スマホで簡単エントリー、最短5分でデスゲーム   作:ぎむねま

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とにかく交渉しろ

 次の部屋は、何と言うか隠し部屋っぽい場所だった。

 別に見渡す限り、金銀財宝がざっくざっくと言うほどではないのだが、当たり前みたいに貴金属が落ちている。大豊作だ。

 

「まさか……」

 

 良く考えれば、柱を駆け上がらないと入れない扉って、普通に考えて隠し部屋だったんじゃないか?

 闇に飲まれて階段が使えなかったのではなく、そもそもアレが正規ルートだった可能性。

 

 だとすれば、逆にまずい。

 

 隠し部屋って事は、他に出口がない事もあり得る。

 しかし、帰り道は闇に飲まれた。

 このままじゃ俺達はゲームオーバーだ。

 

「出口を探そう!」

「大丈夫だよ、ここ、穴が開いてる」

「よかった」

 

 壁に人が一人くぐれるぐらいの穴が開いていた。

 

 ……いや、待てよ。コレもまた隠し部屋っぽい。

 単純に、隠し部屋の入り口が一つじゃなかっただけじゃないのか?

 

 他の誰かが開けた後の様にも見える。

 だが、考えても仕方が無い。

 

「とにかく、急いで使えそうなモノを探そう」

 

 ARで確認すると、換金アイテムだらけ。

 だが、こうなってしまえばもう換金アイテムは無視だ。薬か武器、防具なんかを見つけないと。

 

 細かい怪我をしていて、また一つ回復薬を使ってしまった。

 残り一つ。心許なくなってきた。

 

「ねぇ! この腕輪DEF+4だって」

「そういうのをアイツらジャラジャラつけていたんだろうな」

 

 思い返せば、アイツらの体は固すぎた。あのギロチンですら断ち切れぬ程に。

 それでも、スカイフィッシュにはあっさりと殺されたんだから。闇に飲まれたらお終いだ。

 

 と、その時、机の上に立派な宝箱を見つけてしまう。

 

 開けてみると、残念ながら中身はただの換金アイテムだった。

 

「でも、凄い王冠だ。コレ一つで今までの換金アイテムを上回りかねない」

 

 だったら、今まで集めたお宝をコレに置き換えるのも有りか?

 いや待て、この辺りで換金アイテムは全部捨てるべきか? もうお宝に目が眩む相手も居ないだろう。

 カバンには重量軽減があるとはいえ、持ち歩くリスクの方が上回っている。

 

 だが、惜しい。

 それほどに美しい。もっと良く見たい。

 そう思って、王冠に手をのばす。

 

 すると、その手が取られた。

 キレイに投げ落とされて、地面を転がされる。

 

「動くな」

 

 そして、抵抗する間もなく首筋にナイフを当てられた。

 

「おら、嬢ちゃんもや、武器を捨てえ」

 

 小狡そうなおっさんだ。

 マジかよ、人質にされてしまった。

 

 守るどころか、とんだお荷物。

 

 だがな。

 

「おい、嬢ちゃん? どうした? コイツ殺すぞ!」

「…………」

 

 木之瀬さんは、止まらない。

 まるで動じない。

 

 ただ無言で剣を構え、すり足で近付いてくる。

 怖い……

 

 そうだ、この状況。

 フィクションなら「篠崎くんを離して!」とか言って武器を手放す所だが、このデスゲームでそんな事をしても意味は無い。

 武器を捨てたら二人とも殺されるだけである。おっさんが見逃してくれたとしても他の怪物に殺される。

 

「なんや、嬢ちゃん気合いはいっとるな」

「そりゃそうだろ、こんな状況で人質にとっても意味ねーじゃん」

 

 首筋にナイフをあてられ、次の瞬間カッ切られるかも知れないと言うのに、俺はふてぶてしい事を言ってしまう。

 

 俺を心配して、武器を捨てる意味がまるでないからな。

 逆に木之瀬さんが人質にとられても、俺の選択だってあんまり変わらないだろう。

 

「それにしたって、もうちょっと動揺してもええやろ!」

「それは、確かに」

 

 思わず関西弁のおっさんに同調してしまう。

 いやーここまでで絆を深めたと思ったのになー。

 

 そんで、当の木之瀬さんは、まるで笑って居ない。

 無表情で、言い放つ。

 

「どうせなら、二人まとめて斬っても良いかなって」

「なんやソレ! 彼女さんおっかないやん」

 

 まぁ、彼女じゃないしね。

 

「待ちーな! 交渉や!」

 

 関西弁のおっさんは手を突き出して待ったのポーズ。

 

「あんさんら、見たところルーキーやろ? 交渉といこうや!」

 

 ルーキーだと? つまり……

 

「ああ、ワイはこのゲームのベテランや」

 

 ……半グレを見て、そんな気はしていたが、確定だ。

 つまり、正真正銘、このゲームは帰って来られるゲームなのだ。

 

「交渉ってなんだよ……」

 

 しかし、俺らは薬も武器も足りない。

 出せるモノが殆ど無い。

 

「あんさんらが持ってる換金アイテムあるやろ? ソレをよこしぃ」

 

 ん? なんで換金アイテムを? この終盤で?

 

「なにもタダとはいわへん、薬がないんやろ? 防具だって分けたってかまへん」

 

 何でだ? 意味が??

 

「おい、換金アイテムなんざ持ち帰らなくても、回復薬ひとつで元が取れるだろうが!」

 

 俺がそう言うと、おっさんは鼻で笑った。

 

「だからルーキー丸出しやって言うてるんや」

 

 そして、おっさんは驚きの事実を口にした。

 

「このゲーム、持って帰れるのは換金アイテムだけや」

 

 

「…………」

 

 絶句した。

 中々意味が飲み込めなかった。

 その可能性に思い至らなかった。

 

 そうだったのか。

 でも確かに、言われてみれば腑に落ちる。

 

 魔法のカバンも、回復薬も、木之瀬さんが持つクリスタルソードみたいな武器だって、俺達が知らない技術で出来ている。ひとつだって持ち帰れば大騒ぎになる。

 

 だから、換金アイテムなのだ。

 ソレしか持ち帰れないようになっているのだ。

 

 売る方だって簡単だ。

 金銀宝石、果ては曰く付きっぽい王冠まで。

 潰してしまえば金の塊に過ぎないし、親の形見だとか言えば、換金出来ないワケじゃない。

 もちろん、下手を打てば目を付けられるだろうが、捌けるヤツなら捌けるだろう。

 

 だからこそ、このおっさんや、半グレ共のようなヤバいヤツらの金づるとなっていた。

 売る方だって都合が良い。回復薬など売れば大騒ぎになる。

 下手に突っ込まれて、デスゲームでバンバン殺して手に入れましたなんて言えるハズがない。

 

 つまり、都合の良い金策なのだ。

 自殺志願者である羊に混じって、狼どもが混じっていた。

 

 だとしたら、交渉の余地は十分にある。

 

「金なんざ要らねぇよ。ルーキーだからな。命以上は望まない」

「よっしゃ、交渉成立や」

 

 おっちゃんは、俺をあっさり解放した。

 

 まぁ、そうだ。

 こうなってくると、俺らにおっちゃんを殺す選択肢は無い。

 帰還の方法を知っているのだから。

 

 でも、とりあえず木之瀬さんには謝っておこう。

 

「悪い、人質になった上に、金目の物を渡すことになってしまって」

「ううん、いいよ。別に」

 

 あっさりとしたもんだ。

 この部屋の分だけだって、下手すりゃ億にも届く金額になるはずだ。

 ソレを全部手放してしまうなんて。

 解っていても中々割り切れるモノでは無い。おっちゃんは目を細める。

 

「あんさんら、またワケありみたいやね」

 

 いいえ、ワケなしです。

 俺は、五秒で済む説明を開始する。

 五分間の悲劇だ。

 

「そらぁ災難やな、知っとる限り最短記録やん」

 

 でへへ、褒められた(褒めてない)

 話に依ると、このデスゲーム。開催日時は毎週固定らしい。

 日曜日の午後、5時頃開始。

 

 で、俺は丁度その時暇だったので、デスゲームにいきなり参加になってしまった。

 

「素っ裸でスタートは最悪やね。普通は、その前のミッションで初期アイテムが手に入る。そんで経験者は開始までの5分で持ち込む装備を決められるんや」

 

 そうなの?

 じゃあ、いきなり最強装備で殴り込む事も可能なのか?

 

「そうや、換金アイテム以外は持ち帰れないが、()()()()()。その嬢ちゃんが持ってる武器。クリスタルソードちゅうんか? ソコまでのシロモンは初めて見たで、まぁソレだけでも、まず間違い無く下手なモンスターに遅れはとらんやろな」

「あ、あげませんよ!」

「いらんいらん、おっちゃんもうコレで引退や」

 

 話を聞くと、おっちゃんは借金があるのだが、今回の探索で返済が完了しそうとの事だ。

 

「最近は、物騒な奴らも紛れこんどる。この辺が引き際や」

「ああ、俺も半グレ三人組に追いかけられた」

「あーあいつらか、撒いたのか?」

「いや、殺した。木之瀬さんが」

「え! そんな事言うんだ!」

 

 木之瀬さんはジト目で睨んでくる。

 だって、3の2じゃん。一人はスカイフィッシュ。二人は木之瀬さん。

 俺? 0だよ!

 

「あぁ、半グレの三人? ……アイツら死んだんか」

「おっちゃんもアイツら知ってんだ? でも、今更引退取り消しってのはナシだぜ?」

「あんなしょーもない奴らにビビるワケあらへん、ワイが怖いんわキラーや」

 

 キラー、半グレどもは、その名で俺達を呼んだ。

 

「キラーはな、収束する最終局面でフラリと現れて、ゲートから帰還しようとする奴らを片っ端から殺していくんや」

「ゲート? 最終局面?」

 

 また解らない言葉が出て来た。

 

「ま、その辺は進みながら説明したる。進むんや」

 

 おっさんはニカッと笑った。

 

「覚悟しい、いよいよ始まるで、その最終局面が」

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