捻くれボッチの転生記   作:ジャージマン

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二十二話 偽物の偽物

光の槍が複数飛んでくる。それをギリギリ、体を少しずらすことで躱す。この時に必要なことは今の攻撃を躱すことが精一杯という演技をすること。顔を焦りに変える。先ほど自分を挑発した癖に大した実力を持っていない、それほどイラつくことはないだろう。その次に思う事はイラつく相手を潰せるという優越感に浸かる。

 

――――故に警戒をすることを忘れるのだ

 

「正義のヒーローみたく現れたくせに実力は大したことないのね!!」

 

そう言って堕天使は遠距離からの攻撃を切り替え接近してくる。

 

・・・一応俺が仕組んだことだが単純すぎじゃね? 

 

相手の能力も大して把握していないのに安全策である遠距離で攻撃というものを捨て、近距離に切り替える。あまりにも愚策である。堕天使がグングン俺に近づいてくる。堕天使は俺のことをどう思っただろうか。

 

ただの実力のないお人よしが自殺しに来た?

 

自分の力を過信して戦いを挑んできた愚か者?

 

「・・・全部不正解だ」

 

そうして堕天使が振りかぶった光の槍が俺に突き刺さる、その時堕天使の顔が酷く歪んでいた。

 

――――その瞬間俺の姿が掻き消える。

 

「なにっ!?」

 

突き刺さるはずだった槍が空を斬る。始末出来たはずの相手がいない、どこにいるかを顔を周囲に見渡す―――、その行動をする前に堕天使は強制的に地べたに叩き付けられた。・・・まぁ俺が攻撃を躱して地面に蹴りつけただけなんだが。

 

「――――があッ!?!」

 

「もうちょっと注意深くなんねぇと死ぬぜ? 堕天使さん」

 

地に伏せ俺を見上げる顔は先ほどとは違う意味で顔が酷く歪んでいる。その顔は殺意に溢れたものだった。・・・見慣れた光景だな、そう思いコイツをどうしようかと思うと後ろに新たな気配が現れた。

 

反射的に後ろを向くとそこには戸惑いの顔を浮かべるリアスグレモリーの姿があった。それを確認すると同時に俺はその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・逃げられちゃったわね」

 

自分が呼ばれた場所は公園。呼び出したものは血塗れで倒れている少年だ。そこまでなら自分は大して驚くことは無かった。逆に今目の前の少年から面白い神器が宿っていることが分かった。

 

問題は先までの光景だった。昔自分を救ってくれた少年、比企谷八幡が堕天使を人間の身で圧倒的に倒していたのだ。神器を持っているのも知っている、実力が一般人とはかけ離れているのも知っている。

 

―――だがここまでとは思わなかった

 

昔の八幡も確かにハグレ悪魔に勝利していたがあれは下級悪魔だ。下級悪魔なら神器を持っている人間なら何とか勝利できる。しかし先ほどの逃げ出した堕天使は確かにあまり強くないが人間の身で勝てるかと聞かれるとイエスとは言えない。

 

「気になるわね・・・。彼の事を調べることがまた増えちゃったじゃない」

 

そう笑みを小さくこぼす。けどその前に今はこの少年を助けてあげなければいけない。この傷では彼は助からない、なら悪魔の駒を。

 

「ポーンでいいかしらね」

 

そう思いポーンを取り出すと八つの駒が彼に吸い込まれていった。

 

「・・・この子も面白くなりそうね」

 

笑みがまたしてもこぼれ、一誠を抱えその場から去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見られちまった・・・・」

 

鞄を片手で背負いながら通学路で頭をガシガシといじる。

 

「周りをよく見ろって言った矢先に自分が見てないとか恥ずかしすぎだろ・・・」

 

また黒歴史作っちまったと思い小走りで家に帰る。・・・そういえば今日仕送りが来ているかもしれない。お金には困っていないからいらないと言っているのだがお節介なあの人たちの事だ、今日も何か送ってきているかもしれない。

 

そんな考え事をしていると家の前に着いた。鍵を開けると玄関に人一人ぶん入るのではと思うほどのでかい段ボールが二つあった。

 

何で鍵閉めているはずなのに中にあるんだよ・・・。恐る恐るリビングに持ち運び開けようとする。

 

「・・・いや、止めよ」

 

中に入っているものに気付いたのでめんどくさいし放置する。どうせ放置してたら出てくるだろ。

 

そう思い背を向けると段ボールの箱が勢いよく空いた。

 

「な~んで開けてくれないの~~!!!」

 

そう叫びながら俺の背中に抱き付こうとしてくる。それを横ステップで躱し壁に激突しないようにソファに力の方向を変えダイブさせる。

 

・・・コイツがいるってことは、そう思い後ろを振り向くと顔を赤くしながら俺に抱き付こうか抱き付かまいかとオロオロしている姿があった。

 

「・・・第三の天使だ」

 

「ふぇっ!?」

 

そうして頭をなでる。顔を赤くしながら嬉しそうにニコニコしている。・・・可愛い。そしてあざとくない!

 

「何でレムにはそんな優しくて私にはこんな冷たいの!?」

 

「いや超優しかっただろ。地面にぶつけずにソファにダイブさせてあげた辺りが」

 

「嬉しくない優しさだよっ!?」

 

そしてワンワン怒るので仕方なく頭をなでるとえへへ~と顔がにやける。

 

「・・・くっ、ラムを可愛いと思ってしまうとは、不覚だ」

 

「にゃはは~! お兄ちゃんもまだまだだね!」

 

「・・・はぁ」

 

・・・頭が残念な奴だな、と可哀想な目で見る。

 

「そんな目で見ないでっ!!」

 

「・・・ラムお姉ちゃんだけじゃなくてレムにも構ってください」

 

そうして後ろから抱き付かれる。・・・柔らかい二つの感触は気にしてはいけないことだ。朝出かけたとき静かな空間だったこの場所が一気に騒がしくなる。

 

「で、何でお前らはここに来たんだよ・・・」

 

―――こいつらは俺の義理の妹である

 

無邪気で頭が少し残念な方はラム、髪が赤のようなピンクのような見たことの無い髪色である。

 

もう一人の方はレム、一見クールに見えるが人見知りで甘えん坊である。姉のラムと比べ発育がいい。・・・どこがとは言わないが。

 

どちらも顔が整っておりこれなんていうギャルゲ? と思うがリアルで起こるとは思わなかった。ラムが中三でレムが中二だ。

 

「「お兄ちゃん(さん)に会う為だよ(ですよ)?」」

 

「いやいやお前らここにきてる場合じゃねぇだろ。特にラム、お前受験勉強はどうしたんだよ」

 

「・・・・・・・大丈夫だ、問題ない、よ」

 

「・・・せめて即答してほしかったんだが」

 

だって勉強めんどくさいんだも~ん、と足をブンブンさせながら頬を膨らませ子供みたいに言う。・・・小町より駄目かもな。何とか言って帰らせたかったがもう夜なので諦めた。キッチンに行き料理を始める。前世と比べ男料理しかできないという事も無くなった。というか自分の飯の不味さに少し絶望し全力で努力したのは内緒だ。

 

妹二人を椅子に座らせ料理をしていると隣にレムが青髪を揺らしながらとことこやってきた。

 

「どうしたんだ?」

 

「何か手伝いをさせてください」

 

ゆっくりしとけと言ったんだが・・・、どうも俺に料理を任して自分は何もしないというのが落ち着かないらしい。・・・いい子だ。

 

レムの親切心を無下に断るのも失礼なのでお願いした。しばらく無言で作業に没頭していると不意にレムが口を開いた。

 

「・・・兄さんの部屋鍵が閉まっていました」

 

「んぁ? ・・・まぁ男には部屋に入れたくない事情があるからな」

 

そう意味ではありませんとレムの目が訴えてきた。・・・知っている、これがお前の望んでいる答えではないことぐらい。

 

「そうじゃ、ないんですよ・・・」

 

そう言ってうつむくレムの頭を軽く撫でる。

 

「・・・今は飯だ、そんな気分で食ったらただでさえ不味い料理が更に不味く感じるぞ」

 

「・・・兄さんの料理は何でも美味しいからいいんですよ」

 

それから二人で作った料理をテーブルへと運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばさ」

 

晩御飯を食べ終わり三人でくつろいでる時に不意にラムが口を開いた。

 

「お兄ちゃん一人暮らしなのにさ、何でこんな立派な家に住んでるの?」

 

それは当然の質問だった。妹たちから見ると一般人な俺が一人暮らしなのに何故アパートなどではなく家を持っているのかが不思議でしょうがないのだろう。・・・こいつら一般人に悪魔狩りのことを教えるわけにはいかないし、アパートでは裏事情関連のものを隠し通すのが難しい為俺は家を購入した。未成年がどうやったと聞かれるとまぁ、あれだ変装した。

 

理由はあるがこいつらに知られるわけにはいかない。だからこそ俺は自分の部屋には誰でも入れることをしない。例えそれが誰であろうとも。

 

「・・・さぁな」

 

だからこそ俺は曖昧に答えるしかない。そんな俺の様子を見てまたレムが顔を悲痛に歪ませた。だがラムはこの答えでは納得しない様子で質問を続けてくる。

 

「・・・お兄ちゃんさ、私たちそんなに信頼されてないの?」

 

ラムは苦笑しながら、それでいて自分で質問しているくせに自分で傷ついている。・・・その表情から逃れたくて俺は言葉を返す。

 

「んなことねぇよ。というか急にそんなこと聞いてきたどしたよ? 話ぶっ飛び過ぎだ」

 

「・・・兄さんが兄さん自身の事を何一つ話してくれないから、ですよ」

 

レムの小さく呟いた声が俺の耳に届いた。・・・この二人はどこの誰かみたいに人の、俺の表情や心理を気にして気を遣う。それでいて誰かとは違い遠慮なく聞いてくる。

 

―――どうしてお前らはそんなに大胆な行動を起こせる

 

誰かと違い関係を壊れることを恐れ現状維持を保つあの時の少女とは違う。

 

誰かと違い無駄に組み立てた理論で、虚言で遠回しに今の関係で無理矢理納得させていた少年とは違う。

 

誰かと違い無駄な事ばかりズバズバ言う癖して肝心な事だけは俯いて誤魔化そうとする少女とは違う。

 

長い時間をかけてようやく手探りの状況だがもとに戻れた三人とは違う。

 

決して嫌悪の感情をレム、ラムに向けている訳ではないのだ。ただ、そんなにも俺に絶対的な信頼を抱いている二人の行動が何よりも俺の心に刺さって、それでいてあの頃の三人が何も出来ず現実逃避ばかりしているのが馬鹿みたいに思えてきてしまって心の中が痛むのだ。

 

―――決して間違いではない

              しかし正解にもほど遠い―――

 

頭の中がグチャグチャになる。しかしここで黙ってしまっては彼女たちの言葉を肯定するのと同じになる。

 

だから俺はまた偽物を重ねるのだ。

 

「・・・お前たちを傷つけたくないから」

 

「「―――え?」」

 

「お前たちを昔の様な辛い経験をさせたくないから、苦労をさせたくないから」

 

「お前たちを信用していない? そんな訳ねぇよ。・・・だが」

 

「兄としてお前らにいい所を見せときたいんだよ」

 

だからこれは男の意地っ張りだと、知られるのが恥ずかしいからこれ以上言わせないでくれと懇願する。

 

それを言うと二人が抱き付いてきた。・・・ありがとう、大好きだと。そう言って泣きながら。俺のこと何一つ教えてくれないのは仕方ないから許してあげます、そう言った。

 

そして彼女たちを寝室に連れて行った。・・・変な意味ではないぞ? 義理とはいえ妹に手を出すほど俺は落ちぶれていない。

 

泣き疲れた彼女たちをベットに降ろすとすぐに眠たそうにまぶたをトローンとさせた。二人が私たちを泣かせたからその罪として撫でて! という要件には従った。

 

・・・流石に一緒に風呂とかは恥ずか死するので断ったが。

 

そう言って撫で続けているとラムは寝てしまい可愛らしい寝息を立てていた。そしてレムは、

 

「・・・兄さん」

 

「・・・何だ?」

 

「レムは、レムとラムお姉ちゃんはあの日兄さんに助けてもらったときから兄さんに絶対的信頼を抱いています」

 

「だから兄さんが何を、していようと、レムたちは―――」

 

「―――ありがとうな、けど今はもう眠れ。疲れただろ」

 

そう言って俺はレムを眠りに就かせた。そして俺はその場から離れようとすると二つの手が俺の動きを止めた。

 

一つはラムの左手、一つはレムの右手だ。

 

『離してくれ』

 

苦笑しながらも俺は言霊で二人の手をベットに落とさせた。それから俺はベランダにでて屋根裏に飛び移る。

 

そこで寝転がり先ほど二人に言った言葉を思い出す。

 

「お前たちが大切だから傷つけたくないから、か」

 

確かに嘘ではないのかもしれない。俺はあいつらが虐められていたらその虐めている奴をぶっ飛ばすだろう。

 

しかし、本心は汚い。俺が裏に関わっていることを知ると彼女らは俺を止めるだろう、そんな危険なことをしてほしくないと。だから俺は彼女たちの良心に漬け込みだました。

 

一般人な彼女らが裏に関わる、それだけでも脅威なんだがそいつらの兄が黒龍の神器を宿した者だと知られると間違いなく狙われる。

 

これは優しさではない、自分の足枷にならないためなのだ。

 

そしてさらに汚い部分まで行くとしたら。

 

あいつらの兄という存在を認められないのだ。小町という存在が俺にある限りそれを捨て置いてあいつらと、小町とは違う奴らとキャッキャッするわけにはいかないのだ。

 

―――これほど最低な兄がいるだろうか

 

だから俺は彼女らに信頼しているとは言わなかった。それを言うとただでさえ嘘の塊なのにそれ以上嘘を連ねるのは吐き気がした。

 

こういう時ラノベなどの転生者の心境が羨ましい。自分が本物ではないのに平然と兄や、友人として振る舞えるその心が。

 

 

 

誰かが俺の感情を消せるのなら、俺は迷わずそれに縋ってしまうだろう。

 

こんな苦悩から逃げられるのなら感情が消えることだって構わない。

 

 

だから誰か。

 

俺を今の俺がいる本物とは程遠い底なし沼に沈む俺を引き上げてくれとは言わない。

 

せめて沈むのを止めてくれ―――

 

そう思い夜空を見上げる。こんなに俺の心は腐り黒いのに、対照的に夜空は月がでて、星が出て憎たらしいほど光り輝き綺麗だった。

 

・・・今の俺は、俺が一番嫌いな姿だ。だから俺はそれを改める為、声にだして目覚めさせる。

 

「俺は、悲劇のヒロインなんかではない」

 

「だから願うだけのことは許されず他に救いを求めるのはもっての外だ」

 

「一人で考え抜き一人でその場を打開する孤独の力が必要だ」

 

だから今の俺は弱い。トラウマを刺激されるだけで考えが鈍ってしまう。

 

「正々堂々、真正面から卑屈に最低に陰湿に」

 

今の俺にはそれを貫く必要がある。

 

俺は立ち上がり暗闇に姿を消した。

 

――――変わるのではなく昔の自分に戻る為

 

               そう静かに瞳に決意を宿らせて―――

 




・・・やっと更新できました、大変遅れてすみません。
 今回は義妹の出現によることで小町の存在と義妹で憂鬱になる比企谷を書きました。

・・・作者なら義妹、実妹の存在はリアルならウェルカムなんですけどね~。

現実逃避せずこれからも更新頑張りたいと思いますのでよろしくお願いします!

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