捻くれボッチの転生記   作:ジャージマン

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十六話 孤独の力

痛い。体の節々が少し動くだけで鞭で叩かれたような痛みが奔る。本来なら気絶してもいいくらいの怪我だ、骨折もしているかもしれない。

 

―――けど

 

「―――殺す」

 

俺を動かす一つの感情。俺の大切な人達を本物ではないとしても形を真似、殺人の道具とした。それだけで俺が本気の殺意を迎えるのに十分な理由だった。

 

今相手は自分の能力が思うように使えなく混乱をしている。その隙は大きい、わざわざ見逃す理由もない。今のままでも十分こいつらを殺せるがまだ、<足りない>

 

なら。更に上へ上り詰めよう。禁手よりも一歩先、オニキスに教えてもらった覇龍よりも少し劣る。

 

危険性はかなり高い。命を落とす可能性もある。

 

だが。

 

止まる理由にはならない。迷いなく使ってやろう。

 

       『メタモルフォシス』

 

一定時間自分の中にいるドラゴン、オニキスと一体化させ潜在能力を最大に引き上げる。攻撃力、俊敏、思考など全て上がるが―――

 

「あがぁぁあああ!!!」

 

―――当然デメリットもある

 

オニキスと一体化させるせいで俺の自我が消えそうになる。体もドラゴン化していき一定時間より時間を上回ると体が人間に戻れなくなる。何より今俺自身が自我を保てなくなった瞬間俺は、消える。

 

いや、消えるではなく俺の全てがオニキスに乗っ取られるという表現の方が正しいだろう。

 

『もうこの技を使うとは・・・。そこまで苦戦する敵ではなかっただろう?』

 

・・・オニキスが喋りだした。確かにこいつら相手にこの技を使うことはなかった。禁手で十分倒せただろう。

 

が。

 

「ウルせぇ・・・!」

 

そんな事分かってる。だから言われたくない、人間の心理でもある。そしてまだ俺は止まらない。

 

「ダークリベンジ!!」

 

鎧が形を変えていく。どんどん禍々しく、最凶の鎧へと。

 

「ライジングサン」

 

剣へと力を与える。俺の闇の能力と正反対の光の力。光を取り入れ美しく、輝く剣へと変わっていく。

 

「さテ」

 

準備は完了した。

 

「ヤろうカ」

            

そう言った瞬間俺は相手の<後ろ>に回った。相手は俺が消えたように見えているようだ。しかし声なんてかけてはやらない。そのまま全力で斬り飛ばす。その瞬間忌々しい神器を使った奴以外は消し去った。・・・力の制御は上手くできたようだ。しかしそれだけのようでここら一体荒地に変えてしまった。

 

・・・本当に能力を使うまでもなかったな。頭が冷えてくるとこんな奴らに使うまでもなかった。制限時間を迎える前にメタモルフォシスと禁手を解いておく。そしてゆっくりと歩いていく。忌々しい能力を使い今一番殺したい者であり―――聞かなければいけないことがある者。そいつの首筋に刀を添えいつでも殺せると圧力をかけておく。

 

「・・・はぁ」

 

それは先ほどの憎たらしいほどの弾むような声ではなく、絶望に満ちた声だった。

 

「・・・あ。別にもう抵抗する気はないから刀を下してくれないかな?」

 

「無理だ」

 

きっぱり言う。そりゃあさっきまで俺を実験対象とか言ってた奴の言葉ではい、そうですかと信用できるはずもない。俺の言葉に苦笑いし、それもそうかと呟いた。しかし俺はもうこいつも殺してもいいはずなのだが一つ引っかかりがある。

 

「・・・お前、抵抗しねぇの?」

 

こいつの顔は特に何かを企んでいる様子もなくただ苦笑を顔に浮かべていた。

 

「さっきのを見たら抵抗なんてする気起きないよ」

 

・・・あっけないな。集団は先ほど消し飛ばし、リーダー格の思われき者は戦意喪失している。

 

「・・ねぇ、君に聞きたいことがあるんだけど」

 

回りを見渡す。・・・特に時間稼ぎでもなさそうだ。急に何のつもりか知らないが黙って話を促す。

 

「君なんでそんなに強いの?」

 

それはありきたりな質問だった。

 

「・・・別に。修行したからじゃねぇの」

 

ドキッと心臓が動いた気がした。しかしそれを抑えありきたりな答えを返しておく。だかこの答えではなかったのか再度聞いてきた。

 

「いや、そうじゃなくて」

 

「この大きな力を持っていたとしても自惚れず」

 

「その力の反動に耐えられる君みたいな子供が」

 

「本当に人間なのかが―――とても気になるよ」

 

心臓がさらに大きく跳ねた、跳ねたような気がした。こいつの言葉は俺が一番ありえないと思っていたことであり―――今一番恐れていることでもあった。思わず刀を離してしまうところだったがもしこれが全てコイツの作戦だったら、そんな考えが頭に流れ何とか今の体制を維持する。

 

「・・・こんな能力を使い、羽を生やせる者をお前は人間って言うの?」

 

言葉を絞り出しこれで納得してほしい、同意してほしいと願いを込め問いかける。

 

だが。

 

「そうじゃない」

 

―――その願いは容易く崩れ落ちた

 

コイツの次の言葉が来る一瞬、ありえない速さで頭が働いた。

 

やめろ、やめてくれ。お前が次に繰り出す言葉なんて分かっている。頭で理解もしている。

 

だから―――

 

                      やめてくれ

 

しかし人の大抵のプラスの願望は、願いは嘲笑うかのように叶わない。

 

「君の―――心が、だ」

 

―――逃げることは許されなかった

 

だが、まだ抗う。

 

「平気で人を殺そうとした奴に言われたくは、ないな」

 

どの口が―――、自分の脳裏にそんな言葉が響いてきた。駄目だ、自分が喋ればその全てが俺を攻めてくる。すべて自分に当てはまってしまっていて俺を全力で否定してくる。・・・疲れた、な。

 

「それを言われると痛いね。・・・けど。すこし言い訳、昔の話をさせてもらってもいい、かな?」

 

自分、己の行動を否定してくる全てを抑える為時間が必要なので。それを了承した。

 

「・・・ありがとう。じゃあ話を始めさせてもらうね―――」

 

 

 

―――僕は落ちこぼれで漫画とかでもよくあるようにいじめられていたんだ。魔力が少なくそれを補うほどの体術もなければ勉学もパッとしない成績だった。・・・神器も本当はなかったんだ。え? じゃあ僕の持っているものは何だって? ・・・後で話すよ。話を戻すと僕は力が無かった自分が嫌だった、僕を虐める人たちが憎かった、それを止めない大人達が嫌いだった。自分を不幸にもたらすこの世界を恨んでた。

けど。それは僕の力不足のせい、僕が弱いから、努力がまだ足りないから。その癖して自分を悲劇のヒロインにし、全てを世界の所為にするのはその自分が体験した全てより嫌だった。だから僕は自分を変えようとした。・・・いや逃げたんだ。

 

―――努力すれば報われる

 

これをただ信じ、自分の中に溜まっている悪の感情を殺し、こんな僕でもヒーローになれる、そう言い聞かせたんだ。だけどそれでも足りなかったんだ。僕が何十倍、何百倍努力しても平凡に滑り込めるぐらいで誰も褒めてくれなければ達成感を感じることもない。

 

―――悪の感情が芽吹き始めた

 

僕はこんなにも努力しているのに、才能ある人にすぐ抜かされ

 

―――努力もしていないくせに

 

実績がないから誰も慕ってくれやしない

 

―――どうして、僕と君たちは何が違うの

 

努力していても才能あるものに押しつぶされる

 

―――羨ましい

 

いつだって我慢し、いつだって努力する青春主人公と何一つ変わらない<はず>の自分

 

―――しかし自分は猿真似しているだけ、もしくはその考え自体間違い

 

いくら経験値を溜めてもクラスメイト()には勝てず勝利条件(エンディング)が見えてこない

 

―――そんな世界

 

           『間違っている』

 

ここから僕の歯車は狂い始めた。当時僕はまだ幼く、夢を見ることも出来れば折れるのも、早い。僕は早くも挫折し、現実に飲み込まれた。そんな時だったかな、力を渡されたときは。

 

公園をフラフラと歩き少し疲れたからベンチに座った。横には知らない大人がいたけど気にしなかった。その横の大人の人は僕の顔をジッと見つめた後何がおかしいのか顔を歪め喋りかけてきた。

 

―――力がほしくないかい?

 

突然のことだった。普通そんなこと言われれば不審に思うかバカなこと言ってると思うはず、けど当時の僕は<力>と言う単語に大きく反応してしまった。

 

―――欲しい、皆にバカにされない力が

 

その言葉と同時に僕の中に何かが流れてきた。そしてそこには例の大人の人はいなく、ただ右手には見覚えのないものが宿っていた。

 

―――まさかこれが

 

そう思い後日ウキウキで学校に行き実技で早速試してみた。そうすると何故か黒いモヤがかかった人が出てきた。何故モヤがかかっているのかと聞くとまだ最初、あなたは能力の扱いに慣れていないんだと教えてくれた。僕はあぁ、そうなんだと納得し目の前の僕の戦い相手、勝ち組を倒してくれと命令した。人任せというのが癪だったけどそれはあまり気にしないようにした。僕の召喚した人は目の前の子を圧倒していた。僕が使えない技を使ったり目にも見えない打撃をも繰り出していた。しかし一番気になっていたのは相手の動揺の仕方だった。僕が能力を使ったのもあるみたいだったが、その黒いモヤがかかっている人に攻撃するのを躊躇っていたことだった。しかし圧倒している、この弱い自分が、いつも見下してきたあいつを―――そう思うと嬉しくてたまらなかった。

結果。僕は勝った。相手は感嘆の声を、この勝負を見ていてくれた観客は僕を褒めてくれるかと、そう思っていた。けど違った。

 

―――卑怯者!

 

そんな声が僕の周りを支配した。勿論最初は何の事か分からなかった。だから反論した。何の事だよ! ってね。それがいけなかったと思う。他の人はいくら才能が無くてもここまで落ちこぼれるなんて―――、そんな目で見てきた。

 

―――意味が分からない

 

どうも皆は僕が出した黒いモヤのことに失望していたようだった。皆はこれが見えたのか、そう思うと少なからず不安がでてきた。自分がこの正体を分かっていないのに他の人には見えている。確かにそれはいけないと思い人目が無いところで必死に能力の練習をした。それでこの能力の正体が分かったんだ。

 

―――自分の目に映った者の大切な者を召喚、そして操れる能力

 

絶句した。確かにこれは卑怯と言われても仕方なかった。しかしこの時の僕の頭は麻痺していた。能力の代償なのだと思う。

 

―――これこそ最強じゃないか!

 

そう思い僕は能力を使うことを止めなかった。

 

 

 

 ◇

 

「―――これを踏まえた上で聞くよ」

 

「君、本当に人間?」

 

・・・大体こいつの言いたいことが分かってきた。

 

こいつは俺の能力の代償が大きいのを分かっている。だからこいつは不思議なのだろう、自分が過ちを犯した時と同じぐらいの子が神器を持っていて使えば何かしらのデメリットが付いてくる。・・・確かに能力を手に入れる経緯は違うが似ている。だからこいつは不思議に思っているのだ。今冷静に考えれば子供が大の大人に勝ち、普通耐えられない力を多用しまくっている。

 

それを踏まえれば俺は人間にはほど遠い―――

 

胸が先ほど跳ねた分締め付けてきた。人間ではない、それは今の俺にとって、前世に戻る身としては一番避けておきたいこと―――

 

・・・何を今更悔やんでいるのだ。俺が能力を使ったのも自分の意志でありこいつらを殺そうとしたのも―――俺の意志だ。その時点で俺は自分のはかりで決めた<普通>の人ではないのだ。この今の俺の感情、後悔はいずれは時間という毒が諦めさせてくれるのだろう。

 

―――だから後悔なんてしたくないのだ

 

時間は毒であり、麻薬でもあるのだ。一回それを味わうとやめられない、いつかの俺が味わってそれに縋ってしまったときがある。

 

―――後悔とは一人では無く協力、多人数で失敗するから起こるものだと思っていた。だってそうだろう。他人が失敗すればいつまでもそいつの所為だと、あいつが失敗したから、負の感情が、後悔が永遠に消えない。一人で失敗するからこそ嘆くだけで済む。これは俺が一人を好む多数ある中の一つの理由である。

 

なのに。今俺は。自分の後悔を悔やんでいる。いくら心の中で言い訳しようと、どんなに嘆こうとその思いは消えない―――

 

そんな思考が俺の脳に渦巻いている。返答もせず、ただ上の空。それを見て相手は何か思ったようだ。

 

「答えは、返答はでない?」

 

―――もう楽になりたい

 

そんな考えが頭によぎる

 

 

「確かに君は分かっていても答えたくないだろうね」

 

―――理性の化け物が耐えられなくなっている

 

耐えろ。耐えるんだ。また俺の中に黒い感情が流れてきている。

 

「だから僕が代わりに答えを出してあげよう」

 

―――そして理性の化け物が変化していく

 

「君は化け物であり―――」

 

その言葉を聞いた瞬間俺は残っている全てを力に変え殴りかかった。っその言葉をこれ以上聞くと俺が壊れてしまうから―――

 

しかし

 

「―――危ないね」

 

それは受け止められていた。

 

「君が言葉を拒むだというのなら拳で語ろうとしようか―――」

 

      『『禁手(バランス・ブレイカー)』』

 

体力は底につき、先ほどの不意打ちも受け止められているから見て俺の勝率は極めて低いことがわかる。しかし止められない、止められないのだ。涙ながらに目の前の相手と勝負を重ねるための構えをとる。

 

      「さて、始めようか!!」

 

      「・・・・・・・」

 

―――望まない戦いが始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         こうしてまた比企谷八幡は間違える

 

 




今回は改めて八幡の境遇を書きました! ・・・それのせいで原作に全然入れませんが、すみません。

これからも更新頑張ります! コメントなどお願いします!
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