スマホで簡単エントリー、最短5分でデスゲーム   作:ぎむねま

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とにかく看破せよ

 俺は木之瀬さんを探して迷宮を彷徨った。

 

 それはもう、猛烈にダッシュして、次々と部屋に飛び込んだ。

 換金アイテムや回復薬を大量ゲットし、怖い人達に絡まれてもガン無視して駆け抜けた。逃げられない時はぶん殴って黙らせた。

 

 それでも、見つからなかった。

 

 最後の最後、コレで見つからないとマジでヤバいな。そろそろ最終局面だなって所でようやく見つかったのだ。

 

 

 だから勿論、先客がいた。

 

 

「あなたは! あなただけは! 絶対に許さない!」

「許さないなら、どうするって言うんだい?」

 

 部屋の中では、木之瀬さんとキラーが切り結んでいた。

 完全に、クライマックスって感じだ。俺のようなモブ顔が入り込む余地はない。

 

 久しぶりに見る木之瀬さんは、少し様子が変わっていた。

 

 あんなにキラキラして可愛らしかった瞳が、鋭く険しい。

 セーラー服は煤汚れて見えたし、手足にはサポーターをつけている。

 

 彼女なりに、戦うつもりでここに居るのだ。

 

 なんかこう、良く解らんけど感動してしまった。

 彼女なりの覚悟がある。

 甘い気持ちでデスゲームに再挑戦しているワケじゃないんだ。

 

 と、扉のそばに昏倒している人が居た。

 え? 誰?

 二人に気が付かれないようにそっと確認すると、警部さんだった。

 

 刺されている。

 キラーにやられたのだろう。俺の時と同じだ。

 ほとんど死にかけている。

 

 俺は静かに部屋の外へと引っぱり出すと、回復薬で治療した。

 傷はすぐに塞がって失血は収まったが、目を醒まさない。血を流しすぎたのだろう。

 

 回復薬、飲ませた方が良いかな?

 どうやって? おっさんに人工呼吸? そこまでしたくないなぁ。

 

 困っていると、木之瀬さんとキラーの戦いは激しさを増していた。

 

「殺します! あなただけは、私の手で!」

「ふぅん? 僕を殺すとミントの事は解らなくなるけど、良いのかな?」

「構いません!」

 

 木之瀬さんに断言され、キラーは苛立ちを顕わにする。

 

「じゃあ! 何のためにこんな所まで、キミは来たんだ!」

「それは……あなたを殺すため!」

 

 憎しみが籠もった目で、キラーを睨む。

 

 マジか。

 あの優しかった木之瀬さんが!?

 

 いや……、前からザクザク殺してたな。

 でも、殺す覚悟は十分だった彼女であっても、殺す為にココまで来たってのは、らしくない。

 

 これにはキラーも困惑した。

 困惑し、苛立って、嘲笑する。

 

「まさか、あのクズを殺した事を根に持っているのかな?」

「あなたが、篠崎くんの何が解るの!」

 

 おっ? どうも俺の為に怒ってくれているっぽい。

 そろそろ出て行くべきか。

 

「ふん、あのクズなんてどうでもいいだろう? 殺して清々したよ」

「違う! 篠崎くんは、私が殺した!」

「へぇ!」

 

 そうだ、インタビューの時から、殊更に彼女は俺を殺した事を強調していた。

 

「助けて貰ったのに! 一緒に戦って、守って、守られて……」

「そんなのは、元の世界でキミを嬲る為だろう?」

「ソレだって! 私の為の嘘だった!」

 

 泣いていた。

 ボロボロと木之瀬さんは剣を構えて泣いていた。

 透明のクリスタルソードより、なお澄み切った涙が零れる。

 

「篠崎くんなら、きっと一人で脱出できた。私を守って死にたくないって、ハッキリ言われた!」

「やっぱり、クズじゃないか」

「それを私が、不安だったから! 二人で行こうと引き留めた!」

 

 泣いて、泣いて、しゃくり上げている。

 呼吸だってままならない。

 

 そんな木之瀬さんに、苛立たしげにキラーは言った。

 

「それが、なんだ、当たり前だろう?」

「当たり前、じゃない! 篠崎くんは最初から解ってた。最後の最後、二人に一人しか脱出できなくなるって。だから、あんな事言ったんだ」

 

 まぁ、バレるよね。

 本当に木之瀬さんをボコボコに殴るワケ無いしね。

 

「結局、篠崎くんの言うとおりになった。私を守ってボロボロになって、それなのに、ボロボロになった篠崎くんを私が殺した! この手で、殺した!」

 

 悔しそうに、悲しそうに、強く強く、剣を握り締める。

 

「やっと気が付いたの! 私、本当は矢野先輩の事なんて、好きじゃなかった。矢野先輩に憧れる自分が好きなだけだった」

 

 泣いて、泣いて、狂気すら宿った目で、向かい合う。

 

 

 ……そして、最後に、こう言ったのだ。

 

 

「私、馬鹿だ! 本当に好きな人の事、殺してから気が付いた!」

 

 そう言って、キラーに斬り掛かった。

 

「だから、絶対に許さない!」

「馬鹿な!」

 

 と、そんな様子をね、陰から見守った俺はね……

 困惑していた。

 

 え?

 好きな人って、俺の事じゃないよな? みたいなね……

 

 鈍感系主人公になろうとして、ダメだった。

 流石に人の道を外れてますよソレは。

 

 でもさ、この流れでさ、どのツラ下げて出て行けば良いんだよ。

 

 困惑しているのに、嬉しくて嬉しくて、ニヤニヤしている自分も居る。 

 あまりにもダサいでしょ。

 

 こう言う時はテンションを上げるんだ。

 空気を一切読めない男になりきる。

 

 笑いながら人を殺せるヤベェ自分を召喚するのだ。

 

 そうじゃないと、こんな空間に飛び込めないよ!

 

 YO! YO! YO!

 

 良い子のみんな! ご機嫌なビートを刻もうぜ!

 

 HEY! HEY! HEY!

 

 行くぜ? 行くぜ? 行くぜ!

 

 

「ニャー!」

 

 

 

 タマになりきって、切り結ぶ二人の間に飛び込んだ。

 

「…………」

「…………」

 

 めっっっっちゃ、気まずい!

 

 こっちを見るな!

 

「うそっ! 篠崎くん!」

「カス野郎が! 生きていたか!」

 

 感激に震える木之瀬さんと違って、キラーはノータイムで斬り掛かってくる。

 

 殺意が強いね、どうも。

 

「YO!」

「なっ?」

 

 俺はメイスを一振り、キラーの持つ短剣を弾き飛ばした。

 

「馬鹿なッ!」

「HEY! HEY! HEY!」

 

 そのまま、キラーの腕を叩いて骨折させると、俺より背の高いキラーの首を力任せに吊り上げた。

 相撲で言う喉輪だ。

 

「グッ、きさま!」

「篠崎くん? 本当に篠崎くんなの?」

 

 恥ずかしくて木之瀬さんの方を向けない。

 今までずっと立ち聞きしてましたってか? 言えるワケ無いじゃん。

 

「木之瀬さん、ちょっと待ってて、先にコッチを片付けるから」

「……う、うん」

「さぁて」

 

 改めて、キラーに向き直る。

 

「なんか言い残す事は?」

「死ねッ!」

 

 キラーは腰のナイフを引き抜いた。

 だが、ソレが俺に届く事は無い。

 

 だって、そうだ、俺には切り札がある。

 

 このために、この時に、コイツの為だけの、とっておき。

 

「看破!」

 

 俺は、キラーに、宣言した!

 

「本当の姿を現せ!」

「ぐっ、ゲッ」

 

 キラーが苦しみだす。

 

 すると、どうだ?

 首は片手にすっぽりと収まるぐらいに細くなった。

 身長は俺どころか、木之瀬さんよりもずっと小さくなってしまった。

 体だって華奢で、片手でぶらーんと余裕で持ち上がってしまう。絞められる直前の鶏みたいだ。

 

 顔立ちは可愛くて、異様なまでに整っている。お目々パッチリ睫毛が長い。西洋人形みたいであった。

 髪はウェーブを描き、キラキラと光を反射する。

 

 かわいいかわいい、女の子が、姿を現した。

 

 それも、アニメとかゲームの世界から飛び出して来たような、超絶美少女ロリっ子だ。

 

「ぐえっ、ぶ」

 

 体に力が入らないらしく、すっかり無力。

 首を絞めれば苦しそうにするのが可愛いね。

 

 手を離すと、べちゃりと地面に突っ伏した。

 

 木之瀬さんが思わずと、彼女の名前を呼ぶ。

 

「ミ、ミント?」

 

 それはまぎれもなく、藤宮眠兎の姿であった。

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