スマホで簡単エントリー、最短5分でデスゲーム   作:ぎむねま

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とにかくゲートを見つけろ

「じゃあ、篠崎くんはゲートを譲っちゃったの?」

「まぁ、そうなる」

 

 おっちゃんは初めから、俺達を出し抜くつもりだったと思う。

 だが、こっちは二人だ。片方だけ脱出しても意味が無い。

 

 おっちゃんをぶん殴って、木之瀬さんだけでも帰すって選択肢は当然あった。

 でも、その場合はおっちゃんと殺し合いだ。タダでは済まない。成功確率も低い。

 

 だったら、戦意を見せず、距離をとることで防具を貰った方がマシだと判断した。

 

 おっちゃんは出会った時から色々と装備を分けてくれたが、虎の子はあの瞬間まで、外そうとしなかったから。

 

≪ 守りのネックレス ≫

 DEF+8

 

≪ 力の腕輪 ≫

 ATK+6

 

 どちらもヤバい性能だ。

 クリスタルソードで攻撃力は十分な木之瀬さんがネックレスを、俺は力の腕輪を装備した。

 

 ≪篠崎禅≫

 ガントレット ATK8、DEF5

 力の腕輪ATK6

 守りの指輪 DEF6

 革のブーツ DEF3

 

 ATK14 DEF9(+5)

 

≪木之瀬 奈々≫

 クリスタルソードATK20

 守りのネックレス DEF8

 守りの腕輪 DEF6

 革の靴 DEF2

 

 ATK20 DEF16

 

 因みに、アクセサリーは二つまでしか装備出来ないらしい。

 だから、少しでも数字が上のアクセサリーは貴重。

 

 装備スロットは、靴、アクセサリー二個、武器、他(兜か盾)の五つ。

 ただし、兜や盾はその場所に攻撃を食らわないと効果が無いんだとか。

 俺のガントレットのDEF5も恐らくこの手だろう。

 どこを攻撃されてもOKなアクセサリより頼りないが、その代わり火球を弾けたりなど隠し要素がある。

 

 それにしても、おっちゃんのアクセサリーの頼もしさよ。

 

 宝物庫の他のアクセサリーでもDEF6、ATKは4までがMAX。

 おっちゃんの装備はそれぞれ+2の性能なので、いかに図抜けた性能か解るだろう。

 

 たかが+2されど+2。

 どうも、相手の攻撃力を越えるDEFがあれば、攻撃は中々通らないらしい。

 つまり、ATK14の俺がDEF16の木之瀬さんを殴っても殆ど効かないっぽい。

 

 いや、殴らないけどね?

 バチボコに殴るとか嘘だからね?

 

 で、だ。

 

 だからこそ、単体でATKが+20もあるクリスタルソードはヤバい。

 もうぶっ壊れ中のぶっ壊れ。

 おっちゃんが今までみた武器でもATK+10が最高らしいからどんだけって話。

 

 細腕の木之瀬さんが使っても、バターみたいに人間を両断してしまうのも納得。

 

 これほどの剣は中々無いだろうし、このネックレスがあれば理不尽な死はまず防げる。

 下手におっちゃんと戦うよりは良かったハズだ。

 

 とはいえ、生還のチャンスをみすみす譲ってしまったのは事実。

 

「ごめん、木之瀬さん」

「ううん、良いよ。どうせ私、ここに来るのを止めるつもりないし、強い防具が貰えて却って良かったかも」

「え?」

 

 まだ参加するの? 来週も? このデスゲームに。

 

「だって、まだミントの手掛かりを掴んでないもん」

「でもさぁ」

 

 どう考えても死んでるでしょ。

 

 まず脱出方法が無理ゲーだ。

 おっちゃんに譲ったのも仕方ないって思えるぐらい、アレは貴重な情報だった。

 誰があんな金属棒に血を捧げようなんて思うのか。

 

 むしろ、最初に気が付いた人がどうかしている。

 

「とにかく、話は後、とにかく先に進もう」

 

 俺は木之瀬さんの手を引いて次の部屋へと走った。

 また、遺跡が揺れたからだ。どこかにゲートが出現している。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「えいっ!」

 

 木之瀬さんは走りながら、ゴブリンをなぎ払っている。

 

「はぁはぁ」

 

 でも、流石にしんどそうだ。俺も辛い。

 さっきから、振動はするが、ゲートが見つからない。

 もう残りの部屋は5部屋あるか無いかだぞ? これ相当運が悪くないか?

 

 すでに、周囲はゴブリンの死体だらけだ。

 

「こんな目にあっても、まだデスゲームに参加するの?」

「うん、あのね……」

 

 息を整えながら、木之瀬さんの告白。

 

「ミントに告白されて、私、気持ち悪いって言っちゃったんだ」

「うーん」

 

 無理もないのでは?

 俺も友達にカミングアウトされたら冷静でいられるかわからない。

 なんか、ミントちゃんのスキンシップはベタベタしてて、俺らみたいな百合スキーが盛り上がるぐらいだったから、余計にね。

 

「でね、初めからそう言う事が目的で私に近付いたんでしょ! って言っちゃったんだ」

「むぅ」

 

 それも、無理はないのでは?

 

「でも、この前思い出したの。私ね、サッカー部の矢野先輩が好きで」

「あーそうなん?」

 

 別に、ショックでもない。

 矢野先輩はとにかくモテる。女子のアイドル的な存在で、いつもキャーキャー言われているからだ。憧れている女子はクラスにも多かった。

 

「矢野先輩はミントちゃんが好きだって噂があって、でね、私からミントに話し掛けたんだったんだって思い出したの……酷いよね」

「あー」

 

 うん、友達にどっちが最初に話し掛けたのかってあいまいになるよね。

 

「思い出してから、謝ろうと思ったら、ミント行方不明で……」

「そうか……」

 

 でも、諦めた方が良いと思うんだけど、木之瀬さんは諦められないらしい。

 

「ミント思い詰めてたから、このデスゲームね、クリアーすると魔法が手に入るって噂があったから、ミントずっと興味津々でね……」

「あー」

 

 実際に、魔法はあった。ゴブリンメイジの火球だ。

 

 でも、何度もクリアーしたおっちゃんでも魔法は使えない。

 きっとモンスター特有の技能だ。

 

 夢見がちな女の子が騙されて、デスゲームに参加させられ、どうなったかなんて想像したくもない。

 

「ホントはね、こんなゲームを開催してる人を私はやっつけてやりたい」

「それもまた、難しそうな気がするなぁ」

 

 だって、人をいきなりワープさせてくる奴らだよ?

 無理ゲーっしょ。

 

 目標が大きいことは良いけれど、このままだと木之瀬さんまで死にかねない。

 俺は彼女の肩を掴んだ。

 

「ミントちゃんの事は置いておいて、とにかく今は生き残らないと」

「そ、そうだね」

 

 頷いた木之瀬さんは、バツが悪そうに上目遣いで俺を見た。

 

「あの、脱出したら、私、ボコボコに殴られちゃう、のかな?」

 

 いやー、それはもうノーカンでしょ。

 守るどころか、こっちが守られてるんだもん……。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 その後も、ゲートは中々見つからない。

 

 いや、正確には見つかるのだが、収縮に飲まれ既に闇の中というケースが多かった。

 あのスカイフィッシュに切り刻まれながらゲートに入るのは難しい。

 

 あまりにも運が悪い。

 地震は先ほどからひっきりなしだが、良い感じのゲートがない。

 

 良く考えると、このダンジョンは多層構造。

 この階ではなく、他の階にゲートが発生している可能性が高い。

 

 最後の収縮が始まる。

 予報円を見る限り、次の部屋が最終収束地点になるだろう。

 そこにゲートが湧かなかったら終わりだ。

 

 

 と、その時だ、通路のど真ん中、目の前に金属の棒がそそり立つ。

 

 木之瀬さんは目の色を変えて走り込んだ。

 

「あっ! ゲート出て来たよ!」

「ダメだ、木之瀬さん!」

「なんで?」

 

 慌てて手を掴んで止める。

 だって。

 

「赤いゲートだ」

「……ホントだね」

 

 赤いゲートは死への直行便。誰も帰った者は居ない。

 おっちゃんはそう言っていた。

 きっと、元の仲間が赤いゲートに飛び込んだのだ。

 

 もし、最終ポイントに赤と青のゲートしかなかったら、イチかバチかで飛び込むしかないからな……

 

「行こう、次の部屋に」

「うん」

 

 こういうのは、最終収束地点には必ずゲートがある。お約束だ。

 そう信じて、最後の部屋にはいると、ソコには。

 

「あったぁ!」

 

 ゲートが二つ。両方とも、青だ。

 

「良かったぁ」

「ホントになぁ」

 

 ホッと一安心。

 ヘナヘナと力が抜けていく。

 

 でも、木之瀬さんはハッと何かを思い出した様に俺の事を見る。

 

「あの、本当に、私毎日呼びつけられて、ボコボコに殴られながらエッチな事されちゃうの?」

「いやいや……」

 

 守るどころか、守られた。

 むしろ、俺はボコボコに殴られる方だ。

 

 ……いや、それは結局、俺のご褒美か?

 まぁ、いいや。

 

 俺は彼女と一緒にこのダンジョンをクリアした。

 その満足感で一杯。

 

「嫌だったら、その剣で俺の事を殺しても良いよ」

「えぇ……」

 

 木之瀬さんは笑うが、本心だった。

 冴え冴えとした青の美しい刀身に斬り裂かれて死ねるなら、悪くないと思える。

 女の子を守って、守られ、何かを成し遂げた気持ちで死んでいけたら。

 

 でも、木之瀬さんは呆れた様なため息をひとつ。

 

「しないよ。そんなの」

「そっか」

「でも、優しくしてね……」

「え?」

 

 それって、らぶらぶエッチなら可って事デスかぁぁ???

 

 やった!

 急に、生きる希望が湧いてきた。

 

「じゃあ、行こうか!」

「うん」

 

 俺は、急いでゲートへと駆けつけて。

 

「あれ?」

 

 気が付いたら、腹から剣が生えていた。

 

 斬られた? 木之瀬さんに?

 

 ――違う!!

 

 腹に生えていたのは黒々とした禍々しい剣。

 

「うぷっ」

 

 口から血を吐き出しながら振り返ると、ソコには知らない男が居た。

 浅黒い肌に、ソバージュの爽やかなイケメン。歳は大学生ぐらいだろうか。

 

 

 俺は、ムカついた!

 

 

「プッ!」

「グッ!」

 

 瞬時に、口に溜まった血を吹き付けて、相手の目を潰した。

 

 今の俺は、腹が引き裂かれて死ぬ直前。

 でも、そんなのはどうでも良いだろう??

 

 生き延びる事は二の次。

 反撃にしか頭が行かないぐらいにムカついていた。

 

 何がムカついたって、そいつがサッカー部の矢野先輩を更に一回りイケメンにしたような、スカした男だったから。

 

 頭がカッっとなった。

 

 もう、命なんてどうでも良かった、ただコイツをぶっ殺す事しか考えられない。

 

 ショックでないと言いながら、俺は案外、木之瀬さんのカミングアウトにショックを受けていたらしい。

 

 俺は、ムカつく優男を蹴っ飛ばす。

 もちろん、剣で刺されたままだ。内臓までずるりと一緒に抜けてしまった。

 

「ぎげげぇ」

 

 自分でも良く解らん悲鳴を飲み込みながら、俺はウエストポーチから回復薬をまとめて三本抜き取ると、腹の中にぶちまける。

 

「キャーッ!」

 

 木之瀬さんの甲高い悲鳴をBGMに、俺は零れ落ちた腸を腹の奥へと押し込んだ。

 

「木之瀬さん!」

「な、なに? 大丈夫!?」

「先に帰って!」

「なんで?」

 

 なんでって……決まってるだろ。

 

 俺は、イケメン優男に向き直る。

 

「コイツが、キラーだ!」

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