スマホで簡単エントリー、最短5分でデスゲーム   作:ぎむねま

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とにかくヤケクソだ、糞だけに

 結論から申し上げますと、ウンコでした。

 

 うん、「また」なんだ。済まない。

 モーニングスターも、回復薬も失って、木之瀬さんから貰ったガントレットまで噛み砕かれて。

 

 ほとんど全てを失った俺を優しく包み込んでくれたのは、ウンコでした。

 

「はぁ……」

 

 ウンコに包まれて、天井を見上げる。

 

 蟻の糞がクッションになってくれた。

 薄暗い奈落の底。途方に暮れる。

 

「どうしろってんだよ」

 

 もう、武器もない、薬も無い。

 何も残っていない。

 

 戦う力がないのだから、とりあえずアクセサリーをDEF重視のモノに切り替える。

 二層のアクセサリーは強力で、合計DEF+20近くになった。キラーもビックリだろう。

 

「はぁ……」

 

 でも、打つ手がない。

 ボスを殺せない。

 

 スマホを見ると、地下だろうが容赦なく闇の収縮は来るようだ。

 このままウンコにまみれて死ぬかな。

 

 真面目に頑張るなら、落ちてる武器を漁ってイチから出直すしかない。

 そんな時間があるとは思えないが。

 

 まぁ、でも、みっともなく足掻くか。

 

 もし神様がいるとすれば、きっと馬鹿みたいに七転八倒して足掻く人間が好きなんだ。ゲラゲラ笑って醜く藻掻く人間を観察している。

 だから、足掻かない人間は成功しない。

 

 そんな事を、ウチの親父が良く言っていた。

 

 海外転勤を決めた時の言い草だったけどな。

 母さんもついていったから、お陰で俺は一人暮らしだ。

 

「まぁ、やるかね」

 

 どうせなら、あの糞みたいなトカゲどもに一泡吹かせて。

 それから死にたい。

 

 よくよく考えりゃ、キラーだって殺したい。

 

 デスゲームに参加して以来、殺したい相手が増えた。

 人生にハリが出たって事だ。

 

 ポジティブシンキング。

 空っぽの人生よりも、怒りと憎しみが詰まっている方がマシかも知れない。

 

 さて、奈落を見渡せば、多くの死体が転がっていた。

 落下死したか、それとも蟻と戦って死んだのか?

 

 どちらにせよ既に白骨化してる。骨以外は蟻に食われたと見るべきだろう。

 そこからアイテムを収集する。

 

 

≪ サバイバルナイフ ≫

 ATK+12

 

 肉厚で頑丈なナイフ。

 予備に持つだけで、生存可能性を格段に高める。

 

 

 死んどるがな! 生存しとらん!

 フレーバーテキスト君! 嘘は良くない。

 

 

≪ レンジャーブーツ ≫

 DEF+12

 

 迷宮探索用に作られた編み上げブーツ。

 頑丈で防水性もあり、虫や汚れを寄せ付けない。

 

 

 虫を寄せ付けない?

 防虫剤でも塗ってあるのかな? だから革なのに食われずに残っている?

 

 コイツは掘り出し物だ。

 

 サイズは……ちゃんと補正された。

 アイテムとして機能している。

 

 今更だけど、サイズ変更って滅茶苦茶だよな。

 体の大きさに拘わらず装備したらピッタリハマる。

 ゲームを無理矢理現実に落とし込んだ感じ。

 

 難易度じゃなくて、もっとこう言うのをガバガバにして。

 

 ナイフにブーツ、アクセサリー。服はジャージ。

 もう、完全にヤベー奴だ。半グレを笑えなくなってしまった。

 

 ウンコまみれってトコを抜かせばな。

 これだけで爆笑モンだ。

 

「さぁて」

 

 脱出しますか。

 絶望的な穴の底でも、ゲームと言うなら脱出口は用意されているハズだ。

 

 奈落は蟻さんの世界だ。

 まずは蟻さんを良く観察する。

 

 するとまぁ、謎の肉塊を引き摺る蟻さんの集団とランデブー

 

 ……これ、さっき俺が殺したリザードマンだ。

 

 どこに持っていくんだろう? 行列を辿って地下を彷徨う。

 

 蟻さんの行列を辿って行くなんて、小学生以来だ。

 これが穏やかな昼下がりだったらなんと素晴らしいのだろう。

 

 実際はデスゲームの最中である。

 

 ため息混じりに薄暗い洞窟を歩く。

 そして……

 

「嘘だろ?」

 

 そこには土の城が建っていた。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

≪ 蟻塚 ≫

 

 ジャイアント達が泥を固めて作った巣。

 巨大なものになれば、民家よりも大きくなる。

 

 

 民家か、確かに。

 城ってのは少々大袈裟だったかもだ。

 縮尺的に遠近感がおかしくなる。

 

 で、蟻のお城にご入場。

 

 ウンコのお陰か敵対状態にはならない。

 踏み潰さないように注意しながら、蟻塚の中に侵入した。

 

「おじゃましまーす」

 

 中を覗くと、丸められた餌が大量に積み上げられていた。

 

 そして、ソレを守る蟻たるや。餌を運ぶ働き蟻よりも、更に大きい。

 猫ではなく、大型犬ぐらいのサイズ。

 スマホで翳せば表示は≪ナイトアント≫。

 戦う蟻さんだ。

 

 それが100や200じゃない。

 千は居る。

 

 ……コイツらをレイスにぶつければどうなる?

 

 物理耐性がなんだ。

 圧倒的な物量で押しつぶせるんじゃないか?

 

 ワクワクして来た俺であったが、兵蟻さんたちは仕事一筋だ。

 

 俺の事もちゃんと異物と認識しているようで「変な奴が入って来たな」としっかり警戒されている。

 

 ここに居るのはヤバい。

 

 更に奥へと滑り込む。

 

「うげ……」

 

 集合体恐怖症の人は卒倒するに違いない。その部屋は一面ビッシリ卵が植わっていた。

 一個一個は鶏の卵ぐらいか? 形はずっと細長くてブヨブヨしている。

 

 兵蟻はこの卵部屋にも居た。

 周囲を警戒しつつ、卵の位置を整理していた。

 

「…………」

 

 気になったのは、奥まった場所にひっそりと鎮座する。巨大な卵。

 ラグビーボールぐらいの大きさがある。

 

 ……まさかコレ、女王蟻となる卵だろうか?

 

 もしも、コレを盗み出したらどうなる?

 死ぬかな? 死ぬだろうな。

 

 ……だからなんだよ。

 

 どうでも良いだろ、そんな事。

 

「チッ」

 

 苛立ちに、舌打ちが漏れる。

 あまりにも、ダサい。

 

 俺はレイスにビビってしまった。

 それが、悔しい。

 

 口では死ぬ覚悟は出来てるとか言いながら、ヤベー奴を目にした途端、パニックになってビビリ散らした。

 

 このまま怯えて死んで良いのか?s

 こんどはアイツをビビらせてやらなきゃ、カッコつかねぇだろ!

 

「ちょいと拝借」

 

 デカい卵を持ち上げてみる。

 キレイだ。グロテスクな虫の卵だというのに、乳白色でとても美しい。

 

 ――カチ? カカカチ

 

 そんで、兵蟻が一斉に警戒を始めた。

 でも、まだ完全に敵だとは思われてない感じ?

 

 あとは、コレをコッソリ持ち出すだけだ。

 

「失礼しまーす」

 

 小脇に抱えて、部屋を出た。

 その時だ。

 

 ――キチキチキチキチ!

 

 敵対した! ハッキリと敵意を向けられた。

 千にも迫る兵蟻が一斉に警戒を顕わに向かってきた!

 

「あば、あばばばばば」

 

 蟻塚を飛び出して、俺はダッシュで逃げ出した。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「ちぬ! 死んじゃう!」

 

 左手で卵を抱え、右手のスマホで地図を確認。

 行き止まりに詰まったら、その場でゲームオーバーだ。

 

 ってか、今も足元に蟻が集っている。ブーツが無かったらズタズタにされていた。

 

 俺は体を揺らし、ジャージに食らいつく蟻をなんとか振り落とす。

 

 死ぬぅ!

 

 回転ノコギリが壁から生えて、首を刈り取ろうと通過していった。

 屈むのが一瞬でも遅れたら、頭部がおさらばしていた。

 

 膝まである水たまりに足が取られるが、コイツは蟻も足止めしてくれて助かった。

 

 次々と扉を開けて、閉じる。

 

 スグに扉は食い破られるが、時間稼ぎにはなる。

 

 ――キシシッ!

 

 扉の先、リザードマンの集団まで現れた。

 その数、五匹。

 普通に戦っても全く勝負にならない数だ。

 

 しかし、俺は全てを無視して部屋を突っ切る。

 

 ――シャーッ! キシッ?? ギー!

 

 当然、リザードマンたちは俺を追いかけようとするのだが、尻尾を翻し、方向転換した時には、既に蟻の津波にのみ込まれている。

 

 地獄絵図だ。

 

 俺はこの地獄をアイツの元まで連れていく!

 

 レイス、出てこい!

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