さんが足を滑らせ落っこちて来たのだ。

 

「ぐぅ!」

 

 背中とお尻を思い切り掴んで。抱きしめる様に受け止めた。

 ととと、

 くそ、ナナメになった柱の上だぞ! 踏ん張りが効かない!

 

「ぐぎっ!」

 

 大きく海老反りに仰け反り、火事場の馬鹿力を総動員して、耐える。落ちたらゴブリンに囲まれて、死ぬ。

 

「ぐが!」

 

 それでも転がりそうにな所を、迫って来たゴブリンを蹴飛ばす反動でリカバリー。

 

「ハァハァハァ」

 

 なんとか! なんとか体勢を立て直す事に成功!! 俺頑張った! 男の子!

 

「木之、瀬、ど、したの?」

「ごめん! でも、この先凄い滑るし、二階に敵が居て」

 

 なるほど、二階でモンスターに出待ちされてんのか。

 足場が悪いコチラは不利だ。

 

 

 それにしても、こんな状況ながらドキドキしてしまう。

 抱きしめると、女の子の体は華奢で。間近に見れば、改めて言うのもアレだがもの凄い美少女である。

 なんか良い匂いがする、このまま抱きしめていたい。

 

「もう一回!」

 

 でも、そうは言っていられないと手を離すと、勢い良く柱を駆けていった。

 元気でよろしい。

 

 ってか木之瀬さん。今の騒動で剣を手放していないのが、地味に凄い。

 堂々と、手を広げて俺の元に飛び込んできた。

 

 なんだかんだ俺を信用して命を預けてくれている。

 

「やぁ!」

 

 木之瀬さんが柱の上でジャンプして、二階部分に降り立つのが見えた。

 

 俺は四つん這いで後を追いかける。

 なるほど、上に行くにしたがって柱は細くなるし、変な装飾があって歩きにくい。あまり柱の先まで行かない方が良さそうだ。

 

 だが、こっから先は後続の俺の方がイージー。

 すでに二階のモンスターは倒されて、後は飛び移れば良いだけ。

 

「ていっ!」

 

 俺は二階の手すり部分めがけて飛びついた。

 だが。

 

 ――ガキッ!

 

 折れた! 手すりが折れやがった。

 

「くそっ!」

 

 寸での所、二階の床を掴んで、耐える。

 が、体が重い。

 バックパックを背負ってるし、ガントレットの重量もある。

 

 ゲームをやっていると、崖に指をかけた状態から腕の力で這い上がるなんて朝飯前みたいに思えてしまうが、現実はそうじゃない。

 

 まず懸垂で体を持ち上げた後、片足を引っ掛けて這い上がらないといけない。

 マジで、キツイ。

 

 っていうか、指の力で体重を支えるだけで凄まじく辛い。長くは保たない。

 

 ……これ、死んだかな?

 

「篠崎くん!」

 

 しかし、木之瀬さんが手を引っ張ってくれた。

 下手をすれば二人で落っこちてしまう所だが、手すりに足をかけ、グイグイ引いてくれる。

 

「ごめん、木之瀬さん、足! 足の方持ち上げて」

「篠崎くん、体固いよ」

 

 ごめんて!

 胸までは体が持ち上がったけど、足がね。

 だって、崖だったら壁を蹴りながら足をあげられるけど、ぶらんと宙吊りになった姿勢ではそれも出来ない。

 

 結局、格好悪くしがみつき、折れた手すりの支柱も支えにしながら、なんとか二階に転がり込む事に成功した。

 

「やった、ありがとう」

「うん、こっちこそ助かったよ」

 

 いやー危機一髪です。

 良いチームワーク。

 

 もうね、守るとか何だったんだって話よ。

 

 完全に守られてるだろ! いい加減にしろ。

 

 しかし、やった! やったんだ。

 ゴブリンは追いかけてくるが、コチラに飛び移れる程の身体能力はないようだ。

 

「ほらよ!」

 

 おれは兜を脱ぎ捨てて、先頭のゴブリンに投げつけた。

 

 ゴンと音を立てて命中すると、ゴブリン達はドミノ倒しで落下していく。

 まるでボウリングだ。オモシレー。

 

「いいの?」

 

 木之瀬さんに聞かれる。

 兜の事だろうけど、暑いし、なにより視界が遮られるのが辛い。防御力を補ってあまりあるデメリット。

 

 罠まであるんじゃ、兜のせいで死ぬ可能性だって高い。

 無駄に疲れるのもアレが原因だ。

 

「良いの良いの、面白かったし」

「ふふっ」

 

 二人で笑った。

 ここまでギリギリの戦闘が連続して、あまりにもしんどい。

 少し休む必要があったのだ。

 

 

 その時だ、闇の収束が再び始まったのは。

 

 

 もう、地図で闇に飲まれていない場所はかなり狭い。

 一体、どこまで逃げれば良いのか?

 本当に最後の一人になるまで殺し合わなければならないのだろうか?

 

 憂鬱だ。

 

「オラァ!」

 

 しかも、だ。

 ここに来て半グレのジャージ男、まさやんが追って来たのだ。

 俺達を追いかけ、向かいの張り出しの扉から、部屋に飛び込んでくる。

 

 一人だ。

 恐らくは、ゴリさんを治療しようとして、失敗したのだ。

 顔を刺され、胴体が千切れれば、さしもの回復薬も役には立たないらしい。

 

 俺らを求め、血走った目で肩をいからせるまさやんだが、俺達を見ると、顔色を変えた。

 

 なにせ、そちらは行き止まり。一階はモンスターだらけ。

 コチラに来るにはダイナミックアクションが必要だ。

 

「お前らぁ! 待ってろクソ」

 

 しかし、ジャージ男の判断は速かった。

 俺達と同じ様に、一階部分に降り立つと、柱を目指して走る。

 

「木之瀬さん!」

「うん!」

 

 もう「俺に任せて先に行け」なんて言わない。

 

 二人で迎え撃つ!

 

 コチラに飛び移って来ようとも、着地の瞬間を攻撃すればたたき落とせる。

 それで、決着だ。

 

 ……だが、そんな必要はなかった。

 

「クソッ! クソッ! 離せ!」

 

 まさやんは、ゴブリンに取り囲まれる。

 圧倒的な戦闘力で蹴散らして、柱の上に乗っかるが、そこまで。

 そこで、闇に飲み込まれた。

 

「木之瀬さん!」

 

 このままじゃ、俺達も闇に飲まれる。急いで次の部屋に向かわないと。

 

 ……だが、収縮と同時に表示された次回収縮の予報円は、運良くこちら側に寄ってくれた。

 

 ならば、多少は余裕がある。

 闇に飲まれると、どうなるのか知っておきたい。

 だから、俺達は後ろを振り返ってしまった。

 

 振り返るべきではなかったのに。

 

「クソッ、たすけ! 助けて!」

 

 闇に飲み込まれたジャージの『まさやん』のシルエットに、スカイフィッシュが群がっているのが見えてしまった。

 

 グチャリグチャリと音がして、まさやんの陰が、どんどん小さくなる。

 

 生きたまま、食われているのだ!

 

 スカイフィッシュは闇の中、羽を広げて飛び回り、闇の中に飛び込んだ生き物を細かく細かくちぎってしまう。

 

 ――ビンッ!

 

 張り詰めた弦を弾くような音がして、闇の外にゴロンと転がったのはまさやんの生首だった。

 

 首級をあげたスカイフィッシュが勢い余って闇の中から飛び出すと、手柄を喜ぶように床の上をピチピチと跳ねている。

 

 さっきまでは可愛くも見えていたトビウオもどきが、もう怖い。

 

「行こう!」

「うん!」

 

 これ以上見ないようにして、俺達は、次の部屋へと飛び込んだ。

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